説明

アンテナ及びICタグ

【課題】小型で送受信感度の高いUHF帯の電波を送受信するアンテナ及びICタグを提供する。
【解決手段】誘電体シートSに導体パターンAが形成されるアンテナ11であって、一対の給電部e1,e2と、それぞれの給電部e1,e2の外側に接続される複数の伝送路a1,b1,a2,b2からなり、該複数の伝送路は、ジグザグ状の導体パターンa1とb1,a2とb2が対向してすれ違うことで2つの共振周波数の共振回路が形成され、前記一対の給電部e1,e2の外側には、それぞれの給電部に接続されるループ状の導体パターンg1が形成されるアンテナ11を備え、ICチップDが前記給電部e1,e2に搭載されたUHF帯の電波を送受信するICタグとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、UHF帯の電波を送受信するアンテナ及びICタグに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICチップとアンテナで構成されたICタグが注目されている。ICタグは、バーコードやクレジットカードのようにリーダ(受信装置)を近接させなくても、ICチップに格納されている情報をアンテナから無線電波で発信して、離れたところにあるリーダ(受信装置)で読み取ることができる。また例えば、ICタグを、コンビニエンス−ストアに配送され陳列される商品のパッケージに貼り付けることで、配送から販売までの流通過程での商品の識別と管理(トレーサビリティの管理)が容易となる。わが国で利用できるRFID(Radio Frequency Identification)の無線周波数は、HF帯(13.56MHz)に加え、2005年4月の電波法改正によりUHF帯(952〜954MHz)での利用が可能となった。UHF帯の電波は、HF帯に比べて電波の交信(送受信)距離が長くなることから、広い交信エリアにおいて、複数のICタグを一括してリードライトできるという利点があり、今後、益々市場の拡大が期待できる。
【0003】
ここで、ICタグに利用されるUHF帯の電波とは、ISO/IEC18000−6で規定されているUHF帯の無線ICタグ用の周波数860〜960MHzの範囲の電波を指しており、特にわが国では、周波数950〜960MHzの範囲の電波をUHF帯の無線ICタグ用の周波数として割り当て、周波数952〜954MHzの範囲の電波が利用可能となっている。本明細書では、ICタグに利用されるUHF帯の電波を単にUHF帯の電波として表現している。
【0004】
ICタグは、各種商品(例えば、おにぎり、茶碗、お菓子、文房具等)に貼り付けて使用されるが、それら各種商品(被着物)の誘電率や各種商品(被着物)を格納するコンテナの誘電率の影響を受けて被着物に貼り付けたICタグの動作周波数がずれてしまい、通信距離が短くなるという問題点がある。例えば電波は誘電率の高い物質の中では、その波長が短くなる性質がある。被着物や被着物を格納するコンテナの誘電率は、材質や形状により異なることから、従来、それぞれの被着物の誘電率と、それぞれの被着物とコンテナとの誘電率に合わせて予め周波数調整されたICタグを複数用意して、それぞれ被着物に貼り付けている。例えば、おにぎりをコンテナに入れてコンビニエンス−ストアに配送して棚に陳列して販売する事例では、配送での商品管理と陳列および販売での商品管理を行うためには、コンテナに入っているおにぎり用ICタグとコンテナから取り出されたおにぎり用ICタグの2種類の(2つの周波数の)ICタグをおにぎりのパッケージに貼り付けることとなる。このため、2種類のICタグを貼り付ける面積を商品パッケージに確保しなければならず、ICタグには、さらなる小型化の要求がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、プリント回路基板(PCB)上にコイル状(ループ状)の伝送路(アンテナパターン)が形成され、その給電部にICチップを搭載したICタグが開示されている(その図2参照)。特許文献1記載のアンテナは、ループアンテナの一種であり、ループアンテナの動作周波数はアンテナコイルの長さが1波長となるため、例えば動作周波数953MHzのUHF帯の電波を送受信するアンテナを形成するためには、円周約315mmのループ(伝送路)が必要となり、大きすぎて実用的ではない。特許文献2は、誘電体シート上に直線状に形成された2本の伝送路(アンテナパターン)が互いに逆向きに延びるパターンとして、半波長ダイポールアンテナとするものであり、給電部と反対側のアンテナパターンの両端部を削除することで、商品(被着物)に貼り付けたICタグの動作周波数の調整を行うというものである(その請求項1参照)。