説明

アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物、アンチブロッキング性ハードコートフィルム、アンチブロッキング性層状構造体、アンチブロッキング性層状構造体を含む表示装置およびそれらの製造方法

【課題】ブロッキング現象を防止し、さらなる改良点として、フィルムおよびその層状構造体の経時の耐候性劣化を軽減することができる技術の提供。
【解決手段】本発明は、
少なくとも一種以上の樹脂からなる第1成分、および
少なくとも一種以上のモノマーからなる第2成分
を含有する硬化性樹脂組成物であって、
該第2成分は、炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマーを含む、多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマーを含み、
該組成物の塗布後に該第1成分の樹脂が相分離により析出して表面に微細な凹凸を形成し、なおかつ、耐候性を有する、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物、アンチブロッキング性ハードコートフィルム、アンチブロッキング性層状構造体、アンチブロッキング性層状構造体を含む表示装置、およびそれらの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンチブロッキング性および耐候性の両方を提供することのできる硬化性樹脂組成物(以下、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物)、アンチブロッキング性および耐候性の両方を有するハードコートフィルム(以下、アンチブロッキング性ハードコートフィルム)およびアンチブロッキング性層状構造体、アンチブロッキング性層状構造体を含む表示装置ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PETフィルムなどの熱可塑性フィルムにハードコーティングを施す場合、製造工程で、ロール状に巻回しにするなどして保存したりすることがある。ハードコートを形成したPETフィルムなどの基材層上に別の層状体を重ねた場合に、層間に粘着力や化学的な力が働いて、付着状態になり、各層状体を利用するときに、各層状体を剥がすための力が必要であったり、付着力が強くなって剥がすのが困難になったり、あるいはむりやり剥がそうとすると層状体の破壊が起こったりすることがある。
【0003】
そのような場合、基材のハードコーティングの施されていない反対面に、1μm程度のシリカなどの粒子状物を練り込んだ塗料を塗布してバックコート層を形成して、その表面に凹凸を設けて、各層間の接触面積を小さくすることにより、層状体間の付着を防止することがある。例えば、特開2004−151937号公報(特許文献1)および特開2005−132897号公報(特許文献2)には粒子状物を含有するバックコート層を形成した技術が開示されている。
【0004】
上述の粒状物質の利用による層状体間の付着を防止する技術は、有効であるが、粒子の凹凸が表面にまで現れなければならないので、塗膜の厚さが粒径より小さく(例えば、0.5μm程度)にしなければならず、バックコート層の機械的強度が低下すると共に、PETフィルムなどの基材層に傷などが付き易く、また、ぎらつき等も生じる。このような欠点は、透明性を要求される熱可塑性樹脂層の場合には、光学特性や透明性が低下し、致命的な欠点となる。
【0005】
ハードコート層の反対面のバックコート層に透明の樹脂微粒子を混入する方法においては、バックコート層だけではなくハードコート層自体にも樹脂粒子を混入して、表面に凹凸を形成する技術も存在する(特開2004−042653号公報(特許文献3)配合される粒子の平均粒径は0.5〜20μmの範囲)。粒子を混入する場合、表面の凹凸形成の為に膜厚を薄くする必要があり、膜強度が弱くなり傷が付きやすく、塗膜特性が劣化する。また、粒子の粒径が比較的大きいために、特許文献3のように仮に透明の粒子が用いられたとしても光学特性が損なわれることもある。
【0006】
また、当該分野では、上記に加えて、上記フィルム層を備えた装置の長期間の使用により、該フィルムの「ワレ」などの経年劣化および耐候性劣化が発生する場合があり、当該課題を解決する改良技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−151937号公報
【特許文献2】特開2005−132897号公報
【特許文献3】特開2004−042653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱可塑性フィルム等の層状体間の付着などの不具合、即ち、ブロッキング現象を防止し、さらなる改良点として、フィルムおよびその層状構造体の経時の耐候性劣化を軽減することができる技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究の結果、少なくとも一種以上の樹脂からなる第1成分および少なくとも一種以上のモノマーからなる第2成分を含有する硬化性樹脂組成物によって、組成物の塗布後、第1成分の樹脂が相分離により析出し、表面に微細な凹凸を形成することでアンチブロッキング性が得られることを見出し(特願2006−002480号)、さらに、その改良技術として、特定の多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマーを第2成分のモノマーに使用することによって、フィルムおよびその層状構造体の経年劣化による耐候性劣化を軽減することがでることを見出した。従って、本発明は以下を提供する。
【0010】
少なくとも一種以上の樹脂からなる第1成分、および
少なくとも一種以上のモノマーからなる第2成分
を含有する硬化性樹脂組成物であって、
該第2成分は、炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマーを含む、多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマーを含み、
該組成物の塗布後に該第1成分の樹脂が相分離により析出して表面に微細な凹凸を形成し、なおかつ、耐候性を有する、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物。
【0011】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物において、前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマーは、下記式1
【化1】

[式1中、
n、mおよびpは、それぞれ独立して、2〜4の整数であり、
x、yおよびzは、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、但し、x、yおよびzの和が3〜6であることを条件とし、および
は、水酸基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基であり、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基である。]
で示されるモノマーであることが好ましい。
【0012】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物において、前記硬化性樹脂組成物がさらに無機粒子または有機粒子を少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0013】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物において、第1成分のSP値と第2成分のSP値との差が1.0以上であることが好ましい。
【0014】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物において、第1成分のSP値が第2成分のSP値よりも小さいことが好ましい。
【0015】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物は光硬化性であることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物をフィルム状に硬化することにより得られたアンチブロッキング性ハードコートフィルムに関する。
【0017】
本発明のアンチブロッキング性ハードコートフィルムにおいて、ヘイズが2.0%以下であることが好ましい。
【0018】
本発明は、さらに、上記のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、硬化したアンチブロッキング性層状構造体に関する。
【0019】
本発明は、さらに、上記のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、硬化したアンチブロッキング性層状構造体をロール状に巻回したアンチブロッキング性層状構造体巻回ロールに関する。
【0020】
本発明は、また、基材上に上記のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて相分離させ、その後硬化することで得られるアンチブロッキング性層状構造体の製造方法にも関する。
【0021】
本発明のアンチブロッキング性層状構造体の製造方法において、前記相分離と硬化が、光を照射することにより行われることが好ましい。
【0022】
本発明は、また、上記のアンチブロッキング性層状構造体と、光源とを含む表示装置であって、該アンチブロッキング性層状構造体に含まれる基材が透光性基材であり、該光源が該基材の背面から光を照射する、表示装置にも関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明のアンチブロッキング性および耐候性を提供することのできる硬化性樹脂組成物は、基材上に塗布し必要に応じて乾燥させた後に、硬化(特に、光硬化)させるのみで、表面に凹凸を有する樹脂層であるアンチブロッキング層を提供することができる。得られたアンチブロッキング性ハードコートフィルムは、従来のものよりも硬く、傷が付きにくい。また、平均粒子径0.5μmを超える粒子状物を用いていないので、光学特性が損なわれることが無く、樹脂自体の性能が利用できる。このアンチブロッキング性ハードコートフィルムを基材と組み合わせたアンチブロッキング性層状構造体を複数枚重ね合わせても、ブロッキング現象(例えば、層間付着)が生じない効果を発揮する。本発明のアンチブロッキング性層状構造体が巻回ロールの場合、ブロッキング現象(例えば、巻回ロールからの剥離の困難性)が起こらない。
