説明

アンギオテンシンIIアンタゴニストの合成における触媒カルボニル化

本発明において開示する1つの実施形態は、グリニャール化学によるハロゲン化ビアリール出発原料の効率的合成およびこの使用である。本発明のもう1つの実施形態は、水を含有する溶剤混合物中の気体一酸化炭素;または無水溶剤中の場合により酢酸を伴うギ酸塩、いずれかを使用する、3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリル(TLMH)の触媒カルボニル化の反応である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には有機化学の分野に、ならびに詳細にはグリニャール(Grignard)化学によるハロゲン化ビアリール出発原料の合成およびこの使用に関する。本発明は、3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルの触媒カルボニル化、詳細にはアンギオテンシンIIアンタゴニストの調製における前記プロセスの使用に、さらに関する。
【背景技術】
【0002】
アンギオテンシンIIアンタゴニスト(「サルタン」)は、高血圧の治療に有用であることが証明されている生物活性を有する有効活性化合物である。市販のサルタンのほとんどは、2’位が5−テトラゾリルまたはカルボキシ基で置換されているビフェニル部分(式1、Xは、COOHまたは5−テトラゾリルである。)を含有する。
【0003】
【化1】

【0004】
EP502314から公知であり、本発明に従って調製することができるテルミサルタンまたはこの塩もしくはエステル(TLM、式2)は、ヒトまたは動物における高血圧の治療のために単独でまたは医薬的に許容される担体と併用で医薬化合物として使用され、アンギオテンシンIIアンタゴニストとして機能する。
【0005】
【化2】

【0006】
2’−ハロ−4−メチルビフェニル(式3、X=Cl、Br、I)は、ビフェニルタイプのサルタンの合成のための可能な出発原料であるが、これらは、効率の悪いまたは費用のかかる合成のため、工業利用されていない。公知の手順は、工業に不都合なホウ素およびスズ化合物を必要とする鈴木(Suzuki)およびヘック(Heck)カップリングを用い、ウルマン(Ullmann)反応(Chem.Rev.2002,102,1359−1469)は、低い収率をもたらし、ならびにグリニャール(Grignard)中間体のカップリングは、出発原料の有意な量を必要とする(Org.Lett.2000,2,3675−3677)。この最後の反応は、1,2−ジハロベンゼンと、マグネシウムが存在する状態での4−ハロトルエンと、グリニャール中間体を失活させるためのヨウ素とを使用して行われ、前記1,2−ジハロベンゼンと4−ハロトルエンとヨウ素は、1:2:3の比率で使用され、この反応は、工業的利用には経済的に好適でない。
【0007】
【化3】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第502314号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Chem.Rev.2002,102,1359−1469
【非特許文献2】Org.Lett.2000,2,3675−3677
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
サルタンのビフェニル類の、特に、テルミサルタンなどのカルボキシル基含有誘導体のための、効率的な合成が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、安価な出発芳香族化合物からテルミサルタンを得るための工業的に利用でき、経済的で、許容されるプロセスを提供することである。本発明において開示する1つの実施形態は、グリニャール化学によるハロゲン化ビアリール出発原料の効率的な合成である。本発明の重要な特徴は、3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルの2’位にC−1シントンを導入することを含む、テルミサルタンまたはこの塩もしくはエステルを調製するためのプロセスである。本発明の好ましい実施形態は、水を含有する溶剤混合物中の気体一酸化炭素;または無水溶剤中の場合により酢酸を伴うギ酸塩、いずれかを使用する、3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリル(TLMH)の触媒カルボニル化の反応である。
【0012】
