説明

アンカー部材連結体

【課題】アンカー部材を型枠に仮固定する手間を特に増やすことなく、アンカー部材の材料の無駄を減らせるアンカー部材の固定方法を提供する。
【解決手段】コンクリート製筒状壁の壁内周面を覆うライナープレートを、筒状壁に埋設固定してある複数のアンカー部材19のプレート固定部20に溶接して固定するために、アンカー部材19の複数を型枠23の内側に仮固定しておき、複数のアンカー部材19を筒状壁に埋設固定するアンカー部材19の固定方法であって、プレート側辺部に沿って長い形状のプレート固定部を備えたアンカー部材19の複数を、それらのプレート固定部の姿勢をプレート側辺部に沿う姿勢に保持可能に互いに連結しておき、そのアンカー部材連結体25を、それらのプレート固定部の姿勢がプレート側辺部に沿うように、型枠に仮固定しておくとともに、アンカー部材19の複数を、可撓性を備えた索状部材で連結してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート製筒状壁の壁内周面を覆う複数の金属製ライナープレートを、そのプレート側辺部を前記筒状壁に埋設固定してある複数の金属製アンカー部材のプレート固定部に溶接して固定するために、前記アンカー部材の複数を前記筒状壁のコンクリート打設用型枠の内側に仮固定しておき、前記型枠の内側にコンクリートを打設した後、前記型枠を撤去して、前記複数のアンカー部材を、前記プレート固定部を前記壁内周面側に臨ませて、前記筒状壁に埋設固定するアンカー部材固定方法に使用するアンカー部材連結体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ドーム屋根の上面側を構成する上部屋根材と筒状外周壁と外底板とを一体に備えた金属製外槽の内側に、ドーム屋根の下面側を構成する下部屋根材と筒状内周壁と内底板とを一体に備えた金属製内槽を設けるとともに、外槽と内槽との間に断熱層を設けて貯留槽を構成し、内槽の内側を低温液化ガスの貯留部に形成してある低温液化ガス貯留設備においては、外槽の外周側を囲む防液堤としてのコンクリート製筒状壁を設けて、この筒状壁で外槽の強度を補強できるように、外槽の筒状外周壁を、筒状壁の内周側に壁内周面を覆うように固定してある複数の金属製ライナープレートで構成してある。
上記アンカー部材固定方法は、これら複数のライナープレートを筒状壁の壁内周面側に固定するための金属製アンカー部材を筒状壁に埋設固定する方法であり、従来、アンカー部材の筒状壁に対する固定位置を位置決めしておけば、プレート固定部の壁内周面に沿う回転姿勢にかかわらず、プレート側辺部のプレート固定部に対する溶接長さを確保できるように、プレート固定部の形状が筒状壁に埋設するアンカー軸と同芯状の略円形に形成してあるアンカー部材を使用している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−128191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術によれば、プレート固定部がプレート側辺部に沿って長い形状のアンカー部材を使用する場合に必要となる手間、つまり、プレート側辺部の溶接長さを確保できるように、プレート固定部の壁内周面に沿う回転姿勢をその長手方向がプレート側辺部に沿うように調整する手間を省ける利点があるものの、プレート固定部の形状を略円形に形成してあるために、プレート固定部の形状がプレート側辺部に沿って長い形状のアンカー部材に比べて材料の無駄が多くなる欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、アンカー部材を型枠に仮固定する手間を特に増やすことなく、アンカー部材の材料の無駄を減らせるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴構成は、コンクリート製筒状壁の壁内周面を覆う複数の金属製ライナープレートを、そのプレート側辺部を前記筒状壁に埋設固定してある複数の金属製アンカー部材のプレート固定部に溶接して固定するために、
前記アンカー部材の複数を前記筒状壁のコンクリート打設用型枠の内側に仮固定しておき、
前記型枠の内側にコンクリートを打設した後、前記型枠を撤去して、前記プレート固定部を前記壁内周面側に臨ませて、前記複数のアンカー部材を前記筒状壁に埋設固定するために、
前記プレート側辺部に沿って長い形状のプレート固定部を備えたアンカー部材の複数を、それらのプレート固定部の姿勢を前記プレート側辺部に沿う姿勢に保持可能に、予め、互いに連結しておき、
そのアンカー部材の複数を互いに連結するアンカー部材連結体を、それらのプレート固定部の姿勢が前記プレート側辺部に沿うように、前記型枠に仮固定しておくアンカー部材固定方法に使用するアンカー部材連結体であって、
前記アンカー部材の複数を、可撓性を備えた索状部材で連結してある点にある。
【0006】
〔作用及び効果〕
