説明

アンギオポエチン−2特異的結合剤

【課題】アンギオポエチン−2(Ang−2)を認識し、Ang−2に結合する特異的結合剤の提供。
【解決手段】Ang−2に特異的に結合するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及びその断片の産生、診断用途及び治療用途に関する。前記抗体の重鎖断片、軽鎖断片及びCDR、並びに前記抗体の作成及び使用方法も開示する。ハイブリドーマによるモノクローナル抗体の産生方法、及び核酸分子で形質転換した宿主細胞による生産方法も提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンギオポエチン−2(Ang−2)を認識し、Ang−2に結合する特異的結合剤に関する。より具体的には、本発明はAng−2に特異的に結合するモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及びその断片の産生、診断用途及び治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の血管からの新しい血管の形成である血管形成は、多くの生理学的及び病理学的プロセスにとって必須である。通常、血管形成はプロ−及び抗−血管形成因子によりしっかり調節されるが、癌、眼血管新生疾患、関節炎や乾癬のような病気の場合には前記プロセスはなくなることがある(Folkman,J.Nat.Med.,1:27−31(1995))。
【0003】
脱調節となったまたは望ましくない血管形成に関連している病気は多数ある。前記病気には、眼血管新生、例えば糖尿病性網膜症を含めた網膜症及び老人性黄斑変性;乾癬;血管芽腫;血管腫;動脈硬化症;炎症性疾患、例えばリウマチ様またはリウマチ性炎症性疾患、特に関節リウマチを含めた関節炎、または他の慢性炎症性疾患、例えば慢性喘息;動脈または移植後アテローム性動脈硬化症;子宮内膜症;並びに新生物疾患、例えば所謂充実性腫瘍及び流動性(または、造血性)腫瘍、例えば白血病またはリンパ腫が含まれるが、これらに限定されない。望ましくない血管形成に関連する他の疾患は当業者に自明である。
【0004】
血管形成の調節には多くのシグナル形質導入系が関与しているが、最もよく特徴づけられている多くの内皮細胞選択的系の1つにはTie−2受容体チロシンキナーゼ(“Tie−2”または“Tie−2R”(“ORK”とも呼ばれる)と称される;マウスTie−2は“tek”とも称される)及びそのリガンドのアンギオポエチンが含まれる(N.W.Gale及びG.D.Yancopoulous,Genes Dev.,13:1055−1066(1999))。アンギオポエチン−1(“Ang−1”)〜アンギオポエチン−4(“Ang−4”)の4つのアンギオポエチンが公知である。これらのアンギオポエチンは“Tie−2リガンド”とも称されている(S.Davisら,Cell,87:1161−1169(1996);K.Grosiosら,Cytogenet.Cell Genet.,84:118−120(1999);J.Holashら,Investigative Ophthalmology & Visual Science,42:1617−1625(1999);T.I.Koblizekら,Current Biology,8:529−532(1998);P.Linら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:8829−8834(1998);P.C.Maisonpierreら,Science,275:55−60(1997);A.Papapetropoulosら,Lab.Invest.,79:213−223(1999);T.N.Satoら,Nature,375:70−74(1998);K.G.Shyuら,Circulation,98:2081−2087(1998);C.Suriら,Cell,87:1171−1180(1996);C.Suriら,Science,282:468−471(1998);D.M.Valenzuelaら,Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA,96:1904−1909(1999);B.Witzenbichlerら,Biol.Chem.,273:18514−18521(1998))。Tie−2に結合するAng−1は培養内皮細胞において受容体リン酸化を刺激するのに対して、Ang−2はTie−2受容体リン酸化を作動も拮抗もすることが判明している(上掲のS.Davisら(1996);上掲のP.C.Maisonpierre(1997);I.Kim及びJ.H.Kimら,Oncogene,19(39):4549−4552(2000);K.Teichert−Kuliszewska,P.C.Maisonpierreら,Cardiovascular Research,49(3):659−70(2001))。
【0005】
マウスTie−2及びAng−1ノックアウトの表現型は類似しており、Ang−1刺激Tie−2リン酸化は内皮細胞−支持細胞付着の維持により子宮内の発生血管のリモデリング及び安定化を媒介する(D.L.Dumontら,Genes & Development,8:1897−1909(1994);T.N.Satoら,Nature,376:70−74(1995);上掲のC.Suriら(1996))。血管安定化におけるAng−1の役割は成人では保存され、ここではAng−1は広く且つ構成的に発現されると考えられる(D.Hanahan,Science,277:48−50(1997);D.Zagzagら,Experimental Neurology,159:391−400(1999))。対照的に、Ang−2発現は主に血管リモデリングの部位に限定され、ここではAng−2はAng−1機能をブロックして血管形成を招く血管可塑性の状態を誘導すると考えられる(上掲のD.Hanahan(1997);J.Holashら,Science,284:1994−1998(1999);上掲のP.C.Maisonpierreら(1997))。
【0006】
多くの発表された研究から、血管形成に関連する病的状態での血管選択的Ang−2発現が明らかとされている。これらの病的状態の例には、乾癬、黄斑変性及び癌が含まれる(G.Bunoneら,American Journal of Pathology,155:1967−1976(1999);T.Etohら,Cancer Research,61:2145−2153(2001);M.Hangaiら,Investigative Ophthalmology & Visual Science,42:1617−1625(2001);上掲のJ.Holashら(1999);K.Kurodaら,Journal of Investigative Dermatology,116:713−720(2001);A.Otaniら,Investigative Ophthalmology & Visual Science,40:1912−1920(1999);A.Stratmannら,American Journal of Pathology,153:1459−1466(1998);S.Tanakaら,J.Clin.Invest.,103:34−345(1999);Y.Yoshidaら,Internationa Journal of Oncology,15:1221−1225(1999);K.Yuanら,Journal of Periodontal Research,35:165−171(2000);上掲のD.Zagzagら(1999))。これらの研究の殆どは多くの腫瘍タイプが血管Ang−2発現を示すと思われる癌に向けられている。病的血管形成での発現とは対照的に、正常組織でのAng−2発現は非常に限られている(上掲のP.C.Maisonpierreら(1997);J.Mezquitaら,Biochemical and Biophysical Research Communication,260:492−498(1999))。正常な成人では、血管形成の3つの主な部位は卵巣、胎盤及び子宮である。これらはAng−2 mRNAが検出された正常(すなわち、非癌)組織中の主な組織である。
【0007】
ある機能研究から、Ang−2が腫瘍血管形成に関与する恐れがあることが示唆されている。Ahmadら(Cancer Res.,61:1255−1258(2001))はAng−2過剰発現を記載しており、これがマウス異種移植モデルにおける腫瘍増殖の増加に関連すると言われていることを示している。Ang−2過剰発現と腫瘍血管分布過多の関連を示すデーターが挙げられている上掲のEtohら及び上掲のTanakaらも参照されたい。しかしながら、対照的に、Yuら(Am.J.Path.,158:563−570(2001))は、ルイス肺癌及びTA3乳癌細胞におけるAng−2過剰発現は対応のトランスフェクタントを注射したマウスの寿命を延長させたことを示すデーターを報告している。
【0008】
数年前には、複数の文献にAng−1、Ang−2及び/またはTie−2が抗癌治療に対する可能な標的として示唆されている。例えば、米国特許第6,166,185号明細書、同第5,650,490号明細書及び同第5,814,464号明細書はそれぞれ抗−Tie−2リガンド抗体及び受容体の概念を開示している。Linら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:8829−8834(1998))はアデノウイルス発現可溶性Tie−2をマウスに注射した。可溶性Tie−2はマウスで発生した腫瘍の数及びサイズを減少させると言われている。関連した研究で、Linら(J.Clin.Invest.,100:2072−2078(1997))は可溶性形態のTie−2をラットに注射した。この化合物はラットにおいて腫瘍サイズを縮小させたと言われている。Siemeisterら(Cancer Res.,59:3185−3189(1999))はTie−2の細胞外ドメインを発現するヒト黒色腫細胞株を作成し、この細胞株をヌードマウスに注射して、可溶性Tie−2は腫瘍増殖及び腫瘍血管形成を有意に抑制すると言われているとの結論を得た。この情報にてらして、Ang−1及びAng−2の両方がTie−2に結合すると仮定すると、これらの研究からAng−1、Ang−2またはTie−2が抗癌治療に対する魅力的な標的であるかどうかは明らかでない。
【0009】
分子の半減期を延長させるためにあるペプチドを安定な血漿タンパク質(例えば、Ig定常領域)へ融合させることは、例えば2000年5月4日に公開された国際特許出願公開第00/24782号パンフレットに記載されている。
【0010】
分子の半減期を延長させるためにタンパク質またはその断片を安定な血漿タンパク質(例えば、Ig定常領域)へ融合させることはいろいろな文献に記載されている[例えば、米国特許第5,480,981号明細書;Zhengら,J.Immunol.,154:5590−5600(1995);Fisherら,N.Engl.J.Med.,334:1697−1702(1996);K.Van Zeeら,J.Immunol.,156:2221−2230(1996);1998年9月15日に付与された米国特許第5,808,029号明細書;Caponら,Nature,337:525−531(1989);Harvillら,Immunotech.,1:95−105(1995);1997年7月3日に公開された国際特許出願公開第97/23614号パンフレット;1997年12月11日に出願された国際特許出願第US 97/23183号明細書;Linsley,J.Exp.Med.,174:561−569(1991);1995年8月10日に公開された国際特許出願公開第95/21258号パンフレット参照]。
【0011】
多くの充実性腫瘍は直径1〜2mm以上に増殖するために血管新生を必要としているので効果的な抗−Ang−2治療は大多数の患者のためになるであろう。前記治療は他の血管形成関連疾患、例えば網膜症、関節炎や感染においても広く適用されるであろう。
【0012】
Ang−2を特異的に認識し、結合する新規物質を同定することが依然として要望されている。前記物質はAng−2活性に関連する病的状態における診断スクリーニング及び治療手段のために有用である。
【0013】
従って、本発明の目的はAng−2活性を調節するAng−2の特異的結合剤を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,166,185号明細書
【特許文献2】米国特許第5,650,490号明細書
【特許文献3】米国特許第5,814,464号明細書
【特許文献4】国際公開第00/24782号
【特許文献5】米国特許第5,480,981号明細書
【特許文献6】米国特許第5,808,029号明細書
【特許文献7】国際公開第97/23614号
【特許文献8】国際公開第97/23183号
【特許文献9】国際公開第95/21258号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Folkman,J.Nat.Med.,1:27−31(1995)
【非特許文献2】N.W.Gale及びG.D.Yancopoulous,Genes Dev.,13:1055−1066(1999)
【非特許文献3】S.Davisら,Cell,87:1161−1169(1996)
【非特許文献4】K.Grosiosら,Cytogenet.Cell Genet.,84:118−120(1999)
【非特許文献5】J.Holashら,Investigative Ophthalmology & Visual Science,42:1617−1625(1999)
【非特許文献6】T.I.Koblizekら,Current Biology,8:529−532(1998)
【非特許文献7】P.Linら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:8829−8834(1998)
【非特許文献8】P.C.Maisonpierreら,Science,275:55−60(1997)
【非特許文献9】A.Papapetropoulosら,Lab.Invest.,79:213−223(1999)
【非特許文献10】T.N.Satoら,Nature,375:70−74(1998)
【非特許文献11】K.G.Shyuら,Circulation,98:2081−2087(1998)
【非特許文献12】C.Suriら,Cell,87:1171−1180(1996)
【非特許文献13】C.Suriら,Science,282:468−471(1998)
【非特許文献14】D.M.Valenzuelaら,Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA,96:1904−1909(1999)
【非特許文献15】B.Witzenbichlerら,Biol.Chem.,273:18514−18521(1998)
【非特許文献16】I.Kim及びJ.H.Kimら,Oncogene,19(39):4549−4552(2000)
【非特許文献17】K.Teichert−Kuliszewska,P.C.Maisonpierreら,Cardiovascular Research,49(3):659−70(2001)
【非特許文献18】D.L.Dumontら,Genes & Development,8:1897−1909(1994)
【非特許文献19】T.N.Satoら,Nature,376:70−74(1995)
【非特許文献20】D.Hanahan,Science,277:48−50(1997)
【非特許文献21】D.Zagzagら,Experimental Neurology,159:391−400(1999)
【非特許文献22】J.Holashら,Science,284:1994−1998(1999)
【非特許文献23】G.Bunoneら,American Journal of Pathology,155:1967−1976(1999)
【非特許文献24】T.Etohら,Cancer Research,61:2145−2153(2001)
【非特許文献25】M.Hangaiら,Investigative Ophthalmology & Visual Science,42:1617−1625(2001)
【非特許文献26】K.Kurodaら,Journal of Investigative Dermatology,116:713−720(2001)
【非特許文献27】A.Otaniら,Investigative Ophthalmology & Visual Science,40:1912−1920(1999)
【非特許文献28】A.Stratmannら,American Journal of Pathology,153:1459−1466(1998)
【非特許文献29】S.Tanakaら,J.Clin.Invest.,103:34−345(1999)
【非特許文献30】Y.Yoshidaら,Internationa Journal of Oncology,15:1221−1225(1999)
【非特許文献31】K.Yuanら,Journal of Periodontal Research,35:165−171(2000)
【非特許文献32】J.Mezquitaら,Biochemical and Biophysical Research Communication,260:492−498(1999)
【非特許文献33】Ahmadら(Cancer Res.,61:1255−1258(2001))
【非特許文献34】Yuら(Am.J.Path.,158:563−570(2001))
【非特許文献35】Linら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95:8829−8834(1998))
【非特許文献36】Linら(J.Clin.Invest.,100:2072−2078(1997))
【非特許文献37】Siemeisterら(Cancer Res.,59:3185−3189(1999))
【非特許文献38】Zhengら,J.Immunol.,154:5590−5600(1995)
【非特許文献39】Fisherら,N.Engl.J.Med.,334:1697−1702(1996)
【非特許文献40】K.Van Zeeら,J.Immunol.,156:2221−2230(1996)
【非特許文献41】Caponら,Nature,337:525−531(1989)
【非特許文献42】Harvillら,Immunotech.,1:95−105(1995)
【非特許文献43】Linsley,J.Exp.Med.,174:561−569(1991)
【発明の概要】
【0016】
本発明は、526 HC(配列番号1)、528 HC(配列番号3)、531 HC(配列番号5)、533 HC(配列番号7)、535 HC(配列番号9)、536 HC(配列番号11)、537 HC(配列番号13)、540 HC(配列番号15)、543 HC(配列番号17)、544 HC(配列番号19)、545 HC(配列番号21)、546 HC(配列番号23)、551 HC(配列番号25)、553 HC(配列番号27)、555 HC(配列番号29)、558 HC(配列番号31)、559 HC(配列番号33)、565 HC(配列番号35)、F1−C6 HC(配列番号37)、FB1−A7 HC(配列番号39)、FD−B2 HC(配列番号41)、FE−B7 HC(配列番号43)、FJ−G11 HC(配列番号45)、FK−E3 HC(配列番号47)、G1D4 HC(配列番号49)、GC1E8 HC(配列番号51)、H1C12 HC(配列番号53)、IA1−1E7 HC(配列番号55)、IF−1C10 HC(配列番号57)、IK−2E2 HC(配列番号59)、IP−2C11 HC(配列番号61)及びその抗原結合断片からなる群から選択される重鎖可変領域を含む重鎖、及び526カッパ(配列番号2)、536カッパ(配列番号12)、543カッパ(配列番号18)、544カッパ(配列番号20)、551カッパ(配列番号26)、553カッパ(配列番号28)、555カッパ(配列番号30)、558カッパ(配列番号32)、565カッパ(配列番号36)、FE−B7カッパ(配列番号44)、FJ−G11カッパ(配列番号46)、FK−E3カッパ(配列番号48)、IA1−1E7カッパ(配列番号56)、IP−2C11カッパ(配列番号62)、528ラムダ(配列番号4)、531ラムダ(配列番号6)、533ラムダ(配列番号8)、535ラムダ(配列番号10)、537ラムダ(配列番号14)、540ラムダ(配列番号16)、545ラムダ(配列番号22)、546ラムダ(配列番号24)、559ラムダ(配列番号34)、F1−C6ラムダ(配列番号38)、FB1−A7ラムダ(配列番号40)、FD−B2ラムダ(配列番号42)、G1D4ラムダ(配列番号50)、GC1E8ラムダ(配列番号52)、H1C12ラムダ(配列番号54)、IF−1C10ラムダ(配列番号58)及びIK−2E2ラムダ(配列番号60)及びその抗原結合断片からなる群から選択される軽鎖可変領域を含む軽鎖からなる抗体を提供する。
【0017】
また、本発明は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号2、配列番号12、配列番号18、配列番号20、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号36、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号56、配列番号62、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号14、配列番号16、配列番号22、配列番号24、配列番号34、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号58、配列番号60及びその断片からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む特異的結合剤を提供する。
【0018】
前記特異的結合剤は、例えばポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化または完全ヒト化抗体のような抗体であり得ると認められる。前記抗体は単鎖抗体でもあり得る。本発明は更に本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマにも関する。
【0019】
本発明は本明細書に記載されているコンジュゲートに関すると認められる。前記コンジュゲートの例は本発明の特異的結合剤(例えば、抗体)であり得る。
【0020】
更に、本発明は本発明の特異的結合剤(例えば、抗体)をコードする核酸分子、前記核酸分子を含むベクター、及び前記ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0021】
加えて、本発明は(a)宿主細胞を請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤をコードする少なくとも1つの核酸分子で形質転換し、(b)前記宿主細胞において前記核酸分子を発現させ、(c)特異的結合剤を単離することを含む特異的結合剤の作成方法を提供する。本発明は(a)宿主細胞を本発明の抗体をコードする少なくとも1つの核酸分子で形質転換し、(b)前記宿主細胞において前記核酸分子を発現させ、(c)特異的結合剤を単離することを含む抗体の作成方法をも提供する。
【0022】
また、本発明は治療有効量の本発明の特異的結合剤を投与することによる哺乳動物における望ましくない血管形成の阻止方法に関する。本発明は治療有効量の本発明の特異的結合剤を投与することによる哺乳動物における癌の治療方法にも関する。
【0023】
更に、本発明は治療有効量の本発明の抗体を投与することを含む哺乳動物における望ましくない血管形成の阻止方法に関する。本発明は治療有効量の本発明の抗体を投与することを含む哺乳動物における癌の治療方法にも関する。
【0024】
更に、本発明は本発明の特異的結合剤及び医薬的に許容され得る製剤化剤を含む医薬組成物に関する。前記医薬組成物は本発明の抗体及び医薬的に許容され得る製剤化剤を含み得る。
【0025】
本発明は1つ以上の本発明の特異的結合剤を投与することによるアンギオポエチン−2活性の調節または阻害方法を提供する。本発明は本発明の抗体を投与することによるアンギオポエチン−2活性の調節または阻害方法をも提供する。
【0026】
更に、本発明は治療有効量の本発明の特異的結合剤を投与することを含む哺乳動物における血管透過性または血漿漏出の少なくとも1つの調節方法に関する。本発明はまた、治療有効量の本発明の特異的結合剤を投与することを含む哺乳動物における眼血管新生疾患、肥満、血管芽腫、血管腫、動脈硬化症、炎症性疾患、炎症性障害、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、新生物疾患、骨関連疾患及び乾癬の少なくとも1つの治療方法にも関する。
【0027】
更に、本発明は治療有効量の本発明の抗体を投与することを含む哺乳動物における血管透過性または血漿漏出の少なくとも1つの調節方法を提供する。また、本発明は治療有効量の本発明の抗体を投与することを含む哺乳動物における眼血管新生疾患、肥満、血管芽腫、血管腫、動脈硬化症、炎症性疾患、炎症性障害、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、新生物疾患、骨関連疾患及び乾癬の少なくとも1つの治療方法をも提供する。
【0028】
更に、本発明は治療有効量の本発明の特異的結合剤及び化学療法剤を投与することを含む哺乳動物における癌の治療方法に関する。当業者は特異的結合剤及び化学療法剤を同時に投与する必要はないと理解している。
【0029】
また、本発明は治療有効量の本発明の抗体及び化学療法剤を投与することを含む哺乳動物における癌の治療方法に関する。抗体及び化学療法剤を同時に投与する必要はない。
【0030】
本発明はまた526 HC(配列番号1)、528 HC(配列番号3)、531 HC(配列番号5)、533 HC(配列番号7)、535 HC(配列番号9)、536 HC(配列番号11)、537 HC(配列番号13)、540 HC(配列番号15)、543 HC(配列番号17)、544 HC(配列番号19)、545 HC(配列番号21)、546 HC(配列番号23)、551 HC(配列番号25)、553 HC(配列番号27)、555 HC(配列番号29)、558 HC(配列番号31)、559 HC(配列番号33)、565 HC(配列番号35)、F1−C6 HC(配列番号37)、FB1−A7 HC(配列番号39)、FD−B2 HC(配列番号41)、FE−B7 HC(配列番号43)、FJ−G11 HC(配列番号45)、FK−E3 HC(配列番号47)、G1D4 HC(配列番号49)、GC1E8 HC(配列番号51)、H1C12 HC(配列番号53)、IAI−1E7 HC(配列番号55)、IF−1C10 HC(配列番号57)、IK−2E2 HC(配列番号59)、IP−2C11 HC(配列番号61)、526カッパ(配列番号2)、536カッパ(配列番号12)、543カッパ(配列番号18)、544カッパ(配列番号20)、551カッパ(配列番号26)、553カッパ(配列番号28)、555カッパ(配列番号30)、558カッパ(配列番号32)、565カッパ(配列番号36)、FE−B7カッパ(配列番号44)、FJ−G11カッパ(配列番号46)、FK−E3カッパ(配列番号48)、IA1−1E7カッパ(配列番号56)、IP−2C11カッパ(配列番号62)、528ラムダ(配列番号4)、531ラムダ(配列番号6)、533ラムダ(配列番号8)、535ラムダ(配列番号10)、537ラムダ(配列番号14)、540ラムダ(配列番号16)、545ラムダ(配列番号22)、546ラムダ(配列番号24)、559ラムダ(配列番号34)、F1−C6ラムダ(配列番号38)、FB1−A7ラムダ(配列番号40)、FD−B2ラムダ(配列番号42)、G1D4ラムダ(配列番号50)、GC1E8ラムダ(配列番号52)、H1C12ラムダ(配列番号54)、IF−1C10ラムダ(配列番号58)及びIK−2E2ラムダ(配列番号60)のいずれかの相補性決定領域1(CDR 1)を含む特異的結合剤を提供する。
【0031】
