説明

アンカーコーティング剤

【課題】 極性基材と非極性樹脂とのいずれに対しても優れた密着性を有し、かつ、熱や水(湿気)等の影響によって、劣化や密着性の低下を引き起こさないレベルの耐湿熱性を備えた水性アンカーコーティング剤を提供すること
【解決手段】 水性ウレタン樹脂(A)、水性ポリオレフィン樹脂(B)、エポキシ系架橋剤(C)及び水性媒体(D)を含有する水性樹脂組成物であって、前記水性ウレタン樹脂(A)及び水性ポリオレフィン樹脂(B)が、エポキシ基と反応しうる官能基[X]を有するものであることを特徴とするアンカーコーティング剤、該アンカーコーティング剤を用いた積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押し出しラミネート用アンカーコーティング剤やヒートシール剤をはじめとする様々な用途に有用なアンカーコーティング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装材料用途、産業資材用途にPETフィルムが汎用的に使われている。また、同様にポリプロピレンを代表とするポリオレフィン(フィルム)も汎用的に使われている。
特にポリオレフィンは、押し出しラミネートにより他のフィルムと積層される場合があり、密着性の観点からアンカーコーティング剤が併用される場合がある。
食品包装材料用途、産業資材用途の業界では、環境負荷の少ない、水性タイプであり且つハロゲンフリータイプが望まれている。食品包装材料用途、産業資材用途では、高い耐湿熱性(レトルト等)を要求される場合があるが、上記の条件(水性かつハロゲンフリー)を満たす押し出しアンカーコーティング剤はない。
【0003】
水性のアンカーコーティング剤として、N,Nジアルキルアリルアミン重合体が提案されている。この場合、ポリエチレンイミン系は水/アルコール希釈が可能であるが、耐湿熱性が不十分であった(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、塩素化ポリオレフィン樹脂水性分散体を用いた例もあるが、該分散体は水性タイプではあるが、ハロゲンを多く含み、本発明の目的に適さない(例えば、特許文献2または3参照。)。
【0005】
酸変性ポリオールと有機ポリイソシアネート化合物を用いた分散体も提案されているが、この場合有機溶剤を多量に混合しており、本発明の目的に適さない(例えば、特許文献4または5参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−282005号公報
【特許文献2】特開平9−76500号公報
【特許文献3】特開2010−111879号公報
【特許文献4】特開平7−268308号公報
【特許文献5】特開平5−263060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、例えば極性基材と非極性樹脂とのいずれに対しても優れた密着性を有し、かつ、熱や水(湿気)等の影響によって、劣化や密着性の低下を引き起こさないレベルの耐湿熱性を備えた水性アンカーコーティング剤を提供することである。
【0008】
また、本発明が解決しようとする課題は、例えば極性基材と非極性樹脂とのいずれに対しても優れた密着性を有し、熱や水(湿気)等の影響によって、劣化や密着性の低下を引き起こさないレベルの耐湿熱性を備えた樹脂硬化物層を形成可能であり、かつ、極性基材の表面に、前期水性アンカーコーティング剤を塗工し乾燥することによって樹脂層を形成した後、その樹脂層上に非極性樹脂を押し出しラミネートすることを可能とするアンカーコーティング剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は前記課題を解決すべく検討するなかで、水性ウレタン樹脂(A)と水性ポリオレフィン樹脂(B)とを組み合わせた樹脂組成物をベースとして検討を進め、該樹脂組成物と併用可能な様々な種類の架橋剤との組み合わせを検討した。
【0010】
具体的には、前記樹脂組成物とともに、エポキシ系架橋剤を組み合わせた場合に、予想外にも、基材に対する密着性を損なうことなく、熱や水等の影響によって劣化しない樹脂層を形成できることを見出した。
【0011】
即ち、本発明は、水性ウレタン樹脂(A)、水性ポリオレフィン樹脂(B)、エポキシ系架橋剤(C)及び水性媒体(D)を含有する水性樹脂組成物であって、前記水性ウレタン樹脂(A)及び水性ポリオレフィン樹脂(B)が、エポキシ基と反応しうる官能基[X]を有するものであることを特徴とするアンカーコーティング剤に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のアンカーコーティング剤は、産業界において幅広く使用されているポリエチレンテレフタレート等からなる基材やオレフィン系樹脂に対して優れた密着性を有することから、例えば、押し出しラミネート用のアンカーコーティング剤等に使用することができる。
【0013】
また、本発明のアンカーコーティング剤は、押し出しラミネート用のアンカーコーティング剤として好適に使用できることから、各種基材や樹脂を積層して得られる積層体(複合部材)の生産効率を著しく向上することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のアンカーコーティング剤は、水性ウレタン樹脂(A)、水性ポリオレフィン樹脂(B)、エポキシ系架橋剤(C)、水性媒体(D)及び必要に応じてその他の添加剤を含有する水性樹脂組成物であり、前記水性ウレタン樹脂(A)及び水性ポリオレフィン樹脂(B)が、エポキシ基と反応しうる官能基[X]を有することを必須とするものである。