プレート固定部の形状を略円形に形成してあるアンカー部材に比べて材料の無駄が少ない形状のプレート固定部、つまり、プレート側辺部に沿って長い形状のプレート固定部を備えたアンカー部材を使用して、そのアンカー部材の複数を、それらのプレート固定部の姿勢をプレート側辺部に沿う姿勢に保持可能に、予め、互いに連結しておき、そのアンカー部材の複数を互いに連結するアンカー部材連結体を、それらのプレート固定部の姿勢がプレート側辺部に沿うように、型枠に仮固定しておくので、アンカー部材毎に、そのプレート固定部の壁内周面に沿う回転姿勢を長手方向がプレート側辺部に沿うように調整する手間を省きながら、プレート側辺部の溶接長さを確保できる姿勢で、複数のアンカー部材を型枠に仮固定しておくことができるようになり、アンカー部材を型枠に仮固定する手間を特に増やすことなく、アンカー部材の材料の無駄を減らせる。
【0007】
また、アンカー部材の複数を可撓性を備えた索状部材で連結してあるので、索状部材を屈曲させて、アンカー部材連結体をコンパクトに折り畳んだ姿勢に保持することができ、アンカー部材連結体の保管や運搬などにおける取り扱いが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】低温液化ガス貯留設備の概略縦断面図
【図2】(イ)要部の縦断面図,(ロ)要部の展開図
【図3】要部の一部切欠き斜視図
【図4】要部の展開図
【図5】(イ)要部の縦断面図,(ロ)要部の側面図
【図6】(イ)アンカー部材連結体の一部省略側面図,(ロ)アンカー部材連結体の一部省略平面図
【図7】アンカー部材固定方法の説明図
【図8】アンカー部材固定方法の説明図
【図9】実施の形態を示す図面:(イ)アンカー部材連結体の一部省略側面図,(ロ)アンカー部材連結体の一部省略平面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明のアンカー部材連結体を説明する前に、このアンカー部材連結体を使用する基本形態に関して図面に基づいて説明する。
〔基本形態〕
図1は、液化天然ガスや液化プロパンガスなどの低温液化ガスの貯蔵設備を示し、鋼管杭1で支持される基礎スラブ2を略円形に設けて、ドーム屋根3の上面側を構成する上部屋根材4と円筒状外周壁5と外底板6とを一体に備えた金属製外槽7を同芯状に設置してあるとともに、ドーム屋根3の下面側を構成する下部屋根材8と円筒状内周壁9と内底板10とを一体に備えた金属製内槽11を外槽7の内側に同芯状に設置してある。
【0010】
そして、外槽7と内槽11との間に断熱層12,13を設けて、内槽11の内側を低温液化ガスGの貯留部14に形成し、ドーム屋根3を鉛直方向に貫通する低温液化ガス受け入れ用の受け入れ管15や低温液化ガス払い出し用のポンプバレル16を設けてある。
【0011】
前記内槽11は、外底板6の内側に設けてある圧縮強度の高い硬質の底部断熱層12に内底板10を載せて設置してあり、上部屋根材4及び円筒状外周壁5と下部屋根材8及び円筒状内周壁9との間の断熱層13は、グラスウールや粒状パーライトなどの断熱材を充填して構成し、外槽7の外周側を囲む防液堤としてのプレストレスコンクリート製の円筒状壁17を基礎スラブ2と一体に設けてある。
【0012】
前記外槽7の円筒状外周壁5は、図2,図3に示すように、円筒状壁17の壁内周面を覆う複数の金属製ライナープレート18どうしを気密に溶接して構成してあり、これらのライナープレート18は、図4,図5に示すように円筒状壁17に埋設固定してある複数の金属製アンカー部材19のプレート固定板部20に、プレート側辺部21を溶接固定してある。
【0013】
前記アンカー部材19は、図5に示すように、プレート側辺部21に沿って長い略矩形状のプレート固定板部20とコンクリートに埋設固定してある円筒状のアンカー部22とを備え、後述する円筒状壁17のコンクリート打設用型枠23の内側に仮固定するための雌ねじ孔24をアンカー部22とプレート固定板部20とに亘って一連に貫通形成してある。
【0014】
前記アンカー部材19の複数を円筒状壁17のコンクリートに埋設固定する本発明のアンカー部材連結体を使用するアンカー部材固定方法を、図6〜図8を参照しながら説明する。
前記円筒状壁17は、所定高さ分の型枠23を設置して、その型枠23にコンクリートを打設して所定高さの壁部分を設けてから、更に、その上部に所定高さ分の型枠23を設置して所定高さの壁部分を打ち継ぐという工程を繰り返して構築するもので、図6に示すように、所定高さの壁部分に埋設固定する複数のアンカー部材19のうちの、鉛直方向で隣り合うように埋設固定する複数のアンカー部材19を互いに連結してあるアンカー部材連結体25を予め製作しておく。
【0015】
前記アンカー部材連結体25は、基本形態では、各アンカー部材19どうしを、両端部をプレート固定板部20に溶接固定してある連結用の鋼棒(硬質部材)26で、それらのプレート固定板部20の姿勢を長手方向が溶接予定のプレート側辺部21に沿う姿勢に保持可能に、予め、互いに連結してある。
