アンサマイシン製剤およびその使用法
本明細書では、特に、固体形態のゲルダナマイシン類似体、ゲルダナマイシン類似体および結晶化抑制剤を含む医薬組成物、ならびにそのような組成物の作製法および使用法を提供する。さらに、癌、腫瘍性疾患状態、および/または過剰増殖性障害の治療法、ならびに熱ショックタンパク質90(「Hsp90」)の抑制法を提供する。一実施形態において、本発明は、ベンゾキノンアンサマイシン化合物を含む医薬組成物を提供し、この化合物を15mg/kgの用量で被験体に経口投与するときに、この組成物は少なくとも100ng・hr/mlの曲線下領域を達成するに十分な量の化合物を送達し、このベンゾキノンアンサマイシン化合物は17−DMAGではない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、特許法119(e)の下、2006年12月12日に出願されたUSSN第60/874,349号、2007年4月27日に出願されたUSSN第60/914,477号および2007年5月24日に出願されたUSSN第60/939,913号(これらの各々の全体の開示は、参考として本明細書に援用される)の出願日の利益を主張する。
【0002】
(分野)
本明細書では、特に、固体形態のゲルダナマイシン類似体、ゲルダナマイシン類似体および結晶化抑制剤(crystallization inhibitor)を含む医薬組成物、ならびにそのような組成物の作製法および使用法を提供する。いくつかの実施形態では、癌および/または過剰増殖性障害の治療法、ならびに熱ショックタンパク質90(「Hsp90」)の抑制法を提供する。
【背景技術】
【0003】
Hsp90は、細胞の生存に関する役割を有するとともに、二重のシャペロン機能を示す多量タンパク質(abundant protein)である(J.Cell Biol.(2001)154:267−273,Trends Biochem.Sci.(1999)24:136−141)。これは、多くのタンパク質の天然立体配座が熱ショック等の各種の環境ストレスにより変化した後、それらのタンパク質と相互作用することにより細胞ストレス−応答に関する役割を果たし、十分なタンパク質折り畳みを確実に生じるとともに、非特異的凝集を防ぐ(Pharmacological Rev.(1998)50:493−513)。最近では、Hsp90が推定では変異タンパク質の不適切な折り畳みを修正することによって変異作用を緩和する役割も果たし得ることを示唆する結果が得られている(Nature(1998)396:336−342)。Hsp90はまた、正常な生理的条件下で調節を行う役割も有するとともに、多数の特定クライアントタンパク質の立体配座安定性および熟成に関与する(Expert.Opin.Biol Ther.(2002)2(1):3−24を参照されたい)。
【0004】
Hsp90アンタゴニストは、Hsp90活性の1つ以上の局面を抑制することにより、ある疾患または障害について治療効果が得られる数多くの生物学的状況において現在調査されている。
【0005】
ゲルダナマイシンは、天然産物のベンゾキノン含有アンサマイシンファミリーのメンバーである大環状ラクタムである。腫瘍細胞を破壊するためのゲルダナマイシンのナノモル力価(nanomolar potency)および見かけ上の選択性、ならびに哺乳類細胞におけるその主要標的がHsp90という発見により、それを抗癌剤として開発するという関心が呼び起こされた。しかしながら、その極端に低い溶解度およびゲルダナマイシンの投与と肝毒性の関連性により、治療用途のために承認可能な薬剤の開発が困難となった。特に、ゲルダナマイシンは難水溶性であり、治療に効果的な用量での送達が困難である。
【0006】
より最近では、Hsp90結合を維持しながら肝毒性を低減するゲルダナマイシン(「ゲルダナマイシン類似体」)の17−アミノ誘導体、特に、17−AAGが注目を集めている。特許文献1、特許文献2、および特許文献3を参照されたい。ゲルダナマイシンと同様に、これらの17−アミノ誘導体は水溶解度が非常に乏しい。結果的に、17−AGおよび17−AAGならびにそれらの固体形態等、ゲルダナマイシン類似体のさらなる医薬組成物を開発するという要望は満たされない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,261,989号明細書
【特許文献2】米国特許第5,387,584号明細書
【特許文献3】米国特許第5,932,566号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施形態では、Hsp90アンタゴニストとして有用な固体形態のゲルダナマイシン類似体を本明細書において提供する。また、本明細書では、特に、ゲルダナマイシン類似体を含む医薬組成物、そのようなバイオアベイラビリティが高い組成物の作製法、癌および/または過剰増殖性障害の治療のためのゲラナマイシン類似体(gelanamycin analogs)の使用法、ならびにHsp90の抑制法も提供する。本明細書では、ゲルダナマイシン類似体と結晶化抑制剤の混合物がゲルダナマイシン類似体のバイオアベイラビリティを劇的に改善することを発見している。この改善を達成する剤形の例には、固体分散剤、固体分子分散剤、およびそれら成分の物理的ブレンドが含まれるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、ゲルダナマイシン類似体が非晶質状態、微結晶状態、ナノ結晶状態、またはそれらを組み合わせた状態で存在する。
【0009】
特定の実施形態では、ゲルダナマイシン類似体および少なくとも1つの結晶化抑制剤の固体分散剤を含有する医薬組成物であって、当該ゲルダナマイシン類似体は実質的に非晶質形態で存在する、医薬組成物を提供する。他の実施形態では、非晶質ゲルダナマイシン類似体の調製法を提供する。本明細書で提供する非晶質ゲルダナマイシン類似体の固体分子分散剤を製造する1つの方法は、溶媒噴霧乾燥を伴う。非晶質ゲルダナマイシン類似体の固体分子分散剤の調製に使用可能な他の技術は、(1)粉砕、(2)押出、(3)高温融解凝固加工(high melt−congeal processes)および融解凝固加工(melt−congeal processes)を含む溶融加工、(4)溶媒修飾融合(solvent modified fusion)、(5)スプレーコーティング、凍結乾燥、溶媒蒸発(例えば、回転蒸発)、および噴霧乾燥を含む溶媒処理、ならびに(6)非溶媒析出を含むがこれらに限定されない。
【0010】
他の実施形態では、固体非晶質分散剤内において、純相として存在可能な非晶質ゲルダナマイシン類似体を結晶化抑制剤の全体に渡って均質に分布したゲルダナマイシン類似体の分子分散剤として、またはこれらの状態もしくはそれらの中間の状態の組み合わせとして提供する。いくつかの実施形態では、分散剤は、非晶質ゲルダナマイシン類似体が当該分散剤または剤形の全体に渡って均等に分散するように実質的に均質である。
【0011】
さらに他の実施形態では、各種の固体形態で存在するゲルダナマイシン類似体を提供する。特定の実施形態では、17−AGは複数の多型形態で存在する。そのような形態を、純粋な多型状態または、例えば、17−AGの他の多型形態を含む任意の他の材料と混ざった状態で含む17−AG組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】非晶質17−AGのXRPDパターンを示す。
【図2】17−AGの形態IのXRPDパターンを示す。
【図3】17−AGの形態IのDSCパターンを示す。
【図4】17−AGの形態Iの1HNMRスペクトルを示す。
【図5】17−AGの形態IIのXRPDパターンを示す。
【図6】17−AGの形態IIIのXRPDパターンを示す。
【図7】17−AGのEtOAc溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【図8】17−AGのEtOAc溶媒和物のDSCパターンを示す。
【図9】17−AGと酢酸エチルの割合を示す17−AGのEtOAc溶媒和物の1HNMRスペクトル。
【図10】図10aは、17−AG濃度レベルをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、オスのビーグル犬では非晶質17−AGを投与した場合、結晶質17−AGと比較して相対バイオアベイラビリティが高くなることを示す:(i)PVP固体分散製剤における17−AG(12%充填量)を含有する非コーティングHPMCカプセル(セッション1)、(ii)結晶質17−AGを含有する非コーティングHPMCカプセル(セッション3)、(iii)PVP固体分散製剤における17−AG(12%充填量)を含有するコーティングHPMCカプセル(セッション4)。図10bは、図10aのPKパラメータの集計表を示す。
【図11】図11aは、17−AG濃度レベルをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、メスのビーグル犬では非晶質17−AGを投与した場合、結晶質17−AGと比較して相対バイオアベイラビリティが高くなることを示す:(i)PVP固体分散製剤における17−AG(12%充填量)を含有する非コーティングHPMCカプセル(セッション1)、(ii)結晶質17−AGを含有する非コーティングHPMCカプセル(セッション3)、(iii)PVP固体分散製剤における17−AG(12%充填量)を含有するコーティングHPMCカプセル(セッション4)。図11bは、図11aのPKパラメータの集計表を示す。
【図12】t−BuOH/水(3:1)から凍結乾燥を用いて作製したPVP K−30固体分散製剤中の17−AG(12%充填量)のDSC走査を示す。
【図13】各種の17−AG/高分子分散剤のインビトロ溶出試験の結果をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図14】17−AG濃度レベルをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、2つの異なる方法により作製した固体分散製剤((図14a)回転蒸発により作製したPVP固体非晶質分散製剤における17−AG(20%充填量)を含有する非コーティングHPMCカプセル;および(図14b)噴霧乾燥により作製したPVP固体非晶質分散製剤における17−AG(20%充填量)を含有する非コーティングHPMCカプセル)を用いてメスのビーグル犬における非晶質17−AGの相対バイオアベイラビリティをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットして示す。図14cは、図14aおよび図14bのデータの集計表を示す。
【図15】回転蒸発を利用してPVPから生成した一連のアンサマイシン類似体の非晶質分散剤のSIFのインビトロ溶出試験をng/ml対期間(分)の関数としてプロットして示す。
【図16】回転蒸発により作製した17−AG+PVP(K−30中20%)の非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図17】結晶形態Iを0.1%添加した17−AG+PVPの非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図18】結晶形態Iを1%添加した17−AG+PVPの非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図19】結晶形態Iを5%添加した添加した17−AG+PVPの非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図20】結晶形態Iを10%添加した添加した17−AG+PVPの非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図21】各種の量の形態I 17−AG(0%、1%、および10%)を含有する17−AG/PVP分散剤のインビトロ溶出試験の結果をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフであり、過飽和溶液の安定性に対する各種の量の形態Iの影響を示す。
【図22】各種の量の形態II 17−AG(0%、1%、および10%)を含有する17−AG/PVP分散剤のインビトロ溶出試験の結果をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフであり、過飽和溶液の安定性に対する各種の量の形態IIの影響を示す。
【図23】各種の量の形態III 17−AG(0%、1%、および10%)を含有する17−AG/PVP分散剤のインビトロ溶出試験の結果をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフであり、過飽和溶液の安定性に対する各種の量の形態IIIの影響を示す。
【図24】各種錠剤およびカプセル(平均値、SIF中におけるインビトロ溶解)からの17−AGの溶解プロファイルを示すグラフであり、異なる組成の錠剤で各種の溶解/放出プロファイルを得られることを示す。
【図25】0%、0.5%、1.5%、および5%PVPを含有する各種のSIF溶液(50mg/mlの17−AGのDMSO溶液をSIF中において1:100で希釈)中の0.5mg/mlの17−AGを用いたインビトロ溶出試験の3次元棒グラフを左側に示し、0%、0.5%、1.5%、および5%PVPを含有する各種のSIF溶液(100mg/mlの17−AGのDMSO溶液をSIF中において1:100で希釈)中の1.0mg/mlの17−AGを用いたインビトロ溶出試験の3次元棒グラフを右側に示しており、ともに異なる量のPVPで17−AGを過飽和レベルにし、17−AGの核生成/析出を防ぐことによりその過飽和溶液が安定することを示す。
【図26】SIF中の異なる量のPVPがSIF中の17−AGの過飽和度を変化させる(すなわち、PVPの量が増えることにより、17−AGの過飽和レベルが高くなる)ことを示す3次元棒グラフを示す。
【図27】各種の量のPVP K−30(0%、0.5%、1%、2.5%、および5%)を含有するSIF中の17−AGの平衡溶解度をng/ml対期間の関数としてプロットしたグラフであり、PVPを加えることにより模擬腸液(SIF)中の17−AGの平衡溶解度が上昇することを示す。
【図28】図28aは、メスのビーグル犬における17−AGの血漿レベル濃度に対する各種の充填量の17−AG(PVP K−30において12%、20%、および30%充填量(w/w))の影響をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。図28bは、図28aのデータの集計表を示す。
【図29】図29aは、オスのビーグル犬における17−AGの血漿レベル濃度に対する各種の充填量の17−AG(PVP K−30において12%、20%、および30%充填量(w/w))の影響をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。図29bは、図29aのデータの集計表を示す。
【図30】図30aは、結晶化抑制剤が存在しない17−AGのEtOAc溶媒和物とラクトースの物理的ブレンドを含有する非コーティングHPMCカプセルの投与後の17−AGイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。図30bは、17−AGのEtOAc溶媒和物と結晶化抑制剤(PVP)の物理的ブレンドを含有する非コーティングHPMCカプセルの投与後の17−AGイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、結晶化抑制剤を加えることにより血漿レベル濃度が上昇することを示す。図30cは、図30aおよび図30bのPKパラメータの集計表を示す。
【図31】図31aは、結晶化抑制剤が存在しない非晶質17−AGおよびラクトースを含有する非コーティングHPMCカプセルの投与後の17−AGイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、結晶化抑制剤が存在しない場合でも結晶質17−AGと比べて血漿レベル濃度が高いことを示す。図31bは、非晶質17−AGおよび結晶化抑制剤(PVP)を含有する非コーティングHPMCカプセルの投与後の17−AGイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、結晶化抑制剤を加えることにより血漿レベル濃度が上昇することを示す。図31cは、図31aおよび図31bのPKパラメータの集計表を示す。
【図32】結晶化抑制剤が存在しない17−AG溶液(85%プロピレングリコール、5%エタノール、および10%DMSO)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度のグラフをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図33】結晶化抑制剤(PVP)を含有する17−AG溶液(85%プロピレングリコール、5%エタノール、および10%PVP)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示し、溶液および固体分散剤が経口投与に効果的な製剤であることを示す。
【図34】結晶化抑制剤(PEG−HS)を含有する17−AG溶液(生理食塩水中の20%ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール、5%DMSO)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図35】結晶化抑制剤(PEG−HSおよびPVP)を含有する17−AG溶液(生理食塩水中の20%ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール、5%DMSO、10%PVP)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図36】結晶化抑制剤(非イオン性Tween−80)を含有する17−AG溶液(注射用蒸留水中の2%非イオン性Tween−80、5%DMSO)の強制経口投与後のメスイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図37】結晶化抑制剤(PVPおよび非イオン性Tween−80)を含有する17−AG溶液(注射用蒸留水中の2%非イオン性Tween−80、5%DMSO、10%PVP)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図38】各種グレードのPVP(K−15、K−30、およびK−90)を用いた固体分散剤中の非晶質17−AG(12%充填量)の37℃での相対的インビトロ溶出試験(37℃のSIF)を標的(2mg/ml)に対する%対時間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。PVP K−90がPVPのグレードK−15またはK−30よりも17−AGの過飽和レベルを低くするという傾向は、17−AG充填量に関係なく一貫している。
【図39】異なる充填量レベルの17−AG(12%、20%、30%、および50%)を用いた非晶質17−AG+PVP分散剤の相対的インビトロ溶出試験(37℃のSIF)を標的(2mg/ml)に対する%対時間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。17−AGの過飽和レベルが充填量と逆の相関がある(すなわち、17−AGの充填量レベルが高くおよび結晶化抑制剤(PVP)のレベルが低い分散剤は17−AGの過飽和レベルが低い)という傾向は、PVPグレードに関係なく一貫している。
【図40】図40aは、固体分散製剤[小型(<50μM)および大型(>800μM)の粒径の両方]中の17−AG(20%充填量)+PVPの経口投与(10mg/kg)後のメスのビーグル犬における血漿濃度をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示し、粒径はインビボ曝露に大きく影響を及ぼさないことを示す。図40bは、図40aのPKパラメータの集計表を示す。図40cは、固体分散製剤[小型(50ミクロン未満)および大型(800ミクロンを超える)の粒径の両方]中の17−AG(20%充填量)+PVPの経口投与(10mg/kg)後のオスのビーグル犬における血漿濃度をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図41】図41aは、各種グレードのPVP(K−15、K30、およびK−90)を用いた非晶質17−AG分散剤の経口投与(15mg/kg)後のメスのビーグル犬における17−AG(12%充填量)血漿濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、一定の傾向を示している。このデータから、PVPグレードK−30は、PVP K−90よりも曝露を増大させるPVP K−15よりもさらに曝露を増大することが分かる。図41bは、図41aのPKパラメータの集計表を示す。
【図42】図42aは、各種グレードのPVP(K−15、K−30、およびK−90)を用いた非晶質17−AG分散剤の経口投与(15mg/kg)後のオスのビーグル犬における17−AG(12%充填量)血漿濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。メスイヌの投薬データと同様に、PVPグレードK−30は、PVP K−90よりも曝露を増大させるPVP K−15よりもさらに曝露を増大させる。図42bは、図42aのPKパラメータの集計表を示す。
【図43】ビーグル犬における非晶質分散剤(非コーティングHPMCカプセル中の12%17−AAGおよび結晶化抑制剤PVP)の単一カプセル投与後に得られた血漿レベルのグラフであり、17−AG以外のアンサマイシン類似体の非晶質分散剤の投薬により良好なインビボ曝露が得られることを示す。
【図44】偏光顕微鏡を用いて取得した例示的な画像を示す:(A)固体状態の17AG/PVP非晶質分散剤の4×透過光画像;(B)17AG/PVP非晶質分散剤水溶液の10×偏光画像;(C)17−AG/PVP非晶質分散剤中に結晶形態Iを0.01%添加し、水に溶解した場合の10×偏光画像;(D)17−AG/PVP非晶質分散剤中に結晶形態Iを0.1%添加し、水に溶解した場合の10×偏光画像;(E)17−AG/PVP非晶質分散剤に結晶形態Iを1.0%添加し、水に溶解した場合の10×偏光画像。
【図45】3:1のt−BuOH/水から凍結乾燥により作製し、水に溶解した17−AG/PVP分散剤の透過光顕微鏡写真を示す。
【図46】懸濁液および乳剤の例示的な写真画像を示す:(A)1%カルボキシメチルセルロース中の2%17−AG懸濁液;(B)10%PGHS、2.5%DMSO、5%Tween−80、50%オリーブ油中の2mg/mlの17−AGのNS。
【図47】17−AGの20%PG−HS、5%DMSO、75%生理食塩水溶液を用いて投与したマウスゼノグラフモデルH1975を利用した場合の腫瘍容積を時間(日)関数として示したグラフを示す。
【図48】17−AGの15%PVP、5%エタノール、80%プロピレングリコール溶液を用いて投与したマウスゼノグラフモデルH1650を利用した場合の腫瘍容積を時間(日)関数として示したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)定義および略語
本明細書で用いる用語の定義は、化学および医薬分野において各用語について認識される現在の最新技術の定義を取り入れるためのものである。必要に応じて例示を行う。これらの定義は、具体的な事例において個別にまたはより大きな群の一部として限定する場合を除いて、本明細書全体に渡って用いられる用語に適用される。
【0014】
原子の空間的配置を明示していない場合、本明細書に記載する発明化合物の全ての立体異性体が純粋な異性体およびそれらの混合物として本開示の範囲内に含まれる。特に明示しない限り、個々の鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物は全て本開示により包含される。多型結晶形態および溶媒和物もまた本開示の範囲内に包含される。
【0015】
「アシルアミノ」および「アシルアミン」という用語は、一般式
【0016】
【化1】
によって表すことが可能な部分を指す。
【0017】
ここで、R50およびR51の各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、または−(CH2)m−R61を表し、R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、または多環を表し、mは0または1〜8の範囲の整数であるか、またはR50およびR51は、それらが付着するN原子と組み合わされて、環状構造中に4〜8個の原子を有する複素環となる。
【0018】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基のラジカルを指す。特定の実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に30個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖がC1〜C30、分岐鎖がC3〜C30)、または20個以下の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、特定のシクロアルキルは、3〜10個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜10個の炭素原子をその骨格として含有し、置換されてもよい。いくつかの実施形態では、特定のシクロアルキルは、それらの環状構造中に3〜10個の炭素原子を有し、他のシクロアルキルは、環状構造中に5個、6個、または7個の炭素を有する。
【0019】
炭素数が特に明示されない限り、「低級アルキル」は上記で定義したようなアルキル基であって、その骨格構造に1〜約10個の炭素を有するもの、あるいは1〜約6個の炭素原子を有するものを指す。いくつかの実施形態では、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は同様の鎖長を有しており、その骨格構造に2〜約10個の炭素、あるいは2〜約6個の炭素原子を有する。
【0020】
「アルキルチオ」という用語は、上記で定義したようなアルキル基であって、硫黄ラジカルが付着したものを指す。特定の実施形態では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、および−S−(CH2)m−R61のうちの1つで表され、mおよびR61は上記で定義したとおりである。代表的なアルキルチオ基は、メチルチオ、エチルチオ等を含む。
【0021】
「アラルキル」という用語は当該分野で認知されており、アリール基(例えば、芳香族または複素環式芳香族基)で置換したアルキル基を指す。ベンジル、p−メトキシベンジル、およびフェニルエチルはアラルキルの一例である。
【0022】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、同様の長さを有し、上述したアルキルと置換が可能であるが、それぞれ、少なくとも1つの二重または三重結合を有する不飽和脂肪族基を指す。アルケニルおよびアルキニル基は、可能な原子価で許容される範囲で、アルキル基の置換基として適した同じ基で置換してもよい。特定の実施形態では、アルケニルおよびアルキニル基は、骨格構造中に2〜10個の炭素を含有する。
【0023】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義したようなアルキル基であって、酸素ラジカルが付着したものを指す。1つの実施形態では、アルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシ等を含む。アルコキシ基のアルキル部は、アルキル基と同様の大きさであり、可能な原子価で許容される範囲で、アルキル基の置換基として適切な同じ基で置換可能である。
【0024】
「アミド(amidoおよびamide)」という用語は、アミノ置換カルボニルとして当該分野で認知されており、一般式
【0025】
【化2】
により表すことが可能な部分を含み、R50およびR51は本明細書で定義したとおりである。
【0026】
「アミン」および「アミノ」という用語は当該分野で認知されており、例えば、一般式
【0027】
【化3】
で表すことができる部分等、非置換および置換アミンの両方を指し、R50、R51、およびR52は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R61を表すか、またはR50およびR51は、それらが付着するN原子と組み合わされて、環状構造中に4〜8個の原子を有する複素環となり、R61は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し、mは0または1〜8の範囲の整数である。他の実施形態では、R50およびR51(および必要に応じてR52)は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、または−(CH2)m−R61を表す。このように、「アルキルアミン」という用語は、上記で定義したようなアミン基であって、置換または非置換アルキルが付着したものを含む(すなわち、R50とR51の少なくとも一方はアルキル基である)。
【0028】
本明細書で用いる「アラルキル」という用語は、単独であっても、例えば、アラルキルオキシ等の基名の一部であっても、本明細書に記載するようなアリール基(例えば、芳香族または複素環式芳香族基)で置換した本明細書に記載するようなアルキル基を指す。各アラルキル基のアリール部分は、必要に応じて置換してもよい。1つの実施形態では、アラルキル基は、例えば、一般式Ar−(CH2)t−の群を含み、Arは芳香環または芳香族複素環を表し、tは1〜6の整数である。
【0029】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、単独であっても、「アリールオキシ」という他の名前の一部であっても、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等、N、O、およびSから選択される0〜4個のヘテロ原子を有し得る5員、6員、および7員単環芳香族基を指す。環状構造中にヘテロ原子を有するこれらのアリール基はまた、「アリール複素環」または「複素環式芳香族」と呼ぶことがある。芳香環は、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香環もしくは芳香族複素環部分、−CF3、−CN等、本明細書に記載する置換基で1つ以上の環位置が置換されてもよい。「アリール」という用語はまた、隣接する2つの環(これらの環は「縮合環」である)に対して2つ以上の炭素が共通しており、それら環の少なくとも1つは芳香族であり得る(例えば、他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロ環であり得る)2つ以上の環を有する多環系も含む。
【0030】
本明細書で用いる「ベンゾキノンアンサマイシン」(「ゲルダナマイシン化合物」として知られる)という用語は、(a)1つのアミド結合、および(b)ベンゾキノン部分(当該ベンゾキノン部分は大環状ラクタム環系およびベンゾキノン部分自体に対して外部に0〜2個の窒素置換基を有する)を含有する大環状ラクタム環系を意味する。天然に存在するベンゾキノンアンサマイシンの具体例は、ゲルダナマイシンおよびハービマイシンを含むがこれらに限定されない。
【0031】
「特徴的なXRPDピーク」または「一連の特徴的なピーク」という語句は、ある多形体と、異なる形態のXRPDパターンを比較して同定した同じ化合物の他の公知の多形体とを区別するXRPDスペクトルから採取した単一ピークまたは一連のピークを意味する。
【0032】
「結晶化抑制剤」という用語は、非晶質形態から固体状態または溶液状態の1つ以上の結晶形態への化合物変換を実質的に抑制する薬学上許容可能な賦形剤を意味する。結晶化抑制剤はまた、血流に対する化合物の送達において従来より少なくとも50%の吸収促進を可能にする十分に長い期間(例えば、約1〜6時間)胃腸管における結晶成長を実質的に抑制し得る。
【0033】
「ゲルダナマイシン類似体」という用語は、ゲルダナマイシン以外のベンゾキノンアンサマイシン、例えば、17−アミノ−ゲルダナマイシン(17−AG)、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)、または17−(2−ジメチルアミノエチル)アミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−DMAG)を指す。
【0034】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書に記載するようなシクロアルキル基であって、アルキルまたはシクロアルキル部分の少なくとも1つの炭素原子がN、O、およびSから選択されるヘテロ原子に置き換えられたものを指す。
【0035】
「ヘテロ原子」という用語は当該分野で認知されており、炭素または水素以外の任意の元素の原子を指す。例示的なヘテロ原子は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、およびセレンを含む。
【0036】
「ヘテロシクリル」、「ヘテロアリール」、「ヘテロ環」、または「複素環基」という用語は当該分野で認知されており、3〜約10員環状構造、あるいは環状構造が1〜4個のヘテロ原子を有する3〜約7員環を指す。複素環はまた、多環であってもよい。ヘテロ環基は、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリジノン等のラクタム、スルタム、スルトン等を含む。ヘテロ環は、1つ以上の位置を本明細書に記載するような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香環または芳香族複素環部分、−CF3、−CN等で置換されてもよい。
【0037】
「Hsp90介在性障害」または「Hsp90発現細胞介在性障害」という用語は、Hsp90が関与する病態および病状を指す。そのような関与は病態に直接的に関係するかまたは当該状態に間接的に関係し得る。この種の疾患に共通する特徴は、当該疾患がHsp90の活性、機能、または他のタンパク質との関連を抑制することによって改善可能なことである。Hsp90介在性障害の特定の例については後述する。
【0038】
本明細書で用いる「単離」という用語は、本明細書で提供する化合物と関連する場合、当該化合物が細胞または生物内にないこと、および当該化合物が本来は、通常伴う成分のいくつかまたは全てから分離していることを意味する。
【0039】
本明細書で用いる「分子分散剤」という用語は、1つの成分が当該系が全体に渡って化学的および物理的に均等および均質となるように他の成分中に分散する固体分散剤の一種を指す。これらの系は、結晶または微結晶状態において活性成分を実質的に含まないことが熱解析(例えば、示差走査熱量計測)、回折(例えば、X線回折)、または映像化(偏光顕微鏡検査法)技術により明らかにされている。
【0040】
「薬学上許容可能な塩」または「塩」という用語は、1つ以上の化合物の塩を指す。化合物の適切な薬学上許容可能な塩は、例えば、化合物溶液を薬学上許容可能な酸溶液(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、安息香酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、炭酸等)と混合することによって形成され得る酸付加塩を含む。上記化合物が1つ以上の酸性部分を持つ場合、薬学上許容可能な塩は、当該化合物溶液を薬学上許容可能な塩基溶液(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、アルキルアミン等)で処理することによって形成され得る。
【0041】
「薬学上許容可能な担体」という用語は、所望する特定の投薬形態に合った任意および全ての溶媒、希釈剤もしくは他の液体ビヒクル、分散剤もしくは懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘もしくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤等を含む。Remington’s Pharmaceutical−Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、医薬組成物の調剤に使用する各種の担体およびその調製のための公知技術を開示している。何らかの望ましくない生物学的影響を生じるかまたは医薬組成物の任意の他の成分と有害な相互作用を起こすことにより、従来の担体媒体が本明細書で提供する化合物と適合しない場合を除いて、その使用は本発明の範囲内にあるものとする。薬学上許容可能な担体として作用可能な材料の一例としては、ラクトース、グルコース、およびスクロース等の糖類、コーンスターチおよびジャガイモデンプン等のデンプン類、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース)、トラガント末、麦芽、ゼラチン、タルク、ココアバターおよび座薬ろう等の賦形剤、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油等の油類、プロピレングリコール等のグリコール類、オレイン酸エチルおよびラウレートエチル等のエステル類、寒天、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、無発熱因子水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム等の他の非毒性適合潤滑剤が含まれるがこれらに限定されない(調合者の判断に応じて着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、着香料および芳香剤、防腐剤ならびに抗酸化剤も組成物中に存在するようにすることができる)。
【0042】
「多環式(polycyclyl)」または「多環式基(polycyclic group)」という用語は当該分野で認知されており、2つ以上の炭素が2つの隣接する環(例えば、これらの環は、「縮合環」である)に共通する2つ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロ環)を指す。非隣接原子を介して結合する環は、「橋架(bridged)」環という。多環式の環の各々は、上述したような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、カルボニル、カルボキシル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香環または芳香族複素環部分、−CF3、−CN等で置換されてもよい。
【0043】
本明細書で用いる「保護基」という語句は、特定の官能基(例えば、O、S、またはN)が一時的に阻害され、多官能化合物の他の反応部位において反応が選択的に生じ得ることを意味する。特定の実施形態では、保護基は選択的に高収率で反応し、保護基質を予想される反応に対して安定させるが、この保護基は容易に入手でき、好ましくは無毒であり、他の官能基を攻撃しない試薬により選択的に高収率で除去する必要があり、当該保護基は(新たな立体中心を生成することなく)分離が容易な誘導体を形成してもよく、当該保護基は他の部位におけるさらなる反応を回避するための最低限の機能をさらに有する。本明細書で詳述するように、酸素、硫黄、窒素、および炭素保護基を利用してもよい。例えば、特定の実施形態では、本明細書で詳述するように、特定の例示的な保護基としては、カルボン酸エステル類、アルコールシリルエーテル類、アルデヒドアセタール類、およびケトンケタール類が挙げられる。本明細書では特定の他の例示的な保護基を詳述するが、本発明がそれらの保護基に限定されないことは言うまでもなく、上記の基準を用いて多様な同等の保護基をさらに容易に同定し、本発明において利用することができる。さらに、その内容の全てを本明細書において参考として援用する「Protective Groups in Organic Synthesis」Third Ed.Greene,T.W.およびWuts,P.G.,Eds.,John Wiley&Sons,New York:1999に各種の保護基が記載されている。
