説明

アロファネート基含有ポリイソシアネート、ならびにウレタンプレポリマー、ポリウレタン樹脂組成物およびその用途

【課題】ポリオレフィンフィルムなどの極性の低い樹脂からなる基材の接着剤として好適に使用することができるポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明に係るポリウレタン樹脂組成物は、活性水素基を有するウレタンプレポリマーとポリイソシアネート、あるいはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと活性水素化合物とを含み、上記活性水素基もしくはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、側鎖に炭素数が5以上の炭化水素基を有するアロファネート基含有ポリイソシアネートと、2官能以上の活性水素化合物とを反応させてなる。特に、上記アロファネート基含有ポリイソシアネートは、炭素数が5以上のアルコール性水酸基含有化合物と有機ジイソシアネートとを、有機カルボン酸ビスマス塩および有機亜リン酸トリエステルを用いて反応させて得られることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応選択性に優れたアロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法に関する。より詳しくは、実質的にウレタン基、ウレトジオン基およびイソシアヌレート基を含まない上記ポリイソシアネートの製造方法に関する。
【0002】
また、本発明は、側鎖に炭素数が5以上の炭化水素基を有するアロファネート基含有ポリイソシアネートと活性水素化合物とから得られるウレタンプレポリマーおよびこのウレタンプレポリマーを含有するポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリオレフィンフィルムやポリエステルフィルムなどの各種プラスチックフィルムや、アルミニウム箔などの金属箔などは、ポリウレタン樹脂接着剤を用いて接着されることが多い。ところが、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルムは樹脂の極性が低く、通常のポリウレタン樹脂接着剤では十分な接着強度が得られないことがあった。また、接着強度を高めるためにポリオレフィンフィルムの表面を処理する必要があった。
【0004】
そこで、上記問題点を解決するため、長鎖炭化水素鎖を有するポリウレタン樹脂からなる接着剤が提案されている(特許文献1〜5参照)。しかしながら、これらのポリウレタン樹脂にはアロファネート基が存在せず、樹脂粘度が高くなる、使用溶剤がトルエン、キシレンなど特定の溶剤に限られるという問題があった。
【0005】
一方、アロファネート基を含有するポリイソシアネートの製造方法は、従来より種々の方法が知られている。ところが、従来の製造方法では、副反応としてイソシアネートの二量化や三量化が起こったり、アロファネート基を含有するポリイソシアネートの収率が低いなどの問題があった。そこで、この問題を解決するために、特許文献6には、有機カルボン酸の金属塩および有機亜リン酸エステルを用いてウレタン基を有する化合物とイソシアネート基を有する化合物とを反応させて、実質的に二量体および三量体を含まないアロファネート基含有化合物の製造方法が提案されている。また、特許文献7には、アロファネート化触媒としてカルボン酸ジルコニウム塩を用いて、実質的に二量体および三量体を含まないアロファネート基含有化合物の製造方法が提案されている。しかしながら、これらの製造方法では、水酸基を有する化合物の炭化水素基の炭素数が多くなるとアロファネート基含有化合物の反応選択性が低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−287532号公報
【特許文献2】特開平9−125042号公報
【特許文献3】特開平11−241057号公報
【特許文献4】特開2002−179757号公報
【特許文献5】特開2005−68228号公報
【特許文献6】特開平8−188566号公報
【特許文献7】特開2002−249535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、炭素数の多いアロファネート基含有ポリイソシアネートを、実質的に二量体および三量体を生成させずに製造する方法を提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、ポリオレフィンフィルムなどの極性の低い樹脂からなる基材の接着剤として好適に使用することができるポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、アロファネート化触媒として有機カルボン酸ビスマス塩および有機亜リン酸トリエステルを用いることによって、炭素数の多いアロファネート基含有ポリイソシアネートを選択的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。さらに、アロファネート基と側鎖に炭素数の多い炭化水素基を有するウレタンプレポリマーからなるポリウレタン樹脂組成物は、ポリオレフィンなどの極性の低い樹脂との相溶性、密着性に優れ、また、硬化物の膨潤が少なく、長期接着性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るアロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法は、炭素数が5以上のモノオールと有機ジイソシアネートとを、有機カルボン酸ビスマス塩および有機亜リン酸トリエステルを用いて反応させることを特徴とする。
【0011】
