説明

アレルゲン低減化組成物

【課題】 変色することのない安全で低毒性のアレルゲン低減化組成物及びアレルゲン低減化性能を有する繊維又は繊維製品を得るためのアレルゲン低減化加工剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 ダニや花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させることができ、またカーペット、畳、寝具類、カーテン、衣料品、ぬいぐるみ、マスク、フィルター材料、電気掃除機の集塵袋等の繊維又は繊維製品に変色することなくアレルゲン性を低減化させる機能を付与することができる、ヒドロキシプロリンの誘導体、その重合体又はそれらの塩を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダニや花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させ、あるいは繊維又は繊維製品にアレルゲン性を低減化させる機能を付与するためのアレルゲン低減化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患の原因として、屋内に棲息するダニや花粉、ペットの毛、カビ等が知られている。
【0003】
ダニには、ツメダニ、コナダニ等の種類があり、それらの内コナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)はダニアレルギーを引き起こす原因として重要視されている。これらのダニは、虫体そのものがアレルギーを引き起こす因子であるアレルゲンになるだけでなく、ダニの死骸や糞も非常に強いアレルゲンとなる。カビは湿度の高い場所に発生しやすく、肺に吸い込まれた場合にはアレルゲンとなる。花粉は、スギ、ヒノキ、ブタクサ、オオアワガエリ、ケヤキ、ヨモギ、ハルガヤ等のものがアレルゲンとなることが知られている。
【0004】
現在、アレルギー患者の治療には主に薬物療法が適用されているが、アレルゲンを患者自身の生活環境から除去することは、アレルゲンへの暴露から患者を守る有効な手段である。
【0005】
マスクはスギ等の花粉を吸入するのを防ぐために用いられているが、マスクに付着した花粉はアレルゲン性を消失するわけではなく、再び飛散することによって吸収してしまう危険性もある。
【0006】
一方、畳、絨毯、寝具、カーテン等の家屋内にある繊維製品はダニの生育の温床となることが多いが、これらの製品からダニ等のアレルゲンを除去する方法としては、電気掃除機による吸引、空気清浄機による除去や寝具の高密度カバーの使用などがあげられる。しかしながら、電気掃除機による吸引では除去できるアレルゲン量に限界がある上、集塵袋の廃棄時にアレルゲンが再飛散する危険性がある。また、空気清浄機では空気中に漂うアレルゲンの除去しかできない。更に、寝具の高密度カバーは内側からのアレルゲンは除去できるが、外側からのアレルゲンは除去できない。
【0007】
アレルギー性を低減又は除去する方法として、例えばタンニン酸(特許文献1)、茶抽出物、ハイドロキシアパタイト、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、没食子酸及び没食子酸と炭素数1から4までのアルコールとのエステル(特許文献2)等のアレルゲン低減化剤を用いる方法が知られている。しかし、これらのアレルゲン低減化剤は、繊維や繊維製品に付着させた場合、着色あるいは経時的に変色を起こすという問題がある。また、芳香族ヒドロキシ化合物(特許文献3)、セルロースエーテル又はスターチエーテルを主鎖とする多糖誘導体(特許文献4)をそれぞれ用いたアレルゲン低減化剤が知られているが、アレルゲンとの反応性に乏しく低減化効果は十分なものではない上、生体中では代謝されない。
【0008】
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体は、アトピー性皮膚炎の予防剤(特許文献5)、肌の老化抑制剤又は老化改善剤(特許文献6)、創傷の治療剤(特許文献7)として用いられること知られているが、アレルゲンに直接作用してアレルゲン性を低減させることは知られていない。
【0009】
【特許文献1】特開昭61−44821号公報
【特許文献2】特開平6−279273号公報
【特許文献3】特開2003−79756号公報
【特許文献4】特開2004−83844号公報
【特許文献5】国際公開第2004/039368号パンフレット
【特許文献6】国際公開第00/51561号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2004/028531号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ダニや花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させるため、あるいは繊維又は繊維製品にアレルゲン性を低減化させる機能を付与するための、変色することのない安全で低毒性のアレルゲン低減化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)式(I)
【化1】

(式中、Rは水素、カルボキシ、アシル又はアルコキシカルボニルを表し、Rは水素又はアシルを表し、R及びRは水素又はヒドロキシを表し、少なくとも一方がヒドロキシである)で表されるヒドロキシプロリンの誘導体、その重合体又はそれらの塩を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【0012】