【0044】
「多形体」という用語は、特定の化学物質により得られる異なる結晶構造を指す。詳細には、多形体は特定の化学化合物が複数の構造配列と結晶化する際に生じる。
【0045】
「溶媒和物」という用語は、化学量論または非化学量論量の溶媒または溶媒の混合物が結晶構造に組み込まれた結晶形態を指す。
【0046】
本明細書で用いる「被験体」という用語は、治療、観察、および/または実験の対象となるかまたは対象となった動物(典型的には、哺乳類またはヒト)を指す。この用語を化合物または薬物の投与に関して用いた場合、被験体はすでに治療、観察、および/または化合物もしくは薬物投与の対象となっている。
【0047】
「実質的に非晶質」という用語は、本明細書に開示する組成物の説明に用いた場合、組成物内に存在する化合物の大部分が非晶質形態で存在し、当該組成物が約20%未満の結晶化合物、約15%未満の結晶化合物、約10%未満の結晶化合物、約5%未満の結晶化合物、約3%未満の結晶化合物、または約1%未満の結晶化合物、約0.1%未満の結晶化合物、または約0.01%未満の結晶化合物を有することを意味する。本発明のいくつかの実施形態では、組成物内に存在する化合物は、検出可能な結晶材料を含有しない。「実質的に非晶質」という用語は、本明細書に開示する化合物を説明するために用いた場合、当該化合物の大部分が非晶質形態で存在し、当該化合物が約20%未満の結晶含有量、約15%未満の結晶含有量、約10%未満の結晶含有量、約5%未満の結晶含有量、約3%未満の結晶含有量、または約1%未満の結晶含有量、約0.1%未満の結晶含有量、または約0.01%未満の結晶含有量を有することを意味する。本発明のいくつかの実施形態では、組成物内に存在する化合物は、検出可能な結晶材料を含有しない。
【0048】
「実質的に含まない」という用語は、材料または化合物を説明するために用いた場合、当該材料または化合物が明示した物質を有意なまたは検出可能な量で有さないことを意味する。いくつかの実施形態では、明示した物質は、当該材料または化合物の約1%、2%、3%、4%、または5%(w/wまたはv/v)以下のレベルで存在する。例えば、特定のゲルダナマイシン類似体の調製物は、明示した特定のゲルダナマイシン類似体以外の任意のゲルダナマイシン類似体の約1%、2%、3%、4%、または5%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合には、他のゲルダナマイシン類似体を「実質的に含まない」。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、非晶質ゲルダナマイシンの調製物は、結晶質ゲルダナマイシンを約1%、2%、3%、4%、または5%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合には、結晶質ゲルダナマイシンを「実質的に含まない」。本発明のいくつかの実施形態では、非晶質ゲルダナマイシンの調製物は、検出可能な結晶質ゲルダナマイシンを含有しない。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、非晶質17−AGの調製物は、結晶質17−AGを約1%、5%、10%または15%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合、結晶質17−AGを「実質的に含まない」。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、非晶質17−AAGの調製物は、結晶質17−AAGを約1%、5%、10%、または15%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合、結晶質17−AAGを「実質的に含まない」。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物の調製物は、明示した固体形態以外の任意の固体形態を約1%、5%、10%または15%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合、他の固体形態の17−AGを「実質的に含まない」。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物の調製物は、明示した固体形態以外の任意の固体形態を約1%、5%、10%、または15%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合、他の固体形態の17−AAGを「実質的に含まない」。
【0049】
「実質的に全て」という語句は、化合物のXRPDピークを説明するために用いた場合、その化合物のXRPDが基準値と比較して少なくとも約80%のピークを含むことを意味する。例えば、化合物のXRPDが参照リストの「実質的に全て」のピークまたは基準XRPDの全てのピークを含むと言った場合、その化合物のXRPDは特定の基準値の少なくとも80%のピークを含むことを意味する。他の実施形態では、「実質的に全て」という語句は、その化合物のXRPDが基準値と比較して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、または99%のピークのを含むことを意味する。さらに、当業者は一貫して、本明細書に示すXRPDピーク強度および相対強度は粒径の変化および他の関連する変数とともに変化し得ることを理解する。
【0050】
「実質的に均質」という用語は、ゲルダナマイシン類似体が分散剤または製剤全体に渡って一様に分散していることを意味する。よって、ある分散剤の10重量%にあたる当該分散剤の部分は、当該分散剤中に存在するゲルダナマイシン類似体の8〜12重量%または9〜11重量%を含有する。
【0051】
本明細書で用いる「実質的に抑制」という用語は、有意に低減することを意味する。例えば、非晶質化合物を固体状態における当該化合物の1つ以上の結晶形態に変換することを抑制する結晶化抑制剤では、約1時間以上、約3時間以上、約6時間以上、約12時間以上、約1日以上、約1週間以上、約1ヶ月以上、約3ヶ月以上、約6ヶ月以上、または約1年以上の間(例えば、結晶材料の約1%未満、約5%未満、約10%未満、約15%未満、約20%未満、または約25%未満に低減する変換であれば、そのような変換は「実質的に抑制」される)。
【0052】
「置換」という用語は、アルキル、シクロアルキルアリール等の化学基であって、少なくとも1つの水素が本明細書に記載するような置換基((例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香環または芳香族複素環部分、−CF3、−CN等)と置き換えられたものを指す。「置換」という用語はまた、有機化合物の許容可能な置換基の全てを含むものとする。大局的には、上記許容可能な置換基は、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環、芳香族および非芳香族置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、上述したものが挙げられる。上記許容可能な置換基は、適切な有機化合物について1つ以上存在し、同じであっても異なっていてもよい。この開示の目的のために、窒素等のヘテロ原子は、当該ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の水素置換基および/または任意の許容可能な置換基を有してもよい。本開示はいかなる点においても有機化合物の許容可能な置換基を限定するものではない。多くの実施形態では、しかしながら、任意の単一置換基は、合計で100未満の原子を有する。
【0053】
「置換」または「と置換」は、そのような置換が置換原子および置換基の許容される原子価と一致しており、その置換の結果、安定した化合物、例えば、再配列、環化、脱離、または他の反応等により自然に形質転換しない化合物を生じるという黙示的条件を含むことは言うまでもない。
【0054】
各表現(例えば、アルキル、m、n等)の定義は、任意の構造において複数回発生する場合には、同じ構造内の他の部位における定義とは独立しているものとする。
【0055】
本明細書で用いる「糖」という用語は、1つ以上の三炭糖、四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖、八炭糖、および九炭糖を含む天然または非天然単糖、二糖、オリゴ糖、または多糖を指す。糖類は、単糖カルボニル基の還元から得られるアルジトール、単糖のカルボン酸による1つ以上の末端基の酸化から得られるアルドン酸、単糖中の水素による1つ以上のヒドロキシル基の置換えから得られるデオキシ糖、単糖中のアミノ基による1つ以上のヒドロキシル基の置換えから得られるアミノ糖、チオール基による1つ以上のヒドロキシル基の置換えから得られるチオ糖、または、例えば、アシルアミノ基、硫酸基、リン酸基、もしくは同様のヘテロ原子基による1つ以上のヒドロキシル基の置換えから得られる他の類似化合物、またはこのような修飾の任意の組み合わせを含んでもよい。糖という用語はまた、これらの化合物の類似体(すなわち、アシル化、アルキル化、および糖アルコールとアルデヒドまたはケトンの反応によるグリコシド結合の形成等で化学修飾した糖)を含む。糖は、ヘミアセタール、ヘミケタール、またはラクトンとして環状(オキシロース、オキセトースムフラノース(oxetosesm furanoses)、ピラノース、セプタノース、オクタノース等)形態で存在するか、または非環状形態で存在するようにしてもよい。上記単糖は、ケトース、アルドース、ポリオール、および/またはケトース、アルドースおよびポリオールの混合物であってもよい。糖は、グリセロール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ソルビトール、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、マンノース、マンニトール、グロース、デキストロース、イドース、ガラクトース、タロース、グルコース、フルクトース、デキストレート(dextrates)、ラクトース、スクロース、デンプン(すなわち、アミラーゼおよびアミロペクチン)、デンプングリコール酸ナトリウム、セルロースおよびセルロース誘導体(すなわち、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロー(hydroxypropyl celluloe)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、クロスカルメロース、ヒポメロース(hypomellose)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カラギーナン、シクロデキストリン、デキストリン、ポリデキストロース、およびトレハロースを含み得るがこれにら限定されない。
【0056】
「過飽和」という用語は、溶液の溶解溶質の濃度が所与の温度における所与の溶媒内の同じ溶質の平衡溶解度での濃度よりも高いことを意味する。
【0057】
本明細書で用いる「治療に有効な量」という語句は、細胞培養、組織系、動物、またはヒトにおいて所望の生物学的または薬理的応答を引き起こすのに十分な量を意味する。いくつかの実施形態では、上記応答は、治療する病気、疾患、または障害の1つ以上の症状の発現の軽減および/または遅延を含む。
【0058】
「組み合わされて結合を形成する」という語句は、2つの化学基に関して用いた場合、それらの基が、他の方法では直接的に相互に結合しない原子に付着するときに、それらが付着する原子間の結合を表すことを意味する。それらの基が直接的に相互に結合する原子上にある場合、それら2つの原子間のさらなる結合を表す。よって、例えば、R5およびR6を組み合わせて結合を形成する場合、−CH(R5)−CH(R6)−という構造は、−C(H)=C(H)−を表す。
【0059】
本明細書で開示する組成物が含有する特定の化合物は、特定の幾何学的または立体異性体的形態で存在してもよい。特に明記しない限り、本開示は、本開示の範囲内にあるシスおよびトランス異性体、RおよびS−鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含むような化合物の全てを含むものとする。さらなる不斉炭素原子がアルキル基等の置換基内に存在してもよい。そのような異性体の全て、およびそれらの混合物は、本開示に含まれるものとする。
【0060】
(2)固体形態
各種の固体形態で存在し得るゲルダナマイシン類似体を本明細書に示す。そのような形態には、多形体として知られる純結晶形態が含まれる。そのような固体形態はまた、溶媒和物、水和物、無水形態、および非晶質も含む。そのような固体形態のゲルダナマイシン類似体は本開示の範囲内である。特定の実施形態では、ゲルダナマイシン化合物が17−AGおよび/または17−AAGの異なる固体形態(例えば、多形体、溶媒和物、および非晶質ゲルダナマイシン類似体)の1つ以上の混合物として提供される。
【0061】
本明細書では、17−AGは、本明細書において非晶質17−AGと呼ぶ非晶質固体として提供され、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、非晶質17−AGは、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。非晶質固体は当業者には周知であり、典型的には、特に、凍結乾燥、溶融、および超臨界流体からの析出等の方法により調製される。非晶質17−AGの調製法は下記の実施例に記載する。
【0062】
いくつかの実施形態では、非晶質17−AGは、図1に示すものと同様のXRPDパターンを有することを特徴とする。
【0063】
特定の実施形態では、結晶形態の17−AGを実質的に含まない実質的に非晶質の17−AGを提供する。
【0064】
本明細書では少なくとも3つの多形体形態を提供し、本明細書では、17−AGの形態I、形態II、および形態IIIと呼ぶ。
【0065】
特定の実施形態では、17−AGの形態Iを提供する。いくつかの実施形態では、17−AGの形態Iであって、そのXRPDパターンの特定のピーク±約0.3度2θにピークを有することを特徴とするものを提供する。本明細書で用いる「約」という用語は、記載するいずれの度2θ値に関して用いた場合にもその値の報告小数位に応じて明記した値±0.3度2θを指す。
【0066】
特定の実施形態では、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AGの形態Iを提供する。いくつかの実施形態では、17−AGの形態Iは、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、形態Iは、約6.2、8.5、13.6、15.9、16.9、22.4、23.4、26.3、30.6、31.7、35.1、および36.1度2θ、ならびにそれらの組み合わせから選択されるそのXRPDパターンの代表的なピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態Iは、約6.2、8.5 13.6、および15.9度2θから選択される少なくとも1つのピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態Iは、約6.2、8.5、13.6、および15.9から選択されるそのXRPDパターンの少なくとも1つの代表的なピークと、約6.2、8.5、13.6、15.9、16.9、22.4、23.4、26.3、30.6、31.7、35.1、および36.1度2θから選択される少なくとも1つの他のピークの組み合わせを特徴とする。いくつかの実施形態では、17−AGの形態Iは、図2に示すそのXRPDパターンの実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
【0067】
いくつかの実施形態では、形態Iは、図3に示すものと同様のDSCパターン有することを特徴とする。形態Iの代表的な1HNMRスペクトルを図4に示す。
【0068】
特定の実施形態では、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AGの形態IIを提供する。いくつかの実施形態では、17−AGの形態IIは、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、形態IIは、約9.5、10.1、12.5、15.1、16.1、16.8、19.8、20.7、21.5、22.4、25.1、25.8、29.5、および30.5度2θ、ならびにそれらの組み合わせから選択されるそのXRPDパターンの代表的なピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIは、約12.5、15.1、20.7、22.4、および25.0度2θから選択される少なくとも1つのピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIは、約12.5、15.1、20.7、22.4、および25.0から選択されるそのXRPDパターンの少なくとも1つの代表的なピークと、約9.5、10.1、12.5、15.1、16.1、16.8、19.8、20.7、21.5、22.4、25.1、25.8、29.5、および30.5度2θから選択される少なくとも1つの他のピークの組み合わせを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIは、実質的に図5に示すようなXRPDピークを特徴とする。
【0069】
特定の実施形態では、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AGの形態IIIを提供する。いくつかの実施形態では、17−AGの形態IIIは、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、形態IIIは、約8.4、9.3、10.9、11.6、13.6、13.9、15.7、16.3、17.1、18.3、18.6、19.9、21.0、22.0、24.3、25.8、28.2、29.2、および30.8度2θ、ならびにそれらの組み合わせから選択されるそのXRPDパターンの代表的なピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIIは、約18.3、21.0、および24.3度2θから選択される少なくとも1つのピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIIは、約18.3、21.0、および24.3から選択されるそのXRPDパターンの少なくとも1つの代表的なピークと、約8.4、9.3、10.9、11.6、13.6、13.9、15.7、16.3、17.1、18.3、18.6、19.9、21.0、22.0、24.3、25.8、28.2、29.2度2θから選択される少なくとも1つの他のピークの組み合わせを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIIは、実質的に図6に示すようなXRPDピークを特徴とする。
【0070】
本明細書においてEtOAc溶媒和物と呼ぶ、17−AGの少なくとも1つの溶媒和物形態も提供する。
【0071】
特定の実施形態では、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AGの酢酸エチル溶媒和物を提供する。いくつかの実施形態では、17−AGのEtOAc溶媒和物は、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、約6.2、8.2、12.6、14.5、15.9、16.8、17.5、22.3、23.3、および25.3度2θ、ならびにそれらの組み合わせから選択されるそのXRPDパターンの代表的なピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、約8.2、15.9、および22.3度2θから選択される少なくとも1つのピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、酢酸エチル溶媒和物は、約8.2、15.9、および22.3から選択されるそのXRPDパターンの少なくとも1つの代表的なピークと、約6.2、8.2、12.6、14.5、15.9、16.8、17.5、22.3、23.3、および25.3度2θから選択される少なくとも1つの他のピークの組み合わせを特徴とする。いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、実質的に図7に示すようなXRPDピークを特徴とする。
【0072】
いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、図8に示すものと同様のDSCパターンを有することを特徴とする。ある実施形態では、DSCは、脱溶媒和事象と一致する約96℃で吸熱遷移を示す。いくつかの実施形態では、DSCは、約276℃で吸熱遷移(溶融点開始)を示す。
【0073】
いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、17−AGと酢酸エチルがほぼ2:1の比率の錯体の存在を示す下記の図9に実質的に示すような1HNMRピークを特徴とする。
【0074】
他の実施形態では、本明細書では、本明細書において非晶質17−AAGと呼ぶ非晶質固体として存在可能であり、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AAGも提供する。いくつかの実施形態では、非晶質17−AAGは、他の固体形態の17−AAGを実質的に含まない。非晶質固体は当業者には周知であり、典型的には、特に、凍結乾燥、溶融、および超臨界流体からの析出等の方法で調製される。非晶質17−AAGの調製法は以下の実施例に記載する。
【0075】
特定の実施形態では、他の結晶形態の17−AAGを実質的に含まない実質的に非晶質の17−AAGを提供する。
【0076】
いくつかの実施形態では、非晶質17−AAGおよび少なくとも1つの結晶形態の17−AAGを含む組成物を提供する。そのような結晶形態の17−AAGは、本明細書に記載の純結晶形態、溶媒和物、および水和物、または非晶質17−AAGの調製および/もしくは単離により生じ得る他の結晶形態の17−AAGを含む。特定の実施形態では、非晶質17−AAGおよび本明細書に記載の少なくとも1つの結晶形態の17−AAGを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、非晶質17−AAGおよび少なくとも1つの結晶形態の17−AAGを含む組成物を提供する。
【0077】
(3)医薬組成物
ゲルダナマイシンおよび他のベンゾキノンアンサマイシン化合物(例えば、17−AGおよび17−AAGを含む)は水溶性が低いため、バイオアベイラビリティが低く、経口投与には適していないことは当該分野で認知されている。本明細書では、例えば、非晶質形態(および/または結晶化抑制剤の存在下)で送達する場合に、経口投与が可能な化合物の医薬組成物を提供する。1つの実施形態では、17−AGまたは17−AAG等のベンゾキノンアンサマイシン化合物の経口製剤であって、固体または液体組成物中に非晶質化合物を含み、必要に応じて結晶化抑制剤も含む経口製剤を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、非晶質ゲルダナマイシン類似体と結晶化抑制剤の混合物を含有することにより、非晶質ゲルダナマイシン類似体のバイオアベイラビリティを劇的に改善するという驚くべき知見が得られたため、経口投与に有用である。
【0078】
いずれの特定の理論に縛られることなく、本明細書において提供する本発明の経口製剤のバイオアベイラビリティの改善に寄与し、胃腸管において製剤から放出された際に化合物の再結晶化を低減し得る1つのメカニズムを提案する。すなわち、送達した製剤から放出された際に化合物の吸収が遅い場合、胃腸管において過飽和溶液が生成され、結晶化が起こる可能性がある。結晶化が抑制され、より多くの化合物が溶液中に残留する場合、送達が改善され得る。よって、本明細書で提供する組成物は、上記化合物の結晶化を抑制することにより、消化管において水媒体中の低溶解度ベンゾキノンアンサマイシン化合物を迅速かつ十分に長い時間をかけて溶解させることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、(17−DMAG以外の)ベンゾキノンアンサマイシン化合物を含有する組成物は、活性化合物を15mg/kgの用量で投与した場合、当該活性化合物の少なくとも100ng・ml/時間、少なくとも500ng・ml/時間、少なくとも1,000ng・ml/時間、少なくとも5,000ng・ml/時間、少なくとも10,000ng・ml/時間、少なくとも15,000ng・ml/時間、少なくとも25,000ng・ml/時間、または少なくとも50,000ng・ml/時間のAUCに十分な量の化合物の送達が可能である。
【0080】
上述の実施形態のいくつかでは、上記化合物は実質的に非晶質形態で存在する。
【0081】
いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤および式1
【0082】
【化4】
の化合物またはその薬学上許容可能な塩を含む経口投与のための医薬組成物であって、
R1はH、−OR8、−SR8−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、CN、またはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル(heterocycloaklyl)、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)CH3、または−[(C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、2、3、4、5、または6であり、
R4はH、アルキル、アケニル(akenyl)、またはアラルキルであり、
R5およびR6は各々Hであるか、またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素 アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9の各々は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR8およびR9は組み合わされてO、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアラルキルであり、
R11は、各出現について独立してH、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、−OR8、−SR8、−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、−C(O)R8、−C(O)2R8、−C(O)N(R8)(R9)、ハロゲン化物、またはCNである、医薬組成物を提供する。
【0083】
いくつかの実施形態では、R1はOHであり、R4はHであり、R5およびR6は組み合わされて結合を形成する。
【0084】
いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤および式1
【0085】
【化5】
の化合物を含む経口投与のための医薬組成物を提供する。
【0086】
特定の実施形態では、結晶化抑制剤および式1
【0087】
【化6】
の化合物またはその薬学上許容可能な塩を含む経口投与のための医薬組成物であって、
R1は−OR8、−C(=O)CH3、またはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、または2であり、
R4はHであり、
R5およびR6は各々Hであるか、またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9は各々独立してHであるか、またはR8およびR9は組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してHであり、
R11は、各出現について独立してH、−N(R8)(R9)、またはハロゲン化物である、医薬組成物を提供する。
【0088】
ベンゾキノンアンサマイシン化合物の例としては、下記の構造
【0089】
【化7】
【0090】
【化8】
を有するものが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する組成物は、非晶質17−AGを含有し、結晶化抑制剤を使用しない場合でも、結晶質17−AGに対するバイオアベイラビリティを改善するという驚くべき知見が得られたため、そのような組成物は経口投与等の投与に有用である。
【0092】
上述の実施形態のいくつかでは、上記化合物は実質的に非晶質形態で存在する。
【0093】
同様に、いくつかの実施形態では、上記組成物は、当該組成物の総重量の少なくとも約10%、25%、50%、75%(w/w)の量の結晶化抑制剤を含有する。
【0094】
上述の実施形態のいくつかでは、上記結晶化抑制剤はPVPである。上述の実施形態のいくつかでは、上記17−AGは実質的に非晶質である。
【0095】
特定の実施形態では、上記医薬組成物はペースト、溶液、スラリー、軟膏、乳剤、または分散剤の形態であってもよい。特定の実施形態では、上記医薬組成物は分子分散剤であるか、または分子分散剤を含む。
【0096】
特定の実施形態では、上記結晶化抑制剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)(ポリビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにN−ビニルピロリドンのホモポリマーまたはコポリマーを含む)、クロスポピドン、ガム類、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム他を含む)、デキストラン、アカシア、ビニルラクタムのホモポリマーおよびコポリマーならびにそれらの混合物、シクロデキストリン、ゼラチン、ヒプロメロースフタレート、糖類、多価アルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン誘導体、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール誘導体等、SLS、Tween、Eudragit、ならびにそれらの組み合わせから選択するようにしてもよい。上記結晶化抑制剤は、水溶性または不水溶性のいずれであってもよい。
【0097】
HPMCは、セルロース骨格の鎖長が異なるため、例えば、2%(W/W)水溶液で測定した粘度も異なる。本明細書で提供する医薬組成物に用いるHPMCは、水溶液(2%(w/w)の濃度)中において、約100〜約100,000cP、約1000〜約15,000cP、例えば、約4000cPの粘度を有するようにしてもよい。特定の実施形態では、本明細書で提供する医薬組成物に用いるHPMCの分子量は、約10,000〜約1,500,000まで、約1,000,000まで、約500,000まで、または約150,000までとなるようにしてもよい。
【0098】
HPMCはまた、セルロース骨格上でのメトキシおよびヒドロキシプロポキシ基による利用可能なヒドロキシル基の相対的置換度も異なる。ヒドロキシプロポキシ置換が増加すると、結果的に生じるHPMCの親水性は高くなる。特定の実施形態では、上記HPMCは、約15%〜約35%、約19%〜約32%、または約22%〜約30%のメトキシ置換を有し、約3%〜約15%、約4%〜約12%、または約7%〜約12%のヒドロキシプロポキシ置換を有する。
【0099】
上記医薬組成物で使用可能なHPMCの実例としては、Dow Chemical Co.のMethocel(商標)およびShin−Etsu Chemical Co.のMetolose(商標)という商品名で販売されているものがある。中程度の粘度を有する適切なHPMCの例としては、Methocel(商標)E4M、およびMethocel(商標)K4Mが挙げられ、これらは共に2%(w/w)水溶液で約400cPの粘度を有する。より高い粘度を有するHPMCの例としては、Methocel(商標)E10M、Methocel(商標)K15M、およびMethocel(商標)K100Mが挙げられ、これらは、2%(w/w)水溶液でそれぞれ約10,000cP、15,000cP、および100,000cPの粘度を有する。HPMCの一例としては、HPMC−アセテートサクシネート、すなわち、HPMC−ASがある。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書で提供する医薬組成物に用いるPVPは、約2,500〜約3,000,000ダルトン、約8,000〜約1,000,000ダルトン、約10,000〜約400,000ダルトン、約10,000〜約300,000ダルトン、約10,000〜約200,000ダルトン、約10,000〜約100,000ダルトン、約10,000〜約80,000ダルトン、約10,000〜約70,000ダルトン、約10,000〜約60,000ダルトン、約10,000〜約50,000ダルトン、または約20,000〜約50,000ダルトンの分子量を有する。特定の事例では、本明細書で提供する医薬組成物に用いるPVPは、20℃の10%水溶液で、約1.3〜約700、約1.5〜約300、または約3.5〜約8.5mPasの動的粘度を有する。
【0101】
PEGを用いる場合、それらは、約5,000〜20,000ダルトン、約5,000〜15,000ダルトン、または約5,000〜10,000ダルトンの平均分子(average molecular)を有するようにすることができる。
【0102】
本明細書では、17−AGおよび少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤を含む経口送達のための医薬組成物も提供し、当該医薬組成物は結晶質17−AGを実質的に含まない。特定の事例では、そのような医薬組成物中の17−AGは、約15%(w/w)未満、約10%(w/w)未満、約5%(w/w)未満、約3%(w/w)未満、または約1%(w/w)未満の結晶質17−AGを含む。そのような医薬組成物は、固体の投薬形態(例えば、錠剤またはカプセル)、ペースト、乳剤、スラリー、または軟膏として製剤化してもよい。
【0103】
本明細書では、17−AAGおよび少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤を含む経口送達のための医薬組成物も提供し、当該医薬組成物は結晶質17−AAGを実質的に含まない。特定の事例では、そのような医薬組成物中の17−AAGは、約15%(w/w)未満、約10%(w/w)未満、約5%(w/w)未満、約3%(w/w)未満、または約1%(w/w)未満の結晶質17−AAGを含む。そのような医薬組成物は、固体の投薬形態(例えば、錠剤またはカプセル)、ペースト、乳剤、スラリー、または軟膏として製剤化してもよい。
【0104】
上述のように、本発明のベンゾキノンアンサマイシンおよび医薬組成物は、医薬組成物または投薬形態を形成する従来の医薬配合技術に従って薬学上許容可能な担体および賦形剤をさらに含むようにしてもよい。適切な薬学上許容可能な担体および賦形剤は、本明細書において参考として援用するRemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy,(Gennaro,A.R.,ed.,19th edition,1995,Mack Pub.Co.)に記載のものを含むがこれらに限定されない。「薬学上許容可能な」という語句は、哺乳類(例えば、ヒト)等の動物に投与した際に、生理的に耐えられ、急性胃蠕動、眩暈等のアレルギー反応または同様の有害反応を通常は生じない添加剤または組成物を指す。経口液体医薬組成物に関しては、医薬担体および賦形剤として、水、グリコール、油類、アルコール類、着香料、防腐剤、着色剤等が挙げられるがこれらに限定されない。経口固体医薬組成物は、デンプン類、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、および崩壊剤を含み得るがこれらに限定されない。上記医薬組成物および投薬形態はまた、ベンゾキノンアンサイマイシン化合物(benzoquinone ansaymyscin compound)または上述したような固体形態を含んでもよい。
【0105】
本明細書に記載の固体形態は、経口投与に適した医薬組成物の作製に有用であり得る。そのような医薬組成物は、本明細書に記載のベンゾキノンアンサマイシン化合物のいずれかを、例えば、非晶質で結晶化抑制剤を含まない形態、または非晶質で結晶化抑制剤を組み合わせた形態で含有してもよい。そのようなベンゾキノンアンサマイシンの例は、Schnurら、J.Med.Chem.1995,38:3806−12に記載されている。
【0106】
(4)製薬学的用途および治療法
本明細書では、上述した化合物または医薬組成物のいずれかを、それを必要とする患者に対して治療有効量だけ経口投与する工程を含む癌治療法、Hsp90抑制法、および/または過剰増殖性障害治療法も提供する。例えば、17−AAGは、現在、臨床試験において多発性骨髄腫の治療薬として研究されている。17−AGは、17−AAGの代謝作用によりヒトの体内で製造され(Egorinら、1998)、活性抗癌剤として考えられている。癌、腫瘍性疾患状態または過剰増殖性障害は、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸癌、結腸直腸癌、脾臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、骨髄異形性症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、軟部組織肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫)、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌(stadenocarcinoma)、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、膀胱癌、上皮性腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽腫、子宮内膜癌、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝細胞癌、甲状腺癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、小細胞癌、本態性血小板血症、原因不明骨髄様化生、好酸球増加症候群、全身性肥満細胞症、家族性過好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、甲状腺癌、神経内分泌癌、およびカルチノイドからなる群から選択される。
【0107】
特定の実施形態では、上記癌は、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、前立腺癌、乳癌、黒色腫、慢性骨髄性白血病、および非小細胞肺癌からなる群から選択される。
【0108】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、17−AG等のベンゾキノン化合物を用いて病気を治療する。特定の実施形態では、17−AGは実質的に非晶質である。
【0109】
(5)投薬
本発明の医薬組成物中のベンゾキノンアンサマイシン(例えば、ゲルダナマイシン類似体)の実際の投与量レベルは、ゲラナマイシン類似体が患者に有害にならないように特定の患者、組成物、および投与方法にとって望ましい治療反応を達成する上で効果的な量になるように変更してもよい。
【0110】
選択した投与量レベルは、使用する特定のゲルダナマイシン類似体またはその塩の活性、使用する特定の化合物の投与経路、投与期間、排泄率または代謝率、吸収率および吸収量、治療期間、上記特定の化合物と組み合わせて用いる他の薬物、化合物および/または材料、治療する患者の年齢、性別、体重、病状、健康状態およびそれまでの病歴、ならびに医療分野において周知の因子を含む各種の因子に依存する。
