アンテナ昇降機およびそれを用いた不要輻射電磁波計測システム
【課題】 アンテナの指向性に配慮し高精度の不要輻射電磁波計測を行う。
【解決手段】 EUT30から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナ1と、アンテナ1に仰角を与える仰角付与手段とを備えたアンテナユニットと、アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えることで、アンテナ1の昇降に伴って変化する不要輻射電磁波の飛来方向とアンテナ1の向きを合わせることを可能とする。
【解決手段】 EUT30から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナ1と、アンテナ1に仰角を与える仰角付与手段とを備えたアンテナユニットと、アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えることで、アンテナ1の昇降に伴って変化する不要輻射電磁波の飛来方向とアンテナ1の向きを合わせることを可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器やそれを用いた各種装置から発生する不要輻射電磁波を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等の妨害波を評価するため、その機器から発せられる電磁波の計測を行なう場合、通常対象となる機器を電波暗室やオープンサイト内に設置し、一定距離(3m、10m、30m)離れた場所に配置されたアンテナで受信した電界強度を計測することにより行なわれる。この時、被計測機器(EUT)はターンテーブル上に置かれ、ターンテーブルを回転することでEUTの全周に渡る計測を行なう。また、アンテナを昇降させることにより、1m〜4m、或いは1m〜6mの高さ方向の計測を行なう。更に、アンテナの偏波角に応じた取り付け方向に調整することで、水平偏波、垂直偏波のどちらの成分の電磁波も測定が可能である。
【0003】
一般的な計測は広い周波数帯域に渡って行われるため、ダイポールアンテナ、バイコニカルアンテナ、ログペリアンテナ、ホーンアンテナなどを測定条件や測定周波数に応じて併用したり、使い分けたりしているが、受信に関する利得や指向性はアンテナ種類によって異なっている。近年、電子機器等の小型化高速化に伴い、マイクロプロセッサ等の駆動周波数が高周波化しており、それに伴って発生する妨害波も高周波化しているため、不要輻射電磁波の計測は必然的に高周波帯域での正確な計測が要求されている。GHz帯域の計測には、標準アンテナとしてホーンアンテナが広く用いられているが、一般的には開口面の広さに比例して利得が大きくなり、指向性が鋭くなるという性質を有している。
【0004】
従来この種の不要輻射電磁波計測に用いられる装置では、例えば特許文献1に高周波帯域での計測において正確な測定結果を得るため、EUTの位置ズレ防止機構に関する技術が開示されている。また、特許文献2には偏波角毎に個別にアンテナを用意し、1回の測定で同時に計測を行なう技術が開示されている。更に、特許文献3には偏波の方向に応じてアンテナの偏波角を切り替える装置が開示されている。
【0005】
不要輻射電磁波の計測に利用されるアンテナの多くは指向性を有するものであるため、アンテナに対しEUTを計測位置にズレなく高精度に設置したり、偏波方向に応じてアンテナの偏波角を切り替えたりすることで計測の正確性は改善されてきたが、それにもかかわらずアンテナの指向性に関する技術的配慮は十分なものとはいえなかった。例えば、特許文献1記載の発明ではアンテナの指向性も鑑みてEUTの設置位置と基準点、アンテナの相互の位置関係を高精度で再現性良く設定できるような電波暗室を提案しているが、あくまで基準点を合わせることが主眼となっている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−33254号公報
【特許文献2】特開平08−146063号公報
【特許文献3】実公平03−6013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際の計測においてはEUTとアンテナが相対している1点について測定するわけではなく、アンテナを昇降させ連続的に高さを変化させているが、例えばアンテナを水平に設定して上昇させた場合、従来の計測システムではアンテナはいずれの高さにおいても水平のままである。特許文献3記載のような切り替え装置を有するシステムにおいても、偏波方向に合わせて偏波角を90°切り替えるだけである。しかしながら、EUTから発せられる不要輻射電磁波は全ての高さ位置において水平に飛来してくるわけではなく、アンテナとEUTの水平位置を調整して後にアンテナ位置が上昇すれば、必然的にアンテナには斜め下方から飛来する電磁波が入射することになるため、アンテナの指向性を考慮すると従来の計測では正確な電界強度を測っていることにはならず、特に指向性の鋭いホーンアンテナを使用する高周波帯域ではその差異が顕著になるという欠点があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決するべくなされたもので、アンテナの昇降に伴って変化する不要輻射電磁波の飛来方向とアンテナの向きが異なることに着目し、両者を追従させることによって、より正確な計測を実現するアンテナ昇降機および不要輻射電磁波計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、電磁波を受信するアンテナを取り付けてなるアンテナユニットが、長尺部材に沿って昇降自在に配してなる電磁波の計測に用いるアンテナ昇降機であって、前記アンテナユニットは前記アンテナの仰角を調整する手段を有することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0010】
本発明によれば、前記アンテナの仰角を調整する手段は、前記アンテナを第1の取り付け部材に取り付け、前記第1の取り付け部材は第2の取り付け部材を介して回動軸の一端に取り付け、前記回動軸は前記長尺部材に昇降自在に遊嵌したアンテナベースを貫通して回動自在に配し、前記回動軸の他端は仰角調整レバーの一端に取り付け、前記仰角調整レバーの他端は長円形の穴部を有し、前記穴部に第3の取り付け部材を遊嵌し、前記第3の取り付け部材を前記アンテナユニットの昇降方向に駆動する直動機構を備えるよう構成したもので、前記直動機構の動作によって前記アンテナの仰角を調整することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0011】
本発明によれば、前記直動機構は、前記長円形の穴部に遊嵌する摺動部材と内側にネジ穴を有する前記第3の取り付け部材と、外側にネジ溝を有し内側に断面多角形の空洞を貫通形成した昇降ソケットと、前記空洞と断面形状が略類似で摺動自在な空隙を有して遊嵌する断面多角形の柱状部材を備え、前記昇降ソケットは前記柱状部材を貫通配置すると共に前記第3の取り付け部材に螺合するよう構成し、前記柱状部材を回動することにより、前記第3の取り付け部材を直線的に駆動することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0012】
本発明によれば、前記アンテナユニットは、前記アンテナの偏波角を調整する手段を有することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0013】
本発明によれば、前記偏波角を調整する手段は、前記アンテナの受波の中心軸に合致して取り付けた前記第1の取り付け部材と、前記第1の取り付け部材が前記中心軸を中心として回動自在に取り付けた前記第2の取り付け部材と、前記第1の取り付け部材に一端を取り付けた偏波角調整レバーと、前記偏波角調整レバーの他端を連続駆動可能な直動アクチュエータに取り付けるよう構成したもので、前記直動アクチュエータの直線運動によって前記アンテナの偏波角を連続的に調整することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0014】
