アンジオモチンまたはアンジオモチンをコードするポリヌクレオチドを含むワクチン組成物、および、ワクチン組成物の血管新生に関連した病気の治療のための使用
アンジオモチン、例えばアンジオモチンの全分子もしくは断片、または遺伝子もしくはmRNAとしてコードされたアンジオモチン、またはアンジオモチン分子に対する免疫応答を発生させるのに利用することができるアンジオモチンを発現する樹状細胞(DC細胞)として投与したアンジオモチンを含む、血管の形成、例えば脈管形成を予防するだけでなく、腫瘍および他の疾患に関連した存在する脈管化を防止するワクチン。癌の動物モデルにおいて、血管新生の阻害および腫瘍増殖の遅延がもたらされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管形成を妨げるための、例えば腫瘍増殖、網膜疾患、アテローム性動脈硬化、子宮内膜症、リウマチ性関節炎および炎症状態を妨げるための予防または治療処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、疾患誘引因子またはその成分に由来する調製物であって、この調製物は、その因子がもたらす病気から守る免疫応答を刺激するために投与される。治療用(治療)ワクチンは、病気の発症後に与え、病気の進展を低下または阻むことを意図する。予防用(予防)ワクチンは、最初の病気の発症を防ぐことを意図する。ワクチンに使用される因子は、例えば、完全に殺傷した(不活性)、生きた弱毒化(弱体化)病原性生命体または人工的な製造物とすることができる。
【0003】
ワクチンは、宿主の免疫システムを刺激し、主要な標的に対する抗体および/または免疫細胞(細胞毒性T-細胞)を特異的に産生することによって、その効果を媒介する。これらの標的は、「抗原」として知られている。標的抗原に対する免疫応答の刺激によって、免疫化宿主の身体に存在する病気をもたらす因子の、免疫を介した破壊および除去が引き起こされる。いったん刺激されると、免疫システムは、また、標的因子による事後的な感染または病気の発症に対して監視し続ける。それゆえ、ワクチンは、現存する病気を制御するだけでなく、病気の再燃または再発を将来的に阻害するのに有効な方法である。
【0004】
標的抗原に対してワクチン接種するための様々な方法が存在する。それらの幾つかは、タンパク質全体;タンパク質の断片に対応する合成ペプチド;および/またはタンパク質をコードするDNA/RNA配列を注入することを含む。DNAおよびRNAを伝達するためのデリバリーベヒクルには、遺伝子を発現する改変ウィルス、裸のDNA/RNA、または、サイトカインまたは増殖因子などの他の免疫刺激因子と関連した抗原を発現するリコンビナントプラスミドを含む。
【0005】
脈管形成(vasculogenesis)とは、幹細胞が、その後に血管を形成する内皮細胞へ分化することである。血管新生(angiogenesis)とは、既存の血管から血管を形成することである。血管の形成(blood vessel formation)、血管新生(neovascularization)および脈管化(vascularization)などの用語は、脈管形成および血管新生の両方の範囲に含まれる。
【0006】
血管新生(血管の形成の一例)とは、既に存在している血管から発生することによって、新規の毛細血管を形成することであり、発達の間だけではなく、多くの生理学的および病理学的な状況において生じる(Folkman J. Nature Medicine 1995)。血管新生による新規の血管の形成には、コードとチューブを形成し、最終的には成熟するための、内皮細胞の増殖、移動、相互作用および接着を含む複合的な連続した事象を含む。生理学的に、血管新生は、組織増殖、怪我の治癒、および女性の生殖機能のために必要であり、そして、網膜疾患、アテローム性動脈硬化、子宮内膜症、炎症状態などの病理過程の1つの構成要素である。しかしながら、血管新生への昔からの多大な興味は、臨界サイズを越えて増殖する固形腫瘍について、それらが、自身の内部微小循環を形成するために、周囲の間質から内皮細胞を補充しなければならないという考えに発する。血管新生を促進するために、腫瘍は、内皮細胞の増殖および移動を刺激する様々な因子を遊離する。このような因子には、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)および塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、インターロイキン-8(IL-8)、胎盤成長因子、およびチミジンホスホリアーゼ(platelet-derivedendothelial cell growth factor, Relf M et al Cancer Research 1997)。それゆえ、これらのシグナル伝達経路を妨害し、それにより腫瘍の血管新生をブロックする分子を発見することに、多大な努力がなされている。
【0007】
血管新生を標的とすることは、昔から行われている腫瘍退縮治療と比較して、潜在的に幾つかの有利な点を有している。最も重要なことには、全ての固形腫瘍が血管新生に依存しており、標的とする内皮細胞が容易に治療に使用することができ、遺伝子的に安定であり、治療における耐性を生じる傾向をほとんど有さないことである。タンパク質を発現した癌細胞を標的化することの明らかな欠点の1つは、迅速な細胞増殖と分裂を原因とする、遺伝的な多様性および大きな選択圧が存在することであり、このことは、耐性機構ならびに代替的な経路の開始および使用に起因して、たびたび薬を無効にしてしまう。
【0008】
血管新生阻害は、また、眼の血管の過剰増殖がもたらす糖尿病性網膜症および黄斑変性について最初の展望が示されている。これらの疾患においては、血管が眼の通常の構造を妨げ、または、光が眼の後ろへ到達することをブロックする。新規の血管は、それ自身が、第一の病状であり、血管増殖を停止することによって、失明を防ぐことができる。
【0009】
in vitroおよびin vivoモデルにおいて異なる程度の阻害を示すアンジオスタチン(プラスミノーゲン断片)、抗-血管新生 アンチ-トロンビンIII、エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片)、インターフェロンアルファ/ベータ/ガンマ、プロラクチン16kD断片およびトロンボスポンジン-1(TSP-1)などの、多くの天然の血管新生阻害剤が同定されている。これらの阻害剤は、内皮細胞を標的とし、血管新生を阻害する。例えば、アンジオスタチンにおいて観察されている阻害は、内皮細胞を刺激する血管新生因子から独立している(Eriksson et al FEBS L. 2003)。これは、VEGFに結合する抗体などの因子またはVEGF-受容体キナーゼ活性を阻害する低分子量化合物と対照的である。大部分の腫瘍は、様々な血管新生因子を発現しており、このことは、1つの血管新生経路のみを標的化しても腫瘍拡大を阻害するには十分ではないことを示す。それゆえ、内皮細胞を直接標的化する治療は、多くの腫瘍に由来する因子によって調節される血管新生の問題点を回避する可能性を有する。しかしながら、一方で、このような治療は、成熟した血管を残す間における新血管形成の工程に関与する内皮細胞を特異的に標的化することができるという問題に取り組まなければならない。
【0010】
アンジオモチン(angiomotin)は、血管新生に関与している他の分子(アンジオスタチン)への結合によって同定された(Troyanovsky et al., J. Cell. Biol. 2001;WO99/66038)。一次細胞および細胞ラインにおけるアンジオモチンの発現パターンのリアルタイムPCR分析によって、アンジオモチンは、主に内皮細胞に発現していることが示された。アンジオモチンのin vivoマッピングによって、ヒトの胎盤などの血管新生組織だけでなく腫瘍組織における発現が明らかになった。これらのデータから、血管新生の間に、アンジオモチンが内皮細胞内で上方制御されていることが示唆された。WO99/66038には、アンジオモチン、および、アンジオモチンの使用、例えば、アンジオモチンの薬剤スクリーニングの標的としての使用が論じられている。
【特許文献1】WO99/66038
【特許文献2】US Patent No 4,708,871
【特許文献3】WO97/40177
【特許文献4】US5,869,445
【特許文献5】WO02/053181
【特許文献6】US patent No 5,951,988
【特許文献7】WO92/07573
【特許文献8】WO94/10323
【特許文献9】US Patent No 5,168,062
【特許文献10】US Patent No 5,385,839
【特許文献11】US Patent No 5,122,458
【非特許文献1】Folkman J. Nature Medicine 1995
【非特許文献2】platelet-derivedendothelial cell growth factor, Relf M et al Cancer Research 1997
【非特許文献3】Eriksson et al FEBS L. 2003
【非特許文献4】Troyanovsky et al., J. Cell. Biol. 2001
【非特許文献5】Troyanovsky et al (2001) J Cell Biol 152, 1247-1254
【非特許文献6】Levchelioel al (2003) J Cell Sci 116, 3803-3810
【非特許文献7】Bratt et al (2002) Gene 298(1), 69-77
【非特許文献8】Geysen et al (1984) PNAS 81,3998-4002
【非特許文献9】Geysen et al (1986) Molec hzmunol 23, 709-71
【非特許文献10】London et al (2003) Cancer Gene Ther 10 (11), 823-832
【非特許文献11】Zoller and Smith (1982) Nucl. Acid Res. 10, 6487
【非特許文献12】Sherman and Spatola, J. Am. Chem. Soc., 112:433(1990)
【非特許文献13】Meziere etal (1997) J. Immunol. 159 3230-3237
【非特許文献14】Veber et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:2636 (1978)
【非特許文献15】Thursell et al, Biochem. Biophys. Res. Comm., 111:166(1983)
【非特許文献16】Feller and de la Cruz, 349:720-721,1991
【非特許文献17】Margalit et al., J. Immunol. 138:2213-2229,1987
【非特許文献18】Rothbard and Taylor, EMBO 7:93-100,1988
【非特許文献19】Flak et al., Nature 351:290-296,1991
【非特許文献20】O’Sullivan et al., Anal. Biochem. (1979)100,100-108
【非特許文献21】Rosenfeld et al., Science, 1991, Vol.252, page 432
【非特許文献22】Zhou et al., (1995) Blood 86,3295-3301
【非特許文献23】Roth et al., (1996)Scand. J. Immunology 43,646-651
【非特許文献24】Miller & Vile (1995) Faseb J. 9,190-199
【非特許文献25】Nassander et al., (1992) Cancer Res. 52,646-653
【非特許文献26】Dietrich (2000) Antisense Nucleic Acid Drug Delivery 10, 391-399
【非特許文献27】Cotten et al., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89,6094-6098
【非特許文献28】Ledley (1995) Human Gene Therapy 6,1129-1144
【非特許文献29】Bischoff et al., (1996) Science 274,373-376
【非特許文献30】Martin & Papahadjopoulous (1982) J. Biol. Chem. 257,286-288
【非特許文献31】Rivera et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96(15),8657-62
【非特許文献32】Magari et al., (1997) J. Clin. Invest. 100(11),2865-72
【非特許文献33】Bueler (1999) Biol. Chem. 380(6),613-22
【非特許文献34】Bohl et al, (1998) Blood 92(5),1512-7
【非特許文献35】Abruzzese et al., (1996) J. Mol. Med. 74(7),379-92
【非特許文献36】Nestle et al., (1998) Nature Med. 4,328-332
【非特許文献37】De Bruijn et al., (1998) Cancer Res.58,724-731
【非特許文献38】Charo, J. et al., J. Immunol, 163;5913-5919,199991
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、血管の形成(血管新生)を妨げる免疫応答を生じるための、完全なアンジオモチン分子またはその断片に対応するワクチンの使用を提供する。本発明は、アンジオモチン分子を用いたワクチン接種、および、腫瘍増殖だけでなく血管新生によって発症または悪化する他の病気にとって重要である、血管の形成を防ぐためのワクチンの使用方法を提供する。我々は、アンジオモチンのワクチン接種によって、抗-腫瘍防御がもたらされることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様によって、血管新生に関連した病気または疾患を有する、または、血管新生に関連した病気または疾患の恐れがある対象にワクチン接種するための医薬(ワクチン)の製造における、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドの使用が提供される。
【0013】
本発明の第二の態様によって、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを使用して、血管新生に関連した病気または疾患を有する、または、血管新生に関連した病気または疾患の恐れがある対象にワクチン接種する工程を含む、前記対象を治療する方法が提供される。
【0014】
前記医薬または処置は、予防用処置または治療用処置とすることができる。
【0015】
ワクチン接種は、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを、対象に投与することによって;または、患者の免疫細胞をアンジオモチン分子もしくはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドに、対象の身体の外部にて曝露し、その後で、曝露した免疫細胞(および/またはその子孫)を対象に戻すことによって、行うことができる。
【0016】
ワクチンは、完全なタンパク質(配列1)もしくはその部分、または、そのタンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列2)もしくはその部分を含むことができる。免疫源としてアンジオモチンを用いたワクチン接種の範囲は制限されず、タンパク質、ペプチドおよび遺伝子に基づくワクチン接種手法を包含する。例えば、ワクチンは、アンジオモチンまたは免疫活性類縁体またはアンジオモチンの断片を含むことができる。タンパク質またはペプチドに基づくワクチン成分とポリヌクレオチド/遺伝子に基づくワクチン成分の両方を、同時に、または、順次、個体に投与することが望ましいであろう。このことによって、より強力で、より広く、または、よりバランスが取れた免疫応答を促進することができる。
【0017】
類縁体としては、制限するわけではないが、A) 分子の免疫原性を増大させるために、ネイティブなタンパク質のアミノ酸配列を1つまたは複数のアミノ酸部位で改変した、アンジオモチンペプチドのアナログ;B)得られるペプチドの免疫原性を増大させるための、1つまたは複数のアミノ酸の化学的改変、例えば、アミノ酸上で天然に存在する1つまたは複数の化学基の、人工的な化学基への置換;C)アンジオモチンの断片に対応するペプチドの、免疫原性タンパク質(例えば、キーホールリンペット ヘモシアニン(KLH))またはハプテン(ジニトフェノール(DNP)などの分子量が小さな化学分子)との接合、を含む。
【0018】
本発明の更なる態様によって、有効量のアンジオモチン分子および/または本発明の前記した態様に関して定義したポリヌクレオチドを含む、血管の形成(例えば、血管新生)に対して有効なワクチンが提供される。ワクチンは、レシピエントにおいて内因性アンジオモチンに対する免疫応答を生じさせることができると考えられる。例えば、ヒトにおいて血管の形成に対して有効なワクチンは、有効量のヒトのアンジオモチン分子および/またはヒトのアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含みうる。アンジオモチン分子またはコードしたアンジオモチンポリペプチドは、全長のアンジオモチン、または、内因性アンジオモチンに存在し、利用されやすいエピトープに対する免疫応答を促進する、アンジオモチンの断片とすることができる。
【0019】
ワクチンは、更に、(抗原として)1つまたは複数の腫瘍抗原だけでなく他の既知の血管新生因子、例えばアンジオスタチン受容体を含むことができる。
【0020】
例えば、付随する実施例に示すように、Her2/neu腫瘍抗原の膜貫通型細胞外(TMEC)部分(腫瘍遺伝子の断片)をコードするプラスミドは、ヒトのアンジオモチン分子をコードするプラスミドと相乗的に作用し、マウスにおいて腫瘍の発達を減少させた。それゆえ、Her2/neuは、本発明の本態様のワクチンを部分的に含みうる腫瘍抗原の例である。この実施例において、TMECは、ヒトのHer2/neu腫瘍遺伝子の相同体であるラットp185の膜貫通型であって且つ細胞外の(TMEC)部分に由来する。この実施例は、どのようにして、アンジオモチンに基づくワクチンが、腫瘍抗原とともに、「アジュバンド」として相乗的に機能することができるかを例示している。この腫瘍抗原については、この実施例においてはHer2/neuに由来するが、制限するわけではなく、Cancer/testis腫瘍抗原に由来する抗原(例えば、抗原のMAGE、BAGE、GAGE、NY-ESO-1ファミリー)、分化抗原(例えば、MART-1/MelanA、MC1R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP-1および-2)、広く発現している抗原ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、hTERT、iCE、MUC1および2、PRAME、P15、RUIおよび2、SART-1および3、WT1)ならびに他のより特徴的なまたは共通の抗原(例えば、AFP、b-Catenin、カスパーゼ-8、CDK-4、ELF2、G250、HSP-2、KIA A0205、MUM-1,2および3、RAGE)またはウイルス抗原(例えばHPV-E7、EVB抗原)または融合タンパク質に由来する抗原(例えば、bcr-able、Del-cain、LDL/FUT、TEL/AML1)などの例を含む、ヒト腫瘍において発現している任意の腫瘍抗原から由来することができる。腫瘍抗原は、リコンビナントタンパク質全体、またはプラスミド、またはペプチド、またはそれらの断片または部分(例えば、I型またはII型エピトープ)として投与することができる。
【0021】
ワクチンは、また、更に、腫瘍抗原または抗原性因子に対する、1つまたは複数の抗体を含むことができる。それゆえ、本発明には、また、制限するわけではなく、Her2/neu抗原に対する抗体(例えば、Herceptin/Tranztusumab)、リンパ腫におけるCD20抗原に対する抗体、直腸結腸癌におけるEpCAM抗原に対する抗体を含む、腫瘍抗原に対する抗体と組み合わせた、アンジオモチンワクチンを含む。
【0022】
ワクチンは、アンジオモチン分子に対する免疫応答を生じさせることを意図する。得られた免疫応答は、腫瘍および他の病状の発生および/または生存に必要である新規の毛細血管の形成を阻害することができる。更に(または代替的に)、アンジオモチンは、これまでは、腫瘍細胞内で検出されなかったが、少量のアンジオモチンは、特定の悪性腫瘍が発現しており、それゆえ、腫瘍特異的抗原として働くことができる。理論に束縛されるわけではないが、本発明は、アンジオモチンに反応する特異的なT細胞および/または抗体がその表面でアンジオモチンを発現する腫瘍細胞を認識して死滅させるアンジオモチンワクチン(本明細書で記載)を用いたワクチン接種を含む。腫瘍特異的抗原としてアンジオモチンを使用したワクチン接種のための全てのモデルおよびアプローチは、抗-血管新生効果のためのワクチン接種のために指摘したのと同じ方法を使用する。
【0023】
当業者に知られているように、ワクチン(すなわち、レシピエントの免疫システムを介して作用する因子)のための投与分子および投与様式の選択は、直接的な治療薬のものとは異なる。例えば、非-ワクチンのアンジオモチン治療用物質と比較した、ワクチンとして投与するアンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドの差異には、1つまたは複数の以下の事項が含まれる。
【0024】
非-ワクチン治療用の物質は、アンジオモチン分子の機能を維持していなければならない(例えば、アンジオスタチンに結合する能力;または細胞成分と相互作用する能力)。一方、ワクチン分子には、機能的なアンジオモチン分子である必要はない。ワクチン分子は、ネイティブなアンジオモチン分子との免疫学的な交差反応である免疫応答を生じる最も小さな非-機能的な誘導体(断片を含む)またはアナログとすることができる(しかしながら、必ずしもそうである必要はない)。
【0025】
通常、例えば、「体重kg当り」基準で測定したときに、ワクチンの投与量は、非-ワクチン治療の投与量よりも一桁または二桁低い。
【0026】
ワクチンは、免疫応答を高めるサイトカイン、BCG、ミョウバンなどの「アジュバント」を含みうる(または伴う)。非ワクチン治療では、このような随伴物は必要でない。例えば、「自己」タンパク質に対して免疫する本発明の場合、すなわち、ヒトにおいてヒトタンパク質に対して免疫する本発明の場合には、アジュバントは特に重要である。
【0027】
2または3週間に一度の追加免疫を含むワクチン投与とは対照的に、アンジオモチン分子の作用機構(血管新生の妨害)を特に考慮すると、非-ワクチン治療用の物質はほとんど毎日投与する必要がある。遺伝子ワクチンまたはポリペプチド/ペプチドワクチンのいずれかについては、例えば、数週間の間隔での一回または二回の投与が必要である。
【0028】
非-ワクチンベクターは、高レベルで、機能的分子を発現する能力を有するべきである;このことは、実際に達成することは非常に困難である。DNAワクチンは、極めてより低いレベルで免疫抗原を発現することができる。実施例で使用されているCMVプロモーターに基づくシステムを含む、多くの適したベクターおよびプロモーターシステムは既知である。免疫抗原は、ネイティブなアンジオモチンに対する免疫応答(抗体および/またはT細胞)を十分に産生することができるアンジオモチンの最小の非機能的なペプチドまたはドメインとすることができる。
【0029】
本発明の実施態様においては、アンジオモチンまたはその断片もしくは誘導体を含むまたはコードするワクチンを、部分的に、局所的に、全身に、または経腸的に投与し、前記分子に対して長期間持続する免疫を生じさせる。得られた免疫応答は、新規の血管形成を防止する。血管新生の防止は、腫瘍形成または他の脈管形成/血管新生-関連疾患に対して予防または治療効果をもたらす。
【0030】
本発明の他の実施態様においては、患者の免疫細胞を、アンジオモチン分子(例えば、全長アンジオモチンの断片とすることができる)によってex vivoで(患者の身体の外で)刺激させる。アンジオモチン分子(例えば、全長アンジオモチンの断片とすることができる)をコードするポリヌクレオチドの、いわゆる抗原提示細胞へのトランスフェクション後に続き、アンジオモチン分子が、患者の免疫細胞、特にT細胞に提示される。抗原提示細胞は、また、アンジオモチンタンパク質またはアンジオモチンタンパク質に由来するペプチドと外部で予め処理することができる。リンパ球を刺激する能力を有する全てのタイプの細胞は、本明細書では、便宜上、抗原提示細胞として定義する;これらは、いわゆる単球または骨髄のリンパ細胞に由来する樹状細胞;マイトジェンで刺激したB細胞またはs.c.エプスタイン バー ウイルスによって不死化したB細胞を含むと考えられる。
【0031】
刺激した免疫細胞を患者へ戻す養子免疫伝達は、伝達した免疫細胞、主にCD8+またはCD4+タイプのT細胞による内皮細胞で発現したアンジオモチンの認識を介して、血管新生の阻害をもたらし、結果として、腫瘍または他の血管新生関連疾患の進展の制限をもたらすことができる。刺激した免疫細胞を患者へ戻す養子免疫伝達は、また、伝達した免疫細胞、主にCD8+またはCD4+タイプのT細胞による、腫瘍抗原として腫瘍細胞に発現したアンジオモチンの認識を介して、腫瘍の進展の制限をもたらすことができる。
【0032】
脈管形成/血管新生関連疾患には、癌(特に固形腫瘍)、血管腫、眼の血管新生、糖尿病性網膜症、黄斑変性、リウマチ性関節炎、炎症性疾患(例えば、乾癬、腸の慢性炎症、喘息)および子宮内膜症を含む。
【0033】
脈管形成/血管新生関連疾患の危険を有する患者は、癌の危険、特には固形腫瘍の危険を有する患者、例えば、固形腫瘍をもたらす癌を形成する遺伝性素因を有する患者、または、固形腫瘍の環境上の危険を有する患者とすることができる。例えば、癌の危険を有する患者は、大腸にポリープが存在し、癌の家族歴を有するヒト;または、子宮頸癌に関連したヒトパピローマウイルス種に感染したことが判明している、および/もしくは、子宮頸癌の最も早期の変化を示すパップスメアが提示された女性とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
「アンジオモチン分子」については、天然に存在する全長のアンジオモチンポリペプチドまたはその断片、または、天然に存在するアンジオモチンポリペプチドまたはその断片と交差反応する抗原性を保持するそれらのどちらかのバリアントを含む。用語「アンジオモチン」は、当業者によく知られており、coiled-coilおよびC末端PDZ結合ドメインを有し、72kDaの予想分子量を有する細胞表面関連タンパク質と考えられているポリペプチドを含む。アンジオスタチンに結合し、内皮細胞の遊走およびチューブ形成に対するアンジオスタチンの阻害効果を媒介すると考えられる。天然のアンジオモチンポリペプチドの例を、以下に示す:Troyanovsky et al (2001) J Cell Biol 152, 1247-1254; WO 99/66038;Levchelioel al (2003) J Cell Sci 116, 3803-3810 ; Bratt et al (2002) Gene 298(1), 69-77; GenBank accession No NP_573572 (human)。アンジオモチンポリペプチドは、例えば、前記に記載した参考文献またはaccession numberまたは配列1の1つに示すような天然のアンジオモチンポリペプチド配列と少なくとも50%、60%から70%、70%から80%、80から90%または90から95%の配列同一性を有することができる。1つの実施態様においては、アンジオモチンポリペプチドは、天然のアンジオモチンポリペプチド配列(例えば、NP_573572または配列1)と95%から100%の間の配列同一性を有する。アンジオモチンポリペプチドは、Bratt et al (2002)に記載の「モチン」ファミリーのメンバー、すなわち、アンジオモチン-様1(amotl1)またはアンジオモチン-2(amotl2)とすることができる。このようなポリペプチドの断片を使用する場合、アンジオモチンポリペプチド内の対応する領域を有するモチンポリペプチドの領域を包含する断片であることが好ましい。このような領域は、Bratt et al (2002)、例えば図4で指摘されており、coiled-coilドメイン領域および/またはPDZ結合領域の一部または全てを含みうる。amot1の適した断片は、少なくともamot1のアミノ酸439から956の部分を含みうる。Amot2の適した断片は、少なくともamot2のアミノ酸307から779の部分を含みうる。
【0035】
配列同一性を評価する方法を提供する参考文献は、更に以下に論じる。
【0036】