【0024】
また、本発明により表面に凹凸を形成した場合、自然発生的に凹凸配置が決まるので、微細凹凸を有する被膜の表面に不規則な凹凸形状を形成することができる。
【0025】
本発明は、上記の効果に加えて、さらなる改良点として、硬化性樹脂組成物の第2成分が上記の式1のモノマー(第2成分(a))を含むことによって、得られるハードコートフィルムおよびその層状構造体の経年劣化による耐候性劣化を軽減することができ、透明性および耐候性などの性能が特に要求される用途に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のアンチブロッキング性層状構造体の断面該略図である。
【図2】全光線透過率(T(%))の概略説明図である。
【図3】本発明の表示装置の一実施形態を示す概略図である。
【図4】本発明を利用したタッチパネルの一実施形態を示す概略図である。
【図5】実施例1のアンチブロッキング性層状構造体における、微細凹凸を有する被膜表面のカラー3Dレーザー顕微鏡による三次元画像である。
【図6】実施例4のアンチブロッキング性層状構造体における、微細凹凸を有する被膜表面のカラー3Dレーザー顕微鏡による三次元画像である。
【図7】実施例5のアンチブロッキング性層状構造体における、微細凹凸を有する被膜表面のカラー3Dレーザー顕微鏡による三次元画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物は、基材上に塗布され、微細凹凸を有する被膜を形成するものである。このアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物には、第1成分および第2成分の2種類の成分が少なくとも含まれる。これら第1成分および第2成分は、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を基材上に塗布する場合において、第1成分および第2成分それぞれの物性の差に基づいて、第1成分と第2成分とが相分離する、という特徴を有する。
【0028】
なお、第1成分は、少なくとも一種以上の樹脂からなり、第2成分は少なくとも一種以上のモノマーからなる。
【0029】
第1成分
第1成分の樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリシラン樹脂、ポリイミド樹脂またはフッ素樹脂を骨格構造に含む樹脂などを用いることができる。これらの樹脂は、低分子量であるいわゆるオリゴマーであってもよい。なお、本明細書でいう「オリゴマー」とは、繰り返し単位を有する重合体であって、この繰り返し単位の数が3〜10であるものをいう。(メタ)アクリル樹脂を骨格構造に含む樹脂として、(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂などが挙げられる。オレフィン樹脂を骨格構造に含む樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・塩化ビニル共重合体などが挙げられる。ポリエーテル樹脂を骨格構造に含む樹脂は、分子鎖中にエーテル結合を含む樹脂であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。ポリエステル樹脂を骨格構造に含む樹脂は、分子鎖中にエステル結合を含む樹脂であり、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられる。ポリウレタン樹脂を骨格構造に含む樹脂は、分子鎖中にウレタン結合を含む樹脂である。ポリシロキサン樹脂を骨格構造に含む樹脂は、分子鎖中にシロキサン結合を含む樹脂である。ポリシラン樹脂を骨格構造に含む樹脂は、分子鎖中にシラン結合を含む樹脂である。ポリイミド樹脂を骨格構造に含む樹脂は、分子鎖中にイミド結合を含む樹脂である。フッ素樹脂を骨格構造に含む樹脂は、ポリエチレンの水素の一部または全部がフッ素で置きかえられた構造を含む樹脂である。樹脂として、上記骨格構造の2種以上からなる共重合体であってもよく、上記骨格構造とそれ以外のモノマーとからなる共重合体であってもよい。
【0030】
第1成分の樹脂として、(メタ)アクリル樹脂が好ましく、なかでも、不飽和二重結合含有アクリル共重合体が好ましい。不飽和二重結合含有アクリル共重合体としては、特に限定はなく、例えば、(メタ)アクリルモノマーを重合または共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとを共重合した樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびエポキシ基を有するモノマーとを反応させた樹脂、(メタ)アクリルモノマーと他のエチレン性不飽和二重結合およびイソシアネート基を有するモノマーとを反応させた樹脂、などが挙げられる。これらの不飽和二重結合含有アクリル共重合体は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
第2成分
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物において、第2成分は、少なくとも一種以上のモノマーからなり、モノマーとして、多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマーを含むことを特徴とする。本発明において、第2成分である多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマーは、炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(本明細書中、以下、第2成分(a)と称する場合もある)を含むことが特に好ましい。
【0032】
炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(a)は、例えば、3官能以上の多価アルコールに、炭素数2〜4のアルキレンオキシド骨格を導入し、これに(メタ)アクリレートを反応させることによって調製することができる。
【0033】
炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(a)としては、例えば、下記式1で示されるモノマーが挙げられる。
【0034】
【化2】

【0035】
上記式1中、
n、mおよびpは、それぞれ独立して、2〜4の整数であり、
x、yおよびzは、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、但し、x、yおよびzの和が3〜6であることを条件とし、および
は、水酸基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基であり、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基である。
【0036】
炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマー、すなわち第2成分(a)としては、例えば、トリエチレングリコール−トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール−トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコール−トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサプロピレングリコール−トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられ、2種以上を併用してもよい。
【0037】
本発明において、炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(a)を含む多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマーを第2成分として用いてアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を調製することによって、当該組成物によって形成されるフィルム層において、経年劣化による耐候性を軽減することができる。
【0038】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を用いることによって、紫外線吸収剤などの耐候性安定剤を用いることなく、得られるフィルム層の耐候性を向上させることができる。紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤などが、樹脂分野などにおいて一般的に用いられている。しかしながら、これらの紫外線吸収剤は、特にヒンダードアミン系紫外線吸収剤などのように、紫外線を吸収することによって着色が生じるものが多い。そのため、高い視認性が求められる液晶表示装置等のフィルム層の形成に用いられるコーティング組成物においては、これらの紫外線吸収剤の使用は非常に制限されることとなる。
しかし、本発明によって、このような紫外線吸収剤などの耐候性安定剤を用いることなく、形成フィルム層の耐候性を向上させることが可能となった。
【0039】
本発明においては、第2成分として、炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(a)と、その他の多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(b)とを併用するのが好ましい。その他の多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(b)を併用することによって、得られるフィルム層の表面硬度を確保することができる。
【0040】
上記3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(a)以外の多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(b)(本明細書中、以下、第2成分(b)と称する場合もある)として、例えば、多価アルコールと(メタ)アクリレートとの脱アルコール反応物である、3官能またはそれ以上の多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマーが挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ナノエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(b)は1種のみを単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
