説明

アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材及びこれを用いた電子部品装置

【課題】低温短時間での硬化が可能であり、低粘度かつ高Tgを両立することができ、充填時のフィレット形成性に優れるアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材を提供する。
【解決手段】(A)特定のアミン系エポキシ樹脂及び特定の脂環族エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂と、(B)特定の脂肪族酸無水物を含む硬化剤と、(C)無機充填剤とを含有せしめ、前記(C)無機充填剤の含有率が総質量の50質量%以上78質量%以下の範囲となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材及びこれを用いた電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トランジスタ、IC等の電子部品装置の半導体素子(以下、チップともいう。)の封止の分野では生産性、コストなどの面から樹脂封止が主流となり、エポキシ樹脂組成物が広く用いられている。この理由として、エポキシ樹脂が作業性、成形性、電気特性、耐湿性、耐熱性、機械特性、インサート品との接着性などの諸特性にバランスがとれているためである。COB(Chip on Board)、COG(Chip on Glass)、TCP(Tape Carrier Package)等のベアチップ実装した半導体装置においては、エポキシ樹脂液状封止材が広く使用されている。また、半導体素子をセラミック、ガラス/エポキシ樹脂、ガラス/イミド樹脂またはポリイミドフィルムなどを基板とする配線基板上に直接バンプ接続してなる半導体装置(フリップチップ)では、バンプ接続した半導体素子と配線基板の間隙(ギャップ)を充填するアンダーフィル材としてエポキシ樹脂液状封止材が使用されている。これらのエポキシ樹脂液状封止材は電子部品を温湿度、機械的な外力などから保護するために重要な役割を果たしている。
【0003】
フリップチップ実装を行なう場合、チップと基板はそれぞれ熱膨張係数が異なり、接合部に熱応力が発生するため、接続信頼性の確保が重要な課題である。アンダーフィル材とチップとの熱膨張差に起因した熱応力によって、アンダーフィル材にクラックが生じ、結果として最悪の場合には、チップを破壊する恐れがある。また温度サイクル試験などによる繰り返し熱衝撃を受ける場合に、接続部の保護が不充分だと、低サイクルで接合部が疲労破壊することもあり、耐温度サイクル性が求められている。さらにチップを保護するために、チップ側面をアンダーフィル材で覆う(フィレットを形成する)必要があり、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、このフィレット成形性が求められている。さらに、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の硬化には、通常、高温で長時間の加熱が必要であるが、近年、生産性、作業性の向上を目的とした低温短時間での硬化が求められている。
このように、低温短時間での硬化が可能であり、フィレット形成性、温度サイクル性などが良好なアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の需要が高まっているが、耐温度サイクル性などを得るため無機充填剤の高充填化を行うと、エポキシ樹脂液状封止材の粘度が著しく増大し、流動性が低下し、成形性が悪化するという問題が生じる場合がある。
これに関連して、特定構造の硬化剤や添加剤を配合することで、低温硬化が可能で、フィレット形成性、温度サイクル性が良好なエポキシ樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3446730号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、電子部品装置の進歩とともにますます高信頼性が要求されるとともに、電子部品装置の製造の生産性、作業性の向上が要求されている。特許文献1記載の硬化剤や添加剤を用いたのみでは、20分以下の短時間での硬化が可能であり、かつ50μm以下の狭ギャップでも充填可能であり、かつ温度サイクル性の良好なエポキシ樹脂組成物を得ることは困難であった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、低温短時間での硬化が可能であり、硬化前の樹脂組成物が低粘度で、狭いギャップでも充填可能あり、樹脂組成物の硬化物が高Tgで耐温度サイクル性に優れ、また、チップを保護するために不可欠なフィレット形成性に優れたアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材、及びこれにより封止された電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のエポキシ樹脂及び硬化剤と特定の配合量の無機充填剤とを含有することにより、上記目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。また、潜在性を有する硬化促進剤を含有することや特定の粒度分布を有する無機充填剤を用いることにより、上記の目的をより高いレベルで達成できることを見出した。
【0007】
本発明は、より詳細には以下に関する。
<1> (A)下記一般式(I)で示される化合物及び下記一般式(II)で示される化合物を含むエポキシ樹脂と、(B)下記化学式(III)で示される酸無水物を含む硬化剤と、(C)無機充填剤とを含有し、前記(C)無機充填剤の含有率が総質量の50質量%以上78質量%以下の範囲であるアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材。
【0008】
【化1】

【0009】
<2> さらに(D)潜在性硬化促進剤を含有する上記<1>に記載のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材。
【0010】
<3> 前記(D)潜在性硬化促進剤は、下記化学式(IV)で示される化合物及び下記化学式(V)で示される化合物の少なくとも一方と有機酸との塩である上記<2>に記載のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材。
【0011】
【化2】

【0012】
<4> 前記(C)無機充填剤は、最大粒径が50μm以下であり、粒径が4μm以下である無機充填剤の含有率が、無機充填剤の総質量中において15質量%以上50質量%以下である上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材。
【0013】
