説明

アンテナ装置および通信端末装置

【課題】所定の通信距離を確保しつつも、占有エリアの小さなアンテナ装置および小型の通信端末装置を構成する。
【解決手段】アンテナ装置201は、平面導体11が形成された基材10およびコイルアンテナ100を備える。コイルアンテナ100は、磁性体コア20の周囲にコイル導体21を巻回した構造を有する。コイルアンテナ100はコイル導体21のコイル開口部が平面導体11の縁端部に近接配置されている。コイル導体21に流れる電流aは平面導体11に電流bを誘起する。そのため、コイルアンテナ100に矢印Aで示す磁束が生じ、平面導体11に矢印Bで示す磁束が生じる。これにより、平面導体11の周囲に磁束Cが生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置および通信端末装置、特にHF帯の通信システムに用いられるアンテナ装置および通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リーダライタとRFIDタグとを非接触方式で通信させ、リーダライタとRFIDタグとの間で情報を伝達するRFID(Radio Frequency Identification)システムや、二つの通信装置が近距離で通信する近距離無線通信(NFC:Near Field Communication)システムが知られている。例えば13.56MHz帯等のHF帯を通信周波数として利用したRFIDシステムや近距離無線通信システムであれば、主に誘導磁界を介して結合するアンテナが用いられている。
【0003】
近年、携帯電話等の通信端末装置にRFIDシステムや近距離無線通信システムが導入され、この通信端末装置がRFIDタグやそのリーダライタとして利用されたり、近距離無線通信の端末として利用されたりすることがある。HF帯の高周波信号の送受信用のアンテナ装置として磁性体アンテナが知られている。この磁性体アンテナは、たとえば特許文献1や特許文献2に記載されているように、磁性体コアの表面にコイル導体を巻回した構造を有している。
【0004】
図1は特許文献2の磁性体アンテナの分解斜視図である。この磁性体アンテナは、電極層2およびスルーホール1によるコイル4が形成された複数の磁性層5、その上下面を挟む絶縁層6、ならびに絶縁層上面に形成された導電層7を備えた積層体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−317674号公報
【特許文献2】特開2007−019891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HF帯を通信周波数として利用したシステムにおいて、アンテナ装置間の通信距離は、コイルアンテナを通過する磁束に依存する。つまり、アンテナ装置間で或る程度の通信距離を確保するためには、コイルアンテナのサイズを大きくする必要があるが、コイルアンテナの大型化は通信端末装置の小型化を妨げることになる。他方、アンテナのサイズを小さくすると、アンテナの実効面積が小さくなるため、十分な通信距離を確保できない。
【0007】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の通信距離を確保しつつも、占有エリアの小さなアンテナ装置、さらには小型の通信端末装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアンテナ装置は、複数層のループ状の導体パターンが巻回軸回りに巻回された形状のコイル導体を有するコイルアンテナと、
前記コイルアンテナと電磁界を介して結合する平面導体と、
を有し、
前記コイルアンテナは、前記巻回軸が通る面である導体開口面を実装面として前記平面導体に実装されていて、かつ、前記巻回軸は前記平面導体の外周の外側に配置されており、
前記巻回軸方向からの平面視で、前記コイル導体の一部と前記平面導体の外周の縁端部とが少なくとも一部重なっている、
ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の通信端末装置は、複数層のループ状の導体パターンが巻回軸回りに巻回された形状のコイル導体を有するコイルアンテナと、前記コイルアンテナと電磁界を介して結合する平面導体とを有し、前記コイルアンテナは、前記巻回軸が通る面である導体開口面を実装面として前記平面導体に実装されていて、かつ、前記巻回軸は前記平面導体の外周の外側に配置されており、前記巻回軸方向からの平面視で、前記コイル導体の一部と前記平面導体の外周の縁端部とが少なくとも一部重なっているアンテナ装置と、
