説明

アンギオテンシン受容体遮断剤とNEP阻害剤との医薬組成物

【課題】高血圧性血管疾患に対する新規の薬剤を提供すること。
【解決手段】新規のアンギオテンシン受容体遮断剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤との二作用性化合物及び組合せ剤が提供される。より詳細には、(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤;(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi);及び要すれば(c)薬学的に許容されるカチオンを含む、二作用性化合物、たとえば超分子複合体が提供される。アンギオテンシン受容体拮抗剤とNEPiとの特定的な組合せ剤、結合プロドラッグ又は化合物は、高血圧の処置に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明はアンギオテンシン受容体遮断剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤との二作用性
化合物(dual-acting compound)及び組合せ剤(combination);中でも、アンギオテン
シン受容体遮断剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤とが非共有結合を介して結合している
二作用性分子(dual-acting molecule);又は、アンギオテンシン受容体遮断剤と中性エ
ンドペプチダーゼ阻害剤との超分子複合体(supramolecular complex);又は、たとえば
混合塩又共結晶のような結合プロドラッグ(linked pro-drug)とも呼べるもの;並びに
このような二作用性化合物又は組合せ剤を含有する医薬組成物;このような二作用性化合
物の製法;及び、このような二作用性化合物又は組合せ剤を用いて対象を処置する方法;
に関する。さらに具体的には、本発明は、二作用性化合物又は超分子複合体であって、そ
の分子内に作用機序が同一であるかまたは相異なる活性成分の2種の分子を含むものに関
する。
【背景技術】
【0002】
関連背景技術
アンギオテンシンIIは、血管収縮を起すホルモンである。これは翻って高血圧及び心
臓圧迫を起す。アンギオテンシンIIは標的細胞表面上の特定受容体と相互作用すること
が知られている。今までにアンギオテンシンIIの受容体サブタイプ2種、即ちAT1及
びAT2が確認されている。最近、AT1受容体に結合する物質の同定に大きな努力が傾
注されている。アンギオテンシン受容体遮断剤(ARB、アンギオテンシンII拮抗剤)
は、今ではアンギオテンシンIIが血管壁に存在するその受容体に結合するのを防止して
血圧低下を起すことが知られている。それ故、AT1受容体の阻害のために、そのような
拮抗剤は、他の適応症の中でもとりわけ、抗高血圧剤として又はうっ血性心不全の処置用
に使用できる。
【0003】
中性エンドペプチダーゼ(EC3.4.24.11;エンケファリナーゼ;アトリオペプ
チダーゼ;NEP)は、疎水性残基がアミノ側にある様々なペプチド基質を切断する亜鉛
含有金属プロテアーゼである[Pharmacol Rev, Vol. 45, p. 87 (1993) を参照]。この
酵素の基質には、これに限るものではないが、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP、
ANFとも呼ばれる)、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、met−及びleu−
エンケファリン、ブラジキニン、ニューロキニンA、エンドセリン−1及びサブスタンス
Pを含む。ANPは、強力な血管拡張剤であり、ナトリウム利尿剤でもある[J. Hyperte
ns, Vol. 19, p. 1923 (2001) を参照]。ANPの正常人への注入は、ナトリウム分画排
泄率、尿流率及び糸球体濾過量の増大を含む、ナトリウム利尿及び利尿を、再現性良く顕
著に強化する[J Clin Pharmacol, Vol. 27, p. 927 (1987) を参照]。しかしながら、
ANPは循環系内での半減期が短い。腎臓皮質膜内にあるNEPが、このペプチドを分解
する主たる酵素であることが証明されている[Peptides, Vol. 9, p. 173 (1988) を参照
]。このように、NEPの阻害剤(中性エンドペプチダーゼ阻害剤、NEPi)はANP
の血中濃度を上昇させると思われており、そこで、ナトリウム利尿効果及び利尿効果を誘
導することが期待されている。
【0004】
たとえば、アンギオテンシン受容体遮断剤及び中性エンドペプチダーゼ阻害剤のような
物質は、高血圧の制御にも有用ではあろうが、本態性高血圧は多遺伝子病の一つであって
、単剤療法では必ずしも適切に制御できるとは限らない。2000年には、経済先進国で
は成人およそ3.33億人、米国では約6千5百万人(成人3人に1人)が高血圧であっ
た[Lancet, Vol. 365, p. 217 (2005); Hypertension, Vol. 44, p. 398 (2004) を参照
]。長期間に及ぶ制御の不良な高血圧性血管疾患は、終にはたとえば心臓及び腎臓のよう
な標的器官に様々な病理的変化を起す。同様に、長期の高血圧は脳卒中の発症を増加させ
ることもある。それ故、抗高血圧療法の効果を評価し、血圧降下作用以外の心臓血管薬の
評価項目も検討して、併用療法のさらなる利点を洞察する必要性が大きい。
【0005】
高血圧性血管疾患の性格は多因性である。ある条件下では作用機序の異なる薬剤が併用
されてきた。しかしながら、作用機序の異なる薬剤の併用を検討することだけでは、必ず
しも優れた効果を持つ併用療法に至るとは限らない。従って、有害な副作用のない、効果
的な併用療法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の概要
第一の側面では、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤;
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi);及び要すれば
(c)薬学的に許容されるカチオン;
を含む、二作用性化合物、たとえば超分子複合体のようなものに関する。
【0007】
本発明はまた、たとえば、
(i)アンギオテンシン受容体拮抗剤及び中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)を
適当な溶媒に溶解する;
(ii)Catの塩基性化合物を適当な溶媒に溶解する(ここに、Catはカチオンであ
る);
(iii)工程(i)及び工程(ii)で得られた溶液を混和する;
(iv)固体を沈殿させ、乾燥させて二作用性化合物を得る;
を包含する方法、あるいは、
(iva)得られた溶液を蒸発乾固する;
(va)固体を適当な溶媒に再溶解する;
(via)固体を沈殿させ、乾燥して二作用性化合物を得る;
を含む操作で工程(i)及び工程(ii)で用いた溶媒を交換する方法、
のいずれかによって製造される二作用性化合物、たとえば超分子複合体のようなものに関
する。
【0008】
本発明はまた、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的に許容される塩;及び
(b)NEPi又はその薬学的に許容される塩;
を含む結合プロドラッグであり、ここで、アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的
に許容される塩とNEPi又はその薬学的に許容される塩とが結合構造によって結合して
いる、結合プロドラッグに関する。
【0009】
本発明はまた、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤の薬学的に許容される塩;及び
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)の薬学的に許容される塩;
を含む組合せ剤であり、ここで、アンギオテンシン受容体拮抗剤とNEPiとの薬学的に
許容される塩は同じであって、Na塩、K塩又はNH塩から選択される、組合せ剤に関
する。
【0010】
好適な態様では、アンギオテンシン受容体拮抗剤及びNEPiは酸性基を有し、これが
たとえば本発明の超分子複合体のような二作用性化合物の形成を容易にする。
【0011】
好ましくは、アンギオテンシン受容体拮抗剤は、バルサルタン、ロサルタン、イルベサ
ルタン、テルミサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、サプリサ
ルタン、タソサルタン、エリサルタン及びその組み合わせからなる群から選択される。
【0012】
好適な態様では、NEPiはSQ28,603;N−[N−[1(S)−カルボキシル
−3−フェニルプロピル]−(S)−フェニルアラニル]イソセリン;N−[N−[((
1S)−カルボキシ−2−フェニル)エチル]−(S)−フェニルアラニル]−β−アラ
ニン;N−[2(S)−メルカプトメチル−3−(2−メチルフェニル)プロピオニル]
メチオニン;cis−4−[[[1−[2−カルボキシ−3−(2−メトキシエトキシ)
プロピル]シクロペンチル]カルボニル]アミノ]シクロヘキサンカルボン酸;チオルフ
ァン;レトロチオルファン;ホスホラミドン;SQ29072;N−(3−カルボキシ−
1−オキソプロピル)−(4S)−p−フェニルフェニルメチル)−4−アミノ−2R−
メチルブタン酸エチルエステル;(S)−cis−4−[1−[2−(5−インダニルオ
キシカルボニル)−3−(2−メトキシエトキシ)プロピル]−1−シクロペンタンカル
ボキシアミド]−1−シクロヘキサンカルボン酸;3−(1−[6−endo−ヒドロキ
シメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−エキソ−カルバモイル]シクロペンチル)
−2−(2−メトキシエチル)プロパン酸;N−(1−(3−(N−t−ブトキシカルボ
ニル−(S)−プロリルアミノ)−2(S)−t−ブトキシカルボニルプロピル)シクロ
ペンタンカルボニル)−O−ベンジル−(S)−セリンメチルエステル;4−[[2−(
メルカプトメチル)−1−オキソ−3−フェニルプロピル]アミノ]安息香酸;3−[1
−(cis−4−カルボキシカルボニル−cis−3−ブチルシクロヘキシル−r−1−
カルバモイル)シクロペンチル]−2S−(2−メトキシエトキシメチル)−プロパン酸
;N−((2S)−2−(4−ビフェニルメチル)−4−カルボキシ−5−フェノキシバ
レリル)グリシン;N−(1−(N−ヒドロキシカルバモイルメチル)−1−シクロペン
タンカルボニル)−L−フェニルアラニン;(S)−(2−ビフェニル−4−イル)−1
−(1H−テトラゾール−5−イル)エチルアミノ)−メチルホスホン酸;(S)−5−
(N−(2−(ホスホノメチルアミノ)−3−(4−ビフェニル)プロピオニル)−2−
アミノエチル)テトラゾール;β−アラニン;
【0013】
3−[1,1`−ビフェニル]−4−イル−N−[(ジフェノキシホスフィニル)メチル
]−L−アラニル;N−(2−カルボキシ−4−チエニル)−3−メルカプト−2−ベン
ジルプロパンアミド;2−(2−メルカプトメチル−3−フェニルプロピオンアミド)チ
アゾール−4−イルカルボン酸;(L)−(1−((2,2−ジメチル−1,3−ジオキソ
ラン−4−イル)メトキシ)カルボニル)−2−フェニルエチル)−L−フェニルアラニ
ル)−β−アラニン;N−[N−[(L)−[1−[(2,2−ジメチル−1,3−ジオキ
ソラン−4−イル)メトキシ]カルボニル]−2−フェニルエチル]−L−フェニルアラ
ニル]−(R)−アラニン;N−[N−[(L)−1−カルボキシ−2−フェニルエチル
]−L−フェニルアラニル]−(R)−アラニン;N−[2−アセチルチオメチル−3−
(2−メチルフェニル)プロピオニル]メチオニンエチルエステル;N−[2−メルカプ
トメチル−3−(2−メチルフェニル)プロピオニル]メチオニン;N−[2(S)−メ
ルカプトメチル−3−(2−メチルフェニル)プロパノイル]−(S)−イソセリン;N
−(S)−[3−メルカプト−2−(2−メチルフェニル)プロピオニル]−(S)−2
−メトキシ−(R)−アラニン;N−[1−[[1(S)−ベンジルオキシカルボニル−
3−フェニルプロピル]アミノ]シクロペンチルカルボニル]−(S)−イソセリン;N
−[1−[[1(S)−カルボニル−3−フェニルプロピル]アミノ]シクロペンチルカ
ルボニル]−(S)−イソセリン;1,1'−[ジチオ−ビス−[2(S)−(2−メチル
ベンジル)−1−オキソ−3,1−プロパンジイル]]ビス−(S)−イソセリン;1,1
'−[ジチオビス−[2(S)−(2−メチルベンジル)−1−オキソ−3,1−プロパン
ジイル]]−ビス−(S)−メチオニン;N−(3−フェニル−2−(メルカプトメチル
)プロピオニル)−(S)−4−(メチルメルカプト)メチオニン;N−[2−アセチル
チオメチル−3−フェニルプロピオニル]−3−アミノ安息香酸;N−[2−メルカプト
メチル−3−フェニルプロピオニル]−3−アミノ安息香酸;N−[1−(2−カルボキ
シ−4−フェニルブチル)シクロペンタンカルボニル]−(S)−イソセリン;N−[1
−(アセチルチオメチル)シクロペンタンカルボニル]−(S)−メチオニンエチルエス
テル;3(S)−[2−(アセチルチオメチル)−3−フェニルプロピオニル]アミノ−
ε−カプロラクタム;N−(2−アセチルチオメチル−3−(2−メチルフェニル)プロ
ピオニル)メチオニンエチルエステル;及びその組合せからなる群から選択される。好ま
しくは、本二作用性化合物又は組合せ剤、特に超分子複合体は、混合塩又は共結晶である
。結合プロドラッグが混合塩又は共結晶であることも好適である。
【0014】
第二の側面では、本発明は、
(a)前記二作用性化合物又は組合せ剤、たとえば前記複合体のようなもの;及び
(b)薬学的に許容される添加物少なくとも1種;
を含む医薬組成物に関する。
【0015】
本発明はまた、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的に許容される塩;
(b)NEPi又はその薬学的に許容される塩;
ここで、このアンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的に許容される塩とNEPi又
はその薬学的に許容される塩とは結合部分を介して結合しているものとする;及び
(c)薬学的に許容される添加剤少なくとも1種;
を含む結合プロドラッグを含む医薬組成物に関する。
【0016】
第三の側面では、本発明は、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤;
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi);及び、要すれば
(c)Na、K及びNHからなる群から選択される薬学的に許容されるカチオンを含ん
でいてもよい;
を含む二作用性化合物、殊に超分子複合体の製法に関し、この製法は次の各工程:
(i)アンギオテンシン受容体拮抗剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)とを
適当な溶媒に溶解する;
(ii)Catの塩基性化合物を適切な溶媒に溶解する(ここにCatはカチオンである
);
(iii)工程(i)及び工程(ii)で得た溶液を混和する;
(iv)固体を沈殿させ、乾燥して二作用性化合物を得る;
を包含する方法、あるいは
次の各項の工程:
(iva)得られた溶液を蒸発乾固する;
(va)固体を適切な溶媒に再溶解する;
(via)固体を沈殿させ、乾燥して、二作用性化合物を得る
を含む操作で工程(i)及び工程(ii)で用いた溶媒を交換する方法、
によって二作用性化合物を製造するものである。
【0017】
本発明はまた、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的に許容される塩;
(b)NEPi又はその薬学的に許容される塩;
を含有する結合プロドラッグ(ここで、アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的に
許容される塩とNEPi又はその薬学的に許容される塩とは結合構造を介して結合してい
るものとする)を、次の各項の工程:
アンギオテンシン受容体拮抗剤とNEPiとの混合物に結合構造及び溶媒を加える工程
;及び
(d)結合プロドラッグを単離する工程;
を包含する方法で製造する方法に関する。
【0018】
第四の側面では、この発明は:たとえば高血圧、心不全(急性及び慢性)、うっ血性心
不全、左心室機能不全及び肥大型心筋症、糖尿病性心筋症、上室性不整脈 及び心室不整
脈、心房細動、心房粗動、有害な血管リモデリング、心筋梗塞及びその続発症、アテロー
ム動脈硬化症、狭心症(不安定性又は安定性)、腎機能不全(糖尿病性及び非糖尿病性)
、心不全、狭心症、糖尿病、続発性アルドステロン症、原発性及び続発性肺高血圧、腎不
全の病状たとえば糖尿病性腎症、糸球体腎炎、硬皮症、糸球体硬化症、原発性腎疾患の蛋
白尿、及び、また腎血管性高血圧、糖尿病性網膜症、脈管疾患、たとえば偏頭痛、末梢血
管疾患、レイノー病、管腔過形成、認識障害(たとえばアルツハイマー病)、緑内障及び
卒中のような疾患又は病状を処置又は予防する方法に関し、特に前記二作用性化合物又は
組合せ剤、殊に超分子複合体、又は前記結合プロドラッグ、好ましくは複合体をこの処置
を要する対象に投与することを含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1には、不斉ユニット2個を含む、トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物の超分子複合体の単位格子を図示する。ここでは次の色彩表示を用いる:灰色=炭素原子;青色=窒素原子;赤色=酸素原子;紫色=ナトリウム原子。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、様々な循環器疾患及び/又は腎臓疾患を患う患者を処置するための、二作用
性化合物又は組合せ剤、殊に超分子複合体又は結合プロドラッグ、又は、殊に作用機序の
異なる薬剤2種、即ちアンギオテンシン受容体拮抗剤及び中性エンドペプチダーゼ阻害剤
を含む独特な分子を形成できる超分子複合体に関する。
【0021】
本発明の態様の一つは、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤の薬学的に許容される塩;及び
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)の薬学的に許容される塩;
を含む物理的組合せ剤に関し、ここで、アンギオテンシン受容体拮抗剤とNEPiとの薬
学的に許容される塩は同一であって、Na塩、K塩又はNH塩から選択される。
【0022】
特に、この2種の活性成分が互いに結合して単一な二作用性化合物、殊に超分子複合体
、を形成するものは好適である。そうすることによって、前記の物理的組合せ剤とは明確
に異なる性質を持つ新分子又は超分子物質が生成する。
【0023】
そこで、本発明は、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤;
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi);及び
(c)好ましくはNa、K及びNHからなる群から選択される薬学的に許容されるカチ
オン;
を含む二作用性化合物、殊に超分子複合体、に関する。
【0024】
本発明はまた、
(i)アンギオテンシン受容体拮抗剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)とを
適当な溶媒に溶解する;
(ii)Catの塩基性化合物、たとえば(Cat)OH、(Cat)CO、(Ca
t)HCO、を適切な溶媒に溶解する(ここに、Catは好ましくはNa、K及びNH
からなる群から選択されるカチオンである);
(iii)工程(i)と工程(ii)とで得られた溶液を混和する;
(iv)固体を沈殿させ、乾燥して二作用性化合物を得る;
を包含する方法、あるいは
(iva)得られた溶液を蒸発乾固する;
(va)固体を適切な溶媒に再溶解する;
(via)固体を沈殿させ、乾燥して二作用性化合物を得る;
を含む操作で工程(i)及び工程(ii)で用いた溶媒を交換する方法、
のいずれかによって製造される、二作用性化合物、殊に超分子複合体、に関する。
【0025】
本発明はさらに、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的に許容される塩;及び
(b)NEPi又はその薬学的に許容される塩;
を含む結合プロドラッグに関し、ここで、アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的
に許容される塩とNEPi又はその薬学的に許容される塩とは結合構造によって結合して
いるものとする。
【0026】
この二成分は互いに結合構造に結合することによって結合プロドラッグを形成する。好
ましくは、この結合プロドラッグは実質的に純粋である。本明細書に記載する「実質的に
純粋」は少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも9
8%の純度を示す。
【0027】
本発明の好適な態様の一つとして、この結合プロドラッグは結合構造を介してこの二つ
の成分が結合する構造を持つ、超分子複合体を形成する。
【0028】
本発明の目的のために、「二作用性化合物」なる用語は、この化合物が一つの分子中に
2種の異なる作用機序を有すること、すなわち一方では化合物のARB分子構造に基づく
アンギオテンシン受容体遮断作用を;他方では化合物のNEPi分子構造に基づく中性エ
ンドペプチダーゼ阻害作用を;有する化合物であるという記述を意図している。
【0029】
本発明の目的のために、「化合物」なる用語は、医薬的活性成分2種、ARBとNEP
iの分子構造内に共有結合を、及び医薬的活性成分2種、ARBとNEPiの分子構造の
間に非共有結合相互作用を含む化学物質を記述することを意図している。典型的には、医
薬的活性成分2種、ARB分子構造とNEPi分子構造との間には水素結合を観察できる
。医薬的活性成分2種、ARB分子構造とNEPi分子構造の一方又は双方とカチオンと
の間にはイオン結合を観察できる。他種の結合、例えばファンデルワールス力ようなもの
が分子内に存在してもよい。説明のためには本発明の二作用性化合物は次式で表現できよ
う:
(ARB)−(L)m−(NEPi)
[式中、
Lは結合構造、たとえばカチオンであるか、又は非共有結合であり;
mは整数1又はそれ以上である]。
換言すれば、ARB構造及びNEPi構造は非共有結合たとえば水素結合を介しても連結
できる。これに代えて又はこれに加えて、両構造は結合構造たとえばカチオンを介して連
結できる。
【0030】
態様の一つでは、二作用性化合物は結合プロドラッグであると考えてもよく、そこでは
結合構造、たとえば医薬的活性成分2種、ARB及びNEPiを結合するカチオンのよう
なものが、両薬剤のプロドラッグを形成し、結合プロドラッグが摂取され、吸収されたと
きに両薬剤が放出される。好適な態様では、二作用性化合物は組合せ剤、殊に超分子複合
体である。
【0031】
本発明の目的のために、「超分子複合体」なる用語は、医薬的活性成分2種、カチオン
、その他のものたとえば溶媒、殊に水のような成分の間の非共有結合的、分子間結合によ
る相互作用を記述することを意図する。この相互作用は、超分子複合体中に存在する分子
種の会合を導き、この組合せ剤に各分子種の物理的混合物との相違を与える。
【0032】
非共有結合的分子間結合は、当業界で知られている超分子複合体を形成するいかなる相
互作用、たとえば水素結合、ファンデルワールス力及びπ−πスタックのようなもの、で
あってもよい。イオン結合も存在できる。好ましくは、組合せ剤内に相互作用網を形成す
るイオン結合及びそれに加えて水素結合が存在する。この超分子複合体は好ましくは固体
として存在するが、液体媒体中に存在することもできる。本発明の好適な態様では、複合
体は結晶性であって、この場合、好ましくは混晶であるか、共結晶である。
【0033】
典型的には、二作用性化合物、殊に超分子複合体は各成分の物理的混合物の性質とは異
なる性質、たとえば融点、IRスペクトルなど、を示す。
【0034】
好ましくは、二作用性化合物、殊に超分子複合体は、医薬的活性成分2種及び、存在す
るなら溶媒、好ましくは水との間に非共有結合、殊に水素結合の網状構造を有する。さら
にその上、二作用性化合物、殊に超分子複合体が医薬的活性成分2種、カチオン及び、存
在するなら溶媒、好ましくは水との間の非共有結合、殊にイオン結合及び水素結合、の網
状構造を持つことは好適である。このカチオンは、好ましくは数種の酸素リガンドに配位
して、この酸素リガンドとの間の連結を提供する。この酸素リガンドは医薬的活性成分2
種に存在するカルボニル及びカルボキシレート基及び存在するなら好ましくは溶媒、好ま
しくは水、に由来する。
【0035】
二作用性化合物はアンギオテンシン受容体拮抗剤の分子構造を含む。これはアンギオテ
ンシン受容体拮抗剤に由来する分子構造が二作用性化合物の構築に関与していることを意
味する。アンギオテンシン受容体拮抗剤は本化合物の一部分であり、NEP阻害剤と直接
的に又は非共有結合を介して間接的に連結している。便宜のために、本出願では「アンギ
オテンシン受容体拮抗剤」なる用語を、本化合物のこの部分を記述する時にも使用する。
本発明での使用に適するアンギオテンシン受容体拮抗剤(ARB)は、これに限定するも
のではないが、バルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、テルミサルタン、エプロサ
ルタン、カンデサルタン、オルメサルタン、サプリサルタン、タソサルタン、エリサルタ
ン、コード番号E−1477の次式で示される化合物:
【化1】