上記製造方法において、前記モノオールと前記有機ジイソシアネートとを反応させてウレタン基を有する化合物を形成した後、該化合物を有機カルボン酸ビスマス塩と有機亜リン酸トリエステルとの共存下でアロファネート化することが好ましい。
【0012】
前記有機ジイソシアネートは、脂肪族または脂環式のジイソシアネートであることが好ましい。
本発明に係るウレタンプレポリマーは、側鎖に炭素数が5以上の炭化水素基を有するアロファネート基含有ポリイソシアネートと、2官能以上の活性水素化合物とを反応させてなることを特徴とする。
【0013】
前記アロファネート基含有ポリイソシアネートは、炭素数が5以上の炭化水素基を有するモノオールと有機ジイソシアネートとを反応させてなることが好ましい。
前記ウレタンプレポリマーは、活性水素基を有する、あるいはイソシアネート基を有することが好ましい。
【0014】
本発明に係るポリウレタン樹脂組成物は、上記活性水素基を有するウレタンプレポリマーとポリイソシアネートとを含むこと、あるいは上記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと活性水素化合物とを含むことを特徴とする。
【0015】
上記ポリウレタン樹脂組成物は、オレフィンポリオールをさらに含有することが好ましい。
本発明に係る接着剤、プライマーおよびアンカーコート剤は、上記ポリウレタン樹脂組成物を含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、炭素数の多いアロファネート基含有ポリイソシアネートを、実質的に二量体および三量体を含有させずに容易に製造することができる。本発明に係る製造方法は、炭素数の多いアロファネート基含有ポリイソシアネートの製造に特に有効である。
【0017】
また、本発明によると、硬化物の膨潤が少なく、長期接着性に優れ、ポリオレフィンフィルムなどの極性の低い樹脂からなる基材の接着剤として好適に使用することができるポリウレタン樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法>
炭素数の多いアロファネート基含有ポリイソシアネートは、炭素数の多いアルコール性水酸基含有化合物と有機ジイソシアネートとを、有機カルボン酸ビスマス塩および有機亜リン酸トリエステルを用いて反応させることにより製造することができる。
【0019】
(アルコール性水酸基含有化合物)
本発明に用いられる「炭素数の多いアルコール性水酸基含有化合物」とは、具体的には、炭素数が5以上、好ましくは5〜300である、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせからなる水酸基末端化合物である。
【0020】
具体的に、上記アルコール性水酸基含有化合物としては、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノールおよびこれらの異性体、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール(テトラデカノール)、ペンタデカノール、セチルアルコール(ヘキサデカノール)、ヘプタデカノール、ステアリルアルコール(オクタデカノール)、ノナデカノール、その他のアルカノール(C20〜50)、オレイルアルコール、ポリエチレンブチレンモノオール等の脂肪族モノオール類;シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等の脂環族モノオール類;ベンジルアルコール等の芳香脂肪族モノオール類;
1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール等の脂肪族ジオール類;シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環族ジオール類;ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジオール類;
α−オキシプロピオン酸、オキシコハク酸、ジオキシコハク酸、ε−オキシプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、ヒドロキシ酢酸、α−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシステアリン酸、リシノール酸、リシノエライジン酸、リシノステアロール酸、サリチル酸、マンデル酸等のオキシカルボン酸と上記モノオール類とから得られる水酸基含有エステルなどが挙げられる。
【0021】
また、上記アルコール性水酸基含有化合物類や、メタノール、エタノール、プロパノール(各種異性体を含む)、ブタノール(各種異性体を含む)を開始剤としてエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルモノオール類やポリエーテルポリオール類、上記開始剤にε−カプロラクトン等のラクトン化合物を付加して得られるポリエステルモノオール類やポリエステルポリオール類、上記開始剤にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等の低分子量カーボネートを付加して得られるポリカーボネートモノオールやポリカーボネートポリオールなども挙げられる。
【0022】
これらのアルコール性水酸基含有化合物は1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらのアルコール性水酸基含有化合物のうち、本発明の効果が特に有効に現れる点および取り扱い易さや得られるポリイソシアネートの粘度の観点から、炭素数が5以上のモノオールが好ましい。
【0023】
(有機ジイソシアネート)