【0015】
本発明のアンカーコーティング剤は、前記水性ウレタン樹脂(A)及び前記水性ポリオレフィン樹脂(B)として、前記架橋剤の有する官能基と架橋反応しうる官能基[X]を有するものを使用するとともに、前記エポキシ系架橋剤(C)を使用することを特徴とするものである。
【0016】
前記エポキシ系架橋剤(C)は前記前記水性ウレタン樹脂(A)及び前記水性ポリオレフィン樹脂(B)の有する官能基[X]と反応し架橋構造を形成しうる。
【0017】
前記エポキシ系架橋剤(C)や使用量は、前記水性ウレタン樹脂(A)及び前記水性ポリオレフィン樹脂(B)が有する前記官能基[X]の合計物質量に対する、前記エポキシ系架橋剤(C)質量の割合〔エポキシ基の質量/官能基[X]の合計物質量〕が5/1〜1/5となる範囲で使用することが優れた耐湿熱性と各種基材に対する優れた密着性とを両立するうえで好ましく、2/1〜1/3の範囲で使用することがより好ましい。
【0018】
これにより、加熱等によって硬化する際に強固な架橋密度を形成した層を形成できるため、熱や水(湿気)等の影響によらず前記層の劣化や密着力の低下を引き起こさないレベルの耐湿熱性と、各種基材に対する優れた密着性とを両立することが可能となる。
【0019】
前記官能基[X]としては、例えばカルボキシル基や水酸基、アミノ基等が挙げられ、なかでもカルボキシル基であることが好ましい。
【0020】
なお、前記水性ウレタン樹脂(A)及び前記水性ポリオレフィン樹脂(B)を水性媒体(D)中に安定して存在させるためにアニオン性基やカチオン性基等の親水性基を有するウレタン樹脂やポリオレフィン樹脂を使用する場合には、該親水性基としてのカルボキシル基やカルボキシレート基等が、前記架橋反応の際に、前記官能基[X]としても作用し、前記架橋剤(C)の一部架橋反応しうる。
特に、前記官能基[X]としてカルボキシル基を使用する場合、前記水性ウレタン樹脂(A)としては、2〜50の酸価を有するものであることが好ましく、5〜35の酸価を有するものを使用することが、各種基材に対する密着性を向上するうえで好ましい。
また、前記水性ポリオレフィン樹脂(B)としては、5〜300の酸価を有するものを使用することが好ましく、10〜250の酸価を有するものを使用することがより好ましい。
【0021】
前記水性ウレタン樹脂(A)と前記水性ポリオレフィン樹脂(B)は、前記水性媒体(D)中にそれぞれ独立して分散または溶解することが好ましいが、それらの一部が結合し樹脂粒子を形成しても、いわゆるコア・シェル型の複合樹脂粒子を形成していてもよい。
【0022】
なかでも、前記水性ウレタン樹脂(A)と前記水性ポリオレフィン樹脂(B)は、それぞれ独立して樹脂粒子を形成し、前記水性媒体(D)中に分散することが好ましい。
【0023】
前記樹脂粒子は、形成しうる塗膜の平滑性を高めるうえで、10nm〜500nmの範囲の平均粒子径であることが好ましい。ここで言う平均粒子径とは、動的光散乱法により測定した体積基準での平均粒子径を指す。
【0024】
また、前記水性ウレタン樹脂(A)は、組成の異なる2種以上の水性ウレタン樹脂を混合したものであってもよい。具体的には、水性ウレタン樹脂の製造に使用するポリオール(a1)の組成が異なる水性ウレタン樹脂を2種以上組み合わせ使用することができる。
【0025】
前記水性ウレタン樹脂(A)と前記水性ポリオレフィン樹脂(B)との質量割合[(A)/(B)]は、9/1〜2/8の範囲であることが好ましく、8/2〜3/7の範囲であることが、優れた耐湿熱性と各種基材に対する優れた密着性とを両立するうえで好ましい。
【0026】
また、前記水性ウレタン樹脂(A)及び前記水性ポリオレフィン樹脂(B)は、本発明のアンカーコーティング剤の全量に対して5質量%〜70質量%の範囲で含まれることが、アンカーコーティング剤の良好な分散安定性及び塗工作業性を維持するうえで好ましい。
【0027】
また、前記水性ウレタン樹脂(A)及び前記水性ポリオレフィン樹脂(B)は、前記水性媒体(D)中における良好な分散安定性を付与する観点から、親水性基を有していてもよい。前記親水性基としては、例えばアニオン性基、カチオン性基、及びノニオン性基を使用できる、なかでもアニオン性基を使用することがより好ましい。
【0028】
前記アニオン性基としては、例えばカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基等を使用することができ、なかでも、一部または全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散性を有する水性樹脂を製造する上で好ましい。
【0029】
また、前記カチオン性基としては、例えば3級アミノ基やそれを酸化合物や4級化剤を用いて中和したもの等を使用することができる。
【0030】
また、前記ノニオン性基としては、例えばポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリ(オキシエチレン−オキシプロピレン)基、及びポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を使用することができる。
【0031】
前記水性ウレタン樹脂(A)は、前記官能基[X]を有するものであって、優れた耐湿熱性と各種基材に対する優れた密着性とを両立した樹脂硬化物層を形成しうるアンカーコーティング剤を得るうえで使用する。
【0032】
