説明

アンジオポエチン様3発現の調節

本発明は、動物でのANGPTL3mRNAおよびタンパク質の発現を低減させる方法、化合物、および組成物を提供する。また、動物での血漿脂質、血漿グルコース、およびアテローム斑を低減させる方法、化合物、および組成物を提供する。この方法、化合物、および組成物は、心臓血管疾患もしくは代謝疾患、またはこれらの症状のいずれか1つ以上を処置、予防、遅延、または改善するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
動物においてアンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3)のmRNAおよびタンパク質の発現を低下させるための方法、化合物、および組成物が提供される。また、動物においてANGPTL3に関連する疾患または状態を軽減するためのANGPTL3阻害剤を含む方法、化合物、および組成物が提供される。そのような方法、化合物、および組成物は、例えば、動物において心血管系疾患またはメタボリックシンドロームまたはその症状の任意の1つ以上の処置、防止、遅延、または改善に有用である。
【背景技術】
【0002】
糖尿病および肥満(「糖尿肥満」と総称することもある)は、肥満が糖尿病の病理を悪化させることが知られ、また
60%を超える糖尿病患者が太りすぎであるという点で相関がある。ほとんどのヒト肥満は、インスリン抵抗性およびレプチン抵抗性に関連する。実際には、肥満は糖尿病自体よりもインスリン活性にさらに大きな影響をもち得ることが、示唆されてきた(Sindelka et al.、Physiol Res.、2002、51、85−91)。さらに、糖尿病の治療用に市販されるいくつかの化合物が体重増加、この疾患の治療に非常に好ましくない副作用を導くことが知られている。
【0003】
心臓血管系疾患もまた、肥満および糖尿病と相関がある。心臓血管系疾患は、多種多様な病因を包含し、同等の多種多様な原因物質および相関するプレイヤーを持つ。多くの原因物質が、非HDLコレステロールを含む血漿コレステロールレベルの上昇などの症状、ならびに他の脂質関連障害の一因となる。この脂質関連障害(一般に脂質異常症と呼ばれる)は、他の兆候のなかでも、高脂血症、高コレステロール血症、および高トリグリセリド血症を含む。上昇した非HDLコレステロールは、動脈硬化、冠動脈疾患、心筋梗塞、虚血性脳卒中、および心臓疾患の他の形態などの心臓血管疾患を含むアテローム形成およびその後遺症に関連する。これらは、先進工業国での最も普及した病気として位置づけられている。実際に、米国の推定1200万人が冠動脈疾患に罹患し、約3600万人が上昇したコレステロールレベルの治療を必要とする。
【0004】
疫学的証拠および実験的証拠が、血中トリグリセリド(TG)(circulating triglyceride)の高いレベルが心臓血管疾患および無数の代謝障害の一因となることを示してきた(Valdivielso et al.、2009、Atherosclerosis. 207(2):573−8; Zhang et al.、2008、Circ Res. 1;102(2):250−6)。外因性供給源または内因性供給源のいずれかに由来するTGは、腸からのカイロミクロンで、または肝臓からの超低比重リポタンパク質(VLDL)で取り込まれたり分泌される。一旦循環すると、TGはリポタンパク質リパーゼ(LpL)により加水分解され、結果として得られる遊離脂肪酸が次いで局所組織に取り込まれ、エネルギー供給源として使用される。LpLが血漿TGおよび一般的な代謝に大きな影響を及ぼすことから、LpL活性に影響を及ぼす化合物を発見および開発することは、大変興味深いことである。
【0005】
メタボリック症候群は、ヒトの心臓血管疾患および糖尿病のリスクを増加させる内科的疾患の組み合わせである。高血圧、高トリグリセリド、低HDL、および肥満を含む症状は、いくつかの個体において同時に見られる傾向がある。メタボリック症候群は多くの人々にひとかたまりで影響を与える。いくつかの研究は、米国での罹患率は、人口の最大25%であると算出されている。メタボリック症候群は、(代謝)症候群X、インスリン抵抗性症候群、リーブン(Reaven’s)症候群、またはCHAOSなどの様々な他の名称で知られている。心臓血管系障害および代謝障害のその高い罹患率から、これらの症状を治療する改善されたアプローチの必要性が依然存在する。
【0006】
アンジオポエチンは、分泌成長因子のあるファミリーである。アンジオポエチンはそれぞれの内皮特異的受容体と共に、血管新生の重要な役割を果たす。あるファミリーメンバーであるアンジオポエチン様3(ANGPT5、ANGPTL3、またはアンジオポエチン5としても知られる)は、大部分は肝臓で発現され、脂質代謝を調節する役割を果たすと考えられている(Kaplan et al.、J. Lipid Res.、2003、44、136−143)。
【0007】
アンジオポエチン様3に関するヒト遺伝子が、assembled EST databaseの調査の結果として同定され、クローン化された。全長ヒトcDNAは特徴的なアンジオポエチン構造特性を持つ460個のアミノ酸のポリペプチド:シグナルペプチド、拡張ヘリカルドメイン(extended helical domain)、短いリンカーペプチド、および球形のフィブリノゲン相同ドメイン(FHD)をコードしている。マウスアンジオポエチン様3cDNAが、ヒトポリペプチドと76%の同一性を持つ455このアミノ酸のポリペプチドをコードすることが見出された。アンジオポエチンのアライメントから、他のファミリーメンバーとは異なるアンジオポエチン様3が、カルシウム結合部位を決定する酸性残基のモチーフを含まないことが示された。ノーザンブロット法は、主に成体組織の肝臓での発現することを明らかにし、マウス胚ノーザンブロットは早ければ15日目で転写産物の存在を示し、これはアンジオポエチン様3が肝臓発達中の初期に発現されること、および発現が成体肝臓で維持されることを示唆する。マウス遺伝子は第4染色体に位置し、またヒト遺伝子は1p31領域に位置した(Conklin et al.、Genomics、1999、62、477−482)。
【0008】
KK肥満マウスは、わずかな肥満の多重遺伝子症候群とヒト遺伝性2型糖尿病に似た糖尿病の表現型を持つ。これらのマウスは、高インスリン血症、高血糖、および高脂血症の兆候を示す。KK/Sanと呼ばれるKKマウス株は、高インスリン血症および高血糖の兆候にもかかわらず、有意に低い血漿脂質レベルを持つ。変異表現型は劣性遺伝であり、遺伝子座名は低リポタンパク質血症(hypl)であった。遺伝子座は、第4染色体の中間に位置し、遺伝子はポジショナルクローニングによりアンジオポエチン様3として同定された。変異KK/Sanマウスでの、完全長マウスまたはヒトアンジオポエチン様3cDNAを含む組み換えアデノウイルスの注入により、血漿のトリグリセリド、総コレステロール、および非エステル化脂肪酸(NEFA)レベルが増加した。同様に、変異マウスへの組み換えアンジオポエチン様3タンパク質の注入がトリグリセリドおよび非エステル化脂肪酸のレベルを増加させた(Koishi et al.、Nat. Genet.、2002、30、151−157)。
【0009】
KK/Sanマウスでのトリグリセリドの代謝経路を重点とした別の研究では、アンジオポエチン様3の過剰発現が、トリグリセリドに富む低比重リポタンパク質(VLDL)の顕著な増加をもたらした。肝臓VLDLトリグリセリド分泌速度の相違は、野生型KKマウスとKK/Sanマウスとでは顕著ではなかった。しかしながら、標識VLDLを用いた研究は、KK/Sanマウスでの低い血漿トリグリセリドレベルは、全粒子の取り込みの促進よりむしろ主にVLDLトリグリセリドの脂肪分解の促進のためであることを示唆した。KK/Sanマウスの血漿apoB100およびapoB48レベルは、野生型KKマウスと同じであった。ApoCIII−欠損マウスは、KK/Sanマウスと同様の表現型をもち、ApoCIIIはVLDLトリグリセリドのリパーゼによる加水分解の阻害によりVLDLトリグリセリド代謝を調節すると考えられる。組み換えタンパク質のインビトロ解析は、アンジオポエチン様3は直接リポタンパク質リパーゼ(LPL)活性を阻害することを明らかにした(Shimizugawa et al.、J. Biol. Chem.、2002、277、33742−33748)。
【0010】
脂質代謝の役割と一致して、アンジオポエチン様3mRNAが、4%コレステロールを含む正常餌を給餌したC57BL/6Jマウスで、および肝臓X受容体(LXR)アゴニストT0901317で処置したマウスで上方制御されることが見出された。LXRは、肝臓および周辺組織でのコレステロールホメオスタシスに影響を与える遺伝子を制御する役割を果たすリガンド活性化転写因子である。コレステロール代謝に加えて、LXRはまた、脂肪酸代謝を制御する役割も果たし得る。LXRを活性化する自然因子(natural agent)または合成因子(synthetic agent)によるHepG2細胞の処置により、アンジオポエチン様3発現の増加を生じた。ヒトアンジオポエチン様3遺伝子のプロモーターが、LXR応答配列を含むことを見出した。さらに、プロモーターが、HNF−1、HNF−4、およびC/EBPを含む他の転写因子に対するいくつかの潜在的な結合部位を含んでいた(Kaplan et al.、J. Lipid Res.、2003、44、136−143)。
【0011】
T0901317による齧歯類の処置は、肝臓および血漿でのトリグリセリド蓄積に関連する。肝臓のトリグリセリド蓄積は、その両方がLXRの標的であるステロール制御配列結合タンパク質−1c(SREBP1c)と脂肪酸シンターゼ(FAS)の発現の増加により説明されている。T0901317は、アンジオポエチン様3欠損マウスで血漿トリグリセリド濃度を増加させなかったが、一方で肝臓トリグリセリドの誘導性蓄積は、処置野生型マウスで認められた程度に認められた。T0901317により処置された野生型マウスでの血漿トリグリセリドの上昇は、肝臓でのアンジオポエチン様3mRNAの誘導、および血漿タンパク質の濃度の増加に対応する(Inaba et al.、J. Biol. Chem.、2003、278、21344−21351)。
【0012】
さらなる研究は、外因性のアンジオポエチン様3により処置されたKK/Snkマウスで認められた血漿遊離脂肪酸(FFA)レベルの増加機構に取り組んだ。蛍光標識アンジオポエチン様3タンパク質を持つヒト固定組織のプローブが、脂肪組織にのみに強い結合を示した。さらに、放射性標識タンパク質結合が3T3−L1脂肪細胞で試験され、その結合が安定で特異的であることが見出された。3T3−L1脂肪細胞のアンジオポエチン様3によるインキュベーションの結果、培養培地中にFFAおよびグリセロールの放出の増強が導かれた(Shimamura et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun.、2003、301、604−609)。
【0013】
インスリン−欠損状態をモデル化するストレプトゾトシン−処置マウス(STZ)およびインスリン−抵抗性糖尿病状態をモデル化するdb/dbマウスを用いる研究では、対照動物と比較した場合に、より多量の肝臓アンジオポエチン様3が糖尿病マウスで認められた。両方の糖尿病モデルが高トリグリセリド血症を示し、また認められた高脂血症は、アンジオポエチン様3の発現の増加により少なくとも部分的に説明された。これらの結果は、アンジオポエチン様3は糖尿病と脂質異常症間のリンクであり、上昇が高脂血症を促進することを示唆した(Inukai et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun.、2004、317、1075−1079)。
【0014】
その後の研究が、その両方が代謝症候群のキープレイヤーであるレプチンおよびインスリンによるアンジオポエチン様3の制御を検証した。アンジオポエチン様3発現および血漿タンパク質レベルが、対照と比較してレプチン−耐性db/dbおよびレプチン−欠損ob/obマウスで増加した。ob/obマウスのレプチンによる補給により、アンジオポエチン様3レベルが減少した。発現の変化は、血漿のトリグリセリドおよび遊離脂肪酸のレベルの変化と関連していた。遺伝子発現および血漿タンパク質レベルは、インスリン−欠損STZ−処置マウスで増加した(Shimamura et al.、Biochem Biophys Res Commun、2004、322、1080−1085)。
【0015】
アンジオポエチンファミリーに属する数と一致して、組み換えアンジオポエチン様3タンパク質がαβインテグリンと結合することが見出され、また組み換えアンジオポエチン様3タンパク質がインテグリンαβ依存性の走触性(haptotactic)の内皮細胞の粘着および移動を誘導した。組み換えアンジオポエチン様3タンパク質はまた、インテグリン活性化に特徴があるシグナル伝達経路を刺激した。ラット角膜血管新生分析で、アンジオポエチン様3は血管新生を強力に誘導した(Camenisch et al.、J. Biol. Chem.、2002、277、17281−17290)。
【0016】
血漿のHDL、LDL、およびトリグリセリドの濃度に関連する通常の変異体に関するゲノムを調査するゲノムワイド関連研究(GWAS)は、いくつかのグループが始めたものである。GWAS研究は、トリグリセリドとANGPTL3に近接した単一ヌクレオチド多型(SNP)との関連を見出した(Willer et al.、Nature Genetics、2008、40(2):161−169)。
【0017】
米国特許第7,267,819号、米国特許出願第12/128,545号、および米国特許出願第12/001,012号が、アンジオポエチン様3アゴニストおよびアンタゴニストについて一般的に記載している。
【0018】
国際公開第02101039号(欧州特許第02733390号)および国際公開第0142499号(米国特許出願番号第10/164,030号)は、マウスアンジオポエチン様3に相補的な核酸配列を記述している(Ryuta、2002; Ryuta、2001)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Sindelka et al.、Physiol Res.、2002、51、85−91
【非特許文献2】Valdivielso et al.、2009、Atherosclerosis. 207(2):573−8
【非特許文献3】Zhang et al.、2008、Circ Res. 1;102(2):250−6
【非特許文献4】Kaplan et al.、J. Lipid Res.、2003、44、136−143
【非特許文献5】Conklin et al.、Genomics、1999、62、477−482
【非特許文献6】Koishi et al.、Nat. Genet.、2002、30、151−157
【非特許文献7】Shimizugawa et al.、J. Biol. Chem.、2002、277、33742−33748
【非特許文献8】Kaplan et al.、J. Lipid Res.、2003、44、136−143
【非特許文献9】Inaba et al.、J. Biol. Chem.、2003、278、21344−21351
【非特許文献10】Shimamura et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun.、2003、301、604−609
【非特許文献11】Inukai et al.、Biochem. Biophys. Res. Commun.、2004、317、1075−1079
【非特許文献12】Shimamura et al.、Biochem Biophys Res Commun、2004、322、1080−1085
【非特許文献13】Camenisch et al.、J. Biol. Chem.、2002、277、17281−17290
【非特許文献14】Willer et al.、Nature Genetics、2008、40(2):161−169
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第7,267,819号
【特許文献2】米国特許出願第12/128,545号
【特許文献3】米国特許出願第12/001,012号
【特許文献4】国際公開第02101039号
【特許文献5】国際公開第0142499号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
現在、心臓血管系障害および代謝障害を治療するための許容できる選択肢が不足している。したがって、この疾患および障害の治療のための化合物および方法を提供することが本明細書での目的である。
【0022】
アンジオポエチン様3の脂質代謝での潜在的役割が研究のための格好な対象とする。アンチセンス技術は、ある遺伝子産物の発現を低減させる効果的な手段として浮上しており、したがってアンジオポエチン様3のための複数の治癒的、診断的、および研究用途に比類なく有用であることが判明し得る。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、RNaseH、RNAi、dsRNA酵素等のアンチセンス作用機序および標的分解または標的占有に基づくその他のアンチセンス機序を介した遺伝子発現および関連経路の調節に有用なアンチセンス化合物に関する。
【0024】
本発明は、ANGPTL3の発現を阻害してANGPTL3に関連する疾患、状態、またはその症状を処置、防止、遅延、または改善するための方法、化合物、および組成物に関する。特定の実施形態では、ANGPTL3に関連する疾患または状態は心血管系疾患または代謝疾患である。
【0025】
特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物は、ANGPTL3を標的をする(CETPへとターゲティングされた)10〜30個のヌクレオシドが連結された長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む。ANGPTL3標的は、配列番号1〜5のいずれか1つから選択される配列を有し得る。ANGPTL3を標的とする修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号1〜5の同じ長さの部分(portion)に相補的な少なくとも8個の連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有し得る。ANGPTL3を標的とする修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号34〜182のいずれかから選択される核酸塩基配列の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有し得る。修飾オリゴヌクレオチドは、配列番号34〜182のいずれか1つに記載される配列から選択される核酸塩基配列の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有し得る。修飾オリゴヌクレオチドの連続核酸塩基部分は、配列番号1〜5のいずれか1つから選択されるANGPTL3領域の同じ長さの部分に相補的であり得る。ANGPTL3領域は、領域22〜52、116〜145、637〜720、953〜983、1333〜1469および1463−1489の1つ以上から選択され得る。
【0026】
特定の実施形態では、本明細書に記載のANGPTL3を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物に投与することを含む、動物においてANGPTL3の発現を低下させる方法が提供される。
【0027】
特定の実施形態では、本明細書に記載のANGPTL3を標的とする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物に投与することを含む、動物においてApoC−IIIの発現、トリグリセライドのレベル、コレステロールのレベル、低密度リポタンパク質(LDL)またはグルコースのレベルを低下させる方法が提供され、その方法において、修飾オリゴヌクレオチドは動物においてANGPTL3の発現を低下させる。
【0028】
特定の実施形態では、本明細書に記載のANGPTL3を標的をする修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物に投与することを含む、動物において心血管系疾患または代謝性疾患を改善する方法が提供され、その方法において、修飾オリゴヌクレオチドは動物においてANGPTL3の発現を低下させる。
【0029】
特定の実施形態では、1)心血管系疾患または代謝性疾患を有する動物を同定すること、および2)20個の連結されたヌクレオシドからなり且つ修飾オリゴヌクレオチド全体にわたる測定で配列番号1〜5に少なくとも90%相補的な核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを含む治療有効量の化合物を動物に投与することにより、心血管系疾患または代謝性疾患を有する動物を処置することを含む、心血管系疾患または代謝性疾患を有する動物を処置する方法が提供される。特定の実施形態では、動物に投与される治療有効量の化合物は、動物において心血管系疾患または代謝性疾患を軽減する。
【0030】
特定の実施形態では、本明細書に記載の修飾オリゴヌクレオチドを含むANGPTL3阻害剤を投与することにより、ヒトにおいてANGPTL3のレベル、LDLのレベル、ApoC‐IIIのレベル、トリグリセライドのレベル、コレステロールのレベル、グルコースのレベル、脂肪パッド重量、心血管系疾患および代謝疾患の1つ以上を低減させる方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
上記の概括的な説明および以下の詳細な説明はどちらも例示的および説明的なものでしかなく、特許請求されている発明を制限するものではないと理解されるべきである。本明細書において、特に断りのない限り、単数形の使用は複数を含む。本明細書において、特に断りのない限り、「または」、「若しくは」、「あるいは」は「および/または」を意味する。更に、「含む」という用語および「含まれる」等の他の形態の使用は、限定するものではない。また、特に断りのない限り、「エレメント」または「構成要素」等の用語は1ユニットを含むエレメントおよび構成要素並びに2つ以上のサブユニットを含むエレメントおよび構成要素の両方を包含する。
【0032】
本明細書中で使用される項目見出しは構成のみを目的とし、記載されている主題を限定するものと解釈されるべきではない。本出願中で引用される全ての文献、文献の一部、例えば、限定されるものではないが、特許、特許出願、論文、書籍、および条約を、本明細書中で議論されている文献部分および文献全体について明言的に参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
定義
特別に定義しない限り、本明細書に記載する分析化学、合成有機化学、並びに薬化学および製薬化学に関連して用いた命名法、並びに手順および技術は、当該技術分野で周知の一般に用いられているものである。化学合成および化学的分析には標準技術を用いることができる。許される場合には、全ての特許、出願、公開出願、およびその他の刊行物、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)等のデータベースを介して入手可能なGENBANK受託番号および関連する配列情報、並びに本明細書の開示中で参照されるその他のデータを、本明細書中で議論されている文献部分および文献全体に関して参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
特に断りのない限り、以下の用語は以下の意味である。
【0035】
「2’−O−メトキシエチル」(2’−MOEおよび2’−O(CH−OCHともいう)とは、フロシル(furosyl)環の2’位のO−メトキシ−エチル修飾を意味する。2’−O−メトキシエチル修飾された糖は修飾糖である。
【0036】
「2’−O−メトキシエチルヌクレオチド」とは、2’−O−メトキシエチル修飾糖部分を含むヌクレオチドを意味する。
【0037】
「3’標的部位」とは、特定のアンチセンス化合物の最も3’側のヌクレオチドに相補的な、標的核酸のヌクレオチドを意味する。
【0038】
「5’標的部位」とは、特定のアンチセンス化合物の最も5’側のヌクレオチドに相補的な、標的核酸のヌクレオチドを意味する。
【0039】
「5−メチルシトシン」とは、5’位に付加されたメチル基で修飾されたシトシンを意味する。5−メチルシトシンは修飾核酸塩基である。
【0040】
「約」とは、ある値の±10%以内を意味する。例えば、「マーカーは約50%増加し得る」と記載されている場合、これはマーカーが45%〜55%増加し得ることを意味する。
【0041】
「活性薬剤(active pharmaceutical agent)」とは、個体に投与された時に治療効果を与える医薬組成物中の物質を意味する。例えば、特定の実施形態では、CETPを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドが活性薬剤である。
【0042】
「活性標的領域」または「標的領域」とは、1つ以上の活性アンチセンス化合物の標的となる領域を意味する。
【0043】
「活性アンチセンス化合物」とは、標的の核酸レベルまたはタンパク質レベルを低下させるアンチセンス化合物を意味する。
【0044】
「脂肪生成」とは、前脂肪細胞からの脂肪細胞の発達を意味する。「脂質生成」とは、脂肪の生産または形成、脂肪変性または脂肪浸潤のいずれかを意味する。
【0045】
「肥満症(Adiposity)または「肥満(obesity)」とは、肥満である状態または除脂肪体重と比べて体脂肪若しくは脂肪組織が過剰量であることを意味する。体脂肪の量には、体全体における脂肪の分布並びに脂肪組織沈着物のサイズおよび質量の両方に関する問題が含まれる。体脂肪分布は、皮下脂肪測定、ウエストとヒップの外周比、または超音波、コンピュータ断層撮影法、若しくは磁気共鳴画像法等の技術により推定することができる。疾病管理予防センターによれば、肥満度指数(BMI)が30以上の個体が肥満と見なされる。本発明において、「肥満」という用語は、体内に脂肪組織が過剰に蓄積されることにより身体に必要な量を超えて体脂肪が増加している状態を含む。「肥満」という用語は、限定されるものではないが、以下の状態を含む:成人発症型肥満;食事性肥満;内因性または代謝性の肥満;内分泌性肥満;家族性肥満;高インスリン肥満;過形成―肥大性肥満;機能低下性肥満;甲状腺機能低下性肥満;生涯肥満;病的肥満;および外因性肥満。
【0046】
「同時に投与」とは、両方の薬理学的効果が同時に患者に現れるような任意の様式での2つの薬剤の共投与を意味する。同時投与は、単一の医薬組成物、同じ製剤、または同じ投与経路で両方の薬剤が投与されることを必要としない。両方の薬剤の効果は同時に発現しなくてもよい。効果は、ある期間重複するだけでよく、同じ期間続く必要はない。
【0047】
「投与する」とは、動物に薬剤を与えることを意味し、限定されるものではないが、医療従事者による投与および自己投与を含む。
【0048】
「薬剤(agent)」とは、動物に投与された時に治療上の利点を与え得る活性物質を意味する。「第1の薬剤」とは、本発明の治療化合物を意味する。例えば、第1の薬剤は、ANGPTL3を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。「第2の薬剤」とは、本発明の第2の治療化合物(例えば、ANGPTL3を標的とする第2のアンチセンスオリゴヌクレオチド)および/または非ANGPTL3治療化合物を意味する。
【0049】
「改善(amelioration)」とは、関連する疾患、障害、または状態の少なくとも1つの指標、兆候、または症状の軽減を意味する。指標の重度は、当業者に公知の主観的または客観的尺度により決定することができる。
【0050】
「ANGPTL3」とは、ANGPTL3の任意の核酸またはタンパク質を意味する。
【0051】
「ANGPTL3の発現」とは、ANGPTL3をコードする遺伝子から転写されたmRNAのレベル、またはmRNAから翻訳されたタンパク質のレベルを意味する。ANGPTL3の発現は、ノーザンブロットまたはウエスタンブロット等の当該技術分野において周知の方法により測定できる。
【0052】
「ANGPTL3核酸」とは、ANGPTL3をコードする任意の核酸を意味する。例えば、特定の実施形態では、ANGPTL3核酸にはANGPTL3をコードするDNA配列、ANGPTL3をコードするDNA(イントロンおよびエクソンを含むゲノムDNAを包含する)から転写されるRNA配列、およびANGPTL3をコードするmRNAが含まれる。「ANGPTL3mRNA」とはANGPTL3タンパク質をコードするmRNAを意味する。
【0053】
「動物」とは、ヒトまたは非ヒト動物、限定されるものではないが例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、並びに非ヒト霊長類、限定されるものではないが例えばサルおよびチンパンジーを意味する。
【0054】
「アンチセンス活性」とは、標的核酸へのアンチセンス化合物のハイブリダイゼーションに起因する任意の検出可能なまたは測定可能な活性を意味する。特定の実施形態では、アンチセンス活性は、標的核酸またはそのような標的核酸によりコードされるタンパク質の量または発現の低下である。
【0055】
「アンチセンス化合物」とは、水素結合を介して標的核酸にハイブリダイゼーションすることができるオリゴマー化合物を意味する。
【0056】
「アンチセンス阻害」とは、アンチセンス化合物非存在下における標的核酸レベルまたは標的タンパク質レベルと比べた、標的核酸に相補的なアンチセンス化合物存在下における標的核酸レベルまたは標的タンパク質レベルの低下を意味する。
【0057】
「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、標的核酸の対応する領域またはセグメントへのハイブリダイゼーションを可能にする核酸塩基配列を有する一本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0058】
「ApoB含有リポプロテイン」とは、そのタンパク質構成要素としてアポリポプロテインBを有する任意のリポプロテインを意味し、LDL、VLDL、IDL、およびリポプロテイン(a)を含むと理解され、一般的に、脂質を下げる薬剤または療法の標的となり得る。「ApoB−100−含有LDL」とは、ApoB−100アイソフォームを含有するLDLを意味する。
【0059】
「アテローム性動脈硬化症」とは、大および中サイズの動脈に影響する動脈の硬化を意味し、脂肪沈着物の存在を特徴とする。脂肪沈着物は、「アテローム」または「プラーク」と呼ばれ、これは主にコレステロールおよびその他の脂肪、カルシウム、および瘢痕組織からなり、動脈の内張り(lining)にダメージを与える。
【0060】
「二環式糖(bicyclic sugar)」とは、2個の非ジェミナル環原子の架橋により修飾されたフロシル環を意味する。二環式糖は修飾糖である。
【0061】
「二環式核酸(bicyclic nucleic acid)」または「BMA」とは、ヌクレオシドまたはヌクレオチドのフラノース部分がフラノース環上の2個の炭素原子を連結する架橋を含むことで二環式の環系を形成しているヌクレオシドまたはヌクレオチドを意味する。
【0062】
「キャップ構造」または「末端キャップ部分」とは、アンチセンス化合物のいずれかの末端に導入された化学修飾を意味する。
【0063】
「心血管系疾患」または「心血管系障害」とは、心臓、血管、または循環に関係する一群の状態を意味する。心血管系疾患または障害の例としては、限定されるものではないが、動脈瘤、アンギナ、不整脈、アテローム性動脈硬化症、脳血管疾患(脳卒中)、冠動脈心疾患、高血圧、脂質異常症、高脂血症、および高コレステロール血症が含まれる。
【0064】