上記有機ジイソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4'−ジイソシアネート、2,2'−ジフェニルプロパン−4,4'−ジイソシアネート、3,3'−ジメチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3'−ジメトキシジフェニル−4,4'−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族脂肪族ジイソシアネート;
イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0024】
これらの有機ジイソシアネートは1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらの有機ジイソシアネートのうち、得られるポリイソシアネートの耐候性等の観点から、脂肪族または脂環式のジイソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0025】
(有機カルボン酸ビスマス塩)
上記有機カルボン酸ビスマス塩を構成するカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸等の飽和単環モノカルボン酸;ビシクロ(4.4.0)デカン−2−カルボン酸等の飽和多環モノカルボン酸;ナフテン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸;ジフェニル酢酸等の芳香脂肪族モノカルボン酸;安息香酸、トルイル酸等の芳香族モノカルボン酸などのモノカルボン酸;
フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、酒石酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸、α−ハイドロムコン酸、β−ハイドロムコン酸、α−ブチル−α−エチルグルタル酸、α、β−ジエチルサクシン酸、マレイン酸、フマル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等のポリカルボン酸などが挙げられる。
【0026】
これらの有機カルボン酸のビスマス塩は1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらの有機カルボン酸ビスマス塩のうち、炭素数が10以下のモノカルボン酸のビスマス塩が好ましい。
【0027】
(有機亜リン酸トリエステル)
上記有機亜リン酸トリエステルは下記式(1)で表される化合物である。
(R1O)3P (1)
式(1)中、R1はそれぞれ独立に炭素数1〜20のアルキル基または炭素数1〜20のアルキル基で置換されていてもよいアリール基を表す。また、前記アルキル基は塩素等のハロゲン元素で置換されていてもよい。
【0028】
このような有機亜リン酸トリエステルとしては、たとえば、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト等のモノホスファイトが挙げられる。
【0029】
また、ジステアリル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジ・トリデシル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、ジノニルフェニル・ペンタエリスリトール・ジホスファイト、テトラフェニル・テトラトリデシル・ペンタエリスリトール・テトラホスファイト、テトラフェニル・ジプロピレングリコール・ジホスファイト、トリペンタエリスリトール・トリホスファイトなどの多価アルコールから誘導されたジ、トリまたはテトラホスファイト類も挙げられる。
【0030】
さらに、たとえば、炭素数が1〜20のジ・アルキル・ビスフエノールA・ジホスファイト、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ・トリデシル)ホスファイトなどのビスフェノール系化合物から誘導されたジホスファイト類、水添ビスフェノールAホスファイトポリマー(分子量2400〜3000)等のポリホスファイト類、トリス(2,3−ジクロロプロピル)ホスファイト等が挙げられる。
【0031】
(アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法)
本発明では、まず、上記アルコール性水酸基含有化合物と有機ジイソシアネートとを反応させてウレタン基を有する化合物と形成させる。このときの反応条件は特に限定されず、従来公知の条件で反応させることができる。
【0032】
上記ウレタン基を有する化合物が、分子中にイソシアネート基を有する場合には、所定の条件で、得られたウレタン基を有する化合物同士でアロファネート化反応が進行する。このとき、新たにイソシアネート基を有する化合物を添加してもよい。
【0033】
しかしながら、反応効率の点で、上記ウレタン基を形成する際、上記アルコール性水酸基含有化合物に対して有機ジイソシアネートが大過剰の条件で反応させ、次いでアロファネート化反応を行うことが好ましい。この場合、ウレタン基を有する化合物の製造条件は、有機ジイソシアネートと上記アルコール性水酸基含有化合物との当量比(NCO/OH)は2〜100が好ましく、5〜20がより好ましく、反応温度は40〜100℃が好ましく、反応時間は0.5〜10時間が好ましい。
【0034】
上記ウレタン基を形成する際、従来公知のウレタン化触媒、有機触媒等を用いてもよい。これらの触媒としては、たとえばジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等が挙げられる。
【0035】
このようにして得られたウレタン基を有する化合物と有機ジイソシアネートとを、有機カルボン酸ビスマス塩(触媒)および有機亜リン酸エステル(助触媒)の共存下で反応させて、アロファネート基を有するポリイソシアネートを生成させる。
