説明

アンダカバー構造

【課題】所定荷重以上の水塊がフロントグリルとラジエータの間に流入した場合であっても、ラジエータの破損を防止、もしくは軽減できる、アンダカバー構造を提供することを課題とする。
【解決手段】アンダカバーを形成するスプラッシュシールド81aを、樹脂性のクリップ84aでバルクヘッドロアフレーム130bの下面に固定し、固定部84cを形成する。そして、所定荷重以上の水塊Waがフロントグリル81とラジエータRadの間に流入した場合に、クリップ84aが変形、又は破損し、固定部84cは、スプラッシュシールド81aのバルクヘッドロアフレーム130bに対する固定を解除し、水塊排出流路82を形成することを特徴とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のアンダカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、駆動による発熱を冷却するラジエータを有する冷却装置が備わり、例えば燃料電池車両には、駆動モータや変速機などの駆動ユニットを冷却するための駆動ユニット用ラジエータ、燃料電池(Fuel Cell)を冷却するための燃料電池用ラジエータ、及びエアコンディション用の空調用ラジエータを有する冷却装置が備わる。
【0003】
冷却装置を構成するラジエータは、例えば冷媒が通流するチューブと、チューブに備わる放熱用フィンからなり、放熱用フィンの間に、車両の走行によって発生する走行風を通過させて、チューブを通流する冷媒を冷却するように構成される。以下、ラジエータが走行風を受ける面を放熱面と称する。
【0004】
各ラジエータは、例えば車両の前方に形成されるパワープラント収容室(エンジン室など)に備えられ、車両の前方に備わるフロントグリルに開口する導風口からパワープラント収容室に取り込まれる走行風が、ラジエータを通過するように構成される。さらに、ラジエータの後方にファンシュラウドと電動ファンを備えて、パワープラント収容室に強制的に外気を取り込んで走行風と合流させ、ラジエータを通過する走行風の通過量を多くすることで、各ラジエータの冷却効率を向上している。
【0005】
そして、例えば特許文献1には、ラジエータファンが吸い込んだ外気と合流した走行風を効率よくラジエータに供給するシュラウドの技術が開示されている。
さらに、例えば特許文献2には、走行風がラジエータの前方の側から漏洩することを防止するとともに、車両の前方に荷重が作用したときにその荷重を吸収する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−96684号公報(段落0043〜段落0044、図2参照)
【特許文献2】特開2001−278115号公報(段落0026〜段落0029、図3、図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば特許文献1に開示される技術は、導風口から取り込まれる走行風の逃げ道を少なくして、効率よくラジエータに供給することから、例えば、車両が水溜りを走行したときなどに水が水塊となってフロントグリルの導風口から流入した場合、水塊の逃げる流路が少ない。その結果、水塊の荷重がラジエータに作用して、ラジエータが破損するという問題がある。
【0008】
また、例えば特許文献2に開示される技術は、燃料電池車両の外装に作用する荷重を吸収することはできるが、ラジエータ(熱交換器)に直接作用する荷重については考慮されてないことから、例えば、フロントグリルの導風口から水が水塊となって流入すると、水塊の荷重がラジエータに作用し、ラジエータが破損するという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、所定荷重以上の水塊がフロントグリルとラジエータの間に流入した場合であっても、ラジエータの破損を防止、もしくは軽減できる、アンダカバー構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、ラジエータと、前記ラジエータの前方に備わるフロントグリルに開口して、前記ラジエータを冷却する走行風を取り込む導風口と、を備える車両のアンダカバー構造であって、前記導風口から、所定荷重以上の水塊が、前記ラジエータと前記フロントグリルの間に流入した場合のみに、当該水塊を排出するための水塊排出流路を形成することを特徴とした。
【0011】
この発明によると、ラジエータとフロントグリルの間に、所定荷重以上の水塊が流入した場合に、水塊を排出するための水塊排出流路を形成して水塊を通流し、水塊の荷重がラジエータに作用することを防止できる。
【0012】
また、本発明は、前記ラジエータは、バルクヘッドに支持されて前記車両に備わり、前記アンダカバーは、前記バルクヘッドに固定部を介して固定され、前記所定荷重以上の水塊が、前記ラジエータと前記フロントグリルの間に流入した場合に、前記固定部は、前記アンダカバーと前記バルクヘッドの固定を解除して前記水塊排出流路を形成することを特徴とした。
【0013】
この発明によると、車両のアンダカバーを、ラジエータを支持するバルクヘッドに固定する固定部は、所定荷重以上の水塊が、ラジエータとフロントグリルの間に流入した場合に、アンダカバーとバルクヘッドの固定を解除して水塊排出流路を形成できる。
【0014】
また、本発明は、前記固定部は、クリップで、前記アンダカバーを前記バルクヘッドの下方に固定し、前記所定荷重以上の水塊が、前記ラジエータと前記フロントグリルの間に流入した場合に、前記固定部は、前記クリップが外れて前記アンダカバーと前記バルクヘッドの固定を解除することを特徴とした。
【0015】
この発明によると、所定荷重以上の水塊が、ラジエータとフロントグリルの間に流入した場合に、アンダカバーとバルクヘッドを固定するクリップが外れてアンダカバーとバルクヘッドとの固定を解除し、水塊排出流路を形成できる。
【0016】
また、本発明は、前記アンダカバーは、前記固定部とは異なる位置で前記車両のフレームに固定され、前記所定荷重以上の水塊が前記ラジエータと前記フロントグリルの間に流入した場合であっても、前記アンダカバーと前記フレームの固定が維持されることを特徴とした。
【0017】
この発明によると、所定荷重以上の水塊が、ラジエータとフロントグリルの間に流入した場合であっても、アンダカバーと車両のフレームの固定が維持され、アンダカバーが車両から脱落することを防止できる。
【0018】
また、本発明は、前記バルクヘッドの後方には、排出口が形成されており、前記排出口は、前記ラジエータを通過して前記車両の内部に取り込まれる前記走行風を外部に排出するとともに、前記水塊排出流路を通流した前記水塊を外部に排出することを特徴とした。
