アンテナ装置およびそれを備えた受信機
【課題】干渉波を十分に除去可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】副アンテナ装置20は、可変移相器21〜2Kの位相を制御してアンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を順次変化させて干渉波を検出するとともに、干渉波の到来方向を検出する。そして、主アンテナ装置10は、副アンテナ装置20から干渉波を検出したことを示す干渉波検出信号を受けると、可変移相器11〜1Kの位相を制御して副アンテナ装置20から受けた干渉波の到来方向にヌルを形成した放射ビームを形成し、電波を受信する。
【解決手段】副アンテナ装置20は、可変移相器21〜2Kの位相を制御してアンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を順次変化させて干渉波を検出するとともに、干渉波の到来方向を検出する。そして、主アンテナ装置10は、副アンテナ装置20から干渉波を検出したことを示す干渉波検出信号を受けると、可変移相器11〜1Kの位相を制御して副アンテナ装置20から受けた干渉波の到来方向にヌルを形成した放射ビームを形成し、電波を受信する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナ装置およびそれを備えた受信機に関し、特に、干渉波を除去するアンテナ装置およびそれを備えた受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帯域外からの干渉波対策は、RF(Radio Frequency)フロントエンドへ加わる信号を減衰させるアッテネータ、または帯域外の干渉信号を減衰させるフィルタを用いて行なわれていた。
【0003】
しかし、前者では、所望波よりも干渉波の信号レベルが大きいときに、RFフロントエンドにおいて干渉波に歪みが生じない程度にRF信号を減衰させると、所望の信号が減衰することによりSNR(Signal to Noise Ratio)が不足するという問題がある。
【0004】
また、後者では、比較的近い周波数にある干渉波を十分に減衰させることが困難であったり、フィルタの挿入損失が問題となったり、その挿入損失を低減し、かつ、干渉波に対する減衰量を大きくすると、フィルタが大きくなり、コストが増大するという問題がある。
【0005】
更に、干渉波自体の強入力によるRFフロントエンドの歪みではなく、干渉波のスプリアス信号が問題となるときには、上述した2つの方式では、干渉を抑圧することができないという問題がある。
【0006】
干渉波自体のスプリアス信号の干渉に対して、干渉波の歪スペクトルのみの信号レベルを検出することによって干渉波のスプリアスに対するヌルステアリングを実現している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】藤元,堀,“ITS通信における干渉抑圧のためのBPF付きPIアダプティブアレー”,電子情報通信学会技術報告,vol.109,no.31,AP2009−31,pp.117−122,May 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1に記載された方法では、ヌルステアリングの精度が低いために干渉波を十分に除去することが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、干渉波を十分に除去可能なアンテナ装置を提供することである。
【0010】
また、この発明の別の目的は、干渉波を十分に除去可能なアンテナ装置を備えた受信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、アンテナ装置は、K(Kは2以上の整数)本のアンテナと、副アンテナ装置と、主アンテナ装置とを備える。副アンテナ装置は、K本のアンテナが受信した電波に基づいて所望波の周波数と異なる周波数を有する干渉波を検出するとともに干渉波の到来方向を検出し、干渉波を検出したことを示す干渉波検出信号と到来方向とを出力する。主アンテナ装置は、副アンテナ装置から干渉波検出信号を受けると、副アンテナ装置から受けた到来方向に基づいて、干渉波の到来方向にヌルを形成してK本のアンテナから電波を受信し、または干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くしてK本のアンテナから電波を受信する。
【0012】
好ましくは、副アンテナ装置は、K個の第1の可変移相器と、第1の制御部と、検出器とを含む。K個の第1の可変移相器は、K本のアンテナに対応して設けられる。第1の制御部は、K本のアンテナから放射されるビームの指向性が所望の角度間隔で複数の方向に変化するようにK個の第1の可変移相器を制御するとともに、ビームの指向性を1つの方向に設定する毎に設定した1つの方向を副アンテナ装置へ出力する。検出器は、ビームの指向性が任意の1つの方向に設定されたときにK本のアンテナによって受信された電波に基づいて干渉波を検出したか否かを判定し、干渉波を検出したとき干渉波検出信号を主アンテナ装置へ出力する干渉波検出処理を複数の方向の全てについて実行する。主アンテナ装置は、K個の第2の可変移相器と、第2の制御部とを含む。K個の第2の可変移相器は、K本のアンテナに対応して設けられる。第2の制御部は、副アンテナ装置から干渉波検出信号を受けると、干渉波検出信号を受けたときに副アンテナ装置から受けた1つの方向を干渉波の到来方向とし、到来方向に基づいて、干渉波の到来方向にヌルが形成されるようにK個の第2の可変移相器を制御し、または干渉波の到来方向における電波の受信強度が基準値よりも低くなるようにK個の第2の可変移相器を制御する移相制御を実行する。
【0013】
好ましくは、検出器は、K本のアンテナによって受信された電波をフーリエ変換し、そのフーリエ変換した電波に基づいて干渉波の周波数帯域における受信強度を検出し、その検出した受信強度が閾値よりも大きいとき干渉波を検出したと判定する。
【0014】
好ましくは、アンテナ装置は、送信部を更に備える。送信部は、移相制御が実行された状態でK本のアンテナを用いて所望の周波数を有する信号を送信する。
【0015】
また、この発明によれば、受信機は、アンテナ装置と、信号処理装置とを備える。アンテナ装置は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のアンテナ装置からなる。信号処理装置は、アンテナ装置の主アンテナ装置を介して受信電波を受け、その受けた受信電波をアナログ信号からデジタル信号に変換して受信信号処理を行なう。
【0016】
更に、この発明によれば、受信機は、アンテナ装置と、K個の受信処理回路とを備える。アンテナ装置は、請求項2に記載のアンテナ装置からなる。K個の受信処理回路は、K本のアンテナに対応して設けられ、各々が対応するアンテナによって受信された電波を復調する。検出器は、受信強度が第1の閾値よりも大きいとき干渉波検出信号を第2の制御部へ出力し、受信強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下であるとき副アンテナ装置の動作を停止したことを示す第1の停止信号を生成して第2の制御部へ出力し、受信強度が前記第2の閾値よりも大きく、かつ、第1の閾値以下であるとき、主アンテナ装置の動作を停止したことを示す第2の停止信号を生成して第2の制御部へ出力する。検出器は、受信強度が第2の閾値よりも大きく、かつ、第1の閾値以下であるとき、K本のアンテナをそれぞれK個の受信処理回路へ接続する。第2の制御部は、干渉波検出信号を検出器から受けると、移相制御を実行し、第1の停止信号を前記検出器から受けると、K本のアンテナが所望の指向性を形成するようにK個の第2の可変移相器を制御し、第2の停止信号を検出器から受けると、動作を停止する。
【発明の効果】
【0017】
この発明の実施の形態によるアンテナ装置においては、干渉波の到来方向が検出され、その検出された到来方向にヌルを形成して電波が受信される。また、この発明の実施の形態によるアンテナ装置においては、干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くして電波が受信される。その結果、干渉波の信号レベルが低減された状態で電波が受信される。
【0018】
従って、干渉波を十分に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態によるアンテナ装置の概略図である。
【図2】周波数帯域の概念図である。
【図3】放射ビームの概念図である。
【図4】他の放射ビームの概念図である。
【図5】図1に示すアンテナ装置における動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5に示すステップS1の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態による他のアンテナ装置の概略図である。
【図8】この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた受信機の概略図である。
【図9】この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた他の受信機の概略図である。
【図10】図9に示す受信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた更に他の受信機の概略図である。
【図12】図11に示す受信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
図1は、この発明の実施の形態によるアンテナ装置の概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態によるアンテナ装置100は、アンテナ1〜K(Kは2以上の整数)と、主アンテナ装置10と、副アンテナ装置20とを備える。
【0022】
アンテナ装置100は、例えば、ITS(Intelligent Transport System)通信に用いられるアンテナ装置である。そして、アンテナ装置100は、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency−Division Multiplexing)方式によって変調された電波を送受信する。この場合、電波の周波数帯は、中心周波数が720MHzであり、帯域幅が10MHzである。
【0023】
主アンテナ装置10は、可変移相器11〜1Kと、加算器30と、制御部40とを含む。副アンテナ装置20は、可変移相器21〜2Kと、加算器50と、乗算器60と、発振器70と、FFT(Fast Fourier Transform)80と、検出器90と、制御部110とを含む。
【0024】
アンテナ1〜Kは、直線の導体からなり、例えば、距離dの等間隔で直線状に配置される。
【0025】
可変移相器11〜1Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられる。そして、可変移相器11〜1Kは、制御部40からそれぞれ位相φ1n〜φKnを受け、その受けた位相φ1n〜φKnを設定する。
【0026】
加算器30は、可変移相器11〜1Kを介してK個の電波を受け、その受けたK個の電波を加算する。そして、加算器30は、その加算結果を受信処理回路(図示せず)へ出力する。
【0027】
制御部40は、検出器90から干渉波検出信号を受け、制御部110から干渉波の到来方向を受ける。そして、制御部40は、干渉波検出信号を受けたときに制御部110から受けた到来方向に基づいて、干渉波の到来方向にヌルを形成するための位相φ1n〜φKnを後述する方法によって演算する。また、制御部40は、干渉波検出信号を受けたときに制御部110から受けた到来方向に基づいて、干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低く設定するための位相φ1n〜φKnを後述する方法によって演算する。
【0028】
そして、制御部40は、その演算した位相φ1n〜φKnをそれぞれ設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0029】
一方、制御部40は、検出器90から干渉波不検出信号を受けると、アンテナ1〜Kをフェーズドアレーアンテナとして動作させるための位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnをそれぞれ設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0030】
可変移相器21〜2Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられる。そして、可変移相器21〜2Kは、アンテナ1〜Kから放射される放射パターンの指向性を所望の方向に設定するための位相φ1b〜φKbを制御部110から受ける。そうすると、可変移相器21〜2Kは、その受けた位相φ1b〜φKbを設定する。
【0031】
加算器50は、可変移相器21〜2Kを介してK個の電波を受け、その受けたK個の電波を加算する。そして、加算器50は、その加算結果を乗算器60へ出力する。
【0032】
乗算器60は、加算器50から加算結果を受け、発振器70から中間周波数を有する周期信号を受ける。そして、乗算器60は、加算結果に周期信号を乗算し、その乗算結果をFFT80へ出力する。即ち、乗算器60は、受信電波の周波数を中間周波数に変換し、その変換した受信電波をFFT80へ出力する。
【0033】
発振器70は、中間周波数を有する周期信号を発振し、その発振した周期信号を乗算器60へ出力する。
【0034】
FFT80は、乗算器60から受けた受信電波を高速フーリエ変換し、その高速フーリエ変換した受信電波を検出器90へ出力する。
【0035】
検出器90は、閾値Ith1を保持している。検出器90は、FFT80から受けた受信電波に基づいて、所望波の周波数帯と異なる周波数帯における受信電波の受信強度を検出し、その検出した受信強度が閾値Ith1よりも大きいか否かを判定する。そして、検出器90は、受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、干渉波検出信号を生成し、その生成した干渉波検出信号を制御部40,110へ出力する。一方、検出器90は、受信強度が閾値Ith1以下であるとき、干渉波不検出信号を生成し、その生成した干渉波不検出信号を制御部40,110へ出力する。
【0036】
制御部110は、アンテナ1〜Kが放射する放射パターンの指向性を所望の角度間隔で複数の方向に順次設定するための位相φ1b〜φKbを決定し、その決定した位相φ1b〜φKbを設定するように可変移相器21〜2Kを制御する。この場合、制御部110は、放射パターンの指向性を1つの方向に設定するように可変移相器21〜2Kを制御する毎に、その1つの方向を制御部40へ出力する。また、制御部110は、干渉波検出信号を検出器90から受けると、新たな位相φ1b〜φKbの決定を停止し、干渉波不検出信号を受けると、新たな位相φ1b〜φKbを決定し、その決定した位相φ1b〜φKbを設定するように可変移相器21〜2Kを制御する。即ち、制御部110は、干渉波検出信号を受けるまで、放射パターンの指向性を変えるように可変移相器21〜2Kを制御する。