「化学的に異なる領域(chemically distinct regeion)」とは、同じアンチセンス化合物の別の領域と何らかの点で化学的に異なるアンチセンス化合物の領域を意味する。例えば、2’−O−メトキシエチルヌクレオチドを有する領域は、2’−O−メトキシエチル修飾のないヌクレオチドを有する領域とは化学的に異なる。
【0065】
「キメラアンチセンス化合物」とは、少なくとも2つの化学的に異なる領域を有するアンチセンス化合物を意味する。
【0066】
「共投与(co−administration)とは、個体への2つ以上の薬剤の投与を意味する。2つ以上の薬剤は、単一の医薬組成物であってもよく、別々の医薬組成物であってもよい。2つ以上の薬剤のそれぞれは、同じ投与経路で投与されてもよく、異なる投与経路で投与されてもよい。共投与は、並行投与または逐次投与を包含する。
【0067】
「コレステロール」とは、全動物組織の細胞膜中に見られるステロール分子である。コレステロールは、動物の血漿中で、超低比重リポプロテイン(VLDL)、中間比重リポプロテイン(IDL)、低比重リポプロテイン(LDL)、および高比重リポプロテイン(HDL)等のリポプロテインにより輸送される必要がある。「血漿コレステロール」とは、血漿または血清中に存在する、全てのリポプロテイン(VDL、IDL、LDL、HDL)でエステル化されたおよび/またはエステル化されていないコレステロールの和を意味する。
【0068】
「コレステロール吸収阻害剤」とは、食事から得られる外因性コレステロールの吸収を阻害する薬剤を意味する。
【0069】
「相補性」とは、第1の核酸と第2の核酸の核酸塩基間における対形成能を意味する。特定の実施形態では、第1および第2の核酸間の相補性は、2つのDNA鎖間、2つのRNA鎖間、またはDNA鎖とRNA鎖の間のものであり得る。特定の実施形態では、一方の鎖の核酸塩基の一部が、他方の鎖の相補的水素結合塩基にマッチする。特定の実施形態では、一方の鎖上の全核酸塩基が、他方の鎖の相補的水素結合塩基にマッチする。特定の実施形態では、第1の核酸はアンチセンス化合物であり、第2の核酸は標的核酸である。特定のそのような実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドが第1の核酸であり、標的核酸が第2の核酸である。
【0070】
「連続核酸塩基」とは、互いにすぐ隣接している核酸塩基を意味する。
【0071】
「冠動脈心疾患(CHD)」とは、心臓に血液および酸素を供給する小血管の狭窄を意味し、これは多くの場合アテローム性動脈硬化症により生じる。
【0072】
「デオキシリボヌクレオチド」とは、ヌクレオチドの糖部分の2’位に水素を有するヌクレオチドを意味する。デオキシリボヌクレオチドは、種々の置換基のいずれかで修飾され得る。
【0073】
「真性糖尿病」または「糖尿病」とは、不十分なインスリン濃度またはインスリン感受性の低下による代謝異常および異常に高い血糖(高血糖症)を特徴とする症候群である。特徴的な症状は、高血糖値による過剰な尿生成(多尿症)、排尿増加を補おうとする過剰な渇きおよび水分摂取の増加(多飲症)、高血糖の目への影響による視朦、原因不明の体重減少、および嗜眠である。
【0074】
「糖尿病性脂質異常症」または「脂質異常症を伴う2型糖尿病」とは、2型糖尿病、HDL−Cの減少、トリグリセリドの増加、および小粒子LDL粒子の増加を特徴とする状態を意味する。
【0075】
「希釈剤」とは、組成物中の、薬理学的活性を有さないが薬学的に必要であるか望ましい成分を意味する。例えば、注射される組成物中の希釈剤は液体、例えば食塩水であり得る。
【0076】
「脂質異常症」とは、脂質および/またはリポプロテイン代謝の障害、例えば脂質および/またはリポプロテインの過剰生成または欠乏を意味する。脂質異常症は、コレステロールおよびトリグリセリド等の脂質並びに低比重リポプロテイン(LDL)コレステロール等のリポプロテインの増加により顕在化し得る。
【0077】
「投薬単位(dosage unit)」とは、医薬剤が提供される形態、例えばピル、錠剤、または当該技術分野で公知その他の投薬単位を意味する。特定の実施形態では、投薬単位は、凍結乾燥されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むバイアルである。特定の実施形態では、投薬単位は、再構成されたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むバイアルである。
【0078】
「用量(dose)」とは、1回の投与で与えられるまたは特定の期間中に与えられる特定の量の医薬剤を意味する。特定の実施形態では、用量は、1、2、またはそれ以上のボーラス、錠剤、または注射で投与され得る。例えば、皮下投与が望ましい特定の実施形態では、所望の用量は、1回の注射に含めることが容易でない体積が必要となるため、所望の用量を達成するために2回以上の注射を用いてもよい。特定の実施形態では、医薬剤は、長期間にわたるまたは連続的な注入より投与される。用量は、時間、日、週、または月当たりの医薬剤の量として記載され得る。用量は、mg/kgまたはg/kgで表され得る。
【0079】
「有効量」または「治療有効量」とは、医薬剤を必要とする個体において所望の生理学的結果を達成するのに十分な活性薬剤の量を意味する。有効量は、処置される個体の健康および体調、処置される個体の分類学的群、組成物の処方、個体の医学的状態の評価、並びにその他の関連因子に応じて個体間で変わり得る。
【0080】
「完全に相補的」または「100%相補的」とは、第1の核酸の核酸塩基配列の各核酸塩基が第2の核酸の第2の核酸塩基配列中に相補的な核酸塩基を有することを意味する。特定の実施形態では、第1の核酸はアンチセンス化合物であり、標的核酸は第2の核酸である。
【0081】
「ギャップマー」とは、RNase H切断を支援する複数のヌクレオシドを有する内部領域が、1つ以上のヌクレオシドを有する外部領域間に位置し、内部領域を含むヌクレオシドが、外部領域を含むヌクレオシドと化学的に異なる、キメラアンチセンス化合物を意味する。内部領域を「ギャップセグメント」、外部領域を「ウィングセグメント」と呼ぶこともある。
【0082】
「ギャップ拡張(gap−widened)」とは、1〜6個のヌクレオシドを有する5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントの間でこれらにすぐ隣接して位置する12つ以上の連続する2’−デオキシリボヌクレオシドを有するギャップセグメントを有するキメラアンチセンス化合物を意味する。
【0083】
「グルコース」とは、エネルギー源および代謝性中間体として細胞に使用される単糖である。「血漿グルコース」とは、血漿中に存在するグルコースを意味する。
【0084】
「高比重リポプロテイン−C(HDL−C)」とは、高比重リポプロテイン粒子に結合したコレステロールを意味する。血清(または血漿)中のHDL−Cの濃度は通常、mg/dLまたはnmol/Lで定量化される。「血清HDL−C」および「血漿HDL−C」とは、それぞれ血清および血漿中のHDL−Cを意味する。
【0085】
「HMG−CoA還元酵素阻害剤」とは、酵素HMG−CoA還元酵素の阻害を介して作用する薬剤、例えばアトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、およびシンバスタチンを意味する。
【0086】
「ハイブリダイゼーション」とは、相補的核酸分子のアニーリングを意味する。特定の実施形態では、相補的核酸分子は、アンチセンス化合物および標的核酸を含む。
【0087】
「高コレステロール血症」とは、Expert Panel Report of the National Cholesterol Educational Program (NCEP) of Detection, Evaluation of Treatment of high cholesterol in adults (Arch. Int. Med. (1988) 148, 36−39参照)の指針通り、コレステロールまたは循環(血漿)コレステロール、LDL−コレステロール、およびVLDL−コレステロールの上昇を特徴とする状態を意味する。
【0088】
「高脂血症」または「高脂質血症(hyperlipemia)」とは、血清脂質または循環(血漿)脂質の上昇を特徴とする状態である。この状態は、異常に高濃度の脂質を呈する。循環血液中の脂質画分はコレステロール、低比重リポプロテイン、超低比重リポプロテイン、およびトリグリセリドである。
【0089】
「高トリグリセリド血症」とは、高いトリグリセリド濃度を特徴とする状態を意味する。
【0090】
「代謝性または心血管系の疾患を有する対象を同定する」または選択する」とは、代謝性疾患、心血管系疾患、またはメタボリックシンドロームを診断された対象を同定または選択すること;あるいは、代謝性疾患、心血管系疾患、またはメタボリックシンドロームの何らかの症状、例えば、限定されるものではないが、高コレステロール血症、高血糖症、高脂血症、高トリグリセリド血症、高血圧、インスリン抵抗性の上昇、インスリン感受性の低下、通常より多い体重、および/または通常より高い体脂肪量、またはその任意の組合せを有する対象を同定または選択することを意味する。そのような同定は、任意の方法、例えば、限定されるものではないが、標準的な臨床検査または評価、例えば血清または循環(血漿)コレステロールの測定、血清または循環(血漿)血糖の測定、血清または循環(血漿)トリグリセリドの測定、血圧の測定、体脂肪量の測定、体重の測定等により実現され得る。
【0091】
「糖尿病の対象を同定する」または「糖尿病の対象を選択する」とは、糖尿病と同定された対象を同定または選択すること、あるいは、糖尿病(1型または2型)の何らかの症状、例えば、限定されるものではないが、少なくとも110mg/dLの空腹時血糖、多尿、多渇症、インスリン抵抗性の上昇、および/またはインスリン感受性の低下を有する対象を同定または選択することを意味する。
【0092】
「肥満の対象を同定する」または「肥満の対象を選択する」とは、肥満と診断された対象を同定または選択すること、あるいは、30超のBMIおよび/または男性においては102cm超の胴周りもしくは女性においては88cm超の胴周りを有する対象を同定または選択することを意味する。
【0093】
「脂肪異常症を有する対象を同定する」または「脂肪異常症を有する対象を選択する」とは、脂質および/またはリポタンパク質の過剰生産または欠乏を含む、脂質および/またはリポタンパク質代謝の障害と診断された対象を同定または選択することを意味する。脂質異常症は、コレステロールおよびトリグリセライド等の脂質並びに低密度リポタンパク質(LDL)コレステロール等のリポタンパク質の上昇が認められ得る。
【0094】
「脂肪増加を有する対象を同定する」または「脂肪増加を有する対象を選択する」とは、全身に渡る脂肪の分布並びに脂肪組織沈着の大きさおよび質量の1つまたは両方に対する懸念を含む体脂肪量の増加(または肥満)を有する対象を同定または選択することを意味する。体脂肪分布は、皮下脂肪測定、ウエスト/ヒップ比、または超音波、コンピュータトモグラフィー、もしくは磁気共鳴画像法等の技術により推定され得る。疾病管理予防センターによれば、肥満度指数(BMI)が30以上である個人は肥満と見なされる。
【0095】
「心血管転帰の向上」とは、心血管の有害事象の発生またはそのリスクの低減を意味する。心血管有害事象の例としては、限定されるものではないが、死亡、再梗塞、脳卒中、心原性ショック、肺水腫、心停止、および心房律動異常が含まれる。
【0096】
「すぐ隣接した」とは、すぐ隣接したエレメント間に介在するエレメントがないことを意味する。
【0097】
「個体」または「対象」または「動物」とは、処置または治療に選択されたヒトまたは非ヒト動物を意味する。
【0098】
「発現または活性を阻害する」とは、発現または活性の低下または遮断を意味し、必ずしも発現または活性の完全な消失を示すものではない。
【0099】
「インスリン抵抗性」とは、細胞、例えば、脂肪細胞、筋細胞、および/または肝臓細胞から正常なインスリン反応を得るのに通常の量のインスリンでは不十分である状態として定義される。脂肪細胞におけるインスリン抵抗性は、貯蔵トリグリセリドの加水分解を引き起こし、血漿中の遊離脂肪酸を増加させる。筋肉中におけるインスリン抵抗性はグルコースの取込みを減らすが、肝臓におけるインスリン抵抗性はグルコースの貯蔵を減らし、どちらの影響も血糖を上昇させる。インスリン抵抗性による高血漿濃度のインスリンおよびグルコースはメタボリックシンドロームおよび2型糖尿病を招くことが多い。
【0100】
「インスリン感受性」とは、個体がグルコースをどれだけ効果的に処理するかの尺度である。インスリン感受性の高い個体はグルコースを効果的に処理するが、インスリン感受性の低い個体はグルコースを効果的に処理しない。
【0101】
「ヌクレオシド間結合」とは、ヌクレオシド間の化学結合を意味する。
【0102】
「静脈内投与」とは、静脈中への投与を意味する。
【0103】
「連結されたヌクレオシド」とは、結合された隣接ヌクレオシドを意味する。
【0104】
「脂質低下」とは、対象における1種類以上の脂質の低下を意味する。脂質低下は、ある期間にわたり1つ以上の投薬によって起こり得る。
【0105】
「脂質低下剤」とは、例えば、対象において脂質の低下を達成するために対象に与えられる、ANGPTL3特異的修飾物質を意味する。例えば、特定の実施形態では、脂質低下剤は、対象においてapoB、apoC3、総コレステロール、LDL−C、VLDL−C、IDL−C、非HDL−C、トリグリセリド、小粒子LDL粒子、およびLp(a)の1つ以上を低減するために対象に与えられる。「脂質低下療法」とは、対象において1種類以上の脂質を低減するために対象に与えられる治療レジメンを意味する。特定の実施形態では、脂質低下療法は、対象においてapoB、apoC−III、総コレステロール、LDL−C、VLDL−C、IDL−C、非HDL−C、トリグリセリド、小粒子LDL粒子、およびLp(a)の1つ以上を低減するために与えられる。
【0106】
「リポプロテイン」、例えばVLDL、LDL、およびHDLとは、血清、血漿、およびリンパ中に見られる一群のタンパク質を意味し、脂質輸送に重要である。各リポプロテインの化学的組成は、HDLでは脂質に対するタンパク質の比率が高いがVLDLでは脂質に対するタンパク質の比率が低い点で異なる。
【0107】
「低比重リポプロテイン−コレステロール(LDL−C)」とは、低比重リポプロテイン粒子中で運搬されているコレステロールを意味する。血清(血漿)中のLDL−C濃度は一般的にmg/dLまたはnmol/Lで定量化される。「血清LDL−C」および「血漿LDL−C」とは、それぞれ血清および血漿中のLDL−Cを意味する。
【0108】
「主要危険因子」とは、特定の疾患または状態に対する高いリスクの一因となる因子を意味する。特定の実施形態では、冠動脈心疾患の主要危険因子として、限定されるものではないが、喫煙、高血圧、低HDL−C、冠動脈心疾患の家族歴、年齢、および本明細書に開示されているその他の因子が含まれる。
【0109】
「代謝障害」または「代謝性疾患」とは、代謝機能の変化または障害を特徴とする状態を意味する。「代謝性」および「代謝」は当該技術分野で周知の用語であり、一般的に、生きた生物内で起こる全範囲の生化学的プロセスを含む。代謝障害には、限定されるものではないが、高血糖症、糖尿病前症、糖尿病(1型および2型)、肥満、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、および2型糖尿病による脂質異常症が含まれる。
【0110】
「メタボリックシンドローム」とは、代謝起源の脂質および脂質でない心血管系危険因子のクラスタリングを特徴とする状態を意味する。特定の実施形態では、メタボリックシンドロームは、以下の因子のいずれか3つの存在により同定される:腹囲が男性で102cm超、女性で88cm超;血清トリグリセリドが少なくとも150mg/dL;HDL−Cが男性で40mg/dL未満、女性で50mg/dL未満;血圧が少なくとも130/85mmHg;および空腹時血糖が少なくとも110mg/dL。これらの決定因子は診療により容易に測定可能である(JAMA, 2001, 285: 2486−2497)。
【0111】
「ミスマッチ」または「非相補的核酸塩基」とは、第1の核酸の核酸塩基が第2または標的の核酸の対応する核酸塩基と対形成できない場合を意味する。
【0112】
「混合型脂質異常症」とは、コレステロールの上昇およびトリグリセリドの上昇を特徴とする状態を意味する。
【0113】
「修飾ヌクレオシド間結合」とは、天然のヌクレオシド間結合(すなわちホスホジエステルヌクレオシド間結合)からの置換または任意の変化を意味する。
【0114】
「修飾核酸塩基」とは、アデニン、シトシン、グアニン、チミジン、またはウラシル以外の任意の核酸塩基を意味する。「非修飾核酸塩基」とは、プリン塩基のアデニン(A)およびグアニン(G)、並びにピリミジン塩基のチミン(T)、シトシン(C)、およびウラシル(U)を意味する。
【0115】
「修飾ヌクレオシド」とは、独立して、1つ以上の修飾糖部分または修飾核酸塩基を有するヌクレオシドを意味する。
【0116】
「修飾ヌクレオチド」とは、独立して、1つ以上の修飾糖部分、修飾ヌクレオシド間結合、または修飾核酸塩基を有するヌクレオチドを意味する。「修飾ヌクレオシド」とは、独立して、1つ以上の修飾糖部分または修飾核酸塩基を有するヌクレオシドを意味する。
【0117】
「修飾オリゴヌクレオチド」とは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドを意味する。
【0118】
「修飾糖」とは、天然糖からの置換または変化を意味する。
【0119】
「モチーフ」とは、アンチセンス化合物中の化学的に異なる領域のパターンを意味する。
【0120】
「MTP阻害剤」とは、酵素、ミクロソームトリグリセリド転送タンパク質を阻害する薬剤を意味する。
【0121】
「天然ヌクレオシド間結合」とは、3’→5’ホスホジエステル結合を意味する。
【0122】
「天然糖部分」とは、DNA(2’−H)またはRNA(2’−OH)中に見出される糖を意味する。
【0123】
「非アルコール性脂肪性肝疾患」または「NAFLD」とは、アルコールの過剰摂取(例えばアルコール消費量が20g/日を超える)によるものでない肝臓の脂肪炎症を特徴とする状態を意味する。特定の実施形態では、NAFLDは、インスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームに関連する。NAFLDには、単純な幹細胞中へのトリグリセリド蓄積(脂肪肝)から炎症を伴う脂肪肝(脂肪性肝炎)、線維症、硬変症までにわたる疾患が含まれる。
【0124】
「非アルコール性脂肪性肝炎」(NASH)は、NAFLDがトリグリセリドの沈着から更に進行して起こる。NASHの発症には、壊死、炎症、繊維症を誘導できる「second hit」が必要である。second hitの候補は、酸化ストレスの増加を起こす因子および炎症促進性サイトカインの発現を促進する因子の広いカテゴリーに分類することができる。肝臓トリグリセリドの増加により動物およびヒトの肝細胞において酸化的ストレスが引き起こされることが示されており、肝臓トリグリセリドの蓄積、酸化的ストレス、および脂肪肝のNASHへの進行の間に因果関係が潜在することが示唆される(Browning and Horton, J Clin Invest, 2004, 114, 147−152)。高トリグリセリド血症および高脂肪酸血症により、末梢組織においてトリグリセリドの蓄積が引き起こされ得る(Shimamura et al., Biochem Biophys Res Commun, 2004, 322, 1080−1085)。
【0125】
「核酸」とは、単量体ヌクレオチドで構成される分子を意味する。核酸には、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、一本鎖核酸、二本鎖核酸、低分子干渉リボ核酸(siRNA)、およびマイクロRNA(miRNA)が含まれる。核酸は1分子中にこれらのエレメントの組合せを含んでもよい。
【0126】
「核酸塩基」とは、別の核酸の塩基と対形成できるヘテロ環部分を意味する。
【0127】
「核酸塩基配列」とは、如何なる糖、結合、または核酸塩基修飾とも無関係の、連続核酸塩基の順番を意味する。
【0128】
「ヌクレオシド」とは、糖に連結した核酸塩基を意味する。
【0129】
「ヌクレオシド模倣物(nucleoside mimetic)」には、オリゴマー化合物の1つ以上の位置で糖または糖および塩基並びに必要に応じて結合を置換するために使用される構造が含まれ、例えば、モルホリノ、シクロヘキセニル、シクロヘキシル、テトラヒドロピラニル、ビシクロ、またはトリシクロ糖模倣物、例えば非フラノース糖単位、を有するヌクレオシド模倣物が含まれる。
【0130】
「ヌクレオチド」とは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合したリン酸基を有するヌクレオシドを意味する。
【0131】
「ヌクレオチド模倣物」は、例えばペプチド核酸またはモルホリノ(−N(H)−C(=O)−O−または他の非ホスホジエステル結合により連結されたモルホリノ)等の、オリゴマー化合物の1つ以上の位置でヌクレオシドおよび結合を置換するために使用される構造を含む。
【0132】
「オリゴマー化合物」または「オリゴマー」とは、2種以上のサブ構造を含み且つ核酸分子の領域にハイブリダイズできる高分子構造を意味する。特定の実施形態では、オリゴマー化合物は、オリゴヌクレオシドである。特定の実施形態では、オリゴマー化合物はオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、オリゴマー化合物はアンチセンス化合物である。特定の実施形態では、オリゴマー化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。特定の実施形態では、オリゴマー化合物はキメラオリゴヌクレオチドである。
【0133】
「オリゴヌクレオチド」とは、連結されたヌクレオシドのポリマーを意味し、各ヌクレオシドは互いに独立して修飾されていてもよく、修飾されていなくてもよい。
【0134】
「非経口投与」とは、消化管を介する以外の方法による投与を意味する。非経口投与は、局所投与、皮下投与、静脈内投与、筋肉内投与、動脈内投与、腹腔内投与、または頭蓋内投与、例えば髄腔内投与、または脳室内投与を含む。投与は、持続投与、慢性投与、短期間投与、または間欠投与であり得る。
【0135】
「ペプチド」とは、アミド結合により少なくとも2個のアミノ酸を連結することにより形成される分子を意味する。ペプチドとは、ポリペプチドおよびタンパク質を意味する。
【0136】
「医薬剤(pharmaceutical agent)」とは、個体に投与された時に治療上の利点をもたらす物質を意味する。例えば、特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドが医薬剤である。
【0137】
「医薬組成物」とは、個体への投与に適した物質の混合物を意味する。例えば、医薬組成物は、1つ以上の活性薬剤および無菌水溶液を含み得る。
【0138】
「薬学的に許容されるキャリア」とは、オリゴヌクレオチドの構造または機能に干渉しない媒体または希釈剤を意味する。特定のそのようなキャリアは、例えば対象による経口摂取のための錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー、懸濁液、およびトローチ剤として医薬組成物を製剤化することを可能にする。特定のそのようなキャリアは、注射または注入用に医薬組成物を製剤化することを可能にする。例えば、薬学的に許容されるキャリアは無菌水溶液であり得る。
【0139】
「薬学的に許容される塩」とは、アンチセンス化合物の生理学的および薬学的に許容される塩、すなわち元のオリゴヌクレオチドの所望の生物学的活性を保持しており、望ましくない毒性の影響を与えない塩を意味する。
【0140】
「ホスホロチオエート結合」とは、非架橋酸素原子の1つを硫黄原子で置換することによりホスホジエステル結合が修飾されているヌクレオシド間の結合を意味する。ホスホロチオエート結合は、修飾ヌクレオシド間結合である。
【0141】
「部分」とは、核酸の所定の数の連続(すなわち連結された)核酸塩基を意味する。特定の実施形態では、部分または一部は、標的核酸の所定の数の連続核酸塩基である。特定の実施形態では、部分または一部は、アンチセンス化合物の所定の数の連続核酸塩基である。
【0142】
「防止する」とは、数分から永久までの期間、疾患、障害、または状態の発症または発達を遅らせるまたは未然に防ぐことを意味する。防止するとは、疾患、障害、または状態を発達させるするリスクを低減することも意味する。
【0143】
「プロドラッグ」とは、体内またはその細胞中で内因性の酵素またはその他の化学物質若しくは条件の作用によって活性型に変換される不活性型で調製される治療薬剤を意味する。
【0144】
「副作用」とは、所望の効果以外の、処置に起因する生理学的反応を意味する。特定の実施形態では、副作用は、注射部位反応、肝機能検査異常、腎機能異常、肝毒性、腎毒性、中枢神経系異常、ミオパチー、および倦怠感を含む。例えば、血清中のアミノトランスフェラーゼ濃度の上昇は、肝毒性または肝機能異常を示し得る。例えば、ビリルビンの上昇は、肝毒性または肝機能異常を示し得る。
【0145】
「一本鎖オリゴヌクレオチド」とは、相補鎖にハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドを意味する。
【0146】
「特異的にハイブリダイズできる」とは、所望の効果を誘導するのに十分な程度の相補性を標的核酸との間に有しつつ、特異的結合が望まれる条件下、すなわちインビボアッセイおよび治療処置の場合の生理学的条件下で非標的核酸に対する影響が最低限であるか影響がないアンチセンス化合物を指す。
【0147】
「スタチン」とは、HMG−CoA還元酵素の活性を阻害する薬剤を意味する。
【0148】
「皮下投与」とは、皮膚の直下での投与を意味する。
【0149】
「標的とする」とは、標的核酸に特異的にハイブリダイズして所望の効果を誘導するアンチセンス化合物の設計および選択プロセスを意味する。
【0150】
「標的核酸」、「標的RNA」、および「標的RNA転写産物」は全て、アンチセンス化合物の標的となり得る核酸を指す。
【0151】
「標的領域」とは、少なくとも1つの同定可能な構造、機能、または特性を有する標的核酸の一部分と定義される。
【0152】
「標的セグメント」とは、1つ以上のアンチセンス化合物の標的となる、標的核酸のヌクレオチドの配列を意味する。「5’標的部位」とは、標的セグメントの最も5’側のヌクレオチドを指す。「3’標的部位」とは、標的セグメントの最も3’側のヌクレオチドを指す。
【0153】
「治療有効量」とは、個体に治療効果を与える薬剤の量を意味する。
【0154】
「治療的なライフスタイル変化」とは、脂肪/脂肪組織質量および/またはコレステロールを下げることを意図した食事およびライフスタイルの変化を意味する。そのような変化は心疾患を発達させるリスクを低減することができ、食事から摂取する一日の総カロリー、総脂肪、飽和脂肪、多価不飽和脂肪、一価不飽和脂肪、炭水化物、タンパク質、コレステロール、不溶性繊維についての推奨および身体活動についての推奨を含み得る。
【0155】
「トリグリセリド」とは、3個の脂肪酸分子と結合したグリセロールからなる脂質または中性脂肪を意味する。
【0156】
「2型糖尿病」(「2型真性糖尿病」、「インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)」、「肥満関連糖尿病」、または「成人発症型糖尿病」としても知られる)とは、インスリン抵抗性、相対的インスリン欠乏、および高血糖症を主な特徴とする代謝障害である。
【0157】
「処置する」とは、疾患、障害、または状態を変化または好転させるために医薬組成物を投与することを意味する。
【0158】
「非修飾ヌクレオチド」とは、天然の核酸塩基、糖部分、およびヌクレオシド間結合から構成されるヌクレオチドを意味する。特定の実施形態では、非修飾ヌクレオチドはRNAヌクレオチド(すなわちβ−D−リボヌクレオシド)またはDNAヌクレオチド(すなわちβ−D−デオキシリボヌクレオシド)である。
【0159】
特定の実施形態
特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物は、ANGPTL3を標的とする10〜30個のヌクレオシドが連結された長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む。ANGPTL3標的は、配列番号1〜5のいずれか1つから選択される配列を有し得る。
【0160】
特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物は、配列番号1〜5の同じ長さの部分に相補的な少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する10〜30ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む。
【0161】
特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物は、配列番号34〜182のいずれから選択される塩基配列の少なくとも8個の連続する核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する10〜30ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む。
【0162】
特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物は、10〜30個の連結されたヌクレオシドからなり、且つ配列番号34〜182のいずれか1つに記載の配列から選択される核酸塩基配列の少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個の連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを含む。
【0163】
特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物は修飾オリゴヌクレオチドの塩を含む。
【0164】
特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物は、薬学的に許容されるキャリアまたは希釈剤を更に含む。
【0165】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は、修飾オリゴヌクレオチドの全体を基準にした測定で配列番号1〜5のいずれか1つに少なくとも70%、80%、90%、95%、または100%相補的である。
【0166】
特定の実施形態では、本発明の化合物は一本鎖修飾オリゴヌクレオチドからなる。
【0167】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30個の連結されたヌクレオシドからなる。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは20個の連結されたヌクレオシドからなる。
【0168】
特定の実施形態では、前記修飾オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシド間結合は、修飾されたヌクレオシド間結合である。特定の実施形態では、各ヌクレオシド間結合はホスホロチオエートヌクレオシド間結合である。
【0169】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシドは修飾糖を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、テトラヒドロピラン環でフラノース環が置換された少なくとも1つのテトラヒドロピラン修飾ヌクレオシドを含む。特定の実施形態では、各テトラヒドロピラン修飾ヌクレオシドは、
【化1】


