アンチザイムフレームシフトを活性化するポリアミン類似体
【課題】新規ポリアミン、その合成、及び、薬理学的、化粧品学的又は農業的な用途におけるその使用の提供。
【解決手段】ポリアミンはアンチザイム産生を誘導し、これにより、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によるポリアミン産生及び対応するポリアミントランスポーターによるポリアミン輸送が下方制御される。これらの化合物は好ましくは、ポリアミントランスポーターから独立して細胞に進入可能である。これらの化合物は薬としては、癌を含む(が、これに限定されない)、細胞増殖に関連する任意の疾患の治療に有用である。
【解決手段】ポリアミンはアンチザイム産生を誘導し、これにより、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によるポリアミン産生及び対応するポリアミントランスポーターによるポリアミン輸送が下方制御される。これらの化合物は好ましくは、ポリアミントランスポーターから独立して細胞に進入可能である。これらの化合物は薬としては、癌を含む(が、これに限定されない)、細胞増殖に関連する任意の疾患の治療に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ポリアミン、その合成、及び、薬理学的、化粧品学的又は農業的な用途におけるその使用に関する。本発明は、アンチザイム産生を誘導するポリアミンを提供し、この産生により、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によるポリアミン産生及び対応するポリアミントランスポーターによるポリアミン輸送が下方制御される。これらの化合物は好ましくは、ポリアミントランスポーターから独立して細胞に進入可能である。これらの化合物は薬としては、癌を含む(が、これに限定されない)、細胞増殖に関連する任意の疾患の治療に有用である。これらの化合物はそれ自体、免疫系の構成要素が望ましくない増殖をするような疾患の治療薬として有用であろう。また、これらの化合物は、皮膚上での毛髪の望ましくない増加の治療にも効果的であろう。本発明は、ポリアミンに関連する小分子のアンチザイム誘導モチーフを含むと予測される重要な構造的要素についても同定する。
【背景技術】
【0002】
内因性ポリアミンであるプトレッシン、スペルミジン及びスペルミンは、DNA、RNA、タンパク質及び脂質との相互作用を介して多くの必須の細胞機能に寄与する(非特許文献1〜6)。ポリアミンは、DNA複製、細胞周期調節及びタンパク質合成に関与するため、細胞増殖において必須である。細胞内ポリアミンレベルの枯渇は細胞増殖を阻害する。アンチザイムは、ポリアミンの生合成及び取り込み/導入の両方を阻害することによってポリアミンレベルを調節する。細胞ポリアミンレベルは特異的生合成、分解、取り込み及び分泌の経路により厳しく制御されるため、その機能は重要である(非特許文献7〜9)。過剰な細胞増殖は高レベルの細胞内ポリアミンと関連付けられる(非特許文献1)。分析によると、多数の腫瘍細胞型が、腫瘍を形成しない正常細胞よりも高いレベルのポリアミンを有することが示されている。ある単一の腫瘍型においては、悪性の強い腫瘍ほどポリアミンレベルが高い場合が多い(非特許文献10)。これらの理由から、細胞内ポリアミンレベルの枯渇は、未制御の又は望ましくない細胞増殖の阻害に対する魅力的なアプローチである。
【0003】
オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)は細胞ポリアミン合成の律速酵素であり、オルニチンをプトレッシンに変換する。その後、プトレッシンは、これに続くアミノプロピル基のデカルボキシル化−S−アデノシルメチオニンからの移動によってスペルミジン及びスペルミンの両方に変換される。細胞内ポリアミンレベル濃度が増大することによりアンチザイムの産生が誘導され、アンチザイムはODCに結合してこれを破壊のターゲットとすることによりODCを下方制御する。アンチザイムはポリアミンの取り込みを阻害することも示されており(非特許文献11〜13)、最近の証拠からは、アンチザイムがポリアミンの分泌を増大させる可能性があることが示唆される(非特許文献14)。従って、アンチザイムは細胞ポリアミンの蓄積を非常に効果的に制限可能である。
【0004】
アンチザイムは脊椎動物、真菌、線虫、昆虫及び真核生物において発見されている(非特許文献15)。現在、アンチザイムの3種のイソ型AZ1、AZ2及びAZ3が脊椎動物の間で同定されている。AZ1及びAZ2は共に広く組織に分布しているが、AZ2 mRNAの発現はあまり多くない。AZ3は精巣生殖細胞においてのみ発現しており(非特許文献16及び17)、その発現は精子完成初期に開始し、後期精子細胞相において終了する。アンチザイム産生は、翻訳フレームシフトとして知られるユニークな調節機構によって制御される(非特許文献18)。アンチザイム遺伝子は2つの重複するオープンリーディングフレーム(ORF)よりなる。コード領域の大部分はそのうちの第二のもの(ORF2)に含まれるが、これは開始コドンを含まない。ORF1は短いが、2つのAUG開始コドンを含む。いずれか1つの開始コドンによって翻訳が開始され得るが、通常は、翻訳を継続可能なORF1 UGA停止コドン直前で+1フレームシフトが起こらなければ、全長mRNAはほとんど形成されない。一般的にはアンチザイムは哺乳動物組織に微量存在するに過ぎない。ポリアミン及びアグマチンはフレームシフトの効率を大いに増強させることが見出されている(非特許文献19及び20)。脊椎動物は、フレームシフトを制御する3つの要素、すなわち、ORF1中のUGA停止コドン、ループの一部と共に塩基対を形成可能な、3’からORF1のUGAまでのステムループ構造、及び、ORF1の3’領域内の保存された配列モチーフを保有する(非特許文献18)。ポリアミンがこれらの構造要素と直接相互作用してフレームシフトを誘導する方法について、又は、これを誘導するか否かについては明らかではない。リボソームに関与し得る未知の媒介物が存在する可能性がある。
【0005】
ODCはホモダイマーとしてのみ酵素的に活性である、というのは、活性部位は双方のモノマーによる構造的寄与を含むからである。モノマー間の相互作用は弱く、一方、アンチザイムはODCモノマーに対して高い親和性を有する。アンチザイムが結合するとホモダイマーの接触面が破壊され、酵素的に不活性な2つのアンチザイム−ODCへテロダイマーが形成される(非特許文献21及び22)。アンチザイムによりODCモノマーはプロテオソーム(proreosome)に向かい、これにより、ユビキチン化されることなく分解される(非特許文献23及び24)。その後、アンチザイムが放出され、更なるODCモノマーと自由に相互作用して、これを触媒作用により破壊する。AZ2がODC及びポリアミンの取り込みを等しく阻害することは示されている(非特許文献25)が、AZ2イソ型がODCの分解を触媒作用により誘導することは示されていない。AZ3は最も新しく発見されたアンチザイムであって、やはりODCを阻害することが示されている(非特許文献16及び17)。
【0006】
アンチザイムは、ODCよりもアンチザイムに対してより高い親和性を有するアンチザイム阻害剤によって調節される(非特許文献26〜28)。従って、ODCは、アンチザイムから移動することにより分解から守られる可能性がある。ODCと同様に、アンチザイム阻害剤はホモダイマーを形成し、ODCと高い配列相同性を有する。しかし、ODCとはヘテロダイマーを形成せず(非特許文献29)、ODC活性を有さない。アンチザイム阻害剤は増殖刺激性繊維芽細胞中で迅速に誘導され、アンチザイムによる抑制からODCを開放することが示されている(非特許文献30)。
【0007】
フレームシフトは、アンチザイムの翻訳フレームシフト効率を測定するためのデュアルルシフェラーゼレポーター系を用いて検出することができる(非特許文献31及び32)。フレームシフト効率は、イン−フレーム翻訳効率を測定するための構成的+1フレームシフト(AZ−IF)を含有するコントロールベクター、及び、誘導的0〜+1フレームシフト(AZ1)構築体を含有するベクターを用いて平行してトランスフェクションした細胞におけるホタルルシフェラーゼとレニラ(renilla)ルシフェラーゼの活性の比率を比較することによって決定される。上記構築体においてレニラルシフェラーゼ遺伝子はホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流にあり、これらの間には、ポリアミン刺激性フレームシフトについてのmRNAシグナルを含有することが知られているアンチザイム1及び2の一部を含有する短いクローニング配列がある。96ウェルフォーマットを用い、このアッセイ系により、ポリアミン、ポリアミン類似体及び他の化合物が細胞に基づくバイオアッセイにおいてフレームシフトを誘導する効率を定量的に測定する。細胞は、基礎アンチザイムフレームシフトレベルの減少、及び、ポリアミン又は化合物に媒介される刺激に対するアンチザイムフレームシフトの感度の増大についてのスクリーニングの前に、ODCの不可逆的阻害剤であるα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)で前処理しなければならない。
【0008】
ポリアミン類似体によるアンチザイム誘導の第一の系統的評価の1つにおいて、オクタアミン、デカアミン及びドデカアミン等のオリゴアミンはアンチザイムを種々の程度に誘導することが判明した(非特許文献33)。これらのレベルは、ウェスタンブロッティングによって測定したアンチザイムの細胞レベルに相関していた。アンチザイムのレベルの差は異なるタンパク質合成速度によるものであるようであった、というのは、アンチザイムの半減期(T1/2〜75分)はポリアミン類似体に制御されないようであったからである。従って、類似体は+1翻訳フレームシフトを刺激する種々の能力を有すると推定できる。ビスエチルノルスペルミン、ビスエチルホモスペルミン及び1,19−ビス(エチルアミノ)−5,10,15−トリアザノナデカン(BE−4−4−4−4)等の多数の化合物が、アンチザイム及びスペルミジンを誘導することが分かった。しかし、3、4及び5員環等のポリアミン類似体における、又は、中央の窒素間の三重結合におけるある種の立体配座の制限により、アンチザイムの誘導に否定的な影響が及んだ。オリゴアミンの多くは、同一濃度(10μM)において試験した場合に、アンチザイム誘導力においてスペルミンよりも大幅に優れていた(super−induction)。アンチザイムフレームシフトの量は、増殖阻害の程度と相互に関連することが見出された。オリゴアミンは細胞増殖の迅速な中止を誘導し、これは、フレームシフトのsuper−inductionに起因すると推定された。しかし、著者らは、これらの化合物は他の作用機構を有していて、これによって、観察されたような細胞毒性が導かれたということにも注目した。
【0009】
いくつかのアンチザイム誘導物質もODCの酵素活性を直接阻害する可能性がある。多数のプトレッシン類似体がODCの強力な可逆的阻害剤であることが判明した。例えば、1,4−ジアミノ−トランス−2−ブテンはKi値2μMでODCを阻害し、1,4−フェニレンジアミンはKi値46μMでODCをやや弱く阻害する(非特許文献34及び35)。ODCはアンチザイムの誘導を通じて直接又は間接的に阻害されるため、上記の性質を有する化合物はポリアミンの枯渇を増強可能である。
【0010】
ポリアミンは、アンチザイムを誘導することによって、G1期において前立腺細胞増殖を阻止することができる。前立腺は、脊椎動物において輸出用のポリアミンを合成する唯一の器官である。この組織はそれ自体が高濃度のポリアミンに暴露される。スペルミンは、in vivo及びin vivoにおいて天然の前立腺癌細胞増殖阻害剤であることが判明した(非特許文献36)。続いて、スペルミンは、転移性の低い前立腺癌腫においてG1の阻止を誘導し得るが悪性の高い細胞においては誘導しないことが判明した(非特許文献37)。更に、アンチザイムは転移性の低い前立腺癌腫においてのみ誘導され得た。アンチザイムは、前立腺癌細胞の細胞周期に影響を及ぼすことが後に判明し、これに伴い、G1サイクリンD1及びその関連するサイクリン依存性キナーゼcdk4と相互作用し得ることが発見された(非特許文献38)。cdk4及びサイクリンD1の分解はin vivo精製されたプロテアソームを用いるとアンチザイムに依存しユビキチンには依存しなかった。ポリアミンレベルを培養細胞において実験的に上昇させた場合、サイクリン及びキナーゼの定常状態レベルが減少した。アンチザイムを活性化する能力を有さない前立腺細胞は結局は悪性になると提唱されている(非特許文献37)。
【0011】
多数の研究が、細胞系及び動物モデルにおいてアンチザイムの一過性及び誘導性の過剰発現に着目してきた。異所性発現した誘導性アンチザイムを用いたIwataらによる研究で抗腫瘍活性が示された(非特許文献39)。この研究において、ヌードマウスに、誘導性アンチザイムベクターを発現するH−ras形質転換NIH3T3細胞を接種した。アンチザイムの誘導によりこのマウスにおける腫瘍形成が阻害され、in vitroにて細胞の死滅が誘導された。細胞内ポリアミンレベルも測定された。プトレッシン及びスペルミンは両方とも、12時間の誘導の間に完全に枯渇した。また、スペルミンはより遅くはあったが有意に減少した。これらの観察のいくつかは、グルココルチコイド(デキサメタゾン)誘導性プロモーターを用いてHZ7細胞においてアンチザイムを発現させるという別の報告においても証明された(非特許文献40)。デキサメタゾンはこの細胞系の増殖を抑制し、プトレッシンレベルを枯渇させ、スペルミジンレベルを著しく減少させたが、スペルミンレベルには影響を及ぼさなかった。外因性プトレッシンの添加により、細胞内プトレッシンレベルが回復し、スペルミジンレベルが部分的に回復した。第三の研究において、Tsujiら(非特許文献41)は、アンチザイムを安定に発現するハムスター悪性口ケラチノサイト(HCPC−1)細胞系を開発した。アンチザイムの異所性発現により、ヌードマウスにおける腫瘍の腫瘤が約50%抑制された。in vitroにおいて、異所性発現によりアンチザイム形質転換体の倍化時間が有意に増大し、アンチザイム形質転換体は軟寒天における増殖が有意に低かった。また、G1期細胞において実質的に増加し、これに対応してS期細胞において減少した。これらの細胞は形態学的改変も示し、これは末端分化(terminal differentiation)を示唆する。これに伴って、5−メチルシトシンのDNA CCGG部位の脱メチル化が増加した。アンチザイムは、癌発達時にDNAの過剰メチル化によって休止した重要な細胞遺伝子を再び活性化することによって、腫瘍抑制における新規の機構を媒介する。別の例においては、ケラチノサイトにおいてODCを過剰発現するトランスジェニックマウスは、自然発生及び誘導性の皮膚癌を高率で発症することが示された(非特許文献42)。アンチザイムを発現するこのトランスジェニックマウスの皮膚において、誘導性皮膚腫瘍の頻度の減少が観察された(非特許文献43)。
【0012】
増殖性が高く細胞代謝回転時間が18〜23時間である組織である毛包細胞の増殖においてポリアミンが中枢的な役割を果たすことが見出された。ODCは毛包成長において機能的役割を果たし、毛包成長の特徴は、活発な増殖後に毛繊維が生産され(成長期)、退縮(退行期)を通じて増殖しない期間(休止期)に入るという周期的な変異である。マウスにでは、ODCは、外胚葉細胞中の、胚発生の間に毛包が発達する部位において発現する(非特許文献44及び45)。成長期毛包の球状細胞の増殖時、ODCは細胞ポケットの基底部以外において豊富に発現する。ODCタンパク質の発現は、毛包が退行期に入ると下方制御され、休止期においては検出されない。ODCタンパク質の発現は、新たな毛包形成の開始すると再開する。震毛(顎鬚)ではODCはより複雑な発現することが見出されている。ODCは、震毛の毛幹のケラチノサイトにおいて、並びに、毛包の膨らみ近くの球状部及び外毛根鞘細胞において発現する。対照的に、ODCの発現は毛包間表皮では非常に低い。
【0013】
多数の研究により、ODCの不可逆的阻害剤であるDMFOによるODCの阻害によって哺乳動物における毛髪成長が低下することが示されている。マウスにおいては、飲料水を介してDFMOが全身に輸送されると毛髪成長が低下することが見出された(非特許文献46)。DFMOの静脈内投与によりヒツジにおいて羊毛の成長が減少し(非特許文献47)、また、ネコ及びイヌにおけるDFMOの経口投与により脱毛症及び皮膚炎が発症した(非特許文献48)。DFMOを用いて急性Trypanosoma brucei感染(アフリカ睡眠病)を治療中のヒトにおける研究から、ODCが毛包調節に作用するという証拠が更に得られた(非特許文献49)。上記治療中の患者は、主として頭皮において脱毛の兆候を示したが、これは治療を中断した後に回復した。
【0014】
スペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼ(SSAT)又はODCを過剰発現する多数のトランスジェニックマウスの開発は、変形した組織のポリアミンプールが脱毛を導くという証拠の更なる提供に寄与した(非特許文献50、51及び42)。SSATはポリアミン代謝において重要な酵素であり、スペルミンからスペルミジンへの変換及びスペルミジンからプトレッシンへの変換の速度を制限する。トランジェニックマウスモデルは両方とも永久脱毛を示し、正常な毛包が皮膚嚢胞に変換されていて、これはマウスの老化に伴って徐々に大きくなった(非特許文献50〜52及び42)。これは、表皮の厚化及び過剰な皮膚皺襞として現れた。この各々の動物モデルに共通する表現型の特徴は、皮膚におけるプトレッシンの著しい過剰蓄積であった(非特許文献53)。ポリアミン、特にプトレッシンが高レベルであると上皮細胞の連続的増殖に好都合であり、毛包嚢の形成及び脱毛を導くことが提唱されている。プトレッシンが低レベルであると外毛根鞘ケラチノサイトの分化に好都合であり、増殖は許容されない。
【0015】
ポリアミン生合成もまた免疫担当細胞の活性化の間に必須であることが示された(非特許文献54及び55)。DFMOを用いた研究により、ポリアミン枯渇療法は免疫応答を阻害可能であり、多数の自己免疫疾患に対して奏功な療法であり得ることが確認される。液性免疫応答及び細胞媒介性免疫応答は両方とも、ポリアミン枯渇の抗増殖効果による影響を受けた。腫瘍同種移植片に暴露したマウスをDFMOで治療した結果、細胞毒性T−リンパ球及び抗体応答が変異した(非特許文献56)。Singhらによる報告は、DFMO治療もまたマウスにおいて急性致死性移植片対宿主(ALGVH)疾患を軽減できることを示す(非特許文献57)。ネズミALGVHはヒトGVHのモデルを表し、これは、ヒトにおける骨髄移植の病的状態及び死亡率に寄与していて、貧血並びにT細胞の機能及び数の減少が特徴的である。この研究において、ALGVHマウスをDFMOによって治療すると、宿主の細胞毒性T細胞及びナチュラルキラー細胞数は維持されたまま、死亡率及び貧血が軽減された。DFMOを用いるポリアミン枯渇療法は狼瘡傾向(lupus−prone)メスNZB/Wマウスに対しても有効であることが示された(非特許文献58)。抗DNA抗体の産生、免疫グロブリンG及びAの合成、タンパク尿及び血尿窒素は、治療したマウスにおいて有意に減少した。
【0016】
化学療法及び放射線療法は、急速に分裂する癌細胞を標的とするが、急速に分裂する口及び腸の上皮細胞、毛包並びに骨髄中の造血細胞にも偶発的に影響を及ぼす。口又は腸の上皮細胞が損傷して枯渇した場合、その結果として薄化及び潰瘍が発症し(粘膜炎)、疼痛及び潜在的感染が導かれる。幹細胞が損傷すると口の粘膜炎も発症する。口の組織が損傷すると、特に痛む。
【0017】
正常な条件下において、腸の内面は、絨毛の陰窩における上皮幹細胞及びその子孫の増殖を通じて連続的に再生される(非特許文献59)。損傷が起こると(例えば、放射線又は細胞毒性傷害)、損傷していない幹細胞において増殖/再生が突発する。損傷を幹細胞に制限し、再生を増強するための多数の提案がなされている。1つの戦略としては、放射線又は化学療法による治療の間に細胞周期の進行を阻止し、G0又はG1に細胞を蓄積させて損傷に対する抵抗力を強化するというものがあった。また、損傷が起こり得る前に幹細胞数を増やすこと、又は、損傷後の増殖を増大させることを含む戦略もあった(非特許文献60)。ポリアミンは、特に細胞増殖の間に、腸粘膜の正常上皮細胞及び新生物上皮細胞によって腸から取り込まれる(非特許文献61)。腸上皮細胞の増殖に対するポリアミンの関与は、ラット由来の非形質転換小腸細胞系IEC−6を用いて証明されており、ポリアミンはDNA合成を増大させた(非特許文献62)。DNAトポイソメラーゼI阻害剤である化学療法剤カンプトセシンは、IEC−6細胞においてアポトーシスを誘導することができる。しかし、ポリアミンの減少は保護効果を有する可能性がある。IEC−6細胞ポリアミンをDFMOを用いて減少させると、カンプトセシンによるアポトーシスが遅くなった(非特許文献63)。これはG1細胞周期の停止によるものであり、DFMOと共にインキュベートしたIEC−6細胞で起こることが示されている(非特許文献64)。アンチザイムの誘導を介する合成及び取り込み阻害によってポリアミンをより効果的に枯渇させることによって、放射線又は化学療法の後に粘膜炎を有意に保護することができるであろう。
【非特許文献1】Pegg,A.E.Cancer Res.48:759−774(1988)
【非特許文献2】Heby,O.ら,Trends Biochem.Sci.15:153−158(1990)
【非特許文献3】Janne,J.ら,Ann.Med.23:241−259(1991)
【非特許文献4】Brooks,W.H.Med Hypotheses 44:331−338(1995)
【非特許文献5】Igarashi,K.ら,Biochem.Biophys.Res.Commun.271:559−564(2000)
【非特許文献6】Casero,R.A.ら,J.Med.Chem.44:1−26(2001)
【非特許文献7】Heby,O.Differentiation 19:1−20(1981)
【非特許文献8】Seiler,N.ら,Int.J.Biochem.22:211−218(1990)
【非特許文献9】Seiler,N.ら,J.P.Int.J.Biochem.Cell Biol.28:843−861(1996)
【非特許文献10】Kurihara,H.ら,Neurosurgery 32:372−375(1993)
【非特許文献11】Mitchell,J.L.ら,Biochem.J 299:19−22(1994)
【非特許文献12】Suzuki,T.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8930−8934(1994)
【非特許文献13】Sakata,K.ら,Biochem.Biophys.Res.Commun 238:415−419(1997)
【非特許文献14】Sakata,K.ら,Biochem J.347:297−303(2000)
【非特許文献15】Ivanov,I.ら,Nucleic Acids Res.28:3185−3196(2000)
【非特許文献16】Ivanov,I.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:4808−4813(2000)
【非特許文献17】Tosaka,Y.ら,Genes to Cells 5:265−276(2000)
【非特許文献18】Matsufuji,S.ら,Cell 80:51−60(1995)
【非特許文献19】Hayashi,S.ら,Trends Biochem.Sci.21:27−30(1996)
【非特許文献20】Satriano,J.ら,J.Biol.Chem.273:15313−15316(1998)
【非特許文献21】Kameji,T.ら,Biochim.Biophys.Acta 717:111−117(1982)
【非特許文献22】Kern,A.D.ら,Struct.Fold.Des.7:567−581(1999)
【非特許文献23】Murakami,Y.ら,Nature 360:597−599(1992)
【非特許文献24】Tokunaga,F.ら,J.Biol.Chem.269:17382−17385(1994)
【非特許文献25】Zhu,C.ら,J.Biol.Chem.274:26425−26430(1999)
【非特許文献26】Fujita,K.ら,J.Biol.Chem.274:26424−26430(1982)
【非特許文献27】Kitani,T.ら,Biochim.Biophys.Acta 991:44−49(1989)
【非特許文献28】Murakami,Y.ら,Biochem.J.259:839−845(1989)
【非特許文献29】Murakami,Y.ら,J.Biol.Chem.271:3340−3342(1996)
【非特許文献30】Nilsson,J.ら,Biochem.,J.346:699−704(2000)
【非特許文献31】Grentzmann,G.ら,RNA 4:479−486(1998)
【非特許文献32】Howard,M.ら,Genes to Cells 6:931−941(2001)
【非特許文献33】Mitchell,J.L.A.ら,Biochem.J.Vol.366,p.663−671,2002
【非特許文献34】Relyea,N.ら,Biochem.Biophys.Res.Comm.67:392−402(1975)
【非特許文献35】Solano,F.ら,Int.J.Biochem.20:463−470(1988)
【非特許文献36】Smith,R.C.ら,Nature Med.1:1040−1045(1995)
【非特許文献37】Koike,C ら,Cancer Res.59:6109−6112,(1999)
【非特許文献38】Coffino,P.Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.2:188−194(2001)
【非特許文献39】Iwata,S.ら,Oncogene 18:165−172(1999)
【非特許文献40】Murakami,Y.ら,Biochem.J.304:183−187(1994)
【非特許文献41】Tsuji,T.ら,Oncogene 20:24−33(2001)
【非特許文献42】Megosh,L.ら,Cancer Res.55:4205−4209(1995)
【非特許文献43】Feith,D.ら,Cancer Res.61:6073−6081(2001)
【非特許文献44】Nancarrow,M.J.,ら,Mech.Dev.84:161−164(1999)
【非特許文献45】Schweizer,J.In:Molecular Biology of the Skin:The Keratinocyte,Darmon Mら,Eds,Academic Press,New York,1993,pp33−78
【非特許文献46】Takigawa,M.ら,Cancer Res,43:3732−3738(1983)
【非特許文献47】Hynd,P.I.ら,J.Invest.Dermatol.106:249−253(1996)
【非特許文献48】Crowell,J.A.ら,Fundam.Appl.Toxicol.22:341−354(1994)
【非特許文献49】Pepin,J.ら.Lancet 2:1431−1433(1987)
【非特許文献50】Pietila,M.ら,J.Biol.Chem.272:18746−18751(1997)
【非特許文献51】Suppola,S.ら,Biochemistry 7338:311−316(1999)
【非特許文献52】Soler,A.P.ら,J.Invest.Dermatol.106,1108−1113(1996)
【非特許文献53】Pietila,M.ら,J.Invest.Dermatol.116:801−805(2001)
【非特許文献54】Fillingame,R.H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 72:4042−4045,(1975)
【非特許文献55】Korpela,H.ら,Biochem.J.196:733−738(1981)
【非特許文献56】Ehrke,J.M.ら,Cancer Res.46:2798−2803(1986)
【非特許文献57】Singh,A.B.ら,Clin.Immunol.Immunopathol.65:242−246(1992)
【非特許文献58】Thomas,T.J.ら,J.Rheumatol.18:215−222(1991)
【非特許文献59】Booth,D,ら,J Natl Cancer Inst Monogr 29:16−20(2001)