【0037】
なお、制御部40は、検出器90から干渉波検出信号を受けたときに制御部110から受けた1つの方向を干渉波の到来方向とする。
【0038】
ITS通信の主要パラメータを表1に示す。
【表1】
【0039】
データサブキャリア数は、64本のサブキャリア数のうちの52本である。また、データの占有周波数帯域幅は、約8.3MHzである。
【0040】
図2は、周波数帯域の概念図である。図2を参照して、周波数帯Band1は、ITS通信に割り当てられた周波数帯(10MHz)であり、周波数帯Band2は、データの占有周波数帯(8.3MHz)である。従って、周波数帯Band3,Band4は、干渉波が存在する周波数帯である。この場合、周波数帯Band3,Band4の各々の帯域幅は、0.85MHzである。
【0041】
この発明の実施の形態においては、干渉波の受信電力レベルが所望波の受信電力レベルよりも大きい干渉波を「強入力干渉波」と定義する。
【0042】
強入力干渉波が到来していない場合、ヌルサブキャリア周波数帯(=Band3,Band4)におけるパワースペクトルは、熱雑音レベルである(図2の(a)参照)。
【0043】
一方、強入力干渉波が到来した場合、干渉波の帯域外漏洩電力によって所望波の帯域内で干渉波の信号が観測される。即ち、強入力干渉波が到来した場合、ヌルサブキャリア周波数帯(=Band3,Band4)において、干渉波の信号が観測される(図2の(b)参照)。
【0044】
従って、副アンテナ装置20のFFT80は、受信電波を高速フーリエ変換して受信電波を周波数領域の受信電波に変換し、検出器90は、周波数帯Band3,Band4の情報を予め保持しており、周波数領域の受信電波のうち、ヌルサブキャリア周波数帯(=Band3,Band4)における受信強度を検出し、その検出した受信強度を閾値Ith1と比較して強入力干渉波を検出したか否かを判定する。より具体的には、検出器90は、受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、強入力干渉波を検出したと判定し、受信強度が閾値Ith1以下であるとき、強入力干渉波を検出しなかったと判定する。
【0045】
このように、副アンテナ装置20は、所望波の周波数帯(715〜725MHz)と異なる周波数帯(715〜725MHz以外の周波数帯)で送受信される電波を干渉波として検出する。
【0046】
従来、所望波の周波数帯と同じ周波数帯で送受信される電波を干渉波として捉えることが多いが、この発明の実施の形態においては、所望波の周波数と異なる周波数を有する電波を干渉波と言う。
【0047】
そして、従来、所望波の周波数と異なる周波数を有する干渉波を検出することは、殆ど、行なわれていない。
【0048】
そこで、この発明の実施の形態においては、所望波の周波数帯(715〜725MHz)以外の周波数帯で送受信される干渉波の強度が大きくなると、干渉波の電力が所望波の帯域内に漏れ込むという新たな知見に基づいて強入力干渉波を検出することにした。
【0049】
より具体的には、所望波の周波数帯(715〜725MHz)のうち、データの占有周波数帯(715.85〜724.15MHz)を除く、ヌルサブキャリア周波数帯(715〜715.85MHzおよび724.15〜725MHz)へ干渉波の電力が漏れ込むという新たな知見に基づいて、ヌルサブキャリア周波数帯(715〜715.85MHzおよび724.15〜725MHz)における受信強度が閾値Ith1よりも大きいか否かを判定することによって強入力干渉波を検出したか否かを判定することにした。
【0050】
従って、副アンテナ装置20は、所望波の周波数と異なる周波数を有する干渉波をどのように検出するかという新規な課題を上述した新規な方法によって解決するものである。
【0051】
なお、強入力干渉波は、例えば、ITS通信の隣接帯域にある地上デジタル放送の電波からなる。
【0052】
図3は、放射ビームの概念図である。図3を参照して、アンテナ1〜Kの長さ方向に垂直な平面をx−y平面と定義する。そして、制御部110は、例えば、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性θが45度の間隔で変化するように位相φ1b〜φKbをそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。
【0053】
より具体的には、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性θが0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度および315度と変化するように位相φ1b〜φKbをそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。即ち、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM1を放射させる場合、位相φ1b_0〜φKb_0をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。また、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM2を放射させる場合、位相φ1b_45〜φKb_45をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM3を放射させる場合、位相φ1b_90〜φKb_90をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM4を放射させる場合、位相φ1b_135〜φKb_135をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM5を放射させる場合、位相φ1b_180〜φKb_180をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM6を放射させる場合、位相φ1b_225〜φKb_225をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM7を放射させる場合、位相φ1b_270〜φKb_270をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM8を放射させる場合、位相φ1b_315〜φKb_315をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。
【0054】
表1に示すように、有効データ区間は、6.4μsecであり、ガードインターバル区間は、1.6μsecである。従って、アンテナ1〜Kが1つのデータを受信できる時間は、6.4μsec+1.6μsec=8μsecとなる。
【0055】
そこで、制御部110は、アンテナ1〜Kが1つのデータを受信可能な時間間隔、即ち、8μsec間隔で放射ビームの指向性θを変えるように位相φ1b_0〜φKb_0;φ1b_45〜φKb_45;φ1b_90〜φKb_90;φ1b_135〜φKb_135;φ1b_180〜φKb_180;φ1b_225〜φKb_225;φ1b_270〜φKb_270;φ1b_315〜φKb_315を、順次、可変位相器21〜2Kに設定する。従って、360度の全方向で干渉波を観測するために必要な時間は、64μsecである。
【0056】
また、制御部110は、1つの位相φ1b_θ〜φKb_θ(θ=0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度)を可変移相器21〜2Kに設定するごとに、その設定した位相φ1b_θ〜φKb_θによって生成される放射ビームの指向性を示す角度θを制御部40へ出力する。
【0057】
アンテナ1〜Kから放射される放射ビームが放射ビームBM1に設定されると、検出器90は、アンテナ1〜Kが放射ビームBM1で受信した受信電波に基づいて、上述した方法によって強入力干渉波を検出したか否かを判定する。そして、検出器90は、強入力干渉波を検出したと判定したとき、干渉波検出信号を制御部40,110へ出力し、強入力干渉波を検出しなかったと判定したとき、干渉波不検出信号を制御部40,110へ出力する。
【0058】
検出器90は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームが放射ビームBM2〜BM8のいずれかに設定された場合も、同様にして干渉波検出信号または干渉波不検出信号を制御部40,110へ出力する。
【0059】
制御部40は、検出器90から干渉波検出信号または干渉波不検出信号を受け、制御部110から角度θを受ける。そして、制御部40は、検出器90から干渉波検出信号を受けたときに制御部110から受けた角度θを干渉波の到来方向とする。
【0060】
干渉波の到来方向にヌルを形成する方法について説明する。アンテナ1〜Kがオムニアンテナであり、アンテナ1〜K間の電磁界結合を無視できるとき、アレーファクタAFは、次式によって表される。
【数1】
【0061】
式(1)において、anは、各アンテナ1〜Kの重み係数であり、k0は、ITS通信の周波数における波数ベクトルであり、rnは、各アンテナ1〜Kの位置ベクトルであり、Kは、アンテナの数である。
【0062】
位置ベクトルrnは、アンテナ1〜Kの配置間隔dおよび干渉波の到来方向(=角度θ)を用いると、rn=dcosθとなる。
【0063】
従って、式(1)は、次式に変換される。
【数2】
【0064】
ここで、z=ejkdcosθとすると、式(2)は、式(3)に変換される。
【数3】
【0065】
式(3)を因数分解すると、次式が得られる。
【数4】
【0066】
式(4)において、z=z1,z2,・・・,zK−1は、アレーファクタAFの根である。
【0067】
θ=θ1,θ2の方向にヌルを形成する場合、z1=ejkdcosθ1,z2=ejkdcosθ2とし、次式を作成する。
【数5】
【0068】
また、アレーファクタAFは、重み係数を用いて次式によって表される。
【数6】
【0069】
式(5)と式(6)の係数を比較すると、a1=z1z2、a2=−(z1+z2)およびa3=1が得られる。
【0070】
また、重み係数a1〜a3の各々は、Anejφnによって表される。そして、この発明の実施の形態においては、可変移相器11〜1Kにおける位相φ1n〜φKnによってアンテナ1〜Kの重み係数a1〜aKを制御するので、振幅Anは、1とする。
【0071】
従って、a1=z1z2、a2=−(z1+z2)、a3=1、a1=ejφ1、a2=ejφ2、およびa3=ejφ3を用いて、φ1〜φ3を決定する。
【0072】
このように、2個のヌルを形成する場合、3本のアンテナがあればよいが、式(5)において重解を持つように設定すれば、3本以上の任意のアンテナ数で2個のヌルを形成できる。
【0073】
その結果、2本以上のアンテナ1〜Kを用いて1個以上のヌルを形成できる。
【0074】
制御部40は、干渉波検出信号を検出器90から受けたときに制御部110から角度θを受けると、上述した方法によって、角度θの方向にヌルを形成するための位相φ1n〜φKnを決定する。そして、制御部40は、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0075】
可変移相器11〜1Kは、制御部40からの制御に従って、それぞれ、位相φ1n〜φKnを設定する。
【0076】
図4は、他の放射ビームの概念図である。図4を参照して、制御部40が位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御すると、可変移相器11〜1Kは、それぞれ、位相φ1n〜φKnを設定する。
【0077】
その結果、アンテナ1〜Kは、放射ビームBM0を放射する。放射ビームBM0は、干渉波の到来方向にヌルを有するビーム形状からなる。
【0078】
従って、アンテナ装置100は、放射ビームBM0を用いて電波を受信することによって、干渉波を除去して電波を受信する。即ち、アンテナ装置100は、干渉波をアナログ的に除去可能なアンテナ装置である。
【0079】
制御部40は、干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くなるように位相φ1n〜φKnを決定し、その決定したφ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御してもよい。
【0080】
この場合、制御部40は、受信電波の所望波受信電力対干渉信号電力比SIR、所望波の到来方向の利得Gd、および干渉波の到来方向の利得Giを測定する。そして、制御部40は、SIR+α=Gd−Giを満たすように位相φ1n〜φKnを決定し、その決定したφ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0081】
なお、αは、数[dB]に設定され、所望波受信電力対干渉信号電力比SIR、所望波の到来方向の利得Gd、および干渉波の到来方向の利得は、[dB]単位で表される。
【0082】
このように、制御部40は、干渉波の到来方向にヌルを形成するように可変移相器11〜1Kを制御し、または干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くするように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0083】
図5は、図1に示すアンテナ装置100における動作を説明するためのフローチャートである。図5を参照して、アンテナ装置100における動作が開始されると、副アンテナ装置20は、干渉波および干渉波の到来方向を検出し(ステップS1)、干渉波検出信号および干渉波の到来方向を主アンテナ装置10へ出力する。
【0084】
そして、主アンテナ装置10は、干渉波検出信号および干渉波の到来方向を受け、その受けた干渉波検出信号および干渉波の到来方向に基づいて、上述した方法によって、干渉波の到来方向にヌルを形成する(ステップS2)。
【0085】
その後、主アンテナ装置10は、干渉波の到来方向にヌルが形成された状態で電波を受信する(ステップS3)。これによって、一連の動作が終了する。
【0086】
なお、主アンテナ装置10は、干渉波の到来方向にヌルが形成された状態で受信した受信電波を受信処理回路(図示せず)へ出力する。そして、受信処理回路は、受信電波を通常の方法によって復調する。
【0087】
図6は、図5に示すステップS1の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図6を参照して、アンテナ装置100における動作が開始されると、副アンテナ装置20の制御部110は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を次の方向に変える。即ち、制御部110は、受信ビームの方向θを変える(ステップS11)。
【0088】
