説明

アンテナ内蔵式電子時計

【課題】GPSの受信性能を十分に高く維持することができ、モデル展開の自由度を向上させることができる小型のアンテナ内蔵式電子時計を提供する。
【解決手段】少なくとも一部が非導電性部材で形成された筒状の外装ケース80と、外装ケース80の内側で時刻を表示する文字板11と、外装ケース80の内側で文字板11を駆動する駆動体30と、外装ケース80の内側で駆動体30の周囲に配置され、環状の一部を切り欠いた形状のアンテナ体40とを備えることを特徴とする。また、外装ケース80の二つの開口のうち、一方の開口を塞ぐカバーガラス84と、外装ケース80内に収納されて無線通信を行うGPS受信部26が配置された回路基板25とをさらに備え、アンテナ体40は、回路基板25よりもカバーガラス84側に配置され、GPS受信部26は回路基板25の裏蓋85側に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを内蔵したアンテナ内蔵式電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触データ通信機能を備えた様々な装着型電子機器がある(例えば、特許文献1)。この特許文献1は、ユーザーの腕に装着される腕時計であって、その内部に非接触データ通信部であるアンテナを備えたものである。このような技術により、例えば、電車やリフトへの搭乗時等に通過すべき通門位置(改札口等)に設置されるゲート装置での読み取り・書込み動作の簡便性が向上されている。
【0003】
ところで、近年、このような腕時計などの装着型電子機器においてGPS(Global Positioning System)における衛星信号を受信し、現在位置を取得するものがある(例えば、特許文献2)。この特許文献2は、腕装着型電子機器に使用されるGPSアンテナに関するものである。そこには、腕時計の内部に非導電性部材で形成された誘電体を有するループ状のアンテナを備え、この誘電体により波長短縮させて、アンテナ周囲長を短縮させることで、腕時計内部に無線電波の波長に対する1波長ループアンテナを収めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−050983号公報
【特許文献2】特開2011−097431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された技術では、誘電体で覆われたアンテナが文字板の周囲に沿って配置された構成となっている。このため、そのアンテナ部分の外周に備えられるベゼル部分が大型化となってしまい、時計デザイン上の制約が生じ、時計のモデル展開が困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、例えば、GPSにおける衛星信号の受信に用いた場合であっても、受信性能を維持しつつ、アンテナ体が時計デザインに与える制約を低減し、モデル展開の自由度を向上させることができるアンテナ内蔵式電子時計を提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明に係るアンテナ内蔵式電子時計は、少なくとも一部が非導電性部材で形成された筒状の外装ケースと、前記外装ケースの内側で時刻を表示する時刻表示部と、前記外装ケースの内側で前記時刻表示部を駆動する駆動体と、前記外装ケースの内側で前記駆動体の周囲に配置され、環状の誘電体と、前記誘電体に接した環状のアンテナ素子とを有し、位置情報衛星からの電波を受信するアンテナ体とを備えることを特徴とする。
【0008】
このアンテナ内蔵式電子時計では、ループアンテナとして機能するアンテナ体が、駆動体の周囲に配置されているため、外装ケース内のスペースを有効に活用するこができ、径の小さい小型の時計が実現できる。さらに、誘電体による波長短縮を利用することで、アンテナ体の小型化が実現され、1波長ループアンテナを径の小さい小型の時計に収めることが可能となる。
ここで、「アンテナ素子」は電磁波を電流に変換する機能がある。「環状」には、円形や略四角形が含まれ、一部が開いた開環状(例えばC型)や、全部が閉じた閉環状(例えばO型)が含まれる。例えば、アンテナ素子がC型形状のループアンテナである場合、ループアンテナの始点及び終点となる一対の給電点がC型形状の切欠部分を挟んで位置することとなる。このため、ループアンテナの始点から終点までの周囲長を約1波長とすることにより、半波長ダイポールアンテナ2本を、給電点を挟んで平行においた場合と同等の受信性能を維持することができる。
また、アンテナ体は、複数のアンテナ素子を有するものであってもよい。例えば、C型形状のアンテナ素子と、O型形状のアンテナ素子とを備えるものであってもよい。アンテナ体に2つのアンテナ素子を設ける場合、当該2つのアンテナ素子が互いに電磁的に結合するように設けられることが好ましい。この場合、一方のアンテナ素子(例えばO型形状のアンテナ素子)の形状を、位置情報衛星からの電波に共振するように定めることで、他方のアンテナ素子(例えばC型形状のアンテナ素子)の形状を適宜設定することができるため、アンテナ体と、当該アンテナ体(他方のアンテナ素子)に電気的に接続される回路との間のインピーダンスを容易に整合することが可能となる。
【0009】
以上より、本発明によれば、例えば、GPSにおける衛星信号の受信に用いた場合であっても、受信性能を維持しつつ、アンテナ体が時計デザインに与える制約を低減し、モデル展開の自由度を向上させることができるアンテナ内蔵式電子時計を提供することができる。
【0010】
なお、「非導電性部材」としては、金属以外の素材、例えばセラミックやプラスチックを用いることができる。また、「時刻表示部分」としては時計の文字板が含まれ、この文字板上における時刻表示として、指針による表示や、液晶等のデジタル表示が含まれる。この指針としては、時針や分針、秒針が挙げられる。「誘電体と接し」とは、誘電体の表面で接する場合の他、いわゆるインサート成型によってアンテナ素子が誘電体の内部に埋め込まれる場合も含まれる。
【0011】