前記水性ウレタン樹脂(A)としては、極性基材や非極性基材に対する優れた密着性と耐久性とを付与する観点から、10000〜100000の範囲の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、20000〜50000の範囲のものを使用することがより好ましい。
【0033】
また、前記水性ウレタン樹脂(A)としては、ポリエチレンテレフタレート等の表面極性の高い極性基材に対する密着性をより一層高める観点から、水性ウレタン樹脂(A)の全体に対して芳香族環構造を200mmol/kg〜9000mmol/kgの範囲で有するものを使用することが好ましい。より好ましくは、350mmol/kg〜8000mmol/kgの範囲がよい。
【0034】
前記水性ウレタン樹脂(A)は、前記官能基[X]を有するものであって、優れた耐湿熱性と各種基材に対する優れた密着性とを両立した樹脂硬化物層を形成しうるアンカーコーティング剤を得るうえで使用する。
【0035】
前記水性ウレタン樹脂(A)は、例えばポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)と、必要に応じて鎖伸長剤とを反応させることによって製造することができる。
【0036】
前記ポリオール(a1)としては、例えばポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール等を単独または2以上を併用して使用できる。
【0037】
なかでも、ポリエステルポリオールやポリカーボネートポリオールを使用することが好ましく、芳香族構造含有ポリエステルポリオールや、ポリカーボネートポリオールを使用することがより好ましい。
【0038】
前記芳香族構造含有ポリエステルポリオールは、例えばポリエチレンテレフタレートの表面極性の高い極性基材に対する密着性を高めたい場合に使用することが好ましい。一方、ポリカーボネートポリオールは、基材の劣化や樹脂硬化層の劣化を防止可能なレベルの耐久性を付与するうえで使用することが好ましい。
【0039】
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものや、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
【0040】
前記低分子量のポリオールとしては、例えば概ね分子量が50〜300程度である、エチレングリコールやプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−ブタンジオール等の脂肪族ポリオールや、シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族環式構造含有ポリオール、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール化合物及びそれらのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族構造含有ポリオールを使用することができる。
【0041】
また、前記ポリカルボン酸としては、例えばコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ポリカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ポリカルボン酸、及びそれらの無水物またはエステル形成性誘導体等を使用することができる。
【0042】
前記ポリエステルポリオールとして使用可能な芳香族構造含有ポリエステルポリオールは、例えば、前記低分子量のポリオール及びポリカルボン酸の組み合わせとして、いずれか一方または両方に芳香族構造を有するものを使用することによって製造することができる。
【0043】
具体的には、前記芳香族構造含有ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコールやジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ポリオールと、テレフタル酸やイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ポリカルボン酸とを組み合わせ反応させることによって得られるものを使用することが好ましい。また、ビスフェノールA等の芳香族構造含有ポリオールと前記脂肪族ポリカルボン酸とを反応させることによっても製造することができる。
【0044】
前記芳香族構造含有ポリエステルポリオールとしては、特に極性基材に対する密着性を向上する観点から、前記芳香族構造含有ポリエステルポリオールの全量に対して300mmol/Kg〜10000mmol/Kgの範囲の芳香族環構造を有するものを使用することが、優れた耐湿熱性を損なうことなく、ポリエチレンテレフタレート基材をはじめとする表面極性の高い極性基材に対する密着性を向上するうえで好ましい。
【0045】
前記ポリエステルポリオールとしては、200〜5000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。なかでも前記芳香族構造含有ポリエステルポリオールとしては、優れた耐湿熱性を損なうことなく、ポリエチレンテレフタレート基材をはじめとする表面極性の高い極性基材に対する密着性を向上するうえで250〜3000の数平均分子量を有するものを使用することが好ましい。
【0046】
前記ポリエステルポリオール、好ましくは芳香族構造含有ポリエステルポリオールは、本発明の水性ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の合計質量に対して、10質量%〜90質量%の範囲で使用することが、優れた耐湿熱性を損なうことなく、ポリエチレンテレフタレート基材をはじめとする表面極性の高い極性基材に対する密着性を向上するうえで好ましい。