コード番号SC−52458の次式で示される化合物:
【化2】

及び
コード番号ZD−8731の次式で示される化合物:
【化3】

を含む。
適当なアンギオテンシンII受容体拮抗剤はまた、これに限定するものではないが、酢
酸サララシン、カンデサルタンシレキセチル、CGP−63170、EMD−66397
、KT3−671、LR−B/081、バルサルタン、A−81282、BIBR−36
3、BIBS−222、BMS−184698、カンデサルタン、CV−11194、E
XP−3174、KW−3433、L−161177、L−162154、LR−B/0
57、LY−235656、PD−150304、U−96849、U−97018、U
P−275−22、WAY−126227、WK−1492.2K、YM−31472、
ロサルタンカリウム、E−4177、EMD−73495、エプロサルタン、HN−65
021、イルベサルタン、L−159282、ME−3221、SL−91.0102、
タソサルタン、テルミサルタン、UP−269−6、YM−358、CGP−49870
、GA−0056、L−159689、L−162234、L−162441、L−16
3007、PD−123177、A−81988、BMS−180560、CGP−38
560A、CGP−48369、DA−2079、DE−3489、DuP−167、E
XP−063、EXP−6155、EXP−6803、EXP−7711、EXP−92
70、FK−739、HR−720、ICI−D6888、ICI−D7155、ICI
−D8731、イソテオリン(isoteoline)、KRI−1177、L−158809、L
−158978、L−159874、LR B087、LY−285434、LY−30
2289、LY−315995、RG−13647、RWJ−38970、RWJ−46
458、S−8307、S−8308、サプリサルタン、サララシン、サルメシン(Sarm
esin)、WK−1360、X−6803、ZD−6888、ZD−7155、ZD−87
31、BIBS39、CI−996、DMP−811、DuP−532、EXP−929
、L−163017、LY−301875、XH−148、XR−510、ゾラサルタン
及びPD−123319も含む。
【0036】
本発明のこの側面の範囲内には前記ARBの組合せ剤も含む。
【0037】
本発明による組合せ剤又は複合体を調製するために使用するARBは、商業的供給元か
ら購入でき、また既知の方法に従って製造できる。ARBは遊離型、並びに適当な塩型又
はエステル型としてこの発明の目的に使用してもよい。
【0038】
好適な塩型は酸付加塩を含む。酸性基(たとえばCOOH又は5−テトラゾリル)を少
なくとも1個有する本化合物は塩基と共に塩を形成できる。塩基との適切な塩は、たとえ
ば金属塩、たとえばアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、たとえばナトリウム、カリウ
ム、カルシウム又はマグネシウム塩などのようなもの、又はアンモニア又は有機アミンと
の塩、たとえばモルホリン、チオモルホリン、ピペリジン、ピロリジン、モノ−、ジ−又
はトリ−低級アルキルアミン、たとえばエチル−、tert−ブチル−、ジエチル−、ジ
イイソプロピル−、トリエチル−、トリブチル−又はジメチルプロピル−アミン、又はモ
ノ−、ジ−又はトリ−ヒドロキシ低級アルキルアミン、例えばモノ−、ジ−又はトリ−エ
タノールアミンなどとの塩である。さらに、対応する分子内塩を形成してもよい。医薬用
には不適当な塩であるが、たとえば遊離化合物(I)又はその薬学的に許容される塩の分
離又は精製などに使用できる塩も包含される。
【0039】
なおさらに好適な塩は、たとえばバルサルタンの無晶型モノナトリウム塩;無晶型又は
結晶型ジナトリウム塩、特にその水和物型、バルサルタンの無晶形モノカリウム塩;バル
サルタンの無晶形又は結晶型ジカリウム塩、特にその水和物型;バルサルタンの結晶型カ
ルシウム塩、特にその水和物型、主に四水和物;バルサルタンの結晶型マグネシウム塩、
特にその水和物型、主に六水和物;バルサルタンの結晶型カルシウム/マグネシウム複合
塩、特にその水和物型;バルサルタンの結晶型ビス−ジエチルアンモニウム塩、特にその
水和物型;バルサルタンの結晶型ビス−ジプロピルアンモニウム塩、特にその水和物型;
バルサルタンの結晶型ビス−ジブチルアンモニウム塩、特にその水和物型、主にそのヘミ
水和物;バルサルタンの無晶型モノ−L−アルギニン塩;バルサルタンの無晶型ビス−L
−アルギニン塩;バルサルタンの無晶型モノ−L−リジン塩;バルサルタンの無晶型ビス
−L−リジン塩;などである。
【0040】
好ましくは、二作用性化合物、殊に本発明の複合体、を調製する時には、ARBの遊離
型を使用する。
【0041】
この発明の好適な態様では、本発明の組合せ剤又は複合体に使用するアンギオテンシン
受容体遮断剤は次の構造式:
【化4】