【非特許文献60】Farrell,C.L.ら,Cancer Res.58:933−939(1998)
【非特許文献61】Milovic V.ら,Eur J Gastroenterol Hepathl.13:1021−5(2001)
【非特許文献62】Olaya,J.ら,In Vitro Cell Dev Biol.Anim.35:43−8,(1999)
【非特許文献63】Ray,R.M.ら,Am J Physiol Cell Physiol 278:C480−489(2000)
【非特許文献64】Ray R.M.ら,Am.J.Physiol.276:C684−91(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
理想的には、ポリアミン類似体は、in vitroにおけるDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力といったポリアミンの正常な生理的機能が変化していてはならない。また、これらの化合物は容易に代謝されずにポリアミンを再生しないことが望ましい。細胞内ポリアミンレベルの枯渇には、フレームシフトの誘導により最終的に全長アンチザイムタンパク質レベルを増大させる化合物の同定が有用であろう。これらの化合物は、癌を含む(が、これに限定されない)細胞増殖に関連する任意の疾患に対して効果的な療法であろう。これらは、それ自体、免疫系の構成要素が望ましくない増殖をするような多くの疾患において薬として有用である。例としては、喘息、炎症、自己免疫疾患、乾癬、再発狭窄症、慢性関節リウマチ、強皮症、全身性及び皮膚狼瘡エリテマトーデス、I型インスリン依存性糖尿病、組織移植、骨粗鬆症、上皮小体機能亢進症、消化性潰瘍の治療、緑内障、アルツハイマー病、クローン病及び他の炎症性腸疾患が含まれるが、これらに限定されない。また、真菌、細菌、ウイルス、及び、アフリカ睡眠病等の寄生虫因子の増殖に関連する他の病状も含まれる。これらの化合物は、皮膚上での毛髪の望ましくない増加の治療においても効果的であろう。アンチザイム誘導物質は、放射線又は化学療法による治療の間に細胞周期の進行を休止させることによって、細胞周期に関与する疾患の治療において有用であろう。好適な細胞はG0又はG1において蓄積し、これらを放射線又は化学療法誘導性の脱毛(脱毛症)及び粘膜炎から保護する。
【0019】
(図面の簡単な説明)
図1 多数のポリアミン類似体A〜S(25μM)について、アンチザイムフレームシフト誘導力をデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより試験した表である。
図2 HEK−293細胞において種々の化合物25μMに誘導されるフレームシフトを示す。
図3 HEK−293細胞における種々の化合物による用量依存性のフレームシフト誘導を示す。
図4 化合物AによるHEK−293細胞の増殖阻害を示す。
図5 HEK−293細胞における6日間のアッセイにおいて、アンチザイムフレームシフト物質(25μM)がDFMO 2.5mMに誘導される増殖阻害から細胞を保護する能力を、25μMスペルミジン(SPD)と比較したものである。
図6 化合物Aを6日間インキュベートしたことによる、HEK−293細胞ポリアミンレベル及び細胞増殖に対する影響を示すグラフである。
図7 化合物AのHEK−293細胞内濃度に及ぼす細胞外の化合物Aの影響を、HPLCで測定したものを示す。
図8 化合物Aの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)CH2=CHCN 1.2当量、CH3OH、(b)LiAlH4のTHF液。
図9 化合物Bの合成についての反応スキームを示す。
図10 図11のための中間体R基の合成についての反応スキームを示す。
図11 化合物C〜Rの合成についての反応スキームを示す。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示において使用可能な類似体及び誘導体は下記式I:
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):に包含されるものを含む。
【0023】
上記化合物は、天然ポリアミンの機能を変化させることなく全長アンチザイムの発現を誘導する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、本開示において使用可能な類似体及び誘導体は、式II:
【0025】
【化2】
【0026】
(式中、nは0〜8であってよく、R及びR1は上記の通りであり、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):に示すように更に修飾することができる。
【0027】
本開示において使用可能な化合物の別の好ましい実施形態を、式III:
【0028】
【化3】
【0029】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):に示す。
【0030】
本発明の別の態様は、式IV:
【0031】
【化4】
【0032】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):の化合物である。
【0033】
本発明の更なる態様において、本発明の化合物は、式V:
【0034】
【化5】
【0035】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):で表される。
【0036】
本開示は上記式I、II、III、IV及びVの新規化合物にも関するが、上記新規化合物は不斉置換キシレン誘導体である。
【0037】
言い換えると、式I中において、:
【0038】
【化6】
【0039】
:は、:
【0040】
【化7】
【0041】
:とは異なる。式II中において、:
【0042】
【化8】
【0043】
:は、:
【0044】
【化9】
【0045】
:とは異なり、式III中において、:
【0046】
【化10】
【0047】
:は、:
【0048】
【化11】
【0049】
:とは異なる。
【0050】
本開示による好ましい新規化合物は、キシレン環の一方側のみが−CH2NH2以外の基を含む化合物であり、最も好ましい化合物は図1に示すB、T及びUである。
【0051】
ポリアミン類似体は薬として、細胞ポリアミンレベルを減少させ、望ましくない細胞増殖(癌を含む)、ウイルス感染及び細菌感染の障害の治療に使用可能である。また本発明は、ポリアミン類似体を酵素分解抵抗性となるように修飾することによる、ポリアミン類似体の安定化を含む。このような修飾はアルキル基における第一級アミン基の置換、アルキル基の末端アミノ基への付加、及び、フッ素原子μの末端アミノ基への付加を含む。
【0052】
また、本発明のポリアミン類似体は、アンチザイムに調節される活性ポリアミン輸送経路以外の経路で細胞に進入するのが望ましい。従って、本発明の更なる実施形態は、細胞内への導入がポリアミントランスポーターの介入を主としない類似体である。フレームシフト活性は、良好なアンチザイム誘導物質としての唯一の必要条件である。本発明によれば、上記化合物はポリアミントランスポーターから独立して細胞に進入するのが好ましい、というのは、アンチザイムの発現によってポリアミン輸送が阻害されることが知られているからである。本発明者らは、候補として理想的な物質は、in vitroにおけるDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力といったポリアミンの正常な生理的機能が変化していてはならないと定めた。更に、本発明によれば、これらの化合物は容易に代謝されずにポリアミンを再生しないことが望ましい。本発明によれば、ポリアミンと置き換わることができるような、又は、分解してポリアミンになるような、フレームシフト活性を有する任意の化合物は、ポリアミンレベルの低減という目的を阻止することが予想されると考えられる。本発明者らの決定によれば、上記化合物は、アンチザイムフレームシフト活性に対して選択的であり、ODC又はSSAT等のポリアミン調節に関連する生合成酵素又は異化酵素に対してほとんど親和性を呈しない。上記範疇に適合する化合物は、フレームシフトを誘導すると知られる濃度において細胞内ポリアミンレベルを枯渇させるであろう。
【0053】
また、本発明は、有効量の少なくとも1つの上記開示化合物を含む医薬組成物に関する。
【0054】
本発明の更なる態様は、上記化合物の少なくとも1つの投与による細胞増殖に関連する状態の治療に関する。
【0055】
また、本開示は、図1に示すB、T又はUの少なくとも1つの投与を含む、細胞増殖に関連する1以上の状態の治療にも関する。上記状態は、癌、粘膜炎、喘息、炎症、自己免疫疾患、乾癬、再発狭窄症、慢性関節リウマチ、強皮症、全身性及び皮膚狼瘡エリテマトーデス、I型インスリン依存型糖尿病、組織移植、骨粗鬆症、上皮小体機能亢進症、消化性潰瘍の治療、緑内障、アルツハイマー病及び炎症性腸疾患からなる群より選択される状態を含むが、これらに限定されない。
【0056】
上記投与は例えば全身に対して実施可能であり、経口であってよい。更に上記投与は、望ましい場合には、徐放性ビヒクルを介するものであってよい。また、望ましい場合には、化合物R及びSは化粧品として調製することができる。
【0057】
本発明の別の態様は、図1に示すB、T又はUの少なくとも1つを毛髪成長抑制を必要とする対象に局所投与することを含む、毛髪成長の抑制に関する。
【0058】
また、本発明は、図面に示すB、T又はUの少なくとも1つを、放射線又は化学療法を受けている対象へ局所投与することを含む脱毛(脱毛症)の阻害に関する。
【0059】
また、化合物B、T及びUを用いて、真菌、細菌、ウイルス及び寄生虫因子に起因する状態を治療することもできる。
【0060】
下記に列挙したものは、本発明を説明するために用いられる種々の用語の定義である。これらの定義は、別途個別に、又は、まとまった語群のうちの一部として特定の例において限定されていない限り、本明細書を通して、用語が使用されている通りにそのまま適用されるものである。
【0061】
「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、ビフェニル及びジフェニル及びジフェニル基等の、環内に6〜12個の炭素原子を含有する単環式又は二環式の芳香族炭化水素基を指し、それぞれの基は置換基を有していてもよい。
【0062】
「アルキル」という用語は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖の無置換炭化水素基を指す。「低級アルキル」という表現は、1〜4個の炭素原子を有する無置換のアルキル基を指す。
【0063】
好適なアルキル基の例にはメチル、エチル及びプロピルが含まれる。分枝アルキル基の例にはイソプロピル及びt−ブチルが含まれる。
【0064】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0065】
アルコキシ基は典型的には炭素原子約1〜8個を含み、より典型的には炭素原子約1〜4個を含む。好適なアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ及びプロポキシである。
【0066】
好適なアルカリール基の例には、ベンジル等のフェニルC1−3アルキルが含まれる。
【0067】
置換基の例としては、NO2、アルキル、CF3、アルコキシ及びハロがある。
【0068】
好適なシクロアルキル基の例は典型的には炭素原子3〜8個を含むものであり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが含まれる。
【0069】
縮合二環式不飽和環基の例としては、2−キノリニル、3−キノリニル、5−キノリニル、6−キノリニル、7−キノリニル、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、6−イソキノリニル、7−イソキノリニル、3−シノリル、6−シノリル、7−シノリル、2−キナゾリニル、4−キナゾリニル、6−キナゾリニル、7−キナゾリニル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、6−キノキサリニル、1−フタラオニル、6−フタラジニル、1,5−ナフチリジン−2−イル、1,5−ナフチリジン−3−イル、1,6−ナフチリジン−3−イル、1,6−ナフチリジン−7−イル、1,7−ナフチリジン3−イル、1,7−ナフチリジン−6−イル、1,8−ナフチリジン−3−イル、2,6−ナフチリジン−6−イル、2,7−ナフチリジン−3−イル、インドリル、1H−インダゾリル、プリニル及びプテリジニルがある。縮合環基の各々についての置換は本明細書中に記載する置換基の上記基を含む。
【0070】
単環及び多環基の例としては、アリール及び二環式縮合アリール−シクロアルキル基が含まれる。アリール基は、一緒に縮合した、又は、共有結合した多環(上限3環)の1つの環であってよい芳香族置換基を含む。環は各々、N、O及びSから選択される0〜4個のヘテロ原子を含んでよく、窒素及び硫黄原子は任意に酸化されており、窒素原子は任意に四級化されている。アリール基の例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル及び6−キノリルが含まれるが、これらに限定されない。上記アリール系の各々についての置換は本明細書中に記載する置換基の上記基を含む。
【0071】
「二環式縮合アリール−シクロアルキル」基は、アリール環(又は多環)が(シクロヘテロアルキル基を含む)シクロアルキル基に縮合した基である。上記基は、上記基のアリール部分の使用可能な原子価、又は、上記基のシクロアルキル部分の使用可能な原子価のいずれかを通じて分子の残り部分に結合できる。この例には、ベンゾテトラヒドロピラニル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフチルが含まれる。上記基の各々についての置換基は本明細書中に記載する置換基の基を含む。
【0072】
本発明の化合物は、個々の治療薬としての医薬品、又は、治療薬の組み合わせとしての医薬品と併用できる任意の従来手段によって投与することができる。本発明の化合物は単独で投与することができるが、一般に、選択された投与経路及び薬学的な標準的慣例に基づいて選択された医薬品用担体と共に投与される。
【0073】
本発明は、上記式で示すポリアミン及び誘導体の、遊離塩基型又は遊離酸型(その塩も含む)のものを含む。更に本発明は、上記類似体及び誘導体の光学異性体をも含む。本発明の更に他の実施形態においては、単一の準備段階、組み合わせ又は相互転換の結果生じるエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物が包含される。
【0074】
種々の窒素系官能基(アミノ、ヒドロキシアミノ、ヒドラジノ、グアジニノ、アミジノ、アミド等)を有する化合物のプロドラッグの形態としては下記の種の誘導体が含まれていてもよく、R基はそれぞれ独立に、上述するように、水素、置換又は無置換のアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、複素環、アルキルアリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル又はシクロアルケニルであってもよい。
(a)カルボキサミド類、−NHC(O)R
(b)カルバミン酸エステル類、−NHC(O)OR
(c)カルバミン酸(アシルオキシ)アルキルエステル類、NHC(O)OROC(O)R
(d)エナミン、−NHCR(=CHCRO2R)又は−NHCR(=CHCRONR2)
(e)シッフ(Schiff)塩基、−N=CR2
(f)マンニッヒ(Mannich)塩基(カルボキシイミド化合物由来)、RCONHCH2NR2
【0075】
上記プロドラッグ誘導体の調製は、種々の文献において議論されている(例えば、Alexanderら,J.Med.Chem.1988,31,318;Aligas‐Martinら,PCT WO pp/41531,p.30)。これらの誘導体を調製する際に変換される窒素系官能基は、本発明の化合物の窒素原子のうちの1つ(又は2つ以上)である。
【0076】
本発明の、カルボキシル基を有する化合物のプロドラッグ型の形態にはエステル(−CO2R)が含まれ、R基は、酵素的又は加水分解的プロセスにより体内に放出される量が医薬品に許容されるレベルである任意のアルコールに相当する。本発明のカルボン酸型化合物に由来する別のプロドラッグは、文献(Bodorら,J.Med.Chem.1980,23,469)に記載される下記4級塩型構造であってよい。
【0077】
【化12】
【0078】
本発明の化合物が、分子内で可能性のある種々の原子におけるすべての光学異性体及びステレオの異性体に関連するということは、当然である。
【0079】
本発明の方法において使用される化合物は、広範囲にわたる種々の有機酸及び無機酸並びに有機塩基及び無機塩基と共に、医薬品に許容される酸及び塩基が付加した塩を形成するものであり、その中には、薬化学において使用頻度の高い生理学的に許容される塩が含まれる。このような塩も本発明の一部である。上記塩を形成するために使用される典型的な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸等が含まれる。脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル基置換アルカン酸(alkonic acid)、ヒドロキシアルカン酸及びヒドロキシアルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等の有機酸由来の塩も使用することができる。従って、上記医薬品に許容される塩には、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン−2−ベンゾエート、臭化物、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシン−1,4−ジオエート、カプロン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、珪皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオール酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩等が含まれる。
【0080】
塩を形成するために一般に使用される塩基には、水酸化アンモニウム、並びに、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、更に1級、2級及び3級の脂肪族アミン、脂肪族ジアミンが含まれる。付加塩の調製に特に有用な塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、メチルアミン、ジエチルアミン及びエチレンジアミンが含まれる。
【0081】
本発明は、上述の化合物及び誘導体のプロドラッグをも提供するものであり、このプロドラッグはin vivoで代謝され、上述のように化合物又は誘導体が産出される。実際には、上述の化合物又は誘導体の中には、他の化合物又は誘導体のプロドラッグになりうるものもある。この筋書きは、このプロドラッグがスペルミジン合成酵素又はスペルミン合成酵素のいずれかに対する基質である場合に妥当であり、これらの酵素は各々、アミノプロピル基をプトレッシン又はスペルミジンに変換する酵素である。
【0082】
上記化合物は、単独で、又は、他の細胞増殖阻害剤を含む他の薬品、特に他のポリアミン合成又はポリアミン輸送の阻害剤と組み合わせて使用してもよい。理論上は、本発明のポリアミン化合物はアンチザイム(AZ)を誘導することによってポリアミンレベルを減少させることが可能であり、その後、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によるポリアミン産生及び対応するポリアミントランスポーターによるポリアミン輸送が下方制御される。また、アンチザイムはポリアミン排出の増大を誘導し得るため、ポリアミンレベルも減少し得る。本発明は更に、アンチザイムの誘導において重要であるとアッセイにより決定された上記化合物内部の構造的要素/モチーフを定義する。ポリアミンはDNA複製にとって絶対的に必須であり、かつ、細胞のホメオスタシスにとって必須であるため、細胞内ポリアミンレベルを減少させることによる細胞増殖の阻害に関心がもたれる。ポリアミンレベルが非常に低いと、細胞の死滅に至る可能性がある。従って、特にポリアミンの生合成及び取り込み/導入の双方の阻害によりポリアミンレベルを減少させることができる任意の薬品によって、細胞増殖に関連する種々の疾患又は望ましくない状態(癌を含む)を標的とすることが可能である。
【0083】
本発明の化合物は、必ずしも天然ポリアミンのように代謝されない。本発明の化合物はそれ自体、容易に代謝されずにポリアミンを再生しないという利点を有するであろう。プトレッシン及び他のポリアミンに変換されやすいポリアミン化合物の投与は、ポリアミンレベルの低減という目的を阻止すると予想され得る。従って、本発明の一態様は、代謝によりプトレッシン又は任意の他の天然ポリアミン代謝産物にならないポリアミン化合物の産生及び使用である。また、候補として理想的な物質は、in vitroにおけるDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力といったポリアミンの正常な生理的機能が変化していてはならない。
【0084】
本発明の別の態様では、上述の化合物及び誘導体を含む組成物が提供される。好ましくは、上記組成物は、好適な担体又は賦形剤を含んだ状態で、製薬上又は農業上の使用に適合するよう調合される。
【0085】
本発明の別の態様において、上記化合物及び誘導体を含有する組成物が提供される。好ましくは、組成物は、好適な担体又は賦形剤を含めることによって、医薬又は農業的使用に適するように調製される。
【0086】
図1は、多数のポリアミンA〜S(25μM)について、アンチザイムフレームシフト誘導力をデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより試験した表である。相対的フレームシフト率(%RF)は、化合物のフレームシフト誘導力をスペルミジン25μMと比較するものである。%RFは以下のように計算した。2.5mM DFMO陰性対照で決定したフレームシフト活性率のバックグラウンドを、スペルミジン対照を含む全ての化合物についてのフレームシフト活性率から差し引いた。次いで、各化合物のフレームシフト活性をバックグラウンド補正した値を、スペルミジン25μMに誘導されたフレームシフト活性をバックグラウンド補正した値で割って、100倍した。また、上記化合物がDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力を、保護係数の決定により評価した。保護係数は、試験化合物及びDFMO 2.5mMの存在下における細胞増殖とDFMO 2.5mM単独の存在下における増殖とをO.D.で測定した比率を表す。フレームシフト−保護因子(FRF)は、フレームシフト誘導力とDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力とを考慮して種々のアンチザイムフレームシフト物質の有効性を比較する際の有用な因子である。FRFは、%RF値に保護係数の逆数を乗じることによって計算した。
【0087】
図2は、HEK−293細胞において種々の化合物25μMに誘導されるフレームシフトを示す。相対的フレームシフト率(%RF)活性は上記したように決定した。結果は、平均±個々の測定値からの標準偏差として表す。
【0088】
図3は、HEK−293細胞における種々の化合物による用量依存性のフレームシフト誘導を示す。値は、AZ1−IF対照及び誘導性0〜+1 AZ1プラスミド構築体を、DFMO 2.5mMの存在下で増殖させたHEK−293細胞に一時的にトランスフェクションした後のフレームシフト率を表す。トランスフェクションした後に化合物を細胞に加え、一晩インキュベートして、翌日アッセイした。各値は3回分の測定を表す。
【0089】
図4は、化合物AによるHEK−293細胞の増殖阻害を示す。6日間の増殖アッセイの間、HEK−293細胞を、スペルミジン1μMの存在下又は非存在下において、アミノグアニジン1mM及び種々の濃度の化合物Aと共にインキュベートした。細胞数は、三連ウェルでのMTS/PMSアッセイによって決定した。
【0090】
図5は、HEK−293細胞における6日間のアッセイにおいて、アンチザイムフレームシフト物質(25μM)がDFMO 2.5mMに誘導される増殖阻害から細胞を保護する能力を、25μMスペルミジン(SPD)と比較したものである。保護係数は、試験化合物及びDFMO 2.5mMの存在下における細胞増殖とDFMO 2.5mM単独の存在下における細胞増殖とをO.D.で測定した比率を表す。
【0091】
図6は、化合物Aを6日間インキュベートしたことによる、HEK−293細胞ポリアミンレベル及び細胞増殖に対する影響を示すグラフである。全てのフラスコにアミノグアニジン1mMを入れた。細胞を洗浄して計数し、過塩素酸中で溶解させてダンシル化し、HPLCでポリアミンレベルを測定した。各値は三回分の値の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0092】
図7は、化合物AのHEK−293細胞内濃度に及ぼす細胞外の化合物Aの影響を、HPLCで測定したものを示す。細胞は図6に示すように調製した。化合物のピーク面積を内部標準ジアミノヘプタンのピーク面積で割ることによって、ピーク面積を正規化した。値は少なくとも三回分の値の測定を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0093】
図8は、化合物Aの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)CH2=CHCN 1.2当量、CH3OH(b)LiAlH4のTHF液。
【0094】
図9は、化合物Bの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)p−キシリレンジアミン(10当量)、CH2Cl2(b)2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、Et3N、CH2Cl2(c)HOCH2CH2CH2CH2NPth、Ph3P、DIAD、THF(d)NH2NH2、EtOH(e)PhSH、K2CO3、DMF(f)TFA/CH2CH2/iPr3SiH、20:78:2(g)HOCH2CH2CH2NPth、Ph3P、DIAD、THF。
【0095】
図10は、図11のための中間体R基の合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)無水フタル酸、EtOH、還流(b)iBuOCOCl、NaBH4。
【0096】
図11は、化合物C〜Rの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)3−アミノプロパノール(10当量)、CH2Cl2(b)1,4−ビス−(2−ニトロベンゼンスルホンアミド)−キシリレン、Ph3P、DIAD、THF(c)中間体3.2、Ph3Ph、DIAD、THF(d)K2CO3、PhSH、DMF(e)TFA/CH2CH2/iPr3SiH、20:78:2。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
下記例は本発明を更に説明するものであり、本発明は下記例に限定されない。本発明の化合物の調製に好適な一般的手法を以下の実施例に示すが、これらは限定的なものではない。
【実施例1】
【0098】
化合物Aの合成
N−(2−シアノエチル)−キシリレンジアミン(1.1)
p−キシリレンジアミン[539−48−0]6.81g(50mmoL)を無水CH3OH 250mL中に溶解してわずかに濁った溶液にアクリロニトリル3.95mL(3.18g、60mmol、1.2当量)を25℃においてアルゴン雰囲気下で滴下する。反応フラスコを遮光して5時間撹拌する。薄層クロマトグラフィー(CHCl3:iPrOH:濃NH4OH=80/18/2)により、生成物ジ−(2−シアノエチル)(Rf=0.63)及び生成物モノ−(2−シアノエチル)(Rf=0.26)物質の混合物が形成されたことが示される。微量のp−キシリレンジアミン(Rf=0.02)のみが残る。溶媒を蒸発させて得た油を、CHCl3:iPrOH:濃NH4OH(比率は、85/13/2(1L)、80/18/2(1L)、次いで、75:23:2(1L))を用いたシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、生成物ジ−(2−シアノエチル)3.90g(32%)を白色固体として得る。所望の生成物モノ−(2−シアノエチル)がその後のカラム画分中に溶出され、その重量は無色油として3.06g(32%)である。