本発明によれば、前記アンテナユニットは、前記アンテナの水平位置の検知および調整の手段を有することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0015】
本発明によれば、設置した被計測機器を回転駆動するターンテーブルと、前記被計測機器から離間設置されたアンテナ昇降機からなることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0016】
本発明によれば、前記アンテナと前記被計測機器の間の設置距離、および前記被計測機器の高さ寸法に対応して、前記アンテナの仰角を調整自在とすることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0017】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、前記被計測機器と前記アンテナの測定距離を調整する手段を有することを特徴とする、不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0018】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測に用いられるアンテナ昇降機であって、被計測機器から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナと前記アンテナに仰角を与える仰角付与手段とを少なくとも備えているアンテナユニットと、前記アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0019】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記仰角付与手段が回転運動を直線運動に変換し、更に回転運動に変換することによって制御されており、連続的な角度調整が可能であることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0020】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記仰角付与手段が多角形のガイドポールを有し、ガイドポールを回転させることによって前記回転運動を与えることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0021】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記アンテナユニットに更に偏波切替手段を備えることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0022】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記偏波切替手段が直線運動を回転運動に変換することによって制御されており、連続的な角度調整が可能であることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0023】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記偏波切替手段がエアシリンダーによって前記直線運動を与えることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0024】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記アンテナはアンテナ取り付けアームに取り付けられており、前記アンテナ取り付けアームには水平検知手段が取り付けられていることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0025】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記水平検知手段が水準器であることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0026】
本発明によれば、被計測機器を設置し水平面内で回転駆動する手段を有するターンテーブルと、前記被計測機器から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナと前記アンテナに仰角を与える仰角付与手段とを少なくとも備えているアンテナユニットと、前記アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えるアンテナ昇降機からなることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0027】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、前記アンテナユニットに更に偏波切替手段を備えることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0028】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、前記仰角付与手段によって仰角付与を開始する高さを前記被計測機器の高さに応じて任意に選択することが可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0029】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、前記アンテナを取り付ける際にアンテナ自重などによりアンテナが水平に設置されていない場合、水平微調整が可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0030】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、更に計測距離補正手段を備えることによって、仰角付与に伴って生じる計測距離のズレを補正する手段を備えているため、より正確な位置での計測が可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、アンテナに仰角を付与する手段を設け、アンテナの昇降に伴って変化する不要輻射電磁波の飛来方向とアンテナ向きを合わせることによって、より正確な計測を実現したアンテナ昇降機及び不要輻射電磁波計測システムの提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の形態に係わるアンテナ昇降機およびそれを用いた不要輻射電磁波計測システムについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は本発明によるアンテナ昇降機を示す側面図である。
【0034】
アンテナアーム2に取り付けられたアンテナ1は、回動軸3を中心に回動自在にアンテナベース8に取り付けられ、仰角調整が可能である。
【0035】
アンテナベース8はマスト9に昇降自在に配され、プーリー10と昇降駆動ベルト11を含む昇降駆動手段により、アンテナ1は所定の高さを昇降可能である。
【0036】
図2は本発明によるアンテナ昇降機のアンテナユニットの構成を示す斜視図である。
【0037】
仰角調整レバー4に挿入された回動軸3がアンテナベース8を貫通してアンテナアーム軸受け20に取り付けられる。
【0038】
アンテナ1はアンテナアーム2を介してアンテナアーム軸受け20に取り付けられ、仰角調整レバー4の動作に伴い回動軸3によって伝えられた円周運動により、アンテナ1の仰角が調整可能に構成される。
【0039】
仰角調整レバー4は他端を直動ナット5と接続されている。
