説明

アロファネート・イソシアヌレート化触媒を用いたポリイソシアネート組成物、該組成物の製造方法、及び該組成物を用いた二液型塗料組成物

【課題】特定の触媒を使用することで、加水分解性塩素濃度の高い有機ジイソシアネートからでも容易に低極性有機溶剤への溶解性や諸物性に優れたポリイソシアネート組成物、及びこれらを用いたリコート性や塗膜物性に優れた二液型塗料組成物を提供すること。
【解決手段】特定のアロファネート・イソシアヌレート化触媒を使用することで、加水分解性塩素による反応阻害を生じず、有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)から、1分子中にアロファネート基とイソシアヌレート基の両結合基を含有した低極性有機溶剤への溶解性に優れたポリイソシアネート組成物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロファネート・イソシアヌレート化触媒を用いたポリイソシアネート組成物、該組成物の製造方法、及び該組成物を用いた二液型塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイソシアネートを一成分として用いる二液硬化型のウレタン系塗料は、耐候性や耐摩耗性に優れた塗膜を与えることから、従来、建築物、土木構築物等の屋外基材の塗装、自動車の補修、プラスチックの塗装などに使用されている。
これらの塗料は、ポリイソシアネートの極性の高さから、一般的に、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶剤や、酢酸ブチル等のエステル系溶剤などの強溶剤、すなわち、溶解力の強い溶剤が用いられていた。
【0003】
これらの強溶剤は、臭気が強いため、近年は作業環境の改善や地球環境負荷の低減という点から敬遠される傾向にある。さらに、古い塗膜の上から新たに塗装して補修や塗り替えを行う際、補修用塗料中に高い溶解力を有する強溶剤が含まれていると、古い塗膜の膨潤や溶解を生じ、古い塗膜まで補修する必要性が生じていた。その結果、塗装作業の拡大化と煩雑化、塗装費用の増大、工期の延長などの問題を生じる場合があった。
【0004】
このような背景の中で、近年、低極性有機溶剤に溶解し易いポリイソシアネートの開発が進められている。低極性有機溶剤への希釈性に優れているポリイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートと、低極性有機溶剤への希釈性が100%以上のポリオールとを反応させたポリイソシアネート化合物が提案されている。これにより得られたポリイソシアネート化合物は、塗膜の伸展性とアニリン点が10〜70℃の範囲の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族炭化水素系の有機溶剤への溶解に優れているとされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、低極性有機溶剤に対する溶解性、及びシリケート化合物との相溶性に優れているポリイソシアネートとして、脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートと炭素数1〜20のモノアルコールとから、所定のアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比、及び特定の分子量範囲を有するポリイソシアネート化合物が提案されている。これにより得られたポリイソシアネート化合物は、塗膜の伸展性とアニリン点が10〜70℃の範囲の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族炭化水素系の有機溶剤への溶解に優れているとされている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、アニリン点が70℃を超えるような低極性有機溶剤への溶解性を向上させたポリイソシアネートとして、脂肪族ジイソシアネートと炭素数11以上のモノアルコールと触媒にオクチル酸錫を使用することによって、アロファネート基とイソシアヌレート基を同時に生成させたポリイソシアネート化合物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−198928号公報
【特許文献2】特開2008−24828号公報
【特許文献3】特開2010−150455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これまでのポリイソシアネート化合物は、低温における貯蔵安定性が低下することや、更に溶解力の低い低極性有機溶剤に対する溶解性が不十分であることが多く、塗膜の外観不良や耐候性の低下といった問題を生じる恐れがあった。
【0009】
また、有機ジイソシアネートの原料中に含有する加水分解性塩素が触媒との反応により、プロトン酸を生成し、反応阻害を生ずる恐れがあった。この反応阻害は、特にイソシアヌレート化反応に対して顕著であり、アロファネート基とイソシアヌレート基を含有するポリイソシアネート化合物を得ようとした場合、得られる生成物の殆どがアロファネート基含有ポリイソシアネート化合物であり目的物を得ることが非常に困難であった。また、両結合基を含有するポリイソシアネート化合物が得られた場合であっても、アロファネート基含有ポリイソシアネート化合物とイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート化合物の混合物であり、低極性有機溶剤に対する溶解性の低下、触媒の追加に伴う貯蔵安定性の低下、及び反応性のバラツキに伴う、反応時間の延長や触媒調整などの作業性低下といった生産性に課題を残していた。
【0010】
尚、ここで加水分解性塩素とは、アミン化合物とホスゲンとの反応により有機ジイソシアネートを得る際、有機ジイソシアネートの原料中に不純物として0.001〜1質量%程度含まれ、加水分解により塩酸を生成する物質の総称である。この加水分解性塩素の主なものは、イソシアネート基に塩酸が付加したカルバモイルクロリド化合物の塩酸塩である。
【0011】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、特定のアロファネート・イソシアヌレート化触媒を使用することで、低温における貯蔵安定性や低極性有機溶剤への溶解性に優れるポリイソシアネート組成物、及びその製造方法を提供するとともに、リコート性や塗膜物性に優れた二液型塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、検討を重ねた結果、特定の酸化処理されたカルボン酸金属塩の化合物をアロファネート・イソシアヌレート化触媒として使用することで、加水分解性塩素濃度の高い有機ジイソシアネートを原料として使用した場合であっても、アロファネート化反応、及びイソシアヌレート化反応を阻害せず、両結合基を1分子中に含有したポリイソシアネート組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0013】
本発明の概要は以下の通りである。
本発明のポリイソシアネート組成物は、一般式(1)で示されるアロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)の存在下で、有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)との反応から得られることを特徴とする。
【0014】
【化2】

【0015】
(一般式(1)のMは、錫、ジルコニウム、亜鉛より選ばれる四価の金属を示す。Rは、炭素数が1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基より選ばれる結合基を示す。)
【0016】
また、ポリイソシアネート組成物は、アロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)の存在下で、有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)とを反応させて、アロファネート基を生成し、直ちにイソシアヌレート基を生成させた結合基を含有することを特徴とする。
【0017】
また、ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネート組成物中にアロファネート基とイソシアヌレート基がモル比でアロファネート基/イソシアヌレート基=80/20〜30/70含有することを特徴とする。
【0018】
また、ポリイソシアネート組成物は、有機ジイソシアネート(B)が脂肪族又は脂環族ジイソシアネートであり、モノアルコール(C)のアルキル基の炭素数が3〜20であることを特徴とする。
【0019】
また、ポリイソシアネート組成物の製造方法は、
第1工程:有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)をウレタン化反応させてイソシアネート基末端プレポリマーIを製造する工程、
第2工程:イソシアネート基末端プレポリマーIをアロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)を用いてアロファネート化を行った後、直ちにイソシアヌレート化を生成させてイソシアネート基末端プレポリマーIIを製造する工程、
第3工程:イソシアネート基末端プレポリマーIIを反応停止剤により反応停止を行う工程、
第4工程:薄膜蒸留又は溶剤抽出によって、遊離の有機ジイソシアネート(B)の含有量を1質量%未満になるまで除去する工程、
によりポリイソシアネート組成物を製造する。
【0020】
また、二液型塗料組成物は、ポリイソシアネート組成物と、ポリオール(D)を含んでなることを特徴とする。
【0021】
また、二液型塗料組成物は、ポリイソシアネート組成物と、ポリオール(D)と、JIS K 2256に準じたアニリン点、又は混合アニリン点が5〜100℃の有機溶剤(E)を含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のアロファネート・イソシアヌレート化触媒を用いたポリイソシアネート組成物、該組成物の製造方法、及び該組成物を用いた二液型塗料組成物によれば、特定のアロファネート・イソシアヌレート化触媒を使用することで、加水分解性塩素濃度の高い有機ジイソシアネートを原料として使用した場合であっても、アロファネート化反応、及びイソシアヌレート化反応を阻害せず、両結合基を1分子中に含有したポリイソシアネート組成物が得られ、このポリイソシアネート組成物とポリオールとを含む二液型塗料組成物は、低極性有機溶剤への溶解性に優れるため、塗料を重ね塗りする際に下地層を侵食することがなく、更にリコート性や塗膜物性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のポリイソシアネート組成物に使用されるアロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)は、アロファネート化を行った後、直ちにイソシアヌレート化を行い、ポリイソシアネート組成物中にアロファネート基とイソシアヌレート基を生成する触媒であり、一般式(1)で表される化合物である。
このアロファネート・イソシアヌレート化触媒は、分子中に酸化し得ない状態の四価の金属を含むことで、加水分解性塩素の分解を抑制し、反応阻害の要因であるプロトン酸の生成を減少させる。また、この触媒は、分子中に四価の金属を含むことで、プロトン酸が高い状態であっても反応遅延を生じない。
【0024】
【化3】