(式中、Bxは、保護されていてもよいヘテロ環塩基部分である)で表される。特定の実施形態では、少なくとも1つの修飾糖は二環式糖である。特定の実施形態では、少なくとも1つの修飾糖は、2’−O−メトキシエチルまたは4’(CH−O−2’架橋(式中、nは1または2である)を含む。
【0170】
特定の実施形態では、前記修飾オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシドは修飾核酸塩基を含む。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は5−メチルシトシンである。
【0171】
特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは、a)連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;b)連結されたヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;およびc)連結されたヌクレオシドからなる3’ウィングセグメントを含む。ギャップセグメントは、5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントの間に位置し、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドは修飾糖を含む。特定の実施形態では、修飾オリゴヌクレオチドは20個の連結されたヌクレオシドからなり、ギャップセグメントは10個の連結されたデオキシヌクレオシドからなり、5’ウィングセグメントは5個の連結されたヌクレオシドからなり、3’ウィングセグメントは5個の連結されたヌクレオシドからなり、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドは2’−O−メトキシエチル糖を含み、各ヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合である。
【0172】
特定の実施形態では、本発明の化合物または組成物は、配列番号1〜5の同じ長さの部分に相補的な少なくとも8個の連続核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する20個の連結されたヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含み、修飾オリゴヌクレオチドは、a)10個の連結されたデオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;b)5個の連結されたヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;およびc)5個の連結されたヌクレオシドからなる3’ウィングセグメントを含む。ギャップセグメントは5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントの間に位置し、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドは2’−O−メトキシエチル糖を含み、各ヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合であり、各シトシン残基は5−メチルシトシンである。
【0173】
特定の実施形態では、本発明の化合物又は組成物には、任意の配列番号34〜182から選択されるヌクレオ塩基配列の少なくとも8の隣接ヌクレオ塩基を含むヌクレオ塩基配列を有する、20の結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む。その中で、修飾オリゴヌクレオチドは、a)10の結合デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント、b)5つの結合ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント、及びc)5つの結合ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメントを含む。ギャップセグメントは、5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントとの間に位置し、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドは、2’−O−メトキシエチル糖を含み、各ヌクレオシド間結合はホスホロチオエート結合であり、及び各シトシン残基は5−メチルシトシンである。
【0174】
特定の実施形態では、ANGPTL3発現を阻害するための方法、化合物及び組成物を提供する。
【0175】
特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与することを含む、動物においてANGPTL3発現を低下させる方法を提供する。
【0176】
特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与することを含む、動物においてApoC−III発現を低下させる方法を提供する。
【0177】
特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物におけるトリグリセリドのレベルを低下させることを含む、動物においてトリグリセリド値を低下させる方法を提供する。
【0178】
特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって、動物においてコレステロールのレベルを低下させることを含む、動物におけるコレステロール値を低下させる方法を提供する。
【0179】
特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物において低密度リポタンパク質(LDL)のレベルを低下させることを含む、動物における低密度リポタンパク質(LDL)値を低下させる方法を提供する。
【0180】
特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物においてグルコースのレベルを低下させることを含む、動物におけるグルコース値を低下させる方法を提供する。
【0181】
特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物において代謝性疾患又は心血管系疾患を寛解させることを含む、動物における代謝性疾患又は心血管系疾患を寛解させる方法を提供する。
【0182】
特定の実施形態では、a)この動物をANGPTL3関連疾患又は状態と同定すること、及びb)ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物の治療的有効量を前記動物に投与することを含む、ANGPTL3関連疾患又は状態の動物を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、動物に投与する治療的有効量の化合物が、動物におけるANGPTL3関連疾患又は状態を低減する。
【0183】
特定の実施形態では、a)前記動物を代謝性疾患又は心血管系疾患と同定すること、及びb)20の結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含み、及び前記修飾オリゴヌクレオチド全体を測定し、配列番号1〜5に対して少なくとも90%相補的であるヌクレオ塩基配列を有する治療的有効量の化合物を前記動物に投与し、よって、代謝性疾患又は心血管系疾患を有する動物を治療することを含む、代謝性疾患又は心血管系疾患を有する動物を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、動物に投与する治療的有効量の化合物は、動物において代謝性疾患又は心血管系疾患を低減する。
【0184】
特定の実施形態では、20の結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含み、及び前記修飾オリゴヌクレオチドの全体を測定し、配列番号1〜5に対して少なくとも90%相補的であるヌクレオ塩基配列を有するANGPTL3阻害剤を投与することで、ヒトにおいて、ANGPTL3値、LDL値、apoC−III値、トリグリセリド値、コレステロール値、グルコース値、脂肪パッド量、心血管系疾患及び代謝性疾患のうち1つ以上を低下させる方法を提供する。
【0185】
特定の実施形態では、ANGPTL3発現を阻害するための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。
【0186】
特定の実施形態では、動物においてANGPTL3発現を低下させるための、本明細書に記載の化合物及び組成の利用を提供する。特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与することを含む。
【0187】
特定の実施形態では、動物においてApoC−III発現を低下させるための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物においてApoC−IIIの発現を低下させることを含む。
【0188】
特定の実施形態では、動物におけるトリグリセリド値を低下させるための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物においてトリグリセリド値を低下させることを含む。
【0189】
特定の実施形態では、動物におけるコレステロール値を低下させるための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30の結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物におけるコレステロール値を低下させることを含む。
【0190】
特定の実施形態では、動物において低密度リポタンパク質(LDL)値を低下させるための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物における低密度リポタンパク質(LDL)の値を低下させることを含む。
【0191】
特定の実施形態では、動物におけるグルコース値を低下させるための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物におけるグルコースの値を低下させることを含む。
【0192】
特定の実施形態では、動物における代謝性疾患又は心血管疾患を寛解させるための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。特定の実施形態では、ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を動物へ投与し、よって動物における代謝性疾患又は心血管疾患を寛解させることを含む。
【0193】
特定の実施形態では、本明細書に記載の治療用化合物及び組成物の利用を提供する。特定の実施形態では、ANGPTL3関連疾患又は状態の動物を治療するための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。特定の実施形態では、ANGPTL3関連疾患又は状態は、代謝性疾患又は心血管系疾患である。ある実施形態は、a)前記動物をANGPTL3関連疾患又は状態であると同定すること、及びb)ANGPTL3を標的とした、長さ10〜30結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含む治療的有効量の化合物を前記動物に投与することを含む。特定の実施形態では、動物に投与する治療的有効量の化合物が、動物においてANGPTL3関連疾患又は状態を低減する。
【0194】
特定の実施形態では、代謝性疾患又は心血管系疾患を有する動物を治療するための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。a)前記動物を代謝性疾患又は心血管系疾患を有すると同定すること、及びb)20の結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含み、前記修飾オリゴヌクレオチドの全体を測定し、配列番号1〜5に対して少なくとも90%相補的であるヌクレオ塩基配列を有する治療的有効量の化合物を前記動物に投与し、よって、代謝性疾患又は心血管系疾患を有する動物を治療することを含む。特定の実施形態では、治療的有効量の化合物を動物に投与すると、この動物において代謝性疾患又は心血管系疾患を低減させる。
【0195】
特定の実施形態では、20の結合ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含み、及び前記修飾オリゴヌクレオチドの全体を測定し、配列番号1〜5に対して少なくとも90%相補的であるヌクレオ塩基配列を有するANGPTL3阻害剤を投与することで、ヒトにおいて、ANGPTL3値、LDL値、apoC−III値、トリグリセリド値、コレステロール値、グルコース値、脂肪パッド量、心血管系疾患及び代謝性疾患のうち1つ以上を低下させるための、本明細書に記載の化合物及び組成物の利用を提供する。
【0196】
特定の実施形態では、ANGPTL3は遺伝子バンクアクセッション番号BG400407.1(本明細書では配列番号1として含める)に記載の配列を有する。特定の実施形態では、ANGPTL3は、遺伝子バンクアクセッション番号BG562555.1(本明細書では配列番号2として含める)に記載の配列を有する。特定の実施形態では、ANGPTL3は、遺伝子バンクアクセッション番号BG562798.1(本明細書では配列番号3として含める)に記載の配列を有する。特定の実施形態では、ANGPTL3は、遺伝子バンクアクセッション番号NM_014495.1(本明細書では配列番号4として含める)に記載の配列を有する。特定の実施形態では、ANGPTL3は、遺伝子バンクアクセッション番号NT_032977.5ヌクレオチド15511702〜15521082(本明細書では配列番号5として含める)に記載の配列を有する。特定の実施形態では、ANGPTL3は、遺伝子バンクアクセッション番号AF162224.1(本明細書では配列番号6として含める)に記載の配列を有する。特定の実施形態では、遺伝子バンクアクセッション番号AI195524.1(本明細書では配列番号7として含める)に記載の配列を有する。特定の実施形態では、ANGPTL3は、遺伝子バンクアクセッション番号BB717501.1(本明細書では配列番号8として含める)に記載の配列を有する。
【0197】
【表1】

