説明

アンカーの施工方法

【課題】強度を低下させることなくアンカーを地覆コンクリートに正確に設置する。
【解決手段】アンカーの施工方法は、鉄筋21を設置し、鉄筋21の両側部に一対の枠部材22,23を設置し、アンカー挿通孔を有するプレート部材24を一対の枠部材22,23に掛け渡し、アンカー12をプレート部材24のアンカー挿通孔に下方から挿通し、アンカー12の上端部にアンカー挿通孔よりも大きいナット27を取り付けることによってアンカー12をプレート部材24にぶら下げ、アンカー12の上端面を押え板28によって上方から押さえ、一対の枠部材22,23の間にコンクリートCを打設することにより、内部に鉄筋21を有する地覆コンクリート11にアンカー12を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高欄などの防護柵を固定するためのアンカーを施工するアンカーの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や橋梁などにおいて、高欄などの防護柵は、例えば特許文献1に開示されているように、地覆コンクリートに埋め込まれたアンカーに固定される。
このアンカーは、地覆コンクリートの底面から浮いた位置に設置する必要があり、従来では、以下のような方法によって施工が行われている。即ち、地覆コンクリートを施工する施工位置の底板上に、地覆鉄筋を設置する。そして、施工する地覆コンクリートの幅に合わせて、その地覆鉄筋の両側部に型枠を設置する。この型枠の内側の面には、施工する地覆コンクリートの高さ位置、つまり、施工する地覆コンクリートの上面位置に合わせて面木が取り付けられる。アンカーは、このように設置された型枠の間の空間に設置されるが、この場合、高欄などの支柱1本を固定するのに必要な本数、例えば4本を1ユニットとして、このユニット、つまり、4本で一体とするアンカー群が、施工する地覆コンクリートが延びる方向、つまり、型枠が延びる方向である橋軸方向に沿って所定間隔ごとに設置される。
【0003】
ところで、このように、高欄などの防護柵を地覆コンクリートに埋め込まれたアンカーに固定する場合、地覆コンクリートにおけるアンカーの配置位置、つまり、4本のアンカー間のピッチが不正確であったり、各アンカーの角度が不正確であったり、各アンカーが地覆コンクリートから突出する高さ、つまり出代が不正確であったりすると、高欄などの防護柵の支柱に形成された固定用の挿入孔にアンカーを挿入できなかったり、出代が不足する場合には、固定用のナットを取り付けた後の出代、つまり、ナットの上面から突出するアンカーの先端部が不足するという不具合が生じる。極端な場合には、固定用のナットを取り付けた後にそのナットの上面からアンカーの先端部が全く突出しないなどの不具合が生じる。アンカーの出代寸法には規格が定められており、アンカーの出代が不足すると、定められた強度を確保することができなくなってしまう。従って、高欄などの防護柵を適切に固定することが困難となる。
【0004】
このような事情を背景として、従来より、アンカーを地覆コンクリートに正確に設置するための種々の方法が考えられている。即ち、上記したような従来の方法では、アンカーを固定する部材としては、型枠、面木、あるいは、地覆鉄筋以外には適当な部材がなく、アンカーの固定が非常に困難である。そこで、例えば、溶接によってアンカーを地覆鉄筋に固定した上でコンクリートを打設する方法、クランプなどによってアンカーを地覆鉄筋に保持した上でコンクリートを打設する方法、結束線によってアンカーを地覆鉄筋に固定した上でコンクリートを打設する方法、4本のアンカーをゲージ板にセットし補助鉄筋を使用してアンカー全体を固定した上でコンクリートを打設する方法などが考えられている。
【0005】
しかしながら、これら従来の方法では、溶接による強度の低下や、アンカーが地覆鉄筋に接触することに起因して発生する電食による強度の低下を招いてしまう。なお、電食発生の場合には、アンカーのメッキが溶け出し、アンカーの腐食が発生し、アンカーの寿命が大幅に低下してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−142693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、強度を低下させることなくアンカーを地覆コンクリートに正確に設置することができるアンカーの施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載のアンカーの施工方法は、鉄筋を設置し、前記鉄筋の両側部に一対の枠部材を設置し、アンカー挿通孔を有するプレート部材を、前記一対の枠部材に掛け渡し、アンカーを前記プレート部材の前記アンカー挿通孔に下方から挿通し、前記アンカーの上端部に前記アンカー挿通孔よりも大きいナットを取り付けることによって当該アンカーを前記プレート部材にぶら下げ、前記アンカーの上端面を押え板によって上方から押さえ、前記一対の枠部材の間にコンクリートを打設することにより、内部に前記鉄筋を有する地覆コンクリートに前記アンカーを設置することを特徴とする。