前記アンテナ装置に接続された通信回路と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンテナ装置は、コイル導体が、複数層のループ状の導体パターンが巻回されたものであり、また、コイル導体の巻回軸が平面導体の外周の外側に配置されていて、平面視したとき、平面導体の外周の縁端部とコイル導体とが重なっていることにより、平面導体に近接する導体パターンは、最下層の導体パターンだけになる。すなわち、線間容量が形成された部分に対して平面導体はほとんど影響しない。その結果、コイルアンテナと平面導体との相対位置のずれによるコイル導体と平面導体との間の容量値の変動が小さくなるため、共振周波数の変動が小さくなり、安定した通信が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は特許文献2の磁性体アンテナの分解斜視図である。
【図2】図2(A)は第1の実施形態のアンテナ装置201の斜視図、図2(B)はアンテナ装置201の平面図、図2(C)はアンテナ装置201の正面図である。
【図3】図3(A)はアンテナ装置201のコイルアンテナ100のコイル導体に流れる電流、平面導体11に流れる電流、コイルアンテナ100による磁界、平面導体11による磁界のそれぞれの向きを示す斜視図である。図3(B)および図3(C)は平面導体11に流れる電流と、それにより発生する磁束の関係を示す図である。
【図4】図4(A)はアンテナ装置201を備える通信端末装置301の断面図、図4(B)は通信端末装置301の平面透視図である。
【図5】図5は第2の実施形態の通信端末装置の使用状態を示す内部透視斜視図である。
【図6】図6は第3の実施形態のアンテナ装置203の分解斜視図である。
【図7】図7(A)は第4の実施形態のアンテナ装置204の斜視図である。図7(B)はアンテナ装置204を通信端末装置に組み込んだ状態を示す正面図である。
【図8】図8(A)、図8(B)は第5の実施形態の二つのアンテナ装置205A,205Bの正面図である。
【図9】図9(A)は共振ブースターアンテナ110の斜視図、図9(B)は共振ブースターアンテナ110の分解斜視図である。図9(C)は共振ブースターアンテナ110の平面図である。
【図10】図10は前記共振ブースターアンテナ110の等価回路図である。
【図11】図11(A)〜(D)は何れも第6の実施形態に係る4つの通信端末装置306A,306B,306C,306Dの正面断面図である。
【図12】図12(A)は第7の実施形態の共振ブースターアンテナ120の分解斜視図、図12(B)は共振ブースターアンテナ120の平面図である。
【図13】図13は共振ブースターアンテナ120の等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以降に示す各実施形態のアンテナ装置および通信端末装置は、NFC(Near Field Communication)等のHF帯RFIDシステムで利用される。
【0013】
《第1の実施形態》
図2(A)は第1の実施形態のアンテナ装置201の斜視図、図2(B)はその平面図、図2(C)はその正面図である。
【0014】
このアンテナ装置201は、平面導体11からなるブースターアンテナおよびコイルアンテナ100を有している。コイルアンテナ100は、磁性体コア20の周囲にコイル導体21が巻回された構造を有している。
【0015】
前記コイルアンテナ100は、コイル導体21の巻回軸が通る面である導体開口面AP(図2(B)参照)を実装面としてエポキシ樹脂等のプリント配線板からなる基材10上に表面実装されている。
【0016】
具体的には、コイルアンテナ100は、フェライト等の磁性体コア20の周囲に銀や銅等のコイル導体21を巻回した構造を有する。コイル導体21は、直方体状の磁性体コア20の二つの主面(前記導体開口面APとなる面)に対して直交する四つの側面(周面)に巻回されている。すなわち、コイル導体21の巻回軸は磁性体コア20の主面に対して垂直方向に延びている。
【0017】
コイルアンテナ100における磁性体コア20は、フェライト焼結体やフェライト材料を樹脂中に分散してなる樹脂体で構成されている。コイル導体21の表面には、さらに低透磁率の絶縁材料で形成された保護膜を有していてもよい。