このアンテナ内蔵式電子時計は、前記外装ケースの二つの開口のうち、一方の開口を塞ぐカバーガラスと、前記外装ケースの二つの開口のうち、前記時刻表示部の表示方向と反対側の開口を塞ぐ金属製の裏蓋と、前記外装ケースに収納されて無線通信を行う無線通信回路が配置された回路基板とをさらに備え、前記アンテナ体は、前記回路基板よりも前記カバーガラス側に配置され、前記アンテナ体は、前記回路基板よりも前記カバーガラス側に配置され、前記無線通信回路は前記回路基板の前記裏蓋側に配置されていることが好ましい。この場合には、GPSモジュールなどの無線通信回路とアンテナ体との間に回路基板を介在させることができ、無線通信回路から発生するクロック信号などのインバンド(受信信号の帯域内)ノイズがアンテナ体に悪影響を及ぼすのを低減することができる。これによりアンテナ体の感度が劣化するのを低減することができる。
【0012】
上記の各アンテナ内蔵式電子時計において、前記アンテナ体には、当該アンテナ内蔵式電子時計の操作子の挿通用に、前記アンテナ体の外部から前記駆動体へ至る挿通部が形成されていることが好ましい。この場合には、竜頭の巻真や操作ボタンなどの操作子を、挿通部を通じて、アンテナ体の外部から、アンテナ体内の駆動体へ到達させることができ、アンテナ体と操作子とが干渉するのを回避することができ、アンテナ体の配置位置の自由度を高めることができる。
ここで、挿通部としては、アンテナ体40の側部から径方向へ貫通した孔の他、操作子が挿通できれば、アンテナ体を径方向に貫通した溝や切欠であってもよい。
【0013】
上記の各アンテナ内蔵式電子時計は、前記アンテナ素子は前記誘電体の前記カバーガラス側に接するように設けられることが好ましい。この場合には、金属製の裏蓋による反射により、時計表面における法線方向の放射が大きくなり、極めて高い受信性能が得られる。この際、アンテナ体が、誘電体のカバーガラス側に位置することにより、金属製の裏蓋からの距離を適度に確保することができるとともに、カバーガラス側からの電波に対する受信感度を向上させることができる。
【0014】
上記の各アンテナ内蔵式電子時計は、光発電用のソーラーパネルをさらに備え、前記アンテナ体の前記カバーガラス側の一部又は全部が、前記ソーラーパネルよりも前記カバーガラス側に配置されていることが好ましい。一般的にソーラーパネルの下面には厚み数μmのアルミ電極があり、その影響で受信性能が劣化することから、アンテナ体のカバーガラス側の一部又は全部を、ソーラーパネルよりもカバーガラス側に位置させることにより、受信性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計100(電子時計100)を含むGPSシステムの全体図である。
【図2】電子時計100の平面図である。
【図3】電子時計100の一部断面図である。
【図4】電子時計100の一部の分解斜視図である。
【図5】電子時計100の回路構成を示すブロック図である。
【図6】電子時計100のアンテナ体40のZ−Y平面における放射パターンを示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計200(電子時計200)の一部断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計300(電子時計300)の一部断面図である。
【図9】本発明の変更例に係るアンテナ体43の斜視図である。
【図10】本発明の変更例に係るアンテナ体44の斜視図である。
【図11】本発明の変更例に係るアンテナ体45の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の好適な実施の形態を、添付図面等を参照しながら詳細に説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計100(以下「電子時計100」という)を含むGPSシステムの全体図である。電子時計100は、GPS衛星20からの電波(無線信号)を受信して内部時刻を修正する腕時計であり、腕に接触する面(以下、「裏面」という)の反対側の面(以下「表面」という)に時刻を表示する。
【0018】
GPS衛星20は、地球上空における所定の軌道上を周回する位置情報衛星であり、1.57542GHzの電波(L1波)に航法メッセージを重畳させて地上に送信している。以降の説明では、航法メッセージが重畳された1.57542GHzの電波を「衛星信号」という。衛星信号は、右旋偏波の円偏波である。
なお、以下では、GPSシステムが備える位置情報衛星としてGPS衛星20を例示して説明するが、これはあくまで一例である。GPSシステムは、ガリレオ(EU)、GLONASS(ロシア)、北斗(中国)などの他の全地球的航法衛星システム(GNSS)や、SBASなどの静止衛星や準天頂衛星などの時刻情報を含む衛星信号を発信する位置情報衛星を備えるものであればよい。すなわち、電子時計100は、GPS衛星20以外の衛星を含む位置情報衛星からの電波(無線信号)を受信して内部時刻を修正する腕時計であってもよい。
【0019】
現在、約31個のGPS衛星20(図1においては、約31個のうち4個のみを図示)が存在している。衛星信号がどのGPS衛星20から送信されたかを識別するために、各GPS衛星20はC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)と呼ばれる1023chip(1ms周期)の固有のパターンを衛星信号に重畳する。C/Aコードは、各chipが+1又は−1のいずれかでありランダムパターンのように見える。したがって、衛星信号と各C/Aコードのパターンの相関をとることにより、衛星信号に重畳されているC/Aコードを検出することができる。
【0020】
GPS衛星20は原子時計を搭載しており、衛星信号には原子時計で計時された極めて正確な時刻情報(以下、「GPS時刻情報」という)が含まれている。また、地上のコントロールセグメントにより各GPS衛星20に搭載されている原子時計のわずかな時刻誤差が測定されており、衛星信号にはその時刻誤差を補正するための時刻補正パラメータも含まれている。電子時計100は、1つのGPS衛星20から送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と時刻補正パラメータを使用して内部時刻を正確な時刻に修正する。
【0021】
衛星信号にはGPS衛星20の軌道上の位置を示す軌道情報も含まれている。電子時計100は、GPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行うことができる。測位計算は、電子時計100の内部時刻にはある程度の誤差が含まれていることを前提として行われる。すなわち、電子時計100の3次元の位置を特定するためのx,y,zパラメータに加えて時刻誤差も未知数になる。そのため、電子時計100は、一般的には4つ以上のGPS衛星からそれぞれ送信された衛星信号を受信し、その中に含まれるGPS時刻情報と軌道情報を使用して測位計算を行う。