【0009】
この施工方法によれば、アンカー挿通孔を有するプレート部材が一対の枠部材に掛け渡され、そのプレート部材のアンカー挿通孔からアンカーがぶら下げられ、この状態で、一対の枠部材の間にコンクリートが流し込まれる。即ち、アンカーを地覆鉄筋に固定した状態でコンクリートを打設する従来の方法とは異なり、アンカーを地覆鉄筋に接触させることなく上方からぶら下げた状態でコンクリートを打設するようにした。従って、強度を低下させることなくアンカーを施工することができる。
【0010】
また、プレート部材からぶら下げられたアンカーは、そのぶら下げ位置、つまり、アンカー挿通孔の位置にて、流し込まれたコンクリート、つまり、地覆コンクリートに固定される。従って、プレート部材におけるアンカー挿通孔の位置を正確に設定しておくことで、地覆コンクリートにおけるアンカーの配置位置を正確に決めることができる。
また、プレート部材にぶら下げたアンカーの上端面を押え板によって上方から押さえ付けるので、アンカーが地覆コンクリートから突出する高さ、つまり出代の大きさを正確に決めることができる。また、このようにプレート部材にぶら下げたアンカーの上端面を押え板によって上方から押さえ付けることによって、コンクリートを打設する際にアンカーが傾斜してしまうことを防止することができる。従って、地覆コンクリートにおけるアンカーの角度を垂直に決めることができる。
【0011】
請求項2に記載のアンカーの施工方法は、前記プレート部材を、前記一対の枠部材の間に打設されるコンクリートの上端面よりも上方に掛け渡すことを特徴とする。
この施工方法によれば、一対の枠部材の間に打設されるコンクリートの上端面、つまり、地覆コンクリートの上端面よりも上方に、アンカーをぶら下げたプレート部材が掛け渡される。従って、施工後におけるアンカーの出代を十分に確保することができる。また、一対の枠部材の間に流し込まれるコンクリートの上端面よりも上方にプレート部材を掛け渡すことで、流し込まれたコンクリートがプレート部材の下面に接触することがない。従って、施工後においてプレート部材を容易に取り外すことができるとともに、プレート部材を取り外す際に地覆コンクリートの上端面を損傷してしまうことを回避することができる。
【0012】
ところで、このように、アンカーをぶら下げるプレート部材を、一対の枠部材の間に打設するコンクリートの上端面よりも上方に掛け渡す場合、アンカーの出代部分にコンクリートが付着してしまうことが懸念される。アンカーの出代部分にコンクリートが付着して固まってしまうと、高欄などの防護柵を固定することが困難となる。
【0013】
そこで、請求項3に記載のアンカーの施工方法では、前記アンカーのうち前記プレート部材と前記一対の枠部材の間に打設されるコンクリートの上端面との間に位置する部分にカバー部材を取り付ける。
この施工方法によれば、アンカーの出代となる部分のうちプレート部材よりも下方部分、つまり、コンクリートが付着してしまうことが懸念される部分がカバー部材で覆われることから、当該部分へのコンクリートの付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態に係るものであり、地覆コンクリートに施工されたアンカーに高欄が固定された状態を示す斜視図
【図2】アンカーの施工方法の各工程を説明するための図
【図3】プレート部材の斜視図
【図4】カバー部材が取り付けられたプレート部材の一部を示す図
【図5】アンカー押さえ付け工程までを完了した状態を示す図
【図6】(a),(b)は変形例に係る図4相当図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、高欄10などの防護柵は、地覆コンクリート11に施工されたアンカー12に固定用のナット10aを締め付けることによって固定される。この場合、アンカー12は、高欄10の1本の支柱10bを固定するのに必要な本数、この場合、4本を1ユニットとしており、このユニット、つまり、4本で一体とするアンカー群が、施工する地覆コンクリート11が延びる方向である橋軸方向に沿って所定間隔ごと、つまり、高欄10の支柱10b間の間隔ごとに設置される。本実施形態は、このアンカー12を施工する施工方法に係るものである。このアンカー12の施工方法は、次に示す各工程(1)〜(8)を含む。次に、このアンカー12の施工方法の各工程(1)〜(8)について図2から図5を参照しながら説明する。なお、図2では、各工程(1)〜(8)に対応して部分図(a)〜(h)を示している。