【0198】
特定の実施形態では、動物はヒトである。
【0199】
特定の実施形態では、本発明の化合物又は組成物は、第1剤として指定され、本発明の方法又は利用には、第2剤としての投与がさらに含まれる。特定の実施形態では、第1剤及び第2剤を共投与する。特定の実施形態では、第1剤及び第2剤を連続して、又は同時に共投与する。
【0200】
特定の実施形態では、第2剤はグルコース降下薬である。グルコース降下薬には、治療的ライフスタイルの改善、PPAR抗体、ジペプチジルペプチダーゼ(IV)阻害剤、GLP−1類似体、インスリン若しくはインスリン類似体、インスリン分泌促進物質、SGLT2阻害剤、ヒトのアミリン類似体、ビグアニド、α−グルコシダーゼ阻害剤、又はそれらの組み合わせが含まれるがこれに限定されない。グルコース降下薬には、メトホルミン、スルホニル尿素、ロシグリタゾン、メグリチニド、チアゾリジンジオン、α−グルコシダーゼ阻害剤、又はそれらの組み合わせが含まれるがこれに限定されない。スルホニル尿素は、アセトヘキサミド、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、又はグリクラジドであり得る。メグリチニドは、ナテグリニド又はレパグリニドであり得る。チアゾリジンジオンは、ピオグリタゾン又はロシグリタゾンであり得る。α−グルコシダーゼは、アカルボース又はミグリトールであり得る。
【0201】
特定の実施形態では、第2剤は脂質降下治療である。特定の実施形態では、脂質降下治療には、治療的ライフスタイルの改善、HMG−CoA還元酵素阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、MTP阻害剤、ApoBを標的としたアンチセンス化合物、又はそれらの組み合わせが含まれるがこれに限定されない。HMG−CoA還元酵素阻害剤は、アトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、又はシンバスタチンであり得る。コレステロール吸収阻害剤はエゼチミベであり得る。
【0202】
特定の実施形態では、投与には非経口投与が含まれる。
【0203】
特定の実施形態では、代謝性疾患又は心血管系疾患には、肥満、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、脂質異常症、冠状動脈性心臓病、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、高脂肪酸血症若しくはメタボリックシンドローム、又はそれらの組み合わせが含まれるがこれに限定されない。脂質異常症は、高脂血症であり得る。高脂血症は、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、又は高コレステロール血症及び高トリグリセリド血症の併発であり得る。NAFLDは、脂肪肝又は脂肪性肝炎であり得る。糖尿病は、2型糖尿病又は脂質異常症を伴う2型糖尿病であり得る。
【0204】
特定の実施形態では、本発明の化合物を投与することにより、トリグリセリド値、コレステロール値、インスリン抵抗性、グルコース値又はそれらの組み合わせを含む、脂質値が低下する。1つ以上のこの値が、非依存的に、5%、10%、20%、30%、35%又は40%低下し得る。本発明の化合物を投与することにより、インスリン感受性又は肝臓インスリン感受性が改善し得る。本発明の化合物を投与することにより、アテローム斑、肥満、グルコース、脂質、グルコース抵抗性、コレステロール、又はインスリン感受性の改善、又はそれらの任意の組み合わせが低下し得る。
【0205】
特定の実施形態では、1つ以上の代謝性疾患又は心血管系疾患の治療、寛解、遅延又は予防のための薬品の製造において、本明細書に記載の化合物の利用を提供する。
【0206】
特定の実施形態では、本明細書に記載の、1つ以上の代謝性疾患又は心血管系疾患の治療、予防又は寛解のためのキットを提供する。このキットには、a)本明細書に記載の化合物、及び、任意選択的にb)本明細書に記載の追加の薬剤又は治療が含まれる。このキットにはさらに、1つ以上の代謝性疾患又は心血管系疾患の治療、予防又は寛解に使用するための利用ガイド又はラベルが含まれる。
【0207】
アンチセンス化合物
オリゴマー化合物には、オリゴヌクレオチド、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド類似体、オリゴヌクレオチド模倣物、アンチセンス化合物、アンチセンスオリゴヌクレオチド、及びsiRNAが含まれるがこれに限定されない。オリゴマー化合物は、標的核酸に対する「アンチセンス」であり得る。すなわち、水素結合により標的核酸とのハイブリダイゼーションを行う能力を有するという意味である。
【0208】
特定の実施形態では、アンチセンス化合物は、5’から3’の方向に転写する場合、それが標的とする標的核酸の標的セグメントの化合物の逆相補を含むヌクレオ塩基配列を有する。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、5’から3’の方向に転写する場合、それが標的とする標的核酸の標的セグメントの逆相補を含むヌクレオ塩基配列を有する。
【0209】
特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的とするアンチセンス化合物は、長さ10〜30のヌクレオチドである。すなわち、アンチセンス化合物は、10〜30の結合ヌクレオ塩基である。特定の実施形態では、アンチセンス化合物は、8〜80、10〜80、12〜50、15〜30、18〜24、19〜22、又は20の結合ヌクレオ塩基からなる修飾オリゴヌクレオチドを含む。そのような実施形態のうち特定の実施形態では、アンチセンス化合物は、長さ8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、又は80結合ヌクレオ塩基長、又は上記の任意の2つの値により定められる範囲の結合ヌクレオ塩基長からなる修飾オリゴヌクレオチドを含む。
【0210】
特定の実施形態では、アンチセンス化合物は、短縮又は切断された修飾オリゴヌクレオチドを含む。短縮又は切断された修飾オリゴヌクレオチドは、5’末端(5’末端切断)、又は代替的に3’末端(3’切断)から取り除かれた単一なヌクレオシドを有することができる。短縮又は切断されたオリゴヌクレオチドは、5’末端から取り除かれた2つ以上のヌクレオシド、又は代替的に3’末端から取り除かれた2つ以上のヌクレオシドを有することができる。代わりに、取り除かれたヌクレオシドは、修飾オリゴヌクレオチド全体に、例えば、5’末端から取り除かれた1つ以上のヌクレオシド及び3’末端から取り除かれた1つ以上のヌクレオシドを有するアンチセンス化合物において分散され得る。
【0211】
単一の追加ヌクレオシドが、長鎖オリゴヌクレオチドに存在する場合、追加のヌクレオシドは、オリゴヌクレオチドの5’末端、3’末端又は中心部に位置し得る。2つ以上の追加のヌクレオシドが存在する場合、追加のヌクレオシドは、オリゴヌクレオチドの5’末端(5’追加)、又は代替的に3’末端(3’追加)若しくは中心部に加えられた2つのヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドにおいて、互いに隣接し得る。代わりに、追加されたヌクレオシドは、例えば、5’末端に追加された1つ以上のヌクレオシド、3’末端に追加された1つ以上のヌクレオシド、及び/又は中心部に追加された1つ以上のヌクレオシドを有するオリゴヌクレオチドにおいて、アンチセンス化合物全体に分散し得る。
【0212】
アンチセンスオリゴヌクレオチド等のアンチセンス化合物の長さを伸ばす若しくは縮めること、及び/又は活性を損なうことなく不適正塩基を挿入することは可能である。例えば、Woolfら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7305−7309, 1992)においては、13〜25ヌクレオ塩基長からなる一連のアンチセンスオリゴヌクレオチドの、卵母細胞注射モデルで標的RNAの切断を誘導する能力が試験された。アンチセンスオリゴヌクレオチドの末端付近に8又は11の不適正塩基を有する、アンチセンスオリゴヌクレオチドの末端付近に8又は11の不適正塩基を有している25ヌクレオ塩基長は、不適正塩基対をまったく含まないアンチセンスオリゴヌクレオチド程ではないが、標的mRNAの特異的切断を指示することができた。同様に標的特異的切断は、1〜3の不適正塩基対を有するものを含め、13ヌクレオ塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いて達成された。
【0213】
Gautschiら(J. Natl. Cancer Inst.93:463−471,March,2001)は、bcl−2mRNAに対し100%相補性を有し、in vitro及びin vivoでbcl−2とbcl−xLの両発現を低下させるbcl−xLmRNAに対し不適正塩基対を3つ有するオリゴヌクレオチドの能力を示した。さらに、本オリゴヌクレオチドは、in vivoで抗腫瘍活性を示した。
【0214】
Maher及びDolnick (Nuc. Acid. Res. 16:3341−3358, 1988)は、タンデムな一連の14ヌクレオ塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチド、及び、それぞれ2つ又は3つのタンデムなアンチセンスオリゴヌクレオチドの配列で構成されている28並びに42ヌクレオ塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドに対し、ウサギの網状赤血球アッセイにおいてヒトDHFRの翻訳を停止させる能力について試験を行った。3つのうち、14ヌクレオ塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドのみが翻訳を阻害することができた。但し、28又は42ヌクレオ塩基のアンチセンスオリゴヌクレオチドよりも低いレベルで作用した。
【0215】
アンチセンス化合物モチーフ
特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物は、増強した阻害活性、標的核酸に対する増加した結合親和性、またはインビボヌクレアーゼによる分解抵抗(resistance to degradation)などのアンチセンス化合物特性を与えるパターンまたはモチーフに配列された、化学的に修飾されたサブユニットを持つ。
【0216】
キメラアンチセンス化合物は、典型的には、ヌクレアーゼ分解への抵抗性の増加、細胞取込みの増加、標的核酸に対する結合親和性の増加、および/または阻害活性の増加を与えるように、少なくとも1つの修飾領域を含む。キメラアンチセンス化合物の第二領域は、随意に細胞エンドヌクレアーゼRNase Hの基質の機能をもち得、RNA:DNA二本鎖のRNA鎖を開裂する。
【0217】
ギャップマーモチーフを持つアンチセンス化合物はキメラアンチセンス化合物であると考えられる。ギャップマーでは、RNase H開裂を促進する複数のヌクレオチドを持つ内部領域は、内部領域のヌクレオシドとは化学的に異なる複数のヌクレオチドを持つ外部領域間に位置する。ギャップマーモチーフを持つアンチセンスオリゴヌクレオチドの場合、ギャップセグメントは一般にエンドヌクレアーゼ切断の基質としの機能をもち、いっぽうでウィングセグメントは修飾ヌクレオシドを含む。特定の実施形態では、ギャップマー領域は各異なる領域を含む糖部分の種類により区別される。ギャップマー領域を区別するために使用される糖部分の種類として、いくつかの実施形態では、β−D−リボヌクレオシド、β−D−デオキシリボヌクレオシド、2’−修飾ヌクレオシド(この2’−修飾ヌクレオシドは、とりわけ2’−MOEおよび2’−O−CHを含み得る)および二環式糖修飾ヌクレオシド(この二環式糖修飾ヌクレオシドは4’−(CH2)n−O−2’架橋(式中n=1またはn=2)を持つものを含み得る)が挙げられる。好ましくは、各異なる領域は一様な糖部分を含む。ウィング−ギャップ−ウィングモチーフは、しばしば「X−Y−Z」と記載され、「X」は5’ウィング領域の長さを表し、「Y」はギャップ領域の長さを表し、「Z」は3’ウィング領域を表す。本明細書に使用される場合、「X−Y−Z」と記載されるギャップマーは、ギャップセグメントが各5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントに直接隣接して位置するような構造を持つ。従って、介在しないヌクレオチドが5’ウィングセグメントとギャップセグメントの間に、またはギャップセグメントと3’ウィングセグメントとの間に存在する。本明細書に記載のアンチセンス化合物のいずれかが、ギャップマーモチーフをもち得る。いくつかの実施形態では、XおよびZは同一であり、他の実施形態では異なる。好ましい実施形態では、Yは8〜15ヌクレオチドである。X、Y、またはZは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、またはそれ以上のヌクレオチドのいずれかであり得る。従って、ギャップマーとして、これに限定されないが、例えば5−10−5、4−8−4、4−12−3、4−12−4、3−14−3、2−13−5、2−16−2、1−18−1、3−10−3、2−10−2、1−10−1、2−8−2、6−8−6、5−8−5、1−8−1、2−6−2、6−8−6、5−8−5、1−8−1、2−6−2、2−13−2、1−8−2、2−8−3、3−10−2、1−18−2、または2−18−2が挙げられる。
【0218】
特定の実施形態では、ウィング−ギャップまたはギャップ−ウィング構造、すなわちギャップマー構造に関する上記のX−YまたはY−Z構造を持つ「ウィングマー」モチーフとしてのアンチセンス化合物。従って、ウィングマー構造としては、これに限定されないが、例えば5−10、8−4、4−12、12−4、3−14、16−2、18−1、10−3、2−10、1−10、8−2、2−13、または5−13が挙げられる。
【0219】
特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物は5−10−5ギャップマーモチーフを持つ。
【0220】
特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物はギャップ拡大(gap−widened)モチーフを持つ。
【0221】
標的核酸、標的領域、およびヌクレオチド配列
ANGPTL3をコードするヌクレオチド配列としては、これに限定されないが、以下が挙げられる:GenBank Accession No.BG400407.1(配列番号1として本明細書中に組み込まれる)、GenBank Accession No.BG562555.1(配列番号2として本明細書中に組み込まれる)、GenBank Accession No.BG562798.1(配列番号3として本明細書中に組み込まれる)、GenBank Accession No.NM_014495.1(配列番号4として本明細書中に組み込まれる)、GenBank Accession No.NT_032977.5ヌクレオチド15511702〜15521082(配列番号5として本明細書中に組み込まれる)、GenBank Accession No.AF162224.1(配列番号6として本明細書中に組み込まれる)、GenBank Accession No.AI195524.1(配列番号7として本明細書中に組み込まれる)、およびGenBank Accession No.BB717501.1(配列番号8として本明細書中に組み込まれる)に記載のヒトの配列。本明細書に含まれる実施例の各配列番号に記載の配列は、糖部分、ヌクレオシド間連結、または核酸塩基に対するいかなる修飾も無関係であることが理解される。そうしたことから、配列番号により定義されるアンチセンス化合物は独立して糖部分、ヌクレオシド間連結、または核酸塩基に対する1つ以上の修飾を含み得る。Isis番号(Isis No.)により記載されるアンチセンス化合物は核酸塩基配列とモチーフの組み合わせを示す。
【0222】
特定の実施形態では、標的領域は、化学構造的に定義された標的核酸領域である。例えば、標的領域は、3’UTR、5’UTR、エクソン、イントロン、エクソン/イントロンジャンクション、コード領域、翻訳開始領域、翻訳終結領域、または他の定義された核酸領域を包含し得る。ANGPTL3に関して化学構造的に定義された領域は、NCBIなどの配列データベースからの受託番号により得ることができ、この情報は引用により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、標的領域は、標的領域内のある標的セグメントの5’標的部位から標的領域内の別の標的セグメントの3’標的部位の配列を包含し得る。
【0223】
特定の実施形態では、「標的セグメント」は核酸内の標的領域のより小さく下位部分である。例えば、標的セグメントは1つ以上のアンチセンス化合物が標的化する標的核酸のヌクレオチド配列であり得る。「5’標的部位」は標的セグメントの最も5’のヌクレオチド(5’−most nucleotide)を表す。「3’標的部位」は標的セグメントの最も3’のヌクレオチド(3’−most nucleotide)を表す。
【0224】
標的化は、アンチセンス化合物とハイブリダイズを形成する少なくとも1つの標的セグメントを決定して、所望の効果を生じることを含む。特定の実施形態では、所望の効果はmRNA標的核酸濃度が減少することである。特定の実施形態では、所望の効果は、標的核酸によりコードされるタンパク質濃度が減少すること、または標的核酸に関連する表現型が変わることである。
【0225】
標的領域は、1つ以上の標的セグメントを含有し得る。標的領域内の多重標的セグメント(multiple target segment)は重複であり得る。あるいは、多重標的セグメントは非重複であり得る。特定の実施形態では、標的領域内の標的セグメントは約300以下のヌクレオチドで分離されている。特定の実施形態では、標的領域内の標的セグメントは、標的核酸上で250、200、150、100、90、80、70、60、50、40、30、20、または10ヌクレオチドで、およそその数で、それ以下で、およそそれ以下での数のヌクレオチドにより分離されているか、または上記値のいずれか2つで定義される範囲である。特定の実施形態では、標的領域内の標的セグメントは標的核酸上で5以下のヌクレオチドで、または約5以下のヌクレオチドで分離されている。特定の実施形態では、標的セグメントは隣接している。本明細書に列挙された5’標的部位または3’標的部位のいずれかである開始核酸を持つ範囲で定義される標的領域が考えられる。
【0226】
好適な標的セグメントは、5’UTR、コード領域、3’UTR、イントロン、エクソン、またはエクソン/イントロンジャンクション内に見出され得る。開始コドンまたは終止コドンを含む標的セグメントもまた好適な標的セグメントである。好適な標的セグメントは具体的には開始コドンまたは終止コドンなどのある化学構造的に定義された領域を除外し得る。
【0227】
好適な標的セグメントの決定は、標的核酸の配列とゲノム全体の他の配列とを比較することを含み得る。例えば、アルゴリズムは、様々な核酸の中で類似する領域を特定するために使用し得る。この比較は、選択された標的核酸以外の配列(すなわち非標的または標的外配列)と特異的な方法でハイブリダイズを形成し得るようなアンチセンス化合物配列の選択を阻止し得る。
【0228】
標的活性領域内ではアンチセンス化合物の活性(例えば標的核酸濃度の低下パーセントに記載されるような)のばらつきが存在し得る。特定の実施形態では、ANGPTL3 mRNA濃度の減少はANGPTL3タンパク質発現の阻害を示す。ANGPTL3タンパク質濃度の減少はまた、標的mRNA発現の阻害を示す。さらに、表現型、例えば、表現型の変化、コレステロール、LDL、トリグリセリド、またはグルコースの濃度の減少などはANGPTL3 mRNAおよび/またはタンパク質発現の阻害を示し得る。
【0229】
ハイブリダイゼーション
いくつかの実施形態では、ハイブリダイゼーションは本明細書に記載のアンチセンス化合物とANGPTL3核酸の間で生じる。最も一般的なハイブリダイゼーション機構は核酸分子相補的核酸塩基間に水素結合(例えばWatson−Crick、Hoogsteenまたは逆Hoogsteen水素結合)を伴う。
【0230】
ハイブリダイゼーションは様々な条件下で生じ得る。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、ハイブリダイズを形成する核酸分子の特質と組み合わせにより決定される。
【0231】
配列が標的核酸と具体的にハイブリダイズを形成するか否かを決定する方法は当技術分野で公知である(Sambrooke and Russell、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、3rd Ed.、2001)。特定の実施形態では、本明細書で提供するアンチセンス化合物は具体的にはANGPTL3核酸でハイブリダイズを形成可能である。
【0232】
相補性
アンチセンス化合物の十分な数の核酸塩基が対応する標的核酸の核酸塩基と水素結合して所望の効果が生じる場合(例えばANGPTL3核酸などの標的核酸のアンチセンス阻害)、アンチセンス化合物および標的核酸は互いに相補的である。
【0233】
アンチセンス化合物はANGPTL3核酸の1つ以上のセグメントにわたりハイブリダイズを形成し得、介在セグメントまたは隣接セグメントはハイブリダイゼーション事象(例えばループ構造、ミスマッチまたはヘアピン構造)に関連しない。
【0234】
特定の実施形態では、本明細書で提供するアンチセンス化合物、またはその特定部分はANGPTL3核酸、標的領域、標的セグメント、またはその特定部分に70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%相補的または少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%相補的である。特定の実施形態では、本明細書で提供するアンチセンス化合物、またはその特定部分は、1つ以上の配列番号1〜5の配列に70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%相補的、または少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%相補的である。アンチセンス化合物の標的核酸とのパーセント相補性は、常法を用いて決定し得る。
【0235】
例えば、アンチセンス化合物の20核酸塩基のうち18核酸塩基が標的領域に相補的であって具体的にハイブリダイズを形成するアンチセンス化合物は90パーセントの相補性を表す。この例では、残存する非相補的核酸塩基はクラスタ化または相補的核酸塩基が散在化し得、必ずしも互いに隣接するまたは相補的核酸塩基に隣接していない。そのため、4(4つの)非相補的核酸塩基を有する長さの18核酸塩基であるアンチセンス化合物(標的核酸に完全に相補的である2領域を配置する)は標的核酸と77.8%の全相補性を有し、従って本発明の請求範囲内に入り得る。アンチセンス化合物の標的核酸領域とのパーセント相補性は、通常、当技術分野に公知のBLASTプログラム(basic local alignment search tool)およびPowerBLASTプログラムを用いて決定され得る(Altschul et al.、J. Mol. Biol.、1990、215、403 410; Zhang and Madden、Genome Res.、1997、7、649 656)。パーセント相同性、配列同一性、または相補性は、デフォルト設定(SmithおよびWatermanのアルゴリズムを用いる)を用いて、例えば、ギャッププログラム(Wisconsin 配列 解析 Package、Version 8 for Unix、Genetics Computer Group、University Research Park、Madison Wis.)により決定され得る(Adv. Appl. Math.、1981、2、482 489)。
【0236】
特定の実施形態では、本明細書で提供するアンチセンス化合物またはその特定部分は標的核酸またはその特定部分と完全に相補的である(すなわち100%相補性)。例えば、アンチセンス化合物はANGPTL3核酸、または標的領域、または標的セグメントまたはその標的配列に完全に相補的であり得る。本明細書中に使用される場合、「完全に相補的」はアンチセンス化合物の各核酸塩基が標的核酸の対応する核酸塩基と完全に塩基対合できることを意味する。例えば、アンチセンス化合物に完全に相補的である標的核酸の対応する20核酸塩基部分が存在するかぎりは、20核酸塩基アンチセンス化合物は400核酸塩基長の標的配列に完全に相補的である。完全な相補性はまた、第一および/または第二核酸の特定部分に関して使用され得る。例えば、30核酸塩基アンチセンス化合物の核酸塩基部分は400核酸塩基長である標的配列と「完全に相補的」であり得る。標的配列が対応する20核酸塩基部分を持つ場合(各核酸塩基がアンチセンス化合物の20核酸塩基部分に相補的である)、30核酸塩基オリゴヌクレオチドの20核酸塩基部分は標的配列に完全に相補的である。同時に、全30核酸塩基アンチセンス化合物は、アンチセンス化合物の残存する10核酸塩基もまた標的配列に相補的であるかに依り、標的配列に完全に相補的であり得る。
【0237】
非相補的核酸塩基の位置は、アンチセンス化合物の5’末端または3’末端であり得る。あるいは、非相補的核酸塩基はアンチセンス化合物の内部部分にあり得る。2つ以上の非相補的核酸塩基が存在する場合、それらは隣接(すなわち連結)または非隣接のいずれかであり得る。一実施形態では、非相補的核酸塩基はギャップマーアンチセンスオリゴヌクレオチドのウィングセグメントに位置する。
【0238】
特定の実施形態では、その長さが10、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20核酸塩基である、または最大10、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20核酸塩基のアンチセンス化合物は、ANGPTL3核酸などの標的核酸またはその特定部分に対して4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の非相補的核酸塩基を含む。
【0239】
特定の実施形態では、その長さが10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30核酸塩基である、または最大10、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、もしくは30核酸塩基のアンチセンス化合物は、ANGPTL3核酸などの標的核酸またはその特定部分に対して6つ以下、5つ以下、4つ以下、3つ以下、2つ以下、または1つ以下の非相補的核酸塩基を含む。
【0240】
本明細書で提供するアンチセンス化合物はまた、標的核酸の一部分に相補的であるものを含む。本明細書中に使用される場合、「部分(portion)」は標的核酸の領域またはセグメント内の隣接する(すなわち連結する)核酸塩基の規定数を表す。「部分」はまた、アンチセンス化合物の隣接核酸塩基の規定数を表し得る。特定の実施形態では、アンチセンス化合物は標的セグメントの少なくとも8核酸塩基部分に相補的である。特定の実施形態では、アンチセンス化合物は標的セグメントの少なくとも10核酸塩基部分に相補的である。特定の実施形態では、アンチセンス化合物は標的セグメントの少なくとも15核酸塩基部分に相補的である。標的セグメントの少なくとも8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、もしくはそれ以上の核酸塩基部分に、またはこれらの値のうちいずれか2つにより規定される範囲の核酸塩基部分に相補的なアンチセンス化合物もまた考えられる。
【0241】
同一性
本明細書で提供するアンチセンス化合物はまた、特定のヌクレオチド配列、配列番号、または固有のIsis番号もしくはその一部分により表される化合物の配列に対する所定のパーセント同一性をもち得る。本明細書中に使用される際、アンチセンス化合物が同じ核酸塩基対形成能を持つ場合に、化合物は本明細書に記載の配列と同一性である。例えば、記載のDNA配列でチミジンの代わりにウラシルを含むRNAは、ウラシルとチミジンの両方がアデニンと対を形成するので、そのDNA配列と同一であると考えられる。本明細書に記載のアンチセンス化合物の短縮または延長した型が、本明細書で提供するアンチセンス化合物に対し同一でない塩基を持つ化合物と同様に考えられる。同一でない塩基は、互いに隣接してもよく、またはアンチセンス化合物全体にわたり分散してもよい。アンチセンス化合物のパーセント同一性は、それと比較する配列に対し同一の塩基対合を持つ塩基数により算出される。
【0242】
特定の実施形態では、アンチセンス化合物またはその一部分は、本明細書に記載のアンチセンス化合物もしくは配列番号、またはそれらの一部分のうち1つ以上と、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の同一性である。
【0243】
修飾
ヌクレオシドは塩基−糖の組み合わせである。ヌクレオシドの核酸塩基(塩基としても知られる)部は、本来はヘテロ環式塩基部分である。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分と共有結合で連結したリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含む前記ヌクレオシドに関して、リン酸基は糖の2’、3’、または5’ヒドロキシル部分と連結し得る。オリゴヌクレオチドは隣接ヌクレオシドが互いに共有結合して高分子の直鎖状オリゴヌクレオチドを形成することにより形成される。オリゴヌクレオチド構造内では、リン酸基は通常、オリゴヌクレオチドのヌクレオシド間連結を形成しているとみなされる。
【0244】
アンチセンス化合物の修飾は、ヌクレオシド間連結、糖部分、または核酸塩基に対する置換または変更を包含する。修飾アンチセンス化合物は、例えば細胞取込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強、ヌクレアーゼ存在下での安定性の増大、または阻害活性の増大などの所望の特性のため、しばしば野生型を超えることが好ましい。
【0245】
化学的修飾ヌクレオシドはまた、標的核酸のアンチセンスオリゴヌクレオチドに関する短縮または切断されたものの結合親和性を増大させるために使用され得る。結果として、同様の結果が、この化学的修飾ヌクレオシドを持つより短いアンチセンス化合物によりしばしば認められ得る。
【0246】
修飾ヌクレオシド間連結
RNAおよびDNAの天然のヌクレオシド間連結は3’から5’のホスホジエステル結合である。1つ以上の修飾された、すなわち非天然のヌクレオシド間連結を持つアンチセンス化合物が、例えば細胞取込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強、ヌクレアーゼ存在下での安定性の増大、または阻害活性の増大などの所望の特性のため、天然のヌクレオシド間連結を持つアンチセンス化合物にわたり、しばしば選択される。
【0247】
修飾ヌクレオシド間連結を持つオリゴヌクレオチドは、リン原子を保持するヌクレオシド間連結ならびにリン原子をもっていないヌクレオシド間連結を含む。典型的なリン含有ヌクレオシド間連結は、これに限定されないが、リン酸ジエステル、リン酸トリエステル、リン酸メチル、アミド亜リン酸エステル、およびホスホロチオエートが挙げられる。リン含有およびリン非含有連結の調製方法は周知である。
【0248】
特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物は、1つ以上の修飾ヌクレオシド間連結を含む。特定の実施形態では、修飾ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエート結合である。特定の実施形態では、アンチセンス化合物の各ヌクレオシド間連結は、ホスホロチオエートヌクレオシド間連結である。
【0249】
修飾糖部分
アンチセンス化合物は、1つ以上のヌクレオシドを随意に含み得、その糖部分が修飾されている。この糖修飾ヌクレオシドは、ヌクレアーゼ安定性の増強、結合親和性の増大、またはいくつかの他の有利な生物学的性質をアンチセンス化合物に与え得る。特定の実施形態では、ヌクレオシドは化学的修飾リボフラノース環部分を含む。化学的修飾リボフラノース環の例としては、これに限定されないが、置換基の付加(5’および2’置換基を含む)、二環式核酸(BNA)を形成するための非ジェミナル環原子の架橋、S、N(R)、またはC(R1)(R)2(RはH、C1−C12アルキル、または保護基)でのリボシル環酸素原子の置き換え、およびそれらの組み合わせが挙げられる。化学的修飾糖の例としては、2’−F−5’−メチル置換ヌクレオシド(その他記載の5’,2’−ビス置換ヌクレオシドに関し、2008年8月21日公開の国際公開第2008/101157号参照のこと)、またはそのリボシル環酸素原子のSでの置き換え、さらには2’位での置換(2005年6月16日に公開された米国特許出願第US2005−0130923号を参照のこと)、あるいはBNAの5’置換(2007年11月22日に公開された国際公開第2007/134181号を参照のこと、ここでLNAは例えば5’−メチルまたは5’−ビニル基での置換)が挙げられる。
【0250】
修飾糖部分を持つヌクレオシドの例としては、これに限定されないが、5’−ビニル、5’−メチル(RまたはS)、4’−S、2’−F、2’−OCH3、および2’−O(CH2)2OCH3置換基を含むヌクレオシドが挙げられる。2’位での置換基はまた、アリル、アミノ、アジド、チオ、O−アリル、O−C1−C10アルキル、OCF3、O(CH2)2SCH3、O(CH2)2−O−N(Rm)(Rn)、およびO−CH2−C(=O)−N(Rm)(Rn)から選択される(各RmおよびRnは独立してHまたは置換もしくは非置換C1−C10アルキルである)。
【0251】
二環式核酸(BNA)の例としては、これに限定されないが、4’および2’のリボシル環の原子間の架橋を含むヌクレオシドが挙げられる。特定の実施形態では、本明細書で提供するアンチセンス化合物は、1つ以上のBNAヌクレオシドを含み、架橋は次の式のうち1つを含む:4’−(CH2)−O−2’(LNA);4’−(CH2)−S−2’;4’−(CH2)2−O−2’(ENA);4’−C(CH3)2−O−2’(PCT/US2008/068922参照);4’−CH(CH3)−O−2’および4’−C−H(CH2OCH3)−O−2’(米国特許第7,399,845号、2008年7月15日発行);4’−CH2−N(OCH3)−2’(国際出願PCT/US2008/064591参照);4’−CH2−O−N(CH3)−2’(2004年9月2日公開の米国特許出願第2004−0171570号参照);4’−CH2−N(R)−O−2’(米国特許第7,427,672号、2008年9月23日発行);4’−CH2−CH(Chattopadhyaya et al.、J. Org. Chem、2009、74、118−134参照)(CH3)−2’および4’−CH2−C−(=CH2)−2’(PCT/US2008/066154参照);またRは独立してH、C1−C12アルキル、または保護基である。上記BNAのそれぞれが、例えばα−L−リボフラノースおよびβ−D−リボフラノースなどの様々な立体化学的糖構造を含む(国際出願PCT/DK98/00393参照、国際公開第99/14226号として1999年3月25日公開)。従来、α−L−メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNAはまた、アンチセンス活性を示すアンチセンスオリゴヌクレオチドに取り込まれている(Frieden et al.、Nucleic Acids Research、2003、21、6365−6372)。
【0252】
二環式ヌクレオシドに関するさらなる報告が、公開された文献に見出され得る(例えば以下を参照:Srivastava et al.、J. Am. Chem. Soc.、2007、129、8362−8379;米国特許第7,053,207号;同第6,268,490号;同第6,770,748号;同第6,794,499号;同第7,034,133号;および同第6,525,191号;Elayadi et al.、Curr. Opinion Invens. Drugs、2001、2、558−561; Braasch et al.、Chem. Biol.、2001、8、1−7;およびOrum et al.、Curr. Opinion Mol. Ther.、2001、3、239−243;および米国特許第6,670,461号;国際公開第2004/10635号;国際公開第94/14226号;国際公開第2005/021570号;米国特許公開第US2004−0171570号;同第2007−0287831号;同第2008−0039618号;米国特許第7,399,845号;米国特許出願第12/129,154号;同第60/989,574号;同第61/026,995号;同第61/026,998号;同第61/056,564号;同第61/086,231号;同第61/097,787号;同第61/099,844号;国際出願PCT/US2008/064591;PCT/US2008/066154;PCT/US2008/068922;および国際公開第2007/134181号)。
【0253】
特定の実施形態では、BNAヌクレオシドの二環式糖部分としては、これに限定されないが、ペントフラノシル糖部分の4’位と2’位との間に少なくとも1つの架橋を持つ化合物が挙げられ、この架橋は独立して−[C(R)(R)]−、−C(R)=C(R)−、−C(R)=N−、−C(=O)−、−C(=NR)−、−C(=S)−、−O−、−Si(R−、−S(=O)−、およびN(R)−から独立して選択される1この基または2〜4この連結基を有する;
(式中、xは0、1、または2;
nは1、2、3、または4;
各RおよびRは独立してH、保護基、ヒドロキシル、C−C12アルキル、置換C−C12アルキル、C−C12アルケニル、置換C−C12アルケニル、C−C12アルキニル、置換C−C12アルキニル、C−C20アリール、置換C−C20アリール、複素環基、置換複素環基、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C−C脂環式基、置換C−C脂環式基、ハロゲン、OJ、NJ、SJ、N、COOJ、アシル(C(=O)−H)、置換アシル、CN、スルホニル(S(=O)−J)、またはスルホキシル(S(=O)−J)であり;および
各JおよびJは独立してH、C−C12アルキル、置換C−C12アルキル、C−C12アルケニル、置換C−C12アルケニル、C−C12アルキニル、置換C−C12アルキニル、C−C20アリール、置換C−C20アリール、アシル(C(=O)−H)、置換アシル、複素環基、置換複素環基、C−C12アミノアルキル、置換C−C12アミノアルキル、または保護基である)。
【0254】
特定の実施形態では、二環式糖部分の架橋は、−[C(R)(R)]−、−[C(R)(R)]−O−、−C(R)−N(R)−O−、またはC(R)−O−N(R)−である。特定の実施形態では、架橋は4’−CH−2’、4’−(CH−2’、4’−(CH−2’、4’−CH−O−2’、4’−(CH−O−2’、4’−CH−O−N(R)−2’、および4’−CH−N(R)−O−2’−(式中、各R は独立してH、保護基、またはC−C12アルキルである)である。
【0255】
特定の実施形態では、二環式ヌクレオシドとしては、これに限定されないが、以下に示すような(A)α−L−メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNA、(B)β−D−メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNA、(C)エチレンオキシ(4’−(CH−O−2’)BNA、(D)アミノオキシ(4’−CH−O−N(R)−2’)BNA、(E)オキシアミノ(4’−CH−N(R)−O−2’)BNA、および(F)メチル(メチレンオキシ)(4’−CH(CH)−O−2’)BNA、(G)メチレン−チオ(4’−CH−S−2’)BNA、(H)メチレン−アミノ(4’−CH−N(R)−2’)BNA、(I)メチル炭素環(4’−CH−CH(CH)−2’)BNA、および(J)プロピレン炭素環(4’−(CH−2’)BNAが挙げられる。
【0256】
【化2】