【0019】
この発明によると、形成される水塊排出流路を通流してバルクヘッドの後方に流れる水塊を、バルクヘッドの後方に形成される排出口から排出できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、所定荷重以上の水塊がフロントグリルとラジエータの間に流入した場合であっても、ラジエータの破損を防止、もしくは軽減できるアンダカバー構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、燃料電池車両を例に、適宜図を参照して詳細に説明する。
図1は本実施形態に係る燃料電池車両の模式図である。本実施形態に係る燃料電池車両(車両)10は、車室11の空調(例えば冷房又は暖房)を行う空調装置12を備えるとともに、車体後部に水素タンク21、及び高圧バッテリ(蓄電池)22を備える。さらに、燃料電池車両10は、車体中央の床下に燃料電池23を備え、前方のパワープラント収容室13に、燃料電池車両10の駆動輪である前輪28を駆動する駆動モータ24、エアポンプ25及び冷却装置26を備えている。
なお、本実施形態において、図1に示すように燃料電池車両10の前方(Fr)、及び後方(Rr)を設定する。
【0022】
燃料電池23は、固体高分子型の単セルを複数枚積層したスタックからなり、エアポンプ25によって空気が供給されるとともに、水素タンク21から水素が供給されることにより、空気中の酸素と水素を電気化学反応させることで電力を発生させるものであり、例えばシステムボックス(燃料電池ケース)27に内蔵される。燃料電池23によって発電した電力の一部は一時的に高圧バッテリ22に蓄えられ、燃料電池23の出力が不足するときなどに、高圧バッテリ22から駆動モータ24等に電力が供給される。
駆動モータ24は、燃料電池23や高圧バッテリ22の電力を受けて駆動輪である前輪28を駆動し、燃料電池車両10の走行用動力を発生する電動モータであり、図示しない変速機を備える。
なお、図1に示す水素タンク21、燃料電池23、高圧バッテリ22の配置は限定されるものではない。
また、燃料電池車両10には後輪29が備わるが、後輪29を駆動輪とする構成であってもよい。
【0023】
パワープラント収容室13の前方には、空調用ラジエータ(以下、ACラジエータと称する)52、駆動ユニット用ラジエータ(以下、DT(ドライブトレイン)ラジエータと称する)41、及び燃料電池用ラジエータ(以下、FCラジエータと称する)31が、燃料電池車両10の前方の側からこの順に、前後方向に直列に備わり、FCラジエータ31の後方に、ラジエータファン61が配置される。すなわち、燃料電池車両10の車体前方に形成されるパワープラント収容室13の前方に、放熱面55aが起立するようにACラジエータ52が備わり、ACラジエータ52の後方には、放熱面45aが起立するようにDTラジエータ41が備わる。さらに、DTラジエータ41の後方には、放熱面35aが起立するようにFCラジエータ31が備わる。そして、FCラジエータ31の後方には、ファンの回転面がFCラジエータ31の放熱面35aと略平行になるように、ラジエータファン61が備わる。
【0024】
FCラジエータ31は、燃料電池23の放熱を大気に放出し燃料電池23を冷却する機能を有する。
DTラジエータ41は、駆動モータ24や図示しない変速機を含んだ駆動ユニットの放熱を大気に放出し、駆動ユニットを冷却する機能を有する。
また、ACラジエータ52は、空調装置12を構成する図示しないコンプレッサで圧縮された高温高圧のガス状の冷媒からの熱を大気に放出する機能を有する(以下、ACラジエータ52、DTラジエータ41、FCラジエータ31をまとめてラジエータRadと称する場合がある)。
【0025】
さらに、燃料電池車両10の前方には、例えば上下2段に導風口81b、81bが開口するフロントグリル81が備わり、走行風AirをラジエータRadの前方に取り込む。そして、ラジエータRadの前方に取り込まれた走行風Airは、ラジエータRadを通過してパワープラント収容室13に取り込まれるように構成される。
【0026】
そして、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31をパワープラント収容室13の前方に配置するため、パワープラント収容室13の前方に、枠体からなるバルクヘッド連結体130(バルクヘッド、図3参照)を形成し、ラジエータRadをバルクヘッド連結体130で支持する構成とする。
【0027】
図2は本発明に係る冷却装置のACラジエータ、DTラジエータ、及びFCラジエータの概要図である。図2に示すように、FCラジエータ31は、ヘッダ等の枠部材34と、この枠部材34に保持される、平面の形状が矩形のコア35と、左右の枠部材34の上端面から上方へ延びる上部支持ピン36、36と、左右の枠部材34の下端面から下方へ延びる下部支持ピン37、37とを含んでなる。また、コア35は、図示しない多数のチューブと、これら多数のチューブの外周面に一体的に設けた多数の放熱用フィン39、39、・・とを含んでなる。そして、多数の放熱用フィン39によって、放熱面35aが形成される。
以下、図2に示すように、燃料電池車両10(図1参照)の前方(Fr)に向かって右(R)と左(L)を設定する。
【0028】
DTラジエータ41は、ヘッダ等の枠部材44と、この枠部材44によって保持される、平面の形状が矩形のコア45と、左右の枠部材44の上端面から上方へ延びる上部支持ピン46、46と、左右の枠部材44の下端面から下方へ延びる下部支持ピン47、47とを含んでなる。また、コア45は、図示しない多数のチューブと、これら多数のチューブの外周面に一体的に設けた多数の放熱用フィン49、49、・・・とを含んでなる。そして、多数の放熱用フィン49によって、放熱面45aが形成される。
【0029】
さらに、ACラジエータ52は、ヘッダ等の枠部材54と、この枠部材54によって保持される、平面の形状が矩形のコア55と、左右の枠部材54の上端面から上方へ延びる上部支持ピン56、56と、左右の枠部材54の下端面から下方へ延びる下部支持ピン57、57とを含んでなる。また、コア55は、図示しない多数のチューブと、これら多数のチューブの外周面に一体的に設けた多数の放熱用フィン59、59、・・とを含んでなる。そして、多数の放熱用フィン59によって、放熱面55aが形成される。
【0030】
そして、本実施形態に係る燃料電池車両10(図1参照)は、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31が、走行風Airの通風方向に沿って直列に備わる。
【0031】