【0047】
また、前記ポリオール(a1)に使用可能なポリカーボネートポリオールとしては、例えば炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0048】
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等を使用することできる。
【0049】
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の概ね分子量50〜2000である比較的低分子量のジオールや、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールや、ポリヘキサメチレンアジペート等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0050】
なかでも、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールの単独または2種以上と炭酸エステルとを反応させて得られるポリカーボネートポリオールを使用することが、エチレン−酢酸ビニル樹脂やポリプロピレン等からなる非極性基材に対する密着性を付与するうえで好ましい。
【0051】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、500〜4000の範囲の数平均分子量を有するものを使用することが、優れた耐湿熱性を損なうことなく、エチレン−酢酸ビニル樹脂やポリプロピレン等からなる非極性基材に対する密着性を付与するうえで好ましい。
【0052】
前記ポリカーボネートポリオールは、本発明の水性ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオール(a1)及びポリイソシアネート(a2)の合計質量に対して10質量%〜90質量%の範囲で使用することが、優れた耐湿熱性を損なうことなく、エチレン−酢酸ビニル樹脂やポリプロピレン等からなる非極性基材に対する密着性を付与するうえで好ましい。
【0053】
また、前記ポリオール(a1)に使用可能な前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば活性水素原子を2個以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0054】
前記開始剤としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
【0055】
前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
【0056】
また、前記ポリオール(a1)に使用可能な前記ポリオレフィンポリオールとしては、例えばポリエチレンポリオール、ポリプロピレンポリオール、ポリイソブテンポリオール、水素添加(水添)ポリブタジエンポリオール、水素添加(水添)ポリイソプレンポリオール、を使用することができる。
【0057】
また、前記ポリオール(a1)としては、前記水性ウレタン樹脂(A)に良好な水分散安定性を付与する観点から、前記したものの他に、親水性基含有ポリオールを組み合わせ使用することができる。
【0058】
前記親水性基含有ポリオールとしては、例えば前記したポリオール以外のアニオン性基含有ポリオール、カチオン性基含有ポリオール、及びノニオン性基含有ポリオールを使用することができる。なかでも、アニオン性基含有ポリオールまたはカチオン性基含有ポリオールを使用することが好ましく、アニオン性基含有ポリオールを使用することがより好ましい。
【0059】
前記アニオン性基含有ポリオールとしては、例えばカルボキシル基含有ポリオールや、スルホン酸基含有ポリオールを使用することができる。
【0060】
前記カルボキシル基含有ポリオールとしては、例えば2,2’−ジメチロールプロピオン酸、2,2’−ジメチロールブタン酸、2,2’−ジメチロール酪酸、2,2’−ジメチロール吉草酸等を使用することができ、なかでも2,2’−ジメチロールプロピオン酸を使用することが好ましい。また、前記カルボキシル基含有ポリオールと各種ポリカルボン酸とを反応させて得られるカルボキシル基含有ポリエステルポリオールも使用することもできる。
【0061】
前記スルホン酸基含有ポリオールとしては、例えば5−スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホフタル酸、5[4−スルホフェノキシ]イソフタル酸等のジカルボン酸またそれらの塩と、前記芳香族構造含有ポリエステルポリオール(a2)の製造に使用可能なものとして例示した低分子量ポリオールとを反応させて得られるポリエステルポリオールを使用することができる。
【0062】
前記カルボキシル基含有ポリオールやスルホン酸基含有ポリオールは、前記ウレタン樹脂(C)の酸価が10〜70となる範囲で使用することが好ましく、10〜50となる範囲で使用することがより好ましい。なお、本発明で言う酸価は、前記ウレタン樹脂(C)の製造に使用したカルボキシル基含有ポリオール等の酸基含有化合物の使用量に基づいて算出した理論値である。
【0063】
前記アニオン性基は、それらの一部または全部が塩基性化合物等によって中和されていることが、良好な水分散性を発現するうえで好ましい。
【0064】