本発明は、また、グリコシル化された、または、されていない、アンジオモチン由来ポリペプチドを含む。酵母または哺乳類発現システムで発現させたポリペプチドは、発現システムに依存して、ネイティブ分子と分子量およびグリコシル化パターンが類似しているか、または僅かに異なっている。例えば、E.coliなどの細菌内でのポリペプチドをコードするDNAの発現は、典型的には、非-グリコシル化分子を提供する。真核生物のタンパク質のN-グリコシル化部位は、3つのアミノ酸Asn-A.sub.1-Z(A.sub.1は、Pro以外のアミノ酸であり、Zは、SerまたはThrである)によって特徴付けられる。不活性化N-グリコシル化部位を有するポリペプチドのバリアントは、オリゴヌクレオチド合成、および、ライゲーションまたは部位特異的変異誘発手法などの当業者には既知の手法によって調製することができ、それらは、本発明の範囲に含まれる。代替的に、N-結合グリコシル化部位は、アンジオモチンポリペプチドに付加することができる。
【0037】
より具体的には、本発明の開示により、アンジオモチンに基づくワクチンが腫瘍拒絶応答を引き起こすことができ、このことは、胸腺依存リンパ球(以後は「T細胞」)応答が引き起こされることを意味する。それゆえ、アンジオモチンに基づくワクチン接種によって誘発される免疫T細胞応答は、悪性腫瘍または他の脈管形成/血管新生関連疾患を予防または治療するのに使用することができる。本発明は、また、他の態様において、このようなペプチドの発現を導く核酸分子を、免疫化のために、単独で、または、ウイルスベクター内で使用することができる。
【0038】
エピトープ配列は、当業者に知られた方法によって同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols (1996) Methods Mol Biol 66, Glenn E Morris, Ed, Humana Press, Totowa, New Jersey; US Patent No 4,708,871 ; Geysen et al (1984) PNAS 81,3998-4002 ; Geysen et al (1986) Molec hzmunol 23, 709-71に開示されている方法などのエピトープマッピング手法を使用することができる。直鎖状または立体配座のエピトープは、例えばX線結晶解析または2次元核磁気共鳴による構造データなどの方法を使用して同定することができる。抗原性または疎水性プロット(例えば、Hopp et al (1981) PNAS 78, 3824-3828およびKyte et al (1982) J Mol Biol 157, 105-132のアルゴリズムに基づいて、 Oxford Molecular Groupから購入することができるOMIGAソフトウエアを使用して得られる)は、また、エピトープを同定するのに有用である。
【0039】
エピトープ、または、組成物、または、以下に記載するアンジオモチンもしくはそのエピトープを発現する細胞全体のワクチンを、免疫応答の産生ならびに/または血管新生および腫瘍発達を確認するために、例えば、実施例で開示された腫瘍発達のモデルマウスにおいて評価することができる。Mouse HLA-A2遺伝子組み換えマウスモデルまたは他のヒトHLAクラスIまたはII抗原について遺伝子組み換えしたマウスモデルを使用することができる。アンジオモチンに基づくワクチンの効果を試験するための他の適切なモデルには、乳癌を発症するneu-T BALB/cモデルなどの、自発的に腫瘍を発達させる遺伝子組み換えマウスモデルを含む。アンジオモチンに基づくワクチンが、これらのモデルにおける宿主の免疫システムを活性化する能力は、ELISPOTアッセイ、サイトカイン遊離アッセイおよびT細胞増殖アッセイなどのCD8+およびCD4+T細胞応答を測定する既知の免疫アッセイだけでなく、ELISAアッセイおよびフローサイトメトリーに基づくアッセイなどの抗体応答を測定するアッセイを使用することによって、評価することができる。アンジオモチンまたは本明細書で記載するアンジオモチンに基づく他の組成物で免疫したマウス内で血管新生が阻害されるかどうかを求めるために、腫瘍における血管新生の発達は、「マトリゲル-プラグ」アッセイ(当業者に既知であり、(例えば)London et al (2003) Cancer Gene Ther 10 (11), 823-832に開示されている)またはskin-flap window-chamber modelなどのイメージングに基づくアッセイを含む様々な既知の方法によって評価することができる。
【0040】
レシピエントは、ヒト、例えば、血管新生関連疾患または病気(例えば固形腫瘍、血管腫、子宮内膜症、眼の血管新生、糖尿病性網膜症、黄斑変性、リウマチ性関節炎、炎症性疾患(例えば、乾癬、腸の慢性炎症、喘息))を発症した、または、危険を有するヒトとすることができる。代替的に、レシピエントは、このような病気を発症したまたは危険を有する動物、例えば、飼いならされた動物(例えば、ネコもしくはイヌなどのペット)または農業上重要な動物(すなわち家畜)、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギもしくは家禽(例えばニワトリおよび七面鳥)とすることができる。
【0041】
1つの実施態様においては、ポリペプチドまたは複数のポリペプチドは、少なくともアンジオモチンのドメイン、すなわち、全長のアンジオモチンの折りたたみと類似の方法で自主的に折りたたむことができる、または折りたたむことができると予想されるアンジオモチンの部分を含む。コンピューター分析を使用して(例えば、疎水性および/またはαヘリックスまたはβシート鎖を形成する可能性の分析を組み込む)、このようなドメインを同定する方法は、当業者によって既知である。自主的に折りたたむ能力は、ネイティブのアンジオモチンに対する免疫応答を生じさせるのに重要であろうと考えられている。しかしながら、アンジオモチンは、抗原提示細胞によって小さなペプチド断片へと分解されて、T細胞それ自身に提示されるので、T細胞に基づく免疫応答が誘導された時は、折りたたみは重要でないと考えられる;その場合は、折りたたみまたは構造は重要でなく、アミノ酸配列のみが重要であると考えられる。アンジオモチンワクチンは、基本的に、T細胞に基づく免疫応答を誘導することによって機能し、自主的な折りたたみが可能なドメインを使用する必要は無いであろうと考えられる。
【0042】
1つの実施態様においては、ポリペプチドまたは複数のポリペプチドは、全長のアンジオモチンを含む。
【0043】
1つのまたは複数のアンジオモチンのエピトープを提示する1つまたは複数のペプチドまたはペプチド模倣化合物(例えば、実施例1で論じる)を使用することができる。例えば、約15、12、10または9アミノ酸までの短いペプチド(または、このような短いペプチドをコードするポリヌクレオチド)を使用することができる。エピトープについては、当業者に既知であるミモトープを含む。
【0044】
抗体は、ワクチンにおける抗原として使用することができる。例えば、目標とする標的(例えばアンジオモチン)に対する抗体に対する抗体を投与すると、免疫システムのB細胞が、内因性アンジオモチンを認識する抗体に対する抗体を産生する。こらは、抗-イデオタイプワクチンと呼ばれ、受動的な抗体療法とは異なり、目標とする標的に対する抗体を投与する。このような抗-イデオタイプ抗体は、本明細書で使用する「アンジオモチン分子」の定義の範囲内に含まれる。
【0045】
本発明は、また、アンジオモチンに基づくワクチンと、内皮細胞を標的とする他のタイプの抗血管新生療法または製品との組み合わせを提供する。それゆえ、例えば、ワクチンは、更に(アンジオモチン分子またはポリペプチドに加えて)、血管新生-促進ポリペプチド(アンジオモチン以外)例えば、VEGFR-2(例えばAccession No AF063658)またはTie2(例えばAccession No BC035514)に対する免疫源として機能するのに適したポリヌクレオチドまたはポリペプチド(またはペプチド模倣化合物)を含むことができる。それゆえ、例えば、本発明は、例えば、(抗-アンジオモチンワクチン接種と組み合わせた)pDNAワクチン、ウイルスベクターとして投与した、または、DC細胞に発現させたもしくはDC細胞上にロードさせた血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)を用いたワクチン接種を含む。抗-アンジオモチンワクチン接種と組み合わせにおいて有用であろう多くの他のタイプの抗-血管新生療法が存在する。血管新生-促進ポリペプチド配列についての好ましさは、アンジオモチンについて示された(適切に適合した)好ましさに対応する。これらの他の血管新生-促進ポリペプチドに由来する配列(例えばVEGFR-2配列)は、アンジオモチンに由来する配列と同じまたは異なるポリペプチド(または、必要に応じてポリヌクレオチド)に含まれることができる。治療またはワクチンは、更に、例えば、pDNAワクチン、ウイルスベクターとして投与する、または、DC細胞に発現させたもしくはDC細胞上にロードさせた、アンジオモチンに基づくワクチンと、抗-腫瘍効果を有するサイトカインまたは腫瘍抗原の投与に基づく免疫療法の組み合わせを含みうる。
【0046】
アンジオモチンについては、本明細書に開示されているアンジオモチン配列、ならびに/または、前記で引用した参考文献(公共のデーターベースの参考文献を含む)および/もしくは他の公共のデーターベースの記録に開示されているアンジオモチン配列と実質的に同じ抗原性(例えば、抗-血管新生効果によって評価する)、相互作用または活性を有するバリアント、断片および融合体を含む。アンジオモチンまたはその断片が、天然のアンジオモチンもしくはその断片、またはアンジオモチンに由来しないポリペプチドとアンジオモチンもしくは断片の融合体であることが好ましい。例えば、アンジオモチンに由来する配列は、発現、安定性および/または精製を助ける部分、例えば、当業者にとって既知であるマルトース結合タンパク質(MBP)部分またはHisタグと融合することができる。
【0047】
「バリアント」は、Wisconsin Sequence Analysis Package, version 8 for Unix(登録商標)のBestfit Programによって測定した場合に、本明細書に開示されている、または、前記で指摘した参考文献に開示されているアンジオモチンポリペプチドと、少なくとも50%(好ましくは60、70、80、90、95または99%)の配列一致性を有する領域を有する。同一性の割合は、候補バリアント分子の少なくとも50(好ましくは少なくとも60、75または100)のアミノ酸の領域、および、5%までのギャップを許容するアンジオモチン配列における等価な長さの最も類似した領域を参照して計算することができる。
【0048】
同一性の割合は、例えば、Devereux et al. (Nucl. Acids res. 12:386, 1984)に開示された、および、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から購入できるGAP computer program, version 6.0を使用して、配列情報を比較することによって求めることができる。GAP programは、Smith and Waterman(Adv. Appl. Math 2.482. 1981)によって修正された、Neddleman and Wunsch(J. Mol. Biol. 48:443, 1970)のアライメント方法を利用する。GAP programの好ましいデフォルトパラメータは:(1)ヌクレオチドについての比較マトリクス(一致の場合は1の値を含み、不一致の場合は0の値を含む)、および、Schwarts and Dayhoff, eds, Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp 353-358, 1979によって開示されたBribskov and Burgess, Nucl. Acids Res. 14 6745, 1986の加重比較マトリクス;(2)各ギャップにつき3.0のペナルティおよび各ギャップにおける各シンボルにつき0.10のペナルティ;ならびに(3)末端ギャップについてはペナルティ無し、を含む。
【0049】
好ましくは、アンジオモチンポリペプチドは、既知の全長の野生型アンジオモチン(前記したネイティブな全長の野生型アンジオモチンと抗原的に交差反応する)のバリアントまたは融合体からなる。
【0050】
好ましいアンジオモチン配列を、例えば、配列1および2において示す。
【0051】
置換、欠失、挿入または任意のサブコンビネーションを、最終的なコンストラクトを得るのに使用することができる。アミノ酸は20のみ知られているが、64の可能性あるコドン配列が存在するので、異なるコドンが同じアミノ酸を産生するという意味で、遺伝子コードは縮重している。それゆえ、各アミノ酸について少なくとも1つのコドンが存在している、すなわち、各コドンは、1つのアミノ酸を産生し、他を産生しない。翻訳の間に、最終的に産生されたポリペプチドにおいて適切なアミノ酸配列を得るためには、適切なリーディングフレームが維持されていなければならない。
【0052】
既知の配列が有する既定のアミノ酸部位における付加、欠失または置換のための方法は、良く知られている。例示的な方法には、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的な変異およびポリメラーゼ連鎖反応を含む。
【0053】
オリゴヌクレオチド部位特異的変異は、本質的には、変異を導入する領域を含む一本鎖のDNAと、望む変異をコードするオリゴヌクレオチドをハイブリダイズし、前記一本鎖をオリゴヌクレオチドの伸張のための鋳型として使用することによって、変異を含む鎖を産生することを含む。この手法は、様々な形態で、Zoller and Smith (1982) Nucl. Acid Res. 10, 6487に開示されている。
【0054】
ワクチン抗原は、1つより多いアンジオモチンに由来するエピトープを含みうる。エピトープは、CD4+またはCD8+T細胞によって認識されるポリペプチドとして定義される。このエピトープは、当業者に知られているように、免疫応答を促進するのに有用である。
【0055】
ワクチンは、当業者にとっては明らかであるように、更なるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含みうる。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドには、例えば、組み換え生物もしくはその部分、またはその生成物(細胞培養液の上清など)、好ましくは微生物の形態で、好ましくはポリヌクレオチドを発現することができる、すなわち、アンジオモチンアミノ酸配列を発現することができる形態で、または、代替的には、宿主細胞内での発現のためにポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞へと伝達することができる形態で、ワクチンに含まれことができる。組み換え微生物は、好ましくは、当業者に良く知られているように、非毒性微生物である。組み換え微生物は、例えば、ビフィドバクテリウムもしくはラクトバシラス、または、弱毒化SalmonellaもしくはBCGもしくは弱毒化E.coliとすることができる。組み換え生物は、代替的には、例えば、WO97/40177の教示を利用する植物とすることができる。
【0056】
更なる代替として、ワクチンは、真核細胞全体または細胞によって含まれる物質のいずれかから調製することができる。例えば、細胞は、ワクチンを意図するタイプの生物に由来することができる。例えば、細胞はヒト細胞とすることができる。細胞は、組み換え細胞とすることができる。細胞は、アンジオモチン分子を発現することができる、例えば、アンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトした細胞ラインの細胞とすることができる。それゆえ、細胞は、アンジオモチン分子をコードする組み換えポリヌクレオチドを含み、組み換えアンジオモチン分子を発現することができる。細胞は、放射線照射し、加熱殺菌し、またはパラホルムアルデヒド固定して免疫に使用することができる。
【0057】
細胞は、ヒト起源の、または、アンジオモチンを発現する他の種に由来する異種生物起源の、アンジオモチンを発現する腫瘍細胞、または新しく移植されたもしくは培養された内皮細胞、またはアンジオモチンもしくはこの分子の一部をトランスフェクトし発現する細胞とすることができる。細胞は、アンジオモチンを発現することを求めるために試験することができる。細胞は、アンジオモチン分子でロードされ、または、アンジオモチンもしくはアンジオモチンに関連した生成物をコードするcDNAまたはmRNAでトランスフェクトされた、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞とすることができる。腫瘍細胞ワクチン(必ずしもアンジオモチン抗原を含む必要はない)は、アンジオモチンワクチンと同時に使用することができる。全細胞ワクチンについては、腫瘍細胞を患者から取り出し、研究室で増殖させる。その後、1)腫瘍細胞がこれ以上増殖せず、2)患者に感染することができるものが何も存在しないことが実現するように、腫瘍細胞を処理する。全腫瘍細胞をヒトに注入すると、腫瘍細胞上の抗原に対する免疫応答が生じる。
【0058】
全細胞癌ワクチンには2つのタイプが存在する。自家全細胞ワクチンは、患者自身の全ての、不活性化した腫瘍細胞から調製される。他家全細胞ワクチンは、他人の全ての、不活性化した腫瘍細胞または幾人かのヒトの組み合わせた腫瘍細胞から調製される。
【0059】
APCワクチンは、腫瘍細胞を殺傷するT細胞を刺激するのに最も適した細胞、すなわち抗原提示細胞(APC)から調製される。APCの最も一般的なタイプとしては、樹状細胞が使用される。癌ワクチンは、例えば、研究室内で、腫瘍抗原で刺激したまたは腫瘍抗原の存在下で増殖させた樹状細胞から調製することができる。抗原で刺激した樹状細胞(またはAPC)は、その表面に腫瘍抗原を有しており、注入するときには、強力にT細胞が増殖するのを活性化し、腫瘍細胞を殺傷する準備ができている。抗原としてアンジオモチン分子を用いた同じ方法を使用することができる。
【0060】
抗原ワクチンは全細胞から調製するわけではないが、腫瘍が含む1つまたは複数の抗原から調製される。1つの腫瘍は、多くの抗原を含む。特定のタイプの全ての癌に共通している抗原もあれば、それぞれに特徴的な抗原もある。数は少ないが、異なるタイプの癌の腫瘍の間で共有されている抗原もある。抗原を抗原ワクチンに伝達する多くの方法が存在する。腫瘍細胞に由来するタンパク質またはタンパク質の断片を、直接に抗原として与えることができる。
【0061】
アンジオモチン分子(または他のワクチン抗原)は、例えば、前記で論じたアンジオモチンエピトープまたはミモトープに対応する、ペプチド模倣化合物とすることができる。用語「ペプチド模倣」とは、治療剤としての特定のペプチドの構造および望ましい特徴を模倣するが、望ましくない特徴は有さない化合物を指す。例えば、モルヒネは、経口で投与することができ、ペプチドエンドルフィンのペプチド模倣物である化合物である。
【0062】
経口での生物学的利用率の不足およびタンパク質分解によって、ペプチドが関連する治療活用は制限される。典型的には、例えば、ペプチドは、エキソ-およびエンドペプチダーゼによってin vivoで迅速に分解し、一般的には非常に短い生物学的半減期となる。ペプチドの潜在的な治療薬としてのもう1つの欠点は、経口投与を介した生物学的利用率の不足である。消化管でのタンパク質分解酵素によるペプチドの分解が、重要な寄与因子であろう。しかしながら、問題はより複雑である、なぜならば、迅速には代謝によって不活性化されない分子量が小さく環状のペプチドであっても、経口を介した生物学的利用率が悪いからである。このことは、腸膜を介した輸送の乏しさ、ならびに、肝抽出および続く腸への排出による血液からのクリアランスの迅速さを原因とするのであろう。これらの観察によって、複数のアミド結合が、経口投与を介した生物学的利用率に干渉していることが示唆された。ペプチド薬を経口投与した場合、ペプチド鎖中に存在するアミノ酸残基に結合したペプチド結合がバラバラに壊れると考えられる。
【0063】
ペプチド模倣物をデザインし合成する多くの異なる方法が存在する。例えば、Sherman and Spatola, J. Am. Chem. Soc., 112:433(1990)に開示されている1つの方法においては、1つまたは複数のアミド結合を、難解な方法で、様々な化学官能基で置換してした。このステップワイズな方法は、活性なアナログが得られたという点で、幾つかの成功をもたらした。幾つかの例においては、これらのアナログは、天然の対応物より長い生物学的半減期を有することが示された。それにもかかわらず、この方法には制限が存在する。1つより多いアミド結合が置換されることは稀であった。結果として、得られたアナログは、分子内のいずれかの部位で、酵素による不活性化を受けやすいままであった。ペプチド結合を置換する場合は、新規のリンカー部分が、ペプチド結合と実質的に同じ電荷分布および実質的に同じ平面性を有していることが好ましい。
【0064】
ペプチド結合が反転しているretro-inverso型ペプチド模倣物は、例えば、Meziere etal (1997) J. Immunol. 159 3230-3237に開示されている方法などの、当業界で既知の方法によって合成することができる。この方法には、側鎖の位置ではなく骨格に関連した電荷を含む擬ペプチドを調製することが含まれる。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含むretro-inverse型ペプチドは、タンパク質分解に非常に耐性を示す。
【0065】
もう1つの方法においては、Dアミノ酸およびN-メチルアミノ酸などの、様々な非コードまたは改変アミノ酸を使用して、哺乳類ペプチドを改変した。代替的には、想定される生物活性な構造は、環化などの共有結合の改変、または、γ-ラクタムもしくは他のタイプの架橋の挿入によって、安定化されてきた。例えば、Veber et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:2636 (1978)およびThursell et al, Biochem. Biophys. Res. Comm., 111:166(1983)を参照せよ。
【0066】
多くの合成方法で共通したテーマは、ペプチドに基づくフレームワークへの環状部分を導入することである。環状部分は、ペプチド構造の構造的な空間を制限し、このことが、しばしば、特定の生物学的受容体に対するペプチドの親和性の増加をもたらす。この方法の更なる利点は、ペプチドへの環状部分の導入が、また、細胞内ペプチダーゼへの感受性が消滅したペプチドもたらすことである。
【0067】
環状の安定化ペプチド模倣物の合成についての1つの方法は、閉環メタセシス(RCM)である。この方法は、ペプチド前駆体を合成する工程、および、ペプチド前駆体をRCM触媒と接触させて構造的に制限されたペプチドを得る工程を含む。適したペプチド前駆体は、2つ以上の不飽和C-C結合を含みうる。この方法は、固相ペプチド合成方法を使用して行なうことができる。この実施態様においては、固相に固定された前駆体を、RCM触媒と接触させて、その後、生成物を固相から切断して、構造的に制限されたペプチドを得る。
【0068】
ポリペプチドを合成する前または合成する後に1つまたは複数のアミノ酸残基を化学的に改変したポリペプチドは、ポリペプチドの機能、すなわち、in vivoでの特異的な免疫応答の発生を、実質的に変化させないままであることを条件として、抗原として使用することができる。このような改変には、酸または塩基、特に生理学的に許容される有機または無機酸と塩を形成すること、末端カルボキシ基のエステルまたはアミドを形成すること、および、アミノ酸にN-t-ブトキシカルボニルなどの保護基を結合することが含まれる。このような改変は、in vivoでの代謝から、ポリペプチドを保護することができる。ポリペプチドはマンノシル化することができ、または、さもなければ、抗原性を増すように改変することができ、または、抗原性および/もしくは免疫原性を増すための化合物と組み合わせることができる。
【0069】
アンジオモチンに由来するアゴニスト性エピトープの使用は、また、本発明に含まれる。アゴニスト性エピトープは、MHCクラスIまたはMHCクラスII拘束性CD8またはCD4+T細胞のより効率的な活性を介して、免疫システムをより効率的に活性化するようにデザインされる。T細胞エピトープに由来するアゴニスト性エピトープをデザインする2つの一般的な手法は、本発明に含まれる。1つの手法は、より高いHLAクラスIまたはクラスII結合をもたらすHLAアンカー残基の改変が必要である。腫瘍抗原または微生物の抗原に由来する幾つかのHLAクラスI結合ペプチドに関して、この手法が適用される。代替的に、T細胞受容体(TCRと省略)への接触に関与する残基の置換は、また、T細胞による応答を増し、本発明によって保護されることを意図する。
【0070】
一般的に、当業者に既知であるように、そして、例えばUS5,869,445に開示されているように、アミノ酸置換は様々な方法で調製され、本発明の範囲内で他の態様のバリアントを提供することができる。第一に、例えば、アミノ酸置換は、保存的になされることができる;すなわち、ペプチド化学の当業者が、ポリペプチドの二次構造および疎水性親水性特性が実質的に変化しないことを予期するように、置換アミノ酸を、類似した特性を有するアミノ酸に置換する。一般的には、アミノ酸の以下の群が、保存的変化を表す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cyc、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。非-保存的な変化の例は、一つの群のアミノ酸を、他の群のアミノ酸に置換することである。
【0071】
本発明のバリアントを産生するためのアミノ酸置換の他の方法は、クラスII MHC分子(CD4+T細胞応答のための)またはクラスI MHC分子(CD8+T細胞応答のための)に結合することができるT細胞モチーフにおけるアミノ酸を同定および置換することである。理論的にはクラスII MHC分子に結合することができるモチーフを有する(アンジオモチン分子の)ペプチド断片は、コンピューター分析によって同定することができる。例えば、T細胞認識についての可能性を有する部位を識別するようにデザインされた幾つかのコンピューターアルゴリズムを導入した、タンパク質配列分析パッケージ、T Sitesを使用することができる(Feller and dela Cruz, Nature 349:720-721,1991)。2つのサーチアルゴリズムが使用される:(1)MargalitによるAMPHIアルゴリズム(Feller and de la Cruz, 349:720-721,1991; Margalit et al., J. Immunol. 138:2213-2229,1987)は、アルファ-ヘリックスの周期性および両親媒性によってエピトープモチーフを同定する;(2)Rothbard and Taylorアルゴリズムは、電荷および極性パターンによってエピトープモチーフを同定する(Rothbard and Taylor, EMBO 7:93-100,1988)。両方のモチーフを有する断片は、最も適切にクラスII MHC分子に結合する。CD8+T細胞は、クラスI MHC分子に結合するペプチドを認識する。Falk et al.は、特定のMHC分子に結合するペプチドが識別可能な配列モチーフを共有することを求めた(Flak et al., Nature 351:290-296,1991)。HLA-A2.1の溝内で結合するペプチドモチーフは、培養した細胞ラインのHLA-A2.1分子から剥ぎ取ったペプチドのエドマン分解によって定義された(上記Falk et al.の表2)。この方法によって、典型的なまたは平均的なHLA-A2.1結合ペプチドが、部位2(L)および9(V)に位置する主要なアンカー残基を有する9アミノ酸長として同定された。一般的に存在する強力な結合残基は、部位2(M)、4(E,K)、6(V)、および8(K)と同定された。同定されたモチーフは、平均的な多くの結合ペプチドを表す。
【0072】
エピトープ(例えば、エピトープ-形成アミノ酸配列、または抗-血管形成エピトープを含むと考えられる領域)は、単数コピーとして、または、複数コピーとして、例えばタンデムリピートとして存在することができる。このようなタンデムまたは複数リピートは、それ自身が十分に抗原性を有しており、キャリアの使用が必要でない。ポリペプチドが、N末端およびC末端が互いにつながったループとして形成されること、または、1つまたは複数のCys残基を末端に付加して、抗原性の増加および/またはジスルフィド結合の形成をもたらすことは有用である。エピトープ(例えばエピトープ-形成アミノ酸配列)が、キャリア(好ましくはポリペプチド)と共有結合している場合、エピトープ形成アミノ酸配列がループを形成するように配向することが好ましい。
【0073】
現在の免疫学的理論に従えば、免疫系を刺激し、または刺激を増大するために、キャリア機能は、任意の免疫原性調製物に存在すべきである。本発明の前記した態様に関する前記エピトープは、血清アルブミン、ミオグロビン、細菌のトキソイドおよびキーホールリンペット・ヘモシアニンなどの別々のキャリアと会合(例えば架橋によって)させることができる。アンジオモチンそれ自身は、キャリアまたはアジュバントとして作用する。免疫応答においてT細胞の支援を誘導する、より最近に開発されたキャリアには、B型肝炎コア抗原(ヌクレオキャプシドタンパク質とも呼ばれる)、Thr-Ala-Ser-Gly-Val-Ala-Glu-Thr-Thr-Asn-Cysなどの想定されるT細胞エピトープ、ベータ-ガラクトシダーゼおよびインターロイキン1-1の163-171ペプチドが含まれる。後者の化合物は、キャリアまたはアジュバントまたはこれら両方として、様々にみなされることができる。