【0099】
N−(3−アミノプロピル)−キシリレンジアミン(化合物A)
N−(2−シアノエチル)−キシリレンジアミン1.97g(10.4ミリモル)を無水THF50mL中に溶解した透明で均一な溶液に、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)をTHF中に溶解した1M溶液30mL(30ミリモル)を、25℃においてアルゴン雰囲気下で添加する。気泡が発生して、白色沈殿が直ちに形成される。ピンク色が認められる。1時間撹拌した後、不均一な反応混合物を油浴に入れ、18時間加熱還流する。反応物を放冷し、H2O 10mLを注意深く添加する。その後、4NのNaOH 10mLを添加する。得られた混合物を4時間加熱還流し、これが少し冷めたらセライトのパッドを通してろ過する。セライトパッド上の白色沈殿をCH3OH、THF、次いで、CH2Cl2で各々2回ずつ洗浄する。ろ液を合わせて蒸発させ、油状粗生成物4.20gを得る。これを、CH3CN中に添加した濃NH4OHを濃度5%(1L)及び20%(1L)で用いるSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、生成物1.52g(76%)を無色透明油として得る。これをEtOH 50mLに溶解し、6NのHCl 10mLで処理した後、蒸発させる。得られた白色固体を熱EtOH 50mLに懸濁し、ちょうど十分量のH2Oで処理して、完全な溶液を形成する。この溶液を−20℃で保存して一回目の結晶を得、これをろ過して乾燥させ、純粋な生成物0.52g(16%)を得る。母液を蒸発させ、少量の溶媒で上記したように処理して、二回目の結晶0.34g(11%)を得る(図8)。
【実施例2】
【0100】
化合物Bの合成
樹脂2.2
ポリスチレンに基づく塩化トリチル樹脂10g(Rapp Polymere社、14ミリモル、1.4ミリモル/g)をCH2Cl2 30mL中に添加したものを入れた100mLの固相ペプチド合成容器に、p−キシリレンジアミン19.07g(140ミリモル、10当量)をCH2Cl2 30mL中に溶解した溶液を、25℃において30分間かけて滴下する。添加する間、容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら樹脂を撹拌する。8時間反応させる間に多量の白色沈殿が形成される。この後で樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。乾燥させた樹脂を、CH2Cl2 40mL中に添加したジエチルアミン10mLで2時間処理して、樹脂に完全にキャップをする。上記と同様に洗浄した後、一晩中かけて真空乾燥させ、生成物として樹脂を得る。この樹脂はカイザーアミン試験(Kaiser amine test)で陽性反応を呈する。
【0101】
樹脂2.3
上記工程で得られた全ての樹脂を、100mLの固相ペプチド合成容器に入れたCH2Cl2 50mLに懸濁し、2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド9.31g(42ミリモル、3当量)及びトリエチルアミン5.85mL(4.25g、42ミリモル、3当量)で25℃において処理する。容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら樹脂を4時間撹拌し、樹脂をろ過して、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0102】
樹脂2.4
上記で得られた全ての樹脂を無水THF30mLに懸濁したものに、固体状のトリフェニルホスフィン11.02g(42ミリモル、3当量)及び4−フタルイミド−1−ブタノール9.21g(42ミリモル、3当量)を添加する。容器底からアルゴンをゆっくりと流入させながら得られた懸濁液を撹拌し、同時にジイソプロピルアゾジカルボキシレート8.49g(42ミリモル、3当量)を滴下により添加する。得られた懸濁液を25℃において18時間撹拌し、溶媒をろ過して、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0103】
樹脂2.5
上記で得た全ての樹脂に、固相ペプチド合成容器に入れた無水EtOH50mL及びヒドラジン水和物50mLを添加する。得られた懸濁液を60℃に加熱し、Robins Scientific ChemFlex製モデル404オーブン中で回転させる。この温度で18時間おいた後、容器を放冷して、樹脂をろ過し、H2O、EtOH、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陽性反応を呈する。
【0104】
樹脂2.6
樹脂2.5を上記樹脂2.3の場合と同様に処理し、樹脂2.6を生成物として得る。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0105】
樹脂2.7
上記で得られた全ての樹脂2.6を無水THF30mLに懸濁した中に、固体状のトリフェニルホスフィン11.02g(42ミリモル、3当量)及びN−(3−ヒドロキシプロピル)フタルイミド8.62g(42ミリモル、3当量)を添加する。容器底からアルゴンをゆっくりと流入させながら得られた懸濁液を撹拌し、同時にジイソプロピルアゾジカルボキシレート8.49g(42ミリモル、3当量)を滴下により添加する。得られた懸濁液を25℃において18時間撹拌し、溶媒をろ過して、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0106】
N−(4−アミノ−1−ブタン−N−(3−アミノプロピル)−キシリレンジアミン(化合物B)
上記で得られた樹脂2.7 1グラムを、樹脂2.5について上記したように、EtOH及びヒドラジン水和物それぞれ10mLで60℃において18時間処理する。この温度で18時間おいた後、容器を放冷して、樹脂をろ過し、H2O、EtOH、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陽性反応を呈する。得られた樹脂を、K2CO3 1.74g(12.6ミリモル、9当量)及びチオフェノール1.29mL(12.6ミリモル、9当量)を無水DMF10mL中に添加したもので25℃において3時間処理する。この樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×15mL)で洗浄して得た生成物は、カイザーアミン試験で陽性反応を呈した。この樹脂をTFA/CH2Cl2/iPr3SiH(20:78:2)10mLに懸濁し、プラットフォームシェーカーにて30分間撹拌する。この樹脂をろ過し、CH2Cl2 20mLで3回、次いで、CH3OHで3回撹拌する。ろ液を合わせて蒸発させ、化合物Bを粗テトラトリフルオロ酢酸塩として得る。これは、CH3CN中に添加した濃NH4OHを5〜40%勾配にしたシリカゲルにより、フラクションコレクターを用いて精製することができる。得られた画分をTLC(Rf=0.34、CH3CN/濃NH4OH=70:30)によって分析し、純粋な生成物を含有する画分を合わせて蒸発させ、純粋な化合物Bを透明な油として得る。CH3OH 20mLに溶解して過剰量の6N HClで処理することによって、これをテトラヒドロクロリド塩に完全に変換する。溶媒の蒸発により、白色固体149mg(26%)を得る(図9)。
【0107】
化合物C〜Rに対する樹脂前駆体(樹脂4.2)
ポリスチレンに基づく塩化トリチル樹脂10g(Rapp Polymer社、14ミリモル、1.4ミリモル/g)をCH2Cl2 30mL中に添加したものを入れた100mLの固相ペプチド合成容器に、3−アミノプロパノール10.51g(140ミリモル、10当量)をCH2Cl2 30mL中に溶解した溶液を、25℃において30分間かけて滴下する。添加する間に、容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら樹脂を撹拌する。反応を5時間進行させる。この後で樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。乾燥させた樹脂を、CH2Cl2 40mL中に添加したジエチルアミン10mLで2時間処理して、樹脂に完全にキャップをする。上記と同様に洗浄した後、一晩中かけて真空乾燥させ、生成物として樹脂を得る。この樹脂は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0108】
1,4−ビス−(2−ニトロベンゼンスルホンアミド)−キシレン
無水ピリジン120mL中に添加した1,4−キシリレンジアミン13.62g(100ミリモル)に、氷浴中でアルゴンを流しながら、固体状の2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド48.76g(220ミリモル)を少量ずつ添加する。反応を室温まで加温し、18時間撹拌する。ピリジンの大部分をロータリーエバポレーターによって除去し(rotoevaporation)、油状残渣をCH2Cl2 250mLに溶解し、飽和CuSO4、次いで、H2O及びブラインで洗浄する。乾燥かつ蒸発させることによって、粗生成物を黄色味がかった固体として得る。CHCl3/CH3OH=98:2を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により、生成物39.5g(78%)を白色固体として得る。
【0109】
樹脂4.2
上記で得た樹脂4.1 2gに、1,4−ビス−(2−ニトロベンゼンスルホンアミド)−キシリレン4.2g(3当量)及びトリフェニルホスフィン2.20g(3当量)を無水THF20mL中に添加したものを添加する。得られた懸濁液にジイソプロピルアゾジカルボキシレート1.65gを室温において45分間かけて滴下する。その後、容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら、樹脂を18時間撹拌する。この後で樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×25mL)で洗浄する。この樹脂はカイザーアミン試験で陰性を呈する。
【実施例3】
【0110】
化合物Cの合成
樹脂4.3
樹脂4.2 0.5g及びトリフェニルホスフィン0.55g(3当量)を無水THF10mLに懸濁したものに、図10に示す経路を介して生じた2−メチル−2−フタルイミド−1−エタノール0.43gを添加する(図1の他の化合物は好適な前駆体分子を使用して生じる)。得られた懸濁液にジイソプロピル−アゾジカルボキシレート0.42gを室温において45分間にかけて滴下する。その後、容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら、樹脂を18時間撹拌する。この後で樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH3Cl2(各々、3×25mL)で洗浄する。この樹脂はカイザーアミン試験で陰性を呈する。
【0111】
N−(3−アミノプロピル)−N’−(2−メチル−2−アミノエチル)−1,4−キシリレンジアミン(化合物C)
上記で得られた樹脂4.2の0.25グラム分に、EtOH及びヒドラジン水和物を各々10mLずつ添加する。上記樹脂2.5と同様にして、この樹脂を60℃において18時間加熱する。この温度で18時間おいた後、容器を放冷して、樹脂をろ過し、H2O、EtOH、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陽性反応を呈する。得られた樹脂を、K2CO3 0.435g(3.15ミリモル、9当量)及びチオフェノール0.32mL(3.15ミリモル、9当量)を無水DMF10mL中に添加したもので、25℃において3時間処理する。この樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×15mL)で洗浄して得た生成物はカイザーアミン試験で陽性反応を呈する。次いで、この樹脂をTFA/CH2Cl2/iPr3SiH(20:78:2)10mLに懸濁し、プラットフォームシェーカーにて30分間撹拌する。この樹脂をろ過し、CH2Cl2 20mLで3回、次いで、CH3OHで3回洗浄する。ろ液を合わせ蒸発させ、化合物Cを粗テトラトリフルオロ酢酸塩として得る。これは、CH3CN中に添加した濃NH4OHを5〜40%勾配としたシリカゲルにより、フラクションコレクターを用いて精製することができる。この得られた画分をTLC(Rf=0.18、CH3CN/濃NH4OH=70:30)によって分析し、純粋な生成物を含有する画分を合わせて蒸発させ、純粋な化合物Cを遊離塩基の状態で透明な油として得る。CH3OH 20mLに溶解させて過剰量の6N HClで処理することによって、これをテトラヒドロクロリド塩に完全に変換させる。溶媒の蒸発により、白色固体30mg(22%)を得る(図11)。
【実施例4】
【0112】
細胞培養と試薬
全ての細胞系をATCC(マナッサス、バージニア州)から入手し、推奨の培地、血清及びCO2濃度において培養する。培地は、Mediatech社(ハーンドン、ワシントン州)から、また血清はGibco BRL社(ゲイザースバーグ、メリーランド州)から入手する。ペニシリン50U/mL、ストレプトマイシン50mg/mL及びL−グルタミン2mM(いずれもバイオウィッタカー社(ウォーカーズビル、メリーランド州)製)は全ての培地に含まれている。細胞をポリアミン又はポリアミン類似体と共に培養する際には、血清アミンオキシターゼ活性を阻害するためにアミノグアニジン(AG;シグマ社)1mMを含有する。DFMOはAdvanced ChemTech社(ルイヴィル,ケンタッキー州)から入手する。
【実施例5】
【0113】
ポリアミン類似体によるアンチザイムフレームシフトの誘導
上記化合物に対し、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイを用い、フレームシフト誘導力についてスクリーニングする。HEK−293細胞を、DFMO 2.5mMを含有する培地(10%胎児ウシ血清(Gibco社)、1%ペニシリン、ストレプトマイシン及びL−グルタミンを添加したDMEM)100μL中で、1ウェル当たり細胞15000個にて、側面が白色で底面が透明な96ウェルアッセイプレートで平板培養する。上記細胞を5%CO2雰囲気下で37℃において2日間インキュベートする。培地を除去した後、細胞を、無血清DMEMを用いてリポフェクタミン試薬(Life Technologies社)でトランスフェクションする。全ての細胞を、好適なプラスミドDNA100ng及びリポフェクタミン0.3μLをDFMO 2.5mMを含有する無血清DMEM50μL中に添加したもので一晩トランスフェクションする。翌日、DFMO 3.1mM、アミノグアニジン2.5mM及び25%FBSを含有する培地を1ウェル当たり40μL添加する。化合物を水又は培地中に0.25mMに希釈し、1ウェル当たり10μLを添加して、最終濃度を25μMとする。陽性対照はスペルミジン25μMを含有し、陰性対照には化合物を添加しない。細胞を5%CO2雰囲気下で37℃において一晩インキュベートし、1×PBSで1回洗浄し、passive lysis buffer(プロメガ社)50μLで溶解させ、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ系(プロメガ社)を用いてレニラ及びホタルルシフェラーゼ活性についてアッセイする。フレームシフト活性率は、誘導性0〜+1 AZ1構築体でトランスフェクションした細胞におけるレニラルシフェラーゼ活性に対するホタルルシフェラーゼの比率を、対照ベクターAZ−IFでトランスフェクションした細胞におけるレニラルシフェラーゼ活性に対するホタルルシフェラーゼの比率で割って、100倍することによって決定する。
【0114】
相対フレームシフト率(%RF)は、化合物のフレームシフト誘導力をスペルミジン25μMと比較するものである。上記%RFは以下のように計算される。2.5mM DFMO陰性対照で決定したフレームシフト活性率のバックグラウンドを、スペルミジン対照を含む全ての化合物についてのフレームシフト活性率から差し引く。次いで、各化合物のフレームシフト活性をバックグラウンド補正した値を、スペルミジン25μMに誘導されたフレームシフト活性をバックグラウンド補正した値で割って、100倍する。
【0115】
上記スクリーニングから、多数の化合物がフレームシフトを誘導することが分かる(図1及び図2)。これらの化合物のいくつかは同一濃度(25μM)のスペルミジンよりもフレームシフトを実質的に良好に誘導する。アンチザイムフレームシフト誘導力を決定するために、ポリアミンであるスペルミン、スペルミジン、プトレッシン及び化合物Aについてもデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて力価を測定する(図3)。EC50は、図3におけるプラトー値から測定した際に最大フレームシフト率の50%をもたらす化合物の濃度を表す。上記力価測定は、フレームシフト誘導についてのEC50値が3つのポリアミン全てにおいて約1μMであり、スペルミジン(0.56μM)>スペルミン(0.68μM)>プトレッシン(0.95μM)の順であることを示す。化合物AはフレームシフトについてのEC50が低く、約120μMである。また、フレームシフトの最大レベルは、プトレッシン、スペルミジン、スペルミン及び化合物Aでは異なる。
【0116】
一般的に、ポリアミンによるフレームシフト誘導力の順は、スペルミンが最も優れており、続いてスペルミジン、その次がプトレッシンであると報告されている。しかし、本研究においては(図3)、全てのポリアミンのEC50値が類似しており、0.5〜1.0μMの間である。スペルミンが同様の値を有するということが報告されている(Mitchell,J.L.A.ら,Biochem.J.Vol.366,p.663−671,2002)。細胞に基づくアッセイにおいて、プトレッシン及びスペルミジンは、各々スペルミジン合成酵素又はスペルミン合成酵素によってアミノプロピル基の移動を介して細胞内でスペルミジン及びスペルミンに変換され得る。プトレッシン及びスペルミジンについて観察されたフレームシフト活性は、実際には、アッセイ中に合成されたポリアミンについての活性を合わせたものを反映している可能性があると考えることができる。
【実施例6】
【0117】
増殖阻害アッセイ
細胞を96ウェルプレートで平板培養し、アッセイ中に対数増殖させる。平板培養後、ポリアミン類似体を細胞に添加し、増殖したら、適切な場合にはAG 1mM及びSPD 1μMの存在下で増殖を6日間継続させる。6日間終了後、細胞増殖をMTS/PMS染色アッセイによって測定する(Cell Titer 96 Aqueous Non−Radioactive Cell Proliferation Assay;プロメガ社,マディソン,ウィスコンシン州)。ID50とは、最大細胞増殖阻害の50%をもたらすポリアミン類似体の濃度を指す。
【0118】
HEK−293細胞の細胞増殖は、化合物Aによって阻害される(図4)。このポリアミン類似体による増殖阻害のIC50は約60μMであることが分かる。スペルミジン1μMの添加により、3〜100μMの化合物Aによる増殖阻害から細胞が保護された(図4)。これらの結果は、細胞への進入においてスペルミジンと化合物Aとが競合すること、及び、化合物Aは少なくとも部分的にポリアミントランスポーターを通じて細胞に進入することを示唆する。
【実施例7】
【0119】
ポリアミン類似体、及び、DFMO誘導性増殖阻害からの保護
アンチザイムフレームシフトを誘導することが見出された化合物に対して、DFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護するという望ましくない能力について評価する(図1及び図5)。HEK−293細胞を、培地(10%胎児ウシ血清(Gibco社)、1%ペニシリン、ストレプトマイシン及びL−グルタミンを添加したDMEM)100μL中で1ウェル当たり細胞1000個にて96ウェルアッセイプレートで平板培養する。細胞を5%CO2雰囲気下で37℃において一晩インキュベートする。翌日、最終的な培地容量200μL中で化合物の最終濃度が25μM、(血清アミンオキシダーゼを阻害する)アミノグアニジン1mM及びDFMO 2.5mMとなるように、化合物を添加する。陽性対照はスペルミジン25μMを含むものであった。細胞を6日間インキュベートし、その後、細胞増殖をMTS/PMS染色アッセイによって測定する(Cell Titer 96 Aqueous Non−Radioactive Cell Proliferation Assay、プロメガ社)。図1及び図5における保護係数をO.D.の比率として表す((化合物+DFMO 2.5mM)/O.D.(DFMO 2.5mM単独))。これより、DFMO単独の値は1である。保護しないという所望の効果を有する場合、その薬はDFMO単独に近い値(すなわち、約1)を有する。上記値が1未満であると、化合物は増殖阻害性である。上記値が0であると、化合物は細胞毒性を有する。DFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する化合物についての比率は1よりも高く、治療剤としてはあまり望ましくない。
【0120】
図5に示すように、化合物A及びBは共に、DFMO誘導性増殖阻害から細胞を有意に保護しない。化合物Aは、スペルミジン対照と比較して最も効果が低い。アグマチンは、A及びBのいずれよりも、DFMO誘導性増殖阻害から細胞を幾分良好に保護する。
【0121】
種々のアンチザイムフレームシフト物質の有効性を比較する有用な因子において、フレームシフト誘導力、及び、DFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護不可能であるということが考慮される。この尺度はフレームシフト−保護因子(FRF)という。FRFは、%RF値に保護係数の逆数を乗ずることによって計算される。この方法によって、複数のデータパラメータの分析が大幅に単純化される。%RF値が低いか又は保護係数が高い場合、その化合物は候補物質として特に有力ではない。化合物A、B及びアグマチンについての上記分析から、FRF値120、83及び17がそれぞれ得られる。この分析方法に基づき、化合物Aは、ポリアミンレベルを枯渇させる能力、及び、細胞増殖阻害力が最大である可能性がある。
【実施例8】
【0122】
化合物Aによる細胞内ポリアミンレベルの枯渇
化合物Aを更に評価し、HEK−293細胞において細胞内ポリアミンレベルが用量依存的に枯渇するか否かを調べる(図6)。HEK−293細胞を300000個/mLにて75cm2のフラスコ中で平板培養し、実験中に対数増殖するようにする。5%CO2雰囲気下で37℃において一晩インキュベートした後、化合物Aをアミノグアニジン1mMと共に添加する。次いで、5%CO2雰囲気下でフラスコを37℃において6日間インキュベートする。1×氷冷PBSで2回洗浄して細胞を回収し、トリプシン処理して計数し、0.4N過塩素酸に溶解する。全ダンシル化反応において、ジアミノヘプタンを内部標準として使用する。化合物のピーク面積を内部標準のピーク面積で割ることによって、ピーク面積を正規化する。細胞抽出物からのポリアミンのフルオロメーターによる検出のためのHPLC法は、Kabraによる手法に基づく(Kabra,P.M.ら,J.Chromatogr.380:19−32(1986))。
【0123】
化合物Aがフレームシフトを誘導し、これによりアンチザイムレベルが上昇する場合、細胞内ポリアミンレベルは減少すると予測される。このことはHEK−293細胞で観察され、これによってポリアミンの細胞内レベルの有意な減少が示される(図6)。プトレッシンは上記処理に対する感受性が最も高く、試験した最低濃度においては検出不可能である。スペルミジンレベルは10μMにおいて約90%減少し、化合物A 100μMと共にインキュベートした場合には検出不可能である。また、細胞増殖にも影響がおよび、10μMにおいて32%、30μMにおいて38.5%減少する。ODC阻害に関連する多くのポリアミン枯渇療法で一般的に見出されているように、スペルミンレベルは初期は定常状態であった。しかし、スペルミンレベルは100μMにおいて50%減少する。また、化合物Aの細胞内レベルは用量依存的に増大する(図7)。
【0124】
細胞増殖阻害はポリアミンレベルの減少と正に相関する(図6)。プトレッシン及びスペルミジンの細胞内レベルの大幅な減少は、細胞増殖の初期の阻害に至る可能性がある。化合物Aのレベルが30μMを超えると、スペルミンレベルが減少し始めて正常の約50%までに至る。スペルミンレベルが正常の50%未満になると、細胞の死滅が起こる可能性がある。このことは、細胞内スペルミン濃度が正常の約50%に減少しても細胞増殖が減少し続けるという事実によって支持される。恐らく、化合物Aの細胞外レベルが増大すると、細胞内スペルミンレベルを正常の50%の臨界レベルに維持する細胞が減少するであろう。50%閾値レベルは、(プレートに付着したままの)生細胞のみを回収して細胞内ポリアミンレベルを決定することによって明らかとする。恐らくは、死滅した細胞は、そのスペルミンレベルが50%未満となることによって死滅するのであろう。
【実施例9】
【0125】
ポリアミン類似体とアグマチンの能力
アグマチンは、上記以外の、アンチザイムフレームシフトを誘導すると報告された化合物である(Satraino,J.ら,J.Biol.Chem.273:15313−15316(1998))。アグマチンは4mMにおいて最大フレームシフト効率を有することが報告されている。また、アグマチンは、1mMにおいて最大の増殖阻害でもってマウス腎臓近位尿細管(MCT)の細胞増殖を阻害することも観察によって分かっている。MediQuest Therapeutics社における研究から、アグマチンが、MDA−MB−231細胞において約2mM、前立腺PC−3細胞系において5mM、及び、HEK−293細胞において0.21mMのIC50にて増殖を阻害することが分かった(データは示さず)。化合物A及びBは両方とも、アンチザイムフレームシフトの誘導においてアグマチンよりも優れていることが分かる(図2)。また、化合物Aは、より優れたHEK−293細胞増殖阻害剤であってIC50が60μMであり、1mMにおいて細胞毒性を有する。アンチザイムの強制発現によって細胞死が誘導される可能性があることが従来から示されている。化合物Aが1mMにおいて細胞毒性を有することから、アンチザイムレベルが十分高く閾値レベルに到達すると優れたアンチザイム誘導物質は細胞毒性を有し得ることが示唆される。
【実施例10】
【0126】
ポリアミン輸送を阻害し、アンチザイムフレームシフトを誘導するポリアミン類似体
ポリアミン輸送を阻害する多数の化合物が近年開発されている(Huber,M.ら,J.Biol.Chem.271:27556−27563(1996);Covassin,L.ら Bioorg.Med.Chem.Lett.9:1709−1714(1999);Zhang,M.ら,J.Mol.Med.5:595−605(1999);Aziz,S.M.ら,J.Pharmacol.Exp.Ther.274:181−186(1995);Tomasi,S.ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.8:635−640(1998);Cullis,P.M.ら,Chem.Biol.6:717−729(1999);Chao,J.ら,Mol.Pharmacol.51:861−871(1997);Weeks,R.S.ら,Exp.Cell.Res.261:293−302(2000);Burns,M.R.ら,J.Med.Chem.44:36232−3644(2001);Graminski,G.F.ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.12:35−40(2002))。これらの化合物はトランスポーターには結合するがそれ自体はトランスポーターの基質ではない、と一般的に考えられている。報告された上記多数の輸送阻害剤は、アンチザイムを活性化することによって間接的にトランスポーターを阻害し得ると考えられる。例えば、Poulinは、sym−ノルスペルミジンを、その第二級アミノ基を介して平面p−キシリル架橋剤等の化合物とを架橋する優れた輸送阻害剤について記載している(Covassin,L.ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.9:1709−1714(1999))。1,4−ビス[ビス(3−アミノプロピル)キシレンジアミン類似体(化合物S)はアンチザイムフレームシフトを誘導することが、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより判明している。この化合物は濃度25μMにおいて、フレームシフトを%RF 100で誘導することが分かる。また、DFMO 2.5mMに誘導される増殖阻害から保護する能力について試験すると、25μMでは保護能力を示さない(図1)。これらの結果は、1,4−ビス[ビス(3−アミノプロピル)キシレンジアミンが細胞に進入できること、及び、全長アンチザイムの誘導によって少なくとも部分的に輸送を阻害できることを示唆する。