で示されるバルサルタンである。バルサルタンはラセミ体であってもよく、又は次式:
【化5】

又は
【化6】

、好ましくは
【化7】

で示される異性体2個の中の1個であってもよい。
【0042】
本発明で使用するバルサルタン((S)−N−バレリル−N−{[2'−(1H−テト
ラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}バリン)は商業的供給元から購入
でき、または既知方法に従って製造もできる。例えば、バルサルタンの製造は、米国特許
第5,399,578号及び EP 0 443 983に記載されており、それぞれの全開示を引用により、本
明細書の一部とする。この発明の目的には、バルサルタンは遊離の酸型並びに適当な塩型
の何れで使用してもよい。これに加えて、カルボキシル基のエステルその他の誘導体並び
にテトラゾール基の塩及び誘導体も結合プロドラッグの合成に利用してもよい。ARBに
関する記載はその薬学的に許容される塩に関する記載でもある。
【0043】
好ましくは、ARBは二プロトン酸である。そこで、アンギオテンシン受容体遮断剤は
、溶液のpHに依存して0価、1価又は2価の電荷を持つ。
【0044】
本発明の組合せ剤では、ARBはNa塩、K塩又はNH塩、好ましくはNa塩から選
択される薬学的に許容される塩の形にある。これはこのカチオンのモノ塩及びジ塩の双方
、好ましくはジ塩を含む。殊にバルサルタンの場合、このことはカルボン酸構造及びテト
ラゾール構造の双方が塩を形成することを意味する。
【0045】
二作用性化合物、殊に本発明の超分子複合体では、製造には、典型的にはARBの遊離
型が使用され、複合体に存在するカチオン分子種に塩基、たとえば(Cat)OHなどを
用いて導入する。
【0046】
二作用性化合物は、中性エンドペプチダーゼ阻害剤の分子構造を含む。これは中性エン
ドペプチダーゼ阻害剤から誘導される分子構造が二作用性化合物の構築に関与しているこ
とを意味する。中性エンドペプチダーゼ阻害剤は本化合物の一部分であって、直接的に、
又は非共有結合を介して間接的に、ARBと連結している。便宜のために、本願では、「
中性エンドペプチダーゼ阻害剤」なる用語は、化合物のこの部分を記述する時にも用いる
こととする。本発明での使用に適する中性エンドペプチダーゼ阻害剤は式(I):
【化8】

[式中、
は、炭素1〜7個を含むアルキル、トリフルオロメチル、フェニル、置換フェニル
、−(CH1〜4−フェニル、又は−(CH)1〜4−置換フェニルであり;
は、水素、炭素1〜7個を含むアルキル、フェニル、置換フェニル、−(CH
1〜4−フェニル又は−(CH1〜4−置換フェニルであり;
はヒドロキシ、炭素1〜7個を含むアルコキシ又はNHであり;
nは、整数1〜15である]
で示されるものを含む。ここに、用語「置換フェニル」では炭素1〜4個の低級アルキル
、炭素1〜4個の低級アルコキシ、炭素1〜4個の低級アルキルチオ、ヒドロキシ、Cl
、Br又はFから選択される置換基を示す。
【0047】
式(I)で示される好適な中性エンドペプチダーゼ阻害剤は、式中、
がベンジルであり;
が水素であり;
nが整数1〜9であり;及び
がヒドロキシである;
化合物を含む。
【0048】
その他の好適な中性エンドペプチダーゼ阻害剤には、(3S,2'R)−3−{1−[2
'−(エトキシカルボニル)−4'−フェニルブチル]シクロペンタン−1−カルボニルア
ミノ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−2−オキソ−1H−1−ベンズアゼピン−1−酢
酸又はその薬学的に許容される塩がある。
【0049】
本発明での使用に適する好適な中性エンドペプチダーゼ阻害剤には、これに限定するも
のではないが、SQ28,603;N−[N−[1(S)−カルボキシル−3−フェニル
プロピル]−(S)−フェニルアラニル]−(S)−イソセリン;N−[N−[((1S
)−カルボキシ−2−フェニル)エチル]−(S)−フェニルアラニル]−β−アラニン
;N−[2(S)−メルカプトメチル−3−(2−メチルフェニル)プロピオニル]メチ
オニン;cis−4−[[[1−[2−カルボキシ−3−(2−メトキシエトキシ)プロ
ピル]シクロペンチル]カルボニル]−アミノ]シクロヘキサンカルボン酸;チオルファ
ン;レトロチオルファン;ホスホルアミドン;SQ29072;(2R,4S)−5−ビ
フェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチル−ペンタン
酸エチルエステル;N−(3−カルボキシ−1−オキソプロピル)−(4S)−p−フェ
ニルフェニルメチル)−4−アミノ−2R−メチルブタン酸;(S)−cis−4−[1
−[2−(5−インダニルオキシカルボニル)−3−(2−メトキシエトキシ)プロピル
]−1−シクロペンタンカルボキシアミド]−1−シクロヘキサンカルボン酸;3−(1
−[6−endo−ヒドロキシメチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン−2−エキソ−カル
バモイル]シクロペンチル)−2−(2−メトキシエチル)プロパン酸;N−(1−(3
−(N−t−ブトキシカルボニル−(S)−プロリルアミノ)−2(S)−t−ブトキシ
カルボニルプロピル)シクロペンタンカルボニル)−O−ベンジル−(S)−セリンメチ
ルエステル;4−[[2−(メルカプトメチル)−1−オキソ−3−フェニルプロピル]
アミノ]−安息香酸;3−[1−(cis−4−カルボキシカルボニル−cis−3−ブ
チルシクロヘキシル−r−1−カルバモイル)シクロペンチル]−2S−(2−メトキシ
エトキシメチル)プロパン酸;N−((2S)−2−(4−ビフェニルメチル)−4−カ
ルボキシ−5−フェノキシバレリル)グリシン;
【0050】
N−(1−(N−ヒドロキシカルバモイルメチル)−1−シクロペンタンカルボニル)−
L−フェニルアラニン;(S)−(2−ビフェニル−4−イル)−1−(1H−テトラゾ
ール−5−イル)エチルアミノ)メチルホスホン酸;(S)−5−(N−(2−(ホスホ
ノメチルアミノ)−3−(4−ビフェニル)プロピオニル)−2−アミノエチル)テトラ
ゾール;β−アラニン;3−[1,1'−ビフェニル]−4−イル−N−[ジフェノキシホ
スフィニル)メチル]−L−アラニル;N−(2−カルボキシ−4−チエニル)−3−メ
ルカプト−2−ベンジルプロパンアミド;2−(2−メルカプトメチル−3−フェニルプ
ロピオンアミド)チアゾール−4−イルカルボン酸;(L)−(1−((2,2−ジメチ
ル−1,3−ジオキソラン−4−イル)−メトキシ)カルボニル)−2−フェニルエチル
)−L−フェニルアラニル)−β−アラニン;N−[N−[(L)−[1−[(2,2−
ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メトキシ]カルボニル]−2−フェニルエ
チル]−L−フェニルアラニル]−(R)−アラニン;N−[N−[(L)−1−カルボ
キシ−2−フェニルエチル]−L−フェニルアラニル]−(R)−アラニン;N−[2−
アセチルチオメチル−3−(2−メチルフェニル)プロピオニル]メチオニンエチルエス
テル;N−[2−メルカプトメチル−3−(2−メチルフェニル)プロピオニル]メチオ
ニン;N−[2(S)−メルカプトメチル−3−(2−メチルフェニル)プロパノイル]
−(S)−イソセリン;N−(S)−[3−メルカプト−2−(2−メチルフェニル)プ
ロピオニル]−(S)−2−メトキシ−(R)−アラニン;N−[1−[[1(S)−ベ
ンジルオキシカルボニル−3−フェニルプロピル]アミノ]シクロペンチルカルボニル]
−(S)−イソセリン;N−[1−[[1(S)−カルボニル−3−フェニルプロピル]
アミノ]シクロペンチルカルボニル]−(S)−イソセリン;1,1'−[ジチオビス−[
2(S)−(2−メチルベンジル)−1−オキソ−3,1−プロパンジイル]]−ビス−
(S)−イソセリン;1,1'−[ジチオビス−[2(S)−(2−メチルベンジル)−
1−オキソ−3,1−プロパンジイル]]−ビス−(S)−メチオニン;N−(3−フェ
ニル−2−(メルカプトメチル)プロピオニル)−(S)−4−(メチルメルカプト)メ
チオニン;N−[2−アセチルチオメチル−3−フェニルプロピオニル]−3−アミノ安
息香酸;N−[2−メルカプトメチル−3−フェニルプロピオニル]−3−アミノ安息香
酸;N−[1−(2−カルボキシ−4−フェニルブチル)シクロペンタンカルボニル]−
(S)−イソセリン;N−[1−(アセチルチオメチル)シクロペンタンカルボニル]−
(S)−メチオニンエチルエステル;3(S)−[2−(アセチルチオメチル)−3−フ
ェニルプロピオニル]アミノ−ε−カプロラクタム;N−(2−アセチルチオメチル−3
−(2−メチルフェニル)プロピオニル)メチオニンエチルエステル;及びその組合せ剤
を含む。
【0051】
中性エンドペプチダーゼ阻害剤は商業的購入元から購入するか、又はたとえば:米国特
許第4,722,810号、米国特許第5,223,516号、米国特許第4,610,816号、米国特許第4,929,6
41号、南アフリカ特許出願84/0670、UK 69578、米国特許第5,217,996号、EP 00342850、G
B 02218983、WO 92/14706、EP 00343911、JP 06234754、EP 00361365、WO 90/09374、JP
07157459、WO 94/15908、米国特許第5,273,990号、米国特許第5,294,632号、米国特許第5
,250,522号、EP 00636621、WO 93/09101、EP 00590442、WO 93/10773、米国特許第5,217,
996号、の何れかに記載のような既知方法に従って製造できる(それぞれの開示を引用によ
り、本明細書の一部とする)。中性エンドペプチダーゼ阻害剤はこの発明の目的ではその
遊離型並びに適当ないずれかの塩型で使用してもよい。中性エンドペプチダーゼ阻害剤に
ついての記載には、その薬学的に許容される塩についての記載も含める。
【0052】
これに加えて、いずれかのカルボキシル基のエステル又はその他の誘導体並びにその他
の酸性基の塩及び誘導体は、結合プロドラッグの合成に利用できる。この発明の好適な態
様では、NEPiは式(II):
【化9】

(II)
で示される5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−
メチルペンタン酸エチルエステル又は対応する加水分解型5−ビフェニル4−イル−5−
(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸である。
【0053】
式(II)で示される化合物は、(2R,4S)、(2R,4S)、(2R,4S)又
は(2R,4S)の各異性体として存在できる。好適なものは次式:
【化10】