【0111】
当該分野における通常の技術を有する医師または獣医は、必要とする医薬組成物の有効量を容易に判断および処方することができる。例えば、医師または獣医は、本明細書で提供し、医薬組成物に用いる化合物の投薬を所望の治療効果を得るために必要なレベルより低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加することができる。
【0112】
一般に、適量のゲルダナマイシン類似体とは、治療効果を生じる安全かつ有効な最低量の化合物である。そのような有効量は、一般に、上述した因子に依存する。ゲルダナマイシン類似体を他の化学療法または放射線と組み合わせて投与する場合、各薬剤の投与量は、多くの場合、単剤療法での対応する投与量よりも少ない。
【0113】
提供する組成物は、単位投与剤形に製剤化してもよい。そのような剤形は、当業者には周知のものであり、カプセル、錠剤等を含む。特定の実施形態では、本発明は、進歩的なゲルダナマイシン類似体を充填したカプセルを含む製剤を提供する。他の実施形態では、本発明は、進歩的なゲルダナマイシン類似体を含む経口投与のためのカプセルを提供する。いくつかの実施形態では、単位投薬形態(例えば、カプセルまたは錠剤)は、5〜1,000mg、例えば、25、50、125、250、または500mgのゲルダナマイシン類似体を含有する。いくつかの実施形態では、単位投薬形態は、5mg/kgより多くのゲルダナマイシン類似体を含有する。
【0114】
いくつかの実施形態では、ゲルダナマイシン類似体の経口量は、1mg/kg〜100mg/kg以下、5mg/kg〜50mg/kg以下、5mg/kg〜25mg/kg以下、10mg/kg〜20mg/kg以下であり、少なくとも100ng・hr/mlの曲線下領域ができることを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記量は15mg/kgである。いくつかの実施形態では、曲線下領域は、少なくとも500、1000、5000、10,000、または15,000ng・hr/mlとなる。
【0115】
ゲルダナマイシン類似体(例えば、17−AGまたは17−AAG)の1日総投与量は、典型的には、1日当たり500〜1,500mgの範囲である。特定の実施形態では、70kgの成人に対するゲルダナマイシン類似体の有効投与量は、1日当たり約100mg〜約1,500mgの化合物(例えば、17−AGまたは17−AAG)としてもよい。上記の用量範囲は、成人に対する活性化合物の投与のための指針であることは言うまでもない。例えば、幼児または新生児に対する投与量は、医者または当業者が判断することができ、成人に対する投与量以下とすることができる。
【0116】
ゲルダナマイシン類似体は、1日1回、1日おき、週3回、週2回、週1回、または隔週で投与することができる。投薬スケジュールは、「休薬期間」を含むようにすることができ、すなわち、二週続けて、一週間休むか、または休薬期間なしで継続して薬物を投与するようにできる。
【0117】
(6)併用療法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、癌の治療において選択的な活性を生じるために他の治療薬と組み合わせて用いることができる。特定の実施形態では、本明細書に記載のゲルダナマイシン類似体を用いて適切に折り畳んだHsp90クライアントタンパク質の細胞レベルを低減した後、第2の薬剤により効果的に抑制する。例えば、ベンゾキノンアンサマイシン類似体とHsp90の結合により、クライアントタンパク質のプロテアソームに対するターゲティングを行った後、分解する。プロテアソームを標的として抑制する薬剤(例えば、Velcade(登録商標))を用いることにより、細胞アポトーシスおよび細胞死を増加させる。
【0118】
本明細書に記載の製剤と組み合わせて使用可能な治療薬の一例としては、アルキル化剤、血管新生阻害剤、代謝拮抗剤、エピドフィルトキシン(epidophyllotoxin)、プロカルバジン、ミトキサントロン、白金配位錯体、抗有糸分裂薬、生物反応修飾物質および増殖抑制剤、ホルモン/抗ホルモン治療薬、造血増殖因子、アントラサイクリン系薬剤、ヴィンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、エポシロン、ディスコデルモライド、プテリジン系薬剤、ジインエン(diynenes)、およびポドフィロトキシンが挙げられる。これらのクラスの特に有用なメンバーとしては、例えば、カミノマイシン(caminomycin)、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、マイトマイシンC、ポルフィロマイシン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、ゲムシタビン(gemcitabine)、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体(エトポシド、エトポシドホスフェート、またはテニポシド等)、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ドキソルビシン、ビンデシン、ロイロシン、パクリタキセル、タクソール、タキソテール、ドセタキセル、シスプラチン、メチル酸イマチニブ、またはゲムシテビン(gemcitebine)が挙げられる。
【0119】
他の有用な薬剤としては、エストラムスチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ゲムシチビン(gemcitibine)、イホスファミド、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、シタラビン、イダトレキサート(idatrexate)、トリメトレキサート、ダカルバジン、L−アスパラギナーゼ、カンプトセシン、CPT−11、トポテカン、ara−C、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ピリドベンゾインドール誘導体、インターフェロンおよびインターロイキンが挙げられる。特に有用な薬剤としては、タキソテール、Gleevec(イマチニブ)、Tarceva(エルロチニブ)、Sutent(スニチニブ)、Tykerb(ラパチニブ)、およびXeloda(カペシタビン)が挙げられる。
【0120】
本明細書に記載の製剤はまた、放射線療法に関連して用いることもできる。化学療法/放射線療法は、当該分野で周知の治療プロトコルに従って行うことができる。化学療法薬の投与および/または放射線療法を、治療する病気および当該病気に対する化学療法薬および/または放射線療法の公知の影響に応じて変更可能なことは当業者には明白である。治療プロトコル(例えば、投与量および投与期間)は、治療薬(すなわち、抗腫瘍薬または放射線)投与の患者に対する影響の観察、および投与した治療薬に対する病気の反応の観察に応じて変更可能である。
【0121】
また、一般に、本明細書に記載のゲルダナマイシン類似体および第2の化学療法薬は同じ医薬組成物中において投与される必要はなく、物理的および化学的特徴が異なるため、異なる経路による投与が必要とされることがある。例えば、ゲルダナマイシン化合物は経口投与が可能であるが、第2の化学療法薬は静脈内投与される。優れた臨床医であれば、同じ医薬組成物での投与方法および投与の妥当性を知識に基づいて十分に判断することができる。初回投与は、当該分野で公知の確立したプロトコルに従って、影響の観察に基づいて行なうことができ、用量、投与方法、および投与期間は、優れた臨床医であれば変更可能である。
【0122】
特定の化学療法薬または放射線の選択は、担当医の診断および患者の疾患に関する担当医の判断、および適切な治療プロトコルによる。
【0123】
ゲルダナマイシン類似体および第2の化学療法薬および/または放射線は、増殖性疾患の性質、患者の病状、およびゲルダナマイシン類似体に関して実際に投与選択した(すなわち、単一治療プロトコル内)化学療法薬および/または放射線に応じて、並行して(例えば、同時、実質的に同時、または同じ治療プロトコル内)または連続して投与してもよい。
【0124】
ゲルダナマイシン類似体および化学療法薬の投与および/または放射線療法を同時または実質的に同時に実施しない場合、最適な実施順序は、異なる腫瘍に対しては異なる場合がある。それゆえ、特定の状況では、ゲルダナマイシン類似体を最初に投与した後、化学療法薬の投与および/または放射線療法を実施してもよく、他の状況では、化学療法薬の投与および/または放射線療法を最初に実施した後、ゲルダナマイシン類似体を投与してもよい。単一の治療プロトコルにおいて繰り返し交互に実施するようにしてもよい。治療プロトコルにおける各治療薬の投与順および投与を繰り返す回数の判定は、優れた医師であれば、治療する病気および患者の病状の評価した後に、知識に基づいて十分に行うことができる。例えば、化学療法薬の投薬および/または放射線療法は、特に、細胞毒性薬であれば最初に実施してもよく、その後にゲルダナマイシン類似体を投与して治療を継続し、有効であると判断した場合には、その後に治療プロトコルが完了するまで化学療法薬の投与および/または放射線療法等を実施してもよい。
【0125】
このように、実務に携わる医師は、経験および知識に従って、治療の進行とともに、個々の患者の要望に応じて、治療の成分(治療薬、すなわち、ゲルダナマイシン類似体、化学療法薬の投与、または放射線療法)の実施のための各プロトコルを変更することができる。
【0126】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者に有害とならないように、特定の患者、組成物、および投与方法に望ましい治療反応を効果的に生じるような活性成分の量となるように変更してもよい。
【0127】
選択した投与量レベルは、使用する特定のゲルダナマイシン類似体またはその塩の活性、使用する特定の化合物の投与経路、投与期間、排泄率または代謝作用、吸収率および吸収量、治療期間、使用する特定の化合物と組み合わせて用いる他の薬物、化合物、および/または材料、治療する患者の年齢、性別、体重、病状、健康状態、およびそれまでの病歴、ならびに医療分野で周知の同様の因子を含む各種の因子に依存する。
【0128】
当該分野における通常の技術を有する医師または獣医は、必要とする医薬組成物の有効量を容易に判断および処方することができる。例えば、医師または獣医は、本明細書で提供し、医薬組成物に用いる化合物の投薬を所望の治療効果を得るために必要なレベルより低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加することができる。
【0129】
一般に、適量のゲルダナマイシン類似体とは、治療効果を生じる安全かつ有効な最低量の化合物である。上記量は、1mg/kg〜25mg/kgとすることができる。そのような有効量は、一般に、上述した因子に依存する。ゲルダナマイシン類似体を他の化学療法薬または放射線療法と組み合わせて投与する場合、各薬剤の投与量は、多くの場合、単剤療法での対応する投与量よりも少ない。
【実施例】
【0130】
以下において一般に説明する本開示の内容は、本明細書における開示内容を限定することなく本発明の特定の局面および実施形態の例示のみを目的とした下記の実施例を参照することで容易に理解できる。
【0131】
一般に、ゲルダナマイシン類似体はHsp90抑制剤として知られている(Schnurら、J.Med.Chem.(1995),Vol.38,3806〜3812ページ)。実施例1〜実施例11では、各種のゲルダナマイシン類似体およびそれらの固体形態の合成化学調製を説明する。
【0132】
(実施例1)
17−AGの形態Iの調製
【0133】
【化9】
22LのRBフラスコは、底部排水弁、機械撹拌、1Lの付加ろ過器、内部温度プローブ、および不活性ガスバイパスを備えていた。ゲルダナマイシン(500g、1当量)および無水THF(5.0L)を22LのRBフラスコに充填した。撹拌を開始し、アンモニアのMeOH溶液(7M)を充填する(1.0L、8.0当量)。その反応液を大気温度で7時間撹拌した。LCMSは、出発原料が7時間で完全に消費されたことを示した。反応中に、黄色から深紫に変色した。ヘプタン(14L)を反応混合液にゆっくりと加え、溶液から所望産物の結晶化を誘発した。赤レンガ色のスラリーを一晩撹拌した。その産物を吸引ろ過により単離し、2:1(v/v)のヘプタン/THF(0.5L)ですすいだ。オーブン乾燥により、粗17−AGを粉末状のくすんだ赤色固体(470g)として得た。この原料をアセトン/エタノール(18〜19L)の4:1混合液中に溶解し、加熱浄化した。この溶液を濃縮し、さらなるエタノール(2L)で溶媒交換した。この紫色固体のエタノールスラリーをエタノール(4L)および水(5L)で希釈した。このスラリーを35℃で一晩熟成した後、3時間かけて70℃まで加熱し、この間に結晶形態が変化し、濃紫から赤に変色した。このスラリーを室温まで冷却し、それらの固体をろ過により単離する。カールフィッシャー分析は0.86%であり、全ての残留溶媒は低濃度であった(EtOH 2266ppm;アセトン 89ppm;ヘプタン 9ppm;THFおよびMeOH 未検出)。この多形体を形態Iと呼ぶ。
【0134】
(実施例2)
17−AGの形態IIの調製
前述の手順で得た形態Iの17−AG(10g)を30℃のアセトン/エタノール中に溶解し、浄化した。フラスコおよびインラインフィルタをすすぎ、その溶液を回転蒸発器で濃厚スラリーに濃縮した。次いで、100mLの水を加え、その有機溶媒の残りを真空蒸留で除去した。蒸留液収集が終わると、浴温を40℃から60℃に上げ、少量の水を除去した。次いで、水をさらに加えた(100mL)。80℃の浴温およびわずかな減圧により、約5分間かけて水を蒸留した。そのスラリーは紫色のままであったため、減圧を止めて、浴温を100℃まで上昇させた。そのスラリーを約1時間混合した。次いで、そのスラリーを一晩かけて大気温度まで冷却し、紫色固体を水から単離した。カールフィッシャー分析は0.14%で、全ての残留溶媒は低濃度であった(MeOH:106ppm、EtOH:173ppm、アセトン 230ppm、THFおよびヘプタンは未検出)。この材料は形態IIの多形体である。
【0135】
(実施例3)
17−AGの形態IIIの調製
【0136】
【化10】
400mLの蒸留水に(実施例14で調製するような)17−アミノゲルダナマイシンの20%固体分散PVP K−30溶液を1g加えた。この懸濁液を60℃まで加熱し、固体を完全に溶解させた。60℃で5〜10分間加熱した後、紫色結晶が溶液から析出した。この混合液を23℃まで冷却し、紫色結晶材料をろ過により単離した。このようにして採取した結晶を2日間かけて真空オーブン内で80℃で乾燥させ、155mgの17−AG形態IIIを紫色の粉末として得た。収率75%。MS(ESI(+))m/z563.4(M+H2O)+。
【0137】
(実施例4)
17−AG酢酸エチル溶媒和物の調製
17−AG(1.2g)(多形体形態I)にEtOAc(150mL)を加えた。この混合液を加熱し、17−AGが完全に溶解するまで緩やかに還流した。この溶液を偏光顕微鏡検査法を用いて分析し、溶解の完了を確認した。回転蒸発器を用いて容積を約5mLまで減らし、その溶液を室温までゆっくり冷却した。12時間後、その混合液をろ過、ヘキサンで洗浄し、乾燥させて1HNMRに基づいてEtOAc溶媒和物を得た。
【0138】
(実施例5)
11−オキソ−17−アミノゲルダナマイシンの調製
【0139】
【化11】
23℃の17−アミノゲルダナマイシン(5.0g、9.16mmol、1.0当量)のCHCl3(750mL)溶液にDess−Martinペルヨージナン(23.32g、55.0mmol、6.0当量)を一部加えた。30分間撹拌した後、その反応混合液をCHCl3で希釈し、含水チオ硫酸ナトリウムおよび飽和含水重炭酸ナトリウムで洗浄した。この有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。この原料を再結晶化(DCM/ヘキサン)によりさらに精製して4.12gの純粋な所望産物を得た。収率83%。MS(ESI(+))m/z566.3(M+Na)+。
【0140】
(実施例6)
11−アセチル−17−アミノゲルダナマイシンの調製
【0141】
【化12】
23℃の17−アミノゲルダナマイシン(6.0g、11.0mmol、1.0当量)の無水DCM(156mL)溶液に窒素雰囲気下で無水酢酸(2.075mL、21.99mmol、2.0当量)、DMAP(1.343g、11.0mmol、1.0当量)、およびトリエチルアミン(4.60mL、33.0mmol、3.0当量)を加えた。この反応混合液を一晩撹拌した。その反応混合液をDCM(200mL)で希釈し、水(100mL)および塩水(2×100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過および真空濃縮した。この材料をグラジエントフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、30%〜60%のEtOAc/ヘキサン)により精製して1.9gの所望産物を微量のトリス−アセチル化産物とともに得た。収率30.9%。MS(ESI(+))m/z610.4(M+Na)+。
【0142】
(実施例7)
17−シクロプロピルメチルアミノゲルダナマイシンの調製
【0143】
【化13】
23℃のゲルダナマイシン(3.0g、5.35mmol、1.0当量)DCM(54mL)溶液にアルゴン雰囲気下でシクロプロパンメチルアミン(9.40mL、107mmol、20当量)を加えた。この反応混合液を2時間撹拌した。次いで、その反応混合液を水(100mL)で急冷し、1 N HClでpH3に酸性化し、さらに30分間撹拌した。この有機層を分離し、その水層をDCMで抽出した。この結合有機抽出物を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。この粗産物をグラジエントフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、50〜60%のEtOAc/ヘキサン)を用いて精製し、2.7gの所望産物を得た。収率84.0%。MS(ESI(+))m/z622.4(M+Na)+。
【0144】
(実施例8)
17−ベンジルアミノゲルダナマイシンの調製
【0145】
【化14】
23℃のゲルダナマイシン(3.25g、5.35mmol、1.0当量)DCM(110mL)溶液にアルゴン雰囲気下でベンジルアミン(9.40mL、53.5mmol、10当量)を一部加えた。23℃で12時間撹拌した後、その反応混合液を水(100mL)で希釈し、1 N HClでpH3に酸性化し、さらに30分間撹拌した。この有機層を分離し、その水層をDCMで抽出した。この結合有機抽出物を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空濃縮した。この粗産物をグラジエントフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、50〜60%のEtOAc/ヘキサン)を用いて精製し、3.51gの産物を得た。収率95.0%。MS(ESI(+))m/z658.4(M+Na)+。
【0146】
(実施例9)
17−アゼチジニルゲルダナマイシンの調製
【0147】
【化15】
23℃の塩酸アゼチジン(751mg、8.03mmol、2.0当量)の1:1のDCM:Mエタノール(100mL)溶液にヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)(2.10mL、12.04mmol、3.0当量)を加えた後、ゲルダナマイシン(2.25g、4.01mmol、1.0当量)を加える。23℃で2時間撹拌した後、その反応混合液を真空濃縮し、続いて、DCM(100mL)中に再度溶解した。水(100mL)を加え、その水層をpH3に酸性化した。次いで、この混合液を30分間撹拌した。この有機層を分離し、その水層をDCM(3×100mL)で抽出した。この結合有機層を水(300mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。この材料をクロロホルム/ヘキサンからの再結晶化によりさらに精製し、1.92gの純粋な所望産物を得た。収率82%。MS(ESI(+))m/z586.1(M+H)+。
【0148】
(実施例10)
17−(フルオロエチル)アミノゲルダナマイシンの調製
【0149】
【化16】
DCM(240mL)およびMeOH(120mL)に溶解した23℃の2−フルオロエチルアミン塩酸塩(7.99g、80.25mmol、7.5当量)に窒素雰囲気下でヒューニッヒ塩基(14.02mL、80.25mmol、7.5当量)を加えた。2−フルオロエチルアミン塩酸塩を溶解した後、ゲルダナマイシン(6.0g、10.70mmol、1.0当量))を加えた。24時間23℃で撹拌した後、その反応混合液を真空濃縮した後、DCM(900mL)中に再度溶解した。水(300mL)を加えて、その水層をpH3に酸性化した。その混合液を30分間撹拌した。この有機層を分離して、その水層をDCM(3×100mL)で抽出した。この結合有機層を水(900mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。この粗産物をグラジエントフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、30〜60%のEtOAc/DCM)を用いて精製し、3.0gの所望産物を得た。収率47.4%。MS(ESI(+))m/z614.4(M+Na)+。
【0150】
(実施例11)
17−アセチルゲルダナマイシンの調製
【0151】
【化17】
23℃の17−アミノゲルダナマイシン(5.5g、10.08mmol、1.0当量)のEtOAc(500mL)溶液にNa2S2O4(0.1M、500mL)を加えた。二相混合液を23℃で撹拌し、反応混合液を深紫から淡黄色にした(約10分)。この有機層を分離し、その水層をEtOAc(3×200mL)で抽出した。この結合有機抽出物をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。次いで、その残留物を不活性雰囲気(N2)化でCHCl3(72mL)中に溶解し、氷浴を用いて0℃まで冷却した。無水酢酸(2.85mL、30.2mmol、3.0当量)を0℃で滴下した。3時間撹拌した後、この反応混合液をEtOAcで希釈し、真空濃縮した。この粗産物を23℃のメタノール中に溶解し、4日間開放雰囲気下で撹拌し、ハイドロキノンを酸化させてキノンにした。この粗産物を無勾配フラッシュクロマトグラフィ(80:15:5のDCM:EtOAc:MeOH)により精製し、3.5gの所望産物を黄色固体として得た。収率59.1%。MS(ESI(+))m/z610.4(M+Na)+。
【0152】
(実施例12)
非晶質分散製剤(17−AG+PVP)の投与時の経口バイオアベイラビリティの影響
17−AG+PVP(ポリビニルピロリドン(Povidoneとも呼ぶ)の非晶質分散剤の形態の例示的な化合物(17−AG)の経口バイオアベイラビリティに対する影響をビーグル犬に投薬を行い、カプセルの単回経口投与を行ってから各時点における血漿中の17−AGレベルを測定して調べた。
【0153】
12%の17−AG/PVP(w/w)分散剤を回転蒸発を利用して作製し、上述のように純度、残留溶媒レベル、および非晶質含有量の特徴づけを行い、HPMCカプセルに入れ、15mg/kgのレベルでイヌに投与した。投与後15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、および24時間後に血液をヘパリンナトリウムを入れたチューブ内にプレドースにより採取した。採取した血液サンプルを直ぐに湿氷上に載せ、採取後30分以内に冷凍遠心により血漿を単離した。単離した血漿をラベル付のネジ蓋冷凍バイアルまたはエッペンドルフチューブ内に保管し、血漿の17−AGレベルを分析するまで冷凍貯蔵(−70℃)した。試験設計は下記のとおりである。各投薬の間に1週間の休薬期間を設け、2匹のオスと2匹のメスからなるイヌの1群に対して投薬を行った。
【0154】
【表1】
投薬後の17−AG血漿レベルの分析後、非晶質17−AG/PVP分散剤の投薬による曝露に大きな影響があった。非晶質17−AG/PVP分散剤を投薬した場合、結晶質17−AGを投薬した場合と比べて、CmaxおよびAUCレベルの両方に100倍を超える増加があった。結晶材料の投薬後の17−AGの血漿レベルは、定量限界を下回った。コーティングカプセルに入れた17−AG/PVP分散剤の投薬でも同様の曝露の増加があったが、非コーティングカプセルでの結果ほど著しくはなかった。曝露データではテストを行った変数については性別による誤差はなかった。曝露に関して観察されたばらつきは、動物特異的な誤差または生存時観察(すなわち、投薬上の問題、嘔吐)による可能性が最も高い。
【0155】
経口バイオアベイラビリティの結果(平均値)は、図10a(オス)および図11a(メス)に記載されており、これらは、結晶質17−AGは経口バイオアベイラビリティが非常に低いが、非晶質化合物はバイオアベイラビリティが高いことを示している。PKデータの集計表をそれぞれ図10bおよび図11bに示す。
【0156】
以下は、非晶質ゲルダナマイシン類似体を用いた固体分散製剤の例示的な調製方法である。一般に、各剤形の調製には結晶化抑制剤を用いても、用いなくてもよい。結晶化抑制剤が存在する場合には、用いる結晶化抑制剤の種類および量の両方を異なるようにしてもよい。例示的な方法としては、凍結粉砕(実施例13(a))、噴霧乾燥(実施例13(b))、凍結乾燥(実施例13(c))、および回転蒸発(実施例14〜16)が挙げられるがこれらに限定されない。1つの技術(すなわち、t−BuOHを利用した凍結乾燥)より得た例示的なDSCパターンは図12に記載されている。2つの異なる固体分散剤調製法を用いた例示的な曝露データは図14a(回転蒸発)および図14b(噴霧乾燥)に記載されており、集計表は図14cに記載されている。
【0157】
(実施例13)
非晶質17−AGの調製
【0158】
【化18−1】
17−AG(1g)(形態I多形体)にCH3CN(50mL)を加えた後、さらにt−BuOH(100mL)を加えた。この混合液を17−AGが完全に溶解するまで60℃で加熱した後、0.45umフィルタでろ過して浄化した。この溶液を偏光顕微鏡検査法を用いて分析し、完全に溶解することを確認した。ろ液を凍結するまで液体窒素槽に浸した後、凍結乾燥することで非晶質17−AGを薄紫色粉末が生じた。この非晶質性を偏光顕微鏡検査法により確認した。
【0159】
(実施例13(a))
凍結粉砕プロトコル:非晶質固体分散製剤(17−AGおよびPVP)の調製
17−AG(〜1g)を液体窒素中で〜200℃まで冷却し、30分間物理粉砕および微粉化を行い非晶質材料に粉砕した。粉砕サンプルの非晶質状態をXPRDおよびP.L.M.によりチェックした。
【0160】
(実施例13(b))
噴霧乾燥プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AG(20%充填量)+ポリビニルピロリドン(PVP)K−30 Povidone(登録商標)]の調製
アセトン(75g、94.95mL)と190プルーフUSP/NFグレードのエタノール(25g、31.65mL)の3:1混合液にポリビニルピロリドン(PVP)K−30 Povidone(登録商標)(20g)を一部加えた。この混合液をポリマーが完全に溶解するまで(約30分)23℃で撹拌した。17−AG(5g、36.7mmol)を10分間の間に数部加えて不透明な紫色混合物を得た。2時間室温で撹拌した後、アリコートをPLMを用いて検査し、完全に溶解させ、次いで、その紫色溶液を以下の条件(入口温度90℃、出口温度64℃、N2流量600l/h、吸引70%)でBuchi小型噴霧乾燥機で噴霧乾燥させ、薄紫色非晶質粉末を得た。この材料は偏光顕微鏡検査法による分析で非晶質であった。MS(ESI(+))m/z563.4(M+H2O)+。
【0161】
(実施例13(c))
凍結乾燥プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AGのPVP溶液]の調製
ポリビニルピロリドン(PVP)K−30およびK−90 Povidone(登録商標)に溶解した異なる充填量の17−AG(12%、15%、20%、30%、40%、50%w/w)の一連の非晶質分散剤を以下のプロトコルに従って凍結乾燥により調製した。代表的なDSCパターンは図12に記載されている。
【0162】
17−AG(100mg、0.18mmol)とt−BuOH(500mL)の混合液を熱線銃を用いて50℃まで加熱し、激しく撹拌した。アリコートを周期的に採取し、偏光顕微鏡検査法により調べて結晶質17−AGの完全な溶解を判定した。50℃で2時間加熱した後、偏光顕微鏡検査法で複屈折が観察されなくなり溶解が完了した。17−AG溶液(62.5mL、12.5mg)を下記のスケジュールに従って水(20.8mL)に溶解した適量のPVP(K−30またはK−90)にゆっくりと加えた。全ての混合物がt−BuOH:水の割合(3:1)を維持した。
【0163】
12%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(91.5mg)の水(20.8mL)溶液
15%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(71mg)の水(20.8mL)溶液
20%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(50mg)の水(20.8mL)溶液
30%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(29mg)の水(20.8mL)溶液
40%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(18.7mg)の水(20.8mL)溶液
50%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(12.5mg)の水(20.8mL)溶液
次いで、この温溶液を凍結乾燥カップ(110mLの容量)に移し、23℃までゆっくり冷却した。23℃になった後、この溶液を偏光顕微鏡検査法を用いて再度分析し、完全に溶解したことを確認した。複屈折は検出されなかった。全てのカップを予冷した(−40℃)トレー凍結乾燥器に移し、8時間−40℃に保持した後、2日間かけて23℃までゆっくりと上昇させ、定量的収率で薄紫色非晶質固体を生じた。全てのサンプルは、偏光顕微鏡検査法によれば非晶質であり、HPLCで純度>95%であった。
【0164】
以下の実施例14〜16では、各種のPVPグレードを利用して固体分散製剤を調製する回転蒸発技術をさらに示す。
【0165】
(実施例14)
回転蒸発プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AG(12%、20%および30%充填量)およびPVP K−30]の調製
17−AG(12%充填量、1.52g)をエタノール(200プルーフ、100mL)に加え、その混合液を45℃で45分間撹拌した。別のフラスコにおいて、PVP K−30(11.13g)をエタノール(200プルーフ、150mL)に加えた。この結果得られた溶液を45℃で15分間撹拌した。この17−AG溶液をPVP溶液に加え、この結果得られた溶液を45℃でさらに4時間撹拌した(顕微鏡を用いて結晶が完全に消失するまで監視した)。次いで、この均質紫色溶液を濃縮し、高真空下で12時間送液した。この結果得られたガラス材料を(残留エタノール含有量の判定のために)1H−NMRで分析し、(残留結晶材料の量の判定のために)クロスポーラー顕微鏡法(Cross Polar Microscopy)により分析した。この材料を乳鉢と乳棒を用いて破砕して粉末にし、高真空下で40℃で10時間かけて乾燥させた後、1H−NMRによりエタノール含有量を分析した。この材料を再度破砕し、高真空下でさらに16時間かけてさらに乾燥させ、3%w/wのエタノールを含有する微細なガラス質赤色−紫色材料(11.1g)を生じた。材料を1H−NMR、CPM、HPLC、およびDSCで分析した。これに応じて17−AGの量を調節し、対応する20%充填量の17−AG(w/w)および30%充填量の17−AG(w/w)を得た。12%、20%、および30%充填量の代表的な溶解データは図39に記載されている。
【0166】
(実施例15)
回転蒸発プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AG(12%充填量)のPVP K−15溶液]の調製
17−AG(10g)を3Lの一口フラスコ内のEtOH(1L、99.9%)に加えた。この混合液を約100rpm、60℃、大気圧下において回転蒸発器で回転させた。アリコートを周期的に採取し、偏光顕微鏡検査法により調べて結晶質17−AGが完全に溶解したかを判定した。60℃で2時間回転させた後、偏光顕微鏡検査法で複屈折が観察されなかったため溶解を完了した。ポリビニルピロリドン(PVP)K−15 Povidone(登録商標)(73g)を一部加え、その混合液を回転蒸発器に戻し、約100rpm、60℃、浴温で回転させた。1時間後、その溶液を偏光顕微鏡検査法で再度分析し、完全な溶解を確認した。複屈折は検出されなかった。真空にして、30分間かけてEtOHを除去し、紫色発泡体を生じた。フラスコを高真空ポンプに移して、一晩乾燥させた。この脆性発泡体を側面から擦り取り、その材料をさらに36時間高真空下で送液した。この材料をさらにへらで破砕し、フラスコからの除去を容易にし、偏光顕微鏡検査法およびXPRDにより76g(92%収率)の非晶質分散剤を得た。代表的な溶解データは図38に記載されている。
【0167】
(実施例16)
回転蒸発プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AG(12%充填量)のPVP K−90溶液]の調製
回転蒸発、引き続いて高真空ポンプを用いて偏光顕微鏡検査法に基づいてPVP K−30を用いて48g(48%収率)の非晶質分散剤を得た以外は、上記実施例15と同様の手順を用いて非晶質固体分散製剤[17−AG(12%充填量)のPVP K−90溶液を調製した。代表的な溶解データは図38に記載されている。
【0168】
下記の実施例17では、下記表に概要が示されている上述した(実施例14、15、および16)製剤に関して安定性試験を行った。
【0169】
(実施例17)
各種の17−AG/PVP分散剤を各種の条件で貯蔵し、特定の時点における各々の化学的および物理的安定性を評価した。テストを行った分散剤は、12%17−AGのPVP K15溶液、12%17−AGのPVP K90溶液、12%17−AGのPVP K30溶液、20%17−AGのPVP K30溶液、および30%17−AGのPVP K30溶液であった。テストを行なった貯蔵条件は、RT周囲湿度、RT33%RH、RT75%RH、40℃周囲湿度、および40℃75%RHであった。17−AGの化学的安定性をRP−HPLCよる純度測定で評価し、非晶質分散剤の物理的安定性を偏光顕微鏡検査法(P.L.M.)による結晶材料の外見で評価した。全ての分散剤に関して、50mgの材料を開口ガラスバイアルに入れて各時点および各貯蔵条件の個別のアリコートを作製した。飽和塩溶液を用いて湿度調節し、適切な温度調節(33%RHの塩化マグネシウム、および75%RHの塩化ナトリウム)を行った安定性容器にバイアルを設置した。テストを行った分散剤および条件のT=0ヶ月時点およびT=1ヶ月時点の安定性データを下記の表に示す。
【0170】
【表2】
(実施例18)
固体分散剤[17−AAGのPEG6000溶液(5%w/w)]の調製
ゲルダナマイシン(20.0g、35.7mmol、1当量)のDCM(750mL)溶液にアリルアミン(53mL、714mmol、20当量)を室温、窒素雰囲気下で加えた。このスラリーを室温で6時間撹拌した。この結果得られた紫色溶液を水(300mL)で急冷し、2N HCl(300mL)でpH3に酸性化し、さらに30分間撹拌した。この水相をDCM(300mL)で抽出し、その結合有機層を水(300mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過、濃縮した。その紫色残留物をアセトン(300mL)中において60℃で溶解し、ヘプタン(1.5L)を加え、この結果得られた混合液を5℃に冷却し、ろ過して、その固体をヘプタン(200mL)で洗浄し、乾燥させて粗17−AAG(18.15g)を得た。この紫色固体をアセトン(306mL)中に溶解し、55〜60℃まで加熱し、n−ヘプタン(1.2L)をゆっくりと加え、スラリーを形成した。この混合液を30分間55℃に保ち、室温に冷却した。この結晶材料を採取し、真空下で48時間かけて乾燥させ、17−AAGを紫色針状結晶として得た。(16.15g、28mmol、77%収率)。254nm)mp210〜212℃でHPLCにより>99%の純度が観察された。
【0171】
17−AAG(18mg)にPEG6000(382mg)を加え、この固体混合物を熱で溶かした。この結果得られたろう様の分散剤をHPLCおよびクロスポーラー顕微鏡法で分析した。
【0172】
17−AAGを含有するさらなる固体非晶質分散剤を調製し、この非晶質性を偏光顕微鏡検査法で確認した(下記表に概要を示す)。
【0173】
【表3−1】
【0174】
【表3−2】
(実施例19)
17−AG非晶質固体分散製剤[17−AG(20%充填量)の各種高分子溶液]の調製
分散剤調製法:
17−AG(2g)を3Lの一口フラスコ内のEtOH(1L)に加えた。この混合液を回転蒸発器において60℃、周囲圧力、高速で回転させた。アリコートを採取し、1時間に結晶化の兆候について顕微鏡で調べた。ポリマー(8.2g)を加え、その混合液を回転蒸発により濃縮し、60℃でさらに一時間回転させた。アリコートを採取し、時間経過後にPLMを用いて結晶化の兆候について調べた。次いで、真空を引いて、EtOHを30分かけて除去し、発泡体状の材料を得た。この材料を真空で一晩かけて乾燥させた。次いで、この結果得られた脆性発泡体を側面から剥がし、その材料を高真空下でさらに36時間ポンピングした。次いで、これにより発生した固体分散剤を粉砕し、篩過(50番のふるい)して300ミクロンの粒径にした。
【0175】
(実施例20)
非晶質材料の特徴づけに用いた一般的技術
可視偏光顕微鏡検査法(PLM):チェックマーク
【0176】
【化18−2】
は、固体材料の検査時または水に溶解した場合に、結晶材料が不可視であり、交差偏光化で複屈折がないことを示す。
【0177】
DSC:チェックマーク
【0178】
【化18−3】
は、ガラス遷移温度(Tg)の特定、見かけ上の結晶吸熱がないことを示す。例示的な顕微鏡写真を図44および図45(PLMで可視化した非晶質分散剤)に示す。
【0179】
XPRD:チェックマークは、結晶形跡がないことを示す。
【0180】
インビトロ溶解:チェックマークは、少なくとも0.4mg/ml(12%17−AG K−30の50%)の17−AGの過飽和レベルを示す。
【0181】
HNMR:チェックマーク
【0182】
【化18−4】
は、予想される構造と一致するスペクトルおよび<5%残留溶媒を示すスペクトルを示す。
【0183】
LCUV:チェックマークは、>95%純度を示す。
【0184】
安定性:チェックマーク、チェックマーク
【0185】
【化18−5】
は、LCUV、DSC、顕微鏡法による室温でのRTを超えるTG−DSC>40℃、>1ヶ月の安定性を示す。
【0186】
【表4】
インビトロ溶解のためのサンプルの調製:一連のシンチレーションバイアルを用いて下記表に従って17−AG(20%充填量)高分子分散剤(50.0mg)を含有するサンプルを調製した。各バイアルに模擬腸液(5mL)を加え、それぞれを37℃で振とうした。5分、15分、30分、60分、90分、120分、4時間、8時間、および一晩経過した時点で、各懸濁液のアリコート(300uL)を取り出し、ポリプロピレンフィルタ(0.45ミクロン)によりろ過してMeOH(750uL)を得た。次いで、これらのサンプルをMeOH中で希釈し、UV法を用いて溶液濃度に関するテストを行った。各サンプルの結果は下記の表に集計している。
【0187】
【表5】