【0074】
代替的に、同じまたは異なるエピトープの幾つかのコピーは互いに架橋することができる;この場合、独立したキャリアそのものは存在しないが、キャリア機能はこのような架橋によってもたらすことができる。適した架橋剤には、SigmaおよびPierceなどのカタログに掲載されている架橋剤、例えば、グルタルアルデヒド、カルボジイミドおよびスクシニル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートが含まれ、後者の剤は、(存在するならば)C末端システイン残基の-SH基を利用する。一般的にはO’Sullivan et al., Anal. Biochem. (1979)100,100-108に開示されている方法などの、ポリペプチドを架橋する任意の一般的な方法を使用することができる。例えば、第一の部分をチオール基で強化し、第二の部分を、チオール基と反応することができる二官能性剤(例えば、ヨード酢酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHIA)またはN-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))、コンジュゲート種の間でジスルフィド結合を導入するヘテロ二官能性架橋剤で反応させることができる。例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いて達成されるアミドおよびチオエーテル結合は、一般的に、ジスルフィド結合よりも、in vivoにおいてより安定である。
【0075】
更なる有用な架橋剤には、第一級アミンのチオール化剤であり、穏やかな条件下でスルフヒドリル基の脱保護を可能とするS-アセチルチオグリコール酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SATA)、ジメチルスベルイミデート ジヒドロクロライドおよびN,N’-o-フェニレンジマレイミドを含む。
【0076】
ポリペプチドを、適した宿主において、適したヌクレオチド配列の発現によって調製する場合、キャリアとして機能するペプチド配列を有する融合生成物としてポリペプチドを発現することが有用であろう。Kabigenの「Exosec」システムは、このような処理の例である。
【0077】
使用することができる他のアジュバントには、WO02/053181に開示されているアジュバント、例えば、DDAを含む(US patent No 5,951,988参照)VSA3が含まれる。
【0078】
適した組み換えポリペプチドまたはポリヌクレオチドを調製するのに使用することができる適したベクターまたはコンストラクトは、当業者に知られている。当業者に既知の方法を用いて、必要なポリペプチドまたは複数のポリペプチドを発現することができるポリヌクレオチドを調製することができる。
【0079】
ヒトまたは動物にポリヌクレオチドを投与し、ヒトまたは動物で抗原性ポリペプチド(すなわち、アンジオモチンおよび場合によっては他のポリペプチドに由来する配列)を発現することができるように、レシピエントにおいてポリペプチドを発現できることが、ポリヌクレオチドにとって望ましいであろう。ポリペプチド、例えばアンジオモチンは、以下に記すように、任意の適したポリヌクレオチド(遺伝子コンストラクト)から発現され、レシピエントに伝達することができる。典型的には、ポリペプチドを発現する遺伝子コンストラクトは、レシピエントの細胞内で転写ポリヌクレオチド(例えばmRNA)分子を発現することができるプロモーターに操作可能に連結した前記ポリペプチドをコードする配列を含み、この前記ポリペプチドをコードする配列は転写され、前記ポリペプチドを合成することができる。適したプロモーターは、当業者に知られており、前記ポリペプチドを発現させるのに望ましい場所に依存して(例えば、樹状細胞または他の抗原提示細胞またはこれらの前駆細胞)、広範に発現させる遺伝子のためのプロモーター、例えばハウスキーピング遺伝子、または、組織選択的遺伝子のためのプロモーターを含む。特に、ポリヌクレオチドの伝達または摂取が、選択した細胞、例えば樹状細胞または前駆細胞を標的とする場合、好ましくは、樹状細胞または樹状前駆細胞に選択的なプロモーターを使用するが、これは必須ではない。樹状細胞に選択的なプロモーターには、CD83またはCD36プロモーターが含まれる。
【0080】
アンジオモチンに基づくワクチンと、望むように発現または組み合わせることができる他のポリペプチド/タンパク質には、サイトカインまたは増殖因子などの免疫刺激剤が含まれる。例としては、GM-CSF、IL-2、IL-12またはIL-15を含む(例えば実施例1を参照)。発現または含むことができる他の免疫刺激剤は、いわゆるT細胞受容体に結合する因子であり、免疫刺激小分子イミキモド、フラジェリンなどの微生物産生物、または非メチル化細菌CpGモチーフ、もしくはCpGモチーフに基づくオリゴヌクレオチドを含む。
【0081】
ポリペプチドを発現することができる核酸配列は、好ましくは、前記配列の発現に必要な調節エレメントに操作可能に連結する。
【0082】
「操作可能に連結する」とは、コンポーネントの通常の機能を実施することができるように配置することを指す。それゆえ、調節エレメントに「操作可能に連結した」コード配列とは、抗原(または免疫刺激分子)をコードする核酸配列が、調節配列の制御下で発現することができる配置を指す。
【0083】
「調節配列」とは、特定の宿主生物において、操作可能に連結したコード配列の発現に必要な核酸配列を指す。例えば、真核細胞に適している調節配列は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーである。
【0084】
「ベクター」とは、一本鎖、二本鎖、環状またはスーパーコイル状DNAを含むDNA分子である。適したベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルスおよび細菌プラスミドが含まれる。レトロウイルスベクターとは、宿主のゲノムにゲノムをランダムに結合させることによって複製するレトロウイルスである。適したレトロウイルスベクターは、WO92/07573に開示されている。
【0085】
ウイルスベクターは、ヒトに病気をもたらさず、または如何なる病気も伝播しないことを意図する。これらのウイルスは、ヒト細胞に感染した場合に、細胞がその表面に所定の抗原を調製し提示するように、研究室内で操作することができる。ウイルスは、免疫応答を開始するには十分であるが、ヒトを病気にするには十分ではない、少数のヒト細胞のみに感染することができる。
【0086】
ウイルスは、また、サイトカインを産生するように、または、細胞表面に免疫細胞を活性化するのを補助するタンパク質を提示するように、操作することができる。これらは、単独でまたは免疫応答を補助するワクチンと共に付与することができる。
【0087】
アデノウイルスは、線状二本鎖DNAウイルスである。適したアデノウイルスベクターは、Rosenfeld et al., Science, 1991, Vol.252, page 432に開示されている。
【0088】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、パルボウイルスファミリーに属し、約4-6KBの一本鎖DNAからなる。
【0089】
ポックスウイルスベクターは、大きなウイルスであり、遺伝子を挿入することができる幾つかの部位を有する。このウイルスは熱安定性であり、室温で保存することができる。安全な研究には、ポックスウイルスベクターが、複製欠損であり、宿主から宿主へまたは周囲へと送達することができないことを必要とする。
【0090】
ワクチンを、特異的な細胞群、例えば抗原提示細胞へと標的化することは、例えば、部位特異的注入、標的化ベクターおよび伝達システムを使用することにより、または、レシピエントから細胞群を選択的に精製し、ペプチドもしくは核酸をex vivo投与することにより、達成することができる(例えば、樹状細胞は、Zhou et al., (1995) Blood 86,3295-3301;Roth et al., (1996)Scand. J. Immunology 43,646-651に開示されているように保存することができる)。更に、ベクターを標的化することには、適した場所での抗原の発現をもたらす組織-または腫瘍-選択的プロモーターを含みうる。
【0091】
遺伝子コンストラクトはDNAまたはRNAとすることができるが、DNAであるならば好ましい。
【0092】
好ましくは、遺伝子コンストラクトは、ヒト細胞への伝達に適合する。
【0093】
動物の身体内部の細胞または動物の身体から取り出した細胞内へと、遺伝子コンストラクトを導入する手段および方法は、当業者に知られている。例えば、本発明のコンストラクトは、コンストラクトを(分裂している)細胞のゲノムへと導入するために、任意の一般的な方法、例えばレトロウイルスを含む方法によって、細胞内へと導入することができる。標的化レトロウイルスは、本発明の使用に利用することができる;例えば、特異的な結合親和性を付与する配列は、予め存在するウイルスenv遺伝子へと導入するように操作することができる(遺伝子治療のための、このレトロウイルスおよび他の標的化ベクターのレビューのために、Miller & Vile (1995) Faseb J. 9,190-199を参照せよ)。
【0094】
好ましいレトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、例えば、Verma & Somia (1997) Nature 389,239-242に開示されているベクターとすることができる。
【0095】
他の方法には、限られた時間、または、ゲノムへの挿入後のより長時間における発現のための、コンストラクトの細胞への単純な伝達が含まれる。後者の方法の例には、リポソームが含まれる(Nassander et al., (1992) Cancer Res. 52,646-653)。伝達の他の方法には、キャリアとしての抗体-ポリリジン架橋(Curiel Prog. Med. Virol. 40,1-18)、および、トランスフェリン-ポリカチオンコンジュゲート(Wagner et al., (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87,3410-3414)を介して外部DNAを保有するアデノウイルスが含まれる。これらの第一の方法においては、ポリカチオン-抗体複合体を、本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトとともに形成する。この抗体は、野生型アデノウイルス、または、抗体が結合する新しいエピトープが導入されているバリアントアデノウイルスのいずれかに特異的である。ポリカチオンモチーフは、リン酸骨格との静電相互作用を介してDNAと結合する。アデノウイルスは、非改変の繊維およびペントンタンパク質を含むので、細胞へ取り込まれ、このウイルスを有する細胞へ本発明のDNAコンストラクトを運搬する。ポリカチオンがポリリジンであるならば、好ましい。
【0096】
適しているであろう細菌の伝達方法は、Dietrich (2000) Antisense Nucleic Acid Drug Delivery 10, 391-399に開示されている。例えば、弱毒化細菌種は、粘膜表面を介した組み換えワクチンの投与を可能とする。弱毒化細菌は、一般的に異種抗原を発現するように操作するのに対して、更なる手法としては、真核生物抗原発現ベクター(DNAワクチン)の伝達のために、細胞内細菌を使用する。この方法によって、マクロファージおよび樹状細胞(DC)などの専門的な抗原-提示細胞(APC)への、細菌を介したDNAの直接伝達が可能となる。DNAワクチン伝達に使用した細菌は、APCによるファゴサイトーシス後に宿主細胞の細胞質ゾルへと入り込む(例えば、赤痢菌およびリステリア)、または、細菌がファゴソームコンポーネントに留まる(例えば、サルモネラ)。両方の細菌キャリアの細胞内局在性は、本発明のDNAワクチンベクターの良好な伝達に適するであろう。
【0097】
アンジオモチン(または他の)ポリペプチドの発現は、誘導性細菌プロモーター、例えば、細菌が宿主生物環境(例えば宿主の腸)へと入り込むもしくは挿入される、または宿主細胞へ結合するもしくは入り込む場合に誘導されるプロモーターの制御下におくことができる。
【0098】
遺伝子銃(gene gun)による伝達は、本発明に関連して好ましい伝達の方法である。特に、アンジオモチンプラスミドDNAは、「遺伝子-銃」による皮内ワクチン接種、筋肉内注入、または、皮内にもしくは筋肉内に注入されたプラスミドDNAワクチン接種として投与し、その後、注入部位での皮膚または筋肉内「エレクトロポレーション」を行い、ワクチン接種の効率を増すことができる。本発明のワクチンを伝達する遺伝子-銃の使用は、実施例5に開示されており、得られたデータを図5および6に示す。
【0099】
DNAは、また、例えば以下に示す、DNAが内部に存在するアデノウイルスによって伝達することができる。
【0100】
DNA巨大分子を細胞内へと運搬する受容体媒介エンドサイトーシスを使用する、高効率の核酸伝達システムを使用することができる。この方法は、核酸を結合するポリカチオンに、鉄輸送タンパク質トランスフェリンをコンジュゲートすることによって、達成される。ヒトトランスフェリン、またはニワトリのホモログであるコンアルブミン、またはこれらの組み合わせを、ジスルフィド結合を介して、小分子のDNA-結合タンパク質であるプロタミンに、または、様々なサイズのポリリジンに共有結合させる。これらの改変したトランスフェリン分子は、類似の受容体に結合し、細胞への効率的な鉄輸送をもたらす能力を維持する。トランスフェリン-ポリカチオン分子は、核酸のサイズに依存せず(短いオリゴヌクレオチドから21キロ塩基対のDNA)、本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトとの電気泳動上安定な複合体を形成する。トランスフェリン-ポリカチオンとDNAコンストラクトまたは他の本発明の遺伝子コンストラクトの複合体を、標的細胞に供給する場合、細胞内のコンストラクトに由来する高いレベルの発現が予期される。
【0101】
Cotten et al., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89,6094-6098の方法によって産生される欠失または化学的に不活性化したアデノウイルス粒子のエンドソーム崩壊(endosome-disruption)活性を使用した、本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトの、効率が良い受容体媒介伝達も使用することができる。この方法は、アデノウイルスが、リソソームを通過せず、エンドソームからDNAを遊離できるように適合しており、そして、例えば本発明のDANコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトに連結したトランスフェリンの存在下で、コンストラクトが、アデノウイルス粒子と同じルートによって細胞に取り込まれるという事実に基づくと考えられる。
【0102】
この方法は、複雑なレトロウイルスコンストラクトを使用する必要がない;レトロウイルス感染で生じるゲノムの永続的な改変が生じない;そして、標的化発現システムが標的化伝達システムとつながっており、それ故、他の細胞のタイプへの毒性を減ずることができるという利点を有する。
【0103】
「裸のDNA(naked DNA)」およびカチオン性および中性脂質と組み合わせたDNAは、本発明のDNAをレシピエントの細胞へと導入するのに有用であろう。遺伝子治療における非-ウイルス手法は、Ledley (1995) Human Gene Therapy 6,1129-1144に開示されている。代替的な標的化伝達システムは、また、WO94/10323に開示されている改変アデノウイルスシステムなどが知られている。この方法においては、典型的には、DNAは、アデノウイルス、またはアデノウイルス様粒子内で保有される。Michael et al., (1995)Gene Therapy 2,660-668には、繊維タンパク質に細胞選択的モチーフを加えるための、アデノウイルスの改変が開示されている。p53-欠損ヒト腫瘍細胞において選択的に複製する変異アデノウイルス、例えば、Bischoff et al., (1996) Science 274,373-376に開示されているアデノウイルスは、本発明の遺伝子コンストラクトを細胞へ伝達するのに有用である。他の適したウイルスまたはウイルス様粒子には、HSV、AAV、ワクシニア、レンチウイルスおよびパルボウイルスが含まれる。
【0104】
イムノリポソーム(抗体-標的化リポソーム)は、抗体が利用できる細胞表面タンパク質を過剰発現した細胞タイプを標的化するのに特に有用である。この手法は、例えば、CD1、CD14またはCD83(または、前記したような他の樹状細胞もしくは前駆細胞の表面分子)に対する抗体を使用し、樹状細胞または前駆細胞に用いることができる。イムノ-リポソームの調製のためには、MPB-PE(N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチリル]-フォスファチジルエタノールアミン)を、Martin & Papahadjopoulous (1982) J. Biol. Chem. 257,286-288の方法に従って、合成する。MPB-PEは、リポソーム二重層に取り込まれて、抗体またはその断片のリポソーム表面への共有結合を可能とする。リポソームは、便利なことに、標的細胞への伝達のために、本発明のDNAまたは他の遺伝子コンストラクトを詰め込むことができる。例えば、DNAまたは他の遺伝子コンストラクトの溶液内で前記リポソームを形成し、その後、0.8MPaまでの窒素圧力下で、0.6μmと0.2μmのポアサイズを有するポリカーボネートメンブレンフィルターを介して連続的に押し出すことによって調製することができる。押し出し後、封入されたDNAコンストラクトを、80000xgで45分間超遠心することによって、フリーのDNAコンストラクトから分離する。脱酸素バッファー内で新たに調製したMPB-PEリポソームを、新たに調製した抗体(またはその断片)と混合し、カップリング反応を、窒素雰囲気下で、定常的に反転攪拌を繰り返しながら、一晩行なう。イムノリポソームは、80000xgで45分間超遠心することによって、非コンジュゲート抗体から分離する。イムノリポソームは、例えば、腹腔内に、または、標的細胞が存在する部位に直接(例えば皮下に)注入することができる。
【0105】
細胞内で、ポリペプチド(例えば抗原性ポリペプチド)の一時的な発現を調節することができることが望ましいであろうことは明らかである。それゆえ、ポリペプチドの発現が、直接または間接的に(以下参照)、例えば、ポリペプチドの発現を活性化または抑制することが望ましい場合に(小分子が、前記プロモーターの活性化または抑制化に影響を及ぼすかどうかに依存して)、ある濃度の、レシピエントに投与することができる小分子によって、調節することができるプロモーターの制御下であることが望ましい。このことは、発現コンストラクトが安定であるならば、すなわち、少なくとも1週間、1、2、3、4、5、6、8ヶ月または一年以上の期間、前記細胞で、ポリペプチドを発現することができる(任意の必須の調節分子の存在下で)ならば、特に有益であることは明らかであろう。発現コンストラクトは、一ヶ月未満の期間、前記細胞でポリペプチドを発現することができることが好ましい。好ましい本発明のコンストラクトは、調節可能なプロモーターを含みうる。調節可能なプロモーターの例には、以下の論文に記載されたプロモーターが含まれる:Rivera et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96(15),8657-62(ラパマイシンによる制御、経口的に生物学的利用可能な薬剤、2つの別個のアデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用、1つは誘導性のヒト成長ホルモン(hGH)標的遺伝子であり、他方は二分割のラパマイシン調節転写因子(bipartite rapamycin-regulated transcription factor);Magari et al., (1997) J. Clin. Invest. 100(11),2865-72(ラパマイシンによる制御);Bueler (1999) Biol. Chem. 380(6),613-22(アデノ随伴ウイルスのレビュー);Bohl et al, (1998) Blood 92(5),1512-7(アデノ随伴ウイルスベクター内のドキシサイクリンによる制御);Abruzzese et al., (1996) J. Mol. Med. 74(7),379-92(誘導因子、例えば、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、細胞分裂停止、照射、ヒートショックおよび関連する応答性エレメントを参照)。テトラサイクリン誘導性ベクターも使用することができる。これらは、哺乳類細胞培養液内で発現を調節するのに有用であることが示されている比較的毒性が低い抗生物質によって活性化される。また、ステロイドに基づく誘導因子は、特に有用であろう。なぜならば、ステロイド受容体複合体は、DNAベクターが転写前に隔離されなければならない核へと入り込むことができるからである。
【0106】
このシステムは、発現を2つのレベルで調節することによって、例えば、組織-選択的プロモーター、および、外因性誘導因子/抑制因子(例えば、前記で記載したまたは当業者に知られている小分子誘導因子)によって制御されるプロモーターを使用することによって、更に改良することができる。それゆえ、調節の1つのレベルには、適切なポリペプチド-コード遺伝子を誘導性プロモーターに連結させることによりもたらし、更には、調節の更なるレベルは、必須の誘導性転写因子(誘導性プロモーターからの、ポリペプチド(例えば抗原性ポリペプチド)-コード遺伝子の発現を制御する)をコードする遺伝子を稼動する組織-選択的プロモーターが関与する。制御は、更に、遺伝子コンストラクトの細胞タイプ-特異的な標的化によって改良することができる。
【0107】
本発明の遺伝子コンストラクトは、当業者に知られた方法を使用して調製することができる。
【0108】
治療剤または分子(ワクチン)、例えば抗原性分子、例えばアンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするコンストラクトまたはその調製物を、経口および非経口(例えば皮下または筋肉内)注入を含む任意の一般的な方法で投与することができる。好ましい経路は、経口、経鼻または筋肉内注入を含む。治療は、一回の投与、または、一定の期間における複数回の投与からなる。誘導因子、例えば前記した小分子誘導因子は、好ましくは、経口的に投与できることは明らかであろう。
【0109】
レシピエントの細胞へ、遺伝子コンストラクト、例えばアデノウイルスベクターコンストラクトを伝達する方法は、当業者によって良く知られている。特に、養子免疫療法を使用することができ、より好ましくは、コンストラクトを樹状細胞、例えば皮膚の樹状細胞に伝達するのに遺伝子銃を使用することができる。
【0110】
養子免疫療法は、Nestle et al., (1998) Nature Med. 4,328-332およびDe Bruijn et al., (1998) Cancer Res.58,724-731に開示されている。
【0111】
治療剤(ワクチン)は、幾つかの他の方法によって病気を治療している対象に与えることができる。それゆえ、治療方法を単独で使用することができるにもかかわらず、例えば、一般的な予防もしくは治療方法または腫瘍抗原を標的とする免疫療法とともに、アジュバント療法として使用することが望ましい。例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたは腫瘍細胞全体として投与する腫瘍抗原に基づくワクチンと、アンジオモチンワクチンの組み合わせは、適した組み合わせ療法であろう。適した腫瘍抗原の例は、付随する実施例で提供され、更なる例は、本発明によるワクチンに関連して前記されている。
【0112】
本明細書に記載の治療用分子、例えば抗原性分子または免疫刺激分子については、単独で投与することができるが、1つまたは複数の許容可能なキャリアとともに、医薬調製物として存在することが好ましい。キャリアは、治療用分子(核酸またはポリペプチドとすることができる)と両立でき、レシピエントによって有害ではないという意味で、「許容可能」でなければならない。典型的には、キャリアは、滅菌し、パイロジェンフリーである水または生理用食塩水である。
【0113】
医薬組成物は、更に、組成物の抗原性および/または免疫原性を増すための成分、例えば、前記したアジュバントおよび/またはサイトカインを含むことができる。多価抗原(抗原のクラスター)は有用であろう。
【0114】
市販のサイトカインは、一般的に免疫システムを活性化するための非特異的免疫療法として、および、腫瘍ワクチンなどの他の免疫療法とともに投与されるアジュバントとして使用されている。GM-CSFは、非特異的免疫療法として、および、他のタイプの免疫療法とともに投与されるアジュバントとして、癌に対して試験されている。
【0115】
様々な他の化合物は、免疫システムの活性を増すことが知られており、現在、特にワクチン療法のための、可能性あるアジュバントとして研究されている。幾つかの最も一般的に研究されているアジュバントを以下に記すが、更に多くが開発中である。
【0116】
寄生虫感染に対して最初に使用されるレバミゾールは、最近、幾つかの化学療法剤とともに使用する場合、大腸癌のヒトの生存率を改善することが見出されている。レバミゾールはTリンパ球を活性化することができるので、免疫療法アジュバントととして、しばしば使用されている。レバミゾールは、現在、幾つかの段階の大腸癌のヒトについて一般的に使用されており、他のタイプの癌の治療剤としての臨床試験が行なわれている。
【0117】
水酸化アルミニウム(alum)は、癌ワクチンの臨床試験において最も一般的に使用されるアジュバントの1つである。水酸化アルミニウムは、B型肝炎を含む幾つかの感染因子に対するワクチンにおいて既に使用されている。
【0118】
カルメット-ゲラン桿菌(BCG)は、結核を引き起こす細菌に関連した細菌である。免疫システムに及ぼすBCG感染の効果によって、この細菌は、抗癌免疫療法の形態として有用である。BCGは、癌に対して使用される初期の免疫療法の1つであった。FDAは、表在性膀胱癌の一般的な治療として認可している。非特異的アジュバントとしての他の癌への有用性も試験されている。研究者は、化学療法、放射線療法、または他のタイプの免疫療法を使用する場合において、免疫システムを更に強化するためにBCGを注入することに着目している。
【0119】
フロイント不完全アジュバント(IFA)は、免疫システムを刺激するのを補助するために、そして、癌ワクチンに対する免疫応答を増すために、幾つかの実験的な療法とともに投与される。IFAは、白色鉱油に溶かした乳化剤からなる液体である。
【0120】
QS-21は、メラノーマに対して使用されるワクチンに応答する免疫を増す、植物抽出物から調製される比較的に新規の免疫刺激因子である。
【0121】
DETOXは、他の比較的に新規のアジュバントである。DETOXは細菌の細胞壁の一部およびある種の脂肪から調製される。DETOXは、免疫システムを刺激するために、様々な免疫療法とともに使用される。
【0122】
キーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)は、癌ワクチン療法の効率を増すのに使用される、もう1つのアジュバントである。KLHは、ある種の海洋軟体動物から抽出される。
【0123】
ジニトロフェニル(DNP)は、腫瘍抗原に結合し、増大した免疫応答を誘導することができるハプテン/小分子である。特定の癌ワクチンにおいては、腫瘍細胞を改変するために使用されている。
【0124】
調合物は、便利なことには、単位用量形態で提示することができ、製薬業界でよく知られた任意の方法で調製することができる。このような方法には、活性成分(本発明の抗原性分子、コンストラクトまたはキメラポリペプチドについての)を、1つまたは複数の副成分から構成されるキャリアと会合させる工程を含む。一般的に、調合物は、活性成分を、液体キャリアもしくは微粉化した固体キャリアまたはその両方と均一且つ密接に会合させ、その後に、必要であれば、製品を成形することによって調製する。
【0125】
経口投与に適した本発明による調合物は、カプセル、カシェ剤またはタブレットなどの個別単位として提示することができ、それぞれは、予め求めた活性成分を、粉末または顆粒として;溶液または水性液体もしくは非水性液体中の懸濁液として;または、水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして含む。活性成分は、ボーラス、舐剤またはペーストとしても提示することができる。
【0126】