図3は、燃料電池車両の前部の斜視図であり、ボディのフレーム構造を示す図である。図3に示すように、燃料電池車両10の車体を構成するボディ131は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金を素材とするフレーム構造からなり、前後方向に沿って延在する一対のフロントサイドフレーム132a、132bを備える。
【0032】
そして、ボディ131の前部には、バルクヘッド連結体130が形成される。バルクヘッド連結体130は、略矩形状の枠体として、一対のフロントサイドフレーム132a、132bの前端部に形成される。バルクヘッド連結体130の上端部には、バルクヘッドアッパフレーム130aが備わり、バルクヘッドアッパフレーム130aの両端には、一対のバルクヘッドサイドフレーム130c、130cが下方に延びて備わる。そして、一対のバルクヘッドサイドフレーム130c、130cの下端を連結するように、バルクヘッドロアフレーム130bが備わる。このように、バルクヘッド連結体130は、バルクヘッドアッパフレーム130a、バルクヘッドロアフレーム130b、及び一対のバルクヘッドサイドフレーム130c、130cで囲まれた枠体として形成される。
【0033】
また、一対のフロントサイドフレーム132a、132bの中央部付近には、図示しないストラットを支持するストラットタワー135が設けられ、ストラットタワー135の下端部は、一対のフロントサイドフレーム132a、132bにそれぞれ連結される。図示しないストラットは、例えば、ショックを吸収するコイルスプリングと振動を減衰させるショックアブソーバとによって前輪ダンパとして構成される(図示せず)。
【0034】
なお、図示しないストラットの下方には、例えば、前輪28のバネ下部材(図示せず)が連結される。さらに、ストラットタワー135の左右外側には、前輪28を収納するタイヤハウスを形成するインナフェンダ136が、例えばフロントサイドフレーム132a、132bに固定されて備わる。
【0035】
バルクヘッド連結体130の下部を構成するバルクヘッドロアフレーム130bの上側(枠体内部の側)には、バルクヘッドロアフレーム130bに沿って左右方向にロアクロスメンバ76が固定され、このロアクロスメンバ76は、ラジエータRadを下方から支持する支持部材の機能を有する。
【0036】
燃料電池車両10の前部に形成されるパワープラント収容室13は、バルクヘッド連結体130の後方に、一対のフロントサイドフレーム132a、132bの間の空間として形成される。すなわち、バルクヘッド連結体130は、パワープラント収容室13の前面の側を形成する。
そして、ラジエータRadの放熱面55a、45a、35a(図2参照)が、バルクヘッド連結体130の枠体内部を全面にわたって塞ぐように、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31(図2参照)が前後方向に直列に備わる。
【0037】
パワープラント収容室13には、一対のフロントサイドフレーム132a、132bの下方に、左右方向に懸架されるサブフレーム85が備わる。サブフレーム85は、駆動モータ24(図1参照)を固定するための台座となるフレームで、一対のフロントサイドフレーム132a、132bの下側に、下方に延びるサイドフレーム85a、85aの下端を連結するように備わる。この、サイドフレーム85a、85aの長さによって、パワープラント収容室13に備わる駆動モータ24の設置高さを調節できる。
【0038】
図4の(a)は、燃料電池車両の前部を上面の側から見た図である。図4の(a)に示すように、燃料電池車両10の前部に形成される導風口81bは、例えば左右の前照燈L、Lの間に形成され、バルクヘッド連結体130は、左右の前照燈L、Lが配置される領域の間に、左右方向の全域にわたって形成される。このようにバルクヘッド連結体130、及び導風口81bを形成することで、導風口81bからパワープラント収容室13に取り込まれる走行風Airは、バルクヘッド連結体130の左右方向に漏れることなく、全てがバルクヘッド連結体130の枠体内部を通過してパワープラント収容室13に取り込まれる。
【0039】
前記したように、バルクヘッド連結体130の枠体内部を、放熱面55a、45a、35a(図4の(b)参照)が全面にわたって塞ぐように、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31(図4の(b)参照)が走行風Airの通風方向に沿って直列に備わり、走行風Airの上流から見たとき、放熱面55a、45a,35aは重なるように備わることから、導風口81bから取り込まれる走行風Airは、その全てがラジエータRadを通過する。このことによって、パワープラント収容室13に取り込まれる走行風AirによるラジエータRadの冷却効率を向上できる。
【0040】
図4の(b)は、図4の(a)のX−X断面図である。図4の(b)に示すように、燃料電池車両10の前部は、前面を覆うフロントグリル81と、前上部の開口を開閉可能に覆うフード83とを備える。フロントグリル81には、前記した導風口81bが形成される。
【0041】
フロントグリル81の下端部は後方へ延びて、燃料電池車両10のラジエータRadの下方に備わるアンダカバーとなるスプラッシュシールド81aを形成する。
そして本実施形態において、スプラッシュシールド81aは、図4の(b)に示すように、バルクヘッドロアフレーム130bの下面にクリップ84aで固定されて固定部84cが形成される。
【0042】
さらに、スプラッシュシールド81aは、後方に延びるように形成され、その後端部は、例えば駆動モータ24を固定するサブフレーム85の下面に、ビスなどの締付け部材84bで固定される。すなわち、スプラッシュシールド81aは、固定部84cとは異なる位置で、燃料電池車両10のフレームであるサブフレーム85に固定される。
なお、スプラッシュシールド81aの後端部と、サブフレーム85の間に、駆動モータ24の下面を保護するモータアンダカバー24aの前端部を重ねて固定してもよい。
【0043】
バルクヘッドロアフレーム130bは、例えば断面がコ字型の部材からなり、開口を上側、すなわちバルクヘッド連結体130(図3参照)の枠体内部の側に向けて固定され、下側の面には、スプラッシュシールド81aが密着するように備わる。このようにバルクヘッドロアフレーム130bとスプラッシュシールド81aを密着することで、バルクヘッド連結体130の下方を通る走行風Airを遮断することができる。
【0044】
さらに、バルクヘッド連結体130(図4の(a)参照)の上側を形成するバルクヘッドアッパフレーム130aとフード83との間隙を塞ぐように構成することで、バルクヘッド連結体130の上方を通る走行風Airを遮断できる。