更に、本発明は526 HC(配列番号1)、528 HC(配列番号3)、531 HC(配列番号5)、533 HC(配列番号7)、535 HC(配列番号9)、536 HC(配列番号11)、537 HC(配列番号13)、540 HC(配列番号15)、543 HC(配列番号17)、544 HC(配列番号19)、545 HC(配列番号21)、546 HC(配列番号23)、551 HC(配列番号25)、553 HC(配列番号27)、555 HC(配列番号29)、558 HC(配列番号31)、559 HC(配列番号33)、565 HC(配列番号35)、F1−C6 HC(配列番号37)、FB1−A7 HC(配列番号39)、FD−B2 HC(配列番号41)、FE−B7 HC(配列番号43)、FJ−G11 HC(配列番号45)、FK−E3 HC(配列番号47)、G1D4 HC(配列番号49)、GC1E8 HC(配列番号51)、H1C12 HC(配列番号53)、IAI−1E7 HC(配列番号55)、IF−1C10 HC(配列番号57)、IK−2E2 HC(配列番号59)、IP−2C11 HC(配列番号61)、526カッパ(配列番号2)、536カッパ(配列番号12)、543カッパ(配列番号18)、544カッパ(配列番号20)、551カッパ(配列番号26)、553カッパ(配列番号28)、555カッパ(配列番号30)、558カッパ(配列番号32)、565カッパ(配列番号36)、FE−B7カッパ(配列番号44)、FJ−G11カッパ(配列番号46)、FK−E3カッパ(配列番号48)、IA1−1E7カッパ(配列番号56)、IP−2C11カッパ(配列番号62)、528ラムダ(配列番号4)、531ラムダ(配列番号6)、533ラムダ(配列番号8)、535ラムダ(配列番号10)、537ラムダ(配列番号14)、540ラムダ(配列番号16)、545ラムダ(配列番号22)、546ラムダ(配列番号24)、559ラムダ(配列番号34)、F1−C6ラムダ(配列番号38)、FB1−A7ラムダ(配列番号40)、FD−B2ラムダ(配列番号42)、G1D4ラムダ(配列番号50)、GC1E8ラムダ(配列番号52)、H1C12ラムダ(配列番号54)、IF−1C10ラムダ(配列番号58)及びIK−2E2ラムダ(配列番号60)のいずれかの相補性決定領域2(CDR 2)を含む特異的結合剤を提供する。
【0032】
また、本発明は526 HC(配列番号1)、528 HC(配列番号3)、531 HC(配列番号5)、533 HC(配列番号7)、535 HC(配列番号9)、536 HC(配列番号11)、537 HC(配列番号13)、540 HC(配列番号15)、543 HC(配列番号17)、544 HC(配列番号19)、545 HC(配列番号21)、546 HC(配列番号23)、551 HC(配列番号25)、553 HC(配列番号27)、555 HC(配列番号29)、558 HC(配列番号31)、559 HC(配列番号33)、565 HC(配列番号35)、F1−C6 HC(配列番号37)、FB1−A7 HC(配列番号39)、FD−B2 HC(配列番号41)、FE−B7 HC(配列番号43)、FJ−G11 HC(配列番号45)、FK−E3 HC(配列番号47)、G1D4 HC(配列番号49)、GC1E8 HC(配列番号51)、H1C12 HC(配列番号53)、IAI−1E7 HC(配列番号55)、IF−1C10 HC(配列番号57)、IK−2E2 HC(配列番号59)、IP−2C11 HC(配列番号61)、526カッパ(配列番号2)、536カッパ(配列番号12)、543カッパ(配列番号18)、544カッパ(配列番号20)、551カッパ(配列番号26)、553カッパ(配列番号28)、555カッパ(配列番号30)、558カッパ(配列番号32)、565カッパ(配列番号36)、FE−B7カッパ(配列番号44)、FJ−G11カッパ(配列番号46)、FK−E3カッパ(配列番号48)、IA1−1E7カッパ(配列番号56)、IP−2C11カッパ(配列番号62)、528ラムダ(配列番号4)、531ラムダ(配列番号6)、533ラムダ(配列番号8)、535ラムダ(配列番号10)、537ラムダ(配列番号14)、540ラムダ(配列番号16)、545ラムダ(配列番号22)、546ラムダ(配列番号24)、559ラムダ(配列番号34)、F1−C6ラムダ(配列番号38)、FB1−A7ラムダ(配列番号40)、FD−B2ラムダ(配列番号42)、G1D4ラムダ(配列番号50)、GC1E8ラムダ(配列番号52)、H1C12ラムダ(配列番号54)、IF−1C10ラムダ(配列番号58)及びIK−2E2ラムダ(配列番号60)のいずれかの相補性決定領域3(CDR 3)を含む特異的結合剤を提供する。
【0033】
更に、本発明は本発明の特異的結合剤をコードする核酸分子を提供する。
【0034】
更に、本発明は(a)本発明の特異的結合剤を生物学的サンプルと接触させ、(b)前記サンプルへの特異的結合剤の結合の程度を測定することを含む前記サンプル中のアンギオポエチン−2レベルの検出方法に関する。本発明は(a)本発明の抗体を生物学的サンプルと接触させ、(b)前記サンプルへの抗体の結合の程度を測定することを含む前記サンプル中のアンギオポエチン−2レベルの検出方法にも関する。
【0035】
また、本発明は治療有効量の本明細書に記載されているポリペプチドまたは組成物を投与することを含む哺乳動物における望ましくない血管形成の阻止方法に関する。また、本発明は治療有効量の本明細書に記載されているポリペプチドまたは組成物を投与することを含む哺乳動物における血管形成の調節方法に関する。更に、本発明は治療有効量の本明細書に記載されているポリペプチドまたは組成物を投与することを含む哺乳動物における望ましくない血管形成により特徴づけられる腫瘍増殖の抑制方法に関する。更に、本発明は治療有効量の本明細書に記載されているポリペプチドまたは組成物及び化学療法剤を投与することを含む哺乳動物における癌の治療方法に関する。好ましい実施態様において、化学療法剤は5−FU、CPT−11及びタキソテールの少なくとも1つである。しかしながら、他の好適な化学療法剤及び他の癌治療剤を使用し得ると認められる。
【0036】
本発明の特異的結合剤は脱調節となったまたは望ましくない血管形成に関連している多数の疾患を治療するために使用され得ると認められる。前記疾患には、眼血管新生、例えば糖尿病性網膜症を含めた網膜症及び老人性黄斑変性;乾癬;血管芽腫;血管腫;動脈硬化症;炎症性疾患、例えばリウマチ様またはリウマチ性炎症性疾患、特に関節リウマチを含めた関節炎、または他の慢性炎症性疾患、例えば慢性喘息;動脈または移植後アテローム性動脈硬化症;子宮内膜症;並びに新生物疾患、例えば所謂充実性腫瘍及び流動性腫瘍(例えば、白血病)が含まれるが、これらに限定されない。特異的結合剤を投与することにより治療され得る別の疾患は当業者に自明である。これらの例には、肥満、血管透過性、血漿漏出、及び骨粗鬆症を含めた骨関連疾患が含まれるが、これらに限定されない。よって、本発明は脱調節となったまたは望ましくない血管形成に関連している疾患の治療方法に関する。
【0037】
本発明の他の実施態様は本明細書の開示から容易に分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】腫瘍を持つマウスを本発明の抗−Ang−2抗体(クローン533、537または544)、コントロール抗体またはリン酸緩衝食塩水(PBS)を用いて処置したときの腫瘍サイズ(y軸)対時間(x軸)のグラフを示す。詳細は実施例に記載されている。
【図2a】本発明のペプチ体TN8−Con4−C、L1−7−N及び12−9−3−C並びにコントロールペプチ体、Tie2−Fc、C2B8または5B12のそれぞれについて、および完全長ヒトAng−2(hAng−2)について、hAng−2のN末端及びhAng−2のC末端に対するエピトープマッピングデータ(O.D.370)を示す、詳細は実施例に記載されている。
【図2b】本発明のペプチ体TN8−Con4−C、L1−7−N及び12−9−3−C並びにコントロールペプチ体、Tie2−Fc、C2B8または5B12のそれぞれについて、および完全長ヒトAng−2(hAng−2)について、hAng−2のN末端及びhAng−2のC末端に対するエピトープマッピングデータ(O.D.370)を示す、詳細は実施例に記載されている。
【図2c】本発明のペプチ体TN8−Con4−C、L1−7−N及び12−9−3−C並びにコントロールペプチ体、Tie2−Fc、C2B8または5B12のそれぞれについて、および完全長ヒトAng−2(hAng−2)について、hAng−2のN末端及びhAng−2のC末端に対するエピトープマッピングデータ(O.D.370)を示す、詳細は実施例に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本明細書中、セクションの表題は組織化目的のみで使用されており、決して本発明の主題を限定するものと解釈されない。
【0040】
組換えDNA分子、タンパク質及び抗体産生のため、及び組織培養及び細胞形質転換のためには一般的方法が使用され得る。酵素反応及び精製方法は通常製造業者の仕様書に従って、またはSambrookら(「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」,ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバーに所在のCold Spring Harbor Laboratory Press(1989年)発行)や本明細書に記載されているような慣用手順を用いて当業界で通常実施されているように実施される。特記しない限り、本明細書に記載されている分析化学、合成有機化学、医化学及び製薬化学の実験手順及び方法及びこれに関連して使用されている命名法は当業者に公知であり、当業界で一般的に使用されている。化学合成、化学分析、薬剤の製造、処方及びデリバリー、並びに患者の治療のためには一般的方法が使用され得る。
【0041】
定義
本明細書の開示に従って使用されているように、特記しない限り以下の用語は次の意味を有すると理解されたい。
【0042】
用語「Ang−2」は、米国特許第6,166,185号明細書の図6に示されているポリペプチド(“Tie−2リガンド−2”)またはその断片、並びにアレリック変異体、スプライス変異体、誘導体、置換,欠失及び/または挿入変異体、融合ペプチド及びポリペプチド、種間ホモログを含めた関連ペプチドを指す。場合により、Ang−2ポリペプチドはその作成方法に応じて追加の末端残基、例えばリーダー配列、標的配列、アミノ末端メチオニン、アミノ末端メチオニン及びリシン残基、及び/またはタグまたは融合タンパク質配列を含んでいてもよいし、含んでなくてもよい。
【0043】
Ang−2またはAng特異的結合剤に関連して使用するとき、用語「生物学的活性」はAng−2またはAng−2特異的結合剤の少なくとも1つの活性特性を有するペプチドまたはポリペプチドを指す。Ang−2の特異的結合剤はAng−2の少なくとも1つの生物学的活性に関するアゴニスト、アンタゴニスト、または中和もしくは阻害活性を有し得る。
【0044】
用語「特異的結合剤」は、他のアンギオポエチンよりも高いアフィニティーでAng−2(及び本明細書に定義したその変異体及び誘導体)に結合する分子、好ましくはタンパク質様分子を指す。特異的結合剤はAng−2に優先的に結合するタンパク質、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質または低分子量化合物であり得る。好ましい実施態様では、本発明の特異的結合剤は公知の方法で得られる抗体、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、CDRグラフト化抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、触媒抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗−イディオタイプ(抗−Id)抗体、及び可溶性または結合形態で標識され得る抗体、或いはその断片、変異体または誘導体、それ自体、または他のアミノ酸配列との組合せである。前記方法には、酵素開裂、化学開裂、ペプチド合成または組換え技術が含まれるが、これらに限定されない。本発明の抗−Ang−2特異的結合剤はAng−2の一部に結合してAng−2の生物学的活性及び/または他のAng−2関連活性を調節(例えば、阻害または促進)し得る。
【0045】
用語「ポリクローナル抗体」は、同一抗原上の異なるエピトープを認識し、そのエピトープに結合する抗体の異種混合物を指す。ポリクローナル抗体は粗な血清調製物から入手され得るか、抗原アフィニテイークロマトグラフィーまたはプロテインA/プロテインGアフィニティークロマトグラフィー等により精製され得る。
【0046】
用語「モノクローナル抗体」は 、各モノクローナル抗体が通常抗原上の同一エピトープを認識するように場合により単一ハイブリドーマまたは他の細胞株により、またはトランスジェニック哺乳動物により産生される同一核酸分子によりコードされる抗体を指す。用語「モノクローナル抗体」は、抗体を作成する特定方法を限定しないし、特定種(例えば、マウス、ラット等)で産生される抗体に限定されない。
【0047】
用語「キメラ抗体」は重鎖及び/または軽鎖の一部が特定種に由来するかまたは特定抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応配列と同一であるか相同であり、鎖の残部が別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応配列と同一であるか相同である抗体を指す。また、所望の生物学的活性(すなわち、Ang−2に特異的に結合する活性)を発揮する前記抗体の断片も含まれる。米国特許第4,816,567号明細書及びMorrisonら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),81:6851−6855(1985)参照。
【0048】
用語「CDRグラフト化抗体」は、特定の種またはアイソタイプの1つの抗体からのCDRが同一もしくは異なる種またはアイソタイプの別の抗体の骨格に組換え挿入されている抗体を指す。
【0049】
用語「多重特異性抗体」は、1つ以上の抗原上の2つ以上のエピトープを認識する可変領域を有する抗体を指す。このタイプの抗体のサブクラスは同一もしくは異なる抗原上の2つの別個のエピトープを認識する“二重特異性抗体”である。
【0050】
“触媒”抗体は、1つ以上の細胞毒性部分、またはより一般的には1つ以上の生物学的活性部分が標的とする結合剤に結合している抗体を指す。
【0051】
用語「ヒト化抗体」は、抗体骨格枠領域がヒトに由来するが各CDRが別種由来のもの、例えばマウスCDRで置換されている特定タイプのCDRグラフト化抗体を指す。用語「CDR」は上記と同義である。
【0052】
用語「完全ヒト」抗体は、CDR及び骨格の両方が1つ以上のヒトDNA分子に由来している抗体を指す。
【0053】
用語「抗−イディオタイプ」抗体は、抗原を認識する別の抗体に特異的に結合する抗体を指す。抗−イディオタイプ抗体は、例えばAng−2ポリペプチドまたはその断片よりはAng−2特異的抗体またはそのAng−2結合断片を用いて動物を免疫化して生ずるような抗体を除くAng−2特異的抗体の作成について本明細書に記載されている方法により作成され得る。
【0054】
本明細書中、用語「変異体」は結合剤の天然に存在する(または、少なくとも公知の)アミノ酸配列にアミノ酸残基を挿入、欠失及び/または置換されているポリペプチドが含まれる。本発明の変異体には以下に記載の融合タンパク質も含まれる。
【0055】
「誘導体」には、挿入、欠失または置換変異体とは異なる幾つかの方法で化学的に修飾されている結合剤が含まれる。
【0056】
「Ang−2に特異的に結合する」は、(例えば本明細書に記載されているAffinity ELISAまたはBIAcoreアッセイにより測定した)アフィニティーまたは(例えば本明細書に記載されているNeutralization ELISAアッセイまたは類似アッセイにより測定した)中和能が他のアンギオポエチン、或いは他のペプチドまたはポリペプチドの同一方法で測定したアフィニティーまたは中和能よりも少なくとも10倍、場合により50倍、100,250または500倍、更には少なくとも1000倍であるように本発明の特異的結合剤(例えば、抗体またはその断片)が成熟、完全長または部分長ヒトAng−2ポリペプチドまたはそのオルソログを認識し、結合する能力を指す。
【0057】
用語「抗原結合ドメイン」または「抗原結合領域」は、抗原と相互作用し、抗原に対する特異性及びアフィニティーを結合剤に付与する特異的結合剤アミノ酸残基(または、他の部分)を含む特異的結合剤(例えば、抗体分子)の一部を指す。抗体において、抗原結合ドメインは通常“相補性決定領域またはCDR”とも称される。
【0058】
用語「エピトープ」は、1つ以上の結合剤の抗原結合領域で特異的結合剤(例えば、抗体)により認識され、結合され得る分子の部分を指す。エピトープは通常分子の化学的に活性な表面グループ、例えばアミノ酸または炭水化物側鎖から構成され、特定の3次元構造的特徴及び特定の帯電特徴を有する。本明細書中、エピトープは連続していてもいなくてもよい。更に、エピトープは抗体を作成するために使用されるエピトープと同一の3次元構造からなり、抗体免疫応答を刺激するために使用されるAng−2中に存在するアミノ酸残基を全くまたはほんの少ししか含まない点で擬態性であり得る。
【0059】
用語「阻害及び/または中和エピトープ」は、抗体のような特異的結合剤により結合したときにインビボ、インビトロまたは原位置でエピトープを含む分子、細胞または生物の生物学的活性が喪失(または、少なくとも減少)するエピトープである。本発明において、中和エピトープはAng−2の生物学的活性領域に位置しているかまたは関連している。或いは、用語「活性化エピトープ」は、抗体のような本発明の特異的結合剤により結合したときにAng−2が活性化されたり、Ang−2の生物学的活性なコンフォメーションが少なくとも維持されるエピトープである。
【0060】
用語「抗体断片」は、完全に無傷の抗体よりも小さいペプチドまたはポリペプチドを指す。完全抗体は2つの機能的に独立した部分または断片、すなわち“Fab”として公知の抗原結合断片及び“Fc”断片として公知のカルボキシ末端結晶可能断片からなる。前記Fab断片は、重鎖(CHI)及び軽鎖(CHL)の双方由来の第1定常ドメインに加えて特定抗原に結合する重鎖及び軽鎖の双方由来の可変領域を含む。重鎖及び軽鎖可変領域はそれぞれ3つの相補性決定領域(CDR)及び各CDRを分離する骨格アミノ酸残基を含む。前記Fc領域は第2及び第3重鎖定常領域(CH2及びCH3)を含み、補体活性化及び食細胞による攻撃のようなエフェクター機能に関与している。幾つかの抗体では、Fc領域及びFab領域は、抗体“ヒンジ領域”により分離しており、完全長抗体がタンパク質分解により開裂される方法に依存しており、ヒンジ領域はFabまたはFc断片のいずれかに結合され得る。例えば、抗体をプロテアーゼパパインで開裂すると、Fc断片にヒンジ領域が結合した断片が生じ、プロテアーゼパパインで切断するとヒンジが両Fab断片に同時に結合している断片が生ずる。実際2つのFab断片はペプシン開裂後共有結合しているので、生じた断片はF(ab’)2断片と呼ばれる。
【0061】
Fcドメインは比較的長い血清半減期を有し得るのに対して、Fabは短命である(Caponら,Nature,337:525−531(1989))。融合タンパク質の一部として発現させたとき、Fcドメインはより長い半減期を付与するか、またはFc受容体結合、プロテインA結合、補体固定及び多分融合されるタンパク質への胎盤トランスファーのような機能を導入し得る。Fc領域は天然に存在するFc領域であってもよく、または治療品質または循環時間のようなある品質を改善するように改変されていてもよい。
【0062】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の軽鎖及び/または重鎖の一部を指し、典型的には重鎖では約120〜130アミノ末端アミノ酸及び軽鎖では約100〜110アミノ末端アミノ酸を含む。可変領域のアミノ酸配列は通常同一種の抗体の中でも大きく異なる。抗体の可変領域は通常特定抗原に対する特定各抗体の結合性及び特異性を決定する。配列の可変性は相補性決定領域(CDR)と称される領域に集中しており、可変ドメイン中のより高保存領域は骨格領域(FR)と称される。軽鎖及び重鎖のCDRはその中に抗体と抗原の直接相互作用に大きく関与するアミノ酸を含むが、FR中のアミノ酸は上記した抗原結合/認識に有意に影響を与え得る。
【0063】
抗体を参照して使用するとき、用語「軽鎖」は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)またはラムダ(λ)と称される2つの別々のタイプをまとめて指す。
【0064】
抗体を参照して使用するとき、用語「重鎖」は、重鎖定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ及びミューと称される5つの別々のタイプをまとめて指す。重鎖及び軽鎖の組合せにより、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMの5つの公知クラスの抗体が生ずる。この中には、IgG、IgG、IgG及びIgGと称されるIgGの4つの公知サブクラスが含まれる。
【0065】
核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞等のような生物学的材料に関連して使用するとき、用語「天然に存在する」は天然に存在するがヒトにより修飾されていないものを指す。
【0066】
Ang−2またはAng−2の特異的結合剤に関連して使用するとき、用語「単離」は、天然環境に存在する少なくとも1つの汚染ポリペプチドまたは化合物を含まない化合物、好ましくは治療または診断用途を妨げる他の汚染哺乳動物ポリペプチドを実質的に含まない化合物を指す。
【0067】
Ang−2、抗−Ang−2抗体またはAng−2の他のタンパク質様特異的結合剤に関連して使用するとき、用語「成熟」は、リーダーまたはシグナル配列を欠くペプチドまたはポリペプチドを指す。本発明の結合剤を例えば原核宿主細胞において発現させるとき、“成熟”ペプチドまたはポリペプチドはアミノ末端メチオニンのような追加アミノ酸残基(ただし、リーダー配列を欠く)または1つ以上のメチオニン及びリシン残基を含み得る。このようにして産生したペプチドまたはポリペプチドはこれらの追加アミノ酸残基を除去してから又は除去しないで使用してもよい。
【0068】
Ang−2の特定結合剤に関連して使用するとき、用語「有効量」及び「治療有効量」は、Ang−2の1つ以上の生物学的活性のレベルを目に見える程度変化させるのに有用なまたは必要な特異的結合剤の量を指す。前記変化はAng−2活性レベルの上昇または低下のいずれであってもよい。好ましくは、前記変化はAng−2活性の低下である。
【0069】
特異的結合剤及び抗体
本明細書中、用語「特異的結合剤」は、本明細書に記載したAng−2の認識及び結合に対して特異性を有する分子を指す。好適な特異的結合剤には、抗体及びその誘導体、ポリペプチド及び小分子が含まれるが、これらに限定されない。好適な特異的結合剤は当業界で公知の方法を用いて作成され得る。本発明のAng−2ポリペプチド特異的結合剤の1例はAng−2ポリペプチドの特定部分に結合し得、好ましくはAng−2ポリペプチドの活性または機能を調節し得る。
【0070】
Ang−2ポリペプチドに特異的に結合する抗体や抗体断片のような特異的結合剤は本発明の範囲内である。前記抗体は、単一特異性ポリクローナルを含めたポリクローナル、モノクローナル(mAb)、組換え、キメラ、CDRグラフト化のようなヒト化、ヒト、単鎖、触媒、多重特異性及び/または二重特異性、並びにその断片、変異体及び/または誘導体であり得る。
【0071】
Ang−2ポリペプチドに対するポリクローナル抗体は、通常動物(例えば、家兎、ハムスター、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ラット、アレチネズミ、モルモット、マウスまたは他の適当な哺乳動物、並びに他の非哺乳動物種)においてAng−2ポリペプチドまたはその断片をアジュバントと一緒に又はアジュバントなしで皮下または腹腔内に注射することにより産生される。前記アジュバントには、フロイント完全及び不完全アジュバント、無機ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)及び表面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルエマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン及びジニトロフェノール)が含まれるが、これらに限定されない。BCG(カルメット・ゲラン桿菌)及びコリネバクテリウム・パルブムも考えられる有用なヒトアジュバントである。抗原ポリペプチドを、免疫化しようとする種において免疫原性である担体タンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清、アルブミン、ウシチログロブリンまたは大豆シリプシン阻害剤にコンジュゲートすることが有用であり得る。また、免疫応答を高めるためにミョウバンのような凝集剤も使用される。免疫化後、動物を放血させ、血清を抗−Ang−2ポリペプチド抗体力価についてアッセイする。前記力価は本明細書の実施例の欄に記載されているアッセイを用いて測定され得る。ポリクローナル抗体は該抗体が検出された血清中で使用され得るか、例えば抗原アフィニティークロマトグラフィーまたはプロテインAまたはGアフィニティークロマトグラフィーを用いて血清から精製され得る。
【0072】
Ang−2ポリペプチドに対するモノクローナル抗体は、例えば一般的な“ハイブリドーマ”法またはより新しい“ファージディスプレー”法を用いて産生され得る。ただし、これらの方法に限定されない。例えば、本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法[Kohlerら,Nature,256:495(1975)]、ヒトB細胞ハイブリドーマ法[Kosborら,Immunol.Today,4:72(1983);Coteら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),80:2026−2030(1983);Brodeurら,「モノクローナル抗体作成法及び応用(Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications)」,p.51−63,ニューヨークに所在のMarcel Dekker,Inc.(1987年)発行]及びEBV−ハイブリドーマ法[Coleら,「モノクローナル抗体及び癌治療(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy)」,p.77−96,ニューヨーク州ニューヨークに所在のAlan R Liss Inc.(1985年)発行]を用いて作成され得る。本発明はAng−2ポリペプチドと反応するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞系も提供する。
【0073】
ハイブリドーマ法を使用する場合、ミエローマ細胞株を使用し得る。ハイブリドーマ産生融合方法で使用するのに適した細胞株は、好ましくは非抗体産生であり、高い融合効率を有し、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支える特定の選択培地では増殖し得ないようにする酵素欠乏性を有する。例えば、マウス融合に使用される細胞株はSp−20、P3−X63/Ag8、P3−X63−Ag8.653、NS1/1.Ag4 1、Sp210−Ag14、FO、NSO/U、MPC−11、MPC 11−X45−GTG1.7及びS194/5XX0 Bulである。ラット融合に使用される細胞株はR210.RCY3、Y3−Ag1.2.3、IR983F及びRB210である。細胞融合に使用される他の細胞株はU−266、GM1500−GRG2、LICR−LON−HMy2及びUC729−6である。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ及び他の細胞株は本発明の新規組成物であると考えられる。
【0074】