本発明の第一の態様には、TLMHを一酸化炭素によって処理することを特徴とする、テルミサルタンまたはこの塩もしくはエステルを調製するためのプロセスがあり、この場合の一酸化炭素は、気体状態である場合もあり、またはギ酸もしくはこの塩からインサイチューで形成される場合もある。このプロセスにおける化合物は、触媒の存在下で反応する。触媒は、転移金属またはこの錯体、例えば、金属パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルトもしくは鉄からなる群より選択される金属からまたは例えばカルボニルもしくはホスフィン配位子との錯体などの前述のものの錯体から選択することができる。前述のプロセスを、20℃から180℃の間の温度に設定した反応を用いて行う。ビフェニルの2’位のハロは、ヨード、ブロモまたはクロロから選択される。
【0013】
詳細には、本発明は、TMLHを非プロトン性溶剤と水の混合物中で一酸化炭素と反応させることを特徴とする、テルミサルタンを得るためのプロセスに関する。反応体を5から30時間、特に10から20、さらに特に12から18時間放置して反応させることができる。
【0014】
同様に、本発明は、ギ酸リチウムおよび場合により無水酢酸、または無水酢酸、好ましくは無水酢酸を使用してTMLHをカルボニル化することを特徴とする、テルミサルタンを得るためのプロセスに関する。これらの反応体は、無水溶剤中で反応する。好ましくは、反応体は、0.5から24時間、特に2から10、さらに特に4時間反応する。反応体が反応する温度は、20℃から180℃の間、特に40℃から120℃、さらに特に80℃の温度である。
【0015】
本発明のもう1つの態様は、テルミサルタンまたはこの塩もしくはエステルを調製するための上記態様のいずれか1つのプロセスの使用である。
【0016】
本発明のもう1つの態様は、本発明の上記態様に関して開示した任意のプロセスに従ってテルミサルタンを調製すること、およびこれを、場合により別の活性医薬成分と併用で、製薬用賦形剤と混合することを含む、医薬組成物および/または剤形を得るためのプロセスである。
【0017】
本発明の追加の態様は、医薬品を調製するための前記態様のプロセスの使用である。
【0018】
本発明の可能な態様は、4’−ブロモメチル−2−ブロモ−ビフェニル、4’−ヨードメチル−2−ヨード−ビフェニル、4’−ヨードメチル−2−ブロモ−ビフェニル、4’−ヨードメチル−2−クロロ−ビフェニル、4’−クロロメチル−2−ヨード−ビフェニル、4’−クロロメチル−2−ブロモ−ビフェニル、または4’−クロロメチル−2−クロロ−ビフェニルから選択される化合物の、前記4’−ハロメチル−2−ハロ−ビフェニルを2−(1−プロピル)−4−メチル−6−(1’−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゾイミダゾールと反応させる、テルミサルタンまたはこの塩もしくはエステルの合成のための使用でもある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
4−ハロトルエンを金属元素の存在下で1,2−ジハロベンゼンと反応させ(この場合、1,2−ジハロベンゼンに対して4−ハロトルエンの1未満過剰量を使用し、1,2−ジハロベンゼンの各molに対して、1.0から1.9mol、特に1.0から1.2mol、特に1.05から1.15molの4−ハロトルエンを使用する。)、生じた有機金属中間体をハロゲン元素によって失活させる単純なワンポット二段階技術プロセスで、工業的に利用できるおよび競争力のある収率で、2’−ハロ−4−メチルビフェニルを得ることができることが、驚くべきことに判明した。反応に使用する1,2−ジハロベンゼンの各1molに対して比例的にハロゲン元素3mol未満、特に2.9mol未満、好ましくは1から2mol、さらに好ましくは1molを使用して、有機金属中間体を失活させる。
【0020】
スキーム1は、最初の二段階において、4’−ハロメチル−2−ハロ−ビフェニルの合成を表す。
【0021】