【0018】
コイルアンテナ100は、いわゆる表面実装型のコイルアンテナ(チップ型コイルアンテナ)として構成されていて、コイルアンテナ100の裏面には、コイル導体21の一端および他端にそれぞれ接続された2つの実装用端子電極(図示省略)が設けられている。すなわち、このコイルアンテナ100は、プリント配線基板等の各種基板上に表面実装可能に構成されている。
【0019】
平面導体11は、銅、銀、アルミニウム等の金属箔によって矩形状に構成されていて、プリント配線板からなる基材10の表面に設けられている。なお、基材10はリジッドなプリント配線板に限定されるものではなく、可撓性樹脂で構成されていてもよい。また平面導体の平面形状は矩形状に限定されるものではなく、円形、菱形など、任意の形状をとることができる。また、平面導体は平面的な薄い金属膜に限定されるものではなく、金属物品の一部であってもよい。
【0020】
コイルアンテナ100は、巻回軸方向からの平面視で、コイル導体21の一部と平面導体11の縁端部とが重なるように配置されている。図2(C)に示す例ではコイルアンテナ100のコイル導体21の一部は平面導体11の形成領域内に寸法G1だけはみ出している。また、平面導体11の外面からコイル導体21の下端部までは高さG2だけ間隔をあけている。これらの寸法G1,G2は小さいほどコイルアンテナ100とブースターアンテナとの結合度が高くなるので、好ましい。後に示すように、平面導体11からなるブースターアンテナはコイルアンテナ100と電磁界を介して結合する。
【0021】
図3(A)は前記アンテナ装置201のコイルアンテナ100のコイル導体21に流れる電流および平面導体11に流れる電流のそれぞれの向きを示す斜視図である。また、図3(B)および図3(C)は、コイルアンテナ100のコイル導体21に流れる電流、平面導体11に流れる電流、およびそれらにより発生する磁束の様子を概略的に示す図である。
【0022】
コイル導体21に電流aの向きに電流が流れると、平面導体11に電流bの方向に電流を誘起される。すなわち、コイル導体21に流れる電流により平面導体の外周に誘導電流bが周回する。その結果、図3(B)に示すようにコイルアンテナ100に矢印φaで示す磁束が生じ、平面導体11に矢印φbで示す磁束が生じる。図3(B)中に示す磁束φa′は平面導体11を避ける位置を通る磁束を表している。
【0023】
図3(C)は図3(B)の磁束をさらに等価的に表した図である。矢印φcで示す磁束は平面導体11の周囲に生じる前記磁束Bとコイルアンテナ100に生じる前記磁束φa′との合成による磁束である。
【0024】
通信相手側のコイルアンテナから磁束が入る場合は上述とは逆の現象が生じる。すなわち、通信相手側のコイルアンテナの磁束が平面導体11の周囲を通るとともにコイルアンテナ100と鎖交すると、平面導体11に電流bが流れ、コイル導体21に電流aが流れる。
【0025】
図4(A)は前記アンテナ装置201を備える通信端末装置301の断面図、図4(B)はその平面透視図である。基材10はプリント配線基板であり、平面導体11は基材10の表面に形成されている。そして、コイルアンテナ100は基材10に表面実装されている。
【0026】
図3(C)に示したとおり、コイルアンテナ100による磁束と平面導体11による磁束が合成されて、図4(A)に示す矢印方向に大きな磁束が形成される。このことにより、アンテナ装置201の指向性は図4(A)に示す矢印方向を向くことになる。すなわち、アンテナ装置201は通信端末装置301の端末筐体320の先端FE付近から裏面BSの方向について高い利得が得られる。したがって、この通信端末装置301の手元部HPを把持し、先端部を通信相手にかざすことにより、高利得のもとでの通信が可能となる。
【0027】
《第2の実施形態》
図5は第2の実施形態の通信端末装置の使用状態を示す内部透視斜視図である。この通信端末装置302はたとえば携帯電話端末である。通信端末装置302の端末筐体320にはメイン基板111と、サブ基板としての基材10が内蔵されている。アンテナ装置202は基材10の表面に構成されている。このアンテナ装置202はバッテリーパック112とともに端末筐体320の裏面BS側に配置されている。メイン基板111は、エポキシ樹脂等の硬質樹脂基板で構成された大型のプリント配線板であり、表示装置の駆動回路、バッテリーの制御回路等を構成する回路素子が搭載されている。サブ基板としての基材10は、ポリイミドや液晶ポリマ等の可撓性樹脂基板で構成されていて、アンテナ装置202の他、通信回路(RF回路)等を構成する回路素子が基材10上に搭載されている。なお、これらの回路素子はメイン基板111側に搭載されていてもよい。
