説明

アンテナおよび携帯無線機

【課題】放射効率を確保しつつより小面積で実現するアンテナおよびこのアンテナを備える携帯無線機を提供。
【解決手段】導体のパターンとして平面内に形成されるインダクタ部と、2面が平面と平行な直方体をなす誘電体の表面に対向して設けた1対の電極を主要部として構成され、インダクタ部との間で共振回路を構成するキャパシタ部と、を基板上に備え、1対の電極は、平面と直角を成す直方体の4面中の1面に設けられ、この1面は、インダクタ部と、インダクタ部の一端を接続する一方の電極と、他方の電極と、インダクタ部の他端とで囲まれる面積が4面中で最大となる面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナおよび携帯無線機に係り、特に、携帯無線機に搭載されるアンテナの構成技術に係る。
【背景技術】
【0002】
移動体通信機器等に用いられるアンテナとして、小型化および周波数調整等が容易であるという観点から表面実装型アンテナが多用されている。この表面実装型アンテナは、誘電体基体の表面に放射電極を形成してインダクタンス部を形成すると共に、この放射電極の開放端と給電電極とを空間的に離してキャパシタンス部を形成することで、全体としてLC共振回路を構成する。そして、給電電極を介して高周波信号を放射電極に供給することで、高周波無線伝送を可能にしている。
【0003】
このような小型化を実現するアンテナが特許文献1において開示されている。図5は、特許文献1に記載のアンテナを示す斜視図である。図5において、アンテナ200は、並列共振回路202を非グランド領域201a内に配した構成になっている。並列共振回路202は、非グランド領域201a内にパターン形成された並列放射電極パターン203に、表面実装型アンテナ部品204を並列に接続したものである。並列放射電極パターン203は、非グランド領域201aの大半を使ってループ状に形成され、並列共振回路202のインダクタ部Lを構成する。また、表面実装型アンテナ部品204の1対の電極241、242は、間隔dに対応した容量を有するキャパシタ部Cdを構成する。なお、電極241、242は、表面実装型アンテナ部品204の上面(実装基板201と対向する側)に設けられる。給電手段205は、インダクタL0を介して接地されると共に、インダクタL1を介して並列放射電極パターン203中の給電電極部202aに給電する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−318336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下の分析は本発明において与えられる。
【0006】
近年、携帯無線機は、多機能化が進み、GPS機能やワンセグ機能等が搭載されている。そして、これらの機能に対応してアンテナが必要となり、アンテナの数は、機能追加に伴い増える一方である。また、携帯無線機は、移動や用途の面から小型化、薄型の要求がより高まっている。このため、アンテナ効率を劣化させることなく、さらなる小型化を実現するアンテナが求められている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、放射効率を確保しつつより小面積で実現するアンテナおよびこのアンテナを備える携帯無線機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つのアスペクト(側面)に係るアンテナは、導体のパターンとして平面内に形成されるインダクタ部と、2面が平面と平行な直方体をなす誘電体の表面に対向して設けた1対の電極を主要部として構成され、インダクタ部との間で共振回路を構成するキャパシタ部と、を基板上に備え、1対の電極は、平面と直角を成す直方体の4面中の1面に設けられ、この1面は、インダクタ部と、インダクタ部の一端を接続する一方の電極と、他方の電極と、インダクタ部の他端とで囲まれる面積が4面中で最大となる面である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アンテナの放射効率を確保しつつより小面積で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例に係る携帯無線機の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係るアンテナの構造を模式的に示す図である。
【図3】本発明の一実施例に係るキャパシタ部の構造を模式的に示す図である。
【図4】キャパシタ部およびインダクタ部によって囲まれた面積Sによる放射効率の変化を示す図である。
【図5】従来のアンテナを示す斜視図である。
【図6】比較対象とした従来のキャパシタ部の構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るアンテナは、導体のパターンとして平面内に形成されるインダクタ部(図2の4)と、2面が平面と平行な直方体をなす誘電体(図3の13)の表面に対向して設けた1対の電極(図3の12a、12b)を主要部として構成され、インダクタ部との間で共振回路を構成するキャパシタ部(図2の3)と、を基板上に備え、1対の電極は、平面と直角を成す直方体の4面中の1面に設けられ、この1面は、インダクタ部と、インダクタ部の一端を接続する一方の電極と、他方の電極と、インダクタ部の他端とで囲まれる面積が4面中で最大となる面である。なお、()内の参照符号は、理解を助けるための一例示であって、図示の態様に限定することを意図するものではない。