本発明は、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジブチルエーテルまたはジフェニルエーテルから選択することができる非プロトン性溶剤に4−ハロトルエン1から2当量未満を溶解し、この溶液を約15℃から80℃、好ましくは室温で維持する、2’−ハロ−4−メチルビフェニルを得るためのプロセスも提供する。4−ハロトルエンは、p−ブロモトルエン、p−クロロトルエンまたはp−ヨードトルエンから選択することができる。金属2から5当量を添加し、約5から180分間攪拌する。金属という用語には、例えばマグネシウム、リチウムまたは亜鉛などの有機金属中間体を形成することができる任意の実施形態が考えられる。このように調製した混合物に、前記溶剤に溶解した1,2−ジハロベンゼン1当量を、15℃から80℃で、好ましくは50から60℃で、1分間から5時間かけて、例えば2時間かけて滴加し、同じ温度で1から48時間攪拌する。ジハロベンゼンは、1−ブロモ−2−クロロベンゼン、1−クロロ−2−ヨードベンゼン、1−ブロモ−2−ヨードベンゼン、1,2−ジブロモベンゼンまたは1,2−ジヨードベンゼンから選択することができる。前記溶剤中のこのように得られた4’−メチル−ビフェニル−2−イル金属ハロゲン化物の溶液に、ハロゲン元素1から5当量を15℃から80℃、好ましくは室温で添加する。4’−メチル−ビフェニル−2−イル金属ハロゲン化物は、例えばハロゲン化4’−メチル−ビフェニル−2−イルマグネシウムなどの任意の適切な有機金属化合物であり得、この場合のハロゲン化物は、ヨウ化物、臭化物または塩化物、好ましくは臭化物であり得る。ハロゲン元素は、ヨウ素(I)または臭素(Br)または塩素(Cl)から選択される。前記混合物を最低5分間攪拌する。残存ハロゲンをNaHSOまたはNaの水溶液で還元する。処理後、水と、エステル、エーテル、塩素化溶剤から選択することができる非極性溶剤と、好ましくは脂肪族炭化水素からの炭化水素、例えばn−ヘキサン、n−ペンタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンとを添加する。相を分離し、有機相を蒸発させる。この生成物を、例えばLPLCクロマトグラフィーで精製する。移動相は、n−ヘキサンであり、固定相は、シリカゲル60である。その後、これらの画分をTLC法に付し、回収する。主画分を蒸発させて、少なくとも60%の収率で2−ハロ−4’−メチル−ビフェニルを得る。
【0022】
さらに特定の、しかし好ましい実施例では、4−ブロモトルエン(1.1当量)をテトラヒドロフラン(5から7倍大きい体積)に溶解し、この溶液を室温で維持する。Mg(2.5当量)を添加し、少なくとも30分間攪拌する。このように調製した混合物に、テトラヒドロフラン(同じ体積)によって希釈した1−ブロモ−2−クロロベンゼン(1当量)を55℃で2時間かけて滴加し、同じ温度で1から3時間攪拌する。テトラヒドロフラン中のこのように得た臭化4’−メチル−ビフェニル−2−イルマグネシウムの溶液に、ヨウ素(I)1当量を添加し、この反応物を、上に記載したように処理する。
【0023】
4−ハロトルエンのほんの0.1当量過剰量の利用が収率を劇的に向上させ、この収率は、この特定の実施例では60%を超える。さらに、最長で3時間続くこの反応を失活させるためにハロゲン1当量だけで十分であった。この手順は、反応に14時間かかる、ならびに匹敵する収率を獲得するために4−ハロトルエンの2倍を超える過剰量およびハロゲンの3倍過剰量を使用する、公知の文献手順(Org.Lett.2000,2,3675−3677)が大いに改善されたものである。
【0024】
加えて、反応で得られた2−ハロ−4’−メチル−ビフェニルをジクロロメタン中でハロゲン化して、4’−ハロメチル−2−ハロ−ビフェニルを生じさせる。このように調製される具体的な化合物は、4’−ブロモメチル−2−ブロモ−ビフェニル、4’−ヨードメチル−2−ヨード−ビフェニル、4’−ヨードメチル−2−ブロモ−ビフェニル、4’−ヨードメチル−2−クロロ−ビフェニル、4’−クロロメチル−2−ヨード−ビフェニル、4’−クロロメチル−2−ブロモ−ビフェニル、4’−クロロメチル−2−クロロ−ビフェニルである。1つの実施形態では、前記4’−ハロメチル−2−ハロ−ビフェニルを2−(1−プロピル)−4−メチル−6−(1’−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゾイミダゾール(PMB)と反応させてTLMHを生じさせることができる。
【0025】