【0036】
本発明では、有機亜リン酸エステルを助触媒として使用するため、有機カルボン酸ビスマス塩の使用量は助触媒を使用しない場合に比べて低減させることができる。有機カルボン酸ビスマス塩の使用量は、ウレタン基を有する化合物に対して、0.0005〜1重量%が好ましく、0.001〜0.1重量%がより好ましい。上記有機カルボン酸ビスマス塩の使用量が上記下限未満になると、実質的に反応が遅く、反応に長時間を要する。また、上記有機カルボン酸ビスマス塩の使用量が上記上限を超えると、反応制御が難しく、アロファネート基含有ポリイソシアネートを硬化剤として使用する場合、ポットライフが短くなる等の問題が生じることがある。
【0037】
有機亜リン酸エステルの使用量は、ウレタン基を有する化合物に対して、0.005〜1重量%が好ましく、0.01〜0.5重量%がより好ましい有機亜リン酸エステルの使用量が上記下限未満になると、助触媒としての作用が充分に得られず、また上記上限を超えると、アロファネート基含有ポリイソシアネートを利用した最終製品の物性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0038】
アロファネート化反応は、反応温度が通常0〜160℃、好ましくは20〜120℃、反応時間が通常0.5〜20時間の条件で行われる。反応の進行具合はイソシアネート基またはウレタン基の含有量や、最終生成物の粘度を測定することにより追跡することができる。ウレタン基がアロファネート基に完全に変換した時点で、たとえば、リン酸、モノクロル酢酸、塩化ベンゾイル、ドデシルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸などのアロファネート化反応停止剤を反応液中に添加し、アロファネート化触媒を失活させて反応を停止させる。この場合、キレート樹脂やイオン交換樹脂などの触媒または助触媒を吸着する物質を添加して反応を停止させてもよい。ここでウレタン基のアロファネート基への変換が充分でないと未反応のウレタン基含有化合物が最終生成物中で析出することがある。また、反応停止剤を加えず反応を続行し続けるとイソシアネートの二量体および三量体が生成することがあるため好ましくない。
【0039】
また、上記反応の際、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。この有機溶剤としては、n−ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素系有機溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環族炭化水素系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル等のエステル系有機溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネート等のグリコールエーテルエステル系有機溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系有機溶剤;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素系有機溶剤;N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミド等の極性非プロトン系有機溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤は1種単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
上記アロファネート化反応後の生成物には、遊離の有機ジイソシアネートが残存していることがある。この遊離の有機ジイソシアネートは、臭気や経時的な濁りの発生の原因となるため、含有量が1重量%以下になるまで除去することが好ましい。遊離の有機ジイソシアネートの除去方法としては、蒸留、再沈、抽出などの従来公知の除去方法を適用することができる。これらのうち、溶剤等を使用せずに有機ジイソシアネートを除去できるた
め、蒸留が好ましく、特に薄膜蒸留が好ましい。なお、薄膜蒸留の条件は、圧力が0.2kPa以下、温度が100〜200℃であることが好ましく、特に、圧力が0.1kPa以下、温度が120〜180℃であることが好ましい。
【0041】
上記製造方法は、アロファネート化反応が優先的かつ安定に一定の速度で進行するため、反応の制御が容易であり、アロファネート化反応が終了した時点で反応を停止させることにより、最終生成物中に二量体および三量体を実質的に含有しないアロファネート基含有ポリイソシアネートを得ることができる。なお、「実質的に二量体および三量体を含有しない」とは、IR分析やNMR解析において、二量体および三量体の存在が痕跡程度で認められること、または全く存在が認められないこと、すなわち含有量が検出限界以下であることを意味する。
【0042】
この方法により製造されたアロファネート基含有ポリイソシアネートは、炭素数が5以上の炭化水素基、アロファネート基およびイソシアネート基を有する。イソシアネート基含有率は、活性水素基を有する化合物との反応性の観点から、このポリイソシアネートの固形分を100重量%として、3〜20重量%が好ましい。また、ポリオレフィンなどの極性の低い樹脂との相溶性が良好になる点で、炭素数が5以上の炭化水素基は側鎖に存在することが好ましい。さらに、このアロファネート基含有ポリイソシアネートは、実質的に着色なく、低粘度であり、取扱性に優れている。
【0043】