で示される(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニ
ルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルである。
【0054】
式(II)で示される化合物はNEPの特異的阻害剤であって、米国特許第5,217,996
号に記載されている。これは商業的供給元から購入でき、また既知の方法に従って製造で
きる。式(II)で示される化合物は本発明の目的には遊離型、並びに適当な塩型又はエ
ステル型のいずれかで使用してもよい。
【0055】
好ましくは、NEPiはモノプロトン酸である。そこでは、NEPiは溶液のpHに依
存して、0価又は1価の電荷を持つ。
【0056】
本発明の組合せ剤では、NEPiは、Na塩、K塩又はNH塩、好ましくはNa塩か
ら選択される薬学的に許容される塩型である。
【0057】
本発明の二作用性化合物、殊に超分子複合体では製造に、典型的にはNEPiの遊離型
を使用し、複合体に存在するカチオンは塩基、(Cat)OHを使用して導入する。
【0058】
二作用性化合物は、好ましくは、ARBとNEPiとの間に非共有結合を含む。これに
代えて又はこれに加えて、要すればたとえば薬学的に許容されるカチオンのような結合構
造を含んでいてもよい。
【0059】
結合構造には、これに限定するものではないが、一般的に安全と思われている(GRA
S)化合物又はその他の薬学的に許容される化合物が含まれる。この結合構造はイオン又
は中性分子であってもよい。結合構造がイオンである場合には結合プロドラッグは塩であ
り、結合構造が中性分子である場合には結合プロドラッグは共結晶である。いかなる特別
の理論に拘泥するものではないが、ARB及びNEPiの酸性部分は塩基性結合構造にプ
ロトンを与えて、三つの成分を合せて一つの分子にする。結合プロドラッグが処置すべき
対象に摂取される時は、摂取環境の酸性がより強いので、摂取及び吸収と同時に結合プロ
ドラッグは各成分に分れて活性成分に変換され、意図された疾患を処置するために有益な
生物学的活性を提供する。
【0060】
結合プロドラッグ塩又は二作用性化合物の場合、結合構造又はカチオンの各々は、好ま
しくはプラス電荷1価、2価又は3価のカチオン、有機塩基又はアミノ酸である。結合プ
ロドラッグ一般及び二作用性化合物、殊に複合体のための好適なカチオン(Cat)は、
塩基性カチオン、さらに好ましくは金属カチオンである。好適な金属カチオンは、これに
限定するものではないがNa、K、Ca、Mg、Zn、Fe又はNHを含む。アミン塩
基及び塩形成剤には、たとえばベンザシン、ヒドラバミン、エチレンジアミン、N,N−
ジベンジルエチレンジアミン、L−アルギニン、コリンヒドロキシド、N−メチルグルカ
ミン、(メグルミン)、L−リジン、 ジメチルアミノエタノール(デアノール)、t−
ブチルアミン、ジエチルアミン、2−(ジエチルアミノ)エタノール、4−(2−ヒドロ
キシエチル)モルホリン、トロメタニン(TRIS)、4−アセトアミドフェノール、2
−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチルプロパノー
ル、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、
イミダゾール、ピペラジン及びトリエタノールアミンのようなものを利用してもよい。
【0061】
最も好ましくは、カチオンはNa、K又はNH、たとえばNaである。態様の一つで
は、Caが好適である。
【0062】
結合プロドラッグ共結晶の場合、結合構造は水素結合官能基を提供する中性分子であっ
てもよい。
【0063】
態様の一つでは、この発明の結合プロドラッグは次式で示されるが、ここに式(1)及
び式(2)は塩を示し、式(3)は共結晶を示す:
NEPi・Xa・ARB 式(1);
NEPi・XaYb・ARB 式(2);
NEPi・Zc・ARB 式(3)。
[式中、
XはCa、Mg、Zn又はFeであり;
YはNa、K又はNH4であり;
Zは中性分子であり;また
a、b及びcは結合プロドラッグの化学量論を反映するが、好ましくは、a、b及びcは
結合価、1価、2価又は3価を示す]
【0064】
前記式(1)及び式(2)で示される結合プロドラッグについて、NEPiは、好まし
くはモノプロトン酸であり、ARBはジプロトン酸である。アンギオテンシン受容体遮断
剤は0価、1価又は2価の電荷を持ち、NEPiは0価又は1価の電荷を持つが、これは
溶液のpHに依存する一方で、分子全体は中性である。ARBとNEPiとの比率は1:
1、1:2、1:3、3:1、2:1、1:1、好ましくは1:1、1:2又は1:3、
最も好ましくは1:1となろう。
【0065】
特に亜鉛とカルシウムとの多成分塩は文献、たとえばChem Pharm Bull, Vol. 53, p. 6
54 (2005) などに報告されている。これらのイオンは多成分系の結晶化を促進する配位構
造を必要とする。金属イオンは各原子の原子軌道に支配される配位構造を有する。
【0066】
バルサルタンは酸性基2個:カルボン酸及びテトラゾールを含む。本発明のこの側面の
一態様では、バルサルタンとNEPiとの結合プロドラッグの分子構造は、カルボン酸と
結合構造との間の結合又はテトラゾール基と結合構造との間の結合を含む。さらに別な態
様では、この結合プロドラッグは、バルサルタンのカルボン酸基とテトラゾール基とNE
Pi基とが結合する三価の結合構造を含む。
【0067】
本発明のこの側面の一態様では、バルサルタンと(2R,4S)−5−ビフェニル4−
イル−5−(3−カルボキシ−プロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエス
テルとはカルシウム塩イオンを介して結合する。
【0068】
本願の好適な態様では、組合せ剤並びに超分子複合体の中ではアンギオテンシン受容体
拮抗剤及び中性エンドペプチダーゼ阻害剤はモル比1:1、1:2、1:3、3:1、2
:1、より好ましくは1:1で存在する。これは結合プロドラッグにも当てはまる。さら
にその上、複合体中では、アンギオテンシン受容体拮抗剤と中性エンドペプチダーゼ阻害
剤とカチオンとは分子比率1:1:1、1:1:2、1:1:3、より好ましくは1:1
:3で存在する。これは結合プロドラッグにも同様に当てはまる。
【0069】
本発明の組合せ剤又は二作用性化合物、殊に複合体は溶媒を含んでいてもよい。このこ
とは二作用性化合物、殊に複合体の場合に、溶媒がたとえば超分子相互作用など分子間構
造に寄与しているかもしれない場合には、特に好適である。好適な溶媒には水、メタノー
ル、エタノール、2−プロパノール、アセトン、酢酸エチル、メチル−t−ブチルエーテ
ル、アセトニトリル、トルエン、及び塩化メチレン、好ましくは水を含む。溶媒が存在す
るならば、活性成分1分子当り1分子又はそれ以上で存在できる。この場合、すなわち溶
媒が化学量論的な量で存在するならば、活性成分1分子当り、溶媒、たとえば水、が好ま
しくは1分子、2分子、3分子、4分子又は5分子、より好ましくは3分子が存在できる
。あるいは、溶媒は非化学量論的な量で存在することもある。これは、たとえば溶媒分子
、たとえば水が好ましくは:0.25、0.5、0.75、1.25、1.5、1.75、2.
25、2.5、2.75、3.25、3.5、3.75、4.25、4.5及び4.75、好まし
くは2.5分子のように活性成分1分子当りいかなる化学量論的な割合ででも存在できる
ことを意味する。二作用性化合物、殊に複合体が結晶型であれば、溶媒は分子充填の一部
であって結晶格子中内に捕捉されていてもよい。
【0070】
そこで本発明の好適な態様では、二作用性化合物、殊に超分子複合体は次式:
[ARB(NEPi)]Na1−3・xHO、ここにxは0、1、2又は3、たとえ
ば:3である;好ましくは、
[ARB(NEPi)]Na・xHO、ここにxは0、1、2又は3、たとえば3
である;より好ましくは、
[バルサルタン((2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプ
ロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]Na・xHO[式中、
xは0、1、2又は3、たとえば3である]
で示される。そこで本発明の好適な態様では二作用性化合物、殊に超分子複合体は次式:
[ARB(NEPi)]Na1−3・xHO、ここにxは0〜3、たとえば2.5で
ある;好ましくは
[ARB(NEPi)]Na・xHO、ここにxは0〜3、たとえば2.5である
;より好ましくは
[(N−バレリル−N−{[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4
−イル]メチル}バリン)(5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニ
ルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]Na・xHO;殊に
[((S)−N−バレリル−N−{[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェ
ニル−4−イル]メチル}−バリン)((2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−
(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]Na
・xHO、ここにxは0〜3、たとえば2.5である;
で示される。この最も好適な例では、複合体はトリナトリウム[3−((1S,3R)−
1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)
プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−
5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物
と名付けられる。
【0071】
相対的分子量を形式的に計算するために使用するトリナトリウム[3−((1S,3R
)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイ
ル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾー
ル−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水
和物の単純化された構造は次式の通りである。
【化11】

バルサルタンは、酸性基2個:カルボン酸及びテトラゾールを有する。本発明のこの側面
における態様の一つでは、二作用性化合物、殊にバルサルタンとNEPiとの複合体の分
子構造にはカルボン酸とカチオン、たとえばNa、又は溶媒、たとえば水との間の相互作
用、又はテトラゾール基とカチオン、たとえばNa、又は溶媒、たとえば水との間の連結
を含む。なお別な態様では、二作用性化合物、殊に複合体には、バルサルタンのカルボン
酸基、テトラゾール基又はNEPi基とカチオン、たとえばNaのようなもの、又は溶媒
、たとえば水のようなものとの間の相互作用が含まれる。
【0072】
本発明の組合せ剤又は二作用性化合物、殊に複合体は、好ましくは固体である。固体で
は結晶体、部分結晶体、非晶体又は多形体、好ましくは結晶体になることができる。
【0073】
本発明の二作用性化合物、殊に複合体は、活性成分2種を物理的に混合するだけで製造
したARBとNEPiとの組合せとは別物である。そこで、製造及び治療的応用に有用な
異なる性質を持つことができる。二作用性化合物、殊に複合体と混合物との間の相違は(
S)−N−バレリル−N−{[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4
−イル]メチル}バリンと(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボ
キシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルとからなる二作用性化
合物によって例示でき、スペクトルの中に物理的混合物では観察されないピーク及びシフ
トが存在することによって特徴付けられる。
【0074】
特定的には、そのような二作用性化合物は、好ましくは室温(25℃)でScintag XDS2
000粉末回折装置でCu−Kα放射(λ=1.54056Å)を用いてPeltier−冷却シリ
コン検出装置で測定した粉末X線回折パターンによって特徴付けられる。測定範囲2θが
1.5°〜40°、走査速度3°/分で測定した。X線回折ダイヤグラム中の最も重要な
反射は下記の格子面間隔を含む。
【0075】
トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エト
キシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'
−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチ
ル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物の好適な特徴付けはX線回折ダイヤグラムに
確認される格子面間隔dから得られる。これを次の2θ[°]の平均値で示す(誤差範囲
±0.2):4.5, 5.5, 5.6, 9.9, 12.8, 15.7, 17.0, 17.1, 17.2, 18.3, 18.5, 19.8,
21.5, 21.7, 23.2, 23.3, 24.9, 25.3, 27.4, 27.9, 28.0, 30.2。誤差範囲±0.1では
:4.45, 5.52, 5.57, 9.94, 12.82, 15.66, 17.01, 17.12, 17.2, 18.32, 18.46, 19.76,
21.53, 21.72, 23.17, 23.27, 24.88, 25.3, 27.4, 27.88, 28.04, 30.2となる。X線回
折パターン中の最強反射は次の格子面間隔を示す:2θ[°]: 4.5, 5.6, 12.8, 17.0, 17.
2, 19.8, 21.5, 27.4。殊に4.45, 5.57, 17.01, 17.2, 19.76, 21, 27.4。
【0076】
所与の物質についてX線回折を実験的に測定して得た前記の格子面間隔及び強度の平均
値をチェックする好適な方法は、広範囲な単一結晶構造決定法でこの間隔及び強度を計算
することからなる。この構造決定で格子定数と原子位置が与えられ、それでコンピュータ
援用計算法で計算すべき固体に対応するX線回折ダイヤグラム作製が可能になる。ソフト
ウエアMaterials Studio(Accelrys)のPowder Patternプログラムを使用する。データの
比較、すなわちトリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチ
ル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'
−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−
4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物の最も重要なピークの格子面
間隔及び強度について測定から得たデータと単結晶から算出したデータの比較を次表に示
す。
【表1】

【0077】
本発明は単結晶X線分析及び粉末X線回折パターンから得たデータとパラメータによっ
て特徴付けられるトリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメ
チル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3
'−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−
4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物の結晶性固体に関する。単結
晶X線回折法の理論及び評価された結晶データ及びパラメータの定義付けの詳細な検討は
Stout & Jensen, X-Ray Structure Determination; A Practical Guide, Mac Millian C
o., New York, N.Y. (1968) 第3章にも記載がある。
結晶データ
【表2】