下記はインビトロ溶出試験で収集したデータであり、結晶化抑制剤を用いて固体分散製剤を調製する場合、平衡溶解度に対する17−AGの過飽和レベルとなる(インビトロでの溶解により測定した17−AGは過飽和レベルとなる)ことを示す。このような製剤は、各種の結晶化抑制剤または高分子(PVP以外)を用いて調製可能である。用いる例示的な結晶化抑制剤は、HPMCP、HPMCAS、Plasone S−630、およびEudragit L100である。
【0188】
【表6】
*17−AG平衡溶解度に応じた倍率の増加
図13は、上記の各種結晶化抑制剤を用いた17−AG分散剤のインビトロ溶解を示す。
【0189】
非晶質分散剤は、他のゲルダナマイシン類似体を用いて作ることもできる。結晶化抑制剤を加えることが17−AG以外の化合物に有効であることを同様に示すために、下記の実施例21は、結晶化抑制剤を実質的に非晶質である固体分散製剤に加える場合に、ゲルダナマイシン類似体の過飽和濃度が可能であり、類似体17−AGに見られるような生体内バイオアベイラビリティの改善が可能であり得ることを示すインビトロ溶出試験である。そのような製剤は、各種のゲルダナマイシン類似体を用いて調製可能である。利用する特定の類似体は、17−ベンジル−AG、17−フルオロエチル−AG、17−シクロプロピルメチル−AG、17−アセチル−AG、17−アゼチジニル−G、11−アセチル−17−AG、および11−オキソ−17−AGである。実施例21では、各類似体の結果を下記表で集計している。
【0190】
(実施例21)
各種のゲルダナマイシン類似体[17−AG(12%充填量)+PVP]を用いた非晶質固体分散製剤の調製
ゲルダナマイシン化合物と溶媒の混合液を加熱し、激しく撹拌する。アリコートを周期的に採取し、偏光顕微鏡検査法により調べて、結晶材料が完全に溶解しているかを判定する。完全に溶解している場合、結晶化抑制剤を溶液にゆっくりと加える。この混合液を加熱しながら激しく撹拌し、アリコートを採取し、顕微鏡法により調べて、成分が完全に溶解していることを確認する。あるいは、加える順序を変更して、高分子を共溶媒とすることができる(例えば、当該化合物を高分子の予混合溶液および適切な比率または組み合わせの溶媒に加える。それらの分散剤を上述のように特徴付けした。
【0191】
【表7】
17−AG(12%充填量)の類似体およびPVP K−30(83.3mg)を適宜に用いたことを除いて、実施例20と同様の手順を用いて、一連のシンチレーションバイアルを下記表に従って調製した。
【0192】
【表8】
多種多様なアンサマイシン化合物類似体を用いて作製した非晶質材料を含有する分散剤のインビトロ溶出試験の集計結果を下記に示す。このデータは、各種アンサマイシン化合物の過飽和レベルが達成可能なことを示す。回転蒸発を利用してPVPから生成した一連のアンサマイシン類似体の非晶質分散剤の溶解プロファイルは図15に記載されている。
【0193】
【表9】
*平衡溶解度に応じた倍率の増加
下記の実施例22は、種々の量の結晶材料(0.01%、0.1% 1%および10%、対照は0%)を「添加」した実質的に非晶質固体分散製剤から生成した17−AGの過飽和溶液は17−AGの析出速度の変化を明示する。種々の量の結晶材料を17−AGの非晶質分散剤に加えることにより、対応する過飽和溶液の安定性が影響を受ける。過飽和溶液中に存在する結晶材料の量を増加することにより、17−AG核生成および析出の速度が上昇する。各添加製剤のインビトロ実験溶解プロトコルの概要を下記表に示す。20%17−AGのPVP−K30溶液の代表的なDSCは図16に記載されている。種々の量の形態Iの添加を示すさらなるデータは、図16、図17、図18、図19、図20、図21、図22、および図23に記載されている。形態IIおよび形態IIIの添加でも同様の知見が得られる。これらの図に示すように、「0%」結晶材料を含有する製剤と、1%結晶材料を添加した製剤にはかなりの誤差があり、これは、「0%」で示す製剤は結晶材料を1%未満しか含有していないことを示している。
【0194】
(実施例22)
添加実験における17−AGを用いた溶出試験
17−AG(20%充填量)およびPVP K30を入れた1ドラムのバイアルに、種々の量の17−AG形態Iを加えて、総質量500mgおよび0.01〜10%の結晶範囲を得た。分散剤と結晶質17−AGの均質混合物を確実に得るために、それらの混合物を乳鉢と乳棒で粉砕し、50番のふるい(300um)で篩過し、Turbulaミキサーを用いて5分間混合した。結晶材料の量を顕微鏡法で調べた。実質的に非晶質材料には、目に見える結晶材料はなく、乾燥材料を用いて、水を入れた際に交差偏光下での複屈折はなかった。
【0195】
【表10】
調製した添加固体分散剤(下記表のスケジュールに従って調製している)を入れたシンチレーションバイアルに模擬腸液(5mL)を加えた後、5分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、4時間、8時間、および一晩経過した時点でバイアルを37℃で振とうし、各サンプルのアリコート(300uL)を取り出し、ポリプロピレンフィルタ(0.45ミクロン)によりろ過してMeOH(750uL)を得た。次いで、このサンプルをMeOHで希釈し、UV法を用いて溶液濃度のテストを行った。その結果を下記表に集計している。
【0196】
さらに、図44(B)および図44(C)は、非添加分散剤と0.01%結晶材料を添加した分散剤の見た目の違いを示し、非添加分散剤は結晶材料を0.01%未満しか含有していないことを示している。
【0197】
【表11】
(実施例23)
17−AG/PVP分散剤固体投薬形態の放出速度の制御
17−AG+PVP分散剤からの17−AGの放出速度の制御が可能であることを実証するために、インビトロ溶解で測定される短時間型、長時間型、および持続放出速度を有する20%17−AG+PVP K30分散剤の各種の組成物/賦形剤から錠剤およびカプセルを作製した。そのようにして、固体投薬形態の17−AG非晶質分散剤の溶解速度を制御することで、下記の実施例24では、インビボ投与時に溶解した17−AGの過飽和度を制御する手段を提供することができる。錠剤およびカプセルの組成を下記表で説明する。
【0198】
【表12】
溶解した17−AGの放出速度およびレベルは、テストした錠剤またはカプセルを500mlのSIF pH6.8に溶解し、完全に溶解するまで溶解装置(パドル速度150RPM、37℃)で撹拌して測定した。錠剤/カプセル−SIF溶液のアリコートを15分、30分、90分、120分、180分、および240分の時点で取り除いた。サンプルアリコートをろ過し(0.45uM PVDF)、SIF/MeOH中で希釈し、UV分光計で三重に測定した。
【0199】
異なる錠剤およびカプセルからの17−AGの溶解プロファイルを図24のグラフに示す。それらの結果に明示するように、異なるインビトロ放出速度(短時間型、長時間型、および持続)の錠剤およびカプセルを製造することができる。
【0200】
(実施例24)
結晶化抑制剤の過飽和に対する影響
PVP(ポリビニルピロリドン、Povidone)等の結晶化抑制剤は、結晶化を防ぐことにより化合物の溶解度を改善することができる。PVPの溶媒和17−AGの量に対する影響は、特定量の17−AGを結晶形態またはDMSO溶液で過飽和レベルまで加えた後の各時点においてPVPを増量しながらSIF pH6.8(模擬腸液)溶液中の17−AGのレベルを測定することにより調べた。
【0201】
結晶質17−AGを、0%、0.5%、1%、2.5%、および5%PVP(w/v)を含有するSIF pH6.8に5mg/mlの濃度まで加えて、特定時点の結晶質17−AGの平衡溶解度を測定した。溶液を37℃にし、サンプルアリコートを24時間、48時間、72時間、および96時間の時点で取り除いた。サンプルアリコートをろ過し(0.45uM PVDF)、SIF/MeOHで希釈し、UV分光計で三重に測定した。
【0202】
17−AG DMSO原液(10、50、100、および200mg/ml)を1:100に希釈して0%、0.5%、1%、2.5%、および5%PVP(w/v)を含有するSIF pH6.8溶液に加えて17−AGの過飽和レベルを測定した。この結果、各SIF pH6.8PVP溶液について、最終17−AG濃度がそれぞれ0.1、0.5、1、および2mg/mlの溶液が生じた。これらの溶液を溶解装置(パドル速度150PRM、37℃)で撹拌し、各溶液のアリコートを15分、30分、60分、120分、240分、360分、および1320分の時点で取り除いた。サンプルアリコートをろ過し(0.45uM PVDF)、SIF/MeOHで希釈し、UV分光計で三重に測定した。代表的なデータは図25および図26に記載されている。
【0203】
【表13】
上記のとおり、PVPは溶媒和17−AGのレベルを改善する。結晶質17−AGの平衡溶解度は、0%PVPのSIF pH6.8における0.0041mg/mlから5%PVPのSIF pH6.8の0.0112mg/mlへとほぼ3倍増加する。さらに、17−AGの過飽和度は、0%PVPの0.5mg/mlから5%PVPの0.9mg/mlにほぼ2倍に増加する。
【0204】
さらに、PVPは、過飽和状態の持続時間を延ばして過飽和溶液の安定性を高める。PVPを含まないSIFでは、17−AGは析出を開始し、およそ120分で溶液から溶出する。PVPを含むSIF溶液では、17−AG過飽和状態を120分〜ほぼ240分まで延ばすことができる。17−AG析出速度は、PVPにより濃度依存的に減速する(すなわち、%PVPが高くなるほど、過飽和状態からの17−AG析出速度が遅くなる。しかしながら、PVPのこの結晶化速度抑制作用は、0.9mg/mlの過飽和状態を達成するが120分の時点で析出を開始する1.0mg/mlの5%PVP溶液の結果に見られるような非常に高い過飽和レベルからの17−AGの析出により解消することができる。代表的なデータを図27に示す。
【0205】
(実施例25)
ビーグル犬における17−AG PVP分散剤のインビボ曝露の比較
ビーグル犬に投薬を行い、単一経口カプセル投与後の各時点における血漿中の17−AGレベルを測定し、17−AG+PVP分散剤における各種の化合物充填量、PVPグレード、および粒径の経口バイオアベイラビリティに対する影響を調べた。
【0206】
回転蒸発を利用して以下の17−AG+PVP分散剤を作製し、上記の純度、残留溶媒レベル、および非晶質含有量について特徴付けを行った。
【0207】
【表14】
各17−AG+PVP分散剤をHPMCカプセルに充填し、15mg/kgのレベルでイヌに投与した。ヘパリンナトリウムを入れたチューブへの投薬後15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、および24時間の時点で血液をプレドースにより採取した。採取した血液サンプルをすぐ湿氷上に載せ、採取後30分以内に冷凍遠心により血漿を単離した。単離した血漿をラベル付ネジ蓋冷凍バイアルまたはエッペンドルフチューブに保管し、血漿17−AGレベルの分析を行うまで冷凍貯蔵(−70℃)した。試験Iの設計は以下のとおりである。各々オス2匹およびメス2匹から成るイヌ群2つを、各投与の間に1週間の休薬期間を設けて投薬に用いた。動物投薬プロトコルの詳細に関しては、PCRSプロトコルNo.INF−0704を参照されたい。
【0208】
【表15】
投薬後の17−AG血漿レベルの分析後、17−AG充填量またはPVPグレードのいずれも曝露に大きく影響しなかったが、曝露に関する傾向は存在した。17−AG充填量に関しては、17−AG充填量の増加(12%>20%>30%17−AG)とともにCmaxおよびAUCが減少した。PVPグレードに関しては、CmaxおよびAUCはPVP K30で最大であり、続いて、PVP K15、PVP K90の順であった。CmaxまたはAUCに関しては粒径の変更による傾向または影響は見られなかった(すなわち、曝露は広い範囲の粒径に対してロバスト性を有した)。全体として、曝露データには、テストした変数に性別による一貫した誤差は見られなかった。曝露のばらつきが観察されたのは、動物特異的な誤差または生存時観察(すなわち、投薬問題、嘔吐)による可能性が高い。
【0209】
各種の充填量レベルを反映する経口バイオアベイラビリティ結果(平均値)の概要は図28aおよび図29aに記載されており、関連する要約データ表は図28bおよび図29bに記載されている。各種のPVPグレードを反映する経口バイオアベイラビリティ結果(平均値)の概要は図41aおよび図42aに記載されており、関連する要約データ表は図41bおよび図42bに記載されている。20%17−AGおよびPVP K−30の各種の粒径を反映する経口バイオアベイラビリティ結果(平均値)の概要は図40aに記載されており、関連する要約データ表は図40bに記載されている。
【0210】
(実施例26)
ビーグル犬における17−AGの各種の経口製剤のインビボ曝露
各種の経口製剤を作製し、ビーグル犬に投薬を行い、単一経口投与後の各時点における血漿中の17−AGレベルを測定して化合物17−AGの各種製剤の経口バイオアベイラビリティを調べた。さらに、テストを行った製剤の多くにPVPを加え、曝露の増大に対する影響を調べた。
【0211】
簡潔に説明すると、異なる結晶、溶媒和物、および非晶質形態の17−AGを充填カプセルまたは懸濁液のいずれかで投与した。さらに、各種の異なる有機、陰イオン、および非イオン性成分を用いた各種の17−AG溶液を強制経口投与した。テストを行った異なる経口製剤のリストを下記表に示す。
【0212】
【表16】
結晶、溶媒和物、および非晶質形態の17−AGを前述のとおり作製し、Turbulaブレンダーで15分間かけて無水ラクトースまたはPVPと配合した。
【0213】
製剤成分を所望の重量パーセントまで加え、17−AGを2mg/mlの所望の濃度で溶解するまで加えるか、または40mg/mlの17−AGのDMSO溶液を加えて1:20に希釈し、最終濃度を2mg/mlとする溶液を作製した。全ての溶液は透明感のある紫色であり、析出の痕跡はなかった。
【0214】
結晶質17−AGをグリセロールとともに乳鉢および乳棒で湿式粉砕した後、高速ホモジナイザーで10分間かけて1%カルボキシメチルセルロース溶液中で均質化を行いカルボキシメチルセルロース懸濁液を作製した。懸濁液の均質性を顕微鏡法でチェックした。図46(A)は、17−AGの1%カルボキシメチルセルロース懸濁液の例示的な写真である。
【0215】
4mg/mlの17−AGを10%PGHS/2.5%DMSO/5%Tween−80、または10%PGHS/2.5%DMSO/5%Tween−80/5%PVPで溶かした溶液を作製し、高速ホモジナイザーで15分間かけてその溶液をオリーブ油と1:1で混合して乳剤を作製した。顕微鏡法で乳剤の確認を行った。図46(B)は、10%PGHS、2.5%DMSO、5%Tween−80、50%オリーブ油で溶かした17−AGのNSの乳剤の例示的な写真である。
【0216】
マイクロフルイダイザー(Microfluidics社、型番:M−110L)で10〜20分間かけて結晶質17−AGをTween−80中において高せん断で湿式粉砕してナノ懸濁液を作製した。平均粒径(d50:300〜400nM)をレーザー光回折(Malvern社、Mastersizer2000)により測定した。
【0217】
投薬した製剤の全ては、少なくとも2時間、室温で物理的安定性を有した。
【0218】
ヘパリンナトリウムを入れたチューブへの投薬後15分、30分、1時間、2時間、4時間、および8時間の時点で血液をプレドースにより採取した。採取した血液サンプルを直ぐに湿氷上に載せ、採取後30分以内に冷凍遠心により血漿を単離した。単離した血漿をラベル付ネジ蓋冷凍バイアルまたはエッペンドルフチューブに保管し、血漿17−AGレベルを分析するまで冷凍貯蔵(−70℃)した。試験設計は下記のとおりである。各々が3匹のメスからなるイヌ群2つを投薬に用い、各投与の間に1週間の休薬期間を設けた。
【0219】
【表17】
固体製剤に関しては、PVPは、結晶質17−AGとPVPの物理的混合物に対する曝露を17−AGが検出可能なレベルまで増大させないようである。しかしながら、17−AGのEtOAc溶媒和物投薬後に低度の曝露があり、非晶質17−AGまたは17−AGの非晶質分散剤投薬後に有意な曝露があった。さらに、PVPをこれらの製剤に含めることにより、EtOAc溶媒和物および非晶質17−AGの曝露プロファイルを改善すると思われる。この結果は、PVPが17−AG溶解度を向上させ、17−AGの過飽和溶液を安定させる能力を示すインビトロ溶解実験と一致する。製造方法は、溶媒蒸発または噴霧乾燥した20%17−AG/PVP非晶質分散剤の投薬による曝露は同じであるため、影響を有さないようである。17−AGの固体分散剤を他の結晶化抑制剤、HPMC−AS、およびEudragit L100とともにインビボ投薬した結果も17−AG/PVP分散剤の結果と一致する。これらの製剤中の17−AGのバイオアベイラビリティが投与する結晶質17−AGと比較して改善されていることは、非晶質分散剤中の結晶化抑制剤をゲルダナマイシン類似体とともに利用することの有用性を実証している。
【0220】
液体(溶液、乳剤)製剤に関しては、投与した製剤の全てについて有意な曝露があった。PVPを製剤に含めても、溶液投薬においては固体投薬の曝露結果と同様の有意な影響は得られなかったようだ。これは、溶液の全てが相対的に低濃度(2mg/ml)、かつ少量(25ml)で投与され、物理的安定性が良好であったことによる。溶液投薬の全てについて一貫して高い曝露結果が得られたことは、PVPが溶液を安定させる能力を明確に示する前に17−AGが容易に吸収されていることを示唆する。
【0221】
懸濁液およびナノ懸濁液製剤に関しては、結晶化抑制剤PVPが存在してもしなくても、投薬後に測定可能なレベルの17−AGはほとんどまたは全くなかった。
【0222】
総合的には、これらの結果は、多様な経口製剤を利用して17−AGを投薬する能力を実証する。観察された曝露のばらつきは、動物特異的な誤差または生存中の観察(すなわち、投薬問題、嘔吐)による可能性が高い。特定の投薬に関する曝露データの例示的なグラフは、下記表に示す図面参照番号に記載されている。経口バイオアベイラビリティに関する結果(平均値)は下記表に集計されている。
【0223】
【表18】
CNE=評価不可
下記の実施例27では、17−AGの溶液がマウスゼノグラフモデルにおいて腫瘍の増殖を抑えることを示す。代表的なデータは図47および図48に記載している。
【0224】
(実施例27)
17−AGのインビボ効力
HSP90に依存するクライアントタンパク質のマウスゼノグラフ腫瘍モデルを利用した2つのマウスゼノグラフ試験を行って17−AGのインビボ効力を実証した。
【0225】
第1の試験では、H1975(EGFR(HSP90のクライアントタンパク質)にL858RおよびT790M変異株を有する非小細胞肺癌細胞株)を利用した。5〜6週齢のNu/Nuマウスに10×10e6個のH1975細胞を移植した。移植細胞が〜150mm3に達した後、投薬を開始した。投薬は強制経口投与で行い、投薬スケジュールは、ビヒクル(20%PGHS、5%DMSO、75%NS)、およびビヒクル中の75mg/kgと100mg/kgの17−AGを用いて隔日に行うこととした。投薬後、投薬治療群(dosing arms)では、腫瘍容積が、ビヒクルで処置した動物と比較して〜35%および〜70%減少し、HSP90クライアントタンパク質に依存するゼノグラフ腫瘍モデルにおける17−AGの投薬効力が実証された。
【0226】
第2の試験では、EGFR(Del E746−A750)の突然変異型を有するH1650肺腺癌細胞株を利用した。5〜6週齢のNu/Nuマウスに10×10e6個のH1650細胞を移植した。移植細胞が約100mm3に達した後、投薬を開始した。投薬は強制経口投与で行い、投薬スケジュールは、ビヒクル(15%PVP、5%EtOH、80%PG)、およびビヒクル中の50mg/kg、75mg/kg、100mg/kgの17−AGを用いて毎日行うこととした。投薬後、投薬治療群では、腫瘍容積が、ビヒクルで処置した動物と比較して最大で約62%減少し、HSP90クライアントタンパク質に依存するゼノグラフ腫瘍モデルにおける17−AGの投薬効力が実証された。
【0227】
本明細書に含まれる他の実施形態を下記の請求の範囲に示す。
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
この出願は、特許法119(e)の下、2006年12月12日に出願されたUSSN第60/874,349号、2007年4月27日に出願されたUSSN第60/914,477号および2007年5月24日に出願されたUSSN第60/939,913号(これらの各々の全体の開示は、参考として本明細書に援用される)の出願日の利益を主張する。
【0002】
(分野)
本明細書では、特に、固体形態のゲルダナマイシン類似体、ゲルダナマイシン類似体および結晶化抑制剤(crystallization inhibitor)を含む医薬組成物、ならびにそのような組成物の作製法および使用法を提供する。いくつかの実施形態では、癌および/または過剰増殖性障害の治療法、ならびに熱ショックタンパク質90(「Hsp90」)の抑制法を提供する。
【背景技術】
【0003】
Hsp90は、細胞の生存に関する役割を有するとともに、二重のシャペロン機能を示す多量タンパク質(abundant protein)である(J.Cell Biol.(2001)154:267−273,Trends Biochem.Sci.(1999)24:136−141)。これは、多くのタンパク質の天然立体配座が熱ショック等の各種の環境ストレスにより変化した後、それらのタンパク質と相互作用することにより細胞ストレス−応答に関する役割を果たし、十分なタンパク質折り畳みを確実に生じるとともに、非特異的凝集を防ぐ(Pharmacological Rev.(1998)50:493−513)。最近では、Hsp90が推定では変異タンパク質の不適切な折り畳みを修正することによって変異作用を緩和する役割も果たし得ることを示唆する結果が得られている(Nature(1998)396:336−342)。Hsp90はまた、正常な生理的条件下で調節を行う役割も有するとともに、多数の特定クライアントタンパク質の立体配座安定性および熟成に関与する(Expert.Opin.Biol Ther.(2002)2(1):3−24を参照されたい)。
【0004】
Hsp90アンタゴニストは、Hsp90活性の1つ以上の局面を抑制することにより、ある疾患または障害について治療効果が得られる数多くの生物学的状況において現在調査されている。
【0005】
ゲルダナマイシンは、天然産物のベンゾキノン含有アンサマイシンファミリーのメンバーである大環状ラクタムである。腫瘍細胞を破壊するためのゲルダナマイシンのナノモル力価(nanomolar potency)および見かけ上の選択性、ならびに哺乳類細胞におけるその主要標的がHsp90という発見により、それを抗癌剤として開発するという関心が呼び起こされた。しかしながら、その極端に低い溶解度およびゲルダナマイシンの投与と肝毒性の関連性により、治療用途のために承認可能な薬剤の開発が困難となった。特に、ゲルダナマイシンは難水溶性であり、治療に効果的な用量での送達が困難である。
【0006】
より最近では、Hsp90結合を維持しながら肝毒性を低減するゲルダナマイシン(「ゲルダナマイシン類似体」)の17−アミノ誘導体、特に、17−AAGが注目を集めている。特許文献1、特許文献2、および特許文献3を参照されたい。ゲルダナマイシンと同様に、これらの17−アミノ誘導体は水溶解度が非常に乏しい。結果的に、17−AGおよび17−AAGならびにそれらの固体形態等、ゲルダナマイシン類似体のさらなる医薬組成物を開発するという要望は満たされない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,261,989号明細書
【特許文献2】米国特許第5,387,584号明細書
【特許文献3】米国特許第5,932,566号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施形態では、Hsp90アンタゴニストとして有用な固体形態のゲルダナマイシン類似体を本明細書において提供する。また、本明細書では、特に、ゲルダナマイシン類似体を含む医薬組成物、そのようなバイオアベイラビリティが高い組成物の作製法、癌および/または過剰増殖性障害の治療のためのゲラナマイシン類似体(gelanamycin analogs)の使用法、ならびにHsp90の抑制法も提供する。本明細書では、ゲルダナマイシン類似体と結晶化抑制剤の混合物がゲルダナマイシン類似体のバイオアベイラビリティを劇的に改善することを発見している。この改善を達成する剤形の例には、固体分散剤、固体分子分散剤、およびそれら成分の物理的ブレンドが含まれるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、ゲルダナマイシン類似体が非晶質状態、微結晶状態、ナノ結晶状態、またはそれらを組み合わせた状態で存在する。
【0009】
特定の実施形態では、ゲルダナマイシン類似体および少なくとも1つの結晶化抑制剤の固体分散剤を含有する医薬組成物であって、当該ゲルダナマイシン類似体は実質的に非晶質形態で存在する、医薬組成物を提供する。他の実施形態では、非晶質ゲルダナマイシン類似体の調製法を提供する。本明細書で提供する非晶質ゲルダナマイシン類似体の固体分子分散剤を製造する1つの方法は、溶媒噴霧乾燥を伴う。非晶質ゲルダナマイシン類似体の固体分子分散剤の調製に使用可能な他の技術は、(1)粉砕、(2)押出、(3)高温融解凝固加工(high melt−congeal processes)および融解凝固加工(melt−congeal processes)を含む溶融加工、(4)溶媒修飾融合(solvent modified fusion)、(5)スプレーコーティング、凍結乾燥、溶媒蒸発(例えば、回転蒸発)、および噴霧乾燥を含む溶媒処理、ならびに(6)非溶媒析出を含むがこれらに限定されない。
【0010】
他の実施形態では、固体非晶質分散剤内において、純相として存在可能な非晶質ゲルダナマイシン類似体を結晶化抑制剤の全体に渡って均質に分布したゲルダナマイシン類似体の分子分散剤として、またはこれらの状態もしくはそれらの中間の状態の組み合わせとして提供する。いくつかの実施形態では、分散剤は、非晶質ゲルダナマイシン類似体が当該分散剤または剤形の全体に渡って均等に分散するように実質的に均質である。
【0011】
さらに他の実施形態では、各種の固体形態で存在するゲルダナマイシン類似体を提供する。特定の実施形態では、17−AGは複数の多型形態で存在する。そのような形態を、純粋な多型状態または、例えば、17−AGの他の多型形態を含む任意の他の材料と混ざった状態で含む17−AG組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】非晶質17−AGのXRPDパターンを示す。
【図2】17−AGの形態IのXRPDパターンを示す。
【図3】17−AGの形態IのDSCパターンを示す。
【図4】17−AGの形態Iの1HNMRスペクトルを示す。
【図5】17−AGの形態IIのXRPDパターンを示す。
【図6】17−AGの形態IIIのXRPDパターンを示す。
【図7】17−AGのEtOAc溶媒和物のXRPDパターンを示す。
【図8】17−AGのEtOAc溶媒和物のDSCパターンを示す。
【図9】17−AGと酢酸エチルの割合を示す17−AGのEtOAc溶媒和物の1HNMRスペクトル。
【図10】図10aは、17−AG濃度レベルをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、オスのビーグル犬では非晶質17−AGを投与した場合、結晶質17−AGと比較して相対バイオアベイラビリティが高くなることを示す:(i)PVP固体分散製剤における17−AG(12%充填量)を含有する非コーティングHPMCカプセル(セッション1)、(ii)結晶質17−AGを含有する非コーティングHPMCカプセル(セッション3)、(iii)PVP固体分散製剤における17−AG(12%充填量)を含有するコーティングHPMCカプセル(セッション4)。図10bは、図10aのPKパラメータの集計表を示す。
【図11】図11aは、17−AG濃度レベルをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、メスのビーグル犬では非晶質17−AGを投与した場合、結晶質17−AGと比較して相対バイオアベイラビリティが高くなることを示す:(i)PVP固体分散製剤における17−AG(12%充填量)を含有する非コーティングHPMCカプセル(セッション1)、(ii)結晶質17−AGを含有する非コーティングHPMCカプセル(セッション3)、(iii)PVP固体分散製剤における17−AG(12%充填量)を含有するコーティングHPMCカプセル(セッション4)。図11bは、図11aのPKパラメータの集計表を示す。
【図12】t−BuOH/水(3:1)から凍結乾燥を用いて作製したPVP K−30固体分散製剤中の17−AG(12%充填量)のDSC走査を示す。
【図13】各種の17−AG/高分子分散剤のインビトロ溶出試験の結果をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図14】17−AG濃度レベルをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、2つの異なる方法により作製した固体分散製剤((図14a)回転蒸発により作製したPVP固体非晶質分散製剤における17−AG(20%充填量)を含有する非コーティングHPMCカプセル;および(図14b)噴霧乾燥により作製したPVP固体非晶質分散製剤における17−AG(20%充填量)を含有する非コーティングHPMCカプセル)を用いてメスのビーグル犬における非晶質17−AGの相対バイオアベイラビリティをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットして示す。図14cは、図14aおよび図14bのデータの集計表を示す。
【図15】回転蒸発を利用してPVPから生成した一連のアンサマイシン類似体の非晶質分散剤のSIFのインビトロ溶出試験をng/ml対期間(分)の関数としてプロットして示す。
【図16】回転蒸発により作製した17−AG+PVP(K−30中20%)の非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図17】結晶形態Iを0.1%添加した17−AG+PVPの非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図18】結晶形態Iを1%添加した17−AG+PVPの非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図19】結晶形態Iを5%添加した添加した17−AG+PVPの非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図20】結晶形態Iを10%添加した添加した17−AG+PVPの非晶質分散剤のXRPDパターンを示す。
【図21】各種の量の形態I 17−AG(0%、1%、および10%)を含有する17−AG/PVP分散剤のインビトロ溶出試験の結果をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフであり、過飽和溶液の安定性に対する各種の量の形態Iの影響を示す。
【図22】各種の量の形態II 17−AG(0%、1%、および10%)を含有する17−AG/PVP分散剤のインビトロ溶出試験の結果をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフであり、過飽和溶液の安定性に対する各種の量の形態IIの影響を示す。
【図23】各種の量の形態III 17−AG(0%、1%、および10%)を含有する17−AG/PVP分散剤のインビトロ溶出試験の結果をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフであり、過飽和溶液の安定性に対する各種の量の形態IIIの影響を示す。
【図24】各種錠剤およびカプセル(平均値、SIF中におけるインビトロ溶解)からの17−AGの溶解プロファイルを示すグラフであり、異なる組成の錠剤で各種の溶解/放出プロファイルを得られることを示す。
【図25】0%、0.5%、1.5%、および5%PVPを含有する各種のSIF溶液(50mg/mlの17−AGのDMSO溶液をSIF中において1:100で希釈)中の0.5mg/mlの17−AGを用いたインビトロ溶出試験の3次元棒グラフを左側に示し、0%、0.5%、1.5%、および5%PVPを含有する各種のSIF溶液(100mg/mlの17−AGのDMSO溶液をSIF中において1:100で希釈)中の1.0mg/mlの17−AGを用いたインビトロ溶出試験の3次元棒グラフを右側に示しており、ともに異なる量のPVPで17−AGを過飽和レベルにし、17−AGの核生成/析出を防ぐことによりその過飽和溶液が安定することを示す。
【図26】SIF中の異なる量のPVPがSIF中の17−AGの過飽和度を変化させる(すなわち、PVPの量が増えることにより、17−AGの過飽和レベルが高くなる)ことを示す3次元棒グラフを示す。
【図27】各種の量のPVP K−30(0%、0.5%、1%、2.5%、および5%)を含有するSIF中の17−AGの平衡溶解度をng/ml対期間の関数としてプロットしたグラフであり、PVPを加えることにより模擬腸液(SIF)中の17−AGの平衡溶解度が上昇することを示す。
【図28】図28aは、メスのビーグル犬における17−AGの血漿レベル濃度に対する各種の充填量の17−AG(PVP K−30において12%、20%、および30%充填量(w/w))の影響をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。図28bは、図28aのデータの集計表を示す。
【図29】図29aは、オスのビーグル犬における17−AGの血漿レベル濃度に対する各種の充填量の17−AG(PVP K−30において12%、20%、および30%充填量(w/w))の影響をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。図29bは、図29aのデータの集計表を示す。
【図30】図30aは、結晶化抑制剤が存在しない17−AGのEtOAc溶媒和物とラクトースの物理的ブレンドを含有する非コーティングHPMCカプセルの投与後の17−AGイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。図30bは、17−AGのEtOAc溶媒和物と結晶化抑制剤(PVP)の物理的ブレンドを含有する非コーティングHPMCカプセルの投与後の17−AGイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、結晶化抑制剤を加えることにより血漿レベル濃度が上昇することを示す。図30cは、図30aおよび図30bのPKパラメータの集計表を示す。
【図31】図31aは、結晶化抑制剤が存在しない非晶質17−AGおよびラクトースを含有する非コーティングHPMCカプセルの投与後の17−AGイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、結晶化抑制剤が存在しない場合でも結晶質17−AGと比べて血漿レベル濃度が高いことを示す。図31bは、非晶質17−AGおよび結晶化抑制剤(PVP)を含有する非コーティングHPMCカプセルの投与後の17−AGイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、結晶化抑制剤を加えることにより血漿レベル濃度が上昇することを示す。図31cは、図31aおよび図31bのPKパラメータの集計表を示す。
【図32】結晶化抑制剤が存在しない17−AG溶液(85%プロピレングリコール、5%エタノール、および10%DMSO)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度のグラフをng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図33】結晶化抑制剤(PVP)を含有する17−AG溶液(85%プロピレングリコール、5%エタノール、および10%PVP)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示し、溶液および固体分散剤が経口投与に効果的な製剤であることを示す。
【図34】結晶化抑制剤(PEG−HS)を含有する17−AG溶液(生理食塩水中の20%ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール、5%DMSO)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図35】結晶化抑制剤(PEG−HSおよびPVP)を含有する17−AG溶液(生理食塩水中の20%ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール、5%DMSO、10%PVP)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図36】結晶化抑制剤(非イオン性Tween−80)を含有する17−AG溶液(注射用蒸留水中の2%非イオン性Tween−80、5%DMSO)の強制経口投与後のメスイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図37】結晶化抑制剤(PVPおよび非イオン性Tween−80)を含有する17−AG溶液(注射用蒸留水中の2%非イオン性Tween−80、5%DMSO、10%PVP)の強制経口投与後のイヌ血漿レベル濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図38】各種グレードのPVP(K−15、K−30、およびK−90)を用いた固体分散剤中の非晶質17−AG(12%充填量)の37℃での相対的インビトロ溶出試験(37℃のSIF)を標的(2mg/ml)に対する%対時間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。PVP K−90がPVPのグレードK−15またはK−30よりも17−AGの過飽和レベルを低くするという傾向は、17−AG充填量に関係なく一貫している。
【図39】異なる充填量レベルの17−AG(12%、20%、30%、および50%)を用いた非晶質17−AG+PVP分散剤の相対的インビトロ溶出試験(37℃のSIF)を標的(2mg/ml)に対する%対時間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。17−AGの過飽和レベルが充填量と逆の相関がある(すなわち、17−AGの充填量レベルが高くおよび結晶化抑制剤(PVP)のレベルが低い分散剤は17−AGの過飽和レベルが低い)という傾向は、PVPグレードに関係なく一貫している。
【図40】図40aは、固体分散製剤[小型(<50μM)および大型(>800μM)の粒径の両方]中の17−AG(20%充填量)+PVPの経口投与(10mg/kg)後のメスのビーグル犬における血漿濃度をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示し、粒径はインビボ曝露に大きく影響を及ぼさないことを示す。図40bは、図40aのPKパラメータの集計表を示す。図40cは、固体分散製剤[小型(50ミクロン未満)および大型(800ミクロンを超える)の粒径の両方]中の17−AG(20%充填量)+PVPの経口投与(10mg/kg)後のオスのビーグル犬における血漿濃度をng/ml対期間(分)の関数としてプロットしたグラフを示す。
【図41】図41aは、各種グレードのPVP(K−15、K30、およびK−90)を用いた非晶質17−AG分散剤の経口投与(15mg/kg)後のメスのビーグル犬における17−AG(12%充填量)血漿濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフであり、一定の傾向を示している。このデータから、PVPグレードK−30は、PVP K−90よりも曝露を増大させるPVP K−15よりもさらに曝露を増大することが分かる。図41bは、図41aのPKパラメータの集計表を示す。