特許文献2記載のアンテナは、半波長ダイポールアンテナの一種であり、半波長ダイポールアンテナの動作周波数は2本の伝送路(アンテナパターン)の長さがそれぞれ等しく1/4波長となるため、半波長ダイポールアンテナの全長は、ループアンテナの全長の1/2となる。いっぽう、特許文献2の方法では、2本のアンテナパターンの両端部を均等に削除しなければ、インピーダンス平衡が保てず、手間がかかる上に、ICタグの外観上も好ましくない。特許文献3は、誘電体シート上にジグザグ状に折り返された2本の伝送路(アンテナパターン)が互いに逆向きに延びるパターンとして、半波長ダイポールアンテナとするものであり、アンテナパターンが給電部から離れるにしたがってジグザグ状に折り返されたアンテナパターンの長さを短くすることで、1インチ(25.4mm)四方の大きさにアンテナを収めるというものである(その請求項1参照)。しかしながら、特許文献2や3のアンテナは、給電部から互いに逆向きに延びる2本の伝送路(アンテナパターン)の長さが正確に一致しないとインピーダンス平衡が保てず、UHF帯の電波の送受信ロスが大きくなることから、性能を維持しながらICタグをさらに小さくすることは困難である。
【特許文献1】特許第3653099号公報
【特許文献2】特開2006−270766号公報
【特許文献3】特開2007−73015号公報
【0006】
そこで本発明の目的は、小型で送受信感度の高いUHF帯の電波を送受信するアンテナ及びICタグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンテナは、誘電体シートに導体パターンが形成されるアンテナであって、一対の給電部と、それぞれの給電部の外側に接続される複数の伝送路からなり、該複数の伝送路は、ジグザグ状の導体パターン同士が対向してすれ違うことで共振回路が形成されることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、一対の給電部と、それぞれの給電部の外側に接続される複数の伝送路からなり、該複数の伝送路が、上記ジグザグ状の導体パターン同士が対向してすれ違うことで、ジグザグ状の導体パターンの形状(コイル長さ)によるリアクタンス成分(L)とジグザグ状の導体パターン同士の間隔(ギャップ)によるキャパシタンス成分(C)とによって共振回路が形成され、その共振回路の共振周波数をUHF帯の電波を送受信するICタグの使用周波数に合わせることにより、送受信感度の高いアンテナとなる。電波の波長により一義的に導体パターンの長さが決定する従来のアンテナとは異なり、ジグザグ状の導体パターンの形状とジグザグ状の導体パターン同士の間隔で動作周波数(共振周波数)を設定することができることから、設計の自由度が高くなり、従来よりも小型のアンテナを実現できる。
【0009】
本発明のアンテナは、誘電体シートに導体パターンが形成されるアンテナであって、一対の給電部と、それぞれの給電部の外側に接続される2つの伝送路からなり、該2つの伝送路は、それぞれジグザグ状の導体パターンとなることでリアクタンス成分が形成され、かつ、この2つの導体パターン同士が対向してすれ違うことでキャパシタンス成分が形成され、上記リアクタンス成分とキャパシタンス成分とで共振回路が形成されることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、前記2つの伝送路が、それぞれジグザグ状の導体パターンとなり、この2つの導体パターン同士が対向してすれ違うことで、共振回路を単純化することができ、不要共振が少なくて効率の高い共振周波数特性のアンテナが得られる。
【0011】
ここで、一般に共振回路とは、電波を受信する際には、インピーダンス(Z)が極大となる並列共振回路(LC並列共振回路)を指し、電波を送信する際には、インピーダンス(Z)が極小となる直列共振回路(LC直列共振回路)を指すが、アンテナの場合には、電波を送信したり受信したりすることから、上記並列共振回路と直列共振回路を含めて、電波を送受信する最適なインピーダンス(Z)構成の回路を共振回路と呼ぶ。具体的な設計手法としては、コンピュータを用いた有限要素法解析(FEM解析)などの解析手法による電磁界シミュレータなどがある。また、共振回路の共振の鋭さ(Q)は、共振回路の持つリアクタンス成分(L)に比例するが、わが国で利用できるRFIDのUHF帯の無線周波数は、952〜954MHzと狭帯域であることから、使用可能周波数帯域巾と共振回路の共振の鋭さ(Q)は合致している。
【0012】
本発明のアンテナは、上記一対の給電部には、それぞれ共振周波数が異なる共振回路が形成されることが好ましい。上記一対の給電部に、それぞれ共振周波数が異なる共振回路を形成されることで、1つのアンテナで2種類の共振周波数を得ることとなり、従来、被着物に2枚貼り付けていたICタグを1枚とすることができ、ICタグを貼り付ける面積が1/2となる。