前記アニオン性基を中和する際に使用可能な塩基性化合物としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等の沸点が200℃以上の有機アミンや、NaOH、KOH、LiOH等を含む金属水酸化物等を使用することができる。前記塩基性化合物は、得られるコーティング剤の水分散安定性を向上させる観点から、塩基性化合物/アニオン性基=0.5〜3.0(モル比)となる範囲で使用することが好ましく、0.9〜2.0(モル比)となる範囲で使用することがより好ましい。
【0065】
また、前記カチオン性基含有ポリオールとしては、例えば3級アミノ基含有ポリオールを使用することができ、具体的にはN−メチル−ジエタノールアミンや、1分子中にエポキシを2個有する化合物と2級アミンとを反応させて得られるポリオールなどを使用することができる。
【0066】
前記カチオン性基は、その一部または全部が、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グルタル酸、酒石酸、アジピン酸等の酸性化合物で中和されていることが好ましい。
【0067】
また、前記カチオン性基としての3級アミノ基は、その一部または全部が4級化されていることが好ましい。前記4級化剤としては、例えばジメチル硫酸、ジエチル硫酸、メチルクロライド、エチルクロライド等を使用することができ、ジメチル硫酸を使用することが好ましい。
【0068】
また、前記ノニオン性基含有ポリオールとしては、エチレンオキサイド由来の構造単位を有するポリアルキレングリコール等を使用することができる。
【0069】
前記親水性基含有ポリオールは、前記水性ウレタン樹脂(A)の製造に使用するポリオール(a1)の全量に対して、0.3質量%〜10.0質量%の範囲で使用することが好ましい。
【0070】
また、前記ポリオール(a1)としては、前記したポリオールの他に、必要に応じてその他のポリオールを使用することができる。
【0071】
前記その他のポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等の比較的低分子量のポリオールを使用することができる。
【0072】
前記ポリオール(a1)と反応しうるポリイソシアネート(a2)としては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを使用することができる。
【0073】
前記水性ウレタン樹脂(A)は、例えば無溶剤下または有機溶剤の存在下で、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)とを反応させることで水性ウレタン樹脂を製造し、次いで、前記ウレタン樹脂中に親水性基がある場合には、該親水性基の一部または全部を必要に応じて中和したものを、水性媒体(D)中に混合し水性化する際に、必要に応じて鎖伸長剤と混合し、反応させることによって製造することができる。
【0074】
前記ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応は、例えば、前記ポリオール(a1)が有する水酸基に対する、前記ポリイソシアネート(a2)が有するイソシアネート基の当量割合が、0.8〜2.5の範囲で行うことが好ましく、0.9〜1.5の範囲で行うことがより好ましい。
【0075】
また、前記水性ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用可能な有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;アセトニトリル等のニトリル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類を、単独で使用または2種以上を使用することができる。
【0076】
本発明で使用する水性ウレタン樹脂(A)としては、重量平均分子量10000〜100000の範囲のものを使用できるが、極性基材や非極性基材に対する密着性を向上する観点から水性ウレタン樹脂(A)の分子量を高める際には、鎖伸長剤を使用してもよい。
【0077】
前記水性ウレタン樹脂(A)を製造する際に使用できる鎖伸長剤としては、ポリアミンや、その他活性水素原子含有化合物等を使用することができる。
【0078】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N−ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N−エチルアミノエチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’−ジメチルヒドラジン、1,6−ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジッド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β−セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3−セミカルバジッド−プロピル−カルバジン酸エステル、セミカルバジッド−3−セミカルバジドメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンを使用することができ、エチレンジアミンを使用することが好ましい。
【0079】
前記その他活性水素含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール類;ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール類、及び水等を、本発明のコーティング剤の保存安定性が低下しない範囲内で単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0080】