第2成分の多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマーにおける、炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(a)と、その他の多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(b)との割合は、(a):(b)=3:97〜40:60であるのが好ましい。(a)の割合が3より低い場合は、十分な耐候性向上効果が得られないおそれがある。また(a)の割合が40を超える場合は、得られるフィルム層の表面硬度が低くなるおそれがある。
【0042】
また、本発明における第1成分および第2成分はそれぞれ、互いに反応する官能基を有しているのが好ましい。このような官能基を互いに反応させることによって、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物によって得られる微細凹凸を有する被膜の耐性を高めることができる。このような官能基の組合せとして、例えば、活性水素を有する官能基(水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基など)とエポキシ基、活性水素を有する官能基とイソシアネート基、エチレン性不飽和基とエチレン性不飽和基(エチレン性不飽和基の重合が生じる)、シラノール基とシラノール基(シラノール基の縮重合が生じる)、シラノール基とエポキシ基、活性水素を有する官能基と活性水素を有する官能基、活性メチレンとアクリロイル基、オキサゾリン基とカルボキシル基などが挙げられる。また、ここにいう「互いに反応する官能基」としては、第1成分および第2成分のみを混合しただけでは反応は進行しないが、重合開始剤、または硬化剤、触媒、光増感剤を併せて混合することによって互いに反応するものも含まれる。ここで使用できる重合開始剤として、光重合開始剤、熱重合開始剤などが挙げられ、光重合開始剤には、例えば、2−ヒドロキシ−2メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタンノン−1などが挙げられる。熱重合開始剤としては、アゾビスイソブリチロニトリル等のアゾ系熱重合開始剤やベンゾイルパーオキサイド等のパーオキサイド系熱重合開始剤等が挙げられる。使用できる触媒としては、酸、塩基触媒、金属触媒等が挙げられ、使用できる光増感剤としては、ベンゾフェノンおよびその誘導体やチオキサントンおよびその誘導体、アントラキノンおよびその誘導体、クマリンおよびその誘導体などが挙げられる。使用できる硬化剤として、例えば、メラミン硬化剤、(ブロック)イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤などが挙げられる。
【0043】
第1成分および第2成分それぞれが、互いに反応する官能基を有する場合は、第1成分と第2成分との混合物は、熱硬化性、光硬化性(紫外線硬化性、可視光硬化性、赤外線硬化性など)といった硬化性を有することとなる。熱硬化は、基材となり得る熱可塑性樹脂などに影響を与え得るので、熱を用いない硬化反応、特に光硬化反応を行うことが好ましい。
【0044】
また、第1成分の樹脂は、重量平均分子量(Mw)で2000以上、好ましくは2000〜100000、より好ましくは5000〜50000であるのが好ましい。本発明では、GPC測定を用いて、ポリスチレン標準による換算値として、樹脂の重量平均分子量を決定することができる。
【0045】
第1成分と第2成分との相分離をもたらす、第1成分および第2成分それぞれの物性の差として、例えば、それぞれの成分のSP値と重量平均分量が一定の差異を有する場合が挙げられる。
【0046】
SP値とは、Solubility Parameter(溶解性パラメーター)の略であり、溶解性の尺度となるものである。SP値は数値が大きいほど極性が高く、逆に数値が小さいほど極性が低いことを示す。
【0047】
例えば、SP値は次の方法によって実測することができる[参考文献:SUH、CLARKE、J.P.S.A−1、5、1671〜1681(1967)]。
【0048】
測定温度:20℃
サンプル:樹脂0.5gを100mlビーカーに秤量し、良溶媒10mlをホールピペットを用いて加え、マグネティックスターラーにより溶解する。
溶媒:
良溶媒・・・ジオキサン、アセトンなど
貧溶媒・・・n−ヘキサン、イオン交換水など
濁点測定:50mlビュレットを用いて貧溶媒を滴下し、濁りが生じた点を滴下量とする。
【0049】
樹脂のSP値δは次式によって与えられる。
【0050】
【数1】

【数2】

【数3】

【0051】
Vi:溶媒の分子容(ml/mol)
φi:濁点における各溶媒の体積分率
δi:溶媒のSP値
ml:低SP貧溶媒混合系
mh:高SP貧溶媒混合系
【0052】
第1成分と第2成分との相分離をもたらす第1成分および第2成分それぞれの物性の差がSP値の差である場合、第1成分のSP値と第2成分のSP値との差は1.0以上であるのが好ましい。このSP値の差が1.5以上であるのがさらに好ましい。このSP値の差の上限は特に限定されないが、一般には8以下である。第1成分のSP値と第2成分のSP値との差が1.0以上ある場合は、互いの樹脂の相溶性が低く、それによりアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物の塗布後に第1成分と第2成分との相分離がもたらされると考えられる。相分離によって、第1成分の樹脂が析出し得る。
【0053】
また、第1成分のSP値は、第2成分のSP値に比べて、小さいことが好ましい。第2成分としては、上述の通り、上記の式1で示されるモノマーを使用することが好ましく、目的に応じて、式1においてnおよびmならびに/あるいはx、yおよびzの数値を適宜変更すればよい。
【0054】
第1成分の樹脂は、好ましくはガラス転移温度(Tg)の下限としては2℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは50℃以上を有する。一方、ガラス転移点の上限としては200℃、好ましくは150℃を有する。ガラス転移温度は、通常の動的粘弾性によるTgの測定方法と同様の方法により得ることができる。このTgは、例えば、RHEOVIBRON MODEL RHEO2000、3000(商品名、オリエンテック社製)等を用いて測定することができる。ガラス転移温度が2℃より低い場合は、アンチブロッキング性能が低下するおそれがある。
【0055】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物には、上記の第1成分および第2成分のほかに、通常使用される樹脂が含まれてもよい。本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物は、上記のような第1成分および第2成分を用いることによって、それ以外に樹脂粒子などを含ませなくても、凹凸を有する樹脂層を形成することができることに特徴がある。そのため、本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物は、その他の樹脂粒子を含まないのが好ましい。しかしながら、本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、無機粒子または有機粒子、若しくはそれらの複合物を少なくとも一種以上含んでもよい。これらの粒子は、特に表面に凹凸を形成する目的のために添加されるのではなく、相分離や析出を制御して、より均一で微細な凹凸を形成する為に添加されるものである。これらの粒子の粒径は、被膜に透明性が必要である場合には、平均粒径で0.5μm以下、好ましくは0.01〜0.3μmである。0.5μmを超えると、若干透明性が低下する。
【0056】
無機粒子の例としては、シリカ(オルガノシリカゾルを含む)、アルミナ、チタニア、ゼオライト、雲母、合成雲母、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウムおよび酸化アンチモンからなる群から選択される少なくとも1種類が挙げられる。
【0057】
有機粒子の例としては、アクリル、オレフィン、ポリエーテル、ポリエステル、ウレタン、ポリエステル、シリコーン、ポリシラン、ポリイミドおよびフッ素粒子からなる群から選択される少なくとも1種類が挙げられる。
【0058】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物は、第1成分と第2成分を、必要に応じて、溶媒、重合開始剤、触媒、光増感剤および硬化剤などと併せて混合することにより調製することができる。アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物中における第1成分と第2成分との比率は、0.1:99.9〜50:50が好ましく、0.3:99.7〜20:80がより好ましく、0.5:99.5〜10:90がさらに好ましい。重合開始剤、触媒および光増感剤などを用いる場合は、第1成分および第2成分そして必要に応じた他の樹脂(これらを合わせて「樹脂成分」という。)100重量部に対して、0.01〜20重量部、好ましくは1〜10重量部加えることができる。硬化剤を用いる場合は、上記樹脂成分100重量部に対して、0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部加えることができる。溶媒を用いる場合は、上記樹脂成分100重量部に対して、1〜9900重量部、好ましくは10〜900重量部加えることができる。
【0059】
本発明で用いられるアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物中の溶媒は、特に限定されるものではなく、第1成分および第2成分、塗装の下地となる基材の材質および組成物の塗装方法などを考慮して適時選択される。用いられる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0060】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0061】