ファージディスプレー法は任意の種からモノクローナル抗体を作成するためにも使用され得る。好ましくは、この方法は単一FabまたはFv抗体断片をコードするポリヌクレオチドがファージ粒子の表面上で発現している完全ヒトモノクローナル抗体を産生するために使用される(Hoogenboomら,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marksら,J.Mol.Biol.,222:581(1991);米国特許第5,885,793号明細書も参照)。Ang−2に対してアフィニティーを有する抗体断片を同定するために各ファージを本明細書に記載されている結合アッセイを用いてスクリーニングにかけてもよい。よって、これらの方法は糸状バクテリオファージの表面上に抗体断片レパートリーを表示することによる免疫選択及びその後のAng−2に対する結合によるファージの選択を真似ている。前記方法の1つがAdamsらの国際特許出願第US98/17364号明細書に記載されており、ここには前記方法を用いたMPL−及びマスク−受容体に対する高アフィニティー及び機能性アゴニスト抗体断片の単離が記載されている。この方法では、ヒト抗体遺伝子の完全レパートリーは前記(Mullinaxら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),87:8095−8099(1990))に記載されているように末梢血リンパ球由来の天然に再編成したヒトV遺伝子をクローニングすることにより作成され得る。
【0075】
本発明の完全長モノクローナル抗体の各鎖、FabまたはFv断片をコードするポリヌクレオチド配列が同定されたら、当業界で公知であり且つ日常的に実施されている組換え法によりモノクローナル抗体ポリヌクレオチドを発現させるために真核または原核宿主細胞が使用され得る。或いは、所望の特異的結合剤をコードするポリヌクレオチド配列がモノクローナル抗体または他の特異的結合剤をコードするポリヌクレオチド分子を発現させ得るようにレシピエント動物(例えば、マウス、家兎、ヤギまたはウシ)のゲノムに導入されているトランスジェニック動物を作成する。1つの態様では、モノクローナル抗体または他の特異的結合剤をコードするポリヌクレオチドを哺乳動物特異的調節配列にライゲートし得、キメラポリヌクレオチドを標的動物の生殖細胞系に導入し得る。次いで、生じたトランスジェニック動物はその乳に所望の抗体を産生する(Pollockら,J.Immuno.Meth.,231:147−157(1999);Littleら,Immunol.Today,8:364−370(2000))。更に、モノクローナル抗体または他の特異的結合剤をコードするポリヌクレオチドを適当な植物にトランスフェクトすることによりモノクローナル抗体のようなAng−2特異的結合剤を発現させ、産生させるために植物を使用し得る。
【0076】
本発明の別の実施態様では、ヒト種以外の他の種由来のモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、またはその断片をヒト化またはキメラ化してもよい。非ヒト抗体のヒト化方法は当業界で公知である(米国特許第5,859,205号明細書、同第5,585,089号明細書及び同第5,693,762号明細書参照)。ヒト化は、例えば当業界で公知の方法(Jonesら,Nature,321:522−525(1986);Riechmannら,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyenら,Science,239:1534−1536(1988))を用いて例えばげっ歯類の相補性決定領域(CDR)の少なくとも一部をヒト抗体の対応領域で置換することにより実施される。本発明は、本明細書に記載されており、当業界で公知の前記ヒト抗体の変異体及び誘導体も提供する。
【0077】
Ang−2ポリペプチドに結合する完全ヒト抗体もその断片、変異体及び/または誘導体も本発明に包含される。前記抗体は上記したファージディスプレー法により産生され得る。或いは、内在性免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体のレパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス)を前記抗体を作成するために使用し得る。これは、Ang−2断片がAng−2に対してユニークなアミノ酸配列を有するAng−2抗原またはその断片を用いて動物を免疫化することにより実施され得る。場合により前記免疫原を担体にコンジュゲートさせてもよい。例えば、Jakobovitsら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),90:2551−2555(1993);Jakobovitsら,Nature,362:255−258(1993);Bruggermannら,Year in Immuno.,7:33(1996)参照。1つの方法では、重鎖及び軽鎖免疫グロブリンをコードする内在性座を無能にし、ヒト重鎖及び軽鎖タンパク質をコードする座をそのゲノムに挿入することにより産生される。次いで、完全補体よりも少ない修飾を有する部分修飾動物を交雑すると、所望の免疫系修飾をすべて有する動物が得られる。免疫原を投与すると、トランスジェニック動物は所望抗原に対して免疫特異性である(例えばマウスよりもむしろ)ヒトアミノ酸配列を含めたヒト可変領域を有する抗体を産生することができる。国際特許出願第US96/05928号明細書及び同第US93/06926号明細書参照。別の方法は米国特許第5,545,807号明細書、国際特許出願第US91/245号明細書、国際特許出願第GB89/01207号明細書、欧州特許第546073号明細書及び欧州特許出願公開第546073号明細書に記載されている。ヒト抗体は、宿主細胞において組換えDNA発現させたり、本明細書に記載されているハイブリドーマ細胞を発現させることによっても産生され得る。
【0078】
遺伝子導入は多種多様の方法で実施される。例えば、Bruggemanら,Immunol.Today,17:391−7(1996)参照。1つの方法では、生殖細胞系コンフィギュレーションの遺伝子セグメントが相互に人工的に近づくようにミニ座を構築する。(通常30kb未満の)サイズの制限のために、生じたミニ座は限定数の異なる遺伝子セグメントを含むが、依然として多数の抗体レパートリーを産生し得る。プロモーター及びエンハンサーを含めてヒトDNA配列のみを含むミニ座がトランスジェニックマウスにおいて完全に機能性である。
【0079】
トランスジェニック動物において多数の遺伝子セグメントが所望されるときには、酵母人工染色体(YAC)を用いる。YACは数百キロkb〜1Mbの範囲であり得、卵に直接マイクロインジェクションすることにより、またはYACを胚性幹(ES)細胞株に導入することによりマウス(または他の適当な動物)ゲノムに導入する。通常、YACを精製DNAまたは精製DNAをミセル中に含む酵母スフェロプラスト融合物のリポフェクションによりES細胞に導入し、融合はハイブリドーマ融合プロトコルに類似の方法で実施する。DNA導入後の所望ES細胞の選択は当業界で公知の選択マーカーをYACに導入することにより実施される。
【0080】
別の方法として、細菌大腸菌中で増幅されるバクテリオファージP1ベクターを用いる。前記ベクターは通常YACよりも少ない挿入DNAを有しているが、クローンはマウス卵に直接マイクロインジェクションするのに十分な収率で容易に増殖する。各種P1ベクターのカクテルの使用により高レベルの相同組換えが生ずることは判明している。
【0081】
循環抗体の血清レベルを検出するための当業界で公知の方法(例えば、ELISA)を用いて適当にトランスジェニックマウス(または、他の適当な動物)が同定されたら、このトランスジェニック動物は内在性Ig座が破壊されているマウスと交配させる。こうすると、本質的に全てのES細胞がヒト抗体を発現する子孫が生ずる。
【0082】
更に別の方法として、全動物Ig座をヒトIg座で置換すると、生じた動物はヒト抗体のみを発現する。別の方法では、動物座の一部をヒト座中の特定の対応領域で置換する。ある場合には、この方法により生じた動物はマウスIg座の置換の種類に応じて完全ヒト抗体とは対照的にキメラ抗体を発現し得る。
【0083】
ヒト抗体はインビトロでヒト脾細胞(BまたはT細胞)を抗原に曝した後発現細胞を免疫無防備状態の細胞(例えば、SCIDまたはnod/SCID)において再編成することによっても産生され得る。Bramsら,J.Immunol,160:2051−2058(1998);Carballidoら,Nat.Med.,6:103−106(2000)参照。1つの方法では、ヒト胎児組織をSCIDマウス(SCID−hu)に移植すると長期間にわたり造血及びヒトT細胞発生が生ずる(McCuneら,Science,241:1532−1639(1988);Ifversenら,Sem.Immunol.,8:243−248(1996))。前記キメラマウスにおける液性免疫応答は動物中のT細胞の同時発生に完全に依存している(Martenssonら,Immunol.,83:1271−179(1994))。別の方法では、ヒト末梢血リンパ球を腹腔内(または他の方法で)SCIDマウスに移植する(Mosierら,Nature,335:256−259(1988))。移植した細胞をブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)(Martenssonら,Immunol.,84:224−230(1995))のようなプライミング剤または抗−ヒトCD40モノクローナル抗体(Murphyら,Blood,86:1946−1953(1995))で処理すると、高レベルのB細胞産生が検出される。
【0084】
或いは、完全合成ヒト重鎖レパートリーは、非再編成V遺伝子セグメントから各ヒトVHセグメントをランダムヌクレオチドのDセグメント及びヒトJセグメントと集合することにより構築される(Hoogenboomら,J.Mol.Biol.,227:381−388(1992))。同様に、軽鎖レパートリーは各ヒトVセグメントをJセグメントと集合することにより構築される(Griffithsら,EMBO J.,13:3245−3260(1994))。完全抗体をコードするヌクレオチド(すなわち、重鎖及び軽鎖)を単鎖Fv断片として連結し、このポリヌクレオチドを糸状ファージマイナーコートタンパク質をコードするヌクレオチドにライゲートする。この融合タンパク質をファージの表面上で発現させると、特異的抗体をコードするポリヌクレオチドが固定化抗原を用いる選択により同定される。
【0085】
更に別の方法では、抗体断片を1つの鎖をファージタンパク質に融合し、他の鎖を細菌ペリプラズムに分泌することにより2つのFab断片として集合させる(Hoogenboomら,Nucl.Acids Res.,19:4133−4137(1991);Barbasら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),88:7978−7982(1991))。
【0086】
キメラ、ヒト化、DCR−グラフト化及び完全ヒト抗体、またはその断片は通常組換え法により大規模に産生される。各抗体またはその断片の重鎖及び軽鎖をコードするポリヌクレオチド分子は、本明細書に記載されている材料及び手順を用いて宿主細胞に導入され、発現される。好ましい実施態様では、抗体は哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)において産生される。前記産生の詳細については以下に記載する。
【0087】
特異的結合剤の融合パートナー
本発明の更なる態様で、Ang−2抗体のアミノ酸配列可変領域、例えば本明細書に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変領域または本明細書に記載されているアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含むポリペプチドをN末端またはC末端でヒトIgGのFc領域の1つ以上に融合させてもよい。Ang−2特異的抗体のFbのような治療用タンパク質と一緒に構築した場合、Fcドメインはより長い半減期を与え得るかまたはFc受容体結合、プロテインA結合、補体固定及び多分胎盤トランスファーのような機能を導入し得る(Caponら,Nature,337:525−531(1989))。
【0088】
1例では、抗体ヒンジのCH2及びCH3領域は、当業界で公知の方法を用いて特異的結合剤ポリペプチド、例えば(例えばファージディスプレーライブラリーから得られる)抗−Ang−2 FabまたはFv断片のNまたはC末端で融合され得る。生じた融合タンパク質はプロティンAまたはプロティンGアフィニティーカラムを用いて精製され得る。Fc領域に融合させたペプチド及びタンパク質は、非融合対応物よりも実質的に長いインビボ半減期を示すことが判明した。また、Fc領域に融合させると、融合ポリペプチドはダイマー化/マルチマー化し得る。Fc領域は天然に存在するFc領域であるかまたは治療品質、循環時間、低い凝集問題等のような特定の品質を改善するように改変され得る。当業界で公知の他の例には、ヒトまたは別の種であり得るかまたは合成物であり得るFc領域がホジキン病、未分化リンパ腫及びT細胞白血病を治療するためにCD30LのN末端に融合しているもの(米国特許第5,480,981号明細書)、Fc領域が敗血症性ショックを治療するためにTNF受容体に融合しているもの(Fisherら,N.Engl.J.Med.,334:1697−1702(1996))、及びFc領域がAIDSを治療するためにCd4受容体に融合しているもの(Caponら,Nature,337:525−31(1989))が含まれる。
【0089】
触媒抗体は融合分子の別のタイプであり、この中には1つ以上の細胞毒性部分、より一般的には1つ以上の生物学的活性部分が特異的結合剤に結合している抗体が含まれる。例えば、Raderら,Chem.Eur.J.,12:2091−2095(2000)を参照されたい。このタイプの細胞毒性剤は抗体媒介細胞毒性を改善し、この中には直接または間接的に細胞死を刺激するサイトカイン、放射性同位元素、(プロドラッグを含めた)化学療法剤、細菌毒素(例えば、シュードモナス外毒素、ジフテリア毒素等)、植物毒素(例えば、リシン、ゲロニン等)、化学コンジュゲート(例えば、メイタンシノイド毒素、calechaemicin等)、ラジオコンジュゲート、酵素コンジュゲート(RNaseコンジュゲート、抗体酵素/プロドラッグ治療(ADEPT))等のような部分が含まれる。1つの態様では、細胞毒性剤は、二重特異性または多重特異性抗体の1成分にこの抗体上の別の抗原認識部位の1つに前記物質を結合することにより“結合”され得る。別の態様として、タンパク質細胞毒をコードするポリヌクレオチドを結合剤をコードするポリヌクレオチドにライゲートした後前記毒を特異的結合剤との融合タンパク質として発現し得る。別の態様では、特異的結合剤を所望細胞毒を含むように共有的に修飾してもよい。
【0090】
前記融合タンパク質の例は、長い循環半減期を有する免疫原性ポリペプチドまたはタンパク質(例えば、免疫グロブリン定常領域)、マーカータンパク質、所望の特異的結合剤ポリペプチドの精製を容易とするタンパク質またはポリペプチド、及びマルチマータンパク質の形成を促進するポリペプチド配列(例えば、ダイマー形成/安定性に有用なロイシンジッパーモチーフ)である。
【0091】
このタイプの挿入変異体は、通常NまたはC末端で第2ポリペプチドの全部または一部に結合した天然分子の全部または実質的部分を有する。例えば、融合タンパク質は通常異種宿主でタンパク質が組換え発現し得るように別の種由来のリーダー配列を使用している。別の有用な融合タンパク質は、融合タンパク質の精製を容易とするために抗体エピトープのような免疫学的に活性なドメインの付加を含む。融合ジャンクションまたはその近くに開裂部位を挿入すると、精製後異質ポリペプチドの除去が容易となる。他の有用な融合には、酵素由来の活性部位のような機能的ドメイン、グリコシル化ドメイン、細胞標的シグナルまたは貫膜領域の連結が含まれる。
【0092】
本発明で使用され得る融合タンパク質発現システムは多数市販されている。特に有用なシステムには、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(CST)システム(Pharmacia)、マルトース結合タンパク質システム(マサチューセッツ州ビバリーに所在のNEB)、FLAGシステム(コネティカット州ニューヘーブンに所在のIBI)及び6xHisシステム(カリフォルニア州チャッツワースに所在のQiagen)が含まれるが、これらに限定されない。これらのシステムは、組換えポリペプチドの抗原能に殆ど影響を及ぼさない追加アミノ酸を少ししか持たない組換えポリペプチドを産生し得る。例えば、FLAGシステム及び6xHisシステムは、抗原性に乏しいことが知られており且つポリペプチドの天然コンフォーメーションへのフォールディングに悪影響を及ぼさない短い配列のみを付加する。有用であると考えられる別のN末端融合はタンパク質またはペプチドのN末端領域でのMet−Lysジペプチドの融合である。そのような融合により、タンパク質発現または活性が十分に上昇し得る。
【0093】
特に有用な融合構築物は、例えば本発明の抗−イディオタイプ抗体の産生において有用な特異的結合剤融合構築物の免疫原性を高めるために特異的結合剤ペプチドがハプテンに融合しているものであり得る。前記した免疫原性を高めるための融合構築物は当業者に公知であり、例えば特異的結合剤のヘルパー抗原(例えば、hsp70またはジフテリア毒素鎖由来のようなペプチド配列)またはサイトカイン(例えば、IL−2)との融合物が免疫応答を引き出すのに有用であろう。1つの実施態様では、抗原結合剤組成物の特定の部位または細胞へのターゲッティングを高める融合構築物が作成され得る。
【0094】
所望の特性を有する異種ポリペプチド、例えばターゲッティングのために血清半減期を延長させるIg定常領域、または抗体またはその断片を含む他の融合構築物も意図される。他の融合システムは、所望ポリペプチドから融合パートナーを切り出すことが望ましいポリペプチドハイブリッドを産生する。1つの実施態様では、融合パートナーをプロテアーゼに対する特異的認識配列を含むペプチド配列により組換え特異的結合剤ポリペプチドに連結させる。好適な配列の例は、Tobacco Etch Virusプロテアーゼ(メリーランド州ゲーザーズバーグに所在のLife Technologies)または因子Xa(マサチューセッツ州ビバリーに所在のNew England Biolabs)により認識されるものである。
【0095】
本発明はまた、Ang−2抗体の可変領域、例えば本明細書に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変領域または本明細書に記載されているアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域の全部または一部を腫瘍血管凝固剤として作用するヒト凝固誘導タンパク質の切断タイプからなる血管ターゲッティング剤、切断組織因子(tTF)と一緒に含む融合ポリペプチドを提供する。tTFの抗−Ang−2−抗体またはその断片に融合させると、抗−Ang−2の標的細胞へのデリバリーが容易となり得る。
【0096】
特異的結合剤の変異体
本発明の特異的結合剤の変異体には挿入、欠失及び/または置換変異体が含まれる。本発明の1態様では、1つ以上のアミノ酸残基が特異的結合剤アミノ酸配列に付加されている挿入変異体が提供される。挿入はタンパク質の片方もしくは両方の末端に位置してもよく、或いは特異的結合剤アミノ酸配列の内部領域内に位置していてもよい。片方もしくは両方の末端に追加残基を有する挿入変異体の例には、融合タンパク質及びアミノ酸タグまたは標識を含むタンパク質が含まれる。挿入変異体には、1つ以上のアミノ酸残基が特異的結合剤アミノ酸配列に付加されている特異的結合剤ポリペプチドまたはその断片が含まれる。
【0097】
本発明の変異体産物には成熟特異的結合剤産物も含まれる。前記した特異的結合剤産物では、リーダー配列またはシグナル配列が除去されているが、生じたタンパク質は野生型Ang−2ポリペプチドに比して追加のアミノ末端残基を有する。追加アミノ末端残基は他のタンパク質から誘導され得るか、または特定タンパク質から誘導されるものとして同定され得ない1つ以上の残基を含み得る。1位に追加メチオニン残基を有する特異的結合剤産物(Met−1−特異的結合剤)及び2位及び1位に追加のメチオニン及びリシン残基を有する特異的結合剤(Met−2−Lys−1−特異的結合剤)も意図される。追加のMet、Met−Lys、Lys残基(または、通常1つ以上の塩基性残基)を有する特異的結合剤の変異体は細菌宿主細胞における組換えタンパク質産生を高めるために特に有用である。
【0098】
本発明はまた、特定発現系を使用して生ずる追加アミノ酸残基を有する特異的結合剤変異体も包含する。例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合産物の一部として所望ポリペプチドを発現する市販されているベクターを使用すると、所望ポリペプチドからGST成分を切断後アミノ酸1位に追加グリシン残基を有する所望ポリペプチドが得られる。ポリヒスチジンタグをアミノ酸配列に通常配列のカルボキシ及び/またはアミノ末端に組み込んだものを含めた他のベクター系での発現により生ずる変異体も考えられる。
【0099】
挿入変異体には、特異的結合剤ポリペプチドのアミノ及び/またはカルボキシ末端が他のポリペプチドまたはその断片、または特定タンパク質配列の一部として通常認識されないアミノ酸配列に融合している上記した融合タンパク質も含まれる。
【0100】
別の態様として、本発明は特異的結合剤ポリペプチド中の1つ以上のアミノ酸残基が除去されている欠失変異体を提供する。欠失は特異的結合剤ポリペプチドの片方もしくは両方の末端で生ずるか、或いは特異的結合剤アミノ酸配列内の1つ以上の残基の除去により生じ得る。欠失変異体は必ず特異的結合剤ポリペプチドの全断片を含んでいる。
【0101】
抗体断片は抗原ポリペプチド上のエピトープに結合する抗体の部分を含む。前記断片の例には、例えば完全長抗体の酵素的または化学的開裂により生ずるFab及びF(ab’)断片が含まれる。他の結合断片には、抗体可変領域をコードする核酸配列を含む組換えプラスミドの発現のような組換えDNA法により生ずるものが含まれる。本発明はまた、Ang−2ポリペプチドに特異的に結合し得る能力を維持しているAng−2結合剤のポリペプチド断片を包含する。本発明では、本発明のペプチドまたはポリペプチドの連続アミノ酸を少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50個またはそれ以上含む断片が含まれる。好ましいポリペプチド断片は本発明の抗原結合剤に対してユニークまたは特異的な免疫学的特性を示す。所望の免疫学的性質を有する本発明の断片は当業界で公知であり、日常的に実施されている方法により作成され得る。
【0102】
別の態様として、本発明は本発明の特異的結合剤の置換変異体を提供する。置換変異体は通常オリジナルポリペプチドに“類似”しているかまたはオリジナルポリペプチドにある程度の“同一性”を有していると見做され、この中にはポリペプチドの1つ以上のアミノ酸残基が除去されて別の残基で置換されているポリペプチドが含まれる。1つの態様で置換は保存性であるが、本発明は非保存性な置換も包含する。
【0103】
関連ポリペプチドの同一性及び類似性は公知方法により容易に計算され得る。前記方法には、計算的分子生物学(Computational Molecular Biology),A.M.Lesk編,ニューヨークに所在のオックスフォード大学出版(1988年)発行;「バイオコンピューティング:インフォーマティックス及びゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatis and Genome Projects)」,D.W.Smith編,ニューヨークに所在のAcademic Press(1993年)発行;「配列データーのコンピューター分析(Computer Analysis of Sequence Data)」,第1部,A.M.Griffin及びH.G.Griffin編,ニュージャージに所在のHumana Press(1994年)出版;「分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular Biology)」,G.von Heinje,Academic Press(1987年)発行;「配列分析プライマー(Sequence Analysis Primer)」,M.Gribskov及びJ.Devereux編,ニューヨークに所在のM.Stockton Press(1991年)発行;及びGarilloら,SIAM J.Applied Math.,48:1073(1988)に記載されているものが含まれるが、これらに限定されない。
【0104】
2つのポリペプチドの関連性または同一%を測定するための好ましい方法は試験した配列間の最大整合を与えるように設計されている。同一性の測定方法は公開されているコンピュータープログラムに記載されている。2つの配列間の同一性を測定するための好ましいコンピュータープログラム法には、GAP(Devereuxら,Nucl.Acid Res.,12:387(1984);ウィスコンシン州マディソンに所在のウィスコンシン大学のGenetics Computer Group),BLASTP,BLASTN及びFASTA(Altschulら,J.Mol.Biol,215:403−410(1990))を含めたGCGプログラムパッケージが含まれるが、これらに限定されない。BLASTXプログラムはNational Center of Biotechnology Information(NCBI)及び他のソース(BLAST Manual,Altschulら,NCB/NLM/NIH Bethesda;上掲のAltschulら(1990)から入手可能である。公知のSmith Watermanアルゴリズムも同一性を決定するために使用され得る。
【0105】
2つのアミノ酸配列をアラインするための或るアラインメントスキームにより、2つの配列の短領域が整合され、この小さなアライン領域は2つの完全長配列間に有意な関係がないとしても非常に高い配列同一性を有し得る。従って、ある実施態様では、選択したアライン方法(GAPプログラム)により、比較する標的ポリペプチドの完全長の少なくとも10%、すなわち少なくとも400アミノ酸の配列を比較するときには少なくとも40個の連続アミノ酸、少なくとも300〜約400アミノ酸の配列を比較するときには30個の連続アミノ酸、200〜約300アミノ酸の配列を比較するときには少なくとも20個の連続アミノ酸、及び約100〜200アミノ酸の配列を比較するときには少なくとも10個の連続アミノ酸の範囲のアラインメントが生ずる。
【0106】
例えば、コンピューターアルゴリズムGAP(ウィスコンシン州マディソンに所在のウィスコンシン大学のGenetics Computer Group)を用いて、配列の同一%を調べようとする2つのポリペプチドを各アミノ酸の最適整合のためにアラインさせる(アルゴリズムにより測定した“マッチドスパン”)。ある実施態様では、前記アルゴリズムと組み合わせて、ギャップオープニングペナルテイー(通常3×平均ダイアゴナルとして計算する;“平均ダイアゴナル”は使用した比較マトリックスのダイアゴナルの平均である;“ダイアゴナル”は特定比較マトリックスによる各完全アミノ酸マッチに帰属されるスコアまたは数である)、ギャップ延長ペナルティー(通常ギャップオープニングペナルテイーの1/10倍)及び比較マトリックス(例えば、PAM 250またはBLOSUM 62)が使用される。ある実施態様では、標準比較マトリックス(PAM 250比較マトリックスの場合にはDayhoffら,Atlas of Protein Sequence and Structure,5(3)(1978);BLOSUM 62コンピューターマトリックスの場合にはHenikoffら,Proc.NatlAcad.Sci.USA,89:10915−10919(1992))もアルゴリズムにより使用される。
【0107】
ある実施態様では、ポリペプチド配列比較のためのパラメーターには、
アルゴリズム:Needlemanら,J.Mol.Biol.,48:443−453(1970)、