前記鎖伸長剤は、例えばポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3〜1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
【0081】
また、前記方法で製造した水性ウレタン樹脂(A)の水性化は、例えば、次のような方法で行うことができる。
【0082】
〔方法1〕ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られた水性ウレタン樹脂の親水性基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水を投入して水分散せしめ、その後に前記鎖伸長剤を用いて鎖伸長することにより水性ウレタン樹脂(A)を水分散させる方法。
【0083】
〔方法2〕ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られた水性ウレタン樹脂と、前記と同様の鎖伸長剤とを、反応容器中に一括又は分割して仕込み、鎖伸長反応させることで水性ウレタン樹脂(A)を製造し、次いで得られた水性ウレタン樹脂(A)中の親水基の一部又は全てを中和又は4級化した後、水を投入して水分散せしめる方法。
【0084】
前記〔方法1〕〜〔方法2〕では、必要に応じて乳化剤を使用してもよい。また、水溶解や水分散の際には、必要に応じてホモジナイザー等の機械を使用しても良い。
【0085】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;アルキルアミン塩、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤が挙げられる。なかでも本発明のコーティング剤の優れた保存安定性を維持する観点から、基本的にアニオン性又はノニオン性の乳化剤を使用することが好ましい。
【0086】
前記方法で得られた水性ウレタン樹脂(A)が水性媒体(D)中に分散した水性ウレタン樹脂(A)水分散体は、前記水性ウレタン樹脂(A)を、該水分散体の全量に対して10〜50の範囲で含むものであることが、本発明のアンカーコーティング剤の調製のしやすさやを向上するとともに、優れた耐湿熱性と各種基材に対する優れた密着性とを両立したアンカーコーティング剤を調製するうえで好ましい。
【0087】
次に、本発明のアンカーコーティング剤の製造に使用する水性ポリオレフィン樹脂(B)について説明する。
【0088】
本発明で使用する水性ポリオレフィン樹脂(B)としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン等のホモポリマーやコポリマー等のうち、官能基[X]を有するものを使用することができ、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−プロピレン共重合体、天然ゴム、合成イソプロピレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のうち、前記架橋剤(C)のエポキシ基やイソシアネート基と反応しうる官能基[X]を有するものを使用することが必須である。前記水性ポリオレフィン樹脂(B)がコポリマーである場合には、ランダムコポリマーであってもブロックコポリマーであっても良い。
【0089】
前記水性ポリオレフィン樹脂(B)の有する官能基[X]としては、前記水性ウレタン樹脂(A)の有する官能基[X]と同様に例えばカルボキシル基等が挙げられ、なかでもカルボキシル基であることが好ましい。なお、前記官能基[X]は、水性ポリオレフィン樹脂(B)の有する親水性基と同様の官能基であっても良い。具体的には、前記親水性基としてアニオン性基であるカルボキシル基やカルボキシレート基を使用した場合、前記カルボキシル基等は、架橋反応の際に前記官能基[X]として作用してもよい。
【0090】
前記官能基[X]としてのカルボキシル基を有する水性ポリオレフィン樹脂(B)としては、上記で例示したポリオレフィン樹脂と不飽和カルボン酸と反応させて得られたものや、ビニル単量体と反応させて得られたものや、塩素化したもの等の、いわゆる変性ポリオレフィン系樹脂を使用することが好ましい。
【0091】
前記官能基[X]としての、例えばカルボキシル基は、ポリオレフィン樹脂と、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸とを反応させることによって、水性ポリオレフィン樹脂(B)に導入することができる。
【0092】
前記不飽和ジカルボン酸としては、たとえばマレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、およびこれらの無水物、不飽和ジカルボン酸エステル類(マレイン酸ブチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ブチル等)が挙げられ、これら1種以上を用いることができる。このうち好ましいのは、無水マレイン酸である。
【0093】
前記不飽和カルボン酸で変性された水性ポリオレフィン樹脂(B)は、5〜250の範囲の酸価を有するものであることが、熱や水(湿気)等の影響による樹脂硬化層の劣化を防止し、各種基材に対する密着性の低下を防止するうえで好ましい。
【0094】