【0012】
アンテナにおいて、キャパシタ部は、1対の電極が設けられる面が直方体の長手方向の面の一方であるように配置されてもよい。
【0013】
アンテナにおいて、一端を一方の電極に接続し、他端を接地し、キャパシタ部は、他方の電極を受信回路側に接続してインダクタ部と直列共振回路を構成してもよい。
【0014】
アンテナにおいて、基板上の矩形の領域において、矩形の第1の辺に接地用導体を配設し、インダクタ部は、第1の辺に直交する矩形の第2の辺、および第1の辺に対向する矩形の第3の辺に、Lの字状に配設される導体を少なくとも含み、キャパシタ部は、矩形の第4の辺の一部に配設されてもよい。
【0015】
アンテナにおいて、1対の電極は、第2の辺から遠い側の直方体の面に設けられてもよい。
【0016】
アンテナにおいて、1対の電極は、それぞれ矩形の導体から構成され、互いの間に所定の第1の間隙を有して配設されてもよい。
【0017】
アンテナにおいて、1対の電極は、基板との間にそれぞれ所定の第2の間隙を持って配設されてもよい。
【0018】
携帯無線機は、上記のアンテナを備えるようにしてもよい。
【0019】
以上のようなアンテナによれば、キャパシタ部の電極を直方体の側面に形成することで、放射効率の劣化を軽減させることができる。すなわち、アンテナの放射効率を確保しつつ従来のアンテナよりも小面積で実現することができる。したがって、このようなアンテナを携帯無線機に適用することで、携帯無線機の小型化を図ることができる。
【0020】
以下、実施例に即し、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の一実施例に係る携帯無線機の構成を示す図である。図1において、携帯無線機1は、GPS受信機能を有する携帯無線機であり、アンテナ10、整合回路部6、無線回路部7、制御部8、表示部9を基板2上に備える。ここでは、一体型の携帯無線機を例として説明する。
【0022】
アンテナ10は、GPS用の受信アンテナであって、共振回路を構成するキャパシタ部3およびインダクタ部4を備え、受信した電波信号を給電線5を介して整合回路部6に出力する。
【0023】
整合回路6は、アンテナ10と無線回路部7との間のインピーダンスマッチング(整合)をとるための回路である。整合回路6は、例えば、給電線5に一つのコンデンサの一端を接続し、一つのコンデンサの他端を、他のコンデンサを介して接地すると共に無線回路部7の一端に接続するように構成される。
【0024】
無線回路部7は、アンテナ10で受信した電波を復調して復調信号を制御部8に出力する。
【0025】
制御部8は、無線回路部7と表示部9を制御すると共に、無線回路部7の復調信号からGPSに係る位置測位情報を抽出し、抽出した位置測位情報を表示部9へ伝送する。表示部9は、位置測位情報を表示させる。
【0026】
次に、アンテナ10の構造の詳細について説明する。図2は、本発明の一実施例に係るアンテナの構造を模式的に示す図である。図2において、インダクタ部4は、一端を基板2上の接地となる導体に接続し、途中で直角に折れ曲がり、他端をキャパシタ部3の一端に接続するLの字状で細い帯状の導体として構成される。キャパシタ部3は、他端を給電線5に接続する。尚、キャパシタ部3およびインダクタ部4が配設される部分に関しては、基板2の金属部(導体)を抜いて、誘電体で構成される。
【0027】
次に、キャパシタ部3の構造の詳細について説明する。図3は、本発明の一実施例に係るキャパシタ部の構造を模式的に示す図である。図3において、キャパシタ部3は、形状が直方体である誘電体13の長手方向の側面に電極12a、12bを備える。電極12a、12bは、それぞれ矩形の導体から構成され、互いの間に所定の間隙dを有して配設される。また、基板との間にそれぞれ所定の間隙gを持って配設される。
【0028】
図3において、電極12aは、直方体の左面に備えられる導体を介し下面左端の導体に接続される。左面および下面左端の導体は、インダクタ部4に電気的に接続される。また、電極12bは、直方体の右面に備えられる導体を介し下面右端の導体に接続される。右面および下面右端の導体は、給電線5に電気的に接続される。なお、直方体の下面の中央部には、下面左端および下面右端の導体と接続されない、基板等との接続に係る導体を設けるようにしてもよい。ここで、キャパシタ部3は、電極12a、12bが形成される側面を、図2のインダクタ部4と離れる側とするように配置される。
【0029】
次に、以上のような構成のアンテナ10の効率に関し、シミュレーションによって得られた結果について説明する。図4は、キャパシタ部3およびインダクタ部4によって囲まれた面積S(mm)による放射効率の変化を示す図である。ここで、面積Sは、図2に示す7.5mm×距離L(一例が2.5mm)の長方形の面積であって、キャパシタ部3の長手方向が配置される辺と対向するインダクタ部4が配置される辺との距離Lをパラメータとして可変させている。
【0030】
ここで、インダクタ部4の導体の長さは、図2に示すように、キャパシタ部3の接続点から順に、キャパシタ部3と離れる方向にLmm、基板2の接地導体に向かって7.5mmとした。また、インダクタ部4の導体の幅は、0.3mmとした。さらに、基板2の誘電体は、誘電率εr=4.3とし、金属部の導電率は、5.8×10^7とした。
【0031】