比較マトリックス:上掲のHenikoffら(1992)のBLOSUM 62、
ギャップペナルティー:12、
ギャップ長ペナルティー:4、
類似性の閾値:0
が含まれる。
【0108】
GAPプログラムは上記パラメーターで使用され得る。ある実施態様では、上記パラメーターはGAPアルゴリズムを用いるポリペプチド比較(エンドギャップに対してはペナルティーなしで)のためのデフォルトパラメーターである。
【0109】
ある実施態様では、ポリペプチド分子配列比較のためのパラメーターには、
アルゴリズム:上掲のNeedlemanら(1970)、
比較マトリックス:マッチ=+10,ミスマッチ=0、
ギャップペナルティー:50、
ギャップ長ペナルティー:3
が含まれる。
【0110】
GAPプログラムは上記パラメーターでも使用され得る。上記パラメーターはポリヌクレオチド分子比較のためのデフォルトパラメーターである。
【0111】
プログラムマニュアル,ウィスコンシンパッケージ、バージョン9(1997年9月)に記載されているものを含めた他の例示アルゴリズム、ギャップオープニングペナルティー、ギャップ延長ペナルティー、比較マトリックス、類似性の閾値等が使用され得る。なされる特定選択は当業者に自明であり、なされる特定比較、例えばDNA対DNA、タンパク質対タンパク質、タンパク質対DNA、更には比較が所与の対の配列間(GAPまたはBestFitの場合に通常好ましい)または1つの配列と配列の大きなデーターベース間(FASTAまたはBLASTAの場合に好ましい)で比較するかどうかに依存する。
【0112】
本明細書中、20個の慣用アミノ酸及びその略号は一般的使用法に従う。援用により本明細書に含まれるとする「免疫学―合成(Immunology−A Synthesis)」,第2版,E.S.Golub及びD.R.Gren編,マサチューセッツ州サンダーランドに所在のSinaur Associates(1991年)発行を参照されたい。
【0113】
アミノ酸は(LでもDでもないGlyを除いて)LまたはD立体化学を有し得、本発明のポリペプチド及び組成物は立体化学の組合せからなり得る。しかしながら、L立体化学が好ましい。本発明はまた、アミノ酸のアミノ末端−カルボキシ末端配列が逆転している逆分子を提供する。例えば、正常な配列X−X−Xを有する分子の逆はX−X−Xである。本発明はまた、上記したようにアミノ酸のアミノ末端−カルボキシ末端が逆で、通常“L”エナンチオマーである残基が“D”立体異性体形態に変化しているレトロ逆分子を提供する。
【0114】
20個の慣用アミノ酸、非天然アミノ酸(例えば、α−,α−ジ置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸、乳酸及び他の非慣用アミノ酸)の立体異性体(例えば、D−アミノ酸)も本発明のポリペプチドに対する好適な成分であり得る。非慣用アミノ酸の例には、アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、アミノ酪酸、ピペリジン酸、アミノカプロン酸、アミノヘプタン酸、アミノイソ酪酸、アミノピメリン酸、ジアミノ酪酸、デスモシン、ジアミノピメリン酸、ジアミノプロピオン酸、N−エチルグリシン、N−エチルアスパラギン、ヒドロキシリシン、アロ−ヒドロキシリシン、ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、N−メチルグリシン、サルコシン、N−メチルイソロイシン、N−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシン、オルニチン、4−ヒドロキシプロリン、γ−カルボキシグルタメート、ε−N,N,N−トリメチルリシン、ε−N−アセチルリシン、O−ホスホセリン、N−アセチルセリン、N−ホルミルメチオニン、3−メチルヒスチジン、5−ヒドロキシリシン、σ−N−メチルアルギニン及び他の類似アミノ酸及びアミノ酸(例えば、4−ヒドロキシプロリン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
また、特記しない限り、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左手末端は5’末端である。二本鎖ポリヌクレオチドの左手方向は5’方向と称される。新生RNA転写物の5’から3’への付加方向は転写方向と称される。RNAと同じ配列を有するDNA鎖上のRNA転写物の5’末端に対して5’にある配列領域は“上流配列”と称され、RNAと同じ配列を有するDNA鎖上のRNA転写物の3’末端に対して3’にある配列領域は“下流配列”と称される。
【0116】
保存的アミノ酸置換は、生物学的系での合成よりもむしろ通常化学的ペプチド合成により挿入される非天然アミノ酸残基を含み得る。これらにはペプチド擬態及びアミノ酸部分の他の逆または反転形態が含まれる。
【0117】
天然残基は共通の側鎖特性に基づいて分類され得る:
1)疎水性:Met,Ala,Val,Leu,Ile、
2)中性親水性:Cys,Ser,Thr,Asn,Gln、
3)酸性:Asp,Glu、
4)塩基性:His,Lys,Arg、
5)鎖方位に影響を与える残基:Gly,Pro、及び
6)芳香族:Trp,Tyr,Phe。
【0118】
例えば、非保存的置換は上記クラスの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを含み得る。前記の置換される残基は非ヒト抗体に相同のヒト抗体の領域または分子の非相同領域に導入され得る。
【0119】
上記変化を加える場合、ある実施態様によればアミノ酸のヒドロパシー指数が考慮され得る。各アミノ酸に対してその疎水性及び電荷特性に基づいて次のようにヒドロパシー指数が割り当てられている。イソロイシン(+4.5)、バリン(+4.2)、ロイシン(+4.2)、フェニルアラニン(+2.8)、システイン/シスチン(+2.5)、メチオニン(+1.9)、アラニン(+1.8)、グリシン(−0.4)、スレオニン(−0.7)、セリン(−0.8)、トリプトファン(−0.9)、チロシン(−1.3)、プロリン(−1.6)、ヒスチジン(−3.2)、グルタメート(−3.5)、グルタミン(−3.5)、アスパルテート(−3.5)、アスパラギン(−3.5)、リシン(−3.9)及びアルギニン(−4.5)。
【0120】
タンパク質に対して相互作用の生物学的機能を付与する際のアミノ酸ヒドロパシー指数の重要性は当業界で理解されている(Kyteら,J.Mol.Biol.,157:105−131(1982))。特定のアミノ酸がなお類似の生物学的活性を保持しながら類似のヒドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸で置換され得ることは公知である。ヒドロパシー指数に基づいて変化を加える場合、ある実施態様ではヒドロパシー指数が±2以内のアミノ酸の置換が考えられる。ある実施態様では±1以内のアミノ酸の置換が考えられ、ある実施態様では±0.5以内のアミノ酸の置換が考えられる。
【0121】
類似アミノ酸の置換は親水性に基づいて、特に生成される生物学的機能性タンパク質またはペプチドを本発明のように免疫学的実施態様に使用したい場合には効果的になされ得ることは当業界で理解されている。ある実施態様では、隣接するアミノ酸の親水性により決定されるタンパク質の最高局部平均親水性(local average hydrophilicity)はその免疫原性及び抗原性、すなわちタンパク質の生物学的特性に相関している。
【0122】
各アミノ酸残基に対して以下のように親水性値が割り当てられている。アルギニン(+3.0)、リシン(+3.0)、アスパルテート(+3.0±1)、グルタメート(+3.0±1)、セリン(+0.3)、アスパラギン(+0.2)、グルタミン(+0.2)、グリシン(0)、スレオニン(−0.4)、プロリン(−0.5±1)、アラニン(−0.5)、ヒスチジン(−0.5)、システイン(−1.0)、メチオニン(−1.3)、バリン(−1.5)、ロイシン(−1.8)、イソロイシン(−1.8)、チロシン(−2.3)、フェニルアラニン(−2.5)及びトリプトファン(−3.4)。類似の親水性値に基づいて変化を加える場合、ある実施態様では親水性値が±2以内のアミノ酸の置換が考えられる。ある実施態様では±1以内のアミノ酸の置換が考えられ、ある実施態様では±0.5以内のアミノ酸の置換が考えられる。親水性に基づいて一次アミノ酸配列からエピトープを同定することもできる。これらの領域は“エピトープコア領域”とも呼ばれる。
【0123】
アミノ酸置換の例を表1に示す。
【0124】
【表1】

【0125】
当業者は公知の技術を用いて本明細書に記載されているポリペプチドの適当な変異体を決定することができる。ある実施態様では、当業者は活性にとって重要でないと考えられている領域をターゲッティングすることにより活性を破壊することなく変化を加えられ得る分子の適当な領域を同定することができる。ある実施態様では、当業者は類似ポリペプチドの中で保存される分子の残基及び部分を同定することができる。ある実施態様では、生物学的活性または構造にとって重要であり得る領域にも生物学的活性を破壊したりポリペプチド構造に悪影響を及ぼすことなく保存的アミノ酸置換を加えることができる。
【0126】
更に、当業者は活性または構造にとって重要である残基を類似ポリペプチド中で同定する構造−機能研究を検討することができる。比較のために、類似のタンパク質において活性または構造にとって重要であるアミノ酸残基に相当するタンパク質中のアミノ酸残基の重要性を予測することができる。当業者はこのように予測された重要なアミノ酸残基に対して化学的に類似のアミノ酸置換を選択し得る。
【0127】
当業者は、類似ポリペプチドの中で3次元構造及び前記構造に対するアミノ酸配列を分析することもできる。前記情報にてらして、当業者は3次元構造に対する抗体のアミノ酸残基のアラインメントを予測し得る。ある実施態様では、当業者はタンパク質の表面上にあると予測されるアミノ酸残基は他の分子との重要な相互作用に関与し得るので、前記残基に対してラジカル変化を加えないように選択することができる。更に、当業者はそれぞれの所望アミノ酸残基で1つのアミノ酸置換を含む試験変異体を作成することができる。その後、前記変異体は当業者に公知の活性アッセイを用いてスクリーニングされ得る。前記変異体は適当な変異体に関する情報を集めるために使用することができる。例えば、特定アミノ酸残基に変化を加えて破壊された、望ましくなく低下した、または不適当な活性が生ずることを知見したならば、そのような変化を有する変異体は避けられ得る。換言すると、ルーチンな実験から集めた情報に基づいて、当業者は単独でまたは他の変異と併せて更なる置換を避けなければならないアミノ酸を容易に決定することができる。
【0128】
二次構造を予測するために多数の科学文献が発表されている。J.Moult,Curr.Op.in Biotech.,7(4):422−427(1996);Chouら,Biochemistry,13(2):222−245(1974);Chouら,Biochemistry,113(2):211−222(1974);Chouら,Adv.Enzymol.Relat.Areas Mol.Biol.,47:45−148(1978);Chouら,Ann.Rev.Biochem.,47:251−276;及びChouら,Biophys.J.,26:367−384(1979)を参照されたい。また、二次構造を予測するのを助けるためにコンピュータープログラムが現在利用されている。二次構造を予測する1つの方法はホモロジーモデリングに基づいている。例えば、30%以上の配列同一性または40%以上の類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質はしばしば類似の構造トポロジーを有する。ポリペプチドまたはタンパク質の構造内の可能性ある襞の数を含めた二次構造の予測性が向上したタンパク質構造データーベース(PDB)が最近開発された。Holmら,Nucl.Acid.Res.,27(1):244−247(1999)を参照されたい。所与のポリペプチドまたはタンパク質における襞の数は限られており、決定的な数の構造が解明されたら構造予測は劇的により正確になるであろうと示唆されている(Brennerら,Curr.Op.Struct.Biol.,7(3):369−376(1997))。
【0129】
二次構造を予測する別の方法には、“縫合(threading)”(D.Jones,Curr.Opin.Struct.Biol.,7(3):377−87(1997);Sippら,Structure,4(1):15−19(1996))、“プロフィール分析”(Bowieら,Science,253:164−170(1991);Gribskovら,Meth.Enzym.,183:146−159(1990);Gribskovら,Proc.Nat.Acad.Sci.,84(13):4353−4358(1987))及び“進化的連結”(上掲のHolm(1999);上掲のBrenner(1997))が含まれる。
【0130】
ある実施態様では、抗体変異体はグリコシル化部位の数及び/または種類が親ポリペプチドのアミノ酸配列と比して異なっているグリコシル化変異体を含む。ある実施態様では、タンパク質変異体は天然タンパク質に比してより多いまたはより少ないN−結合グリコシル化部位を含む。N−結合グリコシル化部位は配列Asn−X−SerまたはAsn−X−Thr(ここで、Xで表されるアミノ酸残基はプロリン以外のアミノ酸残基であり得る)により特徴づけられる。この配列が生ずるようにアミノ酸残基を置換すると、N−結合炭水化物鎖を付加するための新しい部位が与えられる。或いは、この配列を除去する置換では、既存のN−結合炭水化物鎖が除去される。1つ以上のN−結合グリコシル化部位(典型的には、天然に存在するN−結合グリコシル化部位)が除去され、1つ以上の新しいN−結合部位が作成されているN−結合炭水化物鎖の再構成も考えられる。別の好ましい抗体変異体には、親アミノ酸配列に比して1つ以上のシステイン残基が別のアミノ酸(例えば、セリン)から欠失しているかまたは別のアミノ酸(例えば、セリン)で置換されているシステイン変異体が含まれる。システイン変異体は、不溶性封入体を単離した後のように抗体を生物学的に活性なコンフォメーションにリフォールディグしなければならないときに有用であり得る。システイン変異体は通常天然タンパク質よりも少ないシステイン残基を有しており、通常対でないシステインから生ずる相互作用を最小限とするために偶数を有する。
【0131】
ある実施態様では、アミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させるもの、(2)酸化に対する感受性を低下させるもの、(3)タンパク質複合体を形成するために結合アフィニティーを変化させるもの、(4)結合アフィニティーを変化させるもの及び/または(5)ポリペプチドに対して他の機能性を付与または修飾するものである。ある実施態様によれば、天然配列に(ある実施態様では、分子間コンタクトを形成するドメイン外のポリペプチドの部分に)1つまたは複数のアミノ酸置換(ある実施態様では、保存的アミノ酸置換)を加えることができる。ある実施態様では、保存的アミノ酸置換により通常親配列の構造特徴が実質的に変化しないことがある(例えば、置換アミノ酸は親配列で見られるヘリックスを分解したり、親配列を特徴づける二次構造の他のタイプを壊す傾向を有してはならない)。当業界で認識されているポリペプチドの二次及び三次構造の例は、「タンパク質、構造及び分子原理(Proteins,Structures and Molecular Principles)」,Creighton編,ニューヨークに所在のW.H.Freeman and Company(1984年)発行;「タンパク質構造入門(Introduction to Protein Structure)」,C.Branden及びJ.Tooze編,ニューヨーク州ニューヨークに所在のGarland Publishing(1991年)発行;Thorntonら,Nature,354:105(1991)に記載されている。
【0132】
ポリペプチドまたはペプチド置換変異体である本発明の特異的結合剤分子は、オリジナルのアミノ酸配列の約10〜12%まで置換されていてもよい。抗体変異体の場合、重鎖は50、49、48、47、46、45、44、43、42、41、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の置換アミノ酸を有し得、軽鎖は25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1個の置換アミノ酸を有し得る。
【0133】
特異的結合剤の誘導体
本発明は特異的結合剤ポリペプチドの誘導体も提供する。この誘導体にはアミノ酸残基の挿入、欠失または置換以外の修飾を有する特異的結合剤ポリポプチドが含まれる。好ましくは、修飾は共有結合性であり、例えばポリマー、脂質、他の有機及び無機部分との化学的結合を含む。本発明の誘導体は特異的結合剤ポリペプチドの循環半減期を延長させるように作成され得、またはポリペプチドの所望細胞、組織または有機物へのターゲッティング能力を改善するように設計され得る。
【0134】
本発明には更に、米国特許第4,640,835号明細書、同第4,496,689号明細書、同第4,301,144号明細書、同第4,670,417号明細書、同第4,791,192号明細書及び同第4,179,337号明細書に記載されているポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールのような1つ以上の水溶性ポリマー結合を含むように共有的に修飾された誘導体結合剤が含まれる。当業界で公知の他の有用なポリマーにはモノメトキシ−ポリエチレングリコール、デキストラン、セルロースまたは他の炭水化物ベースのポリマー、ポリ−(N−ビニルピロリドン)−ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)及びポリビニルアルコール、並びにこれらのポリマーの混合物が含まれる。特に好ましいものはポリエチレングリコール(PEG)サブユニットで共有的に修飾した特異的結合剤生成物である。水溶性ポリマーは特定位置、例えば特異的結合剤生成物のアミノ末端で結合されたり、ポリペプチドの1つ以上の側鎖にランダムに結合され得る。特異的結合剤及びヒト化抗体の治療能力を改善するためにPEGを使用することは2000年10月17日にGonzalesに付与された米国特許第6,133,426号明細書に記載されている。
【0135】
抗体突然変異誘発のための標的部位
Ang−2特異的抗体の固有特性、例えば前記抗体のその標的に対するアフィニティーを操作するために特定の戦略を使用することができる。前記戦略には、前記抗体をコードするポリヌクレオチド分子を部位特異的またはランダム突然変異誘発して抗体変異体を作成した後、所望の変化、例えば向上または低下したアフィニティーを示す抗体変異体を回収するように設計されたスクリーニングステップの使用が含まれる。
【0136】
突然変異戦略において最も一般的に標的とされるアミノ酸残基はCDR中のものである。上記したように、前記領域は、実際Ang−2及び残基の空間配置に影響を及ぼす他のアミノ酸と実際相互作用する残基を含む。しかしながら、CDR領域外の可変ドメインの骨格領域中のアミノ酸が抗体の抗原結合性に実質的に寄与することは判明しており、そのアミノ酸は前記特性を操作するために標的とされ得る。Hudson,Curr.Opin.Biotech.,9:395−402(1999)及びその引用文献を参照されたい。
【0137】
抗体変異体のより小さくより効率的にスクリーニングされるライブラリーは、体細胞アフィニティー成熟プロセス中に“過剰変異”しがちな領域に対応するCDR中の部位にランダムまたは部位特異的突然変異誘発を限定することにより構築され得る。Chowdhury及びPastan,Nature Biotech.,17:568−572(1999)及びその引用文献を参照されたい。このようにして過剰突然変異を規定することが公知のDNA因子のタイプには、直列反復、逆向き反復、あるコンセンサス配列、二次構造及びパリンドロームが含まれる。コンセンサスDNA配列は4塩基配列プリン−G−ピリミジン−A/T(すなわち、AまたはG−G−CまたはT−AまたはT)及びセリンコドンAGY(ここで、YはCまたはTであり得る)を含む。
【0138】
従って、本発明の実施態様は、抗体のその標的に対するアフィニティーを向上させるための突然変異戦略を含む。前記戦略には、全可変重鎖及び軽鎖の突然変異誘発、CDR領域のみの突然変異誘発、CDR内のコンセンサス過剰変異部位の突然変異誘発、骨格領域の突然変異誘発、または前記方法の組合せが含まれる(この関係で“突然変異”はランダムまたは部位特異的てあり得る)。CDR領域の明確な描写及び抗体の結合部位を含む残基の同定は、問題の抗体及び抗体−リガンド複合体の構造を当業界で公知の技術、例えばX線結晶学を用いて解明することにより実施され得る。抗体結晶構造の分析及び特性付けに基づく各種方法は当業者に公知であり、CDR領域を明確ではないが概算するために使用され得る。一般的に使用される方法の例には、Kabat、Chothia、AbM及びコンタクト定義が含まれる。
【0139】
Kabat定義は配列変動性に基づき、CDR領域を予測するために最も一般的に使用されている定義である(Johnson及びWu,Nucleic Acids Res.,28:214−8(2000))。Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づく(Chothiaら,J.Mol.Biol.,196:901−17(1986);Chothiaら,Nature,342:877−83(1989))。AbM定義はKabatとChothia定義の折衷である。AbMはオックスフォード分子グループが作成した抗体構造モデリングに対するプログラムの統合組である(Martinら,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),86:9268−9272(1989);Reesら,ABM(商標),抗体の可変領域をモデリングするためのコンピュータープログラム,英国オックスフォードに所在のOxford Molecular,Ltd.)。AbM組は公知のデーターベース及び最初の方法を併用して一次配列決定から抗体の3次構造のモデルを作る。コンタクト定義といして公知の追加の定義は最近導入された(MacCallumら,J.Mol.Biol.,5:732−45(1996))。この定義は利用可能な複雑な結晶構造の分析に基づいている。
【0140】
慣例により、重鎖中のCDR領域は通常H1、H2及びH3と称されており、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって順次ナンバリングされている。軽鎖中のCDR領域は通常L1、L2及びL3と称されており、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって順次ナンバリングされている。
【0141】
CDR−H1は約10〜12残基の長さを有し、通常Chothia及びAbM定義によるとCysの後4残基またはKabat定義によると通常5残基後から始まる。典型的には、H1の後にはTrp、通常Trp−Val、Trp−IleまたはTrp−Alaがある。H1の長さはAbM定義によると約10〜12残基であり、Chothia残基は最後の4残基を排除している。
【0142】
CDR−H2は典型的にはKabat及びAbM定義によるとH1の末端の後15残基から始まる。H2の前の残基は通常Leu−Glu−Trp−Ile−Glyであるが、多数の変化が存在する。典型的にはH2の後にアミノ酸配列Lys/Arg−Leu/Ile/Val/Phe/Thr/Ala−Thr/Ser/Ile/Alaがある。Kabat定義によると、H2の長さは約16〜19残基であり、AbM定義はその長さを通常9〜12残基であると予測している。
【0143】
CDR−H3は典型的にはH2の末端の後33残基から始まり、アミノ酸配列(通常、Cys−Ala−Arg)の前である。典型的には、H3の後にアミノ酸配列−Glyがある。H3の長さは3〜25残基であり得る。
【0144】
CDR−L1は典型的には約残基24から始まり、通常Cysの後である。CDR−L1の後の残基は常にTrpであり、通常配列Trp−Tyr−Gln、Trp−Leu−Gln、Trp−Phe−GlnまたはTrp−Tyr−Leuが始まる。CDR−L1の長さは約10〜17残基である。本発明の抗体に対する懲罰的CDR−L1はこのパターンに従い、正確にはCys残基の後に15アミノ酸、その後にTrp−Tyr−Glnが続く。
【0145】
CDR−L2はL1の末端の後約16残基から始まる。通常、残基Ile−Tyr、Val−Tyr、Ile−LysまたはIle−Pheに続く。CDR−L2の長さは約7残基である。
【0146】
CDR−L3は典型的にはL2の末端の後33残基から始まり、通常Cysに続く。典型的には、L3の後にアミノ酸配列Phe−Gly−XXX−Glyがある。L3の長さは約7〜11残基である。
【0147】
いろいろな抗体の修飾方法は当業界で公知である。例えば、1996年6月25日にQueenらに付与された米国特許第5,530,101号明細書は、ヒト化免疫グロブリン重鎖可変領域骨格の配列がドナー免疫グロブリン重鎖可変領域骨格の配列と65〜95%同一であるヒト化抗体の作成方法が記載されている。各ヒト化免疫グロブリン鎖は通常CDRに加えて、例えばCDRと相互作用して結合アフィニティーに影響を及ぼし得るドナー免疫グロブリン骨格由来のアミノ酸、例えばドナー免疫グロブリン中のCDRに直接隣接している1個以上のアミノ酸または分子モデリングで予測して約3Å範囲内の1個以上のアミノ酸を含む。重鎖及び軽鎖はそれぞれ各種の位置基準の1つまたは全てを用いて設計され得る。完全な抗体に組み合わせるとき、本発明のヒト化免疫グロブリンはヒトにおいて実質的に非免疫原性であり、抗原(例えば、エピトープを含むタンパク質または他の化合物)に対してドナー免疫グロブリンと実質的に同じアフィニテイーを維持している。1997年12月2日にQueenらに付与された米国特許第5,693,761号明細書(改善されたヒト化免疫グロブリンをコードするポリヌクレオチド)、1997年12月2日にQueenらに付与された米国特許第5,693,762号明細書(ヒト化免疫グロブリン)及び1996年12月17日にQueenらに付与された米国特許第5,585,089号明細書(ヒト化免疫グロブリン)に記載されている関連方法も参照されたい。
【0148】
1例として、1996年10月15日にHoogenboomらに付与された米国特許第5,565,332号明細書(キメラ抗体の産生−コンビナトリアルアプローチ)は、親抗体として類似の結合特異性を有しているが高いヒト特性を有している抗体及び抗体断片の作成方法を記載している。ヒト化抗体は例えばファージディスプレー方法を用いる鎖シャフルにより得られ、当該抗原に対して特異的な非ヒト抗体の重鎖または軽鎖可変ドメインを含むポリペプチドがヒト相補性(軽または重)鎖可変ドメインのレパートリーと組み合わされる。当該抗原に対して特異的なハイブリットペアリングが同定され、選択したペアリングからのヒト鎖はヒト相補性(軽または重)鎖可変ドメインのレパートリーと組み合わされる。別の実施態様では、非ヒト抗体由来のCDRの成分はヒト抗体由来のCDRの成分部分のレパートリーと組み合わされる。得られた抗体ポリペプチドダイマーのライブラリーから、ハイブリッドが選択され、第2のヒト化シャッフリングステップで使用される。或いは、ハイブリッドが治療価値のある十分なヒト特性を既に有しているならばこの第2ステップは省略される。ヒト特性を向上させるための修飾方法も公知である。Winter,FEBS Letts.,430:92−92(1998)も参照されたい。
【0149】
別の例として、2000年4月25日にCarterらに付与された米国特許第6,054,297号明細書は、CDRアミノ酸配列を対応のヒトCDRアミノ酸配列で置換及び/またはFRアミノ酸配列を対応のヒトFRアミノ酸配列で置換することによりヒト化抗体の作成方法を記載している。
【0150】
別の例として、1998年6月16日にStudnickaらに付与された米国特許第5,766,886号明細書(修飾抗体可変ドメイン)は、異種種に関する免疫原性を低下させながら抗原結合ドメインの先天的アフィニティーを損なうことなく修飾され得る抗体可変ドメインのアミノ酸残基を同定する方法及び異種種に投与するために使用される前記修飾抗体可変ドメインの作成方法を記載している。1999年2月9日にStudnickaに付与された米国特許第5,869,619号明細書も参照されたい。