【0127】
本出願に記載する医薬品に許容される担体、例えばビヒクル、補助剤、賦形剤又は希釈剤は、当業者に周知のものである。典型的には、医薬品に許容される担体は、有効化合物に対して化学的に不活性で、使用条件下で有害な副作用や毒性がないものである。医薬品に許容される担体にはポリマー及びポリマーマトリクスが含まれてもよい。
【0128】
本発明の化合物は、単一の治療薬として、あるいは、治療薬の組み合わせとして、医薬品に対して使用可能な任意の従来の手段によって投与可能である。
【0129】
当然ながら、投薬量は、個々の薬剤の薬力学的特性、その投与形態及び投与経路;投薬対象者の年齢、健康状態及び体重;症状の性質及び程度;同時に行う治療の種類;治療回数;並びに、所望の効果等の既知の要因によって異なるであろう。有効成分の1日当たりの投与量は、体重1キログラム(kg)当たり約0.001〜1000ミリグラム(mg)、好ましい投与量は0.1〜約30mg/kgであると予想することができる。
【0130】
(投与に適した組成物の)剤形には、1単位当たり約1mg〜約500mgの有効成分が含まれている。これらの医薬組成物中には、有効成分は通常、組成物総重量の約0.5〜95重量%含有されるであろう。
【0131】
上記有効成分は、カプセル、錠剤及び粉末等の固体状、又は、エリキシル剤、シロップ剤及び懸濁液等の液状で経口投与可能である。また上記有効成分は、滅菌液状で非経口的にも投与可能である。上記有効成分は更に、鼻腔内に(点鼻剤)、又は、乾燥させた薬のミストの吸入によっても投与可能である。他の剤形としては、パッチ構造又は軟膏としての経皮的投与等も可能であろう。
【0132】
経口投与に好適な調製物は、(a)有効量の化合物を、水、食塩水又はオレンジジュース等の希釈剤に溶解させた液体溶液;(b)(それぞれ所定量の有効成分を含む)カプセル、サッシェ、錠剤、甘味つき錠剤及びトローチ等の固体又は顆粒;(c)粉末;(d)好適な液体中の懸濁液;並びに(e)好適な乳剤;からなるものが考えられる。液体の調製物としては、水及びアルコール(例えばエタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレンアルコール)等の希釈剤を含んでいてもよく、医薬品に許容される界面活性剤、懸濁剤又は乳化剤が添加されてもされていなくてもよい。カプセルとしては、界面活性剤、滑剤、並びに、例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ等の不活性充填剤を含む、通常のハード又はソフトシェル型ゼラチンタイプのものが考えられる。錠剤には、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、バレイショデンプン、アルギン酸、微結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、膠質二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、並びに、他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香味料及び薬学的に適合性のある担体のうち、1種以上のものを含有させることができる。更に、甘味つき錠剤は、香味料中に、通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカント中に有効成分を含んでいてよく、またトローチは、ゼラチン及びグリセリン等の不活性基剤、又は、スクロース及びアラビアゴム中に有効成分を含んでいてよく、更に乳剤及びゲル剤は、有効成分に加えて、当該技術分野で知られているような担体を含んでいてよい。
【0133】
本発明の化合物は、単独で、又は、他の好適な成分と組み合わせて、吸入によって投与されるエアロゾル調製物にすることができる。このエアロゾル調製物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン及び窒素等の許容される加圧不活性ガス中に入れることができる。更に、上記エアロゾル調製物は、ネブライザー又はアトマイザー等の非加圧式薬剤として調剤してもよい。
【0134】
非経口投与に好適な調製物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び、目的の投薬対象者の血液と調製物を等張にする溶質を含んでいてもよい水性又は非水性の等張滅菌注射溶液、並びに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含んでいてよい水性又は非水性の滅菌懸濁液が含まれる。上記化合物は、医薬品用担体中の生理的に許容される希釈剤中に添加した状態で投与することができ、上記希釈剤としては、例えば水、食塩水、デキストロース及び関連の糖水溶液;エタノール、イソプロパノール又はヘキサデシルアルコール等のアルコール類;プロピレングリコール、又は、ポリ(エチレングリコール)400等のポリエチレングリコール等のグリコール類;2,2−ジメチル−1、3−ジオキソラン−4−メタノール等のグリセリンケタール類;エーテル類、油(オイル)類、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又は、アセチル化脂肪酸グリセリド等を含む滅菌液体又は液体混合物が挙げられ、これには、石鹸若しくは洗浄剤等の医薬品に許容される界面活性剤、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロース等の懸濁剤、又は、乳化剤及び他の医薬品用補助剤を含まれていても含まれていなくてもよい。
【0135】
非経口投与用調製物において使用することができる油類には、石油性油、動物性油、植物性油及び合成油が含まれる。油類には具体的に、ピーナッツ油、大豆油、ごま油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ペトロラタム及び鉱油が含まれる。非経口投与用調製物において使用される好適な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が含まれる。好適な脂肪酸エステルの例としては、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルがある。非経口投与用調製物において使用される好適な石鹸には、脂肪酸アルカリ金属塩類、脂肪酸アンモニウム塩類及び脂肪酸トリエタノールアミン塩類が含まれ、好適な界面活性剤には、(a)陽イオン洗剤、例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド等、(b)陰イオン洗剤、例えばスルホン酸アルキル、スルホン酸アリール及びオレフィンスルホナート、硫酸アルキル、オレフィンサルフェート、硫酸エーテル及び硫酸モノグリセリド、並びに、スルホコハク酸塩等、(c)非イオン性洗剤、例えば脂肪族アミン酸化物、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、(d)両性洗剤、例えばアルキル−β−アミノプロピオネート及び2−アルキルイミダゾリン四級アンモニウム塩等、並びに、e)それらの混合物等が含まれる。
【0136】
非経口投与用調製物は、典型的には、溶液中に約0.5重量%〜約25重量%の有効成分を含む。この調製物中で、好適な防腐剤及び緩衝剤を使用することができる。注射する部位での刺激を最小限にするために、又は、刺激を取り除くために、上記組成物は、親水性と親油性バランス(HLB)が約12〜約17である1種以上の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。上記調製物中における界面活性剤の量は、約5重量%〜約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤には、ソルビタンモノオレエート等のポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び、プロピレンオキシドとプロピレングリコールの縮合によって形成される、疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子付加体等が含まれる。
【0137】
更に、医薬品に許容される賦形剤もまた当業者に周知である。賦形剤は、幾分は具体的な化合物に応じて選択され、かつ、組成物の具体的な投与方法に応じて選択されるであろう。従って本発明の医薬組成物には、種々の好適な調製物態様がある。下記方法及び賦形剤は単に例として示すものであり、これらに限定することは全く意図していない。医薬品に許容される賦形剤は、有効成分の作用を妨害せず、かつ、有害な副作用を引き起こさないものが好ましい。好適な担体及び賦形剤には、水、アルコール及びプロピレングリコール等の溶剤、固体吸着剤及び希釈剤、界面活性剤、懸濁剤、錠剤形成用結合剤、滑剤、香味料及び着色剤が含まれる。
【0138】
上記調製物は、アンプル及びバイアル等の1回服用分密封容器又は複数回服用分含有密封容器にすることができ、フリーズドライ(凍結乾燥)した状態で保存することができ、これにより、使用直前に注射用の滅菌液体賦形剤(例えば水)を添加するだけで使用できる。注射溶液及び懸濁液は、滅菌した粉末、顆粒及び錠剤からその場で調製することもできる。注射用組成物のための有効な医薬品用担体に対する必要条件は、当業者に周知である。Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B. Lippincott Co.,Philadelphia,PA, Banker and Chalmers,Eds.,238−250(1982)、及び、ASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel,4th ed.,622−630(1986)を参照のこと。
【0139】
局所投与に好適な調製物には、香味料(通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガント)中に有効成分を含む甘味入り錠剤;ゼラチン及びグリセリン等の不活性基剤、又は、スクロース及びアラビアゴム中に有効成分を含むトローチ;好適な液体担体中に有効成分を含む口内洗浄剤;並びに、有効成分に加えて当業者に公知の担体を含むクリーム剤、乳剤及びゲル剤が含まれる。
【0140】
更に、直腸投与に好適な調製物としては、乳化性基剤又は水溶性基剤等の種々の基剤と混合することにより得られる坐剤があげられる。膣投与に好適な調製物としては、有効成分に加えて、好適な担体として当業者に公知の担体を含む、膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル剤、ペースト剤、泡剤又はスプレー剤等が挙げられる。
【0141】
好適な医薬品用担体は、本分野で標準的な参考書である、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)で説明されている。
【0142】
本発明の範囲内における動物(特にヒト)に投与される投薬量は、妥当な時間枠を超えた場合に、治療に対する反応を動物体内で生じさせることのできる量であるべきである。当業者であれば、動物の状態、動物の体重、及び、治療する状態等の種々の要因に応じて投薬量が異なることを認識し得る。
【0143】
好適な投薬量は、患者体内で有効成分の濃度が所望の反応を生じさせることが知られる濃度となるような量である。
【0144】
また、投薬量の程度は、投与の経路、タイミング及び頻度と同時に、化合物の投与に伴って生じる可能性のある副作用の有無、性質及び程度、並びに、所望の生理学的作用によって決定されるであろう。
【0145】
本発明の化合物の投与に有用な医薬品の剤形は、例えば以下である。
【0146】
ハードシェルカプセル
粉末状有効成分100mg、ラクトース150mg、セルロース50mg及びステアリン酸マグネシウム6mgを標準的なツーピース式ハードゼラチンカプセル中に充填することにより、カプセル単位を多数調製する。
【0147】
ソフトゼラチンカプセル
大豆油、綿実油又はオリーブ油等の消化容易な油中に有効成分を混合した混合物を調製し、溶融させたゼラチン中にこの混合物を容積移送式ポンプを使用して注入することにより、有効成分を100mg含むソフトゼラチンカプセルを形成する。カプセルを洗浄し乾燥させる。有効成分は、ポリエチレングリコール、グリセリン及びソルビトールの混合物中に溶解させて、水混和性医薬混合物を作ることができる。
【0148】
錠剤
一錠あたりの処方量が、有効成分100mg、謬質二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、結晶セルロース275mg、デンプン11mg及びラクトース98.8mgとなるように、従来の方法によって多数の錠剤を製造する。好適な水性・非水性のコーティングを施すことにより、飲みやすさを向上せたり、上品さや安定性を改善したり、あるいは吸収を遅らせることもできる。
【0149】
即放性錠剤/カプセル
これらは、従来法及び新規方法によって作製される固体経口投与用の剤形である。これらの剤型単位は、薬剤が即時に溶解して送達されるように、水なしで経口投与する。有効成分は、糖、ゼラチン、ペクチン及び甘味料等の成分を含む液体中に混合する。これらの液体は、凍結乾燥及び固体抽出技術によって固体化して固体の錠剤又はカプレットとする。薬剤用調製物は、水を使わずに、粘弾性でかつ熱弾性の糖、及び、ポリマー又は発泡性成分と共に打錠することによって、即放性を目的とした多孔性マトリクスを製造してもよい。
【0150】
更に、本発明の化合物は、点鼻剤の形で投与可能であり、また、投薬量を計量して投与可能であり、経鼻頬吸入によっても投与可能である。薬剤は点鼻液から微細なミストとして送達されるか、あるいはエアロゾルとして粉末から送達される。
【0151】
上記の発明の説明は、本発明を例証し、説明するためのものである。更に、開示内容は、発明の好ましい実施形態のみを示し、説明するものであるが、上述の通り、本発明は種々の他の組み合わせ、変更及び環境において使用できるものであって、本明細書に表された発明の概念を逸脱しない範囲で変更・改良ができることは、上述の教示及び/又は関連する技術分野のスキル若しくは知識に従えば理解されるはずである。更に上述の実施形態は、本発明を実施する上で知られている最良の形態を説明することを意図したものであり、また他の当業者が本発明を上記の通りに、又は、他の実施形態において、本発明の具体的な用途又は使用において必要な種々の変更を伴って利用できるよう意図したものである。従って、本出願の説明は、本発明を本明細書に開示された態様に限定されることを意図したものではない。更に添付の請求の範囲は、別の実施形態をも含むものとして解釈されるよう意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1−1】多数のポリアミン類似体A〜S(25μM)について、アンチザイムフレームシフト誘導力をデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより試験した表である。
【図1−2】多数のポリアミン類似体A〜S(25μM)について、アンチザイムフレームシフト誘導力をデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより試験した表である。
【図2】HEK−293細胞において種々の化合物25μMに誘導されるフレームシフトを示す。
【図3】HEK−293細胞における種々の化合物による用量依存性のフレームシフト誘導を示す。
【図4】化合物AによるHEK−293細胞の増殖阻害を示す。
【図5】HEK−293細胞における6日間のアッセイにおいて、アンチザイムフレームシフト物質(25μM)がDFMO 2.5mMに誘導される増殖阻害から細胞を保護する能力を、25μMスペルミジン(SPD)と比較したものである。
【図6】化合物Aを6日間インキュベートしたことによる、HEK−293細胞ポリアミンレベル及び細胞増殖に対する影響を示すグラフである。
【図7】化合物AのHEK−293細胞内濃度に及ぼす細胞外の化合物Aの影響を、HPLCで測定したものを示す。
【図8】化合物Aの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)CH2=CHCN 1.2当量、CH3OH、(b)LiAlH4のTHF液。
【図9】化合物Bの合成についての反応スキームを示す。
【図10】図11のための中間体R基の合成についての反応スキームを示す。
【図11】化合物C〜Rの合成についての反応スキームを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ポリアミン、その合成、及び、薬理学的、化粧品学的又は農業的な用途におけるその使用に関する。本発明は、アンチザイム産生を誘導するポリアミンを提供し、この産生により、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によるポリアミン産生及び対応するポリアミントランスポーターによるポリアミン輸送が下方制御される。これらの化合物は好ましくは、ポリアミントランスポーターから独立して細胞に進入可能である。これらの化合物は薬としては、癌を含む(が、これに限定されない)、細胞増殖に関連する任意の疾患の治療に有用である。これらの化合物はそれ自体、免疫系の構成要素が望ましくない増殖をするような疾患の治療薬として有用であろう。また、これらの化合物は、皮膚上での毛髪の望ましくない増加の治療にも効果的であろう。本発明は、ポリアミンに関連する小分子のアンチザイム誘導モチーフを含むと予測される重要な構造的要素についても同定する。
【背景技術】
【0002】
内因性ポリアミンであるプトレッシン、スペルミジン及びスペルミンは、DNA、RNA、タンパク質及び脂質との相互作用を介して多くの必須の細胞機能に寄与する(非特許文献1〜6)。ポリアミンは、DNA複製、細胞周期調節及びタンパク質合成に関与するため、細胞増殖において必須である。細胞内ポリアミンレベルの枯渇は細胞増殖を阻害する。アンチザイムは、ポリアミンの生合成及び取り込み/導入の両方を阻害することによってポリアミンレベルを調節する。細胞ポリアミンレベルは特異的生合成、分解、取り込み及び分泌の経路により厳しく制御されるため、その機能は重要である(非特許文献7〜9)。過剰な細胞増殖は高レベルの細胞内ポリアミンと関連付けられる(非特許文献1)。分析によると、多数の腫瘍細胞型が、腫瘍を形成しない正常細胞よりも高いレベルのポリアミンを有することが示されている。ある単一の腫瘍型においては、悪性の強い腫瘍ほどポリアミンレベルが高い場合が多い(非特許文献10)。これらの理由から、細胞内ポリアミンレベルの枯渇は、未制御の又は望ましくない細胞増殖の阻害に対する魅力的なアプローチである。
【0003】
オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)は細胞ポリアミン合成の律速酵素であり、オルニチンをプトレッシンに変換する。その後、プトレッシンは、これに続くアミノプロピル基のデカルボキシル化−S−アデノシルメチオニンからの移動によってスペルミジン及びスペルミンの両方に変換される。細胞内ポリアミンレベル濃度が増大することによりアンチザイムの産生が誘導され、アンチザイムはODCに結合してこれを破壊のターゲットとすることによりODCを下方制御する。アンチザイムはポリアミンの取り込みを阻害することも示されており(非特許文献11〜13)、最近の証拠からは、アンチザイムがポリアミンの分泌を増大させる可能性があることが示唆される(非特許文献14)。従って、アンチザイムは細胞ポリアミンの蓄積を非常に効果的に制限可能である。
【0004】
アンチザイムは脊椎動物、真菌、線虫、昆虫及び真核生物において発見されている(非特許文献15)。現在、アンチザイムの3種のイソ型AZ1、AZ2及びAZ3が脊椎動物の間で同定されている。AZ1及びAZ2は共に広く組織に分布しているが、AZ2 mRNAの発現はあまり多くない。AZ3は精巣生殖細胞においてのみ発現しており(非特許文献16及び17)、その発現は精子完成初期に開始し、後期精子細胞相において終了する。アンチザイム産生は、翻訳フレームシフトとして知られるユニークな調節機構によって制御される(非特許文献18)。アンチザイム遺伝子は2つの重複するオープンリーディングフレーム(ORF)よりなる。コード領域の大部分はそのうちの第二のもの(ORF2)に含まれるが、これは開始コドンを含まない。ORF1は短いが、2つのAUG開始コドンを含む。いずれか1つの開始コドンによって翻訳が開始され得るが、通常は、翻訳を継続可能なORF1 UGA停止コドン直前で+1フレームシフトが起こらなければ、全長mRNAはほとんど形成されない。一般的にはアンチザイムは哺乳動物組織に微量存在するに過ぎない。ポリアミン及びアグマチンはフレームシフトの効率を大いに増強させることが見出されている(非特許文献19及び20)。脊椎動物は、フレームシフトを制御する3つの要素、すなわち、ORF1中のUGA停止コドン、ループの一部と共に塩基対を形成可能な、3’からORF1のUGAまでのステムループ構造、及び、ORF1の3’領域内の保存された配列モチーフを保有する(非特許文献18)。ポリアミンがこれらの構造要素と直接相互作用してフレームシフトを誘導する方法について、又は、これを誘導するか否かについては明らかではない。リボソームに関与し得る未知の媒介物が存在する可能性がある。
【0005】
ODCはホモダイマーとしてのみ酵素的に活性である、というのは、活性部位は双方のモノマーによる構造的寄与を含むからである。モノマー間の相互作用は弱く、一方、アンチザイムはODCモノマーに対して高い親和性を有する。アンチザイムが結合するとホモダイマーの接触面が破壊され、酵素的に不活性な2つのアンチザイム−ODCへテロダイマーが形成される(非特許文献21及び22)。アンチザイムによりODCモノマーはプロテオソーム(proreosome)に向かい、これにより、ユビキチン化されることなく分解される(非特許文献23及び24)。その後、アンチザイムが放出され、更なるODCモノマーと自由に相互作用して、これを触媒作用により破壊する。AZ2がODC及びポリアミンの取り込みを等しく阻害することは示されている(非特許文献25)が、AZ2イソ型がODCの分解を触媒作用により誘導することは示されていない。AZ3は最も新しく発見されたアンチザイムであって、やはりODCを阻害することが示されている(非特許文献16及び17)。
【0006】
アンチザイムは、ODCよりもアンチザイムに対してより高い親和性を有するアンチザイム阻害剤によって調節される(非特許文献26〜28)。従って、ODCは、アンチザイムから移動することにより分解から守られる可能性がある。ODCと同様に、アンチザイム阻害剤はホモダイマーを形成し、ODCと高い配列相同性を有する。しかし、ODCとはヘテロダイマーを形成せず(非特許文献29)、ODC活性を有さない。アンチザイム阻害剤は増殖刺激性繊維芽細胞中で迅速に誘導され、アンチザイムによる抑制からODCを開放することが示されている(非特許文献30)。
【0007】
フレームシフトは、アンチザイムの翻訳フレームシフト効率を測定するためのデュアルルシフェラーゼレポーター系を用いて検出することができる(非特許文献31及び32)。フレームシフト効率は、イン−フレーム翻訳効率を測定するための構成的+1フレームシフト(AZ−IF)を含有するコントロールベクター、及び、誘導的0〜+1フレームシフト(AZ1)構築体を含有するベクターを用いて平行してトランスフェクションした細胞におけるホタルルシフェラーゼとレニラ(renilla)ルシフェラーゼの活性の比率を比較することによって決定される。上記構築体においてレニラルシフェラーゼ遺伝子はホタルルシフェラーゼ遺伝子の上流にあり、これらの間には、ポリアミン刺激性フレームシフトについてのmRNAシグナルを含有することが知られているアンチザイム1及び2の一部を含有する短いクローニング配列がある。96ウェルフォーマットを用い、このアッセイ系により、ポリアミン、ポリアミン類似体及び他の化合物が細胞に基づくバイオアッセイにおいてフレームシフトを誘導する効率を定量的に測定する。細胞は、基礎アンチザイムフレームシフトレベルの減少、及び、ポリアミン又は化合物に媒介される刺激に対するアンチザイムフレームシフトの感度の増大についてのスクリーニングの前に、ODCの不可逆的阻害剤であるα−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)で前処理しなければならない。
【0008】
ポリアミン類似体によるアンチザイム誘導の第一の系統的評価の1つにおいて、オクタアミン、デカアミン及びドデカアミン等のオリゴアミンはアンチザイムを種々の程度に誘導することが判明した(非特許文献33)。これらのレベルは、ウェスタンブロッティングによって測定したアンチザイムの細胞レベルに相関していた。アンチザイムのレベルの差は異なるタンパク質合成速度によるものであるようであった、というのは、アンチザイムの半減期(T1/2〜75分)はポリアミン類似体に制御されないようであったからである。従って、類似体は+1翻訳フレームシフトを刺激する種々の能力を有すると推定できる。ビスエチルノルスペルミン、ビスエチルホモスペルミン及び1,19−ビス(エチルアミノ)−5,10,15−トリアザノナデカン(BE−4−4−4−4)等の多数の化合物が、アンチザイム及びスペルミジンを誘導することが分かった。しかし、3、4及び5員環等のポリアミン類似体における、又は、中央の窒素間の三重結合におけるある種の立体配座の制限により、アンチザイムの誘導に否定的な影響が及んだ。オリゴアミンの多くは、同一濃度(10μM)において試験した場合に、アンチザイム誘導力においてスペルミンよりも大幅に優れていた(super−induction)。アンチザイムフレームシフトの量は、増殖阻害の程度と相互に関連することが見出された。オリゴアミンは細胞増殖の迅速な中止を誘導し、これは、フレームシフトのsuper−inductionに起因すると推定された。しかし、著者らは、これらの化合物は他の作用機構を有していて、これによって、観察されたような細胞毒性が導かれたということにも注目した。
【0009】
いくつかのアンチザイム誘導物質もODCの酵素活性を直接阻害する可能性がある。多数のプトレッシン類似体がODCの強力な可逆的阻害剤であることが判明した。例えば、1,4−ジアミノ−トランス−2−ブテンはKi値2μMでODCを阻害し、1,4−フェニレンジアミンはKi値46μMでODCをやや弱く阻害する(非特許文献34及び35)。ODCはアンチザイムの誘導を通じて直接又は間接的に阻害されるため、上記の性質を有する化合物はポリアミンの枯渇を増強可能である。
【0010】
ポリアミンは、アンチザイムを誘導することによって、G1期において前立腺細胞増殖を阻止することができる。前立腺は、脊椎動物において輸出用のポリアミンを合成する唯一の器官である。この組織はそれ自体が高濃度のポリアミンに暴露される。スペルミンは、in vivo及びin vivoにおいて天然の前立腺癌細胞増殖阻害剤であることが判明した(非特許文献36)。続いて、スペルミンは、転移性の低い前立腺癌腫においてG1の阻止を誘導し得るが悪性の高い細胞においては誘導しないことが判明した(非特許文献37)。更に、アンチザイムは転移性の低い前立腺癌腫においてのみ誘導され得た。アンチザイムは、前立腺癌細胞の細胞周期に影響を及ぼすことが後に判明し、これに伴い、G1サイクリンD1及びその関連するサイクリン依存性キナーゼcdk4と相互作用し得ることが発見された(非特許文献38)。cdk4及びサイクリンD1の分解はin vivo精製されたプロテアソームを用いるとアンチザイムに依存しユビキチンには依存しなかった。ポリアミンレベルを培養細胞において実験的に上昇させた場合、サイクリン及びキナーゼの定常状態レベルが減少した。アンチザイムを活性化する能力を有さない前立腺細胞は結局は悪性になると提唱されている(非特許文献37)。
