説明

アンカーボルト設置構造、およびそのメンテナンス方法ならびに施工方法

【課題】アンカーボルトの頭部の破損を防止することができ、しかも、硬化剤層内部への水の浸入を防いでアンカーボルトの劣化を可能なアンカーボルト設置構造を提供する。
【課題手段】アンカーボルト設置構造は、埋込穴に挿入されるアンカーボルト1と、埋込穴に充填される硬化剤層2と、座金3と、ナット4と、伸縮自在のパッキン5とを備えている。パッキン5は、埋込穴の内部の隙間において硬化剤層2と座金3との間に挟持され、当該隙間を液密的に封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンカーボルトを硬化剤により地中に固定したアンカーボルト設置構造、およびそのメンテナンス方法ならびに施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雪崩防止用の吊り柵や落石防止用のネット等の構造物を斜面(法面)に固定する場合、例えば、特許文献1に記載されているように、アンカーボルトが地盤に埋め込まれ、当該アンカーボルトの頭部に座金が固定され、座金に設けられたワイヤ保持部によってワイヤを保持する構造を用いることが考えられる。
【0003】
この構造は、図8に模式的に示されるように、モルタル層32によって地盤Gに固定されたアンカーボルト31には、ワイヤ保持部36を有する座金33がナット34によって締め付けられて地面Sに押圧されている。ワイヤ保持部36には、ワイヤロープWが固定されている。この構造では、ワイヤロープWに作用する張力Fによってアンカーボルト31には横荷重がかかるが、ナット34を締め付けることによって座金33と地盤Gとの間の摩擦抵抗が増大し、アンカーボルト31の頭部に作用する横荷重等に抵抗することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平09―111761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような図8に示される構造においても、地面Sがモルタル層32よりも軟弱な土質である場合には、図9に示されるように、座金33の下面と地面Sとの間に隙間37が生じやすいので、座金33の下面は、図9に示されるようにモルタル層32のみに部分的に接触する状態になり、上記の図8に示される構造と同様に、座金33全体が地盤Gに密着しにくくなり、地耐力の活用が困難になる。
【0006】
また、地面Sが冬季において霜柱等により浸食されて図9に示されるように座金33と地面Sと隙間37が発生した場合にも、上記の図8に示される構造と同様に、座金33全体が地盤Gに密着しにくくなり、地耐力の活用が困難になる。そのため、地面S付近には、ワイヤロープWの引張力Fに対する局部的な反力Tsが発生するが、地盤Gが軟らかい場合には、座金33全体が地盤Gに密着していないので、アンカーボルト31の頭部において局部的な歪曲が発生するおそれがあり、歪曲がさらに進むとアンカーボルト31の破断につながるおそれがある。
【0007】
一方、地面Sが侵食等によって低くなったときにナット34を再度の締め付け(再緊張)できるように、モルタル層32の頭部を地面Sよりあらかじめ低く形成して、縦穴Aにおいてモルタル層32の頭部と座金33との間に隙間を形成しておくことが考えられる。しかし、そのような場合、その隙間に雨水などの水が溜まりやすくなり、その水によってアンカーボルト31が腐食して劣化しやすくなるという問題がある。とくに、その隙間にたまった水がアンカーボルト31とモルタル層32との境界に入り込むおそれがあり、アンカーボルト31の腐食が生じやすくなる。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、地面が侵食等によって低くなっても地面に接触する部分における摩擦抵抗の復元を図ることにより、アンカーボルトの頭部の破損を防止することができ、しかも、硬化剤層内部への水の浸入を防いでアンカーボルトの劣化を可能なアンカーボルト設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためのものとして、本発明のアンカーボルト設置構造は、少なくとも一部が地上に突出するおねじ部、および当該おねじ部の下側に配置され、地面から地中に延びる埋込穴に挿入される埋込部を有するアンカーボルトと、前記埋込穴に充填され、前記埋込部を地中に固定して前記アンカーボルトが前記埋込穴から抜け出ることを防止する硬化剤層と、前記地面を押圧する押圧面、および前記おねじ部が挿入可能な貫通孔を有し、当該貫通孔に前記おねじ部が挿入された状態で当該おねじ部に連結された接触部材と、前記おねじ部に螺合して前記接触部材をその上面側から前記地面へ向けて締め付けるナットと、前記前記埋込穴の内部に配置された伸縮可能な封止部材と、を備え、前記硬化剤層は、前記埋込穴の内部において、前記アンカーボルトの埋込部を前記埋込穴の内面に固着することができる高さであって、前記埋込穴の上部において前記地面との間で隙間を形成する高さまで充填され、前記封止部材は、前記前記埋込穴の内部の前記隙間に配設され、前記硬化剤層と前記接触部材との間に挟持され、前記隙間を液密的に封止することを特徴とするものである。
【0010】