【図42】図42aは、各種グレードのPVP(K−15、K−30、およびK−90)を用いた非晶質17−AG分散剤の経口投与(15mg/kg)後のオスのビーグル犬における17−AG(12%充填量)血漿濃度をng/ml対期間(時間)の関数としてプロットしたグラフを示す。メスイヌの投薬データと同様に、PVPグレードK−30は、PVP K−90よりも曝露を増大させるPVP K−15よりもさらに曝露を増大させる。図42bは、図42aのPKパラメータの集計表を示す。
【図43】ビーグル犬における非晶質分散剤(非コーティングHPMCカプセル中の12%17−AAGおよび結晶化抑制剤PVP)の単一カプセル投与後に得られた血漿レベルのグラフであり、17−AG以外のアンサマイシン類似体の非晶質分散剤の投薬により良好なインビボ曝露が得られることを示す。
【図44】偏光顕微鏡を用いて取得した例示的な画像を示す:(A)固体状態の17AG/PVP非晶質分散剤の4×透過光画像;(B)17AG/PVP非晶質分散剤水溶液の10×偏光画像;(C)17−AG/PVP非晶質分散剤中に結晶形態Iを0.01%添加し、水に溶解した場合の10×偏光画像;(D)17−AG/PVP非晶質分散剤中に結晶形態Iを0.1%添加し、水に溶解した場合の10×偏光画像;(E)17−AG/PVP非晶質分散剤に結晶形態Iを1.0%添加し、水に溶解した場合の10×偏光画像。
【図45】3:1のt−BuOH/水から凍結乾燥により作製し、水に溶解した17−AG/PVP分散剤の透過光顕微鏡写真を示す。
【図46】懸濁液および乳剤の例示的な写真画像を示す:(A)1%カルボキシメチルセルロース中の2%17−AG懸濁液;(B)10%PGHS、2.5%DMSO、5%Tween−80、50%オリーブ油中の2mg/mlの17−AGのNS。
【図47】17−AGの20%PG−HS、5%DMSO、75%生理食塩水溶液を用いて投与したマウスゼノグラフモデルH1975を利用した場合の腫瘍容積を時間(日)関数として示したグラフを示す。
【図48】17−AGの15%PVP、5%エタノール、80%プロピレングリコール溶液を用いて投与したマウスゼノグラフモデルH1650を利用した場合の腫瘍容積を時間(日)関数として示したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)定義および略語
本明細書で用いる用語の定義は、化学および医薬分野において各用語について認識される現在の最新技術の定義を取り入れるためのものである。必要に応じて例示を行う。これらの定義は、具体的な事例において個別にまたはより大きな群の一部として限定する場合を除いて、本明細書全体に渡って用いられる用語に適用される。
【0014】
原子の空間的配置を明示していない場合、本明細書に記載する発明化合物の全ての立体異性体が純粋な異性体およびそれらの混合物として本開示の範囲内に含まれる。特に明示しない限り、個々の鏡像異性体、ジアステレオマー、幾何異性体、ならびにそれらの組み合わせおよび混合物は全て本開示により包含される。多型結晶形態および溶媒和物もまた本開示の範囲内に包含される。
【0015】
「アシルアミノ」および「アシルアミン」という用語は、一般式
【0016】
【化1】
によって表すことが可能な部分を指す。
【0017】
ここで、R50およびR51の各々は独立して水素、アルキル、アルケニル、または−(CH2)m−R61を表し、R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環、または多環を表し、mは0または1〜8の範囲の整数であるか、またはR50およびR51は、それらが付着するN原子と組み合わされて、環状構造中に4〜8個の原子を有する複素環となる。
【0018】
「アルキル」という用語は、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む飽和脂肪族基のラジカルを指す。特定の実施形態では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に30個以下の炭素原子を有する(例えば、直鎖がC1〜C30、分岐鎖がC3〜C30)、または20個以下の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、特定のシクロアルキルは、3〜10個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜10個の炭素原子をその骨格として含有し、置換されてもよい。いくつかの実施形態では、特定のシクロアルキルは、それらの環状構造中に3〜10個の炭素原子を有し、他のシクロアルキルは、環状構造中に5個、6個、または7個の炭素を有する。
【0019】
炭素数が特に明示されない限り、「低級アルキル」は上記で定義したようなアルキル基であって、その骨格構造に1〜約10個の炭素を有するもの、あるいは1〜約6個の炭素原子を有するものを指す。いくつかの実施形態では、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は同様の鎖長を有しており、その骨格構造に2〜約10個の炭素、あるいは2〜約6個の炭素原子を有する。
【0020】
「アルキルチオ」という用語は、上記で定義したようなアルキル基であって、硫黄ラジカルが付着したものを指す。特定の実施形態では、「アルキルチオ」部分は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、および−S−(CH2)m−R61のうちの1つで表され、mおよびR61は上記で定義したとおりである。代表的なアルキルチオ基は、メチルチオ、エチルチオ等を含む。
【0021】
「アラルキル」という用語は当該分野で認知されており、アリール基(例えば、芳香族または複素環式芳香族基)で置換したアルキル基を指す。ベンジル、p−メトキシベンジル、およびフェニルエチルはアラルキルの一例である。
【0022】
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は、同様の長さを有し、上述したアルキルと置換が可能であるが、それぞれ、少なくとも1つの二重または三重結合を有する不飽和脂肪族基を指す。アルケニルおよびアルキニル基は、可能な原子価で許容される範囲で、アルキル基の置換基として適した同じ基で置換してもよい。特定の実施形態では、アルケニルおよびアルキニル基は、骨格構造中に2〜10個の炭素を含有する。
【0023】
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、本明細書で定義したようなアルキル基であって、酸素ラジカルが付着したものを指す。1つの実施形態では、アルコキシル基は、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert−ブトキシ等を含む。アルコキシ基のアルキル部は、アルキル基と同様の大きさであり、可能な原子価で許容される範囲で、アルキル基の置換基として適切な同じ基で置換可能である。
【0024】
「アミド(amidoおよびamide)」という用語は、アミノ置換カルボニルとして当該分野で認知されており、一般式
【0025】
【化2】
により表すことが可能な部分を含み、R50およびR51は本明細書で定義したとおりである。
【0026】
「アミン」および「アミノ」という用語は当該分野で認知されており、例えば、一般式
【0027】
【化3】
で表すことができる部分等、非置換および置換アミンの両方を指し、R50、R51、およびR52は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、−(CH2)m−R61を表すか、またはR50およびR51は、それらが付着するN原子と組み合わされて、環状構造中に4〜8個の原子を有する複素環となり、R61は、アリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環または多環を表し、mは0または1〜8の範囲の整数である。他の実施形態では、R50およびR51(および必要に応じてR52)は各々独立して水素、アルキル、アルケニル、または−(CH2)m−R61を表す。このように、「アルキルアミン」という用語は、上記で定義したようなアミン基であって、置換または非置換アルキルが付着したものを含む(すなわち、R50とR51の少なくとも一方はアルキル基である)。
【0028】
本明細書で用いる「アラルキル」という用語は、単独であっても、例えば、アラルキルオキシ等の基名の一部であっても、本明細書に記載するようなアリール基(例えば、芳香族または複素環式芳香族基)で置換した本明細書に記載するようなアルキル基を指す。各アラルキル基のアリール部分は、必要に応じて置換してもよい。1つの実施形態では、アラルキル基は、例えば、一般式Ar−(CH2)t−の群を含み、Arは芳香環または芳香族複素環を表し、tは1〜6の整数である。
【0029】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、単独であっても、「アリールオキシ」という他の名前の一部であっても、例えば、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ピレン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、およびピリミジン等、N、O、およびSから選択される0〜4個のヘテロ原子を有し得る5員、6員、および7員単環芳香族基を指す。環状構造中にヘテロ原子を有するこれらのアリール基はまた、「アリール複素環」または「複素環式芳香族」と呼ぶことがある。芳香環は、例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香環もしくは芳香族複素環部分、−CF3、−CN等、本明細書に記載する置換基で1つ以上の環位置が置換されてもよい。「アリール」という用語はまた、隣接する2つの環(これらの環は「縮合環」である)に対して2つ以上の炭素が共通しており、それら環の少なくとも1つは芳香族であり得る(例えば、他の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロ環であり得る)2つ以上の環を有する多環系も含む。
【0030】
本明細書で用いる「ベンゾキノンアンサマイシン」(「ゲルダナマイシン化合物」として知られる)という用語は、(a)1つのアミド結合、および(b)ベンゾキノン部分(当該ベンゾキノン部分は大環状ラクタム環系およびベンゾキノン部分自体に対して外部に0〜2個の窒素置換基を有する)を含有する大環状ラクタム環系を意味する。天然に存在するベンゾキノンアンサマイシンの具体例は、ゲルダナマイシンおよびハービマイシンを含むがこれらに限定されない。
【0031】
「特徴的なXRPDピーク」または「一連の特徴的なピーク」という語句は、ある多形体と、異なる形態のXRPDパターンを比較して同定した同じ化合物の他の公知の多形体とを区別するXRPDスペクトルから採取した単一ピークまたは一連のピークを意味する。
【0032】
「結晶化抑制剤」という用語は、非晶質形態から固体状態または溶液状態の1つ以上の結晶形態への化合物変換を実質的に抑制する薬学上許容可能な賦形剤を意味する。結晶化抑制剤はまた、血流に対する化合物の送達において従来より少なくとも50%の吸収促進を可能にする十分に長い期間(例えば、約1〜6時間)胃腸管における結晶成長を実質的に抑制し得る。
【0033】
「ゲルダナマイシン類似体」という用語は、ゲルダナマイシン以外のベンゾキノンアンサマイシン、例えば、17−アミノ−ゲルダナマイシン(17−AG)、17−アリルアミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−AAG)、または17−(2−ジメチルアミノエチル)アミノ−17−デメトキシゲルダナマイシン(17−DMAG)を指す。
【0034】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、本明細書に記載するようなシクロアルキル基であって、アルキルまたはシクロアルキル部分の少なくとも1つの炭素原子がN、O、およびSから選択されるヘテロ原子に置き換えられたものを指す。
【0035】
「ヘテロ原子」という用語は当該分野で認知されており、炭素または水素以外の任意の元素の原子を指す。例示的なヘテロ原子は、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、およびセレンを含む。
【0036】
「ヘテロシクリル」、「ヘテロアリール」、「ヘテロ環」、または「複素環基」という用語は当該分野で認知されており、3〜約10員環状構造、あるいは環状構造が1〜4個のヘテロ原子を有する3〜約7員環を指す。複素環はまた、多環であってもよい。ヘテロ環基は、例えば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンテン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノンおよびピロリジノン等のラクタム、スルタム、スルトン等を含む。ヘテロ環は、1つ以上の位置を本明細書に記載するような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香環または芳香族複素環部分、−CF3、−CN等で置換されてもよい。
【0037】
「Hsp90介在性障害」または「Hsp90発現細胞介在性障害」という用語は、Hsp90が関与する病態および病状を指す。そのような関与は病態に直接的に関係するかまたは当該状態に間接的に関係し得る。この種の疾患に共通する特徴は、当該疾患がHsp90の活性、機能、または他のタンパク質との関連を抑制することによって改善可能なことである。Hsp90介在性障害の特定の例については後述する。
【0038】
本明細書で用いる「単離」という用語は、本明細書で提供する化合物と関連する場合、当該化合物が細胞または生物内にないこと、および当該化合物が本来は、通常伴う成分のいくつかまたは全てから分離していることを意味する。
【0039】
本明細書で用いる「分子分散剤」という用語は、1つの成分が当該系が全体に渡って化学的および物理的に均等および均質となるように他の成分中に分散する固体分散剤の一種を指す。これらの系は、結晶または微結晶状態において活性成分を実質的に含まないことが熱解析(例えば、示差走査熱量計測)、回折(例えば、X線回折)、または映像化(偏光顕微鏡検査法)技術により明らかにされている。
【0040】
「薬学上許容可能な塩」または「塩」という用語は、1つ以上の化合物の塩を指す。化合物の適切な薬学上許容可能な塩は、例えば、化合物溶液を薬学上許容可能な酸溶液(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、安息香酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リン酸、炭酸等)と混合することによって形成され得る酸付加塩を含む。上記化合物が1つ以上の酸性部分を持つ場合、薬学上許容可能な塩は、当該化合物溶液を薬学上許容可能な塩基溶液(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア、アルキルアミン等)で処理することによって形成され得る。
【0041】
「薬学上許容可能な担体」という用語は、所望する特定の投薬形態に合った任意および全ての溶媒、希釈剤もしくは他の液体ビヒクル、分散剤もしくは懸濁補助剤、界面活性剤、等張剤、増粘もしくは乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤等を含む。Remington’s Pharmaceutical−Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、医薬組成物の調剤に使用する各種の担体およびその調製のための公知技術を開示している。何らかの望ましくない生物学的影響を生じるかまたは医薬組成物の任意の他の成分と有害な相互作用を起こすことにより、従来の担体媒体が本明細書で提供する化合物と適合しない場合を除いて、その使用は本発明の範囲内にあるものとする。薬学上許容可能な担体として作用可能な材料の一例としては、ラクトース、グルコース、およびスクロース等の糖類、コーンスターチおよびジャガイモデンプン等のデンプン類、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース)、トラガント末、麦芽、ゼラチン、タルク、ココアバターおよび座薬ろう等の賦形剤、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油等の油類、プロピレングリコール等のグリコール類、オレイン酸エチルおよびラウレートエチル等のエステル類、寒天、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、アルギン酸、無発熱因子水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム等の他の非毒性適合潤滑剤が含まれるがこれらに限定されない(調合者の判断に応じて着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、着香料および芳香剤、防腐剤ならびに抗酸化剤も組成物中に存在するようにすることができる)。
【0042】
「多環式(polycyclyl)」または「多環式基(polycyclic group)」という用語は当該分野で認知されており、2つ以上の炭素が2つの隣接する環(例えば、これらの環は、「縮合環」である)に共通する2つ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、および/またはヘテロ環)を指す。非隣接原子を介して結合する環は、「橋架(bridged)」環という。多環式の環の各々は、上述したような置換基、例えば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、カルボニル、カルボキシル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香環または芳香族複素環部分、−CF3、−CN等で置換されてもよい。
【0043】
本明細書で用いる「保護基」という語句は、特定の官能基(例えば、O、S、またはN)が一時的に阻害され、多官能化合物の他の反応部位において反応が選択的に生じ得ることを意味する。特定の実施形態では、保護基は選択的に高収率で反応し、保護基質を予想される反応に対して安定させるが、この保護基は容易に入手でき、好ましくは無毒であり、他の官能基を攻撃しない試薬により選択的に高収率で除去する必要があり、当該保護基は(新たな立体中心を生成することなく)分離が容易な誘導体を形成してもよく、当該保護基は他の部位におけるさらなる反応を回避するための最低限の機能をさらに有する。本明細書で詳述するように、酸素、硫黄、窒素、および炭素保護基を利用してもよい。例えば、特定の実施形態では、本明細書で詳述するように、特定の例示的な保護基としては、カルボン酸エステル類、アルコールシリルエーテル類、アルデヒドアセタール類、およびケトンケタール類が挙げられる。本明細書では特定の他の例示的な保護基を詳述するが、本発明がそれらの保護基に限定されないことは言うまでもなく、上記の基準を用いて多様な同等の保護基をさらに容易に同定し、本発明において利用することができる。さらに、その内容の全てを本明細書において参考として援用する「Protective Groups in Organic Synthesis」Third Ed.Greene,T.W.およびWuts,P.G.,Eds.,John Wiley&Sons,New York:1999に各種の保護基が記載されている。
【0044】
「多形体」という用語は、特定の化学物質により得られる異なる結晶構造を指す。詳細には、多形体は特定の化学化合物が複数の構造配列と結晶化する際に生じる。
【0045】
「溶媒和物」という用語は、化学量論または非化学量論量の溶媒または溶媒の混合物が結晶構造に組み込まれた結晶形態を指す。
【0046】
本明細書で用いる「被験体」という用語は、治療、観察、および/または実験の対象となるかまたは対象となった動物(典型的には、哺乳類またはヒト)を指す。この用語を化合物または薬物の投与に関して用いた場合、被験体はすでに治療、観察、および/または化合物もしくは薬物投与の対象となっている。
【0047】
「実質的に非晶質」という用語は、本明細書に開示する組成物の説明に用いた場合、組成物内に存在する化合物の大部分が非晶質形態で存在し、当該組成物が約20%未満の結晶化合物、約15%未満の結晶化合物、約10%未満の結晶化合物、約5%未満の結晶化合物、約3%未満の結晶化合物、または約1%未満の結晶化合物、約0.1%未満の結晶化合物、または約0.01%未満の結晶化合物を有することを意味する。本発明のいくつかの実施形態では、組成物内に存在する化合物は、検出可能な結晶材料を含有しない。「実質的に非晶質」という用語は、本明細書に開示する化合物を説明するために用いた場合、当該化合物の大部分が非晶質形態で存在し、当該化合物が約20%未満の結晶含有量、約15%未満の結晶含有量、約10%未満の結晶含有量、約5%未満の結晶含有量、約3%未満の結晶含有量、または約1%未満の結晶含有量、約0.1%未満の結晶含有量、または約0.01%未満の結晶含有量を有することを意味する。本発明のいくつかの実施形態では、組成物内に存在する化合物は、検出可能な結晶材料を含有しない。
【0048】
「実質的に含まない」という用語は、材料または化合物を説明するために用いた場合、当該材料または化合物が明示した物質を有意なまたは検出可能な量で有さないことを意味する。いくつかの実施形態では、明示した物質は、当該材料または化合物の約1%、2%、3%、4%、または5%(w/wまたはv/v)以下のレベルで存在する。例えば、特定のゲルダナマイシン類似体の調製物は、明示した特定のゲルダナマイシン類似体以外の任意のゲルダナマイシン類似体の約1%、2%、3%、4%、または5%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合には、他のゲルダナマイシン類似体を「実質的に含まない」。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、非晶質ゲルダナマイシンの調製物は、結晶質ゲルダナマイシンを約1%、2%、3%、4%、または5%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合には、結晶質ゲルダナマイシンを「実質的に含まない」。本発明のいくつかの実施形態では、非晶質ゲルダナマイシンの調製物は、検出可能な結晶質ゲルダナマイシンを含有しない。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、非晶質17−AGの調製物は、結晶質17−AGを約1%、5%、10%または15%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合、結晶質17−AGを「実質的に含まない」。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、非晶質17−AAGの調製物は、結晶質17−AAGを約1%、5%、10%、または15%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合、結晶質17−AAGを「実質的に含まない」。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物の調製物は、明示した固体形態以外の任意の固体形態を約1%、5%、10%または15%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合、他の固体形態の17−AGを「実質的に含まない」。同様に、本発明のいくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物の調製物は、明示した固体形態以外の任意の固体形態を約1%、5%、10%、または15%(w/wまたはv/v)未満しか含有しない場合、他の固体形態の17−AAGを「実質的に含まない」。
【0049】
「実質的に全て」という語句は、化合物のXRPDピークを説明するために用いた場合、その化合物のXRPDが基準値と比較して少なくとも約80%のピークを含むことを意味する。例えば、化合物のXRPDが参照リストの「実質的に全て」のピークまたは基準XRPDの全てのピークを含むと言った場合、その化合物のXRPDは特定の基準値の少なくとも80%のピークを含むことを意味する。他の実施形態では、「実質的に全て」という語句は、その化合物のXRPDが基準値と比較して少なくとも約85%、90%、95%、97%、98%、または99%のピークのを含むことを意味する。さらに、当業者は一貫して、本明細書に示すXRPDピーク強度および相対強度は粒径の変化および他の関連する変数とともに変化し得ることを理解する。
【0050】
「実質的に均質」という用語は、ゲルダナマイシン類似体が分散剤または製剤全体に渡って一様に分散していることを意味する。よって、ある分散剤の10重量%にあたる当該分散剤の部分は、当該分散剤中に存在するゲルダナマイシン類似体の8〜12重量%または9〜11重量%を含有する。
【0051】
本明細書で用いる「実質的に抑制」という用語は、有意に低減することを意味する。例えば、非晶質化合物を固体状態における当該化合物の1つ以上の結晶形態に変換することを抑制する結晶化抑制剤では、約1時間以上、約3時間以上、約6時間以上、約12時間以上、約1日以上、約1週間以上、約1ヶ月以上、約3ヶ月以上、約6ヶ月以上、または約1年以上の間(例えば、結晶材料の約1%未満、約5%未満、約10%未満、約15%未満、約20%未満、または約25%未満に低減する変換であれば、そのような変換は「実質的に抑制」される)。
【0052】
「置換」という用語は、アルキル、シクロアルキルアリール等の化学基であって、少なくとも1つの水素が本明細書に記載するような置換基((例えば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロ環、芳香環または芳香族複素環部分、−CF3、−CN等)と置き換えられたものを指す。「置換」という用語はまた、有機化合物の許容可能な置換基の全てを含むものとする。大局的には、上記許容可能な置換基は、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環、芳香族および非芳香族置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、上述したものが挙げられる。上記許容可能な置換基は、適切な有機化合物について1つ以上存在し、同じであっても異なっていてもよい。この開示の目的のために、窒素等のヘテロ原子は、当該ヘテロ原子の原子価を満たす本明細書に記載の有機化合物の水素置換基および/または任意の許容可能な置換基を有してもよい。本開示はいかなる点においても有機化合物の許容可能な置換基を限定するものではない。多くの実施形態では、しかしながら、任意の単一置換基は、合計で100未満の原子を有する。
【0053】
「置換」または「と置換」は、そのような置換が置換原子および置換基の許容される原子価と一致しており、その置換の結果、安定した化合物、例えば、再配列、環化、脱離、または他の反応等により自然に形質転換しない化合物を生じるという黙示的条件を含むことは言うまでもない。
【0054】
各表現(例えば、アルキル、m、n等)の定義は、任意の構造において複数回発生する場合には、同じ構造内の他の部位における定義とは独立しているものとする。
【0055】
本明細書で用いる「糖」という用語は、1つ以上の三炭糖、四炭糖、五炭糖、六炭糖、七炭糖、八炭糖、および九炭糖を含む天然または非天然単糖、二糖、オリゴ糖、または多糖を指す。糖類は、単糖カルボニル基の還元から得られるアルジトール、単糖のカルボン酸による1つ以上の末端基の酸化から得られるアルドン酸、単糖中の水素による1つ以上のヒドロキシル基の置換えから得られるデオキシ糖、単糖中のアミノ基による1つ以上のヒドロキシル基の置換えから得られるアミノ糖、チオール基による1つ以上のヒドロキシル基の置換えから得られるチオ糖、または、例えば、アシルアミノ基、硫酸基、リン酸基、もしくは同様のヘテロ原子基による1つ以上のヒドロキシル基の置換えから得られる他の類似化合物、またはこのような修飾の任意の組み合わせを含んでもよい。糖という用語はまた、これらの化合物の類似体(すなわち、アシル化、アルキル化、および糖アルコールとアルデヒドまたはケトンの反応によるグリコシド結合の形成等で化学修飾した糖)を含む。糖は、ヘミアセタール、ヘミケタール、またはラクトンとして環状(オキシロース、オキセトースムフラノース(oxetosesm furanoses)、ピラノース、セプタノース、オクタノース等)形態で存在するか、または非環状形態で存在するようにしてもよい。上記単糖は、ケトース、アルドース、ポリオール、および/またはケトース、アルドースおよびポリオールの混合物であってもよい。糖は、グリセロール、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール、ソルビトール、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、マンノース、マンニトール、グロース、デキストロース、イドース、ガラクトース、タロース、グルコース、フルクトース、デキストレート(dextrates)、ラクトース、スクロース、デンプン(すなわち、アミラーゼおよびアミロペクチン)、デンプングリコール酸ナトリウム、セルロースおよびセルロース誘導体(すなわち、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロー(hydroxypropyl celluloe)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、クロスカルメロース、ヒポメロース(hypomellose)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース)、カラギーナン、シクロデキストリン、デキストリン、ポリデキストロース、およびトレハロースを含み得るがこれにら限定されない。
【0056】
「過飽和」という用語は、溶液の溶解溶質の濃度が所与の温度における所与の溶媒内の同じ溶質の平衡溶解度での濃度よりも高いことを意味する。
【0057】
本明細書で用いる「治療に有効な量」という語句は、細胞培養、組織系、動物、またはヒトにおいて所望の生物学的または薬理的応答を引き起こすのに十分な量を意味する。いくつかの実施形態では、上記応答は、治療する病気、疾患、または障害の1つ以上の症状の発現の軽減および/または遅延を含む。
【0058】
「組み合わされて結合を形成する」という語句は、2つの化学基に関して用いた場合、それらの基が、他の方法では直接的に相互に結合しない原子に付着するときに、それらが付着する原子間の結合を表すことを意味する。それらの基が直接的に相互に結合する原子上にある場合、それら2つの原子間のさらなる結合を表す。よって、例えば、R5およびR6を組み合わせて結合を形成する場合、−CH(R5)−CH(R6)−という構造は、−C(H)=C(H)−を表す。
【0059】
本明細書で開示する組成物が含有する特定の化合物は、特定の幾何学的または立体異性体的形態で存在してもよい。特に明記しない限り、本開示は、本開示の範囲内にあるシスおよびトランス異性体、RおよびS−鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)−異性体、(L)−異性体、それらのラセミ混合物、およびそれらの他の混合物を含むような化合物の全てを含むものとする。さらなる不斉炭素原子がアルキル基等の置換基内に存在してもよい。そのような異性体の全て、およびそれらの混合物は、本開示に含まれるものとする。
【0060】
(2)固体形態
各種の固体形態で存在し得るゲルダナマイシン類似体を本明細書に示す。そのような形態には、多形体として知られる純結晶形態が含まれる。そのような固体形態はまた、溶媒和物、水和物、無水形態、および非晶質も含む。そのような固体形態のゲルダナマイシン類似体は本開示の範囲内である。特定の実施形態では、ゲルダナマイシン化合物が17−AGおよび/または17−AAGの異なる固体形態(例えば、多形体、溶媒和物、および非晶質ゲルダナマイシン類似体)の1つ以上の混合物として提供される。
【0061】
本明細書では、17−AGは、本明細書において非晶質17−AGと呼ぶ非晶質固体として提供され、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、非晶質17−AGは、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。非晶質固体は当業者には周知であり、典型的には、特に、凍結乾燥、溶融、および超臨界流体からの析出等の方法により調製される。非晶質17−AGの調製法は下記の実施例に記載する。
【0062】
いくつかの実施形態では、非晶質17−AGは、図1に示すものと同様のXRPDパターンを有することを特徴とする。
【0063】
特定の実施形態では、結晶形態の17−AGを実質的に含まない実質的に非晶質の17−AGを提供する。
【0064】
本明細書では少なくとも3つの多形体形態を提供し、本明細書では、17−AGの形態I、形態II、および形態IIIと呼ぶ。
【0065】
特定の実施形態では、17−AGの形態Iを提供する。いくつかの実施形態では、17−AGの形態Iであって、そのXRPDパターンの特定のピーク±約0.3度2θにピークを有することを特徴とするものを提供する。本明細書で用いる「約」という用語は、記載するいずれの度2θ値に関して用いた場合にもその値の報告小数位に応じて明記した値±0.3度2θを指す。
【0066】
特定の実施形態では、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AGの形態Iを提供する。いくつかの実施形態では、17−AGの形態Iは、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、形態Iは、約6.2、8.5、13.6、15.9、16.9、22.4、23.4、26.3、30.6、31.7、35.1、および36.1度2θ、ならびにそれらの組み合わせから選択されるそのXRPDパターンの代表的なピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態Iは、約6.2、8.5 13.6、および15.9度2θから選択される少なくとも1つのピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態Iは、約6.2、8.5、13.6、および15.9から選択されるそのXRPDパターンの少なくとも1つの代表的なピークと、約6.2、8.5、13.6、15.9、16.9、22.4、23.4、26.3、30.6、31.7、35.1、および36.1度2θから選択される少なくとも1つの他のピークの組み合わせを特徴とする。いくつかの実施形態では、17−AGの形態Iは、図2に示すそのXRPDパターンの実質的に全てのピークを有することを特徴とする。
【0067】
いくつかの実施形態では、形態Iは、図3に示すものと同様のDSCパターン有することを特徴とする。形態Iの代表的な1HNMRスペクトルを図4に示す。
【0068】
特定の実施形態では、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AGの形態IIを提供する。いくつかの実施形態では、17−AGの形態IIは、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、形態IIは、約9.5、10.1、12.5、15.1、16.1、16.8、19.8、20.7、21.5、22.4、25.1、25.8、29.5、および30.5度2θ、ならびにそれらの組み合わせから選択されるそのXRPDパターンの代表的なピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIは、約12.5、15.1、20.7、22.4、および25.0度2θから選択される少なくとも1つのピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIは、約12.5、15.1、20.7、22.4、および25.0から選択されるそのXRPDパターンの少なくとも1つの代表的なピークと、約9.5、10.1、12.5、15.1、16.1、16.8、19.8、20.7、21.5、22.4、25.1、25.8、29.5、および30.5度2θから選択される少なくとも1つの他のピークの組み合わせを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIは、実質的に図5に示すようなXRPDピークを特徴とする。
【0069】
特定の実施形態では、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AGの形態IIIを提供する。いくつかの実施形態では、17−AGの形態IIIは、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、形態IIIは、約8.4、9.3、10.9、11.6、13.6、13.9、15.7、16.3、17.1、18.3、18.6、19.9、21.0、22.0、24.3、25.8、28.2、29.2、および30.8度2θ、ならびにそれらの組み合わせから選択されるそのXRPDパターンの代表的なピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIIは、約18.3、21.0、および24.3度2θから選択される少なくとも1つのピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIIは、約18.3、21.0、および24.3から選択されるそのXRPDパターンの少なくとも1つの代表的なピークと、約8.4、9.3、10.9、11.6、13.6、13.9、15.7、16.3、17.1、18.3、18.6、19.9、21.0、22.0、24.3、25.8、28.2、29.2度2θから選択される少なくとも1つの他のピークの組み合わせを特徴とする。いくつかの実施形態では、形態IIIは、実質的に図6に示すようなXRPDピークを特徴とする。
【0070】
本明細書においてEtOAc溶媒和物と呼ぶ、17−AGの少なくとも1つの溶媒和物形態も提供する。
【0071】
特定の実施形態では、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AGの酢酸エチル溶媒和物を提供する。いくつかの実施形態では、17−AGのEtOAc溶媒和物は、他の固体形態の17−AGを実質的に含まない。いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、約6.2、8.2、12.6、14.5、15.9、16.8、17.5、22.3、23.3、および25.3度2θ、ならびにそれらの組み合わせから選択されるそのXRPDパターンの代表的なピークを特徴とする。いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、約8.2、15.9、および22.3度2θから選択される少なくとも1つのピークを有することを特徴とする。いくつかの実施形態では、酢酸エチル溶媒和物は、約8.2、15.9、および22.3から選択されるそのXRPDパターンの少なくとも1つの代表的なピークと、約6.2、8.2、12.6、14.5、15.9、16.8、17.5、22.3、23.3、および25.3度2θから選択される少なくとも1つの他のピークの組み合わせを特徴とする。いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、実質的に図7に示すようなXRPDピークを特徴とする。
【0072】
いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、図8に示すものと同様のDSCパターンを有することを特徴とする。ある実施形態では、DSCは、脱溶媒和事象と一致する約96℃で吸熱遷移を示す。いくつかの実施形態では、DSCは、約276℃で吸熱遷移(溶融点開始)を示す。
【0073】
いくつかの実施形態では、EtOAc溶媒和物は、17−AGと酢酸エチルがほぼ2:1の比率の錯体の存在を示す下記の図9に実質的に示すような1HNMRピークを特徴とする。