【0011】
多数の研究が、細胞系及び動物モデルにおいてアンチザイムの一過性及び誘導性の過剰発現に着目してきた。異所性発現した誘導性アンチザイムを用いたIwataらによる研究で抗腫瘍活性が示された(非特許文献39)。この研究において、ヌードマウスに、誘導性アンチザイムベクターを発現するH−ras形質転換NIH3T3細胞を接種した。アンチザイムの誘導によりこのマウスにおける腫瘍形成が阻害され、in vitroにて細胞の死滅が誘導された。細胞内ポリアミンレベルも測定された。プトレッシン及びスペルミンは両方とも、12時間の誘導の間に完全に枯渇した。また、スペルミンはより遅くはあったが有意に減少した。これらの観察のいくつかは、グルココルチコイド(デキサメタゾン)誘導性プロモーターを用いてHZ7細胞においてアンチザイムを発現させるという別の報告においても証明された(非特許文献40)。デキサメタゾンはこの細胞系の増殖を抑制し、プトレッシンレベルを枯渇させ、スペルミジンレベルを著しく減少させたが、スペルミンレベルには影響を及ぼさなかった。外因性プトレッシンの添加により、細胞内プトレッシンレベルが回復し、スペルミジンレベルが部分的に回復した。第三の研究において、Tsujiら(非特許文献41)は、アンチザイムを安定に発現するハムスター悪性口ケラチノサイト(HCPC−1)細胞系を開発した。アンチザイムの異所性発現により、ヌードマウスにおける腫瘍の腫瘤が約50%抑制された。in vitroにおいて、異所性発現によりアンチザイム形質転換体の倍化時間が有意に増大し、アンチザイム形質転換体は軟寒天における増殖が有意に低かった。また、G1期細胞において実質的に増加し、これに対応してS期細胞において減少した。これらの細胞は形態学的改変も示し、これは末端分化(terminal differentiation)を示唆する。これに伴って、5−メチルシトシンのDNA CCGG部位の脱メチル化が増加した。アンチザイムは、癌発達時にDNAの過剰メチル化によって休止した重要な細胞遺伝子を再び活性化することによって、腫瘍抑制における新規の機構を媒介する。別の例においては、ケラチノサイトにおいてODCを過剰発現するトランスジェニックマウスは、自然発生及び誘導性の皮膚癌を高率で発症することが示された(非特許文献42)。アンチザイムを発現するこのトランスジェニックマウスの皮膚において、誘導性皮膚腫瘍の頻度の減少が観察された(非特許文献43)。
【0012】
増殖性が高く細胞代謝回転時間が18〜23時間である組織である毛包細胞の増殖においてポリアミンが中枢的な役割を果たすことが見出された。ODCは毛包成長において機能的役割を果たし、毛包成長の特徴は、活発な増殖後に毛繊維が生産され(成長期)、退縮(退行期)を通じて増殖しない期間(休止期)に入るという周期的な変異である。マウスにでは、ODCは、外胚葉細胞中の、胚発生の間に毛包が発達する部位において発現する(非特許文献44及び45)。成長期毛包の球状細胞の増殖時、ODCは細胞ポケットの基底部以外において豊富に発現する。ODCタンパク質の発現は、毛包が退行期に入ると下方制御され、休止期においては検出されない。ODCタンパク質の発現は、新たな毛包形成の開始すると再開する。震毛(顎鬚)ではODCはより複雑な発現することが見出されている。ODCは、震毛の毛幹のケラチノサイトにおいて、並びに、毛包の膨らみ近くの球状部及び外毛根鞘細胞において発現する。対照的に、ODCの発現は毛包間表皮では非常に低い。
【0013】
多数の研究により、ODCの不可逆的阻害剤であるDMFOによるODCの阻害によって哺乳動物における毛髪成長が低下することが示されている。マウスにおいては、飲料水を介してDFMOが全身に輸送されると毛髪成長が低下することが見出された(非特許文献46)。DFMOの静脈内投与によりヒツジにおいて羊毛の成長が減少し(非特許文献47)、また、ネコ及びイヌにおけるDFMOの経口投与により脱毛症及び皮膚炎が発症した(非特許文献48)。DFMOを用いて急性Trypanosoma brucei感染(アフリカ睡眠病)を治療中のヒトにおける研究から、ODCが毛包調節に作用するという証拠が更に得られた(非特許文献49)。上記治療中の患者は、主として頭皮において脱毛の兆候を示したが、これは治療を中断した後に回復した。
【0014】
スペルミジン/スペルミンN1−アセチルトランスフェラーゼ(SSAT)又はODCを過剰発現する多数のトランスジェニックマウスの開発は、変形した組織のポリアミンプールが脱毛を導くという証拠の更なる提供に寄与した(非特許文献50、51及び42)。SSATはポリアミン代謝において重要な酵素であり、スペルミンからスペルミジンへの変換及びスペルミジンからプトレッシンへの変換の速度を制限する。トランジェニックマウスモデルは両方とも永久脱毛を示し、正常な毛包が皮膚嚢胞に変換されていて、これはマウスの老化に伴って徐々に大きくなった(非特許文献50〜52及び42)。これは、表皮の厚化及び過剰な皮膚皺襞として現れた。この各々の動物モデルに共通する表現型の特徴は、皮膚におけるプトレッシンの著しい過剰蓄積であった(非特許文献53)。ポリアミン、特にプトレッシンが高レベルであると上皮細胞の連続的増殖に好都合であり、毛包嚢の形成及び脱毛を導くことが提唱されている。プトレッシンが低レベルであると外毛根鞘ケラチノサイトの分化に好都合であり、増殖は許容されない。
【0015】
ポリアミン生合成もまた免疫担当細胞の活性化の間に必須であることが示された(非特許文献54及び55)。DFMOを用いた研究により、ポリアミン枯渇療法は免疫応答を阻害可能であり、多数の自己免疫疾患に対して奏功な療法であり得ることが確認される。液性免疫応答及び細胞媒介性免疫応答は両方とも、ポリアミン枯渇の抗増殖効果による影響を受けた。腫瘍同種移植片に暴露したマウスをDFMOで治療した結果、細胞毒性T−リンパ球及び抗体応答が変異した(非特許文献56)。Singhらによる報告は、DFMO治療もまたマウスにおいて急性致死性移植片対宿主(ALGVH)疾患を軽減できることを示す(非特許文献57)。ネズミALGVHはヒトGVHのモデルを表し、これは、ヒトにおける骨髄移植の病的状態及び死亡率に寄与していて、貧血並びにT細胞の機能及び数の減少が特徴的である。この研究において、ALGVHマウスをDFMOによって治療すると、宿主の細胞毒性T細胞及びナチュラルキラー細胞数は維持されたまま、死亡率及び貧血が軽減された。DFMOを用いるポリアミン枯渇療法は狼瘡傾向(lupus−prone)メスNZB/Wマウスに対しても有効であることが示された(非特許文献58)。抗DNA抗体の産生、免疫グロブリンG及びAの合成、タンパク尿及び血尿窒素は、治療したマウスにおいて有意に減少した。
【0016】
化学療法及び放射線療法は、急速に分裂する癌細胞を標的とするが、急速に分裂する口及び腸の上皮細胞、毛包並びに骨髄中の造血細胞にも偶発的に影響を及ぼす。口又は腸の上皮細胞が損傷して枯渇した場合、その結果として薄化及び潰瘍が発症し(粘膜炎)、疼痛及び潜在的感染が導かれる。幹細胞が損傷すると口の粘膜炎も発症する。口の組織が損傷すると、特に痛む。
【0017】
正常な条件下において、腸の内面は、絨毛の陰窩における上皮幹細胞及びその子孫の増殖を通じて連続的に再生される(非特許文献59)。損傷が起こると(例えば、放射線又は細胞毒性傷害)、損傷していない幹細胞において増殖/再生が突発する。損傷を幹細胞に制限し、再生を増強するための多数の提案がなされている。1つの戦略としては、放射線又は化学療法による治療の間に細胞周期の進行を阻止し、G0又はG1に細胞を蓄積させて損傷に対する抵抗力を強化するというものがあった。また、損傷が起こり得る前に幹細胞数を増やすこと、又は、損傷後の増殖を増大させることを含む戦略もあった(非特許文献60)。ポリアミンは、特に細胞増殖の間に、腸粘膜の正常上皮細胞及び新生物上皮細胞によって腸から取り込まれる(非特許文献61)。腸上皮細胞の増殖に対するポリアミンの関与は、ラット由来の非形質転換小腸細胞系IEC−6を用いて証明されており、ポリアミンはDNA合成を増大させた(非特許文献62)。DNAトポイソメラーゼI阻害剤である化学療法剤カンプトセシンは、IEC−6細胞においてアポトーシスを誘導することができる。しかし、ポリアミンの減少は保護効果を有する可能性がある。IEC−6細胞ポリアミンをDFMOを用いて減少させると、カンプトセシンによるアポトーシスが遅くなった(非特許文献63)。これはG1細胞周期の停止によるものであり、DFMOと共にインキュベートしたIEC−6細胞で起こることが示されている(非特許文献64)。アンチザイムの誘導を介する合成及び取り込み阻害によってポリアミンをより効果的に枯渇させることによって、放射線又は化学療法の後に粘膜炎を有意に保護することができるであろう。
【非特許文献1】Pegg,A.E.Cancer Res.48:759−774(1988)
【非特許文献2】Heby,O.ら,Trends Biochem.Sci.15:153−158(1990)
【非特許文献3】Janne,J.ら,Ann.Med.23:241−259(1991)
【非特許文献4】Brooks,W.H.Med Hypotheses 44:331−338(1995)
【非特許文献5】Igarashi,K.ら,Biochem.Biophys.Res.Commun.271:559−564(2000)
【非特許文献6】Casero,R.A.ら,J.Med.Chem.44:1−26(2001)
【非特許文献7】Heby,O.Differentiation 19:1−20(1981)
【非特許文献8】Seiler,N.ら,Int.J.Biochem.22:211−218(1990)
【非特許文献9】Seiler,N.ら,J.P.Int.J.Biochem.Cell Biol.28:843−861(1996)
【非特許文献10】Kurihara,H.ら,Neurosurgery 32:372−375(1993)
【非特許文献11】Mitchell,J.L.ら,Biochem.J 299:19−22(1994)
【非特許文献12】Suzuki,T.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:8930−8934(1994)
【非特許文献13】Sakata,K.ら,Biochem.Biophys.Res.Commun 238:415−419(1997)
【非特許文献14】Sakata,K.ら,Biochem J.347:297−303(2000)
【非特許文献15】Ivanov,I.ら,Nucleic Acids Res.28:3185−3196(2000)
【非特許文献16】Ivanov,I.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:4808−4813(2000)
【非特許文献17】Tosaka,Y.ら,Genes to Cells 5:265−276(2000)
【非特許文献18】Matsufuji,S.ら,Cell 80:51−60(1995)
【非特許文献19】Hayashi,S.ら,Trends Biochem.Sci.21:27−30(1996)
【非特許文献20】Satriano,J.ら,J.Biol.Chem.273:15313−15316(1998)
【非特許文献21】Kameji,T.ら,Biochim.Biophys.Acta 717:111−117(1982)
【非特許文献22】Kern,A.D.ら,Struct.Fold.Des.7:567−581(1999)
【非特許文献23】Murakami,Y.ら,Nature 360:597−599(1992)
【非特許文献24】Tokunaga,F.ら,J.Biol.Chem.269:17382−17385(1994)
【非特許文献25】Zhu,C.ら,J.Biol.Chem.274:26425−26430(1999)
【非特許文献26】Fujita,K.ら,J.Biol.Chem.274:26424−26430(1982)
【非特許文献27】Kitani,T.ら,Biochim.Biophys.Acta 991:44−49(1989)
【非特許文献28】Murakami,Y.ら,Biochem.J.259:839−845(1989)
【非特許文献29】Murakami,Y.ら,J.Biol.Chem.271:3340−3342(1996)
【非特許文献30】Nilsson,J.ら,Biochem.,J.346:699−704(2000)
【非特許文献31】Grentzmann,G.ら,RNA 4:479−486(1998)
【非特許文献32】Howard,M.ら,Genes to Cells 6:931−941(2001)
【非特許文献33】Mitchell,J.L.A.ら,Biochem.J.Vol.366,p.663−671,2002
【非特許文献34】Relyea,N.ら,Biochem.Biophys.Res.Comm.67:392−402(1975)
【非特許文献35】Solano,F.ら,Int.J.Biochem.20:463−470(1988)
【非特許文献36】Smith,R.C.ら,Nature Med.1:1040−1045(1995)
【非特許文献37】Koike,C ら,Cancer Res.59:6109−6112,(1999)
【非特許文献38】Coffino,P.Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.2:188−194(2001)
【非特許文献39】Iwata,S.ら,Oncogene 18:165−172(1999)
【非特許文献40】Murakami,Y.ら,Biochem.J.304:183−187(1994)
【非特許文献41】Tsuji,T.ら,Oncogene 20:24−33(2001)
【非特許文献42】Megosh,L.ら,Cancer Res.55:4205−4209(1995)
【非特許文献43】Feith,D.ら,Cancer Res.61:6073−6081(2001)
【非特許文献44】Nancarrow,M.J.,ら,Mech.Dev.84:161−164(1999)
【非特許文献45】Schweizer,J.In:Molecular Biology of the Skin:The Keratinocyte,Darmon Mら,Eds,Academic Press,New York,1993,pp33−78
【非特許文献46】Takigawa,M.ら,Cancer Res,43:3732−3738(1983)
【非特許文献47】Hynd,P.I.ら,J.Invest.Dermatol.106:249−253(1996)
【非特許文献48】Crowell,J.A.ら,Fundam.Appl.Toxicol.22:341−354(1994)
【非特許文献49】Pepin,J.ら.Lancet 2:1431−1433(1987)
【非特許文献50】Pietila,M.ら,J.Biol.Chem.272:18746−18751(1997)
【非特許文献51】Suppola,S.ら,Biochemistry 7338:311−316(1999)
【非特許文献52】Soler,A.P.ら,J.Invest.Dermatol.106,1108−1113(1996)
【非特許文献53】Pietila,M.ら,J.Invest.Dermatol.116:801−805(2001)
【非特許文献54】Fillingame,R.H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 72:4042−4045,(1975)
【非特許文献55】Korpela,H.ら,Biochem.J.196:733−738(1981)
【非特許文献56】Ehrke,J.M.ら,Cancer Res.46:2798−2803(1986)
【非特許文献57】Singh,A.B.ら,Clin.Immunol.Immunopathol.65:242−246(1992)
【非特許文献58】Thomas,T.J.ら,J.Rheumatol.18:215−222(1991)
【非特許文献59】Booth,D,ら,J Natl Cancer Inst Monogr 29:16−20(2001)
【非特許文献60】Farrell,C.L.ら,Cancer Res.58:933−939(1998)
【非特許文献61】Milovic V.ら,Eur J Gastroenterol Hepathl.13:1021−5(2001)
【非特許文献62】Olaya,J.ら,In Vitro Cell Dev Biol.Anim.35:43−8,(1999)
【非特許文献63】Ray,R.M.ら,Am J Physiol Cell Physiol 278:C480−489(2000)
【非特許文献64】Ray R.M.ら,Am.J.Physiol.276:C684−91(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
理想的には、ポリアミン類似体は、in vitroにおけるDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力といったポリアミンの正常な生理的機能が変化していてはならない。また、これらの化合物は容易に代謝されずにポリアミンを再生しないことが望ましい。細胞内ポリアミンレベルの枯渇には、フレームシフトの誘導により最終的に全長アンチザイムタンパク質レベルを増大させる化合物の同定が有用であろう。これらの化合物は、癌を含む(が、これに限定されない)細胞増殖に関連する任意の疾患に対して効果的な療法であろう。これらは、それ自体、免疫系の構成要素が望ましくない増殖をするような多くの疾患において薬として有用である。例としては、喘息、炎症、自己免疫疾患、乾癬、再発狭窄症、慢性関節リウマチ、強皮症、全身性及び皮膚狼瘡エリテマトーデス、I型インスリン依存性糖尿病、組織移植、骨粗鬆症、上皮小体機能亢進症、消化性潰瘍の治療、緑内障、アルツハイマー病、クローン病及び他の炎症性腸疾患が含まれるが、これらに限定されない。また、真菌、細菌、ウイルス、及び、アフリカ睡眠病等の寄生虫因子の増殖に関連する他の病状も含まれる。これらの化合物は、皮膚上での毛髪の望ましくない増加の治療においても効果的であろう。アンチザイム誘導物質は、放射線又は化学療法による治療の間に細胞周期の進行を休止させることによって、細胞周期に関与する疾患の治療において有用であろう。好適な細胞はG0又はG1において蓄積し、これらを放射線又は化学療法誘導性の脱毛(脱毛症)及び粘膜炎から保護する。
【0019】
(図面の簡単な説明)
図1 多数のポリアミン類似体A〜S(25μM)について、アンチザイムフレームシフト誘導力をデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより試験した表である。
図2 HEK−293細胞において種々の化合物25μMに誘導されるフレームシフトを示す。
図3 HEK−293細胞における種々の化合物による用量依存性のフレームシフト誘導を示す。
図4 化合物AによるHEK−293細胞の増殖阻害を示す。
図5 HEK−293細胞における6日間のアッセイにおいて、アンチザイムフレームシフト物質(25μM)がDFMO 2.5mMに誘導される増殖阻害から細胞を保護する能力を、25μMスペルミジン(SPD)と比較したものである。
図6 化合物Aを6日間インキュベートしたことによる、HEK−293細胞ポリアミンレベル及び細胞増殖に対する影響を示すグラフである。
図7 化合物AのHEK−293細胞内濃度に及ぼす細胞外の化合物Aの影響を、HPLCで測定したものを示す。
図8 化合物Aの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)CH2=CHCN 1.2当量、CH3OH、(b)LiAlH4のTHF液。
図9 化合物Bの合成についての反応スキームを示す。
図10 図11のための中間体R基の合成についての反応スキームを示す。
図11 化合物C〜Rの合成についての反応スキームを示す。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本開示において使用可能な類似体及び誘導体は下記式I:
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):に包含されるものを含む。
【0023】
上記化合物は、天然ポリアミンの機能を変化させることなく全長アンチザイムの発現を誘導する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、本開示において使用可能な類似体及び誘導体は、式II:
【0025】
【化2】
【0026】
(式中、nは0〜8であってよく、R及びR1は上記の通りであり、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):に示すように更に修飾することができる。
【0027】
本開示において使用可能な化合物の別の好ましい実施形態を、式III:
【0028】
【化3】
【0029】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):に示す。
【0030】
本発明の別の態様は、式IV:
【0031】
【化4】
【0032】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):の化合物である。
【0033】
本発明の更なる態様において、本発明の化合物は、式V:
【0034】
【化5】
【0035】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):で表される。
【0036】
本開示は上記式I、II、III、IV及びVの新規化合物にも関するが、上記新規化合物は不斉置換キシレン誘導体である。
【0037】
言い換えると、式I中において、:
【0038】
【化6】
【0039】
:は、:
【0040】
【化7】
【0041】
:とは異なる。式II中において、:
【0042】
【化8】
【0043】
:は、:
【0044】
【化9】
【0045】
:とは異なり、式III中において、:
【0046】
【化10】
【0047】
:は、:
【0048】
【化11】
【0049】
:とは異なる。
【0050】
本開示による好ましい新規化合物は、キシレン環の一方側のみが−CH2NH2以外の基を含む化合物であり、最も好ましい化合物は図1に示すB、T及びUである。
【0051】
ポリアミン類似体は薬として、細胞ポリアミンレベルを減少させ、望ましくない細胞増殖(癌を含む)、ウイルス感染及び細菌感染の障害の治療に使用可能である。また本発明は、ポリアミン類似体を酵素分解抵抗性となるように修飾することによる、ポリアミン類似体の安定化を含む。このような修飾はアルキル基における第一級アミン基の置換、アルキル基の末端アミノ基への付加、及び、フッ素原子μの末端アミノ基への付加を含む。
【0052】
また、本発明のポリアミン類似体は、アンチザイムに調節される活性ポリアミン輸送経路以外の経路で細胞に進入するのが望ましい。従って、本発明の更なる実施形態は、細胞内への導入がポリアミントランスポーターの介入を主としない類似体である。フレームシフト活性は、良好なアンチザイム誘導物質としての唯一の必要条件である。本発明によれば、上記化合物はポリアミントランスポーターから独立して細胞に進入するのが好ましい、というのは、アンチザイムの発現によってポリアミン輸送が阻害されることが知られているからである。本発明者らは、候補として理想的な物質は、in vitroにおけるDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力といったポリアミンの正常な生理的機能が変化していてはならないと定めた。更に、本発明によれば、これらの化合物は容易に代謝されずにポリアミンを再生しないことが望ましい。本発明によれば、ポリアミンと置き換わることができるような、又は、分解してポリアミンになるような、フレームシフト活性を有する任意の化合物は、ポリアミンレベルの低減という目的を阻止することが予想されると考えられる。本発明者らの決定によれば、上記化合物は、アンチザイムフレームシフト活性に対して選択的であり、ODC又はSSAT等のポリアミン調節に関連する生合成酵素又は異化酵素に対してほとんど親和性を呈しない。上記範疇に適合する化合物は、フレームシフトを誘導すると知られる濃度において細胞内ポリアミンレベルを枯渇させるであろう。
【0053】
また、本発明は、有効量の少なくとも1つの上記開示化合物を含む医薬組成物に関する。
【0054】
本発明の更なる態様は、上記化合物の少なくとも1つの投与による細胞増殖に関連する状態の治療に関する。
【0055】
また、本開示は、図1に示すB、T又はUの少なくとも1つの投与を含む、細胞増殖に関連する1以上の状態の治療にも関する。上記状態は、癌、粘膜炎、喘息、炎症、自己免疫疾患、乾癬、再発狭窄症、慢性関節リウマチ、強皮症、全身性及び皮膚狼瘡エリテマトーデス、I型インスリン依存型糖尿病、組織移植、骨粗鬆症、上皮小体機能亢進症、消化性潰瘍の治療、緑内障、アルツハイマー病及び炎症性腸疾患からなる群より選択される状態を含むが、これらに限定されない。
【0056】
上記投与は例えば全身に対して実施可能であり、経口であってよい。更に上記投与は、望ましい場合には、徐放性ビヒクルを介するものであってよい。また、望ましい場合には、化合物R及びSは化粧品として調製することができる。
【0057】
本発明の別の態様は、図1に示すB、T又はUの少なくとも1つを毛髪成長抑制を必要とする対象に局所投与することを含む、毛髪成長の抑制に関する。
【0058】
また、本発明は、図面に示すB、T又はUの少なくとも1つを、放射線又は化学療法を受けている対象へ局所投与することを含む脱毛(脱毛症)の阻害に関する。
【0059】
また、化合物B、T及びUを用いて、真菌、細菌、ウイルス及び寄生虫因子に起因する状態を治療することもできる。
【0060】
下記に列挙したものは、本発明を説明するために用いられる種々の用語の定義である。これらの定義は、別途個別に、又は、まとまった語群のうちの一部として特定の例において限定されていない限り、本明細書を通して、用語が使用されている通りにそのまま適用されるものである。
【0061】
「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、ビフェニル及びジフェニル及びジフェニル基等の、環内に6〜12個の炭素原子を含有する単環式又は二環式の芳香族炭化水素基を指し、それぞれの基は置換基を有していてもよい。
【0062】
「アルキル」という用語は、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する、直鎖又は分枝鎖の無置換炭化水素基を指す。「低級アルキル」という表現は、1〜4個の炭素原子を有する無置換のアルキル基を指す。
【0063】
好適なアルキル基の例にはメチル、エチル及びプロピルが含まれる。分枝アルキル基の例にはイソプロピル及びt−ブチルが含まれる。
【0064】
「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を指す。
【0065】
アルコキシ基は典型的には炭素原子約1〜8個を含み、より典型的には炭素原子約1〜4個を含む。好適なアルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ及びプロポキシである。
【0066】
好適なアルカリール基の例には、ベンジル等のフェニルC1−3アルキルが含まれる。
【0067】
置換基の例としては、NO2、アルキル、CF3、アルコキシ及びハロがある。
【0068】
好適なシクロアルキル基の例は典型的には炭素原子3〜8個を含むものであり、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが含まれる。
【0069】
縮合二環式不飽和環基の例としては、2−キノリニル、3−キノリニル、5−キノリニル、6−キノリニル、7−キノリニル、1−イソキノリニル、3−イソキノリニル、6−イソキノリニル、7−イソキノリニル、3−シノリル、6−シノリル、7−シノリル、2−キナゾリニル、4−キナゾリニル、6−キナゾリニル、7−キナゾリニル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、6−キノキサリニル、1−フタラオニル、6−フタラジニル、1,5−ナフチリジン−2−イル、1,5−ナフチリジン−3−イル、1,6−ナフチリジン−3−イル、1,6−ナフチリジン−7−イル、1,7−ナフチリジン3−イル、1,7−ナフチリジン−6−イル、1,8−ナフチリジン−3−イル、2,6−ナフチリジン−6−イル、2,7−ナフチリジン−3−イル、インドリル、1H−インダゾリル、プリニル及びプテリジニルがある。縮合環基の各々についての置換は本明細書中に記載する置換基の上記基を含む。