<5> 回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された素子と、前記基板と前記素子の間に配置された上記<1>〜<4>のいずれか1項に記載のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の硬化物とを備える電子部品装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低温短時間での硬化が可能であり、硬化前の樹脂組成物が低粘度で、狭いギャップでも充填可能あり、樹脂組成物の硬化物が高Tgで耐温度サイクル性に優れ、またチップを保護するために不可欠なフィレット形成性に優れたアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材を提供することができる。またこのアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材を用いて素子を封止することで、成形性、信頼性に優れる電子部品装置を得ることができることから、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材>
本発明のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材(以下、単に「エポキシ樹脂液状封止材」ともいう)は、(A)下記一般式(I)で示される化合物及び下記一般式(II)で示される化合物を含むエポキシ樹脂と、(B)下記化学式(III)で示される酸無水物を含む硬化剤と、(C)無機充填剤とを含有し、前記(C)無機充填剤の含有量が全体の50質量%以上78質量%以下の範囲である。また前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は必要に応じてその他の成分を更に含んでいてもよい。
かかる構成であることで、低温短時間での硬化が可能であり、充填時における低粘度と、硬化後の高Tgを両立することが出来る。さらに充填時のフィレット形成性に優れる。
なお、本発明における液状とは、常温(25℃)において液状であることを意味する。具体的には、25℃において、E型粘度計で測定される粘度が1000Pa・s以下であることを意味する。
【0016】
【化3】

【0017】
一般式(I)及び一般式(II)において、グリシジルオキシ基の置換位置は置換可能である限り特に制限されない。
【0018】
(A)エポキシ樹脂
本発明における(A)エポキシ樹脂は、上記の一般式(I)で示される化合物及び上記一般式(II)で示される化合物の両方を含有し、必要に応じて、一般式(I)で示される化合物及び上記一般式(II)で示される化合物以外のその他のエポキシ樹脂を含んで構成される。
【0019】
上記一般式(I)で示される化合物(以下、単に「エポキシ樹脂I」ともいう)は、市販品として例えば、jER630(三菱化学株式会社製、商品名)として入手可能である。
【0020】
また、上記一般式(II)で示される化合物(以下、単に「エポキシ樹脂II」ともいう)としては、市販品として、例えば、EP4088S(株式会社ADEKA製、商品名)として入手可能である。エポキシ樹脂IIを含有することにより、低粘度かつフィレット形成性が良好となる。
【0021】
前記エポキシ樹脂Iの含有率は特に制限されない。エポキシ樹脂Iの含有率は、例えばエポキシ樹脂全量中に、高Tg化の観点から40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、さらに低温短時間での硬化を達成するために、55質量%以上であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂Iの含有率の上限値は特に制限されない。例えば80質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
また前記エポキシ樹脂IIの含有率は特に制限されない。エポキシ樹脂IIの含有率は、例えばエポキシ樹脂全量中に、低粘度化、フィレット形成性向上の観点から5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがさらに好ましい。
10質量%以上含有することで、フィレット成形性が向上する。40質量%以下とし、エポキシ樹脂Iの配合量を相対的に増加させることで、高Tgや硬化性をより向上させることができる。
【0023】
前記エポキシ樹脂におけるエポキシ樹脂Iとエポキシ樹脂IIの含有比(エポキシ樹脂II/エポキシ樹脂I)は特に制限されない。高Tgやフィレット成形性の観点から、0.05〜1.3であることが好ましく、0.1〜1.0であることがより好ましく、0.3〜0.4であることがさらに好ましい。
【0024】
なお、エポキシ樹脂として上記必須のエポキシ樹脂I及びエポキシ樹脂II以外のその他のエポキシ樹脂を併用してもよい。その他のエポキシ樹脂は、液状エポキシ樹脂であることが好ましいが、本発明の効果が達成される範囲内であれば固形エポキシ樹脂を併用することもできる。
その他のエポキシ樹脂としては特に限定されるものではないが、例えば、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、水添ビスフェノールA等のジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂を代表とするフェノール類とアルデヒド類のノボラック樹脂をエポキシ化したもの;フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のアミン化合物とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸により酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂及び脂環族エポキシ樹脂などが挙げられる。
これらは1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、液状のナフタレン型エポキシ樹脂が低温短時間硬化可能で、高Tgを得られる点から特に好ましい。
【0025】
その他のエポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されない。中でも低温短時間での硬化及び低粘度の観点から、50以上200以下であることが好ましく、60以上190以下であることがより好ましく、70以上180以下であることがさらに好ましい。
【0026】
上記エポキシ樹脂が、その他のエポキシ樹脂を含む場合、その含有率は、エポキシ樹脂全量中に、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。20質量%以下とすることで、エポキシ樹脂I及びエポキシ樹脂IIを含有することによる効果を充分に得ることができ、フィレット成形性が向上し、また高Tgが達成しやすくなる。
さらに、上記エポキシ樹脂が、その他のエポキシ樹脂として固形エポキシ樹脂を含む場合、その含有率は、成形時の流動性の観点から、エポキシ樹脂全量中に、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0027】