単結晶X線測定データ
【表3】

構造解析に使用したコンピュータプログラム:SHELXD(Sheldrick, Goettingen)。
【0078】
三次元では、単位格子は辺長3個a、b及びc、及び軸間角度3個α、β及びγで定義
する。こうして、ユニットセルVの容積を決定する。この結晶パラメータの詳細な説明
はStout & Jensen(前記)の第3章に記載がある。単結晶測定、特に原子配位、同位元素
温度パラメータ、水素原子の配位並びに対応する同位元素温度パラメータの詳細から、ト
リナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エトキシ
カルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'−(
ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチル}
アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物には単斜晶系ユニットセルが存在すること、その
セル内容としてC4855Na・2.5HOで示される式単位が12個二
重位置内に不斉単位2個として存在することを示す。
【0079】
単結晶X線構造から決定される非中心性の空間群P2は、純粋なエナンチオマー分子
に共通な空間群である。この空間群では一般的位置2個があり、これはユニットセル内の
式ユニット12個を意味し、その非対称ユニット内にはナトリウムイオン18個及び水1
5個があると思われる。
【0080】
図1には、不斉ユニット2個を含むトリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフ
ェニル−4−イルメチル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオ
ネート−(S)−3'−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレ
ート)ビフェニル−4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物の超分子
複合体のユニットセルの図を示す。
【0081】
単結晶構造解析によれば、トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−
4−イルメチル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−
(S)−3'−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビ
フェニル−4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物超分子の不斉ユニ
ットは、ARB及びNEPi構造各6個、ナトリウム原子18個、及び水分子15個を含
む。トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エ
トキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−
2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメ
チル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物は、酸素リガンドが配位したナトリウム超
分子複合体と考えてもよい。これらの酸素原子は前記構造のカルボキシレート基12個及
びカルボニル基18個及び水分子15個中の13個に由来する。この結晶はこのナトリウ
ム複合体の無限3次元ネットワークである。
【0082】
この化合物は、減衰全反射フーリエ変換赤外線(ATR−FTIR)分光分析器(Atte
nuated Total Reflection Fourier Transform Infrared; Nicolet Magna-IR 560)を用い
て測定して、次に波数(cm−1)で示す特徴的なバンド:2956 (w), 1711 (st), 1637
(st), 1597 (st), 1488 (w), 1459 (m), 1401 (st), 1357 (w), 1295 (m), 1266 (m), 11
76 (w), 1085 (m), 1010 (w), 1942(w), 907 (w), 862 (w), 763 (st), 742 (m), 698 (m
), 533 (st) を示す赤外線吸収スペクトルによって特徴付けることもできる。この複合体
の特性ピークは、特に次のピークである:1711(st), 1637(st), 1597(st) and 1401(st)
。ATR−IRによる全吸収帯の誤差範囲は±2cm−1である。吸収帯の強度は次のよ
うに記述する:(w)=弱;(m)=中;及び(st)=強。
【0083】
このような化合物はまた785nmのレーザ励起源を持つ分光ラマン光度計(Kaiser O
ptical Systems, Inc.)で測定するラマンスペクトルによっても特徴付けられ、次に顕著
なバンドを波数(cm−1)で示す:3061 (m), 2930 (m, broad), 1612 (st), 1523 (m)
, 1461 (w), 1427 (w), 1287 (st), 1195 (w), 1108 (w), 11053 (w), 1041 (w), 1011 (
w), 997 (m), 866(w), 850 (w), 822 (w), 808 (w), 735 (w), 715 (w), 669 (w), 643 (
w), 631 (w), 618 (w), 602 (w), 557 (w), 522 (w), 453 (w), 410 (w), 328 (w)。ラマ
ンバンドの誤差範囲は±2cm−1である。吸収バンドの強度は次のように記述する:(
w)=弱;(m)=中;及び(st)=強。
【0084】
このような化合物は示差走査熱量測定(DSC)で測定される明確な溶融性によって特
長付けてもよい。Q1000装置(TA Instruments)を用いて複合体の溶融開始温度及びピー
ク最高温度139℃及び145℃を観測する。加熱速度は10°K/分である。
【0085】
本発明の第二の態様は、本明細書に記載の組合せ剤、結合プロドラッグ又は二作用性化
合物、殊に複合体と薬学的に許容される添加剤少なくとも1種とを含む医薬組成物に関す
る。ARB及びNEPiを含む組合せ剤及び複合体に関する詳細は、本発明の第一の態様
に関して前記してある。
【0086】
本発明の医薬組成物は、それ自体が公知の方法で製造でき;ヒトを含む哺乳類(温血動
物)への、経腸投与、たとえば経口投与又は直腸投与のようなものに適するもの、及び非
経腸投与に適するものであって;本組合せ剤又は二作用性化合物、殊に複合体の治療的有
効量を単独で又は薬学的に許容される担体少なくとも1種との組合せ剤として含有し、特
に経腸投与又は非経腸投与に適するものである。典型的な経口用製剤には錠剤、カプセル
剤、シロップ剤、エリキシール剤及び懸濁液剤を含む。典型的な注射用製剤には液剤及び
懸濁剤を含む。
【0087】
本発明での使用に適する薬学的に許容される添加物は、これに限定するものではないが
、本発明の組合せ剤又は二作用性化合物、殊に複合体に悪影響がないように化学的に不活
性であることを限度として、希釈剤又は賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、減摩剤、結合剤、着色
剤及びそれらの組合せ剤を含む。固体用量製剤中の各添加剤の量は当技術分野で常用の範
囲内で変化してもよい。前記製剤中に使用される典型的な薬学的に許容される担体は:糖
類、たとえば乳糖、蔗糖、マンニトール及びソルビトール;澱粉、たとえばコーンスター
チ、タピオカ澱粉及び馬鈴薯澱粉;繊維素と誘導体、たとえばカルボキシメチルセルロー
スナトリウム、エチルセルロース及びメチルセルロース;燐酸カルシウム、たとえば燐酸
ジカルシウム及び燐酸トリカルシウム;硫酸ナトリウム;硫酸カルシウム;ポリビニルピ
ロリドン;ポリビニルアルコール;ステアリン酸;ステアリン酸アルカリ土類金属塩、た
とえばステアリン酸マグネシウム及びステアリン酸カルシウム;ステアリン酸;植物油、
たとえばピーナッツ油、綿実油、ゴマ油、オリーブ油及びコーン油;非イオン性、カチオ
ン性及びアニオン性界面活性剤;エチレングリコールポリマー;β−サイクロデキストリ
ン;脂肪アルコール;及び穀類加水分解物、並びにその他の非毒性で適合性の賦形剤、結
合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、潤滑剤、風味剤、その他の医薬製剤に通常使
用されるものなどで例示される。
【0088】
経腸投与用または非経腸投与用の医薬製剤は、たとえば単位用量製剤、たとえばコーテ
ィング錠、錠剤、カプセル剤又は坐剤及びアンプル剤などである。これらはそれ自体が公
知の様式、たとえば通常の混合、顆粒化、コーティング、可溶化、又は凍結乾燥などの各
工程などを用いて製造される。そこで、経口投与用医薬組成物は、結合プロドラッグ、組
合せ剤又は二作用性化合物、殊に複合体と固体の添加剤とを混合し、要すれば、得られた
混合物を顆粒化し、また、所望であるか、必要であれば、混合物又は顆粒を必要な助剤を
加えた後に錠剤又は被覆錠剤のコアに成形して、製造できる。
【0089】
組合せ剤又は二作用性化合物、殊に複合体内における活性化合物の用量は、たとえば投
与形態、温血動物種、年齢及び/又は個体の病状のような様々な因子に依存できる。動物
の疾患モデルで予想される効力は経口投与で約0.1mg/kg/日〜約1000mg/
kg/日の範囲、ヒトの処置に予想される用量は約0.1mg/日〜約2000mg/日
の範囲である。好適な範囲は、結合プロドラッグ約40mg/日〜約960mg/日、好
ましくは約80mg/日〜約640mg/日である。ARB成分は約40mg/日〜約3
20mg/日の用量で投与され、NEPi成分は約40mg/日〜約320mg/日の用
量で投与される。さらに具体的には、ARB/NEPi各々の用量には、各々40mg/
40mg、80mg/80mg、160mg/160mg、320mg/320mg、4
0mg/80mg、80mg/160mg、160mg/320mg、320mg/64
0mg、80mg/40mg、160mg/80mg及び320mg/160mgを含む
。この用量は「治療的有効量」である。本発明の医薬組成物中の結合プロドラッグ、組合
せ剤又は二作用性化合物、殊に複合体の好適な用量は治療的有効量である。
【0090】
これに加えて、医薬組成物には他の治療剤を、たとえば当技術で報告されている治療的
有効用量などで含んでいてもよい。このような治療用薬剤には次のものを含む:
a)抗糖尿病剤、たとえば次のようなもの:インスリン、インスリン誘導体及び模擬体
;インスリン分泌促進剤たとえばスルホニルウレア、たとえばグリピジド、グリブリド、
アマリール;インスリン分泌促進スルホニルウレア受容体リガンドたとえばメグリチニド
、たとえばナテグリニド及びレパグリニドなど;ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体(
PPAR)リガンド;プロテインチロシンホスファターゼ−1B(PTP−1B)阻害剤
たとえばPTP−112;GSK3(グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3)阻害剤、た
とえばSB−517955、SB−4195052、SB−216763、NN−57−
05441及びNN−57−05445;RXRリガンド、たとえばGW−0791及び
AGN−194204;ナトリウム依存性グルコースコトランスポータ阻害剤、たとえば
T−1095;グリコーゲンホスホリラーゼA阻害剤、たとえばBAY R3401;ビ
グアナイド、たとえばメトホルミン;α−グルコシダーゼ阻害剤、たとえばアカルボース
;GLP−1(グルカゴン様ペプチド−1)、GLP−1類似体、たとえばエキセンジン
−4及びGLP−1模擬体;及びDPPIV(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害剤、
たとえばLAF237。
b)脂質低下剤、たとえば次のようなもの:3−ヒドロキシ−3−メチル−グルタリル
コエンザイムA(HMG−CoA)リダクターゼ阻害剤、たとえば、ロバスタチン、ピタ
バスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、セリバスタチン、メバスタチン、ベロス
タチン(velostatin)、フルバスタチン、ダルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバス
タチン及びリバスタチンなど;スクアレンシンターゼ阻害剤;FXR(ファルネソイドX
受容体)及びLXR(肝X受容体)リガンド;コレスチルアミン;フィブレート;ニコチ
ン酸及びアスピリン。
c)抗肥満剤、たとえばオルリスタットのようなもの;及び
d)抗高血圧剤、たとえばループ利尿剤のようなもの、たとえばエタクリン酸、フロセ
ミド及びトルセミド;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、たとえばベナゼプリ
ル、 カプトプリル、エナラプリル、ホシノプリル、リシノプリル、モエキシプリル、ペ
リノドプリル(perinodopril)、キナプリル、ラミプリル及びトランドラプリル;Na−
K−ATPアーゼ膜ポンプの阻害剤、たとえばジゴキシン;ACE/NEP阻害剤、たと
えばオマパトリラト、サムパトリラト及びファシドトリル;ベータアドレナリン受容体遮
断剤、たとえばアセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、メト
プロロール、ナドロール、プロプラノロール、ソタロール及びチモロール;変力剤、たと
えばジゴキシン、ドブタミン及びミルリノン;カルシウムチャネルブロッカー、たとえば
アムロジピン、ベプリジル、ジルチアゼム、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、
ニフェジピン、ニソルジピン及びベラパミル;アルドステロン受容体拮抗剤;及びアルド
ステロンシンターゼ阻害剤のようなもの。最も好適な組合せ剤の併用相手は利尿剤、たと
えばヒドロクロロチアジド及び/又はカルシウムチャネルブロッカー、たとえばアムロジ
ピン又はその塩である。
【0091】
その他の特別な抗糖尿病化合物はPatel Mona: Expert Opin Investig Drugs, 2003, 12
(4), 623-633の図1〜図7に記載されており、引用により本明細書の一部とする。本発明
の化合物は、他の活性成分と同時に、前に、又は後に、同一又は相異なる投与経路で別々
に又は同じ医薬製剤中で一緒に投与してもよい。
【0092】
ここにコード番号、一般名、商品名で確認される治療剤の構造は標準的な概説「The Me
rck Index」の出版物又はデータベース、たとえばPatents International(たとえばIMS
World Publications)などを参照できる。対応する内容を、引用により本明細書の一部と
する。
【0093】
従って、本発明はさらに、好ましくは前記の抗糖尿病剤、脂質低下剤、抗肥満剤又は抗
高血圧剤、最も好ましくは抗糖尿病剤、抗高血圧剤又は脂質低下剤から選択される他の治
療剤の治療的有効量に添加した医薬組成物を提供する。
【0094】
当業者は、本明細書に前記及び後記する治療上の処置における、本発明複合剤の効力を
証明するための実験モデルを選択する完全な能力がある。代表的試験はトリナトリウム[
3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エトキシカルボニル−1
−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'−(ペンタノイル{
2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチル}アミノ)ブチレ
ート]ヘミペンタ水和物について、たとえば次の方法などを用いて行う:トリナトリウム
[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エトキシカルボニル−
1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'−(ペンタノイル
{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチル}アミノ)ブチ
レート]ヘミペンタ水和物の抗高血圧及び中性エンドペプチダーゼ24.11(NEP)
−阻害活性を覚醒ラットで評価する。血圧降下効果をヒトのレニンとその基質、ヒトのア
ンギオテンシノーゲンの双方を過剰発現する二重トランスジェニックラット(dTGR)
で評価する(Bohlender, et al, High human renin hypertension in transgenic rats.
Hypertension; 29(1 Pt 2):428-34, 1997)。従って、この動物はアンギオテンシンII
依存性高血圧を示す。トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イ
ルメチル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)
−3'−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニ
ル−4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物のNEP阻害効果は外因
的心房ナトリウム利尿ペプチド(ANP)を注入した覚醒Sprague−Dawley
ラットで測定する。ANP血中濃度の上昇を生体内NEP阻害の指標に用いる。両モデル
で、トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エ
トキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−
2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメ
チル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物を粉末としてゼラチンミニカプセルに入れ
てとして経口投与する。この結果を以下に要約する。
【0095】
トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エト
キシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'
−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチ
ル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物は、劇症高血圧のラットモデルである有意識
dTGRに経口投与した後に用量依存性の持続性で抗高血圧効果を示す。
【0096】
外因性ANPを注入した有意識Sprague−Dawleyラットでは、トリナトリ
ウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エトキシカルボニ
ル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'−(ペンタノ
イル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチル}アミノ)
ブチレート]ヘミペンタ水和物の経口投与は、急速に及び用量依存的に、血中ANP免疫
反応性(ANPir)の強化が示すように長期にわたって、NEPを阻害する。
【0097】
生体内抗高血圧作用
dTGRに動脈血圧及び心拍数を連続的に測定するための遠隔測定送信機を装着する。
動物を、無作為にビヒクル(空カプセル)群又は処理(2、6、20又は60mg/kg
、経口)群に割付ける。24時間平均動脈血圧(MAP)のベースラインは、全ての群で
約170〜180mmHgである。トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェ
ニル−4−イルメチル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネ
ート−(S)−3'−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレー
ト)ビフェニル−4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物は用量依存
的にMAPを低下させる。処置群から得られた値は用量依存性であって、高い方から三つ
までの用量での結果はビヒクル対照群の結果とは有意差がある。
【0098】
NEPの生体内阻害
トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチル−3−エト
キシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'−メチル−2'
−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−4'−イルメチ
ル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物による生体内NEP阻害の程度と持続性を以
前に報告された方法で(Trapani, et al., CGS 35601 and its orally active prodrug C
GS 37808 as triple inhibitors of endothelin-converting enzyme-1, neutral endopep
tidase 24.11, and angiotensin-converting enzyme. J. Cardiovasc Pharmacol; 44(Sup
pl 1):S211-5, 2004)評価する。持続的にカニューレを挿入した覚醒雄性Sprague
−DawleyラットにラットANP(1−28)を450ng/kg/分の速度で静脈
内点滴する。1時間点滴後、ラットを無作為に次の6群のどれかに割付ける:無処理対照
群、ビヒクル(空カプセル)対照群、又は薬剤4用量群の一つ(2、6、20又は60m
g/kg、経口)。ANP点滴をさらに8時間継続する。次の各時点で採血し、市販酵素
免疫検定キットによって血中ANPirを測定する:−60分(すなわち、ANP点滴開
始前)、−30分(ANP点滴30分後)、0分(「ベースライン」;ANP点滴60分
後で、薬剤又はビヒクル投与前)、及び0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7及
び8時間後。
【0099】
ANP点滴前は、ANPirは低く(0.9〜1.4ng/mL)、6群全てで類似であ
る。ANPの点滴でANPirは急速に(30分で)〜10ng/mLまで上昇する。無
処理対照群及びビヒクル対照群では、このANPir濃度は実験の時間中持続する。これ