【0013】
本発明のアンテナは、上記ジグザグ状の導体パターンの間には直線状の導体パターンが挿入されることが好ましい。上記ジグザグ状の導体パターンの間に直線状の導体パターンが挿入されることで、キャパシタンス成分(C)の微調整ができる。また、上記ジグザグ状の導体パターン同士の間隔を広げることでスプリアス(不要信号)が発生しやすくなるが、このスプリアスを上記直線状の導体パターンにより抑制することができる。
【0014】
本発明のアンテナは、上記一対の給電部の外側には、それぞれの給電部に接続されるループ状の導体パターンが形成されることが好ましい。また、上記ループ状の導体パターンは、複数のループ状の導体パターンが形成されることが好ましい。上記一対の給電部の外側に、それぞれの給電部に接続されるループ状の導体パターンが形成されることで、上記ループ状の導体パターンの全長を大きくしたり小さくしたりすることにより、アンテナインピーダンスを大きくしたり小さくしたり容易に調整できる。また、上記ループ状の導体パターンを複数とすることで、該複数のループ状の導体パターン同士の間隔を大きくしたり小さくしたりすることにより、アンテナ感度を高くしたり低くしたり容易に調整できる。
【0015】
これら本発明のアンテナの給電部にICチップを搭載することで、小型で高感度のUHF帯の電波を送受信するICタグが実現する。
【発明の効果】
【0016】
本発明のアンテナによれば、一対の給電部と、それぞれの給電部の外側に接続される複数の伝送路からなり、該複数の伝送路が、上記ジグザグ状の導体パターン同士が対向してすれ違うことで、ジグザグ状の導体パターンの形状とジグザグ状の導体パターン同士の間隔とによって共振回路が形成され、その共振回路の共振周波数をUHF帯の電波を送受信するICタグの使用周波数に合わせることにより、小型で送受信感度の高いアンテナとなる。上記一対の給電部には、それぞれ共振周波数が異なる共振回路が形成されることで、1つのアンテナで2種類の共振周波数を得ることとなり、従来、被着物に2枚貼り付けていたICタグを1枚とすることができる。上記一対の給電部の外側には、それぞれの給電部に接続されるループ状の導体パターンが形成されることで、該のループ状の導体パターンの全長を大きくしたり小さくしたりすることにより、アンテナインピーダンスを大きくしたり小さくしたり容易に調整できる。これら本発明のアンテナの給電部にICチップを搭載することで、小型で高感度のUHF帯の電波を送受信するICタグが実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を引用しながら説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1(a)は、本発明を適用した一実施例のアンテナ1の平面図であり、図1(b)は、本発明を適用した他の実施例のアンテナ11の平面図である。アンテナ1(11)は、誘電体シートSにアンテナ導体パターンAが形成されたシート状アンテナである。誘電体シートSの材料としては、PET(Polyethylene Terephthalate)、PEN(Polyethylene Naphthalate)等のポリマーや、紙等がある。導体パターンAの材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等があり、導体パターンAの形成方法としては、印刷、蒸着、スパッタリング、印刷等があり、例えばPETからなるシートSに銀ペーストを印刷する場合では、線巾0.3mm、ギャップ0.3mmの導体パターンAを形成することができる。導体パターンAは、一対の給電部e1,e2と、それぞれの給電部e1,e2の外側に接続される4本の伝送路a1,a2,b1,b2からなり、これら複数の伝送路a1,a2,b1,b2は、ジグザグ状の導体パターン同士が対向してすれ違うことで共振回路が形成される。アンテナ1(11)が形成されたICタグZ1のサイズは、全長26mm、巾18.5mmであり、1インチ四方よりも面積が小さい。4本の伝送路a1,a2,b1,b2の終端(給電部の反対側の端)に、電極のないエリアを囲んだ導体パターン(フラッグパターン)f1が形成されている。このフラッグパターンf1は、四角形状のパターンがそれぞれ一対の給電部e1,e2から同じ距離だけ離れて向かい合って配置されることで、広い指向特性が得られるものであるが、フラッグパターンf1をベタ塗り(対象範囲が全て導体)とすることや、フラッグパターンf1を省くことも可能である。
【0019】