上記エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂Iの含有率が40質量%以上80質量%以下であり、エポキシ樹脂IIの含有率が10質量%以上40質量%以下であり、その他のエポキシ樹脂の含有率が10質量%以上20質量%以下であることが好ましく、エポキシ樹脂Iの含有率が55質量%以上65質量%以下であり、エポキシ樹脂IIの含有率が20質量%以上30質量%以下であり、その他のエポキシ樹脂として液状のナフタレン型エポキシ樹脂の含有率が10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
さらに、これらのエポキシ樹脂の純度、特に加水分解性塩素量は、ICなど素子上のアルミ配線の腐食に係わるため少ない方が好ましく、耐湿性の優れたアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材を得るためには500ppm以下であることが好ましい。ここで、加水分解性塩素量とは試料のエポキシ樹脂1gをジオキサン30mlに溶解し、1M−KOHメタノール溶液5mlを添加して30分間リフラックス後、電位差滴定により求めた値を尺度としたものである。
【0029】
アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材におけるエポキシ樹脂の含有率は特に制限されない。エポキシ樹脂の含有率は、低粘度、高流動性の観点から、無機充填剤を除くアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材全量中に30質量%以上45質量%以下であることが好ましく、35質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。
【0030】
(B)硬化剤
硬化剤は、上記化学式(III)で示される酸無水物を含み、必要に応じてその他の硬化剤を含んで構成される。
上記一般式(III)で示される酸無水物としては、市販品として例えば、YH1120(三菱化学株式会社製、商品名)として入手可能である。以下、上記一般式(III)で示される酸無水物を硬化剤Iとも称する。
【0031】
前記硬化剤Iの含有率は特に制限されない。硬化剤Iの含有率は、低粘度の観点から、硬化剤全量中に25質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
硬化剤Iの含有率の上限は特に制限されない。例えば硬化剤全量中に45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
また上記硬化剤は、本発明の効果が達成される範囲内であれば、硬化剤Iに加えて、硬化剤I以外のその他の硬化剤を含んでもよい。その他の硬化剤としては、例えば、硬化剤I以外の酸無水物硬化剤、液状芳香族アミン硬化剤、フェノール性硬化剤などのエポキシ樹脂液状封止材用として一般に使用されている硬化剤を挙げることができる。またその他の硬化剤は液状硬化剤であっても、固形硬化剤であってもよく、液状硬化剤であることが好ましい。
【0033】
その他の硬化剤としては、低温短時間硬化の観点から、酸無水物硬化剤が好ましい。酸無水物硬化剤として、エポキシ樹脂硬化剤として一般に使用されているものを硬化剤Iと併用することができる。例えば、無水ハイミック酸、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水メチルハイミック酸、無水コハク酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸−無水マレイン酸付加物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、水素化メチルナジック酸無水物等の酸無水物化合物などが挙げられる。中でも、粘度や硬化性などのバランスの観点からは、硬化剤Iと無水ハイミック酸を併用することが好ましい。
【0034】
硬化剤がその他の硬化剤を含む場合、その他の硬化剤の含有率は、高Tgの観点から、硬化剤全量中に50質量%以上80質量%以下であることが好ましく、60質量%以上70質量%以下であることがより好ましい。
【0035】
アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材における(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比は特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑えるために、エポキシ樹脂に対して硬化剤を0.7当量以上1.6当量以下の範囲に設定することが好ましく、0.8当量以上1.4当量以下の範囲がより好ましく、0.9当量以上1.2当量以下の範囲がさらに好ましい。
【0036】
(C)無機充填剤
アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、無機充填剤の少なくとも1種を含み、無機充填剤の含有率がアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の総質量中に50質量%以上78質量%以下である。
【0037】
無機充填剤としては、例えば、溶融シリカ、合成シリカ、結晶シリカ等のシリカ、炭酸カルシウム、クレー、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミ、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛などの粉体、又はこれらを球形化したビーズ、及びガラス繊維などが挙げられる。
【0038】
これらの無機充填剤は、1種単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも溶融シリカが好ましく、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の微細間隙への流動性・浸透性の観点から、球形シリカがより好ましい。
また、これらの無機充填剤は、必要に応じて表面をあらかじめカップリング剤などで処理してもよい。
【0039】
無機充填剤の含有率はアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の全量中に、50質量%以上78質量%以下であるが、60質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
無機充填剤の含有率が50質量%未満であると、充分な信頼性が得られない場合がある。また無機充填剤の含有率が78質量%を越えるとアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の粘度が上昇し、高粘度化することによる流動性・浸透性およびフィレット形成性が低下する場合がある。
【0040】
無機充填剤の最大粒径は特に制限されない。無機充填剤の最大粒径は、高充填と低粘度の両立及びフィレット成形性の観点から、50μm以下であることが好ましく、40μm以下であることがより好ましく、30μm以下であることがさらに好ましい。