かかる構成によれば、硬化剤層が埋込穴の上部において地面との間で隙間を形成する高さまで充填され、伸縮可能な封止部材が当該隙間に配設されるとともに硬化剤層と接触部材との間に挟持されているので、接触部材の下面と地面との間に隙間が生じた場合でも、接触部材をナットで締め付けることにより、接触部材は硬化剤層との間で封止部材を圧縮しながら下降することにより地面に確実に密着して地面の地耐力を均等に受けることが可能である。その結果、接触部材と地面との摩擦抵抗が復元し、アンカーボルトの頭部に作用する横荷重等に抵抗することが可能になり、アンカーボルトの頭部の歪曲等を防止することが可能である。
【0011】
しかも、封止部材によって硬化剤層の上面をシールするので、アンカーボルトと硬化剤層との境界部分に水の浸入が抑制され、アンカーボルトの腐食による劣化を効果的に防止することができる。
【0012】
前記封止部材は、前記埋込穴の内周面に接触することが可能な形状を有する接触面を有するのが好ましい。
【0013】
かかる構成によれば、封止部材の接触面が埋込穴の内周面に接触することにより、埋込穴の内周面におけるシール性を確保でき、アンカーボルトと硬化剤層との境界部分への水の浸入を抑制することが可能になる。
【0014】
前記封止部材は、前記硬化剤層と前記接触部材との間に挟持されることにより、当該埋込穴の径方向へ拡大して、前記埋込穴の内周面に接触するとともに、前記アンカーボルトの外周面に接触するのが好ましい。
【0015】
かかる構成によれば、封止部材が硬化剤層と接触部材との間に挟持されことにより、当該埋込穴の径方向へ拡大する性質を利用して、埋込穴の内周面およびアンカーボルトの外周面にそれぞれ接触させ、それにより、埋込穴の内周面およびアンカーボルトの外周面におけるシール性を確保でき、アンカーボルトと硬化剤層との境界部分への水の浸入を抑制することが可能になる。
【0016】
また、前記接触部材は、座金であり、前記座金は、ワイヤを保持するワイヤ保持部を有するのが好ましい。
【0017】
かかる構成によれば、座金のワイヤ保持部にワイヤが保持され、ワイヤの張力を受けて座金が挿入されたアンカーボルトに横荷重が作用した場合に、ナットをアンカーボルトのおねじ部に締め付けることにより座金が封止部材を圧縮しながら地面に密着して地面の地耐力を均等に受けることが可能である。その結果、座金と地面との摩擦抵抗が増大し、アンカーボルトの頭部に作用する横荷重等に抵抗することが可能になり、アンカーボルトの頭部の歪曲等を防止することが可能である。
【0018】
また、前記接触部材は、柵の台座部であり、前記柵は、斜面に設置されているのが好ましい。
【0019】
かかる構成によれば、柵の台座部を固定するアンカーボルトに横荷重が作用した場合に、ナットをアンカーボルトのおねじ部に締め付けることにより台座部が封止部材を圧縮しながら地面に密着して地面の地耐力を均等に受けることが可能である。その結果、台座部と地面との摩擦抵抗が増大し、アンカーボルトの頭部に作用する横荷重等に抵抗することが可能になり、アンカーボルトの頭部の歪曲等を防止することが可能である。
【0020】
また、前記封止部材は、その上端が前記アンカーボルトにおける前記おねじ部が形成された範囲内に位置するように配置されているのが好ましい。
【0021】
かかる構成によれば、前記封止部材は、その上端が前記アンカーボルトにおける前記おねじ部が形成された範囲内に位置するように配置されているので、接触部材をナットで締め付けることにより、接触部材と硬化剤層との間で封止部材を確実に圧縮させることが可能であり、接触部材を地面により確実に密着することが可能である。
【0022】
また、前記押圧面と前記地面との間に介在して当該押圧面と当該地面との間の摩擦を増大する介在部材をさらに備えているのが好ましい。
【0023】
かかる構成によれば、接触部材の押圧面と地面との間に当該押圧面と当該地面との間の摩擦を増大する介在部材が介在しているので、押圧面と地面との間の摩擦抵抗を増大させることが可能であり、アンカーボルトの頭部の歪曲等をより確実に防止することが可能である。
【0024】
本発明のアンカーボルト設置構造のメンテナンス方法は、上記のアンカーボルト設置構造のメンテナンス方法であって、上記のアンカーボルト設置構造を施工する施工工程と、地面の高さが低くなったときに、その低下分に対応する分だけ前記ナットを締め付けて前記接触部材を前記地面に押圧するナット締付け工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0025】
かかる構成によれば、地面の高さがアンカーボルト設置構造を施工した後に低くなって接触部材の下面と地面との間に隙間が生じた場合でも、その低下分に対応する分だけ接触部材をナットで締め付けることにより、接触部材は硬化剤層との間で封止部材を圧縮しながら下降することにより地面に確実に密着して地面の地耐力を均等に受けることが可能である。その結果、接触部材と地面との摩擦抵抗が復元し、アンカーボルトの頭部に作用する横荷重等に抵抗することが可能になり、アンカーボルトの頭部の歪曲等を防止することが可能である。
【0026】