(2)前記式(I)において、Rがカルボキシ、Rがアセチル、Rがヒドロキシ、Rが水素である前記(1)に記載のアレルゲン低減化組成物。
(3)前記式(I)で表されるヒドロキシプロリンの誘導体、その重合体又はそれらの塩の含有率が0.01〜30重量%である前記(1)又は(2)に記載のアレルゲン低減化組成物。
【0013】
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のアレルゲン低減化組成物を配合してなるエアゾール剤又はスプレー剤。
(5)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のアレルゲン低減化組成物を付着又は固着してなる繊維又は繊維製品。
(6)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のアレルゲン低減化組成物を付着又は固着してなるマスク。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物を用いることにより、ダニや花粉等のアレルゲンのアレルゲン性を低減化させることができる。また、繊維又は繊維製品に加工することによりアレルゲン性を低減化させる機能を付与した繊維又は繊維製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に用いる前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体の各基の定義において、アシルとしては、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖の脂肪族アシルがあげられ、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、オレオイル、リノレオイル、パルミトイル、ステアロイル等をあげられ、特にアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリルが好ましい。
【0016】
アルコキシカルボニルのアルコキシ部分としては、好ましくは炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルコキシがあげられ、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等があげられる。
【0017】
また、前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体には種々の異性体が含まれるが、いずれの異性体でもよい。例えば、R及びRが異なって水素又はヒドロキシであり、かつRがカルボキシ、アシル又はアルコキシカルボニルである場合、シス体、トランス体あるいはシス−トランス混合物を用いることができ、また光学活性なD体又はL体、あるいはラセミ体のいずれの化合物を用いてもよい。
【0018】
前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体において、Rがカルボキシ、Rが水素、R及びRが異なって水素又はヒドロキシの誘導体であるヒドロキシプロリンとしては、シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、トランス−3−ヒドロキシ−D−プロリン及びトランス−3−ヒドロキシ−L−プロリンがあげられる。
【0019】
ヒドロキシプロリンは、コラーゲン中の主要構成アミノ酸成分として、また、エラスチンの構成アミノ酸として自然界に広く存在するアミノ酸の一種であり、例えばブタ、ウシ等の動物由来のコラーゲンを酸加水分解し、常法により精製することにより製造することができる。
【0020】
トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリンは、アミコラトプシス(Amycolatopsis)属又はダクチロスポランジウム(Dactylosporangium)属微生物より単離したプロリン4位水酸化酵素(特開平7−313179号公報)を用いて製造することができる。また、シス−3−ヒドロキシ−L−プロリンは、ストレプトマイセス(Streptomyces)属微生物より単離したプロリン3位水酸化酵素(特開平7−322885号公報)を用いて製造することができる(バイオインダストリー, 14巻, 31号, 1997年)。
【0021】
前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体において、例えばRがカルボキシ、Rがアシル、R及びRが異なって水素又はヒドロキシの誘導体であるヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体は、公知の方法により調製することができる。例えば、ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体は、好ましくは直鎖又は分岐状の炭素数1〜20の飽和又は不飽和の脂肪酸を塩化チオニル、ホスゲン等のハロゲン化剤を用いてクロライド、ブロマイド等のハロゲン化物に変換した後、前記のヒドロキシプロリンと縮合させるか、又は脂肪酸を酸無水物に変換した後、前記のヒドロキシプロリンと反応させることにより製造することができる。
【0022】