【0151】
上記したように、当業界で公知の方法を用いる抗体の修飾は通常抗原に対する結合アフィニテイーを向上させ及び/またはレシピエントにおける抗体の免疫原性を低下させるように設計される。1つのアプローチでは、抗体のその同族抗原に対するアフィニティーを向上させるべくグリコシル化部位を除去するようにヒト化抗体を修飾し得る(Coら,Mol.Immunol.,30:1361−1367(1993))。“再成形”、“過剰キメラ化”及び“化粧張り(veneering)/再表面化”のような方法により高い治療可能性を有するヒト化抗体が産生された(Vaswamiら,Annals of Allergy,Asthma & Immunol,81:105(1998);Roguskaら,Proc.Engineer.,9:895−904(1996))。抗体の再成形方法を記載している2000年6月6日にHardmanらに付与された米国特許第6,072,035号明細書も参照されたい。上記方法は外来残基の数を減らすことにより抗体免疫原性を低下させるが、抗体の反復投与後の抗−イディオタイプ及び抗−アロタイプ応答を防がない。免疫原性を減らす上記方法の代替はGillilandら,J.Immunol.,62(6):3663−71(1999)に記載されている。
【0152】
多くの場合、抗体をヒト化すると抗原結合能が失われる。従って、抗体の結合アフィニテイーを回復させる試みでは元の(多くの場合げっ歯)抗体中に存在するアミノ酸残基の1つ以上を含むようにヒト化抗体を“復帰突然変異”させることが好ましい。例えば、Saldanhaら,Mol.Immunol.,36:709−719(1999)を参照されたい。
【0153】
非ペプチド特異的結合剤アナログ/タンパク質擬態
更に、安定化構造またはより少ない生分解性を与えるペプチドの非ペプチド特異的結合剤アナログも包含される。特異的結合剤ペプチド擬態アナログは特定の抑制性ペプチドをベースとし、1つ以上の残基を非ペプチド部分で置換することにより作成され得る。好ましくは、非ペプチド部分により、ペプチドはその本来の構造を保持することができ、またはAng−2を認識し且つAng−2に結合する能力を維持する好ましい(例えば、生活性)構造を安定化することができる。1つの態様では、生じたアナログ/擬態はAng−2に対して高い結合アフィニティーを示す。特異的結合剤ペプチドから非ペプチド擬態アナログの作成方法の1例はNachmanら,Regul.Pept.,57:359−370(1995)に記載されている。所望により、本発明の特異的結合剤ペプチドは例えばグリコシル化、アミド化、カルボキシル化またはリン酸化により、または本発明のペプチドの酸付加塩、アミド、エステル(特にC末端エステル)及びN−アシル誘導体を生成することにより修飾され得る。また、特異的結合剤ペプチドはペプチド誘導体を生成するように他の物質部分との共有結合もしくは非共有結合複合体を形成することによっても修飾され得る。共有結合複合体は、特異的結合剤ペプチドを含むアミノ酸の側鎖上、またはN−またはC末端の官能基に化学物質部分を連結させることにより作成され得る。
【0154】
特に、特異的結合剤ペプチドをレポーター基にコンジュゲートすることが意図される。前記リポーター基には放射標識、蛍光標識、酵素(例えば、比色または蛍光反応を触媒するもの)、基質、固体マトリックスまたは担体(例えば、ビオチンまたはアビジン)が含まれるが、これらに限定されない。従って、本発明は、更に放射標識、蛍光標識、酵素、基質、固体マトリックス及び担体からなる群から選択されるレポーター基を含むことが好ましい抗体分子からなる分子を提供する。前記標識は当業者に公知である。例えばビオチン標識が特に考えられる。前記標識の使用は当業者に公知であり、例えば米国特許第3,817,837号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,996,845号明細書及び同第4,277,437号明細書に記載されている。有用な他の標識には、放射性標識、蛍光標識及び化学ルミネッセンス標識が含まれるが、これらに限定されない。前記標識の使用に関する米国特許には、例えば米国特許第3,817,837号明細書、同第3,850,752号明細書、同第3,939,350号明細書及び同第3,996,345号明細書が含まれる。本発明のペプチドは1又は2以上の上記標識を含んでいてもよい。
【0155】
特異的結合剤の作成方法
タンパク質である本発明の特異的結合剤は、慣用技術に従って溶液中または固体支持体上での化学合成により作成され得る。現在のところ、固相合成は約85〜100アミノ酸長に限定されている。しかしながら、化学合成法は完全長ポリペプチドを作成するように一連の小ペプチドを化学的にライゲートするためにしばしば使用され得る。各種の自動合成装置が市販されており、公知のプロトコルに従って使用され得る。例えば、いずれも援用により本明細書に含まれるとするStewart及びYoung,「固相ペプチド合成(Solid Phase Peptide Synthesis)」,第2版,Pierce Chemical Co.(1984)年発行;Tamら,J.Am.Chem.Soc.,105:6442(1983);Merrifield,Science,232:341−347(1986);Barany及びMerrifield,「ペプチド(The Peptides)」,p.1−284.Gross及びMeienhofer編,ニューヨークに所在のAcademic Press発行;Baranyら,Int.J.Peptide Proteins Res.,30:705−709(1987);及び米国特許第5,424,398号明細書を参照されたい。
【0156】
固相ペプチド合成法はポリマー1gあたり0.1〜1.0mMのアミンを含むコポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)を使用する。ペプチド合成のための上記方法では、α−アミノ基の保護のためにブチルオキシカルボニル(t−BOC)または9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)を用いる。いずれの方法も、ペプチドのC末端から始める各ステップで1つのアミノ酸を付加する段階的合成を含む(Coliganら,「免疫学の現在のプロトコル(Current Protocols in Immunology)」,単位9,Wiley Interscience(1991年)発行参照)。化学合成が完了したら、t−BOCまたはFMOCアミノ保護基を除去するために合成ペプチドを脱保護し、還元温度で酸と処理することにより(例えば、液体HF−10% アニソールを用いて0℃で約0.25〜約1時間)ポリマーから開裂させ得る。試薬を蒸発させたら、特異的結合剤ペプチドを1% 酢酸溶液を用いてポリマーから抽出し、その後凍結乾燥して粗生成物を得る。この粗生成物は通常溶媒として5% 酢酸を用いてセファデックスG−15を介してゲル濾過するような方法を用いて精製され得る。カラムの適当な画分を凍結乾燥すると、均質な特異的結合剤ペプチドまたはペプチド誘導体が得られ、これを次にアミノ酸分析、薄層クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、紫外吸収分光法、分子旋光度、溶解度のような標準技術を用いて特性付けられ、固相エドマン分解により定量化され得る。
【0157】
抗−Ang−2抗体、その誘導体、変異体及び断片、並びに他のタンパク質をベースとするAng−2結合剤を化学合成すると、非天然アミノ酸を特異的結合剤に配合することができる。
【0158】
組換えDNA技術は、本発明の完全長抗体及び他の大きなタンパク質様特異的結合剤またはその断片を作成するための便利な方法である。抗体または断片をコードするcDNA分子を発現ベクターに挿入することができ、その発現ベクターを抗体またはその断片を作成するために宿主細胞に挿入することができる。コドン縮重を与えるために、または各種宿主細胞におけるコドン優先使用を許すために(mRNAから翻訳された)“オリジナルの”cDNAから変化させるように前記抗体をコードするcDNAを修飾し得ると理解されたい。
【0159】
通常、抗体をコードするDNA分子は本明細書の実施例に記載されている手順を用いて得ることができる。オリジナルの抗体分子に関連するFab分子またはCDRを得ることが望ましい場合には、適当なライブラリー(ファージディスプレーライブラリー、リンパ球ライブラリー等)を関連Fab/CDRを同定、クローン化するために標準技術を用いてスクリーニングすることができる。前記スクリーニングに使用されるプローブは、オリジナル抗体のFab部分をコードする完全長または切断Fabプローブ、オリジナル抗体のFab部分由来の1つ以上のCDRに対するプローブ、または他の適当なプローブである。DNA断片をプローブとして使用するときの典型的なハイブリダイゼーション条件はAusubelら,「免疫学の現在のプロトコル(Current Protocols in Immunology)」,Current Protocols Press(1994年)発行に記載されているような条件である。ハイブリダイゼーション後、プローブしたブロットをプローブサイズ、プローブのクローンに対する予想されるホモロジー、スクリーニングされるライブラリーの種類及びスクリーニングされるクローンの数のような要因に依存して適当なストリンジエンシーで洗浄され得る。高ストリンジェントなスクリーニングの例は50〜65℃での0.1×SSC及び0.1% SDSである。
【0160】
本発明の特異的結合剤ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子を含み、発現させるために各種の発現ベクター/宿主系を使用し得る。前記系には、組換えバクテリオファージ、プラスミドまたはコスミドDNA発現ベクターで形質転換させた細菌のような微生物;酵母発現ベクターで形質転換させた酵母;ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)を感染させた昆虫細胞系;ウイルス発現ベクター(例えば、カリフォルニアモザイクウイルス(CaMV)、タバコモザイクウイルス(TMV))をトランスフェクトした植物細胞系;細菌発現ベクター(例えば、TiまたはpBR322プラスミド)を用いて形質転換した植物細胞系;または動物細胞系が含まれるが、これらに限定されない。
【0161】
組換え特異的結合剤タンパク質の産生において有用な哺乳動物細胞には、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞(例えば、COS−7)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、293細胞、及び本明細書に記載されているハイブリドーマ細胞株が含まれるが、これらに限定されない。典型的にはグリコシル化され、活性のために適正なリフォールディングが必要な抗体や抗体断片のような特異的結合剤の作成のためには哺乳動物細胞が好ましい。好ましい哺乳動物細胞にはCHO細胞、ハイブリドーマ細胞及び骨髄性細胞が含まれる。
【0162】
特異的結合剤タンパク質を組換え発現させるための幾つかのプロトコルを以下に例示する。
【0163】
「発現ベクター」は、DNA(RNA)配列からポリペプチドを発現させるためのプラスミド、ファージ、ウイルスまたはベクターを指す。発現ベクターは、(1)遺伝子発現において調節役割を有する遺伝子因子(例えば、プロモーターまたはエンハンサー)、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される結合剤をコードする構造または配列、及び(3)適切な転写開始及び停止配列のアセンブリからなる転写単位を含み得る。酵母または真核発現系で使用するために意図される構造単位が翻訳されたタンパク質を宿主細胞により細胞外分泌させ得るリーダー配列を含むことが好ましい。或いは、組換え特異的結合剤タンパク質をリーダーまたはトランスポート配列なしで発現させる場合には、アミノ末端メチオニン残基を含み得る。その後この残基は最終特異的結合剤産物を得るために発現組換えタンパク質から開裂させてもさせなくてもよい。
【0164】
例えば、特異的結合剤は酵母において市販されている発現系、例えばPichia発現系(カリフォルニア州サンディエゴに所在のInvitrogen)を用いて製造業者の指示に従って組換え発現させ得る。この系は分泌させるためにプレ−プロ−アルファ配列にも頼っているが、インサートはメタノールによる誘導時にアルコールオキシダーゼ(AOX1)プロモーターにより転写される。
【0165】
分泌された特異的結合剤ペプチドは酵母増殖培地から、例えば細菌及び哺乳動物細胞上清からペプチドを精製するために使用される方法を用いて精製される。
【0166】
或いは、特異的結合剤ペプチドをコードするcDNAはバキュロウイルス発現ベクターpVL1393(カリフォルニア州サンディエゴに所在のPharMingen)にクローン化され得る。このベクターはsF9タンパク質非含有培地においてSpodoptera frugiperda細胞を感染させ、組換えタンパク質を産生するために製造業者の指示に従って使用され得る。特異的結合剤タンパク質は前記培地からヘパリン−セファロースカラム(Pharmacia)を用いて精製、濃縮され得る。
【0167】
或いは、ペプチドは昆虫系において発現され得る。タンパク質発現用の昆虫系は当業者に公知である。1つの系では、オウトグラファカリフォルニア核多汗症ウイルス(AcNPV)はSpodoptera frugiperda細胞またはTrichoplusia larvaeにおいて外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用され得る。特異的結合剤ペプチドコード配列はウイルスの非必須領域、例えば多面体遺伝子にクローン化し、多面体プロモーターの制御下に置かれ得る。特異的結合剤ペプチドをうまく挿入すれば、多面体遺伝子は不活性となり、コートタンパク質コートを欠く組換えウイルスが生じる。組換えウイルスはペプチドが発現されているS.frugiperda細胞またはTrichoplusia larvaeを感染するために使用され得る(Smithら,J.Virol.,46:584(1983);Engelhardら,Proc.Nat.Acad.Sci.(USA),91:3224−7(1994))。
【0168】
別の例では、特異的結合剤ペプチドをコードするDNA配列はPCRにより増幅され、適当なベクター(例えば、pGEX−3X(Pharmacia))にクローン化され得る。pGEXベクターは、ベクターによりコードされるグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)及びベクターのクローニング部位に挿入されるDNA断片によりコードされる特異的結合剤タンパク質を含む融合タンパク質を生ずるように設計されている。PCR用プライマーは例えば適当な開裂部位を含むように作成され得る。特異的結合剤融合部分を単に発現を容易とするために使用する場合や当該ペプチドへの結合として望ましくない場合には、組換え特異的結合剤融合タンパク質はその後融合タンパク質のGST部分から開裂してもよい。pGEX−3X/特異的結合剤構築物を大腸菌XL−1 Blue細胞(カリフォルニア州ラホーヤに所在のStratagene)に形質転換し、各形質転換体を単離、増殖させる。各形質転換体からのプラスミドDNAを精製し、自動シークエンサーを用いて部分的に配列決定して適正な方位で核酸インサートをコードする所望の特異的結合剤の存在を確認することができる。
【0169】
抗−Ang−2抗体及びその断片をコードするポリヌクレオチドを上記した組換え系を用いて発現すると、生物学的に活性とすべくリフォールディング(複数のジスルフィド架橋を適正に作成するために)されなければならない抗体またはその断片が生ずる。前記抗体に対する典型的なリフォールディング手順は本明細書の実施例及び以下のセクションに記載されている。
【0170】
細菌細胞中の特異的結合剤は細菌において不溶性封入体として産生され得、以下のように精製され得る。宿主細胞は遠心により殺し、0.15M NaCl、10mM トリス(pH8)、1mM EDTAで洗浄し、室温において0.1mg/mlのリゾチーム(ミズーリ州セントルイスに所在のSigma)で15分間処理する。ライセートを音波処理により清澄化し、細胞破片を12,000×gで10分間遠心することによりペレット化し得る。特異的結合剤を含有するペレットを50mM トリス(pH8)及び10mM EDTA中に再懸濁し、50%グリセロール上に重層し、6000×gで30分間遠心してもよい。ペレットはMg++もCa++も含まない一般的なリン酸緩衝食塩液(PBS)中に再懸濁してもよい。特異的結合剤を再懸濁したペレットを変性SDSポリアクリルアミドゲル中で分画化することにより更に精製してもよい(上掲のSambrookら)。タンパク質を可視化するためにゲルを0.4M KCl中に浸してもよい。そのタンパク質は切り出され、SDSを欠くゲルランニング緩衝液中で電気溶出され得る。GST融合タンパク質を細菌中で可溶性タンパク質として産生されるならば、該タンパク質はGST精製モジュール(Pharmacia)を用いて精製してもよい。
【0171】
組換えタンパク質の発現のための哺乳動物宿主系は当業者に公知である。宿主細胞株は、発現タンパク質をプロセシングしたりまたはタンパク質活性を与えるのに有用な翻訳後修飾を生ずるような特定能力について選択され得る。ポリペプチドの修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、リピド化及びアシル化が含まれるが、これらに限定されない。CHO、HeLa、MDCK、293、WI38のような各種宿主細胞及びハイブリドーマ細胞株等は前記した翻訳後活性のための特定細胞組織及び特徴的機構を有しており、導入される外来タンパク質が適正に確実に修飾及びプロセシングされるように選択され得る。
【0172】
組換えタンパク質の産生のために形質転換された細胞を回収するために多数の選択系を使用し得る。前記選択系には、それぞれtk−、hgprt−またはaprt−細胞中の、HSVチミジンキナーゼ、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。また、メトトレキサートに対する耐性を付与するDHFR、マイコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt、アミノグリコシドG418に対する耐性及びクロロスルフロンに対する耐性を付与するneo、及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するHygroに対する選択の基準として抗代謝薬耐性が使用され得る。使用され得る別の選択遺伝子には、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを使用し得るtrpB、または細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを使用し得るhisDが含まれる。形質転換体を同定するための視覚的兆候を与えるマーカーには、アントシアニン、β−グルクロニダーゼ及びその基質、GUS、ルシフェラーゼ及びその基質、ルシフェリンが含まれる。
【0173】
特異的結合剤の精製及びリフォールディング
場合により、上記した手順を用いて作成される特異的結合剤を適切な三次構造に“リフォールディング”及び酸化して、生物学的に活性とすべくジスルフィド結合を生ずる必要があることがある。リフォールディングは当業界で公知の複数の手順を用いて実施され得る。前記方法の例には、可溶化したポリペプチド剤をカオトロピック試薬の存在下でpHを通常7以上に曝すことが含まれる。カオトロピック剤の選択は封入体の可溶化のために使用される選択と同様であるが、カオトロピック剤は通常低濃度で使用される。カオトロピック剤の例はグアニジンである。多くの場合、リフォールディング/酸化溶液は、システイン架橋を形成するためにジスルフィド(dusykfide)シャッフリングさせ得る特定のレドックスポテンシャルを生ずるように特定比で還元剤及びその酸化形態をも含む。通常使用されている幾つかのレドックスカップルには、システイン/シスタミン、グルタチオン/ジチオビスGSH、塩化第二銅、ジチオトレイトールDTT/ジチアンDTT、及び2−メルカプトエタノール(bME)/ジチオ−bMEが含まれる。多くの場合、リフォールディングの効率を高めるために共溶媒を使用してもよい。慣用されている共溶媒には、グリセロール、各種分子量のポリエチレングリコール及びアルギニンが含まれる。
【0174】
本発明の特異的結合剤またはその変異体を精製することが望ましい。タンパク質精製方法は当業者に公知である。この方法は1つレベルでポリペプチド及び非ポリペプチド分画の粗な分画化を含む。特異的結合剤ポリペプチドを他のタンパク質から分離したら、当該ポリペプチドは部分的または完全(すなわち、等質性まで精製)に精製するためにクロマトグラフィー及び電気泳動を用いて更に精製され得る。純粋な特異的結合剤ペプチドの製造に特に適した分析方法はイオン交換クロマトグラフィー、排除クロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動及び等電点電気泳動である。ペプチドを精製するための特に効率的な方法は高速タンパク質液体クロマトグラフィーまたはHPLCである。
【0175】
本発明の1つの態様はコードされた特異的結合剤タンパク質またはペプチドの精製に関し、特定実施態様ではその実質的精製に関する。本明細書中、用語「精製された特異的結合剤タンパク質またはペプチド」は他の成分から単離され得る組成物であって、特異的結合剤タンパク質またはペプチドが天然で得られる状態と同等まで精製されているものを指すと解される。従って、精製された特異的結合剤タンパク質またはペプチドはそれが元々存在しているかもしれない環境を含まない特異的結合剤タンパク質またはペプチドを指す。
【0176】
通常、“精製”はいろいろな他の成分を除去するために分画化されてはいるが、発現された生物学的活性を実質的に保持している特異的結合剤組成物を指す。「実質的に精製」という用語を使用するとき、その用語は特異的結合剤タンパク質またはペプチドが組成物の主成分、例えばタンパク質が組成物の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%またはそれ以上を構成しているような特異的結合剤組成物を指す。
【0177】
特異的結合剤の精製度を定量するための各種方法は本明細書の記載にてらして当業者に公知である。この中には、例えば活性画分の特異的結合活性の測定、分画内の特異的結合剤ポリペプチドの量のSDS/PAGE分析による評価が含まれる。特異的結合剤分画の純度を評価するための好ましい方法は、前記分画の結合活性を計算し、その値を最初の抽出物の結合活性と比較し、精製度(本明細書では“倍精製数”で表す)を計算することである。結合活性の量を表すために使用される実際の単位は勿論精製を追跡するために選択した特定のアッセイ法に依存し、発現した特異的結合剤タンパク質またはペプチドが検出可能な結合活性を示すか否かにも依存する。
【0178】
特異的結合剤タンパク質を精製する際に使用するのに適した各種方法が当業者に公知である。その例には、硫酸アンモニウム、PEG、抗体(免疫沈降)等を用いる沈降または熱変性による沈降後遠心;アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA−セファロース)、イオン交換、ゲル濾過、逆相、ヒドロキシアパタイトまたはアフィニテイークロマトグラフィーのようなクロマトグラフィーステップ;等電点電気泳動;ゲル電気泳動;及び前記した方法と他の方法との組合せが含まれる。当業界では通常公知のように、各種精製ステップを実施する順番は変えることができ、あるステップを省略することもでき、その結果実質的に精製された特異的結合剤の製造のための適当な方法がもたらされると考えられている。
【0179】
特異的結合剤を常に最も精製された状態で得ることは一般的な要件ではない。実際、ある実施態様ではあまり実質的に特異的でない結合剤産物を使用することが意図されている。数少ない精製ステップを組合せたり、同一の一般的精製スキームを異なる形態で使用することにより部分的精製は達成され得る。例えば、HPLC装置を用いて実施されるカチオン交換カラムクロマトグラフィーにより通常低圧クロマトグラフィーシステムを用いる同一方法よりも数倍高く精製されると見られる。低い相対的精製度を示す方法は特異的結合剤タンパク質産物の全回収の点または発現した特異的結合剤タンパク質の生物学的活性の維持の点で有利であり得る。
【0180】
SDS/PAGEの条件の違いに応じてポリペプチドの移動が異なる、場合によっては大きく異なることは公知である(Capalidら,Biochem.Biophys.Res.Comm.,76:425(1977))。従って、異なる電気泳動条件下では精製もしくは部分精製された特異的結合剤発現産物の見かけ分子量が異なり得ることを理解できる。
【0181】
結合アッセイ
免疫学的結合アッセイは通常、アナライト標的抗原に特異的に結合し、しばしばその抗原を固定化するために捕捉剤を使用している。前記捕捉剤はアナライトに特異的に結合する物質である。本発明の1実施態様では、捕捉剤はAng−2に特異的に結合する抗体またはその断片である。免疫学的結合アッセイは当業界で公知である(Asai編,「細胞生物学における方法(Methods in Cell Biology)」,第37巻,「細胞生物学における抗体(Antibodies in Cell Biology)」,ニューヨークに所在のAcademic Press,Inc.(1993)年発行参照)。
【0182】
免疫学的結合アッセイは、多くの場合捕捉剤と抗原により形成される結合複合体の存在を示す標識剤を使用している。前記標識剤は結合複合体からなる分子の1つであり得、すなわち前記標識剤は標識特異的結合剤または標識抗特異的結合剤抗体であり得る。或いは、標識剤は結合複合体に結合する第3の分子、通常別の抗体であり得る。標識剤の例は、標識を有する抗−特異的結合剤抗体であり得る。結合複合体に対して特異的な第2抗体は標識を有していなくてもよいが、第2抗体がそのメンバーである抗体の種に特異的な第4分子により結合され得る。例えば、第2抗体はビオチンのような検出可能な部分で修飾されていてもよく、前記検出可能な部分はその後酵素標識ストレプトアビジンのような第4分子により結合される。免疫グロブリン定常領域に特異的に結合し得る他のタンパク質、例えばプロテインAまたはプロテインGも標識剤として使用され得る。これらの結合タンパク質はストレプトコッカル細菌の細胞壁の通常成分であり、各種の種由来の免疫グロブリン定常領域と強い非免疫原性反応性を示す(Alkerstrom,J.Immunol.,135:2589−2542(1985)及びChaubert,Mod.Pathol,10:585−591(1997)参照)。
【0183】
アッセイ中、試薬をそれぞれ組み合わせた後インキュベーション及び/または洗浄ステップが必要な場合がある。インキュベーションステップは約5秒〜数時間、好ましくは約5分〜約24時間の範囲で変更可能である。しかしながら、インキュベーション時間はアッセイフォーマット、アナライト、溶液の容量、濃度等に依存する。通常アッセイは室温で実施されるが、広範囲の温度で実施可能である。
【0184】
(A)非競合結合アッセイ
免疫学的結合アッセイは非競合タイプであり得る。このアッセイでは捕捉されたアナライトの量を直接測定する。例えば、1つの好ましい“サンドイッチ”アッセイでは、捕捉剤(抗体)が固定化されている固体基質に対して前記捕捉剤を直接結合させ得る。固定化した抗体は試験サンプル中に存在する抗原を捕捉(結合)する。その後、こうして固定化されたタンパク質は標識剤、例えば標識を有する第2抗体に結合する。別の好ましい“サンドイッチ”アッセイでは、第2抗体が標識を有していないが、第2抗体を誘導した種の抗体に対して特異的な標識抗体により結合し得る。第2抗体は検出可能部分(例えば、ビオチン)で修飾されていてもよく、前記検出可能部分に対してストレプトアビジンのような第3標識分子が特異的に結合し得る(援用により本明細書に含まれるとするHarlow及びLane,「抗体,実験マニュアル(Antibodies,A Laboratory Manual)」,第14章,ニューヨーク州に所在のCold Spring Harbor Laboratory(1988年)発行参照)。