特定の実施形態において、およびスキーム1の第二の部分に提示するように、本発明は、2−ハロ−4’−ブロモメチル−ビフェニルと2−(1−プロピル)−4−メチル−6−(1’−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゾイミダゾール(PMB)のカップリングにも備えており、このカップリングは、限定ではないが次のように行う:スルホラン(テトラメチレンスルホン)またはN,N,−ジメチルアセトアミドまたはN−メチル−2−ピロリドンまたはジメチルスルホキシド10から25mLをフラスコに充填する。2−(1−プロピル)−4−メチル−6−(1’−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゾイミダゾール0.85gおよびKtBuOなどの強塩基0.38gまたはNaOH、KOH、LiOH、NaCO、KCO、NaHCO、KHCOの適量を添加する。この混合物を約25℃から45℃の温度にしてすべての成分を溶解する。その後、この溶液を約5℃から25℃にし、溶剤5から20mL中の2−ハロ−4’−ブロモメチル−ビフェニル1から1.2当量を0.5から5時間かけて添加する。この反応混合物を同じ温度でさらに0から5時間攪拌する。脱塩水40mLおよび酢酸エチル35mLを添加する。相を分離する。EtOAc相をNaClの飽和水溶液で数回洗浄する。溶剤を蒸発させ、EtOAcとアセトンの4mL混合物を添加する。この懸濁液を15分から5時間攪拌する。沈殿を濾別し、乾燥させてTLMHを得る。
【0026】
【化4】

【0027】
本発明に従って、2’位にC−1シントンを導入することによって、中間体3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリル(TLMH)からテルミサルタンを調製する。好ましくは、C−1シントンを高酸化状態で導入する。これを一段階で導入することができる。
【0028】
スキーム2に提示するように、遷移金属などの触媒の存在下で一酸化炭素と反応させることによって、ハロ誘導体TLMH、好ましくはヨード誘導体3’−(2’−ヨード−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリル、のカルボニル化により、テルミサルタンを得ることができる。1つの態様では、一酸化炭素を1から50barの、特に1から10barの圧力で気体として使用する。代替態様では、ギ酸およびこの塩を使用することによって一酸化炭素をインサイチューで発生させる。遷移金属は、ニッケル、コバルトまたは鉄から好ましくは選択される。好ましくは、これらを、水酸化物、水素化物、アルコキシドおよびアミンから選択される塩基の存在下で金属カルボニルの形態で使用する。加えて、遷移金属は、貴金属、例えばロジウムおよびパラジウム、さらに好ましくはパラジウムから選択することができ、および好ましくは酢酸パラジウム(II)の形態のものであり得る。一酸化炭素を気体として使用するとき、水を含有する溶剤中で反応を行うことができる。好ましくは、反応の媒質は、非プロトン性溶剤と水の混合物(湿潤溶剤)である。非プロトン性溶剤は、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、トルエン、ジオキサン、ジイソプロピルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジブチルエーテル、およびジフェニルエーテルを含む群から選択することができる。一酸化炭素を気体として使用するときには、トリアルキルホスフィン(RP)、アルキルアリールホスフィン(RPArもしくはRPAr)、トリアリールホスフィン(ArP)またはビス−ホスフィン(dppe、dppb、dppp、dppf)から選択することができるホスフィン配位子を使用する。反応温度は、50℃から180℃の間に、好ましくは80℃から150℃に、特に100℃に設定する。ギ酸またはこの塩を使用する場合、反応の媒質は、芳香族炭化水素およびアミドを含む群から好ましくは選択される。ギ酸塩は、ギ酸と、例えばリチウム、ナトリウムまたはカリウムであるアルカリ金属との塩である。詳細には、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド溶剤中の、アミン類から選択される塩基が場合により追加された、無水酢酸との混合物でのパラジウム触媒と場合により一緒に、ギ酸リチウムを使用することが、最も好ましい。ギ酸塩を使用するときの反応温度は、20℃から180℃の間、好ましくは40℃から120℃、特に80℃の温度に設定する。
【0029】
【化5】

【0030】