また、キャパシタ部3は、図3に示すように、側面に形成される電極12a、12bが下面に接触しないようにg=0.05mm離し、電極12a、12bのパターンの幅は0.95mmとした。また、給電線側から順に電極12bの上辺0.5mm、d=0.2mm離れて、電極12aの上辺5.3mmとした。また、右面および左面の垂直な導体パターンは、幅が1.2mmで、長さ(高さ)を1.0mmとした。さらに、誘電体13は、誘電率εr=26とした。
【0032】
一方、比較対象とする従来のキャパシタ部、すなわち図5の表面実装型アンテナ部品204は、図6に示すように、上面においてパターン幅が1.2mmであり、給電部側から順に電極242の長さ0.5mm、d=0.2mm離れて、電極241の長さ5.3mmとした。また、右面および左面の垂直な導体パターンは、幅が1.2mmで、長さが1.0mmとした。さらに、誘電体である基体40は、誘電率εr=26とした。
【0033】
以上のような構造のキャパシタ部を有するアンテナ10におけるアンテナ効率の測定結果(図4)を参照するならば、本実施例は、従来よりも面積Sを約35%縮小しても従来と同等以上の放射効率を得られることが示される。この理由は、キャパシタ部3およびインダクタ部4に流れる電流の向きが逆になるため、互いから放射される電波が打ち消しあい、放射効率を劣化させているが、本実施例では、従来の実施例よりもキャパシタ部3およびインダクタ部4の距離をより離すことができ、放射効率の劣化を軽減できるためである。
【0034】
本発明は、以上のようにキャパシタ部3の電極12a、12bをインダクタ部4と離れる側の側面に形成することで、面積Sが従来よりも拡大し、結果としてキャパシタ部3およびインダクタ部4との距離を縮めることができる。よって、アンテナのより小型化が実現される。
【0035】
なお、本実施例では、携帯無線機を一体型の携帯無線機として説明したが、これに限定されるものでなく、折畳み型や二軸型等の携帯無線機であってもよい。また、アンテナをGPS用の受信アンテナであるとして説明したが、これに限定されるものではなく、一般に超高周波の電波の受信用あるいは送信用アンテナにも適用可能である。
【0036】
なお、前述の特許文献等の各開示を、本書に引用をもって繰り込むものとする。本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1 携帯無線機
2 基板
3 キャパシタ部
4 インダクタ部
5 給電線
6 整合回路部
7 無線回路部
8 制御部
9 表示部
10 アンテナ
12a、12b 電極
13 誘電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体のパターンとして平面内に形成されるインダクタ部と、
2面が前記平面と平行な直方体をなす誘電体の表面に対向して設けた1対の電極を主要部として構成され、前記インダクタ部との間で共振回路を構成するキャパシタ部と、
を基板上に備え、
前記1対の電極は、前記平面と直角を成す前記直方体の4面中の1面に設けられ、この1面は、前記インダクタ部と、前記インダクタ部の一端を接続する一方の前記電極と、他方の前記電極と、前記インダクタ部の他端とで囲まれる面積が4面中で最大となる面であることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記キャパシタ部は、前記1対の電極が設けられる面が前記直方体の長手方向の面の一方であるように配置されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項3】
前記インダクタ部は、一端を一方の前記電極に接続し、他端を接地し、
前記キャパシタ部は、他方の前記電極を受信回路側に接続して前記インダクタ部と直列共振回路を構成することを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項4】
前記基板上の矩形の領域において、
前記矩形の第1の辺に接地用導体を配設し、
前記インダクタ部は、前記第1の辺に直交する前記矩形の第2の辺、および前記第1の辺に対向する前記矩形の第3の辺に、Lの字状に配設される導体を少なくとも含み、
前記キャパシタ部は、前記矩形の第4の辺の一部に配設されることを特徴とする請求項3記載のアンテナ。
【請求項5】
前記1対の電極は、前記第2の辺から遠い側の前記直方体の面に設けられることを特徴とする請求項4記載のアンテナ。
【請求項6】
前記1対の電極は、それぞれ矩形の導体から構成され、互いの間に所定の第1の間隙を有して配設されることを特徴とする請求項1、2、5のいずれか一に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記1対の電極は、前記基板との間にそれぞれ所定の第2の間隙を持って配設されることを特徴とする請求項6記載のアンテナ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一に記載のアンテナを備える携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−95121(P2012−95121A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241058(P2010−241058)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】