【0185】
(B)競合結合アッセイ
免疫学的結合アッセイは競合タイプであってもよい。サンプル中に存在するアナライトの量は、サンプル中に存在するアナライトにより捕捉剤から置換されたか競合除去された添加アナライトの量を測定することにより間接的に測定される。1つの好ましい競合結合アッセイでは、既知量の(通常、標識されている)アナライトをサンプルに添加し、そのサンプルを抗体(捕捉剤)と接触させる。抗体に結合した標識アナライトの量はサンプル中に存在するアナライトの濃度に逆比例する(上掲のHarlow及びLane,「抗体,実験マニュアル(Antibodies, A Laboratory Manual)」,第14章,p.579−583参照)。
【0186】
別の好ましい競合結合アッセイでは、抗体を固体基質に固定する。抗体に結合したタンパク質の量はタンパク質/抗体複合体中に存在するタンパク質の量を測定するかまたは残存している非複合体化タンパク質の量を測定することにより測定され得る。タンパク質の量は標識タンパク質を用意することにより検出され得る(上掲のHarlow及びLane,「抗体,実験マニュアル(Antibodies,A Laboratory Manual)」,第14章参照)。
【0187】
更に別の好ましい競合結合アッセイでは、ハプテン阻害を用いる。既知アナライトを固体基質に固定化する。既知量の抗体をサンプルに添加し、そのサンプルを固定化アナライトと接触させる。固定化アナライトに結合させた抗体の量はサンプル中に存在するアナライトの量に逆比例する。固定化抗体の量は抗体の固定化分画または溶液中に残存している分画を検出することにより検出され得る。抗体を標識することにより直接、または上記した抗体に特異的に結合する標識剤をその後添加することにより間接的に検出され得る。
【0188】
(C)競合結合アッセイの使用
競合アッセイは、当業者が本発明の特異的結合剤により認識されるタンパク質または酵素複合体が所望タンパク質であるが交差反応する分子でないことを調べたり、または抗体が抗原に対して特異的であり、非関連抗原に結合しないかを調べることができるように交差反応性測定のために使用され得る。このタイプのアッセイでは、抗原を固体支持体に固定し得、固定化タンパク質に対する特異的結合剤の結合と競合するであろう未知のタンパク質混合物をアッセイに添加する。競合分子も抗原に関連しない1つ以上の抗原に結合する。特異的結合剤抗体の固定化抗原に対する結合と競合するタンパク質の能力を固体支持体に固定化した同一タンパク質による結合と比較して、タンパク質ミックスの交差反応性を調べる。
【0189】
(D)他の結合アッセイ
本発明はまた、サンプル中のAng−2の存在を検出または定量するためのウェスタンブロット法を提供する。この方法は通常サンプルタンパク質を分子量に基づくゲル電気泳動により分離し、そのタンパク質を適当な固体支持体、例えばニトロセルロースフィルター、ナイロンフィルターまたは誘導体化ナイロンフィルターに移すことを含む。前記サンプルをAng−2に特異的に結合する抗体またはその断片とインキュベートし、生じた複合体を検出する。前記抗体は直接標識され得るか、または抗体に特異的に結合する標識抗体を用いてその後検出され得る。
【0190】
Ang−2のその受容体への結合を妨げるAng−2特異的結合剤を検出するための結合アッセイは本明細書の実施例に記載されている。
【0191】
診断アッセイ
本発明の抗体またはその断片は、Ang−2またはサブユニットの発現により特徴づけられる症状または疾患の診断のため、或いはAng−2誘導物質またはその断片、Ang−2活性のアゴニストまたは阻害剤で治療される患者をモニターするためのアッセイにおいて有用である。Ang−2に対する診断アッセイには、ヒト体液、細胞または組織の抽出物中のAng−2を検出するための標識及び特異的結合剤を用いる方法が含まれる。本発明の特異的結合剤は場合により修飾を加えて使用され得る。好ましい診断アッセイでは、特異的結合剤を例えば標識またはレポーター分子を結合することにより標識される。広範囲の標識及びレポーター分子が公知であり、このうちの幾つかは本明細書に記載されている。特に、本発明はヒト疾患の診断のために有用である。
【0192】
Ang−2タンパク質を各タンパク質に対して特異的なポリクローナルまたはモノクローナル抗体を用いて測定するための各種プロトコルが公知である。その例には、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び蛍光活性化細胞選別(FACS)が含まれる。Ang−2上の2つの非干渉エピトープに反応するモノクローナル抗体を用いる2部位モノクローナルベースのイムノアッセイが好ましいが、競合結合アッセイも使用することができる。これらのアッセイは、例えばMaddoxら,J.Exp.Med.,158:1211(1983)に記載されている。
【0193】
診断基準を与えるために、ヒトAng−2発現の正常または標準値が通常確立されている。これは、当業界で周知の複合体形成に適した条件下で正常被験者(好ましくは、ヒト)からの体液または細胞抽出物をAng−2に対する特異的結合剤(例えば、抗体)と混合することにより測定され得る。標準複合体形成の量は、既知量のAng−2タンパク質に対する特異的結合剤の結合をコントロール及び病気サンプルと比較することにより定量され得る。次いで、正常サンプルから得た標準値を病気に罹患している可能性のある被験者由来のサンプルから得た値と比較することができる。標準値と被験者の値の偏差から病的状態におけるAng−2の役割が示唆される。
【0194】
診断用途の場合、ある実施態様では、特異的結合剤を通常検出可能な部分で標識される。検出可能な部分は、直接または間接的に検出可能なシグナルを発生し得るものであり得る。例えば、検出可能部分は放射性同位元素(例えば、H、14C、32P、35Sまたは125I)、蛍光または化学発光化合物(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミンまたはルシフェリン)または酵素(例えば、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはホースラディッシュペルオキシダーゼ)であり得る(Bayerら,Meth.Enz.,184;138−163(1990))。
【0195】
疾患
本発明はヒト疾患及び病的状態を治療するのに有用なAng−2に結合する特異的結合剤を提供する。Ang−2結合活性または他の細胞活性を調節する特異的結合剤は治療効果を高めたり可能性ある副作用を抑えるために他の治療薬と一緒に使用され得る。
【0196】
1つの態様で、本発明は、細胞におけるAng−2活性の望ましくないまたは異常なレベルで特徴づけられる疾患及び状態を治療するために有用である試薬及び方法を提供する。前記疾患には、癌及び他の過剰増殖状態(例えば、過形成、乾癬、接触皮膚炎、免疫疾患及び不妊症)が含まれる。
【0197】
本発明はまた、ヒトを含めた動物に対してAng−2活性を阻害または低下させる特異的結合剤を有効量投与することを含む動物における癌の治療方法を提供する。本発明は更に、生体系における細胞増殖、侵襲及び転移のプロセスを含めた癌細胞増殖の抑制方法に関する。前記方法は癌細胞増殖抑制剤として本発明の化合物を使用することを含む。好ましくは、前記方法は哺乳動物のような生存動物における癌細胞増殖、侵襲、転移または腫瘍発生を抑制または低下させるために使用される。また、本発明の方法は癌細胞増殖及びその性質をアッセイしたり、癌細胞増殖に影響を及ぼす化合物を同定するようなアッセイシステムに使用するために容易に適合できる。
【0198】
本発明の方法により治療され得る癌は、好ましくは哺乳動物で発生している。哺乳動物の例には、ヒト及び他の霊長類、イヌやネコのようなペットまたは愛玩動物、ラット,マウスや家兎のような実験動物、及びウマ,ブタ,ヒツジ及びウシのような家畜が含まれる。
【0199】
腫瘍または新生物は細胞増殖がコントロールされずに進行している組織細胞の増殖を含む。幾つかの増殖は良性であるが、他のものは悪性と称され、臓器の死をもたらす恐れがある。悪性新生物または癌は、攻撃的細胞増殖を示す以外に周囲組織に侵襲し、転移するかもしれない点で良性増殖と区別される。更に、悪性新生物は、殆ど分化せず(殆ど脱分化)、相互及び周囲組織に比して器質化が殆ど失われているという特徴を有する。この性質は“退生”とも称される。
【0200】
本発明により治療され得る新生物には充実腫、すなわち癌腫及び肉腫も含まれる。癌腫には、周囲組織に浸潤(侵襲)し、転移を起こす内皮細胞からの悪性新生物が含まれる。腺癌は腺組織由来の癌腫または認識可能な腺構造を形成する癌である。別の広範囲のカテゴリーの癌には、胚性結合組織のような原線維または均質物質中に埋没している細胞を含む腫瘍である肉腫が含まれる。本発明は、白血病、リンパ腫、及び通常腫瘍塊として存在しないが血管またはリンパ細網系中に分布している他の癌を含めた骨髄またはリンパ系の癌も治療することができる。
【0201】
本発明の治療に適合され得る癌または腫瘍細胞のタイプの例には、ACH産生腫瘍、急性リンパ球性白血病、急性非リンパ球性白血病、副腎皮質癌、膀胱癌、脳癌、乳癌、子宮頸癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、皮膚T細胞リンパ腫、子宮内膜癌、食道癌、ユーイング肉腫、胆嚢癌、毛様細胞性白血病、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、カポジ肉腫、腎臓癌、肝癌、肺癌(小細胞及び非小細胞)、悪性腹水、悪性胸水、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、神経芽腫、神経膠腫、非ホジキンリンパ腫、骨肉腫、卵巣癌、卵巣(胚細胞)癌、膵臓癌、陰茎癌、前立腺癌、網膜芽腫、皮膚癌、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、栄養膜新生物、子宮癌、膣癌、外陰癌及びウィルムス腫が含まれる。
【0202】
本発明は、実験的に規定した癌の特定タイプの治療を参照して本明細書中に特に例示する。ここに例示した治療では、一般的な最新式インビトロ及びインビボモデルを使用している。これらの方法はインビボ治療レジメにおいて有効であると予想され得る物質を同定するために使用され得る。しかしながら、本発明の方法は上記した腫瘍タイプの治療方法に限定されず、あらゆる臓器系に由来するすべての充実性腫瘍の治療にも及ぶと理解されたい。侵襲または転移がAng−2発現または活性と関係のある癌は特に本発明により抑制または退化の誘導を受けやすい。
【0203】
本発明はまた、本発明の特異的結合剤(例えば、抗体)を別の抗癌化学療法剤(例えば慣用されている化学療法剤)と併せて配合することにより実施され得る。特異的結合剤と他の薬剤との併用は化学療法プロトコルを増強し得る。当業者は多数の化学療法プロトコルを本発明の方法に配合し得るものとして思いつく。アルキル化剤、抗代謝薬、ホルモン及びアンタゴニスト、放射性同位体及び天然産物を含めた化学療法剤を使用し得る。例えば、本発明の化合物は抗生物質(例えば、ドキソルビシン及び他のアントラサイクリンアナログ)、ナイトロジェンマスタード(例えば、シクロホスファミド)、ピリミジンアナログ(例えば、5−フルオロウラシル)、シスプラチン、ヒドロキシウレア、タキソール、及びその天然及び合成誘導体等と一緒に投与され得る。別の例として、腫瘍がゴナドトロピン依存性細胞及びゴナドトロビン非依存性細胞を含む混合腫瘍、例えば乳腺癌の場合には、本発明化合物をロイプロリドまたはゴセレリン(LH−RHの合成ペプチドアナログ)と一緒に投与され得る。他の抗新生物プロトコルには、テトラサイクリン化合物と他の治療物理療法(例えば、手術、放射線等)との併用が含まれる。これは本明細書中で“補助抗新生物物理療法”とも呼ばれる。従って、本発明の方法は副作用を減らし、効果を高めるという効果をもって慣用レジメと一緒に使用され得る。
【0204】
従って、本発明は充実性腫瘍及び白血病を含めた広範囲の癌の治療に有用な組成物及び方法を提供する。治療され得る癌のタイプには、乳腺癌、前立腺癌、結腸腺癌、あらゆる形態の気管支原性肺癌、骨髄腫、黒色腫、肝癌、神経芽腫、乳頭腫、アプドーマ、分離腫、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心疾患、癌腫(例えば、ウェーカー、基底細胞、基底有棘細胞、ブラウン−ピアース、導管、エールリヒ腫瘍、クレブス2、メルケル細胞、粘液性、非細胞性肺、燕麦細胞、乳頭状、硬性、細気管支、気管支原性、扁平上皮細胞及び移行細胞)、組織球性疾患、白血病、組織球性悪性疾患、ホジキン病、免疫増殖性小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、形質細胞腫、網肉症、黒色腫、軟骨芽細胞腫、軟骨腫、軟骨肉腫、線維腫、線維肉腫、巨細胞腫、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫、間葉腫、中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント質腫、歯牙腫、奇形腫、胸腺腫、痛風結節芽球性腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。更に、以下のタイプの癌も治療され得る:腺腫、胆管腫、コレステリン腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢腺腺腫、顆粒膜細胞腫、半陰陽性卵巣腫瘍、肝癌、汗腺腫、ランゲルハンス島細胞腫、ライディッヒ細胞腫、乳頭腫、セルトーリ細胞腫、卵胞膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋芽細胞腫、筋腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、上皮腫、節神経腫、神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、角化血管腫、好酸球増加随伴性血管類リンパ組織増殖症、硬化性血管腫、血管腫症、グロムス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管周囲細胞腫、血管肉腫、リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫、松果体腫、癌肉腫、軟骨肉腫、葉状嚢肉腫、線維肉腫、血管肉腫、平滑筋肉腫、白血肉腫、脂肪肉腫、リンパ管肉腫、筋肉腫、粘液肉腫、卵巣癌、横紋筋肉腫、肉腫、新生物、神経線維腫及び子宮頸部異形成。
【0205】
本発明の別の態様は、乾癬及び接触皮膚炎を含めた皮膚の過剰増殖状態または他の過剰増殖疾患の予防及び/または治療のための本発明の材料及び方法の使用である。乾癬及び接触皮膚炎の患者ではその病巣中のAng−2活性が高いことは立証されている(Ogoshiら,J.Inv.Dermatol.,110:818−23(1998))。好ましくは、Ang−2に対して特異的な特異的結合剤を上記した臨床症状を発現しているヒトを治療するために他の薬剤と一緒に使用される。特異的結合剤は本明細書に記載されている投与ルート及び当業者に公知の他のルートを介して各種担体を用いてデリバリーされ得る。
【0206】
本発明の他の態様は、血管形成が関与している各種網膜症(糖尿病性網膜症及び老人性黄斑変性を含む)及び女性生殖管の障害/疾患、例えば子宮内膜症、子宮筋腫及び女性生殖サイクル中の機能不全性血管増殖(子宮内膜微小血管増殖を含む)を伴う他の状態の治療を含む。
【0207】
本発明の更に別の態様は、脳動静脈奇形(AVM)を含めた異常な血管増殖、胃腸粘膜損傷及び修復、消化性潰瘍の病歴を有する患者の胃十二指腸粘膜の潰瘍化、卒中により生ずる虚血、肝疾患における肺血管疾患、非肝性門脈高血圧患者における門脈高血圧症の治療に関する。
【0208】
本発明の別の態様は、本発明の組成物及び方法を用いる癌の予防である。前記薬剤はAng−2に対する特異的結合剤を含む。
【0209】
医薬組成物
Ang−2特異的結合剤の医薬組成物も本発明の範囲内である。抗体を含む医薬組成物は、例えば2001年1月9日にLamら付与された米国特許第6,171,586号明細書に詳記されている。前記組成物は治療または予防有効量の本明細書に記載されている特異的結合剤(例えば、抗体)、またはその断片、変異体、誘導体または融合物を医薬的に許容され得る物質と共に含む。好ましい実施態様では、医薬組成物はAng−2の少なくとも1つの生物学的活性を部分的または完全に調節するアンタゴニスト特異的結合剤を医薬的に許容され得る物質と共に含む。典型的には、特異的結合剤は動物に投与するために十分に精製されている。
【0210】
医薬組成物は、例えば組成物のpH、浸透圧、粘度、透明性、色調、等張性、臭い、無菌、安定性、溶解または放出速度、吸収または浸透度を調節、維持または保存するための製剤化物質を含み得る。適当な製剤化物質には、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリシン)、抗菌剤、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム)、緩衝剤(例えば、ホウ酸塩、重炭酸塩、トリス−HCl、クエン酸塩、リン酸塩、他の有機酸)、増量剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA))、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β−シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)、充填剤、単糖類、二糖類及び他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン)、着色剤、矯臭希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、保存剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、懸濁剤、界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート(例:ポリソルベート20、ポリソルベート80)、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロールまたはチロキサポール)、安定性向上剤(例えば、スクロースまたはソルビトール)、張性向上剤(例えば、アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール)、デリバリービヒクル、希釈剤、賦形剤及び/または医薬用アジュバントが含まれるが、これらに限定されない。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,A.R.Gennaro編,Mack Publishing Company(1990年)発行参照。
【0211】
最適な医薬組成物は、当業者により例えば意図する投与ルート、デリバリーフォーマット及び所望用量に応じて決定される。例えば、上掲のRemington’s Pharmaceutical Sciences参照。前記組成物は特異的結合剤の物理的状態、安定性、インビボ放出速度及びインビボクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
【0212】
医薬組成物中の主ビヒクルまたは担体は水性または非水性であり得る。例えば、適当なビヒクルまたは担体は注射用水、生理的食塩液または人工脳脊髄液であり、多分非経口投与用組成物において一般的な他の物質が補充されている。中性緩衝食塩液または血清アルブミンと混合した食塩液が別のビヒクルの例である。別の例の医薬組成物はpH約7.0〜8.5のトリス緩衝液またはpH約4.0〜5.5の酢酸塩緩衝液を含み、更にソルビトールまたはその好適な置換物を含み得る。本発明の1実施態様では、結合剤組成物は所望の純度を有する特定組成物を凍結乾燥ケーキまたは水溶液形態の任意の製剤化物質(上掲のRemington’s Pharmaceutical Sciences)と混合することにより貯蔵用に製造され得る。更に、結合剤製品はスクロースのような適当な賦形剤を用いて凍結乾燥物として調製され得る。
【0213】
医薬組成物は非経口デリバリー用に選択され得る。或いは、前記組成物は吸入のため、または経口、点耳、点眼、直腸または膣のような経腸デリバリーのために選択され得る。上記した医薬的に許容され得る組成物の製剤は当業者の範囲内である。
【0214】
製剤化成分は投与部位に対して許容され得る濃度で存在する。例えば、緩衝剤は組成物を生理学的pHまたは僅かに低いpH、典型的には約5〜約8のpHに維持するために使用される。
【0215】
非経口投与が意図される場合、本発明で使用するための治療用組成物は医薬的に許容され得るビヒクル中に所望の特異的結合剤を含む発熱物質非含有の非経口的に許容され得る水溶液の形態であり得る。非経口注射のための特に好適なビヒクルは、結合剤が適切に保存される滅菌等張液として処方されている滅菌蒸留水である。更に別の製剤は、特異的結合剤をその後蓄積注射によりデリバリーされ得る製品を徐放または制御放出させる物質、例えば注射可能なミクロスフェア、生体分解性粒子、ポリマー化合物(ポリ乳酸、ポリグリコール酸)、ビーズまたはリポソームと処方することを含む。ヒアルロン酸も使用可能であり、これは血行中の持続期間を延長させる効果を有し得る。所望分子を導入するための他の好適な手段には移植可能なドラッグデリバリーデバイスが含まれる。
【0216】
別の態様で、非経口投与に適した医薬組成物は水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲルー液または生理的緩衝食塩液のような生理学的に適合し得る緩衝液の形で調製され得る。水性注射用懸濁液は該懸濁液の粘度を上昇させる物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランを含み得る。更に、活性化合物の懸濁液は適正な油状注射用懸濁液として調製され得る。好適な親油性溶媒またはビヒクルには、脂肪油(例えば、ゴマ油)または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチル、トリグリセリドまたはリポソーム)が含まれる。非脂質ポリカチオン性アミノポリマーもデリバリーのために使用され得る。場合により、上記懸濁液は適当な安定剤または化合物の溶解度を高め、高濃度溶液を調製し得る物質をも含み得る。
【0217】
別の実施態様では、医薬組成物は吸入用に処方され得る。例えば、結合剤は吸入用乾燥粉末として処方され得る。ポリペプチドまたは核酸分子吸入溶液もエアゾールデリバリー用噴射剤と共に処方され得る。更に別の実施態様では、溶液は噴霧され得る。肺投与については、化学的に修飾したタンパク質の肺デリバリーを記載している国際特許出願第US94/001875号明細書に記載されている。
【0218】
また、ある処方物は経口投与され得ると意図される。本発明の1実施態様では、このようにして投与される結合剤分子は錠剤やカプセル剤のような固体剤形をコンパウドする際に慣用されている担体と一緒にもしくは担体を使用せずに処方され得る。例えば、カプセル剤は、処方物の活性部分がバイオアベイラビリティーが最大で前全身分解が最小のときに胃腸管のある点で処方されるように設計され得る。結合剤分子の吸収を促進する物質を更に配合することができる。希釈剤、矯臭剤、低融点ワックス、植物油、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤及び結合剤も使用され得る。
【0219】
経口投与用医薬組成物は、経口投与するのに適した剤形で当業界で公知の医薬的に許容され得る担体を用いても処方され得る。前記担体により、医薬組成物は患者が服用するために錠剤、ピル剤、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等として処方され得る。
【0220】
経口用医薬組成物は、活性化合物を固体賦形剤と混合し、場合により粉砕した後、錠剤または糖衣錠コアが得られるように生じた顆粒状混合物を加工することにより得ることができる。所望により、好適な助剤を添加してもよい。好適な賦形剤には、炭水化物またはタンパク質充填剤、例えばラクトース、スクロース、マンニトール及びソルビトールを含めた糖;コーン、小麦、米、ジャガイモまたは他の植物由来のスターチ;メチルセルローク、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはナトリウムカルボキシメチルセルロースのようなセルロース;アラビアゴム及びトラガカントゴムを含めたゴム;ゼラチン及びコラーゲンのようなタンパク質が含まれる。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、及びアルギン酸またはその誘導体(例えば、アルギン酸ナトリウム)のような崩壊または溶解化剤を添加してもよい。
【0221】
糖衣錠コアはアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリジン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/または二酸化チタンを含み得る濃縮糖溶液、ラッカー溶液及び好適な有機溶媒または溶媒混合物のような適当なコーティングと共に使用され得る。製品同定のためまたは活性化合物の量(すなわち、用量)を識別するために染料及び着色剤を錠剤または糖衣錠コアに添加してもよい。
【0222】
経口的に使用され得る医薬組成物には、ゼラチンからなるプッシュフィット(push−fit)カプセル、及びゼラチン及びグリセロールまたはソルビトールのようなコーテイングからなるソフトシールカプセルも含まれる。プッシュフィットカプセルは、活性成分を充填剤または結合剤(例えば、ラクトースまたはスターチ)、滑沢剤(例えば、タルクまたはステアリン酸マグネシウム)及び場合により安定剤と混合して含み得る。軟カプセルの場合には、活性化合物は適当な液体(例えば、脂肪油、液体、液体ポリエチレングリコール)中に場合により安定化剤と共に溶解または懸濁され得る。
【0223】
別の医薬組成物は有効量の結合剤を錠剤の製造に適した非毒性賦形剤と混合して含み得る。錠剤を滅菌水または他の適当なビヒクル中に溶解することにより、1回量剤形の溶液が調製され得る。好適な賦形剤には、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ラクトースまたはリン酸カルシウム)、結合剤(例えば、スターチ、ゼラチンまたはアカシア)、または滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)が含まれるが、これらに限定されない。
【0224】
持続または制御デリバリー処方物中に結合剤分子を配合した処方物を含めた別の医薬組成物は当業者に自明である。各種の他の持続または制御デリバリー手段、例えばリポソーム担体、生体分解性微粒子、多孔性ビーズや蓄積注射剤を処方するための技術も当業者に公知である。例えば、医薬組成物をデリバリーするための多孔性ポリマー微粒子の制御放出を記載している国際特許出願第US93/00829号明細書を参照されたい。徐放性製剤の別の例には、成形物(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態の半透過性ポリマーマトリックスが含まれる。徐放性マトリックスには、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリアクチド(米国特許第3,773,919号明細書及び欧州特許出願公開第58,481号明細書)、L−グルタミン酸とγ−エチルL−グルタメートのコポリマー(Sidmanら,Biopolymers,22:547−556(1983))、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167−277(1981);Langerら,Chem.Tech.,12:98−105(1982))、エチレンビニルアセテート(上掲のLangerら)またはポリ−D(−)−3−ヒドロキシ酪酸(欧州特許出願公開第133,988号明細書)が含まれ得る。徐放性組成物には、当業界で公知の幾つかの方法により製造され得るリポソームも含まれる。例えば、Eppsteinら,Proc.Natl.Acad.Sci(USA),82:3688−3692(1985)、欧州特許出願公開第36,676号明細書、同第88,046号明細書、同第143,949号明細書を参照されたい。
