説明

アンテナ給電回路およびそれを備えるアンテナ

【課題】性能および製造効率に優れたアンテナ給電回路、およびその給電回路を備えるアンテナを提供する。
【解決手段】アンテナ給電回路10は、誘電体基板11と、導体によって誘電体基板に各々形成され、第1のアンテナ(1,2)および第2のアンテナ(3,4)に位相差給電を行なうための位相差給電線13,14と、導体によって誘電体基板11に形成され、位相差給電線13,14に電気的に接続されたバラン12とを備える。バランと位相差給電線とが、平板状の導電体によって同一の誘電体基板に形成される。これにより、アンテナ給電回路の部品点数を削減することができる。さらにコアに導線を巻きつけるといった、バランの特性の変動をもたらす要因をなくすことができる。したがって、アンテナ給電回路の特性を安定化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナ給電回路およびそれを備えるアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
図26は、従来のアンテナ給電回路の構成を概略的に示した図である。図26を参照して、アンテナ給電回路は、放射素子101,102からなるダイポールアンテナと放射素子103,104からなるダイポールアンテナとに接続される。アンテナ給電回路は位相差給電線201,202と、バラン301とを備える。
【0003】
位相差給電線201,202は、2つのダイポールアンテナを電気的に接続する。位相差給電線201は放射素子101,103に電気的に接続され、位相差給電線202は放射素子102,104に電気的に接続される。バラン301は、図示しない同軸ケーブルと位相差給電線201,202とに電気的に接続される。
【0004】
図27は、図26に示したバラン301のイメージ図である。図28は、図27に示したバラン301の等価回路図である。図27および図28を参照して、バラン301は、フェライトのメガネコア65と、1対の絶縁導線66,67とを備える。絶縁導線66,67はメガネコア65に巻付けられている。図28に示されるように、絶縁導線67の一方端は位相差給電線202側のアンテナ側の端子63に電気的に接続され、絶縁導線67の他方端は同軸ケーブル側の端子68に電気的に接続されている。絶縁導線66の一方端は位相差給電線201側の端子64に電気的に接続され、絶縁導線66の他方端は同軸ケーブル側の端子69に電気的に接続されている。
【0005】
同軸ケーブル110は、内部導体111と、外部導体(編組線)112とを有し、内部導体111と外部導体112とは絶縁体113によって絶縁されている。内部導体111はバラン301の端子68に電気的に接続され、外部導体112は、バラン301の端子69に電気的に接続される。バラン301は、75Ω(あるいは50Ω)の特性インピーダンスを有する同軸ケーブル(不平衡)と、300Ωの特性インピーダンスを有するダイポールアンテナ(平衡)とを接続する際に、インピーダンス変換および平衡−不平衡変換を行なう。
【0006】
図27に示したバラン301を用いる場合、以下に記載するような課題がある。まず、バランを製造するために、絶縁導線をメガネコアに巻き付けるための工程が必要となる。このためバランを製造するたびに性能が安定しない可能性がある。さらに、バランを設置する際に絶縁導線の引き回し方に依存してバランの特性が異なる可能性もある。すなわちメガネコアを用いた従来のバランは、製造の容易性および特性の点での課題を有している。
【0007】
特開昭64−89701号公報(特許文献1)は、基板に形成されたバラン装置を開示する。このバラン装置は、蛇行状の二分の一波長線路の内側導体と、その内側導体の一方の側に密接配置された櫛歯状の外側導体と、上記内側導体の他方の側に密接配置された櫛歯状のシールド導体とを備える。内側導体、外側導体およびシールド導体は、基板の同一の主表面に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭64−89701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来のアンテナ給電回路ではメガネコアバランが使用されているため、配線の引き回しによって特性が変動する。また、コアと線材とを使用してバランを製造するためにバランの部品点数が増えるので、結果的に、アンテナ給電回路の部品点数が増える。さらに、メガネコアバランをアンテナ給電回路に実装するための作業が必要である。
【0010】
特開昭64−89701号公報(特許文献1)によれば、バランのみが基板に形成されている。したがってアンテナ給電回路を実現するためには、たとえば給電線といったバラン以外の構成要素を当該バランに接続しなければならない。さらに、バランと給電線とを別個に形成しなければならないため、部品点数が多くなる。
【0011】
本発明の目的は、性能および製造効率に優れたアンテナ給電回路、およびその給電回路を備えるアンテナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある局面に係るアンテナ給電回路は、誘電体基板と、導体によって誘電体基板に各々形成され、2つのアンテナに位相差給電を行なうための第1および第2の給電線と、導体によって誘電体基板に形成され、第1および第2の給電線に電気的に接続されたバランとを備える。
【0013】
好ましくは、アンテナ給電回路は、第1の給電線と第2の給電線との間に電気的に接続されたコンデンサをさらに備える。
【0014】
好ましくは、誘電体基板は、第1の主表面と、第1の主表面に対して反対側に位置する第2の主表面とを有する。コンデンサは、第1の主表面に配置された第1の電極と、第1の電極と対向して第2の主表面に配置された第2の電極とを含む。
【0015】
好ましくは、コンデンサは、第1および第2の電極を含む。第1および第2の電極は、誘電体基板の同一の主表面において互いに対向して配置される。
【0016】
好ましくは、バランは、スプリットバランである。
好ましくは、バランは、誘電体基板の2つの主表面の一方に形成される。第1および第2の給電線は、誘電体基板の2つの主表面の他方に形成される。
【0017】
好ましくは、アンテナ給電回路は、バランを同軸線路の内部導体および外部導体に接続するための第3および第4の給電線をさらに備える。第3および第4の給電線は、誘電体基板の同一の主表面に形成される。第3および第4の給電線の各々は、第3および第4の給電線の一方から他方に突出することで第3の給電線と第4の給電線との間の間隔を狭めるように構成された突出部を有する。