アンチブロッキング性ハードコートフィルム
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物をフィルム状に硬化するとアンチブロッキング性ハードコートフィルムが得られる。硬化方法や条件などは、下記のアンチブロッキング性層状構造体の説明に記載したものを用いる。
【0062】
アンチブロッキング性層状構造体
本発明のアンチブロッキング性層状構造体は、基材と微細凹凸を有する被膜(本発明のハードコートフィルム)とを有する。この微細凹凸を有する被膜は、上記のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物から形成することができる。
【0063】
基材としては、各種プラスチックフィルムおよびプラスチック板などを使用することができる。プラスチックフィルムとして、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチレンセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム等が使用できる。また、プラスチック板として、例えばアクリル板、トリアセチルセルロース板、ポリエチレンテレフタレート板、ジアセチレンセルロース板、アセテートブチレートセルロース板、ポリエーテルサルホン板、ポリウレタン板、ポリエステル板、ポリカーボネート板、ポリスルホン板、ポリエーテル板、ポリメチルペンテン板、ポリエーテルケトン板、(メタ)アクリルニトリル板などが挙げられる。なお、基材層の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に25〜1000μm程で用いられる。
【0064】
微細凹凸を有する被膜は、基材上に、上記のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を塗布することにより形成される。アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物の塗布方法は、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物および塗装工程の状況に応じて、適時選択することができ、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書)などにより塗布することができる。
【0065】
微細凹凸を有する被膜の厚みは、特に制限されるものではなく、種々の要因を考慮して適時設定することができる。例えば、乾燥膜厚が0.01〜20μmとなるようにアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を塗布することができる。
【0066】
基材層に塗布された塗膜を室温にて相分離させてもよく、また硬化させる前に塗膜を乾燥させて、硬化前に予め相分離させておいてもよい。塗膜を硬化させる前に乾燥又は加熱させる場合は、30〜200℃、より好ましくは40〜150℃で、0.01〜30分間、より好ましくは0.1〜10分間乾燥させて、予め相分離させることができる。第1成分と第2成分との混合物が光硬化性である場合に、硬化前に乾燥させて予め相分離させておくことは、微細凹凸を有する被膜中の溶媒を効果的に除去でき、かつ所望の大きさの凹凸を設けることができるという利点がある。
【0067】
硬化させる前に相分離させる他の方法として、塗膜に光を照射して相分離させる方法を用いることもできる。照射する光として、例えば露光量0.1〜3.5J/cmの光、好ましくは0.5〜1.5J/cmの光を用いることができる。またこの照射光の波長は特に限定されるものではないが、例えば360nm以下の波長を有する照射光などを用いることができる。例えば光開始剤として2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オンなどを用いる場合は、照射光は310nm付近の波長を有する光を照射するのが好ましく、そしてさらに360nm付近の波長を有する光を照射するのがより好ましい。このような光は、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて得ることができる。このように光を照射することによって、相分離および硬化が生じることとなる。光を照射して相分離させることによって、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物に含まれる溶媒の乾燥ムラに起因する表面形状のムラを回避できるという利点がある。
【0068】
アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物の塗布により得られた塗膜を、または乾燥させた塗膜を、硬化させることによって、微細凹凸を有する被膜が形成される。第1成分と第2成分との混合物が熱硬化性である場合は、40〜280℃、より好ましくは80〜250℃で、0.1〜180分間、より好ましくは1〜60分間加熱することにより、硬化させることができる。第1成分と第2成分との混合物が光硬化性である場合は、必要に応じた波長の光を発する光源を用いて光を照射することによって、硬化させることができる。なお、光照射は、上記のとおりであってもよく、相分離させる目的で用いることもできる。
【0069】
こうして形成されるアンチブロッキング性層状構造体の断面該略図を図1に示す。アンチブロッキング性層状構造体(1)は、微細凹凸を有する被膜(すなわち、ハードコートフィルム)(2)と基材(3)とを有している。本発明のアンチブロッキング性層状構造体表面の微細な凹凸は自然発生的に凹凸配置が決まるので、樹脂層の表面に不規則な凹凸形状を形成することができる。
【0070】
本発明のアンチブロッキング性層状構造体が透明な場合、全光線透過率とヘイズとでその透明性を表すと、全光線透過率85%以上、好ましくは90%以上であり、ヘイズは2.0%以下、好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下である。全光線透過率(T(%))は、アンチブロッキング性層状構造体に対する入射光強度(T)とアンチブロッキング性層状構造体を透過した全透過光強度(T)とを測定し、下記式により算出される。全光線透過率(Tt(%))の概略説明図を図2に示す。
【数4】

【0071】
全光線透過率の測定は、例えば濁度計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定することができる。
【0072】
本発明によれば、上記の通りヘイズが低いために基材の透明性を損ねることない優れたクリア性能を有するアンチブロッキング性ハードコートフィルムを調製することができる。
【0073】
なお、ヘイズは、JIS K7136に準拠して、下記式より算出することができる。
【数5】

H:ヘイズ(曇価)(%)
:拡散透光率(%)
:全光線透過率(%)
【0074】
ヘイズの測定は、例えば濁度計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定することができる。
【0075】
本発明のアンチブロッキング性層状構造体は、微細凹凸を有する被膜の表面の不規則な凹凸形状の配置が、自然発生的に決まるものである。
【0076】
また、本発明のアンチブロッキング性層状構造体は、上述の第1成分および第2成分を含むハードコートフィルム層と、基材とからなり、上述の第2成分、特に第2成分(b)によって、フィルムの経年劣化による耐候性の悪化を軽減することができる。
【0077】
巻回ロール
本発明のアンチブロッキング性層状構造体は、複数を重ねて使用する場合に、アンチブロッキング性能が発揮される。アンチブロッキング性層状構造体は、種々の態様が考えられるが、例えば巻回してロール状にしたものが考えられる。
【0078】
このような巻回ロールの態様の場合は、基材層上に本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を塗布硬化後、ロール状に巻き付けていく方法が考えられる。
【0079】
表示装置
本発明は、さらに、上述のアンチブロッキング性層状構造体と、光源とを含む表示装置に関する。この場合、アンチブロッキング性層状構造体に含まれる基材は透光性基材であることが望ましい。また、光源は、基材の背面、すなわち基材の微細凹凸層とは反対側の面に配置され、そこから基材に向けて光を照射することが好ましい。
【0080】
透光性基材としては、上記基材のなかでも、透光性のプラスチックフィルムおよびプラスチック板が好ましく、また必要に応じて、ガラスなどを使用してもよい。透光性プラスチックフィルムとしては、特に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチレンセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルムが好ましく、透光性プラスチック板としては、特に、アクリル板、トリアセチルセルロース板、ポリエチレンテレフタレート板、ジアセチレンセルロース板、アセテートブチレートセルロース板、ポリエーテルサルホン板、ポリウレタン板、ポリエステル板、ポリカーボネート板、ポリスルホン板、ポリエーテル板、ポリメチルペンテン板、ポリエーテルケトン板、(メタ)アクリルニトリル板が好ましい。透光性基材として、PETフィルムを使用するのが強度などの点から好ましい。なお、透光性基材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に25〜1000μm程で用いられる。
【0081】
上記アンチブロッキング性層状構造体と組み合わせることのできる光源としては、光を発することのできるものであれば特に限定はないが、例えば、光源としては、発光ダイオード、冷陰極管、熱陰極管、ELなどが挙げられる。本発明の表示装置には、さらに、位相差板、輝度向上フィルム、導光板、光拡散板、光拡散シート、集光シート、反射板などを備えていてもよい。また、光源として、液晶モジュール、バックライトユニットなどを使用してもよい。
【0082】
本発明の表示装置の実施形態の一例を図3に示す。本発明の表示装置は、図3に示す通り、本発明のアンチブロッキング性層状構造体(10)を含む。アンチブロッキング性層状構造体(10)は、本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物によって形成された微細凹凸を有する被膜(20)と、基材(30)とを含む。本発明の表示装置は、光源(50)として、好ましくは、液晶モジュール、バックライトユニットを備える。本発明の表示装置は、図3に示す通り、さらに、カバーパネルなどの光透過性部材(40)を備えてもよい。なお、本発明では、光透過性部材(40)として、基材(30)と同じものを用いてもよい。また、本発明では、基材(30)の両側に微細凹凸被膜を設けてもよい。なお、本発明では、微細凹凸被膜(20)の凹凸の向きは特に限定されない。