【0025】
アロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)は、一般式(1)に示されるカルボン酸金属塩であり、Mとしては、錫、ジルコニウム、亜鉛から選ばれる1種類の四価の金属である。これ以外の金属の場合には、アロファネート化、若しくはイソシアヌレート化の一方の反応が選択的に進行し、アロファネート基とイソシアヌレート基の両結合基を1分子中に含有したポリイソシアネート組成物を得ることが困難である。
また、側鎖のRは、炭素数が1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基より選ばれる結合基である。これ以外の側鎖の場合には、低極性有機溶剤への触媒の溶解性が低下し、析出物を生じる恐れがある。
カルボン酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、へプチル酸、オクチル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラギジン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族カルボン酸、シクロプロピルカルボン酸、シクロブチルカルボン酸、シクロペンチルカルボン酸、シクロヘキシルカルボン酸等の飽和単環カルボン酸、ビシクロ(4.4.0)デカン−2−カルボン酸等の飽和複環カルボン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、バクセン酸、エレオステアリン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪族カルボン酸、ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族カルボン酸、安息香酸、トルイル酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。
また、アロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)は、単独であるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
アロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)の四価の金属含有量は、ヨウ素溶液滴定法に基づき算出され、全金属含有量に対して、少なくとも10質量%であることが好ましい。尚、金属含有量の測定方法は、この他に重量変化による定量(酸素の原子量を16として、酸化に伴う増加量から計算により求める)も行うことが可能である。更に、全金属含有量の定量については、誘導結合プラズマ発行分光分析(ICP分析)を用いて測定することも可能である。
アロファネート・イソシアヌレート化触媒の四価の金属含有量が、下限未満の場合には、加水分解性塩素を分解し、プロトン酸を生成させるため、反応阻害を招き、目的とする生成物が得られない恐れがある。
【0027】
ここで、ヨウ素溶液滴定法の測定方法としては、以下の操作によって全金属含有量と二価の金属含有量を求めて四価の金属含有量を算出することができる。
<全金属含有量の測定方法:A(質量%)>
(1)三角フラスコ500mlに試料を約0.5g秤量し、塩酸(1+1)を100mlと、ホスフィン酸ナトリウムを5gと、飽和塩化第二水銀溶液を1ml加える。
(2)ゲッケル弁を三角フラスコに取り付け、炭酸水素ナトリウムと、純水を加え、空気を遮断し、ホットプレート上で40分間加熱後、20℃以下に冷却する。
(3)デンプン溶液を2ml加え、0.05mol/lのヨウ素溶液で滴定し、ヨウ素デンプン反応の黒紫色に着色したときを終点とし、滴定量から全金属含有量を算出する。
<二価の金属含有量の測定方法:B(質量%)>
(1)三角フラスコ300mlに大理石の小片と、炭酸水素ナトリウムを2gと、純水を20ml加える。
(2)これに塩酸(1+3)を30ml加え、前もって秤量した試料を約0.5g加える。
(3)0.05mol/lのヨウ素溶液で滴定し、終点近くになったら、デンプン溶液を2ml加え、ヨウ素デンプン反応の黒紫色に着色したときを終点とし、滴定量から二価の金属含有量を算出する。
<四価の金属含有量の計算:C(質量%)>
C=(A−B)/A×100
(1)A:全金属含有量(質量%)
(2)B:二価の金属含有量(質量%)
(3)C:四価の金属含有量(質量%)
【0028】
また、アロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)は、一般式(2)で示されるカルボン酸金属塩を酸化処理することによって調整される。尚、酸化処理の方法としては、公知の酸化剤を用いることも可能であるが、安全性、適度な酸化能、精製が不要、及び簡便な装置で合成が可能な点から、酸素雰囲気下における加熱処理や市販のオゾン発生器を使用したオゾン処理の方法が選ばれる。
【0029】
【化4】

【0030】
(一般式(2)のMは、錫、ジルコニウム、亜鉛より選ばれる二価の金属を示す。Rは、炭素数が1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基より選ばれる結合基を示す。)
【0031】
また、カルボン酸金属塩は、一般式(2)の単座配位だけではなく、一般式(3)、又は一般式(4)に示す二座配位や単座配位と二座配位の複合の結合状態をとるものも含まれる。
【0032】
【化5】