得られたテルミサルタンまたはこの塩もしくはエステルを医薬組成物および/または剤形の調製に使用することができる。テルミサルタンを調製するための前述のプロセスは、前記テルミサルタンを、場合により別の活性医薬成分と一緒に、製薬用賦形剤と混合する後続の段階を含み得る。適する製薬用賦形剤は、例えば、結合剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、崩壊剤(例えば、デンプン、セルロース誘導体)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、pHバランス剤(例えば、クエン酸、水酸化ナトリウム、メグルミン)、充填剤(例えば、マンニトール、セルロース誘導体)、ビヒクル(例えば、水、グリセロール、アルコール)、着香剤、着色剤(例えば、二酸化チタン)である。テルミサルタンと共に医薬組成物および/または剤形に追加の活性医薬成分を導入する理由は、両方の活性医薬成分の相乗効果を達成するため、または2つの適応症を同時に処理する目的を有するため、または第一の活性医薬成分の副作用を第二の活性医薬成分の同時もしくは逐次的適用で低下させるためなどである。例えば、別の活性医薬成分は、ヒドロクロロチアジド、アムロジピンまたはラミプリルであり得る。医薬製剤および/または剤形を調製するために用いる技術は、製薬技術分野の技術者に公知の任意のものであり得る。テルミサルタン、賦形剤および場合により別の活性医薬成分を粉末として単純混合することができ、または適する溶剤に溶解することができる。造粒技術を利用して、前記製剤の取り扱い性を向上させることができる。圧密またはブリケッティングを用いて乾式造粒を行って、錠剤形成のための造粒塊を準備することができる。同様に、化合物の粒子、粉末または既に乾燥した顆粒上に造粒液を添加または噴霧する湿潤造粒を用いて、前記化合物の剤形での形成を助長することができる。造粒技術は、特にこの塊を錠剤形成に使用するつもりであるとき、流動性、圧縮性を向上させるために用いることができる。造粒は、ダスティングを減少させることもでき、および溶解特性を左右し得る。このような特性は、錠剤でばかりでなく、カプセルにおいても望ましい。剤形が、錠剤、カプセル、ペレット、顆粒、粉末、溶液などの形状であり得ること、これらのうち、固体剤形をさらにコーティングまたは積層できることは、公知である。ミキサー、打錠機、押出機、造粒機などの装置を、医薬組成物および/または剤形の調製に使用することができる。この医薬組成物および/または剤形を医薬品の調製に用いることができ、これは、医薬組成物および/または剤形を調製するための前記プロセスを、医薬品の調製のための必要段階を含むように拡大することを意味する。前記段階は、医薬組成物および/もしくは剤形中の活性医薬成分の正しい量の決定、包装、または医薬組成物および/もしくは剤形を製品添付書類と併せることを含み得る。
【0031】
以下の実施例は、単に本発明の例証となるものであり、いかなる点においても本発明の範囲を限定するものとみなすべきではない。これらの実施例およびこれらの他の等価物は、本開示および添付の特許請求の範囲に鑑みて当業者に明らかになるからである。
【実施例1】
【0032】
【化6】

【0033】
グリニャール試薬の形成
テトラヒドロフラン60mLをフラスコに充填する。p−ブロモトルエン9g(52.6mmol)を添加し、この溶液を20℃で維持する。Mg3.0g(125mmol)を添加し、最低30分間攪拌する。
【0034】
カップリング
THF5mL中の1−ブロモ−2−クロロベンゼン9.3g(48.7mmol)を55℃で2時間、臭化p−トルイルマグネシウムと残存マグネシウムの調製反応混合物に添加し、55℃で2時間攪拌する。
【0035】
失活
2−マグネシウムブロミド−4’−メチル−ビフェニルの調製溶液を室温に冷却し、テトラヒドロフラン20mLとさらにヨウ素(I)12.3g(48.7mmol)を添加する。この混合物を5分間攪拌する。残存ヨウ素をNaHSOの水溶液で中和する。脱塩水70mLおよびn−ヘキサン50mLを添加する。相を分離し、上のほうの(n−ヘキサン)相を蒸発させる。帯黄色の液体15.6gを得る。
【0036】
この生成物をLPLCクロマトグラフィーで精製する。移動相は、n−ヘキサンであり、固定相は、シリカゲル60である。画分を回収する。主画分を蒸発させる。2−ヨード−4’−メチル−ビフェニル(無色の液体)8.6g(60%)を得る。
H NMR(300MHz,CDCl)δ:2.56(s,3H)、7.13(dt,J=7.5Hz,J=2.0Hz,1H)、7.39(s,4H)、7.44(dd,J=7.6Hz,J=1.9Hz,1H)、7.47−7.52(m,1H)、8.09(dd,J=7.9Hz,J=1.0Hz,1H).13C NMR(75MHz,CDCl)δ:146.4、141.2、139.3、137.1、130.0、129.0、128.5、128.5、128.0、98.8、21.2.