【0083】
光透過性部材として、各種の光透過性板、光透過性フィルムなどを使用することができる。光透過性板として、例えば強化ガラス、アクリル板、トリアセチルセルロース板、ポリエチレンテレフタレート板、ジアセチレンセルロース板、アセテートブチレートセルロース板、ポリエーテルサルホン板、ポリウレタン板、ポリエステル板、ポリカーボネート板、ポリスルホン板、ポリエーテル板、ポリメチルペンテン板、ポリエーテルケトン板、(メタ)アクリルニトリル板などが挙げられる。光透過性フィルムとして、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチレンセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルムなどが挙げられる。光透過性部材として、アクリル板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、強化ガラスを用いるのがより好ましい。なお、光透過性部材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に25〜1000μm程で用いられる。
【0084】
液晶モジュールは、上記光源を含み、さらに、その上に偏光板/液晶セル/偏光板がこの順に配置された構成を有するものである。液晶セルは、一般に液晶表示装置に用いられているものならば特に制限されない。例えば、TN(Twisted Nematic)型液晶セル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶セル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶セル、IPS(In Plane Switching)型液晶セル、VA(Vertical Alignment)型液晶セル、MVA(Multiple Vertical Alignment型液晶セル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶セルなどを挙げることができる。
【0085】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物により形成される微細凹凸を有する被膜(20)は、微細凹凸を有する被膜の表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が0.01μm未満であることが好ましく、0.001〜0.009μmであることがさらに好ましく、0.002〜0.008μmであることが特に好ましい。ここで粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)とは、JIS B 0601−2001において規定されるパラメーターである。微細凹凸を有する被膜の表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)が0.01μm以上である場合は、ギラツキの発生、塗膜の白化などの問題が生じるおそれがある。Raの値が前記の特に好ましい範囲を下回ると、ブロッキング現象が発生して好ましくない。
【0086】
粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)とは、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、下記式によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0087】
【数6】

【0088】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物により形成される微細凹凸を有する被膜の表面の粗さ曲線の算術平均粗さ(Ra)は、例えば小坂研究所社製の高精度微細形状測定器、または(株)キーエンス製のカラー3Dレーザー顕微鏡などを用いて、JIS B 0601−2001に準拠して測定することができる。
【0089】
また、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物により形成される微細凹凸を有する被膜は、Smが0.01〜100μmであるのが好ましく、0.1〜10μmであるのがさらに好ましく、0.3〜1μmであるのが特に好ましい。ここでSmとは、表面の粗さ曲線要素の平均長さであり、一般に粗さ曲線の山谷平均間隔または凹凸の平均間隔と言われるものである。Smが上記望ましい範囲を下回ったり上回ったりした場合は、液晶モジュールなどの光源および光透過性部材の貼り付きを十分に防ぐことができないおそれがある。
【0090】
Smは、例えば小坂研究所社製の高精度微細形状測定器、または(株)キーエンス製のカラー3Dレーザー顕微鏡などを用いて、JIS B0633に準拠して測定することができる。なお、JIS B0633は、ISO 4288を翻訳し、技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
【0091】
図3に示す本発明の表示装置の好ましい実施形態において、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物により形成された微細凹凸を有する被膜(20)は、光透過性部材(40)と基材(30)との間に存在し、不規則で微細緻密な凹凸形状を有するため、優れたアンチブロッキング性を提供し、光透過性部材(40)の上側から押圧した場合、その優れたアンチブロッキング性によって光透過性部材(40)の貼り付き(ブロッキング)を防止することができる。また、本発明の表示装置では、液晶モジュールなどの光源によって表示される画像の鮮明性を低下させることはない。特に、近年における高精細液晶表示装置においては、液晶から発せられる光線のピッチがより細かくなっている。そのため、画像鮮明性を保持するためにはより微細で緻密な凹凸形状が求められることとなっている。そして本発明において形成される微細凹凸を有する被膜(20)は、微細で緻密な凹凸形状であるため、コントラスト低下、輝度の低下などの画像鮮明性低下を伴わないという利点がある。
【0092】
本発明の表示装置は、液晶表示装置(液晶ディスプレイ)、LED(発光ダイオードディスプレイ)、ELD(エレクトロルミネセンスディスプレイ)、VFD(蛍光ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)などといった、フラットパネルディスプレイに適用することができる。また、本発明の表示装置の作製に使用することのできる本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物は、アンチブロッキング性に加えて、耐候性をも有するので、これらの表示装置の屋外での使用が可能となる。例えば、広告などの情報掲示を目的としたパネルディスプレイとして屋外または半屋外に設置することが可能となる。
【0093】
また、本発明の表示装置の屋外または半屋外での用途としては、タッチパネルが挙げられ、これは、画面上の表示を押さえることによって機器を操作する機構を有し、例えば、銀行ATM、自動販売機、携帯情報端末(PDA)、複写機、ファクシミリ、ゲーム機、博物館およびデパートなどの施設に設置される案内表示装置、カーナビゲーション、マルチメディアステーション(コンビニエンスストアに設置される多機能端末機)、携帯電話、鉄道車両のモニタ装置などにおいて有用である。
【0094】
本発明のアンチブロッキング性層状構造体をタッチパネルに利用した場合、非常に有益である。タッチパネルは、一般に、図4の本発明の具体的な実施形態で示す通り、液晶ディスプレイ(LCD)(液晶モジュールであってもよい)、陰極管ディスプレイ(CRT)などのディスプレイ(500)の情報に基づいて、その上側から、指などで画面を押圧することによって操作するものである。タッチパネルは、一般に、優れた視認性、貼り付き防止性、すなわちアンチブロッキング性などの性能が求められる。
【0095】
また、タッチパネルは、図4に示す本発明の具体的な実施形態で示す通り、本発明のアンチブロッキング性層状構造体(101)と透明導電層(401)とを含む上部電極と、アンチブロッキング性層状構造体(102)と透明導電層(402)とを含む下部電極とが、空気の層を介して、透明導電層(401)と透明導電層(402)とを一定の間隔を設けて配置したものである。
【0096】
タッチパネルの上部電極は、図4に示す通り、本発明のアンチブロッキング性層状構造体(101)と透明導電層(401)とを含み、アンチブロッキング性層状構造体(101)は、上述の通り、基材(301)上に本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を塗布して微細凹凸を有する被膜(201)および(202)を形成したものである。被膜(201)および(202)は、いずれも、図4に示す通り、基材の両側(すなわち、反対側)に向けて微細凹凸を形成することが好ましい。また、被膜(201)および(202)は、いずれか一方のみが基材上に存在していてもよい。上部電極のアンチブロッキング性層状構造体(101)は、さらにその上に、透明導電層(401)とは反対側に光透過性部材(600)を有していてもよい。光透過性部材(600)としては、特に限定はなく、上記で説明したもの、例えば、カバーパネルなどとして有益な上述の光透過性部材などを使用することができる。また、光透過性部材(600)上に当該分野で公知の任意の透光性コーティング組成物から形成されるコート層をさらに設けてもよい。あるいは、光透過性部材(600)は、当該分野で公知の任意の透光性コーティング組成物から形成されたコート層であってもよい。なお、本発明で使用することのできる透光性コーティング組成物およびそれから形成されるコート層は、光透過性を有するものであれば、特に限定はなく、コート層としては、例えば、アンチブロッキングコート層、防眩コート層、ハードコート層、反射防止層(AR、LR層)、防汚層、近赤外線吸収層、電磁波遮断層、帯電防止層などが挙げられる。
【0097】