【0022】
図2は、電子時計100の平面図である。図2に示すように、電子時計100は、セラミックやプラスチック等の非導電性部材で形成された円筒状の外装ケース80を備える。その外観は、外装ケース80の表面側周縁に、セラミックやプラスチック等の非導電性部材で形成された環状のベゼル81が嵌合されている。このベゼル81の内周側に、プラスチックで形成された環状のダイヤルリング83を介して、円盤状の文字板11が時刻表示部分として配置される。この文字板11上には、時刻や日付等を表示する指針13(13a〜c)が配置されている。また、文字板11の裏面側には、液晶表示パネル14が配置されている。そして、外装ケース80の表面側の開口は、ベゼル81を介してカバーガラス84で塞がれている。カバーガラス84通じて、内部の文字板11、指針13(13a〜c)及び液晶表示パネル14が視認可能となっている。なお、図2中において、液晶表示パネル14に表示された"TYO"の文字は、「東京」の意味であり、ワールドタイム機能の日本の時刻を表示している。
【0023】
ダイヤルリング83は、ベゼル81の内周面に接触するプラスチック製の環状部材である。ダイヤルリング83の下方に、環状の一部を切り欠いたいわゆるC型形状のアンテナ素子を有するアンテナ体40が収納されている。
このアンテナ体40は、環状の一部を切り欠いたループアンテナを、時刻表示部分である文字板11の外縁に沿って環状に配置して構成される。本実施形態のアンテナ体40は、外装ケース80の内側において、駆動体30の周囲に配置されている。具体的には、地板38の内部に駆動体30が収納されており、この地板38の外周に、環状のアンテナ体40が嵌め込まれている。アンテナ体40に対する2箇所の給電点40a及び40bも、地板38の外周に配置されている。この給電点40a及び40bは、アンテナ体40の始点及び終点に位置し、アンテナ体40に給電する電極である。
【0024】
また、電子時計100は、図1及び図2に示す竜頭16や操作ボタン17及び18を手動操作することにより、少なくとも1つのGPS衛星20からの衛星信号を受信して内部時刻情報の修正を行うモード(時刻情報取得モード)と複数のGPS衛星20からの衛星信号を受信して測位計算を行い内部時刻情報の時差を修正するモード(位置情報取得モード)に設定できるように構成されている。また、電子時計100は、時刻情報取得モードや位置情報取得モードを定期的に(自動的に)実行することもできる。
【0025】
図3は電子時計100の内部構造を示す一部断面図であり、図4は電子時計100の一部の分解斜視図である。図3及び4に示すように、セラミックで形成された円筒状の外装ケース80の表面側には、セラミックで形成された環状のベゼル81が嵌合されている。また、ベゼル81の内周に沿って、プラスチックで形成された環状のダイヤルリング83が取り付けられている。外装ケース80の二つの開口のうち、表面側の開口は、環状のベゼル81を介してカバーガラス84で塞がれており、裏面側の開口は金属で形成された裏蓋85で塞がれている。金属製の裏蓋85と外装ケース80とは、パッキンを介して嵌合されている。
【0026】
また電子時計100は、外装ケース80の内側に、リチウムイオン電池などの二次電池27を備える。二次電池27は、後述のソーラーパネル87が発電した電力で充電される。すなわち、ソーラー充電が行われる。電子時計100は、外装ケース80の内側に、光透過性の文字板11と、文字板11を貫通した指針軸12と、指針軸12を中心に周回して現在時刻を指し示す複数の指針13(秒針13a、分針13b及び時針13c)と、指針軸12を回転させて複数の指針13を駆動する駆動体30とを備える。指針軸12は、外装ケース80の中心軸に沿って表裏方向に延在している。
【0027】
文字板11は、外装ケース80の内側で時刻を表示する時刻表示部分を構成する円形の板材であり、プラスチックなどの光透過性の材料で形成されている。文字板11は、カバーガラス84との間に指針13(13a〜c)を挟み、ダイヤルリング83の内側に配置されている。文字板11の中央部には、指針軸12が貫通する孔が形成されているとともに、液晶表示パネル14を視認させるための開口部が形成されている。
【0028】
駆動体30は、地板38に取り付けられ、ステップモーターと歯車などの輪列とを有する。当該ステップモーターが当該輪列を介して指針13を回転させることにより、複数の指針13を駆動する。具体的には、時針13cは12時間、分針13bは60分、秒針13aは60秒で一周する。また、駆動体30が取り付けられた地板38は、指針13との間に文字板11を挟むように配置されている。
【0029】
また電子時計100は、外装ケース80の内側に、光発電を行うソーラーパネル87を備える。ソーラーパネル87は、光エネルギーを電気エネルギー(電力)に変換する複数のソーラーセル(光発電素子)を直列接続した円形の平板である。ソーラーパネル87は、文字板11と駆動体30との間に配置され、指針軸12の横断面に沿って延在している。またソーラーパネル87は、その延在方向において、ダイヤルリング83の内側に配置されている。またソーラーパネル87の中央部には、指針軸12が貫通する孔が形成されているとともに、液晶表示パネル14を視認させるための開口部が形成されている。
【0030】
また電子時計100は、外装ケース80の内側に、回路基板25と、回路基板25に実装されたバラン10、GPS受信部(無線受信部)26及び制御部70とを備える。バラン10は、平衡−不平衡の変換素子であり、平衡給電で作動するアンテナ体40からの平衡信号を、GPS受信部26で扱うことができる不平衡信号に変換する。
【0031】
そして、電子時計100は、環状の一部を切り欠いた形状のアンテナ素子を有するアンテナ体40を備える。このアンテナ体40は、リング形状の誘電体40dを基材として、これに金属のアンテナパターン40cをメッキや銀ペースト印刷などにより形成したものである。アンテナパターン40cは電磁波を電流に変換するアンテナ素子として機能する。なお、アンテナパターン40cは、誘電体40dのカバーガラス84側に形成されるとともに、回路基板25よりもカバーガラス84側に配置され、その上方をダイヤルリング83、及びベゼル81で覆われている。誘電体としては、酸化チタンなどの高周波で使える誘電材料を樹脂に混ぜて成形することができ、これにより誘電体の波長短縮と相俟ってアンテナをより小型化できる。