このようなアロファネート基含有ポリイソシアネートは、ポリウレタン樹脂組成物の硬化剤として使用することができる。たとえば、このポリイソシアネートを含む溶液(硬化剤)と活性水素化合物を含む溶液(主剤)とを組み合わせて二液型樹脂組成物を調製する。前記2種類の溶液を混合すると、アロファネート基含有ポリイソシアネート中のイソシアネート基と活性水素化合物との反応により新たにウレタン結合が形成され、ポリウレタン樹脂組成物となる。
【0044】
上記活性水素化合物としては、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールが挙げられる。このポリオールとしては、たとえば、アルキッドポリオール、アクリルポリオール、アクリル化アルキッドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオールオリゴマー、含フッ素系ポリオール、含ケイ素系ポリオールなど、ポリウレタン樹脂の分野において従来公知のポリオールを使用することができる。
【0045】
上記アロファネート基含有ポリイソシアネートと活性水素化合物との割合は、化合物の種類等によって適宜決定されるが、たとえば、アロファネート基含有ポリイソシアネート中のイソシアネート基1モルに対して、活性水素化合物中の活性水素が0.2〜5モルである。
【0046】
上記ポリウレタン樹脂組成物には、ジブチルチンラウレート、スタナスオクトエートなどの硬化触媒や、炭酸カルシウム、カーボンブラックなどのフィラー、レベリング剤、消泡剤、安定剤などの各種添加剤を含んでもよい。
【0047】
このようなポリウレタン樹脂組成物は、たとえば、塗料、接着剤、各種結合剤、印刷インキ、磁気記録媒体、コーティング剤、シーリング剤、エラストマー、封止剤、合成皮革、建築材料、その他各種成形材料等として好適に使用され、発泡体、発泡充填材、マイクロカプセル等を形成することもできる。特にハイソリッド塗料用硬化剤、ターペン塗料用硬化剤に適している。
【0048】
特に、このポリウレタン樹脂組成物は、貧溶媒との相溶性が良好である。また、炭素数
の多い炭化水素基を有するため、オレフィンフィルムなどの基材との接着性を向上させることができる。
【0049】
<ウレタンプレポリマーおよびポリウレタン樹脂組成物>
本発明に係るウレタンプレポリマーは、側鎖に炭素数が5以上の炭化水素基を有するアロファネート基含有ポリイソシアネートと、2官能以上の活性水素化合物とを反応させることによって製造することができる。このようなウレタンプレポリマーのうち、活性水素基またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーが好ましい。
【0050】
側鎖に炭素数が5以上の炭化水素基を有するアロファネート基含有ポリイソシアネートは、炭素数が5以上の炭化水素基を有するアルコール性水酸基含有化合物を用いて、上記アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法や特開平8−188566号公報に記載の製造方法により製造することができる。これらのうち、取り扱い易さの点や実質的に二量体や三量体を含まないアロファネート基含有ポリイソシアネートが得られる点で、本発明に係る製造方法が好ましい。
【0051】
上記活性水素化合物としては、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオール、1分子中に2個以上のアミノ基を有するポリアミンなどを使用することができる。ポリオールとしては、たとえば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(C7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、アルカン−1,2−ジオール(C17〜20)、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン等のジオール類、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノール、及びその他の脂肪族トリオール(C8〜24)等のトリオール類や、アルキッドポリオール、アクリルポリオール、アクリル化アルキッドポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオールオリゴマー、含フッ素系ポリオール、含ケイ素系ポリオールなど、ポリウレタン樹脂の分野において従来公知のポリオールを使用することができる。ポリアミンとしては、たとえば、ジアミノトルエン、ビス−(4−アミノフェニル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−クロロフェニル)メタン、ジ−(アミノメチル)ベンゼン、ジ−(2−アミノ−2−プロピル)ベンゼン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、ジ−(アミノメチル)シクロヘキサン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン等のジアミン類や、ポリアミドポリアミンなど、ポリウレタン樹脂の分野において従来公知のポリアミンを使用することができる。
【0052】
上記ウレタンプレポリマーを製造する際、特に、活性水素基またはイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを製造する際のアロファネート基含有ポリイソシアネートと活性水素化合物との割合は、たとえば、アロファネート基含有ポリイソシアネート中のイソシアネート基と活性水素化合物中の活性水素基との比をR(=イソシアネート基/活性水素基)とすると、Rは1.0以外であり、好ましくは0.1≦R<1.0または1.0<R≦10.0、より好ましくは0.2≦R≦0.9または1.2≦R≦5.0である。Rを1.0未満にすると活性水素基含有ウレタンプレポリマーを得ることができ、Rが1.0を超えるとイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0053】