タッチパネルの下部電極は、図4に示す通り、本発明のアンチブロッキング性層状構造体(102)と透明導電層(402)とを含み、アンチブロッキング性層状構造体(102)は、上述の通り、基材(302)上に本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を塗布して微細凹凸を有する被膜(203)および(204)を形成したものである。被膜(203)および(204)は、いずれも、図4に示す通り、基材の両側(すなわち、反対側)に向けて微細凹凸を形成することが好ましい。また、被膜(203)および(204)は、いずれか一方のみが基材上に存在していてもよい。下部電極のアンチブロッキング性層状構造体(102)は、さらにその上に、透明導電層(402)とは反対側に、ディスプレイ(500)を備える。ディスプレイ(500)としては、上述の光源を含むものであれば特に限定はなく、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)(液晶モジュールであってもよい)、陰極管ディスプレイ(CRT)、LED(発光ダイオード)、EL(Electro Luminescence)、VFD(蛍光表示管)、PDP(プラズマディスプレイ)などが挙げられる。
【0098】
透明導電層(401)および(402)は、いずれも、ITO(酸化インジウム・スズ)、ZnO(酸化亜鉛)およびSnO(酸化スズ)や酸化アンチモン、フッ素、酸化アルミニウム、酸化ガリウム等をドープした金属酸化物などを含む導電性の透明層が好ましい。
【0099】
基材(301)および(302)としては、いずれも、本発明で用いることのできる上述の基材を用いることができるが、より透明性の高いものが望ましい。
【0100】
また、一般に、タッチパネルは複雑な多層構造を有するものであり、本発明では、本発明のアンチブロッキング性層状構造体が優れた光透過率および耐候性を有するので、タッチパネルに求められる優れた透光性および耐候性を達成することができる。
【0101】
また、一般に、タッチパネルは、その上側から指などで押圧することによって、上部電極と下部電極とが接触して通電することを利用して操作するものであり、その際に貼り付きが生じた場合、画面表示が見えにくくなるなどの問題があるが、本発明では、本発明のアンチブロッキング性層状構造体によって、このような問題が解消する。
【0102】
従って、本発明のタッチパネルは、上述のアンチブロッキング性層状構造体(101)および(102)を含むことから、優れたアンチブロッキング性を提供することができ、貼り付き、すなわちブロッキングを有意に防止することができる。また、本発明のタッチパネルは、アンチブロッキング性層状構造体(101)および(102)ならびに必要に応じて光透過性部材(600)を含むことから、優れた透光性を提供することもできる。なお、本発明のタッチパネルにおいて、微細凹凸被膜(201)〜(204)の凹凸の向きは逆向きであってもよい(すなわち基材(301)または(302)に向けて凹凸を形成してもよい)。また、光透過性部材(600)として、基材(301)または(302)と同じものを用いてもよい。
【0103】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物から形成されるアンチブロッキング層は、上述の通り、優れたアンチブロッキング性を有し、しかも優れた透光性および耐候性を有することから、タッチパネルの上部電極および下部電極において非常に有益である。また、図4に示す通り、アンチブロッキング層上に透明導電層を形成した場合であっても、その巻き取りは非常に簡便となり、非常に有益である。
【実施例】
【0104】
以下の実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断らない限り、「部」は重量部を表す。
【0105】
調製例1
不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)の調製
イソボロニルメタクリレート187.2g、メチルメタクリレート2.8g、メタクリル酸10.0gからなる混合物を混合した。この混合物を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた1000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で110℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテル360gにターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート2.0gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルの80.0g溶液と同時に3時間かけて等速滴下し、その後、1時間、110℃で反応させた。
【0106】
その後、ターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート0.2gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル17g溶液を滴下して、110℃で30分反応させた。
【0107】
その反応溶液にテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5gとハイドロキノン0.1gを含む6gのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を加え、空気バブリングしながら、さらに4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル24.4gとプロピレングリコールモノメチルエーテル5.0gの溶液を1時間かけて滴下し、その後5時間かけて更に反応させた。
【0108】
数平均分子量5500、重量平均分子量(Mw)18000の不飽和二重結合含有アクリル共重合体を得た。この樹脂は、SP値:9.7、Tg:92℃であった。
【0109】
調製例2
不飽和二重結合含有アクリル共重合体(II)の調製
イソボロニルメタクリレート97.2g、メチルメタクリレート2.8g、メタクリル酸100gからなる混合物を混合した。この混合物を、攪拌羽根、窒素導入管、冷却管および滴下漏斗を備えた1000ml反応容器中の、窒素雰囲気下で110℃に加温したプロピレングリコールモノメチルエーテル360gにターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート2.5gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテルの80.0g溶液と同時に3時間かけて等速滴下し、その後、1時間、110℃で反応させた。
【0110】
その後、ターシャリーブチルペルオキシ−2−エチルヘキサエート0.2gを含むプロピレングリコールモノメチルエーテル17g溶液を滴下して、110℃で30分反応させた。
【0111】
その反応溶液にテトラブチルアンモニウムブロマイド1.5gとハイドロキノン0.1gを含む6gのプロピレングリコールモノメチルエーテル溶液を加え、空気バブリングしながら、さらにグリシジルメタクリレート82.6gとプロピレングリコールモノメチルエーテル5.0gの溶液を1時間かけて滴下し、その後5時間かけて更に反応させた。
【0112】
数平均分子量8000、重量平均分子量(Mw)18000の不飽和二重結合含有アクリル共重合体を得た。この樹脂は、SP値:12.0、Tg:90℃であった。
【0113】
調製例3
アクリル樹脂粒子Aの調製
撹拌機、冷却機、温度調節器を備えた反応容器に、脱イオン交換水350部、ノニオン性界面活性剤MON2(三洋化成社製)1.5部を仕込み、撹拌温度を80℃に保持しながら溶解し、これに開始剤:過硫酸アンモニウム0.3部を脱イオン交換水10部に溶解した液を添加する。次いでメチルメタクリレート80部、エチレングリコールジメタクレート10部、n−ブチルアクリレート10部からなる混合溶液を120分間かけて滴下する。滴下後、80℃で120分間撹拌を続ける。こうして不揮発分22%、粒子径0.05〜0.1μmのエマルジョンが得られる。このエマルジョンを乾燥してアクリル樹脂粒子A(平均粒径:80nm)を得た。
【0114】
実施例1
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、トリエチレングリコール−トリメチロールプロパントリアクリレート(SP値:11.6)20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)39.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)39.25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0115】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
【0116】
実施例2
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、トリエチレングリコール−トリメチロールプロパントリアクリレート(SP値:11.6)35部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)31.75部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)31.75部、無機粒子としてオルガノシリカゾル(MIBK−ST:平均粒径20nm、日産化学工業株式会社製)10部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0117】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
【0118】
実施例3
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、トリエチレングリコール−トリメチロールプロパントリアクリレート(SP値:11.6)5部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)46.75部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)46.75部、有機粒子として調製例3のアクリル樹脂粒子A(平均粒径80nm)、日本ペイント(株)製)10部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0119】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