その後、制御部110は、受信ビームの方向を方向θに設定するための位相φ1b〜φKbを決定し、その決定した位相φ1b〜φKbを設定するように可変移相器21〜2Kを制御する。引き続いて、可変移相器21〜2Kは、それぞれ、位相φ1b〜φKbを設定する。これによって、θ方向の放射ビームが形成される(ステップS12)。
【0089】
そして、副アンテナ装置20は、θ方向に設定された放射ビームで電波を受信する。加算器50は、可変移相器21〜2KからのK個の電波を加算し、その加算結果を乗算器60へ出力し、乗算器60は、加算器50からの受信電波の周波数を中間周波数に変換し、FFT80は、中間周波数に変換された受信電波を高速フーリエ変換する。
【0090】
その後、検出器90は、周波数領域の受信電波に基づいて、ヌルサブキャリア周波数における電力レベルを検出する(ステップS13)。
【0091】
そして、検出器90は、その検出した電力レベルが閾値Ith1よりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。
【0092】
ステップS14において、電力レベルが閾値Ith1以下であると判定されたとき、検出器90は、干渉波不検出信号を生成し、その検出した干渉波不検出信号を主アンテナ装置10の制御部40へ出力するとともに(ステップS15)、干渉波不検出信号を制御部110へ出力する。
【0093】
一方、ステップS14において、電力レベルが閾値Ith1よりも大きいと判定されたとき、検出器90は、干渉波検出信号を生成し、その生成した干渉波検出信号を主アンテナ装置10の制御部40へ出力するとともに、干渉波検出信号を制御部110へ出力する。そして、制御部110は、干渉波検出信号に応じて、方向θを主アンテナ装置10の制御部40へ出力する。即ち、干渉波の検出と干渉波の到来方向とを主アンテナ装置10へ出力する(ステップS16)。
【0094】
ステップS15またはステップS16の後、制御部110は、放射ビームの方向を全ての方向に変えたか否かを判定する(ステップS17)。
【0095】
ステップS17において、放射ビームの方向を全ての方向に変えていないと判定されたとき、一連の動作は、ステップS11へ戻る。その後、ステップS17において、放射ビームの方向を全ての方向に変えたと判定されるまで、上述したステップS11〜ステップS17が繰返し実行される。
【0096】
そして、ステップS17において、放射ビームの方向を全ての方向に変えたと判定されると、一連の動作は、図5に示すステップS2へ移行する。
【0097】
上述したように、アンテナ装置100は、干渉波の到来方向を検出し、その検出した到来方向にヌルが形成されるように放射ビームを作成する。その結果、干渉波の到来方向からアンテナ装置100へ到来した電波に対する感度がなくなる。
【0098】
従って、干渉波を十分に除去できる。
【0099】
アンテナ装置100が干渉波の受信強度を基準値よりも低くして電波を受信する場合も、アンテナ装置は、図5および図6に示すフローチャートに従って動作する。この場合、ステップS2においては、干渉波の受信強度を基準値よりも低くするように放射ビームが形成される。即ち、制御部40は、干渉波の到来方向における利得GiがSIR+α=Gd−Giを満たすように位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。そして、可変移相器11〜1Kは、それぞれ、位相φ1n〜φKnを設定する。
【0100】
この場合、アンテナ装置100は、干渉波の到来方向から到来した電波の感度を低くして電波を受信する。従って、干渉波を十分に除去できる。
【0101】
また、アンテナ装置100においては、干渉波の検出を行なう自由度を、RFフィルタを用いて干渉波の検出を行なう非特許文献1の従来技術よりも任意に実現できる。
【0102】
図7は、この発明の実施の形態による他のアンテナ装置の概略図である。この発明の実施の形態によるアンテナ装置は、図7に示すアンテナ装置100Aであってもよい。
【0103】
図7を参照して、アンテナ装置100Aは、図1に示すアンテナ装置100に送信部120を追加したものであり、その他は、アンテナ装置100と同じである。
【0104】
アンテナ装置100Aにおいては、副アンテナ装置20は、他の無線システムによって送信された電波の到来方向を上述した方法によって検出し、その検出した到来方向を主アンテナ装置10へ出力する。そして、主アンテナ装置10は、上述した方法によって、副アンテナ装置20から受けた到来方向にヌルを形成する。
【0105】
送信部120は、OFDM方式によって変調されたデジタル信号からなる送信信号を信号処理回路(図示せず)から受け、その受けた送信信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。そして、送信部120は、他の無線システムによって送信された電波の到来方向にヌルが形成された放射ビームがアンテナ1〜Kから放射されている状態で、アナログ信号からなる送信信号をアンテナ1〜Kを介して送信する。
【0106】
その結果、アンテナ装置100Aから送信された電波は、他の無線システムによって電波を送信している無線装置によって受信されない。
【0107】
従って、他の無線システムによって電波を送信している無線装置に干渉を与えることを防止できる。
【0108】
図8は、この発明の実施の形態によるアンテナ装置100を備えた受信機の概略図である。図8を参照して、受信機200は、アンテナ装置100と、信号処理部210とを備える。
【0109】
信号処理部210は、不要波を含む特定の周波数帯で送信された電波をアンテナ装置100から受け、その受けた電波を一括してA/D変換し、そのA/D変換した信号をFPGA(Field Programmable Gate Array)またはソフトウェアによってデジタル信号処理し、所望波を復調する。
【0110】
この場合、アンテナ装置100は、上述した方法によって不要波の信号レベルを低減し、その不要波の信号レベルを低減した電波を信号処理部210へ出力する。
【0111】
従って、信号処理部210に含まれるAD変換器に要求されるダイナミックレンジを低減できる。
【0112】
なお、このような処理は、所望帯域のみを通過させるバンドパスフィルタを設けて不要波を抑圧すれば同様の効果が得られる。しかし、所望帯域の比帯域が狭帯域(例えば、1%未満)で中心周波数を可変とする場合、このバンドパスフィルタを高周波帯で実現することは困難である。
【0113】
従って、高周波帯において不要波の信号レベルを低減させる方法としてアンテナ装置100を用いて不要波の信号レベルを低減させる方法が有効である。
【0114】
図9は、この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた他の受信機の概略図である。図9を参照して、受信機300は、アンテナ装置100Bと、受信機回路301〜30K,310と、加算器320とを備える。
【0115】
アンテナ装置100Bは、図1に示すアンテナ装置100の検出器90を検出器90Aに代え、制御部40を制御部40Aに代え、スイッチS1〜SKを追加したものであり、その他は、アンテナ装置100と同じである。
【0116】
検出器90Aは、閾値Ith1,Ith2を保持している。閾値Ith2は、閾値Ith1よりも小さい。
【0117】
検出器90Aは、検出器90と同様にしてヌルサブキャリア周波数における電波の受信強度を検出し、その検出した受信強度を閾値Ith1,Ith2と比較する。
【0118】
そして、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、干渉波検出信号を生成し、その生成した干渉波検出信号を制御部40Aへ出力する。また、検出器90Aは、スイッチS1〜SKをそれぞれ端子T11〜T1Kに接続するための信号CNT1を生成し、その生成した信号CNT1をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0119】
また、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith2以下であるとき、主アンテナ装置10が所定の指向性を有する放射ビームを形成するための信号DIRと、動作を停止するための停止信号STP1とを生成し、その生成した信号DIRを制御部40Aへ出力し、その生成した停止信号STP1を制御部110へ出力する。そして、検出器90Aは、信号CNT1を生成し、その生成した信号CNT1をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0120】
更に、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、動作を停止するための停止信号STP2を生成し、その生成した停止信号STP2を制御部40A,110へ出力する。また、検出器90Aは、スイッチS1〜SKをそれぞれ端子T21〜T2Kに接続するための信号CNT2を生成し、その生成した信号CNT2をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0121】
スイッチS1〜SKは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられ、アンテナ1〜Kと可変移相器11〜1Kとの間に接続される。そして、スイッチS1〜SKは、検出器90Aから信号CNT1を受けると、それぞれ、端子T11〜T1Kに接続され、検出器90Aから信号CNT2を受けると、それぞれ、端子T21〜T2Kに接続される。
【0122】
制御部40Aは、信号DIRを検出器90Aから受け、その受けた信号DIRに応じて、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を所定の指向性に設定するための位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。例えば、制御部40Aは、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を無指向性に設定するための位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0123】
また、制御部40Aは、停止信号STP1,STP2に応じて、動作を停止する。
【0124】
制御部40Aは、その他、制御部40と同じ機能を果たす。
【0125】
なお、制御部110は、停止信号STP1,STP2に応じて、制御部40Aへ何も出力しない。
【0126】
受信機回路301〜30Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられる。そして、受信機回路301〜30Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kが受信した電波を受け、その受けた電波をAD変換等して復調する。その後、受信機回路301〜30Kは、その復調した信号を加算器320へ出力する。
【0127】
加算器320は、受信機回路301〜30Kからの信号を選択合成し、その選択合成した信号を受信信号として出力する。
【0128】
このように、受信機回路301〜30Kおよび加算器320は、ダイバーシチ受信を行なう。
【0129】
受信機回路310は、加算器30から受信電波を受け、その受けた受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を受信信号として出力する。
【0130】
図10は、図9に示す受信機300の動作を説明するためのフローチャートである。図10を参照して、受信機300の動作が開始されると、副アンテナ装置20の検出器90Aは、ヌルサブキャリア周波数における電波の受信強度を検出する(ステップS21)。
【0131】
そして、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith1よりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。
【0132】
ステップS22において、受信強度が閾値Ith1よりも大きいと判定されたとき、図5に示すステップS1〜ステップS3と同じ動作が行なわれる(ステップS23〜ステップS25)。即ち、主アンテナ装置10は、干渉波の到来方向にヌルを形成して電波を受信し、その受信した受信電波を受信機回路310へ出力する。そして、受信機回路310は、受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を受信信号として出力する。
【0133】
一方、ステップS22において、受信強度が閾値Ith1以下であると判定されたとき、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith2以下であるか否かを更に判定する(ステップS26)。
【0134】
ステップS26において、受信強度が閾値Ith2以下であると判定されたとき、検出器90Aは、信号DIRおよび停止信号STP1を生成し、その生成した信号DIRを制御部40Aへ出力し、停止信号STP1を制御部110へ出力する。また、検出器90Aは、信号CNT1を生成し、その生成した信号CNT1をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0135】
制御部110は、停止信号STP1に応じて、制御部40Aへ何も出力しない。即ち、副アンテナ装置20を停止する(ステップS27)。
【0136】
また、スイッチS1〜SKは、信号CNT1に応じて、端子T11〜T1Kに接続される。そして、制御部40Aは、信号DIRに応じて、アンテナ1〜Kが放射する放射ビームの指向性を所定の指向性(=例えば、無指向性)に設定するための位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。可変移相器11〜1Kは、制御部40Aからの制御に従って、それぞれ、位相φ1n〜φKnを設定する。
【0137】
加算器30は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を無指向性に設定してアンテナ1〜Kが受信した受信電波をそれぞれ可変移相器11〜1Kを介して受け、その受けた受信電波を加算する。そして、加算器30は、その加算結果を受信機回路310へ出力する。
【0138】
受信機回路310は、加算器30から受けた受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を受信信号として出力する。
【0139】
即ち、放射ビームの指向性を所定の指向性に設定して主アンテナ装置10で電波を受信する(ステップS28)。
【0140】
一方、ステップS26において、受信強度が閾値Ith2よりも大きいと判定されたとき、検出器90Aは、停止信号STP2を生成し、その生成した停止信号STP2を制御部40A,110へ出力する。また、検出器90Aは、信号CNT2を生成し、その生成した信号CNT2をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0141】