タブレットは、任意に1つまたは複数の副成分と共に、圧縮または型打ちによって調製することができる。圧縮したタブレットは、適した機械において、任意に、バインダー(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋デンプングリコール酸ナトリウム)、界面活性もしくは分散剤と混合して、粉末または顆粒などの自由に流動する形態で活性成分を圧縮することによって調製することができる。型打ちしたタブレットは、適した機械において、不活性な液体希釈剤で潤いを与えた粉末状の化合物の混合物を型打ちすることによって調製することができる。タブレットは、任意にコーティングまたは分割することができ、例えば、望む放出プロファイルを提供するために、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、活性成分のゆっくりとした放出または制御した放出をもたらすことができる。
【0127】
口への局所適用に適した調合物には、風味をつけたベース(通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント)に活性成分を含む薬用キャンディー;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性なベースに活性成分を含むトローチ;ならびに適した液体キャリアに活性成分を含むマウスウォッシュを含む。
【0128】
非経口投与に適した調合物には、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、および、調合物を対象とする受容者の血液と等張にする溶質を含みうる水性および非水性の滅菌注入溶液;ならびに、懸濁剤および増粘剤を含みうる水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。調合物は、単位用量または複数回用量のコンテナー(例えば、シールしたアンプルおよびバイアル)で提示することができ、使用直前に滅菌液体キャリア(例えば、注入用の水)の添加のみが必要なフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存することができる。即席注入溶液および懸濁液は、前記した種類の滅菌粉末、顆粒およびタブレットから調製することができる。
【0129】
経鼻スプレーは、有用な調合物である。
【0130】
好ましい単位用量調合物は、一回のもしくは一日当りの投与量もしくは単位の、一日当りのサブ投与量の、または適切なフラクションの活性成分を含む調合物である。
【0131】
前記に特に記載した成分に加えて、本発明の調合物は、対象とする調合物のタイプを考慮したこの業界における一般的な他の剤を含むことができ、例えば、経口投与に適した調合物は、香味剤を含むことができることは理解されよう。
【0132】
治療用分子は、薬剤の局所的な投与のための任意の手段によって、その場所に伝達することができることは理解されよう。例えば、治療用分子の溶液は、その部位に直接注入することができ、または、注入ポンプを使用した注入によって伝達することができる。コンストラクトは、例えば、また、望む部位に保持した場合に、コンストラクトを周囲部位へ放出することができる埋め込み型装置へと導入することができる。
【0133】
治療用分子は、ヒドロゲル物質を介して投与することができる。ヒドロゲルは、非炎症性且つ生分解性である。現在、天然および合成ポリマーから調製される物質を含む多くの物質が知られている。好ましい実施態様においては、この方法は、体温より低い場合は液体であるヒドロゲルであるが、体温または体温近辺では形を保持できる半固体ゲルを形成するゲルを使用する。好ましいヒドロゲルは、エチレンオキシド-プロピレンオキシド反復単位のポリマーである。ポリマーの特性は、ポリマーの分子量、および、ポリマー中のポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの相対的割合に依存する。好ましいヒドロゲルは、約10重量%から約80重量%のエチレンオキシド、および、約20重量%から約90重量%のプロピレンオキシドを含む。特に好ましいヒドロゲルは、約70%のポリエチレンオキシドおよび約30%のポリプロピレンオキシドを含む。使用することができるヒドロゲルは、例えば、BASF Corp., Parsippany, NJから、PluronicRという商標名で購入することができる。
【0134】
便利なことには、核酸ワクチンは、前記した任意の適した核酸伝達手段を含みうる。核酸、好ましくはDNAは、裸とすることができ(すなわち、実質的に、投与される他の成分を有しない)、または、リポソームで、もしくは、ウイルスベクター伝達システムの一部として伝達することができる。
【0135】
対象には、前記したポリペプチドとポリヌクレオチドの組み合わせを投与することができる。
【0136】
「有効な量」については、レシピエントの健康に有益な望ましい医薬効果を生じるのに十分量の薬剤を提供するという意味を含む。
【0137】
本明細書に参照された全ての文献は、誤解を避けるために、本明細書に、参照によって組み込まれる。
【0138】
本発明を、以下の、非制限的な図および実施例を参照に記載する。
【実施例】
【0139】
(材料、方法および実施例)
(材料)
C57B1およびBalb/cマウスを、Microbiology and Tumor Biology Center, Karolinska institutetのanimal unitから購入した。評価のために使用したマウス腫瘍細胞ラインには、Dr.Wei Zen Wei, Karmanos Cancer Centerに由来するマウス乳癌D2F2、MTC research unitに由来するEL-4リンパ腫およびDr.I.J.Fidler, MD Andeson Cancer Center, Houston, TCに由来するB16メラノーマラインが含まれる。
【0140】
(実施例1:アンジオモチンをコードするDNAワクチンの調製)
ベクターの市販メーカー(Invitrogen Inc.)の取扱説明書にしたがって、アンジオモチン分子をコードする全長cDNAを、pCDNA3ベクターへ挿入することによって、アンジオモチン発現プラスミドを構築した。このベクターは、哺乳類細胞でのタンパク質発現のためにデザインされており、CMVプロモーター(US Patent No 5,168,062および5,385,839;University of Iowa Research Foundation)、マルチプルクローニングサイト、ウシ増殖ホルモンポリアデニル化配列(US Patent No 5,122,458)および安定な細胞ラインの選択のためのネオマイシン耐性遺伝子を含む。
【0141】
アンジオモチンの全長cDNAを、pCDNA3ベクターへと挿入した。得られたプラスミドの位置および同一性は、制限酵素切断地図で確認した。pCDNA3のトランスフェクションによって、アンジオモチン発現がもたらされ、これは、ウェスタンブロットによって分析された。
【0142】
(実施例2:アンジオモチンをコードするDNAワクチンを用いたマウスのワクチン接種)
Balb/cマウス(グループ毎に6匹のマウス)(図1)またはC57B1マウス(グループ毎に6匹のマウス)(図2および3)について、遺伝子銃による免疫化を使用して、2週間間隔で二回、前記したアンジオモチンpDNAコンストラクトで、または、同じpcDNA「空」コントロールベクター(PCDNA)をコントロールとしてワクチン接種した。
【0143】
プラスミドは、Qiagen standard protocol(Qiagen endotoxin free plasmid kit, WWR International)にしたがって調製した。プラスミドを、1mg/mlの濃度で水中に溶解し、保持した。このストックから、プラスミドを、99.5%エタノール中で金と混合し、プラスチックチューブ上にコーティングした。Helios gene gun(Biorad, Stockholm)を使用して、DNA-金混合物を打ち込み、鼠径リンパ節の領域の表皮内へ伝達させた。それぞれのマウスは、打ち込み当り0.6-1.0μgの濃度で、異なる位置に二回の打ち込みを受けた。この手法を、14日間隔で二回繰り返した。この手法は、以下で論じるGM-CSFプラスミドを含む、使用した全てのプラスミドで同じであった。
【0144】
マウスの幾つかのグループでは、サイトカインGM-CSFをコードするプラスミドを、等しいモル量で、アンジオモチンをコードするプラスミド(アンジオモチン+GM)と混合し、または、コントロールベクター(PCDNA+GM)と混合し、前記の遺伝子銃によって投与した。GM-CSF発現プラスミドは、他の論文に開示されている(Charo, J. et al., J. Immunol, 163;5913-5919,19991)。
【0145】
(実施例3:ワクチン接種マウスの腫瘍増殖および生存率の評価)
最後の免疫化してから2週間後に、約5×104の生きたB16 saibou (図1)、D2F2メラノーマ細胞(図2)またはEL4リンパ腫細胞(図3)を用いてマウスを誘発した。各グループのマウスについて、毎週二回、生存数、および、マイクロメーターで測定した平均腫瘍体積を検査した。
【0146】
ワクチン候補物が、予防的に(すなわち、腫瘍細胞で誘発した動物における腫瘍を防止すること)および治療的に(すなわち、ワクチンの投与が以前に生じた腫瘍の退行を引き起こす)機能することができることを実証する多くの動物実験が存在する。例えば、Cavallo et al., (1993) Protective and curative potential of vaccination with IL-2 gene-transfected cells from a spontaneous mouse mammary adenocarcinoma. Cancer Res 21:5067;Nanni et al, (2001) Combined allogenic tumor cell vaccination and systemic interleukin-12 prevents mammary carcinogenesis in HER-2/neu transgenic mice. J Exp Med 194:1195がある。
【0147】
(実施例4:アンジオモチン-特異的免疫応答をもたらすのに重要であるアンジオモチンのペプチドエピトープの予測)
タンパク質の様々なペプチド誘導体の免疫原性は、組織抗原(HLA)または特定の個人に依存して、任意の個人において拘束されることが知られている。構築されたコンピューターアルゴリズム(http ://www. bimas. dcrt. nih. gov/molbio/hla bind/index. html)を使用して、アンジオモチンに由来し、様々なHLA抗原に拘束される様々なペプチドモチーフの結合親和性および予測値を求めた。免疫原性を有する可能性があり、HLA A201に拘束される予測ペプチドを、表1に提供する。HLA A201は、白人種の約65%の頻度で生じる。免疫療法のための可能性ある値を有する類似のペプチドモチーフは、また、他のHLA対立遺伝子について予測することができる。
【0148】
HLA A201は、白人種をワクチン接種するのに重要な対立遺伝子である。他の重要な対立遺伝子は、アジア種の約60%に存在するHLA A2402である。
【0149】
【表1】
【0150】
(実施例5:抗血管新生治療としてのアンジオモチンワクチン接種)
本実施例は、アンジオモチンワクチン接種により、腫瘍形成に対して予防措置を提供することができることを実証する。我々は、アンジオモチンワクチン接種が、血管新生治療の一部として使用することができることを実証するデータを提供する。
【0151】
(方法)
BALB-neuTマウスは、遺伝子導入した乳癌マウスモデルである。BALB-neuTマウスは、マウス乳癌ウイルスプロモーターの制御下において形質転換したラットHer.2/neu腫瘍遺伝子の過剰発現の結果として、自発的に腫瘍を発症する(Boggio et al., J. Exp. Med. 1998,188;589-96を参照)。
【0152】
BALB-neuTマウス(グループ毎に5匹)を、図5および6の矢印で示した週齢時に、エレクトロポレーションにより、375V/cmで25msecのパルスパラメーターの条件でT820 Electrosquare poratorを使用して、前脛骨筋へと25μgのプラスミドで二回ワクチン接種した。プラスミドは、前記した実施例2に記載のプロトコールを使用して、エレクトロポレーションのために調製した。
【0153】
(結果および考察)
図5においては、以下の3つのグループのマウスについて、6および8週目に、ワクチン接種を行った;空のベクターコントロールプラスミド(pcDNA3);アンジオモチンプラスミド;または非処理(前記の実施例1に記載のプラスミド)。ワクチン接種は、前記したエレクトロポレーション方法を使用した。示すように、アンジオモチンプラスミドで処理した50%のマウスは、30週間後でも腫瘍が存在せず、一方で、非処理またはコントロールで処理したマウスの全てが、27週間後に、腫瘍を有していた。それゆえ、アンジオモチンは、このマウス種においては、腫瘍の発達を抑制する機能を有することができる。
【0154】
図6においては、以下の4つのグループについて、10および12週齢でワクチン接種を行った;空のベクターコントロールプラスミド(pcDNA3);TMEC;TMEC+アンジオモチンプラスミド;または非処理。TMECは、BALB-neuTマウスにおける腫瘍形成をになう腫瘍遺伝子の断片であるp185 neuの「膜貫通型の細胞外」部分をコードするp185neuTME-ECDプラスミドである(Boggio et al., J. Exp. Med 1998,188;589-96)。
【0155】
示すように、非処理またはコントロールで処理したマウスの全てが、27週間後に腫瘍を有しているのに対して、TMECプラスミド単独で処理したマウスの40%は、50週間後でも腫瘍が存在しなかった。更にその上、TMECプラスミドおよびアンジオモチンプラスミドの両方で処理したマウスの100%が、50週間後でも腫瘍が存在しなかった。
【0156】
それゆえ、TMEC/アンジオモチン デュアルプラスミドによるワクチン接種は、TMECまたはアンジオモチンワクチン接種単独に比べて、腫瘍の発達を防ぐ著しい治療効果を有している。ワクチン接種時の年齢(10および12週齢)のvirgin BALB-neuTマウスの乳腺は、既に複数のin situ癌(前記した参考文献参照)を有しているので、このことは、アンジオモチンと腫瘍ワクチンの組み合わせたワクチン接種が、治療効果を有し、更に、腫瘍の発達を静止することができることを実証する。
【0157】
図7においては、大人のBalb/cマウスを、TUBO乳癌細胞の皮下(s.q.)注入前21および7日目に、前記したエレクトロポレーション手法を使用して、前記したアンジオモチンpDNAワクチンでワクチン接種した。TUBO乳癌細胞は、前記したBALB-neuTマウスに由来する腫瘍から単離した移植可能な細胞ラインである。示すように、アンジオモチンpDNAワクチンでワクチン接種した4匹のマウス(「予防」と記す)は、完全に腫瘍が存在しないのに対して、1匹のマウスは1mmの大きな腫瘍を有していた。全ての非処理マウスは、大きな腫瘍を発達させた。それゆえ、「単独治療」としてのアンジオモチンを用いたワクチン接種は、乳癌細胞ラインに起因する腫瘍発達に対して、マウスにおいて予防ワクチンとして機能することができる。
【0158】
図5から7で表されたデータによって、移植可能な腫瘍モデルにおける、「単独治療」としてのアンジオモチンプラスミドワクチン接種が、腫瘍増殖を抑制することができ、自発的遺伝子組み換えHer2/neu乳癌モデルにおいては、著しく腫瘍発達を減少することができることが実証された。更にその上、図6のデータは、既に複数のin situ前癌病変部を有するマウスに投与した、組み合わせアンジオモチンプラスミド/腫瘍抗原ワクチンが、腫瘍予防をもたらし、アンジオモチンプラスミドまたは腫瘍抗原単独よりも著しく効果を有していることを示しており、このことによって、アンジオモチンおよび腫瘍抗原に基づくワクチンは、治療腫瘍モデルにおいて、相乗的に作用することができることを実証する。このことによって、単独療法としての、または、組み合わせワクチンにおけるアンジオモチンは、ヒト腫瘍の治療または他の病気の血管新生治療に使用することができる。
【0159】
(実施例6:アンジオモチンワクチン接種による抗-アンジオモチン抗体の産生)
12週齢のBALB-neuTのグループ(図8パネルBおよびC)または12週齢のBALB/cマウスのグループ(図8パネルA)を、前記したように、ヒトアンジオモチンpDNAを用いたエレクトロポレーションによって、2週間間隔で、四回(パネルA)または二回(パネルB)免疫化した。パネルCは、TMEC pDNAと組み合わせたアンジオモチンpDNAを用いた、エレクトロポレーションによって免疫したマウスから得られた結果を示す。21週目に、尾静脈から採血し、血清を回収し、凍結させた。個々のマウスに由来する血清サンプルを500-16,000倍に希釈して、マウス アンジオモチン抗体に特異的なELISAアッセイで試験した。
【0160】
マウス アンジオモチンは、アンジオモチンをトランスフェクトした大動脈内皮細胞から抽出し、アンジオモチンのC-末端に対するポリクローナル抗体のために使用した。
【0161】
得られた結果によって、単独療法として特にヒトアンジオモチンpDNAで四回免疫した後だけでなく、TMEC腫瘍抗原と組み合わせたこのプラスミドでの2回の免疫後(パネルC)にも、マウスは、マウス アンジオモチンに対して高いタイターの抗体を産生したことが実証された。この結果は、ヒトアンジオモチンpDNAエレクトロポレーションによる免疫化によって、マウス アンジオモチン分子に対する免疫寛容の破綻をもたらすことを示し、また、証明されていないが、これらの抗体は、免疫化したマウスにおいて抗-血管新生効果および抗-腫瘍効果の原因となる活性なメカニズムをもたらしうることを示唆する。
【0162】
(実施例7:抗-アンジオモチンDNAによるin vivoでの血管新生の阻害)
5匹のBALBcマウスを、アンジオモチン単独で、または、TMECと組み合わせて、それぞれ、マトリゲル実験の開始28日前および14日前、すなわち4および2週間前にワクチン接種させた。使用したアンジオモチンワクチンは、他の実施例で前記したpcDNAプラスミドであった。
【0163】
200ng/mlの塩基性繊維芽細胞増殖因子を含むマトリゲルを、最後にワクチン接種してから2週間後にマウスに注入した。マトリゲルプラグを7日後に回収し、パラホルムアルデヒド内で固定化し、血管浸潤を、ラットの抗マウスPECAMモノクローナル抗体を用いた組織免疫染色によって可視化した。血管密度を、Weidner et al., N Engl J Med. 1991 Jan 3;324(1):1-8によって開示されたように定量した。図9で示されるように、血管新生は、アンジオモチンDNAをワクチン接種させたマウスで阻害された。
【0164】
本発明の精神および範囲から逸脱することなしにもたらしうる、前記に記載した実施態様の様々な適応および変更が存在する。本明細書に例示した特定の実施態様に対して如何なる制限も意図しておらず、推測すべきでないことは理解しなければならない。当然のことながら、特許請求の範囲によって、特許請求の範囲に含まれる全てのこのような改変を保護することは意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】GM-CSFプラスミドとともに、または、GM-CSFプラスミド無しに、アンジオモチンワクチンプラスミドまたはコントロールベクターを用いて、マウスをワクチン接種した。追加ワクチン接種を14日後に行った。二回目のワクチン接種後2週間してから、腹腔内に投与した100,000の生きたB16腫瘍細胞を用いてマウスで誘発した。腫瘍増殖を3週間にわたって測定した。AおよびBは、二回の別々の実験を表す。
【図2】GM-CSFプラスミドとともに、アンジオモチンワクチンまたはコントロールプラスミドを用いて、マウスをワクチン接種した。追加ワクチン接種を14日後に行った。二回目のワクチン接種後2週間してから、腹腔内に投与した100,000の生きたD2F2腫瘍細胞を用いてマウスで誘発した。腫瘍増殖を3週間にわたって測定した。Aはマウスの生存率を表すのに対して、Bは平均の腫瘍体積を表す。
【図3】GM-CSFプラスミドとともに、アンジオモチンワクチンまたはコントロールプラスミドを用いて、マウスをワクチン接種した。追加ワクチン接種を14日後に行った。二回目のワクチン接種後2週間してから、腹腔内に投与した60,000の生きたEL4腫瘍細胞を用いてマウスで誘発した。腫瘍増殖を3週間にわたって測定した。Aはマウスの生存率を表すのに対して、Bは平均の腫瘍体積を表す。
【図4】ヒトアンジオモチンのアミノ酸およびヌクレオチド配列。
【図5】抗-アンジオモチンワクチン接種。単独の治療剤としてのアンジオモチン。マウス乳癌ウイルスプロモーターの制御下において形質転換したラットHer.2/neu腫瘍遺伝子の過剰発現の結果として、自発的に腫瘍を発症するBALB-neuTマウス(Boggio et al., J. Exp. Med. 1998,188;589-96)を、アンジオモチンワクチンプラスミドもしくはコントロールベクターを用いて6週齢でワクチン接種し、または、非処理のまま維持した。マウスは、Quaglino et al.(Cancer Research 64, 2858-64, 2004)に開示されている「エレクトロポレーション」方法によってワクチン接種した。簡単に述べると、トータルで25マイクログラムのEC-TMプラスミドを、麻酔したマウスの前脛骨筋へと注入した。電気パルスを、導電性ゲルで覆った毛を剃った皮膚の上に置いた2つの電極によってアプライした。T820エレクトロポレーター(BTX, San Diego, CA)によって、2つの方形波25ms、375V/cmパルスを生じさせた。追加ワクチン接種を2週間後に行った。各グループにおける腫瘍が存在しないマウスの割合を示す。
【図6】二成分療法:Amot。BALB-neuTマウスを、アンジオモチンワクチンプラスミド、もしくはコントロールベクターを用いて10週齢でワクチン接種し、または、非処理のまま維持した。更なるマウスの群を、アンジオモチンワクチンプラスミドおよびTMEC、腫瘍抗原でワクチン接種した。追加ワクチン接種を2週間後に行った。各群における腫瘍が存在しないマウスの割合を示す。
【図7】腫瘍移植モデル。Balb/cマウスを、TUBO乳癌細胞ラインをs.q.注入する21日および7日前に、ワクチン接種した。腫瘍の平均直径を示す。
【図8A】マウスアンジオモチンに対する抗体応答。アンジオモチンワクチン接種マウスに由来する血清における、マウスアンジオモチンに対する抗体応答を、ELISAで測定した。Y軸上のlumシグナルは、アンジオモチンに特異的なIgG抗体の量を表し、x軸上の数字1-6は、血清の異なる希釈率(500-16000)を表す。以下のマウスに由来する血清を分析した:A)Angio #6、マウスNo.3、5、10、11、80;アンジオモチンワクチンプラスミドを用いて、2週間ごとに四回エレクトロポレーションしたBALB/cマウス。四回のエレクトロポレーション後に採取した血清を分析し、単独のTMECを用いて10および12週目にエレクトロポレーションしたコントロールマウスと比較した。
【図8B】B)Angio #1A、マウスNo.4、5、10、18、20;アンジオモチンワクチンプラスミドを用いて、10および12週目にエレクトロポレーションしたBALB-neuTマウス。21週目に採取した血清を分析し、単独のTMECを用いて10および12週目にエレクトロポレーションしたコントロールマウスと比較した。
【図8C】C)Angio #2、マウスNo.0、4、5、6、40;アンジオモチンおよびTMECワクチンプラスミドを用いて、10および12週目にエレクトロポレーションしたBALB-neuTマウス。21週目に採取した血清を分析し、単独のTMECを用いて10および12週目にエレクトロポレーションしたコントロールマウスと比較した。
【図9】抗-アンジオモチンDNAワクチン接種による血管新生のin vivo阻害。BLABcマウスを、アンジオモチン単独で、または、TMECと組み合わせてワクチン接種した。200ng/mlの塩基性繊維芽細胞増殖因子を含むマトリゲルを、最後にワクチン接種してから2週間後にマウスに注入した。マトリゲルプラグを7日後に回収し、血管密度を、Weidner et al., N Engl J Med. 1991 Jan 3;324(1):1-8によって開示されたように定量した。
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管形成を妨げるための、例えば腫瘍増殖、網膜疾患、アテローム性動脈硬化、子宮内膜症、リウマチ性関節炎および炎症状態を妨げるための予防または治療処理に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、疾患誘引因子またはその成分に由来する調製物であって、この調製物は、その因子がもたらす病気から守る免疫応答を刺激するために投与される。治療用(治療)ワクチンは、病気の発症後に与え、病気の進展を低下または阻むことを意図する。予防用(予防)ワクチンは、最初の病気の発症を防ぐことを意図する。ワクチンに使用される因子は、例えば、完全に殺傷した(不活性)、生きた弱毒化(弱体化)病原性生命体または人工的な製造物とすることができる。
【0003】
ワクチンは、宿主の免疫システムを刺激し、主要な標的に対する抗体および/または免疫細胞(細胞毒性T-細胞)を特異的に産生することによって、その効果を媒介する。これらの標的は、「抗原」として知られている。標的抗原に対する免疫応答の刺激によって、免疫化宿主の身体に存在する病気をもたらす因子の、免疫を介した破壊および除去が引き起こされる。いったん刺激されると、免疫システムは、また、標的因子による事後的な感染または病気の発症に対して監視し続ける。それゆえ、ワクチンは、現存する病気を制御するだけでなく、病気の再燃または再発を将来的に阻害するのに有効な方法である。
【0004】
標的抗原に対してワクチン接種するための様々な方法が存在する。それらの幾つかは、タンパク質全体;タンパク質の断片に対応する合成ペプチド;および/またはタンパク質をコードするDNA/RNA配列を注入することを含む。DNAおよびRNAを伝達するためのデリバリーベヒクルには、遺伝子を発現する改変ウィルス、裸のDNA/RNA、または、サイトカインまたは増殖因子などの他の免疫刺激因子と関連した抗原を発現するリコンビナントプラスミドを含む。
【0005】
脈管形成(vasculogenesis)とは、幹細胞が、その後に血管を形成する内皮細胞へ分化することである。血管新生(angiogenesis)とは、既存の血管から血管を形成することである。血管の形成(blood vessel formation)、血管新生(neovascularization)および脈管化(vascularization)などの用語は、脈管形成および血管新生の両方の範囲に含まれる。
【0006】
血管新生(血管の形成の一例)とは、既に存在している血管から発生することによって、新規の毛細血管を形成することであり、発達の間だけではなく、多くの生理学的および病理学的な状況において生じる(Folkman J. Nature Medicine 1995)。血管新生による新規の血管の形成には、コードとチューブを形成し、最終的には成熟するための、内皮細胞の増殖、移動、相互作用および接着を含む複合的な連続した事象を含む。生理学的に、血管新生は、組織増殖、怪我の治癒、および女性の生殖機能のために必要であり、そして、網膜疾患、アテローム性動脈硬化、子宮内膜症、炎症状態などの病理過程の1つの構成要素である。しかしながら、血管新生への昔からの多大な興味は、臨界サイズを越えて増殖する固形腫瘍について、それらが、自身の内部微小循環を形成するために、周囲の間質から内皮細胞を補充しなければならないという考えに発する。血管新生を促進するために、腫瘍は、内皮細胞の増殖および移動を刺激する様々な因子を遊離する。このような因子には、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)および塩基性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、インターロイキン-8(IL-8)、胎盤成長因子、およびチミジンホスホリアーゼ(platelet-derivedendothelial cell growth factor, Relf M et al Cancer Research 1997)。それゆえ、これらのシグナル伝達経路を妨害し、それにより腫瘍の血管新生をブロックする分子を発見することに、多大な努力がなされている。
【0007】
血管新生を標的とすることは、昔から行われている腫瘍退縮治療と比較して、潜在的に幾つかの有利な点を有している。最も重要なことには、全ての固形腫瘍が血管新生に依存しており、標的とする内皮細胞が容易に治療に使用することができ、遺伝子的に安定であり、治療における耐性を生じる傾向をほとんど有さないことである。タンパク質を発現した癌細胞を標的化することの明らかな欠点の1つは、迅速な細胞増殖と分裂を原因とする、遺伝的な多様性および大きな選択圧が存在することであり、このことは、耐性機構ならびに代替的な経路の開始および使用に起因して、たびたび薬を無効にしてしまう。
【0008】