【0120】
実施例4
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、トリプロピレングリコール−トリメチロールプロパントリアクリレート(SP値:11.2)20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)39.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)39.25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0121】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
【0122】
実施例5
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、ヘキサエチレングリコール−トリメチロールプロパントリアクリレート(SP値:12.3)20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)39.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)39.25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0123】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
【0124】
実施例6
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、ヘキサプロピレングリコールトリメチロールプロパントリアクリレート(SP値:11.6)20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)39.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)39.25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0125】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
【0126】
比較例1
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)49.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)49.25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0127】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
比較例2
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、トリメチロールプロパントリアクリレート(SP値:9.8)20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)39.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)39.25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部ををメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0128】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
比較例3
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、トリプロピレングリコールジアクリレート(SP値:14.1)20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)39.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)39.25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0129】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
比較例4
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、ナノエチレングリコールジアクリレート(SP値:14.8)20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)39.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)39.25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0130】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
比較例5
調製例1の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7、Tg:92℃、Mw=18000)1.5部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)49.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)49.25部、紫外線吸収剤としてチヌビン(TINUVIN#400、チバ製)5部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0131】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性層状構造体(基材:PETフィルム基板およびアンチブロッキング性ハードコートフィルム)を得た。
比較例6
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)50部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)50部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0132】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、層状構造体(基材:PETフィルム基板およびハードコートフィルム)を得た。
【0133】
比較例7
調製例2の不飽和二重結合含有アクリル共重合体(II)(SP値:12.0、Tg:90℃、Mw=18000)1.5部、トリエチレングリコール−トリメチロールプロパントリアクリレート(SP値:11.6)20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)39.25部およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)39.25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン5部をメチルイソブチルケトンに混合して、不揮発成分率が50重量%の溶液を調製した。
【0134】
この溶液を、23℃で、PETフィルム基板(100μm)にバーコーター(No.8)にてバーコート塗布し、膜厚が6μmとなるように80℃で60秒間乾燥して、溶媒を除去乾燥し、その後、この膜を高圧水銀灯で紫外線(350nm)を300mJ/cmのエネルギーとなるように露光して硬化して、アンチブロッキング性の無い層状構造体(基材:PETフィルム基板およびハードコートフィルム)を得た。
【0135】
実施例および比較例で得られた層状構造体について、初期外観、ヘイズ(%)、耐候試験(25サイクル)後の外観、耐スチールウール性、アンチブロッキング(AB)性を評価した。各評価方法および評価基準は以下の通りであり、結果を以下の表に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
【表2】

【0138】
表中、ΔSPは、第1成分のSP値(SP1)と第2成分のSP値(SP2(平均値))との差を示す[ΔSP=(SP2)−(SP1)]。
【0139】
初期外観
上記実施例および比較例によって得られたアンチブロッキング性ハードコートフィルムについて、下記ASTM G154準拠耐候試験を行う前の塗膜外観を、目視によって下記基準に基づいて評価した。
○:塗膜の剥がれまたは割れといった欠陥はみられない
×:塗膜の剥がれまたは割れといった欠陥がみられる
【0140】
ヘイズ(曇価)(%)
濁度計(日本電色工業株式会社 型式NDH−2000)を用いて、フィルムの拡散透光率(T(%))および上記全光線透過率(T(%))を測定し、ヘイズを算出した。
【数7】

H:ヘイズ(曇価)(%)
:拡散透光率(%)
:全光線透過率(%)
【0141】
全光線透過率(Tt)(%)は、濁度計(日本電色工業株式会社製 型式NDH−2000)を用いて、図2の概略図に示す通り、フィルムに対する入射光強度(T)とフィルムを透過した全透過光強度(T)とを測定し、下記式により算出することができる。
【数8】

なお、全光線透過率(%)は、日本電色工業株式会社製、型式NDH−2000「ホウホウ3」に基づいて測定した。
【0142】
耐候試験後の外観
ASTM(American Standards Testing Material) G154に準拠した耐候試験(1サイクル:60℃において313nmの波長の光を4時間照射し次いで50℃暗室において4時間維持する、を25サイクル繰り返した。)を行った後の塗膜外観を、目視によって下記基準に基づいて評価した。
○:耐候試験の前後において塗膜外観に大きな変化はみられない
△:一部塗膜の剥がれまたは割れが生じている
×:塗膜の剥がれまたは割れが多く生じている
【0143】
耐スチールウール性
得られたアンチブロッキング性ハードコートフィルムにおいて、スチールウール#0000を、500gf/cmの荷重で10往復させた後に生じた表面の傷跡の度合いを目視により評価した。
○:傷跡は確認されない
△:幾つかの傷跡が確認される
×:多数の傷跡が確認される
【0144】
アンチブロッキング(AB)性