【0257】
【化3】


(式中、Bxは塩基部分でありRは独立してH、保護基、またはC−C12アルキルである)。
【0258】
特定の実施形態では、式I:
【0259】
【化4】


(式中:
Bxはヘテロ環式塩基部分であり;
−Q−Q−Q−は−CH−N(R)−CH−、−C(=O)−N(R)−CH−、−CH−O−N(R)−、−CH−N(R)−O−、またはN(R)−O−CHであり;
はC−C12アルキルまたはアミノ保護基であり;および
およびTはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分、または支持体との共役結合である)を持つ二環式ヌクレオシド。
【0260】
特定の実施形態では、式II:
【0261】
【化5】


(式中:
Bxはヘテロ環式塩基部分であり;
およびTはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分、または支持体との共役結合であり;
はC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、置換C−Cアルキル、置換C−Cアルケニル、置換C−Cアルキニル、アシル、置換アシル、置換アミド、チオール、または置換チオ)を持つ二環式ヌクレオシド。
【0262】
一実施形態では、各置換基は独立して、ハロゲン、オキソ、ヒドロキシル、OJ、NJ、SJ、N、OC(=X)J、およびNJC(=X)NJ(式中、各J、J、およびJは独立してH、C−Cアルキル、または置換C−CアルキルでありXはOまたはNJである)から独立して選択される置換基で一置換または多置換される。
【0263】
特定の実施形態では、式III:
【0264】
【化6】


(式中:
Bxはヘテロ環式塩基部分であり;
TaおよびTbはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分、または支持体との共役結合であり;
はC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、置換C−Cアルキル、置換C−Cアルケニル、置換C−Cアルキニル、または置換アシル(C(=O)−)である)を持つ二環式ヌクレオシド。
【0265】
特定の実施形態では、式IV:
【0266】
【化7】


(式中:
Bxはヘテロ環式塩基部分であり;
TaおよびTbはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分、または支持体との共役結合であり;
はC−Cアルキル、置換C−Cアルキル、C−Cアルケニル、置換C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、または置換C−Cアルキニルであり;
各q、q、q、およびqは独立してH、ハロゲン、C−Cアルキル、置換C−Cアルキル、C−Cアルケニル、置換C−Cアルケニル、C−Cアルキニルまたは置換C−Cアルキニル、C−Cアルコキシル、置換C−Cアルコキシル、アシル、置換アシル、C−Cアミノアルキル、または置換C−Cアミノアルキルである)を持つ二環式ヌクレオシド。
【0267】
特定の実施形態では、式V:
【0268】
【化8】


(式中:
Bxはヘテロ環式塩基部分であり;
TaおよびTbはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分、または支持体との共役結合であり;
、qb、およびqはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、C−C12アルキル、置換C−C12アルキル、C−C12アルケニル、置換C−C12アルケニル、C−C12アルキニル、置換C−C12アルキニル、C−C12アルコキシ、置換C−C12アルコキシ、OJ、SJ、SOJ、SO、NJ、N、CN、C(=O)OJ、C(=O)NJ、C(=O)J、O−C(=O)-NJ、N(H)C(=NH)NJ、N(H)C(=O)-NJ、またはN(H)C(=S)NJであり;
またはqおよびqは共に=C(q)(q)であり;
およびqはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C−C12アルキル、または置換C−C12アルキルである)を持つ二環式ヌクレオシド。
【0269】
メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNA単量体、アデニン、シトシン、グアニン、5−メチル−シトシン、チミン、およびウラシルの合成および調製は、それらのオリゴマー形成、および核酸認識特性と共に記載されている(Koshkin et al.、Tetrahedron、1998、54、3607−3630)。BNAおよびその調製はまた、国際公開第98/39352号および国際公開第99/14226号に記載されている。
【0270】
メチレンオキシ(4’−CH−O−2’)BNAおよび2’−チオ−BNAの類似体もまた調製されてきた(Kumar et al.、Bioorg. Med. Chem. Lett.、1998、8、2219−2222)。核酸ポリメラーゼに対する基質としてオリゴデオキシリボヌクレオチド二本鎖を持つロックドヌクレオシド(locked nucleoside)類似体の調製もまた記載されている(Wengel et al.、国際公開第99/14226号)。さらに2’−アミノ−BNA、新規の立体配座固定された高親和性のオリゴヌクレオチド類似体の合成が当技術分野で記載されている(Singh et al.、J. Org. Chem.、1998、63、10035−10039)。加えて、2’−アミノ−および2’−メチルアミノ−BNAが調製されて、そのRNAおよびDNA鎖を持つ二本鎖の安定性について既に報告されている。
【0271】
特定の実施形態では、式VI:
【0272】
【化9】


(式中:
Bxはヘテロ環式塩基部分であり;
TaおよびTbはそれぞれ独立してH、ヒドロキシル保護基、共役基、反応性リン基、リン部分、または支持体との共役結合であり;
各q、q、q、およびqは独立してH、ハロゲン、C−C12アルキル、置換C−C12アルキル、C−C12アルケニル、置換C−C12アルケニル、C−C12アルキニル、置換C−C12アルキニル、C−C12アルコキシ、置換C−C12アルコキシル、OJ、SJ、SOJ、SO、NJ、N、CN、C(=O)OJ、C(=O)NJ、C(=O)J、O−C(=O)-NJ、N(H)C(=NH)NJ、N(H)C(=O)NJ、またはN(H)C(=S)NJであり;および
およびqまたはqおよびqは共に=C(q)(q)(式中qおよびqはそれぞれ独立してH、ハロゲン、C−C12アルキル、または置換C−C12アルキルである))を持つ二環式ヌクレオシド。
【0273】
1つの炭素環式の4’−(CH−2’架橋を持つ二環式ヌクレオシドおよびそのアルケニル類似体架橋4’−CH=CH−CH−2’が記載されている(Freier et al.、Nucleic Acids Research、1997、25(22)、4429−4443およびAlbaek et al.、J. Org. Chem.、2006、71、7731−7740)。炭素環式の二環式ヌクレオシドの合成および調製もまた、それらのオリゴマー形成および生化学的研究と共に記載されている(Srivastava et al.、J. Am. Chem. Soc.、2007、129(26)、8362−8379)。
【0274】
特定の実施形態では、ヌクレオシドは糖代替物(sugar surrogate)によるリボシル環の置換により修飾される。この修飾は、限定されないが、式のうち1つを有する環系などのモルホリノ環、シクロヘキセニル環、シクロヘキシル環、またはテトラヒドロピラニル環などの代替環系(しばしばDNA類似体と称す)によるリボシル環の置換が含まれる:
【0275】
【化10】


【0276】
多くの他のビシクロおよびトリシクロ糖代替物環系がまた当技術分野に公知であり、アンチセンス化合物を組み込むために使用しヌクレオシドを修飾してもよい(例えば総説:Leumann、Christian J.、Bioorganic & Medicinal Chemistry、2002、10、841−854を参照のこと)。この環系は様々な付加的置換を受けて活性を増強し得る。例えば式VIIを持つ化合物を参照のこと:
【0277】
【化11】