【0016】
(1)鉄筋設置工程
この鉄筋設置工程は、図2(a)に示すように、例えば道路や橋梁などを構成する地覆コンクリート11を施工する施工位置に、地覆鉄筋21を設置する工程である。この地覆鉄筋21は、地覆コンクリート11の施工位置に設置された図示しない床板上に設置される。この地覆鉄筋21は、地覆コンクリート11の骨格としての機能や、当該地覆コンクリート11を補強する機能などを担う。この地覆鉄筋21は、施工する地覆コンクリート11が延びる方向、つまり、橋軸方向に沿う通し筋21aと、この通し筋21と直交する方向、換言すれば、施工する地覆コンクリート11の幅方向に沿う横筋21bとからなる。横筋21bは、施工する地覆コンクリート11が延びる方向、換言すれば、通し筋21aが延びる方向に沿って所定間隔(例えば、250mm〜300mmほど)ごとに配置される。上記した従来の施工方法では、アンカーは、この横筋21bに接触、つまり、干渉する可能性が高かった。なお、上記した従来の施工方法では、アンカーは、通し筋21aにも干渉する可能性がある。
【0017】
(2)枠部材設置工程
この枠部材設置工程は、図2(b)に示すように、上記の鉄筋設置工程にて設置した地覆鉄筋21の両側部に、施工する地覆コンクリート11が延びる方向、換言すれば、地覆鉄筋21のうち通し筋21aが延びる方向である橋軸方向に沿って、一対の枠部材22,23を設置する工程である。これら枠部材22,23の内側の面、つまり、地覆鉄筋21に対向する面には、内側に突出する面木部22a,23aが設けられている。これら面木部22a,23aは、後述するプレート部材掛け渡し工程以降の工程において、スペーサ25を介してプレート部材24が載置される載置台として機能する。また、これら面木部22a,23aは、後述するコンクリート打設工程において、コンクリートの流し込み量の上限値を規定する目印として機能する。また、これら面木部22a,23aは、地覆鉄筋21に対向する面が傾斜した断面三角形状をなしており、これにより、後述する仕上げ工程を経て施工された地覆コンクリート11の上部の幅方向の両端部には、これら面木部22a,23aの形状に対応して面取り部11aが形成される。
【0018】
(3)プレート部材掛け渡し工程
このプレート部材掛け渡し工程は、図2(c)に示すように、上記の枠部材設置工程にて設置した一対の枠部材22,23にプレート部材24を掛け渡す工程である。この場合、このプレート部材24は、一対の枠部材22,23の面木部22a,23aにスペーサ25を介して載置され、これにより、プレート部材24は、少なくとも面木部22a,23aの上端面よりも上方に掛け渡される。
【0019】
ここで。このプレート部材24の構成について図3を参照して詳細に説明する。
図3に示すように、このプレート部材24は、全体としてほぼ長方形の板状をなし、当該プレート部材24を板厚方向に貫通する押え板固定用孔24aおよびアンカー挿通孔24bを有している。押え板固定用孔24aは、プレート部材24のほぼ中央部に、この場合1つが設けられている。アンカー挿通孔24bは、押え板固定用孔24aの周囲に、複数、この場合4つが設けられている。押え板固定用孔24aおよびアンカー挿通孔24bは、何れも円形状に開口している。押え板固定用孔24aの開口径は、アンカー挿通孔24bの開口径よりも小さく設定されている。換言すれば、アンカー挿通孔24bの開口径は、押え板固定用孔24aの開口径よりも大きく設定されている。
【0020】
(4)アンカー挿通工程
このアンカー挿通工程は、図2(d)に示すように、上記のプレート部材掛け渡し工程にて一対の枠部材22,23に掛け渡したプレート部材24のアンカー挿通孔24bに、アンカー12を、ねじ部12aを上方に向けた状態で下方から挿通する工程である。なお、このようにアンカー12を挿通することに先立ち、この場合、図4に示すように、アンカー挿通孔24bには上方からカバー部材26が取り付けられる。このカバー部材26は、全体としてほぼ円形筒状をなすスリーブ部26aと、そのスリーブ部26aの上端部に形成された鍔部26bとを有している。この鍔部26bがプレート部材24の上面に係止することで、カバー部材26がプレート部材24のアンカー挿通孔24bに保持される。そして、アンカー12は、このようにプレート部材24のアンカー挿通孔24bに保持されたカバー部材26に下方から挿通される。なお、このカバー部材26の長さ、特にスリーブ部26aの長さは、その下端部が面木部22a,23aの上端面よりも若干、例えば数ミリ程度上方となる長さに設定されている。