上記組成物から得られた構造体を2×5cmの大きさに切り出し、塗工面をPETフィルム(易接着層未塗布)面に重ね合わせ、ガラス板に挟んで200gf/cm条件にて、室温、24時間放置し、目視にてブロッキング現象(AB性)を評価した。
○:アンチブロッキング性あり
×:アンチブロッキング性なし
【0145】
また、図5は、実施例1のアンチブロッキング性層状構造体における、微細凹凸を有する被膜表面のカラー3Dレーザー顕微鏡(キーエンス株式会社製、VK−9700)による三次元画像を示す。
図6は、実施例4のアンチブロッキング性層状構造体における、微細凹凸を有する被膜表面のカラー3Dレーザー顕微鏡(キーエンス株式会社製、VK−9700)による三次元画像を示す。
図7は、実施例5のアンチブロッキング性層状構造体における、微細凹凸を有する被膜表面のカラー3Dレーザー顕微鏡(キーエンス株式会社製、VK−9700)による三次元画像を示す。
図5〜7は、いずれも、本発明のアンチブロッキング性層状構造体が不規則で微細緻密な凹凸形状を有することを示す。
【0146】
上記の表に示す通り、本発明の実施例1〜6の組成物は、それぞれ、第1成分として、不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7)を含み、第2成分として、炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマー(第2成分(a))を必須成分として含み、優れたアンチブロッキング(AB)性に加えて、優れた耐候性を有するフィルムを提供する。また、本発明の実施例1〜6の組成物から得られるフィルムは、初期外観に優れ、2.0%以下のヘイズ(曇価)を有することから、優れた透明(クリア)性を有する。従って、本発明の組成物から得られるフィルムを表示装置に適用した場合、非常に有益である。また、本発明の実施例1〜6の組成物から得られるフィルムは、優れた耐スチールウール性を有していることから、耐擦傷性にも優れている。
【0147】
対して、比較例1〜5の組成物には、いずれにも、第1成分として、不飽和二重結合含有アクリル共重合体(I)(SP値:9.7)を配合したが、第2成分(a)を配合しなかった。また、比較例6の組成物には、第1成分および第2成分(a)の両方を配合しなかった。その結果、上記の表に示す通り、比較例1〜4では耐候性が低下し、比較例3および4では、さらに耐スチールウール性も低下した。
【0148】
比較例5の組成物には、第2成分(a)を配合しなかったが、その代わりに、通常よく使用される紫外線吸収剤であるチヌビン(TINUVIN)を配合したので、耐候性の低下を抑制することはできたが、耐スチールウール性が著しく低下した。
【0149】
このように、比較例1〜5および実施例1〜6の結果から、組成物に第2成分(a)を配合することによって、耐候性および耐スチールウール性が飛躍的に向上することが分かった。
【0150】
また、これら比較例1〜5では、実施例1〜6と比較して、ヘイズ(%)が上昇する傾向があり、フィルムの透明性が低下する傾向にある。
【0151】
比較例6には、第1成分および第2成分(a)の両方を配合しなかったので、この組成物から形成したフィルムは、当然のことながら、アンチブロッキング性を全く示さなかった。
【0152】
また、比較(参考)例7では、第1成分として、不飽和二重結合含有アクリル共重合体(II)(SP値:12.0)を用い、第2成分として、トリエチレングリコール−トリメチロールプロパントリアクリレート(SP値:11.6)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(SP値:12.1)およびペンタエリスリトールトリアクリレート(SP値:12.7)(第2成分のSP値(平均値):12.2)を用いており、第1成分のSP値(12.0)は、第2成分のSP値(12.2)よりも小さいが、その差ΔSPの値は0.2であり、本発明のΔSPの好ましい値である1.0を下回り、優れたアンチブロッキング性が得られないことを示す。
【0153】
これらの結果は、組成物に、必須成分として、第1成分と第2成分(a)の両方を配合することによって、優れたアンチブロッキング性および耐候性の両方が得られることを顕著に示す。本発明によって得られるこのような効果は、従来技術では得られない非常に驚くべき顕著な効果であった。
【0154】
表示装置の作製
光源としてバックライトユニット(ウシオ電機株式会社製、型番:FP−401)を使用し、その上に、フォトマスク(解像度106ppiのブラックマトリックス)を載せ、さらにその上に、実施例1〜6または比較例1〜7で作製したアンチブロッキング性層状構造体を基材を下側にし、微細凹凸を有するアンチブロッキング層を上側にして載置するが、基材とフォトマスクと間に水を挟み、空気を抜いた状態で積層した。さらに、微細凹凸を有するアンチブロッキング層上に、光透過性部材としてPETフィルム(易接着層未塗布)をさらに積層し、表示装置を作製した。表示装置の上側、すなわち、PETフィルムの上側から、指で押圧し、貼り付くか否か(すなわち、ブロッキングの有無)を確認した。その結果、実施例1〜6で作製したアンチブロッキング性層状構造体を使用した場合においては、いずれも、貼り付き(ブロッキング)は観察されず、比較例1〜7、特に比較例6および7で作製した層状構造体を使用した場合においては、著しい貼り付き(ブロッキング)が観察された。以上の結果から、本発明のアンチブロッキング性層状構造体は、表示装置に非常に有用であり、さらにタッチパネルに利用した場合においても非常に有益であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物およびそれから形成されるアンチブロッキング性層状構造体は、優れた透光性およびアンチブロッキング性ならびに優れた耐候性を有し、ハードコートフィルム、巻回ロール、表示装置、特にタッチパネルとして有益である。
【符号の説明】
【0156】
1 アンチブロッキング性層状構造体
2 微細凹凸を有する被膜
3 基材
10 アンチブロッキング性層状構造体
20 微細凹凸を有する被膜
30 基材
40 光透過性部材(任意)
50 光源
101 アンチブロッキング性層状構造体
102 アンチブロッキング性層状構造体
201 微細凹凸を有する被膜
202 微細凹凸を有する被膜
203 微細凹凸を有する被膜
204 微細凹凸を有する被膜
301 基材
302 基材
401 透明導電層
402 透明導電層
500 ディスプレイ
600 光透過性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種以上の樹脂からなる第1成分、および
少なくとも一種以上のモノマーからなる第2成分
を含有する硬化性樹脂組成物であって、
該第2成分は、炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマーを含む、多官能性反応性の不飽和二重結合基含有モノマーを含み、
該組成物の塗布後に該第1成分の樹脂が相分離により析出して表面に微細な凹凸を形成し、なおかつ、耐候性を有する、アンチブロッキング性硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記炭素数2〜4のアルキレンオキシド単位をモノマー1分子中に3〜6モル当量有する3官能以上の反応性の不飽和二重結合基含有モノマーは、下記式1
【化1】

[式1中、
n、mおよびpは、それぞれ独立して、2〜4の整数であり、
x、yおよびzは、それぞれ独立して、0〜3の整数であり、但し、x、yおよびzの和が3〜6であることを条件とし、および
は、水酸基を有していてもよい炭素数1〜3のアルキル基であり、
、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基である。]
で示されるモノマーである、請求項1記載のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性樹脂組成物がさらに無機粒子または有機粒子を少なくとも1種を含む、請求項1または2記載のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
第1成分のSP値と第2成分のSP値との差が1.0以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
第1成分のSP値が第2成分のSP値よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
光硬化性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物をフィルム状に硬化することにより得られたアンチブロッキング性ハードコートフィルム。
【請求項8】
ヘイズが2.0%以下である、請求項7記載のアンチブロッキング性ハードコートフィルム。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、硬化したアンチブロッキング性層状構造体。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を基材上に塗布し、硬化したアンチブロッキング性層状構造体をロール状に巻回したアンチブロッキング性層状構造体巻回ロール。
【請求項11】
基材上に請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンチブロッキング性硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥させて相分離させ、その後硬化することで得られるアンチブロッキング性層状構造体の製造方法。
【請求項12】
前記相分離と硬化が、光を照射することにより行われる、請求項11記載のアンチブロッキング性層状構造体の製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載のアンチブロッキング性層状構造体と、光源とを含む表示装置であって、該アンチブロッキング性層状構造体に含まれる基材が透光性基材であり、該光源が該基材の背面から光を照射する、表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−163535(P2010−163535A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6751(P2009−6751)
【出願日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】