このように、バルクヘッド連結体130の上方、及び下方を通る走行風Airを遮断することで、導風口81b、81bから流入した走行風Airは、上下方向に漏れることなく、全てがバルクヘッド連結体130の枠体内部を通過してパワープラント収容室13に取り込まれる。
【0045】
前記したように、導風口81b、81bから流入した走行風Airは、バルクヘッド連結体130(図4の(a)参照)の左右方向に漏れないことから、導風口81b、81bから流入した走行風Airは、全てがバルクヘッド連結体130の枠体内部を通過して、パワープラント収容室13に流入することになる。
【0046】
図4の(b)に示すように、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31は、燃料電池車両10の前後方向に直列に配置され、それぞれの下端は、ロアクロスメンバ76に支持される。
すなわち、ACラジエータ52の放熱面55aの後面55bにDTラジエータ41の放熱面45aを対向させて配置し、DTラジエータ41の放熱面45aの後面45bに、FCラジエータ31の放熱面35aを対向させて配置する。
【0047】
さらに、図4の(b)に示すように、ACラジエータ52とDTラジエータ41の間の周囲、及びDTラジエータ41とFCラジエータ31の間の周囲をそれぞれシール部材91、92でシールする。すなわち、ACラジエータ52とDTラジエータ41とを、前後方向に直列に配置し、放熱面55aの後面55bと放熱面45aの周囲をシール部材91でシールするとともに、DTラジエータ41とFCラジエータ31を前後方向に直列に配置し、放熱面45aの後面45bと放熱面35aの周囲をシール部材92でシールして、ACラジエータ52とDTラジエータ41の間、及びDTラジエータ41とFCラジエータ31の間からの走行風Airの漏洩を抑制する。
【0048】
また、フロントグリル81に形成される、導風口81bの配置は限定するものではないが、本実施形態においては、図4の(b)に示すように、上下の2箇所に形成する。
【0049】
図5は、ラジエータの固定方法を示す図、図6は、ファンシュラウドを示す図である。図5に示すように、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31は、下端部をロアクロスメンバ76に直接に取付けるとともに、上端部を連結部材93によってバルクヘッドアッパフレーム130aに固定する。
具体的には、ACラジエータ52、DTラジエータ41、FCラジエータ31のコア55、45、35の両端(図5には、左端を図示)に備わる枠部材54、44、34から下方に延伸する下部支持ピン57、47、37を、マウント用ブッシュ94、94、94を介して、ロアクロスメンバ76に開口している固定孔76a、76a、76aに嵌合して、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31の下端部を、ロアクロスメンバ76で支持する。
【0050】
連結部材93は、例えば、鋼板のプレス成形品からなる平板状の部材であり、バルクヘッドアッパフレーム130aの左右両端部に上から重ねて複数のボルト95、95、・・・で取り外し可能に取付けるものである。この連結部材93は上下貫通した3個の支持用孔93a、93a、93aが開口している。
一方、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31の枠部材54、44、34には、上方に延伸する上部支持ピン56、46、36が形成され、上部支持ピン56、46、36は、マウント用ブッシュ96、96、96を介して連結部材93の支持用孔93a、93a、93aに嵌合するとともに、連結部材93をバルクヘッドアッパフレーム130aに、複数のボルト95、95、・・・で固定することで、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31の上端部をバルクヘッドアッパフレーム130aに取り外し可能に取り付けられる。
【0051】
また、図6に示すように、FCラジエータ31の後方には、ファンシュラウド61aを有するラジエータファン61が備わる。ファンシュラウド61aは、ラジエータファン61で吸い込む外気がラジエータRadを必ず通過するようにするカバーであり、例えば、図6に示すように、ラジエータRadの後方の側を覆うように備わる。
そして、ラジエータファン61は、ファンシュラウド61aを介して、例えばFCラジエータ31の枠部材34(図2参照)に固定される。
【0052】
ラジエータファン61に吸い込まれる外気は、走行風Airと合流してラジエータRadを通過した後、ファンシュラウド61aの内部を通流して、パワープラント収容室13(図4の(b)参照)に流入する。
【0053】
このようにラジエータファン61を配置することで、ACラジエータ52、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31の3枚のラジエータが重なる部分には、ラジエータファン61が吸い込む外気が走行風Airと合流して供給される。
なお、燃料電池車両10(図1参照)が停車していて、走行風Airが発生しない場合は、ラジエータファン61が吸い込む外気のみが供給されることになる。
【0054】
なお、本実施形態においては、図6に示すように、ファンシュラウド61a及びラジエータファン61をFCラジエータ31の後方に備えた構成としたが、例えばラジエータファン61をACラジエータ52の前方に備える構成であってもよい。そして、この場合、ラジエータRadを通過する走行風Airの通過圧損の低下を軽減するため、ファンシュラウド61aを備えることなく、ラジエータファン61を、例えばACラジエータ52の枠部材54(図2参照)に固定する構成とすればよい。
【0055】
また、スプラッシュシールド81a(図4の(b)参照)の、パワープラント収容室13(図4の(b)参照)の床部分を形成する部分に排出口を設けてもよい。図7の(a)は、スプラッシュシールドの排出口を示す模式図である。図7の(a)に示すように、例えば、バルクヘッドロアフレーム130bとサブフレーム85の間に、スプラッシュシールド81aが下方に窪んだ凹部81a1を形成し、サブフレーム85の前方には、凹部81a1の底部81a2からサブフレーム85に向かって傾斜する傾斜部81a3を形成する。そして、傾斜部81a3に、スプラッシュシールド81aを貫通するように、少なくとも1つの排出口81a4を開口する。
【0056】