血管新生阻害は、また、眼の血管の過剰増殖がもたらす糖尿病性網膜症および黄斑変性について最初の展望が示されている。これらの疾患においては、血管が眼の通常の構造を妨げ、または、光が眼の後ろへ到達することをブロックする。新規の血管は、それ自身が、第一の病状であり、血管増殖を停止することによって、失明を防ぐことができる。
【0009】
in vitroおよびin vivoモデルにおいて異なる程度の阻害を示すアンジオスタチン(プラスミノーゲン断片)、抗-血管新生 アンチ-トロンビンIII、エンドスタチン(コラーゲンXVIII断片)、インターフェロンアルファ/ベータ/ガンマ、プロラクチン16kD断片およびトロンボスポンジン-1(TSP-1)などの、多くの天然の血管新生阻害剤が同定されている。これらの阻害剤は、内皮細胞を標的とし、血管新生を阻害する。例えば、アンジオスタチンにおいて観察されている阻害は、内皮細胞を刺激する血管新生因子から独立している(Eriksson et al FEBS L. 2003)。これは、VEGFに結合する抗体などの因子またはVEGF-受容体キナーゼ活性を阻害する低分子量化合物と対照的である。大部分の腫瘍は、様々な血管新生因子を発現しており、このことは、1つの血管新生経路のみを標的化しても腫瘍拡大を阻害するには十分ではないことを示す。それゆえ、内皮細胞を直接標的化する治療は、多くの腫瘍に由来する因子によって調節される血管新生の問題点を回避する可能性を有する。しかしながら、一方で、このような治療は、成熟した血管を残す間における新血管形成の工程に関与する内皮細胞を特異的に標的化することができるという問題に取り組まなければならない。
【0010】
アンジオモチン(angiomotin)は、血管新生に関与している他の分子(アンジオスタチン)への結合によって同定された(Troyanovsky et al., J. Cell. Biol. 2001;WO99/66038)。一次細胞および細胞ラインにおけるアンジオモチンの発現パターンのリアルタイムPCR分析によって、アンジオモチンは、主に内皮細胞に発現していることが示された。アンジオモチンのin vivoマッピングによって、ヒトの胎盤などの血管新生組織だけでなく腫瘍組織における発現が明らかになった。これらのデータから、血管新生の間に、アンジオモチンが内皮細胞内で上方制御されていることが示唆された。WO99/66038には、アンジオモチン、および、アンジオモチンの使用、例えば、アンジオモチンの薬剤スクリーニングの標的としての使用が論じられている。
【特許文献1】WO99/66038
【特許文献2】US Patent No 4,708,871
【特許文献3】WO97/40177
【特許文献4】US5,869,445
【特許文献5】WO02/053181
【特許文献6】US patent No 5,951,988
【特許文献7】WO92/07573
【特許文献8】WO94/10323
【特許文献9】US Patent No 5,168,062
【特許文献10】US Patent No 5,385,839
【特許文献11】US Patent No 5,122,458
【非特許文献1】Folkman J. Nature Medicine 1995
【非特許文献2】platelet-derivedendothelial cell growth factor, Relf M et al Cancer Research 1997
【非特許文献3】Eriksson et al FEBS L. 2003
【非特許文献4】Troyanovsky et al., J. Cell. Biol. 2001
【非特許文献5】Troyanovsky et al (2001) J Cell Biol 152, 1247-1254
【非特許文献6】Levchelioel al (2003) J Cell Sci 116, 3803-3810
【非特許文献7】Bratt et al (2002) Gene 298(1), 69-77
【非特許文献8】Geysen et al (1984) PNAS 81,3998-4002
【非特許文献9】Geysen et al (1986) Molec hzmunol 23, 709-71
【非特許文献10】London et al (2003) Cancer Gene Ther 10 (11), 823-832
【非特許文献11】Zoller and Smith (1982) Nucl. Acid Res. 10, 6487
【非特許文献12】Sherman and Spatola, J. Am. Chem. Soc., 112:433(1990)
【非特許文献13】Meziere etal (1997) J. Immunol. 159 3230-3237
【非特許文献14】Veber et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:2636 (1978)
【非特許文献15】Thursell et al, Biochem. Biophys. Res. Comm., 111:166(1983)
【非特許文献16】Feller and de la Cruz, 349:720-721,1991
【非特許文献17】Margalit et al., J. Immunol. 138:2213-2229,1987
【非特許文献18】Rothbard and Taylor, EMBO 7:93-100,1988
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【非特許文献20】O’Sullivan et al., Anal. Biochem. (1979)100,100-108
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【非特許文献28】Ledley (1995) Human Gene Therapy 6,1129-1144
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【非特許文献35】Abruzzese et al., (1996) J. Mol. Med. 74(7),379-92
【非特許文献36】Nestle et al., (1998) Nature Med. 4,328-332
【非特許文献37】De Bruijn et al., (1998) Cancer Res.58,724-731
【非特許文献38】Charo, J. et al., J. Immunol, 163;5913-5919,199991
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、血管の形成(血管新生)を妨げる免疫応答を生じるための、完全なアンジオモチン分子またはその断片に対応するワクチンの使用を提供する。本発明は、アンジオモチン分子を用いたワクチン接種、および、腫瘍増殖だけでなく血管新生によって発症または悪化する他の病気にとって重要である、血管の形成を防ぐためのワクチンの使用方法を提供する。我々は、アンジオモチンのワクチン接種によって、抗-腫瘍防御がもたらされることを示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第一の態様によって、血管新生に関連した病気または疾患を有する、または、血管新生に関連した病気または疾患の恐れがある対象にワクチン接種するための医薬(ワクチン)の製造における、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドの使用が提供される。
【0013】
本発明の第二の態様によって、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを使用して、血管新生に関連した病気または疾患を有する、または、血管新生に関連した病気または疾患の恐れがある対象にワクチン接種する工程を含む、前記対象を治療する方法が提供される。
【0014】
前記医薬または処置は、予防用処置または治療用処置とすることができる。
【0015】
ワクチン接種は、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを、対象に投与することによって;または、患者の免疫細胞をアンジオモチン分子もしくはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドに、対象の身体の外部にて曝露し、その後で、曝露した免疫細胞(および/またはその子孫)を対象に戻すことによって、行うことができる。
【0016】
ワクチンは、完全なタンパク質(配列1)もしくはその部分、または、そのタンパク質をコードするヌクレオチド配列(配列2)もしくはその部分を含むことができる。免疫源としてアンジオモチンを用いたワクチン接種の範囲は制限されず、タンパク質、ペプチドおよび遺伝子に基づくワクチン接種手法を包含する。例えば、ワクチンは、アンジオモチンまたは免疫活性類縁体またはアンジオモチンの断片を含むことができる。タンパク質またはペプチドに基づくワクチン成分とポリヌクレオチド/遺伝子に基づくワクチン成分の両方を、同時に、または、順次、個体に投与することが望ましいであろう。このことによって、より強力で、より広く、または、よりバランスが取れた免疫応答を促進することができる。
【0017】
類縁体としては、制限するわけではないが、A) 分子の免疫原性を増大させるために、ネイティブなタンパク質のアミノ酸配列を1つまたは複数のアミノ酸部位で改変した、アンジオモチンペプチドのアナログ;B)得られるペプチドの免疫原性を増大させるための、1つまたは複数のアミノ酸の化学的改変、例えば、アミノ酸上で天然に存在する1つまたは複数の化学基の、人工的な化学基への置換;C)アンジオモチンの断片に対応するペプチドの、免疫原性タンパク質(例えば、キーホールリンペット ヘモシアニン(KLH))またはハプテン(ジニトフェノール(DNP)などの分子量が小さな化学分子)との接合、を含む。
【0018】
本発明の更なる態様によって、有効量のアンジオモチン分子および/または本発明の前記した態様に関して定義したポリヌクレオチドを含む、血管の形成(例えば、血管新生)に対して有効なワクチンが提供される。ワクチンは、レシピエントにおいて内因性アンジオモチンに対する免疫応答を生じさせることができると考えられる。例えば、ヒトにおいて血管の形成に対して有効なワクチンは、有効量のヒトのアンジオモチン分子および/またはヒトのアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含みうる。アンジオモチン分子またはコードしたアンジオモチンポリペプチドは、全長のアンジオモチン、または、内因性アンジオモチンに存在し、利用されやすいエピトープに対する免疫応答を促進する、アンジオモチンの断片とすることができる。
【0019】
ワクチンは、更に、(抗原として)1つまたは複数の腫瘍抗原だけでなく他の既知の血管新生因子、例えばアンジオスタチン受容体を含むことができる。
【0020】
例えば、付随する実施例に示すように、Her2/neu腫瘍抗原の膜貫通型細胞外(TMEC)部分(腫瘍遺伝子の断片)をコードするプラスミドは、ヒトのアンジオモチン分子をコードするプラスミドと相乗的に作用し、マウスにおいて腫瘍の発達を減少させた。それゆえ、Her2/neuは、本発明の本態様のワクチンを部分的に含みうる腫瘍抗原の例である。この実施例において、TMECは、ヒトのHer2/neu腫瘍遺伝子の相同体であるラットp185の膜貫通型であって且つ細胞外の(TMEC)部分に由来する。この実施例は、どのようにして、アンジオモチンに基づくワクチンが、腫瘍抗原とともに、「アジュバンド」として相乗的に機能することができるかを例示している。この腫瘍抗原については、この実施例においてはHer2/neuに由来するが、制限するわけではなく、Cancer/testis腫瘍抗原に由来する抗原(例えば、抗原のMAGE、BAGE、GAGE、NY-ESO-1ファミリー)、分化抗原(例えば、MART-1/MelanA、MC1R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP-1および-2)、広く発現している抗原ART-4、CAMEL、CEA、Cyp-B、hTERT、iCE、MUC1および2、PRAME、P15、RUIおよび2、SART-1および3、WT1)ならびに他のより特徴的なまたは共通の抗原(例えば、AFP、b-Catenin、カスパーゼ-8、CDK-4、ELF2、G250、HSP-2、KIA A0205、MUM-1,2および3、RAGE)またはウイルス抗原(例えばHPV-E7、EVB抗原)または融合タンパク質に由来する抗原(例えば、bcr-able、Del-cain、LDL/FUT、TEL/AML1)などの例を含む、ヒト腫瘍において発現している任意の腫瘍抗原から由来することができる。腫瘍抗原は、リコンビナントタンパク質全体、またはプラスミド、またはペプチド、またはそれらの断片または部分(例えば、I型またはII型エピトープ)として投与することができる。
【0021】
ワクチンは、また、更に、腫瘍抗原または抗原性因子に対する、1つまたは複数の抗体を含むことができる。それゆえ、本発明には、また、制限するわけではなく、Her2/neu抗原に対する抗体(例えば、Herceptin/Tranztusumab)、リンパ腫におけるCD20抗原に対する抗体、直腸結腸癌におけるEpCAM抗原に対する抗体を含む、腫瘍抗原に対する抗体と組み合わせた、アンジオモチンワクチンを含む。
【0022】
ワクチンは、アンジオモチン分子に対する免疫応答を生じさせることを意図する。得られた免疫応答は、腫瘍および他の病状の発生および/または生存に必要である新規の毛細血管の形成を阻害することができる。更に(または代替的に)、アンジオモチンは、これまでは、腫瘍細胞内で検出されなかったが、少量のアンジオモチンは、特定の悪性腫瘍が発現しており、それゆえ、腫瘍特異的抗原として働くことができる。理論に束縛されるわけではないが、本発明は、アンジオモチンに反応する特異的なT細胞および/または抗体がその表面でアンジオモチンを発現する腫瘍細胞を認識して死滅させるアンジオモチンワクチン(本明細書で記載)を用いたワクチン接種を含む。腫瘍特異的抗原としてアンジオモチンを使用したワクチン接種のための全てのモデルおよびアプローチは、抗-血管新生効果のためのワクチン接種のために指摘したのと同じ方法を使用する。
【0023】
当業者に知られているように、ワクチン(すなわち、レシピエントの免疫システムを介して作用する因子)のための投与分子および投与様式の選択は、直接的な治療薬のものとは異なる。例えば、非-ワクチンのアンジオモチン治療用物質と比較した、ワクチンとして投与するアンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドの差異には、1つまたは複数の以下の事項が含まれる。
【0024】
非-ワクチン治療用の物質は、アンジオモチン分子の機能を維持していなければならない(例えば、アンジオスタチンに結合する能力;または細胞成分と相互作用する能力)。一方、ワクチン分子には、機能的なアンジオモチン分子である必要はない。ワクチン分子は、ネイティブなアンジオモチン分子との免疫学的な交差反応である免疫応答を生じる最も小さな非-機能的な誘導体(断片を含む)またはアナログとすることができる(しかしながら、必ずしもそうである必要はない)。
【0025】
通常、例えば、「体重kg当り」基準で測定したときに、ワクチンの投与量は、非-ワクチン治療の投与量よりも一桁または二桁低い。
【0026】
ワクチンは、免疫応答を高めるサイトカイン、BCG、ミョウバンなどの「アジュバント」を含みうる(または伴う)。非ワクチン治療では、このような随伴物は必要でない。例えば、「自己」タンパク質に対して免疫する本発明の場合、すなわち、ヒトにおいてヒトタンパク質に対して免疫する本発明の場合には、アジュバントは特に重要である。
【0027】
2または3週間に一度の追加免疫を含むワクチン投与とは対照的に、アンジオモチン分子の作用機構(血管新生の妨害)を特に考慮すると、非-ワクチン治療用の物質はほとんど毎日投与する必要がある。遺伝子ワクチンまたはポリペプチド/ペプチドワクチンのいずれかについては、例えば、数週間の間隔での一回または二回の投与が必要である。
【0028】
非-ワクチンベクターは、高レベルで、機能的分子を発現する能力を有するべきである;このことは、実際に達成することは非常に困難である。DNAワクチンは、極めてより低いレベルで免疫抗原を発現することができる。実施例で使用されているCMVプロモーターに基づくシステムを含む、多くの適したベクターおよびプロモーターシステムは既知である。免疫抗原は、ネイティブなアンジオモチンに対する免疫応答(抗体および/またはT細胞)を十分に産生することができるアンジオモチンの最小の非機能的なペプチドまたはドメインとすることができる。
【0029】
本発明の実施態様においては、アンジオモチンまたはその断片もしくは誘導体を含むまたはコードするワクチンを、部分的に、局所的に、全身に、または経腸的に投与し、前記分子に対して長期間持続する免疫を生じさせる。得られた免疫応答は、新規の血管形成を防止する。血管新生の防止は、腫瘍形成または他の脈管形成/血管新生-関連疾患に対して予防または治療効果をもたらす。
【0030】
本発明の他の実施態様においては、患者の免疫細胞を、アンジオモチン分子(例えば、全長アンジオモチンの断片とすることができる)によってex vivoで(患者の身体の外で)刺激させる。アンジオモチン分子(例えば、全長アンジオモチンの断片とすることができる)をコードするポリヌクレオチドの、いわゆる抗原提示細胞へのトランスフェクション後に続き、アンジオモチン分子が、患者の免疫細胞、特にT細胞に提示される。抗原提示細胞は、また、アンジオモチンタンパク質またはアンジオモチンタンパク質に由来するペプチドと外部で予め処理することができる。リンパ球を刺激する能力を有する全てのタイプの細胞は、本明細書では、便宜上、抗原提示細胞として定義する;これらは、いわゆる単球または骨髄のリンパ細胞に由来する樹状細胞;マイトジェンで刺激したB細胞またはs.c.エプスタイン バー ウイルスによって不死化したB細胞を含むと考えられる。
【0031】
刺激した免疫細胞を患者へ戻す養子免疫伝達は、伝達した免疫細胞、主にCD8+またはCD4+タイプのT細胞による内皮細胞で発現したアンジオモチンの認識を介して、血管新生の阻害をもたらし、結果として、腫瘍または他の血管新生関連疾患の進展の制限をもたらすことができる。刺激した免疫細胞を患者へ戻す養子免疫伝達は、また、伝達した免疫細胞、主にCD8+またはCD4+タイプのT細胞による、腫瘍抗原として腫瘍細胞に発現したアンジオモチンの認識を介して、腫瘍の進展の制限をもたらすことができる。
【0032】
脈管形成/血管新生関連疾患には、癌(特に固形腫瘍)、血管腫、眼の血管新生、糖尿病性網膜症、黄斑変性、リウマチ性関節炎、炎症性疾患(例えば、乾癬、腸の慢性炎症、喘息)および子宮内膜症を含む。
【0033】
脈管形成/血管新生関連疾患の危険を有する患者は、癌の危険、特には固形腫瘍の危険を有する患者、例えば、固形腫瘍をもたらす癌を形成する遺伝性素因を有する患者、または、固形腫瘍の環境上の危険を有する患者とすることができる。例えば、癌の危険を有する患者は、大腸にポリープが存在し、癌の家族歴を有するヒト;または、子宮頸癌に関連したヒトパピローマウイルス種に感染したことが判明している、および/もしくは、子宮頸癌の最も早期の変化を示すパップスメアが提示された女性とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
「アンジオモチン分子」については、天然に存在する全長のアンジオモチンポリペプチドまたはその断片、または、天然に存在するアンジオモチンポリペプチドまたはその断片と交差反応する抗原性を保持するそれらのどちらかのバリアントを含む。用語「アンジオモチン」は、当業者によく知られており、coiled-coilおよびC末端PDZ結合ドメインを有し、72kDaの予想分子量を有する細胞表面関連タンパク質と考えられているポリペプチドを含む。アンジオスタチンに結合し、内皮細胞の遊走およびチューブ形成に対するアンジオスタチンの阻害効果を媒介すると考えられる。天然のアンジオモチンポリペプチドの例を、以下に示す:Troyanovsky et al (2001) J Cell Biol 152, 1247-1254; WO 99/66038;Levchelioel al (2003) J Cell Sci 116, 3803-3810 ; Bratt et al (2002) Gene 298(1), 69-77; GenBank accession No NP_573572 (human)。アンジオモチンポリペプチドは、例えば、前記に記載した参考文献またはaccession numberまたは配列1の1つに示すような天然のアンジオモチンポリペプチド配列と少なくとも50%、60%から70%、70%から80%、80から90%または90から95%の配列同一性を有することができる。1つの実施態様においては、アンジオモチンポリペプチドは、天然のアンジオモチンポリペプチド配列(例えば、NP_573572または配列1)と95%から100%の間の配列同一性を有する。アンジオモチンポリペプチドは、Bratt et al (2002)に記載の「モチン」ファミリーのメンバー、すなわち、アンジオモチン-様1(amotl1)またはアンジオモチン-2(amotl2)とすることができる。このようなポリペプチドの断片を使用する場合、アンジオモチンポリペプチド内の対応する領域を有するモチンポリペプチドの領域を包含する断片であることが好ましい。このような領域は、Bratt et al (2002)、例えば図4で指摘されており、coiled-coilドメイン領域および/またはPDZ結合領域の一部または全てを含みうる。amot1の適した断片は、少なくともamot1のアミノ酸439から956の部分を含みうる。Amot2の適した断片は、少なくともamot2のアミノ酸307から779の部分を含みうる。
【0035】
配列同一性を評価する方法を提供する参考文献は、更に以下に論じる。
【0036】
本発明は、また、グリコシル化された、または、されていない、アンジオモチン由来ポリペプチドを含む。酵母または哺乳類発現システムで発現させたポリペプチドは、発現システムに依存して、ネイティブ分子と分子量およびグリコシル化パターンが類似しているか、または僅かに異なっている。例えば、E.coliなどの細菌内でのポリペプチドをコードするDNAの発現は、典型的には、非-グリコシル化分子を提供する。真核生物のタンパク質のN-グリコシル化部位は、3つのアミノ酸Asn-A.sub.1-Z(A.sub.1は、Pro以外のアミノ酸であり、Zは、SerまたはThrである)によって特徴付けられる。不活性化N-グリコシル化部位を有するポリペプチドのバリアントは、オリゴヌクレオチド合成、および、ライゲーションまたは部位特異的変異誘発手法などの当業者には既知の手法によって調製することができ、それらは、本発明の範囲に含まれる。代替的に、N-結合グリコシル化部位は、アンジオモチンポリペプチドに付加することができる。
【0037】
より具体的には、本発明の開示により、アンジオモチンに基づくワクチンが腫瘍拒絶応答を引き起こすことができ、このことは、胸腺依存リンパ球(以後は「T細胞」)応答が引き起こされることを意味する。それゆえ、アンジオモチンに基づくワクチン接種によって誘発される免疫T細胞応答は、悪性腫瘍または他の脈管形成/血管新生関連疾患を予防または治療するのに使用することができる。本発明は、また、他の態様において、このようなペプチドの発現を導く核酸分子を、免疫化のために、単独で、または、ウイルスベクター内で使用することができる。
【0038】
エピトープ配列は、当業者に知られた方法によって同定することができる。例えば、Epitope Mapping Protocols (1996) Methods Mol Biol 66, Glenn E Morris, Ed, Humana Press, Totowa, New Jersey; US Patent No 4,708,871 ; Geysen et al (1984) PNAS 81,3998-4002 ; Geysen et al (1986) Molec hzmunol 23, 709-71に開示されている方法などのエピトープマッピング手法を使用することができる。直鎖状または立体配座のエピトープは、例えばX線結晶解析または2次元核磁気共鳴による構造データなどの方法を使用して同定することができる。抗原性または疎水性プロット(例えば、Hopp et al (1981) PNAS 78, 3824-3828およびKyte et al (1982) J Mol Biol 157, 105-132のアルゴリズムに基づいて、 Oxford Molecular Groupから購入することができるOMIGAソフトウエアを使用して得られる)は、また、エピトープを同定するのに有用である。
【0039】
エピトープ、または、組成物、または、以下に記載するアンジオモチンもしくはそのエピトープを発現する細胞全体のワクチンを、免疫応答の産生ならびに/または血管新生および腫瘍発達を確認するために、例えば、実施例で開示された腫瘍発達のモデルマウスにおいて評価することができる。Mouse HLA-A2遺伝子組み換えマウスモデルまたは他のヒトHLAクラスIまたはII抗原について遺伝子組み換えしたマウスモデルを使用することができる。アンジオモチンに基づくワクチンの効果を試験するための他の適切なモデルには、乳癌を発症するneu-T BALB/cモデルなどの、自発的に腫瘍を発達させる遺伝子組み換えマウスモデルを含む。アンジオモチンに基づくワクチンが、これらのモデルにおける宿主の免疫システムを活性化する能力は、ELISPOTアッセイ、サイトカイン遊離アッセイおよびT細胞増殖アッセイなどのCD8+およびCD4+T細胞応答を測定する既知の免疫アッセイだけでなく、ELISAアッセイおよびフローサイトメトリーに基づくアッセイなどの抗体応答を測定するアッセイを使用することによって、評価することができる。アンジオモチンまたは本明細書で記載するアンジオモチンに基づく他の組成物で免疫したマウス内で血管新生が阻害されるかどうかを求めるために、腫瘍における血管新生の発達は、「マトリゲル-プラグ」アッセイ(当業者に既知であり、(例えば)London et al (2003) Cancer Gene Ther 10 (11), 823-832に開示されている)またはskin-flap window-chamber modelなどのイメージングに基づくアッセイを含む様々な既知の方法によって評価することができる。
【0040】
レシピエントは、ヒト、例えば、血管新生関連疾患または病気(例えば固形腫瘍、血管腫、子宮内膜症、眼の血管新生、糖尿病性網膜症、黄斑変性、リウマチ性関節炎、炎症性疾患(例えば、乾癬、腸の慢性炎症、喘息))を発症した、または、危険を有するヒトとすることができる。代替的に、レシピエントは、このような病気を発症したまたは危険を有する動物、例えば、飼いならされた動物(例えば、ネコもしくはイヌなどのペット)または農業上重要な動物(すなわち家畜)、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギもしくは家禽(例えばニワトリおよび七面鳥)とすることができる。
【0041】
1つの実施態様においては、ポリペプチドまたは複数のポリペプチドは、少なくともアンジオモチンのドメイン、すなわち、全長のアンジオモチンの折りたたみと類似の方法で自主的に折りたたむことができる、または折りたたむことができると予想されるアンジオモチンの部分を含む。コンピューター分析を使用して(例えば、疎水性および/またはαヘリックスまたはβシート鎖を形成する可能性の分析を組み込む)、このようなドメインを同定する方法は、当業者によって既知である。自主的に折りたたむ能力は、ネイティブのアンジオモチンに対する免疫応答を生じさせるのに重要であろうと考えられている。しかしながら、アンジオモチンは、抗原提示細胞によって小さなペプチド断片へと分解されて、T細胞それ自身に提示されるので、T細胞に基づく免疫応答が誘導された時は、折りたたみは重要でないと考えられる;その場合は、折りたたみまたは構造は重要でなく、アミノ酸配列のみが重要であると考えられる。アンジオモチンワクチンは、基本的に、T細胞に基づく免疫応答を誘導することによって機能し、自主的な折りたたみが可能なドメインを使用する必要は無いであろうと考えられる。
【0042】
1つの実施態様においては、ポリペプチドまたは複数のポリペプチドは、全長のアンジオモチンを含む。
【0043】
1つのまたは複数のアンジオモチンのエピトープを提示する1つまたは複数のペプチドまたはペプチド模倣化合物(例えば、実施例1で論じる)を使用することができる。例えば、約15、12、10または9アミノ酸までの短いペプチド(または、このような短いペプチドをコードするポリヌクレオチド)を使用することができる。エピトープについては、当業者に既知であるミモトープを含む。
【0044】
抗体は、ワクチンにおける抗原として使用することができる。例えば、目標とする標的(例えばアンジオモチン)に対する抗体に対する抗体を投与すると、免疫システムのB細胞が、内因性アンジオモチンを認識する抗体に対する抗体を産生する。こらは、抗-イデオタイプワクチンと呼ばれ、受動的な抗体療法とは異なり、目標とする標的に対する抗体を投与する。このような抗-イデオタイプ抗体は、本明細書で使用する「アンジオモチン分子」の定義の範囲内に含まれる。
【0045】