【0016】
つまり、各プレート固定板部20における雌ねじ孔24の中心を通る長手方向に沿う中心線Lどうしが略一連に連続し、かつ、それらのプレート固定板部20のプレート溶接面27が共通の仮想平面Mに沿う姿勢で、所定間隔で互いに連結してあり、各鋼棒26の両端部をL字状に屈曲させて、プレート固定板部20の裏面側に突出するように溶接固定することにより、各鋼棒26を円筒状壁17に埋設可能に設け、上端側と下端側のプレート固定板部20aにはL字形のアンカー用スタッドボルト28を溶接固定してある。
【0017】
次に、図7に示すように、コンクリート打設用型枠23を組み付けるためのスペーサ29を使用して、アンカー部材連結体25を、それらのプレート固定板部20の姿勢がプレート側辺部21に沿うように、型枠23に仮固定することにより、アンカー部材19の複数を型枠23の内側に仮固定しておく。
【0018】
つまり、スペーサ29は、図8に示すように、型枠用パネル30を挟み付けるための一対の雌ねじ部材32,33をねじ込んである一対の端部雄ねじ軸部材31と、型枠23の内側で両端部を雌ねじ部材33にねじ込む中間雄ねじ軸部材34とを備え、図7に示すように、円筒状壁17の壁内周面を形成するための一方の型枠用パネル30aを挟み付ける一対の雌ねじ部材32,33のうちの型枠内側の雌ねじ部材33に代えて、アンカー部材連結体25における各アンカー部22の雌ねじ孔24に端部雄ねじ軸部材31をねじ込んで、各プレート固定板部20のプレート溶接面27が型枠用パネル30aに面接触するように固定して、アンカー部材連結体25を、各プレート固定板部20の姿勢がプレート側辺部21に沿うように、型枠23に仮固定する。
【0019】
次に、型枠23の内側にコンクリートを打設した後、端部雄ねじ軸部材31の夫々を外して型枠23を撤去し、図5に示したように、プレート固定板部20のプレート溶接面27を壁内周面側に略面一に臨ませて、複数のアンカー部材19を円筒状壁17に埋設固定する。
【0020】
〔実施の形態〕
図9は、本発明によるアンカー部材固定方法に使用する本発明のアンカー部材連結体25の実施形態を示し、L字形のアンカー用スタッドボルト28を裏面の上下に溶接固定してあるプレート固定板部20を設けてあるアンカー部材19の複数を、スタッドボルト28どうしを繋ぐワイヤーや針金,チェーンなどの可撓性を備えた索状部材36で所定間隔で連結して構成してあり、索状部材36はプレート固定板部20どうしを雌ねじ孔24の中心を通る長手方向に繋いでいる。
【0021】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるアンカー部材固定方法に使用するアンカー部材連結体は、プレート側辺部に沿って長い楕円形状のプレート固定板部や、長手方向端部を半円形に形成してあるプレート固定板部を備えたアンカー部材の複数を連結してあっても良い。
【符号の説明】
【0022】
17 筒状壁
18 ライナープレート
19 アンカー部材
20 プレート固定板部
21 プレート側辺部
23 型枠
25 アンカー部材連結体
26 硬質部材(鋼棒)
36 索状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート製筒状壁の壁内周面を覆う複数の金属製ライナープレートを、そのプレート側辺部を前記筒状壁に埋設固定してある複数の金属製アンカー部材のプレート固定部に溶接して固定するために、
前記アンカー部材の複数を前記筒状壁のコンクリート打設用型枠の内側に仮固定しておき、
前記型枠の内側にコンクリートを打設した後、前記型枠を撤去して、前記プレート固定部を前記壁内周面側に臨ませて、前記複数のアンカー部材を前記筒状壁に埋設固定するために、
前記プレート側辺部に沿って長い形状のプレート固定部を備えたアンカー部材の複数を、それらのプレート固定部の姿勢を前記プレート側辺部に沿う姿勢に保持可能に、予め、互いに連結しておき、
そのアンカー部材の複数を互いに連結するアンカー部材連結体を、それらのプレート固定部の姿勢が前記プレート側辺部に沿うように、前記型枠に仮固定しておくアンカー部材固定方法に使用するアンカー部材連結体であって、
前記アンカー部材の複数を、可撓性を備えた索状部材で連結してあるアンカー部材連結体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−82683(P2012−82683A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254137(P2011−254137)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【分割の表示】特願2006−94276(P2006−94276)の分割
【原出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)