さらに、本発明のアンカーボルト設置構造の施工方法は、上記のアンカーボルト設置構造の施工方法であって、前記封止部材を前記アンカーボルトに嵌合させる嵌合工程と、前記封止部材の外周部を前記埋込穴の内周面に当接させながら、前記アンカーボルトの埋込部を前記封止部材から垂下させた状態で前記埋込穴の所定位置に挿入させる挿入工程と、前記埋込穴に前記硬化剤を充填する充填工程と、前記アンカーボルトの埋込部を前記硬化剤が固化することによって形成される前記硬化剤層を介して前記埋込穴の内周面に固定する固化工程とを含むことを特徴とする。
【0027】
かかる特徴によれば、封止部材をアンカーボルトに嵌合させておき、その状態で、封止部材の外周部を埋込穴の内周面に当接させながら、アンカーボルトの埋込部を封止部材から垂下させた状態で埋込穴に挿入させることにより、アンカーボルトの埋込部は埋込穴の内周面に当接する封止部材によって所定位置(例えば、埋込穴の中心)に案内されるので、アンカーボルトの正確な位置決めが可能になり、これによって施工性が向上する。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように、本発明によれば、地面が侵食等によって低くなっても接触部材と地面との間の摩擦抵抗の復元を図ることにより、アンカーボルトの頭部の破損を防止することができる。しかも、封止部材によって硬化剤層の上面がシールされるので、硬化剤層内部への水の浸入を防いでアンカーボルトの劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のアンカーボルト設置構造の実施形態に係わる断面図である。
【図2】図1のアンカーボルト設置構造の主要部の拡大断面図である。
【図3】図2の封止部材が圧縮された状態を示す断面図である。
【図4】図1のアンカーボルト設置構造の平面図である。
【図5】図1のアンカーボルト設置構造によってワイヤロープを介して法面上の雪崩防止柵が支持された構造の一部断面図である。
【図6】本発明のアンカーボルト設置構造の他の実施形態に係わるアンカーボルト設置構造の主要部の拡大断面図である。
【図7】本発明のアンカーボルト設置構造のさらに他の実施形態に係わる雪崩防止柵の台座部をアンカーボルトに固定した構造の一部断面図である。
【図8】従来における座金を介してワイヤロープをアンカーボルトに固定する構造を示す断面図である。
【図9】図8の固定構造において地面が下降した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照しながら本発明の係るアンカーボルト設置構造およびそのメンテナンス方法について説明する。
【0031】
図1〜2に示されるアンカーボルト1の設置構造は、アンカーボルト1と、モルタル層2と、座金3と、ナット4と、パッキン5と、摩擦増大シート7とを備えている。
【0032】
アンカーボルト1は、地面Sから地盤Gの中に延びる埋込穴Aに挿入される棒状部材であり、おねじ部1aと、埋込部1bとを有する。おねじ部1aは、おねじが形成された部分であり、少なくとも一部が地上に突出する。埋込部1bは、おねじ部1aの下側に配置され、埋込穴Aに挿入される部分である。
【0033】
モルタル層2は、埋込穴Aに充填されるセメントが硬化して形成された層である。モルタル層2は、アンカーボルト1の埋込部1bを地中に固定、具体的には、地盤Gの埋込穴Aの内部に固定する。モルタル層2は、埋込穴Aの上部に地面Sから隙間Pをあけるようにモルタルが充填されることにより形成される。具体的には、埋込穴Aの全長(2000〜3000mm程度)から、パッキン5が配設される隙間Pの高さL5(50〜60mm程度)を引いた長さL11(これをアンカー定着長さという)の範囲にモルタルが充填される。
【0034】
なお、硬化剤層は、モルタル以外の種々の材料、例えば2液硬化性樹脂などのグラウトによって形成されてもよい。
【0035】
座金3は、図1〜2および図4に示されるように、矩形形状の鋼板などの平板状部材であり、その下面側には平坦な地面Sを押圧する押圧面3aを有する。押圧面3aは、地面Sに面接触して当該地面Sを押圧することが可能である。また、座金3の中央には、アンカーボルト1が挿入可能な貫通孔3bが当該座金3の厚さ方向に貫通して形成されている。座金3は、貫通孔3bにアンカーボルト1のおねじ部1aが挿入された状態で、アンカーボルト1に取り付けられる。座金3は、本発明の接触部材に対応する。
【0036】
ナット4は、アンカーボルト1の頭部におねじ部1aに螺合し、それにより、座金3をその上面側から地面Sへ向けて締め付けることができる。
【0037】
さらに、本実施形態の座金3の上面には、ワイヤWを保持するワイヤ保持部6が取り付けられている。ワイヤ保持部6は、水平方向に延びる貫通孔6aを有している。貫通孔6aにワイヤWの端部の環状部分W1が通されることにより、ワイヤ保持部6は、ワイヤWの端部を保持することができる。
【0038】
パッキン5は、図1〜2に示されるように、貫通孔5aを有する円筒形状の弾性部材である。埋込穴Aの内部のモルタル層2の上方の隙間Pに配設され、モルタル層2と座金3との間に挟持される。パッキン5は、本発明の封止部材に対応する。パッキン5は、その外周には、埋込穴Aの内周面に接触可能な外周接触面5bを有し、貫通孔5aの内周には、アンカーボルト1の外周面に接触可能な内周接触面5cを有する。
【0039】