【0074】
他の実施形態では、本明細書では、本明細書において非晶質17−AAGと呼ぶ非晶質固体として存在可能であり、他のゲルダナマイシン類似体を実質的に含まない17−AAGも提供する。いくつかの実施形態では、非晶質17−AAGは、他の固体形態の17−AAGを実質的に含まない。非晶質固体は当業者には周知であり、典型的には、特に、凍結乾燥、溶融、および超臨界流体からの析出等の方法で調製される。非晶質17−AAGの調製法は以下の実施例に記載する。
【0075】
特定の実施形態では、他の結晶形態の17−AAGを実質的に含まない実質的に非晶質の17−AAGを提供する。
【0076】
いくつかの実施形態では、非晶質17−AAGおよび少なくとも1つの結晶形態の17−AAGを含む組成物を提供する。そのような結晶形態の17−AAGは、本明細書に記載の純結晶形態、溶媒和物、および水和物、または非晶質17−AAGの調製および/もしくは単離により生じ得る他の結晶形態の17−AAGを含む。特定の実施形態では、非晶質17−AAGおよび本明細書に記載の少なくとも1つの結晶形態の17−AAGを含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、非晶質17−AAGおよび少なくとも1つの結晶形態の17−AAGを含む組成物を提供する。
【0077】
(3)医薬組成物
ゲルダナマイシンおよび他のベンゾキノンアンサマイシン化合物(例えば、17−AGおよび17−AAGを含む)は水溶性が低いため、バイオアベイラビリティが低く、経口投与には適していないことは当該分野で認知されている。本明細書では、例えば、非晶質形態(および/または結晶化抑制剤の存在下)で送達する場合に、経口投与が可能な化合物の医薬組成物を提供する。1つの実施形態では、17−AGまたは17−AAG等のベンゾキノンアンサマイシン化合物の経口製剤であって、固体または液体組成物中に非晶質化合物を含み、必要に応じて結晶化抑制剤も含む経口製剤を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、非晶質ゲルダナマイシン類似体と結晶化抑制剤の混合物を含有することにより、非晶質ゲルダナマイシン類似体のバイオアベイラビリティを劇的に改善するという驚くべき知見が得られたため、経口投与に有用である。
【0078】
いずれの特定の理論に縛られることなく、本明細書において提供する本発明の経口製剤のバイオアベイラビリティの改善に寄与し、胃腸管において製剤から放出された際に化合物の再結晶化を低減し得る1つのメカニズムを提案する。すなわち、送達した製剤から放出された際に化合物の吸収が遅い場合、胃腸管において過飽和溶液が生成され、結晶化が起こる可能性がある。結晶化が抑制され、より多くの化合物が溶液中に残留する場合、送達が改善され得る。よって、本明細書で提供する組成物は、上記化合物の結晶化を抑制することにより、消化管において水媒体中の低溶解度ベンゾキノンアンサマイシン化合物を迅速かつ十分に長い時間をかけて溶解させることができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、(17−DMAG以外の)ベンゾキノンアンサマイシン化合物を含有する組成物は、活性化合物を15mg/kgの用量で投与した場合、当該活性化合物の少なくとも100ng・ml/時間、少なくとも500ng・ml/時間、少なくとも1,000ng・ml/時間、少なくとも5,000ng・ml/時間、少なくとも10,000ng・ml/時間、少なくとも15,000ng・ml/時間、少なくとも25,000ng・ml/時間、または少なくとも50,000ng・ml/時間のAUCに十分な量の化合物の送達が可能である。
【0080】
上述の実施形態のいくつかでは、上記化合物は実質的に非晶質形態で存在する。
【0081】
いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤および式1
【0082】
【化4】
の化合物またはその薬学上許容可能な塩を含む経口投与のための医薬組成物であって、
R1はH、−OR8、−SR8−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、CN、またはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル(heterocycloaklyl)、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)CH3、または−[(C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、2、3、4、5、または6であり、
R4はH、アルキル、アケニル(akenyl)、またはアラルキルであり、
R5およびR6は各々Hであるか、またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素 アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9の各々は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR8およびR9は組み合わされてO、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアラルキルであり、
R11は、各出現について独立してH、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、−OR8、−SR8、−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、−C(O)R8、−C(O)2R8、−C(O)N(R8)(R9)、ハロゲン化物、またはCNである、医薬組成物を提供する。
【0083】
いくつかの実施形態では、R1はOHであり、R4はHであり、R5およびR6は組み合わされて結合を形成する。
【0084】
いくつかの実施形態では、結晶化抑制剤および式1
【0085】
【化5】
の化合物を含む経口投与のための医薬組成物を提供する。
【0086】
特定の実施形態では、結晶化抑制剤および式1
【0087】
【化6】
の化合物またはその薬学上許容可能な塩を含む経口投与のための医薬組成物であって、
R1は−OR8、−C(=O)CH3、またはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、または2であり、
R4はHであり、
R5およびR6は各々Hであるか、またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9は各々独立してHであるか、またはR8およびR9は組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してHであり、
R11は、各出現について独立してH、−N(R8)(R9)、またはハロゲン化物である、医薬組成物を提供する。
【0088】
ベンゾキノンアンサマイシン化合物の例としては、下記の構造
【0089】
【化7】
【0090】
【化8】
を有するものが挙げられる。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供する組成物は、非晶質17−AGを含有し、結晶化抑制剤を使用しない場合でも、結晶質17−AGに対するバイオアベイラビリティを改善するという驚くべき知見が得られたため、そのような組成物は経口投与等の投与に有用である。
【0092】
上述の実施形態のいくつかでは、上記化合物は実質的に非晶質形態で存在する。
【0093】
同様に、いくつかの実施形態では、上記組成物は、当該組成物の総重量の少なくとも約10%、25%、50%、75%(w/w)の量の結晶化抑制剤を含有する。
【0094】
上述の実施形態のいくつかでは、上記結晶化抑制剤はPVPである。上述の実施形態のいくつかでは、上記17−AGは実質的に非晶質である。
【0095】
特定の実施形態では、上記医薬組成物はペースト、溶液、スラリー、軟膏、乳剤、または分散剤の形態であってもよい。特定の実施形態では、上記医薬組成物は分子分散剤であるか、または分子分散剤を含む。
【0096】
特定の実施形態では、上記結晶化抑制剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)(ポリビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにN−ビニルピロリドンのホモポリマーまたはコポリマーを含む)、クロスポピドン、ガム類、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム他を含む)、デキストラン、アカシア、ビニルラクタムのホモポリマーおよびコポリマーならびにそれらの混合物、シクロデキストリン、ゼラチン、ヒプロメロースフタレート、糖類、多価アルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン誘導体、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール誘導体等、SLS、Tween、Eudragit、ならびにそれらの組み合わせから選択するようにしてもよい。上記結晶化抑制剤は、水溶性または不水溶性のいずれであってもよい。
【0097】
HPMCは、セルロース骨格の鎖長が異なるため、例えば、2%(W/W)水溶液で測定した粘度も異なる。本明細書で提供する医薬組成物に用いるHPMCは、水溶液(2%(w/w)の濃度)中において、約100〜約100,000cP、約1000〜約15,000cP、例えば、約4000cPの粘度を有するようにしてもよい。特定の実施形態では、本明細書で提供する医薬組成物に用いるHPMCの分子量は、約10,000〜約1,500,000まで、約1,000,000まで、約500,000まで、または約150,000までとなるようにしてもよい。
【0098】
HPMCはまた、セルロース骨格上でのメトキシおよびヒドロキシプロポキシ基による利用可能なヒドロキシル基の相対的置換度も異なる。ヒドロキシプロポキシ置換が増加すると、結果的に生じるHPMCの親水性は高くなる。特定の実施形態では、上記HPMCは、約15%〜約35%、約19%〜約32%、または約22%〜約30%のメトキシ置換を有し、約3%〜約15%、約4%〜約12%、または約7%〜約12%のヒドロキシプロポキシ置換を有する。
【0099】
上記医薬組成物で使用可能なHPMCの実例としては、Dow Chemical Co.のMethocel(商標)およびShin−Etsu Chemical Co.のMetolose(商標)という商品名で販売されているものがある。中程度の粘度を有する適切なHPMCの例としては、Methocel(商標)E4M、およびMethocel(商標)K4Mが挙げられ、これらは共に2%(w/w)水溶液で約400cPの粘度を有する。より高い粘度を有するHPMCの例としては、Methocel(商標)E10M、Methocel(商標)K15M、およびMethocel(商標)K100Mが挙げられ、これらは、2%(w/w)水溶液でそれぞれ約10,000cP、15,000cP、および100,000cPの粘度を有する。HPMCの一例としては、HPMC−アセテートサクシネート、すなわち、HPMC−ASがある。
【0100】
特定の実施形態では、本明細書で提供する医薬組成物に用いるPVPは、約2,500〜約3,000,000ダルトン、約8,000〜約1,000,000ダルトン、約10,000〜約400,000ダルトン、約10,000〜約300,000ダルトン、約10,000〜約200,000ダルトン、約10,000〜約100,000ダルトン、約10,000〜約80,000ダルトン、約10,000〜約70,000ダルトン、約10,000〜約60,000ダルトン、約10,000〜約50,000ダルトン、または約20,000〜約50,000ダルトンの分子量を有する。特定の事例では、本明細書で提供する医薬組成物に用いるPVPは、20℃の10%水溶液で、約1.3〜約700、約1.5〜約300、または約3.5〜約8.5mPasの動的粘度を有する。
【0101】
PEGを用いる場合、それらは、約5,000〜20,000ダルトン、約5,000〜15,000ダルトン、または約5,000〜10,000ダルトンの平均分子(average molecular)を有するようにすることができる。
【0102】
本明細書では、17−AGおよび少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤を含む経口送達のための医薬組成物も提供し、当該医薬組成物は結晶質17−AGを実質的に含まない。特定の事例では、そのような医薬組成物中の17−AGは、約15%(w/w)未満、約10%(w/w)未満、約5%(w/w)未満、約3%(w/w)未満、または約1%(w/w)未満の結晶質17−AGを含む。そのような医薬組成物は、固体の投薬形態(例えば、錠剤またはカプセル)、ペースト、乳剤、スラリー、または軟膏として製剤化してもよい。
【0103】
本明細書では、17−AAGおよび少なくとも1つの薬学上許容可能な賦形剤を含む経口送達のための医薬組成物も提供し、当該医薬組成物は結晶質17−AAGを実質的に含まない。特定の事例では、そのような医薬組成物中の17−AAGは、約15%(w/w)未満、約10%(w/w)未満、約5%(w/w)未満、約3%(w/w)未満、または約1%(w/w)未満の結晶質17−AAGを含む。そのような医薬組成物は、固体の投薬形態(例えば、錠剤またはカプセル)、ペースト、乳剤、スラリー、または軟膏として製剤化してもよい。
【0104】
上述のように、本発明のベンゾキノンアンサマイシンおよび医薬組成物は、医薬組成物または投薬形態を形成する従来の医薬配合技術に従って薬学上許容可能な担体および賦形剤をさらに含むようにしてもよい。適切な薬学上許容可能な担体および賦形剤は、本明細書において参考として援用するRemingtonのThe Science and Practice of Pharmacy,(Gennaro,A.R.,ed.,19th edition,1995,Mack Pub.Co.)に記載のものを含むがこれらに限定されない。「薬学上許容可能な」という語句は、哺乳類(例えば、ヒト)等の動物に投与した際に、生理的に耐えられ、急性胃蠕動、眩暈等のアレルギー反応または同様の有害反応を通常は生じない添加剤または組成物を指す。経口液体医薬組成物に関しては、医薬担体および賦形剤として、水、グリコール、油類、アルコール類、着香料、防腐剤、着色剤等が挙げられるがこれらに限定されない。経口固体医薬組成物は、デンプン類、糖類、微結晶セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、および崩壊剤を含み得るがこれらに限定されない。上記医薬組成物および投薬形態はまた、ベンゾキノンアンサイマイシン化合物(benzoquinone ansaymyscin compound)または上述したような固体形態を含んでもよい。
【0105】
本明細書に記載の固体形態は、経口投与に適した医薬組成物の作製に有用であり得る。そのような医薬組成物は、本明細書に記載のベンゾキノンアンサマイシン化合物のいずれかを、例えば、非晶質で結晶化抑制剤を含まない形態、または非晶質で結晶化抑制剤を組み合わせた形態で含有してもよい。そのようなベンゾキノンアンサマイシンの例は、Schnurら、J.Med.Chem.1995,38:3806−12に記載されている。
【0106】
(4)製薬学的用途および治療法
本明細書では、上述した化合物または医薬組成物のいずれかを、それを必要とする患者に対して治療有効量だけ経口投与する工程を含む癌治療法、Hsp90抑制法、および/または過剰増殖性障害治療法も提供する。例えば、17−AAGは、現在、臨床試験において多発性骨髄腫の治療薬として研究されている。17−AGは、17−AAGの代謝作用によりヒトの体内で製造され(Egorinら、1998)、活性抗癌剤として考えられている。癌、腫瘍性疾患状態または過剰増殖性障害は、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸癌、結腸直腸癌、脾臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、骨髄異形性症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、軟部組織肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫(endotheliosarcoma)、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫)、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌(stadenocarcinoma)、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、膀胱癌、上皮性腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽腫、子宮内膜癌、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝細胞癌、甲状腺癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、小細胞癌、本態性血小板血症、原因不明骨髄様化生、好酸球増加症候群、全身性肥満細胞症、家族性過好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、甲状腺癌、神経内分泌癌、およびカルチノイドからなる群から選択される。
【0107】
特定の実施形態では、上記癌は、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、前立腺癌、乳癌、黒色腫、慢性骨髄性白血病、および非小細胞肺癌からなる群から選択される。
【0108】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、17−AG等のベンゾキノン化合物を用いて病気を治療する。特定の実施形態では、17−AGは実質的に非晶質である。
【0109】
(5)投薬
本発明の医薬組成物中のベンゾキノンアンサマイシン(例えば、ゲルダナマイシン類似体)の実際の投与量レベルは、ゲラナマイシン類似体が患者に有害にならないように特定の患者、組成物、および投与方法にとって望ましい治療反応を達成する上で効果的な量になるように変更してもよい。
【0110】
選択した投与量レベルは、使用する特定のゲルダナマイシン類似体またはその塩の活性、使用する特定の化合物の投与経路、投与期間、排泄率または代謝率、吸収率および吸収量、治療期間、上記特定の化合物と組み合わせて用いる他の薬物、化合物および/または材料、治療する患者の年齢、性別、体重、病状、健康状態およびそれまでの病歴、ならびに医療分野において周知の因子を含む各種の因子に依存する。
【0111】
当該分野における通常の技術を有する医師または獣医は、必要とする医薬組成物の有効量を容易に判断および処方することができる。例えば、医師または獣医は、本明細書で提供し、医薬組成物に用いる化合物の投薬を所望の治療効果を得るために必要なレベルより低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加することができる。
【0112】
一般に、適量のゲルダナマイシン類似体とは、治療効果を生じる安全かつ有効な最低量の化合物である。そのような有効量は、一般に、上述した因子に依存する。ゲルダナマイシン類似体を他の化学療法または放射線と組み合わせて投与する場合、各薬剤の投与量は、多くの場合、単剤療法での対応する投与量よりも少ない。
【0113】
提供する組成物は、単位投与剤形に製剤化してもよい。そのような剤形は、当業者には周知のものであり、カプセル、錠剤等を含む。特定の実施形態では、本発明は、進歩的なゲルダナマイシン類似体を充填したカプセルを含む製剤を提供する。他の実施形態では、本発明は、進歩的なゲルダナマイシン類似体を含む経口投与のためのカプセルを提供する。いくつかの実施形態では、単位投薬形態(例えば、カプセルまたは錠剤)は、5〜1,000mg、例えば、25、50、125、250、または500mgのゲルダナマイシン類似体を含有する。いくつかの実施形態では、単位投薬形態は、5mg/kgより多くのゲルダナマイシン類似体を含有する。
【0114】
いくつかの実施形態では、ゲルダナマイシン類似体の経口量は、1mg/kg〜100mg/kg以下、5mg/kg〜50mg/kg以下、5mg/kg〜25mg/kg以下、10mg/kg〜20mg/kg以下であり、少なくとも100ng・hr/mlの曲線下領域ができることを特徴とする。いくつかの実施形態では、上記量は15mg/kgである。いくつかの実施形態では、曲線下領域は、少なくとも500、1000、5000、10,000、または15,000ng・hr/mlとなる。
【0115】
ゲルダナマイシン類似体(例えば、17−AGまたは17−AAG)の1日総投与量は、典型的には、1日当たり500〜1,500mgの範囲である。特定の実施形態では、70kgの成人に対するゲルダナマイシン類似体の有効投与量は、1日当たり約100mg〜約1,500mgの化合物(例えば、17−AGまたは17−AAG)としてもよい。上記の用量範囲は、成人に対する活性化合物の投与のための指針であることは言うまでもない。例えば、幼児または新生児に対する投与量は、医者または当業者が判断することができ、成人に対する投与量以下とすることができる。
【0116】
ゲルダナマイシン類似体は、1日1回、1日おき、週3回、週2回、週1回、または隔週で投与することができる。投薬スケジュールは、「休薬期間」を含むようにすることができ、すなわち、二週続けて、一週間休むか、または休薬期間なしで継続して薬物を投与するようにできる。
【0117】
(6)併用療法
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、癌の治療において選択的な活性を生じるために他の治療薬と組み合わせて用いることができる。特定の実施形態では、本明細書に記載のゲルダナマイシン類似体を用いて適切に折り畳んだHsp90クライアントタンパク質の細胞レベルを低減した後、第2の薬剤により効果的に抑制する。例えば、ベンゾキノンアンサマイシン類似体とHsp90の結合により、クライアントタンパク質のプロテアソームに対するターゲティングを行った後、分解する。プロテアソームを標的として抑制する薬剤(例えば、Velcade(登録商標))を用いることにより、細胞アポトーシスおよび細胞死を増加させる。
【0118】
本明細書に記載の製剤と組み合わせて使用可能な治療薬の一例としては、アルキル化剤、血管新生阻害剤、代謝拮抗剤、エピドフィルトキシン(epidophyllotoxin)、プロカルバジン、ミトキサントロン、白金配位錯体、抗有糸分裂薬、生物反応修飾物質および増殖抑制剤、ホルモン/抗ホルモン治療薬、造血増殖因子、アントラサイクリン系薬剤、ヴィンカ薬物、マイトマイシン、ブレオマイシン、細胞毒性ヌクレオシド、エポシロン、ディスコデルモライド、プテリジン系薬剤、ジインエン(diynenes)、およびポドフィロトキシンが挙げられる。これらのクラスの特に有用なメンバーとしては、例えば、カミノマイシン(caminomycin)、ダウノルビシン、アミノプテリン、メトトレキサート、メトプテリン、ジクロロメトトレキサート、マイトマイシンC、ポルフィロマイシン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、ゲムシタビン(gemcitabine)、シトシンアラビノシド、ポドフィロトキシンまたはポドフィロトキシン誘導体(エトポシド、エトポシドホスフェート、またはテニポシド等)、メルファラン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ロイロシジン、ドキソルビシン、ビンデシン、ロイロシン、パクリタキセル、タクソール、タキソテール、ドセタキセル、シスプラチン、メチル酸イマチニブ、またはゲムシテビン(gemcitebine)が挙げられる。
【0119】
他の有用な薬剤としては、エストラムスチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、ゲムシチビン(gemcitibine)、イホスファミド、メルファラン、ヘキサメチルメラミン、チオテパ、シタラビン、イダトレキサート(idatrexate)、トリメトレキサート、ダカルバジン、L−アスパラギナーゼ、カンプトセシン、CPT−11、トポテカン、ara−C、ビカルタミド、フルタミド、ロイプロリド、ピリドベンゾインドール誘導体、インターフェロンおよびインターロイキンが挙げられる。特に有用な薬剤としては、タキソテール、Gleevec(イマチニブ)、Tarceva(エルロチニブ)、Sutent(スニチニブ)、Tykerb(ラパチニブ)、およびXeloda(カペシタビン)が挙げられる。
【0120】
本明細書に記載の製剤はまた、放射線療法に関連して用いることもできる。化学療法/放射線療法は、当該分野で周知の治療プロトコルに従って行うことができる。化学療法薬の投与および/または放射線療法を、治療する病気および当該病気に対する化学療法薬および/または放射線療法の公知の影響に応じて変更可能なことは当業者には明白である。治療プロトコル(例えば、投与量および投与期間)は、治療薬(すなわち、抗腫瘍薬または放射線)投与の患者に対する影響の観察、および投与した治療薬に対する病気の反応の観察に応じて変更可能である。
【0121】
また、一般に、本明細書に記載のゲルダナマイシン類似体および第2の化学療法薬は同じ医薬組成物中において投与される必要はなく、物理的および化学的特徴が異なるため、異なる経路による投与が必要とされることがある。例えば、ゲルダナマイシン化合物は経口投与が可能であるが、第2の化学療法薬は静脈内投与される。優れた臨床医であれば、同じ医薬組成物での投与方法および投与の妥当性を知識に基づいて十分に判断することができる。初回投与は、当該分野で公知の確立したプロトコルに従って、影響の観察に基づいて行なうことができ、用量、投与方法、および投与期間は、優れた臨床医であれば変更可能である。
【0122】
特定の化学療法薬または放射線の選択は、担当医の診断および患者の疾患に関する担当医の判断、および適切な治療プロトコルによる。
【0123】
ゲルダナマイシン類似体および第2の化学療法薬および/または放射線は、増殖性疾患の性質、患者の病状、およびゲルダナマイシン類似体に関して実際に投与選択した(すなわち、単一治療プロトコル内)化学療法薬および/または放射線に応じて、並行して(例えば、同時、実質的に同時、または同じ治療プロトコル内)または連続して投与してもよい。
【0124】
ゲルダナマイシン類似体および化学療法薬の投与および/または放射線療法を同時または実質的に同時に実施しない場合、最適な実施順序は、異なる腫瘍に対しては異なる場合がある。それゆえ、特定の状況では、ゲルダナマイシン類似体を最初に投与した後、化学療法薬の投与および/または放射線療法を実施してもよく、他の状況では、化学療法薬の投与および/または放射線療法を最初に実施した後、ゲルダナマイシン類似体を投与してもよい。単一の治療プロトコルにおいて繰り返し交互に実施するようにしてもよい。治療プロトコルにおける各治療薬の投与順および投与を繰り返す回数の判定は、優れた医師であれば、治療する病気および患者の病状の評価した後に、知識に基づいて十分に行うことができる。例えば、化学療法薬の投薬および/または放射線療法は、特に、細胞毒性薬であれば最初に実施してもよく、その後にゲルダナマイシン類似体を投与して治療を継続し、有効であると判断した場合には、その後に治療プロトコルが完了するまで化学療法薬の投与および/または放射線療法等を実施してもよい。
【0125】
このように、実務に携わる医師は、経験および知識に従って、治療の進行とともに、個々の患者の要望に応じて、治療の成分(治療薬、すなわち、ゲルダナマイシン類似体、化学療法薬の投与、または放射線療法)の実施のための各プロトコルを変更することができる。
【0126】
本発明の医薬組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者に有害とならないように、特定の患者、組成物、および投与方法に望ましい治療反応を効果的に生じるような活性成分の量となるように変更してもよい。
【0127】
選択した投与量レベルは、使用する特定のゲルダナマイシン類似体またはその塩の活性、使用する特定の化合物の投与経路、投与期間、排泄率または代謝作用、吸収率および吸収量、治療期間、使用する特定の化合物と組み合わせて用いる他の薬物、化合物、および/または材料、治療する患者の年齢、性別、体重、病状、健康状態、およびそれまでの病歴、ならびに医療分野で周知の同様の因子を含む各種の因子に依存する。
【0128】
当該分野における通常の技術を有する医師または獣医は、必要とする医薬組成物の有効量を容易に判断および処方することができる。例えば、医師または獣医は、本明細書で提供し、医薬組成物に用いる化合物の投薬を所望の治療効果を得るために必要なレベルより低いレベルで開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加することができる。
【0129】
一般に、適量のゲルダナマイシン類似体とは、治療効果を生じる安全かつ有効な最低量の化合物である。上記量は、1mg/kg〜25mg/kgとすることができる。そのような有効量は、一般に、上述した因子に依存する。ゲルダナマイシン類似体を他の化学療法薬または放射線療法と組み合わせて投与する場合、各薬剤の投与量は、多くの場合、単剤療法での対応する投与量よりも少ない。
【実施例】
【0130】
以下において一般に説明する本開示の内容は、本明細書における開示内容を限定することなく本発明の特定の局面および実施形態の例示のみを目的とした下記の実施例を参照することで容易に理解できる。
【0131】
一般に、ゲルダナマイシン類似体はHsp90抑制剤として知られている(Schnurら、J.Med.Chem.(1995),Vol.38,3806〜3812ページ)。実施例1〜実施例11では、各種のゲルダナマイシン類似体およびそれらの固体形態の合成化学調製を説明する。
【0132】
(実施例1)
17−AGの形態Iの調製
【0133】
【化9】
22LのRBフラスコは、底部排水弁、機械撹拌、1Lの付加ろ過器、内部温度プローブ、および不活性ガスバイパスを備えていた。ゲルダナマイシン(500g、1当量)および無水THF(5.0L)を22LのRBフラスコに充填した。撹拌を開始し、アンモニアのMeOH溶液(7M)を充填する(1.0L、8.0当量)。その反応液を大気温度で7時間撹拌した。LCMSは、出発原料が7時間で完全に消費されたことを示した。反応中に、黄色から深紫に変色した。ヘプタン(14L)を反応混合液にゆっくりと加え、溶液から所望産物の結晶化を誘発した。赤レンガ色のスラリーを一晩撹拌した。その産物を吸引ろ過により単離し、2:1(v/v)のヘプタン/THF(0.5L)ですすいだ。オーブン乾燥により、粗17−AGを粉末状のくすんだ赤色固体(470g)として得た。この原料をアセトン/エタノール(18〜19L)の4:1混合液中に溶解し、加熱浄化した。この溶液を濃縮し、さらなるエタノール(2L)で溶媒交換した。この紫色固体のエタノールスラリーをエタノール(4L)および水(5L)で希釈した。このスラリーを35℃で一晩熟成した後、3時間かけて70℃まで加熱し、この間に結晶形態が変化し、濃紫から赤に変色した。このスラリーを室温まで冷却し、それらの固体をろ過により単離する。カールフィッシャー分析は0.86%であり、全ての残留溶媒は低濃度であった(EtOH 2266ppm;アセトン 89ppm;ヘプタン 9ppm;THFおよびMeOH 未検出)。この多形体を形態Iと呼ぶ。
【0134】
(実施例2)
17−AGの形態IIの調製
前述の手順で得た形態Iの17−AG(10g)を30℃のアセトン/エタノール中に溶解し、浄化した。フラスコおよびインラインフィルタをすすぎ、その溶液を回転蒸発器で濃厚スラリーに濃縮した。次いで、100mLの水を加え、その有機溶媒の残りを真空蒸留で除去した。蒸留液収集が終わると、浴温を40℃から60℃に上げ、少量の水を除去した。次いで、水をさらに加えた(100mL)。80℃の浴温およびわずかな減圧により、約5分間かけて水を蒸留した。そのスラリーは紫色のままであったため、減圧を止めて、浴温を100℃まで上昇させた。そのスラリーを約1時間混合した。次いで、そのスラリーを一晩かけて大気温度まで冷却し、紫色固体を水から単離した。カールフィッシャー分析は0.14%で、全ての残留溶媒は低濃度であった(MeOH:106ppm、EtOH:173ppm、アセトン 230ppm、THFおよびヘプタンは未検出)。この材料は形態IIの多形体である。
【0135】
(実施例3)
17−AGの形態IIIの調製
【0136】
【化10】
400mLの蒸留水に(実施例14で調製するような)17−アミノゲルダナマイシンの20%固体分散PVP K−30溶液を1g加えた。この懸濁液を60℃まで加熱し、固体を完全に溶解させた。60℃で5〜10分間加熱した後、紫色結晶が溶液から析出した。この混合液を23℃まで冷却し、紫色結晶材料をろ過により単離した。このようにして採取した結晶を2日間かけて真空オーブン内で80℃で乾燥させ、155mgの17−AG形態IIIを紫色の粉末として得た。収率75%。MS(ESI(+))m/z563.4(M+H2O)+。
【0137】
(実施例4)
17−AG酢酸エチル溶媒和物の調製
17−AG(1.2g)(多形体形態I)にEtOAc(150mL)を加えた。この混合液を加熱し、17−AGが完全に溶解するまで緩やかに還流した。この溶液を偏光顕微鏡検査法を用いて分析し、溶解の完了を確認した。回転蒸発器を用いて容積を約5mLまで減らし、その溶液を室温までゆっくり冷却した。12時間後、その混合液をろ過、ヘキサンで洗浄し、乾燥させて1HNMRに基づいてEtOAc溶媒和物を得た。
【0138】
(実施例5)
11−オキソ−17−アミノゲルダナマイシンの調製
【0139】
【化11】
23℃の17−アミノゲルダナマイシン(5.0g、9.16mmol、1.0当量)のCHCl3(750mL)溶液にDess−Martinペルヨージナン(23.32g、55.0mmol、6.0当量)を一部加えた。30分間撹拌した後、その反応混合液をCHCl3で希釈し、含水チオ硫酸ナトリウムおよび飽和含水重炭酸ナトリウムで洗浄した。この有機層を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。この原料を再結晶化(DCM/ヘキサン)によりさらに精製して4.12gの純粋な所望産物を得た。収率83%。MS(ESI(+))m/z566.3(M+Na)+。
【0140】
(実施例6)
11−アセチル−17−アミノゲルダナマイシンの調製
【0141】
【化12】
23℃の17−アミノゲルダナマイシン(6.0g、11.0mmol、1.0当量)の無水DCM(156mL)溶液に窒素雰囲気下で無水酢酸(2.075mL、21.99mmol、2.0当量)、DMAP(1.343g、11.0mmol、1.0当量)、およびトリエチルアミン(4.60mL、33.0mmol、3.0当量)を加えた。この反応混合液を一晩撹拌した。その反応混合液をDCM(200mL)で希釈し、水(100mL)および塩水(2×100mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、ろ過および真空濃縮した。この材料をグラジエントフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、30%〜60%のEtOAc/ヘキサン)により精製して1.9gの所望産物を微量のトリス−アセチル化産物とともに得た。収率30.9%。MS(ESI(+))m/z610.4(M+Na)+。
【0142】
(実施例7)
17−シクロプロピルメチルアミノゲルダナマイシンの調製
【0143】
【化13】
23℃のゲルダナマイシン(3.0g、5.35mmol、1.0当量)DCM(54mL)溶液にアルゴン雰囲気下でシクロプロパンメチルアミン(9.40mL、107mmol、20当量)を加えた。この反応混合液を2時間撹拌した。次いで、その反応混合液を水(100mL)で急冷し、1 N HClでpH3に酸性化し、さらに30分間撹拌した。この有機層を分離し、その水層をDCMで抽出した。この結合有機抽出物を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。この粗産物をグラジエントフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、50〜60%のEtOAc/ヘキサン)を用いて精製し、2.7gの所望産物を得た。収率84.0%。MS(ESI(+))m/z622.4(M+Na)+。
【0144】
(実施例8)
17−ベンジルアミノゲルダナマイシンの調製
【0145】
【化14】
23℃のゲルダナマイシン(3.25g、5.35mmol、1.0当量)DCM(110mL)溶液にアルゴン雰囲気下でベンジルアミン(9.40mL、53.5mmol、10当量)を一部加えた。23℃で12時間撹拌した後、その反応混合液を水(100mL)で希釈し、1 N HClでpH3に酸性化し、さらに30分間撹拌した。この有機層を分離し、その水層をDCMで抽出した。この結合有機抽出物を水で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過し、真空濃縮した。この粗産物をグラジエントフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、50〜60%のEtOAc/ヘキサン)を用いて精製し、3.51gの産物を得た。収率95.0%。MS(ESI(+))m/z658.4(M+Na)+。
【0146】
(実施例9)
17−アゼチジニルゲルダナマイシンの調製
【0147】
【化15】
23℃の塩酸アゼチジン(751mg、8.03mmol、2.0当量)の1:1のDCM:Mエタノール(100mL)溶液にヒューニッヒ塩基(Hunig’s base)(2.10mL、12.04mmol、3.0当量)を加えた後、ゲルダナマイシン(2.25g、4.01mmol、1.0当量)を加える。23℃で2時間撹拌した後、その反応混合液を真空濃縮し、続いて、DCM(100mL)中に再度溶解した。水(100mL)を加え、その水層をpH3に酸性化した。次いで、この混合液を30分間撹拌した。この有機層を分離し、その水層をDCM(3×100mL)で抽出した。この結合有機層を水(300mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。この材料をクロロホルム/ヘキサンからの再結晶化によりさらに精製し、1.92gの純粋な所望産物を得た。収率82%。MS(ESI(+))m/z586.1(M+H)+。
【0148】
(実施例10)
17−(フルオロエチル)アミノゲルダナマイシンの調製
【0149】
【化16】
DCM(240mL)およびMeOH(120mL)に溶解した23℃の2−フルオロエチルアミン塩酸塩(7.99g、80.25mmol、7.5当量)に窒素雰囲気下でヒューニッヒ塩基(14.02mL、80.25mmol、7.5当量)を加えた。2−フルオロエチルアミン塩酸塩を溶解した後、ゲルダナマイシン(6.0g、10.70mmol、1.0当量))を加えた。24時間23℃で撹拌した後、その反応混合液を真空濃縮した後、DCM(900mL)中に再度溶解した。水(300mL)を加えて、その水層をpH3に酸性化した。その混合液を30分間撹拌した。この有機層を分離して、その水層をDCM(3×100mL)で抽出した。この結合有機層を水(900mL)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。この粗産物をグラジエントフラッシュクロマトグラフィ(SiO2、30〜60%のEtOAc/DCM)を用いて精製し、3.0gの所望産物を得た。収率47.4%。MS(ESI(+))m/z614.4(M+Na)+。
【0150】
(実施例11)
17−アセチルゲルダナマイシンの調製
【0151】
【化17】