【0070】
単環及び多環基の例としては、アリール及び二環式縮合アリール−シクロアルキル基が含まれる。アリール基は、一緒に縮合した、又は、共有結合した多環(上限3環)の1つの環であってよい芳香族置換基を含む。環は各々、N、O及びSから選択される0〜4個のヘテロ原子を含んでよく、窒素及び硫黄原子は任意に酸化されており、窒素原子は任意に四級化されている。アリール基の例としては、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、ビフェニル、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル、3−ピラゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、3−イソオキサゾリル、4−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−ピリミジル、4−ピリミジル、5−ベンゾチアゾリル、プリニル、2−ベンズイミダゾリル、5−インドリル、1−イソキノリル、5−イソキノリル、2−キノキサリニル、5−キノキサリニル、3−キノリル及び6−キノリルが含まれるが、これらに限定されない。上記アリール系の各々についての置換は本明細書中に記載する置換基の上記基を含む。
【0071】
「二環式縮合アリール−シクロアルキル」基は、アリール環(又は多環)が(シクロヘテロアルキル基を含む)シクロアルキル基に縮合した基である。上記基は、上記基のアリール部分の使用可能な原子価、又は、上記基のシクロアルキル部分の使用可能な原子価のいずれかを通じて分子の残り部分に結合できる。この例には、ベンゾテトラヒドロピラニル及び1,2,3,4−テトラヒドロナフチルが含まれる。上記基の各々についての置換基は本明細書中に記載する置換基の基を含む。
【0072】
本発明の化合物は、個々の治療薬としての医薬品、又は、治療薬の組み合わせとしての医薬品と併用できる任意の従来手段によって投与することができる。本発明の化合物は単独で投与することができるが、一般に、選択された投与経路及び薬学的な標準的慣例に基づいて選択された医薬品用担体と共に投与される。
【0073】
本発明は、上記式で示すポリアミン及び誘導体の、遊離塩基型又は遊離酸型(その塩も含む)のものを含む。更に本発明は、上記類似体及び誘導体の光学異性体をも含む。本発明の更に他の実施形態においては、単一の準備段階、組み合わせ又は相互転換の結果生じるエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物が包含される。
【0074】
種々の窒素系官能基(アミノ、ヒドロキシアミノ、ヒドラジノ、グアジニノ、アミジノ、アミド等)を有する化合物のプロドラッグの形態としては下記の種の誘導体が含まれていてもよく、R基はそれぞれ独立に、上述するように、水素、置換又は無置換のアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、複素環、アルキルアリール、アラルキル、アラルケニル、アラルキニル、シクロアルキル又はシクロアルケニルであってもよい。
(a)カルボキサミド類、−NHC(O)R
(b)カルバミン酸エステル類、−NHC(O)OR
(c)カルバミン酸(アシルオキシ)アルキルエステル類、NHC(O)OROC(O)R
(d)エナミン、−NHCR(=CHCRO2R)又は−NHCR(=CHCRONR2)
(e)シッフ(Schiff)塩基、−N=CR2
(f)マンニッヒ(Mannich)塩基(カルボキシイミド化合物由来)、RCONHCH2NR2
【0075】
上記プロドラッグ誘導体の調製は、種々の文献において議論されている(例えば、Alexanderら,J.Med.Chem.1988,31,318;Aligas‐Martinら,PCT WO pp/41531,p.30)。これらの誘導体を調製する際に変換される窒素系官能基は、本発明の化合物の窒素原子のうちの1つ(又は2つ以上)である。
【0076】
本発明の、カルボキシル基を有する化合物のプロドラッグ型の形態にはエステル(−CO2R)が含まれ、R基は、酵素的又は加水分解的プロセスにより体内に放出される量が医薬品に許容されるレベルである任意のアルコールに相当する。本発明のカルボン酸型化合物に由来する別のプロドラッグは、文献(Bodorら,J.Med.Chem.1980,23,469)に記載される下記4級塩型構造であってよい。
【0077】
【化12】
【0078】
本発明の化合物が、分子内で可能性のある種々の原子におけるすべての光学異性体及びステレオの異性体に関連するということは、当然である。
【0079】
本発明の方法において使用される化合物は、広範囲にわたる種々の有機酸及び無機酸並びに有機塩基及び無機塩基と共に、医薬品に許容される酸及び塩基が付加した塩を形成するものであり、その中には、薬化学において使用頻度の高い生理学的に許容される塩が含まれる。このような塩も本発明の一部である。上記塩を形成するために使用される典型的な無機酸には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、次リン酸等が含まれる。脂肪族モノカルボン酸及びジカルボン酸、フェニル基置換アルカン酸(alkonic acid)、ヒドロキシアルカン酸及びヒドロキシアルカンジオン酸、芳香族酸、脂肪族及び芳香族スルホン酸等の有機酸由来の塩も使用することができる。従って、上記医薬品に許容される塩には、酢酸塩、フェニル酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、o−アセトキシ安息香酸塩、ナフタレン−2−ベンゾエート、臭化物、イソ酪酸塩、フェニル酪酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、ブチン−1,4−ジオエート、ヘキシン−1,4−ジオエート、カプロン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、珪皮酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、ヘプタン酸塩、馬尿酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシラート、ニコチン酸塩、イソニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、プロピオール酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、サリチル酸塩、セバシン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、ピロ硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−ブロモベンゼンスルホン酸塩、クロロベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、酒石酸塩等が含まれる。
【0080】
塩を形成するために一般に使用される塩基には、水酸化アンモニウム、並びに、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、更に1級、2級及び3級の脂肪族アミン、脂肪族ジアミンが含まれる。付加塩の調製に特に有用な塩基には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、炭酸カリウム、メチルアミン、ジエチルアミン及びエチレンジアミンが含まれる。
【0081】
本発明は、上述の化合物及び誘導体のプロドラッグをも提供するものであり、このプロドラッグはin vivoで代謝され、上述のように化合物又は誘導体が産出される。実際には、上述の化合物又は誘導体の中には、他の化合物又は誘導体のプロドラッグになりうるものもある。この筋書きは、このプロドラッグがスペルミジン合成酵素又はスペルミン合成酵素のいずれかに対する基質である場合に妥当であり、これらの酵素は各々、アミノプロピル基をプトレッシン又はスペルミジンに変換する酵素である。
【0082】
上記化合物は、単独で、又は、他の細胞増殖阻害剤を含む他の薬品、特に他のポリアミン合成又はポリアミン輸送の阻害剤と組み合わせて使用してもよい。理論上は、本発明のポリアミン化合物はアンチザイム(AZ)を誘導することによってポリアミンレベルを減少させることが可能であり、その後、オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)によるポリアミン産生及び対応するポリアミントランスポーターによるポリアミン輸送が下方制御される。また、アンチザイムはポリアミン排出の増大を誘導し得るため、ポリアミンレベルも減少し得る。本発明は更に、アンチザイムの誘導において重要であるとアッセイにより決定された上記化合物内部の構造的要素/モチーフを定義する。ポリアミンはDNA複製にとって絶対的に必須であり、かつ、細胞のホメオスタシスにとって必須であるため、細胞内ポリアミンレベルを減少させることによる細胞増殖の阻害に関心がもたれる。ポリアミンレベルが非常に低いと、細胞の死滅に至る可能性がある。従って、特にポリアミンの生合成及び取り込み/導入の双方の阻害によりポリアミンレベルを減少させることができる任意の薬品によって、細胞増殖に関連する種々の疾患又は望ましくない状態(癌を含む)を標的とすることが可能である。
【0083】
本発明の化合物は、必ずしも天然ポリアミンのように代謝されない。本発明の化合物はそれ自体、容易に代謝されずにポリアミンを再生しないという利点を有するであろう。プトレッシン及び他のポリアミンに変換されやすいポリアミン化合物の投与は、ポリアミンレベルの低減という目的を阻止すると予想され得る。従って、本発明の一態様は、代謝によりプトレッシン又は任意の他の天然ポリアミン代謝産物にならないポリアミン化合物の産生及び使用である。また、候補として理想的な物質は、in vitroにおけるDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力といったポリアミンの正常な生理的機能が変化していてはならない。
【0084】
本発明の別の態様では、上述の化合物及び誘導体を含む組成物が提供される。好ましくは、上記組成物は、好適な担体又は賦形剤を含んだ状態で、製薬上又は農業上の使用に適合するよう調合される。
【0085】
本発明の別の態様において、上記化合物及び誘導体を含有する組成物が提供される。好ましくは、組成物は、好適な担体又は賦形剤を含めることによって、医薬又は農業的使用に適するように調製される。
【0086】
図1は、多数のポリアミンA〜S(25μM)について、アンチザイムフレームシフト誘導力をデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより試験した表である。相対的フレームシフト率(%RF)は、化合物のフレームシフト誘導力をスペルミジン25μMと比較するものである。%RFは以下のように計算した。2.5mM DFMO陰性対照で決定したフレームシフト活性率のバックグラウンドを、スペルミジン対照を含む全ての化合物についてのフレームシフト活性率から差し引いた。次いで、各化合物のフレームシフト活性をバックグラウンド補正した値を、スペルミジン25μMに誘導されたフレームシフト活性をバックグラウンド補正した値で割って、100倍した。また、上記化合物がDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力を、保護係数の決定により評価した。保護係数は、試験化合物及びDFMO 2.5mMの存在下における細胞増殖とDFMO 2.5mM単独の存在下における増殖とをO.D.で測定した比率を表す。フレームシフト−保護因子(FRF)は、フレームシフト誘導力とDFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する能力とを考慮して種々のアンチザイムフレームシフト物質の有効性を比較する際の有用な因子である。FRFは、%RF値に保護係数の逆数を乗じることによって計算した。
【0087】
図2は、HEK−293細胞において種々の化合物25μMに誘導されるフレームシフトを示す。相対的フレームシフト率(%RF)活性は上記したように決定した。結果は、平均±個々の測定値からの標準偏差として表す。
【0088】
図3は、HEK−293細胞における種々の化合物による用量依存性のフレームシフト誘導を示す。値は、AZ1−IF対照及び誘導性0〜+1 AZ1プラスミド構築体を、DFMO 2.5mMの存在下で増殖させたHEK−293細胞に一時的にトランスフェクションした後のフレームシフト率を表す。トランスフェクションした後に化合物を細胞に加え、一晩インキュベートして、翌日アッセイした。各値は3回分の測定を表す。
【0089】
図4は、化合物AによるHEK−293細胞の増殖阻害を示す。6日間の増殖アッセイの間、HEK−293細胞を、スペルミジン1μMの存在下又は非存在下において、アミノグアニジン1mM及び種々の濃度の化合物Aと共にインキュベートした。細胞数は、三連ウェルでのMTS/PMSアッセイによって決定した。
【0090】
図5は、HEK−293細胞における6日間のアッセイにおいて、アンチザイムフレームシフト物質(25μM)がDFMO 2.5mMに誘導される増殖阻害から細胞を保護する能力を、25μMスペルミジン(SPD)と比較したものである。保護係数は、試験化合物及びDFMO 2.5mMの存在下における細胞増殖とDFMO 2.5mM単独の存在下における細胞増殖とをO.D.で測定した比率を表す。
【0091】
図6は、化合物Aを6日間インキュベートしたことによる、HEK−293細胞ポリアミンレベル及び細胞増殖に対する影響を示すグラフである。全てのフラスコにアミノグアニジン1mMを入れた。細胞を洗浄して計数し、過塩素酸中で溶解させてダンシル化し、HPLCでポリアミンレベルを測定した。各値は三回分の値の平均を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0092】
図7は、化合物AのHEK−293細胞内濃度に及ぼす細胞外の化合物Aの影響を、HPLCで測定したものを示す。細胞は図6に示すように調製した。化合物のピーク面積を内部標準ジアミノヘプタンのピーク面積で割ることによって、ピーク面積を正規化した。値は少なくとも三回分の値の測定を表し、エラーバーは標準偏差を表す。
【0093】
図8は、化合物Aの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)CH2=CHCN 1.2当量、CH3OH(b)LiAlH4のTHF液。
【0094】
図9は、化合物Bの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)p−キシリレンジアミン(10当量)、CH2Cl2(b)2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド、Et3N、CH2Cl2(c)HOCH2CH2CH2CH2NPth、Ph3P、DIAD、THF(d)NH2NH2、EtOH(e)PhSH、K2CO3、DMF(f)TFA/CH2CH2/iPr3SiH、20:78:2(g)HOCH2CH2CH2NPth、Ph3P、DIAD、THF。
【0095】
図10は、図11のための中間体R基の合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)無水フタル酸、EtOH、還流(b)iBuOCOCl、NaBH4。
【0096】
図11は、化合物C〜Rの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)3−アミノプロパノール(10当量)、CH2Cl2(b)1,4−ビス−(2−ニトロベンゼンスルホンアミド)−キシリレン、Ph3P、DIAD、THF(c)中間体3.2、Ph3Ph、DIAD、THF(d)K2CO3、PhSH、DMF(e)TFA/CH2CH2/iPr3SiH、20:78:2。
【発明を実施するための最良の形態】
【0097】
下記例は本発明を更に説明するものであり、本発明は下記例に限定されない。本発明の化合物の調製に好適な一般的手法を以下の実施例に示すが、これらは限定的なものではない。
【実施例1】
【0098】
化合物Aの合成
N−(2−シアノエチル)−キシリレンジアミン(1.1)
p−キシリレンジアミン[539−48−0]6.81g(50mmoL)を無水CH3OH 250mL中に溶解してわずかに濁った溶液にアクリロニトリル3.95mL(3.18g、60mmol、1.2当量)を25℃においてアルゴン雰囲気下で滴下する。反応フラスコを遮光して5時間撹拌する。薄層クロマトグラフィー(CHCl3:iPrOH:濃NH4OH=80/18/2)により、生成物ジ−(2−シアノエチル)(Rf=0.63)及び生成物モノ−(2−シアノエチル)(Rf=0.26)物質の混合物が形成されたことが示される。微量のp−キシリレンジアミン(Rf=0.02)のみが残る。溶媒を蒸発させて得た油を、CHCl3:iPrOH:濃NH4OH(比率は、85/13/2(1L)、80/18/2(1L)、次いで、75:23:2(1L))を用いたシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、生成物ジ−(2−シアノエチル)3.90g(32%)を白色固体として得る。所望の生成物モノ−(2−シアノエチル)がその後のカラム画分中に溶出され、その重量は無色油として3.06g(32%)である。
【0099】
N−(3−アミノプロピル)−キシリレンジアミン(化合物A)
N−(2−シアノエチル)−キシリレンジアミン1.97g(10.4ミリモル)を無水THF50mL中に溶解した透明で均一な溶液に、水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)をTHF中に溶解した1M溶液30mL(30ミリモル)を、25℃においてアルゴン雰囲気下で添加する。気泡が発生して、白色沈殿が直ちに形成される。ピンク色が認められる。1時間撹拌した後、不均一な反応混合物を油浴に入れ、18時間加熱還流する。反応物を放冷し、H2O 10mLを注意深く添加する。その後、4NのNaOH 10mLを添加する。得られた混合物を4時間加熱還流し、これが少し冷めたらセライトのパッドを通してろ過する。セライトパッド上の白色沈殿をCH3OH、THF、次いで、CH2Cl2で各々2回ずつ洗浄する。ろ液を合わせて蒸発させ、油状粗生成物4.20gを得る。これを、CH3CN中に添加した濃NH4OHを濃度5%(1L)及び20%(1L)で用いるSiO2カラムクロマトグラフィーで精製して、生成物1.52g(76%)を無色透明油として得る。これをEtOH 50mLに溶解し、6NのHCl 10mLで処理した後、蒸発させる。得られた白色固体を熱EtOH 50mLに懸濁し、ちょうど十分量のH2Oで処理して、完全な溶液を形成する。この溶液を−20℃で保存して一回目の結晶を得、これをろ過して乾燥させ、純粋な生成物0.52g(16%)を得る。母液を蒸発させ、少量の溶媒で上記したように処理して、二回目の結晶0.34g(11%)を得る(図8)。
【実施例2】
【0100】
化合物Bの合成
樹脂2.2
ポリスチレンに基づく塩化トリチル樹脂10g(Rapp Polymere社、14ミリモル、1.4ミリモル/g)をCH2Cl2 30mL中に添加したものを入れた100mLの固相ペプチド合成容器に、p−キシリレンジアミン19.07g(140ミリモル、10当量)をCH2Cl2 30mL中に溶解した溶液を、25℃において30分間かけて滴下する。添加する間、容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら樹脂を撹拌する。8時間反応させる間に多量の白色沈殿が形成される。この後で樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。乾燥させた樹脂を、CH2Cl2 40mL中に添加したジエチルアミン10mLで2時間処理して、樹脂に完全にキャップをする。上記と同様に洗浄した後、一晩中かけて真空乾燥させ、生成物として樹脂を得る。この樹脂はカイザーアミン試験(Kaiser amine test)で陽性反応を呈する。
【0101】
樹脂2.3
上記工程で得られた全ての樹脂を、100mLの固相ペプチド合成容器に入れたCH2Cl2 50mLに懸濁し、2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド9.31g(42ミリモル、3当量)及びトリエチルアミン5.85mL(4.25g、42ミリモル、3当量)で25℃において処理する。容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら樹脂を4時間撹拌し、樹脂をろ過して、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0102】
樹脂2.4
上記で得られた全ての樹脂を無水THF30mLに懸濁したものに、固体状のトリフェニルホスフィン11.02g(42ミリモル、3当量)及び4−フタルイミド−1−ブタノール9.21g(42ミリモル、3当量)を添加する。容器底からアルゴンをゆっくりと流入させながら得られた懸濁液を撹拌し、同時にジイソプロピルアゾジカルボキシレート8.49g(42ミリモル、3当量)を滴下により添加する。得られた懸濁液を25℃において18時間撹拌し、溶媒をろ過して、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0103】
樹脂2.5
上記で得た全ての樹脂に、固相ペプチド合成容器に入れた無水EtOH50mL及びヒドラジン水和物50mLを添加する。得られた懸濁液を60℃に加熱し、Robins Scientific ChemFlex製モデル404オーブン中で回転させる。この温度で18時間おいた後、容器を放冷して、樹脂をろ過し、H2O、EtOH、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陽性反応を呈する。
【0104】
樹脂2.6
樹脂2.5を上記樹脂2.3の場合と同様に処理し、樹脂2.6を生成物として得る。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0105】
樹脂2.7
上記で得られた全ての樹脂2.6を無水THF30mLに懸濁した中に、固体状のトリフェニルホスフィン11.02g(42ミリモル、3当量)及びN−(3−ヒドロキシプロピル)フタルイミド8.62g(42ミリモル、3当量)を添加する。容器底からアルゴンをゆっくりと流入させながら得られた懸濁液を撹拌し、同時にジイソプロピルアゾジカルボキシレート8.49g(42ミリモル、3当量)を滴下により添加する。得られた懸濁液を25℃において18時間撹拌し、溶媒をろ過して、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0106】
N−(4−アミノ−1−ブタン−N−(3−アミノプロピル)−キシリレンジアミン(化合物B)
上記で得られた樹脂2.7 1グラムを、樹脂2.5について上記したように、EtOH及びヒドラジン水和物それぞれ10mLで60℃において18時間処理する。この温度で18時間おいた後、容器を放冷して、樹脂をろ過し、H2O、EtOH、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陽性反応を呈する。得られた樹脂を、K2CO3 1.74g(12.6ミリモル、9当量)及びチオフェノール1.29mL(12.6ミリモル、9当量)を無水DMF10mL中に添加したもので25℃において3時間処理する。この樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×15mL)で洗浄して得た生成物は、カイザーアミン試験で陽性反応を呈した。この樹脂をTFA/CH2Cl2/iPr3SiH(20:78:2)10mLに懸濁し、プラットフォームシェーカーにて30分間撹拌する。この樹脂をろ過し、CH2Cl2 20mLで3回、次いで、CH3OHで3回撹拌する。ろ液を合わせて蒸発させ、化合物Bを粗テトラトリフルオロ酢酸塩として得る。これは、CH3CN中に添加した濃NH4OHを5〜40%勾配にしたシリカゲルにより、フラクションコレクターを用いて精製することができる。得られた画分をTLC(Rf=0.34、CH3CN/濃NH4OH=70:30)によって分析し、純粋な生成物を含有する画分を合わせて蒸発させ、純粋な化合物Bを透明な油として得る。CH3OH 20mLに溶解して過剰量の6N HClで処理することによって、これをテトラヒドロクロリド塩に完全に変換する。溶媒の蒸発により、白色固体149mg(26%)を得る(図9)。
【0107】
化合物C〜Rに対する樹脂前駆体(樹脂4.2)
ポリスチレンに基づく塩化トリチル樹脂10g(Rapp Polymer社、14ミリモル、1.4ミリモル/g)をCH2Cl2 30mL中に添加したものを入れた100mLの固相ペプチド合成容器に、3−アミノプロパノール10.51g(140ミリモル、10当量)をCH2Cl2 30mL中に溶解した溶液を、25℃において30分間かけて滴下する。添加する間に、容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら樹脂を撹拌する。反応を5時間進行させる。この後で樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。乾燥させた樹脂を、CH2Cl2 40mL中に添加したジエチルアミン10mLで2時間処理して、樹脂に完全にキャップをする。上記と同様に洗浄した後、一晩中かけて真空乾燥させ、生成物として樹脂を得る。この樹脂は、カイザーアミン試験で陰性反応を呈する。
【0108】
1,4−ビス−(2−ニトロベンゼンスルホンアミド)−キシレン
無水ピリジン120mL中に添加した1,4−キシリレンジアミン13.62g(100ミリモル)に、氷浴中でアルゴンを流しながら、固体状の2−ニトロベンゼンスルホニルクロリド48.76g(220ミリモル)を少量ずつ添加する。反応を室温まで加温し、18時間撹拌する。ピリジンの大部分をロータリーエバポレーターによって除去し(rotoevaporation)、油状残渣をCH2Cl2 250mLに溶解し、飽和CuSO4、次いで、H2O及びブラインで洗浄する。乾燥かつ蒸発させることによって、粗生成物を黄色味がかった固体として得る。CHCl3/CH3OH=98:2を用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製により、生成物39.5g(78%)を白色固体として得る。
【0109】
樹脂4.2
上記で得た樹脂4.1 2gに、1,4−ビス−(2−ニトロベンゼンスルホンアミド)−キシリレン4.2g(3当量)及びトリフェニルホスフィン2.20g(3当量)を無水THF20mL中に添加したものを添加する。得られた懸濁液にジイソプロピルアゾジカルボキシレート1.65gを室温において45分間かけて滴下する。その後、容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら、樹脂を18時間撹拌する。この後で樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×25mL)で洗浄する。この樹脂はカイザーアミン試験で陰性を呈する。
【実施例3】
【0110】
化合物Cの合成
樹脂4.3
樹脂4.2 0.5g及びトリフェニルホスフィン0.55g(3当量)を無水THF10mLに懸濁したものに、図10に示す経路を介して生じた2−メチル−2−フタルイミド−1−エタノール0.43gを添加する(図1の他の化合物は好適な前駆体分子を使用して生じる)。得られた懸濁液にジイソプロピル−アゾジカルボキシレート0.42gを室温において45分間にかけて滴下する。その後、容器底のフリットからアルゴンをゆっくりと流入させながら、樹脂を18時間撹拌する。この後で樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH3Cl2(各々、3×25mL)で洗浄する。この樹脂はカイザーアミン試験で陰性を呈する。
【0111】
N−(3−アミノプロピル)−N’−(2−メチル−2−アミノエチル)−1,4−キシリレンジアミン(化合物C)