図1〜2に示されるように、パッキン5の内径D1は、アンカーボルト1のおねじ部1aの外径(20〜30mm程度)と同じか若干大きい程度に設定される。パッキン5の外径D2は、埋込穴Aの内径(40〜50mm程度)と同じか若干小さい程度に設定される。また、パッキン5の高さHは、埋込穴Aのモルタル層2の上方の隙間Pの高さL5(50〜60mm程度)と同じか若干大きい程度に設定される。
【0040】
パッキン5の中央の貫通孔5aには、アンカーボルト1のおねじ部1aが挿入される。パッキン5は、隙間Pに挿入されたときに、パッキン5の外周面5bが埋込穴Aの内周面に当接する。さらに、ナット4をアンカーボルト1のおねじ部1aに締め付けることによって座金3とモルタル層2の上面との間隔が狭くなるにつれて、パッキン5の下面がモルタル層2の上面に密着し、それとともに、パッキン5の内周の内周接触面5cがアンカーボルト1の外周面に接触し、さらに、パッキン5の外周の外周接触面5bが埋込穴Aの内周面に接触する。
【0041】
パッキン5は、当該隙間Pを液密的に封止する伸縮可能な材質、例えば、クロロプレンゴム、ネオプレンゴムまたはエチレンプロプレンゴムあるいはスポンジなどによって製造される。
【0042】
パッキン5は、その上端がアンカーボルト1におけるおねじ部1aの形成されている範囲内(具体的には、図1〜2の長さL2の範囲内)に位置するように配置されている。
【0043】
摩擦増大シート7は、押圧面3aと地面Sとの間に介在して当該押圧面3aと当該地面Sとの間の摩擦を増大させるシートである。摩擦増大シート7は、本発明の介在部材に対応する。摩擦増大シート7は、伸縮性を有し、かつすべりにくい材料、例えば、薄いゴム材料(クロロプレンゴム、ネオプレンゴムまたはエチレンプロプレンゴムなど)によって製造される。
【0044】
以上のように構成されたアンカーボルトの設置構造では、図1〜2に示されるように、弾性材料からなるパッキン5が座金3の下面とモルタル層2の上面との間に設置されているので、地盤Gの表面S(例えば、法面)が雪や霜等による浸食により隙間37(図10参照)が生じるおそれがある場合には、ナット4を再度締め付ける(再緊張する)ことにより、座金3が地盤Gに密着し、両者の間にアンカーボルト1の引張力Tにより摩擦抵抗が発生する。このとき、パッキン5は、座金3とモルタル層2との間に圧縮状態で挟持される。アンカーボルト1に作用する垂直方向の引張力Tは、座金3に圧縮力t1として作用する。それにより、地盤Gからの反力t2が発生し、座金3と地盤Gとが密着して摩擦力が発生してワイヤロープWの引張力Fに対抗することができる。この構造では、アンカーボルト1に対してワイヤロープWの引張力Fによって生じるせん断力が直接に作用しないので、アンカーボルト1の頭部の破損を防止することができる。
【0045】
さらに、地盤Gが浸食あるいは軟弱な土質の場合には、図2に示される状態から、図3に示されるように、ナット4をアンカーボルトのおねじ部に再度締め付けることによって、パッキン5の厚さが収縮して厚さL5(図2参照)から当該L5より小さい厚さL7(図3参照)に変化する。このとき、モルタル層2は、座金3に直接接触していないので、座金3と地盤Gとの密着を阻害しない。
【0046】
(アンカーボルト1の設置構造の施工方法)
アンカーボルト1の設置構造の一例として、図5に示されるように、積雪の多い地域において、小段Mの直下の法面N上に雪崩防止柵Bを設置する場合に適用される構造がある。この構造では、雪崩防止柵Bが雪の重みによって法面Nに沿って下方へすべり落ちないように、雪崩防止柵Bをアンカーボルト1で固定している。
【0047】
このようなアンカーボルト1の設置構造を施工する場合、まず、アンカーボルト1を小段Mの地中にモルタル層(図示せず)で固定する。
【0048】
具体的には、まず、小段Mを構成する地盤に図1〜2に示されるように垂直方向に延びる埋込穴Aを形成し、埋込穴Aにアンカーボルト1を挿入する。
【0049】
ついで、モルタルを、埋込穴Aの内部において、アンカーボルト1の埋込部1bを埋込穴Aの内面に固着することができる高さであって、埋込穴Aの上部において地面Sとの間で隙間Pを形成する高さまで充填し、そのモルタルを固化させてモルタル層2を形成する。これにより、アンカーボルト1の埋込部1bがモルタル層2によって埋込穴Aの内面に固着され、ナット4の締め付けによって発生する上向きの引張力Tに対抗することができる。
【0050】
ついで、パッキン5を、その貫通孔5aにアンカーボルト1の頭部を挿入させながら、埋込穴Aの内部の隙間Pに配設する。パッキン5は、その上面の高さが地面Sと同じ高さまたは若干上方になるように配設され、座金3からの押圧力を受けることができる。
【0051】
ついで、座金3を、その貫通孔3bにアンカーボルト1の頭部を挿入しながら、地面Sおよびパッキン5を覆うように配設する。
【0052】
ついで、ナット4をアンカーボルト1の頭部のおねじ部1aに螺合させ、ナット4の締め付けによって座金3を上方から押圧する。このとき、ゴムなどの弾性材料からなるパッキン5は、モルタル層2と座金3との間に挟持されることにより、高さ方向の体積の減少分に対応して当該埋込穴Aの径方向へ拡大する。これにより、当該パッキン5の外周の外周接触面5bが埋込穴Aの内周面に接触するとともに、貫通孔5aの内周の内周接触面5cがアンカーボルト1の外周面に接触する。これにより、パッキン5は、モルタル層2と座金3との間に挟持されることによって、隙間Pを液密的に封止することができる。