本発明は、また、アンジオモチンに基づくワクチンと、内皮細胞を標的とする他のタイプの抗血管新生療法または製品との組み合わせを提供する。それゆえ、例えば、ワクチンは、更に(アンジオモチン分子またはポリペプチドに加えて)、血管新生-促進ポリペプチド(アンジオモチン以外)例えば、VEGFR-2(例えばAccession No AF063658)またはTie2(例えばAccession No BC035514)に対する免疫源として機能するのに適したポリヌクレオチドまたはポリペプチド(またはペプチド模倣化合物)を含むことができる。それゆえ、例えば、本発明は、例えば、(抗-アンジオモチンワクチン接種と組み合わせた)pDNAワクチン、ウイルスベクターとして投与した、または、DC細胞に発現させたもしくはDC細胞上にロードさせた血管内皮増殖因子受容体2(VEGFR2)を用いたワクチン接種を含む。抗-アンジオモチンワクチン接種と組み合わせにおいて有用であろう多くの他のタイプの抗-血管新生療法が存在する。血管新生-促進ポリペプチド配列についての好ましさは、アンジオモチンについて示された(適切に適合した)好ましさに対応する。これらの他の血管新生-促進ポリペプチドに由来する配列(例えばVEGFR-2配列)は、アンジオモチンに由来する配列と同じまたは異なるポリペプチド(または、必要に応じてポリヌクレオチド)に含まれることができる。治療またはワクチンは、更に、例えば、pDNAワクチン、ウイルスベクターとして投与する、または、DC細胞に発現させたもしくはDC細胞上にロードさせた、アンジオモチンに基づくワクチンと、抗-腫瘍効果を有するサイトカインまたは腫瘍抗原の投与に基づく免疫療法の組み合わせを含みうる。
【0046】
アンジオモチンについては、本明細書に開示されているアンジオモチン配列、ならびに/または、前記で引用した参考文献(公共のデーターベースの参考文献を含む)および/もしくは他の公共のデーターベースの記録に開示されているアンジオモチン配列と実質的に同じ抗原性(例えば、抗-血管新生効果によって評価する)、相互作用または活性を有するバリアント、断片および融合体を含む。アンジオモチンまたはその断片が、天然のアンジオモチンもしくはその断片、またはアンジオモチンに由来しないポリペプチドとアンジオモチンもしくは断片の融合体であることが好ましい。例えば、アンジオモチンに由来する配列は、発現、安定性および/または精製を助ける部分、例えば、当業者にとって既知であるマルトース結合タンパク質(MBP)部分またはHisタグと融合することができる。
【0047】
「バリアント」は、Wisconsin Sequence Analysis Package, version 8 for Unix(登録商標)のBestfit Programによって測定した場合に、本明細書に開示されている、または、前記で指摘した参考文献に開示されているアンジオモチンポリペプチドと、少なくとも50%(好ましくは60、70、80、90、95または99%)の配列一致性を有する領域を有する。同一性の割合は、候補バリアント分子の少なくとも50(好ましくは少なくとも60、75または100)のアミノ酸の領域、および、5%までのギャップを許容するアンジオモチン配列における等価な長さの最も類似した領域を参照して計算することができる。
【0048】
同一性の割合は、例えば、Devereux et al. (Nucl. Acids res. 12:386, 1984)に開示された、および、University of Wisconsin Genetics Computer Group(UWGCG)から購入できるGAP computer program, version 6.0を使用して、配列情報を比較することによって求めることができる。GAP programは、Smith and Waterman(Adv. Appl. Math 2.482. 1981)によって修正された、Neddleman and Wunsch(J. Mol. Biol. 48:443, 1970)のアライメント方法を利用する。GAP programの好ましいデフォルトパラメータは:(1)ヌクレオチドについての比較マトリクス(一致の場合は1の値を含み、不一致の場合は0の値を含む)、および、Schwarts and Dayhoff, eds, Atlas of Protein Sequence and Structure, National Biomedical Research Foundation, pp 353-358, 1979によって開示されたBribskov and Burgess, Nucl. Acids Res. 14 6745, 1986の加重比較マトリクス;(2)各ギャップにつき3.0のペナルティおよび各ギャップにおける各シンボルにつき0.10のペナルティ;ならびに(3)末端ギャップについてはペナルティ無し、を含む。
【0049】
好ましくは、アンジオモチンポリペプチドは、既知の全長の野生型アンジオモチン(前記したネイティブな全長の野生型アンジオモチンと抗原的に交差反応する)のバリアントまたは融合体からなる。
【0050】
好ましいアンジオモチン配列を、例えば、配列1および2において示す。
【0051】
置換、欠失、挿入または任意のサブコンビネーションを、最終的なコンストラクトを得るのに使用することができる。アミノ酸は20のみ知られているが、64の可能性あるコドン配列が存在するので、異なるコドンが同じアミノ酸を産生するという意味で、遺伝子コードは縮重している。それゆえ、各アミノ酸について少なくとも1つのコドンが存在している、すなわち、各コドンは、1つのアミノ酸を産生し、他を産生しない。翻訳の間に、最終的に産生されたポリペプチドにおいて適切なアミノ酸配列を得るためには、適切なリーディングフレームが維持されていなければならない。
【0052】
既知の配列が有する既定のアミノ酸部位における付加、欠失または置換のための方法は、良く知られている。例示的な方法には、オリゴヌクレオチドを介した部位特異的な変異およびポリメラーゼ連鎖反応を含む。
【0053】
オリゴヌクレオチド部位特異的変異は、本質的には、変異を導入する領域を含む一本鎖のDNAと、望む変異をコードするオリゴヌクレオチドをハイブリダイズし、前記一本鎖をオリゴヌクレオチドの伸張のための鋳型として使用することによって、変異を含む鎖を産生することを含む。この手法は、様々な形態で、Zoller and Smith (1982) Nucl. Acid Res. 10, 6487に開示されている。
【0054】
ワクチン抗原は、1つより多いアンジオモチンに由来するエピトープを含みうる。エピトープは、CD4+またはCD8+T細胞によって認識されるポリペプチドとして定義される。このエピトープは、当業者に知られているように、免疫応答を促進するのに有用である。
【0055】
ワクチンは、当業者にとっては明らかであるように、更なるポリペプチドまたはポリヌクレオチドを含みうる。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドには、例えば、組み換え生物もしくはその部分、またはその生成物(細胞培養液の上清など)、好ましくは微生物の形態で、好ましくはポリヌクレオチドを発現することができる、すなわち、アンジオモチンアミノ酸配列を発現することができる形態で、または、代替的には、宿主細胞内での発現のためにポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞へと伝達することができる形態で、ワクチンに含まれことができる。組み換え微生物は、好ましくは、当業者に良く知られているように、非毒性微生物である。組み換え微生物は、例えば、ビフィドバクテリウムもしくはラクトバシラス、または、弱毒化SalmonellaもしくはBCGもしくは弱毒化E.coliとすることができる。組み換え生物は、代替的には、例えば、WO97/40177の教示を利用する植物とすることができる。
【0056】
更なる代替として、ワクチンは、真核細胞全体または細胞によって含まれる物質のいずれかから調製することができる。例えば、細胞は、ワクチンを意図するタイプの生物に由来することができる。例えば、細胞はヒト細胞とすることができる。細胞は、組み換え細胞とすることができる。細胞は、アンジオモチン分子を発現することができる、例えば、アンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトした細胞ラインの細胞とすることができる。それゆえ、細胞は、アンジオモチン分子をコードする組み換えポリヌクレオチドを含み、組み換えアンジオモチン分子を発現することができる。細胞は、放射線照射し、加熱殺菌し、またはパラホルムアルデヒド固定して免疫に使用することができる。
【0057】
細胞は、ヒト起源の、または、アンジオモチンを発現する他の種に由来する異種生物起源の、アンジオモチンを発現する腫瘍細胞、または新しく移植されたもしくは培養された内皮細胞、またはアンジオモチンもしくはこの分子の一部をトランスフェクトし発現する細胞とすることができる。細胞は、アンジオモチンを発現することを求めるために試験することができる。細胞は、アンジオモチン分子でロードされ、または、アンジオモチンもしくはアンジオモチンに関連した生成物をコードするcDNAまたはmRNAでトランスフェクトされた、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞とすることができる。腫瘍細胞ワクチン(必ずしもアンジオモチン抗原を含む必要はない)は、アンジオモチンワクチンと同時に使用することができる。全細胞ワクチンについては、腫瘍細胞を患者から取り出し、研究室で増殖させる。その後、1)腫瘍細胞がこれ以上増殖せず、2)患者に感染することができるものが何も存在しないことが実現するように、腫瘍細胞を処理する。全腫瘍細胞をヒトに注入すると、腫瘍細胞上の抗原に対する免疫応答が生じる。
【0058】
全細胞癌ワクチンには2つのタイプが存在する。自家全細胞ワクチンは、患者自身の全ての、不活性化した腫瘍細胞から調製される。他家全細胞ワクチンは、他人の全ての、不活性化した腫瘍細胞または幾人かのヒトの組み合わせた腫瘍細胞から調製される。
【0059】
APCワクチンは、腫瘍細胞を殺傷するT細胞を刺激するのに最も適した細胞、すなわち抗原提示細胞(APC)から調製される。APCの最も一般的なタイプとしては、樹状細胞が使用される。癌ワクチンは、例えば、研究室内で、腫瘍抗原で刺激したまたは腫瘍抗原の存在下で増殖させた樹状細胞から調製することができる。抗原で刺激した樹状細胞(またはAPC)は、その表面に腫瘍抗原を有しており、注入するときには、強力にT細胞が増殖するのを活性化し、腫瘍細胞を殺傷する準備ができている。抗原としてアンジオモチン分子を用いた同じ方法を使用することができる。
【0060】
抗原ワクチンは全細胞から調製するわけではないが、腫瘍が含む1つまたは複数の抗原から調製される。1つの腫瘍は、多くの抗原を含む。特定のタイプの全ての癌に共通している抗原もあれば、それぞれに特徴的な抗原もある。数は少ないが、異なるタイプの癌の腫瘍の間で共有されている抗原もある。抗原を抗原ワクチンに伝達する多くの方法が存在する。腫瘍細胞に由来するタンパク質またはタンパク質の断片を、直接に抗原として与えることができる。
【0061】
アンジオモチン分子(または他のワクチン抗原)は、例えば、前記で論じたアンジオモチンエピトープまたはミモトープに対応する、ペプチド模倣化合物とすることができる。用語「ペプチド模倣」とは、治療剤としての特定のペプチドの構造および望ましい特徴を模倣するが、望ましくない特徴は有さない化合物を指す。例えば、モルヒネは、経口で投与することができ、ペプチドエンドルフィンのペプチド模倣物である化合物である。
【0062】
経口での生物学的利用率の不足およびタンパク質分解によって、ペプチドが関連する治療活用は制限される。典型的には、例えば、ペプチドは、エキソ-およびエンドペプチダーゼによってin vivoで迅速に分解し、一般的には非常に短い生物学的半減期となる。ペプチドの潜在的な治療薬としてのもう1つの欠点は、経口投与を介した生物学的利用率の不足である。消化管でのタンパク質分解酵素によるペプチドの分解が、重要な寄与因子であろう。しかしながら、問題はより複雑である、なぜならば、迅速には代謝によって不活性化されない分子量が小さく環状のペプチドであっても、経口を介した生物学的利用率が悪いからである。このことは、腸膜を介した輸送の乏しさ、ならびに、肝抽出および続く腸への排出による血液からのクリアランスの迅速さを原因とするのであろう。これらの観察によって、複数のアミド結合が、経口投与を介した生物学的利用率に干渉していることが示唆された。ペプチド薬を経口投与した場合、ペプチド鎖中に存在するアミノ酸残基に結合したペプチド結合がバラバラに壊れると考えられる。
【0063】
ペプチド模倣物をデザインし合成する多くの異なる方法が存在する。例えば、Sherman and Spatola, J. Am. Chem. Soc., 112:433(1990)に開示されている1つの方法においては、1つまたは複数のアミド結合を、難解な方法で、様々な化学官能基で置換してした。このステップワイズな方法は、活性なアナログが得られたという点で、幾つかの成功をもたらした。幾つかの例においては、これらのアナログは、天然の対応物より長い生物学的半減期を有することが示された。それにもかかわらず、この方法には制限が存在する。1つより多いアミド結合が置換されることは稀であった。結果として、得られたアナログは、分子内のいずれかの部位で、酵素による不活性化を受けやすいままであった。ペプチド結合を置換する場合は、新規のリンカー部分が、ペプチド結合と実質的に同じ電荷分布および実質的に同じ平面性を有していることが好ましい。
【0064】
ペプチド結合が反転しているretro-inverso型ペプチド模倣物は、例えば、Meziere etal (1997) J. Immunol. 159 3230-3237に開示されている方法などの、当業界で既知の方法によって合成することができる。この方法には、側鎖の位置ではなく骨格に関連した電荷を含む擬ペプチドを調製することが含まれる。CO-NHペプチド結合の代わりにNH-CO結合を含むretro-inverse型ペプチドは、タンパク質分解に非常に耐性を示す。
【0065】
もう1つの方法においては、Dアミノ酸およびN-メチルアミノ酸などの、様々な非コードまたは改変アミノ酸を使用して、哺乳類ペプチドを改変した。代替的には、想定される生物活性な構造は、環化などの共有結合の改変、または、γ-ラクタムもしくは他のタイプの架橋の挿入によって、安定化されてきた。例えば、Veber et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:2636 (1978)およびThursell et al, Biochem. Biophys. Res. Comm., 111:166(1983)を参照せよ。
【0066】
多くの合成方法で共通したテーマは、ペプチドに基づくフレームワークへの環状部分を導入することである。環状部分は、ペプチド構造の構造的な空間を制限し、このことが、しばしば、特定の生物学的受容体に対するペプチドの親和性の増加をもたらす。この方法の更なる利点は、ペプチドへの環状部分の導入が、また、細胞内ペプチダーゼへの感受性が消滅したペプチドもたらすことである。
【0067】
環状の安定化ペプチド模倣物の合成についての1つの方法は、閉環メタセシス(RCM)である。この方法は、ペプチド前駆体を合成する工程、および、ペプチド前駆体をRCM触媒と接触させて構造的に制限されたペプチドを得る工程を含む。適したペプチド前駆体は、2つ以上の不飽和C-C結合を含みうる。この方法は、固相ペプチド合成方法を使用して行なうことができる。この実施態様においては、固相に固定された前駆体を、RCM触媒と接触させて、その後、生成物を固相から切断して、構造的に制限されたペプチドを得る。
【0068】
ポリペプチドを合成する前または合成する後に1つまたは複数のアミノ酸残基を化学的に改変したポリペプチドは、ポリペプチドの機能、すなわち、in vivoでの特異的な免疫応答の発生を、実質的に変化させないままであることを条件として、抗原として使用することができる。このような改変には、酸または塩基、特に生理学的に許容される有機または無機酸と塩を形成すること、末端カルボキシ基のエステルまたはアミドを形成すること、および、アミノ酸にN-t-ブトキシカルボニルなどの保護基を結合することが含まれる。このような改変は、in vivoでの代謝から、ポリペプチドを保護することができる。ポリペプチドはマンノシル化することができ、または、さもなければ、抗原性を増すように改変することができ、または、抗原性および/もしくは免疫原性を増すための化合物と組み合わせることができる。
【0069】
アンジオモチンに由来するアゴニスト性エピトープの使用は、また、本発明に含まれる。アゴニスト性エピトープは、MHCクラスIまたはMHCクラスII拘束性CD8またはCD4+T細胞のより効率的な活性を介して、免疫システムをより効率的に活性化するようにデザインされる。T細胞エピトープに由来するアゴニスト性エピトープをデザインする2つの一般的な手法は、本発明に含まれる。1つの手法は、より高いHLAクラスIまたはクラスII結合をもたらすHLAアンカー残基の改変が必要である。腫瘍抗原または微生物の抗原に由来する幾つかのHLAクラスI結合ペプチドに関して、この手法が適用される。代替的に、T細胞受容体(TCRと省略)への接触に関与する残基の置換は、また、T細胞による応答を増し、本発明によって保護されることを意図する。
【0070】
一般的に、当業者に既知であるように、そして、例えばUS5,869,445に開示されているように、アミノ酸置換は様々な方法で調製され、本発明の範囲内で他の態様のバリアントを提供することができる。第一に、例えば、アミノ酸置換は、保存的になされることができる;すなわち、ペプチド化学の当業者が、ポリペプチドの二次構造および疎水性親水性特性が実質的に変化しないことを予期するように、置換アミノ酸を、類似した特性を有するアミノ酸に置換する。一般的には、アミノ酸の以下の群が、保存的変化を表す:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2)cyc、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;および(5)phe、tyr、trp、his。非-保存的な変化の例は、一つの群のアミノ酸を、他の群のアミノ酸に置換することである。
【0071】
本発明のバリアントを産生するためのアミノ酸置換の他の方法は、クラスII MHC分子(CD4+T細胞応答のための)またはクラスI MHC分子(CD8+T細胞応答のための)に結合することができるT細胞モチーフにおけるアミノ酸を同定および置換することである。理論的にはクラスII MHC分子に結合することができるモチーフを有する(アンジオモチン分子の)ペプチド断片は、コンピューター分析によって同定することができる。例えば、T細胞認識についての可能性を有する部位を識別するようにデザインされた幾つかのコンピューターアルゴリズムを導入した、タンパク質配列分析パッケージ、T Sitesを使用することができる(Feller and dela Cruz, Nature 349:720-721,1991)。2つのサーチアルゴリズムが使用される:(1)MargalitによるAMPHIアルゴリズム(Feller and de la Cruz, 349:720-721,1991; Margalit et al., J. Immunol. 138:2213-2229,1987)は、アルファ-ヘリックスの周期性および両親媒性によってエピトープモチーフを同定する;(2)Rothbard and Taylorアルゴリズムは、電荷および極性パターンによってエピトープモチーフを同定する(Rothbard and Taylor, EMBO 7:93-100,1988)。両方のモチーフを有する断片は、最も適切にクラスII MHC分子に結合する。CD8+T細胞は、クラスI MHC分子に結合するペプチドを認識する。Falk et al.は、特定のMHC分子に結合するペプチドが識別可能な配列モチーフを共有することを求めた(Flak et al., Nature 351:290-296,1991)。HLA-A2.1の溝内で結合するペプチドモチーフは、培養した細胞ラインのHLA-A2.1分子から剥ぎ取ったペプチドのエドマン分解によって定義された(上記Falk et al.の表2)。この方法によって、典型的なまたは平均的なHLA-A2.1結合ペプチドが、部位2(L)および9(V)に位置する主要なアンカー残基を有する9アミノ酸長として同定された。一般的に存在する強力な結合残基は、部位2(M)、4(E,K)、6(V)、および8(K)と同定された。同定されたモチーフは、平均的な多くの結合ペプチドを表す。
【0072】
エピトープ(例えば、エピトープ-形成アミノ酸配列、または抗-血管形成エピトープを含むと考えられる領域)は、単数コピーとして、または、複数コピーとして、例えばタンデムリピートとして存在することができる。このようなタンデムまたは複数リピートは、それ自身が十分に抗原性を有しており、キャリアの使用が必要でない。ポリペプチドが、N末端およびC末端が互いにつながったループとして形成されること、または、1つまたは複数のCys残基を末端に付加して、抗原性の増加および/またはジスルフィド結合の形成をもたらすことは有用である。エピトープ(例えばエピトープ-形成アミノ酸配列)が、キャリア(好ましくはポリペプチド)と共有結合している場合、エピトープ形成アミノ酸配列がループを形成するように配向することが好ましい。
【0073】
現在の免疫学的理論に従えば、免疫系を刺激し、または刺激を増大するために、キャリア機能は、任意の免疫原性調製物に存在すべきである。本発明の前記した態様に関する前記エピトープは、血清アルブミン、ミオグロビン、細菌のトキソイドおよびキーホールリンペット・ヘモシアニンなどの別々のキャリアと会合(例えば架橋によって)させることができる。アンジオモチンそれ自身は、キャリアまたはアジュバントとして作用する。免疫応答においてT細胞の支援を誘導する、より最近に開発されたキャリアには、B型肝炎コア抗原(ヌクレオキャプシドタンパク質とも呼ばれる)、Thr-Ala-Ser-Gly-Val-Ala-Glu-Thr-Thr-Asn-Cysなどの想定されるT細胞エピトープ、ベータ-ガラクトシダーゼおよびインターロイキン1-1の163-171ペプチドが含まれる。後者の化合物は、キャリアまたはアジュバントまたはこれら両方として、様々にみなされることができる。
【0074】
代替的に、同じまたは異なるエピトープの幾つかのコピーは互いに架橋することができる;この場合、独立したキャリアそのものは存在しないが、キャリア機能はこのような架橋によってもたらすことができる。適した架橋剤には、SigmaおよびPierceなどのカタログに掲載されている架橋剤、例えば、グルタルアルデヒド、カルボジイミドおよびスクシニル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートが含まれ、後者の剤は、(存在するならば)C末端システイン残基の-SH基を利用する。一般的にはO’Sullivan et al., Anal. Biochem. (1979)100,100-108に開示されている方法などの、ポリペプチドを架橋する任意の一般的な方法を使用することができる。例えば、第一の部分をチオール基で強化し、第二の部分を、チオール基と反応することができる二官能性剤(例えば、ヨード酢酸のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル(NHIA)またはN-スクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP))、コンジュゲート種の間でジスルフィド結合を導入するヘテロ二官能性架橋剤で反応させることができる。例えば、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いて達成されるアミドおよびチオエーテル結合は、一般的に、ジスルフィド結合よりも、in vivoにおいてより安定である。
【0075】
更なる有用な架橋剤には、第一級アミンのチオール化剤であり、穏やかな条件下でスルフヒドリル基の脱保護を可能とするS-アセチルチオグリコール酸 N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SATA)、ジメチルスベルイミデート ジヒドロクロライドおよびN,N’-o-フェニレンジマレイミドを含む。
【0076】
ポリペプチドを、適した宿主において、適したヌクレオチド配列の発現によって調製する場合、キャリアとして機能するペプチド配列を有する融合生成物としてポリペプチドを発現することが有用であろう。Kabigenの「Exosec」システムは、このような処理の例である。
【0077】
使用することができる他のアジュバントには、WO02/053181に開示されているアジュバント、例えば、DDAを含む(US patent No 5,951,988参照)VSA3が含まれる。
【0078】
適した組み換えポリペプチドまたはポリヌクレオチドを調製するのに使用することができる適したベクターまたはコンストラクトは、当業者に知られている。当業者に既知の方法を用いて、必要なポリペプチドまたは複数のポリペプチドを発現することができるポリヌクレオチドを調製することができる。
【0079】
ヒトまたは動物にポリヌクレオチドを投与し、ヒトまたは動物で抗原性ポリペプチド(すなわち、アンジオモチンおよび場合によっては他のポリペプチドに由来する配列)を発現することができるように、レシピエントにおいてポリペプチドを発現できることが、ポリヌクレオチドにとって望ましいであろう。ポリペプチド、例えばアンジオモチンは、以下に記すように、任意の適したポリヌクレオチド(遺伝子コンストラクト)から発現され、レシピエントに伝達することができる。典型的には、ポリペプチドを発現する遺伝子コンストラクトは、レシピエントの細胞内で転写ポリヌクレオチド(例えばmRNA)分子を発現することができるプロモーターに操作可能に連結した前記ポリペプチドをコードする配列を含み、この前記ポリペプチドをコードする配列は転写され、前記ポリペプチドを合成することができる。適したプロモーターは、当業者に知られており、前記ポリペプチドを発現させるのに望ましい場所に依存して(例えば、樹状細胞または他の抗原提示細胞またはこれらの前駆細胞)、広範に発現させる遺伝子のためのプロモーター、例えばハウスキーピング遺伝子、または、組織選択的遺伝子のためのプロモーターを含む。特に、ポリヌクレオチドの伝達または摂取が、選択した細胞、例えば樹状細胞または前駆細胞を標的とする場合、好ましくは、樹状細胞または樹状前駆細胞に選択的なプロモーターを使用するが、これは必須ではない。樹状細胞に選択的なプロモーターには、CD83またはCD36プロモーターが含まれる。
【0080】
アンジオモチンに基づくワクチンと、望むように発現または組み合わせることができる他のポリペプチド/タンパク質には、サイトカインまたは増殖因子などの免疫刺激剤が含まれる。例としては、GM-CSF、IL-2、IL-12またはIL-15を含む(例えば実施例1を参照)。発現または含むことができる他の免疫刺激剤は、いわゆるT細胞受容体に結合する因子であり、免疫刺激小分子イミキモド、フラジェリンなどの微生物産生物、または非メチル化細菌CpGモチーフ、もしくはCpGモチーフに基づくオリゴヌクレオチドを含む。
【0081】
ポリペプチドを発現することができる核酸配列は、好ましくは、前記配列の発現に必要な調節エレメントに操作可能に連結する。
【0082】
「操作可能に連結する」とは、コンポーネントの通常の機能を実施することができるように配置することを指す。それゆえ、調節エレメントに「操作可能に連結した」コード配列とは、抗原(または免疫刺激分子)をコードする核酸配列が、調節配列の制御下で発現することができる配置を指す。
【0083】
「調節配列」とは、特定の宿主生物において、操作可能に連結したコード配列の発現に必要な核酸配列を指す。例えば、真核細胞に適している調節配列は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーである。
【0084】
「ベクター」とは、一本鎖、二本鎖、環状またはスーパーコイル状DNAを含むDNA分子である。適したベクターには、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ポックスウイルスおよび細菌プラスミドが含まれる。レトロウイルスベクターとは、宿主のゲノムにゲノムをランダムに結合させることによって複製するレトロウイルスである。適したレトロウイルスベクターは、WO92/07573に開示されている。
【0085】
ウイルスベクターは、ヒトに病気をもたらさず、または如何なる病気も伝播しないことを意図する。これらのウイルスは、ヒト細胞に感染した場合に、細胞がその表面に所定の抗原を調製し提示するように、研究室内で操作することができる。ウイルスは、免疫応答を開始するには十分であるが、ヒトを病気にするには十分ではない、少数のヒト細胞のみに感染することができる。
【0086】
ウイルスは、また、サイトカインを産生するように、または、細胞表面に免疫細胞を活性化するのを補助するタンパク質を提示するように、操作することができる。これらは、単独でまたは免疫応答を補助するワクチンと共に付与することができる。
【0087】
アデノウイルスは、線状二本鎖DNAウイルスである。適したアデノウイルスベクターは、Rosenfeld et al., Science, 1991, Vol.252, page 432に開示されている。
【0088】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、パルボウイルスファミリーに属し、約4-6KBの一本鎖DNAからなる。