【実施例2】
【0037】
2−ヨード−4’−メチル−ビフェニルのブロモ化
【0038】
【化7】

【0039】
ジクロロメタン(DCM)20mLをフラスコに充填する。N−ブロモスクシンイミド(NBS)0.73g、2,2’−アゾイソブチロニトリル(AIBN)0.08g、Br18μLおよび2−ヨード−4’−メチル−ビフェニル0.9gを添加する。反応を還元温度のもとで最低2時間行い、この間、常に、このフラスコを照明する。Naの水溶液で反応を失活させる。相を分離し、下のほうのDCM相を脱塩水でもう1度洗浄する。DCM相を蒸発させ、n−ヘキサン4mLを充填し、室温で30分間攪拌する。その後、この懸濁液を0℃に冷却し、濾過する。このケークを溶剤2mLで洗浄する。4’−ブロモメチル−2−ヨード−ビフェニルの白色結晶0.6gを得る。
H NMR(300MHz,CDCl)δ4.58(s,2H)、7.06(dt,J=7.6Hz,J=1.8Hz,1H)、7.31(dd,J=7.7Hz,J=1.8Hz,1H)、7.35(d,J=8.2Hz,2H)、7.40(dt,J=7.4Hz,J=1.2Hz,1H)、7.48(d,J=8.2Hz,2H)、7.98(dd,J=7.9Hz,J=1.1Hz,1H).13C NMR(75MHz,CDCl)δ:145.8、144.1、139.5、137.0、130.0、129.6、128.9、128.6、128.1、98.3、33.2.
【実施例3】
【0040】
(2−(1−プロピル)−4−メチル−6−(1’−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゾイミダゾール)のアルキル化
【0041】
【化8】

【0042】
スルホラン(テトラメチルスルホン)15mLをフラスコに充填する。PMB(2−(1−プロピル)−4−メチル−6−(1’−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゾイミダゾール)0.85gおよびカリウムt−ブトキシド0.38gを添加する。この混合物を30℃より上に加熱してすべての成分を溶解する。その後、この溶液を15℃に冷却し、溶剤5mL中の4’−ブロモメチル−2−ヨード−ビフェニル1.07gを45分間かけて、ゆっくりと添加する。この反応混合物を同じ温度でさらに2時間攪拌する。脱塩水40mLおよびEtOAc(酢酸エチル)35mLを添加する。相を分離する。上のほうのEtOAc相をNaCl飽和水溶液で数回洗浄する。溶剤を蒸発させ、EtOAcとアセトンの4mL混合物を添加する。この懸濁液を30分間、室温で攪拌する。この懸濁液を濾過し、3’−(2’−ヨード−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルの白色結晶0.94gを得る。
H NMR(300MHz,CDCl)δ:1.06(t,J=7.4Hz,3H)、1.84−1.92(m,2H)、2.95(t,J=7.8Hz,2H)、3.81(s,3H)、5.46(s,2H)、7.03(ddd,J=7.9Hz,J=7.4Hz,J=1.8Hz,1H)、7.13(d,J=8.0Hz,2H)、7.23−7.54(m,9H)、7.77−7.83(m,1H)、7.94(dd,J=7.9Hz,J=1.1Hz,1H).