【0021】
(5)アンカーぶら下げ工程
このアンカーぶら下げ工程は、図2(e)に示すように、上記のアンカー挿通工程にてプレート部材24のアンカー挿通孔24bに下方から挿通したアンカー12の上端部のねじ部12aに、アンカー挿通孔24bよりも大きいナット27を取り付けることによって、アンカー12をプレート部材24にぶら下げる工程である。このとき、アンカー12の上端面とナット27の上面とが面一となるようにアンカー12にナット27を取り付ける。
【0022】
なお、このアンカーぶら下げ工程では、アンカー12は、プレート部材24にぶら下げられた状態であり、プレート部材24に強固に固定されるわけではない。即ち、このアンカーぶら下げ工程では、アンカー12は仮固定状態である。
また、このようにプレート部材24にぶら下げられたアンカー12が地覆鉄筋21に接触しないように、当該プレート部材24におけるアンカー挿通孔24bの形成位置が予め設計されている。さらに、上記のプレート部材掛け渡し工程では、このアンカーぶら下げ工程にてプレート部材24にぶら下げられるアンカー12が地覆鉄筋21に接触しないように、当該プレート部材24の載置位置が予め調整される。また、プレート部材24の載置位置を予め調整しておくことによっても、アンカー12が地覆鉄筋21に接触してしまうことを回避することが可能である。
【0023】
(6)アンカー押さえ付け工程
このアンカー押さえ付け工程は、上記のアンカーぶら下げ工程にてプレート部材24にぶら下げたアンカー12の上端面、換言すれば、ナット27の上端面を、押え板28によって上方から押さえ付ける工程である。この押え板28は、そのほぼ中央部に、当該押え板28を板厚方向に貫通する押え板固定用孔を有している。そして、この押え板28の押え板固定用孔とプレート部材24の押え板固定用孔24aとに押え板固定用のボルト28aを挿通し、この押え板固定用のボルト28aの先端部、この場合、下端部にナット28bを取り付け、このナット28bを締め付けることにより、押え板28がアンカー12の上端面を上方から押さえ付けた状態で固定されるようになる。このように、アンカー12の上端面を押え板28によって上方から押さえ付けることによって、仮固定状態だったアンカー12が垂直な状態で強固に固定されるようになる。また、アンカー12の出代を正確に決めることができる。なお、図5は、このアンカー押さえ付け工程までを完了した状態を示している。
【0024】
(7)コンクリート打設工程
このコンクリート打設工程は、図2(g)に示すように、上記したアンカー押さえ付け工程にてアンカー12を強固に固定した上で、一対の枠部材22,23の間にコンクリートCを打設する工程である。なお、コンクリートを打設するとは、コンクリートを流し込むことである。このコンクリート打設工程では、コンクリートCは、図2(g)に二点鎖線で示すように、一対の枠部材22,23の面木部22a,23aの上端面まで流し込まれる。このとき、アンカー12は、上記したアンカー押さえ付け工程までの処理によって、プレート部材24に強固に固定されている。従って、アンカー12が、流れ込むコンクリートCに押されて傾いてしまうことが防止される。また、アンカー12の出代部分がカバー部材26のスリーブ部26aによって覆われていることから、当該出代部分にコンクリートCが付着することが防止される。また、このカバー部材26がアンカー12の出代部分を支えることから、アンカー12が傾いてしまうことがさらに防止される。
【0025】
(8)仕上げ工程
この仕上げ工程は、上記のコンクリート打設工程にて打設したコンクリートCが固まったら、図2(h)に示すように、各部材を取り外し、これにより、アンカー12が埋め込まれた地覆コンクリート11を得る工程である。このように施工されたアンカー12には、例えば図1に示した高欄10などの防護柵が、図1に示すナット10aなどによって締結されることによって強固に固定される。なお、地覆コンクリート11のうち上部の幅方向の両端部、つまり、枠部材22,23の面木部22a,23aに対向していた部分は、面取り部11aとなっている。
【0026】
以上に説明したように本実施形態によれば、アンカー挿通孔24bを有するプレート部材24が一対の枠部材22,23に掛け渡され、そのプレート部材24のアンカー挿通孔24bからアンカー12がぶら下げられ、この状態で、一対の枠部材22,23の間にコンクリートCが打設される。即ち、アンカーを地覆鉄筋に固定した状態でコンクリートを打設する従来の方法とは異なり、アンカー12を地覆鉄筋21に接触させることなく上方からぶら下げた状態でコンクリートCを打設するようにした。従って、強度を低下させることなくアンカー12を施工することができる。また、アンカーを地覆鉄筋に直接的に固定していた従来の施工方法とは異なり、電食の発生を防止でき、従って、アンカー12のメッキの溶出やアンカー12の腐食を回避でき、アンカー12の寿命が低下してしまうことを防止することができる。