VII
(但し、式VIIの前記少なくとも1つのテトラヒドロピランヌクレオシド類似体の各々に対し、独立して:
Bxはヘテロ環式塩基部分であり;
およびTはそれぞれ独立して、テトラヒドロピランヌクレオシド類似体とアンチセンス化合物を結ぶヌクレオシド間連結基であり、TおよびTのうち1つはテトラヒドロピランヌクレオシド類似体とアンチセンス化合物を結ぶヌクレオシド間連結基であり、またT のT の他の基はH、ヒドロキシル保護基、連結共役基、または5’もしくは3’−末端基であり;
、q、q、q、q、q、およびqはそれぞれ独立してH、C−Cアルキル、置換C−Cアルキル、C−Cアルケニル、置換C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、または置換C−Cアルキニルであり;および各RおよびRは水素、ヒドロキシル、ハロゲン、置換もしくは非置換アルコキシ、NJ、SJ、N、OC(=X)J、OC(=X)NJ、NJC(=X)NJ、およびCN(式中、XはO、S、またはNJであり、各J、J、およびJは独立してHまたはC−Cアルキルである)から選択される)。
【0278】
特定の実施形態では、式VIIの修飾THPヌクレオシドが提供され、ただしq、q、q、q、q、qおよびqはそれぞれH(M)である。特定の実施形態では、q、q、q、q、q、q、およびqのうち少なくとも1つがH以外である。特定の実施形態では、q、q、q、q、q、q、およびqのうち少なくとも1つがメチルである。特定の実施形態では、式VIIのTHPヌクレオシドが提供され、ただしRおよびRのうち1つがフッ素(K)である。特定の実施形態では、式VIIのTHPヌクレオシドが提供され、ただしRおよびRのうち1つがメトキシエトキシである。特定の実施形態では、Rはフッ素でありRはHであり;RはHでありRはフッ素であり;RはメトキシでありRはHであり;およびRはHでありRはメトキシエトキシである。修飾糖の調製方法は当業者に公知である。
【0279】
修飾糖部分を持つヌクレオチドでは、核酸塩基部分(天然に存在する、修飾された、またはその組み合わせ)は適切な核酸標的によるハイブリダイゼーションのために維持される。
【0280】
特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物は、修飾糖部分を持つ1つ以上のヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、修飾糖部分は2’−MOEである。特定の実施形態では、2’−MOE修飾ヌクレオチドはギャップマーモチーフに配置される。特定の実施形態では、修飾糖部分は(4’−CH(CH)−O−2’)架橋基を持つ二環式ヌクレオシドである。特定の実施形態では、(4’−CH(CH)−O−2’)修飾ヌクレオチドはギャップマーモチーフのウィング全体にわたり配置される。
【0281】
修飾糖の調製方法は当業者において公知である。
【0282】
修飾糖部分を持つヌクレオチドでは、核酸塩基部分(天然に存在する、修飾された、またはその組み合わせ)は適切な核酸標的によるハイブリダイゼーションのために維持される。
【0283】
特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物は、修飾糖部分を持つ1つ以上のヌクレオチドを含む。特定の実施形態では、修飾糖部分は2’−MOEである。特定の実施形態では、2’−MOE修飾ヌクレオチドはギャップマーモチーフに配置される。
【0284】
修飾核酸塩基
核酸塩基(または塩基)修飾または置換は、化学構造的に天然由来のまたは合成の非修飾核酸塩基と区別できるが、機能的に代替可能である。天然および修飾核酸塩基の両方が水素結合に関与することができる。この核酸塩基修飾物は、アンチセンス化合物にヌクレアーゼ安定性、結合親和性、または他の何らかの有益な生物学的性質を与える。修飾核酸塩基は、例えば5−メチルシトシン(5−me−C)などの合成のおよび天然の核酸塩基を含む。ある核酸塩基置換物(例えば5−メチルシトシン置換物を含む)は、特に標的核酸に対するアンチセンス化合物の結合親和性の増加に有用である。例えば5−メチルシトシン置換物は、0.6〜1.2℃で核酸二本鎖安定性を増すことが示されている(Sanghvi、Y.S.、Crooke、S.T. and Lebleu、B.、eds.、Antisense Research and Applications、CRC Press、Boca Raton、1993、pp. 276−278)。
【0285】
さらなる修飾核酸塩基として、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンとグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンとグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、ピリミジン塩基の5−プロピニル(−CoC−CH3)ウラシルおよびシトシンおよび他のアルキニル誘導体、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ特に5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、2−F−アデニン、2−アミノ−アデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが挙げられる。
【0286】
複素環塩基部分はまた、プリンまたはピリミジン塩基を他の複素環、例えば7−デアザ−アデニン、7−デアザグアノシン、2−アミノピリジン、および2−ピリドンで置き換えたものを含み得る。アンチセンス化合物結合親和性を増加させるのに特に有用な核酸塩基としては、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジン類、N−2、N−6およびO−6置換プリン(2アミノプロピルアデニンを含む)、5−プロピニルウラシル、ならびに5−プロピニルシトシンが挙げられる。
【0287】
特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物は1つ以上の修飾核酸塩基を含む。特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化した短縮型またはギャップ拡大型アンチセンスオリゴヌクレオチドは1つ以上の修飾核酸塩基を含む。特定の実施形態では、修飾核酸塩基は5−メチルシトシンである。特定の実施形態では、各シトシンは5−メチルシトシンである。
【0288】
組成物および医薬組成物の製剤方法
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、医薬組成物または製剤の調製のために、医薬的に許容可能な活性または不活性物質と混合し得る。組成物および医薬組成物の調製方法は、これに限定されないが投与経路、疾患の程度、または投与される用量などのいくつかの基準に依る。
【0289】
ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物は、アンチセンス化合物を好適な医薬的に許容可能な希釈剤または担体と組み合わせることにより医薬組成物に利用し得る。医薬的に許容可能な希釈剤としてリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。PBSは非経口で送達される組成物の使用に好適な希釈剤である。従って一実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物および医薬的に許容可能な希釈剤を含む医薬組成物が、本明細書に記載の方法において使用される。特定の実施形態では、医薬的に許容可能な希釈剤はPBSである。特定の実施形態では、アンチセンス化合物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0290】
アンチセンス化合物を含む医薬組成物は、あらゆる医薬的に許容可能な塩、エステル、もしくはエステルの塩、またはヒトを含む動物に投与した場合に生物学的に活性な代謝産物またはその残留物を(直接的または間接的に)与えることができるあらゆる他のオリゴヌクレオチドを包含する。従って、例えば本開示はまた、アンチセンス化合物の医薬的に許容可能な塩、プロドラッグ、プロドラッグの医薬的に許容可能な塩、および他の生物学的同等物に関する。好適な医薬的に許容可能な塩としては、これに限定されないが、ナトリウムまたはカリウム塩である。
【0291】
プロドラッグは、体内で内因性ヌクレアーゼにより開裂するアンチセンス化合物の一端または両端にさらにヌクレオシドを組み込んだものを含み、活性アンチセンス化合物を形成し得る。
【0292】
共役アンチセンス化合物
アンチセンス化合物は、得られるアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性、細胞分布、または細胞取込みを増強する1つ以上の部分もしくはコンジュゲートと共有結合で連結し得る。典型的な共役基としては、コレステロール部分および脂質部分が挙げれる。さらなる共役基としては、炭水化物、リン脂質、ビオチン、フェナジン、葉酸、フェナントリジン、アントラキノン、アクリジン、フルオレセイン、ローダミン、クマリン、および染料が挙げられる。
【0293】
アンチセンス化合物はまた、修飾されて1つ以上の安定化基をもち、通常、アンチセンス化合物の一端または両端に結合して例えばヌクレアーゼ安定性などの特性を増強する。安定化基としてキャップ構造が含まれる。これらの末端修飾は、末端核酸を持つアンチセンス化合物をエクソヌクレアーゼ分解から保護し、細胞内の送達および/または局在化に役立ち得る。キャップは5’末端(5’−cap)または3’末端(3’−cap)に存在し得、または両端に存在し得る。キャップ構造は当技術分野に公知であり、例えばデオキシ脱塩基キャップ(inverted deoxy abasic cap)が挙げられる。アンチセンス化合物の一端または両端を覆うために使用しヌクレアーゼ安定性を与え得る、さらなる3’および5’−安定化基は、国際公開第03/004602号(2003年1月16日公開)に記載される。
【0294】
細胞培養およびアンチセンス化合物処理
アンチセンス化合物のANGPTL3核酸のレベル、活性、または発現の効果は、様々な細胞タイプでインビトロで試験し得る。この分析用に使用される細胞タイプは商業販売業者(例えばAmerican Type Culture Collection、Manassus、VA; Zen−Bio、Inc.、Research Triangle Park、NC; Clonetics Corporation、Walkersville、MD)から入手可能であり、細胞は製造供給元の取扱説明書に従い市販の試薬(例えばInvitrogen Life Technologies、Carlsbad、CA)を用いて培養し得る。具体的な細胞タイプとしては、これに限定されないが、HepG2細胞、Hep3B細胞、Huh7(肝細胞癌)細胞、初期肝細胞、A549細胞、GM04281線維芽細胞、およびLLC−MK2細胞が挙げられる。
【0295】
アンチセンスオリゴヌクレオチドのインビトロ試験
本明細書中に、細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理する方法を記載するが、この方法は、他のアンチセンス化合物を用いた処理のために適宜変更してもよい。
【0296】
一般に、細胞が培養物中でおよそ60〜80%の集密状態(confluence)に達した時に、細胞をアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理する。
【0297】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを投入するために通常使用する1つの試薬としては、陽イオン性脂質トランスフェクション試薬LIPOFECTIN(登録商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドをOPTI−MEM(登録商標)1(Invitrogen、Carlsbad、CA)中でLIPOFECTIN(登録商標)と混合し、アンチセンスオリゴヌクレオチドの所望の最終濃度と、典型的にはアンチセンスオリゴヌクレオチド100nMあたり2〜12ug/mLの範囲のLIPOFECTIN(登録商標)の濃度を達成する。
【0298】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを投入するために使用する別の試薬としては、LIPOFECTAMINE2000(登録商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドをOPTI−MEM(登録商標)1血清使用量低減培地(reduced serum medium)(Invitrogen、Carlsbad、CA)中でLIPOFECTAMINE2000(登録商標)と混合し、アンチセンスオリゴヌクレオチドの所望の濃度と、典型的にはアンチセンスオリゴヌクレオチド100nMあたり2〜12ug/mLの範囲のLIPOFECTIN(登録商標)の濃度を達成する。
【0299】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを投入するために使用する別の試薬としては、Cytofectin(登録商標)(Invitrogen、Carlsbad、CA)が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドをOPTI−MEM(登録商標)1血清使用量低減培地(Invitrogen、Carlsbad、CA)中でCytofectin(登録商標)と混合し、アンチセンスオリゴヌクレオチドの所望の濃度と、典型的にはアンチセンスオリゴヌクレオチド100nMあたり2〜12ug/mLの範囲のCytofectin(登録商標)の濃度を達成する。
【0300】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを投入するために使用する別の試薬としては、Oligofectamine(商標)(Invitrogen Life Technologies、Carlsbad、CA)が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドをOpti−MEM(商標)−1血清使用量低減培地(Invitrogen Life Technologies、Carlsbad、CA)中でOligofectamine(商標)と混合し、およそ0.2〜0.8μL/100nMのオリゴヌクレオチド比率のOligofectamine(商標)を含む、オリゴヌクレオチドの所望の濃度を達成する。
【0301】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを投入するために使用する別の試薬としては、Fu遺伝子6(Roche Diagnostics Corp.、Indianapolis、IN)が挙げられる。アンチセンスオリゴマー化合物を血清−遊離RPMI 1ml中にFu遺伝子6と混合して、Fu遺伝子6を含むオリゴヌクレオチドの所望濃度をオリゴマー化合物比率が1〜4μLのFu遺伝子6/100nMに達成した。
【0302】
培養細胞にアンチセンスオリゴヌクレオチドを投入するために使用する別の技術として、電気穿孔法(Sambrooke and Russell、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、3rd Ed.、2001)が挙げられる。
【0303】
細胞を常法によりアンチセンスオリゴヌクレオチドで処理する。細胞を、典型的にはアンチセンスオリゴヌクレオチド処理後16〜24時間で採取し、その時点で標的核酸のRNA濃度またはタンパク質濃度を当技術分野で公知の方法または本明細書に記載の方法により測定する。一般に、処理を複数回反復して行う場合、データを反復処理の平均で提示する。
【0304】
使用するアンチセンスオリゴヌクレオチドの濃度は細胞系により様々である。ある特定の細胞系に関するアンチセンスオリゴヌクレオチド最適濃度を決定する方法は当技術分野で公知である。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、LIPOFECTAMINE2000(登録商標)、LipofectinまたはCytofectinでトランスフェクトする場合、典型的には1nM〜300nMの範囲の濃度で使用される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、電気穿孔法を用いてトランスフェクトする場合、625〜20,000nMの範囲のより高い濃度で使用する。
【0305】
RNA単離
RNA解析を総細胞RNAまたはpoly(A)+mRNAに関して実施し得る。RNA単離方法は当技術分野で公知である(Sambrooke and Russell、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、3rd Ed.、2001)。RNAは、当技術分野で公知の方法を使用して調製し、例えばTRIZOL(登録商標)試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA)を用いて製造業者の推奨手順に従い調製する。
【0306】
標的のレベルまたは発現の阻害解析
ANGPTL3核酸のレベルまたは発現の阻害は、当技術分野で公知の様々な方法で分析し得る(Sambrooke and Russell、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、3rd Ed.、2001)。例えば、標的核酸レベルは、例えばノーザンブロット法、競合ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または定量リアルタイムPCRにより定量し得る。RNA解析は、総細胞RNAまたはpoly(A)+mRNAに実施し得る。RNA単離方法は、当技術分野で公知である。ノーザンブロット法はまた、当技術分野で常法である。定量リアルタイムPCRは、PE−Applied Biosystems、Foster City、CAから入手でき製造業者の取扱説明書に従い使用される市販のABI PRISM(登録商標)7600、7700、または7900Sequence Detection Systemを用いて好都合に行われる。
【0307】
標的RNAレベルの定量リアルタイムPCR解析
標的RNAレベの定量は、ABI PRISM(登録商標)7600、7700、または7900 Sequence Detection System(PE−Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いて、製造業者の取扱説明書に従い、定量リアルタイムPCRにより行ってもよい。定量リアルタイムPCRの方法は、当技術分野で公知である。
【0308】
リアルタイムPCRの前に、単離RNAを逆転写酵素(RT)反応に付し、その後にリアルタイムPCR増幅のために基質として使用される相補的DNA(cDNA)を生成する。RT反応およびリアルタイムPCR反応を同じ試料ウェルにて順次実施する。RT試薬およびリアルタイムPCR試薬はInvitrogen(Carlsbad、CA)により入手してもよい。RT反応およびリアルタイムPCR反応は、当業者に公知の方法により実施される。
【0309】
リアルタイムPCRにより得られる遺伝子(またはRNA)標的量を、発現が一定である遺伝子、例えばシクロフィリンAのいずれの発現レベルを用いて、またはRIBOGREEN(登録商標)(Invitrogen、Inc.Carlsbad、CA)を使用した総RNAの定量化によりノーマライズしてもよい。発現は、リアルタイムPCRにより、標的と同時に、多重化して、または別々に実施することにより定量化する。総RNAは RIBOGREEN(登録商標)RNA定量試薬(Invitrogen、Inc.Carlsbad、CA)を用いて定量する。RIBOGREEN(登録商標)によるRNA定量方法はJones, L.J.、et al、(Analytical Biochemistry、1998、265、368−374)に教示される。CYTOFLUOR(登録商標)4000装置(PE Applied Biosystems)をRIBOGREEN(登録商標)蛍光の測定に使用する。
【0310】
プローブおよびプライマーを設計し、ANGPTL3核酸とハイブリッドを形成する。リアルタイムPCR用プローブおよびプライマーを設計する方法は当技術分野で公知であり、プライマーEXPRESS(登録商標)Software(Applied Biosystems、Foster City、CA)などのソフトウェアの使用が挙げられ得る。
【0311】
RT、リアルタイムPCRにより得られる遺伝子標的量を、GAPDH(すなわち発現が一定である遺伝子)のいずれの発現レベルを用いて、またはRiboGreenTM(Molecular Probes、Inc. Eugene、OR)を使用した総RNAの定量化によりノーマライズしてもよい。GAPDH発現は、RT、リアルタイムPCRにより、標的と同時に、多重化して、または別々に実施することにより定量化した。総RNAをRiboGreenTM RNA定量試薬(Molecular Probes、Inc. Eugene、OR)を用いて定量化した。
【0312】
本明細書に記載の細胞タイプでのGAPDH発現の測定に使用されるプライマーおよびプローブが表2に示される。GAPDHのPCRプローブは5’末端に共有結合で連結したJOEと3’末端に共有結合で連結したTAMRAまたはMGBをもち、JOEはレポーター蛍光色素であり、TAMRAまたはMGBはクエンチャー色素である。いくつかの細胞タイプでは、GAPDH発現を測定するために、それとは別の種由来のGAPDH配列について設計されたプライマーおよびプローブを使用する。例えば、ヒトGAPDHプライマーおよびプローブセットが、サル由来細胞および細胞系でのGAPDH発現の測定に使用される。
【0313】
【表2】

【0314】
リアルタイムPCRの使用のためのプローブおよびプライマーを設計し、標的特異的配列とハイブリッドを形成した。プライマーおよびプローブとそれらとハイブリッドを形成する標的核酸配列を表3に示す。標的特異的PCRプローブは、5’末端と共有結合で連結するFAMおよび3’末端と共有結合で連結するTAMRAまたはMGBをもち、FAMは蛍光性染料であり、TAMRAまたはMGBはクエンチャー色素である。
【0315】
【表3】

【0316】
タンパク質レベルの解析
ANGPTL3核酸のアンチセンス阻害は、ANGPTL3タンパク質レベルを測定することにより評価され得る。ANGPTL3のタンパク質レベルを、当技術分野で公知の様々な手法、例えば免疫沈降法、ウエスタンブロット法(免疫ブロット法)、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、定量的タンパク質分析、タンパク質活性分析(例えばカスパーゼ活性アッセイ)、免疫組織学、免疫細胞化学、または蛍光活性化細胞分類(FACS)(Sambrooke and Russell、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、3rd Ed.、2001)などで評定または定量化してもよい。標的に関する抗体は、抗体のMSRSカタログ(Aerie Corporation、Birmingham、MI)などの様々な供給源から単離および回収してもよく、あるいは当技術分野で公知の従来型モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体生成方法により調製してもよい。
【0317】
アンチセンス化合物のインビボ試験
アンチセンス化合物、例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドを、ANGPTL3の発現を阻害し表現型の変化を生じる機能を評価する動物にて試験する。試験は、正常動物で、または実験用疾患モデルで実施し得る。動物への投与に関し、アンチセンスオリゴヌクレオチドを、リン酸緩衝生理食塩水などの医薬的に許容可能な希釈剤にて製剤する。投与としては、非経口経路の投与が挙げられる。アンチセンスオリゴヌクレオチドによる処置期間後、RNAを細胞から単離してANGPTL3核酸発現の変化を測定する。ANGPTL3タンパク質レベルの変化もまた測定する。
【0318】
ある指標
特定の実施形態では、本明細書に記載の1つ以上の医薬組成物を投与することを含む、個体を処置する方法が本明細書で提供される。特定の実施形態では、個体は代謝疾患および/または心臓血管疾患を患う。特定の実施形態では、個体はアテローム性動脈硬化、肝脂肪症、または高脂血症を患う。
【0319】
従って、代謝疾患または心臓血管疾患に関連する症状を改善する方法が、本明細書中に提供される。また、アテローム性動脈硬化、肝脂肪症、または高脂血症に関連する症状の改善を必要とする対象でのその改善方法も、本明細書中に提供される。特定の実施形態では、代謝疾患または心臓血管疾患に関連する症状の発病率を低減させる方法が提供される。特定の実施形態では、アテローム性動脈硬化、肝脂肪症、または高脂血症に関連する症状の発病率を低減させる方法が提供される。特定の実施形態では、代謝疾患または心臓血管疾患に関連する症状の重症度を低減させる方法が提供される。特定の実施形態では、アテローム性動脈硬化、肝脂肪症、または高脂血症に関連する症状の重症度を低減させる方法が提供される。この実施形態では、前記方法は、ANGPTL3核酸を標的化した化合物の治療有効量を投与を必要とする個体に投与することを含む。
【0320】
特定の実施形態では、ANGPTL3核酸を標的化したアンチセンス化合物の投与は、少なくとも約15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、もしくは99%、またはこれらの値のいずれか2つの値で規定される範囲のANGPTL3発現の低下をもたらす。
【0321】
特定の実施形態では、ANGPTL3を標的化したアンチセンス化合物を含む医薬組成物は、代謝疾患または心臓血管疾患を患う、または成り易い患者を治療するための薬剤の調製に使用される。特定の実施形態では、ANGPTL3を標的化したアンチセンス化合物を含む医薬組成物は、アテローム性動脈硬化、肝脂肪症、または高脂血症を患う、または成り易い患者を治療するための薬剤の調製に使用される。
【0322】
特定の実施形態では、本明細書に記載の方法は、配列番号34−182に記載の配列の、本明細書に記載の8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20隣接核酸塩基位を持つ修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む。
【0323】
投与
特定の実施形態では、本明細書に記載の化合物および組成物は、非経口で投与される。
【0324】
特定の実施形態では、非経口投与は点滴による。点滴は、長期もしくは持続的または短期もしくは断続的である。特定の実施形態では、注入される医薬品をポンプで送達する。
【0325】
特定の実施形態では、非経口投与は注射による。注射は注射器またはポンプにより送達され得る。特定の実施形態では、注射はボーラス注射である。特定の実施形態では、注射は、組織または臓器に直接投与する。
【0326】
特定の併用療法
特定の実施形態では、本発明の修飾オリゴヌクレオチを含む第1剤は、1つ以上の第2の薬剤と同時投与される。特定の実施形態では、この第2剤を設計して、本明細書に記載の第1剤と同じ疾患、障害、または症状を治療する。特定の実施形態では、この第2剤を設計して、本明細書に記載の第1剤と同じ疾患、障害、または症状を治療する。特定の実施形態では、この第2剤を設計して本明細書に記載の1つ以上の医薬組成物の望ましくない副作用を治療する。特定の実施形態では、第2剤を第1剤と同時投与して、第1剤の望ましくない効果を治療する。特定の実施形態では、第2剤を第1剤と同時投与し、併用効果を生じる。特定の実施形態では、第2剤を第1剤と同時投与し、相乗効果を生じる。
【0327】
特定の実施形態では、第1剤および1つ以上の第2剤を同時に投与する。特定の実施形態では、第1剤および1つ以上の第2剤を異なる時間に投与する。特定の実施形態では、第1剤および1つ以上の第2剤を単一の医薬製剤で一緒に調製する。特定の実施形態では、第1剤および1つ以上の第2剤を別々に調製する。
【0328】
特定の実施形態では、第2剤としては、これに限定されないが、アスコルビン酸が挙げられる。
【実施例】
【0329】
非限定的記載および引用による組み込み
本明細書に記載のある化合物、組成物、および方法が、ある実施形態にしたがい具体的に記載されてきたが、いっぽうで、以下の実施例は本明細書に記載の化合物を例示するためのみ役に立ち、これを限定することを意図しない。本出願に記載の各参考文献は、その全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【0330】
実施例1:オリゴマー化合物によるヒトアンジオポエチン様3のアンチセンス阻害
一連のオリゴマー化合物を設計してヒトアンジオポエチン様3の様々な領域を標的化し、表1に示す公表された配列を使用した。化合物を表4に示す。表4の全ての化合物は、10この2’−デオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域からなり、両端(5’および3’)に5ヌクレオチドの「ウィング」が配置された20ヌクレオチドの長さのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)である。ウィングは2’−O−(2−メトキシエチル)ヌクレオチドからなり、また2’−MOEヌクレオチドとして知られている。ヌクレオシド間(主鎖)結合はオリゴヌクレオチドの全体にわたりホスホロチオエートである。全てのシトシン残基は5−メチルシトシン類である。表4のオリゴマー化合物は具体的にはアンジオポエチン様3をコードする標的核酸分子とハイブリッドを形成し、結合親和性を増大させる領域からなり、これらの領域はオリゴマー化合物の「ウィング」である。オリゴマー化合物はそれぞれRNase H活性を導く領域を含み、この領域は「ギャップ」領域である。
【0331】
化合物を、本明細書の他の実施例に記載の定量リアルタイムPCRにより、表3に示す標的特異的プライマーおよびプローブ(配列番号28、配列番号29、および配列番号30)を用いて、遺伝子標的mRNAレベルの化合物の効果を解析した。データは、Huh7細胞を150nMの開示のオリゴマー化合物でOLIGOFECTAMINE(商標)を用いて処理する実験からの平均値である。表4に、オリゴマー化合物を標的化する配列の配列番号を示す。
【0332】
表4では、発現の減少を阻害パーセントで表す。存在するならば、「N.D.」は「未検出」を示す。これらのオリゴマー化合物が阻害性を示す標的領域を、本明細書では「有効標的セグメント」と称する。
【0333】
【表4−1】

【表4−2】

【表4−3】

【0334】
実施例2:オリゴマー化合物によるマウスアンジオポエチン様3のアンチセンス阻害
一連のオリゴマー化合物を設計してマウスアンジオポエチン様3の様々な領域を標的化し、表1に示す公表された配列を使用した。化合物を表5に示す。表5の全ての化合物は、10この2’−デオキシヌクレオチドからなる中心「ギャップ」領域からなり、両端(5’および3’)に5ヌクレオチドの「ウィング」が配置された20ヌクレオチドの長さのキメラオリゴヌクレオチド(「ギャップマー」)である。ウィングは2’−O−(2−メトキシエチル)ヌクレオチドからなり、また2’−MOEヌクレオチドとして知られている。ヌクレオシド間(主鎖)結合はオリゴヌクレオチドの全体にわたりホスホロチオエートである。全てのシトシン残基は5−メチルシトシン類である。表5のオリゴマー化合物は具体的にはアンジオポエチン様3をコードする標的核酸分子とハイブリッドを形成し、結合親和性を増大させる領域からなり、これらの領域はオリゴマー化合物の「ウィング」である。オリゴマー化合物はそれぞれRNase H活性を導く領域を含み、この領域は「ギャップ」領域である。
【0335】
化合物を、本明細書の他の実施例に記載の定量リアルタイムPCRにより、表3に示す標的特異的プライマーおよびプローブ(配列番号31、配列番号32、および配列番号33)を用いて、遺伝子標的mRNAレベルの化合物の効果を解析した。データは、マウス初期肝細胞を150nMの開示のオリゴマー化合物でLIPOFECTIN(商標)を用いて処理する実験からの平均値である。使用する対照オリゴマー化合物は配列番号9および10であった。表5に、オリゴマー化合物を標的化する配列の配列番号を示す。
【0336】
表4では、発現の減少を阻害パーセントで表す。存在するならば、「N.D.」は「未検出」を示す。これらのオリゴマー化合物が阻害性を示す標的領域を、本明細書では「有効標的セグメント」と称する。表5のアンチセンスオリゴヌクレオチドはまた、ヒトANGPTL3 mRNA(GENBANK Accession NM_014495.1、配列番号4として本明細書に組み込まれる)と交差反応してもよく、核酸塩基の数に依りマウスオリゴヌクレオチドがヒトANGPTL3配列を持つ。「ヒト標的開始部位」は、アンチセンスオリゴヌクレオチドを標的化するヒトmRNAで最も5’のヌクレオチドを示す。「ヒト標的終結部位」はアンチセンスオリゴヌクレオチドを標的化するヒトmRNAで最も3’のヌクレオチドを示す。「ミスマッチ」は、マウスオリゴヌクレオチドがヒト遺伝子配列と不適正となる核酸塩基の数を示す。記号「n/a」は、マウスオリゴヌクレオチドおよびヒト遺伝子配列間で3超のミスマッチが存在したことを示す。マウス オリゴヌクレオチドおよびヒト遺伝子配列間の相補性が高いほど、マウスオリゴヌクレオチドがヒト遺伝子配列とより交差反応しやすい。
【0337】
【表5−1】