【0089】
ポックスウイルスベクターは、大きなウイルスであり、遺伝子を挿入することができる幾つかの部位を有する。このウイルスは熱安定性であり、室温で保存することができる。安全な研究には、ポックスウイルスベクターが、複製欠損であり、宿主から宿主へまたは周囲へと送達することができないことを必要とする。
【0090】
ワクチンを、特異的な細胞群、例えば抗原提示細胞へと標的化することは、例えば、部位特異的注入、標的化ベクターおよび伝達システムを使用することにより、または、レシピエントから細胞群を選択的に精製し、ペプチドもしくは核酸をex vivo投与することにより、達成することができる(例えば、樹状細胞は、Zhou et al., (1995) Blood 86,3295-3301;Roth et al., (1996)Scand. J. Immunology 43,646-651に開示されているように保存することができる)。更に、ベクターを標的化することには、適した場所での抗原の発現をもたらす組織-または腫瘍-選択的プロモーターを含みうる。
【0091】
遺伝子コンストラクトはDNAまたはRNAとすることができるが、DNAであるならば好ましい。
【0092】
好ましくは、遺伝子コンストラクトは、ヒト細胞への伝達に適合する。
【0093】
動物の身体内部の細胞または動物の身体から取り出した細胞内へと、遺伝子コンストラクトを導入する手段および方法は、当業者に知られている。例えば、本発明のコンストラクトは、コンストラクトを(分裂している)細胞のゲノムへと導入するために、任意の一般的な方法、例えばレトロウイルスを含む方法によって、細胞内へと導入することができる。標的化レトロウイルスは、本発明の使用に利用することができる;例えば、特異的な結合親和性を付与する配列は、予め存在するウイルスenv遺伝子へと導入するように操作することができる(遺伝子治療のための、このレトロウイルスおよび他の標的化ベクターのレビューのために、Miller & Vile (1995) Faseb J. 9,190-199を参照せよ)。
【0094】
好ましいレトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、例えば、Verma & Somia (1997) Nature 389,239-242に開示されているベクターとすることができる。
【0095】
他の方法には、限られた時間、または、ゲノムへの挿入後のより長時間における発現のための、コンストラクトの細胞への単純な伝達が含まれる。後者の方法の例には、リポソームが含まれる(Nassander et al., (1992) Cancer Res. 52,646-653)。伝達の他の方法には、キャリアとしての抗体-ポリリジン架橋(Curiel Prog. Med. Virol. 40,1-18)、および、トランスフェリン-ポリカチオンコンジュゲート(Wagner et al., (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87,3410-3414)を介して外部DNAを保有するアデノウイルスが含まれる。これらの第一の方法においては、ポリカチオン-抗体複合体を、本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトとともに形成する。この抗体は、野生型アデノウイルス、または、抗体が結合する新しいエピトープが導入されているバリアントアデノウイルスのいずれかに特異的である。ポリカチオンモチーフは、リン酸骨格との静電相互作用を介してDNAと結合する。アデノウイルスは、非改変の繊維およびペントンタンパク質を含むので、細胞へ取り込まれ、このウイルスを有する細胞へ本発明のDNAコンストラクトを運搬する。ポリカチオンがポリリジンであるならば、好ましい。
【0096】
適しているであろう細菌の伝達方法は、Dietrich (2000) Antisense Nucleic Acid Drug Delivery 10, 391-399に開示されている。例えば、弱毒化細菌種は、粘膜表面を介した組み換えワクチンの投与を可能とする。弱毒化細菌は、一般的に異種抗原を発現するように操作するのに対して、更なる手法としては、真核生物抗原発現ベクター(DNAワクチン)の伝達のために、細胞内細菌を使用する。この方法によって、マクロファージおよび樹状細胞(DC)などの専門的な抗原-提示細胞(APC)への、細菌を介したDNAの直接伝達が可能となる。DNAワクチン伝達に使用した細菌は、APCによるファゴサイトーシス後に宿主細胞の細胞質ゾルへと入り込む(例えば、赤痢菌およびリステリア)、または、細菌がファゴソームコンポーネントに留まる(例えば、サルモネラ)。両方の細菌キャリアの細胞内局在性は、本発明のDNAワクチンベクターの良好な伝達に適するであろう。
【0097】
アンジオモチン(または他の)ポリペプチドの発現は、誘導性細菌プロモーター、例えば、細菌が宿主生物環境(例えば宿主の腸)へと入り込むもしくは挿入される、または宿主細胞へ結合するもしくは入り込む場合に誘導されるプロモーターの制御下におくことができる。
【0098】
遺伝子銃(gene gun)による伝達は、本発明に関連して好ましい伝達の方法である。特に、アンジオモチンプラスミドDNAは、「遺伝子-銃」による皮内ワクチン接種、筋肉内注入、または、皮内にもしくは筋肉内に注入されたプラスミドDNAワクチン接種として投与し、その後、注入部位での皮膚または筋肉内「エレクトロポレーション」を行い、ワクチン接種の効率を増すことができる。本発明のワクチンを伝達する遺伝子-銃の使用は、実施例5に開示されており、得られたデータを図5および6に示す。
【0099】
DNAは、また、例えば以下に示す、DNAが内部に存在するアデノウイルスによって伝達することができる。
【0100】
DNA巨大分子を細胞内へと運搬する受容体媒介エンドサイトーシスを使用する、高効率の核酸伝達システムを使用することができる。この方法は、核酸を結合するポリカチオンに、鉄輸送タンパク質トランスフェリンをコンジュゲートすることによって、達成される。ヒトトランスフェリン、またはニワトリのホモログであるコンアルブミン、またはこれらの組み合わせを、ジスルフィド結合を介して、小分子のDNA-結合タンパク質であるプロタミンに、または、様々なサイズのポリリジンに共有結合させる。これらの改変したトランスフェリン分子は、類似の受容体に結合し、細胞への効率的な鉄輸送をもたらす能力を維持する。トランスフェリン-ポリカチオン分子は、核酸のサイズに依存せず(短いオリゴヌクレオチドから21キロ塩基対のDNA)、本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトとの電気泳動上安定な複合体を形成する。トランスフェリン-ポリカチオンとDNAコンストラクトまたは他の本発明の遺伝子コンストラクトの複合体を、標的細胞に供給する場合、細胞内のコンストラクトに由来する高いレベルの発現が予期される。
【0101】
Cotten et al., (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89,6094-6098の方法によって産生される欠失または化学的に不活性化したアデノウイルス粒子のエンドソーム崩壊(endosome-disruption)活性を使用した、本発明のDNAコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトの、効率が良い受容体媒介伝達も使用することができる。この方法は、アデノウイルスが、リソソームを通過せず、エンドソームからDNAを遊離できるように適合しており、そして、例えば本発明のDANコンストラクトまたは他の遺伝子コンストラクトに連結したトランスフェリンの存在下で、コンストラクトが、アデノウイルス粒子と同じルートによって細胞に取り込まれるという事実に基づくと考えられる。
【0102】
この方法は、複雑なレトロウイルスコンストラクトを使用する必要がない;レトロウイルス感染で生じるゲノムの永続的な改変が生じない;そして、標的化発現システムが標的化伝達システムとつながっており、それ故、他の細胞のタイプへの毒性を減ずることができるという利点を有する。
【0103】
「裸のDNA(naked DNA)」およびカチオン性および中性脂質と組み合わせたDNAは、本発明のDNAをレシピエントの細胞へと導入するのに有用であろう。遺伝子治療における非-ウイルス手法は、Ledley (1995) Human Gene Therapy 6,1129-1144に開示されている。代替的な標的化伝達システムは、また、WO94/10323に開示されている改変アデノウイルスシステムなどが知られている。この方法においては、典型的には、DNAは、アデノウイルス、またはアデノウイルス様粒子内で保有される。Michael et al., (1995)Gene Therapy 2,660-668には、繊維タンパク質に細胞選択的モチーフを加えるための、アデノウイルスの改変が開示されている。p53-欠損ヒト腫瘍細胞において選択的に複製する変異アデノウイルス、例えば、Bischoff et al., (1996) Science 274,373-376に開示されているアデノウイルスは、本発明の遺伝子コンストラクトを細胞へ伝達するのに有用である。他の適したウイルスまたはウイルス様粒子には、HSV、AAV、ワクシニア、レンチウイルスおよびパルボウイルスが含まれる。
【0104】
イムノリポソーム(抗体-標的化リポソーム)は、抗体が利用できる細胞表面タンパク質を過剰発現した細胞タイプを標的化するのに特に有用である。この手法は、例えば、CD1、CD14またはCD83(または、前記したような他の樹状細胞もしくは前駆細胞の表面分子)に対する抗体を使用し、樹状細胞または前駆細胞に用いることができる。イムノ-リポソームの調製のためには、MPB-PE(N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチリル]-フォスファチジルエタノールアミン)を、Martin & Papahadjopoulous (1982) J. Biol. Chem. 257,286-288の方法に従って、合成する。MPB-PEは、リポソーム二重層に取り込まれて、抗体またはその断片のリポソーム表面への共有結合を可能とする。リポソームは、便利なことに、標的細胞への伝達のために、本発明のDNAまたは他の遺伝子コンストラクトを詰め込むことができる。例えば、DNAまたは他の遺伝子コンストラクトの溶液内で前記リポソームを形成し、その後、0.8MPaまでの窒素圧力下で、0.6μmと0.2μmのポアサイズを有するポリカーボネートメンブレンフィルターを介して連続的に押し出すことによって調製することができる。押し出し後、封入されたDNAコンストラクトを、80000xgで45分間超遠心することによって、フリーのDNAコンストラクトから分離する。脱酸素バッファー内で新たに調製したMPB-PEリポソームを、新たに調製した抗体(またはその断片)と混合し、カップリング反応を、窒素雰囲気下で、定常的に反転攪拌を繰り返しながら、一晩行なう。イムノリポソームは、80000xgで45分間超遠心することによって、非コンジュゲート抗体から分離する。イムノリポソームは、例えば、腹腔内に、または、標的細胞が存在する部位に直接(例えば皮下に)注入することができる。
【0105】
細胞内で、ポリペプチド(例えば抗原性ポリペプチド)の一時的な発現を調節することができることが望ましいであろうことは明らかである。それゆえ、ポリペプチドの発現が、直接または間接的に(以下参照)、例えば、ポリペプチドの発現を活性化または抑制することが望ましい場合に(小分子が、前記プロモーターの活性化または抑制化に影響を及ぼすかどうかに依存して)、ある濃度の、レシピエントに投与することができる小分子によって、調節することができるプロモーターの制御下であることが望ましい。このことは、発現コンストラクトが安定であるならば、すなわち、少なくとも1週間、1、2、3、4、5、6、8ヶ月または一年以上の期間、前記細胞で、ポリペプチドを発現することができる(任意の必須の調節分子の存在下で)ならば、特に有益であることは明らかであろう。発現コンストラクトは、一ヶ月未満の期間、前記細胞でポリペプチドを発現することができることが好ましい。好ましい本発明のコンストラクトは、調節可能なプロモーターを含みうる。調節可能なプロモーターの例には、以下の論文に記載されたプロモーターが含まれる:Rivera et al., (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96(15),8657-62(ラパマイシンによる制御、経口的に生物学的利用可能な薬剤、2つの別個のアデノウイルスまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用、1つは誘導性のヒト成長ホルモン(hGH)標的遺伝子であり、他方は二分割のラパマイシン調節転写因子(bipartite rapamycin-regulated transcription factor);Magari et al., (1997) J. Clin. Invest. 100(11),2865-72(ラパマイシンによる制御);Bueler (1999) Biol. Chem. 380(6),613-22(アデノ随伴ウイルスのレビュー);Bohl et al, (1998) Blood 92(5),1512-7(アデノ随伴ウイルスベクター内のドキシサイクリンによる制御);Abruzzese et al., (1996) J. Mol. Med. 74(7),379-92(誘導因子、例えば、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、細胞分裂停止、照射、ヒートショックおよび関連する応答性エレメントを参照)。テトラサイクリン誘導性ベクターも使用することができる。これらは、哺乳類細胞培養液内で発現を調節するのに有用であることが示されている比較的毒性が低い抗生物質によって活性化される。また、ステロイドに基づく誘導因子は、特に有用であろう。なぜならば、ステロイド受容体複合体は、DNAベクターが転写前に隔離されなければならない核へと入り込むことができるからである。
【0106】
このシステムは、発現を2つのレベルで調節することによって、例えば、組織-選択的プロモーター、および、外因性誘導因子/抑制因子(例えば、前記で記載したまたは当業者に知られている小分子誘導因子)によって制御されるプロモーターを使用することによって、更に改良することができる。それゆえ、調節の1つのレベルには、適切なポリペプチド-コード遺伝子を誘導性プロモーターに連結させることによりもたらし、更には、調節の更なるレベルは、必須の誘導性転写因子(誘導性プロモーターからの、ポリペプチド(例えば抗原性ポリペプチド)-コード遺伝子の発現を制御する)をコードする遺伝子を稼動する組織-選択的プロモーターが関与する。制御は、更に、遺伝子コンストラクトの細胞タイプ-特異的な標的化によって改良することができる。
【0107】
本発明の遺伝子コンストラクトは、当業者に知られた方法を使用して調製することができる。
【0108】
治療剤または分子(ワクチン)、例えば抗原性分子、例えばアンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするコンストラクトまたはその調製物を、経口および非経口(例えば皮下または筋肉内)注入を含む任意の一般的な方法で投与することができる。好ましい経路は、経口、経鼻または筋肉内注入を含む。治療は、一回の投与、または、一定の期間における複数回の投与からなる。誘導因子、例えば前記した小分子誘導因子は、好ましくは、経口的に投与できることは明らかであろう。
【0109】
レシピエントの細胞へ、遺伝子コンストラクト、例えばアデノウイルスベクターコンストラクトを伝達する方法は、当業者によって良く知られている。特に、養子免疫療法を使用することができ、より好ましくは、コンストラクトを樹状細胞、例えば皮膚の樹状細胞に伝達するのに遺伝子銃を使用することができる。
【0110】
養子免疫療法は、Nestle et al., (1998) Nature Med. 4,328-332およびDe Bruijn et al., (1998) Cancer Res.58,724-731に開示されている。
【0111】
治療剤(ワクチン)は、幾つかの他の方法によって病気を治療している対象に与えることができる。それゆえ、治療方法を単独で使用することができるにもかかわらず、例えば、一般的な予防もしくは治療方法または腫瘍抗原を標的とする免疫療法とともに、アジュバント療法として使用することが望ましい。例えば、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチドまたは腫瘍細胞全体として投与する腫瘍抗原に基づくワクチンと、アンジオモチンワクチンの組み合わせは、適した組み合わせ療法であろう。適した腫瘍抗原の例は、付随する実施例で提供され、更なる例は、本発明によるワクチンに関連して前記されている。
【0112】
本明細書に記載の治療用分子、例えば抗原性分子または免疫刺激分子については、単独で投与することができるが、1つまたは複数の許容可能なキャリアとともに、医薬調製物として存在することが好ましい。キャリアは、治療用分子(核酸またはポリペプチドとすることができる)と両立でき、レシピエントによって有害ではないという意味で、「許容可能」でなければならない。典型的には、キャリアは、滅菌し、パイロジェンフリーである水または生理用食塩水である。
【0113】
医薬組成物は、更に、組成物の抗原性および/または免疫原性を増すための成分、例えば、前記したアジュバントおよび/またはサイトカインを含むことができる。多価抗原(抗原のクラスター)は有用であろう。
【0114】
市販のサイトカインは、一般的に免疫システムを活性化するための非特異的免疫療法として、および、腫瘍ワクチンなどの他の免疫療法とともに投与されるアジュバントとして使用されている。GM-CSFは、非特異的免疫療法として、および、他のタイプの免疫療法とともに投与されるアジュバントとして、癌に対して試験されている。
【0115】
様々な他の化合物は、免疫システムの活性を増すことが知られており、現在、特にワクチン療法のための、可能性あるアジュバントとして研究されている。幾つかの最も一般的に研究されているアジュバントを以下に記すが、更に多くが開発中である。
【0116】
寄生虫感染に対して最初に使用されるレバミゾールは、最近、幾つかの化学療法剤とともに使用する場合、大腸癌のヒトの生存率を改善することが見出されている。レバミゾールはTリンパ球を活性化することができるので、免疫療法アジュバントととして、しばしば使用されている。レバミゾールは、現在、幾つかの段階の大腸癌のヒトについて一般的に使用されており、他のタイプの癌の治療剤としての臨床試験が行なわれている。
【0117】
水酸化アルミニウム(alum)は、癌ワクチンの臨床試験において最も一般的に使用されるアジュバントの1つである。水酸化アルミニウムは、B型肝炎を含む幾つかの感染因子に対するワクチンにおいて既に使用されている。
【0118】
カルメット-ゲラン桿菌(BCG)は、結核を引き起こす細菌に関連した細菌である。免疫システムに及ぼすBCG感染の効果によって、この細菌は、抗癌免疫療法の形態として有用である。BCGは、癌に対して使用される初期の免疫療法の1つであった。FDAは、表在性膀胱癌の一般的な治療として認可している。非特異的アジュバントとしての他の癌への有用性も試験されている。研究者は、化学療法、放射線療法、または他のタイプの免疫療法を使用する場合において、免疫システムを更に強化するためにBCGを注入することに着目している。
【0119】
フロイント不完全アジュバント(IFA)は、免疫システムを刺激するのを補助するために、そして、癌ワクチンに対する免疫応答を増すために、幾つかの実験的な療法とともに投与される。IFAは、白色鉱油に溶かした乳化剤からなる液体である。
【0120】
QS-21は、メラノーマに対して使用されるワクチンに応答する免疫を増す、植物抽出物から調製される比較的に新規の免疫刺激因子である。
【0121】
DETOXは、他の比較的に新規のアジュバントである。DETOXは細菌の細胞壁の一部およびある種の脂肪から調製される。DETOXは、免疫システムを刺激するために、様々な免疫療法とともに使用される。
【0122】
キーホールリンペット・ヘモシアニン(KLH)は、癌ワクチン療法の効率を増すのに使用される、もう1つのアジュバントである。KLHは、ある種の海洋軟体動物から抽出される。
【0123】
ジニトロフェニル(DNP)は、腫瘍抗原に結合し、増大した免疫応答を誘導することができるハプテン/小分子である。特定の癌ワクチンにおいては、腫瘍細胞を改変するために使用されている。
【0124】
調合物は、便利なことには、単位用量形態で提示することができ、製薬業界でよく知られた任意の方法で調製することができる。このような方法には、活性成分(本発明の抗原性分子、コンストラクトまたはキメラポリペプチドについての)を、1つまたは複数の副成分から構成されるキャリアと会合させる工程を含む。一般的に、調合物は、活性成分を、液体キャリアもしくは微粉化した固体キャリアまたはその両方と均一且つ密接に会合させ、その後に、必要であれば、製品を成形することによって調製する。
【0125】
経口投与に適した本発明による調合物は、カプセル、カシェ剤またはタブレットなどの個別単位として提示することができ、それぞれは、予め求めた活性成分を、粉末または顆粒として;溶液または水性液体もしくは非水性液体中の懸濁液として;または、水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして含む。活性成分は、ボーラス、舐剤またはペーストとしても提示することができる。
【0126】
タブレットは、任意に1つまたは複数の副成分と共に、圧縮または型打ちによって調製することができる。圧縮したタブレットは、適した機械において、任意に、バインダー(例えば、ポビドン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポビドン、架橋デンプングリコール酸ナトリウム)、界面活性もしくは分散剤と混合して、粉末または顆粒などの自由に流動する形態で活性成分を圧縮することによって調製することができる。型打ちしたタブレットは、適した機械において、不活性な液体希釈剤で潤いを与えた粉末状の化合物の混合物を型打ちすることによって調製することができる。タブレットは、任意にコーティングまたは分割することができ、例えば、望む放出プロファイルを提供するために、様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロースを使用して、活性成分のゆっくりとした放出または制御した放出をもたらすことができる。
【0127】
口への局所適用に適した調合物には、風味をつけたベース(通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント)に活性成分を含む薬用キャンディー;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性なベースに活性成分を含むトローチ;ならびに適した液体キャリアに活性成分を含むマウスウォッシュを含む。
【0128】
非経口投与に適した調合物には、抗酸化剤、バッファー、静菌剤、および、調合物を対象とする受容者の血液と等張にする溶質を含みうる水性および非水性の滅菌注入溶液;ならびに、懸濁剤および増粘剤を含みうる水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。調合物は、単位用量または複数回用量のコンテナー(例えば、シールしたアンプルおよびバイアル)で提示することができ、使用直前に滅菌液体キャリア(例えば、注入用の水)の添加のみが必要なフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存することができる。即席注入溶液および懸濁液は、前記した種類の滅菌粉末、顆粒およびタブレットから調製することができる。
【0129】
経鼻スプレーは、有用な調合物である。
【0130】
好ましい単位用量調合物は、一回のもしくは一日当りの投与量もしくは単位の、一日当りのサブ投与量の、または適切なフラクションの活性成分を含む調合物である。
【0131】
前記に特に記載した成分に加えて、本発明の調合物は、対象とする調合物のタイプを考慮したこの業界における一般的な他の剤を含むことができ、例えば、経口投与に適した調合物は、香味剤を含むことができることは理解されよう。
【0132】
治療用分子は、薬剤の局所的な投与のための任意の手段によって、その場所に伝達することができることは理解されよう。例えば、治療用分子の溶液は、その部位に直接注入することができ、または、注入ポンプを使用した注入によって伝達することができる。コンストラクトは、例えば、また、望む部位に保持した場合に、コンストラクトを周囲部位へ放出することができる埋め込み型装置へと導入することができる。
【0133】
治療用分子は、ヒドロゲル物質を介して投与することができる。ヒドロゲルは、非炎症性且つ生分解性である。現在、天然および合成ポリマーから調製される物質を含む多くの物質が知られている。好ましい実施態様においては、この方法は、体温より低い場合は液体であるヒドロゲルであるが、体温または体温近辺では形を保持できる半固体ゲルを形成するゲルを使用する。好ましいヒドロゲルは、エチレンオキシド-プロピレンオキシド反復単位のポリマーである。ポリマーの特性は、ポリマーの分子量、および、ポリマー中のポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの相対的割合に依存する。好ましいヒドロゲルは、約10重量%から約80重量%のエチレンオキシド、および、約20重量%から約90重量%のプロピレンオキシドを含む。特に好ましいヒドロゲルは、約70%のポリエチレンオキシドおよび約30%のポリプロピレンオキシドを含む。使用することができるヒドロゲルは、例えば、BASF Corp., Parsippany, NJから、PluronicRという商標名で購入することができる。
【0134】
便利なことには、核酸ワクチンは、前記した任意の適した核酸伝達手段を含みうる。核酸、好ましくはDNAは、裸とすることができ(すなわち、実質的に、投与される他の成分を有しない)、または、リポソームで、もしくは、ウイルスベクター伝達システムの一部として伝達することができる。
【0135】
対象には、前記したポリペプチドとポリヌクレオチドの組み合わせを投与することができる。
【0136】
「有効な量」については、レシピエントの健康に有益な望ましい医薬効果を生じるのに十分量の薬剤を提供するという意味を含む。
【0137】
本明細書に参照された全ての文献は、誤解を避けるために、本明細書に、参照によって組み込まれる。
【0138】
本発明を、以下の、非制限的な図および実施例を参照に記載する。
【実施例】
【0139】
(材料、方法および実施例)
(材料)
C57B1およびBalb/cマウスを、Microbiology and Tumor Biology Center, Karolinska institutetのanimal unitから購入した。評価のために使用したマウス腫瘍細胞ラインには、Dr.Wei Zen Wei, Karmanos Cancer Centerに由来するマウス乳癌D2F2、MTC research unitに由来するEL-4リンパ腫およびDr.I.J.Fidler, MD Andeson Cancer Center, Houston, TCに由来するB16メラノーマラインが含まれる。
【0140】
(実施例1:アンジオモチンをコードするDNAワクチンの調製)
ベクターの市販メーカー(Invitrogen Inc.)の取扱説明書にしたがって、アンジオモチン分子をコードする全長cDNAを、pCDNA3ベクターへ挿入することによって、アンジオモチン発現プラスミドを構築した。このベクターは、哺乳類細胞でのタンパク質発現のためにデザインされており、CMVプロモーター(US Patent No 5,168,062および5,385,839;University of Iowa Research Foundation)、マルチプルクローニングサイト、ウシ増殖ホルモンポリアデニル化配列(US Patent No 5,122,458)および安定な細胞ラインの選択のためのネオマイシン耐性遺伝子を含む。
【0141】
アンジオモチンの全長cDNAを、pCDNA3ベクターへと挿入した。得られたプラスミドの位置および同一性は、制限酵素切断地図で確認した。pCDNA3のトランスフェクションによって、アンジオモチン発現がもたらされ、これは、ウェスタンブロットによって分析された。
【0142】
(実施例2:アンジオモチンをコードするDNAワクチンを用いたマウスのワクチン接種)
Balb/cマウス(グループ毎に6匹のマウス)(図1)またはC57B1マウス(グループ毎に6匹のマウス)(図2および3)について、遺伝子銃による免疫化を使用して、2週間間隔で二回、前記したアンジオモチンpDNAコンストラクトで、または、同じpcDNA「空」コントロールベクター(PCDNA)をコントロールとしてワクチン接種した。
【0143】