なお、本発明において、平均粒径及び最大粒径はレーザー光回折法による粒度分布測定により得ることができ、平均粒径は重量平均値として求めることができる。
【0041】
また無機充填剤は、高充填と低粘度の両立及びフィレット成形性の観点から、粒子径が4μm以下である無機充填剤粒子の含有率が、無機充填剤の全量中において15質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上40質量%以下であることがさらに好ましい。
かかる無機充填剤の構成は、レーザー光回折法を用いて重量累積粒径分布を測定することで確認することができる。
【0042】
(D)潜在性硬化促進剤
前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、硬化促進剤の少なくとも1種を含有することが好ましく、潜在性硬化促進剤の少なくとも1種を含有することがより好ましい。硬化促進剤として潜在性硬化促進剤を含むことで、硬化性とポットライフをより高いレベルで両立することができる。
ここで潜在性硬化促進剤とは、ある特定の条件下(温度など)で硬化促進機能が発現されるものである。潜在性硬化促進剤としては例えば、通常の硬化促進剤をマイクロカプセルなどで保護したもの、硬化促進剤と各種化合物とが塩を形成した構造のものなどが挙げられる。
このような潜在性硬化促進剤においては、例えば、特定の温度を超えるとマイクロカプセルや塩から硬化促進剤が系中に放出され、硬化促進機能を発現する。
【0043】
潜在性硬化剤の例としては、アミン化合物とエポキシ化合物の反応生成物(アミンーエポキシアダクト系)、アミン化合物とイソシアネート化合物または、尿素化合物との反応生成物(尿素型アダクト系)が挙げられ、市販品としてアミキュア(味の素株式会社製、登録商標)を挙げることができる。また、マイクロカプセル化されたアミンをフェノール樹脂に分散させたノバキュア(旭化成イーマテリアルズ株式会社製、登録商標)などが挙げられる。
さらには、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材に不溶な固体粒子であって、加熱成形時に解離して硬化促進作用を発現するアミン化合物と有機酸との塩類、アミン化合物又はリン化合物にπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物が潜在性硬化剤として使用できる。
【0044】
潜在性硬化剤を具体的に例示すれば、1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザ−ビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5−エン、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビジクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン等のシクロアミジン化合物と有機酸との塩;トリエチレンアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミンエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物の誘導体;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物の誘導体;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる、分子内分極を有するリン化合物及びこれらの誘導体;トリフェニルホスフィントリフェニルボロン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらの潜在性硬化剤は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせてもよい。
【0045】
なかでも潜在性硬化促進剤としては、低温速硬化性の観点から、シクロアミジン化合物の有機酸塩が好ましく、下記化学式(IV)で示される1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エンの有機酸及び下記化学式(V)で示される1,5−ジアザ−ビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5−エンの有機酸塩の少なくとも1種がより好ましい。
【0046】
【化4】

【0047】
上記塩を構成する有機酸としては特に制限されず、通常用いられる有機酸から適宜選択することができる。上記塩を構成する有機酸としては、大きくフェノール化合物、脂肪族カルボキシ化合物、芳香族カルボキシ化合物に分けられる。
フェノール化合物としては、特に制限はないが、例えばフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、チオジフェノール、アミノフェノール等のフェノール類及びα―ナフトール、β―ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類から選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;フェノール類及びナフトール類から選ばれる少なくとも1種と、ジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるフェノール・アラルキル樹脂;ナフトール・アラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;フェノール・ノボラック構造とフェノール・アラルキル樹脂がランダム・ブロック又は交互に繰り返された共重合型フェノール・アラルキル樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂などが挙げられる。
また脂肪族カルボキシ化合物としては、シュウ酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、L−アスコルビン酸などが挙げられる。
芳香族カルボキシ化合物としては、サリチル酸、没食子酸、安息香酸、フタル酸、ケイ皮酸、メリト酸、オキソカルボン酸、ピルビン酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、アミノ酸などが挙げられる。
【0048】
アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材が潜在性硬化促進剤を含む場合の潜在性硬化促進剤の含有率は特に制限されない。潜在性硬化促進剤の含有率は、エポキシ樹脂全量に対して、3質量%以上が好ましく、3質量%以上20質量%以下がより好ましい。3質量%以上とすることで、充分な硬化性が得られる。
【0049】
(カップリング剤)