【0018】
好ましくは、バランは、櫛歯状に形成され、同軸線路の内部導体に電気的に接続された第1の導体と、第1の導体の外側に第1の導体に沿って櫛歯状に形成されることにより複数の折曲部を有する第2の導体と、第1の導体に対して第2の導体と反対側に位置し、第1の導体の外側に第1の導体に沿って櫛歯状に形成されることにより複数の折曲部を有する第3の導体とを含む。第2の導体の一端は、第1の導体に接続される。第3の導体は、第2の導体に接続される。第2の導体の複数の折曲部のうち、少なくとも内部導体に最も近い位置にある折曲部の線幅は、第2の導体の他の部分の最も小さい部分の線幅よりも小さい。
【0019】
好ましくは、アンテナ給電回路は、同軸線路の内部導体と電気的に接続される信号経路に挿入された直流カットコンデンサをさらに備える。
【0020】
本発明の他の局面に係るアンテナは、上記のいずれかのアンテナ給電回路と、アンテナ給電回路の第1および第2の給電線にそれぞれ接続された第1および第2の放射素子とを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、性能および製造効率に優れるとともにコスト面でも優れるアンテナ給電回路、およびその給電回路を備えるアンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係るアンテナ給電回路を搭載したアンテナの概略図である。
【図2】実施の形態1に係るアンテナ給電回路を概略的に示した図である。
【図3】実施の形態1に係るアンテナ給電回路が有する位相差給電線を説明するための図である。
【図4】実施の形態1に係るアンテナ給電回路を模式的に示した図である。
【図5】図4に示したスプリットバランの模式図である。
【図6】図5に示したスプリットバランの等価回路図である。
【図7】実施の形態2に係るアンテナ給電回路の概略図である。
【図8】図7に示したパターンコンデンサを説明するための図である。
【図9】実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する14素子アンテナの利得の周波数特性を示した図である。
【図10】実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する14素子アンテナのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示した図である。
【図11】実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する14素子アンテナの前後比の周波数特性を示した図である。
【図12】実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する14素子アンテナの半値幅の周波数特性を示した図である。
【図13】実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する20素子アンテナの利得の周波数特性を示した図である。
【図14】実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する20素子アンテナのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示した図である。
【図15】実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する20素子アンテナの前後比の周波数特性を示した図である。
【図16】実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する20素子アンテナの半値幅の周波数特性を示した図である。
【図17】実施の形態3に係るアンテナ給電回路の概略図である。
【図18】パターンコンデンサの配置の他の例を示した図である。
【図19】実施の形態2および実施の形態3の変形例を示した図である。
【図20】実施の形態4に係るアンテナ給電回路の概略図である。
【図21】F座型端子を実装したアンテナ給電回路の構成例を示した図である。
【図22】実施の形態5に係るアンテナ給電回路の概略図である。
【図23】図22に示した避雷回路35の拡大図である。
【図24】実施の形態5に係るアンテナ給電回路の別の構成例を示した図である。
【図25】図24に示した領域12Eの拡大図である。
【図26】従来のアンテナ給電回路の構成を概略的に示した図である。
【図27】図26に示したバラン301のイメージ図である。
【図28】図27に示したバラン301の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0024】
図1は、本発明の実施の形態に係るアンテナ給電回路を搭載したアンテナの概略図である。図1を参照して、アンテナ100は、放射素子1〜4と、アンテナ給電回路を内蔵した給電部5とを備える。放射素子1,2は半波長ダイポールアンテナを構成する。同じく放射素子3,4は半波長ダイポールアンテナを構成する。アンテナ100は、2つのダイポールアンテナによって構成された位相差給電方式のアンテナである。アンテナ100に導波器および反射器の少なくとも一方を追加することによって八木式アンテナを構成することも可能である。
【0025】
この実施の形態では、2つのダイポールアンテナは、日本のUHFテレビ放送の周波数帯(約470〜約710MHz)の電波を好適に受信可能なように構成される。
【0026】
次に、図面を参照しつつ、アンテナ給電回路の各実施形態について詳細に説明する。
[実施の形態1]
図2は、実施の形態1に係るアンテナ給電回路を概略的に示した図である。図2を参照して、給電部5は、アンテナ給電回路10と、接続部1A〜4Aとを含む。
【0027】
アンテナ給電回路10は、誘電体基板11と、バラン(平衡−不平衡変換器)12とを含む。バラン12は、平板状の導体によって、誘電体基板11の主表面11Aに形成される。位相差給電線13,14は、平板状の導体であり、バラン12が形成された主表面11Aとは反対側の誘電体基板11の主表面に形成される。バラン12と位相差給電線13,14とは、給電線15,16および電極17,18によって電気的に接続される。給電線15,16は平板状の導体であり、バラン12とともに誘電体基板11の主表面11Aに形成される。「平板状」とは、誘電体基板の主表面に垂直な方向の長さが、誘電体基板の主表面に平行な方向の長さに比べて小さい形状を意味する。たとえば平板状の導体とは、金属箔で形成された導体パターンである。ただし、誘電体基板の主表面に形成することが可能であれば、導体の形状は平板状と限定されるものではない。