上記で得られた樹脂4.2の0.25グラム分に、EtOH及びヒドラジン水和物を各々10mLずつ添加する。上記樹脂2.5と同様にして、この樹脂を60℃において18時間加熱する。この温度で18時間おいた後、容器を放冷して、樹脂をろ過し、H2O、EtOH、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×75mL)で洗浄する。この樹脂を真空下で一晩乾燥させて得た生成物は、カイザーアミン試験で陽性反応を呈する。得られた樹脂を、K2CO3 0.435g(3.15ミリモル、9当量)及びチオフェノール0.32mL(3.15ミリモル、9当量)を無水DMF10mL中に添加したもので、25℃において3時間処理する。この樹脂をろ過し、CH2Cl2、iPrOH、DMF、THF、次いで、CH2Cl2(各々、3×15mL)で洗浄して得た生成物はカイザーアミン試験で陽性反応を呈する。次いで、この樹脂をTFA/CH2Cl2/iPr3SiH(20:78:2)10mLに懸濁し、プラットフォームシェーカーにて30分間撹拌する。この樹脂をろ過し、CH2Cl2 20mLで3回、次いで、CH3OHで3回洗浄する。ろ液を合わせ蒸発させ、化合物Cを粗テトラトリフルオロ酢酸塩として得る。これは、CH3CN中に添加した濃NH4OHを5〜40%勾配としたシリカゲルにより、フラクションコレクターを用いて精製することができる。この得られた画分をTLC(Rf=0.18、CH3CN/濃NH4OH=70:30)によって分析し、純粋な生成物を含有する画分を合わせて蒸発させ、純粋な化合物Cを遊離塩基の状態で透明な油として得る。CH3OH 20mLに溶解させて過剰量の6N HClで処理することによって、これをテトラヒドロクロリド塩に完全に変換させる。溶媒の蒸発により、白色固体30mg(22%)を得る(図11)。
【実施例4】
【0112】
細胞培養と試薬
全ての細胞系をATCC(マナッサス、バージニア州)から入手し、推奨の培地、血清及びCO2濃度において培養する。培地は、Mediatech社(ハーンドン、ワシントン州)から、また血清はGibco BRL社(ゲイザースバーグ、メリーランド州)から入手する。ペニシリン50U/mL、ストレプトマイシン50mg/mL及びL−グルタミン2mM(いずれもバイオウィッタカー社(ウォーカーズビル、メリーランド州)製)は全ての培地に含まれている。細胞をポリアミン又はポリアミン類似体と共に培養する際には、血清アミンオキシターゼ活性を阻害するためにアミノグアニジン(AG;シグマ社)1mMを含有する。DFMOはAdvanced ChemTech社(ルイヴィル,ケンタッキー州)から入手する。
【実施例5】
【0113】
ポリアミン類似体によるアンチザイムフレームシフトの誘導
上記化合物に対し、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイを用い、フレームシフト誘導力についてスクリーニングする。HEK−293細胞を、DFMO 2.5mMを含有する培地(10%胎児ウシ血清(Gibco社)、1%ペニシリン、ストレプトマイシン及びL−グルタミンを添加したDMEM)100μL中で、1ウェル当たり細胞15000個にて、側面が白色で底面が透明な96ウェルアッセイプレートで平板培養する。上記細胞を5%CO2雰囲気下で37℃において2日間インキュベートする。培地を除去した後、細胞を、無血清DMEMを用いてリポフェクタミン試薬(Life Technologies社)でトランスフェクションする。全ての細胞を、好適なプラスミドDNA100ng及びリポフェクタミン0.3μLをDFMO 2.5mMを含有する無血清DMEM50μL中に添加したもので一晩トランスフェクションする。翌日、DFMO 3.1mM、アミノグアニジン2.5mM及び25%FBSを含有する培地を1ウェル当たり40μL添加する。化合物を水又は培地中に0.25mMに希釈し、1ウェル当たり10μLを添加して、最終濃度を25μMとする。陽性対照はスペルミジン25μMを含有し、陰性対照には化合物を添加しない。細胞を5%CO2雰囲気下で37℃において一晩インキュベートし、1×PBSで1回洗浄し、passive lysis buffer(プロメガ社)50μLで溶解させ、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイ系(プロメガ社)を用いてレニラ及びホタルルシフェラーゼ活性についてアッセイする。フレームシフト活性率は、誘導性0〜+1 AZ1構築体でトランスフェクションした細胞におけるレニラルシフェラーゼ活性に対するホタルルシフェラーゼの比率を、対照ベクターAZ−IFでトランスフェクションした細胞におけるレニラルシフェラーゼ活性に対するホタルルシフェラーゼの比率で割って、100倍することによって決定する。
【0114】
相対フレームシフト率(%RF)は、化合物のフレームシフト誘導力をスペルミジン25μMと比較するものである。上記%RFは以下のように計算される。2.5mM DFMO陰性対照で決定したフレームシフト活性率のバックグラウンドを、スペルミジン対照を含む全ての化合物についてのフレームシフト活性率から差し引く。次いで、各化合物のフレームシフト活性をバックグラウンド補正した値を、スペルミジン25μMに誘導されたフレームシフト活性をバックグラウンド補正した値で割って、100倍する。
【0115】
上記スクリーニングから、多数の化合物がフレームシフトを誘導することが分かる(図1及び図2)。これらの化合物のいくつかは同一濃度(25μM)のスペルミジンよりもフレームシフトを実質的に良好に誘導する。アンチザイムフレームシフト誘導力を決定するために、ポリアミンであるスペルミン、スペルミジン、プトレッシン及び化合物Aについてもデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて力価を測定する(図3)。EC50は、図3におけるプラトー値から測定した際に最大フレームシフト率の50%をもたらす化合物の濃度を表す。上記力価測定は、フレームシフト誘導についてのEC50値が3つのポリアミン全てにおいて約1μMであり、スペルミジン(0.56μM)>スペルミン(0.68μM)>プトレッシン(0.95μM)の順であることを示す。化合物AはフレームシフトについてのEC50が低く、約120μMである。また、フレームシフトの最大レベルは、プトレッシン、スペルミジン、スペルミン及び化合物Aでは異なる。
【0116】
一般的に、ポリアミンによるフレームシフト誘導力の順は、スペルミンが最も優れており、続いてスペルミジン、その次がプトレッシンであると報告されている。しかし、本研究においては(図3)、全てのポリアミンのEC50値が類似しており、0.5〜1.0μMの間である。スペルミンが同様の値を有するということが報告されている(Mitchell,J.L.A.ら,Biochem.J.Vol.366,p.663−671,2002)。細胞に基づくアッセイにおいて、プトレッシン及びスペルミジンは、各々スペルミジン合成酵素又はスペルミン合成酵素によってアミノプロピル基の移動を介して細胞内でスペルミジン及びスペルミンに変換され得る。プトレッシン及びスペルミジンについて観察されたフレームシフト活性は、実際には、アッセイ中に合成されたポリアミンについての活性を合わせたものを反映している可能性があると考えることができる。
【実施例6】
【0117】
増殖阻害アッセイ
細胞を96ウェルプレートで平板培養し、アッセイ中に対数増殖させる。平板培養後、ポリアミン類似体を細胞に添加し、増殖したら、適切な場合にはAG 1mM及びSPD 1μMの存在下で増殖を6日間継続させる。6日間終了後、細胞増殖をMTS/PMS染色アッセイによって測定する(Cell Titer 96 Aqueous Non−Radioactive Cell Proliferation Assay;プロメガ社,マディソン,ウィスコンシン州)。ID50とは、最大細胞増殖阻害の50%をもたらすポリアミン類似体の濃度を指す。
【0118】
HEK−293細胞の細胞増殖は、化合物Aによって阻害される(図4)。このポリアミン類似体による増殖阻害のIC50は約60μMであることが分かる。スペルミジン1μMの添加により、3〜100μMの化合物Aによる増殖阻害から細胞が保護された(図4)。これらの結果は、細胞への進入においてスペルミジンと化合物Aとが競合すること、及び、化合物Aは少なくとも部分的にポリアミントランスポーターを通じて細胞に進入することを示唆する。
【実施例7】
【0119】
ポリアミン類似体、及び、DFMO誘導性増殖阻害からの保護
アンチザイムフレームシフトを誘導することが見出された化合物に対して、DFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護するという望ましくない能力について評価する(図1及び図5)。HEK−293細胞を、培地(10%胎児ウシ血清(Gibco社)、1%ペニシリン、ストレプトマイシン及びL−グルタミンを添加したDMEM)100μL中で1ウェル当たり細胞1000個にて96ウェルアッセイプレートで平板培養する。細胞を5%CO2雰囲気下で37℃において一晩インキュベートする。翌日、最終的な培地容量200μL中で化合物の最終濃度が25μM、(血清アミンオキシダーゼを阻害する)アミノグアニジン1mM及びDFMO 2.5mMとなるように、化合物を添加する。陽性対照はスペルミジン25μMを含むものであった。細胞を6日間インキュベートし、その後、細胞増殖をMTS/PMS染色アッセイによって測定する(Cell Titer 96 Aqueous Non−Radioactive Cell Proliferation Assay、プロメガ社)。図1及び図5における保護係数をO.D.の比率として表す((化合物+DFMO 2.5mM)/O.D.(DFMO 2.5mM単独))。これより、DFMO単独の値は1である。保護しないという所望の効果を有する場合、その薬はDFMO単独に近い値(すなわち、約1)を有する。上記値が1未満であると、化合物は増殖阻害性である。上記値が0であると、化合物は細胞毒性を有する。DFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護する化合物についての比率は1よりも高く、治療剤としてはあまり望ましくない。
【0120】
図5に示すように、化合物A及びBは共に、DFMO誘導性増殖阻害から細胞を有意に保護しない。化合物Aは、スペルミジン対照と比較して最も効果が低い。アグマチンは、A及びBのいずれよりも、DFMO誘導性増殖阻害から細胞を幾分良好に保護する。
【0121】
種々のアンチザイムフレームシフト物質の有効性を比較する有用な因子において、フレームシフト誘導力、及び、DFMO誘導性増殖阻害から細胞を保護不可能であるということが考慮される。この尺度はフレームシフト−保護因子(FRF)という。FRFは、%RF値に保護係数の逆数を乗ずることによって計算される。この方法によって、複数のデータパラメータの分析が大幅に単純化される。%RF値が低いか又は保護係数が高い場合、その化合物は候補物質として特に有力ではない。化合物A、B及びアグマチンについての上記分析から、FRF値120、83及び17がそれぞれ得られる。この分析方法に基づき、化合物Aは、ポリアミンレベルを枯渇させる能力、及び、細胞増殖阻害力が最大である可能性がある。
【実施例8】
【0122】
化合物Aによる細胞内ポリアミンレベルの枯渇
化合物Aを更に評価し、HEK−293細胞において細胞内ポリアミンレベルが用量依存的に枯渇するか否かを調べる(図6)。HEK−293細胞を300000個/mLにて75cm2のフラスコ中で平板培養し、実験中に対数増殖するようにする。5%CO2雰囲気下で37℃において一晩インキュベートした後、化合物Aをアミノグアニジン1mMと共に添加する。次いで、5%CO2雰囲気下でフラスコを37℃において6日間インキュベートする。1×氷冷PBSで2回洗浄して細胞を回収し、トリプシン処理して計数し、0.4N過塩素酸に溶解する。全ダンシル化反応において、ジアミノヘプタンを内部標準として使用する。化合物のピーク面積を内部標準のピーク面積で割ることによって、ピーク面積を正規化する。細胞抽出物からのポリアミンのフルオロメーターによる検出のためのHPLC法は、Kabraによる手法に基づく(Kabra,P.M.ら,J.Chromatogr.380:19−32(1986))。
【0123】
化合物Aがフレームシフトを誘導し、これによりアンチザイムレベルが上昇する場合、細胞内ポリアミンレベルは減少すると予測される。このことはHEK−293細胞で観察され、これによってポリアミンの細胞内レベルの有意な減少が示される(図6)。プトレッシンは上記処理に対する感受性が最も高く、試験した最低濃度においては検出不可能である。スペルミジンレベルは10μMにおいて約90%減少し、化合物A 100μMと共にインキュベートした場合には検出不可能である。また、細胞増殖にも影響がおよび、10μMにおいて32%、30μMにおいて38.5%減少する。ODC阻害に関連する多くのポリアミン枯渇療法で一般的に見出されているように、スペルミンレベルは初期は定常状態であった。しかし、スペルミンレベルは100μMにおいて50%減少する。また、化合物Aの細胞内レベルは用量依存的に増大する(図7)。
【0124】
細胞増殖阻害はポリアミンレベルの減少と正に相関する(図6)。プトレッシン及びスペルミジンの細胞内レベルの大幅な減少は、細胞増殖の初期の阻害に至る可能性がある。化合物Aのレベルが30μMを超えると、スペルミンレベルが減少し始めて正常の約50%までに至る。スペルミンレベルが正常の50%未満になると、細胞の死滅が起こる可能性がある。このことは、細胞内スペルミン濃度が正常の約50%に減少しても細胞増殖が減少し続けるという事実によって支持される。恐らく、化合物Aの細胞外レベルが増大すると、細胞内スペルミンレベルを正常の50%の臨界レベルに維持する細胞が減少するであろう。50%閾値レベルは、(プレートに付着したままの)生細胞のみを回収して細胞内ポリアミンレベルを決定することによって明らかとする。恐らくは、死滅した細胞は、そのスペルミンレベルが50%未満となることによって死滅するのであろう。
【実施例9】
【0125】
ポリアミン類似体とアグマチンの能力
アグマチンは、上記以外の、アンチザイムフレームシフトを誘導すると報告された化合物である(Satraino,J.ら,J.Biol.Chem.273:15313−15316(1998))。アグマチンは4mMにおいて最大フレームシフト効率を有することが報告されている。また、アグマチンは、1mMにおいて最大の増殖阻害でもってマウス腎臓近位尿細管(MCT)の細胞増殖を阻害することも観察によって分かっている。MediQuest Therapeutics社における研究から、アグマチンが、MDA−MB−231細胞において約2mM、前立腺PC−3細胞系において5mM、及び、HEK−293細胞において0.21mMのIC50にて増殖を阻害することが分かった(データは示さず)。化合物A及びBは両方とも、アンチザイムフレームシフトの誘導においてアグマチンよりも優れていることが分かる(図2)。また、化合物Aは、より優れたHEK−293細胞増殖阻害剤であってIC50が60μMであり、1mMにおいて細胞毒性を有する。アンチザイムの強制発現によって細胞死が誘導される可能性があることが従来から示されている。化合物Aが1mMにおいて細胞毒性を有することから、アンチザイムレベルが十分高く閾値レベルに到達すると優れたアンチザイム誘導物質は細胞毒性を有し得ることが示唆される。
【実施例10】
【0126】
ポリアミン輸送を阻害し、アンチザイムフレームシフトを誘導するポリアミン類似体
ポリアミン輸送を阻害する多数の化合物が近年開発されている(Huber,M.ら,J.Biol.Chem.271:27556−27563(1996);Covassin,L.ら Bioorg.Med.Chem.Lett.9:1709−1714(1999);Zhang,M.ら,J.Mol.Med.5:595−605(1999);Aziz,S.M.ら,J.Pharmacol.Exp.Ther.274:181−186(1995);Tomasi,S.ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.8:635−640(1998);Cullis,P.M.ら,Chem.Biol.6:717−729(1999);Chao,J.ら,Mol.Pharmacol.51:861−871(1997);Weeks,R.S.ら,Exp.Cell.Res.261:293−302(2000);Burns,M.R.ら,J.Med.Chem.44:36232−3644(2001);Graminski,G.F.ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.12:35−40(2002))。これらの化合物はトランスポーターには結合するがそれ自体はトランスポーターの基質ではない、と一般的に考えられている。報告された上記多数の輸送阻害剤は、アンチザイムを活性化することによって間接的にトランスポーターを阻害し得ると考えられる。例えば、Poulinは、sym−ノルスペルミジンを、その第二級アミノ基を介して平面p−キシリル架橋剤等の化合物とを架橋する優れた輸送阻害剤について記載している(Covassin,L.ら,Bioorg.Med.Chem.Lett.9:1709−1714(1999))。1,4−ビス[ビス(3−アミノプロピル)キシレンジアミン類似体(化合物S)はアンチザイムフレームシフトを誘導することが、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより判明している。この化合物は濃度25μMにおいて、フレームシフトを%RF 100で誘導することが分かる。また、DFMO 2.5mMに誘導される増殖阻害から保護する能力について試験すると、25μMでは保護能力を示さない(図1)。これらの結果は、1,4−ビス[ビス(3−アミノプロピル)キシレンジアミンが細胞に進入できること、及び、全長アンチザイムの誘導によって少なくとも部分的に輸送を阻害できることを示唆する。
【0127】
本出願に記載する医薬品に許容される担体、例えばビヒクル、補助剤、賦形剤又は希釈剤は、当業者に周知のものである。典型的には、医薬品に許容される担体は、有効化合物に対して化学的に不活性で、使用条件下で有害な副作用や毒性がないものである。医薬品に許容される担体にはポリマー及びポリマーマトリクスが含まれてもよい。
【0128】
本発明の化合物は、単一の治療薬として、あるいは、治療薬の組み合わせとして、医薬品に対して使用可能な任意の従来の手段によって投与可能である。
【0129】
当然ながら、投薬量は、個々の薬剤の薬力学的特性、その投与形態及び投与経路;投薬対象者の年齢、健康状態及び体重;症状の性質及び程度;同時に行う治療の種類;治療回数;並びに、所望の効果等の既知の要因によって異なるであろう。有効成分の1日当たりの投与量は、体重1キログラム(kg)当たり約0.001〜1000ミリグラム(mg)、好ましい投与量は0.1〜約30mg/kgであると予想することができる。
【0130】
(投与に適した組成物の)剤形には、1単位当たり約1mg〜約500mgの有効成分が含まれている。これらの医薬組成物中には、有効成分は通常、組成物総重量の約0.5〜95重量%含有されるであろう。
【0131】
上記有効成分は、カプセル、錠剤及び粉末等の固体状、又は、エリキシル剤、シロップ剤及び懸濁液等の液状で経口投与可能である。また上記有効成分は、滅菌液状で非経口的にも投与可能である。上記有効成分は更に、鼻腔内に(点鼻剤)、又は、乾燥させた薬のミストの吸入によっても投与可能である。他の剤形としては、パッチ構造又は軟膏としての経皮的投与等も可能であろう。
【0132】
経口投与に好適な調製物は、(a)有効量の化合物を、水、食塩水又はオレンジジュース等の希釈剤に溶解させた液体溶液;(b)(それぞれ所定量の有効成分を含む)カプセル、サッシェ、錠剤、甘味つき錠剤及びトローチ等の固体又は顆粒;(c)粉末;(d)好適な液体中の懸濁液;並びに(e)好適な乳剤;からなるものが考えられる。液体の調製物としては、水及びアルコール(例えばエタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレンアルコール)等の希釈剤を含んでいてもよく、医薬品に許容される界面活性剤、懸濁剤又は乳化剤が添加されてもされていなくてもよい。カプセルとしては、界面活性剤、滑剤、並びに、例えばラクトース、スクロース、リン酸カルシウム及びコーンスターチ等の不活性充填剤を含む、通常のハード又はソフトシェル型ゼラチンタイプのものが考えられる。錠剤には、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、バレイショデンプン、アルギン酸、微結晶セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアーガム、膠質二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、並びに、他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、崩壊剤、湿潤剤、防腐剤、香味料及び薬学的に適合性のある担体のうち、1種以上のものを含有させることができる。更に、甘味つき錠剤は、香味料中に、通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガカント中に有効成分を含んでいてよく、またトローチは、ゼラチン及びグリセリン等の不活性基剤、又は、スクロース及びアラビアゴム中に有効成分を含んでいてよく、更に乳剤及びゲル剤は、有効成分に加えて、当該技術分野で知られているような担体を含んでいてよい。
【0133】
本発明の化合物は、単独で、又は、他の好適な成分と組み合わせて、吸入によって投与されるエアロゾル調製物にすることができる。このエアロゾル調製物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン及び窒素等の許容される加圧不活性ガス中に入れることができる。更に、上記エアロゾル調製物は、ネブライザー又はアトマイザー等の非加圧式薬剤として調剤してもよい。
【0134】
非経口投与に好適な調製物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び、目的の投薬対象者の血液と調製物を等張にする溶質を含んでいてもよい水性又は非水性の等張滅菌注射溶液、並びに、懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び防腐剤を含んでいてよい水性又は非水性の滅菌懸濁液が含まれる。上記化合物は、医薬品用担体中の生理的に許容される希釈剤中に添加した状態で投与することができ、上記希釈剤としては、例えば水、食塩水、デキストロース及び関連の糖水溶液;エタノール、イソプロパノール又はヘキサデシルアルコール等のアルコール類;プロピレングリコール、又は、ポリ(エチレングリコール)400等のポリエチレングリコール等のグリコール類;2,2−ジメチル−1、3−ジオキソラン−4−メタノール等のグリセリンケタール類;エーテル類、油(オイル)類、脂肪酸、脂肪酸エステル若しくはグリセリド、又は、アセチル化脂肪酸グリセリド等を含む滅菌液体又は液体混合物が挙げられ、これには、石鹸若しくは洗浄剤等の医薬品に許容される界面活性剤、ペクチン、カルボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース若しくはカルボキシメチルセルロース等の懸濁剤、又は、乳化剤及び他の医薬品用補助剤を含まれていても含まれていなくてもよい。
【0135】
非経口投与用調製物において使用することができる油類には、石油性油、動物性油、植物性油及び合成油が含まれる。油類には具体的に、ピーナッツ油、大豆油、ごま油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ペトロラタム及び鉱油が含まれる。非経口投与用調製物において使用される好適な脂肪酸には、オレイン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸が含まれる。好適な脂肪酸エステルの例としては、オレイン酸エチル及びミリスチン酸イソプロピルがある。非経口投与用調製物において使用される好適な石鹸には、脂肪酸アルカリ金属塩類、脂肪酸アンモニウム塩類及び脂肪酸トリエタノールアミン塩類が含まれ、好適な界面活性剤には、(a)陽イオン洗剤、例えばジメチルジアルキルアンモニウムハライド及びアルキルピリジニウムハライド等、(b)陰イオン洗剤、例えばスルホン酸アルキル、スルホン酸アリール及びオレフィンスルホナート、硫酸アルキル、オレフィンサルフェート、硫酸エーテル及び硫酸モノグリセリド、並びに、スルホコハク酸塩等、(c)非イオン性洗剤、例えば脂肪族アミン酸化物、脂肪酸アルカノールアミド及びポリオキシエチレン−ポリプロピレン共重合体、(d)両性洗剤、例えばアルキル−β−アミノプロピオネート及び2−アルキルイミダゾリン四級アンモニウム塩等、並びに、e)それらの混合物等が含まれる。
【0136】
非経口投与用調製物は、典型的には、溶液中に約0.5重量%〜約25重量%の有効成分を含む。この調製物中で、好適な防腐剤及び緩衝剤を使用することができる。注射する部位での刺激を最小限にするために、又は、刺激を取り除くために、上記組成物は、親水性と親油性バランス(HLB)が約12〜約17である1種以上の非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい。上記調製物中における界面活性剤の量は、約5重量%〜約15重量%の範囲である。好適な界面活性剤には、ソルビタンモノオレエート等のポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル、及び、プロピレンオキシドとプロピレングリコールの縮合によって形成される、疎水性塩基を有するエチレンオキシドの高分子付加体等が含まれる。
【0137】
更に、医薬品に許容される賦形剤もまた当業者に周知である。賦形剤は、幾分は具体的な化合物に応じて選択され、かつ、組成物の具体的な投与方法に応じて選択されるであろう。従って本発明の医薬組成物には、種々の好適な調製物態様がある。下記方法及び賦形剤は単に例として示すものであり、これらに限定することは全く意図していない。医薬品に許容される賦形剤は、有効成分の作用を妨害せず、かつ、有害な副作用を引き起こさないものが好ましい。好適な担体及び賦形剤には、水、アルコール及びプロピレングリコール等の溶剤、固体吸着剤及び希釈剤、界面活性剤、懸濁剤、錠剤形成用結合剤、滑剤、香味料及び着色剤が含まれる。
【0138】
上記調製物は、アンプル及びバイアル等の1回服用分密封容器又は複数回服用分含有密封容器にすることができ、フリーズドライ(凍結乾燥)した状態で保存することができ、これにより、使用直前に注射用の滅菌液体賦形剤(例えば水)を添加するだけで使用できる。注射溶液及び懸濁液は、滅菌した粉末、顆粒及び錠剤からその場で調製することもできる。注射用組成物のための有効な医薬品用担体に対する必要条件は、当業者に周知である。Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B. Lippincott Co.,Philadelphia,PA, Banker and Chalmers,Eds.,238−250(1982)、及び、ASHP Handbook on Injectable Drugs, Toissel,4th ed.,622−630(1986)を参照のこと。
【0139】
局所投与に好適な調製物には、香味料(通常はスクロース及びアラビアゴム又はトラガント)中に有効成分を含む甘味入り錠剤;ゼラチン及びグリセリン等の不活性基剤、又は、スクロース及びアラビアゴム中に有効成分を含むトローチ;好適な液体担体中に有効成分を含む口内洗浄剤;並びに、有効成分に加えて当業者に公知の担体を含むクリーム剤、乳剤及びゲル剤が含まれる。
【0140】
更に、直腸投与に好適な調製物としては、乳化性基剤又は水溶性基剤等の種々の基剤と混合することにより得られる坐剤があげられる。膣投与に好適な調製物としては、有効成分に加えて、好適な担体として当業者に公知の担体を含む、膣坐剤、タンポン、クリーム、ゲル剤、ペースト剤、泡剤又はスプレー剤等が挙げられる。
【0141】
好適な医薬品用担体は、本分野で標準的な参考書である、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company)で説明されている。
【0142】
本発明の範囲内における動物(特にヒト)に投与される投薬量は、妥当な時間枠を超えた場合に、治療に対する反応を動物体内で生じさせることのできる量であるべきである。当業者であれば、動物の状態、動物の体重、及び、治療する状態等の種々の要因に応じて投薬量が異なることを認識し得る。
【0143】
好適な投薬量は、患者体内で有効成分の濃度が所望の反応を生じさせることが知られる濃度となるような量である。