【0032】
例えば、GPS受信の場合1.575GHzなので一波長は19cmとなり、通常のアンテナを腕時計のベゼル部分に埋め込むにはそのままでは収まらず、波長短縮が必要となる。本実施形態では、誘電体による波長短縮が(εr)1/2となることから、本実施形態では、誘電体40dとしては、εr=5〜10程度を用いている。これにより、GPS受信用のアンテナであっても、腕時計に1波長ループアンテナを収めることができ、アンテナの小型化を図ることができる。
【0033】
また、アンテナ体40は、アンテナパターン部分40cの両端、すなわちC形状の切欠部分に位置する二つの給電点40a及び40bを通じて給電される。この給電点40a及び40bでは、アンテナ下面に配置された図示しないアンテナ接続端子と接続されている。アンテナ接続端子は、回路基板25上に設けられて、アンテナ体40の下面まで回り込んだ給電点40a及び40bと接触することで、回路基板25とアンテナ体40とを接続する。
【0034】
本実施形態において、アンテナ体40への給電は、バラン10から2箇所の給電点40a及び40bを通じての平衡給電となる。具体的には、アンテナパターン部分40cの両端に、プラス及びマイナスの給電点40a及び40bを有し、これら二つの給電点40a及び40bがアンテナ接続端子と接続されている。これらアンテナ接続端子を介して平衡給電が行われ、GPS受信部26は、アンテナ体40を用いて無線信号を受信する。なお、アンテナ体40は、1波長ループアンテナであることから、給電に対して自己平衡作用があり、上記バラン10を介さず、直接給電することも可能である。
【0035】
また、アンテナ体40の側部には、アンテナ体40の外部から、アンテナ体40内の駆動体30へ至る挿通部40eが形成されている。この挿通部40eは、竜頭の巻真や操作ボタンなどの操作子を、挿通部40eを通じて、アンテナ体40の外部から、アンテナ体40内の駆動体30へ到達させる孔であり、操作子に対応する位置に設けられている。図4では、挿通部40eとして、誘電体40dを、側部から径方向へ貫通した孔を例示しているが、この挿通部40eとしては、操作子が挿通できれば、アンテナ体40を径方向に貫通した溝や切欠であってもよい。
【0036】
図5は、電子時計100の回路構成を示すブロック図である。図5に示すように、電子時計100は、GPS受信部26及び制御表示部36を含んで構成されている。GPS受信部26は、衛星信号の受信、GPS衛星20の捕捉、位置情報の生成、時刻修正情報の生成等の処理を行う。制御表示部36は、内部時刻情報の保持及び内部時刻情報の修正等の処理を行う。
【0037】
ソーラーパネル87は、充電制御回路29を通じて二次電池27を充電する。電子時計100はレギュレータ34及び35を備える。二次電池27は、レギュレータ34を介して制御表示部36に、レギュレータ35を介してGPS受信部26に駆動電力を供給する。また電子時計100は、二次電池27の電圧を検出する電圧検出回路37を備える。なお、レギュレータ35に代えて、例えば、RF部50(詳細は後述)に駆動電力を供給するレギュレータ35−1と、ベースバンド部60(詳細は後述)に駆動電力を供給するレギュレータ35−2(ともに図示せず)とに分けて設けてもよい。レギュレータ35−1は、RF部50の内部に設けてもよい。
【0038】
また電子時計100は、アンテナ体40、バラン10、及びSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルタ32を含む。アンテナ体40は、図1で説明したように、複数のGPS衛星20からの衛星信号を受信する。ただし、アンテナ体40は衛星信号以外の不要な電波も若干受信してしまうため、SAWフィルタ32は、アンテナ体40が受信した信号から衛星信号を抽出する処理を行う。すなわち、SAWフィルタ32は、1.5GHz帯の信号を通過させるバンドパスフィルタとして構成される。
【0039】
また、GPS受信部26は、RF(Radio Frequency:無線周波数)部50とベースバンド部60を含んで構成されている。以下に説明するように、GPS受信部26は、SAWフィルタ32が抽出した1.5GHz帯の衛星信号から航法メッセージに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する処理を行う。
【0040】
RF部50は、LNA(Low Noise Amplifier)51、ミキサ52、VCO(Voltage Controlled Oscillator)53、PLL(Phase Locked Loop)回路54、IFアンプ55、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)フィルタ56、ADC(A/D変換器)57等を含んで構成されている。
【0041】
SAWフィルタ32が抽出した衛星信号は、LNA51で増幅される。LNA51で増幅された衛星信号は、ミキサ52でVCO53が出力するクロック信号とミキシングされて中間周波数帯の信号にダウンコンバートされる。PLL回路54は、VCO53の出力クロック信号を分周したクロック信号と基準クロック信号を位相比較してVCO53の出力クロック信号を基準クロック信号に同期させる。その結果、VCO53は基準クロック信号の周波数精度の安定したクロック信号を出力することができる。なお、中間周波数として、例えば、数MHzを選択することができる。
【0042】
ミキサ52でミキシングされた信号は、IFアンプ55で増幅される。ここで、ミキサ52でのミキシングにより、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も生成される。そのため、IFアンプ55は、中間周波数帯の信号とともに数GHzの高周波信号も増幅する。IFフィルタ56は、中間周波数帯の信号を通過させるとともに、この数GHzの高周波信号を除去する(正確には、所定のレベル以下に減衰させる)。IFフィルタ56を通過した中間周波数帯の信号はADC(A/D変換器)57でデジタル信号に変換される。
【0043】
ベースバンド部60は、DSP(Digital Signal Processor)61、CPU(Central Processing Unit)62、SRAM(Static Random Access Memory)63、RTC(リアルタイムクロック)64を含んで構成されている。また、ベースバンド部60には、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)65やフラッシュメモリ66等が接続されている。