伝送路a1(a2)は、給電部e1(e2)からジグザグ状に折り返されフラッグパターンf1が形成される。また、伝送路b1(b2)は、給電部e1(e2)からジグザグ状に折り返されフラッグパターンf1が形成される。伝送路a1(a2)と伝送路b1(b2)は、ジグザグ状の導体パターンが2回対向してすれ違っており、伝送路b1(b2)が伝送路a1(a2)の外側になるように1回対向してすれ違い、伝送路a1(a2)が伝送路b1(b2)の外側になるように1回対向してすれ違う(図1)。これらジグザグ状の導体パターン同士が対向してすれ違うことで、ジグザグ状の導体パターンの形状(コイル長さ)によるリアクタンス成分(L)とジグザグ状の導体パターン同士の間隔(ギャップ)によるキャパシタンス成分(C)とによって共振回路が形成され、その共振回路の共振周波数FoをUHF帯の電波を送受信するICタグの使用周波数Fxに合わせることにより、送受信感度の高いアンテナ1(11)となる。アンテナ1(11)では、伝送路a1とa2は給電部e1(e2)を中心に対称に同じ長さで配置され、伝送路b1とb2は給電部e1(e2)を中心に対称に同じ長さで配置されていることから、共振周波数Foは、1つであるが、これら伝送路a1,a2,b1,b2の長さを適宜設定することで、共振周波数Foの周波数を調整したり、2種類の共振周波数Fo1,Fo2とすることができる。この共振周波数Fo(Fo1,Fo2)は、ICタグに利用されるUHF帯の周波数であれば適宜設定可能であるが、使用周波数Fxとしては、860MHzから960MHzでの周波数帯に好適である。
【0020】
図1(b)に示すアンテナ11は、一対の給電部e1,e2の外側には、それぞれの給電部e1とe2に接続されるループ状の導体パターンg1が形成される。ループ状の導体パターンg1の線巾は0.6mmであり、4本の伝送路a1,a2,b1,b2の線巾の2倍に設定されている。ループ状の導体パターンg1が形成されることにより、4本の伝送路a1,a2,b1,b2からの電気信号を効率よく集めることができ、ループ状の導体パターンg1の全長を大きくしたり小さくしたりすることにより、アンテナインピーダンスを大きくしたり小さくしたり容易に調整できることから、一対の給電部e1,e2のインピーダンスを50オームに整合させ易い。また、それぞれの給電部e1とe2に接続されるループ状の導体パターンg1が形成されることで、上記給電部e1,e2に接続される複数のジグザグ状の導体パターンa1,a2,b1,b2の配置の自由度が高くなり、アンテナ11の小型化が容易となる。
【0021】
図2は、本発明を適用したアンテナ11を備えたICタグZ1の平面図である。アンテナ11の給電部e1,e2と、ICチップDの信号電極は、半田付けや導電接着剤等により電気接続されている。ICチップDの搭載されている面は、後工程であるラベル形成工程にて、ポリマー等のカバー部材によりカバー(コーティング)され、外部から保護されている。このカバー部材は、密着強度の観点からは、誘電体シートSと同一材料が好ましいが、異なる材料での使用や、カバー部材を省くことも可能である。
【0022】
(第2の実施形態)
図3(a)から(d)は、本発明を適用した4種類の実施例であるアンテナ21から24の平面図である。アンテナ21(22,23,24)は、誘電体シートSにアンテナ導体パターンAが形成されたシート状アンテナである。導体パターンAは、一対の給電部e1,e2と、それぞれの給電部e1,e2の外側に接続される4本の伝送路a1,a2,b1,b2からなり、これら複数の伝送路a1,a2,b1,b2は、ジグザグ状の導体パターン同士が対向してすれ違うことで共振回路が形成される。アンテナ21(22,23,24)が形成されたICタグZ2のサイズは、全長16mm、巾14mmであり、第1の実施形態のICタグZ1よりもさらに面積が小さく、1インチ四方の約1/3の面積である(図4)。
【0023】
伝送路a1(a2)と伝送路b1(b2)は、給電部e1(e2)からジグザグ状に折り返されながら給電部e1(e2)から離れてゆく。伝送路a1(a2)と伝送路b1(b2)は、ジグザグ状の導体パターンが5回対向してすれ違っており、伝送路b1(b2)が伝送路a1(a2)の外側になるように2回対向してすれ違い、伝送路a1(a2)が伝送路b1(b2)の外側になるように3回対向してすれ違う(図3)。これらジグザグ状の導体パターン同士が対向してすれ違うことで、ジグザグ状の導体パターンの形状(コイル長さ)によるリアクタンス成分(L)とジグザグ状の導体パターン同士の間隔(ギャップ)によるキャパシタンス成分(C)とによって共振回路が形成され、その共振回路の共振周波数FoをUHF帯の電波を送受信するICタグの使用周波数Fxに合わせることにより、送受信感度の高いアンテナ21(22,23,24)となる。アンテナ21(22)では、伝送路a1とa2は給電部e1(e2)を中心に対称に同じ長さで配置され、伝送路b1とb2は給電部e1(e2)を中心に対称に異なる長さで配置されていることから、共振周波数Foは、2種類の共振周波数Fo1,Fo2となる(図3(a)(b))。また、アンテナ23(24)では、伝送路a1とa2は給電部e1(e2)を中心に対称に異なる長さで配置され、伝送路b1とb2は給電部e1(e2)を中心に対称に同じ長さで配置されていることから、共振周波数Foは、2種類の共振周波数Fo1,Fo2となる(図3(c)(d))。