前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、必要に応じてカップリング剤の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。カップリング剤を含むことで樹脂と無機充填剤又は樹脂と電子部品の構成部材との界面接着をより強固にすることができる。
カップリング剤には特に制限はなく、従来公知のものから適宜選択して用いることができる。例えば、1級アミノ基、2級アミノ基及び3級アミノ基からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するアミノシラン、エポキシシラン、メルカプトシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン系化合物;チタネート系化合物などが挙げられる。
【0050】
カップリング剤を具体的に例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(N−メチルアニリノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(N−エチルアニリノ)プロピルトリメトキシシラン、γ−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジブチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、γ−(N−メチルアニリノ)プロピルトリエトキシシラン、γ−(N−エチルアニリノ)プロピルトリエトキシシラン、γ−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N,N−ジブチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−メチルアニリノ)プロピルメチルジメトキシシラン、γ−(N−エチルアニリノ)プロピルメチルジメトキシシラン、N−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のシラン系カップリング剤;
イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
(イオントラップ剤)
前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、必要に応じてイオントラップ剤の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。イオントラップ剤を含むことでIC等の半導体素子の耐マイグレーション性、耐湿性及び高温放置特性を向上させることができる。
イオントラップ剤としては特に制限されず、通常用いられるものから適宜選択して用いることができる。中でもイオンとラップ剤は、下記組成式(1)で表される化合物及び組成式(2)で表される化合物の少なくとも1種であることが好ましい。
Mg1−XAl(OH)(COX/2・mHO ・・・(1)
(0<X≦0.5、mは正の数)
BiO(OH)(NO ・・・(2)
(0.9≦x≦1.1、 0.6≦y≦0.8、 0.2≦z≦0.4)
【0052】
これらイオントラップ剤の含有率としては、無機充填剤を除くエポキシ樹脂液状封止材全量に対し0.1質量%以上5.0質量%以下が好ましく、さらに好ましくは1.0質量%以上3.0質量%以下である。
イオントラップ剤の平均粒径は0.1μm以上3.0μm以下が好ましく、最大粒径は10μm以下が好ましい。
【0053】
なお、上記組成式(1)の化合物は市販品として(協和化学工業株式会社製商品名DHT−4A)として入手可能である。また組成式(2)の化合物は市販品として(東亞合成株式会社製商品名IXE500)として入手可能である。
またイオントラップ剤として、必要に応じてその他の陰イオン交換体を添加することもできる。陰イオン交換体としては特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。たとえば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、アンチモンなどから選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
(界面活性剤)
前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、必要に応じて、非イオン性の界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。非イオン性の界面活性剤を含むことでフィレット性をより向上させることができる。
非イオン性の界面活性剤としては特に制限はなく、通常用いられる非イオン性界面活性剤から適宜選択することができる。
【0055】
例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系、ソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル系、グリセリン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル系、ポリオキシエチレンアルキルアミン系、アルキルアルカノールアミド系、ポリエーテル変性シリコーン系、アラルキル変性シリコーン系、ポリエステル変性シリコーン系、ポリアクリル系などの界面活性剤が挙げられる。
なかでもポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤およびアラルキル変性シリコーン系界面活性剤がアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の表面張力低減により効果的である。これらの界面活性剤は、例えば、市販品としてBYK−307、BYK−333、BYK−377、BYK−323(ビックケミー・ジャパン製商品名)などが入手可能である。
【0056】
さらに、界面活性剤としてシリコーン変性エポキシ樹脂を添加することができる。シリコーン変性エポキシ樹脂はエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンとエポキシ樹脂との反応物として得ることができるが、常温で液状であることが好ましい。ここでエポキシ基と反応する官能基を有するオルガノシロキサンを例示すれば、アミノ基、カルボキシル基、水酸基、フェノール性水酸基、メルカプト基などを1分子中に1個以上有するジメチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサンなどが挙げられる。これらのオルガノシロキサンは、例えば、市販品として東レ・ダウコーニング株式会社製商品名BY16−799、BY16−871、BY16−004や信越化学株式会社製商品名X−22−1821、KF−8010などが入手可能である。
【0057】