【0033】
【化6】

【0034】
(一般式(3)、及び一般式(4)のMは、錫、ジルコニウム、亜鉛より選ばれる二価の金属を示す。Rは、炭素数が1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基より選ばれる結合基を示す。)
【0035】
本発明のポリイソシアネート組成物の生成に使用されるアロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)は、ポリイソシアネート組成物の1分子中にアロファネート基とイソシアヌレート基の両結合基を生成させるのに好適である。両結合基を1分子中に含有することによって、これまでのアロファネート基含有ポリイソシアネート化合物とイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート化合物との混合物と比較し、低温における貯蔵安定性、耐候性の向上、及び低極性有機溶剤に対する溶解性を高めることができる。
【0036】
アロファネート基とイソシアヌレート基の両結合基を1分子中に含有したポリイソシアネート組成物は、アロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)の存在下で、有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)との反応によりアロファネート基を生成し、直ちにイソシアヌレート基を生成させることによって、両結合基を1分子中に含有したポリイソシアネート組成物を得ることができる。
【0037】
ここで、使用される有機ジイソシアネート(B)としては、特に限定されるものではなく、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート等を挙げることができ、単独または2種以上を併用することができる。
【0038】
<芳香族ジイソシアネート>
芳香族ジイソシアネートの具体例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート/2,6−トリレンジイソシアネート混合物、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等を挙げることができる。
【0039】
<脂肪族ジイソシアネート>
脂肪族イソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0040】
<脂環族ジイソシアネート>
脂環族ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0041】
<芳香脂肪族ジイソシアネート>
芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、1,3−または1,4−キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、1,3−または1,4−ビス(1−イソシアナト−1−メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物、ω,ω′−ジイソシアナト−1,4−ジエチルベンゼン等を挙げることができる。
【0042】
<(C)モノアルコール>
ポリイソシアネート組成物に使用されるモノアルコール(C)としては、特に限定されるものではなく、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−トリデカノール、2−トリデカノール、2−オクチルドデカノール、ペンタデカノール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、トリメチルシクロヘキサノール等が挙げることができ、単独またはまたは2種以上を併用することができる。
これらモノアルコールの中で、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、イソアミルアルコール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,3,5−トリメチル−1−ヘキサノール、1−トリデカノール、2−トリデカノール、2−オクチルドデカノールは低極性有機溶剤に対する溶解性が特に優れており、より好ましい。アルキル基の炭素数が上限値を超えると結晶性が高まるため貯蔵安定性が低下し好ましくない。また、アルキル基以外の結合基を有する場合は、低極性有機溶剤に対する溶解性が低下し好ましくない。
【0043】
次に、ポリイソシアネート組成物の具体的な製造方法について説明する。
第1工程では、有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)を水酸基に対して、イソシアネート基が過剰量になる量を仕込んで、有機溶剤の存在下または非存在下、20〜120℃でウレタン化反応させてイソシアネート基末端プレポリマーIを製造する。ここでウレタン化反応の目安としては、中和滴定法によるイソシアネート基含有量と屈折率上昇値により完結の有無を判断する。
第2工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)を仕込み、核磁気共鳴分光法(以下NMRという)、及びゲルパーミエーション(以下GPCという)で、ウレタン基の有無、目的とするイソシアネート基含有量、及び分子量になるまで、70〜150℃にてアロファネート化を行った後、直ちにイソシアヌレート化を行ってイソシアネート基末端プレポリマーIIを製造する。
第3工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIIに反応停止剤を添加することによって、反応の停止を行う。
これら第1工程〜第3工程においては、窒素ガス、若しくは、乾燥空気気流下で反応を進行させる。
第4工程では、イソシアネート基末端プレポリマーIIを薄膜蒸留又は溶剤抽出によって、遊離の有機ジイソシアネート(B)の含有量を1質量%未満になるまで除去する。
【0044】
ここで、第1工程における「イソシアネート基が過剰量になる量」とは、原料仕込みの際、有機ジイソシアネートのイソシアネート基とモノオールの水酸基とのモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で6〜40になるように仕込むことが好ましく、更に好ましくは、R=7〜30になるように仕込むことが好ましい。下限未満の場合には、目的物よりも分子量の高いポリイソシアネート組成物の生成量が多くなり、粘度の上昇や低極性有機溶剤に対する溶解性の低下を招く恐れがある。上限を超える場合には、ポリイソシアネート組成物の前駆体であるウレタン基含有ポリイソシアネートの生成量が多くなり、平均官能基数の低下に伴う塗膜物性の低下、及び生産性や収率の低下を招く恐れがある。
【0045】
また、ウレタン化反応の反応温度は、20〜120℃であり、好ましくは50〜100℃である。尚、ウレタン化反応の際、公知のウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を選択して用いる。これらの触媒は、単独または2種以上併用することができる。
【0046】
ウレタン化反応の反応時間は、触媒の有無、種類、および温度により異なるが、一般には10時間以内、好ましくは1〜5時間で十分である。
【0047】
第2工程におけるアロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)の使用量は、有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)との合計質量に対して0.001〜1.0質量%が好ましく、0.005〜0.1質量%がより好ましい。
下限未満の場合には、アロファネート化反応とイソシアヌレート化反応が十分に進行せず、ポリイソシアネート組成物の前駆体であるウレタン基含有ポリイソシアネートの生成量が多くなり、平均官能基数の低下に伴う塗膜物性の低下、及び生産性や収率の低下を招く恐れがある。また、上限値を超える場合には、目的物よりも分子量の高いポリイソシアネート組成物の生成量が多くなり、粘度の上昇、低極性有機溶剤に対する溶解性の低下、及び反応性制御の低下を招く恐れがある。
【0048】
また、アロファネート化反応、及びイソシアヌレート化反応の反応温度は70〜150℃、好ましくは80〜130℃で反応を行う。
【0049】
また、得られるポリイソシアネート組成物中に含有するアロファネート基とイソシアヌレート基のモル比は、反応時間を適宜に調整することでアロファネート基/イソシアヌレート基を80/20〜30/70の範囲にすることが可能である。イソシアヌレート基のモル比が下限値未満の場合には、塗膜物性が低下する恐れがある。また、上限値を超える場合には、低極性有機溶剤に対する溶解性の低下や密着性の低下を招く恐れがある。
【0050】
また、ポリイソシアネート組成物の製造においては、有機溶媒等を含まずに反応を行う方法や有機溶媒の存在下で反応を行う方法が適宜選ばれる。
有機溶媒の存在下で反応を行う場合には、反応に影響を与えない有機溶媒を用いることができる。有機溶媒の具体例としては、オクタン等の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル類、ジオキサン等のエーテル類、ヨウ化メチレン、モノクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
反応で使用した有機溶媒は、第4工程における遊離の有機ジイソシアネート(B)の除去時に同時に除去される。
【0051】
第3工程におけるに反応停止剤としては、触媒の活性を失活させる作用があり、具体的には、リン酸、塩酸等の無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基等を有する有機酸およびこれらのエステル類、アシルハライド等公知の化合物が使用される。これらの反応停止剤は、単独または2種以上を併用することがでる。尚、添加時期は、反応終了後、速やかな添加が好ましい。
【0052】
また、反応停止剤の添加量としては、反応停止剤や触媒の種類によって異なるが、触媒の0.5〜10当量となるのが好ましく、0.8〜5.0当量が特に好ましい。反応停止剤が少ない場合には、得られるポリイソシアネート組成物の貯蔵安定性が低下しやすく、多すぎる場合は、ポリイソシアネート組成物が着色する場合がある。
【0053】
第4工程の精製工程では、反応混合物中に存在している遊離の未反応の有機ジイソシアネート(B)を、例えば、10〜100Paの高真空下での120〜150℃における薄膜蒸留による除去法や有機溶剤による抽出法により、残留含有率を1.0質量%以下にされる。尚、有機ジイソシアネートの残留含有率が上限値を超える場合は、臭気や貯蔵安定性の低下を招く恐れがある。
【0054】
精製して得られたポリイソシアネート組成物は、ポットライフの延長や塗料組成物の一液化を目的として、公知のブロック剤を用いてブロックイソシアネートとすることも可能である。これにより、ブロック化されたポリイソシアネートは、常温時は不活性であるが、加熱することでブロック剤が解離し、再びイソシアネート基が活性化することで、活性水素基と反応する潜在的な機能を付加することができる。
【0055】
このようにして得られたポリイソシアネート組成物は、GPCの分析から得られた数平均分子量より求められる平均官能基数が2.0〜5.0の範囲である。下限未満の場合には、架橋密度が低下し耐溶剤性や塗膜物性が低下する恐れがある。また、上限値を超える場合には低極性有機溶剤に対する溶解性の低下や密着性の低下を招く恐れがある。
【0056】