【表5−2】

【表5−3】

【0338】
実施例3:アンジオポエチン様3を標的化する二本鎖オリゴマー化合物の設計と選定
本発明に従って、本発明のオリゴマー化合物を含む一連の二本鎖(dsRNAおよびその模倣)およびそれらの相補体を設計してアンジオポエチン様3を標的化し得る。その二本鎖のアンチセンス鎖の核酸塩基配列は、本明細書に記載のアンジオポエチン様3を標的化したオリゴヌクレオチドの少なくとも一部を含む。前記鎖の末端を1つ以上の天然または修飾核酸塩基の付加により修飾してオーバーハングを形成してもよい。核酸二本鎖のセンス鎖は、次いで、アンチセンス鎖の相補体として設計および合成され、核酸二本鎖のセンス鎖はまた、いずれの末端に修飾または付加を含んでいてもよい。二本鎖のアンチセンスおよびセンス鎖は約17〜25このヌクレオチド、または約19〜23このヌクレオチドを含む。あるいは、アンチセンスおよびセンス鎖は20、21、または22このヌクレオチドを含む。
【0339】
例えば、一実施形態では、dsRNA二本鎖のうち両鎖が中心核酸塩基にわたり相補性であり、それぞれが一方または両方の末端にオーバーハングを持つ。
【0340】
例えば、配列CGAGAGGCGGACGGGACCG(配列番号183として本明細書に組み込まれる)およびデオキシチミジン(dT)の2−核酸塩基オーバーハングを持つアンチセンス鎖を含む二本鎖は、以下の構造をもち得る:
【0341】
【化12】

【0342】
オーバーハングは約2〜6この核酸塩基であり得、これらの核酸塩基は標的核酸に相補的であっても、そうでなくてもよい。別の実施形態では、二本鎖は1末端にのみオーバーハングをもち得る。
【0343】
別の実施形態では、同じ配列を持つアンチセンス鎖を含む二本鎖、例えばCGAGAGGCGGACGGGACCG(配列番号183)は、次に示す平滑末端(一本鎖でないオーバーハング)で調製され得る:
【0344】
【化13】

【0345】
RNA二本鎖は単分子または二分子であり得る;すなわち二本鎖が単一分子の一部であり得、または別々の分子でもよい。
【0346】
前記二本鎖のRNA鎖は、当業者で常用される方法により合成し得、またはDharmacon Research Inc.(Lafayette、CO)により購入し得る。合成するとすぐに相補性二本鎖をアニールする。一本鎖を一定量に分けて(aliquoted)50μMの濃度まで希釈する。希釈するとすぐに、30μLの各鎖をアニーリング緩衝液の5希釈溶液15μLと混合する。前記緩衝液の最終濃度は100mM酢酸カリウム、30mM HEPES−KOH pH7.4、および2mM酢酸マグネシウムである。最終容積は75μLである。この溶液を90℃で1分間インキュベートし、次いで15秒間で遠心分離する。チューブを37℃で1時間静置して、この際、dsRNA二本鎖を実験用に用いる。dsRNA二本鎖の最終濃度は20μMである。
【0347】
調製するとすぐに、二本鎖の化合物を、アンジオポエチン様3を調節する機能について評定する。細胞が80%の集密状態に達すると、細胞を本発明の二本鎖の化合物で処理する。96−ウェルプレートでの細胞増殖に関し、ウェルを200μL OPTI−MEM−1(商標)低減血清培地(Gibco BRL)で1回洗浄し、次いで12μg/mL LIPOFECTIN(商標)(Gibco BRL)および最終濃度200nMの所望の二本鎖アンチセンス化合物を含む130μLのOPTI−MEM−1(商標)(100nM二本鎖アンチセンス化合物あたり6μg/mL LIPOFECTIN(商標)の比率)で処理する。処理の5時間後、培地を新鮮な培地と置き換える。処理後16時間後に細胞を採取し、その際、RNAを単離し、標的の減少をRT−PCRにより測定する。
【0348】
実施例4:オリゴマー化合物によるマウスアンジオポエチン様3のアンチセンス阻害:用量反応試験
本発明のさらなる実施形態では、3つのオリゴヌクレオチドをさらなる用量反応試験のために選定した。マウス初期肝細胞を6.25、25、100、または400nMのISIS233693(配列番号131)、ISIS233698(配列番号136)、もしくはISIS233725(配列番号159)、またはそのスクランブル対照(scrambled control)オリゴヌクレオチドISIS113529(5−10−5ギャップマー、CTCTTACTGTGCTGTGGACA、配列番号11として本明細書に組み込まれる)で処理し、mRNAレベルを本明細書の他の実施例に記載のように測定した。未処理細胞が、データをノーマライズする対照としての役割を果たした。
【0349】
これらの試験の結果を表6に示す。データは3つの実験からの平均値であり、未処理の対照に対する阻害パーセントで表される。
【0350】
【表6】

【0351】
表6に示すように、ISIS233693、233698、および233725は用量に依存してアンジオポエチン様3mRNAレベルを低減させた。
【0352】
実施例5:アンジオポエチン様3のアンチセンス阻害効果:C57BL/6マウスでのインビボ試験
本発明に従い、マウスアンジオポエチン様3を標的化する2つのオリゴヌクレオチドをインビボ試験用に選択した。正常餌を給餌したC57BL/6雄マウスに週に2回ISIS233693(配列番号131)またはISIS233698(配列番号136)のいずれかの50mg/kg用量を2週間注射した。各処置群は5動物からなっていた。ある動物群は生理食塩水を週に2回で2週間注射を受けた。この生理食塩水注射群は、オリゴヌクレオチド処置群と比較する対照群としての役割を果たした。
【0353】
2週間の処置期間後、マウスを犠牲にしてアンジオポエチン様3mRNAレベルを肝臓にて評定した。mRNA発現レベルを、本明細書の他の実施例に記載のリアルタイムPCRにより定量化した。生理食塩水処置マウスと比較して、ISIS233693は44%のアンジオポエチン様3mRNAレベルの減少を生じた。ISIS233698は41%のアンジオポエチン様3mRNAレベルの減少を生じた。データは、アンジオポエチン様3アンチセンスオリゴヌクレオチド処置は肝臓にて標的mRNA発現を効果的に抑制し得ることことを実証する。
【0354】
脾臓重量、体重、および肝重量を、試験の終了時に測定した。処置期間の終了時に(グラム単位で)測定された平均組織重量および平均体重を表7に示す。表7に示すように、体重、肝重量、および脾臓重量はオリゴヌクレオチド処置の影響を受けていなかった。
【0355】
【表7】

【0356】
試験終了時、動物を、血清 コレステロール、HDL、LDL、トリグリセリド、およびグルコース値に関して、Olympus Clinical Analyzer(Olympus America Inc.、Melville、NY)を用いた通常の解析により評定した。肝毒性を示し得る血清アミノ基転移酵素、ALTおよびASTの上昇率もまた測定した。肝臓毒性に関連するASTまたはALTレベルは認められなかった。測定した血清グルコース(GLUC)、コレステロール(CHOL)、LDL、HDL、およびトリグリセリド(TRIG)のレベルを、各処置群から得られる平均値としてmg/dL単位で、表8に示す。
【0357】
【表8】

【0358】
表8に示すように、ISIS233693およびISIS233698による処置は血清トリグリセリドを減少させた。ISIS233693による処置は総コレステロールを減少させた。
【0359】
実施例6:アンジオポエチン様3のアンチセンス阻害効果:高脂肪給餌マウスでのインビボ用量反応試験
C57BL/6マウス株は、高脂血症−誘導性アテローム斑形成の影響を受け易いことが報告されている。従って、これらのマウスに高脂肪餌を給餌して、アンジオポエチン様3アンチセンスオリゴヌクレオチドのmRNA発現に対する影響を評定するその後の試験に使用した。
【0360】
C57BL/6雄マウスを、脂質から得られる60%のカロリーを含む高脂肪給餌(例えば、 Research Diet D12492、Research Diets Inc.、New Brunswick、NJ)上に置いた。高脂質餌を受けるマウスを処理群に分類した。3つの群が、ISIS233693(配列番号131)の注射を6週間受けた。さらに3つの群が週に2回、10mg/kg、25mg/kg、または50mg/kg用量のISIS233698(配列番号136)の注射を6週間受けた。
【0361】
高脂肪餌動物の1群は、週に2回、生理食塩水の注射を6週間受けた。この生理食塩水注射群は、オリゴヌクレオチド処置群と比較する対照群としての役割を果たした。
【0362】
6週間の処置期間後、マウスを犠牲にして肝臓でのアンジオポエチン様3mRNAレベルを評定した。mRNA発現レベルを、本明細書の他の実施例に記載のリアルタイムPCRにより定量化した。結果を、生理食塩水処置対照と比較した平均パーセント阻害として、表9に示す。
【0363】
【表9】

【0364】
これらのデータは、アンジオポエチン様3mRNAを標的化したアンチセンスオリゴヌクレオチドが、用量に依存して肝臓での標的mRNA発現を効果的に減少させることを示す。
【0365】
体重を試験中に監視した。脾臓重量、脂肪パッド重量、および肝重量を試験の終了時に測定した。処置期間終了時に測定した平均組織重量および平均体重を表10に示す。
【0366】
【表10】

【0367】
これらのデータは、体重、脾臓重量、および肝重量が影響を受けなかったことを実証する。脂肪体重量は、ISIS233698の処置により用量に依存して減少した。ISIS233698の処置により、脂肪パッド重量も減少した。
【0368】
試験終了時、動物を血清コレステロール、トリグリセリド、およびグルコース値に関して、Olympus Clinical Analyzer(Olympus America Inc.、Melville、NY)を用いる通常の解析により評定した。肝毒性を示し得る血清アミノ基転移酵素ALTおよびASTの上昇率もまたOlympus Clinical Analyzer(Olympus America Inc.、Melville、NY)を用いて測定した。測定した血清コレステロール(CHOL)およびトリグリセリド(TRIG)のレベルを、各処置群から得られる平均値としてmg/dLの単位で、表11に示す。HDLおよびLDLの平均レベルも平均グルコース値(GLUC)と同様に示す。ALTおよびAST(これらもまた表11に示す)もまた、各処理群から得られた平均値として国際単位/L(IU/L)で同様に示す。
【0369】
【表11】

【0370】
表11に示すように、生理食塩水処置と比較した場合、ISIS233693またはISIS233698による処置はコレステロールレベルの減少および血清トリグリセリドの用量依存的減少をもたらした。ISIS233693およびISIS233698はまた、脂質低下薬を試験した場合に、マウス、すなわちヒトではない他の種がHDL粒子として血清コレステロールを90%保持しているということにより、マウスで通常認められるHDLの若干の減少をもたらした。さらに、ISIS233693による処置はLDLを低減させた。
【0371】
実施例7:インビボでのアンジオポエチン様3レベルのアンチセンス阻害効果:肝臓トリグリセリ
肝脂肪症は脂質の肝臓への蓄積、しばしばアルコール摂取、糖尿病、および高脂血症により引き起こされる「脂肪肝(fatty liver)」、を意味し、末期の肝臓障害に進行し得る。脂肪肝症状のその有害な影響を考慮すると、肝脂肪症を予防または改善する化合物を特定することは有用である。肝脂肪症は、組織トリグリセリド量の測定、および肝臓組織の組織学的検査の両方により評定してもよい。
【0372】
さらなる実施形態では、肝臓組織トリグリセリド量を実施例6に記載の動物で評価した。肝臓組織トリグリセリド量を、トリグリセリドGPO分析(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN)を用いて測定した。各処置群の結果を生理食塩水処置対照にノーマライズし、これらを表12に示す。
【0373】
【表12】

【0374】
表12に示すように、アンジオポエチン様3を標的化したアンチセンスオリゴヌクレオチドによる処置は、肝臓トリグリセリドの用量依存的減少をもたらす。
【0375】
実施例8:アンジオポエチン様3のアンチセンス阻害効果:高脂肪給餌マウスでのISIS233693によるインビボ試験
実施例6に記載の試験と同じ試験で、C57BL/6雄マウスを、脂質から得られる60%のカロリーを含む高脂肪給餌(例えば、Research Diet D12492、Research Diets Inc.、New Brunswick、NJ)の環境に置いた。高脂質餌を受けるマウスを処理群に分類した。1つの群がISIS233693(配列番号131)の注射を週に2回、50mg/kg用量で6週間受けた。
【0376】
オリゴヌクレオチドを注射のために生理食塩水に溶解させた。高脂質給餌動物のある群が、週に2回、生理食塩水の注射を6週間受けた。この生理食塩水注射群は、オリゴヌクレオチド処置群と比較する対照群としての役割を果たした。
【0377】
6週間の処置期間後、マウスを犠牲にして肝臓でのアンジオポエチン様3mRNAレベルを評定した。mRNA発現レベルを、本明細書の他の実施例に記載のリアルタイムPCRにより定量化した。ISIS233693により、標的mRNAレベルの88%の減少を生じた。
【0378】
体重を試験中に監視した。脾臓重量、脂肪パッド重量、および肝重量を試験の終了時に測定した。生理食塩水単独で処置した動物の平均体重、肝重量、脾臓重量、および脂肪パッド重量は、それぞれ33g、1.2g、0.1g、0.7gであった。ISIS233693により処置した動物の平均体重、肝重量、脾臓重量、および脂肪パッド重量は、それぞれ31g、1.6g、0.2g、および0.2gであった。ISIS233693による処置により、脂肪パッド重量が71%減少した。
【0379】
試験終了時、動物を、血清コレステロール、トリグリセリド、およびグルコース値に関して、通常の臨床解析(例えばBTSなどの臨床試験装置(a division of Lab Corp、San Diego、CA)にて)により評定した。肝毒性を示し得る血清アミノ基転移酵素ALTおよびASTの上昇率、および腎毒性を示し得るビリルビンレベルの上昇率もまた測定した。異常な腎臓または肝臓機能の指標としての毒性上昇はISIS233693処置によって認められなかった。ISIS233693により、血清トリグリセリドおよびグルコース値は減少したが、血清コレステロール、LDL、またはHDLレベルは変わらなかった。
【0380】
肝脂肪症は脂質の肝臓への蓄積、しばしばアルコール摂取、糖尿病、および高脂血症により引き起こされる「脂肪肝」を意味し、末期の肝臓障害に進行し得る。脂肪肝症状のその有害な影響を考慮すると、肝脂肪症を予防または改善する化合物を特定することは有用である。肝脂肪症は、組織トリグリセリド量の測定、および肝臓組織の組織学的検査の両方により評定してもよい。
【0381】
肝臓組織トリグリセリド量を、トリグリセリドGPO分析(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN)を用いて測定した。ISIS233693処置群の平均結果を生理食塩水処置対照にノーマライズした。ISIS233693による処置により、肝臓トリグリセリドレベルが75%減少した。
【0382】
組織学的分析を通常の手順により行った。簡潔にいうと、肝臓試料を入手して、10%中性緩衝ホルマリン固定液で固定し、そしてHE染色および肝臓形態の評定用に処理した。あるいは、肝臓組織を入手し、凍結し、分割し、続いてオイルレッドO染色で染色して脂質沈着物を視覚化し、そしてエオシンで対比染色して細胞質を標識した。調製した試料を光学顕微鏡検査により評定した。
【0383】
オイルレッドO染色および組織学的分析により評価したように、ISIS233693により処置された動物由来の肝臓は、生理食塩水処置対照肝臓と比較して、脂肪含量の減少を示した。
【0384】
従って、アンジオポエチン様3を標的化したオリゴマー化合物は、組織トリグリセリド量の測定および肝臓組織の組織学的検査の両方により評定したように、肝脂肪症を改善する。
【0385】
まとめると、本明細書に示すインビボ試験は、アンジオポエチン様3のアンチセンスオリゴヌクレオチドの減少が肝臓標的mRNAの用量依存的減少、ならびに血清および肝臓トリグリセリドレベルの減少をもたらすことを示す。さらに、アンジオポエチン様3を標的化したアンチセンスオリゴヌクレオチドにより、痩せたマウスおよび高脂肪給餌マウスの両方で血清コレステロールレベルが低減する。さらに、脂肪パッド重量の減少が、体重または臓器重量の同様な減少を起こすことなく認められ、これは脂肪含量が標的特異的に減少することを示す。従って、本発明の別の態様は、高脂血症などの症状に関し、血清コレステロール、血清トリグリセリド、肝臓トリグリセリド、または脂肪パッド重量を減少させる方法である。
【0386】
実施例9:アテローム性動脈硬化に対するアンジオポエチン様3のアンチセンス阻害効果:LDLr−/−マウスでのISIS233693による処置
ISIS233693の抗アテローム性動脈硬化剤としての効果を、高コレステロール餌を給餌したLDL受容体ノックアウトマウス;アテローム性動脈硬化の試験用モデルで評定した。(Ishibashi et al、J Clin. Invest. 1994 May; 93:1885−93)。
【0387】
処置
LDL受容体遺伝子ノックアウトマウスC57Bl/6(Jackson Labs、#2207)にHarlan Tekland餌、TD94059(37%kCal脂肪(ココアバターの半分)、1.25%コレステロール)を給餌した。給餌開始後4週間で、マウスを処置用に各6〜8匹のマウスからなる2群に分けた。第一の群は、ISIS233693(配列番号131)の皮下注射を25mg/kg用量で週に2回、16週間受けた。第二の群は対照ミスマッチオリゴヌクレオチド、ISIS141923(CCTTCCCTGAAGGTTCCTCC、配列番号187として本明細書に組み込まれる)の皮下注射を25mg/kg用量で週に2回、16週間受けた。
【0388】
オリゴヌクレオチドを注射用に生理食塩水に溶解した。高脂肪給餌動物のうち1群が生理食塩水の注射を週に2回、16週間受けた。この生理食塩水注射群は、オリゴヌクレオチド処置群と比較する対照群としての役割を果たした。
【0389】
血液試料を4週間ごとに採取した。処置期間の終了時、マウスを安楽死させて、肝臓および大動脈をさらなる解析のために回収した。
【0390】
RNA解析
RNAを、ANGPTL3のリアルタイムPCR解析のため、ANGPTL3 プライマープローブセット(フォワード配列CACCTGGGCAGTCACGAAA、配列番号188として本明細書に指定する;リバース配列GGAGGGCCCCAGGGATAT、配列番号189として本明細書に指定する;プローブ配列CACGCTACATGTGGCTGAGATTCGTGG、配列番号190として本明細書に指定する)を用いて肝臓組織から抽出した。結果をPBS対照と比較してマウスANGPTL3の阻害パーセントとして示す。表13に示すように、ISIS233693の処置は、PBS対照と比較するとANGPTL3mRNAの有意な減少をもたらした。対照オリゴヌクレオチド、ISIS141923による処置は、予想通り、ANGPTL3の有意な減少をもたらさなかった。
【0391】
【表13】

【0392】
コレステロールおよび脂質レベル
血漿および肝臓のトリグリセリド、ならびにコレステロールをBligh−Dyer法(Bligh、E and Dyer、W、Can J Biochem Physiol、37、911−917、1959)により抽出し、市販のトリグリセリドキット(DCLトリグリセリド試薬;Diagnostic Chemicals Ltd.)を用いて測定した。結果を表14〜17に示す。表14は、ISIS233693による処置が、16週間でのコレステロールレベルにPBS対照と比較して58%もの有意な減少をもたらしたことを実証している。総コレステロールレベルの減少は、表15に示すように、対照と比較して58%ものLDLコレステロールレベルの有意な減少の結果である。表16は、上記に詳述したように、マウスモデル依存的のようなHDLの減少を示す。同様に、表17は、ISIS233693の処置によりPBS対照と比較して16週間で75%トリグリセリドレベルが減少したことを実証している。
【0393】
【表14】

【0394】
【表15】

【0395】
【表16】

【0396】
【表17】

【0397】
アテローム性動脈硬化症評価
PBS、その後のホルマリンPBS溶液(5%ホルマリンのPBS)によるかん流後に、アテローム性動脈硬化症の重症度をマウスから採取した大動脈で評価した。マウス大動脈全体を解剖用顕微鏡を用いて近位上行大動脈から腸骨動脈の分岐部まで切開した。外膜脂肪を取り除き、大動脈を長手方向に開き、、解剖用の黒色ワックス上にピンで平らに留めて、スーダンIVで染色し、固定倍率で写真を撮影した。写真をデジタル化し、総大動脈弁領域および病変部位をAdobe Photoshop version 7.0およびNIH Scion Image software(http://rsb.info.nih.gov/nih−image/Default.html)を用いて算出した。表18に示す結果を、病変を含む総大動脈弁領域のパーセントとして報告する。示されるように、ISIS233693による処置が大動脈病変の顕著な減少とアテローム性動脈硬化の改善をもたらした。
【0398】
【表18】

【0399】
肝機能
肝機能に対するISISオリゴヌクレオチドの効果を評定するため、血漿アミノ基転移酵素濃度を臨床化学自動分析装置(Hitachi Olympus AU400e、Melville、NY)を用いて測定した。血漿のALT(アラニンアミノ基転移酵素)およびAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素)濃度を測定し、その結果をIU/L単位で示す表19および20に示す。測定を4週間ごとに行った。0週は、処置開始時であり、高脂肪餌給餌開始後4週間である。
【0400】
【表19】

【0401】
【表20】

【0402】
実施例10:ヒトapoB100トランスジェニックLDLr−/−マウスに対するアンジオポエチン様3のアンチセンス阻害効果
脂質異常症治療薬としてのISIS233693の効果を、高コレステロール餌を給餌したヒトapoB−100トランスジェニックLDL受容体ノックアウトマウスで、評定した。これらの試験に使用したマウスは、先行論文(Sanan et al、Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 95: 4544-4549)に記載されている。簡潔には、このマウス株は、LDLr-/- マウス(Ishibashi et al.(J. Clin. Invest. 92: 883-893)により本来記載され、129svおよびC57BL/6株のハイブリッドである)とヒトapoB−100トランスジェニックマウス(Linton et al、J. Clin. Invest. 92: 3029-3037、SJLおよびC57BL/6B株のハイブリッドである)のハイブリッドである。交配によりLDLr-/-およびapoBの過剰発現特性が同型であることが示され、マウスはapoB−100−含有LDLの大幅な増加を示した。
【0403】
処置
マウスをHarlan Tekland社製餌TD88137または「Western diet」(21%無水乳脂肪(乳脂肪)、34%スクロース、および0.2%総コレステロール)で給餌した。給餌開始後1週間で、マウスを処置のため各5匹からなる群に分けた。第一コホートが、ISIS233693(配列番号131)の皮下注射を、週に2回、12.5mg/kg、25mg/kg、または50mg/kgの用量で4週間受けた。第二のコホートが、対照オリゴヌクレオチド、ISIS141923(配列番号187)の皮下注射を、週に2回、12.5mg/kgまたは50mg/kgの用量で4週間受けた。
【0404】
オリゴヌクレオチドを注射のために生理食塩水に溶解した。高脂肪餌動物の1群が生理食塩水の注射を週に2回、4週間受けた。この生理食塩水注射群は、オリゴヌクレオチド処置群と比較する対照群としての役割を果たした。
【0405】
マウスを週に1回計量した。処置期間終了時に、マウスを安楽死させ、血液試料、肝臓、腎臓、脾臓、および脂肪体を、さらなる解析のために回収した。
【0406】
RNA解析
RNAを、ANGPTL3のリアルタイムPCR解析のため、ANGPTL3プライマープローブセット(フォワード配列CACCTGGGCAGTCACGAAA、配列番号187として本明細書に指定する;リバース配列GGAGGGCCCCAGGGATAT、配列番号188として本明細書に指定する;プローブ配列CACGCTACATGTGGCTGAGATTCGTGG、配列番号189として本明細書に指定する)を用いて、およびApoCIIImRNAのリアルタイムPCR解析のため、ApoCIIIプライマープローブセット(フォワード:TGCAGGGCTACATGGAACAA、本明細書に配列番号12として組み込まれる;リバース:CGGACTCCTGCACGCTACTT、本明細書に配列番号13として組み込まれる;プローブ:CTCCAAGACGGTCCAGGATGCGC、本明細書に配列番号14として組み込まれる)を用いて肝臓組織から抽出した。結果を、PBS対照と比較したマウスANGPTL3およびマウス ApoCIIIの阻害パーセントで示す。表21に示すように、ISIS233693およびISIS233725による処置は、PBS対照と比較して、ANGPTL3mRNAの有意な用量依存的減少をもたらした。ISIS233693による処置はまた、50mg/kg/週でApoCIIImRNAの阻害をもたらした。
【0407】
肝臓型脂肪酸結合蛋白(liver fatty acid binding protein)(LFABP)のRNAレベルもまた、リアルタイムPCRにより測定した。結果を表21に示し、またISISオリゴヌクレオチドによるANGPTL3の阻害がLFABPを阻害することにより肝臓での脂肪酸の輸送にも影響を及ぼすことを実証する。対照オリゴヌクレオチド、ISIS141923による処置は、予想通り、ANGPTL3、LFABPまたはapoCIIIに有意な減少をもたらさなかった。
【0408】
【表21】