前記ポリオレフィン樹脂の変性は、例えば、前記したようなポリオレフィン樹脂とマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸等とを加熱等し反応させることによって行うことができる。
【0095】
また、前記水性ポリオレフィン樹脂(B)としては、熱や水(湿気)等の影響による樹脂硬化層の劣化を防止し、各種基材に対する密着性の低下を防止するうえで20000〜500000の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましい。なお、前記重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定された値を指す。
【0096】
次に、本発明で使用するエポキシ系架橋剤(C)について説明する。
本発明では、エポキシ系架橋剤(C)を使用することが、優れた耐湿熱性と各種基材に対する優れた密着性とを両立したアンカーコーティング剤を得るうえで重要である。エポキシ系架橋剤(C)とを組み合わせ使用することにより、熱や水(湿気)等の影響による樹脂硬化層の劣化を防止し、各種基材に対する密着性の低下を防止するうえでより好ましい。
【0097】
前記エポキシ系架橋剤(C)としては、例えばビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N'−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサンや、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等の加水分解性シリル基含有エポキシ系架橋剤(c1−1)を使用することができる。
【0098】
なかでも前記加水分解性シリル基含有エポキシ系架橋剤(c1−1)を使用することが、熱や水(湿気)等の影響による樹脂硬化層の劣化を防止し、各種基材に対する密着性の低下を防止するうえでより好ましく、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン及び2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランからなる群より選ばれる1種以上を使用することがより好ましい。
【0099】
次に、本発明で使用する水性媒体(D)について説明する。
本発明で使用する水性媒体(D)として、例えば、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0100】
前記水性媒体(D)は、本発明のアンカーコーティング剤の全量に対して、30質量%〜90質量%の範囲で含まれることが、本発明のアンカーコーティング剤の塗工作業性等の向上と、密着性や耐湿熱性とを両立するうえで好ましい。
【0101】
本発明のアンカーコーティング剤は、例えば前記方法で得られた水性ウレタン樹脂(A)の水分散体と、前記水性ポリオレフィン樹脂(B)の水分散体と、前記エポキシ架橋剤(C)とを、一括または分割して供給し、混合することによって製造することができる。前記架橋剤(C)は、水性ウレタン樹脂(A)の水分散体や前記水性ポリオレフィン樹脂(B)の水分散体と混合しても良い。
【0102】
前記方法で得られた本発明のアンカーコーティング剤は、前記した成分のほかに、必要に応じてその他の添加剤等を含有していても良い。
【0103】
前記添加剤としては、例えば酸化防止剤、耐光剤、可塑剤、造膜助剤、レベリング剤、発泡剤、増粘剤、着色剤、難燃剤、他の水性樹脂、各種フィラー等を、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0104】
また、前記添加剤としては、本発明のアンカーコーティング剤の分散安定性をより一層向上する観点から、例えば界面活性剤を使用することができる。しかし、界面活性剤は、得られる被膜の密着性や耐水性を低下する場合があることから、水性ウレタン樹脂(A)及び水性ポリオレフィン樹脂(B)の合計100質量部に対して、20質量部以下の範囲で使用することが好ましく、できるだけ使用しないことが好ましい。
【0105】
本発明のアンカーコーティング剤は、基材に対する優れた密着性と耐湿熱性に優れた硬化物層を形成できることから、各種基材の表面を被覆するコーティング剤や接着剤、ヒートシール剤等に使用することができる。とりわけ、本発明のアンカーコーティング剤は、極性基材と非極性基材のいずれに対しても優れた密着力を有することから、極性基材と非極性樹脂との押し出しラミネート用アンカーコーティング剤以外にも極性基材と非極性基材との接着剤やヒートシール剤に好適に使用することができる。
【0106】
本発明のコーティング剤や接着剤、ヒートシール剤を用いて被膜や接着剤層を形成可能な基材としては、例えば各種プラスチックやそのフィルム、金属、ガラス、紙、木材等が挙げられる。具体的には、極性基材としてはポリエチレンテレフタレート基材等が挙げられる。また、非極性樹脂及び非極性基材としては、例えばエチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0107】
本発明のアンカーコーティング剤を、基材表面に塗工する方法としては、例えばスプレー法、カーテンコーター法、フローコーター法、ロールコーター法、刷毛塗り法、浸漬法等が挙げられる。
【実施例】
【0108】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。
【0109】
<水性ウレタン樹脂の調製>