シリコーン変性エポキシ樹脂を構成するオルガノシロキサンの重量平均分子量としては500以上5000以下の範囲が好ましく、100以上3000以下の範囲がより好ましい。この理由としては500以上とすることで添加剤としての効果が充分に発揮することができ、5000以下とすることで成形時に分離・染み出しの発生を防止でき、接着性や外観が良好である。分子量が小さすぎると、樹脂系との相溶性が良くなりすぎて添加剤の効果が充分に発揮されにくくなる場合がある。また大きすぎると、樹脂系との相溶性が悪くなりすぎて成形時の分離・染み出しが発生しやすくなる場合がある。
なお、オルガノシロキサンの重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて通常の方法で測定される。
【0058】
シリコーン変性エポキシ樹脂を構成するエポキシ樹脂としてはアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の樹脂系に相溶するものであれば特に制限は無く、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材に一般に使用されているエポキシ樹脂を用いることができ、たとえば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ナフタレンジオール、水添ビスフェノールAなどとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール類とアルデヒド類とを縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したノボラック型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸とエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂などが挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよいが、常温液状のものが好ましい。
【0059】
前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材には、その他の添加剤として、染料、カーボンブラック等の着色剤、希釈剤、レベリング剤、消泡剤、可撓剤などを必要に応じて配合することができる。
【0060】
前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、上記必須成分に加えて必要に応じて含まれる各種成分を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法として、所定の配合量の成分を秤量し、らいかい機、ミキシングロール、プラネタリミキサなどを用いて混合、混練し、必要に応じて脱泡することによって得ることができる。
【0061】
前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の粘度は特に制限されない。中でも高流動性の観点から、25℃において1.0Pa・s以上6.0Pa・s以下であることが好ましく、2.0Pa・s以上5.0Pa・s以下であることがより好ましい。
なお、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の粘度は、E型粘度計(コーン角3°、回転数10rpm)を用いて、25℃において測定される。
【0062】
また前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、E型粘度計を用いて25℃で測定される回転数2.5rpmにおける粘度に対する回転数10rpmにおける粘度の比である揺変指数が0.5以上1.5以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましい。揺変指数が前記範囲であるとフィレット形成性がより向上する。
なお、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の粘度及び揺変指数は、エポキシ樹脂の組成及び無機充填剤の含有量などを適宜選択することで所望の範囲とすることができる。
【0063】
<電子部品装置>
電子部品装置は、回路層を有する基板と、前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された素子と、前記基板と前記素子との間隙に充填された前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の硬化物とを備える。電子部品装置は、例えば前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材により素子を封止して得ることができる。
素子が前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材によって封止されていることで、耐温度サイクル性に優れる。
【0064】
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、リジッド配線板、フレキシブル配線板、ガラス、シリコンウエハ等の支持部材に、半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、抵抗アレイ、コイル、スイッチ等の受動素子などを搭載し、必要な部分を本発明のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材で封止して得られる電子部品装置などが挙げられる。特にリジッド及びフレキシブル配線板やガラス上に形成した配線に半導体素子をバンプ接続によるフリップチップボンディングした半導体装置が対象となる。具体的な例としてはフリップチップBGA(Ball Grid Array)/LGA(Land Grid Array)やCOF(Chip On Film)等の電子部品装置が挙げられる。
【0065】
前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は信頼性に優れたフリップチップ用のアンダーフィル材として好適である。前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材が特に好適なフリップチップの分野としては、配線基板と半導体素子を接続するバンプ材質が従来の鉛含有はんだではなく、Sn−Ag−Cu系等の鉛フリーはんだを用いたフリップチップ半導体部品であり、従来の鉛はんだと比較して物性的に脆い鉛フリーはんだバンプ接続をしたフリップチップに対しても良好な信頼性を維持できる。また、ウエハーレベルCSP(Chip Scale Pachage)等のチップスケールパッケージを基板に実装する際にも本発明のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材を適用することで、信頼性の向上を図る事ができる。
【0066】
前記アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材を用いて電子部品を封止する方法としては、ディスペンス方式、注型方式、印刷方式などが挙げられる。
【実施例】