【0024】
図3(d)に示すアンテナ24は、ジグザグ状の導体パターンa1とb1との間には直線状の導体パターンh1が挿入される。この直線状の導体パターンh1は、どの伝送路にも接続されない島状の導体パターンh1であり、導体パターンh1の長さを変えることで、キャパシタンス成分(C)の微調整ができる。また、上記ジグザグ状の導体パターンa1とb1との間隔を広げることでスプリアス(不要信号)が発生しやすくなるが、このスプリアスを上記直線状の導体パターンh1により抑制することができる。
【0025】
アンテナ21(22,23,24)は、一対の給電部e1,e2の外側には、それぞれの給電部e1とe2に接続される2つのループ状の導体パターンg1とg2が形成される。内側ループ状の導体パターンg1は、それぞれの給電部e1とe2に直結されており、外側ループ状の導体パターンg2は、内側ループ状の導体パターンg1を介してそれぞれの給電部e1とe2に接続される。この2つのループ状の導体パターン(ダブルループ)g1とg2との間隔を大きくしたり小さくしたりすることで、アンテナ感度を高くしたり低くしたり調整できる(図3)。また、一対の給電部e1,e2のインピーダンスを50ohmに整合させ易い。
【0026】
図4は、本発明を適用したアンテナ24を備えたICタグZ2の平面図である。アンテナ24の給電部e1,e2には、ICチップDが搭載され、ICチップDの信号電極と給電部e1,e2とは電気接続される。整合インピーダンスは、50オームである。
【0027】
(電磁界シミュレーションによる解析)
電磁界シミュレータにより、アンテナの周波数特性の解析を行った。図5は、本発明のアンテナ11,21,22,23,24の電磁界シミュレーションによる周波数特性グラフである。グラフの横軸は周波数(Frequency)を表し、グラフの縦軸は感度(Magnitude)を表す。アンテナで受信された電波は、電界(電荷)の向き(位相)が反転するため、縦軸の符号はマイナスとなるが、感度の絶対値レベルが大きいほどアンテナ感度が高くなる。本発明のアンテナ11は、共振周波数Foが1つであることから、他のアンテナ21,22,23,24に比べて、アンテナ感度が数デシベル(dB)高い。また、本発明のアンテナ21,22,23,24では、4本の伝送路a1,a2,b1,b2の長さを調整することで、2つの共振周波数Fo1,Fo2の位置を適宜調整できることがわかる。実際のアンテナ設計では、電磁界シミュレーションにより目的の周波数と感度特性を設計して、試作測定にて検証する。これら蓄積データをフィードバックすることにより電磁界シミュレーションによる設計精度を高める。
【0028】
(従来例と本発明の実施例との比較)
本発明のアンテナ11と、最近、市場より入手した従来のアンテナRとで、アンテナ感度の周波数特性を周波数アナライザにて測定比較した。測定装置その他の測定条件は、同一である。図6(a)は、本発明のアンテナ11の外観写真であり、図6(b)は、本発明のアンテナ11の周波数アナライザによる測定画面の写真である。図7(a)は、従来のアンテナRの外観写真であり、図7(b)は、従来のアンテナRの周波数アナライザによる測定画面の写真である。
【0029】
(従来例)
従来のアンテナRは半波長ダイポールアンテナであり、インターメック社製ICタグに使用されている。従来例のICタグの外形サイズは、全長70mm、巾14mmである(図7(a))。周波数953MHz周辺のアンテナ感度の絶対値レベルは、約6dBである(図7(b))。また、周波数帯域が広くてなだらかになっており、例えば850MHz付近のノイズの影響を受けやすいと考えられる。
【0030】
(実施例)
本発明の第1の実施形態のアンテナ11が形成されたICタグZ1の外形サイズは、全長26mm、巾18.5mmであり、従来例の1/2の面積である(図6(a))。周波数953MHz周辺のアンテナ感度の絶対値レベルは、約10dBであり、従来例よりも、約4dB高い感度を示している(図6(b))。また、本発明の第1の実施形態のアンテナ11は、その周波数帯域が狭いことから、例えば周波数850MHz付近のノイズの影響を受けることはない。それぞれの給電部の外側に接続されるそれぞれ2本のジグザグ状の導体パターンの長さやジグザグ状の導体パターンが交差する間隔を調整することにより、ICタグの外形を変えずに、容易に共振周波数の調整ができる。