23℃の17−アミノゲルダナマイシン(5.5g、10.08mmol、1.0当量)のEtOAc(500mL)溶液にNa2S2O4(0.1M、500mL)を加えた。二相混合液を23℃で撹拌し、反応混合液を深紫から淡黄色にした(約10分)。この有機層を分離し、その水層をEtOAc(3×200mL)で抽出した。この結合有機抽出物をNa2SO4上で乾燥させ、ろ過、真空濃縮した。次いで、その残留物を不活性雰囲気(N2)化でCHCl3(72mL)中に溶解し、氷浴を用いて0℃まで冷却した。無水酢酸(2.85mL、30.2mmol、3.0当量)を0℃で滴下した。3時間撹拌した後、この反応混合液をEtOAcで希釈し、真空濃縮した。この粗産物を23℃のメタノール中に溶解し、4日間開放雰囲気下で撹拌し、ハイドロキノンを酸化させてキノンにした。この粗産物を無勾配フラッシュクロマトグラフィ(80:15:5のDCM:EtOAc:MeOH)により精製し、3.5gの所望産物を黄色固体として得た。収率59.1%。MS(ESI(+))m/z610.4(M+Na)+。
【0152】
(実施例12)
非晶質分散製剤(17−AG+PVP)の投与時の経口バイオアベイラビリティの影響
17−AG+PVP(ポリビニルピロリドン(Povidoneとも呼ぶ)の非晶質分散剤の形態の例示的な化合物(17−AG)の経口バイオアベイラビリティに対する影響をビーグル犬に投薬を行い、カプセルの単回経口投与を行ってから各時点における血漿中の17−AGレベルを測定して調べた。
【0153】
12%の17−AG/PVP(w/w)分散剤を回転蒸発を利用して作製し、上述のように純度、残留溶媒レベル、および非晶質含有量の特徴づけを行い、HPMCカプセルに入れ、15mg/kgのレベルでイヌに投与した。投与後15分、30分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、および24時間後に血液をヘパリンナトリウムを入れたチューブ内にプレドースにより採取した。採取した血液サンプルを直ぐに湿氷上に載せ、採取後30分以内に冷凍遠心により血漿を単離した。単離した血漿をラベル付のネジ蓋冷凍バイアルまたはエッペンドルフチューブ内に保管し、血漿の17−AGレベルを分析するまで冷凍貯蔵(−70℃)した。試験設計は下記のとおりである。各投薬の間に1週間の休薬期間を設け、2匹のオスと2匹のメスからなるイヌの1群に対して投薬を行った。
【0154】
【表1】
投薬後の17−AG血漿レベルの分析後、非晶質17−AG/PVP分散剤の投薬による曝露に大きな影響があった。非晶質17−AG/PVP分散剤を投薬した場合、結晶質17−AGを投薬した場合と比べて、CmaxおよびAUCレベルの両方に100倍を超える増加があった。結晶材料の投薬後の17−AGの血漿レベルは、定量限界を下回った。コーティングカプセルに入れた17−AG/PVP分散剤の投薬でも同様の曝露の増加があったが、非コーティングカプセルでの結果ほど著しくはなかった。曝露データではテストを行った変数については性別による誤差はなかった。曝露に関して観察されたばらつきは、動物特異的な誤差または生存時観察(すなわち、投薬上の問題、嘔吐)による可能性が最も高い。
【0155】
経口バイオアベイラビリティの結果(平均値)は、図10a(オス)および図11a(メス)に記載されており、これらは、結晶質17−AGは経口バイオアベイラビリティが非常に低いが、非晶質化合物はバイオアベイラビリティが高いことを示している。PKデータの集計表をそれぞれ図10bおよび図11bに示す。
【0156】
以下は、非晶質ゲルダナマイシン類似体を用いた固体分散製剤の例示的な調製方法である。一般に、各剤形の調製には結晶化抑制剤を用いても、用いなくてもよい。結晶化抑制剤が存在する場合には、用いる結晶化抑制剤の種類および量の両方を異なるようにしてもよい。例示的な方法としては、凍結粉砕(実施例13(a))、噴霧乾燥(実施例13(b))、凍結乾燥(実施例13(c))、および回転蒸発(実施例14〜16)が挙げられるがこれらに限定されない。1つの技術(すなわち、t−BuOHを利用した凍結乾燥)より得た例示的なDSCパターンは図12に記載されている。2つの異なる固体分散剤調製法を用いた例示的な曝露データは図14a(回転蒸発)および図14b(噴霧乾燥)に記載されており、集計表は図14cに記載されている。
【0157】
(実施例13)
非晶質17−AGの調製
【0158】
【化18−1】
17−AG(1g)(形態I多形体)にCH3CN(50mL)を加えた後、さらにt−BuOH(100mL)を加えた。この混合液を17−AGが完全に溶解するまで60℃で加熱した後、0.45umフィルタでろ過して浄化した。この溶液を偏光顕微鏡検査法を用いて分析し、完全に溶解することを確認した。ろ液を凍結するまで液体窒素槽に浸した後、凍結乾燥することで非晶質17−AGを薄紫色粉末が生じた。この非晶質性を偏光顕微鏡検査法により確認した。
【0159】
(実施例13(a))
凍結粉砕プロトコル:非晶質固体分散製剤(17−AGおよびPVP)の調製
17−AG(〜1g)を液体窒素中で〜200℃まで冷却し、30分間物理粉砕および微粉化を行い非晶質材料に粉砕した。粉砕サンプルの非晶質状態をXPRDおよびP.L.M.によりチェックした。
【0160】
(実施例13(b))
噴霧乾燥プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AG(20%充填量)+ポリビニルピロリドン(PVP)K−30 Povidone(登録商標)]の調製
アセトン(75g、94.95mL)と190プルーフUSP/NFグレードのエタノール(25g、31.65mL)の3:1混合液にポリビニルピロリドン(PVP)K−30 Povidone(登録商標)(20g)を一部加えた。この混合液をポリマーが完全に溶解するまで(約30分)23℃で撹拌した。17−AG(5g、36.7mmol)を10分間の間に数部加えて不透明な紫色混合物を得た。2時間室温で撹拌した後、アリコートをPLMを用いて検査し、完全に溶解させ、次いで、その紫色溶液を以下の条件(入口温度90℃、出口温度64℃、N2流量600l/h、吸引70%)でBuchi小型噴霧乾燥機で噴霧乾燥させ、薄紫色非晶質粉末を得た。この材料は偏光顕微鏡検査法による分析で非晶質であった。MS(ESI(+))m/z563.4(M+H2O)+。
【0161】
(実施例13(c))
凍結乾燥プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AGのPVP溶液]の調製
ポリビニルピロリドン(PVP)K−30およびK−90 Povidone(登録商標)に溶解した異なる充填量の17−AG(12%、15%、20%、30%、40%、50%w/w)の一連の非晶質分散剤を以下のプロトコルに従って凍結乾燥により調製した。代表的なDSCパターンは図12に記載されている。
【0162】
17−AG(100mg、0.18mmol)とt−BuOH(500mL)の混合液を熱線銃を用いて50℃まで加熱し、激しく撹拌した。アリコートを周期的に採取し、偏光顕微鏡検査法により調べて結晶質17−AGの完全な溶解を判定した。50℃で2時間加熱した後、偏光顕微鏡検査法で複屈折が観察されなくなり溶解が完了した。17−AG溶液(62.5mL、12.5mg)を下記のスケジュールに従って水(20.8mL)に溶解した適量のPVP(K−30またはK−90)にゆっくりと加えた。全ての混合物がt−BuOH:水の割合(3:1)を維持した。
【0163】
12%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(91.5mg)の水(20.8mL)溶液
15%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(71mg)の水(20.8mL)溶液
20%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(50mg)の水(20.8mL)溶液
30%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(29mg)の水(20.8mL)溶液
40%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(18.7mg)の水(20.8mL)溶液
50%充填量 − 17−AG(12.5mg)のtBuOH(62.5mL)溶液
PVP(12.5mg)の水(20.8mL)溶液
次いで、この温溶液を凍結乾燥カップ(110mLの容量)に移し、23℃までゆっくり冷却した。23℃になった後、この溶液を偏光顕微鏡検査法を用いて再度分析し、完全に溶解したことを確認した。複屈折は検出されなかった。全てのカップを予冷した(−40℃)トレー凍結乾燥器に移し、8時間−40℃に保持した後、2日間かけて23℃までゆっくりと上昇させ、定量的収率で薄紫色非晶質固体を生じた。全てのサンプルは、偏光顕微鏡検査法によれば非晶質であり、HPLCで純度>95%であった。
【0164】
以下の実施例14〜16では、各種のPVPグレードを利用して固体分散製剤を調製する回転蒸発技術をさらに示す。
【0165】
(実施例14)
回転蒸発プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AG(12%、20%および30%充填量)およびPVP K−30]の調製
17−AG(12%充填量、1.52g)をエタノール(200プルーフ、100mL)に加え、その混合液を45℃で45分間撹拌した。別のフラスコにおいて、PVP K−30(11.13g)をエタノール(200プルーフ、150mL)に加えた。この結果得られた溶液を45℃で15分間撹拌した。この17−AG溶液をPVP溶液に加え、この結果得られた溶液を45℃でさらに4時間撹拌した(顕微鏡を用いて結晶が完全に消失するまで監視した)。次いで、この均質紫色溶液を濃縮し、高真空下で12時間送液した。この結果得られたガラス材料を(残留エタノール含有量の判定のために)1H−NMRで分析し、(残留結晶材料の量の判定のために)クロスポーラー顕微鏡法(Cross Polar Microscopy)により分析した。この材料を乳鉢と乳棒を用いて破砕して粉末にし、高真空下で40℃で10時間かけて乾燥させた後、1H−NMRによりエタノール含有量を分析した。この材料を再度破砕し、高真空下でさらに16時間かけてさらに乾燥させ、3%w/wのエタノールを含有する微細なガラス質赤色−紫色材料(11.1g)を生じた。材料を1H−NMR、CPM、HPLC、およびDSCで分析した。これに応じて17−AGの量を調節し、対応する20%充填量の17−AG(w/w)および30%充填量の17−AG(w/w)を得た。12%、20%、および30%充填量の代表的な溶解データは図39に記載されている。
【0166】
(実施例15)
回転蒸発プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AG(12%充填量)のPVP K−15溶液]の調製
17−AG(10g)を3Lの一口フラスコ内のEtOH(1L、99.9%)に加えた。この混合液を約100rpm、60℃、大気圧下において回転蒸発器で回転させた。アリコートを周期的に採取し、偏光顕微鏡検査法により調べて結晶質17−AGが完全に溶解したかを判定した。60℃で2時間回転させた後、偏光顕微鏡検査法で複屈折が観察されなかったため溶解を完了した。ポリビニルピロリドン(PVP)K−15 Povidone(登録商標)(73g)を一部加え、その混合液を回転蒸発器に戻し、約100rpm、60℃、浴温で回転させた。1時間後、その溶液を偏光顕微鏡検査法で再度分析し、完全な溶解を確認した。複屈折は検出されなかった。真空にして、30分間かけてEtOHを除去し、紫色発泡体を生じた。フラスコを高真空ポンプに移して、一晩乾燥させた。この脆性発泡体を側面から擦り取り、その材料をさらに36時間高真空下で送液した。この材料をさらにへらで破砕し、フラスコからの除去を容易にし、偏光顕微鏡検査法およびXPRDにより76g(92%収率)の非晶質分散剤を得た。代表的な溶解データは図38に記載されている。
【0167】
(実施例16)
回転蒸発プロトコル:非晶質固体分散製剤[17−AG(12%充填量)のPVP K−90溶液]の調製
回転蒸発、引き続いて高真空ポンプを用いて偏光顕微鏡検査法に基づいてPVP K−30を用いて48g(48%収率)の非晶質分散剤を得た以外は、上記実施例15と同様の手順を用いて非晶質固体分散製剤[17−AG(12%充填量)のPVP K−90溶液を調製した。代表的な溶解データは図38に記載されている。
【0168】
下記の実施例17では、下記表に概要が示されている上述した(実施例14、15、および16)製剤に関して安定性試験を行った。
【0169】
(実施例17)
各種の17−AG/PVP分散剤を各種の条件で貯蔵し、特定の時点における各々の化学的および物理的安定性を評価した。テストを行った分散剤は、12%17−AGのPVP K15溶液、12%17−AGのPVP K90溶液、12%17−AGのPVP K30溶液、20%17−AGのPVP K30溶液、および30%17−AGのPVP K30溶液であった。テストを行なった貯蔵条件は、RT周囲湿度、RT33%RH、RT75%RH、40℃周囲湿度、および40℃75%RHであった。17−AGの化学的安定性をRP−HPLCよる純度測定で評価し、非晶質分散剤の物理的安定性を偏光顕微鏡検査法(P.L.M.)による結晶材料の外見で評価した。全ての分散剤に関して、50mgの材料を開口ガラスバイアルに入れて各時点および各貯蔵条件の個別のアリコートを作製した。飽和塩溶液を用いて湿度調節し、適切な温度調節(33%RHの塩化マグネシウム、および75%RHの塩化ナトリウム)を行った安定性容器にバイアルを設置した。テストを行った分散剤および条件のT=0ヶ月時点およびT=1ヶ月時点の安定性データを下記の表に示す。
【0170】
【表2】
(実施例18)
固体分散剤[17−AAGのPEG6000溶液(5%w/w)]の調製
ゲルダナマイシン(20.0g、35.7mmol、1当量)のDCM(750mL)溶液にアリルアミン(53mL、714mmol、20当量)を室温、窒素雰囲気下で加えた。このスラリーを室温で6時間撹拌した。この結果得られた紫色溶液を水(300mL)で急冷し、2N HCl(300mL)でpH3に酸性化し、さらに30分間撹拌した。この水相をDCM(300mL)で抽出し、その結合有機層を水(300mL)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、ろ過、濃縮した。その紫色残留物をアセトン(300mL)中において60℃で溶解し、ヘプタン(1.5L)を加え、この結果得られた混合液を5℃に冷却し、ろ過して、その固体をヘプタン(200mL)で洗浄し、乾燥させて粗17−AAG(18.15g)を得た。この紫色固体をアセトン(306mL)中に溶解し、55〜60℃まで加熱し、n−ヘプタン(1.2L)をゆっくりと加え、スラリーを形成した。この混合液を30分間55℃に保ち、室温に冷却した。この結晶材料を採取し、真空下で48時間かけて乾燥させ、17−AAGを紫色針状結晶として得た。(16.15g、28mmol、77%収率)。254nm)mp210〜212℃でHPLCにより>99%の純度が観察された。
【0171】
17−AAG(18mg)にPEG6000(382mg)を加え、この固体混合物を熱で溶かした。この結果得られたろう様の分散剤をHPLCおよびクロスポーラー顕微鏡法で分析した。
【0172】
17−AAGを含有するさらなる固体非晶質分散剤を調製し、この非晶質性を偏光顕微鏡検査法で確認した(下記表に概要を示す)。
【0173】
【表3−1】
【0174】
【表3−2】
(実施例19)
17−AG非晶質固体分散製剤[17−AG(20%充填量)の各種高分子溶液]の調製
分散剤調製法:
17−AG(2g)を3Lの一口フラスコ内のEtOH(1L)に加えた。この混合液を回転蒸発器において60℃、周囲圧力、高速で回転させた。アリコートを採取し、1時間に結晶化の兆候について顕微鏡で調べた。ポリマー(8.2g)を加え、その混合液を回転蒸発により濃縮し、60℃でさらに一時間回転させた。アリコートを採取し、時間経過後にPLMを用いて結晶化の兆候について調べた。次いで、真空を引いて、EtOHを30分かけて除去し、発泡体状の材料を得た。この材料を真空で一晩かけて乾燥させた。次いで、この結果得られた脆性発泡体を側面から剥がし、その材料を高真空下でさらに36時間ポンピングした。次いで、これにより発生した固体分散剤を粉砕し、篩過(50番のふるい)して300ミクロンの粒径にした。
【0175】
(実施例20)
非晶質材料の特徴づけに用いた一般的技術
可視偏光顕微鏡検査法(PLM):チェックマーク
【0176】
【化18−2】
は、固体材料の検査時または水に溶解した場合に、結晶材料が不可視であり、交差偏光化で複屈折がないことを示す。
【0177】
DSC:チェックマーク
【0178】
【化18−3】
は、ガラス遷移温度(Tg)の特定、見かけ上の結晶吸熱がないことを示す。例示的な顕微鏡写真を図44および図45(PLMで可視化した非晶質分散剤)に示す。
【0179】
XPRD:チェックマークは、結晶形跡がないことを示す。
【0180】
インビトロ溶解:チェックマークは、少なくとも0.4mg/ml(12%17−AG K−30の50%)の17−AGの過飽和レベルを示す。
【0181】
HNMR:チェックマーク
【0182】
【化18−4】
は、予想される構造と一致するスペクトルおよび<5%残留溶媒を示すスペクトルを示す。
【0183】
LCUV:チェックマークは、>95%純度を示す。
【0184】
安定性:チェックマーク、チェックマーク
【0185】
【化18−5】
は、LCUV、DSC、顕微鏡法による室温でのRTを超えるTG−DSC>40℃、>1ヶ月の安定性を示す。
【0186】
【表4】
インビトロ溶解のためのサンプルの調製:一連のシンチレーションバイアルを用いて下記表に従って17−AG(20%充填量)高分子分散剤(50.0mg)を含有するサンプルを調製した。各バイアルに模擬腸液(5mL)を加え、それぞれを37℃で振とうした。5分、15分、30分、60分、90分、120分、4時間、8時間、および一晩経過した時点で、各懸濁液のアリコート(300uL)を取り出し、ポリプロピレンフィルタ(0.45ミクロン)によりろ過してMeOH(750uL)を得た。次いで、これらのサンプルをMeOH中で希釈し、UV法を用いて溶液濃度に関するテストを行った。各サンプルの結果は下記の表に集計している。
【0187】
【表5】
下記はインビトロ溶出試験で収集したデータであり、結晶化抑制剤を用いて固体分散製剤を調製する場合、平衡溶解度に対する17−AGの過飽和レベルとなる(インビトロでの溶解により測定した17−AGは過飽和レベルとなる)ことを示す。このような製剤は、各種の結晶化抑制剤または高分子(PVP以外)を用いて調製可能である。用いる例示的な結晶化抑制剤は、HPMCP、HPMCAS、Plasone S−630、およびEudragit L100である。
【0188】
【表6】
*17−AG平衡溶解度に応じた倍率の増加
図13は、上記の各種結晶化抑制剤を用いた17−AG分散剤のインビトロ溶解を示す。
【0189】
非晶質分散剤は、他のゲルダナマイシン類似体を用いて作ることもできる。結晶化抑制剤を加えることが17−AG以外の化合物に有効であることを同様に示すために、下記の実施例21は、結晶化抑制剤を実質的に非晶質である固体分散製剤に加える場合に、ゲルダナマイシン類似体の過飽和濃度が可能であり、類似体17−AGに見られるような生体内バイオアベイラビリティの改善が可能であり得ることを示すインビトロ溶出試験である。そのような製剤は、各種のゲルダナマイシン類似体を用いて調製可能である。利用する特定の類似体は、17−ベンジル−AG、17−フルオロエチル−AG、17−シクロプロピルメチル−AG、17−アセチル−AG、17−アゼチジニル−G、11−アセチル−17−AG、および11−オキソ−17−AGである。実施例21では、各類似体の結果を下記表で集計している。
【0190】
(実施例21)
各種のゲルダナマイシン類似体[17−AG(12%充填量)+PVP]を用いた非晶質固体分散製剤の調製
ゲルダナマイシン化合物と溶媒の混合液を加熱し、激しく撹拌する。アリコートを周期的に採取し、偏光顕微鏡検査法により調べて、結晶材料が完全に溶解しているかを判定する。完全に溶解している場合、結晶化抑制剤を溶液にゆっくりと加える。この混合液を加熱しながら激しく撹拌し、アリコートを採取し、顕微鏡法により調べて、成分が完全に溶解していることを確認する。あるいは、加える順序を変更して、高分子を共溶媒とすることができる(例えば、当該化合物を高分子の予混合溶液および適切な比率または組み合わせの溶媒に加える。それらの分散剤を上述のように特徴付けした。
【0191】
【表7】
17−AG(12%充填量)の類似体およびPVP K−30(83.3mg)を適宜に用いたことを除いて、実施例20と同様の手順を用いて、一連のシンチレーションバイアルを下記表に従って調製した。
【0192】
【表8】
多種多様なアンサマイシン化合物類似体を用いて作製した非晶質材料を含有する分散剤のインビトロ溶出試験の集計結果を下記に示す。このデータは、各種アンサマイシン化合物の過飽和レベルが達成可能なことを示す。回転蒸発を利用してPVPから生成した一連のアンサマイシン類似体の非晶質分散剤の溶解プロファイルは図15に記載されている。
【0193】
【表9】
*平衡溶解度に応じた倍率の増加
下記の実施例22は、種々の量の結晶材料(0.01%、0.1% 1%および10%、対照は0%)を「添加」した実質的に非晶質固体分散製剤から生成した17−AGの過飽和溶液は17−AGの析出速度の変化を明示する。種々の量の結晶材料を17−AGの非晶質分散剤に加えることにより、対応する過飽和溶液の安定性が影響を受ける。過飽和溶液中に存在する結晶材料の量を増加することにより、17−AG核生成および析出の速度が上昇する。各添加製剤のインビトロ実験溶解プロトコルの概要を下記表に示す。20%17−AGのPVP−K30溶液の代表的なDSCは図16に記載されている。種々の量の形態Iの添加を示すさらなるデータは、図16、図17、図18、図19、図20、図21、図22、および図23に記載されている。形態IIおよび形態IIIの添加でも同様の知見が得られる。これらの図に示すように、「0%」結晶材料を含有する製剤と、1%結晶材料を添加した製剤にはかなりの誤差があり、これは、「0%」で示す製剤は結晶材料を1%未満しか含有していないことを示している。
【0194】
(実施例22)
添加実験における17−AGを用いた溶出試験
17−AG(20%充填量)およびPVP K30を入れた1ドラムのバイアルに、種々の量の17−AG形態Iを加えて、総質量500mgおよび0.01〜10%の結晶範囲を得た。分散剤と結晶質17−AGの均質混合物を確実に得るために、それらの混合物を乳鉢と乳棒で粉砕し、50番のふるい(300um)で篩過し、Turbulaミキサーを用いて5分間混合した。結晶材料の量を顕微鏡法で調べた。実質的に非晶質材料には、目に見える結晶材料はなく、乾燥材料を用いて、水を入れた際に交差偏光下での複屈折はなかった。
【0195】
【表10】
調製した添加固体分散剤(下記表のスケジュールに従って調製している)を入れたシンチレーションバイアルに模擬腸液(5mL)を加えた後、5分間、15分間、30分間、60分間、90分間、120分間、4時間、8時間、および一晩経過した時点でバイアルを37℃で振とうし、各サンプルのアリコート(300uL)を取り出し、ポリプロピレンフィルタ(0.45ミクロン)によりろ過してMeOH(750uL)を得た。次いで、このサンプルをMeOHで希釈し、UV法を用いて溶液濃度のテストを行った。その結果を下記表に集計している。
【0196】
さらに、図44(B)および図44(C)は、非添加分散剤と0.01%結晶材料を添加した分散剤の見た目の違いを示し、非添加分散剤は結晶材料を0.01%未満しか含有していないことを示している。
【0197】
【表11】
(実施例23)
17−AG/PVP分散剤固体投薬形態の放出速度の制御
17−AG+PVP分散剤からの17−AGの放出速度の制御が可能であることを実証するために、インビトロ溶解で測定される短時間型、長時間型、および持続放出速度を有する20%17−AG+PVP K30分散剤の各種の組成物/賦形剤から錠剤およびカプセルを作製した。そのようにして、固体投薬形態の17−AG非晶質分散剤の溶解速度を制御することで、下記の実施例24では、インビボ投与時に溶解した17−AGの過飽和度を制御する手段を提供することができる。錠剤およびカプセルの組成を下記表で説明する。
【0198】
【表12】
溶解した17−AGの放出速度およびレベルは、テストした錠剤またはカプセルを500mlのSIF pH6.8に溶解し、完全に溶解するまで溶解装置(パドル速度150RPM、37℃)で撹拌して測定した。錠剤/カプセル−SIF溶液のアリコートを15分、30分、90分、120分、180分、および240分の時点で取り除いた。サンプルアリコートをろ過し(0.45uM PVDF)、SIF/MeOH中で希釈し、UV分光計で三重に測定した。
【0199】
異なる錠剤およびカプセルからの17−AGの溶解プロファイルを図24のグラフに示す。それらの結果に明示するように、異なるインビトロ放出速度(短時間型、長時間型、および持続)の錠剤およびカプセルを製造することができる。
【0200】
(実施例24)
結晶化抑制剤の過飽和に対する影響
PVP(ポリビニルピロリドン、Povidone)等の結晶化抑制剤は、結晶化を防ぐことにより化合物の溶解度を改善することができる。PVPの溶媒和17−AGの量に対する影響は、特定量の17−AGを結晶形態またはDMSO溶液で過飽和レベルまで加えた後の各時点においてPVPを増量しながらSIF pH6.8(模擬腸液)溶液中の17−AGのレベルを測定することにより調べた。
【0201】
結晶質17−AGを、0%、0.5%、1%、2.5%、および5%PVP(w/v)を含有するSIF pH6.8に5mg/mlの濃度まで加えて、特定時点の結晶質17−AGの平衡溶解度を測定した。溶液を37℃にし、サンプルアリコートを24時間、48時間、72時間、および96時間の時点で取り除いた。サンプルアリコートをろ過し(0.45uM PVDF)、SIF/MeOHで希釈し、UV分光計で三重に測定した。
【0202】
17−AG DMSO原液(10、50、100、および200mg/ml)を1:100に希釈して0%、0.5%、1%、2.5%、および5%PVP(w/v)を含有するSIF pH6.8溶液に加えて17−AGの過飽和レベルを測定した。この結果、各SIF pH6.8PVP溶液について、最終17−AG濃度がそれぞれ0.1、0.5、1、および2mg/mlの溶液が生じた。これらの溶液を溶解装置(パドル速度150PRM、37℃)で撹拌し、各溶液のアリコートを15分、30分、60分、120分、240分、360分、および1320分の時点で取り除いた。サンプルアリコートをろ過し(0.45uM PVDF)、SIF/MeOHで希釈し、UV分光計で三重に測定した。代表的なデータは図25および図26に記載されている。
【0203】
【表13】
上記のとおり、PVPは溶媒和17−AGのレベルを改善する。結晶質17−AGの平衡溶解度は、0%PVPのSIF pH6.8における0.0041mg/mlから5%PVPのSIF pH6.8の0.0112mg/mlへとほぼ3倍増加する。さらに、17−AGの過飽和度は、0%PVPの0.5mg/mlから5%PVPの0.9mg/mlにほぼ2倍に増加する。
【0204】
さらに、PVPは、過飽和状態の持続時間を延ばして過飽和溶液の安定性を高める。PVPを含まないSIFでは、17−AGは析出を開始し、およそ120分で溶液から溶出する。PVPを含むSIF溶液では、17−AG過飽和状態を120分〜ほぼ240分まで延ばすことができる。17−AG析出速度は、PVPにより濃度依存的に減速する(すなわち、%PVPが高くなるほど、過飽和状態からの17−AG析出速度が遅くなる。しかしながら、PVPのこの結晶化速度抑制作用は、0.9mg/mlの過飽和状態を達成するが120分の時点で析出を開始する1.0mg/mlの5%PVP溶液の結果に見られるような非常に高い過飽和レベルからの17−AGの析出により解消することができる。代表的なデータを図27に示す。
【0205】
(実施例25)
ビーグル犬における17−AG PVP分散剤のインビボ曝露の比較
ビーグル犬に投薬を行い、単一経口カプセル投与後の各時点における血漿中の17−AGレベルを測定し、17−AG+PVP分散剤における各種の化合物充填量、PVPグレード、および粒径の経口バイオアベイラビリティに対する影響を調べた。
【0206】
回転蒸発を利用して以下の17−AG+PVP分散剤を作製し、上記の純度、残留溶媒レベル、および非晶質含有量について特徴付けを行った。
【0207】
【表14】
各17−AG+PVP分散剤をHPMCカプセルに充填し、15mg/kgのレベルでイヌに投与した。ヘパリンナトリウムを入れたチューブへの投薬後15分、30分、1時間、2時間、4時間、8時間、および24時間の時点で血液をプレドースにより採取した。採取した血液サンプルをすぐ湿氷上に載せ、採取後30分以内に冷凍遠心により血漿を単離した。単離した血漿をラベル付ネジ蓋冷凍バイアルまたはエッペンドルフチューブに保管し、血漿17−AGレベルの分析を行うまで冷凍貯蔵(−70℃)した。試験Iの設計は以下のとおりである。各々オス2匹およびメス2匹から成るイヌ群2つを、各投与の間に1週間の休薬期間を設けて投薬に用いた。動物投薬プロトコルの詳細に関しては、PCRSプロトコルNo.INF−0704を参照されたい。
【0208】
【表15】
投薬後の17−AG血漿レベルの分析後、17−AG充填量またはPVPグレードのいずれも曝露に大きく影響しなかったが、曝露に関する傾向は存在した。17−AG充填量に関しては、17−AG充填量の増加(12%>20%>30%17−AG)とともにCmaxおよびAUCが減少した。PVPグレードに関しては、CmaxおよびAUCはPVP K30で最大であり、続いて、PVP K15、PVP K90の順であった。CmaxまたはAUCに関しては粒径の変更による傾向または影響は見られなかった(すなわち、曝露は広い範囲の粒径に対してロバスト性を有した)。全体として、曝露データには、テストした変数に性別による一貫した誤差は見られなかった。曝露のばらつきが観察されたのは、動物特異的な誤差または生存時観察(すなわち、投薬問題、嘔吐)による可能性が高い。
【0209】
各種の充填量レベルを反映する経口バイオアベイラビリティ結果(平均値)の概要は図28aおよび図29aに記載されており、関連する要約データ表は図28bおよび図29bに記載されている。各種のPVPグレードを反映する経口バイオアベイラビリティ結果(平均値)の概要は図41aおよび図42aに記載されており、関連する要約データ表は図41bおよび図42bに記載されている。20%17−AGおよびPVP K−30の各種の粒径を反映する経口バイオアベイラビリティ結果(平均値)の概要は図40aに記載されており、関連する要約データ表は図40bに記載されている。
【0210】
(実施例26)
ビーグル犬における17−AGの各種の経口製剤のインビボ曝露
各種の経口製剤を作製し、ビーグル犬に投薬を行い、単一経口投与後の各時点における血漿中の17−AGレベルを測定して化合物17−AGの各種製剤の経口バイオアベイラビリティを調べた。さらに、テストを行った製剤の多くにPVPを加え、曝露の増大に対する影響を調べた。
【0211】
簡潔に説明すると、異なる結晶、溶媒和物、および非晶質形態の17−AGを充填カプセルまたは懸濁液のいずれかで投与した。さらに、各種の異なる有機、陰イオン、および非イオン性成分を用いた各種の17−AG溶液を強制経口投与した。テストを行った異なる経口製剤のリストを下記表に示す。
【0212】
【表16】
結晶、溶媒和物、および非晶質形態の17−AGを前述のとおり作製し、Turbulaブレンダーで15分間かけて無水ラクトースまたはPVPと配合した。
【0213】
製剤成分を所望の重量パーセントまで加え、17−AGを2mg/mlの所望の濃度で溶解するまで加えるか、または40mg/mlの17−AGのDMSO溶液を加えて1:20に希釈し、最終濃度を2mg/mlとする溶液を作製した。全ての溶液は透明感のある紫色であり、析出の痕跡はなかった。
【0214】
結晶質17−AGをグリセロールとともに乳鉢および乳棒で湿式粉砕した後、高速ホモジナイザーで10分間かけて1%カルボキシメチルセルロース溶液中で均質化を行いカルボキシメチルセルロース懸濁液を作製した。懸濁液の均質性を顕微鏡法でチェックした。図46(A)は、17−AGの1%カルボキシメチルセルロース懸濁液の例示的な写真である。
【0215】
4mg/mlの17−AGを10%PGHS/2.5%DMSO/5%Tween−80、または10%PGHS/2.5%DMSO/5%Tween−80/5%PVPで溶かした溶液を作製し、高速ホモジナイザーで15分間かけてその溶液をオリーブ油と1:1で混合して乳剤を作製した。顕微鏡法で乳剤の確認を行った。図46(B)は、10%PGHS、2.5%DMSO、5%Tween−80、50%オリーブ油で溶かした17−AGのNSの乳剤の例示的な写真である。
【0216】
マイクロフルイダイザー(Microfluidics社、型番:M−110L)で10〜20分間かけて結晶質17−AGをTween−80中において高せん断で湿式粉砕してナノ懸濁液を作製した。平均粒径(d50:300〜400nM)をレーザー光回折(Malvern社、Mastersizer2000)により測定した。
【0217】
投薬した製剤の全ては、少なくとも2時間、室温で物理的安定性を有した。
【0218】
ヘパリンナトリウムを入れたチューブへの投薬後15分、30分、1時間、2時間、4時間、および8時間の時点で血液をプレドースにより採取した。採取した血液サンプルを直ぐに湿氷上に載せ、採取後30分以内に冷凍遠心により血漿を単離した。単離した血漿をラベル付ネジ蓋冷凍バイアルまたはエッペンドルフチューブに保管し、血漿17−AGレベルを分析するまで冷凍貯蔵(−70℃)した。試験設計は下記のとおりである。各々が3匹のメスからなるイヌ群2つを投薬に用い、各投与の間に1週間の休薬期間を設けた。
【0219】
【表17】
固体製剤に関しては、PVPは、結晶質17−AGとPVPの物理的混合物に対する曝露を17−AGが検出可能なレベルまで増大させないようである。しかしながら、17−AGのEtOAc溶媒和物投薬後に低度の曝露があり、非晶質17−AGまたは17−AGの非晶質分散剤投薬後に有意な曝露があった。さらに、PVPをこれらの製剤に含めることにより、EtOAc溶媒和物および非晶質17−AGの曝露プロファイルを改善すると思われる。この結果は、PVPが17−AG溶解度を向上させ、17−AGの過飽和溶液を安定させる能力を示すインビトロ溶解実験と一致する。製造方法は、溶媒蒸発または噴霧乾燥した20%17−AG/PVP非晶質分散剤の投薬による曝露は同じであるため、影響を有さないようである。17−AGの固体分散剤を他の結晶化抑制剤、HPMC−AS、およびEudragit L100とともにインビボ投薬した結果も17−AG/PVP分散剤の結果と一致する。これらの製剤中の17−AGのバイオアベイラビリティが投与する結晶質17−AGと比較して改善されていることは、非晶質分散剤中の結晶化抑制剤をゲルダナマイシン類似体とともに利用することの有用性を実証している。
【0220】
液体(溶液、乳剤)製剤に関しては、投与した製剤の全てについて有意な曝露があった。PVPを製剤に含めても、溶液投薬においては固体投薬の曝露結果と同様の有意な影響は得られなかったようだ。これは、溶液の全てが相対的に低濃度(2mg/ml)、かつ少量(25ml)で投与され、物理的安定性が良好であったことによる。溶液投薬の全てについて一貫して高い曝露結果が得られたことは、PVPが溶液を安定させる能力を明確に示する前に17−AGが容易に吸収されていることを示唆する。
【0221】
懸濁液およびナノ懸濁液製剤に関しては、結晶化抑制剤PVPが存在してもしなくても、投薬後に測定可能なレベルの17−AGはほとんどまたは全くなかった。
【0222】
総合的には、これらの結果は、多様な経口製剤を利用して17−AGを投薬する能力を実証する。観察された曝露のばらつきは、動物特異的な誤差または生存中の観察(すなわち、投薬問題、嘔吐)による可能性が高い。特定の投薬に関する曝露データの例示的なグラフは、下記表に示す図面参照番号に記載されている。経口バイオアベイラビリティに関する結果(平均値)は下記表に集計されている。
【0223】
【表18】
CNE=評価不可
下記の実施例27では、17−AGの溶液がマウスゼノグラフモデルにおいて腫瘍の増殖を抑えることを示す。代表的なデータは図47および図48に記載している。
【0224】
(実施例27)
17−AGのインビボ効力
HSP90に依存するクライアントタンパク質のマウスゼノグラフ腫瘍モデルを利用した2つのマウスゼノグラフ試験を行って17−AGのインビボ効力を実証した。
【0225】
第1の試験では、H1975(EGFR(HSP90のクライアントタンパク質)にL858RおよびT790M変異株を有する非小細胞肺癌細胞株)を利用した。5〜6週齢のNu/Nuマウスに10×10e6個のH1975細胞を移植した。移植細胞が〜150mm3に達した後、投薬を開始した。投薬は強制経口投与で行い、投薬スケジュールは、ビヒクル(20%PGHS、5%DMSO、75%NS)、およびビヒクル中の75mg/kgと100mg/kgの17−AGを用いて隔日に行うこととした。投薬後、投薬治療群(dosing arms)では、腫瘍容積が、ビヒクルで処置した動物と比較して〜35%および〜70%減少し、HSP90クライアントタンパク質に依存するゼノグラフ腫瘍モデルにおける17−AGの投薬効力が実証された。
【0226】
第2の試験では、EGFR(Del E746−A750)の突然変異型を有するH1650肺腺癌細胞株を利用した。5〜6週齢のNu/Nuマウスに10×10e6個のH1650細胞を移植した。移植細胞が約100mm3に達した後、投薬を開始した。投薬は強制経口投与で行い、投薬スケジュールは、ビヒクル(15%PVP、5%EtOH、80%PG)、およびビヒクル中の50mg/kg、75mg/kg、100mg/kgの17−AGを用いて毎日行うこととした。投薬後、投薬治療群では、腫瘍容積が、ビヒクルで処置した動物と比較して最大で約62%減少し、HSP90クライアントタンパク質に依存するゼノグラフ腫瘍モデルにおける17−AGの投薬効力が実証された。
【0227】
本明細書に含まれる他の実施形態を下記の請求の範囲に示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベンゾキノンアンサマイシン化合物を含む医薬組成物であって、該化合物を15mg/kgの用量で被験体に経口投与するときに、該組成物は少なくとも100ng・hr/mlの曲線下領域を達成するに十分な量の化合物を送達し、該ベンゾキノンアンサマイシン化合物は17−DMAGではない、組成物。
【請求項2】
前記曲線下領域は少なくとも500ng・hr/mlである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記曲線下領域は少なくとも1000ng・hr/mlである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記曲線下領域は少なくとも5000ng・hr/mlである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記曲線下領域は少なくとも10,000ng・hr/mlである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記曲線下領域は少なくとも15,000ng・hr/mlである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物は実質的に非晶質形態で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物は17−AGである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物は17−AAGである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1mg/kgの用量で被験体に経口投与される17−AGを含む組成物であって、少なくとも100ng・hr/mlの曲線下領域が達成されることを特徴とする、組成物。
【請求項11】
少なくとも1mg/kgの用量で被験体に経口投与される17−AAGを含む組成物であって、少なくとも100ng・hr/mlの曲線下領域が達成されることを特徴とする、組成物。