脂肪酸としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバル酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸を単独又は組合せたものが用いられる。
【0023】
酸ハロゲン化物を経由するヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体の製造方法を、以下に例示する。
【0024】
脂肪酸を塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ヘキサン等の溶媒中に分散し、これに1〜5倍当量のハロゲン化剤を添加して反応させ、脂肪酸ハライドを得る。次に、ヒドロキシプロリンを溶媒に溶解又は分散させ、得られた溶液を5〜70℃に保ちながら、前記の脂肪酸ハライドをヒドロキシプロリンに対して0.3〜3.0倍当量加え、アシル化反応を行うことによりヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体を製造することができる。
【0025】
アシル化反応に用いられる溶媒としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、アセトン、トルエン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等があげられ、これらは単独又は混合して用いてもよい。ヒドロキシプロリンを溶媒に溶解又は分散する際、ヒドロキシプロリンに対して0.8〜2.0倍当量の水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ物質を必要に応じて溶媒に溶解又は分散させてもよい。
【0026】
ヒドロキシプロリンのN−アシル化誘導体としては、例えば、N−アセチル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−アセチル−シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−アセチル−シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−アセチル−シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−アセチル−トランス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−アセチル−トランス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−プロピオニル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−プロピオニル−シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−プロピオニル−シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−プロピオニル−シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−プロピオニル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−プロピオニル−トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−プロピオニル−トランス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−プロピオニル−トランス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−ブチリル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−ブチリル−シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−ブチリル−シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−ブチリル−シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−ブチリル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−ブチリル−トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−ブチリル−トランス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−ブチリル−トランス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−イソブチリル−シス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−イソブチリル−シス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−イソブチリル−シス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−イソブチリル−シス−3−ヒドロキシ−D−プロリン、N−イソブチリル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン、N−イソブチリル−トランス−4−ヒドロキシ−D−プロリン、N−イソブチリル−トランス−3−ヒドロキシ−L−プロリン、N−イソブチリル−トランス−3−ヒドロキシ−D−プロリン等をあげることができる。