【0040】
直動ナット5は仰角調整レバー4に直線運動を与えるもので、内側にねじ切りされた空洞を持ち外側にねじを切られた昇降ソケット6が挿入されている。
【0041】
直動ナット5の内側に施されたねじ溝と、前記昇降ソケット6の外側に施されたねじ山は勘合するように形成されており、昇降ソケット6の回転運動が直動ナット5に上下方向の直線運動として伝えられる。
【0042】
昇降ソケット6は四角形断面の空洞を有し、同形状で部材の摺動が可能な間隙を有するガイドポール7を貫通配置する。
【0043】
アンテナ昇降機の昇降動作時は、昇降ソケット6はガイドポール7を摺動し、ガイドポール7に仰角調整モーター12によって回転運動が与えられると直動ナット5と協働して直線運動に変換するものである。
【0044】
なお、本実施例ではガイドポール7は四角形断面の柱状部材を用いたが、回転力を伝達でき、回転を与えないときに外周を摺動出来る断面形状であれば、四角形に限定されるものではない。
【0045】
例えば、三角形、六角形、星型なども適用可能である。ただし、回転力の伝達に支障を来たすため、角の数が増えるほど昇降ソケット6とガイドポール7の間隙を小さくする必要がある。
【0046】
また、本実施例では回転→直線→回転の運動変換機構を用いた例について説明しているが、アンテナに仰角を付与する手段であれば、これに限るものではない。
【0047】
前述の機構を用いることにより、昇降動作と仰角動作が独立して制御可能なことに加え、アンテナ1に仰角を付与する際にアンテナ1が偏芯せず、安定して連続的な仰角を取ることが可能である。
【0048】
従来の技術でアンテナ1の昇降動作と仰角動作とが直結しているような機構を採用した場合には、被計測機器の高さに合わせた仰角付与手段をそれぞれ用意し、逐一交換する必要がある。
【0049】
本発明のようにアンテナ1の昇降動作と仰角動作が独立して制御可能なことにより、被計測機器の高さに応じてアンテナ1の仰角を任意に設定できるため高さ補正が容易になり、被計測機器の高さが大きく異なっても、1つのアンテナ昇降機で対応可能な範囲が広がる利点がある。
【0050】
また、アンテナアーム2に水準器16を設置することにより、アンテナ1の自重でアンテナアーム2がたわみ、アンテナ1の水平が保持できない場合であっても、計測開始前に検知が可能であり、本発明の仰角調整手段を用いてアンテナ1の水平位置の補正が可能である。
【0051】
このアンテナ1の水平位置の補正手段は、特に大型のアンテナを使用する測定の正確性を高めるために好ましい。
【0052】
なお、水準器16の代わりに各種角度センサを用いて自動調整することも可能であるが、角度検出に用いる例えば水銀センサやジャイロセンサなどの種類によっては、電磁波の測定に影響を与えない対策が施されたものを用いる必要がある。
【実施例2】
【0053】
図3は本発明によるアンテナ昇降機の昇降機構と偏波角調整手段の構成を示す正面図である。
【0054】
アンテナ昇降機の昇降機構は、プーリー10と昇降駆動ベルト11を含むよう構成され、アンテナベース8はマスト9に嵌めた状態で昇降駆動ベルト11に取り付ける。
【0055】
昇降駆動モーター14によってプーリー10に回転力が与えられると、プーリー10の回転に伴い昇降駆動ベルト11に昇降駆動力を与え、アンテナベース8がマスト9を摺動しながら上下方向に移動する。
【0056】
なお、昇降駆動の手段は、安定的に連続した昇降動作が可能であれば、本実施例に限定されるものではない。
【0057】
図4は本発明によるアンテナ昇降機のアンテナユニットの偏波角調整手段を説明する正面図である。
【0058】
偏波角調整手段は、偏波角調整レバー21の一端をアンテナアーム2に取り付け、他端をリニアアクチュエータ22と接続されてなり、リニアアクチュエータ22の直線運動によって偏波角調整レバー21を動作させる。
【0059】
アンテナアーム2はアンテナアーム軸受け20に回動可能に取り付け、リニアアクチュエータ22によって与えられた直線運動を偏波角調整レバー21によって回動運動に変換することで、偏波角の調整動作を行なう。
【0060】
従来技術では水平偏波と垂直偏波の2つの状態を切り替えるものであったが、本発明においては連続的な偏波角度の調整が可能であることから、偏波角が0°または90°から傾いた状態の場合や、回転偏波が生じている場合であっても対応可能となる。
【0061】
また、偏波角調整の際にアンテナ1が偏芯することがなく、例えば特許文献3のような偏波角調整機構では行うことの出来ないきめ細かく高精度の測定が可能である。
【0062】
なお、アンテナ1を偏芯させることなく偏波角が調整可能であれば、本実施例に限るものではなく、特許文献2にあるように2組のアンテナユニットを持たせることも可能である。
【0063】
ただし、本発明のような偏波角調整手段によれば、アンテナ昇降機が軽量化できて安定的な設置が可能となり、簡便な装置を安価に提供可能となり、測定の効率化が図れる利点がある。
【0064】
また、図2乃至図4においてはアンテナ1の偏波角調整手段の例を説明しているが、連続した調整動作が可能であれば、本実施例に限定されるものではない。
【実施例3】
【0065】
図5は本発明による不要輻射電磁波計測システムの構成を示す模式図である。
【0066】
EUT30はターンテーブル31上に設置し、EUT30の電磁波の放射源がターンテーブル31の回転軸中心上に位置するよう調整する。ターンテーブル31は回転駆動機構を有し、回転軸を中心に自在に回転可能である。
【0067】
アンテナ1とアンテナベース8およびマスト9を含むアンテナ昇降機は、EUT30とアンテナ1の先端部分が所定の距離(例えば3m)となるよう設置し、アンテナ1の主ローブの中心軸と、EUT30の中心軸とが一致するよう調整する。
【0068】
本発明による仰角付与手段を備えた不要輻射電磁波計測システムでは、計測距離が長い場合には付与される仰角はあまり大きくはないが、計測距離が短い場合付与される仰角は大きくなる。
【0069】
この時、仰角が大きくなるに従って僅かながらEUT30とアンテナ1の距離に計算値とのズレが生じる。このズレを修正するのが計測距離補正手段であり、アンテナアーム2に取り付けられたアンテナ1が計測距離(3m、10m、30m)と与えられた仰角に合わせて、EUT30とアンテナ1の距離が確保されるよう、計測距離を修正するものである。
【0070】
例えば、特に図示しないがアンテナアーム2を二重筒構造としてアンテナ1と直結している部分を押し出す様な手段によって距離補正を行なうと、仰角付与手段、偏波角調整手段の機能を損なうことなく距離補正が可能となる。
【0071】
計測距離補正手段は、このようにアンテナ1をEUT30の方向に迫り出す機構を併せ持たせるものであっても、アンテナ昇降機そのもののを動かすような機構であっても良く、安定した計測を実現でき、他の機能を損なわなければ前述の例に限定されるものではない。
【0072】
本実施例による各動作機構は電気的に制御可能であるために容易に自動化が可能である。モーターの種類は特に限定されないが、サーボモータを使用すれば、位置や速度を細かく制御することが可能となり、各動作機構に反映させることも可能である。
【0073】
ここに示した機構部品の全ては計測に悪影響を及ぼす金属を用いずに実施可能であり、必要な加工精度や耐久性、剛性を有していれば特に素材を限定するものではない。
【0074】
なお、各図面ではホーンアンテナを用いた例について示しているが、前述の種々のアンテナに応用できることは言うまでもない。
【0075】
本発明により、従来指向性が問題となり敢えて利得が低いアンテナを利用していたような場面であっても、電磁波の飛来方向に合わせることが出来、尚且つ偏波の傾きにも対応できるため、利得の高いアンテナを選択することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明によるアンテナ昇降機を示す側面図。
