説明

アンカーボルト引抜き工具及びこの工具を用いたアンカーボルト引抜き方法

【課題】不用のアンカーボルト先端が床面に突出し、邪魔になるため電動サンダー切断・ガスで切除していた。商用電源から離れた場所・火気使用が禁止された場所では引抜くしかないが、これまでの引抜き用具は使用法が複雑であった。
【解決手段】一方端面に引抜き対象のアンカーボルト1のボルトネジ1aに螺合する雌ネジ2aを設け推力ネジ2bが外周略全長に施された引抜きネジ棒2の、推力ネジ2bを内部に螺合させた推力雌ネジ3aが長手方向に貫通して設けられた回転ナット3の回転軸3cを、厚肉鍔状の台座4の内穴中段に内穴を拡開した段穴4bに回転可能に装着し、回転ナット3を右回転させて引抜くようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート基礎に設置されている不要となった拡底型後付けアンカーボルトの引抜きに用いる工具及び引抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械設備等の更新・レイアウト変更に伴い、旧設備を固定していたアンカーボルト先端が床面に突出し、邪魔になるため電動サンダー切断・ガスで切除していた。しかし、商用電源から離れた場所、あるいは火気使用が禁止された場所では引抜く方法を用いらなければならない。アンカーボルトの引抜く方法の用具として例えば特許文献1、特許文献2に示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−167753号公報
【特許文献2】実開平06−20766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術文献に示されたアンカーボルト引抜き用具の特許文献1のものは、油圧ジャッキを用いるもので用具が大型である。また特許文献2のものは予め拡底ピンの頭部を除去しなければならなく手間が多くかかるという課題があった。
【0005】
この発明は、上記の課題を解決するものであり、本発明のアンカーボルト引抜き工具は簡単に持ち運びができ、商用電源が無い場所、火花を含め火気の使用が禁止された場所でのアンカーボルト引抜き作業が容易に行えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のアンカーボルト引抜き工具は、外周に推力ネジが施され一方の端面に引抜き対象のアンカーボルトのボルトネジに螺合する雌ネジが設けられた引抜きネジ棒と、厚肉鍔状の台座の内穴中段に内穴を拡開した段穴と、一端に段穴に挿入できる回転軸を備え推力ネジを内部に螺合させる推力雌ネジが長手方向に貫通して設けられた回転ナットからなり、回転ナットの回転軸を段穴に回転可能に装着したものである。
【0007】
そして、請求項1のアンカーボルト引抜き工具の段穴と回転軸の間にスラスト軸受を介在させたものである。
【0008】
この発明のアンカーボルト引抜き方法は、雌ネジに引抜き対象のアンカーボルトのボルトネジを螺合した状態で、回転ナットを右回転させてアンカーボルトを引抜くものである。
【発明の効果】
【0009】
商用電源が無い場所、火気の使用が禁止された場所において、この発明のアンカーボルト引抜き工具を用いることで、スパナ等でアンカーボルト引抜き作業が容易に行える。
【0010】
引抜き対象のアンカーボルトのネジ径に対応した雌ネジを施した引抜きネジ棒を各種準備しておくことで、各種のアンカーボルトの引抜きが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
【実施例】
【0012】
図1は本発明のアンカーボルト引抜き工具の部材構成斜視図、図2は構成部材が組み合わされた状態の部分断図面を示す。
図において、アンカーボルト1はコンクリート基礎に穿たれた孔に埋設部が挿入され、上部のボルトネジ1aがコンクリート基礎面から突出した状態で、頂部に設けられている拡底ピン1bを打ち込み、拡底ピン1bに連接された裾部を拡げコンクリート基礎内に固定される。
引抜きネジ棒2は一端にアンカーボルト1のボルトネジ1aが螺合する雌ネジ2aを備え、推力ネジ2bが外径全般に施され、そして他端に引抜きネジ棒2を回転させるためのスパナ用の六角頭2cが設けてある。引抜きネジ棒2は後述の回転ナット3より十分長めに構成されている。
【0013】
台座4は厚肉鍔状であり内穴4a中段には内穴4aを拡開した段穴4bが設けられている。回転ナット3は筒状で内径に推力ネジ2bに螺合する推力雌ネジ3aが貫通して設けられ、外形は回転ナット3を回転させるスパナ用に六角柱3bとなっている。回転ナット3の一端側は段穴4bに挿入可能に円柱状に研削した回転軸3cになっている。
台座4の内穴4aに回転軸3cが挿入され回転ナット3が段穴4b上で回動自在に取り付けられている。回転軸3cの端面は台座4の段穴4bに当接し台座4が回転ナット3の下方力を受け止める。