【0027】
前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体の重合体としては、前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体が2個以上結合したものであれば、どのようなものでもよいが、式(II)
【0028】
【化2】

(式中、nは2〜50の数を表し、n個のR及びRは、それぞれ同一又は異なって水素又はヒドロキシを表す)で表される重合体であることが好ましい。
【0029】
前記式(II)で表される重合体は、例えば、Analytical Methods of Protein Chemistry, pp. 127-154, Pergamon Press, Oxford 1966に記載の熱重縮合反応により製造することができる。
【0030】
前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体又はその重合体の塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウムイオン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンの付加塩、アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸の付加塩等をあげることができる。
【0031】
前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体又はその重合体の塩を取得したいとき、該誘導体又はその重合体が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、遊離の形で得られる場合には、適当な溶媒に溶解又は懸濁し、塩基を加えて塩を形成させればよい。
精製は、例えば結晶化、クロマトグラフィー等の通常の方法が用いられる。
【0032】
本発明のアレルゲン低減化組成物における、前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体、その重合体又はそれらの塩の含有率はいずれでもよいが、アレルゲンに作用して該アレルゲンの有するアレルギー反応を惹起させる能力を低減又は消失させるためには、0.01〜30重量%であることが好ましい。例えば、エアゾール剤又はスプレー剤として使用する場合は0.01〜10重量%が好ましく、0.1〜3重量%がより好ましく、繊維又は繊維製品への加工剤として使用する場合は0.01〜30重量%が好ましく、0.1〜20重量%がより好ましい。
【0033】
本発明のアレルゲン低減化組成物は、アレルゲンが存在する環境中に処理が可能、あるいは繊維及び繊維製品への付着、固着等の加工が可能であれば、液状、ペースト状、粉体状等、いずれの形状でもよいが、液状とすると扱いが容易であるため好ましい。
【0034】
また、本発明のアレルゲン低減化組成物の剤形としては、水和剤、乳剤、油剤、エアゾール剤又はスプレー剤、噴霧剤、塗布剤、粉剤、顆粒剤等、いずれの剤形で用いてもよいが、水和剤、乳剤、油剤、エアゾール剤又はスプレー剤等、液状の剤形のものが取り扱いやすく好ましく、エアゾール剤又はスプレー剤として用いるのが更に好ましい。
【0035】
本発明のアレルゲン低減化組成物の調製に用いる溶剤としては、前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体、その重合体又はそれらの塩を溶解又は分散するのに適当な溶剤を単独、もしくは二種類以上の混合溶剤として使用できる。
【0036】
溶剤としては、特に限定されないが、例えば水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、酢酸、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、スルホランなどの極性溶剤、ジメチルナフタレン、ドデシルベンゼン、流動パラフィン、イソホロン、灯油、アジピン酸ジブチル、フタル酸ジエチル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレンカーボネート、椰子油、菜種油、綿実油、ヒマシ油、大豆油などの非極性溶剤を適宜使用することができる。通常は、水、アルコール類、グリコールエーテル類等の極性溶剤が用いられる。
【0037】
本発明のアレルゲン低減化組成物には、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、防カビ剤、抗菌剤等を含有させてもよい。
【0038】
非イオン性界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどがあげられる。
【0039】
アニオン性界面活性剤としては、例えばアルキルベンゼン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩などがあげられる。
【0040】
カチオン性界面活性剤としては、例えば脂肪族アミン塩及びその4級アンモニウム塩などがあげられる。
【0041】