また、ポリイソシアネート組成物の数平均分子量は、500〜3000であり、好ましくは500〜2500、更に好ましくは500〜2000である。下限未満の場合には密着性の低下する恐れがあり、上限値を超えると低極性有機溶剤に対する溶解性の低下や密着性の低下を招く恐れがある。
【0057】
また、ポリイソシアネート組成物の粘度は、特に限定されるものではないが、25℃で100〜2000mPa・sであることが好ましく、更に好ましくは500〜1500mPa・sである。上限値を超えると二液塗料組成物の粘度が高くなり、取り扱い難くなる場合がある。
【0058】
また、一連の反応で得られたポリイソシアネート組成物は、ポリオール(D)と、アニリン点、又は混合アニリン点が5〜100℃の有機溶剤(E)を配合することによって、重ね塗りする際に下地層を侵食することがなく、リコート性に優れ、更に耐溶剤性や塗膜物性に優れる二液型塗料組成物となる。
【0059】
ここで、本発明の二液型塗料組成物に使用されるポリオール(D)としては、特に限定されるものではないが、イソシアネート基の反応基として活性水素基を含有する化合物であり、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、2種類以上のポリオールのエステル交換物、及びポリイソシアネートとウレタン化反応した水酸基末端プレポリマー等が好適に用いられ、これらは1種類又は2種類以上の混合物として使用することもできる。
【0060】
<ポリエステルポリオール>
ポリエステルポリオールの具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α,β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸等のジカルボン酸またはこれらの無水物等の1種類以上と、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるものを挙げることができる。また、ε−カプロラクトン、アルキル置換ε−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、アルキル置換δ−バレロラクトン等の環状エステル(いわゆるラクトン)モノマーの開環重合から得られるラクトン系ポリエステルポリオール等を挙げることができる。更に、低分子ポリオールの一部をヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、モノエタノールアミン等の低分子ポリアミンや低分子アミノアルコールに代えて得られるポリエステル−アミドポリオールを使用することもできる。
【0061】
<ポリエーテルポリオール>
また、ポリエーテルポリオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、またはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、トルエンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン等の低分子ポリアミン類等のような活性水素基を2個以上、好ましくは2〜3個有する化合物を開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のようなアルキレンオキサイド類を付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオール、或いはメチルグリシジルエーテル等のアルキルグリシジルエーテル類、フェニルグリシジルエーテル等のアリールグリシジルエーテル類、テトラヒドロフラン等の環状エーテルモノマーを開環重合することで得られるポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0062】
<ポリカーボネートポリオール>
また、ポリカーボネートポリオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオールの1種類以上と、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、ジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジアントリルカーボネート、ジフェナントリルカーボネート、ジインダニルカーボネート、テトラヒドロナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート類との脱アルコール反応や脱フェノール反応から得られるものを挙げることができる。
また、ポリカーボネートポリオールとポリエステルポリオールと低分子ポリオールのエステル交換反応により得られたポリオールも好適に用いることができる。
【0063】
<ポリオレフィンポリオール>
また、ポリオレフィンポリオールの具体例としては、水酸基を2個以上有するポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、水素添加ポリイソプレン等を挙げることができる。
【0064】
<アクリルポリオール>
アクリルポリオールとしては、アクリル酸エステルまたは/及びメタクリル酸エステル〔以下(メタ)アクリル酸エステルという〕と、反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有するアクリル酸ヒドロキシ化合物または/及びメタクリル酸ヒドロキシ化合物〔以下(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物という〕と、重合開始剤とを熱エネルギーや紫外線または電子線などの光エネルギー等を使用し、アクリルモノマーを共重合したものを挙げることができる。
【0065】
<(メタ)アクリル酸エステル>
(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、炭素数1〜20のアルキルエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸の脂環属アルコールとのエステル;(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独または2種類以上組み合わせたものを挙げることができる。
【0066】
<(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物>
(メタ)アクリル酸ヒドロキシ化合物の具体例としては、ポリイソシアネート(B)との反応点となりうる少なくとも分子内に1個以上の水酸基を有しており、具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのアクリル酸ヒドロキシ化合物が挙げられる。また、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピルメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレートなどのメタクリル酸ヒドロキシ化合物が挙げられる。これらアクリル酸ヒドロキシ化合物または/及びメタクリル酸ヒドロキシ化合物は、単独または2種以上を組み合わせのものを挙げることができる。
【0067】
<シリコーンポリオール>
シリコーンポリオールの具体例としては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどを重合したビニル基含有シリコーン化合物、及び分子中に少なくとも1個の末端水酸基を有する、α,ω−ジヒドロキシポリジメチルシロキサン、α,ω−ジヒドロキシポリジフェニルシロキサン等のポリシロキサンを挙げることができる。
【0068】
<ヒマシ油系ポリオール>
ヒマシ油系ポリオールの具体例としては、ヒマシ油脂肪酸とポリオールとの反応により得られる線状または分岐状ポリエステルポリオールが挙げられる。また、脱水ヒマシ油、一部分を脱水した部分脱水ヒマシ油、水素を付加させた水添ヒマシ油も使用することができる。
【0069】
<フッ素系ポリオール>
フッ素系ポリオールの具体例としては、含フッ素モノマーとヒドロキシ基を有するモノマーとを必須成分として共重合反応により得られる線状または分岐状のポリオールである。ここで、含フッ素モノマーとしては、フルオロオレフィンであることが好ましく、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロメチルトリフルオロエチレンが挙げられる。また、ヒドロキシル基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジオールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル等のヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルクロトン酸ビニル等のヒドロキシル基含有カルボン酸ビニル又はアリルエステル等のヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0070】
また、ポリオール(D)は、1分子中の活性水素基数(平均官能基数)が1.9〜4.0であることが好ましい。活性水素基数が下限値未満の場合には、塗膜物性が低下する恐れがある。また、上限値を超える場合には、密着性が低下する恐れがある。
【0071】
また、ポリオール(D)の数平均分子量は、750〜50000の範囲にあることが好ましい。下限値未満の場合には、下限未満の場合には密着性の低下する恐れがあり、上限値を超えると低極性有機溶剤に対する溶解性の低下や密着性の低下を招く恐れがある。
【0072】
また、二液型塗料組成物のポリイソシアネート組成物と、ポリオール(D)との配合の割合は、特に厳密に限定するものではないが、イソシアネート組成物中のイソシアネート基とポリオール中の水酸基のモル比が、R=イソシアネート基/水酸基で0.5〜1.5となるように配合することが好ましい。下限値未満の場合には水酸基が過剰になり、密着性の低下を招く恐れがある。また、架橋密度が低下し耐久性の低下や塗膜の機械的強度が低下する恐れがある。上限値を超える場合にはイソシアネート基が過剰になり、空気中の水分と反応し、塗膜の膨れやこれに伴う密着性の低下を生じる恐れがある。
【0073】
また、希釈溶剤として使用する有機溶剤(E)としては、アニリン点、又は混合アニリン点が5〜100℃の範囲にある有機溶剤であり、塗料を重ね塗りする際に下地層を侵食することがなく、良好なリコート性を得るためには、好ましくは、アニリン点、又は混合アニリン点が5〜90℃の範囲がより好ましく、アニリン点、又は混合アニリン点が5〜85℃の範囲であることが更に好ましい。下限値未満の場合には、リコート性の低下の他に有機溶剤の臭気も強くなり、作業環境の悪化が生じる恐れがある。
【0074】
ここで、「アニリン点」とは、等容量のアニリンと試料(有機溶剤)とが均一な混合溶液として存在する最低温度のことである。アニリン点、又は混合アニリン点はJIS K 2256の「石油製品−アニリン点及び混合アニリン点試験方法」に記載の試験方法に準じて測定することができる。
【0075】
<有機溶剤(E)>