とは対照的に、トリナトリウム[3−((1S,3R)−1−ビフェニル−4−イルメチ
ル−3−エトキシカルボニル−1−ブチルカルバモイル)プロピオネート−(S)−3'
−メチル−2'−(ペンタノイル{2''−(テトラゾール−5−イレート)ビフェニル−
4'−イルメチル}アミノ)ブチレート]ヘミペンタ水和物では急速に(15分以内)、
用量依存的にANPirが上昇する。要約すれば、経口投与したLCZ696は迅速な、
用量依存的な血中ANPirの強化を反映して、長時間にわたって持続する作用でNEP
を阻害する。
【0100】
得られる結果は、本発明化合物の予期できなかった治療効果を示す。
【0101】
第三の側面では、本発明はARB又はその薬学的に許容される塩及びNEPi又はその
薬学的に許容される塩の結合プロドラッグを、
(a)無機塩形成剤を溶媒に加えて、結合プロドラッグ塩形成溶液を形成する;
(b)この塩形成溶液をARBとNEPiとの混合物に加えて、ARBとNEPiに結合
プロドラッグを形成させる;及び
(c)結合したプロドラッグを分離する;
の工程を包含する方法を用いて製造する方法に関する。好ましくは、各成分を当量で添加
する。
【0102】
無機塩形成剤は、これに限定するものではないが、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、カ
ルシウムメトキシド、酢酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、ギ酸カルシウム、水酸化マ
グネシウム、酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム及び炭酸水素マグネシウム、水酸化ナ
トリウム、ナトリウムメトキシド、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウムを含む。無機塩形成
剤は結合構造を溶媒中に放出し、ARBとNEPiが存在すると、結合プロドラッグが生
成する。
【0103】
本発明の範囲内に含まれる溶媒は、これに限定するものではないが、好ましくはARB
、NEPi及び無機塩形成剤が低溶解度を示して、結合プロドラッグを結晶させるもので
ある。この溶媒はこれに限定するものではないが、水、メタノール、エタノール、2−プ
ロパノール、酢酸エチル、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル、トルエン、及
び塩化メチレン及びこの溶媒の混合物を含む。
【0104】
無機塩形成剤及び溶媒は、混合した時には結合プロドラッグの形成を促進するpHを示
すべきである。このpHは、約2と約6との間、好ましくは約3と約5との間、最も好ま
しくは3.9と4.7との間であってもよい。
【0105】
結合プロドラッグは結晶化及びクロマトグラフィーで単離される。クロマトグラフィー
の具体的な型には、たとえばリガンド特異的樹脂クロマトグラフィー、逆相樹脂クロマト
グラフィー及びイオン交換樹脂クロマトグラフィーなどがある。
【0106】
具体例では、結合プロドラッグの一方の成分の2価塩と他の成分の1価塩とを接触させ
る。具体例ではバルサルタンと一塩基性NEPiの混合塩は、バルサルタンのカルシウム
塩とNEPi成分のナトリウム塩とを接触させて合成する。所望する混合塩の単離は、選
択的結晶化又はリガンド特異的樹脂、逆相樹脂又はイオン交換樹脂を使用するクロマトグ
ラフィーによって行う。同様に、この工程は両成分の1価塩、たとえばナトリウム塩のよ
うなものを用いて行うことができる。
【0107】
本発明のこの側面の別な態様では、結合プロドラッグの共結晶が得られる。結合プロド
ラッグ共結晶を製造する方法では、前記無機塩形成剤を水素結合性を提供する中性分子と
交換する。溶媒は分子充填の一部になって結晶格子に捕捉されてもよい。
【0108】
第三の側面の好適な態様では、本発明は、
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤;
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi);及び要すれば
(c)薬学的に許容されるカチオン;
を含む二作用性化合物を製造する方法に関し、この方法は、
(i)アンギオテンシン受容体拮抗剤及び中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)を
適当な溶媒に溶解する;
(ii)Catの塩基性化合物を適切な溶媒に溶解する(ここにCatはカチオンである
);
(iii)工程(i)及び工程(ii)で得られた溶液を混和する;
(iv)固体を沈殿させ、乾燥して二作用性化合物を得る;
の工程を包含する方法、あるいは
(iva)得られた溶液を蒸発乾固する;
(va)固体を適切な溶媒に再溶解する;
(via)固体を沈殿させ、乾燥して二作用性化合物を得る;
を含む操作で工程(i)及び工程(ii)で用いた溶媒を交換する方法、
のいずれかによって、二作用性化合物を製造するものである。
【0109】
ARB、NEPi及びカチオンを含む複合体に関する詳細は、本発明の第一の態様に関
連して上記した通りである。
【0110】
好ましくは、工程(i)においては、等モル量のARBとNEPiとを添加する。AR
BとNEPiとの双方は、好ましくは遊離形で使用する。工程(i)で使用する溶媒は、
ARBとNEPiとの双方を溶解できる如何なる溶媒であってもよい。好適な溶媒は前記
のもの、すなわち水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、酢酸エチ
ル、酢酸イソプロピル、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル、トルエン、DM
F、NMF及び塩化メチレン、及びこのような溶媒の混合物であって、たとえば次のよう
なもの:エタノール−水、メタノール水、2−プロパノール−水、アセトニトリル−水、
アセトン−水、2−プロパノール−トルエン、酢酸エチル−ヘプタン、酢酸イソプロピ
ル−アセトン、メチル−t−ブチル、エーテル−ヘプタン、メチル−t−ブチルエーテル
−エタノール、エタノール−ヘプタン、アセトン−酢酸エチル、アセトン−シクロヘキサ
ン、トルエン−ヘプタンのようなもの、より好ましくはアセトンを含む。
【0111】
好ましくは、工程(ii)ではCatの塩基性化合物は、ARB及びNEPiの酸性官
能基と塩を形成できる化合物である。その例は前記したもの、たとえば水酸化カルシウム
、水酸化亜鉛、カルシウムメトキシド、カルシウムエトキシド、酢酸カルシウム、炭酸水
素カルシウム、ギ酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシ
ウム、炭酸水素マグネシウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム
、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、酢酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、水
酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、カリウムメトキシド、カリウムエトキ
シド、酢酸カリウム、ギ酸カリウム、水酸化アンモニウム、アンモニウムメトキシド、ア
ンモニウムエトキシド及び炭酸アンモニウムを含む。過塩素酸塩を使用してもよい。たと
えば前記ようなアミン塩基又は塩形成剤、殊にベンザシン、L−アルギニン、コリン、エ
チレンジアミン、L−リジン又はピペラジンを使用してもよい。典型的には本明細書に記
載したCatを持つ無機塩基を使用する。より好ましくは、塩基性化合物は(Cat)O
H、(Cat)CO、(Cat)HCO、さらになお好ましくはCat(OH)、
たとえばNaOHである。塩基性化合物は、ARB又はNEPiのどちらかに対して少な
くとも3当量、好ましくは二作用性化合物、殊にカチオン3個を持つ複合体、を得るため
の化学量論的な量で使用する。工程(ii)で使用する溶媒は、Cat(OH)を溶解す
る溶媒又は溶媒混合物のいずれでもよい。好適な溶媒には水、メタノール、エタノール、
2−プロパノール、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル−t−ブチルエー
テル、アセトニトリル、トルエン、塩化メチレン及びこのような溶媒の混合物、より好ま
しくは水を含む。
【0112】
工程(iii)では、工程(i)及び工程(ii)で得られた溶液を混和する。これは
工程(i)で得た溶液を工程(ii)で得た溶液に加えるか、その逆の操作をするが、工
程(ii)で得た溶液を工程(i)で得た溶液に加えるのが好ましい。
【0113】
第一の変法では混和後、好ましくは混合後、二作用性化合物、殊に複合体が工程(iv
)で沈殿する。この混合と沈殿とは典型的には両溶液を適当な時間たとえば室温で20分
〜6時間、好ましくは30分〜3時間、より好ましくは2時間、攪拌することによって行
う。二作用性化合物の種晶を加えるのは有利である。この方法は沈殿を促進する。
【0114】
第一の変法における工程(iv)では、典型的には共溶媒を加える。使用する共溶媒は
複合体形のARB及びNEPiが低い溶解度を示して化合物を沈殿させる溶媒である。連
続的か段階的かを問わず蒸留は、共溶媒による置換で主に共溶媒を含む混合物を与える。
好適な溶媒にはエタノール、2−プロパノール、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピ
ル、メチル−t−ブチルエーテル、アセトニトリル、トルエン、及び塩化メチレン及びそ
のような溶媒の混合物、より好ましくは酢酸イソプロピルを含む。好ましくは、最少量の
溶媒を用いて沈殿を促進する。固体を、たとえば濾過などによって収集し、乾燥して本発
明の二作用性化合物、殊に複合体を得る。乾燥工程は室温又は、たとえば30〜60℃、
好ましくは30〜40℃のような昇温で行うことができる。溶媒の除去を促進するために
減圧を採用でき、好ましくは、乾燥を常圧又は減圧、たとえば10〜30バール、たとえ
ば20バールで行う。
【0115】
第二の変法では、混和後、好ましくは混合後、二作用性化合物、殊に複合体を含む混合
物は好ましくは透明な溶液を形成する。この混合は典型的には両溶液を適当な時間、たと
えば室温で20分〜6時間、好ましくは30分〜3時間、より好ましくは1時間、攪拌し
て行う。要すれば、温度を上げて確実に透明な溶液としてもよい。
【0116】
次に得られる混合物に溶媒交換を行って、二作用性化合物、殊に複合体を得る。
【0117】
この第二変法の工程(iva)では、溶液を好ましくはたとえば室温〜50℃、より好
ましくは30〜40℃に加温下に蒸発乾固する。
【0118】
好ましくは、工程(va)では、使用する溶媒又は溶媒混合物は、複合体形のARB及
びNEPiが低溶解度を示して二作用性化合物、殊に複合体を沈殿させるような溶媒であ
る。好適な溶媒には、工程(i)について前記したもの、たとえば水、エタノール、2−
プロパノール、アセトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチル−t−ブチルエーテル
、アセトニトリル、トルエン、及び塩化メチレン及びこのような溶媒の混合物、より好ま
しくは酢酸イソプロピルを含む。好ましくは、最少量の溶媒又は溶媒混合物を用いて沈殿
を促進する。
【0119】
工程(via)では沈殿を室温で行うことができる。沈殿は、混合物を放置又は攪拌、
好ましくは攪拌によって行う。これは好ましくは攪拌及び/又は超音波処理によって行う
。沈殿後、固体をたとえば濾過で収集し、乾燥して本発明の化合物を得る。乾燥工程は室
温又は昇温、たとえば30〜60℃、好ましくは室温で行うことができる。溶媒除去を促
進するために減圧を用いることもできるが、好ましくは乾燥を常圧で行う。
【0120】
第四の側面では、この発明は、前記の組合せ剤、結合プロドラッグ又は二作用性化合物
、殊に複合体をこのような処置が必要な対象に投与することを含む、たとえば高血圧、心
不全(急性及び慢性)、うっ血性心不全、左心室機能不全及び肥大型心筋症、糖尿病性心
筋症、上室性不整脈及び心室不整脈、心房細動、心房粗動、有害な血管リモデリング、心
筋梗塞及びその続発症、アテローム動脈硬化症、狭心症(不安定性又は安定性)、腎機能
不全(糖尿病性及び非糖尿病性)、心不全、狭心症、糖尿病、続発性アルドステロン症、
原発性及び続発性肺高血圧、腎不全の病状、たとえば糖尿病性腎症、糸球体腎炎、硬皮症
、糸球体硬化症、原発性腎疾患の蛋白尿、及び腎血管性高血圧、糖尿病性網膜症、他の脈
管疾患、たとえば偏頭痛、末梢血管疾患、レイノー病、管腔過形成、認識障害(たとえば
アルツハイマー病)、緑内障及び卒中のような疾患又は病状を処置又は予防する方法に関
する。
【0121】
第一態様の組合せ剤、結合プロドラッグ又は二作用性化合物、殊に複合体は、単独で又
は第二態様の医薬組成物の形で投与してもよい。投与に関する情報、すなわち治療的有効
量などは、組合せ剤、結合プロドラッグ又は二作用性化合物、殊に複合体の投与法にかか
わらず同じである。
【0122】
この組合せ剤、結合プロドラッグ又は二作用性化合物、殊に複合体は、一次選択治療剤
としての使用、製剤化や製造のしやすさに関して、ARB又は中性エンドペプチダーゼ阻
害剤単独の組合せ剤又は他のARB/NEPi組合せ剤よりも有益である。
【実施例】
【0123】
本発明の具体的態様を以下の実施例を参照して例示する。各実施例は本発明を説明する
ためにのみ開示されるものと理解すべきであって、如何なる意味でも本発明の範囲を制限
するものと解釈すべきではない。
【0124】
実施例1
[バルサルタン((2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロ
ピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]Na・2.5HOの製造
バルサルタンと(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロ
ピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルとの二作用性化合物を(2R,
4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メ
チルペンタン酸エチルエステル遊離酸(〜95%純度)0.42gとバルサルタン遊離酸
0.41gとをアセトン40mLに溶解して製造する。これとは別に、0.111gのN
aOHを7mLのHOに溶解する。この溶液二つを混和し、室温で1時間攪拌すると透
明な溶液を得る。溶液を35℃で蒸発してガラス状固体を得る。ガラス状固体残渣にアセ
トン40mLを入れ、得られる混合物を沈殿ができるまで(〜5分)攪拌・超音波処理す
る。沈殿を濾取し、固体を室温で重量が一定になるまで2日間風乾して結晶性固体とする
。様々な方法による測定値でバルサルタン及び(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル
−5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルの
双方の存在と複合体形成とを単純な物理的混合物と比較して、確認できた。たとえばXR
PD、IR及びラマン分光学などには物理的混合物には存在しない複合体に特有のスペク
トルピークが観察される。測定結果の詳細は後記する。
【0125】
実施例2
[バルサルタン((2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシ−プ
ロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]Na・2.5HOの別
途製法
バルサルタンと(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロ
ピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルとの二作用性化合物は(2R,
4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メ
チルペンタン酸エチルエステル遊離酸(〜95%純度)22.96ミリモルとバルサルタ
ン(10.00g;22.96ミリモル)とをアセトン(300mL)に溶解して製造す
る。この懸濁液を室温で15分間攪拌して透明な溶液とする。次にこの溶液にNaOH(
2.76g;68.90ミリモル)の水(8mL)溶液を10分間にわたって加える。固
体が10分以内に沈殿し始める。あるいは、種晶で沈殿を誘導できる。懸濁液を20〜2
5℃で2時間攪拌する。懸濁液を減圧下(180〜250ミリバール)に15〜30℃で
濃縮してバッチ容積〜150mLとする。次にバッチに酢酸イソプロピル(150mL)
を加え、懸濁液を再度減圧下(180〜250ミリバール)に15〜30℃で濃縮してバ
ッチ容積〜150mLとする。この操作(バッチに酢酸イソプロピル150mLを加えて
バッチを濃縮する)をもう一度反復する。この懸濁液を20〜25℃で1時間攪拌する。
固体を窒素中、ブフナー漏斗で濾取し、酢酸イソプロピル(20mL)で洗い、減圧下(
20ミリバール)に35℃で乾燥して本化合物を得る。測定値は実施例1と同じ製品であ
ることを示す。
【0126】
実施例3
[バルサルタン((2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロ
ピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]Na・2.5HOの種晶
を用いる別途合成法
反応機にAHU377のカルシウム塩2.00kg(2323ミリモル)と酢酸イソプ
ロピル20Lとを入れる。この懸濁液を23±3℃で攪拌し、4.56Lの2N−HCl
を加える。混合物を23±3℃で15分間攪拌して透明な2層溶液を得る。有機層を分離
し、水3×4.00Lで洗う。有機層を30〜100ミリバール圧、温度22±5℃で濃
縮して無色溶液としてAHU377遊離酸の酢酸イソプロピル溶液〜3.5L(3.47
kg)とする。AHU377遊離酸の酢酸イソプロピル溶液約3.5L(3.47 kg
)の入った前記反応機にバルサルタン1.984kg(4556ミリモル)とアセトン4
0Lとを加える。反応混合物を23±3℃で攪拌して透明な溶液を得、これを濾過して反
応機に入れる。この反応混合物にNaOH547.6g(13690ミリモル)の水1.
0L溶液を23±3℃(20±5℃に予冷し、装着濾過機で濾過して注入)で15〜30
分にわたって内温を20〜28℃に維持しながら(微発熱性)加える。フラスコを水19
0mLで洗い、反応液に加える。反応混合物を23±3℃で15分間攪拌し、[バルサル
タン((2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニルア
ミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]Na2.5HO種晶4.0gの酢酸
イソプロピル50mLスラリーを加える。混合物を23±3℃で2時間攪拌して懸濁液を
得る。懸濁液を内温40±3℃に20分間にわたって加熱し、内温を40±3℃に維持し
ながら酢酸イソプロピル20Lを20分間にわたって加える。この懸濁液をこの温度でさ
らに30分間攪拌する。混合物を減圧下(200〜350ミリバール)、内温35±5℃
(Tj45±5℃)で濃縮して白色スラリー(溶媒回収:〜25L)〜35Lを得る。酢
酸イソプロピル30Lを加え、混合物を内温35±5℃(Tj45±5℃)、減圧下(1
00〜250ミリバール)に濃縮して白色スラリー〜30L(溶媒回収:〜40L)を得
る。再び混合物に酢酸イソプロピル40Lを加え、混合物を内温35±5℃(Tj45±
5℃)で減圧下(100〜200ミリバール)に濃縮して白色スラリー〜30L(溶媒回
収:〜30L)を得る。反応混合物を〜20分間にわたって23±3℃に冷却し、この温
度でさらに3時間攪拌する。固体を窒素中、ブフナー漏斗でポリプロピレン床を用いて濾
取する。固体を酢酸イソプロピル2×5Lで洗い、減圧下(20ミリバール)に35℃で
酢酸イソプロピル含有量<0.5%になるまで乾燥して前記生成物を白色固体として得る
。測定値は実施例1と同じ製品であることを示す。
【0127】
粉末X線回折
Scintag XDS2000粉末回折装置で測定した検体の粉末X線パターンの重要なラインから
計算した格子面間隔は次の結果を与える:d [Å] : 21.2(s), 17.0(w), 7.1(s), 5.2(w),
4.7(w), 4.6(w), 4.2(w), 3.5(w), 3.3(w)。格子面間隔の誤差範囲は±0.1Åである。
各ピークの強度は次のように示す:(w)=弱;(m)=中;(st)=強。2θ平均値
[°]は次の通り(誤差範囲±0.2):4.5, 5.5, 5.6, 9.9, 12.8, 15.7, 17.0, 17.1,
17.2, 18.3, 18.5, 19.8, 21.5, 21.7, 23.2, 23.3, 24.9, 25.3, 27.4, 27.9, 28.0, 3
0.2。
【0128】
元素分析
元素分析は検体内に存在する元素の次の測定値を与える。元素分析の結果は、誤差範囲
内で(C4855Na)2.5HOに対応する:
実験値 C:60.05%;H:6.24%;N:8.80%。
計算値*C:60.18%;H:6.31%;N:8.77%。
【0129】
赤外線スペクトル
検体の赤外線吸収スペクトルは減衰全反射フーリエ変換赤外線(ATR−FTIR)分
光機(Nicolet Magna-IR 560)で測定し、得たバンドを逆数波数で示す(cm−1):295
6 (w), 1711 (st), 1637 (st), 1597 (st), 1488 (w), 1459 (m), 1401 (st), 1357 (w),
1295 (m), 1266 (m), 1176 (w), 1085 (m), 1010 (w), 1942(w), 907 (w), 862 (w), 76
3 (st), 742 (m), 698 (m), 533 (st)。ATR−IRの吸収バンド全ての誤差範囲は±2
cm−1である。各吸収バンドの強度は次のように示す:(w)=弱;(m)=中;(s
t)=強。
【0130】
ラマンスペクトル
検体のラマンスペクトルは785nmレーザ励起源を持つ分散ラマン分光器(Kaiser O
ptical Systems, Inc.)で測定して次の特徴的バンドを得、波数(cm−1)で示す:306
1 (m), 2930 (m, broad), 1612 (st), 1523 (m), 1461 (w), 1427 (w), 1287 (st), 1195
(w), 1108 (w), 11053 (w), 1041 (w), 1011 (w), 997 (m), 866(w), 850 (w), 822 (w)
, 808 (w), 735 (w), 715 (w), 669 (w), 643 (w), 631 (w), 618 (w), 602 (w), 557 (w
), 522 (w), 453 (w), 410 (w), 328 (w)。ラマンバンド全ての誤差範囲は±2cm−1
ある。各吸収バンドの強度は次のように示す:(w)=弱; (m)=中;(st)=強