【0225】
インビボ投与するために使用される医薬組成物は通常無菌でなければならない。このためには滅菌濾過膜を介して濾過され得る。組成物が凍結乾燥されている場合には、この方法を用いる滅菌は凍結乾燥/再構成の前またはその後に実施され得る。非経口投与用組成物は凍結乾燥形態または溶液状で貯蔵され得る。更に、非経口組成物は通常滅菌アクセスポートを有する容器、例えば皮下注射針により穿孔可能なストッパーを有する静脈溶液バッグまたはバイアル中に収容される。
【0226】
医薬組成物を調製したら、溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固体、或いは脱水または凍結乾燥粉末として滅菌バイアル中に貯蔵され得る。前記組成物は用時使用形態または投与前に再構成しなければならない形態(例えば、凍結乾燥形態)で貯蔵され得る。
【0227】
特定実施態様では、本発明は1回量投与単位を作成するためのキットに関する。前記キットはそれぞれ乾燥タンパク質を含む第1容器及び水性処方物を含む第2容器から構成される。単一及び複数個のチャンバを有する予備充填シリンジ(例えば、液体シリンジ及びリオシリンジ)を含むキットも本発明の範囲に含まれる。
【0228】
治療用に使用され得る医薬組成物の有効量は例えば治療内容及び対象物に依存する。治療のために適切な用量レベルが部分的にデリバリーされる分子、結合剤分子を使用する適応症、投与ルート、並びに患者のサイズ(体重、表面積または臓器サイズ)及び状態(年齢及び全身健康状態)に依存して変更されることは当業者に自明である。従って、医者は最適の治療効果が得られるように用量を決定し、投与ルートを調整し得る。典型的な用量は上記した要因に応じて約0.1〜約100mg/kgの範囲であり得る。他の実施態様では、用量は0.1〜約100mg/kg、1〜約100mg/kgまたは5〜約100mg/kgの範囲であり得る。
【0229】
任意の化合物の場合、治療有効量はまず細胞培養アッセイまたは動物モデル(例えば、マウス、ラット、家兎、イヌまたはブタ)において推定され得る。動物モデルは適切な濃度範囲及び投与ルートを決定するためにも使用され得る。次いで、これらの情報を用いて、ヒトに投与するのに有用な用量及び投与ルートが決定され得る。
【0230】
正確な用量は治療を要する患者に関連する要因にてらして決定される。用量及び投与は十分なレベルの活性化合物を与えるためまたは所望効果を維持するように調節される。考慮され得る要因には、病気の重篤度、患者の全身健康状態、患者の年齢,体重及び性別、投与時期及び頻度、薬物併用、反応感受性及び治療に対する応答が含まれる。長時間作用する医薬組成物は、特定処方物の半減期及びクリアランス率に応じて3〜4日毎、1週間に1回、2週間に1回投与され得る。
【0231】
投与頻度は、使用する処方物中の結合剤分子の薬物動態的パラメーターに依存する。典型的には、所望効果が達成される用量になるまで組成物が投与される。従って、組成物をある期間中に1回または複数回(同一または異なる濃度/用量)投与してもよく、または連続注入してもよい。適切な用量の精巧な調整は日常的に実施されている。適切な用量は適当な用量−応答データーを使用して決定され得る。
【0232】
医薬組成物の投与ルートは公知の方法に従い、例えば経口的に;静脈内、腹腔内、大脳内(実質内)、脳質内、筋肉内、眼内、動脈内、門脈内または病巣内ルートにより注射することにより、髄質内、クモ膜下、脳質内、経皮、皮下、腹腔内、鼻内、経腸、局所、舌下、尿道、膣または直腸手段により、徐放性システムにより、または移植デバイスにより投与され得る。所望により、組成物はボーラス注射により、注入により連続的に、または移植デバイスにより投与され得る。
【0233】
或いは乃至追加的に、組成物はその上に所望分子を吸収またはカプセル化した膜、スポンジまたは適当な材料を移植することにより局所的に投与され得る。移植デバイスを使用する場合、そのデバイスは適当な組織または臓器に移植され得、所望分子は拡散、時間放出ボーラスまたは連続投与によりデリバリーされ得る。
【0234】
場合により、医薬組成物をエキソビボ(生体外)使用することが望ましいこともある。そのような場合、患者から摘出した細胞、組織または臓器を医薬組成物に曝した後前記細胞、組織及び/または臓器を患者に移植し戻す。
【0235】
他の場合には、ポリペプチドである結合剤は遺伝子工学処理した特定細胞を本明細書に記載されているような方法を用いて移植してポリペプチドを発現及び分泌させることによりデリバリーされ得る。前記細胞は動物またはヒト細胞であり得、自己細胞、異種組織細胞または異種間細胞であってもよい。場合により、細胞を不死化してもよい。免疫学的応答のチャンスを減らすために、周囲組織の浸潤を避けるように細胞をカプセル化してもよい。カプセル化材料は通常、タンパク質産物を放出し得るが患者の免疫系または他の有害因子により細胞の破壊を周囲組織から防ぐ通常生適合性で半透過性のポリマー包囲体または膜である。
【0236】
併用療法
本発明の特異的結合剤は、Ang−2病状の治療において他の治療法と組み合わせて使用され得る。前記した他の治療法の例には放射線治療、化学治療剤及び他の成長因子が含まれる。
【0237】
化学療法は抗新生物剤を使用し得る。前記した抗新生物剤の例には、メクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド、メルファラン及びクロラムブチルのようなナイトロジェンマスタード;カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)及びセムスチン(メチル−CCNU)のようなニトロソウレア;トリエチレンメラミン(TEM)、トリエチレン、チオホスホラミド(チオテパ)及びヘキサメチルメラミン(HMM,アルトレタミン)のようなエチレンイミン/メチルメラミン;ブスルファンのようなアルキルスルホネート;ダカルバジン(DTIC)のようなトリアジンを含めたアルキル化剤、メトトレキサート及びトレメトレキサートのような葉酸アナログ;5−フルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、ゲムシタビン、シトシンアラビノシド(AraC,シタラビン)、5−アザシチジン、2,2’−ジフルオロデオキシシチジンのようなピリミジンアナログ;6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、アザチオプリン、2’−デオキシコホルマイシン(ペントスタチン)、エリスロヒドロキシノニルアデニン(EHNA)、リン酸フルダルビン及び2−クロロデオキシアデノシン(クラドリビン,2−CdA)のようなプリンアナログを含めた代謝拮抗剤、パクリタキセルのような抗有糸分裂薬を含めた天然産物、ビンブラスチン(VLB)、ビンクリスチン、ビノレルビンのようなビンカアルカノイド;タキソレート;エストラムチン及びエストラムチンホスフェート;エトプシド及びテニポシドのようなポドフィロトキシン、アクチノマイシンD、ダウノマイシン(ルビドマイシン)、ドキソルビシン、ミトザントロン、イダルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)、マイトマイシンC及びアクチノマイシンのような抗生物質、L−アスパラギナーゼのような酵素、インターフェロンα、IL−2、G−CSF及びGM−CSFのような生物学的応答モディファイヤー、シスプランチン及びカルボプラチンのような白金配位複合体;ミトザントロンのようなアントラセンジオン;ヒドロキシウレアのような置換ウレア;N−メチルヒドラジン(MIH)及びプロカバジンのようなメチルヒドラジン誘導体;ミトタン(o,p’−DDD)及びアミノグルテチミドのような副腎皮質サプレッサーを含めたその他の薬剤、プレドニゾン及び等価物、デキサメタゾン及びアミノグルテチミドのようなアドレノコルチコステロイドアンタゴニスト;カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロン及び酢酸メゲストロールのようなプロゲスチン;ジエチルスチルベストロール及びエチニルエストラジオール等価物のようなエストロゲン;タモキシフェンのようなアンチエストロゲン;プロピオン酸テストステロン及びフルオキシメステロン/等価物のようなアンドロゲン;フルタミド、ゴナドトロピン放出ホルモンアナログ及びロイプロリドのようなアンチアンドロゲン;及びフルタミドのような非ステロイドアンチアンドロゲンを含めたホルモン及びアンタゴニストが含まれる。
【0238】
成長ホルモンとの併用療法には、サイトカイン、リンホカイン、成長因子または他の造血因子、例えばM−CSF、GM−CSF、TNF、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IFN、TNF0、TNF1、TNF2、G−CSF、Meg−CSF、GM−CSF、トロンボポエチン、幹細胞因子及びエリスロポエチンが含まれ得る。他には公知のアンギオポエチン、例えばAng−1,−2,−4,−Y及び/またはヒトAng様ポリペプチド、及び/または脈管内皮増殖因子(VEGF)が含まれる。成長因子には、アンギオゲニン、骨形態形成タンパク質−1、骨形態形成タンパク質−2、骨形態形成タンパク質−3、骨形態形成タンパク質−4、骨形態形成タンパク質−5、骨形態形成タンパク質−6、骨形態形成タンパク質−7、骨形態形成タンパク質−8、骨形態形成タンパク質−9、骨形態形成タンパク質−10、骨形態形成タンパク質−11、骨形態形成タンパク質−12、骨形態形成タンパク質−13、骨形態形成タンパク質−14、骨形態形成タンパク質−15、骨形態形成タンパク質受容体−1A、骨形態形成タンパク質受容体−1B、脳由来神経栄養性因子、毛様体神経栄養因子、毛様体神経栄養性受容体、サイトカイン誘導好中球走化因子−1、サイトカイン誘導好中球走化性因子−2、サイトカイン誘導好中球走化性因子−2、内皮細胞増殖因子、エンドセリン−1、上皮細胞増殖因子、上皮誘導好中球誘因物質、線維芽細胞増殖因子−4、線維芽細胞増殖因子−5、線維芽細胞増殖因子−6、線維芽細胞増殖因子−7、線維芽細胞増殖因子−8、線維芽細胞増殖因子−8b、線維芽細胞増殖因子−8c、線維芽細胞増殖因子−9、線維芽細胞増殖因子−10、酸性線維芽細胞増殖因子、塩基性線維芽細胞増殖因子、グリア細胞株誘導好中球因子受容体−1、グリア細胞株誘導好中球因子受容体−2、増殖関連タンパク質、増殖関連タンパク質−2、増殖関連タンパク質−3、ヘパリン結合上皮増殖因子、肝細胞増殖因子、肝細胞増殖因子受容体、インスリン様増殖因子I、インスリン様増殖因子受容体、インスリン様増殖因子II、インスリン様増殖因子結合タンパク質、ケラノサイト増殖因子、白血病阻害因子、白血病阻害因子受容体−1、神経増殖因子、神経増殖因子受容体、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、胎盤増殖因子、胎盤増殖因子−2、血小板誘導内皮細胞増殖因子、血小板誘導増殖因子、血小板増殖因子A鎖、血小板誘導増殖因子AA、血小板誘導増殖因子AB、血小板誘導増殖因子B鎖、血小板誘導増殖因子BB、血小板誘導増殖因子受容体−1、血小板誘導増殖因子受容体−2、プレB細胞増殖刺激因子、幹細胞因子、幹細胞因子受容体、トランスホーミング増殖因子−1、トランスホーミング増殖因子−2、トランスホーミング増殖因子−3、トランスホーミング増殖因子−1.2、トランスホーミング増殖因子−4、トランスホーミング増殖因子−5、潜伏トランスフォーミング増殖因子−1、トランスホーミング増殖因子結合タンパク質I、トランスフォーミング増殖因子結合タンパク質II、トランスホーミング増殖因子結合タンパク質III、腫瘍壊死因子受容体タイプI、腫瘍壊死因子受容体タイプII、ウロキナーゼタイププラスミノーゲン活性剤受容体、血管内皮細胞増殖因子及びキメラタンパク質、並びにその生物学的または免疫学的活性断片が含まれる。
【0239】
免疫療法
免疫療法は、通常癌細胞を標的とし、破壊するために免疫エフェクター細胞及び分子の使用に基づいている。免疫エフェクターは、例えば標的細胞の表面上のあるマーカーを認識する本発明の抗体であり得る。前記抗体は単独で治療のエフェクターとして使用し得、または実際細胞を殺すために他の細胞を強化し得る。前記抗体を薬物または毒素(化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素等)にコンジュゲートさせてもよく、よって単に標的剤として使用し得る。
【0240】
本発明によれば、Ang−2の変異体は免疫療法により本発明の抗体または抗体コンジュゲートにより標的化され得る。本発明の抗体組成物はAng−2標的治療と一緒に併用治療法で使用され得ることを特に意図される。
【0241】
受動的免疫療法は多数の癌に対して特に有効であることが判明している。例えば、国際特許出願公開第98/39027号パンフレット参照。
【0242】
下記実施例は例示にすぎず、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0243】
病的組織及び正常組織におけるAng−2発現
Ang−2発現を正常組織及び病的組織においてin situハイブリダイションを用いて試験した。ヒト(Genbank受託番号AF004327,ヌクレオチド1274−1726)及びマウス(Genbank受託番号AF004326,ヌクレオチド1135−1588)Ang−2配列の断片を、ヒトまたはマウス胎仔肺cDNAから逆転写酵素−PCRにより増幅し、pGEM−Tプラスミドにクローン化し、配列決定により確認した。33P標識アンチチンスRNAプローブを直線化プラスミド鋳型から33P−UTP及びRNAポリメラーゼを用いて転写した。ホルムアルデヒド固定し、パラフィンに包埋させた組織のブロックを5μmで切片化し、帯電スライド上に収集した。in situハイブリダイションの前に、組織を0.2M HClで透過化し、プロテイナーゼKで消化し、トリエタノールアミン及び無水酢酸を用いてアセチル化した。切片をラジオ標識プローブと55℃で一晩ハイブリダイズした後、RNase消化し、約0.1×SSC中55℃で高ストリンジェント洗浄した。スライドをコダックNTB2エマルションに浸し、4℃で2〜3分間暴露し、展開し、対比染色した。切片を暗野及び標準照明で試験して、組織形態及びハイブリダイゼーションシグナルを同時に評価した。
【0244】
結果は、正常出生後ヒトの場合にはAng−2発現は卵巣、胎盤及び子宮のような血管原性血管系を含む数少ない組織に限定されていることを示している。正常な成人心臓、脳、腎臓、肝臓、肺、膵臓、脾臓、筋肉、扁桃、胸腺、虫垂、リンパ節、胆嚢、前立腺または精巣ではAng−2発現は検出できなかった。5週令マウス(成体サルでもヒトでもない)では、腎臓は直細血管で顕著なAng−2発現を示した。この発現が胚発生の残遺物であったかどうかを調べるために、この実験を1年令までのマウス由来の腎臓でマウスAng−2プローブ及び上記した条件を用いて繰り返した。Ang−2発現は出生後発生中に減少することが認められたが、1年令マウスの腎臓でも依然として明らかであった。
【0245】
Ang−2発現は、大腸癌(5例)、乳癌(10例)、肺癌(8例)及びグリア芽腫(1例)のような原発性ヒト腫瘍;脳に転移した、乳癌(2例)、肺癌(2例)及び卵巣癌(2例)のような転移性ヒト腫瘍;及びC6(ラット神経膠腫)、HT29(ヒト大腸癌)、Colo−205(ヒト大腸癌)、HCT116(ヒト大腸癌)、A431(ヒト類表皮癌)、A673(ヒト横紋筋肉腫)、HT1080(ヒト繊維肉腫)、PC−3(ヒト前立腺癌)、B16F10(マウス黒色腫)、MethA(マウス肉腫)及びルイス肺癌のようなげっ歯腫瘍モデルを含めた試験した実質的に全ての腫瘍タイプでも検出された。更に、Ang−2発現はVEGFに応答してMatrigelプラグに成長する新血管及びマウスの未熟児網膜症低酸素モデルで検出された。
【実施例2】
【0246】
組換えmAng−2タンパク質及び家兎ポリクローナル抗−Ang−2抗血清の作成
完全長のHisタグ付きマウスAng−2 cDNAは、マウス15日令胚cDNAライブラリー(Marathon−Ready−cDNA:カタログ番号7459−1,Clonetech,Inc.)から完全長ヒトAng−2に対するPCRプライマーを用いてPCR(Clontech Advantage PCRキット;カタログ番号K1905−01)により得た。PCR産物をCMVプロモーター発現ベクターにライゲートし、生じたプラスミドをFuGENE6トランスフェクション試薬(Roche;カタログ番号1814443)を用いてHT1080ヒト線維肉腫細胞(ATCCから入手)にトランスフェクトした。安定なクローンをG418選択により単離した。抗−HisタグELISA及びウェスタンブロッティングを用いてmAng−2−his発現クローンをスクリーニングした。
【0247】
組換えmAng−2ポリペプチドを上記細胞のならし培地(C.M.)から精製した。mAng−2−Hisを含有するC.M.を2段階クロマトグラフィープロトコルにより精製した。簡単に説明すると、トリス緩衝液(pH9.5)を約20mMの最終濃度まで添加することによりならし培地をpH8.9とした。更に、洗剤CHAPSを約5mM最終濃度まで添加した。次いで、C.M.を直接アニオン交換カラムQ−セファロースff(Pharmacia)にかけた。次いで、カラムを約50mM NaClを含有する約10mM トリス(pH8.0)で洗浄した。組換えmAng−2−Hisを、約350mM NaCl及び約5mM CHAPSを含有する10mM トリス(pH8.0)を用いて1ステップで溶離した。
【0248】
Q−セファロースカラムからの溶離液を約4mM イミダゾールに調節し、固定化金属アフィニティーカラム(Ni−NTAスーパーフロー;Qiagen)にかけた。結合したタンパク質を約5mM CHAPS及び約100mM イミダゾールを含有するPBSで溶離した。次いで、溶離液を約1.0mg/mlに濃縮した後PBSに対して透析した。mAng−2−Hisの純度は、SDS−PAGEクーマシー染色により測定して90%以上であった。
【0249】
抗体を産生するために、家兎を約0.2mgのmAng−2/注射で免疫化した。家兎にハンターTiterMax(登録商標)(Sigma)及びmAng−2(1:1)を約1ml注射した。4週間後、各家兎に繰返し注射、すなわち追加投与した。それから2週間後、更に追加投与し、7週目に血清を抜き取り、mAng−2に対する力価を評価した。血清力価が高いならば、50mlの生産出血(production bleeds)を連続6週間にわたり毎週採取した。しかしながら、血清力価が低いならば、家兎に更に追加投与し、50mlの生産出血を9週目から連続6週間にわたり毎週採取した。6回連続生産出血させた後、家兎を6週間安息状態とした。更に血清が必要ならば、最後の生産出血から1ヶ月後に再び追加投与した。
【0250】
(上記した)中和ELISAによれば、2匹の家兎(5254及び5255)からの抗−mAng−2家兎ポリクローナル抗血清はmAng−2:Tie2相互作用を中和することが認められた。
【実施例3】
【0251】
Ang−2抗体を評価するための分子アッセイ
Ang−2及び関連ファミリーメンバーへの直接抗体結合及びAng−2:Tie2相互作用に対する抗体の効果を評価するために分子アッセイ(アフィニティーELISA、中和ELISA及びBIAcore)が開発された。以下、これらのインビボ及び細胞ベースアッセイについて説明する。
【0252】
A.アフィニティーELISA
候補抗−Ang−2抗体を最初にスクリーニングするために、精製ヒトAng−2(R and D Systems,Inc.:カタログ番号623−AN、Ang−2は2つの切断型の混合物として提供されている)またはマウスAng−2ポリペプチド(上記したように作成)を使用した。確証的結合アッセイのために、ヒトAng−2を完全長ヒトAng−2 DNAをトランスフェクトしたヒト293T細胞のならし培地から得、約50μg/mlのウシ血清アルルブミン(BSA)を含有する無血清DMEMにおいて培養した。
【0253】
微量測定プレートを用いて、約100μl/ウェルのAng−2を各ウェルに添加し、プレートを約2時間インキュベートした後、プレートを約0.1% ツイーン20を含有するリン酸緩衝食塩液(PBS)を用いて4回洗浄した。次いで、ウェルを約250μl/ウェルのPBS中約5% BSAを用いてブロックし、プレートを室温において約2時間インキュベートした。インキュベート後、過剰のブロッキング液を捨て、約100μlの候補抗−Ang−2抗体を各ウェルに約40ナノモルから始め、その後約1% BSA含有PBSで4倍希釈する連続希釈法で添加した。次いで、プレートを室温において一晩インキュベートした。インキュベート後、プレートを約0.1% ツイーン20を含有するPBSで洗浄した。洗浄を更に4回繰り返した後、予め1% BSA(ウシ血清アルブミン)を含有するPBSで1:5000希釈したヤギ抗−ヒトIgG(Fc)−HRP(Pierce Chemical Co.,;カタログ番号31416)を約100μl/ウェル添加した。プレートを室温において約1時間インキュベートした。次いで、プレートを約0.1% ツイーン20を含有するPBSで5回洗浄した後、約100μl/ウェルのTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン液体基質システム;ミズーリ州セントルイスに所在のSigma Chemical Company;カタログ番号T8665)基質を添加し、青色が発色するまでプレートを約5〜15分間インキュベートした。次いで、約370nmで吸光度を分光光度計を用いて測定した。
【0254】
B.中和ELISA
ヒトAng−2ポリペプチドを結合した微量測定プレートをアフィニティーELISAに関して上記したように作成した。候補抗−Ang−2抗体を、約1% BSA及び約1nM Tie2(Tie2部分が分子の可溶性細胞外部分のみを含むTie2−Fc分子として提供されている;R and D Systems,Inc.:カタログ番号313−TI)を含有するPBSの溶液中でアフィニティーELISAに関して上記した連続希釈法で作成した。約100μlの抗体/Tie2溶液を各ウェルに添加した後、プレートを室温において一晩インキュベートし、次いで約0.1% ツイーン20含有PBSで5回洗浄した。洗浄後、約100μl/ウェルの抗−Tie2抗体(Pharmingen Inc.;カタログ番号557039)を約1μg/mlの最終濃度まで添加し、プレートを室温において約1時間インキュベートした。次いで、約100μl/ウェルのヤギ抗−マウス−IgG−HRP(Pierce Chemical CO.;カタログ番号31432)を約1% BSA含有PBSで1:10000希釈して添加した。プレートを室温において約1時間インキュベートした後、約0.1%ツイーン20含有PBSで5回洗浄した。次いで、約100μl/ウェルの(上記した)TMB基質を添加し、発色させた。次いで、約370nmで吸光度を分光光度計を用いて測定した。
【0255】
C.アフィニティーBIAcore
各候補Ang−2抗体のアフィニティー分析をランニング緩衝液としてPBS及び0.005% P20界面活性剤(ニュージャージー州ピスカタウェーに所在のBIAcore,Inc.)を用い、BIAcore(商標)2000(Biacore,Inc.)を用いて実施した。組換えプロテインG(マサチューセッツ州ニーダムに所在のRepligen)をアミンカップリングキット(Biacore,Inc.)を製造業者の示唆プロトコルに従って用いて第1級アミン基を介して研究グレードのCM5センサーチップ(Biacore,Inc.)に固定化した。
【0256】
結合アッセイを、まず約100RUの各候補抗−Ang−2抗体を固定化プロティンGに結合させた後、各種濃度(0〜100nM)のhuAng−2またはmAmg−2を結合抗体表面上に約50ul/分の流速で約3分間注入することにより実施した。k(会合速度定数)、k(解離速度定数)及びK(解離平衡定数)を含めた抗体結合キネティックスをBIA評価3.1コンピュータープログラム(BIAcore,Inc.)を用いて測定した。解離平衡定数が低ければ、抗体のAng−2に対するアフィニテイーが高いことを示す。
【実施例4】
【0257】
完全長Ang−2抗体のファージディスプレーによる産生
完全ヒトAng−2抗体を、ヒトAng−2ポリペプチド(R and D Systems Inc.,カタログ番号623−AN)に対してTarget QuestファージディスプレーFabライブラリー(Target Quest,Inc.)を以下のプロトコルに従ってパニングすることにより作成した。
【0258】
ヒトAng−2をポリスチレン磁気ビーズの表面上に(1)4℃において50ug/mlのAng−2を一晩直線コーティングする;及び(2)4℃においてAng−2を50ug/mlのヤギ抗−Ang−2抗体で一晩間接捕捉するという2つの方法により固定化した。ビーズ表面をPBS中2% ミルク(MPBS)によりブロックした。ヒトFabファージライブラリーを予備選択して、非被覆磁気ビーズまたはヤギ抗−Ang−2抗体に反応するファージクローンを除去した。次いで、Ang−2被覆磁気ビーズを室温においてライブラリーファージと1.5時間インキュベートした。ファージ結合ステップの後、表面を約0.1% ツイーン20含有MPBSで6回、その後約0.1% ツイーン20含有PBSで6回、その後PBSで2回洗浄した。結合したファージをまず約100ug/mlのヒトTie2−Fc(ミネソタ州ミネアポリスに所在のR and D Systems)、次いで約100mM トリエタノールアミンで溶離させた。溶離したファージを大腸菌TG1細胞に感染させた。増幅し、次回スクリーニングのためにレスキューした。より厳格な洗浄を組み込み、入力ファージの回数を減らすことによりその後のスクリーニングにおける選択圧を上昇させた。3回の選択後、18個のユニークなAng−2結合Fabクローンを同定した。これらは実質的にすべて上記したELISAアフィニティーアッセイを用いて測定してヒトAng−2、マウスAng−2及びラットAng−2と認められた。前記ファージの約10%がヒトAng−1にも結合した。前記クローンを以下のようにIgG1抗体に変換させた。
【0259】
更にユニークファージを得るために、同一ライブラリーを用いるがプロトコルを若干変更して第2回スクリーニングを実施した。このプロトコルでは、ヒトAng−2を約4℃においてNunc maxisorpイムノチューブ中NaHCO緩衝液(pH9.6)において一晩平板培養した。Ang−2を第1回、第2回及び第3回パニングでそれぞれ約1.5、0.74及び0.3ug/mlで平板培養した。イムノチューブ表面をPBS中約2% ミルク(MPBS)を用いてブロックした後、約4mlの2% MPBS中で上記した同一ファージディスプレイライブラリー(Target Quest)からの約2兆個のファージ粒子(ライブラリー中約50コピーの各ユニークファージ)とインキュベートした。ファージインキュベーションステップ後、表面をPBS+約0.1% ツイーン20で20回、その後PBSで20回洗浄した。結合したファージを1uM hAng−2または1uM ヒトTie2(上記したR and D Systems)を用いて溶離させた。溶離したファージを大腸菌TG1細胞(ファージライブリーと一緒に提供された)に感染させ、増幅し、次回スクリーニングのためにレスキューした。16個のユニークなAng−2結合FabクローンをPCR増幅により同定した。全てのファージがヒトAng−2またはTie2に結合し、これらのクローンを制限消化により分析した。各クローンのDNAを配列決定した。
【0260】