有機溶剤(E)の具体例としては、ソルベッソ100(エクソンモービル社製、混合アニリン点:14℃)、ソルベッソ150(エクソンモービル社製、混合アニリン点:18℃)、スワゾール100(丸善石油化学社製、混合アニリン点:25℃)、スワゾール200(丸善石油化学社製、混合アニリン点:24℃)、スワゾール1500(丸善石油化学社製、混合アニリン点:17℃)、スワゾール1800(丸善石油化学社製、混合アニリン点:16℃)、スワゾール1000(丸善石油化学社製、混合アニリン点:13℃)、ベガゾールARO−80(エクソンモービル社製、混合アニリン点:25℃)、ベガゾールR−100(エクソンモービル社製、混合アニリン点:14℃)、出光イブゾール150(出光興産社製、混合アニリン点:15℃)、出光イブゾール100(出光興産社製、混合アニリン点:14℃)、メチルシクロヘキサン(アニリン点:40℃)、エチルシクロヘキサン(アニリン点:44℃)、ミネラルスピリット(ミネラルターペン、アニリン点:56℃)、テレビン油(アニリン点:20℃)等の他に、一般に石油系炭化水素として市販されているHAWS(シェルジャパン社製、アニリン点:17℃)、エッソナフサNo.6(エクソンモービル社製、アニリン点:43℃)、LAWS(シェルジャパン社製、アニリン点:44℃)、ペガゾール3040(エクソンモービル社製、アニリン点:55℃)、Aソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点:45℃)、クレンゾル(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点:64℃)、ミネラルスピリットA(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点:43℃)、ハイアロム2S(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点:44℃)、LAWS(シェルケミカルズジャパン社製、アニリン点:44℃)、ペガソール3040(エクソンモービル社製、アニリン点:55℃)、Aソルベント(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点:45℃)、クレンゾル(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点:64℃)、ミネラルスピリットA(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点:43℃)、ハイアロム2S(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点4:4℃)、リニアレン10(出光興産社製、αオレフィン系炭化水素、アニリン点:44℃)、リニアレン12(出光興産社製、αオレフィン系炭化水素、アニリン点:54℃)、エクソールD30(エクソンモービル社製、ナフテン系溶剤、アニリン点:63℃)、リカソルブ900(新日本理化社製、水添C9溶剤、アニリン点:53℃)、リカソルブ910B(新日本理化社製、水添C9溶剤、アニリン点:40℃)、リカソルブ1000(新日本理化社製、水添C9溶剤、アニリン点:55℃)、IPソルベント1620(出光興産社製、アニリン点:81℃)、IPソルベント1016(出光興産社製、アニリン点:72℃)、IPソルベント2028(出光興産社製、アニリン点:89℃)、IPソルベント2835(出光興産社製、アニリン点:104℃)、シェルゾールS(シェルケミカルズジャパン社製、アニリン点:78℃)、アイソパーG(エクソンモービル社製、アニリン点:78℃)、日石アイソゾール300(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点:80℃)、ノルマルパラフィンSL(JX日鉱日石エネルギー社製、アニリン点:80℃)、マルカゾールR(丸善石油化学社製、アニリン点:88℃)等が挙げられる。 これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0076】
これら有機溶剤に芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系の溶剤を含有し、アニリン点、又は混合アニリン点が5〜100℃の範囲内に入っていれば溶剤として使用することも可能である。
【0077】
また、二液型塗料組成物におけるポリイソシアネート組成物と、アニリン点、又は混合アニリン点が5〜100℃の範囲の有機溶剤(E)との配合割合は、特に限定されるものではないが、本発明においては、質量比でポリイソシアネート組成物/有機溶剤(E)=90/10〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましい。
【0078】
また、二液型塗料組成物は、ポットライフ、硬化条件、及び作業条件等を考慮し、適宜に公知のウレタン化触媒を用いることができる。具体的には、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の有機金属化合物や、トリエチレンジアミンやトリエチルアミン等の有機アミンやその塩を選択して用いる。これらの触媒は、単独または2種以上併用することができる。
【0079】
また、二液型塗料組成物の硬化条件としては、触媒等により変化するため、特に限定されるものではないが、硬化温度が−5〜120℃であり、湿度が10〜95%RHであり、養生時間が0.5〜168時間である。
【0080】
本発明によって得られた二液型塗料組成物には、必要に応じて、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等の酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、溶剤、難燃剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、可塑剤、充填材、帯電防止剤、分散剤、触媒、貯蔵安定剤、界面活性剤、レベリング剤等の添加剤を適宜配合することができる。
【0081】
また、本発明によって得られた二液型塗料組成物は、スプレー、刷毛、浸漬、コーターなどの公知の方法により被着体の表面上に塗布され、塗膜を形成する。
ここで被着体は、特に限定されるものではなく、ステンレス、リン酸処理鋼、亜鉛鋼、鉄、銅、アルミニウム、真鍮、ガラス、スレート、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネート−ABS樹脂、6−ナイロン樹脂、6,6−ナイロン樹脂、MXD6ナイロン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリアセタール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、NBR樹脂、クロロプレン樹脂、SBR樹脂、SEBS樹脂などの素材で成形された被着体、コロナ放電処理やその他表面処理を施されたポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、または前記被着体表面に中間形成となりうる塗膜層が形成された被着体を用いることが出来る。
【0082】
被着体表層に形成される塗膜の膜厚は、リコート性や耐久性に優れるため、被着体に少なくとも10μmの膜厚を形成すれば良い。膜厚が10μm未満である場合には耐久性が低下し、衝撃により塗膜の破れ等を生ずる恐れがある。
【0083】
このように特定の酸化処理されたカルボン酸金属塩の化合物をアロファネート・イソシアヌレート化触媒として使用することで、加水分解性塩素濃度の高い有機ジイソシアネートを原料として使用した場合であっても、アロファネート化反応、及びイソシアヌレート化反応を阻害せず、両結合基を1分子中に含有したポリイソシアネート組成物を得ることができる。
また、このポリイソシアネート組成物を用いた二液型塗料組成物は、低極性有機溶剤への溶解性に優れるため、被着体の腐食を抑制する。つまり、外壁等の塗り替え作業の際、古い塗膜の除去やシーリング剤の塗布なしに、直接本発明の二液型組成物を塗布した場合、塗膜の浮きや膨れ等の不具合を低減することができる。更に、本発明のポリイソシアネート組成物は、非常に低粘度であるため、二液型塗料組成物とした場合、高固形分化が可能となり、有機溶剤の削減ができる。
以上のように、本発明のポリイソシアネート組成物、及び二液型塗料組成物は、建築用塗料、重防食用塗料、自動車用塗料、家電用塗料、パソコンや携帯電話等の情報機器用塗料に用いることができ、特に塗り替え用途の建築外装塗料や重防食用塗料で好適に用いられる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
<アロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)の合成>
<合成例1>
攪拌機、温度計、冷却管、及びガス導入管を備えた容量300ミリリットルの四つ口フラスコに、オクチル酸亜鉛(II)(商品名:ニッカオクチックス亜鉛、二価/四価=98/2、日本化学産業社製)を100g仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。80℃に達した後、高純度酸素ガスを流量20ml/minで流入し、80℃で36時間保持することによって、アロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−1を得た。
アロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−1は、ヨウ素溶液滴定法の測定方法による全亜鉛含有量と二価の亜鉛含有量から四価の亜鉛含有量を算出したところ、質量比で二価/四価=57/43であった。また、外観は淡黄色液体、色数は30APHA、25℃の粘度は300mPa・s、濁度は0であった。
【0086】
<合成例2>
攪拌機、温度計、冷却管、及びガス導入管を備えた容量300ミリリットルの四つ口フラスコに、オクチル酸錫(II)(商品名:ニッカオクチックス錫、二価/四価=97/3、日本化学産業社製)を100g仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。80℃に達した後、高純度酸素ガスを流量20ml/minで流入し、80℃で36時間保持することによって、アロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2を得た。
アロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2は、ヨウ素溶液滴定法の測定方法による全錫含有量と二価の錫含有量から四価の錫含有量を算出したところ、質量比で二価/四価=60/40であった。また、外観は淡黄色液体、色数は90APHA、25℃の粘度は390mPa・s、濁度は0であった。
【0087】
<合成例3>
攪拌機、温度計、冷却管、及びガス導入管を備えた容量300ミリリットルの四つ口フラスコに、オクチル酸ジルコニウム(II)(商品名:ニッカオクチックスジルコニウム、二価/四価=99/1、日本化学産業社製)を100g、ミネラルスピリットA(JX日鉱日石エネルギー社製)を100g仕込み、撹拌しながら80℃に昇温した。均一に溶解し80℃に達した後、高純度酸素ガスを流量20ml/minで流入し、80℃で42時間保持することによって、アロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−3を得た。
アロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−3は、ヨウ素溶液滴定法の測定方法による全ジルコニウム含有量と二価のジルコニウム含有量から四価のジルコニウム含有量を算出したところ、質量比で二価/四価=59/41であった。また、外観は淡黄色液体、色数は90APHA、25℃の粘度は60mPa・s、濁度は0であった。
【0088】
アロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−1〜Cat−3の性状を表1に示す。
【0089】