制御部40A,110は、停止信号STP2に応じて、動作を停止する。また、スイッチS1〜SKは、信号CNT2に応じて、それぞれ、端子T21〜T2Kに接続される。
【0142】
受信機回路301〜30Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kから受信電波を受け、その受けた受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を加算器320へ出力する。加算器320は、受信機回路301〜30Kからの復調信号を選択合成して受信信号を生成し、その生成した受信信号を出力する。即ち、アンテナ1〜Kを用いてダイバーシチ受信が行なわれる(ステップS29)。
【0143】
そして、ステップS25、ステップS28およびステップS29のいずれかの後、一連の動作は、終了する。
【0144】
このように、受信機300は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、干渉波の到来方向にヌルを形成して電波を受信し、その受信した受信電波を復調する(ステップS22の“YES”およびステップS23〜S25参照)。
【0145】
また、受信機300は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith2以下であるとき、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を所定の指向性に設定して電波を受信し、その受信した受信電波を復調する(ステップS26の“YES”およびステップS27,S28参照)。
【0146】
更に、受信機300は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、アンテナ1〜Kを用いて電波をダイバーシチ受信する(ステップS26の“NO”およびステップS29参照)。
【0147】
従って、ヌルサブキャリア周波数における受信強度の大きさに応じて受信機300を動作させることができる。
【0148】
図11は、この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた更に他の受信機の概略図である。図11を参照して、受信機400は、アンテナ装置100Cと、乗算器311〜31Kと、加算器330とを備える。
【0149】
アンテナ装置100Cは、図9に示すアンテナ装置100Bの制御部40Aおよび検出器90Aをそれぞれ制御部40Bおよび検出器90Bに代えたものであり、その他は、アンテナ装置100Bと同じである。
【0150】
検出器90Bは、閾値Ith1,Ith2を保持している。検出器90Bは、ヌルサブキャリア周波数における電波の受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、アンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして動作せるための信号ADPを生成し、その生成した信号ADPを制御部40Bへ出力する。また、検出器90Bは、停止信号STP2を生成し、その生成した停止信号STP2を制御部110へ出力する。
【0151】
検出器90Bは、その他、検出器90,90Aと同じ機能を果たす。
【0152】
制御部40Bは、検出器90Bから信号ADPを受ける。そして、制御部40Bは、信号ADPに応じて、公知の方法によって、アンテナ1〜Kを用いて所望波を受信するための重みw1〜wKを演算し、その演算した重みw1〜wKをそれぞれ乗算器311〜31Kへ出力する。
【0153】
制御部40Bは、その他、制御部40,40Aと同じ機能を果たす。
【0154】
乗算器311〜31Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられる。そして、乗算器311〜31Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kが受信した電波を受け、重みw1〜wKを制御部40Bから受ける。そうすると、乗算器311〜31Kは、アンテナ1〜Kが受信した電波にそれぞれ重みw1〜wKを乗算し、その乗算結果を加算器330へ出力する。
【0155】
加算器330は、乗算器311〜31Kからの受信電波を加算し、その加算結果を信号処理部(図示せず)へ出力する。信号処理部は、加算器330からの受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を受信信号として出力する。
【0156】
図12は、図11に示す受信機400の動作を説明するためのフローチャートである。図12に示すフローチャートは、図10に示すフローチャートのステップS29をステップS29Aに代えたものであり、その他は、図10に示すフローチャートと同じである。
【0157】
図12を参照して、ステップS26において、受信強度が閾値Ith2よりも大きいと判定されたとき、検出器90Bは、信号ADPを生成し、その生成した信号ADPを制御部40Bへ出力する。また、検出器90Bは、信号CNT2を生成し、その生成した信号CNT2をスイッチS1〜SKへ出力する。更に、検出器90Bは、停止信号STP2を生成し、その生成した停止信号STP2を制御部110へ出力する。
【0158】
制御部110は、停止信号STP2に応じて、制御部40Bへ何も出力しない。スイッチS1〜SKは、信号CNT2に応じて、それぞれ、端子T21〜T2Kに接続される。制御部40Bは、信号ADPに応じて、重み係数w1〜wKを演算し、その演算した重み係数w1〜wKをそれぞれ乗算器311〜31Kへ出力する。
【0159】
乗算器311〜31Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kが受信した電波に重み係数w1〜wKを乗算し、その乗算結果を加算器330へ出力する。そして、加算器330は、乗算器311〜31Kから受けた受信電波を加算し、その加算結果を信号処理部(図示せず)へ出力する。即ち、アンテナ1〜K、乗算器311〜31Kおよび加算器330は、アンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして用いて電波を受信する(ステップS29A)。
【0160】
そして、ステップS25、ステップS28およびステップS29Aのいずれかの後、一連の動作が終了する。
【0161】
このように、受信機400は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、干渉波の到来方向にヌルを形成して電波を受信し、その受信した受信電波を復調する(ステップS22の“YES”およびステップS23〜S25参照)。
【0162】
また、受信機400は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith2以下であるとき、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を所定の指向性に設定して電波を受信し、その受信した受信電波を復調する(ステップS26の“YES”およびステップS27,S28参照)。
【0163】
更に、受信機400は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、アンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして用いて電波を受信する(ステップS26の“NO”およびステップS29A参照)。
【0164】
従って、ヌルサブキャリア周波数における受信強度の大きさに応じて受信機400を動作させることができる。
【0165】
この発明の実施の形態による受信機は、アンテナ装置100Cと、受信機300の受信機回路301〜30Kおよび加算器320と、受信機400の乗算器311〜31Kおよび加算器330とを備えるものであってもよい。
【0166】
そして、この受信機は、ヌルサブキャリア周波数における電波の受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、アンテナ1〜Kを用いて電波をダイバーシチ受信、またはアンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして用いて電波を受信する。
【0167】
従って、この受信機における動作は、図12に示すフローチャートのステップS29Aを、アンテナ1〜Kを用いて電波をダイバーシチ受信、またはアンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして用いて電波を受信するステップに代えたフローチャートに従って行なわれる。
【0168】
上記においては、副アンテナ装置20は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を45度の角度間隔で変えて干渉波の到来方向を検出すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、副アンテナ装置20は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を45度の角度間隔で変えて干渉波の到来方向を検出してもよい。
【0169】
なお、この発明の実施の形態においては、干渉波が所望波よりも強いが、フロントエンドにおけるブロッキングが生じるほど、干渉波が所望波よりも強くないとき、干渉の状況と無線機のリソース要求とを総合的に判断して、干渉検知、他の放送チャネルの受信、および他の通信等、最適な目的のためにアンテナ装置100を使用してもよい。
【0170】
このようにアンテナ装置100を使用した場合、干渉抑圧のためにコストの上昇およびサイズの増大が生じない、という効果が得られる。
【0171】
また、この発明の実施の形態においては、干渉スプリアスが所望波に妨害を与える程に強くないとき、干渉波の抑圧が不要であるので、アンテナ装置100において、K本のアンテナ1〜Kのうちの1本のみを所望波の受信に用い、他のアンテナを他の目的に使用してもよい。
【0172】
更に、この発明の実施の形態においては、干渉波を検出しないとき、アンテナ装置100の動作を停止してもよい。このようにアンテナ装置100を使用した場合、無線機の低消費電力化を図ることができる。
【0173】
更に、この発明の実施の形態においては、可変移相器21〜2Kは、「K個の第1の可変移相器」を構成し、可変移相器11〜1Kは、「K個の第2の可変移相器」を構成する。
【0174】
更に、この発明の実施の形態においては、制御部110は、「第1の制御部」を構成し、制御部40,40A,40Bの各々は、「第2の制御部」を構成する。
【0175】
更に、この発明の実施の形態においては、閾値Ith1は、「第1の閾値」を構成し、閾値Ith2は、「第2の閾値」を構成する。
【0176】
更に、この発明の実施の形態においては、受信機回路301〜30Kは、「K個の受信処理回路」を構成する。
【0177】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0178】
この発明は、干渉波を除去するアンテナ装置に適用される。また、この発明は、干渉波を除去するアンテナ装置を備えた受信機に適用される。
【符号の説明】
【0179】
1〜K アンテナ、10 主アンテナ装置、11〜1K,21〜2K 可変移相器、20 副アンテナ装置、30,50,320,330 加算器、40,40A,40B,110 制御部、60 乗算器、70 発振器、80 FFT、90,90A,90B 検出器、100,100A,100B,100C,200 アンテナ装置、120 送信部、210 信号処理部、300,400 受信機、301〜30K,310 受信機回路、311〜31K 乗算器。
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナ装置およびそれを備えた受信機に関し、特に、干渉波を除去するアンテナ装置およびそれを備えた受信機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、帯域外からの干渉波対策は、RF(Radio Frequency)フロントエンドへ加わる信号を減衰させるアッテネータ、または帯域外の干渉信号を減衰させるフィルタを用いて行なわれていた。
【0003】
しかし、前者では、所望波よりも干渉波の信号レベルが大きいときに、RFフロントエンドにおいて干渉波に歪みが生じない程度にRF信号を減衰させると、所望の信号が減衰することによりSNR(Signal to Noise Ratio)が不足するという問題がある。
【0004】
また、後者では、比較的近い周波数にある干渉波を十分に減衰させることが困難であったり、フィルタの挿入損失が問題となったり、その挿入損失を低減し、かつ、干渉波に対する減衰量を大きくすると、フィルタが大きくなり、コストが増大するという問題がある。
【0005】
更に、干渉波自体の強入力によるRFフロントエンドの歪みではなく、干渉波のスプリアス信号が問題となるときには、上述した2つの方式では、干渉を抑圧することができないという問題がある。
【0006】
干渉波自体のスプリアス信号の干渉に対して、干渉波の歪スペクトルのみの信号レベルを検出することによって干渉波のスプリアスに対するヌルステアリングを実現している(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】藤元,堀,“ITS通信における干渉抑圧のためのBPF付きPIアダプティブアレー”,電子情報通信学会技術報告,vol.109,no.31,AP2009−31,pp.117−122,May 2009.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、非特許文献1に記載された方法では、ヌルステアリングの精度が低いために干渉波を十分に除去することが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、干渉波を十分に除去可能なアンテナ装置を提供することである。
【0010】
また、この発明の別の目的は、干渉波を十分に除去可能なアンテナ装置を備えた受信機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、アンテナ装置は、K(Kは2以上の整数)本のアンテナと、副アンテナ装置と、主アンテナ装置とを備える。副アンテナ装置は、K本のアンテナが受信した電波に基づいて所望波の周波数と異なる周波数を有する干渉波を検出するとともに干渉波の到来方向を検出し、干渉波を検出したことを示す干渉波検出信号と到来方向とを出力する。主アンテナ装置は、副アンテナ装置から干渉波検出信号を受けると、副アンテナ装置から受けた到来方向に基づいて、干渉波の到来方向にヌルを形成してK本のアンテナから電波を受信し、または干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くしてK本のアンテナから電波を受信する。
【0012】