【0131】
高解像度CP−MAS 13C−NMRスペクトル
検体をBruker-BioSpin AVANCE 500 NMR分光器を用い、300ワット強力H、50
0ワット強力X−増幅器2個、強力プレ増幅器、「MAS」コントローラ及び4mm Bio
Solids high resolution Brukerプローブを装着して、高解像度CP−MAS高解像度C
P−MAS(Cross Polarization Magic Angle Spinning)13C−NMR分光学で検討
する。各検体は4mmZrOロータに充填する。実験パラメータは、13C接触時間3
msec、マジック角度でスピニング速度12KHz、「SPINAL64」H−デカップリン
グ方式を用いる「傾斜」接触時間、リサイクルディレイ10秒、293°Kで1024ス
キャンである。化学シフトは外部基準グリシンカルボニル176.04ppmによる。高
解像度CP−MAS13C−NMRは次の特徴的ピークを示す(ppm):179.0, 177.9
177.0, 176.7, 162.0, 141.0, 137.2, 129.6, 129.1, 126.7, 125.3, 64.0, 61.5, 60.4
, 50.2, 46.4, 40.6, 38.6, 33.5, 32.4, 29.8, 28.7, 22.3, 20.2, 19.1, 17.8, 16.8,
13.1, 12.1, 11.1。バルサルタンNa塩及び(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−
5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルNa
塩の物理的混合物は、この塩2種の単純な混合を示した。しかし、実施例1で製造する複
合体の検体は、ナトリウム塩の1:1混合物と比較すると、明らかに異なる特徴を持つス
ペクトルを示した。
【0132】
DSC及びTGA
示差走査熱量測定(DSC)Q1000(TA Instruments)装置を用いて測定すると本検体
の溶融開始温度及びピーク最大温度は各々139℃及び145℃に観察される。DSC及
び熱重量分析(TGA)に見られるように、加熱により、水和物の水は2段階で放出され
る:第一段階は100℃以下、第二段階は120℃以上である。DSCとTGA装置は双
方共、加熱速度10°K/分で操作する。
【0133】
実施例4
式(1)で示される結合プロドラッグの製造
バルサルタンのカルシウム塩と(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−
カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルとの結合プロド
ラッグを、室温でバルサルタンのカルシウム塩114mgと(2R,4S)−5−ビフェ
ニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチ
ルエステル遊離酸86mgをメタノール2mLに溶解し、続いてメタノールを蒸発するこ
とによって調製する。ガラス状固体残渣にアセトニトリル3mLを入れ、10分間超音波
処理、続いて20時間磁気攪拌して平衡させる。白色固体約120mgを濾取する。液体
クロマトグラフィー(LC)及び元素分析は(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−
5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルとバ
ルサルタンとの比率1:1を示す。粉末X線回折によればこの検体は非晶形である。
【0134】
式(2)の結合プロドラッグ
バルサルタンカルシウム塩と(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カ
ルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルとTrisとの結
合プロドラッグを、バルサルタンのカルシウム塩57mg、(2R,4S)−5−ビフェ
ニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチ
ルエステル遊離酸43mg、及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)
12.6mgをメタノール2mLに溶解し、メタノールを蒸発することによって室温で製
造する。ガラス状固体残渣にアセトニトリル3mLを加え、10分間超音波処理し、続い
て20時間磁気攪拌して平衡させる。白色固体約83mgを濾取する。LC及び元素分析
は、(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニルアミ
ノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルとバルサルタンとの比率1:1を示す。粉末
X線回折によればこの検体は非晶形である。
【0135】
以上に本発明を特定の態様を参照して記載したが、本明細書に開示した発明の概念から
離れずに多くの変更、修飾、及び変形を行うことができることは明らかである。従って、
添付する請求項の広義の範囲内にあるそのような変更、修飾及び変形の全てを包含される
ことが意図されている。本明細書に引用する特許出願、特許及びその他の出版物は全てそ
の全体を参考のために引用するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤;
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi);及び要すれば
(c)薬学的に許容されるカチオン
を含む、二作用性化合物。
【請求項2】
複合体の形である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
超分子複合体の形である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
アンギオテンシン受容体拮抗剤とNEPiとが非共有結合を介して結合する、請求項1
〜3の何れかに記載の化合物。
【請求項5】
アンギオテンシン受容体拮抗剤とNEPiとが薬学的に許容されるカチオンを介して結
合する、請求項1〜4の何れかに記載の化合物。
【請求項6】
アンギオテンシン受容体拮抗剤がバルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、テルミ
サルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン及びその組合せからなる群
から選択される、請求項1〜5の何れかに記載の化合物。
【請求項7】
アンギオテンシン受容体拮抗剤がバルサルタンである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
NEPiが次式:
【化1】

で示される(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニ
ルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルである、請求項1〜7の何れかに記載
の化合物。
【請求項9】
NEPiが(3S,2'R)−3−{1−[2'−(エトキシカルボニル)−4'−フェ
ニルブチル]シクロペンタン−1−カルボニルアミノ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−
2−オキソ−1H−1−ベンズアゼピン−1−酢酸又はその薬学的に許容される塩である
、請求項1〜8の何れかに記載の化合物。
【請求項10】
カチオンがNa、K及びNHからなる群から選択される、請求項1〜9の何れかに記
載の化合物。
【請求項11】
薬学的に許容されるカチオンがNaである、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
結晶体、部分結晶体、非晶体又は多形体、好ましくは結晶体の形である、請求項1〜1
1の何れかに記載の化合物。
【請求項13】
溶媒和物の形である、請求項1〜12の何れかに記載の化合物。
【請求項14】
水和物の形である、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
アンギオテンシン受容体拮抗剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤がモル比1:1で存在
する、請求項1〜14の何れかに記載の化合物。
【請求項16】
アンギオテンシン受容体拮抗剤、中性エンドペプチダーゼ阻害剤及びカチオンがモル比
1:1:3で存在する、請求項1〜15の何れかに記載の化合物。
【請求項17】
化学式[ARB(NEPi)]Na1−3・xHO(ここにxは0〜3、たとえば2
.5である)で示される、請求項1〜16の何れかに記載の化合物。
【請求項18】
化学名(N−バレリル−N−{[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル
−4−イル]メチル}バリン)(5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピ
オニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]Na・xHO(ここにxは
0〜3である)で示される、請求項1〜17の何れかに記載の化合物。
【請求項19】
化学名[((S)−N−バレリル−N−{[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)
ビフェニル−4−イル]メチル}バリン)((2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−
5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]N
・xHO(ここにxは0〜3である)で示される、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
xが2.5である、請求項18又は請求項19の何れかに記載の化合物。
【請求項21】
次の波数(cm−1)(±2cm−1)で示される吸収バンド:2956 (w), 1711 (st),
1637 (st), 1597 (st), 1488 (w), 1459 (m), 1401 (st), 1357 (w), 1295 (m), 1266 (
m), 1176 (w), 1085 (m), 1010 (w), 1942(w), 907 (w), 862 (w), 763 (st), 742 (m),
698 (m), 533 (st) を持つ減衰全反射フーリエ変換赤外線(ATR−FTIR)スペクト
ルで特徴付けられる、請求項18〜20の何れかに記載の化合物。
【請求項22】
Scintag XDS2000 粉末回折器で測定した粉末X線回折パターンに次の格子面間隔:d [
Å] (±0.1Å): 21.2(s), 17.0(w), 7.1(s), 5.2(w), 4.7(w), 4.6(w), 4.2(w), 3.5(w),
3.3(w) を含むことで特徴付けられる、請求項18〜21の何れかに記載の化合物。
【請求項23】
(i)アンギオテンシン受容体拮抗剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)とを
適当な溶媒に溶解する;
(ii)Catの塩基性化合物を適当な溶媒に溶解する(ここにCatはカチオンである
);
(iii)工程(i)及び工程(ii)で得た各溶液を混和する;
(iv)固体を沈殿させ、乾燥して二作用性化合物を得る;
を包含する方法、あるいは
(iva)得られた溶液を蒸発乾固する;
(va)固体を適切な溶媒に再溶解する;
(via)固体を沈殿させ、乾燥して二作用性化合物を得る;
を含む操作で工程(i)及び工程(ii)で用いた各溶媒を交換する方法、
のいずれかによって製造できる二作用性化合物。
【請求項24】
複合体の形である、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
超分子複合体の形である、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
工程(i)と工程(iv)の適当な溶媒がアセトンである、請求項23〜25の何れか
に記載の化合物。
【請求項27】
(Cat)の塩基性化合物が(Cat)OH、(Cat)CO、(Cat)HCO
、CatOMe、CatOAc又はCatOCHOである、請求項23〜26の何れか
に記載の化合物。
【請求項28】
アンギオテンシン受容体拮抗剤がバルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、テルミ
サルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン及びその複合体からなる群
から選択される、請求項23〜27の何れかに記載の化合物。
【請求項29】
アンギオテンシン受容体拮抗剤がバルサルタンである、請求項28に記載の化合物。
【請求項30】
NEPiが次式:
【化2】