【0028】
さらに誘電体基板11には、同軸ケーブル(図示せず)と、バラン12とを電気的に接続するための導体パターン31,32が形成される。なお、誘電体基板に形成される導体パターンも「平板状の導体」である。
【0029】
図3は、実施の形態1に係るアンテナ給電回路が有する位相差給電線を説明するための図である。図2および図3を参照して、誘電体基板11の他方の主表面11Bに位相差給電線13,14が形成される。位相差給電線13の一方端は、誘電体基板11を貫通して形成される電極17によって給電線15と電気的に接続される。位相差給電線14の一方端は、誘電体基板11を貫通して形成される電極18によって給電線16と電気的に接続される。
【0030】
電極17は接続部2Aと電気的に接続される(図2参照)。したがって位相差給電線13は電極17および接続部2Aを介して放射素子2に電気的に接続される。同様に電極18は接続部1Aと電気的に接続される(図2参照)。したがって位相差給電線14は電極18および接続部1Aを介して放射素子1に電気的に接続される。
【0031】
位相差給電線13の他方端は、誘電体基板11を貫通して形成される電極19によって接続部4Aと電気的に接続される。したがって、位相差給電線13が電極19および接続部4Aを介して放射素子4に電気的に接続される(図2参照)。同様に、位相差給電線14の他方端は、誘電体基板11を貫通して形成される電極20によって接続部3Aと電気的に接続される。したがって、位相差給電線14が電極20および接続部3Aを介して放射素子3に電気的に接続される(図2参照)。
【0032】
図4は、実施の形態1に係るアンテナ給電回路を模式的に示した図である。図4を参照して、バラン12は、導体パターン12A,12B1,12B2,12C1,12C2を備える。導体パターン12A,12B1,12B2,12C1,12C2は、誘電体基板11の主表面11Aに形成される。導体パターン12B1,12B2は、導体パターン12Dにより接続される。導体パターン12Dは、主表面11Aと反対側に位置する誘電体基板11の主表面(図3に示す主表面11B)に形成される。
【0033】
この実施の形態では、バラン12はスプリットバランである。図4に示したスプリットバランは、たとえばプリント基板の製造技術を用いて容易に実現可能である。
【0034】
同軸ケーブル110の内部導体111は、導体パターン31に電気的に接続される。導体パターン31は導体パターン12Aに接続される。同軸ケーブル110の外部導体112は、導体パターン32に接続される。導体パターン32は、導体パターン12B2に接続される。導体パターン12B2は、導体パターン12Dによって導体パターン12B1に接続される。したがって、導体パターン32は、導体パターン12B1に電気的に接続される。
【0035】
図5は、図4に示したスプリットバランの模式図である。図4および図5を参照して、導体パターン12A,12B1,12B2,12C1,12C2は櫛歯状に形成される。導体パターン12B1,12B2は、導体パターン12Aと近接して導体パターン12Aの外側に配置される。したがって、図4に示されるように、導体パターン12B1,12B2の各々は複数の折曲部を有する。折曲部とは直線状の導体の延在方向が略90°変化する部分であり、導体パターン12Aのコーナー部分に対向する部分である。また、図4に示されるように、導体パターン12B2は、導体パターン12Aに対して導体パターン12B1と反対側に位置する。導体パターン12B1の一端は導体パターン12Aに接続される。
【0036】
図5には、導体パターン12C1,12C2は示されていない。しかし図4に示されるように、導体パターン12C1は導体パターン12B1と近接して導体パターン12B1の外側に配置される。導体パターン12C2は導体パターン12B2と近接して導体パターン12B2の外側に配置される。
【0037】
同軸ケーブル110の内部導体111は、導体パターン12Aに電気的に接続される。同軸ケーブル110の外部導体112は、導体パターン12B1,12B2に電気的に接続される。2つの位相差給電線の一方(たとえば図3に示した位相差給電線14)は、導体パターン12Aに電気的に接続される。2つの位相差給電線の他方(たとえば図3に示した位相差給電線13)は、導体パターン12B1,12B2に電気的に接続される。位相給電線側の端子から同軸ケーブル側の端子までの長さは約λ/4(λは使用周波数帯の中心波長)に設定される。この長さは誘電体基板11の誘電率に応じて調整されることもある。
【0038】
図6は、図5に示したスプリットバランの等価回路図である。図6に示されるように、スプリットバランは、導体パターン12Aと導体パターン12B1との間に等価的に形成されたコンデンサと、導体パターン12Aと導体パターン12B2との間に等価的に形成されたコンデンサと、導体パターン12B1,12B2に等価的に形成されたコイルとを有する。
【0039】
実施の形態1によれば、バランと位相差給電線とが、平板状の導電体によって同一の誘電体基板に形成される。これにより、アンテナ給電回路の部品点数を削減することができる。アンテナ給電回路の部品点数を削減することによってコストに優れたアンテナ給電回路を実現できる。
【0040】
従来の構成の場合、図23に示されるように、バランはメガネコアに導線を巻きつけることによって製造される。このためバランの特性が安定しない可能性がある。さらに、バランと位相差給電線とが別個に構成されている。このため、それら2つの素子を接続するための作業も発生する。このときに、バランと位相差給電線とを接続するための導線の引き回しによって、バランの特性が安定しない可能性がある。
【0041】
これに対して実施の形態1によれば、誘電体基板に形成されたバランが用いられるので、コアに導線を巻きつけるといった、バランの特性の変動をもたらす要因をなくすことができる。したがって、アンテナ給電回路の特性を安定化させることができる。さらに、同一の誘電体基板にバランと位相差給電線とが形成されるとともに、これらが互いに電気的に接続されている。したがって、アンテナ給電回路の組立作業を容易にすることができる。
【0042】
以上の理由によって、実施の形態1によれば、性能および製造効率に優れたアンテナ給電回路を実現できる。さらに実施の形態1によれば、製造効率に優れたアンテナ給電回路を実現できるので、アンテナ給電回路のコストを低減できる。さらに実施の形態1によれば、このようなアンテナ給電回路を用いてアンテナを構成することにより、コスト、性能および製造効率に優れたアンテナを実現できる。