【図2】本発明によるアンテナ昇降機のアンテナユニットの構成を示す斜視図。
【図3】本発明によるアンテナ昇降機の昇降機構と偏波角調整手段の構成を示す正面図。
【図4】本発明によるアンテナ昇降機のアンテナユニットの偏波角調整手段を説明する正面図。
【図5】本発明による不要輻射電磁波計測システムの構成を示す模式図。L:測定距離(3m、10m、30m)、H:測定高さ(1〜4m、1〜6m)、Θ:アンテナ仰角。
【符号の説明】
【0077】
1 アンテナ
2 アンテナアーム
3 回動軸
4 仰角調整レバー
5 直動ナット
6 昇降ソケット
7 ガイドポール
8 アンテナベース
9 マスト
10 プーリー
11 昇降駆動ベルト
12 仰角調整モーター
13 仰角調整ギヤボックス
14 昇降駆動モーター
15 昇降駆動ギヤボックス
16 水準器
20 アンテナアーム軸受け
21 偏波角調整レバー
22 リニアアクチュエータ
30 被計測機器(EUT)
31 ターンテーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器やそれを用いた各種装置から発生する不要輻射電磁波を計測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等の妨害波を評価するため、その機器から発せられる電磁波の計測を行なう場合、通常対象となる機器を電波暗室やオープンサイト内に設置し、一定距離(3m、10m、30m)離れた場所に配置されたアンテナで受信した電界強度を計測することにより行なわれる。この時、被計測機器(EUT)はターンテーブル上に置かれ、ターンテーブルを回転することでEUTの全周に渡る計測を行なう。また、アンテナを昇降させることにより、1m〜4m、或いは1m〜6mの高さ方向の計測を行なう。更に、アンテナの偏波角に応じた取り付け方向に調整することで、水平偏波、垂直偏波のどちらの成分の電磁波も測定が可能である。
【0003】
一般的な計測は広い周波数帯域に渡って行われるため、ダイポールアンテナ、バイコニカルアンテナ、ログペリアンテナ、ホーンアンテナなどを測定条件や測定周波数に応じて併用したり、使い分けたりしているが、受信に関する利得や指向性はアンテナ種類によって異なっている。近年、電子機器等の小型化高速化に伴い、マイクロプロセッサ等の駆動周波数が高周波化しており、それに伴って発生する妨害波も高周波化しているため、不要輻射電磁波の計測は必然的に高周波帯域での正確な計測が要求されている。GHz帯域の計測には、標準アンテナとしてホーンアンテナが広く用いられているが、一般的には開口面の広さに比例して利得が大きくなり、指向性が鋭くなるという性質を有している。
【0004】
従来この種の不要輻射電磁波計測に用いられる装置では、例えば特許文献1に高周波帯域での計測において正確な測定結果を得るため、EUTの位置ズレ防止機構に関する技術が開示されている。また、特許文献2には偏波角毎に個別にアンテナを用意し、1回の測定で同時に計測を行なう技術が開示されている。更に、特許文献3には偏波の方向に応じてアンテナの偏波角を切り替える装置が開示されている。
【0005】
不要輻射電磁波の計測に利用されるアンテナの多くは指向性を有するものであるため、アンテナに対しEUTを計測位置にズレなく高精度に設置したり、偏波方向に応じてアンテナの偏波角を切り替えたりすることで計測の正確性は改善されてきたが、それにもかかわらずアンテナの指向性に関する技術的配慮は十分なものとはいえなかった。例えば、特許文献1記載の発明ではアンテナの指向性も鑑みてEUTの設置位置と基準点、アンテナの相互の位置関係を高精度で再現性良く設定できるような電波暗室を提案しているが、あくまで基準点を合わせることが主眼となっている。
【0006】
【特許文献1】特開2007−33254号公報
【特許文献2】特開平08−146063号公報
【特許文献3】実公平03−6013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実際の計測においてはEUTとアンテナが相対している1点について測定するわけではなく、アンテナを昇降させ連続的に高さを変化させているが、例えばアンテナを水平に設定して上昇させた場合、従来の計測システムではアンテナはいずれの高さにおいても水平のままである。特許文献3記載のような切り替え装置を有するシステムにおいても、偏波方向に合わせて偏波角を90°切り替えるだけである。しかしながら、EUTから発せられる不要輻射電磁波は全ての高さ位置において水平に飛来してくるわけではなく、アンテナとEUTの水平位置を調整して後にアンテナ位置が上昇すれば、必然的にアンテナには斜め下方から飛来する電磁波が入射することになるため、アンテナの指向性を考慮すると従来の計測では正確な電界強度を測っていることにはならず、特に指向性の鋭いホーンアンテナを使用する高周波帯域ではその差異が顕著になるという欠点があった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の欠点を解決するべくなされたもので、アンテナの昇降に伴って変化する不要輻射電磁波の飛来方向とアンテナの向きが異なることに着目し、両者を追従させることによって、より正確な計測を実現するアンテナ昇降機および不要輻射電磁波計測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、電磁波を受信するアンテナを取り付けてなるアンテナユニットが、長尺部材に沿って昇降自在に配してなる電磁波の計測に用いるアンテナ昇降機であって、前記アンテナユニットは前記アンテナの仰角を調整する手段を有することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0010】
本発明によれば、前記アンテナの仰角を調整する手段は、前記アンテナを第1の取り付け部材に取り付け、前記第1の取り付け部材は第2の取り付け部材を介して回動軸の一端に取り付け、前記回動軸は前記長尺部材に昇降自在に遊嵌したアンテナベースを貫通して回動自在に配し、前記回動軸の他端は仰角調整レバーの一端に取り付け、前記仰角調整レバーの他端は長円形の穴部を有し、前記穴部に第3の取り付け部材を遊嵌し、前記第3の取り付け部材を前記アンテナユニットの昇降方向に駆動する直動機構を備えるよう構成したもので、前記直動機構の動作によって前記アンテナの仰角を調整することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0011】
本発明によれば、前記直動機構は、前記長円形の穴部に遊嵌する摺動部材と内側にネジ穴を有する前記第3の取り付け部材と、外側にネジ溝を有し内側に断面多角形の空洞を貫通形成した昇降ソケットと、前記空洞と断面形状が略類似で摺動自在な空隙を有して遊嵌する断面多角形の柱状部材を備え、前記昇降ソケットは前記柱状部材を貫通配置すると共に前記第3の取り付け部材に螺合するよう構成し、前記柱状部材を回動することにより、前記第3の取り付け部材を直線的に駆動することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0012】
本発明によれば、前記アンテナユニットは、前記アンテナの偏波角を調整する手段を有することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0013】
本発明によれば、前記偏波角を調整する手段は、前記アンテナの受波の中心軸に合致して取り付けた前記第1の取り付け部材と、前記第1の取り付け部材が前記中心軸を中心として回動自在に取り付けた前記第2の取り付け部材と、前記第1の取り付け部材に一端を取り付けた偏波角調整レバーと、前記偏波角調整レバーの他端を連続駆動可能な直動アクチュエータに取り付けるよう構成したもので、前記直動アクチュエータの直線運動によって前記アンテナの偏波角を連続的に調整することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0014】