【0053】
その後、図5に示されるように、2本のワイヤWの一端をそれぞれ柵Bの支柱B1の上端部および台座部B2に連結し、これらのワイヤWを法面Nに沿って上方へ延ばし、座金3の上部のワイヤ保持部6にワイヤWの他端を連結することにより、雪崩防止柵Bをすべり落ちないように設置する。
【0054】
(アンカーボルト1の設置構造のメンテナンス方法)
つぎに、上記のようなアンカーボルト1の設置構造を施工した後におけるメンテナンス方法について説明する。
【0055】
アンカーボルト1の設置構造を施工した後に、小段Mの地盤が霜柱等によって浸食されたり、または地盤が軟弱になった場合に、小段Mの地面の高さがアンカーボルト1の設置構造の設置直後の状態から低くなってナット4の締め付け力が低下したときに、その低下分に対応する分だけナット4をさらに締め付けて座金3を地面に押圧させる(ナット締付け工程)。
【0056】
これにより、地面が低くなったときに座金3をナット4で再び締め付けることにより、座金3はモルタル層2との間でパッキン5を圧縮しながら下降することが可能になり、座金3を地盤に確実に密着することが可能である。これにより、座金3が地盤に密着して地盤の地耐力を均等に受けることが可能になり、その結果、座金3と地盤との摩擦抵抗が復元する。その結果、アンカーボルト1の頭部に作用する横荷重、すなわち、ワイヤWが雪崩防止柵Bの自重によって法面Nの下方へ引っ張られることによって生じる横荷重に抵抗することが可能になり、アンカーボルト1の頭部の歪曲等を防止することが可能である。
【0057】
(座金3の底面積の算出方法)
次にアンカーボルトの破損を防止するために、必要なモルタル層2の長さL11および必要な座金3の底面積Eを以下の算出事例により説明する。
【0058】
(i)まず、アンカーボルト1がナット4の締付けによって引っ張られる垂直張力T、ワイヤWに作用する水平張力F(=1トン)、座金3と地盤Gとの間の摩擦係数μ1(=0.5)とした場合、水平張力Fに等しい摩擦抵抗を得るための垂直張力Tは、
T=F/μ1=2トンとなる。
【0059】
(ii)つぎに、垂直張力Tに基づいて、アンカー定着長さ(すなわち、必要なモルタル層2の長さ)L11(図1参照)を求める。
【0060】
ここで、現場条件として、
Fs:アンカーボルト1の引抜きに対する安全率(=3.0)、
φ2:埋込穴Aの内径(=50mm)、
τ:埋込穴Aの内周面とモルタル層2との間の摩擦抵抗(=3kg/cm(レキ質土の地盤の場合))
とした場合、
L11=Fs×T/(π×φ2×τ)=127cmとなる。
【0061】
(iii)つぎに、座金3にとって必要な底面積Eを算出する。
【0062】
現場条件として、さらに、地耐力t2(=30トン/m)とした場合、
E=T/t2=0.06m=約25×25cm(すなわち、25cm四方の正方形の面積とほぼ同じ)となる。
【0063】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のアンカーボルト1の設置構造では、モルタルを埋込穴Aの上部において地面Sとの間で隙間Pを形成する高さまで充填して固化することによって、モルタル層2が形成され、伸縮可能なパッキン5が当該隙間Pに配設されるとともに埋込穴Aの内部においてモルタル層2と座金3との間に挟持されているので、座金3の下面と地表面との間に隙間Pが生じた場合でも、座金3をナット4で締め付けることにより、座金3はモルタル層2との間でパッキン5を圧縮しながら下降することにより地表面に確実に密着し、地面Sの地耐力を均等に受けることが可能である。その結果、座金3と地面Sとの摩擦抵抗が復元し、アンカーボルト1の頭部に作用する横荷重等に抵抗することが可能になり、アンカーボルト1の頭部の歪曲等を防止することが可能である。
【0064】
しかも、パッキン5がモルタル層2の上面に接触することによってモルタル層2の上面をシールするので、アンカーボルト1とモルタル層2との境界部分に水の浸入が抑制され、アンカーボルト1の腐食による劣化を効果的に防止することができる。
【0065】
(2)
また、モルタル層2の定着が不安定な地盤Gでは、図2〜3に示されるように、ナット4の締め付けによって生じるアンカーボルト1が上方へ引っ張られる引張力Tにより、モルタル層2は、パッキン5を圧縮させながら埋込穴Aの内部を上方へずれ動く(隙間Pの高さがL5からL7へ減少する)ことが考えられる。例えば、ナット4を締め付けてもモルタル層2が上方へずれ動かない状態(図2に示される状態)では、ナット4の上方へ突出するアンカーボルト1の頭部の長さはL3となるが、一方、図3に示されるように、ナット4を締め付けたときにモルタル層2が上方へずれ動いた状態では、モルタル層2が上方へずれ動いた分だけナット4を締め付けることができるので、ナット4の上方へ突出するアンカーボルト1の頭部の長さはL6となり、図2の長さL3よりも長くなる。このアンカーボルト1の頭部の長さL3とL6とを比較することにより、作業者は、モルタル層2が上方へずれ動いたか否かを容易に確認することができる。
【0066】
(3)
さらに、本実施形態のアンカーボルト1の設置構造では、座金3とモルタル層2とがパッキン5によって分離されているので、アンカーボルト1の引張試験時において、モルタル層2による抵抗荷重Tb(図1参照)の確認精度が高く、大がかりな試験設備を必要としない。