[調製例1]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、テレフタル酸830質量部、イソフタル酸830質量部、エチレングリコール374質量部、ネオペンチルグリコール604質量部及びジブチル錫オキサイド0.5質量部を仕込み180〜230℃で5時間エステル化した後、酸価が1未満になるまで260℃で6時間重縮合反応することによって、酸価0.2、水酸基価74.5のポリエステルポリオールAを得た。
【0110】
前記ポリエステルポリオールA1000質量部を減圧下100℃で脱水した後、80℃まで冷却し、メチルエチルケトン690質量部を加え十分に攪拌し溶解させ、2,2’−ジメチロールプロピオン酸77質量部を加え、更にヘキサメチレンジイソシアネート209質量部を加え75℃で8時間反応させた。
【0111】
前記反応混合物中に残存する未反応のイソシアネート基の質量割合が0.1質量%以下になったのを確認した後、50℃まで冷却し、トリエチルアミン58質量部及び水5100質量部を加え、減圧下、40〜60℃の温度下でメチルエチルケトンを除去し、水を加えて濃度調節を行うことによって、水性ウレタン樹脂が水中に分散した不揮発分20質量%の組成物(I)を得た。
【0112】
[調製例2]
温度計、窒素ガス導入管、攪拌機を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、変性ポリオレフィン(星光PMC製ポレスターVS−1236)を1000質量部入れ、80℃で3時間攪拌し溶融させ、次いで50℃まで冷却し、トリエチルアミン180質量部加えて中和した後、水2153質量部を加えて水溶化することにより、不揮発分30質量%の組成物(III)を得た。
【0113】
実施例1〜3
下記の原料を表1に示すように調製液を配合し、下記の塗工条件でポリエステルフィルム上にコーティング膜を形成し、ついでラミネートした。
水性ウレタン樹脂 :調製例1で製造した樹脂
水性オレフィン樹脂:調製例2で製造した樹脂
エポキシ架橋剤 :ウォーターゾール WSA-950(NV100%)DIC(株)製
PETフィルム: E5100 50μ(東洋紡製)
【0114】
塗工条件
調整液をバーコーター#4で塗工し、100℃、30秒乾燥
【0115】
押し出しラミネート試験
トーセロ T.U.X.−HC-60(東セロ製)のコロナ処理面と、上記の塗工面を あわせ、ヒートシーラー(210℃、0.1MPa、10秒)にてラミネートした。
【0116】
耐湿熱試験条件:105℃、100%、24時間(プレッシャークッカー)
【0117】
【表1】

【0118】
比較例1、2
水性ウレタン樹脂と水性ポリオレフィン樹脂をそれぞれ単独に100部用いた以外は、実施例1と同様にして評価した。
比較例3
水性ウレタン樹脂を60.0部と水性ポリオレフィン樹脂を40.0部配合し、エポキシ架橋剤を用いない以外は実施例1と同様にして評価した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ウレタン樹脂(A)、水性ポリオレフィン樹脂(B)、エポキシ系架橋剤(C)及び水性媒体(D)を含有する水性樹脂組成物であって、前記水性ウレタン樹脂(A)及び水性ポリオレフィン樹脂(B)が、エポキシ基と反応しうる官能基[X]を有するものであることを特徴とするアンカーコーティング剤。
【請求項2】
前記水性ウレタン樹脂(A)及び前記水性ポリオレフィン樹脂(B)が有する前記官能基[X]の合計物質量に対する、前記エポキシ系架橋剤(C)の有するエポキシ基質量の割合〔エポキシ基の合計物質量/官能基[X]の合計物質量〕が5/1〜1/5である、請求項1に記載のアンカーコーティング剤。
【請求項3】
前記エポキシ系架橋剤(C)が加水分解性シリル基含有エポキシ系架橋剤(c1−1)である、請求項1に記載のアンカーコーティング剤。
【請求項4】
前記水性ウレタン樹脂(A)が、親水性基としてカルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基及びスルホネート基からなる群より選ばれる1種以上を有するものである、請求項1に記載のアンカーコーティング剤。
【請求項5】
前記水性ウレタン樹脂(A)が、芳香族環構造含有ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオールからなる群より選ばれる1種以上を含むポリオール(a1)と、芳香族環構造または脂肪族環式構造含有ポリイソシアネートを含むポリイソシアネート(a2)とを反応させて得られるものである、請求項1に記載のアンカーコーティング剤。
【請求項6】
極性基材の表面に、請求項1〜5のいずれか1つに記載のアンカーコーティング剤を塗布し乾燥することで形成される樹脂層を設け、その樹脂層上に非極性樹脂を押し出しラミネートすることを特徴とする積層体。
【請求項7】
極性基材(I)の表面に、請求項1〜5のいずれか1つに記載のアンカーコーティング剤を塗布し乾燥することで形成される樹脂硬化層を設け、前記樹脂硬化層表面に非極性基材(II)を載置し、次いで80℃〜180℃で加熱することによって得られる積層体。
【請求項8】
前記極性基材がポリエチレンテレフタレート基材であり、かつ、前記非極性樹脂がオレフィン系樹脂である、請求項7に記載の積層体。

【公開番号】特開2013−100399(P2013−100399A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244465(P2011−244465)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】