【0067】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0068】
(実施例1〜9、比較例1〜8)
液状エポキシ樹脂として、エポキシ当量95のアミノフェノールをエポキシ化して得られる液状エポキシ樹脂(エポキシ樹脂1;三菱化学株式会社製商品名jER630;エポキシ樹脂Iに該当する)、エポキシ当量167のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂2;株式会社ADEKA製商品名EP4088S;エポキシ樹脂IIに該当する)、エポキシ当量140のナフタレン型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂3;DIC株式会社製商品名HP4032D)、エポキシ当量160の環状脂肪族型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂4;新日鐵化学株式会社製商品名ZX1658GS)、エポキシ当量160のビスフェノールF型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂5;新日鐵化学株式会社製商品名YDF−8170C)、エポキシ当量172のビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂6;新日鐵化学株式会社製商品名YD−8125)を用意した。
【0069】
硬化剤として、無水酸当量170の環状酸無水物(硬化剤1;三菱化学株式会社製商品名YH1120;化学式(III)の化合物)、無水酸当量180の環状酸無水物(硬化剤2;日立化成工業株式会社製商品名MHAC、無水ハイミック酸)を、硬化促進剤として、1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エンの有機酸との塩(硬化促進剤1;サンアプロ株式会社製開発品)、1,8−ジアザ−ビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン誘導体のテトラフェニルボレート塩(硬化促進剤2;サンアプロ株式会社製商品名U−CAT5002)、1,5−ジアザ−ビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5−エンのオクチル酸塩(硬化促進剤3;サンアプロ株式会社製商品名U−CAT1102MC)、アミン系硬化促進剤(硬化促進剤4;サンアプロ株式会社製商品名U−CAT18X)、マイクロカプセル化されたアミンをビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂に分散させた硬化促進剤(硬化促進剤5;旭化成イーマテリアルズ株式会社製登録商標ノバキュアHXA3932HP)をそれぞれ用意した。
【0070】
無機充填剤として、平均粒径6.6μmの球状溶融シリカ(無機充填剤1)、平均粒径16.7μmの球状溶融シリカ(無機充填剤2)、平均粒径11.2μmの球状溶融シリカ(無機充填剤3)、平均粒径1.4μmの球状溶融シリカ(無機充填剤4)を、カップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを、着色剤としてカーボンブラック(三菱化学製商品名MA‐100)、イオントラップ剤としてビスマス系イオントラップ剤(東亞合成製商品名IXE−500)を、界面活性剤として水酸基当量750のフェノール変性シリコーン(東レ・ダウコーニング株式会社製商品名BY16−799)とビスフェノールF型液状エポキシ樹脂(YDF−8170C)を質量比1/1で反応して得られるシリコーン変性エポキシ樹脂をそれぞれ用意した。
【0071】
表1及び表2に示す組成となるように各成分を配合し、三本ロール及び真空擂潰機にて混練分散して、実施例1〜9及び比較例1〜8のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材を作製した。
なお、表中の配合単位は質量部であり、また「−」は「配合無し」を表す。
さらにエポキシ樹脂液状封止材における機充填剤の含有率(質量%)は、各成分の配合量から算出した。また無機充填剤の最大粒径、平均粒径、粒径が50μm以上の無機充填剤粒子の含有率及び粒径が4μm以下の無機充填剤粒子の含有率は、レーザー光回折法用いて重量累積粒径分布を測定することで確認することができ、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
上記で得られたエポキシ樹脂液状封止材について、以下のようにして諸特性及び各種信頼性の評価を行った。評価結果を表3及び表4に示す。
信頼性の評価に使用した電子部品装置の諸元は以下の通りである。チップサイズ10×10×0.73tmm(回路:アルミのデイジーチェーン接続、パッシベーション:ポリイミド膜(日立化成デュポンマイクロシステムズ株式会社製商品名PLH−708)、バンプ:はんだボール(Sn−Ag−Cu、直径100μm、 1934pin、)、バンプピッチ:200μm、基板:FR−5(ソルダーレジストSR7200G、日立化成工業株式会社製(商品名)、35×35×0.66tmm)、チップ/基板間のギャップ:50μmである。
【0075】
電子部品装置は、上記で得られたエポキシ樹脂液状封止材をディスペンス方式でアンダーフィルした後、150℃、10分間加熱処理して硬化することで作製した。また、各種試験片の硬化条件も同様の条件で行った。
【0076】
(1)粘度、揺変指数
エポキシ樹脂液状封止材の25℃における粘度(Pa・s)を、E型粘度計(コーン角度3°、回転数10rpm)を用いて測定した。
また揺変指数は、回転数2.5rpmで測定した場合の粘度に対する10rpmで測定した場合の粘度の比とした。
【0077】
(2)ゲルタイム
150℃の熱板上に0.05mlのエポキシ樹脂液状封止材を滴下し、スパチュラで広がりすぎないようにかき混ぜた。滴下した後、エポキシ樹脂液状封止材の粘度が上がり、スパチュラを上に持ち上げた時に糸引きなく切れるまでの時間をゲルタイム(sec.)とした。
【0078】
(3)Tg、熱膨張係数(CTE)
エポキシ樹脂液状封止材を所定条件で硬化して作製した試験片(φ4mm×20mm)を、熱機械分析装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製商品名TMAQ400)を用い、荷重15g、測定温度−30℃〜250℃、昇温速度10℃/分の条件で測定した。
またTg以下の温度範囲における熱膨張係数をCTE1、Tg以上の温度範囲における熱膨張係数をCTE2とした。
【0079】
(4)耐温度サイクル性(温度サイクル試験)
エポキシ樹脂液状封止材をアンダーフィルして作製した電子部品装置を−55℃〜125℃、各30分のヒートサイクルで1000サイクル処理し、アルミ配線及びパッドの断線不良を調査し、不良パッケージ数/評価パッケージ数で評価した。
【0080】
(5)フィレット形成率