【0027】
また、プレート部材24からぶら下げられたアンカー12は、そのぶら下げ位置、つまり、アンカー挿通孔24bの形成位置にて、流し込まれたコンクリートC、つまり、地覆コンクリート11に固定される。従って、プレート部材24におけるアンカー挿通孔24bの形成位置を正確に設定しておくことで、地覆コンクリート11におけるアンカー12の配置位置、つまり、各アンカー12間のピッチや各アンカー12の水平方向における位置関係などを正確に決めることができる。
【0028】
また、プレート部材24にぶら下げたアンカー12の上端面を押え板28によって上方から押さえ付けるので、アンカー12が地覆コンクリート11から突出する高さ、つまり出代の大きさを正確に決めることができる。また、このようにプレート部材24にぶら下げたアンカー12の上端面を押え板28によって上方から押さえ付けることによって、コンクリートCを打設する際にアンカー12が傾斜してしまうことを防止することができる。従って、地覆コンクリート11におけるアンカー12の角度を垂直に決めることができる。
【0029】
また、アンカー12の固定に際し、結束線や補助鉄筋などが不要である。また、アンカー12を地覆鉄筋21に接触することがなく、アンカー12の電食による腐食を回避して、寿命を低下させることなく、アンカー12を施工することができる。また、高欄10などの防護柵の固定に際し最も肝心なアンカー12を、その強度や寿命を低下させることなく施工することができ、これにより、防護柵、ひいては、道路や橋梁などの強度や寿命も適切に維持することができる。
【0030】
また、本実施形態の施工方法によれば、アンカー12をぶら下げたプレート部材24は、スペーサ25を介して面木部22a,23aに載置されることで、一対の枠部材22,23の間に打設されるコンクリートCの上端面、換言すれば、地覆コンクリート11の上端面よりも上方に掛け渡される。従って、施工後におけるアンカー12の出代、つまり、強度を確保するために定められた出代寸法を十分に確保することができる。また、一対の枠部材22,23の間に打設されるコンクリートCの上端面よりも上方にプレート部材24を掛け渡すことで、打設されたコンクリートCがプレート部材24の下面に接触することがない。従って、施工後においてプレート部材24を容易に取り外すことができるとともに、プレート部材24を取り外す際に地覆コンクリート11の上端面を損傷してしまうことを回避することができる。また、打設したコンクリートCの上面の仕上げを行い易くすることができる。
【0031】
ところで、このように、アンカー12をぶら下げるプレート部材24を、一対の枠部材22,23の間に打設されるコンクリートCの上端面よりも上方に掛け渡す場合、例えば、コンクリートCの打設時や打設したコンクリートCの上面の仕上げをする時などに、アンカー12の出代部分にコンクリートCが付着してしまうことが懸念される。アンカー12の出代部分にコンクリートCが付着して固まってしまうと、当該アンカー12に高欄10などの防護柵を固定することが困難あるいは不能となる。
【0032】
このような事情を背景として、従来では、アンカー12の出代となる部分にテープなどを巻き付けることによって、コンクリートCの付着を回避していた。しかし、この方法では、テープの巻き付け作業および取り外し作業という極めて面倒な作業が必要となり、アンカー12の施工を大変困難なものとしていた。そこで、本実施形態の施工方法では、アンカー12のうちプレート部材24と一対の枠部材22,23の間に打設されるコンクリートCの上端面との間に位置する部分、つまり、出代となる部分に、カバー部材26のスリーブ部26aを取り付ける。そして、この状態、つまり、アンカー12のうち出代となる部分がカバー部材26のスリーブ部26aによって覆われた状態で、一対の枠部材22,23の間にコンクリートCを打設する。
【0033】
この施工方法によれば、アンカー12の出代となる部分のうち少なくともプレート部材24よりも下方部分、つまり、コンクリートCが付着してしまうことが懸念される部分がカバー部材26のスリーブ部26aで覆われていることから、当該部分へのコンクリートCの付着を防止することができ、従って、施工後のアンカー12に高欄10などの防護柵を固定することが困難あるいは不能となることがない。また、このカバー部材26は、施工完了後にプレート部材24とともに、あるいは、カバー部材26単独で容易に取り外すことができる。