【0067】
(4)
また、本実施形態では、パッキン5の外周の外周接触面5bが埋込穴Aの内周面に接触することにより、埋込穴Aの内周面におけるシール性を確保でき、アンカーボルト1とモルタル層2との境界部分への水の浸入を抑制することが可能になる。
【0068】
(5)
さらに、本実施形態では、ゴムなどの弾性材料からなるパッキン5がモルタル層2とパッキン5との間に挟持されことにより、当該埋込穴Aの径方向へ拡大する性質を利用して、埋込穴Aの内周面およびアンカーボルトの外周面にそれぞれ接触させ、それにより、埋込穴Aの内周面およびアンカーボルトの外周面におけるシール性を確保でき、アンカーボルトとモルタル層2との境界部分への水の浸入を抑制することが可能になる。
【0069】
(6)
また、本実施形態のアンカーボルト1の設置構造では、座金3のワイヤ保持部6にワイヤWが保持され、ワイヤWの張力を受けて座金3が挿入されたアンカーボルト1に横荷重が作用した場合に、ナット4をアンカーボルト1のおねじ部1aに締め付けることにより座金3がパッキン5を圧縮しながら地面Sに密着して地面Sの地耐力を均等に受けることが可能である。その結果、座金3と地面Sとの摩擦抵抗が増大し、アンカーボルト1の頭部に作用する横荷重等に抵抗し、アンカーボルト1の頭部の歪曲等を防止することが可能である。
【0070】
(7)
本実施形態のアンカーボルト1の設置構造では、パッキン5は、その上端がアンカーボルト1における前記おねじ部1aが形成された範囲内に位置するように配置されているので、座金3をナット4で締め付けることにより、座金3とモルタル層2との間でパッキン5を確実に圧縮させることが可能であり、それにより、座金3を地表面により確実に密着することが可能である。
【0071】
(8)
本実施形態のアンカーボルト1の設置構造では、座金3の押圧面3aと地面Sとの間に当該押圧面3aと前記地面Sとの間の摩擦を増大する摩擦増大シート7が介在しているので、押圧面3aと地面Sとの間の摩擦抵抗を増大させることが可能であり、アンカーボルト1の頭部の歪曲等をより確実に防止することが可能である。
【0072】
また、地盤Gの状況に応じて摩擦増大シート7の形状(厚さ等)や材質を変更することにより、座金3と地面Sとの間の摩擦抵抗を確実に増大させることができる。
【0073】
さらに、摩擦増大シート7に加えて、図2に示されるように、高さ5mm程度の突起10を追加すれば、座金3と地面Sとの間の摩擦抵抗をさらに確実に増大させることができる。突起10は、座金3の押圧面3aまたは摩擦増大シート7の下面から突出させて形成されている。突起10の形状および個数については、地盤Gの状況等の諸条件に応じて適宜設定すればよく、例えば、図2の紙面垂直方向に延びる角柱状の独立した突起や線状に連続した突起などが用いられる。
【0074】
(9)
本実施形態のアンカーボルト1の設置構造のメンテナンス方法では、地面の高さがアンカーボルト設置構造を施工した後に低くなって座金3の下面と地表面との間に隙間Pが生じた場合でも、座金3をナット4で再度締め付けることにより、座金3はモルタル層2との間でパッキン5を圧縮しながら下降することにより地表面に確実に密着することが可能である。これにより、ナット4をアンカーボルト1のおねじ部1aに締め付けることにより座金3が地面Sに密着して地面Sの地耐力を均等に受けることが可能である。その結果、座金3と地面Sとの摩擦抵抗が復元し、アンカーボルト1の頭部に作用する横荷重等に抵抗し、アンカーボルト1の頭部の歪曲等を防止することが可能である。しかも、パッキン5がモルタル層2の上面に接触することによってモルタル層2の上面をシールするので、アンカーボルト1とモルタル層2との境界部分に水が入るおそれがなく、アンカーボルト1の腐食による劣化を効果的に防止することができる。
【0075】
(変形例)
(A)
上記実施形態では、本発明の接触部材の一例として、1枚の座金3を例にあげて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図6に示されるように第1座金8および第2座金9を上下に積層して設けてもよい。その場合も、上記実施形態と同様に、ナット4をアンカーボルト1のおねじ部1aに締め付けることにより、その締付力が上側の第2座金9を介して下側の第1座金8に伝達され、下側の第1座金8が地面Sに密着して地面Sの地耐力を均等に受けることが可能である。その結果、第1座金8と地面Sとの摩擦抵抗が増大し、アンカーボルト1の頭部に作用する横荷重等に抵抗し、アンカーボルト1の頭部の歪曲等を防止することが可能である。
【0076】
また、この図6に示される場合も、第1座金8と地面Sとの間に薄いゴムシートなどからなる摩擦増大シート7を介在させることにより、第1座金8と地面Sとの間の摩擦抵抗をさらに増大させることができる。
【0077】
(B)
上記実施形態では、地面Sに押圧される接触部材の一例として座金3を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ナット4をアンカーボルト1のおねじ部1aに締め付けることによって地面Sに押圧される部材であれば、本発明の接触部材として用いることが可能である。
【0078】