【0043】
[実施の形態2]
実施の形態2のアンテナ給電回路は、バランと位相差給電部との間にコンデンサを備える。この点において、実施の形態2は実施の形態1と異なる。
【0044】
図7は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路の概略図である。図7を参照して、実施の形態2に係るアンテナ給電回路10Aは、誘電体基板11に形成されるパターンコンデンサ21A,21Bをさらに備える点において実施の形態1に係るアンテナ給電回路10(図2参照)と異なる。パターンコンデンサ21A,21Bは、バラン12と位相差給電線13、14との間に設けられる。
【0045】
パターンコンデンサ21Aは、電極22Aと電極23Aとを有する。同様に、パターンコンデンサ21Bは、電極22Bと電極23Bとを有する。電極22A,22Bは、誘電体基板11の主表面11Aに形成される。電極22A,22Bは、給電線15および電極17を介して位相差給電線13に電気的に接続される。電極23A,23Bは、誘電体基板11の反対側の主表面に形成される。「誘電体基板11の反対側の主表面」は図3に示した主表面11Bに対応する。電極23A,23Bは、給電線16および電極18を介して位相差給電線14に電気的に接続される。したがって、パターンコンデンサ21A,21Bの各々は、位相差給電線13,14の間に電気的に接続されている。
【0046】
図7では、誘電体基板11を平面視した場合に、電極22Aと電極23Aとが相対的にずれているように示されている。これは電極22Aと電極23Aとの両方を図示するためである。誘電体基板11を平面視した場合に、電極22Aと電極23Aとが重なりあっていてもよい。電極22B,23Bの配置についても同様である。さらに、パターンコンデンサの個数は2個に限定されるものではなく、たとえば1個でもよいし、3個以上であってもよい。また、電極22A,23Aの形状および電極22B,23Bの形状は方形に限定されるものではなく、たとえば円形でもよく、任意の多角形でもよい。
【0047】
なお、アンテナ給電回路10Aの他の部分の構成については、図2に示したアンテナ給電回路10の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0048】
図8は、図7に示したパターンコンデンサを説明するための図である。図7および図8を参照して、パターンコンデンサ21は、パターンコンデンサ21A,21Bの各々と同じ構造を有する。パターンコンデンサ21は、誘電体基板11の一方の主表面に形成された電極22と、誘電体基板11の他方の主表面に形成される電極23とを備える。誘電体基板11を平面視したときに電極22と電極23との間で相互に重なりあう部分の面積、誘電体基板11の誘電率および誘電体基板11の厚みtによってパターンコンデンサ21の容量値が決定される。
【0049】
パターンコンデンサ21A,21Bは、インピーダンスを補正する機能を担う。パターンコンデンサをバラン12と位相差給電線13,14との間に設けることによって、アンテナの性能の改善を図ることができる。
【0050】
次に、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有するアンテナの特性について説明する。以下に説明する特性は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路をUHFアンテナに適用した場合の特性である。特性の測定に用いたUHFアンテナは、いわゆる八木式アンテナであり、図1に示したアンテナ100に加え、アンテナ100の前方(電波の到来方向)に配置された導波器と、アンテナ100の後方に配置された反射器とを備える。また、以下に示す素子の数は、導波器、放射器(ダイポールアンテナ)および反射器の総数である。
【0051】
図9は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する14素子アンテナの利得の周波数特性を示した図である。利得が高いほどアンテナの性能としては優れている。図9を参照して、曲線G1は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を14素子のUHFアンテナに適用した場合の利得の周波数特性を示す。曲線G2は、従来のアンテナ給電回路(図23に示したアンテナ給電回路;以下も同様)を14素子のUHFアンテナに適用した場合の利得の周波数特性を示す。実施の形態2に係るアンテナ給電回路を用いることによって、470MHz〜770MHzの周波数範囲において約7.5dB〜約12.5dBの利得が得られた。実施の形態2に係るアンテナ給電回路を用いることで、従来のアンテナ給電回路の場合と比較して利得のピーク値が約0.5dB〜約1dBアップした。この理由は、バランにメガネコアを使用していないためにバランでの配線での損失が低減したことに加え、バランと位相差給電線とを基板上の配線で接続することによる損失の低減によるものと考えられる。
【0052】
図10は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する14素子アンテナのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示した図である。VSWRが低いほどアンテナの性能としては優れている。図10を参照して、曲線V1は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を14素子のUHFアンテナに適用した場合のVSWRの周波数特性を示す。曲線V2は、従来のアンテナ給電回路を14素子のUHFアンテナに適用した場合のVSWRの周波数特性を示す。いずれの場合にも、VSWRは、実用的なレベル(ほぼ2.0以下)となっている。
【0053】
図11は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する14素子アンテナの前後比の周波数特性を示した図である。前後比とは、アンテナの前方の放射強度とアンテナの後方からの妨害波の強度との比率を表す数値である。前後比の値が大きいほど、アンテナ後方からの妨害波の排除能力が強い事を示し、アンテナが高性能であると言える。図11を参照して、曲線F1は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を14素子のUHFアンテナに適用した場合の前後比の周波数特性を示す。曲線F2は、従来のアンテナ給電回路を14素子のUHFアンテナに適用した場合の前後比の周波数特性を示す。実施の形態2に係るアンテナ給電回路を用いることによって、470MHz〜770MHzの周波数範囲における前後比は約18.0dB〜22.6dBとなった。また、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を用いることによって、従来のアンテナ給電回路の場合と比較して、前後比が高められることが分かる。