上記ウレタンプレポリマーを製造する際、反応温度は40〜100℃が好ましく、反応時間は0.5〜10時間が好ましい。また、従来公知のウレタン化触媒、有機触媒等を用いてもよい。これらの触媒としては、たとえばジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等が挙げられる。
【0054】
このようにして製造されたウレタンプレポリマーは、アロファネート基と、活性水素基もしくはイソシアネート基とを有し、さらに側鎖に炭素数が5以上の炭化水素基を有する。活性水素基を有するウレタンプレポリマーは、さらにポリイソシアネートと組み合わせて、また、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、さらに活性水素化合物と組み合わせて、ポリウレタン樹脂組成物を形成することができ、接着剤、プライマー、アンカーコート剤などの種々の用途に使用することができる。特に、ウレタンプレポリマーが側鎖に炭素数が5以上の炭化水素基を有するため、硬化物の膨潤が少なく、長期接着性にも優れており、また、ポリオレフィンフィルムなどの極性の低い樹脂からなる基材に対する接着剤や、プライマー、アンカーコート剤として有用であり、上記基材の未処理面に対する接着強度に優れている。さらに、アロファネート基を有するため、比較的樹脂粘度が低く、上記用途で使用する場合に、作業性に優れている。 上記ポリイソシアネートとしては、通常のポリウレタン樹脂に用いられる従来公知のポリイソシアネートを用いることができ、たとえば、上記アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法において例示した有機ジイソシアネート、およびこれら有機ジイソシアネートから誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート等の誘導体、および上記ウレタンプレポリマーの製造方法において例示した活性水素化合物との付加体などが挙げられる。また、上記活性水素化合物としては、上記ウレタンプレポリマーの製造方法において例示した活性水素化合物が挙げられる。
【0055】
上記活性水素基を有するウレタンプレポリマーとポリイソシアネートとの割合は、たとえば、ポリイソシアネート中のイソシアネート基1モルに対して、ウレタンプレポリマー中の活性水素基が好ましくは0.1〜3.0モル、より好ましくは0.5〜2.0モルである。
【0056】
また、上記イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと活性水素化合物との割合は、たとえば、活性水素化合物中の活性水素基1モルに対して、ウレタンプレポリマー中のイソシアネート基が好ましくは0.1〜3.0モル、より好ましくは0.5〜2.0モルである。
【0057】
さらに、上記ポリウレタン樹脂組成物には基材の未処理面に対する密着性をさらに向上させるために、さらにオレフィンポリオールを添加することが好ましく、たとえば、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、イソプレンポリオール、水添イソプレンポリオールなどのポリオールを添加するか、もしくは反応させることが好ましい。これらのオレフィンポリオールは1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。また、これらのオレフィンポリオールは、上記ウレタンプレポリマー全体に対し、好ましくは2〜98重量%であり、より好ましくは5〜50重量%である。これらのオレフィンポリオールは上記ウレタンプレポリマーとの相溶性に優れており、上記ポリウレタン樹脂組成物にこれらのオレフィンポリオールを添加、もしくは反応させても相分離が起こらない。
【0058】
また、上記ポリウレタン樹脂組成物には、公知のウレタン化触媒、有機触媒等を混合してもよい。これらの触媒としては、たとえばジブチルチンジラウレート、スタナスオクトエート等が挙げられる。
【0059】
さらに、上記ポリウレタン樹脂組成物には、たとえば充填剤、軟化剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、安定剤、シランカップリング剤、レベリング剤、チキソ化剤、消泡剤、可塑剤、無機フィラー、顔料等の着色剤、粘着付与性樹脂等、公知の添加剤を必要に応じて使用することができる。
上記ポリウレタン樹脂組成物の硬化温度は30〜100℃が好ましく、硬化時間は0.5時間〜1週間が好ましい。
【0060】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「%」、「部」は特に断りのない限り「重量%」、「重量部」を意味する。
【0061】
[実施例1]
(アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造)
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの反応器に、窒素雰囲気下、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)930g、デカノール70g、およびトリス(トリデシル)ホスファイト0.5gを仕込み、80℃で2時間ウレタン化反応を行った。次に、反応液にアロファネート化触媒としてオクチル酸ビスマス0.05gを添加し、100℃で反応させた後、塩化ベンゾイル0.03gを添加して反応を停止させた。反応時間は7時間であった。
【0062】