【0044】
温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65は、温度に関係なくほぼ一定の周波数の基準クロック信号を生成する。フラッシュメモリ66には、例えば時差情報が記憶されている。時差情報は、時差データ(座標値(例えば、緯度及び経度)に関連づけられたUTCに対する補正量等)が定義された情報である。
【0045】
ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードに設定されると、RF部50のADC57が変換したデジタル信号(中間周波数帯の信号)からベースバンド信号を復調する処理を行う。
【0046】
また、ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードに設定されると、後述する衛星検索工程において、各C/Aコードと同一のパターンのローカルコードを発生し、ベースバンド信号に含まれる各C/Aコードとローカルコードの相関をとる処理を行う。そして、ベースバンド部60は、各ローカルコードに対する相関値がピークになるようにローカルコードの発生タイミングを調整し、相関値が閾値以上となる場合にはそのローカルコードのGPS衛星20に同期(すなわち、GPS衛星20を捕捉)したものと判断する。ここで、GPSシステムでは、すべてのGPS衛星20が異なるC/Aコードを用いて同一周波数の衛星信号を送信するCDMA(Code Division Multiple Access)方式を採用している。したがって、受信した衛星信号に含まれるC/Aコードを判別することで、捕捉可能なGPS衛星20を検索することができる。
【0047】
また、ベースバンド部60は、時刻情報取得モード又は位置情報取得モードにおいて、捕捉したGPS衛星20の衛星情報を取得するために、当該GPS衛星20のC/Aコードと同一のパターンのローカルコードとベースバンド信号をミキシングする処理を行う。ミキシングされた信号には、捕捉したGPS衛星20の衛星情報を含む航法メッセージが復調される。そして、ベースバンド部60は、航法メッセージの各サブフレームのTLMワード(プリアンブルデータ)を検出し、各サブフレームに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得する(例えばSRAM63に記憶する)処理を行う。ここで、GPS時刻情報は、週番号データ(WN)及びZカウントデータであるが、以前に週番号データが取得されている場合にはZカウントデータのみであってもよい。
【0048】
そして、ベースバンド部60は、衛星情報に基づいて、内部時刻情報を修正するために必要な時刻修正情報を生成する。
時刻情報取得モードの場合、より具体的には、ベースバンド部60は、GPS時刻情報に基づいて測時計算を行い、時刻修正情報を生成する。時刻情報取得モードにおける時刻修正情報は、例えば、GPS時刻情報そのものであってもよいし、GPS時刻情報と内部時刻情報との時間差の情報であってもよい。
【0049】
一方、位置情報取得モードの場合、より具体的には、ベースバンド部60は、GPS時刻情報や軌道情報に基づいて測位計算を行い、位置情報(より具体的には、受信時に電子時計100が位置する場所の緯度及び経度)を取得する。さらに、ベースバンド部60は、フラッシュメモリ66に記憶されている時差情報を参照し、位置情報により特定される電子時計100の座標値(例えば、緯度及び経度)に関連づけられた時差データを取得する。このようにして、ベースバンド部60は、時刻修正情報として衛星時刻データ(GPS時刻情報)及び時差データを生成する。位置情報取得モードにおける時刻修正情報は、上記の通り、GPS時刻情報と時差データそのものであってもよいが、例えば、GPS時刻情報の代わりに内部時刻情報とGPS時刻情報の時間差のデータであってもよい。
【0050】
なお、ベースバンド部60は、1つのGPS衛星20の衛星情報から時刻修正情報を生成してもよいし、複数のGPS衛星20の衛星情報から時刻修正情報を生成してもよい。
また、ベースバンド部60の動作は、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65が出力する基準クロック信号に同期する。RTC64は、衛星信号を処理するためのタイミングを生成するものである。このRTC64は、TCXO65から出力される基準クロック信号でカウントアップされる。また、ベースバンド部60に設けられたRTC64は、GPS衛星20の衛星情報を受信中にのみ動作し、GPS時刻情報を保持する。
【0051】
制御表示部36は、制御部70、駆動回路74及び水晶振動子73を含んで構成されている。
制御部70は、記憶部71、RTC(Real Time Clock)72を備え、各種制御を行う。制御部70は、例えばCPUで構成することが可能である。
制御部70は、制御信号をGPS受信部26に送り、GPS受信部26の受信動作を制御する。また制御部70は、電圧検出回路37の検出結果に基づいて、レギュレータ34及びレギュレータ35の動作を制御する。また制御部70は、駆動回路74を介してすべての指針の駆動を制御する。RTC72は、常時動作し、時刻表示のための内部時刻を計時し、
【0052】
記憶部71には内部時刻情報が記憶されている。RTC72は、常時動作し、時刻表示のための内部時刻を計時し内部時刻情報を生成する。内部時刻情報は、電子時計100の内部で計時される時刻の情報であり、水晶振動子73によって生成される基準クロック信号によって更新される。したがって、GPS受信部26への電力供給が停止されていても、内部時刻情報を更新して指針の運針を継続することができるようになっている。
【0053】
制御部70は、時刻情報取得モードに設定されると、GPS受信部26の動作を制御し、GPS時刻情報に基づいて内部時刻情報を修正して記憶部71に記憶する。より具体的には、内部時刻情報は、取得したGPS時刻情報にUTCオフセットを加算することで求められるUTC(協定世界時)に修正される。また、制御部70は、位置情報取得モードに設定されると、GPS受信部26の動作を制御し、衛星時刻データ(GPS時刻情報)及び時差データに基づいて、内部時刻情報を修正して記憶部71に記憶する。