これらの非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤は一種を単独に用いても二種以上を併用してもよい。
【0042】
防カビ剤又は抗菌剤としては、防カビ又は抗菌効果を有するものであれば特に限定されないが、例えば、5−クロロ−N−メチルイソチアゾロン、メチレンビスチオシアネート、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、グルタルアルデヒド、ヨードプロピニルブチルカーバメート、ピリジンチオール−N−オキシドの亜鉛塩、1,2−ベンゾイソチアゾロン、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、グルコン酸クロルヘキシジン、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、3−メチル−4−イソプロピルフェノール、オルトフェニルフェノール、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラクロロメタキシレノール、パラクロロメタクレゾール、ポリリジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、N−n−ブチルベンゾイソチアゾロン、N−オクチルイソチアゾロン、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル、テトラクロロイソフタロニトリル、ジヨードメチルパラトリルスルホン、パラクロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、脂肪酸グリセリンエステル、ヒノキチオール等があげられる。
【0043】
本発明のアレルゲン低減化組成物をエアゾール剤又はスプレー剤として使用する場合には、乾燥後の粉立ちを防ぐために水溶性樹脂を添加することが好ましい。水溶性樹脂としては特に限定されないが、例えばポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等があげられる。
【0044】
本発明のアレルゲン低減化組成物は、屋内塵性ダニのアレルゲン除去を目的に使用する場合、殺ダニ剤と併用することにより、そのアレルゲン低減化効果を更に持続させることもできる。殺ダニ剤は、屋内塵性ダニに対して致死効果や忌避効果のあるものであれば特に限定はなく、例えば、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエート、サリチル酸フェニル、シンナムアルデヒド、ヒソップ油、ニンジン種子油等を用いることができ、また天然ピレトリン、フェノトリン、ペルメトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、マラチオン、フェンチオン、ダイアジノン等の有機リン系化合物、ジコホル、クロルベンジレート、ヘキシチアゾクス、テブフェンピラド、ピリダベン、アミドプルメト等を用いることができる。
【0045】
本発明のアレルゲン低減化組成物を製剤として用いる場合、必要に応じて乳化剤、固着剤、分散剤、安定化剤、噴霧剤等を添加して製剤化することができる。
【0046】
本発明のアレルゲン低減化組成物は、繊維又は繊維製品に付着又は固着させて用いることができる。
【0047】
繊維としては、例えばナイロン、綿、ポリエステル、羊毛等があげられ、これらの繊維を2種類以上使用した複合繊維であってもよい。
【0048】
繊維製品としては、該繊維を加工して得られるものであれば、例えば糸、布、生地、織物、編物、不織布、繊維ウエブ等のいずれの形状のものでもよく、繊維の種類も特に限定されない。また、繊維製品は、衣料品、カーペット、ソファー、壁紙、カーテン等のインテリア類、布団側地、布団カバー、布団中綿、シーツ、枕カバー、マット等の寝具類、カーシート、カーマット、天井材及び床材等の自動車部品類、ぬいぐるみ、マスク、掃除用ワイパー、フィルター材料、電気掃除機の集塵袋等、いずれの形態の製品でもよい。
【0049】
本発明のアレルゲン低減化組成物は、そのまま繊維又は繊維製品に付着又は固着させてもよいが、マイクロカプセル化、サイクロデキストリンによる包接化又はベシクル構造体化させた後に付着又は固着させると、例えば衣類、不織布、繊維ウエブ等の洗濯耐久性を付与することが可能になるため好ましい。
【0050】
付着又は固着させる方法としては特に限定はないが、例えば以下の方法があげられる。
本発明のアレルゲン低減化組成物として、前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体、その重合体又はそれらの塩を含有し、更に必要に応じてバインダーを含有する処理液を用いて、浸漬処理、噴霧処理、散布処理、吸尽加工処理等の公知の方法により、該組成物を繊維又は繊維製品に付着させ、乾燥等をさせることにより固着させることができる。
【0051】
処理液中の前記式(I)で表されるヒドロキシプロリン誘導体又はその重合体の濃度は、0.1〜5.0%o.w.fであることが好ましく、0.5〜2.0%o.w.fであることが更に好ましい。
【0052】
バインダーとしては、例えばパラレヂンGH−S(大原パラヂウム化学製)等のアクリル酸エステル系バインダー、パラゾールPN−20(大原パラヂウム化学製)等のウレタン系バインダー、トーレ・シリコーンBY22−826(東レシリコーン製)等のシリコン系バインダーの他、フッ素系、エポキシ系などのポリマーがあげられる。なお、処理液中にはバインダーを0.5〜10.0重量%含有させることが好ましい。