例えば、図7に示されるように、小段Mの直下の法面(斜面)Nに雪崩防止柵Cをアンカーボルト1を用いて設置する場合、当該雪崩防止柵Cの台座部C1を上記実施形態の座金3の代わりにナット4をアンカーボルト1のおねじ部1aに締め付けることによって地面に押圧するようにしてもよい。この場合も、台座部C1と埋込穴A内部のモルタル層2との間にパッキン5などの封止部材を配置することにより、上記実施形態と同様に、台座部C1の下面と地表面との間に隙間Pが生じた場合でも、台座部C1をナット4で締め付けることにより、台座部C1はモルタル層2との間でパッキン5を圧縮しながら下降することにより地表面に確実に密着し、地面Sの地耐力を均等に受けることが可能である。その結果、台座部C1と地面Sとの摩擦抵抗が増大し、アンカーボルト1の頭部に作用する横荷重等に抵抗することが可能になり、アンカーボルト1の頭部の歪曲等を防止することが可能である。しかも、パッキン5がモルタル層2の上面に接触することによってモルタル層2の上面をシールするので、アンカーボルト1とモルタル層2との境界部分に水が入るおそれがなく、アンカーボルト1の腐食による劣化を効果的に防止することができる。
【0079】
(C)
アンカーボルト1の設置場所は、上記実施形態のように図5に示される小段Mなどの平坦面に垂直に設置することに本発明は限定されるものではなく、種々の場所にアンカーボルト1を設置しても本発明を適用することが可能である。例えば、アンカーボルト1を図7に示される法面(斜面)Nに対して、当該法面の法線方向に向けて設置してもよい。
【0080】
(D)
上記の実施形態では、ワイヤWの端部を座金3の上面に設けられたワイヤ保持部6に固定している例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、座金3以外の部位、例えば、アンカーボルト1の頭部などに掛けて固定してもよい。そのような場合も、上記実施形態と同様に、地面が侵食等によって低くなっても、ナット4を締め付ければパッキン5を圧縮しながら座金3を押し下げて座金3を地面Sに確実に押圧することが可能である。その結果、座金3と地面Sとの間の摩擦抵抗の復元を図ることにより、アンカーボルト1の頭部の破損を防止することができる。しかも、パッキン5によってモルタル層2の上面がシールされるので、モルタル層2の内部への水の浸入を防いでアンカーボルト1の劣化を防止することができる。
【0081】
(E)
上記のアンカーボルト1の設置構造の施工方法では、アンカーボルト1の埋込部1bがモルタル層2によって埋込穴Aの内面に固着された後に、パッキン5をアンカーボルト1の頭部に取り付けているが、本発明はこれに限定されるものではなく、アンカーボルト1を埋込穴Aに挿入する前に、あらかじめパッキン5をアンカーボルトの頭部に取り付けてもよい。
【0082】
すなわち、本発明の変形例であるアンカーボルト1の設置構造の施工方法は、上記のアンカーボルト1設置構造の施工方法であり、まず、パッキン5をアンカーボルト1のおねじ部1aの下端付近に嵌合させる(嵌合工程)。
【0083】
ついで、パッキン5の外周部を埋込穴Aの内周面に当接させながら、アンカーボルト1の埋込部1bをパッキン5から垂下させた状態で埋込穴Aの所定位置(例えば、埋込穴Aの中心)に挿入させる(挿入工程)。
【0084】
ついで、埋込穴Aに硬化剤であるモルタルを充填する(充填工程)。モルタルの充填方法としては、例えば、パッキン5の外周部と埋込穴Aの内周面との隙間などを通して、埋込穴Aの内部にモルタルが充填されるが、他の方法で充填してもよい。
【0085】
ついで、アンカーボルト1の埋込部1bを、モルタルが固化することによって形成されるモルタル層2を介して埋込穴Aの内周面に固定する(固化工程)。
【0086】
その後、アンカーボルト1の頭部に座金3を取り付け、ナット4をアンカーボルト1のおねじ部1aに螺合し、ナット4の締め付けによって座金3を上方から押圧すれば、一連の施工が完了する。
【0087】
上記のような施工方法では、パッキン5をアンカーボルト1に嵌合させておき、その状態で、パッキン5の外周部を埋込穴Aの内周面に当接させながら、アンカーボルト1の埋込部1bをパッキン5から垂下させた状態で埋込穴Aに挿入させている。そのため、アンカーボルト1の埋込部1bは埋込穴Aの内周面に当接するパッキン5によって所定位置(例えば、埋込穴Aの中心)に案内されるので、アンカーボルト1の正確な位置決めが可能になり、これによって施工性が向上する。
【0088】
(F)
なお、上記の実施形態では、1つの埋込穴Aの内部に1本のアンカーボルト1が配設された例が示されているが、本発明はアンカーボルトの本数についてはとくに限定するものではなく、埋込穴Aの大きさなどの種々の条件によって適宜変更してもよい。
【0089】
例えば、埋込穴Aが大きい場合には、複数本(例えば4本)のアンカーボルト1を埋込穴Aの中心の周囲に等間隔に配置し、モルタル層2によって地面に固定してもよい。この場合、これら複数本のアンカーボルト1の頭部にまとめて共通のパッキン5および座金3を取り付け、各アンカーボルト1のおねじ部1aにナット4を螺合すれば、上記実施形態と同様に、地面が侵食等によって低くなっても座金3をナット4で締め付けることにより、座金3と地面との間の摩擦抵抗の復元を図ることにより、アンカーボルト1の頭部の破損を防止することができる。しかも、パッキン5によってモルタル層2の上面がシールされるので、モルタル層2内部への水の浸入を防いでアンカーボルト1の劣化を防止することができる。