各ファージ由来の各重鎖の可変領域をコードする配列を相補的プライマーを用いて増幅させた。前記プライマーは、可変領域の5’末端にHindIII部位、XbaI部位、コザック配列及びシグナル配列(翻訳ペブチドはMDMRVPAQLLGLLLLWLRGARCである;配列番号69)を挿入するように設計されており、PCR産物の3’末端にBsmBI部位を付加した。重鎖をクローンさせる方法の例として、クローン544(配列番号19)の鋳型ファージDNAを、シグナル配列の最後の7アミノ酸を付加したプライマー2248−21(GTG GTT GAG AGG TGC CAG ATG TCA GGT CCA GCT GGT GCA G;配列番号70)及び可変領域の末端にBsmBI部位を付加したプライマー2502−31(ATT ACG TCT CAC AGT TCG TTT GAT CTC CAC;配列番号71)を用いて増幅した。生じた産物を、シグナルペプチドに9アミノ酸(AQLLGLLLL;配列番号73)を付加したプライマー2148−98(CCG CTC AGC TCC TGG GGC TCC TGC TAT TGT GGT TGA GAG GTG CCA GAT;配列番号72)及びプライマー2502−31、次いでプライマー2489−36(CAG CAG AAG CTT CTA GAC CAC CAT GGA CAT GAG GGT CCC CGC TCA GCT CCT GGG;配列番号74)及びプライマー2502−31を用いて増幅させた。プライマー2489−36は、5’から3’に向かってHindIII部位、XbaI部位、コザック配列及びシグナル配列の最初の6つのアミノ酸を付加した。PCR産物をXbaI及びBsmBIで消化した後、ヒトIgG1定常領域を含む哺乳動物発現ベクターにクローン化した。このベクターはSV40プロモーター及びDHFR選択を含む。
【0261】
各ファージ由来の軽鎖はκまたはλクララスであった。各軽鎖について、相補的プライマーは、5’から3’に向かってHindIII部位、XbaI部位、コザック配列及びシグナル配列(上記)を付加するように設計された。誤りのないコード領域を有する上記鎖を完全長産物としてクローン化した。1例として、ファージクローン536(配列番号11)由来の軽鎖を、シグナル配列の最後の7アミノ酸を付加したプライマー2627−69(GTG GTT GAG AGG TGC CAG ATG TGA CAT TGT GAT GAC TCA GTC TCC;配列番号75)及びストップコドンの後にSalI部位を付加したプライマー2458−54(CTT GTC GAC TTA TTA ACA CTC TCC CCT GTT G;配列番号76)を用いて完全長コード領域として増幅させた。次いで、このPCR産物を上記したようにそれぞれプライマー2458−54の対として追加5’プライマー2148−98及び2489−36を用いて増幅させて、シグナル配列及びクローニング部位を付加した。完全長軽鎖をXbaI−SalI断片として上記した哺乳動物発現ベクターにクローン化した。
【0262】
幾つかのλクローンは、天然のヒト定常域配列に比してその定常領域に誤りを有していた。これらの差異を補正するために、重複PCRを完全λ定常領域及びファージ由来可変領域をコードするDNAを用いて実施した。これらのクローンも上記したようにXbaI−SalI断片としてクローン化した。
【0263】
κ可変領域を定常領域とは別にクローン化したとき、PCR産物の3’末端にBsmBI部位が付加された。PCR産物をXbaI及びBsmBIで消化後、κ鎖可変領域をヒトκ鎖可変領域を含む発現ベクターにクローン化した。
【0264】
各変換ファージ由来の対の軽鎖及び重鎖構築物をリン酸カルシウムトランスフェクションキット(Invitrogen Corp.)を通常製造業者が示唆するプロトコルに従って用いてCHO細胞に同時トランスフェクトした。トランスフェクトから14〜16時間後に培地を交換し、細胞を約48時間後選択のために製造業者が推奨するように組織培養皿で経代させた。トランスフェクトした細胞を約3週間HT選択により単離し、この時点でトランスフェクトしたCHO細胞コロニーをトリプシン処理し、トランスフェクトした細胞の“プール”に合わせた。
【0265】
48時間後小規模のならし培地を集め、抗−ヒトFc抗体、抗−ヒトκ抗体または抗−ヒトλ抗体のいずれかを用いるウェスタンブロットにより抗体産生についてアッセイした。次いで、選択した細胞集団を、4つの850cmローラーボトルにそれぞれ2×10生細胞を接種し、DMSOを用いて凍結ストック細胞株を作成するのに十分な細胞を得るまで一般的な組織培養滅菌法を用いて選択圧下で経代した。接種後、細胞をローラーボトル中にグルタミン及び非必須アミノ酸を補充した約10% 血清含有DMEM培地(Gibco/BRL,Inc)で維持した。約80%の細胞集密度に達するまで細胞を2〜3日間維持した。この時点で、ローラーボトル中の培地をグルタミン及び非必須アミノ酸を補充した無血清培地混合物(50% DMEM,50% F12;Gibco)に交換した。7日後、ならし培地を収集し、1または2収集毎に新しい無血清培地を加えた。
【0266】
抗体をならし培地から直接標準方法を用いてプロティンGアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。プロティンGカラムから低pH(pH約3)緩衝液を用いて溶離させ、その後溶離した抗体タンパク質を1M トリス(pH8.5)を用いて中和し、その後10kD分子量カットオフ遠心濃縮機を用いて濃縮した。次いで、濃縮した抗体ストックをPBSに緩衝液交換した。
【0267】
31個の抗体を作成し、各抗体は下表2に示すように2つの重鎖及び2つの軽鎖(κまたはλ)から構成されている。
【0268】
【表2】

本明細書に記載されているようにhAng−2、mAng−2およびhAng−1への結合に対して試験した。
【0269】
以下の4つの表はファージを完全長IgG1抗体に変換させた31個の抗−Ang2抗体の重鎖及び軽鎖(κ及びλ)の配列及び配列番号を示す。モノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)を、Kabatら,「免疫学的に興味深いタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」(NIH Publilcation No.91−3242,米国保健福祉省,第5版)に記載されている方法を用いるVBASEデーターベースを用いて予測した。Fab領域を最も近い生殖細胞系配列を含むデーターベース(http://www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/restricted/ALIGNMENTS.html参照)中の配列とアラインさせ、実際に前記配列と比較した。各可変領域(重鎖または軽鎖)のCDRを表7に示す。
【0270】
【表3】



【0271】
【表4】


【0272】
【表5】


【0273】
【表6】

【0274】
【表7】



【0275】
17個の抗体及びネガティブコントロールIgG1(RDBIと呼ぶ)をアフィニティー及び中和ELISA(上記実施例3に記載した)、BIAcore中和アッセイを用いて試験して、アティニテイー、中和及び特異性の能力を調べた。結果を下表8に示し、標準の手順を用いて計算した。
【0276】
【表8】


【0277】
クローン536及びクローン545の2個の抗体を上記したBIAcore分析を用いて評価した。抗体結合をBIAcoreアッセイについて上記したように測定した。Kが低いことはアフィニティーが高いことを示している。結果を下表9に示す。
【0278】
【表9】

【実施例5】
【0279】
抗−Ang−2抗体を用いる治療効率の研究
プロティンG精製した家兎抗−Ang−2ポリクローナル抗体の薬物動態をマウスで試験した。24匹のマウスをポリクローナル抗−Ang−2家兎抗体(1mg/マウス)で処置した。処置したマウス4匹を抗体を注射してから1時間、6時間、1日、3日、7日及び14日後の各時点で殺した。
【0280】
結果は、全家兎IgGが血清中約19日の循環半減期を有していたのに対して、全IgGの抗−Ang−2 IgG成分は約8日の半減期を有していることを示した。
【0281】
治療効率を評価するために、A431腫瘍異種移植片を持つマウス(1群10匹)に移植してから1、5、6、7、8、12、13、14、15及び18日目にプロティンG精製抗−Ang−2ポリクローナル抗体を10回腹腔内投与した(約10mg IgG/マウス/投与)。腫瘍サイズを7、12、15、19及び21日目に測定した。体重を0、7、15及び21日目に測定し、体重は治療により影響されなかった。結果は、ANOVAの繰り返し測定により、抗−Ang−2−ポリクローナル抗体がA431腫瘍異種移植片の増殖を非免疫精製ポリクローナル抗血清(10mg IgG/マウス/投与)及びビヒクル(PBS)のコントロールに比して約50%(p=0.008)抑制することを示した。
【0282】
完全ヒトモノクローナル抗−Ang−2抗体の効果をインビボで試験するために、A431腫瘍異種移植片を持つマウス(1群10匹)に対して抗−Ang−2抗体のクローン533、537または544、或いはネガティブコントロールのPBSまたはヒトIgG1−κを腹腔内投与した。最初は約420ug/マウスのタンパク質を投与し、その後3回は約140ug/マウスのタンパク質を投与し、その後4回は約55ug/マウスのタンパク質を投与し、全部で8回/マウス投与した。腫瘍容量及び体重を1週間に2回記録した。研究の最後に、動物を殺し、ELISAにより抗体レベルを測定するために血清を集めた。腫瘍及び数個の正常組織を全ての群から集めた。
【0283】
図1に示すように、抗−Ang−2処理群とコントロール群の間で腫瘍増殖の点で顕著な差が見られた。3つの抗−Ang−2処理群は全てコントロールに比して腫瘍増殖を抑制した(3個全ての抗体についてANOVAの繰り返し測定を用いて、全ての処理群でhIgG1に対してp<0.005)。対照的に、コントロール群の腫瘍は非常に速い速度で増殖し続けた。
【実施例6】
【0284】
エピトープマッピング
完全長(アミノ酸1〜495)、N末端(アミノ酸1〜254)及びC末端(アミノ酸255〜495)ヒトAng−2(hAng−2)タンパク質をC末端6xHisタグを有するCMVドライブ哺乳動物発現ベクターにクローン化した。生じた3つの構築物及びベクターコントロールを一過的に293T細胞に発現させた。次いで、トランスフェクトした細胞からならし培地を集め、前記培地におけるAng−2の発現レベルを抗−6xhis ELISA及びウェスタンブロッティングにより推定した。
【0285】
抗−Ang−2抗体及びペプチ体の結合エピトープを、ヒトhAng−2の3つのバージョンを結合する能力をELISAにより以下のプロトコルに従って測定した。高結合96ウェルアッセイプレートを100μl/ウェルのならし培地で被覆し、37℃において1時間インキュベートした。ならし培地を吸引し、プレートを200μl/ウェルのPBS中5% BSAで室温において1時間ブロックした。その後、ブロッキング溶液を吸引した。100μl/ウェルの抗体、ペプチ体またはTie2−FcをPBS中1% BSA中に1μg/mlで添加し、室温において1時間インキュベートした。ウェルを200μlのPBS中の1% ツイーンで4回洗浄した。100μl/ウェルのHRPコンジュゲートヤギ抗−ヒトIgGまたはヤギ抗−マウスIgGを添加し、室温において45分間インキュベートした。次いで、ウェルを200μlのPBS中0.1% ツイーンで4回洗浄した。次いで、100μl/ウェルのTMB基質を添加した。O.D.を370nmで測定した。
【0286】
結果を図2A、図2B及び図2Cに示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号2、配列番号12、配列番号18、配列番号20、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号36、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号56、配列番号62、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号14、配列番号16、配列番号22、配列番号24、配列番号34、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号58及び配列番号60、及びその断片からなる群から選択される少なくとも1つのペプチドを含む特異的結合剤。
【請求項2】
抗体である請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤。
【請求項3】
ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化または完全ヒト抗体である請求の範囲第2項に記載の抗体。
【請求項4】
単鎖抗体である請求の範囲第3項に記載の抗体。
【請求項5】
請求の範囲第3項に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項6】
請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤を含むコンジュゲート。
【請求項7】
請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体を含むコンジュゲート。
【請求項8】
請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤をコードする核酸分子。
【請求項9】
請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体をコードする核酸分子。
【請求項10】
請求の範囲第8項または第9項に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項11】
請求の範囲第10項に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項12】
(a)宿主細胞を請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤をコードする少なくとも1つの核酸分子で形質転換し、(b)前記宿主細胞において前記核酸分子を発現させ、(c)特異的結合剤を単離することを含む特異的結合剤の作成方法。
【請求項13】
(a)宿主細胞を請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体をコードする少なくとも1つの核酸で形質転換し、(b)前記宿主細胞において前記核酸分子を発現させ、(c)特異的結合剤を単離することを含む抗体の作成方法。
【請求項14】
治療有効量の請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤を投与することを含む哺乳動物における望ましくない血管形成の阻止方法。
【請求項15】
治療有効量の請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤を投与することを含む哺乳動物における癌の治療方法。
【請求項16】
治療有効量の請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体を投与することを含む哺乳動物における望ましくない血管形成の阻止方法。
【請求項17】
治療有効量の請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体を投与することを含む哺乳動物における癌の治療方法。
【請求項18】
請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤及び医薬的に許容され得る製剤化剤を含む医薬組成物。
【請求項19】
請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体及び医薬的に許容され得る製剤化剤を含む医薬組成物。
【請求項20】
請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤を投与することを含むアンギオポエチン−2活性の調節または阻害方法。
【請求項21】
請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体を投与することを含むアンギオポエチン−2活性の調節または阻害方法。
【請求項22】
治療有効量の請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤を投与することを含む哺乳動物における血管透過性または血漿漏出の少なくとも1つの調節方法。
【請求項23】
治療有効量の請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤を投与することを含む哺乳動物における眼血管新生疾患、肥満、血管芽腫、血管腫、動脈硬化症、炎症性疾患、炎症性障害、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、新生物疾患、骨関連疾患または乾癬の少なくとも1つの治療方法。
【請求項24】
治療有効量の請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体を投与することを含む哺乳動物における血管透過性または血漿漏出の少なくとも1つの調節方法。
【請求項25】
治療有効量の請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体を投与することを含む哺乳動物における眼血管新生疾患、肥満、血管芽腫、血管腫、動脈硬化症、炎症性疾患、炎症性障害、アテローム性動脈硬化症、子宮内膜症、新生物疾患、骨関連疾患または乾癬の少なくとも1つの治療方法。
【請求項26】
治療有効量の請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤及び化学療法剤を投与することを含む哺乳動物における癌の治療方法。
【請求項27】
特異的結合剤及び化学療法剤を同時に投与しない請求の範囲第26項に記載の方法。
【請求項28】
治療有効量の請求の範囲第2項、第3項または第4項に記載の抗体及び化学療法剤を投与することを含む哺乳動物における癌の治療方法。
【請求項29】
特異的結合剤及び化学療法剤を同時に投与しない請求の範囲第26項に記載の方法。
【請求項30】
526 HC(配列番号1)、528 HC(配列番号3)、531 HC(配列番号5)、533 HC(配列番号7)、535 HC(配列番号9)、536 HC(配列番号11)、537 HC(配列番号13)、540 HC(配列番号15)、543 HC(配列番号17)、544 HC(配列番号19)、545 HC(配列番号21)、546 HC(配列番号23)、551 HC(配列番号25)、553 HC(配列番号27)、555 HC(配列番号29)、558 HC(配列番号31)、559 HC(配列番号33)、565 HC(配列番号35)、F1−C6 HC(配列番号37)、FB1−A7 HC(配列番号39)、FD−B2 HC(配列番号41)、FE−B7 HC(配列番号43)、FJ−G11 HC(配列番号45)、FK−E3 HC(配列番号47)、G1D4 HC(配列番号49)、GC1E8 HC(配列番号51)、H1C12 HC(配列番号53)、IAI−1E7 HC(配列番号55)、IF−1C10 HC(配列番号57)、IK−2E2 HC(配列番号59)、IP−2C11 HC(配列番号61)、526カッパ(配列番号2)、536カッパ(配列番号12)、543カッパ(配列番号18)、544カッパ(配列番号20)、551カッパ(配列番号26)、553カッパ(配列番号28)、555カッパ(配列番号30)、558カッパ(配列番号32)、565カッパ(配列番号36)、FE−B7カッパ(配列番号44)、FJ−G11カッパ(配列番号46)、FK−E3カッパ(配列番号48)、IA1−1E7カッパ(配列番号56)、IP−2C11カッパ(配列番号62)、528ラムダ(配列番号4)、531ラムダ(配列番号6)、533ラムダ(配列番号8)、535ラムダ(配列番号10)、537ラムダ(配列番号14)、540ラムダ(配列番号16)、545ラムダ(配列番号22)、546ラムダ(配列番号24)、559ラムダ(配列番号34)、F1−C6ラムダ(配列番号38)、FB1−A7ラムダ(配列番号40)、FD−B2ラムダ(配列番号42)、G1D4ラムダ(配列番号50)、GC1E8ラムダ(配列番号52)、H1C12ラムダ(配列番号54)、IF−1C10ラムダ(配列番号58)及びIK−2E2ラムダ(配列番号60)のいずれかのCDR 1を含む特異的結合剤。
【請求項31】
526 HC(配列番号1)、528 HC(配列番号3)、531 HC(配列番号5)、533 HC(配列番号7)、535 HC(配列番号9)、536 HC(配列番号11)、537 HC(配列番号13)、540 HC(配列番号15)、543 HC(配列番号17)、544 HC(配列番号19)、545 HC(配列番号21)、546 HC(配列番号23)、551 HC(配列番号25)、553 HC(配列番号27)、555 HC(配列番号29)、558 HC(配列番号31)、559 HC(配列番号33)、565 HC(配列番号35)、F1−C6 HC(配列番号37)、FB1−A7 HC(配列番号39)、FD−B2 HC(配列番号41)、FE−B7 HC(配列番号43)、FJ−G11 HC(配列番号45)、FK−E3 HC(配列番号47)、G1D4 HC(配列番号49)、GC1E8 HC(配列番号51)、H1C12 HC(配列番号53)、IA1−1E7 HC(配列番号55)、IF−1C10 HC(配列番号57)、IK−2E2 HC(配列番号59)、IP−2C11 HC(配列番号61)、526カッパ(配列番号2)、536カッパ(配列番号12)、543カッパ(配列番号18)、544カッパ(配列番号20)、551カッパ(配列番号26)、553カッパ(配列番号28)、555カッパ(配列番号30)、558カッパ(配列番号32)、565カッパ(配列番号36)、FE−B7カッパ(配列番号44)、FJ−G11カッパ(配列番号46)、FK−E3カッパ(配列番号48)、IA1−1E7カッパ(配列番号56)、IP−2C11カッパ(配列番号62)、528ラムダ(配列番号4)、531ラムダ(配列番号6)、533ラムダ(配列番号8)、535ラムダ(配列番号10)、537ラムダ(配列番号14)、540ラムダ(配列番号16)、545ラムダ(配列番号22)、546ラムダ(配列番号24)、559ラムダ(配列番号34)、F1−C6ラムダ(配列番号38)、FB1−A7ラムダ(配列番号40)、FD−B2ラムダ(配列番号42)、G1D4ラムダ(配列番号50)、GC1E8ラムダ(配列番号52)、H1C12ラムダ(配列番号54)、IF−1C10ラムダ(配列番号58)及びIK−2E2ラムダ(配列番号60)のいずれかのCDR 2を含む特異的結合剤。
【請求項32】
526 HC(配列番号1)、528 HC(配列番号3)、531 HC(配列番号5)、533 HC(配列番号7)、535 HC(配列番号9)、536 HC(配列番号11)、537 HC(配列番号13)、540 HC(配列番号15)、543 HC(配列番号17)、544 HC(配列番号19)、545 HC(配列番号21)、546 HC(配列番号23)、551 HC(配列番号25)、553 HC(配列番号27)、555 HC(配列番号29)、558 HC(配列番号31)、559 HC(配列番号33)、565 HC(配列番号35)、F1−C6 HC(配列番号37)、FB1−A7 HC(配列番号39)、FD−B2 HC(配列番号41)、FE−B7 HC(配列番号43)、FJ−G11 HC(配列番号45)、FK−E3 HC(配列番号47)、G1D4 HC(配列番号49)、GC1E8 HC(配列番号51)、H1C12 HC(配列番号53)、IAI−1E7 HC(配列番号55)、IF−1C10 HC(配列番号57)、IK−2E2 HC(配列番号59)、IP−2C11 HC(配列番号61)、526カッパ(配列番号2)、536カッパ(配列番号12)、543カッパ(配列番号18)、544カッパ(配列番号20)、551カッパ(配列番号26)、553カッパ(配列番号28)、555カッパ(配列番号30)、558カッパ(配列番号32)、565カッパ(配列番号36)、FE−B7カッパ(配列番号44)、FJ−G11カッパ(配列番号46)、FK−E3カッパ(配列番号48)、IA1−1E7カッパ(配列番号56)、IP−2C11カッパ(配列番号62)、528ラムダ(配列番号4)、531ラムダ(配列番号6)、533ラムダ(配列番号8)、535ラムダ(配列番号10)、537ラムダ(配列番号14)、540ラムダ(配列番号16)、545ラムダ(配列番号22)、546ラムダ(配列番号24)、559ラムダ(配列番号34)、F1−C6ラムダ(配列番号38)、FB1−A7ラムダ(配列番号40)、FD−B2ラムダ(配列番号42)、G1D4ラムダ(配列番号50)、GC1E8ラムダ(配列番号52)、H1C12ラムダ(配列番号54)、IF−1C10ラムダ(配列番号58)及びIK−2E2ラムダ(配列番号60)のいずれかのCDR 3を含む特異的結合剤。
【請求項33】
請求の範囲第30項、第31項または第32項に記載の特異的結合剤をコードする核酸分子。
【請求項34】
(a)請求の範囲第1項に記載の特異的結合剤を生物学的サンプルと接触させ、(b)前記サンプルへの特異的結合剤の結合の程度を測定することを含む前記サンプル中のアンギオポエチン−2レベルの測定方法。
【請求項35】
(a)請求の範囲第20項に記載の抗体を生物学的サンプルと接触させ、(b)前記サンプルへの抗体の結合の程度を測定することを含む前記サンプル中のアンギオポエチン−2レベルの測定方法。
【請求項36】
重鎖及び軽鎖を含む抗体であって、前記重鎖が526 HC(配列番号1)、528 HC(配列番号3)、531 HC(配列番号5)、533 HC(配列番号7)、535 HC(配列番号9)、536 HC(配列番号11)、537 HC(配列番号13)、540 HC(配列番号15)、543 HC(配列番号17)、544 HC(配列番号19)、545 HC(配列番号21)、546 HC(配列番号23)、551 HC(配列番号25)、553 HC(配列番号27)、555 HC(配列番号29)、558 HC(配列番号31)、559 HC(配列番号33)、565 HC(配列番号35)、F1−C6 HC(配列番号37)、FB1−A7 HC(配列番号39)、FD−B2 HC(配列番号41)、FE−B7 HC(配列番号43)、FJ−G11 HC(配列番号45)、FK−E3 HC(配列番号47)、G1D4 HC(配列番号49)、GC1E8 HC(配列番号51)、H1C12 HC(配列番号53)、IAI−1E7 HC(配列番号55)、IF−1C10 HC(配列番号57)、IK−2E2 HC(配列番号59)、IP−2C11 HC(配列番号61)及びその抗原結合断片からなる群から選択される重鎖可変領域を含み、前記軽鎖が526カッパ(配列番号2)、536カッパ(配列番号12)、543カッパ(配列番号18)、544カッパ(配列番号20)、551カッパ(配列番号26)、553カッパ(配列番号28)、555カッパ(配列番号30)、558カッパ(配列番号32)、565カッパ(配列番号36)、FE−B7カッパ(配列番号44)、FJ−G11カッパ(配列番号46)、FK−E3カッパ(配列番号48)、IA1−1E7カッパ(配列番号56)、IP−2C11カッパ(配列番号62)、528ラムダ(配列番号4)、531ラムダ(配列番号6)、533ラムダ(配列番号8)、535ラムダ(配列番号10)、537ラムダ(配列番号14)、540ラムダ(配列番号16)、545ラムダ(配列番号22)、546ラムダ(配列番号24)、559ラムダ(配列番号34)、F1−C6ラムダ(配列番号38)、FB1−A7ラムダ(配列番号40)、FD−B2ラムダ(配列番号42)、G1D4ラムダ(配列番号50)、GC1E8ラムダ(配列番号52)、H1C12ラムダ(配列番号54)、IF−1C10ラムダ(配列番号58)及びIK−2E2ラムダ(配列番号60)及びその抗原結合断片からなる群から選択される軽鎖可変領域を含む前記抗体。
【請求項37】
請求の範囲第36項に記載の抗体をコードする核酸分子。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【公開番号】特開2012−210216(P2012−210216A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−125735(P2012−125735)
【出願日】平成24年6月1日(2012.6.1)
【分割の表示】特願2009−125548(P2009−125548)の分割
【原出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】