【0054】
図12は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する14素子アンテナの半値幅の周波数特性を示した図である。半値幅は、アンテナの主軸方向(電波到来方向)の利得より電圧で70%下がる幅の角度であり、この値が小さいほど指向性が強いことを意味する。図12を参照して、曲線H1は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を14素子のUHFアンテナに適用した場合の半値幅の周波数特性を示す。曲線H2は、従来のアンテナ給電回路を14素子のUHFアンテナに適用した場合の半値幅の周波数特性を示す。470MHz〜770MHzの周波数範囲において半値幅はほぼ同じ程度であり、約31.8度〜約56.9度の範囲内である。このことは、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を用いても、アンテナの指向性に大きな影響が生じないことが分かる。
【0055】
図13は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する20素子アンテナの利得の周波数特性を示した図である。図13を参照して、曲線G3は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を20素子のUHFアンテナに適用した場合の利得の周波数特性を示す。曲線G4は、従来のアンテナ給電回路を20素子のUHFアンテナに適用した場合の利得の周波数特性を示す。実施の形態2に係るアンテナ給電回路を用いることによって、470MHz〜770MHzの周波数範囲において、約7.8dB〜約13.5dBの利得が得られた。特に、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を用いることによって、従来のアンテナ給電回路に比較して、利得のピーク値が約0.5dBアップした。
【0056】
図14は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する20素子アンテナのVSWR(電圧定在波比)の周波数特性を示した図である。図14を参照して、曲線V3は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を20素子のUHFアンテナに適用した場合のVSWRの周波数特性を示す。曲線V4は、従来のアンテナ給電回路を20素子のUHFアンテナに適用した場合のVSWRの周波数特性を示す。いずれの場合にも、VSWRは、実用的なレベル(ほぼ2.0以下の値)となっている。
【0057】
図15は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する20素子アンテナの前後比の周波数特性を示した図である。図15を参照して、曲線F3は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を20素子のUHFアンテナに適用した場合の前後比の周波数特性を示す。曲線F4は、従来のアンテナ給電回路を20素子のUHFアンテナに適用した場合の前後比の周波数特性を示す。実施の形態2に係るアンテナ給電回路を用いることによって、前後比は約18.5dB〜約22.7dBとなる。
【0058】
図16は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を有する20素子アンテナの半値幅の周波数特性を示した図である。図16を参照して、曲線H3は、実施の形態2に係るアンテナ給電回路を20素子のUHFアンテナに適用した場合の半値幅の周波数特性を示す。曲線H4は、従来のアンテナ給電回路を20素子のUHFアンテナに適用した場合の半値幅の周波数特性を示す。470MHz〜770MHzの周波数範囲において半値幅はほぼ同じ程度であり、約27.3度〜約54.1度の範囲内である。
【0059】
以上のように実施の形態2によれば、アンテナ給電回路は、実施の形態1に係る構成に加えて、バランと位相差給電線との間に配置されたコンデンサをさらに備える。これにより、インピーダンスが補正されるためアンテナの性能を高めることができる。
【0060】
[実施の形態3]
実施の形態3のアンテナ給電回路は、バランと位相差給電部との間にコンデンサを配置する点において実施の形態2と同様である。ただし、このコンデンサの構成の点において、実施の形態3は実施の形態2と異なる。
【0061】
図17は、実施の形態3に係るアンテナ給電回路の概略図である。図17を参照して、実施の形態3に係るアンテナ給電回路10Bは、給電線15,16の間に交互に配置された複数の電極25,26によって構成されたパターンコンデンサ27を備える点において実施の形態2に係るアンテナ給電回路10A(図7参照)と異なる。複数の電極25は給電線15に接続される。複数の電極26は給電線16に接続される。したがって複数の電極25,26は、誘電体基板11の同一の主表面(主表面11A)に形成される。電極25,26同士が互いに対向する部分、電極25と給電線16とが互いに対向する部分、電極26と給電線15とが互いに対向する部分によってパターンコンデンサ27が形成される。
【0062】
複数の電極25は、給電線15および電極17を介して位相差給電線13に電気的に接続される。複数の電極26は、給電線16および電極18を介して位相差給電線14に電気的に接続される。すなわち、複数のパターンコンデンサ27の各々は、位相差給電線13,14の間に電気的に接続される。図17には電極25,26の形状の一例として矩形を示しているが、電極25,26の形状は矩形に限定されるものではない。たとえば電極25,26の形状が任意の多角形であってもよい。また、電極25,26の輪郭が円弧、正弦波といった曲線であってもよい。
【0063】
なお、アンテナ給電回路10Aの他の部分の構成については、図2に示したアンテナ給電回路10の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0064】