得られた反応液900gを薄膜蒸留装置(真空度:0.05kPa、温度140℃)を用いて蒸留し、未反応のHDIを除去し、淡黄色の化合物210gを得た。この化合物のイソシアネート基含有量をJIS K7301に記載のイソシアネート基含有率試験により測定したところ、16.0%であった。25℃における粘度を東京計器製のBL型粘度計(DVL−B)を用いて測定したころ、100mPa・sであった。また、遊離HDI含有量は0.5%、色数30(APHA)であった。
【0063】
このポリイソシアネートをFT−IR、1H−NMRにより分析したところ、アロファネート基の存在が確認されたが、ウレタン基およびイソシアヌレート基は存在しなかった。
使用した原料、アロファネート化の反応条件、および生成物の特性を下記の表1に示す。
【0064】
[実施例2〜6]
(アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造)
使用した原料およびアロファネート化の反応条件を表1に記載の原料および反応条件に変更した以外は実施例1と同様にしてポリイソシアネートを製造した。結果を表1に示す。
【0065】
[比較例1]
(アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造)
アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸ジルコニウム0.05g添加し、反応時間を3時間に変更した以外は、実施例1と同様にしてポリイソシアネートを製造した。結果を表1に示す。イソシアヌレート基を有する化合物が4%生成した。
【0066】
[比較例2]
(ポリイソシアネートの製造)
トリス(トリデシル)ホスファイトを使用しなかった以外は、実施例1と同様にしてポリイソシアネートの製造を試みたが、アロファネート化反応が起こらなかった。
【0067】
[比較例3]
1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート970gを913gに変更し、デカノールの代わりにトリデカノール87g使用し、アロファネート化触媒として2−エチルヘキサン酸鉛0.05gを使用した添加した以外は、実施例1と同様にしてポリイソシアネートを製造した。結果を表1に示す。反応速度が非常に遅く、アロファネート化に長時間を要した。
【0068】
【表1】

【0069】
[合成例1]
(アロファネート基含有ポリイソシアネートの製造)
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、窒素雰囲気下、表2に示す種類および量の有機ジイソシアネートおよびモノオールと、トリス(トリデシル)ホスファイト0.5gを仕込み、表2に示す反応温度で2時間ウレタン化反応を行った。次に、反応液にアロファネート化触媒としてオクチル酸ビスマス(Bi:19.4%)を0.05g添加し、100℃で反応させてウレタン基のアロファネート基への変換がほぼ完了した時点で、塩化ベンゾイル0.03gを添加して反応を停止させた。反応時間を表2に示す。
【0070】
得られた反応液を薄膜蒸留装置(真空度:0・05kPa、温度150℃)を用いて蒸留し、未反応の有機ジイソシアネートおよびモノオールを除去し、アロファネート基含有ポリイソシアネート(A1)〜(A5)および(a1)を得た。このポリイソシアネートの特性を表2に示す。なお、イソシアネート基含有量はJIS K7301に記載のイソシアネート基含有率試験により測定した。また、粘度は東京計器製のBL型粘度計(DVL−B)を用いて測定した。
【0071】
【表2】

【0072】
[合成例2]
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、ポリオキシプロピレングリコール(三井武田ケミカル(株)製、「Diol−1000」、分子量1000)、ジプロピレングリコールおよび表3に示すポリイソシアネートを表3に示す量で仕込み、窒素気流下、反応温度を60〜70℃の範囲に調整しながら1時間ウレタン化反応を行った。
【0073】
次に、反応液にオクチル酸錫0.06gを添加し、反応温度を70〜80℃の範囲に調整しながら、さらに4時間ウレタン化反応を行った。その後、表3に示す量の1,4−ブチレングリコールとオクチル酸錫0.12gを添加した。FT−IRによりイソシアネート基のピークが完全に消失するまで反応させ、その後、表3に示す溶剤を投入して、ポリエーテルポリウレタンポリオール(P−E1)〜(P−E4)および(P−e1)〜(P−e2)をそれぞれ独立に含む溶液(固形分60重量%)を得た。
【0074】
【表3】

【0075】
[合成例3]
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、イソフタル酸530g、エチレングリコール129g、ネオペンチルグリコール302gを仕込み、窒素気流下、反応温度を180〜220℃の範囲に調整しながら6時間エステル化反応を行った。所定量の水を留去した後、セバシン酸215gを添加し、反応温度を180〜220℃の範囲に調整しながら、さらに7時間エステル化反応を行い、水酸基価が45のポリエステルポリオール(P−s1)を得た。
【0076】
[合成例4]
攪拌機、温度計、冷却器および窒素ガス導入管を備えた容量1リットルの四つ口フラスコに、表4に示すポリオールおよびポリイソシアネートを表4に示す量で仕込み、さらにトルエン125gを加えて80℃で1時間ウレタン化反応を行った。
【0077】
次に、反応液にオクチル酸錫0.01gを添加し、FT−IRによりイソシアネート基のピークが完全に消失するまで80℃で反応させ、その後、トルエン375g投入して、ポリウレタンポリオール(P−U1)〜(P−U6および(P−u1)をそれぞれ独立に含む溶液(固形分50重量%)を得た。
【0078】
【表4】

【0079】
[実施例7および比較例4]