【0144】
また、投薬量の程度は、投与の経路、タイミング及び頻度と同時に、化合物の投与に伴って生じる可能性のある副作用の有無、性質及び程度、並びに、所望の生理学的作用によって決定されるであろう。
【0145】
本発明の化合物の投与に有用な医薬品の剤形は、例えば以下である。
【0146】
ハードシェルカプセル
粉末状有効成分100mg、ラクトース150mg、セルロース50mg及びステアリン酸マグネシウム6mgを標準的なツーピース式ハードゼラチンカプセル中に充填することにより、カプセル単位を多数調製する。
【0147】
ソフトゼラチンカプセル
大豆油、綿実油又はオリーブ油等の消化容易な油中に有効成分を混合した混合物を調製し、溶融させたゼラチン中にこの混合物を容積移送式ポンプを使用して注入することにより、有効成分を100mg含むソフトゼラチンカプセルを形成する。カプセルを洗浄し乾燥させる。有効成分は、ポリエチレングリコール、グリセリン及びソルビトールの混合物中に溶解させて、水混和性医薬混合物を作ることができる。
【0148】
錠剤
一錠あたりの処方量が、有効成分100mg、謬質二酸化ケイ素0.2mg、ステアリン酸マグネシウム5mg、結晶セルロース275mg、デンプン11mg及びラクトース98.8mgとなるように、従来の方法によって多数の錠剤を製造する。好適な水性・非水性のコーティングを施すことにより、飲みやすさを向上せたり、上品さや安定性を改善したり、あるいは吸収を遅らせることもできる。
【0149】
即放性錠剤/カプセル
これらは、従来法及び新規方法によって作製される固体経口投与用の剤形である。これらの剤型単位は、薬剤が即時に溶解して送達されるように、水なしで経口投与する。有効成分は、糖、ゼラチン、ペクチン及び甘味料等の成分を含む液体中に混合する。これらの液体は、凍結乾燥及び固体抽出技術によって固体化して固体の錠剤又はカプレットとする。薬剤用調製物は、水を使わずに、粘弾性でかつ熱弾性の糖、及び、ポリマー又は発泡性成分と共に打錠することによって、即放性を目的とした多孔性マトリクスを製造してもよい。
【0150】
更に、本発明の化合物は、点鼻剤の形で投与可能であり、また、投薬量を計量して投与可能であり、経鼻頬吸入によっても投与可能である。薬剤は点鼻液から微細なミストとして送達されるか、あるいはエアロゾルとして粉末から送達される。
【0151】
上記の発明の説明は、本発明を例証し、説明するためのものである。更に、開示内容は、発明の好ましい実施形態のみを示し、説明するものであるが、上述の通り、本発明は種々の他の組み合わせ、変更及び環境において使用できるものであって、本明細書に表された発明の概念を逸脱しない範囲で変更・改良ができることは、上述の教示及び/又は関連する技術分野のスキル若しくは知識に従えば理解されるはずである。更に上述の実施形態は、本発明を実施する上で知られている最良の形態を説明することを意図したものであり、また他の当業者が本発明を上記の通りに、又は、他の実施形態において、本発明の具体的な用途又は使用において必要な種々の変更を伴って利用できるよう意図したものである。従って、本出願の説明は、本発明を本明細書に開示された態様に限定されることを意図したものではない。更に添付の請求の範囲は、別の実施形態をも含むものとして解釈されるよう意図したものである。
【図面の簡単な説明】
【0152】
【図1−1】多数のポリアミン類似体A〜S(25μM)について、アンチザイムフレームシフト誘導力をデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより試験した表である。
【図1−2】多数のポリアミン類似体A〜S(25μM)について、アンチザイムフレームシフト誘導力をデュアルルシフェラーゼレポーターアッセイにより試験した表である。
【図2】HEK−293細胞において種々の化合物25μMに誘導されるフレームシフトを示す。
【図3】HEK−293細胞における種々の化合物による用量依存性のフレームシフト誘導を示す。
【図4】化合物AによるHEK−293細胞の増殖阻害を示す。
【図5】HEK−293細胞における6日間のアッセイにおいて、アンチザイムフレームシフト物質(25μM)がDFMO 2.5mMに誘導される増殖阻害から細胞を保護する能力を、25μMスペルミジン(SPD)と比較したものである。
【図6】化合物Aを6日間インキュベートしたことによる、HEK−293細胞ポリアミンレベル及び細胞増殖に対する影響を示すグラフである。
【図7】化合物AのHEK−293細胞内濃度に及ぼす細胞外の化合物Aの影響を、HPLCで測定したものを示す。
【図8】化合物Aの合成についての反応スキームを示す。条件及び試薬:(a)CH2=CHCN 1.2当量、CH3OH、(b)LiAlH4のTHF液。
【図9】化合物Bの合成についての反応スキームを示す。
【図10】図11のための中間体R基の合成についての反応スキームを示す。
【図11】化合物C〜Rの合成についての反応スキームを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):の構造を有し、かつ、不斉キシレンであるポリアミン。
【請求項2】
【化2】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):の構造を有し、かつ、不斉キシレン誘導体であるポリアミン。
【請求項3】
【化3】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):の構造を有し、かつ、不斉キシレンであるポリアミン。
【請求項4】
【化4】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):の構造を有するポリアミン。
【請求項5】
【化5】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):の構造を有するポリアミン。
【請求項6】
前記構造が、図1に記載の化合物A〜Q、T及びUの構造である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミン。
【請求項7】
細胞の成長又は増殖の阻害が望まれる疾患又は状態の治療に有用な医薬組成物であって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミン、及び、医薬品に許容される賦形剤、希釈剤又はビヒクルを含む
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
前記賦形剤、希釈剤又はビヒクルが、医薬品又は化粧品に許容されるものである
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記賦形剤、希釈剤又はビヒクルが、局所投与又は耳内投与用のものである
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、腹腔内投与、局所投与、経皮投与、膣内投与、鼻腔内投与、気管支内投与、頭蓋内投与、眼内投与、耳内投与、直腸投与又は非経口投与用に調製された請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
細胞増殖に関連する1つ以上の状態の治療方法であって、次の構造:
【化6】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):
【化7】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):
【化8】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):
【化9】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):及び、
【化10】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):のうちの少なくとも1つで表されるポリアミンの投与を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記投与が全身に対するものである
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記投与が経口投与である
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記投与が徐放性ビヒクルを介するものである
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
毛髪成長の阻害方法であって、
毛髪成長の阻害を要する対象に、次の構造:
【化11】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):
【化12】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):
【化13】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):
【化14】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):及び、
【化15】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):のうちの少なくとも1つで表されるポリアミンを局所投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
ポリアミンを化粧品として調製する
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
脱毛(脱毛症)の阻害方法であって、
放射線又は化学療法を受けている対象に、次の構造:
【化16】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):
【化17】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):
【化18】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):
【化19】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):及び、
【化20】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):のうちの少なくとも1つで表されるポリアミンを局所投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
真菌、細菌、ウイルス及び寄生虫因子の治療方法であって、
次の構造:
【化21】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):
【化22】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):
【化23】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):
【化24】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):及び、
【化25】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):のうちの少なくとも1つで表されるポリアミンの投与を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記状態が、癌、粘膜炎、喘息、炎症、自己免疫疾患、乾癬、再発狭窄症、慢性関節リウマチ、強皮症、全身性及び皮膚狼瘡エリテマトーデス、I型インスリン依存性糖尿病、組織移植、骨粗鬆症、上皮小体機能亢進症、消化性潰瘍の治療、緑内障、アルツハイマー病、クローン病及び他の炎症性腸疾患からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
細胞増殖に関連する1つ以上の状態の治療方法であって、
図1に記載のB、T又はUのうちの少なくとも1つの投与を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記投与が全身に対するものである
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記投与が経口投与である
ことを特徴とする請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与が徐放性ビヒクルを介するものである
ことを特徴とする請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
毛髪成長の阻害方法であって、
毛髪成長の阻害を要する対象に、図1に記載のB、T又はUのうちの少なくとも1つを局所投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記B、T又はUを化粧品として調製する
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項26】
脱毛(脱毛症)の阻害方法であって、
放射線又は化学療法を受けている対象に、図1に記載のB、T又はUのうちの少なくとも1つを局所投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
真菌、細菌、ウイルス及び寄生虫因子からなる群より選択されるものの治療方法であって、
図1に記載のB、T又はUのうちの少なくとも1つを投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
前記状態が、癌、粘膜炎、喘息、炎症、自己免疫疾患、乾癬、再発狭窄症、慢性関節リウマチ、強皮症、全身性及び皮膚狼瘡エリテマトーデス、I型インスリン依存性糖尿病、組織移植、骨粗鬆症、上皮小体機能亢進症、消化性潰瘍の治療、緑内障、アルツハイマー病、クローン病及び他の炎症性腸疾患からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記構造が、図1に記載の化合物Qの構造である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【請求項30】
前記構造が、図1に記載の化合物Bの構造である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【請求項31】
前記構造が、図1に記載の化合物Mの構造である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【請求項32】
前記構造が図1に記載のTである
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【請求項33】
前記構造が図1に記載のUである
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【請求項1】
【化1】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):の構造を有し、かつ、不斉キシレンであるポリアミン。
【請求項2】
【化2】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):の構造を有し、かつ、不斉キシレン誘導体であるポリアミン。
【請求項3】
【化3】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):の構造を有し、かつ、不斉キシレンであるポリアミン。
【請求項4】
【化4】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):の構造を有するポリアミン。
【請求項5】
【化5】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):の構造を有するポリアミン。
【請求項6】
前記構造が、図1に記載の化合物A〜Q、T及びUの構造である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリアミン。
【請求項7】
細胞の成長又は増殖の阻害が望まれる疾患又は状態の治療に有用な医薬組成物であって、
請求項1〜6のいずれか1項に記載のポリアミン、及び、医薬品に許容される賦形剤、希釈剤又はビヒクルを含む
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
前記賦形剤、希釈剤又はビヒクルが、医薬品又は化粧品に許容されるものである
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記賦形剤、希釈剤又はビヒクルが、局所投与又は耳内投与用のものである
ことを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、頭蓋内投与、腹腔内投与、局所投与、経皮投与、膣内投与、鼻腔内投与、気管支内投与、頭蓋内投与、眼内投与、耳内投与、直腸投与又は非経口投与用に調製された請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
細胞増殖に関連する1つ以上の状態の治療方法であって、次の構造:
【化6】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):
【化7】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):
【化8】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):
【化9】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):及び、
【化10】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):のうちの少なくとも1つで表されるポリアミンの投与を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記投与が全身に対するものである
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記投与が経口投与である
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記投与が徐放性ビヒクルを介するものである
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
毛髪成長の阻害方法であって、
毛髪成長の阻害を要する対象に、次の構造:
【化11】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):
【化12】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):
【化13】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):
【化14】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):及び、
【化15】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):のうちの少なくとも1つで表されるポリアミンを局所投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
ポリアミンを化粧品として調製する
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
脱毛(脱毛症)の阻害方法であって、
放射線又は化学療法を受けている対象に、次の構造:
【化16】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):
【化17】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):
【化18】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):
【化19】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):及び、
【化20】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):のうちの少なくとも1つで表されるポリアミンを局所投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
真菌、細菌、ウイルス及び寄生虫因子の治療方法であって、
次の構造:
【化21】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である):
【化22】
(式中、nは0〜8であってよく、アミノメチル基はオルト、メタ又はパラ置換されていてよく、Rは水素、−CH3、−CH2CH3、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、4−アミノブチル、5−アミノペンチル、6−アミノヘキシル、7−アミノヘプチル、8−アミノオクチル、N−メチル−2−アミノエチル、N−メチル−3−アミノプロピル、N−メチル−4−アミノブチル、N−メチル−5−アミノペンタニル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−メチル−6−アミノヘキシル、N−メチル−7−アミノヘプチル、N−メチル−8−アミノオクチル、N−エチル−2−アミノエチル、N−エチル−3−アミノプロピル、N−エチル−4−アミノブチル、N−エチル−5−アミノペンチル、N−エチル−6−アミノヘキシル、N−エチル−7−アミノヘプチル又はN−エチル−8−アミノオクチルであり、R1は水素、又は、直鎖若しくは分岐鎖のC1−20飽和若しくは不飽和脂肪族;脂肪族アミン(R=H、n=1かつアミノメチル基がパラ置換されている場合はプロピルアミンは除く);脂環式;単環又は多環芳香族;単環又は多環のアリール置換脂肪族;脂肪族置換の単環又は多環芳香族;単環又は多環複素環、単環又は多環の複素環置換脂肪族;脂肪族置換芳香族;及び、そのハロゲン化物からなる群より選択される部分である:
R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される:かつ、
そのハロゲン化物):
【化23】
(式中、m及びnは独立して0〜7であってよいが、R1とR2が同一かつR3とR4が同一である場合、mとnは同一である可能性はなく、oは2〜4であってよく、Rは独立してH、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、R1及びR2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択することができ、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):
【化24】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、m及びnは独立して0〜7であってよく、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):及び、
【化25】
(式中、Rは水素、−CH3又は−CH2CH3であり、mは0〜7であってよく、nは0〜8であってよく、かつ、oは2〜4であってよく、R2は独立して水素、−CH3又は−CH2CH3から選択でき、かつ、R3及びR4は同一又は異なっていてよく、独立して水素又はフッ素から選択される):のうちの少なくとも1つで表されるポリアミンの投与を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
前記状態が、癌、粘膜炎、喘息、炎症、自己免疫疾患、乾癬、再発狭窄症、慢性関節リウマチ、強皮症、全身性及び皮膚狼瘡エリテマトーデス、I型インスリン依存性糖尿病、組織移植、骨粗鬆症、上皮小体機能亢進症、消化性潰瘍の治療、緑内障、アルツハイマー病、クローン病及び他の炎症性腸疾患からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
細胞増殖に関連する1つ以上の状態の治療方法であって、
図1に記載のB、T又はUのうちの少なくとも1つの投与を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
前記投与が全身に対するものである
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記投与が経口投与である
ことを特徴とする請求項20又は21に記載の方法。
【請求項23】
前記投与が徐放性ビヒクルを介するものである
ことを特徴とする請求項20又は21に記載の方法。
【請求項24】
毛髪成長の阻害方法であって、
毛髪成長の阻害を要する対象に、図1に記載のB、T又はUのうちの少なくとも1つを局所投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
前記B、T又はUを化粧品として調製する
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項26】
脱毛(脱毛症)の阻害方法であって、
放射線又は化学療法を受けている対象に、図1に記載のB、T又はUのうちの少なくとも1つを局所投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項27】
真菌、細菌、ウイルス及び寄生虫因子からなる群より選択されるものの治療方法であって、
図1に記載のB、T又はUのうちの少なくとも1つを投与することを含む
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
前記状態が、癌、粘膜炎、喘息、炎症、自己免疫疾患、乾癬、再発狭窄症、慢性関節リウマチ、強皮症、全身性及び皮膚狼瘡エリテマトーデス、I型インスリン依存性糖尿病、組織移植、骨粗鬆症、上皮小体機能亢進症、消化性潰瘍の治療、緑内障、アルツハイマー病、クローン病及び他の炎症性腸疾患からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記構造が、図1に記載の化合物Qの構造である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【請求項30】
前記構造が、図1に記載の化合物Bの構造である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【請求項31】
前記構造が、図1に記載の化合物Mの構造である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【請求項32】
前記構造が図1に記載のTである
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【請求項33】
前記構造が図1に記載のUである
ことを特徴とする請求項1に記載のポリアミン。
【図1−1】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1−2】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2007−537158(P2007−537158A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506115(P2007−506115)
【出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/009582
【国際公開番号】WO2005/105729
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(500023990)メディクエスト セラピューティックス インク (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月29日(2004.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/009582
【国際公開番号】WO2005/105729
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(500023990)メディクエスト セラピューティックス インク (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]