プラスミドは、Qiagen standard protocol(Qiagen endotoxin free plasmid kit, WWR International)にしたがって調製した。プラスミドを、1mg/mlの濃度で水中に溶解し、保持した。このストックから、プラスミドを、99.5%エタノール中で金と混合し、プラスチックチューブ上にコーティングした。Helios gene gun(Biorad, Stockholm)を使用して、DNA-金混合物を打ち込み、鼠径リンパ節の領域の表皮内へ伝達させた。それぞれのマウスは、打ち込み当り0.6-1.0μgの濃度で、異なる位置に二回の打ち込みを受けた。この手法を、14日間隔で二回繰り返した。この手法は、以下で論じるGM-CSFプラスミドを含む、使用した全てのプラスミドで同じであった。
【0144】
マウスの幾つかのグループでは、サイトカインGM-CSFをコードするプラスミドを、等しいモル量で、アンジオモチンをコードするプラスミド(アンジオモチン+GM)と混合し、または、コントロールベクター(PCDNA+GM)と混合し、前記の遺伝子銃によって投与した。GM-CSF発現プラスミドは、他の論文に開示されている(Charo, J. et al., J. Immunol, 163;5913-5919,19991)。
【0145】
(実施例3:ワクチン接種マウスの腫瘍増殖および生存率の評価)
最後の免疫化してから2週間後に、約5×104の生きたB16 saibou (図1)、D2F2メラノーマ細胞(図2)またはEL4リンパ腫細胞(図3)を用いてマウスを誘発した。各グループのマウスについて、毎週二回、生存数、および、マイクロメーターで測定した平均腫瘍体積を検査した。
【0146】
ワクチン候補物が、予防的に(すなわち、腫瘍細胞で誘発した動物における腫瘍を防止すること)および治療的に(すなわち、ワクチンの投与が以前に生じた腫瘍の退行を引き起こす)機能することができることを実証する多くの動物実験が存在する。例えば、Cavallo et al., (1993) Protective and curative potential of vaccination with IL-2 gene-transfected cells from a spontaneous mouse mammary adenocarcinoma. Cancer Res 21:5067;Nanni et al, (2001) Combined allogenic tumor cell vaccination and systemic interleukin-12 prevents mammary carcinogenesis in HER-2/neu transgenic mice. J Exp Med 194:1195がある。
【0147】
(実施例4:アンジオモチン-特異的免疫応答をもたらすのに重要であるアンジオモチンのペプチドエピトープの予測)
タンパク質の様々なペプチド誘導体の免疫原性は、組織抗原(HLA)または特定の個人に依存して、任意の個人において拘束されることが知られている。構築されたコンピューターアルゴリズム(http ://www. bimas. dcrt. nih. gov/molbio/hla bind/index. html)を使用して、アンジオモチンに由来し、様々なHLA抗原に拘束される様々なペプチドモチーフの結合親和性および予測値を求めた。免疫原性を有する可能性があり、HLA A201に拘束される予測ペプチドを、表1に提供する。HLA A201は、白人種の約65%の頻度で生じる。免疫療法のための可能性ある値を有する類似のペプチドモチーフは、また、他のHLA対立遺伝子について予測することができる。
【0148】
HLA A201は、白人種をワクチン接種するのに重要な対立遺伝子である。他の重要な対立遺伝子は、アジア種の約60%に存在するHLA A2402である。
【0149】
【表1】
【0150】
(実施例5:抗血管新生治療としてのアンジオモチンワクチン接種)
本実施例は、アンジオモチンワクチン接種により、腫瘍形成に対して予防措置を提供することができることを実証する。我々は、アンジオモチンワクチン接種が、血管新生治療の一部として使用することができることを実証するデータを提供する。
【0151】
(方法)
BALB-neuTマウスは、遺伝子導入した乳癌マウスモデルである。BALB-neuTマウスは、マウス乳癌ウイルスプロモーターの制御下において形質転換したラットHer.2/neu腫瘍遺伝子の過剰発現の結果として、自発的に腫瘍を発症する(Boggio et al., J. Exp. Med. 1998,188;589-96を参照)。
【0152】
BALB-neuTマウス(グループ毎に5匹)を、図5および6の矢印で示した週齢時に、エレクトロポレーションにより、375V/cmで25msecのパルスパラメーターの条件でT820 Electrosquare poratorを使用して、前脛骨筋へと25μgのプラスミドで二回ワクチン接種した。プラスミドは、前記した実施例2に記載のプロトコールを使用して、エレクトロポレーションのために調製した。
【0153】
(結果および考察)
図5においては、以下の3つのグループのマウスについて、6および8週目に、ワクチン接種を行った;空のベクターコントロールプラスミド(pcDNA3);アンジオモチンプラスミド;または非処理(前記の実施例1に記載のプラスミド)。ワクチン接種は、前記したエレクトロポレーション方法を使用した。示すように、アンジオモチンプラスミドで処理した50%のマウスは、30週間後でも腫瘍が存在せず、一方で、非処理またはコントロールで処理したマウスの全てが、27週間後に、腫瘍を有していた。それゆえ、アンジオモチンは、このマウス種においては、腫瘍の発達を抑制する機能を有することができる。
【0154】
図6においては、以下の4つのグループについて、10および12週齢でワクチン接種を行った;空のベクターコントロールプラスミド(pcDNA3);TMEC;TMEC+アンジオモチンプラスミド;または非処理。TMECは、BALB-neuTマウスにおける腫瘍形成をになう腫瘍遺伝子の断片であるp185 neuの「膜貫通型の細胞外」部分をコードするp185neuTME-ECDプラスミドである(Boggio et al., J. Exp. Med 1998,188;589-96)。
【0155】
示すように、非処理またはコントロールで処理したマウスの全てが、27週間後に腫瘍を有しているのに対して、TMECプラスミド単独で処理したマウスの40%は、50週間後でも腫瘍が存在しなかった。更にその上、TMECプラスミドおよびアンジオモチンプラスミドの両方で処理したマウスの100%が、50週間後でも腫瘍が存在しなかった。
【0156】
それゆえ、TMEC/アンジオモチン デュアルプラスミドによるワクチン接種は、TMECまたはアンジオモチンワクチン接種単独に比べて、腫瘍の発達を防ぐ著しい治療効果を有している。ワクチン接種時の年齢(10および12週齢)のvirgin BALB-neuTマウスの乳腺は、既に複数のin situ癌(前記した参考文献参照)を有しているので、このことは、アンジオモチンと腫瘍ワクチンの組み合わせたワクチン接種が、治療効果を有し、更に、腫瘍の発達を静止することができることを実証する。
【0157】
図7においては、大人のBalb/cマウスを、TUBO乳癌細胞の皮下(s.q.)注入前21および7日目に、前記したエレクトロポレーション手法を使用して、前記したアンジオモチンpDNAワクチンでワクチン接種した。TUBO乳癌細胞は、前記したBALB-neuTマウスに由来する腫瘍から単離した移植可能な細胞ラインである。示すように、アンジオモチンpDNAワクチンでワクチン接種した4匹のマウス(「予防」と記す)は、完全に腫瘍が存在しないのに対して、1匹のマウスは1mmの大きな腫瘍を有していた。全ての非処理マウスは、大きな腫瘍を発達させた。それゆえ、「単独治療」としてのアンジオモチンを用いたワクチン接種は、乳癌細胞ラインに起因する腫瘍発達に対して、マウスにおいて予防ワクチンとして機能することができる。
【0158】
図5から7で表されたデータによって、移植可能な腫瘍モデルにおける、「単独治療」としてのアンジオモチンプラスミドワクチン接種が、腫瘍増殖を抑制することができ、自発的遺伝子組み換えHer2/neu乳癌モデルにおいては、著しく腫瘍発達を減少することができることが実証された。更にその上、図6のデータは、既に複数のin situ前癌病変部を有するマウスに投与した、組み合わせアンジオモチンプラスミド/腫瘍抗原ワクチンが、腫瘍予防をもたらし、アンジオモチンプラスミドまたは腫瘍抗原単独よりも著しく効果を有していることを示しており、このことによって、アンジオモチンおよび腫瘍抗原に基づくワクチンは、治療腫瘍モデルにおいて、相乗的に作用することができることを実証する。このことによって、単独療法としての、または、組み合わせワクチンにおけるアンジオモチンは、ヒト腫瘍の治療または他の病気の血管新生治療に使用することができる。
【0159】
(実施例6:アンジオモチンワクチン接種による抗-アンジオモチン抗体の産生)
12週齢のBALB-neuTのグループ(図8パネルBおよびC)または12週齢のBALB/cマウスのグループ(図8パネルA)を、前記したように、ヒトアンジオモチンpDNAを用いたエレクトロポレーションによって、2週間間隔で、四回(パネルA)または二回(パネルB)免疫化した。パネルCは、TMEC pDNAと組み合わせたアンジオモチンpDNAを用いた、エレクトロポレーションによって免疫したマウスから得られた結果を示す。21週目に、尾静脈から採血し、血清を回収し、凍結させた。個々のマウスに由来する血清サンプルを500-16,000倍に希釈して、マウス アンジオモチン抗体に特異的なELISAアッセイで試験した。
【0160】
マウス アンジオモチンは、アンジオモチンをトランスフェクトした大動脈内皮細胞から抽出し、アンジオモチンのC-末端に対するポリクローナル抗体のために使用した。
【0161】
得られた結果によって、単独療法として特にヒトアンジオモチンpDNAで四回免疫した後だけでなく、TMEC腫瘍抗原と組み合わせたこのプラスミドでの2回の免疫後(パネルC)にも、マウスは、マウス アンジオモチンに対して高いタイターの抗体を産生したことが実証された。この結果は、ヒトアンジオモチンpDNAエレクトロポレーションによる免疫化によって、マウス アンジオモチン分子に対する免疫寛容の破綻をもたらすことを示し、また、証明されていないが、これらの抗体は、免疫化したマウスにおいて抗-血管新生効果および抗-腫瘍効果の原因となる活性なメカニズムをもたらしうることを示唆する。
【0162】
(実施例7:抗-アンジオモチンDNAによるin vivoでの血管新生の阻害)
5匹のBALBcマウスを、アンジオモチン単独で、または、TMECと組み合わせて、それぞれ、マトリゲル実験の開始28日前および14日前、すなわち4および2週間前にワクチン接種させた。使用したアンジオモチンワクチンは、他の実施例で前記したpcDNAプラスミドであった。
【0163】
200ng/mlの塩基性繊維芽細胞増殖因子を含むマトリゲルを、最後にワクチン接種してから2週間後にマウスに注入した。マトリゲルプラグを7日後に回収し、パラホルムアルデヒド内で固定化し、血管浸潤を、ラットの抗マウスPECAMモノクローナル抗体を用いた組織免疫染色によって可視化した。血管密度を、Weidner et al., N Engl J Med. 1991 Jan 3;324(1):1-8によって開示されたように定量した。図9で示されるように、血管新生は、アンジオモチンDNAをワクチン接種させたマウスで阻害された。
【0164】
本発明の精神および範囲から逸脱することなしにもたらしうる、前記に記載した実施態様の様々な適応および変更が存在する。本明細書に例示した特定の実施態様に対して如何なる制限も意図しておらず、推測すべきでないことは理解しなければならない。当然のことながら、特許請求の範囲によって、特許請求の範囲に含まれる全てのこのような改変を保護することは意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】GM-CSFプラスミドとともに、または、GM-CSFプラスミド無しに、アンジオモチンワクチンプラスミドまたはコントロールベクターを用いて、マウスをワクチン接種した。追加ワクチン接種を14日後に行った。二回目のワクチン接種後2週間してから、腹腔内に投与した100,000の生きたB16腫瘍細胞を用いてマウスで誘発した。腫瘍増殖を3週間にわたって測定した。AおよびBは、二回の別々の実験を表す。
【図2】GM-CSFプラスミドとともに、アンジオモチンワクチンまたはコントロールプラスミドを用いて、マウスをワクチン接種した。追加ワクチン接種を14日後に行った。二回目のワクチン接種後2週間してから、腹腔内に投与した100,000の生きたD2F2腫瘍細胞を用いてマウスで誘発した。腫瘍増殖を3週間にわたって測定した。Aはマウスの生存率を表すのに対して、Bは平均の腫瘍体積を表す。
【図3】GM-CSFプラスミドとともに、アンジオモチンワクチンまたはコントロールプラスミドを用いて、マウスをワクチン接種した。追加ワクチン接種を14日後に行った。二回目のワクチン接種後2週間してから、腹腔内に投与した60,000の生きたEL4腫瘍細胞を用いてマウスで誘発した。腫瘍増殖を3週間にわたって測定した。Aはマウスの生存率を表すのに対して、Bは平均の腫瘍体積を表す。
【図4】ヒトアンジオモチンのアミノ酸およびヌクレオチド配列。
【図5】抗-アンジオモチンワクチン接種。単独の治療剤としてのアンジオモチン。マウス乳癌ウイルスプロモーターの制御下において形質転換したラットHer.2/neu腫瘍遺伝子の過剰発現の結果として、自発的に腫瘍を発症するBALB-neuTマウス(Boggio et al., J. Exp. Med. 1998,188;589-96)を、アンジオモチンワクチンプラスミドもしくはコントロールベクターを用いて6週齢でワクチン接種し、または、非処理のまま維持した。マウスは、Quaglino et al.(Cancer Research 64, 2858-64, 2004)に開示されている「エレクトロポレーション」方法によってワクチン接種した。簡単に述べると、トータルで25マイクログラムのEC-TMプラスミドを、麻酔したマウスの前脛骨筋へと注入した。電気パルスを、導電性ゲルで覆った毛を剃った皮膚の上に置いた2つの電極によってアプライした。T820エレクトロポレーター(BTX, San Diego, CA)によって、2つの方形波25ms、375V/cmパルスを生じさせた。追加ワクチン接種を2週間後に行った。各グループにおける腫瘍が存在しないマウスの割合を示す。
【図6】二成分療法:Amot。BALB-neuTマウスを、アンジオモチンワクチンプラスミド、もしくはコントロールベクターを用いて10週齢でワクチン接種し、または、非処理のまま維持した。更なるマウスの群を、アンジオモチンワクチンプラスミドおよびTMEC、腫瘍抗原でワクチン接種した。追加ワクチン接種を2週間後に行った。各群における腫瘍が存在しないマウスの割合を示す。
【図7】腫瘍移植モデル。Balb/cマウスを、TUBO乳癌細胞ラインをs.q.注入する21日および7日前に、ワクチン接種した。腫瘍の平均直径を示す。
【図8A】マウスアンジオモチンに対する抗体応答。アンジオモチンワクチン接種マウスに由来する血清における、マウスアンジオモチンに対する抗体応答を、ELISAで測定した。Y軸上のlumシグナルは、アンジオモチンに特異的なIgG抗体の量を表し、x軸上の数字1-6は、血清の異なる希釈率(500-16000)を表す。以下のマウスに由来する血清を分析した:A)Angio #6、マウスNo.3、5、10、11、80;アンジオモチンワクチンプラスミドを用いて、2週間ごとに四回エレクトロポレーションしたBALB/cマウス。四回のエレクトロポレーション後に採取した血清を分析し、単独のTMECを用いて10および12週目にエレクトロポレーションしたコントロールマウスと比較した。
【図8B】B)Angio #1A、マウスNo.4、5、10、18、20;アンジオモチンワクチンプラスミドを用いて、10および12週目にエレクトロポレーションしたBALB-neuTマウス。21週目に採取した血清を分析し、単独のTMECを用いて10および12週目にエレクトロポレーションしたコントロールマウスと比較した。
【図8C】C)Angio #2、マウスNo.0、4、5、6、40;アンジオモチンおよびTMECワクチンプラスミドを用いて、10および12週目にエレクトロポレーションしたBALB-neuTマウス。21週目に採取した血清を分析し、単独のTMECを用いて10および12週目にエレクトロポレーションしたコントロールマウスと比較した。
【図9】抗-アンジオモチンDNAワクチン接種による血管新生のin vivo阻害。BLABcマウスを、アンジオモチン単独で、または、TMECと組み合わせてワクチン接種した。200ng/mlの塩基性繊維芽細胞増殖因子を含むマトリゲルを、最後にワクチン接種してから2週間後にマウスに注入した。マトリゲルプラグを7日後に回収し、血管密度を、Weidner et al., N Engl J Med. 1991 Jan 3;324(1):1-8によって開示されたように定量した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管新生に関連した病気または疾患を有する、または、血管新生に関連した病気または疾患の恐れがある対象にワクチン接種するためのワクチンの製造における、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドの使用。
【請求項2】
アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを使用して、血管新生に関連した病気または疾患を有する、または、血管新生に関連した病気または疾患の恐れがある対象にワクチン接種する工程を含む、前記対象を治療する方法。
【請求項3】
前記血管新生に関連した病気または疾患が、癌、固形腫瘍、血管腫、眼の血管新生、糖尿病性網膜症、黄斑変性、リウマチ性関節炎、炎症性疾患(例えば、乾癬、腸の慢性炎症、喘息)または子宮内膜症である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
有効量のアンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含む、血管形成に対して有効なワクチン。
【請求項5】
アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを、ヒトに投与することによる、アンジオモチンに対する免疫応答を引き起こす方法。
【請求項6】
前記アンジオモチン分子が全長のヒトアンジオモチンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項7】
前記アンジオモチン分子がヒトアンジオモチンの断片である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項8】
前記ヒトアンジオモチンの断片が、9、10、11または12アミノ酸長の断片である、請求項7に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項9】
前記断片が、表1に記載の断片である、請求項8に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項10】
前記ワクチンが、更に、抗原として、腫瘍抗原および/または血管新生因子および/または腫瘍抗原もしくは抗原性因子に対する1つもしくは複数の抗体を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項11】
前記ワクチンが、更に、免疫刺激分子を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項12】
前記免疫刺激分子が、サイトカインまたはサイトカインをコードするポリヌクレオチドである、請求項11に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項13】
前記ワクチンが、細胞または細胞抽出物を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項14】
前記細胞が、アンジオモチン分子でロードされ、または、アンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされた抗原提示細胞である、請求項13に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項15】
前記細胞が、アンジオモチンを発現する腫瘍細胞、または、アンジオモチンを発現する内皮細胞である、請求項13に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項16】
患者に由来する細胞へのワクチンのex vivo投与に続き、刺激した免疫細胞を患者へ戻すことによって、前記ワクチンが患者に投与される、請求項1から3、5から10のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項17】
(i)アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを用いて、哺乳類から回収した免疫細胞をex vivoで刺激する工程、(ii)前記刺激した免疫細胞を哺乳類に戻す工程を含む、哺乳類において、アンジオモチンに対する免疫応答を生じさせる方法であって、前記細胞を哺乳類に戻すことによって、アンジオモチンに対する免疫応答を生じさせる方法。
【請求項18】
(i) 哺乳類においてアンジオモチンに対する免疫応答を生じさせる医薬を用いて、哺乳類から回収した免疫細胞をex vivoで刺激する工程、(ii)前記刺激した免疫細胞を哺乳類に戻す工程を含む方法を使用する、前記医薬の製造における、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドの使用であって、前記細胞を哺乳類に戻すことによって、アンジオモチンに対する免疫応答を生じさせる使用。
【請求項19】
前記哺乳類がヒトである、請求項17に記載の方法または請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記引き起こした免疫応答が、血管新生に関連した病気の開始または進展を予防的にまたは治療的に阻害するように機能する、請求項17もしくは19に記載の方法、または、請求項18もしくは19に記載の使用。
【請求項21】
前記引き起こした免疫応答が、悪性疾患の開始または進展を予防的にまたは治療的に阻害するように機能する、請求項17、19もしくは20に記載の方法、または、請求項18から20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項1】
血管新生に関連した病気または疾患を有する、または、血管新生に関連した病気または疾患の恐れがある対象にワクチン接種するためのワクチンの製造における、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドの使用。
【請求項2】
アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを使用して、血管新生に関連した病気または疾患を有する、または、血管新生に関連した病気または疾患の恐れがある対象にワクチン接種する工程を含む、前記対象を治療する方法。
【請求項3】
前記血管新生に関連した病気または疾患が、癌、固形腫瘍、血管腫、眼の血管新生、糖尿病性網膜症、黄斑変性、リウマチ性関節炎、炎症性疾患(例えば、乾癬、腸の慢性炎症、喘息)または子宮内膜症である、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
有効量のアンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含む、血管形成に対して有効なワクチン。
【請求項5】
アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを含むワクチンを、ヒトに投与することによる、アンジオモチンに対する免疫応答を引き起こす方法。
【請求項6】
前記アンジオモチン分子が全長のヒトアンジオモチンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項7】
前記アンジオモチン分子がヒトアンジオモチンの断片である、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項8】
前記ヒトアンジオモチンの断片が、9、10、11または12アミノ酸長の断片である、請求項7に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項9】
前記断片が、表1に記載の断片である、請求項8に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項10】
前記ワクチンが、更に、抗原として、腫瘍抗原および/または血管新生因子および/または腫瘍抗原もしくは抗原性因子に対する1つもしくは複数の抗体を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項11】
前記ワクチンが、更に、免疫刺激分子を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項12】
前記免疫刺激分子が、サイトカインまたはサイトカインをコードするポリヌクレオチドである、請求項11に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項13】
前記ワクチンが、細胞または細胞抽出物を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項14】
前記細胞が、アンジオモチン分子でロードされ、または、アンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドでトランスフェクトされた抗原提示細胞である、請求項13に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項15】
前記細胞が、アンジオモチンを発現する腫瘍細胞、または、アンジオモチンを発現する内皮細胞である、請求項13に記載の使用、方法またはワクチン。
【請求項16】
患者に由来する細胞へのワクチンのex vivo投与に続き、刺激した免疫細胞を患者へ戻すことによって、前記ワクチンが患者に投与される、請求項1から3、5から10のいずれか一項に記載の使用または方法。
【請求項17】
(i)アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドを用いて、哺乳類から回収した免疫細胞をex vivoで刺激する工程、(ii)前記刺激した免疫細胞を哺乳類に戻す工程を含む、哺乳類において、アンジオモチンに対する免疫応答を生じさせる方法であって、前記細胞を哺乳類に戻すことによって、アンジオモチンに対する免疫応答を生じさせる方法。
【請求項18】
(i) 哺乳類においてアンジオモチンに対する免疫応答を生じさせる医薬を用いて、哺乳類から回収した免疫細胞をex vivoで刺激する工程、(ii)前記刺激した免疫細胞を哺乳類に戻す工程を含む方法を使用する、前記医薬の製造における、アンジオモチン分子またはアンジオモチン分子をコードするポリヌクレオチドの使用であって、前記細胞を哺乳類に戻すことによって、アンジオモチンに対する免疫応答を生じさせる使用。
【請求項19】
前記哺乳類がヒトである、請求項17に記載の方法または請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記引き起こした免疫応答が、血管新生に関連した病気の開始または進展を予防的にまたは治療的に阻害するように機能する、請求項17もしくは19に記載の方法、または、請求項18もしくは19に記載の使用。
【請求項21】
前記引き起こした免疫応答が、悪性疾患の開始または進展を予防的にまたは治療的に阻害するように機能する、請求項17、19もしくは20に記載の方法、または、請求項18から20のいずれか一項に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図4】
【図4】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図4】
【図4】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【公表番号】特表2007−537143(P2007−537143A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544388(P2006−544388)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014573
【国際公開番号】WO2005/061538
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506209743)バイオインヴェント インターナショナル アーベー (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014573
【国際公開番号】WO2005/061538
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506209743)バイオインヴェント インターナショナル アーベー (9)
【Fターム(参考)】
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