本発明によれば、前記アンテナユニットは、前記アンテナの水平位置の検知および調整の手段を有することを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0015】
本発明によれば、設置した被計測機器を回転駆動するターンテーブルと、前記被計測機器から離間設置されたアンテナ昇降機からなることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0016】
本発明によれば、前記アンテナと前記被計測機器の間の設置距離、および前記被計測機器の高さ寸法に対応して、前記アンテナの仰角を調整自在とすることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0017】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、前記被計測機器と前記アンテナの測定距離を調整する手段を有することを特徴とする、不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0018】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測に用いられるアンテナ昇降機であって、被計測機器から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナと前記アンテナに仰角を与える仰角付与手段とを少なくとも備えているアンテナユニットと、前記アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0019】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記仰角付与手段が回転運動を直線運動に変換し、更に回転運動に変換することによって制御されており、連続的な角度調整が可能であることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0020】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記仰角付与手段が多角形のガイドポールを有し、ガイドポールを回転させることによって前記回転運動を与えることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0021】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記アンテナユニットに更に偏波切替手段を備えることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0022】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記偏波切替手段が直線運動を回転運動に変換することによって制御されており、連続的な角度調整が可能であることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0023】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記偏波切替手段がエアシリンダーによって前記直線運動を与えることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0024】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記アンテナはアンテナ取り付けアームに取り付けられており、前記アンテナ取り付けアームには水平検知手段が取り付けられていることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0025】
本発明によれば、アンテナ昇降機であって、前記水平検知手段が水準器であることを特徴とするアンテナ昇降機が得られる。
【0026】
本発明によれば、被計測機器を設置し水平面内で回転駆動する手段を有するターンテーブルと、前記被計測機器から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナと前記アンテナに仰角を与える仰角付与手段とを少なくとも備えているアンテナユニットと、前記アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えるアンテナ昇降機からなることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0027】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、前記アンテナユニットに更に偏波切替手段を備えることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0028】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、前記仰角付与手段によって仰角付与を開始する高さを前記被計測機器の高さに応じて任意に選択することが可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0029】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、前記アンテナを取り付ける際にアンテナ自重などによりアンテナが水平に設置されていない場合、水平微調整が可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【0030】
本発明によれば、不要輻射電磁波計測システムであって、更に計測距離補正手段を備えることによって、仰角付与に伴って生じる計測距離のズレを補正する手段を備えているため、より正確な位置での計測が可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システムが得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、アンテナに仰角を付与する手段を設け、アンテナの昇降に伴って変化する不要輻射電磁波の飛来方向とアンテナ向きを合わせることによって、より正確な計測を実現したアンテナ昇降機及び不要輻射電磁波計測システムの提供が可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明の実施の形態に係わるアンテナ昇降機およびそれを用いた不要輻射電磁波計測システムについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0033】
図1は本発明によるアンテナ昇降機を示す側面図である。
【0034】
アンテナアーム2に取り付けられたアンテナ1は、回動軸3を中心に回動自在にアンテナベース8に取り付けられ、仰角調整が可能である。
【0035】
アンテナベース8はマスト9に昇降自在に配され、プーリー10と昇降駆動ベルト11を含む昇降駆動手段により、アンテナ1は所定の高さを昇降可能である。
【0036】
図2は本発明によるアンテナ昇降機のアンテナユニットの構成を示す斜視図である。
【0037】
仰角調整レバー4に挿入された回動軸3がアンテナベース8を貫通してアンテナアーム軸受け20に取り付けられる。
【0038】
アンテナ1はアンテナアーム2を介してアンテナアーム軸受け20に取り付けられ、仰角調整レバー4の動作に伴い回動軸3によって伝えられた円周運動により、アンテナ1の仰角が調整可能に構成される。
【0039】
仰角調整レバー4は他端を直動ナット5と接続されている。
【0040】
直動ナット5は仰角調整レバー4に直線運動を与えるもので、内側にねじ切りされた空洞を持ち外側にねじを切られた昇降ソケット6が挿入されている。
【0041】