で示される(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニ
ルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルである、請求項23〜29の何れかに
記載の化合物。
【請求項31】
NEPiが(3S,2'R)−3−{1−[2'−(エトキシカルボニル)−4'−フェ
ニルブチル]シクロペンタン−1−カルボニルアミノ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−
2−オキソ−1H−1−ベンズアゼピン−1−酢酸又はその薬学的に許容される塩である
、請求項23〜29の何れかに記載の化合物。
【請求項32】
CatがNa、K及びNHからなる群から選択される、請求項23〜31の何れかに
記載の化合物。
【請求項33】
CatがNaである、請求項32に記載の化合物。
【請求項34】
結晶体、部分結晶体、非晶体、又は多形体、好ましくは結晶体の形である、請求項23
〜33の何れかに記載の化合物。
【請求項35】
溶媒和物の形である、請求項23〜34の何れかに記載の化合物。
【請求項36】
水和物の形である、請求項35に記載の化合物。
【請求項37】
アンギオテンシン受容体拮抗剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤とがモル比1:1で存
在する、請求項23〜36の何れかに記載の化合物。
【請求項38】
アンギオテンシン受容体拮抗剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤とカチオンがモル比1
:1:3で存在する、請求項23〜37の何れかに記載の化合物。
【請求項39】
化学式[ARB(NEPi)]Na1−3・xHO(ここにxは0〜3、たとえば2
.5である)で示される、請求項21〜36の何れかに記載の化合物。
【請求項40】
化学名(N−バレリル−N−{[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル
−4−イル]メチル}バリン)(5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピ
オニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]Na・xHO(ここにxは
0〜3である)で示される、請求項21〜37の何れかに記載の化合物。
【請求項41】
化学名[((S)−N−バレリル−N−{[2'−(1H−テトラゾール−5−イル)
ビフェニル−4−イル]メチル}バリン)((2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−
5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステル]N
・xHO(ここにxは0〜3である)で示される、請求項38に記載の化合物。
【請求項42】
xが2.5である、請求項38又は請求項39の何れかに記載の化合物。
【請求項43】
波数(cm−1)(±2cm−1)で示される次の吸収バンド:2956 (w), 1711 (st),
1637 (st), 1597 (st), 1488 (w), 1459 (m), 1401 (st), 1357 (w), 1295 (m), 1266 (
m), 1176 (w), 1085 (m), 1010 (w), 1942(w), 907 (w), 862 (w), 763 (st), 742 (m),
698 (m), 533 (st) を持つ減衰全反射フーリエ変換赤外線(ATR−FTIR)スペクト
ルで特徴付けられる、請求項38〜40の何れかに記載の化合物。
【請求項44】
Scintag XDS2000 粉末回折器で測定した粉末X線回折パターンに次の格子面間隔:d [
Å] (±0.1Å): 21.2(s), 17.0(w), 7.1(s), 5.2(w), 4.7(w), 4.6(w), 4.2(w), 3.5(w),
3.3(w) を含むことで特徴付けられる、請求項38〜41の何れかに記載の化合物。
【請求項45】
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的に許容される塩;及び
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)又はその薬学的に許容される塩;
を含む結合プロドラッグであり、ここで、アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的
に許容される塩とNEPi又はその薬学的に許容される塩とが結合構造によって結合して
いる、結合プロドラッグ。
【請求項46】
結合構造が非共有結合である、請求項45に記載の結合プロドラッグ。
【請求項47】
結合構造がイオンである、請求項45に記載の結合プロドラッグ。
【請求項48】
イオンが金属イオンである、請求項47に記載の結合プロドラッグ。
【請求項49】
金属イオンが2価金属イオンである、請求項48に記載の結合プロドラッグ。
【請求項50】
2価金属イオンがカルシウムである、請求項49に記載の結合プロドラッグ。
【請求項51】
アンギオテンシン受容体拮抗剤がバルサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、テルミ
サルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン及びその複合体からなる群
から選択される、請求項445に記載の結合プロドラッグ。
【請求項52】
アンギオテンシン受容体拮抗剤がバルサルタンである、請求項51に記載の結合プロド
ラッグ。
【請求項53】
NEPiが次式:
【化3】

で示される(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニ
ルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルである、請求項45に記載の結合プロ
ドラッグ。
【請求項54】
構造が式:
NEPi・X・ARB
[式中、
Xは、Ca、Mg、Zn及びFeから選択される;及び
aは、1、2又は3である]
で示される、請求項45に記載の結合プロドラッグ。
【請求項55】
構造が式:
NEPi・X・ARB
[式中、
Xは、Ca、Mg、Zn又はFeである;
YはNa、K又はNHである;及び
a及びbは1、2又は3である]
で示される、請求項45に記載の結合プロドラッグ。
【請求項56】
構造が式:
NEPI・Z・ARB
[式中、
Zは、水素結合機能を提供する化合物である;及び
cは、0である]
で示される、請求項45に記載の結合プロドラッグ。
【請求項57】
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤の薬学的に許容される塩;及び
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)の薬学的に許容される塩;
を含む組合せ剤であり、ここで、アンギオテンシン受容体拮抗剤とNEPiとの薬学的に
許容される塩は同じであって、Na塩、K塩又はNH塩から選択される、組合せ剤。
【請求項58】
アンギオテンシン受容体拮抗剤がバルサルタン、 ロサルタン、イルベサルタン、テル
ミサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン及びその組合せ剤からな
る群から選択される、請求項57に記載の組合せ剤。
【請求項59】
アンギオテンシン受容体拮抗剤がバルサルタンである、請求項58に記載の組合せ剤。
【請求項60】
NEPiが次式:
【化4】

で示される(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニ
ルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルである、請求項57〜59の何れかに
記載の組合せ剤。
【請求項61】
NEPiが(3S,2'R)−3−{1−[2'−(エトキシカルボニル)−4'−フェ
ニルブチル]シクロペンタン−1−カルボニルアミノ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−
2−オキソ−1H−1−ベンズアゼピン−1−酢酸又はその薬学的に許容される塩である
、請求項57〜59の何れかに記載の組合せ剤。
【請求項62】
薬学的に許容される塩がNa塩である、請求項57〜61の何れかに記載の組合せ剤。
【請求項63】
アンギオテンシン受容体拮抗剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤がモル比1:1で存在
する、請求項57〜62の何れかに記載の組合せ剤。
【請求項64】
(a)請求項1〜44の何れかに記載の化合物又は請求項45〜56の何れかに記載の結
合プロドラッグ又は請求項57〜63の何れかに記載の組合せ剤;及び
(b)薬学的に許容される添加剤少なくとも1種;
を含む医薬組成物。
【請求項65】
薬学的に許容される添加剤が希釈剤又は賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、減摩剤、結合剤、着
色剤及びその組合せ剤からなる群から選択される、請求項64に記載の医薬組成物。
【請求項66】
(a)アンギオテンシン受容体拮抗剤;
(b)中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi);及び
(c)薬学的に許容されるカチオン;
を含む二作用性化合物を製造する方法であって、
(i)アンギオテンシン受容体拮抗剤と中性エンドペプチダーゼ阻害剤(NEPi)とを
適当な溶媒に溶解する:
(ii)Catの塩基性化合物を適当な溶媒に溶解する(ここにCatはカチオンである
);
(iii)工程(i)及び工程(ii)で得る溶液を混合する;
(iv)固体を沈殿させ、乾燥して、二作用性化合物を得る;
を包含する方法、あるいは、
(iva)得られた溶液を蒸発乾固する;
(va)固体を適切な溶媒に再溶解する;
(via)固体を沈殿させ、乾燥して、二作用性化合物を得る;
を含む操作で工程(i)及び工程(ii)で用いた溶媒を交換する方法、
のいずれかによって二作用性化合物を製造する方法。
【請求項67】
工程(i)及び/又は工程(iva)の適当な溶媒がアセトンである、請求項66に記
載の方法。
【請求項68】
(Cat)の塩基性化合物が(Cat)OH、(Cat)CO、(Cat)HCO
、CatOMe、CatOAc又はCatOCHOである、請求項66又は請求項67
の何れかに記載の方法。
【請求項69】
工程(i)のアンギオテンシン受容体拮抗剤が、バルサルタン、ロサルタン、イルベサ
ルタン、テルミサルタン、エプロサルタン、カンデサルタン、オルメサルタン及びその組
合せ剤からなる群から選択される、請求項66〜68の何れかに記載の方法。
【請求項70】
工程(i)のアンギオテンシン受容体拮抗剤がバルサルタンである、請求項69に記載
の方法。
【請求項71】
工程(i)のNEPiが式:
【化5】

で示される(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニ
ルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルである、請求項66〜70の何れかに
記載の方法。
【請求項72】
NEPiが(3S,2'R)−3−{1−[2'−(エトキシカルボニル)−4'−フェニ
ルブチル]シクロペンタン−1−カルボニルアミノ}−2,3,4,5−テトラヒドロ−2
−オキソ−1H−1−ベンズアゼピン−1−酢酸又はその薬学的に許容される塩である、
請求項66〜70の何れかに記載の方法。
【請求項73】
カチオン(c)及び工程(ii)のCatがNa、K及びNHからなる群から選択さ
れる、請求項66〜72の何れかに記載の方法。
【請求項74】
工程(ii)のCatがNaである、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
(a)無機塩形成剤を溶媒に加えて結合プロドラッグ塩形成溶液を製造する;
(b)この塩形成溶液をアンギオテンシン受容体遮断剤又はその薬学的に許容される塩と
NEPi又はその薬学的に許容される塩との混合物に加えてARBとNEPiとに結合プ
ロドラッグを形成させる;及び
(c)結合したプロドラッグを分離する;
段階を含む、アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的に許容される塩及びNEPi
又はその薬学的に許容される塩を含む結合プロドラッグを製造する方法であり、ここで、
アンギオテンシン受容体拮抗剤又はその薬学的に許容される塩とNEPi又はその薬学的
に許容される塩とが結合構造によって結合している、結合プロドラッグの製造方法。
【請求項76】
無機塩形成剤が水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、カルシウムメトキシド、酢酸カルシウ
ム、炭酸水素カルシウム、蟻酸カルシウム、水酸化マグネシウム、酢酸マグネシウム、蟻
酸マグネシウム又は炭酸水素マグネシウムから選択される、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
溶媒が水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、メチル−t−ブ
チルエーテル、アセトニトリル、トルエン及び塩化メチレン及びこの溶媒の混合物から選
択される、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
分離工程がクロマトグラフィーである、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
バルサルタンのカルシウム塩と(2R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−
カルボキシプロピオニルアミノ)−2−メチルペンタン酸エチルエステルのナトリウム塩
とを接触させ、混合塩を選択的結晶化によって単離することを含む、バルサルタンと(2
R,4S)−5−ビフェニル4−イル−5−(3−カルボキシプロピオニルアミノ)−2
−メチルペンタン酸エチルエステルとの結合プロドラッグを合成する方法。
【請求項80】
単離工程がリガンド特異的樹脂、逆相樹脂又はイオン交換樹脂を用いるクロマトグラフ
ィーを含む、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
請求項1〜44の何れかに記載の化合物、又は請求項45〜56の何れかに記載の結合
プロドラッグ、又は請求項57〜63の何れかに記載の組合せ剤の治療的有効量をこの処
置を必要とする哺乳類に投与することを含む、高血圧、心不全(急性及び慢性)、うっ血
性心不全、左心室機能不全、肥大型心筋症、糖尿病性心筋症、上室性不整脈及び心室不整
脈、心房細動、心房粗動、有害な血管リモデリング、心筋梗塞及びその続発症、アテロー
ム動脈硬化症、狭心症(不安定性又は安定性)、腎機能不全(糖尿病性及び非糖尿病性)
、心不全、狭心症、糖尿病、続発性アルドステロン症、原発性及び続発性肺高血圧、糖尿
病性腎症、糸球体腎炎、硬皮症、糸球体硬化症、原発性腎疾患の蛋白尿、腎血管性高血圧
、糖尿病性網膜症、偏頭痛、末梢血管疾患、レイノー病、管腔過形成、認識障害、緑内障
及び卒中からなる群から選択される病状又は疾患を処置又は予防する方法。
【請求項82】
高血圧症の処置である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
(a)請求項1〜44の化合物又は請求項45〜56の結合プロドラッグ又は請求項57
〜63の組合せ剤;
(b)抗糖尿病剤、脂質低下剤、抗肥満剤及び抗高血圧剤から選択される治療剤;
(c)薬学的に許容される添加剤少なくとも1種;
を含む医薬組成物。
【請求項84】
治療剤がアムロジピンベシレートである、請求項83に記載の医薬組成物。
【請求項85】
治療剤がヒドロクロロチアジドである、請求項83に記載の医薬組成物。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−252013(P2011−252013A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177091(P2011−177091)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【分割の表示】特願2008−516049(P2008−516049)の分割
【原出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】