さらに、例えば、駆動モータ24(図7の(b)参照)の後方を支持するように、サブフレーム86を燃料電池車両10のボディ131(図3参照)に形成し、その下方にモータアンダカバー24aを固定する構成としてもよい。この場合、サブフレーム86は、図3に示すサブフレーム85と略同等の構成とすればよい。
【0057】
そして、サブフレーム86の前方には、モータアンダカバー24aが下方に向かって傾斜する傾斜部24a1を形成し、傾斜部24a1に、モータアンダカバー24aを貫通するように、少なくとも1つの排出口24a2を開口する。
【0058】
図7の(b)は、図7の(a)のY−Y断面図で、ラジエータが備わったときの走行風の通風の状態を示す模式図、(c)は、上面側から見た、走行風の通風の状態を示す模式図である。図7の(b)に示すように、走行風Airは、ラジエータRadを通過してパワープラント収容室13に流入する。
そこで、図7の(a)、(b)に示すように、スプラッシュシールド81aに排出口81a4を形成して走行風Airをパワープラント収容室13から排気することで、走行風Airをパワープラント収容室13へ効率よく流入できる。すなわち、パワープラント収容室13への走行風Airの流入量が増大し、ラジエータRadを通過する走行風Airの通過量が増大する。このことによって、ラジエータRadを効率よく冷却できる。
【0059】
また、図7の(b)に示すようにモータアンダカバー24aに排出口24a2を形成することで、排出口24a2からも走行風Airを排気することができ、パワープラント収容室13からの排気効率を向上できる。その結果として走行風Airをパワープラント収容室13に効率よく流入することができ、ラジエータRadを効率よく冷却できる。
【0060】
スプラッシュシールド81a及びモータアンダカバー24aの下方は、燃料電池車両10(図1参照)が走行する路面と対向することから、燃料電池車両10の走行によってスプラッシュシールド81a及びモータアンダカバー24aの下方に空気流が発生する。そして、この空気流による負圧が、パワープラント収容室13に流入する走行風Airを排出口81a4、24a2を介して吸引することで、パワープラント収容室13からの排気効率が向上する。
【0061】
さらに、図7の(b)に示すように、スプラッシュシールド81aに傾斜部81a3を設けて排出口81a4を開口し、モータアンダカバー24aに傾斜部24a1を設けて排出口24a2を開口したことで、走行風Airをパワープラント収容室13から効率よく排気できる。
すなわち、スプラッシュシールド81aの傾斜部81a3、及びモータアンダカバー24aの傾斜部24a1は、スプラッシュシールド81aやモータアンダカバー24aから後方に向けて起立することから、燃料電池車両10(図1参照)の前方に形成される導風口81b(図4の(b)参照)からパワープラント収容室13に流入する走行風Airは、その流れの方向を大幅に変えることなく排出口81a4、24a2から排気される。
【0062】
このことによって、走行風Airはパワープラント収容室13から効率よく排気される。走行風Airが、パワープラント収容室13から効率よく排気されると、走行風Airは、パワープラント収容室13に効率よく流入し、パワープラント収容室13への走行風Airの流入量が増大する。したがって、ラジエータRadを通過する走行風Airの通過量が増大して、ラジエータRadを効率よく冷却できる。
【0063】
なお、スプラッシュシールド81aに形成される傾斜部81a3(図7の(a)参照)は、バルクヘッドロアフレーム130b(図7の(a)参照)とサブフレーム85(図7の(a)参照)の高低差を吸収する機能を有することから、例えば、サブフレーム85がバルクヘッドロアフレーム130bより高い位置に備わる場合、スプラッシュシールド81aに凹部81a1(図7の(a)参照)を形成することなく、傾斜部81a3を形成する構成であってもよい。
【0064】
また、前記したように、燃料電池車両10(図1参照)には、タイヤハウスを形成するインナフェンダ136(図3参照)が備わる。そこで、図7の(c)に示すように、インナフェンダ136の前方に、排出口136aを形成してもよい。タイヤハウスは前輪28を収納する空間であって、燃料電池車両10の走行中に前輪28の回転で、タイヤハウスが大気圧に対して負圧になる場合がある。図7の(c)に示すように、インナフェンダ136に排出口136aを形成することで、パワープラント収容室13に流入する走行風Airは、タイヤハウスの負圧で吸引され、タイヤハウスを経由して排気されることから、パワープラント収容室13からの走行風Airの排気効率が向上し、走行風Airは、パワープラント収容室13に効率よく流入する。そして、ラジエータRadを効率よく冷却できる。
【0065】
以上のように燃料電池車両10(図1参照)の前方は構成され、パワープラント収容室13(図1参照)の前方には、ラジエータRad(図1参照)が、バルクヘッド連結体130(図3参照)に支持されて備わる。
【0066】
このように構成される燃料電池車両10(図1参照)が、例えば水溜りを走行すると、図4の(b)に示される導風口81bから、水が水塊となって、ラジエータRadの前方、すなわちラジエータRad(図1参照)とフロントグリル81(図1参照)の間に流入する場合がある。図8は、導風口から水塊が流入することを示す模式図である。
前記したように、ラジエータRadを支持するバルクヘッド連結体130(図3参照)の周囲は、走行風Airが漏れない構造であることから、フロントグリル81とラジエータRadの間に流入した水塊Waは、図8に示すように、例えば最前面に配置されるACラジエータ52やスプラッシュシールド81aに直接到達する。
【0067】
このとき、例えば燃料電池車両10(図1参照)の車速が速いと、図8に示すようにACラジエータ52やスプラッシュシールド81aには、導風口81bから流入する水塊Waの荷重が作用し、ACラジエータ52が破損する場合がある。さらに、ACラジエータ52の破損に伴って、DTラジエータ41、及びFCラジエータ31が破損する場合がある。
【0068】
このような、ラジエータRadの破損を防止、もしくは軽減するため、本実施形態においては、バルクヘッドロアフレーム130bにスプラッシュシールド81aをクリップ84aで固定した固定部84cを形成することを特徴とする。さらに、クリップ84aを例えば樹脂で形成し、クリップ84aを衝撃に対して脆弱な部材とする。このように構成することで、例えば導風口81bから水塊Waが、フロントグリル81とラジエータRadの間に流入した場合に、スプラッシュシールド81aに作用する荷重によってクリップ84aが外れる。このように、固定部84cは、スプラッシュシールド81aのバルクヘッドロアフレーム130bに対する固定を解除し、水塊Waは、スプラッシュシールド81aとバルクヘッドロアフレーム130bの間に形成される間隙に流れる。すなわち、スプラッシュシールド81aとバルクヘッドロアフレーム130bの間に、後記する水塊排出流路82(図10参照)が形成される。