直動ナット5の内側に施されたねじ溝と、前記昇降ソケット6の外側に施されたねじ山は勘合するように形成されており、昇降ソケット6の回転運動が直動ナット5に上下方向の直線運動として伝えられる。
【0042】
昇降ソケット6は四角形断面の空洞を有し、同形状で部材の摺動が可能な間隙を有するガイドポール7を貫通配置する。
【0043】
アンテナ昇降機の昇降動作時は、昇降ソケット6はガイドポール7を摺動し、ガイドポール7に仰角調整モーター12によって回転運動が与えられると直動ナット5と協働して直線運動に変換するものである。
【0044】
なお、本実施例ではガイドポール7は四角形断面の柱状部材を用いたが、回転力を伝達でき、回転を与えないときに外周を摺動出来る断面形状であれば、四角形に限定されるものではない。
【0045】
例えば、三角形、六角形、星型なども適用可能である。ただし、回転力の伝達に支障を来たすため、角の数が増えるほど昇降ソケット6とガイドポール7の間隙を小さくする必要がある。
【0046】
また、本実施例では回転→直線→回転の運動変換機構を用いた例について説明しているが、アンテナに仰角を付与する手段であれば、これに限るものではない。
【0047】
前述の機構を用いることにより、昇降動作と仰角動作が独立して制御可能なことに加え、アンテナ1に仰角を付与する際にアンテナ1が偏芯せず、安定して連続的な仰角を取ることが可能である。
【0048】
従来の技術でアンテナ1の昇降動作と仰角動作とが直結しているような機構を採用した場合には、被計測機器の高さに合わせた仰角付与手段をそれぞれ用意し、逐一交換する必要がある。
【0049】
本発明のようにアンテナ1の昇降動作と仰角動作が独立して制御可能なことにより、被計測機器の高さに応じてアンテナ1の仰角を任意に設定できるため高さ補正が容易になり、被計測機器の高さが大きく異なっても、1つのアンテナ昇降機で対応可能な範囲が広がる利点がある。
【0050】
また、アンテナアーム2に水準器16を設置することにより、アンテナ1の自重でアンテナアーム2がたわみ、アンテナ1の水平が保持できない場合であっても、計測開始前に検知が可能であり、本発明の仰角調整手段を用いてアンテナ1の水平位置の補正が可能である。
【0051】
このアンテナ1の水平位置の補正手段は、特に大型のアンテナを使用する測定の正確性を高めるために好ましい。
【0052】
なお、水準器16の代わりに各種角度センサを用いて自動調整することも可能であるが、角度検出に用いる例えば水銀センサやジャイロセンサなどの種類によっては、電磁波の測定に影響を与えない対策が施されたものを用いる必要がある。
【実施例2】
【0053】
図3は本発明によるアンテナ昇降機の昇降機構と偏波角調整手段の構成を示す正面図である。
【0054】
アンテナ昇降機の昇降機構は、プーリー10と昇降駆動ベルト11を含むよう構成され、アンテナベース8はマスト9に嵌めた状態で昇降駆動ベルト11に取り付ける。
【0055】
昇降駆動モーター14によってプーリー10に回転力が与えられると、プーリー10の回転に伴い昇降駆動ベルト11に昇降駆動力を与え、アンテナベース8がマスト9を摺動しながら上下方向に移動する。
【0056】
なお、昇降駆動の手段は、安定的に連続した昇降動作が可能であれば、本実施例に限定されるものではない。
【0057】
図4は本発明によるアンテナ昇降機のアンテナユニットの偏波角調整手段を説明する正面図である。
【0058】
偏波角調整手段は、偏波角調整レバー21の一端をアンテナアーム2に取り付け、他端をリニアアクチュエータ22と接続されてなり、リニアアクチュエータ22の直線運動によって偏波角調整レバー21を動作させる。
【0059】
アンテナアーム2はアンテナアーム軸受け20に回動可能に取り付け、リニアアクチュエータ22によって与えられた直線運動を偏波角調整レバー21によって回動運動に変換することで、偏波角の調整動作を行なう。
【0060】
従来技術では水平偏波と垂直偏波の2つの状態を切り替えるものであったが、本発明においては連続的な偏波角度の調整が可能であることから、偏波角が0°または90°から傾いた状態の場合や、回転偏波が生じている場合であっても対応可能となる。
【0061】
また、偏波角調整の際にアンテナ1が偏芯することがなく、例えば特許文献3のような偏波角調整機構では行うことの出来ないきめ細かく高精度の測定が可能である。
【0062】
なお、アンテナ1を偏芯させることなく偏波角が調整可能であれば、本実施例に限るものではなく、特許文献2にあるように2組のアンテナユニットを持たせることも可能である。
【0063】
ただし、本発明のような偏波角調整手段によれば、アンテナ昇降機が軽量化できて安定的な設置が可能となり、簡便な装置を安価に提供可能となり、測定の効率化が図れる利点がある。
【0064】
また、図2乃至図4においてはアンテナ1の偏波角調整手段の例を説明しているが、連続した調整動作が可能であれば、本実施例に限定されるものではない。
【実施例3】
【0065】
図5は本発明による不要輻射電磁波計測システムの構成を示す模式図である。
【0066】
EUT30はターンテーブル31上に設置し、EUT30の電磁波の放射源がターンテーブル31の回転軸中心上に位置するよう調整する。ターンテーブル31は回転駆動機構を有し、回転軸を中心に自在に回転可能である。
【0067】
アンテナ1とアンテナベース8およびマスト9を含むアンテナ昇降機は、EUT30とアンテナ1の先端部分が所定の距離(例えば3m)となるよう設置し、アンテナ1の主ローブの中心軸と、EUT30の中心軸とが一致するよう調整する。
【0068】
本発明による仰角付与手段を備えた不要輻射電磁波計測システムでは、計測距離が長い場合には付与される仰角はあまり大きくはないが、計測距離が短い場合付与される仰角は大きくなる。
【0069】
この時、仰角が大きくなるに従って僅かながらEUT30とアンテナ1の距離に計算値とのズレが生じる。このズレを修正するのが計測距離補正手段であり、アンテナアーム2に取り付けられたアンテナ1が計測距離(3m、10m、30m)と与えられた仰角に合わせて、EUT30とアンテナ1の距離が確保されるよう、計測距離を修正するものである。
【0070】
例えば、特に図示しないがアンテナアーム2を二重筒構造としてアンテナ1と直結している部分を押し出す様な手段によって距離補正を行なうと、仰角付与手段、偏波角調整手段の機能を損なうことなく距離補正が可能となる。
【0071】
計測距離補正手段は、このようにアンテナ1をEUT30の方向に迫り出す機構を併せ持たせるものであっても、アンテナ昇降機そのもののを動かすような機構であっても良く、安定した計測を実現でき、他の機能を損なわなければ前述の例に限定されるものではない。
【0072】
本実施例による各動作機構は電気的に制御可能であるために容易に自動化が可能である。モーターの種類は特に限定されないが、サーボモータを使用すれば、位置や速度を細かく制御することが可能となり、各動作機構に反映させることも可能である。
【0073】
ここに示した機構部品の全ては計測に悪影響を及ぼす金属を用いずに実施可能であり、必要な加工精度や耐久性、剛性を有していれば特に素材を限定するものではない。
【0074】
なお、各図面ではホーンアンテナを用いた例について示しているが、前述の種々のアンテナに応用できることは言うまでもない。
【0075】
本発明により、従来指向性が問題となり敢えて利得が低いアンテナを利用していたような場面であっても、電磁波の飛来方向に合わせることが出来、尚且つ偏波の傾きにも対応できるため、利得の高いアンテナを選択することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明によるアンテナ昇降機を示す側面図。
【図2】本発明によるアンテナ昇降機のアンテナユニットの構成を示す斜視図。
【図3】本発明によるアンテナ昇降機の昇降機構と偏波角調整手段の構成を示す正面図。
【図4】本発明によるアンテナ昇降機のアンテナユニットの偏波角調整手段を説明する正面図。