【表1】

【0090】
<ポリイソシアネート組成物の合成>
<実施例1>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、ヘキサメチレンジイソシアネートHDI−1(NCO含有量:49.9質量%、加水分解性塩素含有量:221.5ppm)を880gと、トリデカノール(協和発酵ケミカル社製)を120g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−1を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が50/50になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508(城北化学工業社製、酸性リン酸エステル)を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−1を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−1はNCO含有量が16.2質量%、外観は透明液体、数平均分子量は860、25℃の粘度は700mPa・s、遊離HDI含有量は0.2質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は49モル%、ヌレート基含有量は51モル%、ウレタン基含有量は0モル%であった。
【0091】
<加水分解性塩素の測定方法>
加水分解性塩素の測定方法は、JIS K1603−3の「プラスチック−ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法−第3部:加水分解性塩素の求め方」に準じ、下記の硝酸銀標準溶液による電位差滴定により求められる。
(1)三角フラスコ500mlに試料を約10g秤量し、メタノール50mlを加え撹拌する。三角フラスコ側面に結晶が析出し始めたら、蒸留水を200ml加え、30分間煮沸する。
(2)煮沸完了後、氷浴中で約10℃に冷却し、硝酸を10滴加え、硝酸銀標準液で電位差滴定を行う。
<加水分解性塩素含有量の計算:H(%)>
加水分解性塩素は、次式のように質量%で算出し、その後、適宜単位に変換する。
H=3.55×V×c/m
(1)H:加水分解性塩素(質量%)
(2)V:試料の滴定に要した硝酸銀溶液量(ml)
(3)c:硝酸銀溶液の濃度(mol/l)
(4)m:試料の質量(g)
(5)3.55:塩素の原子量(35.5g/mol)とmgからgへの変換係数(1000)、及び質量%への変換係数(100)とを組み合せた係数(g/mol)。
【0092】
<NMR:アロファネート基・ヌレート基・ウレタン基含有量の測定>
(1)測定装置:ECX400M(日本電子社製、1H−NMR)
(2)測定温度:23℃
(3)試料濃度:0.1g/1ml
(4)積算回数:16
(5)緩和時間:5秒
(6)溶剤:重水素ジメチルスルホキシド
(7)化学シフト基準:重水素ジメチルスルホキシド中のメチル基の水素原子シグナル(2.5ppm)
(8)評価方法:8.5ppm付近のアロファネート基の窒素原子に結合した水素原子のシグナルと、3.7ppm付近のヌレート基の窒素原子に隣接したメチレン基の水素原子のシグナルと7.0ppm付近のウレタン基の窒素原子に結合した水素原子のシグナルの面積比から結合基の含有量を測定。
【0093】
<GPC:分子量の測定>
(1)測定器:HLC−8220(東ソー社製)
(2)カラム:TSKgel(東ソー社製)
・G3000H−XL
・G2500H−XL
・G2000H−XL、G1000H−XL
(3)キャリア:THF(テトラヒドロフラン)
(4)検出器:RI(屈折率)検出器
(5)温度:40℃
(6)流速:1.000ml/min
(7)検量線:標準ポリスチレン(東ソー社製)
・F−80(分子量:7.06×10、分子量分布:1.05)
・F−20(分子量:1.90×10、分子量分布:1.05)
・F−10(分子量:9.64×10、分子量分布:1.01)
・F−2(分子量:1.81×10、分子量分布:1.01)
・F−1(分子量:1.02×10、分子量分布:1.02)
・A−5000(分子量:5.97×10、分子量分布:1.02)
・A−2500(分子量:2.63×10、分子量分布:1.05)
・A−500(分子量:5.0×10、分子量分布:1.14)
(8)サンプル溶液濃度:0.5%THF溶液
【0094】
<実施例2>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を880gと、トリデカノールを120g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が50/50になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−2を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−2はNCO含有量が16.4質量%、外観は透明液体、数平均分子量は850、25℃の粘度は720mPa・s、遊離HDI含有量は0.2質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は50モル%、ヌレート基含有量は50モル%、ウレタン基含有量は0モル%であった。
【0095】
<実施例3>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を880gと、トリデカノールを120g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−3を0.8g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が50/50になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−3を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−3はNCO含有量が16.5質量%、外観は透明液体、数平均分子量は860、25℃の粘度は710mPa・s、遊離HDI含有量は0.4質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は48モル%、ヌレート基含有量は52モル%、ウレタン基含有量は0モル%であった。
【0096】
<実施例4>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を950gと、2−プロパノール(IPAという)を50g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が75/25になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−4を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−4はNCO含有量が19.3質量%、外観は透明液体、数平均分子量は580、25℃の粘度は370mPa・s、遊離HDI含有量は0.1質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は75モル%、ヌレート基含有量は24モル%、ウレタン基含有量は1モル%であった。
【0097】
<実施例5>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を910gと、2−エチルヘキサノールを90g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が75/25になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−5を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−5はNCO含有量が17.4質量%、外観は透明液体、数平均分子量は670、25℃の粘度は380mPa・s、遊離HDI含有量は0.1質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は78モル%、ヌレート基含有量は22モル%、ウレタン基含有量は0モル%であった。
【0098】
<実施例6>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を880gと、トリデカノールを120g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が75/25になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−6を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−6はNCO含有量が15.8質量%、外観は透明液体、数平均分子量は740、25℃の粘度は420mPa・s、遊離HDI含有量は0.1質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は76モル%、ヌレート基含有量は24モル%、ウレタン基含有量は0モル%であった。
【0099】
<実施例7>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を850gと、2−オクチルドデカノール(商品名:カルコール200GD、花王社製)を150g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が75/25になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−7を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−7はNCO含有量が15.2質量%、外観は透明液体、数平均分子量は960、25℃の粘度は460mPa・s、遊離HDI含有量は0.2質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は76モル%、ヌレート基含有量は24モル%、ウレタン基含有量は0モル%であった。
【0100】
<実施例8>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を880gと、トリデカノールを120g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が85/15になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−8を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−8はNCO含有量が15.2質量%、外観は透明液体、数平均分子量は700、25℃の粘度は330mPa・s、遊離HDI含有量は0.1質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は82モル%、ヌレート基含有量は18モル%、ウレタン基含有量は0モル%であった。
【0101】
<実施例9>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を980gと、トリデカノールを20g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が30/70になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−9を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−9はNCO含有量が21.0質量%、外観は透明液体、数平均分子量は600、25℃の粘度は360mPa・s、遊離HDI含有量は0.1質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は35モル%、ヌレート基含有量は65モル%、ウレタン基含有量は0モル%であった。
【0102】
<実施例10>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を980gと、トリデカノールを20g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにアロファネート・イソシアヌレート化触媒Cat−2を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が20/80になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.5g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−10を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−10はNCO含有量が21.4質量%、外観は透明液体、数平均分子量は620、25℃の粘度は400mPa・s、遊離HDI含有量は0.2質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は23モル%、ヌレート基含有量は77モル%、ウレタン基含有量は0モル%であった。
【0103】
<比較例1>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を880gと、トリデカノールを120g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにオクチル酸亜鉛(II)(商品名:ニッカオクチックス亜鉛、二価/四価=98/2、日本化学産業社製)を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が50/50になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が50/50になる前に反応が進行しなくなったため、JP−508を0.5g添加し、反応液を室温に冷却してイソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−11を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−11はNCO含有量が14.5質量%、外観は透明液体、数平均分子量は620、25℃の粘度は230mPa・s、遊離HDI含有量は0.2質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は92モル%、ヌレート基含有量は7モル%、ウレタン基含有量は1モル%であった。
【0104】
<比較例2>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を880gと、トリデカノールを120g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにオクチル酸錫(II)(商品名:ニッカオクチックス錫、二価/四価=97/3、日本化学産業社製)を0.4g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が50/50になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が50/50になる前に反応が進行しなくなったため、JP−508を0.5g添加し、反応液を室温に冷却してイソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−12を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−12はNCO含有量が14.8質量%、外観は透明液体、数平均分子量は620、25℃の粘度は290mPa・s、遊離HDI含有量は0.2質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は87モル%、ヌレート基含有量は12モル%、ウレタン基含有量は1モル%であった。
【0105】
<比較例3>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を880gと、トリデカノールを120g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにミネラルスピリットAで固形分50質量%に調整したオクチル酸ジルコニウム(II)(商品名:ニッカオクチックスジルコニウム、二価/四価=99/1、日本化学産業社製)の溶液を0.8g添加し、110℃でアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が50/50になるまでアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応を行った。その後、アロファネート基/イソシアヌレート基のモル比が50/50になる前に反応が進行しなくなったため、JP−508を0.5g添加し、反応液を室温に冷却してイソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−13を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−13はNCO含有量が14.4質量%、外観は透明液体、数平均分子量は600、25℃の粘度は150mPa・s、遊離HDI含有量は0.2質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は95モル%、ヌレート基含有量は3モル%、ウレタン基含有量は1モル%であった。
【0106】
<比較例4>
攪拌機、温度計、冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、HDI−1を880gと、トリデカノールを120g仕込み、窒素気流下、撹拌しながら85℃に加熱し、3時間ウレタン化反応を行うことでイソシアネート基末端プレポリマーIを得た。その後、このイソシアネート基末端プレポリマーIにオクチル酸錫(II)(二価/四価=97/3)を0.2g添加し、110℃でアロファネート化反応を行った。その後、60℃まで冷却し、イソシアヌレート化触媒である2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムオクチル酸塩(商品名:DABCO TMR、エアープロダクツジャパン社製)を0.2g添加し、60℃でイソシアヌレート化反応を行った。その後、JP−508を0.25g添加し、停止反応を行い、反応液を室温に冷却し、イソシアネート末端プレポリマーIIを得た。このイソシアネート末端プレポリマーIIを130℃×0.04kPaで薄膜蒸留をすることで未反応のHDIを除去し、精製したポリイソシアネート組成物PI−14を得た。
ポリイソシアネート組成物PI−14はNCO含有量が16.5質量%、外観は透明液体、数平均分子量は860、25℃の粘度は720mPa・s、遊離HDI含有量は0.2質量%であった。また、全結合基におけるアロファネート基含有量は47モル%、ヌレート基含有量は52モル%、ウレタン基含有量は1モル%であった。
【0107】
ポリイソシアネート組成物PI−1〜ポリイソシアネート組成物PI−14に使用した原料の配合量と性状を表2〜表5に示す。
【0108】