【0053】
本発明のアレルゲン低減化組成物の繊維又は繊維製品への付着量又は固着量は特に限定されないが、固形分として通常0.0001〜5.0重量%程度、好ましくは0.001〜3.0重量%である。
【0054】
本発明のアレルゲン低減化組成物を付着又は固着させる繊維製品としては、マスクが好ましく用いられる。マスクは、ガーゼ、不織布、紙等を基本部材として構成されるマスクであれば、どのようなものでもよいが、花粉吸入防止を目的としているものが好ましく、使い捨て目的のものであることが好ましい。
【0055】
本発明のアレルゲン低減化組成物をマスクに付着又は固着させる方法としては、マスクの基本部材をアレルゲン低減化組成物の溶液に浸漬後に乾燥させる方法、常法によりバインダーで該基本部材と該組成物とを結合させる方法、噴霧処理等により該基本部材に該組成物をコーティングさせる方法等があげられる。
【0056】
マスクの基本部材において、該アレルゲン低減化組成物を付着又は固着させる部位としては、口及び鼻を覆う部位であればどのような部位でもよいが、マスクの外側に付着又は固着させることが好ましい。
【0057】
マスクには、抗菌剤、NOX除去剤としてのアルギニン等、保湿剤としてのプロリン又はヒドロキシプロリン等、香料などを付着又は固着させてもよい。
【0058】
本発明のアレルゲン低減化組成物は、繊維又は繊維製品以外に、例えば木材、コンクリート、金属、石、ガラス等の建材、ゴム、紙、樹脂、プラスチック等の素材又はそれを用いた製品に対しても、繊維又は繊維製品と同様な方法で付着又は固着させることができる。
【0059】
本発明のアレルゲン低減化組成物、又は該組成物を付着又は固着させてなる繊維、繊維製品等を用いることにより、ハウスダスト中のダニ由来のアレルゲン、イヌやネコなどのペットの毛や上皮、ゴキブリ、羽毛、カビ由来のアレルゲン、及び花粉等の植物アレルゲンのアレルゲン性を低減化することができ、多種のアレルゲンを実質的になくすことができる。
【0060】
本発明のアレルゲン低減化組成物は、環境中のアレルゲンがハウスダスト中のダニアレルゲンや植物アレルゲンの場合に特に効果的に作用するものである。
【実施例】
【0061】
以下に、実施例、試験例により本発明を更に詳しく説明する。
(実施例1、2) アレルゲン低減化組成物
表1に示す各組成のものを混合、充分攪拌することにより、均一な溶液を得た。なお、表1に示す配合比率は、すべて重量%である。
【0062】
【表1】

【0063】
(実施例3) アレルゲン低減化マスク
N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン3重量%を含む99.5%エタノール溶液を作製し、これを不織布製使い捨てマスク(ユニ・チャーム製)、紙製使い捨てマスク(丸三産業製)の表面に噴霧処理した後、乾燥させてアレルゲン低減化マスクを作製した。また、ガーゼ製花粉対策マスク(ロート製薬製)に対しては、中間層のフィルター部分にN−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン3重量%を含む99.5%エタノール溶液を噴霧処理した後に乾燥させて、アレルゲン低減化マスクを作製した。使用感はいずれのマスクも良好であった。
【0064】
(実施例4) 香料入りアレルゲン低減化マスク
N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン3重量%、グレープフルーツフレーバー0.05重量%を含む99.5%エタノール溶液を作製し、これを不織布製使い捨てマスク(ユニ・チャーム製)の表面に噴霧処理した後に乾燥させて、アレルゲン低減化マスクを作製した。
【0065】
(実施例5) NOX吸着剤入りアレルゲン低減化マスク
N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン3重量%、アルギニン塩酸塩1重量%を含む99.5%エタノール溶液を作製し、これを不織布製使い捨てマスク(ユニ・チャーム製)の表面に噴霧処理した後に乾燥させて、アレルゲン低減化マスクを作製した。
【0066】
(実施例6) 保湿剤入りアレルゲン低減化マスク
N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン3重量%を含む99.5%エタノール溶液を作製し、これを不織布製使い捨ててマスク(ユニ・チャーム製)の表面に噴霧処理した後に乾燥させ、裏面にプロリン3重量%を含む99.5%エタノール溶液を噴霧処理して乾燥させた。
【0067】
(実施例7) アレルゲン低減化ワイパー
N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン3重量%を含む99.5%エタノール溶液を作製し、これを掃除用不織布製使い捨てワイパー(クレシア製)の表面に噴霧処理した後に乾燥させて、アレルゲン低減化ワイパーを作製した。
【0068】
(実施例8) アレルゲン低減化生地
N−アセチル−トランス−4−ヒドロキシ−L−プロリン5重量%を含む99.5%エタノール溶液を作製し、これに白色綿ブロード布又はポリエチレンテレフタレート(PET)布をパディング法により浸漬処理した後、110℃で2分間乾燥させて、アレルゲン低減化生地(布)をそれぞれ作製した。
【0069】
(試験例1) アレルゲン低減化組成物によるダニアレルゲンの低減化効果