その結果、ラジエータRadに作用する荷重が減少し、ラジエータRadの破損を防止、もしくは軽減できる。
【0069】
すなわち、導風口81bから水塊Waがフロントグリル81とラジエータRadの間に流入した場合、最初の衝撃荷重がラジエータRadとスプラッシュシールド81aに分散して作用し、スプラッシュシールド81aに作用する衝撃荷重で、固定部84cは、スプラッシュシールド81aのバルクヘッドロアフレーム130bに対する固定を解除する。そして、スプラッシュシールド81aのバルクヘッドロアフレーム130bに対する固定が解除された後、水塊Waは、スプラッシュシールド81aとバルクヘッドロアフレーム130bの間に形成される間隙(水塊排出流路82(図10参照))に優先的に流れ、ラジエータRadに向かう水塊Waの量は減少する。
【0070】
その結果、ラジエータRadに作用する水塊Waの荷重の総量は軽減され、ラジエータRadの破損を防止できる。また、ラジエータRadが破損した場合であっても、その破損を最小限に抑えることができる。
【0071】
図9の(a)は、クリップの形状の一例を示す図である。図9の(a)に示すように、クリップ84aは、例えば樹脂からなる円柱状の本体84a1の一端にスリット84a3が軸方向に形成され、他端にはクリップヘッド84a2がフランジ状に広がって形成される。
さらに、スリット84a3が形成される側の、本体84a1の端部は、クリップヘッド84a2の側に向かって円錐台状に広がって、係止部84a4を形成する。
【0072】
図9の(b)は、クリップを挿通孔に挿入することを示す模式図、(c)は、クリップでスプラッシュシールドをバルクヘッドロアフレームに固定したことを示す模式図である。
図9の(b)に示すように、コ字型の部材からなるバルクヘッドロアフレーム130bの開口底部に、クリップ84aの本体84a1と略同等の径からなる挿通孔130b1を形成する。また、スプラッシュシールド81aにも、クリップ84aの本体84a1と略同等の径からなる挿通孔81a5を形成し、挿通孔81a5、130b1を貫通するように、スプラッシュシールド81aの側からクリップ84aを圧入する。
【0073】
クリップ84aの係止部84a4は、スリット84a3が狭まるようにたわんで変形し、挿通孔81a5、130b1を通過する。そして、図9の(c)に示すように、係止部84a4は、バルクヘッドロアフレーム130bの挿通孔130b1を通過した後、弾性復元力によって復元する。係止部84a4は、挿通孔130b1の周囲に広がることから、クリップ84aは抜け落ちることなく、スプラッシュシールド81a、及びバルクヘッドロアフレーム130bに支持される。
【0074】
そして、クリップ84aの係止部84a4とクリップヘッド84a2の距離を、バルクヘッドロアフレーム130bの厚みとスプラッシュシールド81aの厚みを合わせた長さと略等しくすることで、スプラッシュシールド81aをバルクヘッドロアフレーム130bにクリップ84aで固定できる。このようにして固定部84cが形成される。
【0075】
さらに、バルクヘッドロアフレーム130bに沿って複数の箇所で、スプラッシュシールド81aをバルクヘッドロアフレーム130bにクリップ84aで固定することで、スプラッシュシールド81aをバルクヘッドロアフレーム130bに確実に固定できる。
【0076】
また、バルクヘッドロアフレーム130bの前方に、下方に向かって傾斜する傾斜部81a6を形成するようにスプラッシュシールド81aを構成してもよい。
【0077】
なお、図9の(a)に示すクリップ84aの形状は、限定するものではない。例えば、本体84a1に形成されるスリット84a3と直交するように、別のスリット84a3を形成し、十字型のスリット84a3を有するクリップ84aであってもよいし、2つ以上のスリット84a3を有するクリップ84aであってもよい。また、例えば本体84a1を中空の円筒状に形成し、スリット84a3を形成しないクリップ84aであってもよい。
【0078】
図10は、スプラッシュシールドのバルクヘッドロアフレームへの固定が解除されたことを示す図である。前記したように、本実施形態に係るクリップ84aは、例えば樹脂からなる部材であり、荷重に対して脆弱に形成できる。
そこで、本実施形態においては、通常の走行風Airがスプラッシュシールド81aに印加する荷重には充分に耐える強度を有するクリップ84aとする。そして、通常の走行風Airがスプラッシュシールド81aに印加する荷重より大きく、ラジエータRadが破損しない範囲の荷重がスプラッシュシールド81aに印加されたときに変形もしくは破損するように、クリップ84aの強度を設定する。
【0079】
このようにクリップ84aの強度を設定することで、スプラッシュシールド81aがバルクヘッドロアフレーム130bに固定された状態のとき、フロントグリル81の導風口81bから、所定荷重以上の水塊Waが、フロントグリル81とラジエータRadの間に流入し、スプラッシュシールド81aに水塊Waの荷重が上方から作用すると、クリップ84aは、変形もしくは破損し、固定部84cは、スプラッシュシールド81aのバルクヘッドロアフレーム130bへの固定を解除する。
【0080】
さらに、スプラッシュシールド81aのバルクヘッドロアフレーム130bの前方に、下方に向かって傾斜する傾斜部81a6を形成することで、水塊Waの荷重を効率よくスプラッシュシールド81aに分散して作用させることができる。その結果、スプラッシュシールド81aに作用する水塊Waの荷重が大きくなり、バルクヘッドロアフレーム130bへの固定が解除されやすくなる。
【0081】
スプラッシュシールド81aは、バルクヘッドロアフレーム130bへの固定が解除されると、図10に示すように、上方から作用する荷重で下方にたわむように変形して、バルクヘッドロアフレーム130bとスプラッシュシールド81aの間に間隙が生じ、水塊排出流路82が形成される。
そして水塊Waは、スプラッシュシールド81aとバルクヘッドロアフレーム130bの間に生じる水塊排出流路82に流入する。
すなわち、バルクヘッドロアフレーム130bとスプラッシュシールド81aの間に水塊Waの流路となる水塊排出流路82が形成され、水塊Waは、水塊排出流路82に流入する。
【0082】