【0409】
コレステロールおよび脂質レベル
血漿および肝臓のトリグリセリド、ならびにコレステロールを、Bligh−Dyer法(Bligh、E and Dyer、W、Can J Biochem Physiol、37、911−917、1959)により抽出し、市販のトリグリセリドキット(DCLトリグリセリド試薬;Diagnostic Chemicals Ltd.)を用いて測定した。結果を表22に示す。試験は、ISIS233693およびISIS233725による処置がPBS対照と比較して25mg/kg/週でそれぞれコレステロールレベルを63%および37%減少させたことを実証する。総コレステロールレベルの減少は主に、上述のように対照と比較して63%および34%のそれぞれのLDLコレステロールレベルの有意な減少の結果であった。HDLの若干の減少は、脂質低下薬をマウスで試験した場合にHDL低下が通常マウスで認められるように、上記詳述のマウスモデル依存性であり得る。試験は、ISIS233693およびISIS233725による処置がPBS対照と比較して25mg/kg/週でそれぞれ82%および70%トリグリセリドレベルを減少させたことを実証する。
【0410】
従って、ANGPTL3を標的化するISISオリゴヌクレオチドによる処置により、このマウスモデルでの血漿脂質プロファイルを有意に改善する。
【0411】
【表22】

【0412】
グルコース
グルコース生成に対するISISオリゴヌクレオチドの効果を評定するために、血漿グルコース値をBeckmanグルコースアナライザII(Beckman Coulter)を用いてグルコースオキシダーゼ法により測定した。結果を表23に示し、また結果は、ISIS233693およびISIS233725による処置が、PBS対照と比較して50mg/kg/週でともに40%の血漿グルコース値の減少をもたらしたことを実証する。
【0413】
【表23】

【0414】
肝機能
肝機能に対するISISオリゴヌクレオチドの効果を評定するために、血漿アミノ基転移酵素濃度を臨床化学自動分析装置(Hitachi Olympus AU400e、Melville、NY)を用いて測定した。血漿のALT(アラニンアミノ基転移酵素)およびAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素)濃度を測定し、その結果をIU/L単位で示す表24に示す。
【0415】
本試験により実証されるように、ISIS233693による処置によりいかなるアミノ基転移酵素レベルの有意な増加をも生じず、従って肝機能に対するいかなる弊害をももたらさなかった。RNA解析と同様にこの分析は、ISIS233693がANGPTL3を標的化する強力で耐容性のアンチセンスオリゴヌクレオチドであることを立証する。
【0416】
【表24】

【0417】
体重および臓器重量
臓器重量に対するISISオリゴヌクレオチドの効果を評定するために、試験終了後に臓器を採取して計量した。結果を表25に示し、またこの結果は、ISISオリゴヌクレオチドによる処置が肝臓、脾臓、または腎臓重量に対し影響を与えないことを実証する。ISIS233693による処置により、PBS対照と比較して、50mg/kg/週で、まさに77%のマウスの脂肪パッド重量が減少した。
【0418】
【表25】

【0419】
実施例11:C57BL/6マウスでのフェノフィブラート阻害と比較したANGPTL3のアンチセンス阻害効果
マウスANGPTL3を標的化するISIS233693を、フェノフィブラートと比較してナイーブC57BL/6マウスで評定した。フェノフィブラートは、対象での高コレステロール血症および高トリグリセリド血症の商業的に可能な療法であり、コレステロール、低比重リポタンパク質(LDL)、超低比重リポタンパク質(VLDL)、およびトリグリセリドレベルの減少させること、ならびに高比重リポタンパク質(HDL)レベルを上昇させることが知られている。
【0420】
正常餌を給餌した5匹のC57BL/6雄マウスの1群に50mg/kg用量のISIS233693(配列番号131)を週に2回、6週間注射した。マウスの第二群を50mg/kg/週の日常飼養育(daily gavage)として投与するフェノフィブラートで処置した。動物の1群は、PBSの注射を週に2回、6週間受けた。このPBS注射群は、オリゴヌクレオチド処置群と比較する対照群としての役割を果たした。
【0421】
6週間の処置期間後、マウスを犠牲にし、ANGPTL3mRNAレベルを肝臓で評定した。mRNA発現レベルを、本明細書の他の実施例に記載のリアルタイムPCRにより定量化した。PBS処置マウスに比べると、ISIS233693は85%のANGPTL3mRNAレベルの減少を生じた。データは、ANGPTL3アンチセンスオリゴヌクレオチド処置は、肝臓での標的mRNA発現を効果的に阻害し得ることを実証する。
【0422】
コレステロールおよび脂質レベル
血漿および肝臓のトリグリセリドならびにコレステロールを、Bligh−Dyer法(Bligh、E and Dyer、W、Can J Biochem Physiol、37、911−917、1959)により抽出し、市販のトリグリセリドキット(DCLトリグリセリド試薬;Diagnostic Chemicals Ltd.)を用いて測定した。結果を表26に示す。試験は、ISIS233693による処置がPBS対照と比較して50mg/kg/週でコレステロールレベルを23%減少させたことを実証する。試験は、ISIS233693による処置がPBS対照と比較して50mg/kg/週で38%トリグリセリドレベルを減少させたことを実証する。フェノフィブラートによる処置は、コレステロールまたはトリグリセリドレベルに対する効果を持っていなかった。
【0423】
従って、ANGPTL3を標的化するISISオリゴヌクレオチドによる処理により、このマウスモデルでの血漿脂質プロファイルの有意な改善が生じた。
【0424】
【表26】

【0425】
グルコース
グルコース生成に対するISISオリゴヌクレオチドの効果を評定するために、血漿グルコース値をBeckmanグルコースアナライザII(Beckman Coulter)を用いてグルコースオキシダーゼ法により測定した。結果を表27に示し、また結果は、ISIS233693による処置が、PBS対照と比較して50mg/kg/週でともに19%の血漿グルコース値の減少をもたらしたことを実証する。フェノフィブラートによる処置は、グルコース値に対する効果を持っていなかった。
【0426】
【表27】

【0427】
肝機能
肝機能に対するISISオリゴヌクレオチドの効果を評定するため、血漿アミノ基転移酵素濃度を臨床化学自動分析装置(Hitachi Olympus AU400e、Melville、NY)を用いて測定した。血漿のALT(アラニンアミノ基転移酵素)およびAST(アスパラギン酸アミノ基転移酵素)濃度を測定し、その結果をIU/L単位で示す表28に示す。
【0428】
この試験で実証されたように、ISIS2336393またはフェノフィブラートによる処置により、アミノ基転移酵素レベルのいかなる有意な増加も生じず、従って、肝機能へのいかなる弊害ももたらさなかった。
【0429】
【表28】

【0430】
血漿NEFAおよび3HBレベルに対する効果
NEFAおよび3−HBレベルをマウス群で分析し、表29に示した。脂肪酸化の指標としてのNEFAおよび3−HBレベルは、ISISオリゴヌクレオチドによる処理により有意な悪影響を受けなかった。フェノフィブラートによる処置は、NEFAおよび3HBの両方のレベルの増加に示されるように、脂肪酸化を増加させた。
【0431】
【表29】

【0432】
臓器重量
臓器重量に対するISISオリゴヌクレオチドの効果を評定するために、試験終了後に臓器を採取して計量した。結果を表30に示し、またこの結果は、ISIS233693による処置が肝臓、脾臓、または腎臓重量に対し影響を与えないことを実証する。ISIS233693による処置は、PBS対照と比較して、50mg/kg/週で、まさに45%のマウスの白色脂肪組織重量が減少した。
【0433】
【表30】

【0434】
実施例12:Sprague−DawleyラットでのANGPTL3のアンチセンス阻害の効果
ISIS360363(GTGACATATTCTTCACCTCT;配列番号191)およびISIS360382(TTTAAGTGACGTTACCTCTG;配列番号192)(両5−10−5MOEギャップマーがラットmRNA配列、配列番号193(Genbank Accession No.XM_233218.1)とそれぞれ開始位置333および476を標的化している)を、Sprague Dawleyラットで評定した。
【0435】
正常餌を給餌したSprague Dawleyラットの2群を50mg/kg用量のISIS360363またはISIS360382で週に1回6週間注射した。動物の1群は、PBSの注射を週に2回6週間受けた。このPBS注射群は、オリゴヌクレオチド処置群と比較する対照群としての役割を果たした。
【0436】
RNA解析
RNAを、ANGPTL3のリアルタイムPCR解析のため肝臓組織から抽出した。結果をPBS対照と比較したラットANGPTL3の阻害パーセントで示す。表31に示すように、ISIS360363およびISIS360382による処置は、PBS対照との比較で、ANGPTL3mRNAの有意な減少をもたらした。
【0437】
【表31】

【0438】
コレステロールおよび脂質レベル
血漿トリグリセリドおよびコレステロールを、Bligh−Dyer法(Bligh、E and Dyer、W、Can J Biochem Physiol、37、911−917、1959)により抽出し、市販のトリグリセリドキット(DCLトリグリセリド試薬;Diagnostic Chemicals Ltd.)を用いて測定した。結果を表26に示す。試験は、ISIS360363および360382による処置がPBS対照と比較してそれぞれトリグリセリドレベルを67%および81%減少させたことを実証する。従って、ANGPTL3を標的化するISISオリゴヌクレオチドによる処置により、このラットモデルでの血漿トリグリセリドの有意な改善が生じる。このモデルでのISISオリゴヌクレオチドによる処置は、総コレステロールまたはLDLレベルに対する効果を持っていなかった。
【0439】
【表32】

【0440】
配列表
本出願は、電子様式の配列表と共に提出されている。配列表は、2011年1月7日に作成されたサイズが56KbのBIOL0120WOSEQ.txtという名称のファイルとして提供されている。電子様式の配列表に含まれる情報の全体を参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物にANGPTL3を標的とする10〜30連結ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む、動物でのANGPTL3発現を低減させる方法であって、ANGPTL3の発現が動物で低減する、方法。
【請求項2】
動物にANGPTL3を標的とする10〜30連結ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む、動物でのapoC−III発現を低減させる方法であって、apoC−IIIの発現が動物で低減する、方法。
【請求項3】
動物にANGPTL3を標的とする10〜30連結ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む、動物でのトリグリセリドレベルを減少させる方法であって、トリグリセリドレベルが動物で減少する、方法。
【請求項4】
動物にANGPTL3を標的とする10〜30連結ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む、動物でのコレステロールレベルを減少させる方法であって、コレステロールレベルが動物で減少する、方法。
【請求項5】
動物にANGPTL3を標的とする10〜30連結ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む、動物での低比重リポタンパク質(LDL)レベルを減少させる方法であって、低比重リポタンパク質(LDL)レベルが動物で減少する、方法。
【請求項6】
動物にANGPTL3を標的とする10〜30連結ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む、動物でのグルコースレベルを減少させる方法であって、グルコースレベルが動物で減少する、方法。
【請求項7】
動物にANGPTL3を標的とする10〜30連結ヌクレオシドの長さの修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物を投与することを含む、動物での代謝疾患または心臓血管疾患を改善する方法であって、代謝疾患または心臓血管疾患が動物で改善される、方法。
【請求項8】
前記修飾オリゴヌクレオチドが、前記修飾オリゴヌクレオチドの全体にわたり測定した配列番号1〜5に少なくとも90%相補的な核酸塩基配列を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記修飾オリゴヌクレオチドが配列番号34〜182のいずれか1つに記載の配列の少なくとも8つの隣接核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記動物がヒトである、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記化合物が第1剤であり、さらに第2剤を投与することを含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記第1剤および前記第2剤が同時投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2剤が血糖降下薬である、請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記血糖降下薬が治療的生活習慣改善、PPARアゴニスト、ジペプチジルペプチダーゼ(IV)阻害剤、GLP−1類似体、インスリンもしくはインスリン類似体、インスリン分泌促進剤、SGLT2阻害剤、ヒトアミリン類似体、ビグアニド、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、またはそれらの組み合わせである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記血糖降下薬がメトホルミン、スルホニル尿素、ロシグリタゾン、またはそれらの組み合わせである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記血糖降下薬がアセトヘキサミド、クロルプロパミド、トルブタミド、トラザミド、グリメピリド、グリピジド、グリブリド、またはグリクラジドから選択されるスルホニル尿素である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記血糖降下薬がビグアニドメトホルミンである、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記血糖降下薬がナテグリニドまたはレパグリニドから選択されるメグリチニドである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記血糖降下薬がピオグリタゾンまたはロシグリタゾンから選択されるチアゾリジンジオンである、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記血糖降下薬がアカルボースまたはミグリトールから選択されるアルファ−グルコシダーゼ阻害剤である、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記第2剤が脂質低下療法である、請求項11に記載の方法。
【請求項22】
前記脂質低下療法が治療的生活習慣改善、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、MTP阻害剤、ApoBを標的化したアンチセンス化合物、またはそれらのあらゆる組み合わせである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記脂質低下療法がアトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチン、またはシンバスタチンから選択されるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記脂質低下療法がコレステロール吸収阻害剤、エゼチミブである、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
投与が非経口投与を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
化合物が一本鎖修飾オリゴヌクレオチドからなる、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
前記修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は修飾オリゴヌクレオチド全体にわたり測定した配列番号1〜5のいずれか1つに少なくとも95%相補的である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
前記修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列は修飾オリゴヌクレオチドの全体にわたり測定した配列番号1〜5のいずれか1つに100%相補的である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項29】
前記修飾オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシド間連結が修飾ヌクレオシド間連結である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項30】
各ヌクレオシド間連結がホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記修飾オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシドが修飾糖を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つのテトラヒドロピラン修飾ヌクレオシドを含み、テトラヒドロピラン環でフラノース環が置換される請求項31に記載の方法。
【請求項33】
各少なくとも1つのテトラヒドロピラン修飾ヌクレオシドが化学構造:
【化1】


(式中、Bxは随意に保護されたヘテロ環式塩基部分である)を有する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも1つの修飾糖が二環式糖である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
少なくとも1つの修飾糖が2’−O−メトキシエチルまたは4’−(CH−O−2’架橋(式中、nは1または2である)を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記修飾オリゴヌクレオチドの少なくとも1つのヌクレオシドが修飾核酸塩基を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項37】
前記修飾核酸塩基が5−メチルシトシンである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記修飾オリゴヌクレオチドは20連結ヌクレオシドからなる、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項39】
前記修飾オリゴヌクレオチドは:
a.連結デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
b.連結ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;
c.連結ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメント;を有し、
前記ギャップセグメントは5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントの間に位置し、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドが修飾糖を含む、請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
前記修飾オリゴヌクレオチドは20連結ヌクレオシドからなり、配列番号34〜182のいずれかから選択される核酸塩基配列の少なくとも8つの隣接核酸塩基を含む核酸塩基配列を有し、および:
a.連結デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
b.5つの連結ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;
c.5つの連結ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメント;を有し、
前記ギャップセグメントは5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントの間に位置し、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドが2’−O−メトキシエチル糖を含み、各ヌクレオシド間連結がホスホロチオエート結合であり、および、各シトシン5’−メチルシトシンである、請求項1〜7に記載の方法。
【請求項41】
代謝疾患または心臓血管疾患の動物を処置する方法であって、
a.代謝疾患または心臓血管疾患の動物を特定すること、
b.前記動物に、20連結ヌクレオシドからなる修飾オリゴヌクレオチドを含み修飾オリゴヌクレオチドの全体にわたり測定した配列番号1〜5に少なくとも90%相補的な核酸塩基配列を有する化合物の治療有効量を投与すること、を含み、
前記代謝疾患または心臓血管疾患の動物が処置される、方法。
【請求項42】
前記動物に投与された化合物の治療有効量が動物での代謝疾患または心臓血管疾患を減少させる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記代謝疾患または心臓血管疾患は肥満、糖尿病、アテローム性動脈硬化、脂質異常症、冠動脈性心疾患、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、高脂肪酸血症、もしくは代謝症候群、またはそれらの組み合わせである、請求項7または41に記載の方法。
【請求項44】
前記脂質異常症は高脂血症である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記高脂血症は高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、または高コレステロール血症と高トリグリセリド血症の両方である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記NAFLDが肝脂肪症または脂肪性肝炎である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
糖尿病が2型糖尿病または脂質異常症合併2型糖尿病である、請求項43に記載の方法。
【請求項48】
投与が、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル、インスリン抵抗性、グルコース値、またはそれらの組み合わせを含む、脂質レベルの減少をもたらす、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記レベルが独立して5%、10%、20%、30%、35%、または40%減少する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
投与が改善したインスリン感受性をもたらす、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
投与が改善した肝臓インスリン感受性をもたらす、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
20連結ヌクレオシドからなり修飾オリゴヌクレオチドの全体にわたり測定した配列番号1〜5に少なくとも90%相補的な核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを含むANGPTL3阻害剤を投与することによって、ヒトでの、ANGPTL3レベル、LDLレベル、apoC−IIIレベル、トリグリセリドレベル、コレステロールレベル、グルコース値、脂肪パッド重量、心臓血管疾患および代謝疾患のうち1つ以上を低下させる方法。
【請求項53】
投与がアテローム斑、肥満、グルコース、脂質、グルコース抵抗性、コレステロールの減少、もしくはインスリン感受性の改善、またはそれらの組み合わせをもたらす、請求項1〜52に記載の方法。
【請求項54】
10〜30連結ヌクレオシドからなり配列番号34〜182のいずれかから選択される核酸塩基配列の少なくとも8つの隣接核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物。
【請求項55】
修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列が配列番号1〜5に少なくとも95%相補的である、請求項54に記載の化合物。
【請求項56】
修飾オリゴヌクレオチドの核酸塩基配列配列番号1〜5に少なくとも100%相補的である、請求項54に記載の化合物。
【請求項57】
修飾オリゴヌクレオチドが一本鎖オリゴヌクレオチドである、請求項54に記載の化合物。
【請求項58】
少なくとも1つのヌクレオシド間連結が修飾ヌクレオシド間連結である、請求項54に記載の化合物。
【請求項59】
各ヌクレオシド間連結がホスホロチオエートヌクレオシド間連結である、請求項58に記載の化合物。
【請求項60】
少なくとも1つのヌクレオシドが修飾糖を含む、請求項54に記載の化合物。
【請求項61】
少なくとも1つの修飾糖が二環式糖である、請求項60に記載の化合物。
【請求項62】
少なくとも1つの修飾糖が2’−O−メトキシエチルまたは4’−(CH−O−2’架橋(式中、nは1または2である)を含む、請求項60に記載の化合物。
【請求項63】
少なくとも1つのヌクレオシドが修飾核酸塩基を含む、請求項54に記載の化合物。
【請求項64】
修飾核酸塩基が5−メチルシトシンである、請求項63に記載の化合物。
【請求項65】
前記修飾オリゴヌクレオチドは:
連結デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
連結ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;
連結ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメント;を有し、
前記ギャップセグメントは5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントの間に位置し、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドが修飾糖を含む、請求項54に記載の化合物。
【請求項66】
前記修飾オリゴヌクレオチドは20連結ヌクレオシドからなり、また:
連結デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
5つの連結ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;
5つの連結ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメント;を有し、
前記ギャップセグメントは5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントの間に位置し、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドが2’−O−メトキシエチル糖を含み、各ヌクレオシド間連結がホスホロチオエート結合である、請求項54に記載の化合物。
【請求項67】
修飾オリゴヌクレオチドが20連結ヌクレオシドからなる、請求項54に記載の化合物。
【請求項68】
10〜30連結ヌクレオシドからなり配列番号34〜182のいずれかに記載の配列から選択される核酸塩基配列の少なくとも8つの隣接核酸塩基を含む核酸塩基配列を有する修飾オリゴヌクレオチドまたはその塩と医薬的に許容可能な担体もしくは希釈剤を含む化合物。
【請求項69】
修飾オリゴヌクレオチドは一本鎖オリゴヌクレオチドである、請求項68に記載の化合物。
【請求項70】
修飾オリゴヌクレオチドが20連結ヌクレオシドからなる、請求項68に記載の化合物。
【請求項71】
20連結ヌクレオシドからなり、配列番号34〜182のいずれかから選択される核酸塩基配列の少なくとも8つの隣接核酸塩基を含む核酸塩基配列を含む修飾オリゴヌクレオチドを含む化合物であって、前記修飾オリゴヌクレオチドが:
連結デオキシヌクレオシドからなるギャップセグメント;
5つの連結ヌクレオシドからなる5’ウィングセグメント;
5つの連結ヌクレオシドからなる3’ウィングセグメント;を有し、
前記ギャップセグメントは5’ウィングセグメントと3’ウィングセグメントの間に位置し、各ウィングセグメントの各ヌクレオシドが2’−O−メトキシエチル糖を含み、各ヌクレオシド間連結がホスホロチオエート結合であり、および、各シトシン5’−メチルシトシンである、化合物。

【公表番号】特表2013−516489(P2013−516489A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548193(P2012−548193)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/020606
【国際公開番号】WO2011/085271
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(595104323)アイシス ファーマシューティカルズ, インコーポレーテッド (53)
【Fターム(参考)】