【0054】
以上説明したように、電子時計100では、アンテナ体40が、全体としてC型形状のループアンテナとなり、ループアンテナの始点及び終点となる一対の給電点40a及び40bがC型形状の切欠部分を挟んで位置することとなる。このため、アンテナ体40の両端、すなわちループアンテナの始点から終点までの周囲長を、誘電体40dにより波長短縮された約1波長とすることにより、半波長ダイポールアンテナ2本を、給電点40a及び40bを挟んで平行においた場合と同等の受信性能を維持することができる。
また、アンテナ体を駆動体30の周囲に配置することによって、外装ケース内のスペースを有効に活用するこができ径の小さい小型の時計が実現できる。すなわち、電子時計100は、アンテナ体40が平面視してドーナツ状(O型)の形状を有するループアンテナでるため、アンテナ体40の内側のスペースを有効活用することができる。より具体的には、アンテナ体40の内側のスペースに駆動体30等を配置することができる。よって、アンテナ体40がループアンテナでない場合(例えば、パッチアンテナである場合)と比較して、電子時計100を小型化することが可能となる。
このように、本実施形態では、アンテナ体40がループアンテナであるため、アンテナ体がパッチアンテナである場合等と比較して、アンテナ体40が電子時計100のデザインに与える制約を低減し、電子時計100のモデル展開の自由度を向上させることができるという利点を有する。
【0055】
図6は、アンテナ体40の放射パターンの説明図であり、アンテナ体40の中心点を原点とし、時計表面を含む水平面をXY平面とし、時計表面の法線方向をZ軸とした場合におけるZ−Y平面の放射パターンを示している。
【0056】
この図6では、金属裏蓋の有無でアンテナ放射パターンの比較を行っている。図6に示すように、Y−Z平面で、金属裏蓋があると反射で文字板方向(Z軸方向)の放射が大きくなっている。
ケースが金属製である場合にはアンテナに近過ぎる場合には、そのアンテナ特性が劣化するが、本実施形態において外装ケース80は非導電性部材であることからそのような影響はない。また、裏蓋85は、地板38や駆動体30などにより隔てられており、アンテナ体40と適度な距離がある。従って、裏蓋85は、文字板方向(Z軸方向)のアンテナ特性を高める反射板として機能する。
GPS衛星20からの衛星信号は、あらゆる方向から信号が到来する移動体無線とは異なり、上空から到来する。よって、電子時計100が良好なアンテナ特性を得るためには、放射パターンにおける天頂方向の特性が重要となる。一方、電子時計100をユーザの腕に装着した場合、一般的に、文字板方向(Z軸)と天頂方向とが近い向きとなる。
従って、裏蓋85を備え、文字板方向(Z軸方向)に良好なアンテナ特性を有する電子時計100は、ユーザの腕に装着されて時計表面が頂点に向いた状態となった場合に、望ましいアンテナ特性を得られることが判る。
【0057】
また、電子時計100では、誘電体40dによる波長短縮を利用することでアンテナの小型化を図ることができる。すなわち、誘電体による波長短縮が(εr)1/2となることから、本実施形態では、誘電体40dとしては、εr=5〜10程度を用いている。これにより、GPS受信用のアンテナであっても、腕時計に1波長ループアンテナを収めることができ、アンテナの小型化を図ることができる。また、アンテナ体40は、グランド板を必要としないため、大きなサイズのグランド板を備えることができないような小型機器に対しても適用することができる、という利点がある。なお、本実施形態では、アンテナ体40は、リング状の誘電体40dの表面上にメッキや銀ペースト印刷などでアンテナパターン40cを形成している。アンテナパターン40cが表面に形成されている場合には、その加工がしやすく周波数調整も容易となる。
【0058】
さらに、アンテナ体40は、給電点40a及び40bを通じて平衡給電されていることから、給電点40a及び40bが平衡型のアンテナパターンを構成することができ、受信性能を向上させることができる。また、アンテナ体40は、回路基板25よりもカバーガラス84側に配置されているので、GPSモジュールなどのGPS受信部26とアンテナ体40との間に回路基板25を介在させることができる。そのため、GPS受信部26から発生するクロック信号などのインバンド(受信信号の帯域内)ノイズがアンテナ体40に悪影響を及ぼすのを低減することができる。これによりアンテナ体40の感度が劣化するのを低減することができる。
【0059】
さらに、アンテナ体40には、アンテナ体40の外部から、アンテナ体40内の駆動体30へ至る挿通部40eが形成されている。このため、竜頭の巻真や操作ボタンなどの操作子を、挿通部40eを通じて、アンテナ体40の外部から、アンテナ体40内の駆動体30へ到達させることができる。これにより、アンテナ体40と操作子とが干渉するのを回避することができ、アンテナ体40の配置位置の自由度を高めることができる。
【0060】
以上より、本発明によれば、例えば、GPSにおける衛星信号の受信に用いた場合であっても、受信性能を維持しつつ、アンテナ体が時計デザインに与える制約を低減し、モデル展開の自由度を向上させることができるアンテナ内蔵式電子時計を提供することができる。
【0061】
[第2実施形態]
図7は、本発明の第2実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計200(電子時計200)の一部断面図である。電子時計200は、アンテナ体40に代えてアンテナ体41を備える点で電子時計100と相違する。アンテナ体41は、そのカバーガラス84側の面が、ソーラーパネル87の表面よりもカバーガラス84側に配置されている点でアンテナ体40と異なる。
【0062】
具体的には、図7に示すように、本実施形態では、駆動体30の周囲に配置されており、アンテナ体41のカバーガラス84側の一部又は全部がソーラーパネル87よりもカバーガラス84側に配置されている。詳述すると、電子時計200は、環状の一部を切り欠いた形状のアンテナパターン部分41cアンテナ体41を備える。このアンテナ体41は、リング形状の誘電体を基材として、これに金属のアンテナパターンをメッキや銀ペースト印刷などにより形成したものである。なお、アンテナパターンは、誘電体のカバーガラス84側に形成されるとともに、回路基板25よりもカバーガラス84側に配置され、さらに、ソーラーパネル87よりもカバーガラス84側に配置されている。