好ましくは、副アンテナ装置は、K個の第1の可変移相器と、第1の制御部と、検出器とを含む。K個の第1の可変移相器は、K本のアンテナに対応して設けられる。第1の制御部は、K本のアンテナから放射されるビームの指向性が所望の角度間隔で複数の方向に変化するようにK個の第1の可変移相器を制御するとともに、ビームの指向性を1つの方向に設定する毎に設定した1つの方向を副アンテナ装置へ出力する。検出器は、ビームの指向性が任意の1つの方向に設定されたときにK本のアンテナによって受信された電波に基づいて干渉波を検出したか否かを判定し、干渉波を検出したとき干渉波検出信号を主アンテナ装置へ出力する干渉波検出処理を複数の方向の全てについて実行する。主アンテナ装置は、K個の第2の可変移相器と、第2の制御部とを含む。K個の第2の可変移相器は、K本のアンテナに対応して設けられる。第2の制御部は、副アンテナ装置から干渉波検出信号を受けると、干渉波検出信号を受けたときに副アンテナ装置から受けた1つの方向を干渉波の到来方向とし、到来方向に基づいて、干渉波の到来方向にヌルが形成されるようにK個の第2の可変移相器を制御し、または干渉波の到来方向における電波の受信強度が基準値よりも低くなるようにK個の第2の可変移相器を制御する移相制御を実行する。
【0013】
好ましくは、検出器は、K本のアンテナによって受信された電波をフーリエ変換し、そのフーリエ変換した電波に基づいて干渉波の周波数帯域における受信強度を検出し、その検出した受信強度が閾値よりも大きいとき干渉波を検出したと判定する。
【0014】
好ましくは、アンテナ装置は、送信部を更に備える。送信部は、移相制御が実行された状態でK本のアンテナを用いて所望の周波数を有する信号を送信する。
【0015】
また、この発明によれば、受信機は、アンテナ装置と、信号処理装置とを備える。アンテナ装置は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のアンテナ装置からなる。信号処理装置は、アンテナ装置の主アンテナ装置を介して受信電波を受け、その受けた受信電波をアナログ信号からデジタル信号に変換して受信信号処理を行なう。
【0016】
更に、この発明によれば、受信機は、アンテナ装置と、K個の受信処理回路とを備える。アンテナ装置は、請求項2に記載のアンテナ装置からなる。K個の受信処理回路は、K本のアンテナに対応して設けられ、各々が対応するアンテナによって受信された電波を復調する。検出器は、受信強度が第1の閾値よりも大きいとき干渉波検出信号を第2の制御部へ出力し、受信強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下であるとき副アンテナ装置の動作を停止したことを示す第1の停止信号を生成して第2の制御部へ出力し、受信強度が前記第2の閾値よりも大きく、かつ、第1の閾値以下であるとき、主アンテナ装置の動作を停止したことを示す第2の停止信号を生成して第2の制御部へ出力する。検出器は、受信強度が第2の閾値よりも大きく、かつ、第1の閾値以下であるとき、K本のアンテナをそれぞれK個の受信処理回路へ接続する。第2の制御部は、干渉波検出信号を検出器から受けると、移相制御を実行し、第1の停止信号を前記検出器から受けると、K本のアンテナが所望の指向性を形成するようにK個の第2の可変移相器を制御し、第2の停止信号を検出器から受けると、動作を停止する。
【発明の効果】
【0017】
この発明の実施の形態によるアンテナ装置においては、干渉波の到来方向が検出され、その検出された到来方向にヌルを形成して電波が受信される。また、この発明の実施の形態によるアンテナ装置においては、干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くして電波が受信される。その結果、干渉波の信号レベルが低減された状態で電波が受信される。
【0018】
従って、干渉波を十分に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の実施の形態によるアンテナ装置の概略図である。
【図2】周波数帯域の概念図である。
【図3】放射ビームの概念図である。
【図4】他の放射ビームの概念図である。
【図5】図1に示すアンテナ装置における動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5に示すステップS1の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態による他のアンテナ装置の概略図である。
【図8】この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた受信機の概略図である。
【図9】この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた他の受信機の概略図である。
【図10】図9に示す受信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた更に他の受信機の概略図である。
【図12】図11に示す受信機の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
図1は、この発明の実施の形態によるアンテナ装置の概略図である。図1を参照して、この発明の実施の形態によるアンテナ装置100は、アンテナ1〜K(Kは2以上の整数)と、主アンテナ装置10と、副アンテナ装置20とを備える。
【0022】
アンテナ装置100は、例えば、ITS(Intelligent Transport System)通信に用いられるアンテナ装置である。そして、アンテナ装置100は、例えば、OFDM(Orthogonal Frequency−Division Multiplexing)方式によって変調された電波を送受信する。この場合、電波の周波数帯は、中心周波数が720MHzであり、帯域幅が10MHzである。
【0023】
主アンテナ装置10は、可変移相器11〜1Kと、加算器30と、制御部40とを含む。副アンテナ装置20は、可変移相器21〜2Kと、加算器50と、乗算器60と、発振器70と、FFT(Fast Fourier Transform)80と、検出器90と、制御部110とを含む。
【0024】
アンテナ1〜Kは、直線の導体からなり、例えば、距離dの等間隔で直線状に配置される。
【0025】
可変移相器11〜1Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられる。そして、可変移相器11〜1Kは、制御部40からそれぞれ位相φ1n〜φKnを受け、その受けた位相φ1n〜φKnを設定する。
【0026】
加算器30は、可変移相器11〜1Kを介してK個の電波を受け、その受けたK個の電波を加算する。そして、加算器30は、その加算結果を受信処理回路(図示せず)へ出力する。
【0027】
制御部40は、検出器90から干渉波検出信号を受け、制御部110から干渉波の到来方向を受ける。そして、制御部40は、干渉波検出信号を受けたときに制御部110から受けた到来方向に基づいて、干渉波の到来方向にヌルを形成するための位相φ1n〜φKnを後述する方法によって演算する。また、制御部40は、干渉波検出信号を受けたときに制御部110から受けた到来方向に基づいて、干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低く設定するための位相φ1n〜φKnを後述する方法によって演算する。
【0028】
そして、制御部40は、その演算した位相φ1n〜φKnをそれぞれ設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0029】
一方、制御部40は、検出器90から干渉波不検出信号を受けると、アンテナ1〜Kをフェーズドアレーアンテナとして動作させるための位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnをそれぞれ設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0030】
可変移相器21〜2Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられる。そして、可変移相器21〜2Kは、アンテナ1〜Kから放射される放射パターンの指向性を所望の方向に設定するための位相φ1b〜φKbを制御部110から受ける。そうすると、可変移相器21〜2Kは、その受けた位相φ1b〜φKbを設定する。
【0031】
加算器50は、可変移相器21〜2Kを介してK個の電波を受け、その受けたK個の電波を加算する。そして、加算器50は、その加算結果を乗算器60へ出力する。
【0032】
乗算器60は、加算器50から加算結果を受け、発振器70から中間周波数を有する周期信号を受ける。そして、乗算器60は、加算結果に周期信号を乗算し、その乗算結果をFFT80へ出力する。即ち、乗算器60は、受信電波の周波数を中間周波数に変換し、その変換した受信電波をFFT80へ出力する。
【0033】
発振器70は、中間周波数を有する周期信号を発振し、その発振した周期信号を乗算器60へ出力する。
【0034】
FFT80は、乗算器60から受けた受信電波を高速フーリエ変換し、その高速フーリエ変換した受信電波を検出器90へ出力する。
【0035】
検出器90は、閾値Ith1を保持している。検出器90は、FFT80から受けた受信電波に基づいて、所望波の周波数帯と異なる周波数帯における受信電波の受信強度を検出し、その検出した受信強度が閾値Ith1よりも大きいか否かを判定する。そして、検出器90は、受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、干渉波検出信号を生成し、その生成した干渉波検出信号を制御部40,110へ出力する。一方、検出器90は、受信強度が閾値Ith1以下であるとき、干渉波不検出信号を生成し、その生成した干渉波不検出信号を制御部40,110へ出力する。
【0036】
制御部110は、アンテナ1〜Kが放射する放射パターンの指向性を所望の角度間隔で複数の方向に順次設定するための位相φ1b〜φKbを決定し、その決定した位相φ1b〜φKbを設定するように可変移相器21〜2Kを制御する。この場合、制御部110は、放射パターンの指向性を1つの方向に設定するように可変移相器21〜2Kを制御する毎に、その1つの方向を制御部40へ出力する。また、制御部110は、干渉波検出信号を検出器90から受けると、新たな位相φ1b〜φKbの決定を停止し、干渉波不検出信号を受けると、新たな位相φ1b〜φKbを決定し、その決定した位相φ1b〜φKbを設定するように可変移相器21〜2Kを制御する。即ち、制御部110は、干渉波検出信号を受けるまで、放射パターンの指向性を変えるように可変移相器21〜2Kを制御する。
【0037】
なお、制御部40は、検出器90から干渉波検出信号を受けたときに制御部110から受けた1つの方向を干渉波の到来方向とする。
【0038】
ITS通信の主要パラメータを表1に示す。
【表1】
【0039】
データサブキャリア数は、64本のサブキャリア数のうちの52本である。また、データの占有周波数帯域幅は、約8.3MHzである。
【0040】
図2は、周波数帯域の概念図である。図2を参照して、周波数帯Band1は、ITS通信に割り当てられた周波数帯(10MHz)であり、周波数帯Band2は、データの占有周波数帯(8.3MHz)である。従って、周波数帯Band3,Band4は、干渉波が存在する周波数帯である。この場合、周波数帯Band3,Band4の各々の帯域幅は、0.85MHzである。
【0041】
この発明の実施の形態においては、干渉波の受信電力レベルが所望波の受信電力レベルよりも大きい干渉波を「強入力干渉波」と定義する。
【0042】
強入力干渉波が到来していない場合、ヌルサブキャリア周波数帯(=Band3,Band4)におけるパワースペクトルは、熱雑音レベルである(図2の(a)参照)。
【0043】
一方、強入力干渉波が到来した場合、干渉波の帯域外漏洩電力によって所望波の帯域内で干渉波の信号が観測される。即ち、強入力干渉波が到来した場合、ヌルサブキャリア周波数帯(=Band3,Band4)において、干渉波の信号が観測される(図2の(b)参照)。
【0044】
従って、副アンテナ装置20のFFT80は、受信電波を高速フーリエ変換して受信電波を周波数領域の受信電波に変換し、検出器90は、周波数帯Band3,Band4の情報を予め保持しており、周波数領域の受信電波のうち、ヌルサブキャリア周波数帯(=Band3,Band4)における受信強度を検出し、その検出した受信強度を閾値Ith1と比較して強入力干渉波を検出したか否かを判定する。より具体的には、検出器90は、受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、強入力干渉波を検出したと判定し、受信強度が閾値Ith1以下であるとき、強入力干渉波を検出しなかったと判定する。
【0045】
このように、副アンテナ装置20は、所望波の周波数帯(715〜725MHz)と異なる周波数帯(715〜725MHz以外の周波数帯)で送受信される電波を干渉波として検出する。
【0046】
従来、所望波の周波数帯と同じ周波数帯で送受信される電波を干渉波として捉えることが多いが、この発明の実施の形態においては、所望波の周波数と異なる周波数を有する電波を干渉波と言う。
【0047】
そして、従来、所望波の周波数と異なる周波数を有する干渉波を検出することは、殆ど、行なわれていない。
【0048】
そこで、この発明の実施の形態においては、所望波の周波数帯(715〜725MHz)以外の周波数帯で送受信される干渉波の強度が大きくなると、干渉波の電力が所望波の帯域内に漏れ込むという新たな知見に基づいて強入力干渉波を検出することにした。
【0049】
より具体的には、所望波の周波数帯(715〜725MHz)のうち、データの占有周波数帯(715.85〜724.15MHz)を除く、ヌルサブキャリア周波数帯(715〜715.85MHzおよび724.15〜725MHz)へ干渉波の電力が漏れ込むという新たな知見に基づいて、ヌルサブキャリア周波数帯(715〜715.85MHzおよび724.15〜725MHz)における受信強度が閾値Ith1よりも大きいか否かを判定することによって強入力干渉波を検出したか否かを判定することにした。
【0050】
従って、副アンテナ装置20は、所望波の周波数と異なる周波数を有する干渉波をどのように検出するかという新規な課題を上述した新規な方法によって解決するものである。
【0051】
なお、強入力干渉波は、例えば、ITS通信の隣接帯域にある地上デジタル放送の電波からなる。
【0052】
図3は、放射ビームの概念図である。図3を参照して、アンテナ1〜Kの長さ方向に垂直な平面をx−y平面と定義する。そして、制御部110は、例えば、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性θが45度の間隔で変化するように位相φ1b〜φKbをそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。
【0053】