【0090】
なお、このような複数本のアンカーボルト1を設置する場合も、上記変形例(E)と同様に、1個のパッキン5にあらかじめ複数本のアンカーボルト1を嵌合させておき、その状態で、パッキン5の外周部を埋込穴Aの内周面に当接させながら、複数本のアンカーボルト1の埋込部1bをパッキン5から垂下させた状態で埋込穴Aに同時に挿入させれば、複数本のアンカーボルト1の埋込部1bは埋込穴Aの内周面に当接するパッキン5によってそれぞれの所定位置に案内されるので、複数本のアンカーボルト1の正確な位置決めが可能になり、施工性がさらに向上する。
【0091】
(G)
また、上記変形例(F)のように、複数本のアンカーボルトを用いる代わりに、複数本のPC鋼より線を用いてもよい。その場合、PC鋼より線の上端部は、くさびを用いて座金3に固定すればよい。くさびとしては、例えば、4分割されたテーパ付きの埋込クリップなどが用いられる。
【符号の説明】
【0092】
1 アンカーボルト
1a おねじ部
1b 埋込部
2 モルタル層
3 座金(接触部材)
3a 押圧面
3b 貫通孔
4 ナット
5 パッキン(封止部材)
5b 外周接触面
5c 内周接触面
6 ワイヤ保持部
7 摩擦増大シート(介在部材)
8 第1座金
9 第2座金
S 地面
G 地盤
A 縦穴
B 雪崩防護柵
P 隙間
W ワイヤロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が地上に突出するおねじ部、および当該おねじ部の下側に配置され、地面から地中に延びる埋込穴に挿入される埋込部を有するアンカーボルトと、
前記埋込穴に充填され、前記埋込部を地中に固定して前記アンカーボルトが前記埋込穴から抜け出ることを防止する硬化剤層と、
前記地面を押圧する押圧面、および前記おねじ部が挿入可能な貫通孔を有し、当該貫通孔に前記おねじ部が挿入された状態で当該おねじ部に連結された接触部材と、
前記おねじ部に螺合して前記接触部材をその上面側から前記地面へ向けて締め付けるナットと、
前記前記埋込穴の内部に配置された伸縮可能な封止部材と、
を備え、
前記硬化剤層は、前記埋込穴の内部において、前記アンカーボルトの埋込部を前記埋込穴の内面に固着することができる高さであって、前記埋込穴の上部において前記地面との間で隙間を形成する高さまで充填され、
前記封止部材は、前記前記埋込穴の内部の前記隙間に配設され、前記硬化剤層と前記接触部材との間に挟持され、前記隙間を液密的に封止する、
ことを特徴とするアンカーボルト設置構造。
【請求項2】
前記封止部材は、前記埋込穴の内周面に接触することが可能な形状を有する接触面を有する、
請求項1に記載のアンカーボルト設置構造。
【請求項3】
前記封止部材は、前記硬化剤層と前記接触部材との間に挟持されることにより、当該埋込穴の径方向へ拡大して、前記埋込穴の内周面に接触するとともに、前記アンカーボルトの外周面に接触する
請求項1または2に記載のアンカーボルト設置構造。
【請求項4】
前記接触部材は、座金であり、
前記座金は、ワイヤを保持するワイヤ保持部を有する、
請求項1から3のいずれかに記載のアンカーボルト設置構造。
【請求項5】
前記接触部材は、柵の台座部であり、
前記柵は、斜面に設置されている、
請求項1から3のいずれかに記載のアンカーボルト設置構造。
【請求項6】
前記封止部材は、その上端が前記アンカーボルトにおける前記おねじ部が形成された範囲内に位置するように配置されている、
請求項1から5のいずれかに記載のアンカーボルト設置構造。
【請求項7】
前記押圧面と前記地面との間に介在して当該押圧面と当該地面との間の摩擦を増大する介在部材をさらに備えている、
請求項1から6のいずれかに記載のアンカーボルト設置構造。
【請求項8】
請求項1に記載のアンカーボルト設置構造のメンテナンス方法であって、
上記のアンカーボルト設置構造を施工する施工工程と、
前記地面の高さが低くなったときに、その低下分に対応する分だけ前記ナットを締め付けて前記接触部材を前記地面に押圧するナット締付け工程と、
を含むことを特徴とするアンカーボルト設置構造のメンテナンス方法。
【請求項9】
請求項1に記載のアンカーボルト設置構造の施工方法であって、
前記封止部材を前記アンカーボルトに嵌合させる嵌合工程と、
前記封止部材の外周部を前記埋込穴の内周面に当接させながら、前記アンカーボルトの埋込部を前記封止部材から垂下させた状態で前記埋込穴の所定位置に挿入させる挿入工程と、
前記埋込穴に前記硬化剤を充填する充填工程と、
前記アンカーボルトの埋込部を前記硬化剤が固化することによって形成される前記硬化剤層を介して前記埋込穴の内周面に固定する固化工程と
を含むことを特徴とするアンカーボルト設置構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−76296(P2013−76296A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217699(P2011−217699)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【Fターム(参考)】