【0063】
また、アンテナ体41は、アンテナパターン部分41cの両端、すなわちC形状の切欠部分に位置する二つの給電点41a及び41bを通じて給電され、この給電点41a及び41bでは、アンテナ下面に配置されたアンテナ接続ピン45A及び45Bと接続されている。アンテナ接続ピン45A及び45Bはスプリングを内蔵した金属で形成されたピン状のコネクタである。アンテナ接続ピン45A及び45Bは、回路基板25上に突設されて、回路基板25と、内部のアンテナ体41とを接続する。
【0064】
本実施形態において、アンテナ体41への給電は、バラン10から2箇所の給電点41a及び41bを通じての平衡給電となる。具体的には、アンテナ体41の両端に、プラス及びマイナスの給電点41a及び41bを有し、これら二つの給電点41a及び41bがアンテナ接続ピン45A及び45Bと接続されている。これらアンテナ接続ピン45A及び45Bを介して平衡給電が行われ、GPS受信部26は、アンテナ体41を用いて無線信号を受信する。なお、アンテナ体41は、1波長ループアンテナであることから、給電に対して自己平衡作用があり、上記バラン10を介さず、直接給電することも可能である。
【0065】
以上の説明から明らかなように、電子時計200によれば、電子時計100と同様の効果が得られる。さらに、アンテナ体41のカバーガラス84側の一部又は全部が、ソーラーパネルよりもカバーガラス84側に配置されている。一般的にソーラーパネルの下面には厚み数μmのアルミ電極があり、その影響で受信性能が劣化する。しかし、アンテナ体41のカバーガラス84側の一部又は全部を、ソーラーパネルよりもカバーガラス84側に位置させることにより、受信性能を維持することができる。
【0066】
[第3実施形態]
図8は、本発明の第3実施形態に係るアンテナ内蔵式電子時計300(電子時計300)の一部断面図である。電子時計300は、アンテナ体40に代えてアンテナ体42を備える点で電子時計100と相違する。アンテナ体42は、環状の誘電体42dを有し、アンテナパターン部分42cが誘電体42dに埋設されている点でアンテナ体40と異なる。アンテナパターン部分42cは電磁波を電流に変換するアンテナ素子として機能する。また、本実施形態では、ソーラーパネル87は省略しており、電池27aはリチウムコイン電池などの一次電池となっている。さらに電池27とGPS受信部26の配置を逆にして、敏感なアンテナ給電点からGPS受信部26をさらに離す構成としている。
【0067】
具体的には、図8に示すように、本実施形態では、駆動体30の周囲において、円周方向に延在されるドーナツ状(O型)の誘電体42dを備える。この誘電体42d内に、金属のアンテナパターン部分42cが埋め込まれて、アンテナ体42が構成されている。なお、誘電体42dの断面形状は略正方形となっている。誘電体42dは、誘電体セラミックなどの誘電体であるが、誘電体を混ぜたプラスチックを用いたインサート成形で形成するようにしてもよい。なお、本実施形態では、ドーナツ状をなす誘電体42dにおいて、給電点42a及び42bが互いに近接するような位置に設けられており、誘電体42d内部のアンテナパターン部分42cは、環状の一部を切り欠いたいわゆるC形状をなしている。
【0068】
また、この第3実施形態では、外装ケース80を金属で形成し、外装ケース80及び金属製の裏蓋85をグランド板として機能させる。すなわち、アンテナ体42の一方の給電点42a又は42bを、導通バネ39を介して金属製の外装ケース80又は裏蓋85に接続させている。なお、導通バネ39は、平面視して互いに対称となる位置に、複数個設けられることが望ましい。導通バネ39を互いに対称な位置に複数個設けることで、円偏波の衛星信号を効率的に受信することが可能となる。
他方の給電点42a又は42bに対しては、図示しないアンテナ接続端子を通じて給電を行う。このとき、アンテナ体42は、1波長ループアンテナであることから、給電に対して自己平衡作用があり、上記バラン10を介さず、直接給電することも可能である。
【0069】
以上の説明から明らかなように、電子時計300によれば、電子時計100と同様の効果が得られる。さらなる効果としては、誘電体42dの波長短縮効果と相俟ってアンテナ周囲長を短縮することができ、これによりアンテナ全体をより小型化できる。また、誘電体42dと接触させることで、金属のアンテナパターン部分42cを動かないように固定することができ、装置の安定性を向上させることができる。また、アンテナ体42の断面を略正方形とすることにより無駄なスペースがなくなり、時計内の空間を有効に活用でき、小形化に寄与することができる。
【0070】
本実施形態では、ループアンテナにおいて互いに近接するような位置に設けられた給電点42a又は42bを通じて、導通バネ39を介して外装ケース80をグランド板として機能させることから、アンテナ接続ピン45を1個とさせることができ、構造が簡単になりコストダウンを図ることができ、また給電点を配置する位置の自由度を高めることができる。さらに、アンテナ体42の給電に対する自己平衡作用によって、上記バラン10を省略することによっても、小型化を促すことができる。
【0071】
[変更例]
なお、上述した各実施形態の説明は、本発明の一例である。このため、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることはもちろんである。以下に、上述したアンテナ体40,41,42の変更例を示す。図9は、本発明の第1変更例に係るアンテナ体43の斜視図であり、図10は、本発明の第2変更例に係るアンテナ体44の斜視図である。また、図11は、本発明の第3変更例に係るアンテナ体45の斜視図である。
【0072】
例えば、図9に示すように、上述したアンテナ体40,41,42をアンテナ体43に変更してもよい。このアンテナ体43は、アンテナ体40,41,42とは、誘電体43dの外周側面にアンテナパターン部分43cを設けた点で相違する。
【0073】
具体的に、アンテナ体43は、円周方向に延在されるドーナツ状(O型)の誘電体43dを備える。この誘電体43dの外周側面にメッキや銀ペースト印刷などにより金属製のアンテナパターン部分43cが形成される。誘電体43dの外周側面に形成されたアンテナパターン部分43cは、環状の一部を切り欠いたいわゆるC形状をなしている。なお、本変更例においても、ドーナツ状をなす誘電体43dの外周側上において、互いに近接するような位置に給電点43a及び43bが設けられている。また、誘電体43dには、巻真と干渉する部分には操作子を駆動体30へ挿通させる挿通部43eが設けられている。本変更例において、挿通部43eは、外周側面に形成されたアンテナパターン部分43cと接触しない位置に設けられた溝形状となっている。