【0031】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、複数の伝送路を2本のジグザグ状の導体パターンa1とb1(a2とb2)として説明したが、3本以上のジグザグ状の導体パターンとすることも可能である。複数の伝送路のジグザグ状の導体パターンの外形形状を長方形(正方形)や多角形(6角形)とすることで、1枚の誘電体シートにアンテナ導体パターンを多数形成して、まとめて加工する際に、余すことなくICタグ用アンテナを多数個取りできる。また、複数の伝送路のジグザグ状の導体パターンの外形形状を楕円形(円形)とすることで、360度全方向からの電波を受信する全方位型アンテナとすることも可能である。
【0032】
また、本発明のアンテナの適用はICタグに限定されるものではなく、例えば、送信周波数と受信周波数を異ならせることにより、無線トランシーバのアンテナとすることも可能である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、本発明を適用した一実施の形態のアンテナの平面図である。
【図2】図2は、本発明を適用した一実施の形態のICタグの平面図である。
【図3】図3は、本発明を適用した他の実施の形態のアンテナの平面図である。
【図4】図4は、本発明を適用した他の実施の形態のICタグの平面図である。
【図5】図5は、本発明を適用した実施の形態のアンテナのFEM解析による周波数特性グラフである。
【図6】図6(a)は、本発明を適用したアンテナの外観写真であり、図6(b)は、そのアンテナの周波数アナライザによる測定画面の写真である。
【図7】図7(a)は、従来のアンテナの外観写真であり、図7(b)は、従来のアンテナRの周波数アナライザによる測定画面の写真である。
【符号の説明】
【0034】
Z1,Z2 ICタグ、
1,11,21,22,23,24 アンテナ、
D ICチップ、
S 誘電体シート、
A アンテナ導体パターン、
e1,e2 給電部、
a1,a2,b1,b2 伝送路(ジグザグ状の導体パターン)、
g1,g2 伝送路(ループ状の導体パターン)、
h1 直線状の導体パターン、
Fo,Fo1,Fo2 共振周波数

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体シートに導体パターンが形成されるアンテナであって、
一対の給電部と、それぞれの給電部の外側に接続される複数の伝送路からなり、該複数の伝送路は、ジグザグ状の導体パターン同士が対向してすれ違うことで共振回路が形成されることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
誘電体シートに導体パターンが形成されるアンテナであって、
一対の給電部と、それぞれの給電部の外側に接続される2つの伝送路からなり、該2つの伝送路は、それぞれジグザグ状の導体パターンとなることでリアクタンス成分が形成され、かつ、この2つの導体パターン同士が対向してすれ違うことでキャパシタンス成分が形成され、上記リアクタンス成分とキャパシタンス成分とで共振回路が形成されることを特徴とするアンテナ。
【請求項3】
前記一対の給電部には、それぞれ共振周波数が異なる共振回路が形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ。
【請求項4】
前記ジグザグ状の導体パターンの間のいずれかには、直線状の導体パターンが挿入されることを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ。
【請求項5】
前記一対の給電部の外側には、それぞれの給電部に接続されるループ状の導体パターンが形成されることを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ。
【請求項6】
前記ループ状の導体パターンは、複数のループ状の導体パターンが形成されることを特徴とする請求項5記載のアンテナ。
【請求項7】
請求項1から6いずれか1項記載のアンテナを備え、ICチップが前記給電部に搭載されたUHF帯の電波を送受信するICタグ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−44246(P2009−44246A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204479(P2007−204479)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(303007762)株式会社創大アンテナ (7)
【出願人】(000242633)北陸電気工業株式会社 (49)
【Fターム(参考)】