【0034】
また、複数、この場合、高欄10の1本の支柱10bを固定するのに必要な4本のアンカー12を一体のアンカー群として扱う場合には、そのアンカー群全体としては、アンカー12を1本ずつ扱う場合に比べて重量が重くなり、地覆鉄筋21に干渉し易く設置困難となる。しかし、本実施形態によれば、プレート部材24をセットし、このプレート部材24に4本のアンカー12をぶら下げるようにしたので、複数のアンカー12を一体のアンカー群として扱う場合の重量的な問題を解消できる。これにより、アンカー12と地覆鉄筋21との干渉も回避でき、アンカー12の施工が極めて容易となる。
【0035】
なお、本発明は、上述した一実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
プレート部材24に形成するアンカー挿通孔24bの数は、施工するアンカー12の数に応じて適宜変更して実施することができる。
先にプレート部材24にアンカー12をぶら下げ、これを一対の枠部材22,23に掛け渡すようにしてもよい。
【0036】
押え板28の固定は、ボルト28aおよびナット28bによる締結に限られるものではなく、例えば釘などによって固定してもよいし、クランプなどによって固定してもよい。
例えば図6(a)に示すように、カバー部材26に代わる円形筒状のカバー部材31の内周部にねじ部31aを設け、このねじ部31aをアンカー12のねじ部12aにねじ込ませることにより、アンカー12の出代となる部分をカバー部材31で覆うようにしてもよい。なお、このとき、カバー部材31は、アンカー挿通孔24b内には挿通せず、プレート部材24の下側に固定する。即ち、アンカー12をプレート部材24の下方からアンカー挿通孔24b内に挿通し、その後、ナット27を取り付け、押え板28によって押さえ付ける。そして、ぶら下げられたアンカー12の下端部からカバー部材31をねじ込み、プレート部材24の下面に密着させて固定し、これにより、アンカー12の傾倒およびコンクリートの付着を防止する。
【0037】
また、例えば図6(b)に示すように、カバー部材26に代わる円形筒状のカバー部材32に当該カバー部材32が延びる方向に沿ってスリット32aを設け、このカバー部材32をスリット32aから広げてアンカー12の側方から取り付けるようにしてもよい。なお、このとき、カバー部材32は、アンカー挿通孔24b内には挿通せず、プレート部材24の下側に固定する。
また、本実施形態は、カバー部材26,31,32を取り付けない場合も含むものであり、この場合、従来と同様に、アンカー12の出代となる部分にテープなどを巻き付けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0038】
図面中、11は地覆コンクリート、12はアンカー、21は地覆鉄筋(鉄筋)、22,23は枠部材、24はプレート部材、24bはアンカー挿通孔、26,31,32はカバー部材、27はナット、28は押え板を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋を設置し、
前記鉄筋の両側部に一対の枠部材を設置し、
アンカー挿通孔を有するプレート部材を、前記一対の枠部材に掛け渡し、
アンカーを前記プレート部材の前記アンカー挿通孔に下方から挿通し、
前記アンカーの上端部に前記アンカー挿通孔よりも大きいナットを取り付けることによって当該アンカーを前記プレート部材にぶら下げ、
前記アンカーの上端面を押え板によって上方から押さえ、
前記一対の枠部材の間にコンクリートを打設することにより、内部に前記鉄筋を有する地覆コンクリートに前記アンカーを設置することを特徴とするアンカーの施工方法。
【請求項2】
前記プレート部材を、前記一対の枠部材の間に打設されるコンクリートの上端面よりも上方に掛け渡すことを特徴とする請求項1に記載のアンカーの施工方法。
【請求項3】
前記アンカーのうち前記プレート部材と前記一対の枠部材の間に打設されるコンクリートの上端面との間に位置する部分にカバー部材を取り付けることを特徴とする請求項2に記載のアンカーの施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87446(P2013−87446A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226719(P2011−226719)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(591006520)株式会社興和工業所 (34)
【Fターム(参考)】