【図5】本発明による不要輻射電磁波計測システムの構成を示す模式図。L:測定距離(3m、10m、30m)、H:測定高さ(1〜4m、1〜6m)、Θ:アンテナ仰角。
【符号の説明】
【0077】
1 アンテナ
2 アンテナアーム
3 回動軸
4 仰角調整レバー
5 直動ナット
6 昇降ソケット
7 ガイドポール
8 アンテナベース
9 マスト
10 プーリー
11 昇降駆動ベルト
12 仰角調整モーター
13 仰角調整ギヤボックス
14 昇降駆動モーター
15 昇降駆動ギヤボックス
16 水準器
20 アンテナアーム軸受け
21 偏波角調整レバー
22 リニアアクチュエータ
30 被計測機器(EUT)
31 ターンテーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を受信するアンテナを取り付けてなるアンテナユニットが、長尺部材に沿って昇降自在に配してなる電磁波の計測に用いるアンテナ昇降機であって、前記アンテナユニットは前記アンテナの仰角を調整する手段を有することを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項2】
前記アンテナの仰角を調整する手段は、前記アンテナを第1の取り付け部材に取り付け、前記第1の取り付け部材は第2の取り付け部材を介して回動軸の一端に取り付け、前記回動軸は前記長尺部材に昇降自在に遊嵌したアンテナベースを貫通して回動自在に配し、前記回動軸の他端は仰角調整レバーの一端に取り付け、前記仰角調整レバーの他端は長円形の穴部を有し、前記穴部に第3の取り付け部材を遊嵌し、前記第3の取り付け部材を前記アンテナユニットの昇降方向に駆動する直動機構を備えるよう構成したもので、前記直動機構の動作によって前記アンテナの仰角を調整することを特徴とする、請求項1記載のアンテナ昇降機。
【請求項3】
前記直動機構は、前記長円形の穴部に遊嵌する摺動部材と内側にネジ穴を有する前記第3の取り付け部材と、外側にネジ溝を有し内側に断面多角形の空洞を貫通形成した昇降ソケットと、前記空洞と断面形状が略類似で摺動自在な空隙を有して遊嵌する断面多角形の柱状部材を備え、前記昇降ソケットは前記柱状部材を貫通配置すると共に前記第3の取り付け部材に螺合するよう構成し、前記柱状部材を回動することにより、前記第3の取り付け部材を直線的に駆動することを特徴とする、請求項2記載のアンテナ昇降機。
【請求項4】
前記アンテナユニットは、前記アンテナの偏波角を調整する手段を有することを特徴とする、請求項1乃至3記載のアンテナ昇降機。
【請求項5】
前記偏波角を調整する手段は、前記アンテナの受波の中心軸に合致して取り付けた前記第1の取り付け部材と、前記第1の取り付け部材が前記中心軸を中心として回動自在に取り付けた前記第2の取り付け部材と、前記第1の取り付け部材に一端を取り付けた偏波角調整レバーと、前記偏波角調整レバーの他端を連続駆動可能な直動アクチュエータに取り付けるよう構成したもので、前記直動アクチュエータの直線運動によって前記アンテナの偏波角を連続的に調整することを特徴とする、請求項4記載のアンテナ昇降機。
【請求項6】
前記アンテナユニットは、前記アンテナの水平位置の検知および調整の手段を有することを特徴とする、請求項1乃至5記載のアンテナ昇降機。
【請求項7】
設置した被計測機器を回転駆動するターンテーブルと、前記被計測機器から離間設置された請求項1乃至6記載のアンテナ昇降機からなることを特徴とする、不要輻射電磁波計測システム。
【請求項8】
前記アンテナと前記被計測機器の間の設置距離、および前記被計測機器の高さ寸法に対応して、前記アンテナの仰角を調整自在とすることを特徴とする、請求項7記載の不要輻射電磁波計測システム。
【請求項9】
請求項7乃至8記載の不要輻射電磁波計測システムであって、前記被計測機器と前記アンテナの測定距離を調整する手段を有することを特徴とする、不要輻射電磁波計測システム。
【請求項10】
不要輻射電磁波計測に用いられるアンテナ昇降機であって、被計測機器から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナと前記アンテナに仰角を与える仰角付与手段とを少なくとも備えているアンテナユニットと、前記アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項11】
請求項10記載のアンテナ昇降機であって、前記仰角付与手段が回転運動を直線運動に変換し、更に回転運動に変換することによって制御されており、連続的な角度調整が可能であることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項12】
請求項11記載のアンテナ昇降機であって、前記仰角付与手段が多角形のガイドポールを有し、ガイドポールを回転させることによって前記回転運動を与えることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項13】
請求項10乃至12記載のアンテナ昇降機であって、前記アンテナユニットに更に偏波切替手段を備えることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項14】
請求項13記載のアンテナ昇降機であって、前記偏波切替手段が直線運動を回転運動に変換することによって制御されており、連続的な角度調整が可能であることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項15】
請求項14記載のアンテナ昇降機であって、前記偏波切替手段がエアシリンダーによって前記直線運動を与えることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項16】
請求項10乃至15記載のアンテナ昇降機であって、前記アンテナはアンテナ取り付けアームに取り付けられており、前記アンテナ取り付けアームには水平検知手段が取り付けられていることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項17】
請求項16記載のアンテナ昇降機であって、前記水平検知手段が水準器であることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項18】
被計測機器を設置し水平面内で回転駆動する手段を有するターンテーブルと、前記被計測機器から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナと前記アンテナに仰角を与える仰角付与手段とを少なくとも備えているアンテナユニットと、前記アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えるアンテナ昇降機からなることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【請求項19】
請求項18記載の不要輻射電磁波計測システムであって、前記アンテナユニットに更に偏波切替手段を備えることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【請求項20】
請求項18乃至19記載の不要輻射電磁波計測システムであって、前記仰角付与手段によって仰角付与を開始する高さを前記被計測機器の高さに応じて任意に選択することが可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【請求項21】
請求項18乃至20記載の不要輻射電磁波計測システムであって、前記アンテナを取り付ける際にアンテナ自重などによりアンテナが水平に設置されていない場合、水平微調整が可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【請求項22】