【表2】

【0109】
表2に用いられる原料の略記号は以下の通り。
(1)HDI−1:ヘキサメチレンジイシシアネート(加水分解性塩素含有量:221.5ppm)
(2)オクチル酸ジルコニウム溶液:ミネラルスピリットAの固形分50質量%溶液
(3)DABCO TMR:2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムオクチル酸塩
(4)JP−508:酸性リン酸エステル
【0110】

【表3】

【0111】
上記表3に示すように、実施例1〜実施例3に係るポリイソシアネート組成物は、加水分解性塩素の影響を受けず、効率的にアロファネート化反応とイソシアヌレート化反応が進行し、アロファネート基とイソシアヌレート基の両結合基が1分子中に存在するポリイソシアネート組成物が得られる。このポリイソシアネート変性体は、貯蔵安定性やトレランスに優れている。
これに対して、比較例1〜比較例3に係るポリイソシアネート組成物は、加水分解性塩素の影響でイソシアヌレート化反応がほとんど進行しなかった。また、比較例4のポリイソシアネート組成物は、イソシアヌレート化反応が進行し、目的の組成比にすることが可能であったが、アロファネート基含有ポリイソシアネート変性体とイソシアヌレート基含有ポリイソシアネート変性体の混合物になり、貯蔵安定性やトレランスで劣っていた。
【0112】

【表4】

【0113】
表4に用いられる原料の略記号は以下の通り。
(1)HDI−1:ヘキサメチレンジイシシアネート(加水分解性塩素含有量:221.5ppm)
(2)IPA:2−プロパノール
(3)カルコール200GD:2−オクチルドデカノール
(4)JP−508:酸性リン酸エステル
【0114】

【表5】

【0115】
上記表5に示すように、実施例4〜実施例10に係るポリイソシアネート組成物は、モノアルコールのアルキル鎖の種類によらず、貯蔵安定性に優れるものであった。また、任意のアロファネート基/イソシアヌレート基のモル比は、反応阻害を受けないため、調整が容易であった。
【0116】
<二液塗料組成物の調整>
配合量は、表6、表8、及び表10に示すように、ポリオール(D)と、得られたポリイソシアネート組成物とをR(イソシアネート基/水酸基のモル比)=1になるように配合し、更に顔料として酸化チタン(商品名:CR−90、結晶構造:ルチル型、石原産業社製)、及び有機溶剤(E)で固形分が50%になるように配合し、ホモミキサーを使用し300rpmで3分間撹拌して二液塗料組成物を調整した。ここで、ポリオール(D)には、アクリルポリオール(商品名:アクリディックHU−596、水酸基価:30mgKOH/g、DIC社製)、ポリエステルポリオール(商品名:N−131、水酸基価:150mgKOH/g、日本ポリウレタン工業社製)、及びフッ素系ポリオール(商品名:ルミフロンLF800、水酸基価:22mgKOH/g、旭硝子社製)を使用し、有機溶剤(E)には、ミネラルスピリットA(JX日鉱日石エネルギー社製)、HAWS(シェルケミカルズ社製)、酢酸エチル(昭和電工社製)を使用し調整を行った。
【0117】
<塗装方法及び試験片の調整>
調整した二液塗料組成物を、それぞれメチルエチルケトンで脱脂した鋼板(JIS G3141、商品名:SPCC−SB、処理の有無:PF−1077、日本テストパネル工業社製)にアプリケーターを用い、任意の膜厚になるように塗布した。その後、温度60℃の乾燥機中で1時間加熱処理を行い、続いて温度23℃、相対湿度50%の環境下で7日間養生し、コーティング塗膜を得た。
【0118】

【表6】

【0119】
表6に用いられる原料の略記号は以下の通り。
(1)アクリディックHU−596:アクリルポリオール(水酸基価:30mgKOH/g)
(2)CR−90:酸化チタン
【0120】