このように、導風口81bから水塊Waがフロントグリル81とラジエータRadの間に流入し、水塊Waの荷重がスプラッシュシールド81aに作用すると、クリップ84aが変形もしくは破損し、固定部84cは、スプラッシュシールド81aとバルクヘッドロアフレーム130bの固定を解除する。そして、スプラッシュシールド81aとバルクヘッドロアフレーム130bの間に水塊排出流路82が形成され、水塊Waが燃料電池車両10(図1参照)の後方に向かって通流する流路となる。すなわち、水塊Waが燃料電池車両10の後方に向かって通流する流路が開通する。
【0083】
このようにして、水塊Waの荷重は、クリップ84aの変形や破損、及びスプラッシュシールド81aの変形で吸収される。したがって、前記したようにラジエータRadが破損しない荷重の範囲で、クリップ84aが変形もしくは破損するように、クリップ84aの強度を設定すれば、ラジエータRadが破損するより先に、固定部84cが、スプラッシュシールド81aのバルクヘッドロアフレーム130bへの固定を解除する。そして、導風口81bから流入した水塊Waの荷重を吸収することができ、ラジエータRadに作用する荷重が減少してラジエータRadの破損を防止、もしくは軽減できる。
このために、ラジエータRadが破損しない範囲の任意の荷重を所定の設定荷重とし、この所定の設定荷重でクリップ84aが変形もしくは破損するように、クリップ84aの強度を設定すればよい。
【0084】
また、図7の(b)に示すように、FCラジエータ31の後方には、スプラッシュシールド81aに排出口81a4が開口していることから、バルクヘッドロアフレーム130b(図10参照)とスプラッシュシールド81a(図10参照)の間に生じる水塊排出流路82(図10参照)を通って、FCラジエータ31の後方に形成される凹部81a1に流入した水塊Waは排出口81a4から排出される。したがって、凹部81a1に水塊Waが滞留することがない。
【0085】
このように、本実施形態においては、スプラッシュシールド81aを、樹脂からなるクリップ84a(図9の(a)参照)でバルクヘッドロアフレーム130bに固定したことで、導風口81b(図4の(b)参照)から水塊Waが流入してスプラッシュシールド81aに荷重が作用したときに、この荷重を吸収し、ラジエータRadの破損を防止、もしくは軽減できるという優れた効果を奏する。
【0086】
また、図4の(b)に示すように、スプラッシュシールド81aの後端は、サブフレーム85にビスなどの締付け部材84bで固定されることから、スプラッシュシールド81aのバルクヘッドロアフレーム130bに対する固定が解除されても、スプラッシュシールド81aが脱落したり、スプラッシュシールド81aが燃料電池車両10の下方に垂れ下がったりすることがなく、燃料電池車両10の走行を妨げることはない。
【0087】
以上のように、本実施形態においては、仮に燃料電池車両10(図1参照)が水溜りを走行し、図10に示すように水塊Waが導風口81bからフロントグリル81とラジエータRadの間に流入した場合であっても、固定部84cがスプラッシュシールド81aのバルクヘッドロアフレーム130bへの固定を解除し、水塊排出流路82を形成することで、水塊Waの荷重による衝撃荷重を吸収し、ラジエータRadの破損を防止、もしくは軽減できる。
さらに、スプラッシュシールド81aは、バルクヘッドロアフレーム130bへの固定が解除されても、燃料電池車両10の走行を妨げない。
したがって、導風口81bから水塊Waが流入した場合であっても、燃料電池車両10は走行が可能であり、運転者は、例えば修理工場まで燃料電池車両10を走行できるという優れた効果を奏する。
【0088】
なお、本実施形態においては、図4の(b)に示すように、スプラッシュシールド81aをクリップ84aでバルクヘッドロアフレーム130bに固定したが、例えばバルクヘッドロアフレーム130bが鉄などの磁性体で形成される場合には、磁石などの吸着手段で、スプラッシュシールド81aをバルクヘッドロアフレーム130bに固定する構成であってもよい。
【0089】
図11の(a)は、磁石でスプラッシュシールドをバルクヘッドロアフレームに固定する態様を示す図、(b)は、スプラッシュシールドのバルクヘッドロアフレームに対する固定が解除されたことを示す図である。図11に示すように、磁石81cをスプラッシュシールド81aに接着などの手段で固定するとともに、磁性体からなるバルクヘッドロアフレーム130bに磁石81cを吸着させて、スプラッシュシールド81aを固定する。
【0090】
導風口81b(図10参照)から水塊Waが流入し、スプラッシュシールド81aに荷重が作用すると、図11の(b)に示すように、磁石81cのバルクヘッドロアフレーム130bへの吸着が外れてスプラッシュシールド81aの固定が解除され、バルクヘッドロアフレーム130bとスプラッシュシールド81aの間に水塊排出流路82aが形成される。このように、スプラッシュシールド81aをクリップ84aでバルクヘッドロアフレーム130bに固定した場合と同様の効果を得ることができる。
【0091】
さらに、スプラッシュシールド81aに作用する荷重が吸収されて消失すると、スプラッシュシールド81aの弾性復元力で、磁石81cとバルクヘッドロアフレーム130bが接近する。そして、磁石81cは、磁力によってバルクヘッドロアフレーム130bに吸着し、スプラッシュシールド81aをバルクヘッドロアフレーム130bに固定する。
【0092】
このように、磁石81cでスプラッシュシールド81aをバルクヘッドロアフレーム130bに固定する構成にすると、スプラッシュシールド81aに作用する荷重を吸収する際に、部材の変形及び破損を伴わないことから、繰り返しの利用ができるという優れた効果を奏する。
【0093】
また、例えばスプラッシュシールド81a(図10参照)に、水抜き口を設ける構成であってもよい。図12の(a)は、スプラッシュシールドに設けた水抜き口を示す図、(b)は、図12の(a)におけるZ−Z断面図、(c)は、水抜き口から水が抜けるときの状態を示す図である。
図12の(a)に示すように、例えば、スプラッシュシールド81aは、バルクヘッドロアフレーム130bの前方に、下方に向かって傾斜する傾斜部81a6を形成するように構成し、傾斜部81a6に水抜き口81a7を設ける。
【0094】
さらに、図12の(b)に示すように、水抜き口81a7には蓋部材81a8が備わる。蓋部材81a8は、例えば上端を回転軸として回動可能に、スプラッシュシールド81aの傾斜部81a6の後方に支持され、水抜き口81a7を後方から開閉する機能を有する。
そして、蓋部材81a8は、図示しない付勢手段で水抜き口81a7を閉鎖するように付勢されて備わる。
このように、蓋部材81a8が水抜き口81a7を閉鎖することから、導風口81b(図10参照)から取り込まれる走行風Airは、水抜き口81a7から漏れ出ることなく、ラジエータRadを効率よく冷却できる。