【実施例4】
【0043】
気体一酸化炭素を使用するPd触媒ヒドロキシカルボニル化による3’−(2’−ヨード−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルからのテルミサルタンの合成
【0044】
【化9】

【0045】
3’−(2’−ヨード−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリル(1g、1.68mmol)をテトラヒドロフラン(THF)と水の10:1混合物(17mL)に溶解し、圧力反応器に充填した。テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA;0.32mL、1.25当量)、Pd(OAc)(4mg、0.01当量)およびcataCXium A(登録商標)(n−ブチルジアダマンチルホスフィン、18mg、0.03当量)を添加した。反応器を一酸化炭素(CO)で3回洗い流し、圧力を5barに調整し、反応器を16時間、100℃に加熱した。室温に冷却した後、反応物をCelite(著作権)(珪藻土)で濾過し、濃縮した。油性稠度の混合物を、NaOH 1N溶液およびメチルt−ブチルエーテル(MTBE)を使用して希釈した。相を分離し、有機相をNaOH 1N溶液でもう1回抽出した。併せた水性相をMTBEで2回洗浄した。1N HClを使用して水相のpHをpH3まで酸性化し、沈殿したテルミサルタンを濾別した。このケークを水で洗浄した。粗製テルミサルタン(2−[4−[[4−メチル−6−(1−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)−2−プロピル−ベンゾイミダゾール−1−イル]メチル]フェニル]安息香酸)を得た。
【実施例5】
【0046】
ギ酸リチウムを使用するPd触媒ヒドロキシカルボニル化による3’−(2’−ヨード−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルからのテルミサルタンの合成
【0047】
【化10】

【0048】
無水ジメチルホルムアミド(DMF;2mL)中のギ酸リチウム(262mg、3当量)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA;0.58mL、2当量)、無水酢酸(0.32mL、2当量)の溶液を室温で1時間攪拌した。その後、無水DMF(4mL)中の3’−(2’−ヨード−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリル(1g、1.68mmol)、Pd(dba)(38mg、0.025当量、dbaは、ジベンジリデンアセトンである。)、LiCl(211mg、3当量)を添加した。この反応混合物を80℃で3時間攪拌し、濾過し、冷却後、水1.2mLに注入し、15分間攪拌し、生成物を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥させてテルミサルタンを得た。
H NMR(CDCl):δ 1.19(t,3H,J=7.3Hz)、2.04(m,2H,J=7.6Hz)、2.76(s,3H)、3.27(t,2H,J=7.5Hz)、3.79(s,3H)、5.48(s,2H)、7.10−8.41(m,14H).
(M+H)=515.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルの2’位にC−1シントンを導入することを含む、テルミサルタンまたはこの塩もしくはエステルを調製するためのプロセス。
【請求項2】
3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルが、触媒の存在下で一酸化炭素によって処理されることを特徴とする、テルミサルタンまたはこの塩もしくはエステルを調製するためのプロセス。
【請求項3】
一酸化炭素が、気体状態である、またはギ酸もしくはこの塩からインサイチューで形成されることを特徴とする、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
触媒が、遷移金属またはこの錯体である、請求項2または3に記載のプロセス。
【請求項5】
触媒が、金属パラジウム、ロジウム、ニッケル、コバルトおよび鉄、またはこれらのカルボニルもしくはホスフィン配位子との錯体からなる群より選択される、請求項2から4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
反応が、20℃から180℃の間、好ましくは50℃から180℃の間、特に80℃から150℃、さらに特に100℃の温度に設定される、請求項2から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルを、水を含有する溶剤混合物中で気体一酸化炭素と反応させる、請求項2から6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルおよび一酸化炭素を5から30時間、特に10から20、さらに特に12から18時間放置して反応させる、請求項2から7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
3’−(2’−ハロ−ビフェニル−4−イルメチル)−1,7’−ジメチル−2’−プロピル−1H,3’H−[2,5’]ビベンゾイミダゾリルが、ギ酸リチウムおよび場合により無水酢酸を使用してカルボニル化される、請求項2から5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
反応体が、無水溶剤中で反応する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
反応体が、0.5から24時間反応する、請求項9または10に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に従ってテルミサルタンを調製すること、およびこれを、場合により別の活性医薬成分と併用で、製薬用賦形剤と混合することを含む、医薬組成物および/または剤形を得るためのプロセス。
【請求項13】
テルミサルタンまたはこの塩もしくはエステルを調製するための、請求項1から11のいずれか一項に記載のプロセスの使用。
【請求項14】
医薬品を調製するための、請求項12に記載のプロセスの使用。
【請求項15】
4’−ブロモメチル−2−ブロモ−ビフェニル、4’−ヨードメチル−2−ヨード−ビフェニル、4’−ヨードメチル−2−ブロモ−ビフェニル、4’−ヨードメチル−2−クロロ−ビフェニル、4’−クロロメチル−2−ヨード−ビフェニル、4’−クロロメチル−2−ブロモ−ビフェニル、または4’−クロロメチル−2−クロロ−ビフェニルから選択される化合物の、前記4’−ハロメチル−2−ハロ−ビフェニルを2−(1−プロピル)−4−メチル−6−(1’−メチルベンゾイミダゾール−2−イル)ベンゾイミダゾールと反応させる、テルミサルタンまたはこの塩もしくはエステルの合成のための使用。

【公表番号】特表2011−515374(P2011−515374A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500229(P2011−500229)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/EP2009/053269
【国際公開番号】WO2009/115585
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】