請求項18乃至21記載の不要輻射電磁波計測システムであって、更に計測距離補正手段を備えることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【請求項1】
電磁波を受信するアンテナを取り付けてなるアンテナユニットが、長尺部材に沿って昇降自在に配してなる電磁波の計測に用いるアンテナ昇降機であって、前記アンテナユニットは前記アンテナの仰角を調整する手段を有することを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項2】
前記アンテナの仰角を調整する手段は、前記アンテナを第1の取り付け部材に取り付け、前記第1の取り付け部材は第2の取り付け部材を介して回動軸の一端に取り付け、前記回動軸は前記長尺部材に昇降自在に遊嵌したアンテナベースを貫通して回動自在に配し、前記回動軸の他端は仰角調整レバーの一端に取り付け、前記仰角調整レバーの他端は長円形の穴部を有し、前記穴部に第3の取り付け部材を遊嵌し、前記第3の取り付け部材を前記アンテナユニットの昇降方向に駆動する直動機構を備えるよう構成したもので、前記直動機構の動作によって前記アンテナの仰角を調整することを特徴とする、請求項1記載のアンテナ昇降機。
【請求項3】
前記直動機構は、前記長円形の穴部に遊嵌する摺動部材と内側にネジ穴を有する前記第3の取り付け部材と、外側にネジ溝を有し内側に断面多角形の空洞を貫通形成した昇降ソケットと、前記空洞と断面形状が略類似で摺動自在な空隙を有して遊嵌する断面多角形の柱状部材を備え、前記昇降ソケットは前記柱状部材を貫通配置すると共に前記第3の取り付け部材に螺合するよう構成し、前記柱状部材を回動することにより、前記第3の取り付け部材を直線的に駆動することを特徴とする、請求項2記載のアンテナ昇降機。
【請求項4】
前記アンテナユニットは、前記アンテナの偏波角を調整する手段を有することを特徴とする、請求項1乃至3記載のアンテナ昇降機。
【請求項5】
前記偏波角を調整する手段は、前記アンテナの受波の中心軸に合致して取り付けた前記第1の取り付け部材と、前記第1の取り付け部材が前記中心軸を中心として回動自在に取り付けた前記第2の取り付け部材と、前記第1の取り付け部材に一端を取り付けた偏波角調整レバーと、前記偏波角調整レバーの他端を連続駆動可能な直動アクチュエータに取り付けるよう構成したもので、前記直動アクチュエータの直線運動によって前記アンテナの偏波角を連続的に調整することを特徴とする、請求項4記載のアンテナ昇降機。
【請求項6】
前記アンテナユニットは、前記アンテナの水平位置の検知および調整の手段を有することを特徴とする、請求項1乃至5記載のアンテナ昇降機。
【請求項7】
設置した被計測機器を回転駆動するターンテーブルと、前記被計測機器から離間設置された請求項1乃至6記載のアンテナ昇降機からなることを特徴とする、不要輻射電磁波計測システム。
【請求項8】
前記アンテナと前記被計測機器の間の設置距離、および前記被計測機器の高さ寸法に対応して、前記アンテナの仰角を調整自在とすることを特徴とする、請求項7記載の不要輻射電磁波計測システム。
【請求項9】
請求項7乃至8記載の不要輻射電磁波計測システムであって、前記被計測機器と前記アンテナの測定距離を調整する手段を有することを特徴とする、不要輻射電磁波計測システム。
【請求項10】
不要輻射電磁波計測に用いられるアンテナ昇降機であって、被計測機器から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナと前記アンテナに仰角を与える仰角付与手段とを少なくとも備えているアンテナユニットと、前記アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項11】
請求項10記載のアンテナ昇降機であって、前記仰角付与手段が回転運動を直線運動に変換し、更に回転運動に変換することによって制御されており、連続的な角度調整が可能であることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項12】
請求項11記載のアンテナ昇降機であって、前記仰角付与手段が多角形のガイドポールを有し、ガイドポールを回転させることによって前記回転運動を与えることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項13】
請求項10乃至12記載のアンテナ昇降機であって、前記アンテナユニットに更に偏波切替手段を備えることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項14】
請求項13記載のアンテナ昇降機であって、前記偏波切替手段が直線運動を回転運動に変換することによって制御されており、連続的な角度調整が可能であることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項15】
請求項14記載のアンテナ昇降機であって、前記偏波切替手段がエアシリンダーによって前記直線運動を与えることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項16】
請求項10乃至15記載のアンテナ昇降機であって、前記アンテナはアンテナ取り付けアームに取り付けられており、前記アンテナ取り付けアームには水平検知手段が取り付けられていることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項17】
請求項16記載のアンテナ昇降機であって、前記水平検知手段が水準器であることを特徴とするアンテナ昇降機。
【請求項18】
被計測機器を設置し水平面内で回転駆動する手段を有するターンテーブルと、前記被計測機器から輻射される電磁波の電界強度を測定するアンテナと前記アンテナに仰角を与える仰角付与手段とを少なくとも備えているアンテナユニットと、前記アンテナユニットを垂直方向に昇降駆動する手段とを備えるアンテナ昇降機からなることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【請求項19】
請求項18記載の不要輻射電磁波計測システムであって、前記アンテナユニットに更に偏波切替手段を備えることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【請求項20】
請求項18乃至19記載の不要輻射電磁波計測システムであって、前記仰角付与手段によって仰角付与を開始する高さを前記被計測機器の高さに応じて任意に選択することが可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【請求項21】
請求項18乃至20記載の不要輻射電磁波計測システムであって、前記アンテナを取り付ける際にアンテナ自重などによりアンテナが水平に設置されていない場合、水平微調整が可能であることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【請求項22】
請求項18乃至21記載の不要輻射電磁波計測システムであって、更に計測距離補正手段を備えることを特徴とする不要輻射電磁波計測システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2009−58460(P2009−58460A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−227722(P2007−227722)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(501353052)株式会社トーキンEMCエンジニアリング (13)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【出願人】(501353052)株式会社トーキンEMCエンジニアリング (13)
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