実施の形態2と同じく、実施の形態3によれば、バラン12と位相差給電線13,14との間にコンデンサが設けられる。このコンデンサは、インピーダンスを補正する機能を担う。したがって実施の形態3によれば、実施の形態2と同様にアンテナの性能を高めることができる。
【0065】
なお、電極25,26の組合わせからなるパターンコンデンサ27は1箇所に配置されるものと限定されない。図18は、パターンコンデンサの配置の他の例を示した図である。図18に示されるように、アンテナ給電回路10B1では、複数のパターンコンデンサ27がブロックB1,B2に分割される。ブロックB1,B2は誘電体基板11の主表面11Aに分離して配置される。すなわち複数のパターンコンデンサ27は、誘電体基板11の主表面11A上の2箇所に配置されている。図18では、2つのブロックを示したがブロックの個数は2個に限定されるものではない。
【0066】
(実施の形態2,3の変形例)
図19は、実施の形態2および実施の形態3の変形例を示した図である。図19を参照して、アンテナ給電回路10Cは、図7に示したパターンコンデンサ21A,21Bあるいは図17に示したパターンコンデンサ27に代えて、チップコンデンサ28,29を備える。チップコンデンサの個数は少なくとも1つであればよく、2個に限定されない。アンテナ給電回路10Cの他の部分の構成は、図7に示したアンテナ給電回路10Aの対応する部分の構成あるいは図17に示したアンテナ給電回路10Bの対応する部分の構成、あるいは図18に示したアンテナ給電回路10B1の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0067】
チップコンデンサ28の一方端は給電線15に電気的に接続される。チップコンデンサ28の他方端は給電線16に電気的に接続される。チップコンデンサ29の一方端は給電線15に電気的に接続される。チップコンデンサ29の他方端は給電線16に電気的に接続される。
【0068】
給電線15は、電極17を介して位相差給電線13に接続される。給電線16は、電極18を介して位相差給電線14に接続される。したがって、チップコンデンサ28,29の各々は、位相差給電線13,14の間に電気的に接続される。変形例の構成によっても、バラン12と位相差給電線13,14との間にコンデンサが設けられるので、インピーダンスを補正できる。したがって図19に示された構成によっても、アンテナの性能を高めることができる。
【0069】
なお、図26に示されるように、従来のアンテナ給電回路では、空中配線のためにバランと位相差給電線との間にコンデンサを配置することが容易ではない。しかしながら、本発明の実施の形態では、バランと位相差給電線とが同一の誘電体基板に形成されるため、図19に示されるようにチップコンデンサを容易に配置することができる。
【0070】
[実施の形態4]
図20は、実施の形態4に係るアンテナ給電回路の概略図である。図20を参照して、実施の形態4に係るアンテナ給電回路10Dは、直流カットコンデンサ41を備える点において実施の形態1に係るアンテナ給電回路10(図4参照)と異なる。
【0071】
図20に示された例では、導体パターン12Aは2つの導体パターン12A1,12A2に分断されている。直流カットコンデンサ41の一方端は導体パターン12A1に電気的に接続され、直流カットコンデンサ41の他方端は、導体パターン12A2に電気的に接続される。
【0072】
導体パターン12A1は、導体パターン31を介して同軸ケーブル110の内部導体111に接続される。導体パターン12A1,12A2および導体パターン12A1,12A2に接続された直流カットコンデンサ41は、同軸ケーブル110の内部導体111に接続される信号経路を形成する。すなわち、別の言い方をすれば、直流カットコンデンサ41は、同軸ケーブル110の内部導体111に接続される信号経路に設けられる。アンテナ給電回路10Dの他の部分の構成は、アンテナ給電回路10の対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0073】
(実施の形態4の変形例)
図21は、F座型端子を実装したアンテナ給電回路の構成例を示した図である。図21を参照して、アンテナ給電回路10Eにおいて、誘電体基板11にはF座型端子51が実装される。F座型端子51は、同軸ケーブルの内部導体に接続される心線側端子52と、同軸ケーブルの外部導体に接続されるアース側端子53とを有する。心線側端子52は、たとえばハンダによって導体パターン54Aと電気的に接続される。アース側端子53は、たとえばハンダによって導体パターン54Bと電気的に接続される。
【0074】
さらに、誘電体基板11には、F座型端子51と導体パターン31,32A,32Bとの間の領域にパターンコンデンサ55が形成される。パターンコンデンサ55はインピーダンス調整用コンデンサとして機能する。
【0075】
パターンコンデンサ55は、誘電体基板11の主表面11Aに形成される電極56と、主表面11Aの反対側に位置する主表面(図3の主表面11Bに相当)に形成される電極57とを有する。誘電体基板11を平面視した場合、電極56,57は互いに重なる。ただし、電極56,57を分かりやすく示すため、図21では電極56,57は互いにずらして示されている。電極56は、F座型端子51の導体パターン54Bと接続される。さらに、電極56は、導体パターン32A,32Bと接続される。
【0076】
一方、電極57は、誘電体基板11を貫通する電極(図示せず)によってF座型端子51の導体パターン54Aと接続される。さらに、電極57は、誘電体基板11を貫通する電極(図示せず)によって導体パターン31と接続される。
【0077】
導体パターン31は、バラン12の導体パターン12Aと接続される。導体パターン32Aは、バラン12の導体パターン12B1と接続される。導体パターン32Bは、バラン12の導体パターン12B2と接続される。
【0078】
実施の形態4によれば、直流カットコンデンサによって、同軸ケーブル110の内部導体111に接続される信号経路において直流成分を遮断することができる。
【0079】
なお、直流カットコンデンサ41の配置は図20あるいは図21に示されたように限定されるものではない。上述のように直流カットコンデンサ41は、同軸ケーブル110の内部導体111に接続された信号経路に配置されていればよい。したがって、たとえば導体パターン31を2つに分断して、直流カットコンデンサ41の一方端および他方端を2つに分断された導体パターン31のそれぞれに電気的に接続してもよい。
【0080】
[実施の形態5]