より具体的には、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性θが0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度および315度と変化するように位相φ1b〜φKbをそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。即ち、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM1を放射させる場合、位相φ1b_0〜φKb_0をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。また、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM2を放射させる場合、位相φ1b_45〜φKb_45をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM3を放射させる場合、位相φ1b_90〜φKb_90をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM4を放射させる場合、位相φ1b_135〜φKb_135をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM5を放射させる場合、位相φ1b_180〜φKb_180をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM6を放射させる場合、位相φ1b_225〜φKb_225をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM7を放射させる場合、位相φ1b_270〜φKb_270をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。更に、制御部110は、アンテナ1〜Kから放射ビームBM8を放射させる場合、位相φ1b_315〜φKb_315をそれぞれ可変移相器21〜2Kに設定する。
【0054】
表1に示すように、有効データ区間は、6.4μsecであり、ガードインターバル区間は、1.6μsecである。従って、アンテナ1〜Kが1つのデータを受信できる時間は、6.4μsec+1.6μsec=8μsecとなる。
【0055】
そこで、制御部110は、アンテナ1〜Kが1つのデータを受信可能な時間間隔、即ち、8μsec間隔で放射ビームの指向性θを変えるように位相φ1b_0〜φKb_0;φ1b_45〜φKb_45;φ1b_90〜φKb_90;φ1b_135〜φKb_135;φ1b_180〜φKb_180;φ1b_225〜φKb_225;φ1b_270〜φKb_270;φ1b_315〜φKb_315を、順次、可変位相器21〜2Kに設定する。従って、360度の全方向で干渉波を観測するために必要な時間は、64μsecである。
【0056】
また、制御部110は、1つの位相φ1b_θ〜φKb_θ(θ=0度、45度、90度、135度、180度、225度、270度、315度)を可変移相器21〜2Kに設定するごとに、その設定した位相φ1b_θ〜φKb_θによって生成される放射ビームの指向性を示す角度θを制御部40へ出力する。
【0057】
アンテナ1〜Kから放射される放射ビームが放射ビームBM1に設定されると、検出器90は、アンテナ1〜Kが放射ビームBM1で受信した受信電波に基づいて、上述した方法によって強入力干渉波を検出したか否かを判定する。そして、検出器90は、強入力干渉波を検出したと判定したとき、干渉波検出信号を制御部40,110へ出力し、強入力干渉波を検出しなかったと判定したとき、干渉波不検出信号を制御部40,110へ出力する。
【0058】
検出器90は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームが放射ビームBM2〜BM8のいずれかに設定された場合も、同様にして干渉波検出信号または干渉波不検出信号を制御部40,110へ出力する。
【0059】
制御部40は、検出器90から干渉波検出信号または干渉波不検出信号を受け、制御部110から角度θを受ける。そして、制御部40は、検出器90から干渉波検出信号を受けたときに制御部110から受けた角度θを干渉波の到来方向とする。
【0060】
干渉波の到来方向にヌルを形成する方法について説明する。アンテナ1〜Kがオムニアンテナであり、アンテナ1〜K間の電磁界結合を無視できるとき、アレーファクタAFは、次式によって表される。
【数1】
【0061】
式(1)において、anは、各アンテナ1〜Kの重み係数であり、k0は、ITS通信の周波数における波数ベクトルであり、rnは、各アンテナ1〜Kの位置ベクトルであり、Kは、アンテナの数である。
【0062】
位置ベクトルrnは、アンテナ1〜Kの配置間隔dおよび干渉波の到来方向(=角度θ)を用いると、rn=dcosθとなる。
【0063】
従って、式(1)は、次式に変換される。
【数2】
【0064】
ここで、z=ejkdcosθとすると、式(2)は、式(3)に変換される。
【数3】
【0065】
式(3)を因数分解すると、次式が得られる。
【数4】
【0066】
式(4)において、z=z1,z2,・・・,zK−1は、アレーファクタAFの根である。
【0067】
θ=θ1,θ2の方向にヌルを形成する場合、z1=ejkdcosθ1,z2=ejkdcosθ2とし、次式を作成する。
【数5】
【0068】
また、アレーファクタAFは、重み係数を用いて次式によって表される。
【数6】
【0069】
式(5)と式(6)の係数を比較すると、a1=z1z2、a2=−(z1+z2)およびa3=1が得られる。
【0070】
また、重み係数a1〜a3の各々は、Anejφnによって表される。そして、この発明の実施の形態においては、可変移相器11〜1Kにおける位相φ1n〜φKnによってアンテナ1〜Kの重み係数a1〜aKを制御するので、振幅Anは、1とする。
【0071】
従って、a1=z1z2、a2=−(z1+z2)、a3=1、a1=ejφ1、a2=ejφ2、およびa3=ejφ3を用いて、φ1〜φ3を決定する。
【0072】
このように、2個のヌルを形成する場合、3本のアンテナがあればよいが、式(5)において重解を持つように設定すれば、3本以上の任意のアンテナ数で2個のヌルを形成できる。
【0073】
その結果、2本以上のアンテナ1〜Kを用いて1個以上のヌルを形成できる。
【0074】
制御部40は、干渉波検出信号を検出器90から受けたときに制御部110から角度θを受けると、上述した方法によって、角度θの方向にヌルを形成するための位相φ1n〜φKnを決定する。そして、制御部40は、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0075】
可変移相器11〜1Kは、制御部40からの制御に従って、それぞれ、位相φ1n〜φKnを設定する。
【0076】
図4は、他の放射ビームの概念図である。図4を参照して、制御部40が位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御すると、可変移相器11〜1Kは、それぞれ、位相φ1n〜φKnを設定する。
【0077】
その結果、アンテナ1〜Kは、放射ビームBM0を放射する。放射ビームBM0は、干渉波の到来方向にヌルを有するビーム形状からなる。
【0078】
従って、アンテナ装置100は、放射ビームBM0を用いて電波を受信することによって、干渉波を除去して電波を受信する。即ち、アンテナ装置100は、干渉波をアナログ的に除去可能なアンテナ装置である。
【0079】
制御部40は、干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くなるように位相φ1n〜φKnを決定し、その決定したφ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御してもよい。
【0080】
この場合、制御部40は、受信電波の所望波受信電力対干渉信号電力比SIR、所望波の到来方向の利得Gd、および干渉波の到来方向の利得Giを測定する。そして、制御部40は、SIR+α=Gd−Giを満たすように位相φ1n〜φKnを決定し、その決定したφ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0081】
なお、αは、数[dB]に設定され、所望波受信電力対干渉信号電力比SIR、所望波の到来方向の利得Gd、および干渉波の到来方向の利得は、[dB]単位で表される。
【0082】
このように、制御部40は、干渉波の到来方向にヌルを形成するように可変移相器11〜1Kを制御し、または干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くするように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0083】
図5は、図1に示すアンテナ装置100における動作を説明するためのフローチャートである。図5を参照して、アンテナ装置100における動作が開始されると、副アンテナ装置20は、干渉波および干渉波の到来方向を検出し(ステップS1)、干渉波検出信号および干渉波の到来方向を主アンテナ装置10へ出力する。
【0084】
そして、主アンテナ装置10は、干渉波検出信号および干渉波の到来方向を受け、その受けた干渉波検出信号および干渉波の到来方向に基づいて、上述した方法によって、干渉波の到来方向にヌルを形成する(ステップS2)。
【0085】
その後、主アンテナ装置10は、干渉波の到来方向にヌルが形成された状態で電波を受信する(ステップS3)。これによって、一連の動作が終了する。
【0086】
なお、主アンテナ装置10は、干渉波の到来方向にヌルが形成された状態で受信した受信電波を受信処理回路(図示せず)へ出力する。そして、受信処理回路は、受信電波を通常の方法によって復調する。
【0087】
図6は、図5に示すステップS1の詳細な動作を説明するためのフローチャートである。図6を参照して、アンテナ装置100における動作が開始されると、副アンテナ装置20の制御部110は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を次の方向に変える。即ち、制御部110は、受信ビームの方向θを変える(ステップS11)。
【0088】
その後、制御部110は、受信ビームの方向を方向θに設定するための位相φ1b〜φKbを決定し、その決定した位相φ1b〜φKbを設定するように可変移相器21〜2Kを制御する。引き続いて、可変移相器21〜2Kは、それぞれ、位相φ1b〜φKbを設定する。これによって、θ方向の放射ビームが形成される(ステップS12)。
【0089】
そして、副アンテナ装置20は、θ方向に設定された放射ビームで電波を受信する。加算器50は、可変移相器21〜2KからのK個の電波を加算し、その加算結果を乗算器60へ出力し、乗算器60は、加算器50からの受信電波の周波数を中間周波数に変換し、FFT80は、中間周波数に変換された受信電波を高速フーリエ変換する。
【0090】
その後、検出器90は、周波数領域の受信電波に基づいて、ヌルサブキャリア周波数における電力レベルを検出する(ステップS13)。
【0091】
そして、検出器90は、その検出した電力レベルが閾値Ith1よりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。
【0092】
ステップS14において、電力レベルが閾値Ith1以下であると判定されたとき、検出器90は、干渉波不検出信号を生成し、その検出した干渉波不検出信号を主アンテナ装置10の制御部40へ出力するとともに(ステップS15)、干渉波不検出信号を制御部110へ出力する。
【0093】
一方、ステップS14において、電力レベルが閾値Ith1よりも大きいと判定されたとき、検出器90は、干渉波検出信号を生成し、その生成した干渉波検出信号を主アンテナ装置10の制御部40へ出力するとともに、干渉波検出信号を制御部110へ出力する。そして、制御部110は、干渉波検出信号に応じて、方向θを主アンテナ装置10の制御部40へ出力する。即ち、干渉波の検出と干渉波の到来方向とを主アンテナ装置10へ出力する(ステップS16)。
【0094】
ステップS15またはステップS16の後、制御部110は、放射ビームの方向を全ての方向に変えたか否かを判定する(ステップS17)。
【0095】
ステップS17において、放射ビームの方向を全ての方向に変えていないと判定されたとき、一連の動作は、ステップS11へ戻る。その後、ステップS17において、放射ビームの方向を全ての方向に変えたと判定されるまで、上述したステップS11〜ステップS17が繰返し実行される。
【0096】
そして、ステップS17において、放射ビームの方向を全ての方向に変えたと判定されると、一連の動作は、図5に示すステップS2へ移行する。
【0097】
上述したように、アンテナ装置100は、干渉波の到来方向を検出し、その検出した到来方向にヌルが形成されるように放射ビームを作成する。その結果、干渉波の到来方向からアンテナ装置100へ到来した電波に対する感度がなくなる。
【0098】
従って、干渉波を十分に除去できる。
【0099】
アンテナ装置100が干渉波の受信強度を基準値よりも低くして電波を受信する場合も、アンテナ装置は、図5および図6に示すフローチャートに従って動作する。この場合、ステップS2においては、干渉波の受信強度を基準値よりも低くするように放射ビームが形成される。即ち、制御部40は、干渉波の到来方向における利得GiがSIR+α=Gd−Giを満たすように位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。そして、可変移相器11〜1Kは、それぞれ、位相φ1n〜φKnを設定する。
【0100】
この場合、アンテナ装置100は、干渉波の到来方向から到来した電波の感度を低くして電波を受信する。従って、干渉波を十分に除去できる。
【0101】
また、アンテナ装置100においては、干渉波の検出を行なう自由度を、RFフィルタを用いて干渉波の検出を行なう非特許文献1の従来技術よりも任意に実現できる。
【0102】
図7は、この発明の実施の形態による他のアンテナ装置の概略図である。この発明の実施の形態によるアンテナ装置は、図7に示すアンテナ装置100Aであってもよい。
【0103】
図7を参照して、アンテナ装置100Aは、図1に示すアンテナ装置100に送信部120を追加したものであり、その他は、アンテナ装置100と同じである。
【0104】
アンテナ装置100Aにおいては、副アンテナ装置20は、他の無線システムによって送信された電波の到来方向を上述した方法によって検出し、その検出した到来方向を主アンテナ装置10へ出力する。そして、主アンテナ装置10は、上述した方法によって、副アンテナ装置20から受けた到来方向にヌルを形成する。
【0105】
送信部120は、OFDM方式によって変調されたデジタル信号からなる送信信号を信号処理回路(図示せず)から受け、その受けた送信信号をデジタル信号からアナログ信号に変換する。そして、送信部120は、他の無線システムによって送信された電波の到来方向にヌルが形成された放射ビームがアンテナ1〜Kから放射されている状態で、アナログ信号からなる送信信号をアンテナ1〜Kを介して送信する。
【0106】