侵入性を評価する電子部品装置を80℃のホットプレート上に水平に置いた後、アンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材を滴下した。出口側のフィレットを目視で確認し、エポキシ樹脂液状封止材のチップへの這い上がりの高さHのチップの高さHに対する比率をフィレット形成率と定義し、下式により求めた。
(フィレット形成率)=H/H×100(%)
【表3】

【0081】
【表4】

【0082】
エポキシ樹脂IIを含有しない比較例1は、粘度、揺変指数が実施例と比較して共に高く、温度サイクル試験、フィレット形成率が実施例と比較して、劣っていた。
エポキシ樹脂Iを含有しない比較例2は、粘度は低いものの、実施例と比較して揺変指数が高く、またTgが低く、温度サイクル試験、及びフィレット形成率が実施例と比較して劣っていた。
硬化剤Iを含有しない比較例3は、揺変指数が高く、温度サイクル試験、フィレット形成率が実施例と比較して劣っていた。
【0083】
無機充填剤の含有率(質量%)が40質量%である比較例4は、粘度は低いものの実施例と比較して揺変指数が高く、温度サイクル試験、フィレット形成率が実施例と比較して劣っていた。
無機充填剤の含有率(質量%)が80質量%である比較例5は、粘度、揺変指数共に顕著に高く、充填することが出来なかった。
【0084】
エポキシ樹脂IIを含まず、他のエポキシ樹脂を代替で用いた比較例6〜8については、以下の通りである。
比較例6はエポキシ樹脂IIの比較として環状脂肪族型エポキシ樹脂を用いたが、揺変指数が高く、温度サイクル試験、フィレット形成率が実施例と比較して劣っていた。
比較例7は、エポキシ樹脂IIの比較としてビスフェノールF型エポキシ樹脂を用いたが、実施例と比較して揺変指数が高く、温度サイクル試験、フィレット形成率が実施例と比較して劣っていた。
比較例8は、エポキシ樹脂IIの比較として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を用いたが粘度、揺変指数共に高く、温度サイクル試験、フィレット形成率が実施例と比較して劣っていた。
【0085】
次に、硬化促進剤が異なる実施例1〜5を比較すると、硬化促進剤1及び硬化促進剤3を含有する実施例4及び実施例5は、実施例1〜3と比較し、フィレット形成率、温度サイクル試験が特に良好な結果が得られた。
【0086】
無機充填剤の含有率(質量%)について、実施例5〜7を比較すると、含有率が50質量%である実施例6は、低粘度であり、温度サイクル性、フィレット形成率共に良好であり、含有率が75質量%である実施例7は、粘度が若干高いもののTgが高く、揺変指数が1.2と低く、温度サイクル性、フィレット形成率共に良好であり、配合量が65質量%である実施例5は、粘度、揺変指数、Tgなどが実施例6、7の中程度であり、フィレット成形率、温度サイクル性共に最も優れていた。
【0087】
無機充填剤の粒度分布などについて、実施例5、8、9を比較すると、平均粒径が小さく、4μm以下の粒子が58質量%存在する粒度分布を持つ実施例8は、粘度が高く、揺変指数が1.2と低かった。また無機充填剤の平均粒径が大きく、50μm以上の粒子が10質量%、4μm以下の無機充填剤粒子が9質量%存在する粒度分布を持つ実施例9は、低粘度であるが、最大粒径が50μm以上であった。さらに粒径4μm以下の粒径の無機充填剤粒子の含有量が15〜50質量%の範囲内であり、粒度分布のバランスに優れた実施例5が最も温度サイクル性、フィレット形成率共に優れていた。
【0088】
エポキシ樹脂のエポキシ樹脂Iとエポキシ樹脂IIの配合量について、実施例5、10、11を比較すると、エポキシ樹脂2の配合量がエポキシ樹脂全量に対し5質量%である実施例10は、Tgは高いものの、高粘度になった。エポキシ樹脂2の配合量が50質量%である実施例11は、低粘度ではあるものの、Tgが低かった。エポキシ樹脂Iの配合量が、エポキシ樹脂全体の50質量%以上であり、エポキシ樹脂IIの配合量が10〜40質量%の範囲内である実施例5が最も温度サイクル性、フィレット形成性共に優れていた。
【0089】
特に本検討の中では、一般式(I)で示されるエポキシ樹脂I及び一般式(II)で示されるエポキシ樹脂IIを併用し、かつ化学式(III)で示される硬化剤I及び化学式(IV)で示される化合物の有機酸との塩である硬化促進剤1を用い、さらに無機充填剤の配合量が50質量%以上78質量%以下を含有し、粒径が50μm以上の無機充填剤を含有せず、4μm以下の無機充填剤が無機充填剤の全量において15質量%以上50質量%以下である実施例5が、フィレット形成率が一番良好であり特性のバランスが最も優れた。また、フィレット形成には、揺変指数は1.0付近が好ましいことがいえる。
【0090】
以上のことから本発明のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材は、低温で短時間での硬化が可能であり、かつ高Tg、50μmという狭ギャップにおいてもフィレット形成性に優れ、耐温度サイクル性にも優れており、硬化時間の短縮可能かつ低粘度であるため、極めて作業性に優れるエポキシ樹脂液状封止材である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(I)で示される化合物及び下記一般式(II)で示される化合物を含むエポキシ樹脂と、(B)下記化学式(III)で示される酸無水物を含む硬化剤と、(C)無機充填剤とを含有し、前記(C)無機充填剤の含有率が総質量の50質量%以上78質量%以下の範囲であるアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材。
【化1】

【請求項2】
さらに(D)潜在性硬化促進剤を含有する請求項1に記載のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材。
【請求項3】
前記(D)潜在性硬化促進剤は、下記化学式(IV)で示される化合物及び下記化学式(V)で示される化合物の少なくとも一方の有機酸との塩である請求項2に記載のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材。
【化2】



【請求項4】
前記(C)無機充填剤は、最大粒径が50μm以下であり、粒径が4μm以下である無機充填剤粒子の含有率が、無機充填剤の総質量中において15質量%以上50質量%以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材。
【請求項5】
回路層を有する基板と、
前記基板上に配置され、前記回路層と電気的に接続された素子と、
前記基板と前記素子との間隙に充填された請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアンダーフィル用エポキシ樹脂液状封止材の硬化物と、
を備える電子部品装置。

【公開番号】特開2013−28659(P2013−28659A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163704(P2011−163704)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】