図22は、実施の形態5に係るアンテナ給電回路の概略図である。図22を参照して、実施の形態5に係るアンテナ給電回路10Fは、同軸ケーブル110とバラン12との間に避雷回路35が形成されている点において実施の形態4に係るアンテナ給電回路10D(図20参照)と異なる。なお、アンテナ給電回路10Fの他の部分の構成は、アンテナ給電回路10Dの対応する部分の構成と同様であるので以後の説明は繰り返さない。
【0081】
図23は、図22に示した避雷回路35の拡大図である。図23を参照して、避雷回路35は、導体パターン31に形成された突出部36と、導体パターン32に形成された突出部37とによって構成される。突出部36は導体パターン31から導体パターン32に向けて突出するように形成される。一方、突出部37は導体パターン32から導体パターン31に向けて突出するように形成される。突出部36,37の先端同士は対向している。したがって、突出部36,37の間の間隔は、導体パターン31,32の他の部分の間の間隔dに比較して著しく小さい。
【0082】
この構成によれば、同軸ケーブル110を介して導体パターン31,32に重畳した雷あるいはサージを、突出部36,37の間のギャップ部分において放電させる。避雷回路35は、バリスタあるいはアレスタを導体パターンによって実現したものである。
【0083】
実施の形態5に係る避雷回路35は、アンテナ給電回路10Fだけでなく、既に説明したアンテナ給電回路10,10A〜10E,10B1のいずれにも適用することができる。
【0084】
以上のように実施の形態5によれば、避雷回路35によってアンテナ給電回路10を雷あるいはサージ等から保護することができる。
【0085】
なお、サージ保護のための構成は、図22および図23に示した構成に限定されるものではない。図24は、実施の形態5に係るアンテナ給電回路の別の構成例を示した図である。図24を参照して、アンテナ給電回路10Gは、避雷回路35および直流カットコンデンサ41が省略されている点においてアンテナ給電回路10Fと相違する。さらに、領域12Eにおいて導体パターン12B1が加工されている点においてアンテナ給電回路10Gはアンテナ給電回路10Fと相違する。領域12Eは、導体パターン12B1の複数の折曲部のうち、同軸ケーブル110の内部導体111に最も近い位置にある折曲部である。
【0086】
図25は、図24に示した領域12Eの拡大図である。図24および図25を参照して、領域12Eにおける導体パターン12B1(すなわち折曲部)の外側のコーナーが、導体パターン12B1の直線状に延びる部分に対して略45°にカットされている。これにより、領域12Eにおける導体パターン12B1の線幅が、導体パターン12B1の他の部分の最小の線幅より小さくなる。一般的に誘電体基板上の導体パターンの厚みは略同じであると考えられるので、導体パターンの線幅を小さくすることで導体パターンの断面積が小さくなる。すなわち、この実施の形態では、領域12Eにおける導体パターン12B1の断面積が、導体パターン12B1の他の部分の断面積の約1/2となる。したがって、領域12Eにおける導体パターン12B1の抵抗は、導体パターン12B1の他の部分の抵抗よりも大きくなる(約2倍となる)。
【0087】
同軸ケーブル110の内部導体111に雷サージが重畳した場合、内部導体111から導体パターン32を通じて導体パターン12に雷サージが伝達する可能性がある。このような場合、導体パターン12B1においても、同軸ケーブル110の内部導体111に近い側(導体パターン31,32が配置された側)から大きな電流が流入する。導体パターン12B1の複数の折曲部のうち、内部導体111に最も近い位置にある折曲部(領域12E)の導体パターン12B1の抵抗値は、導体パターン12B1の他の部分の抵抗値に比べて高い。したがって、領域12Eにおいて導体パターン12B1を溶断させることができる。
【0088】
バラン12の一部分である導体パターン12Aと導体パターン12B1との間の間隙で構成される先端短絡1/4波長伝送線路は、不平衡電流成分を遮断するために使用周波数範囲では、内部導体111に最も近い位置から見た伝送線路インピーダンスが略無限大になっている。導体パターン12B1の領域12Eが溶断することによって、不平衡電流成分の遮断が不十分となるためバラン12の特性の劣化が生じる。しかし内部導体111にできるだけ近い位置で導体パターン12B1を溶断させることによって、バラン12の主要部分の断線を避けることができる。あわせて導体パターン12Aと導体パターン12B1との間の間隙で形成される先端短絡1/4波長伝送線路の、内部導体111に最も近い位置から見た伝送線路インピーダンスは、導体パターン12B1の領域12Eが溶断した後においても略無限大である。したがって、バランの特性に大きな変化を生じさせないようにすることができる。領域12Eが遮断した後でも、導体パターン12Aと導体パターン12B1との間の間隙で構成される伝送線路は存続するので、同軸ケーブル110と位相差給電線13,14との接続を確保することができる。
【0089】
導体パターン12B1の外側のコーナーを、導体パターン12B1の直線状に延びる部分に対して略45°にカットするという加工の対象となる箇所は、領域12Eに限定されるものではない。領域12Eに加えて、領域12Eの次に同軸ケーブル110の内部導体111に近い、導体パターン12B1の折曲部(図24において領域12Fで示す)にも同様の加工が施されてもよい。
【0090】
また、導体パターン12B1の折曲部の領域12E,12Fのみでなく、領域12Eと領域12Fとの中間部分に、もしくは、導体パターン12B1で同軸ケーブル110の内部導体111に近い部分と領域12Eとの中間部分に、その断面積が他の部分の断面積の約1/2となるように導体パターンの幅を狭めた領域を設けてもよい。
【0091】
また、上述した導体パターン12B1の加工は、アンテナ給電回路10,10A〜10E,10B1のいずれにも適用することができる。また、上述の説明では、導体パターンの幅を狭めた部分の断面積は、他の部分の断面積の1/2とした。ただし、他の部分よりも断面積が小さく、所定の雷サージ電流が流れたときに、他の部分に先立って溶断するようにすればよく、導体パターンの幅を狭めた領域の断面積を他の部分の断面積の1/2に限定する必要はない。
【0092】
なお、上記の各実施の形態では、平面状の導体によって形成されるバランの一例としてスプリットバランを示した。しかしながら、平面状の導体によって形成されるバランはスプリットバランに限定されるものではなく、たとえばUバランであってもよい。
【0093】