【0014】
基本的には上述の構成でもよいが、アンカーボルト1を引抜く時に回転ナット3をスパナ等で回転させた引抜き力が回転軸3cの端面が段穴4bと当接摺動し、この部分に加わる圧力で摩擦抵抗が大きくなり回転ナット3を回す力が余分に必要となる。
【0015】
この発明の目的はアンカーボルト引抜きが手作業で容易に行なえることである。そこで本実施例では、台座4と回転ナット3の間にスラスト軸受5を介在させ、アンカーボルト1引抜時のスパナ等で回転ナット3を回転させる手作業力を軽減させる。
スラスト軸受5は台座4の段穴4bにスラスト軸受5の外環を取り付け、内環に回転軸3cを挿着し、六角柱3bから円柱状の回転軸3cにした段差で内環を受け止め、スラスト軸受5を介して台座4と回転ナット3が自在回転可能にしている。そして回転ナット3のアンカーボルト1引抜き力はスラスト軸受5を通じて台座4に受け止めさせる。
【0016】
次に、本発明のアンカーボルト引抜き工具での引抜き手順と動作について説明する。
回転ナット3が回転可能に台座4と一体化されてあり、推力雌ネジ3aに引抜きネジ棒2を雌ネジ2aが台座4底面近くなる位置に仮ねじ込む。そしてアンカーボルト1のボルトネジ1aに雌ネジ2aを螺合させて、六角頭2cをスパナ等で締め切るまでねじ込む、これにより引抜きネジ棒2は右回転が止められ、台座4底面はコンクリート基礎面から浮いている。そして回転ナット3を手で右方に回し推力ネジ2bと推力雌ネジ3a間の推力で台座4底面がコンクリート基礎に当たるまで送る。
【0017】
次に、引抜きネジ棒2の右回転が止められているのでスパナ等で回転ナット3を右方に回すと、推力ネジ2bと推力雌ネジ3a間の推力は引抜きネジ棒2を持ち上げ、同時に雌ネジ2aに螺着されているアンカーボルト1に持ち上げ力が働く。このときの反力は回転ナット3の段差面3bを通じてスラスト軸受5から台座4の段穴4bを介してコンクリート基礎面が受け止めて、アンカーボルト1を引抜く力に対抗する。
【0018】
コンクリート基礎内のアンカーボルト1裾部の固定力に勝る回転ナット3からの引抜き推力が加えられると、コンクリートを削りながらアンカーボルト1が上昇する。このときコンクリート基礎面のアンカーボルト1周囲にコンクリート粉が堆出する。
このコンクリート粉が推力ネジ2bと推力雌ネジ3a間に入り込むと回転ナット3の回転に抵抗力が生じる。本工具では台座4底部中央に空間6を設けて、コンクリート粉を空間6に留め、ネジ間への浸入を防いでいる。
【0019】
アンカーボルトは固定強度によりボルトネジ径が数種類規格化されている。規格化されたボルトネジ径の雌ネジ2aを施した引抜きネジ棒2を準備しておき、ボルトネジ径に合わせて引抜きネジ棒2を交換することで、各種規格化されたアンカーボルトに対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明のアンカーボルト引抜き工具の部材構成斜視図
【図2】 本発明のアンカーボルト引抜き工具の構成部材が組み合わされた部分断面図
【0021】
1 アンカーボルト
1a ボルトネジ
2 引抜きネジ棒
2a 雌ネジ
2b 推力ネジ
3 回転ナット
3a 推力雌ネジ
3c 回転軸
4 台座
4a 内穴
4b 段穴
5 スラスト軸受
6 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状で外周に推力ネジが略全長に施され一方の端面に引抜き対象のアンカーボルトのボルトネジに螺合する雌ネジが設けられた引抜きネジ棒と、
厚肉鍔状の台座の内穴中段に内穴を拡開した段穴と、
一端に上記段穴に挿入できる回転軸を備え上記引抜きネジ棒の推力ネジを内部に螺合させる推力雌ネジが長手方向に貫通して設けられた回転ナットと、
上記引抜きネジ棒が螺合された回転ナットの回転軸を上記台座の段穴に回転可能に装着したことを特徴とするアンカーボルト引抜き工具。
【請求項2】
台座の段穴と回転ナットの回転軸の間にスラスト軸受を介在させたことを特徴とする請求項1記載のアンカーボルト引抜き工具
【請求項3】
引抜きネジ棒の雌ネジに引抜き対象のアンカーボルトのボルトネジを螺合し、回転ナットを右回転させてアンカーボルトを引抜く請求項1および請求項2記載のアンカーボルト引抜き工具を用いたアンカーボルト引抜き方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−107482(P2012−107482A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268785(P2010−268785)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(306025411)株式会社ケーシーエル (2)
【Fターム(参考)】