【表7】

【0121】
上記表7に示すように、実施例11〜実施例13に係る二液型塗料組成物は、鉛筆硬度が十分に高く、耐候性に優れ、また、その他の諸物性にも優れていた。
これに対して、比較例5〜比較例7に係る二液型塗料組成物は、鉛筆硬度や耐候性に劣るものであった。また、比較例8の二液型塗料組成物は、耐候性が若干劣るものであった。
【0122】

【表8】

【0123】
表8に用いられる原料の略記号は以下の通り。
(1)アクリディックHU−596:アクリルポリオール(水酸基価:30mgKOH/g)
(2)CR−90:酸化チタン
【0124】

【表9】

【0125】
上記表9に示すように、実施例14〜実施例20に係る二液型塗料組成物は、鉛筆硬度が十分に高く、耐候性に優れ、また、その他の諸物性にも優れていた。
【0126】

【表10】

【0127】
表10に用いられる原料の略記号は以下の通り。
(1)アクリディックHU−596:アクリルポリオール(水酸基価:30mgKOH/g)
(2)ニッポラン131:ポリエステルポリオール(水酸基価:150mgKOH/g)
(3)ルミフロンLF800:フッ素系ポリオール(水酸基価:22mgKOH/g)
【0128】

【表11】

【0129】
上記表11に示すように、実施例21〜実施例25に係る二液型塗料組成物は、膜厚に依存せず、耐候性等の諸物性に優れていた。
これに対して、有機溶剤を酢酸エチルに変更した比較例9の二液型塗料組成物は、リコート性に劣るものであった。
【0130】
(1)評価試験1:
<貯蔵安定性>
得られたポリイソシアネート組成物を−10℃、及び25℃に168時間放置し、濁り、浮遊物、及び析出物の有無を目視で評価した。
【0131】
<評価基準>
・濁り、浮遊物、及び析出物が認められない:合格(評価:○)
・濁りが認められる:合格(評価:△)
・析出物が認められる:不合格(評価:×)
【0132】
(2)評価試験2:
<トレランス>
得られたポリイソシアネート組成物を各1g採取し、それぞれにアニリン点の異なるHAWS(シェルケミカルズ)、ミネラルスピリットA(JX日鉱日石エネルギー社製)、及びIPソルベント2028(出光興産社製)を加えていき、濁りを生じた滴定量を終点として算出した。
【0133】
<計算式>
T=L/S
・T:トレランス(倍)
・L:有機溶剤の滴定量(g)
・S:サンプル量(g)
【0134】
(3)評価試験3:
<光沢度>
実施例25〜実施例44、及び比較例7〜比較例11で得られたコーティング塗膜をJIS Z8741に準じて、ヘイズ−グロスリフレクトメーターで60°における光沢度を測定した。
【0135】
<評価基準>
・80%以上:合格(評価:○)
・60%以上〜80未満:合格(評価:△)
・60%未満:不合格(評価:×)
【0136】
(4)評価試験4:
<鉛筆硬度>
JIS K5600−5−4:1999に準じて、塗膜が破れない鉛筆の硬度を測定した。
【0137】
(5)評価試験5:
<耐屈曲性>
JIS K5600−5−1:1999の耐屈曲性試験に準じ、直径2mmの円筒形マンドレルを使用し、円筒形マンドレルにより折り曲げられた場合の塗膜の割れ、及び鋼板からの剥れの有無を評価した。
【0138】
<評価基準>
・塗膜の割れ及び剥れが見られない:合格(評価:○)
・塗膜の割れ及び剥れを生じている:不合格(評価:×)
【0139】
(6)評価試験6:
<耐カッピング性>
JIS K5600−5−2:1999の耐カッピング試験に準じ、押し込みによって、部分変形を受けた場合の塗膜の割れ、及び鋼板からの剥れるまでの押し込み深さ(mm)を測定した。
【0140】
(7)評価試験7:
<耐おもり落下性>
JIS K5600−5−3:1999の耐屈曲性試験に準じ、直径10.3mm、質量0.5kgのおもりを使用し、塗膜の割れ、及び剥れが生じる最低の落下高さ(cm)を測定した。
【0141】
(8)評価試験8:
<密着性>
JIS K5600−5−6:1999の碁盤目テープ剥離試験に準じ、塗膜に1mm方形の碁盤目(10×10)の切れ目を入れ、テープによる剥離試験を行って残留枚数を測定した。
【0142】
(9)評価試験9:
<耐候性>
実施例25〜実施例44、及び比較例7〜比較例11で得られたコーティング塗膜を下記の条件で耐候性の加速試験を行った。
・試験装置:QUV(Q−LAB社製)
・ランプ:EL−313
・照度:0.59w/m
・λmax:313nm
・1サイクル:12時間〔UV照射:8時間(温度70℃)、結露:4時間(温度50℃)〕
・試験時間:964時間
【0143】
<評価基準>
JIS Z8741に準じて、ヘイズ−グロスリフレクトメーターで60°における光沢度を測定し、光沢保持率を算出した。光沢保持率は下式により求めた。
光沢保持率(%)=100×耐候試験後光沢度÷初期光沢度
・80%以上:合格(評価:○)
・70%以上〜80%未満:合格(評価:△)
・70%未満:不合格(評価:×)
【0144】
(10)評価試験10:
<リコート性>
鋼板上に実施例12の二液塗料組成物(アクリディックHU−596/ポリイソシアネート組成物PI−2)を50μm形成したものを被着体とした。被着体の上層に調整した二液塗料組成物を50μmの膜厚になるように塗布し、塗膜の膨潤、及び皺の有無を目視にて確認した。
【0145】
<評価基準>
・塗膜の外観に変化が見られない:合格(評価:○)
・塗膜の膨潤及び皺を生じている:不合格(評価:×)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示されるアロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)の存在下で、有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)との反応から得られることを特徴とするポリイソシアネート組成物。

【化1】

(一般式(1)のMは、錫、ジルコニウム、亜鉛より選ばれる四価の金属を示す。Rは、炭素数が1〜20のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基より選ばれる結合基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載のアロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)の存在下で、有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)とを反応させて、アロファネート基を生成し、直ちにイソシアヌレート基を生成させた結合基を含有することを特徴とするポリイソシアネート組成物。
【請求項3】
ポリイソシアネート組成物中にアロファネート基とイソシアヌレート基がモル比でアロファネート基/イソシアヌレート基=80/20〜30/70含有することを特徴とする請求項1、及び請求項2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
有機ジイソシアネート(B)が脂肪族又は脂環族ジイソシアネートであり、モノアルコール(C)のアルキル基の炭素数が3〜20であることを特徴とする請求項1、及び請求項2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項5】
ポリイソシアネート組成物の製造方法であって、
第1工程:有機ジイソシアネート(B)と、モノアルコール(C)をウレタン化反応させてイソシアネート基末端プレポリマーIを製造する工程、
第2工程:イソシアネート基末端プレポリマーIをアロファネート・イソシアヌレート化触媒(A)を用いてアロファネート化を行った後、直ちにイソシアヌレート化を生成させてイソシアネート基末端プレポリマーIIを製造する工程、
第3工程:イソシアネート基末端プレポリマーIIを反応停止剤により反応停止を行う工程、
第4工程:薄膜蒸留又は溶剤抽出によって、遊離の有機ジイソシアネート(B)の含有量を1質量%未満になるまで除去する工程、
によりポリイソシアネート組成物を製造する方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリイソシアネート組成物と、ポリオール(D)を含んでなることを特徴とする二液型塗料組成物。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のポリイソシアネート組成物と、ポリオール(D)と、JIS K 2256に準じたアニリン点、又は混合アニリン点が5〜100℃の有機溶剤(E)を含んでなることを特徴とする二液型塗料組成物。

【公開番号】特開2012−255101(P2012−255101A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129246(P2011−129246)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】