また、上記の各実施の形態では、同軸ケーブル110の内部導体111は導体パターン31を介してバラン12の導体パターン12A(第1の導体)に接続され、同軸ケーブル110の外部導体112は導体パターン32(および導体パターン12D)を介してバラン12の導体パターン12B1(第2の導体)および導体パターン12B2(第3の導体)に接続される。導体パターン31,32をより短くするように、同軸ケーブル110の配置、誘電体基板11上のバラン12の配置等を、上記の各実施の形態および図面(たとえば図4)に示した配置から変更してもよい。
【0094】
また、同軸ケーブル110の内部導体111をバラン12の導体パターン12Aに直接接続し、同軸ケーブル110の外部導体112を導体パターン12B1,12B2に直接接続してもよい。この場合には、導体パターン31,32を不要とすることができる。
【0095】
同じく、導体パターン15,16をより短くするように、同軸ケーブル110の配置、誘電体基板11上のバラン12の配置等を、上記の各実施の形態および図面(図4等)に示した配置から変更してもよい。たとえば、バラン12のパターンが図4等に示されたパターンに対して左右反転したパターンであってもよい。この場合には、同軸ケーブル110を図4等の紙面左側に配置することで、同軸ケーブル110の内部導体111を導体パターン12Aに直接接続し、外部導体112を導体パターン12B1,12B2に直接接続することができる。さらに導体パターン15,16の長さを図4等に示されたパターンよりも短くすることができる。なお、このような構成によれば、同軸ケーブル110をバラン12に接続するために導体パターン31,32が必要であっても、導体パターン31,32を図4に示されたパターンよりも短くすることができる。
【0096】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
1〜4,101〜104 放射素子、1A〜4A 接続部、5 給電部、10,10A〜10G,10B1 アンテナ給電回路、11 誘電体基板、11A,11B 主表面、12,301 バラン、12A,12B1,12B2,12C1,12C2,12D,31,32,32A,32B,54A,54B 導体パターン、12E,12F 領域、13,14,201,202 位相差給電線、15,16 給電線、17〜20,22,22A,22B,23,23A,23B,25,26,56,57 電極、21,21A,21B,27,55 パターンコンデンサ、28,29 チップコンデンサ、35 避雷回路、36,37 突出部、41 直流カットコンデンサ、51 F座型端子、52 心線側端子、53 アース側端子、63,64,68,69 端子、66,67 絶縁導線、100 アンテナ、110 同軸ケーブル、111 内部導体、112 外部導体、113 絶縁体、B1,B2 ブロック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体基板と、
導体によって前記誘電体基板に各々形成され、2つのアンテナに位相差給電を行なうための第1および第2の給電線と、
導体によって前記誘電体基板に形成され、前記第1および第2の給電線に電気的に接続されたバランとを備える、アンテナ給電回路。
【請求項2】
前記第1の給電線と前記第2の給電線との間に電気的に接続されたコンデンサをさらに備える、請求項1に記載のアンテナ給電回路。
【請求項3】
前記誘電体基板は、第1の主表面と、前記第1の主表面に対して反対側に位置する第2の主表面とを有し、
前記コンデンサは、
前記第1の主表面に配置された第1の電極と、
前記第1の電極と対向して前記第2の主表面に配置された第2の電極とを含む、請求項2に記載のアンテナ給電回路。
【請求項4】
前記コンデンサは、第1および第2の電極を含み、
前記第1および第2の電極は、前記誘電体基板の同一の主表面において互いに対向して配置される、請求項2に記載のアンテナ給電回路。
【請求項5】
前記バランは、スプリットバランである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンテナ給電回路。
【請求項6】
前記バランは、前記誘電体基板の2つの主表面の一方に形成され、前記第1および第2の給電線は、前記誘電体基板の前記2つの主表面の他方に形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のアンテナ給電回路。
【請求項7】
前記バランを同軸線路の内部導体および外部導体に接続するための第3および第4の給電線をさらに備え、
前記第3および第4の給電線は、前記誘電体基板の同一の主表面に形成され、
前記第3および第4の給電線の各々は、前記第3および第4の給電線の一方から他方に突出することで前記第3の給電線と前記第4の給電線との間の間隔を狭めるように構成された突出部を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンテナ給電回路。
【請求項8】
前記バランは、
櫛歯状に形成され、同軸線路の内部導体に電気的に接続された第1の導体と、
前記第1の導体の外側に前記第1の導体に沿って櫛歯状に形成されることにより複数の折曲部を有する第2の導体と、
前記第1の導体に対して前記第2の導体と反対側に位置し、前記第1の導体の外側に前記第1の導体に沿って櫛歯状に形成されることにより複数の折曲部を有する第3の導体とを含み、
前記第2の導体の一端は、前記第1の導体に接続され、
前記第3の導体は、前記第2の導体に接続され、
前記第2の導体の複数の折曲部のうち、少なくとも前記内部導体に最も近い位置にある折曲部の線幅は、前記第2の導体の他の部分の最も小さい部分の線幅よりも小さい、請求項1〜6のいずれか1項に記載のアンテナ給電回路。
【請求項9】
同軸線路の内部導体と電気的に接続される信号経路に設けられる直流カットコンデンサをさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載のアンテナ給電回路。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のアンテナ給電回路と、
前記アンテナ給電回路の前記第1および第2の給電線にそれぞれ接続された第1および第2の放射素子とを備える、アンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−74508(P2013−74508A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212816(P2011−212816)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)