その結果、アンテナ装置100Aから送信された電波は、他の無線システムによって電波を送信している無線装置によって受信されない。
【0107】
従って、他の無線システムによって電波を送信している無線装置に干渉を与えることを防止できる。
【0108】
図8は、この発明の実施の形態によるアンテナ装置100を備えた受信機の概略図である。図8を参照して、受信機200は、アンテナ装置100と、信号処理部210とを備える。
【0109】
信号処理部210は、不要波を含む特定の周波数帯で送信された電波をアンテナ装置100から受け、その受けた電波を一括してA/D変換し、そのA/D変換した信号をFPGA(Field Programmable Gate Array)またはソフトウェアによってデジタル信号処理し、所望波を復調する。
【0110】
この場合、アンテナ装置100は、上述した方法によって不要波の信号レベルを低減し、その不要波の信号レベルを低減した電波を信号処理部210へ出力する。
【0111】
従って、信号処理部210に含まれるAD変換器に要求されるダイナミックレンジを低減できる。
【0112】
なお、このような処理は、所望帯域のみを通過させるバンドパスフィルタを設けて不要波を抑圧すれば同様の効果が得られる。しかし、所望帯域の比帯域が狭帯域(例えば、1%未満)で中心周波数を可変とする場合、このバンドパスフィルタを高周波帯で実現することは困難である。
【0113】
従って、高周波帯において不要波の信号レベルを低減させる方法としてアンテナ装置100を用いて不要波の信号レベルを低減させる方法が有効である。
【0114】
図9は、この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた他の受信機の概略図である。図9を参照して、受信機300は、アンテナ装置100Bと、受信機回路301〜30K,310と、加算器320とを備える。
【0115】
アンテナ装置100Bは、図1に示すアンテナ装置100の検出器90を検出器90Aに代え、制御部40を制御部40Aに代え、スイッチS1〜SKを追加したものであり、その他は、アンテナ装置100と同じである。
【0116】
検出器90Aは、閾値Ith1,Ith2を保持している。閾値Ith2は、閾値Ith1よりも小さい。
【0117】
検出器90Aは、検出器90と同様にしてヌルサブキャリア周波数における電波の受信強度を検出し、その検出した受信強度を閾値Ith1,Ith2と比較する。
【0118】
そして、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、干渉波検出信号を生成し、その生成した干渉波検出信号を制御部40Aへ出力する。また、検出器90Aは、スイッチS1〜SKをそれぞれ端子T11〜T1Kに接続するための信号CNT1を生成し、その生成した信号CNT1をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0119】
また、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith2以下であるとき、主アンテナ装置10が所定の指向性を有する放射ビームを形成するための信号DIRと、動作を停止するための停止信号STP1とを生成し、その生成した信号DIRを制御部40Aへ出力し、その生成した停止信号STP1を制御部110へ出力する。そして、検出器90Aは、信号CNT1を生成し、その生成した信号CNT1をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0120】
更に、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、動作を停止するための停止信号STP2を生成し、その生成した停止信号STP2を制御部40A,110へ出力する。また、検出器90Aは、スイッチS1〜SKをそれぞれ端子T21〜T2Kに接続するための信号CNT2を生成し、その生成した信号CNT2をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0121】
スイッチS1〜SKは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられ、アンテナ1〜Kと可変移相器11〜1Kとの間に接続される。そして、スイッチS1〜SKは、検出器90Aから信号CNT1を受けると、それぞれ、端子T11〜T1Kに接続され、検出器90Aから信号CNT2を受けると、それぞれ、端子T21〜T2Kに接続される。
【0122】
制御部40Aは、信号DIRを検出器90Aから受け、その受けた信号DIRに応じて、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を所定の指向性に設定するための位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。例えば、制御部40Aは、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を無指向性に設定するための位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。
【0123】
また、制御部40Aは、停止信号STP1,STP2に応じて、動作を停止する。
【0124】
制御部40Aは、その他、制御部40と同じ機能を果たす。
【0125】
なお、制御部110は、停止信号STP1,STP2に応じて、制御部40Aへ何も出力しない。
【0126】
受信機回路301〜30Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられる。そして、受信機回路301〜30Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kが受信した電波を受け、その受けた電波をAD変換等して復調する。その後、受信機回路301〜30Kは、その復調した信号を加算器320へ出力する。
【0127】
加算器320は、受信機回路301〜30Kからの信号を選択合成し、その選択合成した信号を受信信号として出力する。
【0128】
このように、受信機回路301〜30Kおよび加算器320は、ダイバーシチ受信を行なう。
【0129】
受信機回路310は、加算器30から受信電波を受け、その受けた受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を受信信号として出力する。
【0130】
図10は、図9に示す受信機300の動作を説明するためのフローチャートである。図10を参照して、受信機300の動作が開始されると、副アンテナ装置20の検出器90Aは、ヌルサブキャリア周波数における電波の受信強度を検出する(ステップS21)。
【0131】
そして、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith1よりも大きいか否かを判定する(ステップS22)。
【0132】
ステップS22において、受信強度が閾値Ith1よりも大きいと判定されたとき、図5に示すステップS1〜ステップS3と同じ動作が行なわれる(ステップS23〜ステップS25)。即ち、主アンテナ装置10は、干渉波の到来方向にヌルを形成して電波を受信し、その受信した受信電波を受信機回路310へ出力する。そして、受信機回路310は、受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を受信信号として出力する。
【0133】
一方、ステップS22において、受信強度が閾値Ith1以下であると判定されたとき、検出器90Aは、受信強度が閾値Ith2以下であるか否かを更に判定する(ステップS26)。
【0134】
ステップS26において、受信強度が閾値Ith2以下であると判定されたとき、検出器90Aは、信号DIRおよび停止信号STP1を生成し、その生成した信号DIRを制御部40Aへ出力し、停止信号STP1を制御部110へ出力する。また、検出器90Aは、信号CNT1を生成し、その生成した信号CNT1をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0135】
制御部110は、停止信号STP1に応じて、制御部40Aへ何も出力しない。即ち、副アンテナ装置20を停止する(ステップS27)。
【0136】
また、スイッチS1〜SKは、信号CNT1に応じて、端子T11〜T1Kに接続される。そして、制御部40Aは、信号DIRに応じて、アンテナ1〜Kが放射する放射ビームの指向性を所定の指向性(=例えば、無指向性)に設定するための位相φ1n〜φKnを決定し、その決定した位相φ1n〜φKnを設定するように可変移相器11〜1Kを制御する。可変移相器11〜1Kは、制御部40Aからの制御に従って、それぞれ、位相φ1n〜φKnを設定する。
【0137】
加算器30は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を無指向性に設定してアンテナ1〜Kが受信した受信電波をそれぞれ可変移相器11〜1Kを介して受け、その受けた受信電波を加算する。そして、加算器30は、その加算結果を受信機回路310へ出力する。
【0138】
受信機回路310は、加算器30から受けた受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を受信信号として出力する。
【0139】
即ち、放射ビームの指向性を所定の指向性に設定して主アンテナ装置10で電波を受信する(ステップS28)。
【0140】
一方、ステップS26において、受信強度が閾値Ith2よりも大きいと判定されたとき、検出器90Aは、停止信号STP2を生成し、その生成した停止信号STP2を制御部40A,110へ出力する。また、検出器90Aは、信号CNT2を生成し、その生成した信号CNT2をスイッチS1〜SKへ出力する。
【0141】
制御部40A,110は、停止信号STP2に応じて、動作を停止する。また、スイッチS1〜SKは、信号CNT2に応じて、それぞれ、端子T21〜T2Kに接続される。
【0142】
受信機回路301〜30Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kから受信電波を受け、その受けた受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を加算器320へ出力する。加算器320は、受信機回路301〜30Kからの復調信号を選択合成して受信信号を生成し、その生成した受信信号を出力する。即ち、アンテナ1〜Kを用いてダイバーシチ受信が行なわれる(ステップS29)。
【0143】
そして、ステップS25、ステップS28およびステップS29のいずれかの後、一連の動作は、終了する。
【0144】
このように、受信機300は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、干渉波の到来方向にヌルを形成して電波を受信し、その受信した受信電波を復調する(ステップS22の“YES”およびステップS23〜S25参照)。
【0145】
また、受信機300は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith2以下であるとき、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を所定の指向性に設定して電波を受信し、その受信した受信電波を復調する(ステップS26の“YES”およびステップS27,S28参照)。
【0146】
更に、受信機300は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、アンテナ1〜Kを用いて電波をダイバーシチ受信する(ステップS26の“NO”およびステップS29参照)。
【0147】
従って、ヌルサブキャリア周波数における受信強度の大きさに応じて受信機300を動作させることができる。
【0148】
図11は、この発明の実施の形態によるアンテナ装置を備えた更に他の受信機の概略図である。図11を参照して、受信機400は、アンテナ装置100Cと、乗算器311〜31Kと、加算器330とを備える。
【0149】
アンテナ装置100Cは、図9に示すアンテナ装置100Bの制御部40Aおよび検出器90Aをそれぞれ制御部40Bおよび検出器90Bに代えたものであり、その他は、アンテナ装置100Bと同じである。
【0150】
検出器90Bは、閾値Ith1,Ith2を保持している。検出器90Bは、ヌルサブキャリア周波数における電波の受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、アンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして動作せるための信号ADPを生成し、その生成した信号ADPを制御部40Bへ出力する。また、検出器90Bは、停止信号STP2を生成し、その生成した停止信号STP2を制御部110へ出力する。
【0151】
検出器90Bは、その他、検出器90,90Aと同じ機能を果たす。
【0152】
制御部40Bは、検出器90Bから信号ADPを受ける。そして、制御部40Bは、信号ADPに応じて、公知の方法によって、アンテナ1〜Kを用いて所望波を受信するための重みw1〜wKを演算し、その演算した重みw1〜wKをそれぞれ乗算器311〜31Kへ出力する。
【0153】
制御部40Bは、その他、制御部40,40Aと同じ機能を果たす。
【0154】
乗算器311〜31Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kに対応して設けられる。そして、乗算器311〜31Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kが受信した電波を受け、重みw1〜wKを制御部40Bから受ける。そうすると、乗算器311〜31Kは、アンテナ1〜Kが受信した電波にそれぞれ重みw1〜wKを乗算し、その乗算結果を加算器330へ出力する。
【0155】
加算器330は、乗算器311〜31Kからの受信電波を加算し、その加算結果を信号処理部(図示せず)へ出力する。信号処理部は、加算器330からの受信電波をAD変換等して復調し、その復調した信号を受信信号として出力する。
【0156】
図12は、図11に示す受信機400の動作を説明するためのフローチャートである。図12に示すフローチャートは、図10に示すフローチャートのステップS29をステップS29Aに代えたものであり、その他は、図10に示すフローチャートと同じである。
【0157】
図12を参照して、ステップS26において、受信強度が閾値Ith2よりも大きいと判定されたとき、検出器90Bは、信号ADPを生成し、その生成した信号ADPを制御部40Bへ出力する。また、検出器90Bは、信号CNT2を生成し、その生成した信号CNT2をスイッチS1〜SKへ出力する。更に、検出器90Bは、停止信号STP2を生成し、その生成した停止信号STP2を制御部110へ出力する。
【0158】