【請求項12】
前記17−AGは約1mg/kg〜約100mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記17−AAGは約1mg/kg〜約100mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記17−AGは約5mg/kg〜約50mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記17−AAGは約5mg/kg〜約50mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記17−AGは約5mg/kg〜約25mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
前記17−AAGは約5mg/kg〜約25mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記17−AGは約10mg/kg〜約20mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
前記17−AAGは約10mg/kg〜約20mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
前記17−AGは約15mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項21】
前記17−AAGは約15mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項22】
前記ベンゾキノンアンサマイシンは式1
【化19】
の化合物またはその薬学上許容可能な塩であり、
R1はH、−OR8、−SR8−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、CNまたはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)CH3または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、2、3、4、5、または6であり、
R4はH、アルキル、アケニル、またはアラルキルであり、
R5およびR6は各々Hであるか;またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素 アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9の各々は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR8およびR9は組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアラルキルであり、
R11は、各出現について独立してH、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、−OR8、−SR8、−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、−C(O)R8、−C(O)2R8、−C(O)N(R8)(R9)、ハロゲン化物、またはCNである、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
R1は−OR8、−C(=O)CH3、またはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、または2であり、
R4はHであり、
R5およびR6は各々Hであるか、またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9の各々は独立してHであるか、またはR8およびR9は組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してHであり、
R11は、各出現について独立してH、−N(R8)(R9)、またはハロゲン化物である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
R1はOHであり、R4はHであり、R5およびR6は組み合わされて結合を形成する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記化合物は、
【化20】
【化21】
からなる群から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記化合物は実質的に非晶質形態で存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
前記化合物は17−AGである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記化合物は17−AAGである、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物は結晶化抑制剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記結晶化抑制剤は、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、ガム類、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む)、デキストラン、アカシア、ビニルラクタムのホモポリマーおよびコポリマーならびにそれらの混合物、シクロデキストリン、ゼラチン、ヒプロメロースフタレート、糖類、多価アルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン誘導体、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール誘導体、SLS、Tween、Eudragit、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記結晶化抑制剤は、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記ポリビニルピロリドンは、ポリビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにN−ビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
前記結晶化抑制剤は、前記実質的に非晶質の化合物の該化合物の結晶形態への変換を実質的に抑制するに十分な量で存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項35】
前記結晶化抑制剤は、前記組成物の総重量の少なくとも約5%、10% 15%、または25%(w/w)の量で存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項36】
前記量は前記組成物の総重量の少なくとも約5%(w/w)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記量は前記組成物の総重量の少なくとも約10%(w/w)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記量は前記組成物の総重量の少なくとも約15%(w/w)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記量は前記組成物の総重量の少なくとも約25%(w/w)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物は分子分散剤を用いて送達される、請求項1に記載の組成物。
【請求項41】
前記分子分散剤は実質的に非晶質形態で存在する前記化合物を含有する、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記分子分散剤は、(a)粉砕、(b)押出、(c)溶融加工、(d)溶媒修飾融合、(e)溶媒処理、または(f)非溶媒析出から得られる、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記溶融加工は、高温融解凝固加工および融解凝固加工から選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記溶媒処理は、凍結乾燥、回転蒸発、スプレーコーティング、および噴霧乾燥から選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
17−AGおよび少なくとも約10重量%の結晶化抑制剤を含む組成物。
【請求項46】
前記組成物は前記結晶化抑制剤を少なくとも約25重量%含有する、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記組成物は前記結晶化抑制剤を少なくとも約50重量%含有する、請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物は前記結晶化抑制剤を少なくとも約75重量%含有する、請求項45に記載の組成物。
【請求項49】
前記結晶化抑制剤はPVPである、請求項45に記載の組成物。
【請求項50】
前記17−AGは実質的に非晶質である、請求項45に記載の組成物。
【請求項51】
実質的に非晶質の17−AG。
【請求項52】
実質的に非晶質の17−AAG。
【請求項53】
他の固体形態を実質的に含まない17−アミノゲルダナマイシンの多形体形態I。
【請求項54】
約6.2、8.5、13.6、および15.9度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項53に記載の多形体。
【請求項55】
約6.2、8.5、13.6、および15.9度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを、約6.2、8.5、13.6、15.9、16.9、22.4、23.4、26.3、30.6、31.7、35.1、および36.1度2θから選択される少なくとも1つの他のピークと組み合わせて有する、請求項54に記載の多形体。
【請求項56】
図2に示すXRPDパターンの実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項55に記載の多形体。
【請求項57】
他の固体形態を実質的に含まない17−アミノゲルダナマイシンの多形体形態II。
【請求項58】
約12.5、15.1、20.7、22.4、および25.0度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項57に記載の多形体。
【請求項59】
約12.5、15.1、20.7、22.4、および25.0度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを、約9.5、10.1、12.5、15.1、16.1、16.8、19.8、20.7、21.5、22.4、25.1、25.8、29.5、および30.5度2θから選択される少なくとも1つの他のピークと組み合わせて有する、請求項58に記載の多形体。
【請求項60】
図5に示すXRPDパターンの実質的に全てのピークを有する、請求項59に記載の多形体。
【請求項61】
他の固体形態を実質的に含まない17−アミノゲルダナマイシンの多形体形態III。
【請求項62】
約18.3、21.0、および24.3度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項61に記載の多形体。
【請求項63】
約18.3、21.0、および24.3度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを、約8.4、9.3、10.9、11.6、13.6、13.9、15.7、16.3、17.1、18.3、18.6、19.9、21.0、22.0、24.3、25.8、28.2、29.2、および30.8度2θから選択される少なくとも1つの他のピークと組み合わせて有する、請求項62に記載の多形体。
【請求項64】
図6に示すXRPDパターンの実質的に全てのピークを有する、請求項63に記載の多形体。
【請求項65】
他の固体形態を実質的に含まない17−アミノゲルダナマイシンの酢酸エチル溶媒和物。
【請求項66】
約8.2、15.9、および22.3度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項65に記載の溶媒和物。
【請求項67】
約8.2、15.9、および22.3度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを、約6.2、8.2、12.6、14.5、15.9、16.8、17.5、22.3、23.3、および25.3度2θから選択される少なくとも1つの他のピークと組み合わせて有する、請求項66に記載の溶媒和物。
【請求項68】
図7に示すXRPDパターンの実質的に全てのピークを有する、請求項67に記載の溶媒和物。
【請求項69】
病気を治療する方法であって、治療有効量の式1のベンゾキノン化合物またはその医薬組成物を、治療を必要とする患者に経口投与する工程を包含し、該ベンゾキノンアンサマイシンは17−DMAGではなく、該化合物を15mg/kgの用量で投与する場合、その結果得られたAUCは少なくとも約500ng・hr/mlである、方法。
【請求項70】
前記ベンゾキノン化合物は17−AGであり、該17−AGは実質的に非晶質である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記病気は、癌、腫瘍性疾患状態、および過剰増殖性障害から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記癌、腫瘍性疾患状態、または過剰増殖性障害は、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸癌、結腸直腸癌、脾臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、骨髄異形性症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、軟部組織肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫)、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、膀胱癌、上皮性腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽腫、子宮内膜癌、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝細胞癌、甲状腺癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、小細胞癌、本態性血小板血症、原因不明骨髄様化生、好酸球増加症候群、全身性肥満細胞症、家族性過好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、甲状腺癌、神経内分泌癌、およびカルチノイドからなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記癌は、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、前立腺癌、乳癌、黒色腫、慢性骨髄性白血病、および非小細胞肺癌から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
癌、腫瘍性疾患状態、または過剰増殖性障害を治療する方法であって、請求項1に記載のベンゾキノンアンサマイシンを含有する組成物を投与する工程を包含し、該アンサマイシンは胃腸管内において過飽和溶液となる、方法。
【請求項75】
Hsp90を抑制する方法であって、被験体に式1
【化22】
のベンゾキノン化合物またはその医薬組成物を投与する工程を包含し、
R1はH、−OR8、−SR8−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、CNまたはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)CH3または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、2、3、4、5、または6であり、
R4はH、アルキル、アケニル、またはアラルキルであり、
R5およびR6は各々Hであるか;またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素 アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR8およびR9は組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアラルキルであり、
R11は、各出現について独立してH、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、−OR8、−SR8、−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、−C(O)R8、−C(O)2R8、−C(O)N(R8)(R9)、ハロゲン化物、またはCNであり、
該ベンゾキノンアンサマイシンは17−DMAGではなく、該化合物を15mg/kgの用量で投与する場合、その結果得られた曲線下領域は少なくとも約500ng・hr/mlである、方法。
【請求項1】
ベンゾキノンアンサマイシン化合物を含む医薬組成物であって、該化合物を15mg/kgの用量で被験体に経口投与するときに、該組成物は少なくとも100ng・hr/mlの曲線下領域を達成するに十分な量の化合物を送達し、該ベンゾキノンアンサマイシン化合物は17−DMAGではない、組成物。
【請求項2】
前記曲線下領域は少なくとも500ng・hr/mlである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記曲線下領域は少なくとも1000ng・hr/mlである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記曲線下領域は少なくとも5000ng・hr/mlである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記曲線下領域は少なくとも10,000ng・hr/mlである、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記曲線下領域は少なくとも15,000ng・hr/mlである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記化合物は実質的に非晶質形態で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記化合物は17−AGである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記化合物は17−AAGである、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1mg/kgの用量で被験体に経口投与される17−AGを含む組成物であって、少なくとも100ng・hr/mlの曲線下領域が達成されることを特徴とする、組成物。
【請求項11】
少なくとも1mg/kgの用量で被験体に経口投与される17−AAGを含む組成物であって、少なくとも100ng・hr/mlの曲線下領域が達成されることを特徴とする、組成物。
【請求項12】
前記17−AGは約1mg/kg〜約100mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記17−AAGは約1mg/kg〜約100mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記17−AGは約5mg/kg〜約50mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記17−AAGは約5mg/kg〜約50mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
前記17−AGは約5mg/kg〜約25mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
前記17−AAGは約5mg/kg〜約25mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項18】
前記17−AGは約10mg/kg〜約20mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
前記17−AAGは約10mg/kg〜約20mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項20】
前記17−AGは約15mg/kgの用量で経口投与される、請求項10に記載の組成物。
【請求項21】
前記17−AAGは約15mg/kgの用量で経口投与される、請求項11に記載の組成物。
【請求項22】
前記ベンゾキノンアンサマイシンは式1
【化19】
の化合物またはその薬学上許容可能な塩であり、
R1はH、−OR8、−SR8−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、CNまたはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)CH3または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、2、3、4、5、または6であり、
R4はH、アルキル、アケニル、またはアラルキルであり、
R5およびR6は各々Hであるか;またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素 アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9の各々は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR8およびR9は組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアラルキルであり、
R11は、各出現について独立してH、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、−OR8、−SR8、−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、−C(O)R8、−C(O)2R8、−C(O)N(R8)(R9)、ハロゲン化物、またはCNである、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
R1は−OR8、−C(=O)CH3、またはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、または2であり、
R4はHであり、
R5およびR6は各々Hであるか、またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9の各々は独立してHであるか、またはR8およびR9は組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してHであり、
R11は、各出現について独立してH、−N(R8)(R9)、またはハロゲン化物である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
R1はOHであり、R4はHであり、R5およびR6は組み合わされて結合を形成する、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記化合物は、
【化20】
【化21】
からなる群から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記化合物は実質的に非晶質形態で存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項27】
前記化合物は17−AGである、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記化合物は17−AAGである、請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記組成物は結晶化抑制剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項30】
前記結晶化抑制剤は、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、ガム類、セルロース誘導体(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムを含む)、デキストラン、アカシア、ビニルラクタムのホモポリマーおよびコポリマーならびにそれらの混合物、シクロデキストリン、ゼラチン、ヒプロメロースフタレート、糖類、多価アルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシステアリン酸ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン誘導体、ポリビニルアルコール、プロピレングリコール誘導体、SLS、Tween、Eudragit、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
前記結晶化抑制剤は、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
前記ポリビニルピロリドンは、ポリビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにN−ビニルピロリドンのホモポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
前記セルロース誘導体は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択される、請求項30に記載の組成物。
【請求項34】
前記結晶化抑制剤は、前記実質的に非晶質の化合物の該化合物の結晶形態への変換を実質的に抑制するに十分な量で存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項35】
前記結晶化抑制剤は、前記組成物の総重量の少なくとも約5%、10% 15%、または25%(w/w)の量で存在する、請求項22に記載の組成物。
【請求項36】
前記量は前記組成物の総重量の少なくとも約5%(w/w)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
前記量は前記組成物の総重量の少なくとも約10%(w/w)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項38】
前記量は前記組成物の総重量の少なくとも約15%(w/w)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項39】
前記量は前記組成物の総重量の少なくとも約25%(w/w)である、請求項35に記載の組成物。
【請求項40】
前記組成物は分子分散剤を用いて送達される、請求項1に記載の組成物。
【請求項41】
前記分子分散剤は実質的に非晶質形態で存在する前記化合物を含有する、請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記分子分散剤は、(a)粉砕、(b)押出、(c)溶融加工、(d)溶媒修飾融合、(e)溶媒処理、または(f)非溶媒析出から得られる、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記溶融加工は、高温融解凝固加工および融解凝固加工から選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項44】
前記溶媒処理は、凍結乾燥、回転蒸発、スプレーコーティング、および噴霧乾燥から選択される、請求項42に記載の組成物。
【請求項45】
17−AGおよび少なくとも約10重量%の結晶化抑制剤を含む組成物。
【請求項46】
前記組成物は前記結晶化抑制剤を少なくとも約25重量%含有する、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
前記組成物は前記結晶化抑制剤を少なくとも約50重量%含有する、請求項45に記載の組成物。
【請求項48】
前記組成物は前記結晶化抑制剤を少なくとも約75重量%含有する、請求項45に記載の組成物。
【請求項49】
前記結晶化抑制剤はPVPである、請求項45に記載の組成物。
【請求項50】
前記17−AGは実質的に非晶質である、請求項45に記載の組成物。
【請求項51】
実質的に非晶質の17−AG。
【請求項52】
実質的に非晶質の17−AAG。
【請求項53】
他の固体形態を実質的に含まない17−アミノゲルダナマイシンの多形体形態I。
【請求項54】
約6.2、8.5、13.6、および15.9度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項53に記載の多形体。
【請求項55】
約6.2、8.5、13.6、および15.9度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを、約6.2、8.5、13.6、15.9、16.9、22.4、23.4、26.3、30.6、31.7、35.1、および36.1度2θから選択される少なくとも1つの他のピークと組み合わせて有する、請求項54に記載の多形体。
【請求項56】
図2に示すXRPDパターンの実質的に全てのピークを有することを特徴とする、請求項55に記載の多形体。
【請求項57】
他の固体形態を実質的に含まない17−アミノゲルダナマイシンの多形体形態II。
【請求項58】
約12.5、15.1、20.7、22.4、および25.0度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項57に記載の多形体。
【請求項59】
約12.5、15.1、20.7、22.4、および25.0度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを、約9.5、10.1、12.5、15.1、16.1、16.8、19.8、20.7、21.5、22.4、25.1、25.8、29.5、および30.5度2θから選択される少なくとも1つの他のピークと組み合わせて有する、請求項58に記載の多形体。
【請求項60】
図5に示すXRPDパターンの実質的に全てのピークを有する、請求項59に記載の多形体。
【請求項61】
他の固体形態を実質的に含まない17−アミノゲルダナマイシンの多形体形態III。
【請求項62】
約18.3、21.0、および24.3度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項61に記載の多形体。
【請求項63】
約18.3、21.0、および24.3度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを、約8.4、9.3、10.9、11.6、13.6、13.9、15.7、16.3、17.1、18.3、18.6、19.9、21.0、22.0、24.3、25.8、28.2、29.2、および30.8度2θから選択される少なくとも1つの他のピークと組み合わせて有する、請求項62に記載の多形体。
【請求項64】
図6に示すXRPDパターンの実質的に全てのピークを有する、請求項63に記載の多形体。
【請求項65】
他の固体形態を実質的に含まない17−アミノゲルダナマイシンの酢酸エチル溶媒和物。
【請求項66】
約8.2、15.9、および22.3度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを有する、請求項65に記載の溶媒和物。
【請求項67】
約8.2、15.9、および22.3度2θから選択される少なくとも1つの特徴的なXRPDピークを、約6.2、8.2、12.6、14.5、15.9、16.8、17.5、22.3、23.3、および25.3度2θから選択される少なくとも1つの他のピークと組み合わせて有する、請求項66に記載の溶媒和物。
【請求項68】
図7に示すXRPDパターンの実質的に全てのピークを有する、請求項67に記載の溶媒和物。
【請求項69】
病気を治療する方法であって、治療有効量の式1のベンゾキノン化合物またはその医薬組成物を、治療を必要とする患者に経口投与する工程を包含し、該ベンゾキノンアンサマイシンは17−DMAGではなく、該化合物を15mg/kgの用量で投与する場合、その結果得られたAUCは少なくとも約500ng・hr/mlである、方法。
【請求項70】
前記ベンゾキノン化合物は17−AGであり、該17−AGは実質的に非晶質である、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記病気は、癌、腫瘍性疾患状態、および過剰増殖性障害から選択される、請求項69に記載の方法。
【請求項72】
前記癌、腫瘍性疾患状態、または過剰増殖性障害は、消化管間質腫瘍(GIST)、結腸癌、結腸直腸癌、脾臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、黒色腫、多発性骨髄腫、骨髄異形性症候群、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、真性赤血球増加症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、重鎖病、軟部組織肉腫(例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑液肉腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫)、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭状腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛腫、精上皮腫、胎生期癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣癌、膀胱癌、上皮性腫瘍、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽腫、子宮内膜癌、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、肝細胞癌、甲状腺癌、胃癌、食道癌、頭頸部癌、小細胞癌、本態性血小板血症、原因不明骨髄様化生、好酸球増加症候群、全身性肥満細胞症、家族性過好酸球増加症、慢性好酸球性白血病、甲状腺癌、神経内分泌癌、およびカルチノイドからなる群から選択される、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記癌は、消化管間質腫瘍、多発性骨髄腫、前立腺癌、乳癌、黒色腫、慢性骨髄性白血病、および非小細胞肺癌から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
癌、腫瘍性疾患状態、または過剰増殖性障害を治療する方法であって、請求項1に記載のベンゾキノンアンサマイシンを含有する組成物を投与する工程を包含し、該アンサマイシンは胃腸管内において過飽和溶液となる、方法。
【請求項75】
Hsp90を抑制する方法であって、被験体に式1
【化22】
のベンゾキノン化合物またはその医薬組成物を投与する工程を包含し、
R1はH、−OR8、−SR8−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、CNまたはカルボニル部分であり、
R2およびR3の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、−C(=O)CH3または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR2およびR3は、それらが結合する窒素と組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
pは、各出現について独立して0、1、2、3、4、5、または6であり、
R4はH、アルキル、アケニル、またはアラルキルであり、
R5およびR6は各々Hであるか;またはR5およびR6は組み合わされて結合を形成し、
R7は水素 アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であり、
R8およびR9の各々は独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロアラルキル、または−[C(R10)2)p]−R11であるか、またはR8およびR9は組み合わされて、O、N、S、およびPから選択される1〜3個のヘテロ原子を有する3〜8員の任意で置換したヘテロ環を表し、
R10は、各出現について独立してH、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアクリル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、またはヘテロアラルキルであり、
R11は、各出現について独立してH、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロ環、−OR8、−SR8、−N(R8)(R9)、−N(R8)C(O)R9、−N(R8)C(O)OR9、−N(R8)C(O)N(R8)(R9)、−OC(O)R8、−OC(O)OR8、−OS(O)2R8、−OS(O)2OR8、−OP(O)2OR8、−C(O)R8、−C(O)2R8、−C(O)N(R8)(R9)、ハロゲン化物、またはCNであり、
該ベンゾキノンアンサマイシンは17−DMAGではなく、該化合物を15mg/kgの用量で投与する場合、その結果得られた曲線下領域は少なくとも約500ng・hr/mlである、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44(A)】
【図44(B)】
【図44(C)】
【図44(D)】
【図44(E)】
【図45】
【図46(A)】
【図46(B)】
【図47】
【図48】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44(A)】
【図44(B)】
【図44(C)】
【図44(D)】
【図44(E)】
【図45】
【図46(A)】
【図46(B)】
【図47】
【図48】
【公表番号】特表2010−512397(P2010−512397A)
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541348(P2009−541348)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/025317
【国際公開番号】WO2008/073424
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(506418758)インフィニティ・ディスカバリー・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】INFINITY DISCOVERY, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/025317
【国際公開番号】WO2008/073424
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(506418758)インフィニティ・ディスカバリー・インコーポレイテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】INFINITY DISCOVERY, INC.
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]