標準ハウスダストに含まれるダニアレルゲンDerf2 約2μgを含むリン酸緩衝液(pH7.2)1mLに対し、実施例1〜2で得られた溶液を0.15mL反応させた。これらの試料について、酵素免疫測定法(ELISA)のサンドイッチ法にて、ダニアレルゲンDerf2の低減化効果を調べた。
【0070】
まず、リン酸緩衝液(pH7.4、0.1重量%NaN含有)で2μg/mLに希釈した抗Derf2モノクローナル抗体15E11を、F16 MAXISORP NUNC−IMMUNO MODULEプレート(NUNC社製)の1ウェルあたり100μLずつ添加し、4℃にて1日以上感作させた。感作後、液を捨て、ブロッキング試薬[1重量%牛血清アルブミン+リン酸緩衝液(pH7.2、0.1重量%NaN含有)]を1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、60分間反応させた。反応後、リン酸緩衝液[pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有]にてプレートを洗浄した。次に、ダニアレルゲンと前記溶液とを反応させて得られた試料を1ウェルあたり100μLずつ滴下し、37℃、60分間反応させた。
【0071】
反応後、リン酸緩衝液[pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有]にてプレートを洗浄した。ペルオキシダーゼ標識した抗Derf2モノクローナル抗体を蒸留水で200μg/mLとなるように溶解した後、これをリン酸緩衝液[pH7.2、1重量%牛血清アルブミン及び0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有]で1000倍に希釈して得られた液を、1ウェルあたり100μLずつ添加した。37℃、60分間反応させた後、先ずリン酸緩衝液[pH7.2、0.1重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート含有]で、次いで蒸留水でプレートを洗浄した。0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH6.2)13mLにオルト−フェニレンジアミンジヒドロクロライド(26mg Tablet、SIGMA CHEMICAL CO.製)と過酸化水素水13μLを加えたものを1ウェルあたり100μLずつ添加し、37℃、5分間反応させた。その後直ちに、2mol/LのHSOを50μLずつ入れて反応を停止させ、マイクロプレート用分光光度計(Bio−Rad Laboratories Inc.製)で吸光度(OD490nm)を測定した。
結果を表2に示す。
【0072】
【表2】

【0073】
(試験例2) 繊維加工品によるダニアレルゲンの低減化効果
実施例8で得られたアレルゲン低減化生地についてアレルゲン低減化試験を行った。比較例として、タンニン酸の5%水溶液(特開昭61−44821号該当品)に、白色綿ブロード布又はポリエチレンテレフタレート(PET)布をパディング法により浸漬処理した後、110℃で2分間乾燥させて得られた生地についてもアレルゲン低減化試験を行った。
【0074】
それぞれの生地(5cm×5cm)をチャック付きポリ袋に投入し、ダニアレルゲンのリン酸緩衝液(pH7.2)1mLを添加して1時間放置した。遠心分離後のこれら試料について、試験例1と同じ方法で、酵素免疫測定法(ELISA)のサンドイッチ法にて、ダニアレルゲンDerf2の低減化効果を調べた。
【0075】
また、外観を観察し、それぞれの生地の変色の有無を確認した。
結果を表3に示す。
【0076】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、Rは水素、カルボキシ、アシル又はアルコキシカルボニルを表し、Rは水素又はアシルを表し、R及びRは水素又はヒドロキシを表し、少なくとも一方がヒドロキシである)で表されるヒドロキシプロリンの誘導体、その重合体又はそれらの塩を含有することを特徴とするアレルゲン低減化組成物。
【請求項2】
前記式(I)において、Rがカルボキシ、Rがアセチル、Rがヒドロキシ、Rが水素である請求項1記載のアレルゲン低減化組成物。
【請求項3】
前記式(I)で表されるヒドロキシプロリンの誘導体、その重合体又はそれらの塩の含有率が0.01〜30重量%である請求項1又は2記載のアレルゲン低減化組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレルゲン低減化組成物を配合してなるエアゾール剤又はスプレー剤。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレルゲン低減化組成物を付着又は固着してなる繊維又は繊維製品。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のアレルゲン低減化組成物を付着又は固着してなるマスク。

【公開番号】特開2007−70543(P2007−70543A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−261034(P2005−261034)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【出願人】(397070417)シントーファイン株式会社 (31)
【出願人】(391034938)大原パラヂウム化学株式会社 (19)
【Fターム(参考)】