主剤として合成例2で調製した各種ポリエーテルポリウレタンポリオール100部に、硬化剤としてジメチルメタンジイソシアネート/トリレンジイソシアネート混合系ポリイソシアネート硬化剤(タケネートA−5、三井武田ケミカル(株)製)30部を配合して、各種ポリウレタン系接着剤を調製した。
【0080】
次いで、この接着剤を、常温下、バーコーターを用いてナイロンフィルム(15μm厚)上に固形分で3.5g/m2となるように塗布し、溶剤を揮発させた。その後、接着剤塗布面と未延伸ポリエチレンフィルム(130μm厚、片面コロナ処理)のコロナ処理面とを貼り合わせ、40℃で3日間養生して接着剤を硬化させて、2層複合フィルムを作製した。この複合フィルムについて、下記の方法に従い、接着性試験と耐内容物試験を実施した。
【0081】
(1)接着性試験
上記複合フィルムから、長さ150mm×幅15mmの試験片を切り出し、インストロン型引張試験機を用いて、剥離速度300mm/分の条件でT型剥離試験を実施し、接着強度を測定した。結果を表5に示す。
【0082】
(2)耐内容物試験
上記複合フィルムの一端をヒートシールして、170mm×65mmのパウチを作製し、このパウチに強アルカリ性洗剤(花王(株)製、「マジックリン」)を充填した。これを50℃で1ヶ月間保存し、保存後のパウチの外観を観察した。また、上記接着性試験と同様にして保存後のパウチの接着強度を測定した。結果を表5に示す。
【0083】
【表5】

【0084】
[実施例8および比較例5]
主剤として表6に示す量の合成例4で調製した各種ポリウレタンポリオールおよび水添ポリブタジエンポリオール(三菱化学(株)製、「ポリテールH」、水酸基価48)と、硬化剤としてHDIトリマー(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−177N)とをNCO/OH当量比で1.2となるように配合し、固形分が25%となるようにトルエンで希釈して各種ポリウレタン系接着剤を調製した。
【0085】
この接着剤を室温に1時間放置した後、目視により観察して相分離の有無を確認した。結果を表6に示す。
次に、この接着剤を、常温下、バーコーターを用いてアルミ箔(40μm厚)上に固形分で3.5g/m2となるように塗布し、溶剤を揮発させた後、150℃のオーブン中で3分間加熱した。その後、アルミ箔をオーブンから取り出し、接着剤塗布面と未延伸ポリエチレンフィルム(130μm厚、片面コロナ処理)のコロナ処理面またはコロナ未処理面とを貼り合わせ、2層複合フィルムを作製し、60℃で5日間養生して接着剤を硬化させた。この複合フィルムについて、実施例7と同様にして接着性試験を実施した。結果を表6に示す。
【0086】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数が5以上のモノオールと有機ジイソシアネートとを、有機カルボン酸ビスマス塩および有機亜リン酸トリエステルを用いて反応させることを特徴とするアロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法。
【請求項2】
前記モノオールと前記有機ジイソシアネートとを反応させてウレタン基を有する化合物を形成した後、該化合物を有機カルボン酸ビスマス塩と有機亜リン酸トリエステルとの共存下でアロファネート化することを特徴とする請求項1に記載のアロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法。
【請求項3】
前記有機ジイソシアネートが、脂肪族または脂環式のジイソシアネートであることを特徴とする請求項1または2に記載のアロファネート基含有ポリイソシアネートの製造方法。
【請求項4】
側鎖に炭素数が5以上の炭化水素基を有するアロファネート基含有ポリイソシアネートと、2官能以上の活性水素化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマー。
【請求項5】
前記アロファネート基含有ポリイソシアネートが、炭素数が5以上の炭化水素基を有するモノオールと有機ジイソシアネートとを反応させてなることを特徴とする請求項4に記載のウレタンプレポリマー。
【請求項6】
前記ウレタンプレポリマーが活性水素基を有することを特徴とする請求項4または5に記載のウレタンプレポリマー。
【請求項7】
前記ウレタンプレポリマーがイソシアネート基を有することを特徴とする請求項4または5に記載のウレタンプレポリマー。
【請求項8】
請求項6に記載の活性水素基を有するウレタンプレポリマーとポリイソシアネートとを含むポリウレタン樹脂組成物。
【請求項9】
請求項7に記載のイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと活性水素化合物とを含むポリウレタン樹脂組成物。
【請求項10】
オレフィンポリオールをさらに含有することを特徴とする請求項8または9に記載のポリウレタン樹脂組成物
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物を含有する接着剤。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物を含有するプライマー。
【請求項13】
請求項8〜10のいずれかに記載のポリウレタン樹脂組成物を含有するアンカーコート剤。

【公開番号】特開2012−7183(P2012−7183A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214757(P2011−214757)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【分割の表示】特願2005−380015(P2005−380015)の分割
【原出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】