制御部110は、停止信号STP2に応じて、制御部40Bへ何も出力しない。スイッチS1〜SKは、信号CNT2に応じて、それぞれ、端子T21〜T2Kに接続される。制御部40Bは、信号ADPに応じて、重み係数w1〜wKを演算し、その演算した重み係数w1〜wKをそれぞれ乗算器311〜31Kへ出力する。
【0159】
乗算器311〜31Kは、それぞれ、アンテナ1〜Kが受信した電波に重み係数w1〜wKを乗算し、その乗算結果を加算器330へ出力する。そして、加算器330は、乗算器311〜31Kから受けた受信電波を加算し、その加算結果を信号処理部(図示せず)へ出力する。即ち、アンテナ1〜K、乗算器311〜31Kおよび加算器330は、アンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして用いて電波を受信する(ステップS29A)。
【0160】
そして、ステップS25、ステップS28およびステップS29Aのいずれかの後、一連の動作が終了する。
【0161】
このように、受信機400は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith1よりも大きいとき、干渉波の到来方向にヌルを形成して電波を受信し、その受信した受信電波を復調する(ステップS22の“YES”およびステップS23〜S25参照)。
【0162】
また、受信機400は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith2以下であるとき、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を所定の指向性に設定して電波を受信し、その受信した受信電波を復調する(ステップS26の“YES”およびステップS27,S28参照)。
【0163】
更に、受信機400は、ヌルサブキャリア周波数における受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、アンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして用いて電波を受信する(ステップS26の“NO”およびステップS29A参照)。
【0164】
従って、ヌルサブキャリア周波数における受信強度の大きさに応じて受信機400を動作させることができる。
【0165】
この発明の実施の形態による受信機は、アンテナ装置100Cと、受信機300の受信機回路301〜30Kおよび加算器320と、受信機400の乗算器311〜31Kおよび加算器330とを備えるものであってもよい。
【0166】
そして、この受信機は、ヌルサブキャリア周波数における電波の受信強度が閾値Ith2よりも大きく、かつ、閾値Ith1以下であるとき、アンテナ1〜Kを用いて電波をダイバーシチ受信、またはアンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして用いて電波を受信する。
【0167】
従って、この受信機における動作は、図12に示すフローチャートのステップS29Aを、アンテナ1〜Kを用いて電波をダイバーシチ受信、またはアンテナ1〜Kをアダプティブアレーアンテナとして用いて電波を受信するステップに代えたフローチャートに従って行なわれる。
【0168】
上記においては、副アンテナ装置20は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を45度の角度間隔で変えて干渉波の到来方向を検出すると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、副アンテナ装置20は、アンテナ1〜Kから放射される放射ビームの指向性を45度の角度間隔で変えて干渉波の到来方向を検出してもよい。
【0169】
なお、この発明の実施の形態においては、干渉波が所望波よりも強いが、フロントエンドにおけるブロッキングが生じるほど、干渉波が所望波よりも強くないとき、干渉の状況と無線機のリソース要求とを総合的に判断して、干渉検知、他の放送チャネルの受信、および他の通信等、最適な目的のためにアンテナ装置100を使用してもよい。
【0170】
このようにアンテナ装置100を使用した場合、干渉抑圧のためにコストの上昇およびサイズの増大が生じない、という効果が得られる。
【0171】
また、この発明の実施の形態においては、干渉スプリアスが所望波に妨害を与える程に強くないとき、干渉波の抑圧が不要であるので、アンテナ装置100において、K本のアンテナ1〜Kのうちの1本のみを所望波の受信に用い、他のアンテナを他の目的に使用してもよい。
【0172】
更に、この発明の実施の形態においては、干渉波を検出しないとき、アンテナ装置100の動作を停止してもよい。このようにアンテナ装置100を使用した場合、無線機の低消費電力化を図ることができる。
【0173】
更に、この発明の実施の形態においては、可変移相器21〜2Kは、「K個の第1の可変移相器」を構成し、可変移相器11〜1Kは、「K個の第2の可変移相器」を構成する。
【0174】
更に、この発明の実施の形態においては、制御部110は、「第1の制御部」を構成し、制御部40,40A,40Bの各々は、「第2の制御部」を構成する。
【0175】
更に、この発明の実施の形態においては、閾値Ith1は、「第1の閾値」を構成し、閾値Ith2は、「第2の閾値」を構成する。
【0176】
更に、この発明の実施の形態においては、受信機回路301〜30Kは、「K個の受信処理回路」を構成する。
【0177】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0178】
この発明は、干渉波を除去するアンテナ装置に適用される。また、この発明は、干渉波を除去するアンテナ装置を備えた受信機に適用される。
【符号の説明】
【0179】
1〜K アンテナ、10 主アンテナ装置、11〜1K,21〜2K 可変移相器、20 副アンテナ装置、30,50,320,330 加算器、40,40A,40B,110 制御部、60 乗算器、70 発振器、80 FFT、90,90A,90B 検出器、100,100A,100B,100C,200 アンテナ装置、120 送信部、210 信号処理部、300,400 受信機、301〜30K,310 受信機回路、311〜31K 乗算器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
K(Kは2以上の整数)本のアンテナと、
前記K本のアンテナが受信した電波に基づいて所望波の周波数と異なる周波数を有する干渉波を検出するとともに前記干渉波の到来方向を検出し、前記干渉波を検出したことを示す干渉波検出信号と前記到来方向とを出力する副アンテナ装置と、
前記副アンテナ装置から前記干渉波検出信号を受けると、前記副アンテナ装置から受けた前記到来方向に基づいて、前記干渉波の到来方向にヌルを形成して前記K本のアンテナから電波を受信し、または前記干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くして前記K本のアンテナから電波を受信する主アンテナ装置とを備えるアンテナ装置。
【請求項2】
前記副アンテナ装置は、
前記K本のアンテナに対応して設けられたK個の第1の可変移相器と、
前記K本のアンテナから放射されるビームの指向性が所望の角度間隔で複数の方向に変化するように前記K個の第1の可変移相器を制御するとともに、前記ビームの指向性を1つの方向に設定する毎に前記設定した1つの方向を前記副アンテナ装置へ出力する第1の制御部と、
前記ビームの指向性が任意の1つの方向に設定されたときに前記K本のアンテナによって受信された電波に基づいて前記干渉波を検出したか否かを判定し、前記干渉波を検出したとき前記干渉波検出信号を前記主アンテナ装置へ出力する干渉波検出処理を前記複数の方向の全てについて実行する検出器とを含み、
前記主アンテナ装置は、
前記K本のアンテナに対応して設けられたK個の第2の可変移相器と、
前記副アンテナ装置から前記干渉波検出信号を受けると、前記干渉波検出信号を受けたときに前記副アンテナ装置から受けた前記1つの方向を前記干渉波の到来方向とし、前記到来方向に基づいて、前記干渉波の到来方向にヌルが形成されるように前記K個の第2の可変移相器を制御し、または前記干渉波の到来方向における電波の受信強度が基準値よりも低くなるように前記K個の第2の可変移相器を制御する移相制御を実行する第2の制御部とを含む、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記検出器は、前記K本のアンテナによって受信された電波をフーリエ変換し、そのフーリエ変換した電波に基づいて前記干渉波の周波数帯域における受信強度を検出し、その検出した受信強度が閾値よりも大きいとき前記干渉波を検出したと判定する、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記移相制御が実行された状態で前記K本のアンテナを用いて前記所望の周波数を有する信号を送信する送信部を更に備える、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置の前記主アンテナ装置を介して受信電波を受け、その受けた受信電波をアナログ信号からデジタル信号に変換して受信信号処理を行なう信号処理装置とを備える受信機。
【請求項6】
請求項2に記載のアンテナ装置と、
前記K本のアンテナに対応して設けられ、各々が対応するアンテナによって受信された電波を復調するK個の受信処理回路とを備え、
前記検出器は、前記受信強度が第1の閾値よりも大きいとき前記干渉波検出信号を前記第2の制御部へ出力し、前記受信強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下であるとき副アンテナ装置の動作を停止したことを示す第1の停止信号を生成して前記第2の制御部へ出力し、前記受信強度が前記第2の閾値よりも大きく、かつ、前記第1の閾値以下であるとき、主アンテナ装置の動作を停止したことを示す第2の停止信号を生成して前記第2の制御部へ出力し、
前記検出器は、前記受信強度が前記第2の閾値よりも大きく、かつ、前記第1の閾値以下であるとき、前記K本のアンテナをそれぞれ前記K個の受信処理回路へ接続し、
前記第2の制御部は、前記干渉波検出信号を前記検出器から受けると、前記移相制御を実行し、前記第1の停止信号を前記検出器から受けると、前記K本のアンテナが所望の指向性を形成するように前記K個の第2の可変移相器を制御し、前記第2の停止信号を前記検出器から受けると、動作を停止する、受信機。
【請求項1】
K(Kは2以上の整数)本のアンテナと、
前記K本のアンテナが受信した電波に基づいて所望波の周波数と異なる周波数を有する干渉波を検出するとともに前記干渉波の到来方向を検出し、前記干渉波を検出したことを示す干渉波検出信号と前記到来方向とを出力する副アンテナ装置と、
前記副アンテナ装置から前記干渉波検出信号を受けると、前記副アンテナ装置から受けた前記到来方向に基づいて、前記干渉波の到来方向にヌルを形成して前記K本のアンテナから電波を受信し、または前記干渉波の到来方向における電波の受信強度を基準値よりも低くして前記K本のアンテナから電波を受信する主アンテナ装置とを備えるアンテナ装置。
【請求項2】
前記副アンテナ装置は、
前記K本のアンテナに対応して設けられたK個の第1の可変移相器と、
前記K本のアンテナから放射されるビームの指向性が所望の角度間隔で複数の方向に変化するように前記K個の第1の可変移相器を制御するとともに、前記ビームの指向性を1つの方向に設定する毎に前記設定した1つの方向を前記副アンテナ装置へ出力する第1の制御部と、
前記ビームの指向性が任意の1つの方向に設定されたときに前記K本のアンテナによって受信された電波に基づいて前記干渉波を検出したか否かを判定し、前記干渉波を検出したとき前記干渉波検出信号を前記主アンテナ装置へ出力する干渉波検出処理を前記複数の方向の全てについて実行する検出器とを含み、
前記主アンテナ装置は、
前記K本のアンテナに対応して設けられたK個の第2の可変移相器と、
前記副アンテナ装置から前記干渉波検出信号を受けると、前記干渉波検出信号を受けたときに前記副アンテナ装置から受けた前記1つの方向を前記干渉波の到来方向とし、前記到来方向に基づいて、前記干渉波の到来方向にヌルが形成されるように前記K個の第2の可変移相器を制御し、または前記干渉波の到来方向における電波の受信強度が基準値よりも低くなるように前記K個の第2の可変移相器を制御する移相制御を実行する第2の制御部とを含む、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記検出器は、前記K本のアンテナによって受信された電波をフーリエ変換し、そのフーリエ変換した電波に基づいて前記干渉波の周波数帯域における受信強度を検出し、その検出した受信強度が閾値よりも大きいとき前記干渉波を検出したと判定する、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記移相制御が実行された状態で前記K本のアンテナを用いて前記所望の周波数を有する信号を送信する送信部を更に備える、請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置の前記主アンテナ装置を介して受信電波を受け、その受けた受信電波をアナログ信号からデジタル信号に変換して受信信号処理を行なう信号処理装置とを備える受信機。
【請求項6】
請求項2に記載のアンテナ装置と、
前記K本のアンテナに対応して設けられ、各々が対応するアンテナによって受信された電波を復調するK個の受信処理回路とを備え、
前記検出器は、前記受信強度が第1の閾値よりも大きいとき前記干渉波検出信号を前記第2の制御部へ出力し、前記受信強度が前記第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下であるとき副アンテナ装置の動作を停止したことを示す第1の停止信号を生成して前記第2の制御部へ出力し、前記受信強度が前記第2の閾値よりも大きく、かつ、前記第1の閾値以下であるとき、主アンテナ装置の動作を停止したことを示す第2の停止信号を生成して前記第2の制御部へ出力し、
前記検出器は、前記受信強度が前記第2の閾値よりも大きく、かつ、前記第1の閾値以下であるとき、前記K本のアンテナをそれぞれ前記K個の受信処理回路へ接続し、
前記第2の制御部は、前記干渉波検出信号を前記検出器から受けると、前記移相制御を実行し、前記第1の停止信号を前記検出器から受けると、前記K本のアンテナが所望の指向性を形成するように前記K個の第2の可変移相器を制御し、前記第2の停止信号を前記検出器から受けると、動作を停止する、受信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−239297(P2011−239297A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110442(P2010−110442)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(502087460)株式会社トヨタIT開発センター (232)
【Fターム(参考)】
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