【0074】
このようなアンテナ体43では、誘電体リングの外周側面にアンテナパターン部分43c設けているので誘電体の肉厚を薄くでき、腕時計を小型化することができる。なお、この場合、誘電体43dの体積が小さい分、十分な波長短縮させるために誘電率が大きい物質で形成させる。
【0075】
また、例えば、図10に示すように、上述したアンテナ体40,41,42をアンテナ体44に変更してもよい。このアンテナ体44は、アンテナ体40,41,42とは、給電点と切り欠け部分との間に所定の距離を有する点で相違する。
【0076】
具体的に、アンテナ体44は、円周方向に延在されるドーナツ状(O型)の誘電体44dを備える。この誘電体44dの上面には、メッキや銀ペースト印刷などにより金属製のアンテナパターン部分44cが形成される。誘電体44d内部のアンテナパターン部分44cは、環状の一部を切り欠いたいわゆるC形状をなしている。
なお、本変更例においては、ドーナツ状をなす誘電体44d円周上の一点に、1つの給電点44aが位置しており、また、巻真と干渉する部分には、操作子を駆動体30へ挿通させる挿通部44eが設けられている。
【0077】
このようなアンテナ体44では、給電点44aと切り欠け部分との距離を適切に設定することで円偏波を受信することができ、GPS受信の受信性能を向上させることができる。なお、上述したアンテナパターン部分43c及び44cは、電磁波を電流に変換するアンテナ素子として機能する。
【0078】
また、例えば、図11に示すように、上述したアンテナ体40,41,42をアンテナ体45に変更してもよい。このアンテナ体45は、アンテナパターン40cの代わりに、給電されるアンテナパターン部分45b及び無給電のアンテナパターン部分45cを備える点で、アンテナ体40と相違する。
具体的には、アンテナ体45は、円周方向に延在されるドーナツ状(O型)の誘電体45dを備え、この誘電体45dの上面にメッキや銀ペースト印刷などにより金属製のアンテナパターン部分45b及び45cを形成させたものである。アンテナパターン部分45cはO形状をなしており、その内側にアンテナパターン部分45bが形成される。これら2つのアンテナパターン部分45b及び45cは、互いに電磁的に結合している。そして、アンテナパターン部分45cは、位置情報衛星からの電波(衛星信号)に共振するようなアンテナ長を有している。これら2つのアンテナパターン部分45b及び45cは、電磁波を電流に変換するアンテナ素子として機能する。
なお、ドーナツ状をなす誘電体45d円周上の一点に、1つの給電点45aが位置しており、また、巻真と干渉する部分には、操作子を駆動体30へ挿通させる挿通部45eが設けられている。
このようなアンテナ体45では、アンテナパターン部分45bの長さを適宜設定することによって、アンテナ体45に電気的に接続された回路との間のインピーダンスを、容易に整合することが可能となる。
【符号の説明】
【0079】
100,200,300…アンテナ内蔵式電子時計、40,41,42,43,44,45…アンテナ体、40a,40b、41a,41b、42a,42b、43a,43b、44a,45a…給電点、40c、42c、43c、44c、45b、45c…アンテナパターン部分、40d,41d,42d,43d,44d,45d…誘電体、40e,43e,44e,45e…挿通部、45A,45B…アンテナ接続ピン、11…文字板、12…指針軸、13(13a,13b,13c)…指針、26…GPS受信部、30…駆動体、80…外装ケース、81…ベゼル、82…収納空間、84…カバーガラス、85…裏蓋、87…ソーラーパネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が非導電性部材で形成された筒状の外装ケースと、
前記外装ケースの内側で時刻を表示する時刻表示部と、
前記外装ケースの内側で前記時刻表示部を駆動する駆動体と、
前記外装ケースの内側で前記駆動体の周囲に配置され、環状の誘電体と、前記誘電体に接した環状のアンテナ素子とを有し、位置情報衛星からの電波を受信するアンテナ体と
を備えることを特徴とするアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項2】
前記アンテナ内蔵式電子時計は、
前記外装ケースの二つの開口のうち、一方の開口を塞ぐカバーガラスと、
前記外装ケースの二つの開口のうち、前記時刻表示部の表示方向と反対側の開口を塞ぐ金属製の裏蓋と、
前記外装ケースに収納されて無線通信を行う無線通信回路が配置された回路基板とをさらに備え、
前記アンテナ体は、前記回路基板よりも前記カバーガラス側に配置され、前記無線通信回路は前記回路基板の前記裏蓋側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項3】
前記アンテナ体には、当該アンテナ内蔵式電子時計の操作子の挿通用に、前記アンテナ体の外部から前記駆動体へ至る挿通部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項4】
前記アンテナ素子は前記誘電体の前記カバーガラス側に接するように設けられる
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のアンテナ内蔵式電子時計。
【請求項5】
前記アンテナ内蔵式電子時計は、光発電用のソーラーパネルをさらに備え、
前記アンテナ体の前記カバーガラス側の一部又は全部が、前記ソーラーパネルよりも前記カバーガラス側に配置されていることを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか1項に記載のアンテナ内蔵式電子時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−64723(P2013−64723A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−113357(P2012−113357)
【出願日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】