【0095】
導風口81b(図10参照)から水塊Waが流入すると、図12の(c)に示すように、水塊Waは、蓋部材81a8を水抜き口81a7の前方から押して回動させ、水抜き口81a7を開口する。そして、水塊Waは、水抜き口81a7から排出される。
すなわち、水抜き口81a7は、水塊Waが通流する水塊排出流路になる。
水塊Waが排出されると、蓋部材81a8は、図示しない付勢手段によって、水抜き口81a7を閉鎖する方向に回動し、水抜き口81a7を閉鎖する。
【0096】
この場合においても、ラジエータRad(図10参照)が破損しない荷重の範囲で蓋部材81a8が回動するように、図示しない付勢手段の付勢力を設定することで、導風口81b(図10参照)から水塊Waが流入した場合であっても、水抜き口81a7を開口し、水塊Waを排出できる。そして、導風口81bから流入した水の荷重によるラジエータRadの破損を防止、もしくは軽減できる。
【0097】
なお、図12の(a)において、バルクヘッドロアフレーム130bの前方に傾斜部81a6を形成し、傾斜部81a6に水抜き口81a7を設けたことで、導風口81b(図10参照)から流入する水塊Waの流れの方向を大きく変えることなく、水抜き口81a7から排出できる。したがって、導風口81bから流入する水塊Waを効率よく水抜き口81a7から排出できる。
【0098】
以上のように、本実施形態においては、スプラッシュシールドに作用する水塊の荷重で固定を解除する固定部を介して、スプラッシュシールドをバルクヘッドロアフレームに固定した。このことによって、導風口から水塊がフロントグリルとラジエータの間に流入した場合であっても、スプラッシュシールドとバルクヘッドロアフレームの間に形成される水塊排出流路に、水塊が通流することで、水塊の荷重が吸収され、ラジエータの破損を防止、軽減できるという優れた効果を奏する。
なお、本実施形態は、例えば衝撃波など空気による過大な衝撃が、スプラッシュシールドに作用する場合にも対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本実施形態に係る燃料電池車両の模式図である。
【図2】本発明に係る冷却装置のACラジエータ、DTラジエータ、及びFCラジエータの概要図である。
【図3】燃料電池車両の前部の斜視図であり、ボディのフレーム構造を示す図である。
【図4】(a)は、燃料電池車両の前部を上面の側から見た図、(b)は、図4の(a)のX−X断面図である。
【図5】ラジエータの固定方法を示す図である。
【図6】ファンシュラウドを示す図である。
【図7】(a)は、スプラッシュシールドの排出口を示す模式図、(b)は、図7の(a)のY−Y断面図で、ラジエータが備わったときの走行風の通風の状態を示す模式図、(c)は、上面側から見た、走行風の通風の状態を示す模式図である。
【図8】導風口から水塊が流入することを示す模式図である。
【図9】(a)は、クリップの形状の一例を示す図、(b)は、クリップを挿通孔に挿入することを示す模式図、(c)は、クリップでスプラッシュシールドをバルクヘッドロアフレームに固定したことを示す模式図である。
【図10】スプラッシュシールドのバルクヘッドロアフレームへの固定が解除されたことを示す図である。
【図11】(a)は、磁石でスプラッシュシールドをバルクヘッドロアフレームに固定する態様を示す図、(b)は、スプラッシュシールドのバルクヘッドロアフレームに対する固定が解除されたことを示す図である。
【図12】(a)は、スプラッシュシールドに設けた水抜き口を示す図、(b)は、図12の(a)におけるZ−Z断面図、(c)は、水抜き口から水が抜けるときの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0100】
10 燃料電池車両(車両)
13 パワープラント収容室
31 FCラジエータ
41 DTラジエータ
52 ACラジエータ
81 フロントグリル
81a スプラッシュシールド(アンダカバー)
81a7 水抜き口(水塊排出流路)
81b 導風口
82、82a 水塊排出流路
84a クリップ
84c 固定部
130 バルクヘッド連結体(バルクヘッド)
Wa 水塊

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータと、
前記ラジエータの前方に備わるフロントグリルに開口して、前記ラジエータを冷却する走行風を取り込む導風口と、を備える車両のアンダカバー構造であって、
前記導風口から、所定荷重以上の水塊が、前記ラジエータと前記フロントグリルの間に流入した場合のみに、当該水塊を排出するための水塊排出流路を形成することを特徴とするアンダカバー構造。
【請求項2】
前記ラジエータは、バルクヘッドに支持されて前記車両に備わり、
前記アンダカバーは、前記バルクヘッドに固定部を介して固定され、
前記所定荷重以上の水塊が、前記ラジエータと前記フロントグリルの間に流入した場合に、前記固定部は、前記アンダカバーと前記バルクヘッドの固定を解除して前記水塊排出流路を形成することを特徴とする請求項1に記載のアンダカバー構造。
【請求項3】
前記固定部は、クリップで、前記アンダカバーを前記バルクヘッドの下方に固定し、
前記所定荷重以上の水塊が、前記ラジエータと前記フロントグリルの間に流入した場合に、前記固定部は、前記クリップが外れて前記アンダカバーと前記バルクヘッドの固定を解除することを特徴とする請求項2に記載のアンダカバー構造。
【請求項4】
前記アンダカバーは、前記固定部とは異なる位置で前記車両のフレームに固定され、
前記所定荷重以上の水塊が前記ラジエータと前記フロントグリルの間に流入した場合であっても、前記アンダカバーと前記フレームの固定が維持されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のアンダカバー構造。
【請求項5】
前記バルクヘッドの後方には、排出口が形成されており、
前記排出口は、前記ラジエータを通過して前記車両の内部に取り込まれる前記走行風を外部に排出するとともに、
前記水塊排出流路を通流した前記水塊を外部に排出することを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載のアンダカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−274648(P2009−274648A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129426(P2008−129426)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】