【0028】
前記通信回路はたとえば無線ICチップで構成されていて、アンテナ装置202に接続(給電)される。この無線ICチップと前記アンテナ素子202とでRFIDが構成される。
【0029】
通信端末装置302は、図5のようにリーダライタなどの通信相手側のコイルアンテナ400にかざすことにより、アンテナ装置202と通信相手側のコイルアンテナ400とが主に誘導磁界を介して結合し、所定の情報が送受され、RFIDとして機能する。
【0030】
《第3の実施形態》
図6は第3の実施形態のアンテナ装置203の分解斜視図である。磁性体からなる基材層10a,10b,10c,10d,10eが積層された積層基板によりアンテナ装置203が構成されている。基材層10a〜10dにはループ状の導体パターン21a〜21d、基材層10eの一方主面には給電回路に接続される入出力端子22a,22dがそれぞれ形成されている。基材層10a〜10eにはビア導体21vが形成されていて、導体パターン21a〜21dおよびビア導体21vによって一つのコイル導体が構成されている。
【0031】
基材層10aの他方の主面には平面導体11が形成されている。この平面導体11は、その縁端部がコイル導体のコイル開口部に近接配置されるように形成されている。このことによって、コイルアンテナと平面導体とが積層基板に一体化されたアンテナ装置が構成される。
【0032】
なお、基材10a〜10eは、これら全てが磁性体層である必要はない。たとえば基材層10aは非磁性体層であってもよい。基材層10aは非磁性体層であれば、コイル導体と平面導体11(ブースターアンテナ)との結合度を高くできる。
【0033】
《第4の実施形態》
図7(A)は第4の実施形態のアンテナ装置204の斜視図である。図7(B)はそのアンテナ装置204を通信端末装置304に組み込んだ状態を示す正面図である。
【0034】
このアンテナ装置204は、図7(B)に示すように、通信端末装置304の端末筐体320に対し、その先端FE寄りの位置に配置されている。そのため、通信端末装置304の先端FEを、たとえばリーダライタのアンテナなどの通信相手に近接させる(かざす)ことによって安定した通信が可能となる。
【0035】
また、本実施形態のアンテナ装置204は、第1平面導体領域11Aの縁端部にコイルアンテナ100が配置されている。第1平面導体領域11Aと第2平面導体領域11Bとは、所定の角度θをもって交わる平面上にそれぞれ形成されている。この場合、第1平面導体領域11Aの法線方向と第2平面導体領域11Bの法線方向との中間方向にアンテナ装置204の指向性が生じ、この方向の通信距離を大きくすることができる。
【0036】
すなわち、このアンテナ装置204は、図7(B)に示すように、アンテナ装置204の第2平面導体領域11Bが通信端末装置の端末筐体320の先端FE側になるように配置される。そのため、アンテナ装置204は、端末筐体320の先端FE方向から裏面BS方向にかけての範囲で高い感度が得られる。
【0037】
なお、平面導体領域11A,11Bに流れる電流の損失が大きくなることを防ぐため、第1平面導体領域11Aと第2平面導体領域11Bとがなす角度θは、90°よりも大きく、135°よりも小さいことが好ましい。
【0038】
《第5の実施形態》
図8(A)、図8(B)は第5の実施形態の二つのアンテナ装置205A,205Bの正面図である。これらの第5の実施形態のアンテナ装置205A,205Bは第1の実施形態で示したアンテナ装置201にさらに共振ブースターアンテナ110を備えたものである。この共振ブースターアンテナは、本発明に係る「平面コイルアンテナ」に相当する。共振ブースターアンテナ110の詳細な構成は後に示すが、この共振ブースターアンテナ110はコイルアンテナ100と磁界結合してブースターアンテナとして作用する。図8(A)の例では、共振ブースターアンテナ110は平面導体11に平行で、且つ平面導体11の中央よりコイルアンテナ100寄りの位置に配置されている。そのため、図8(A)に示すように、コイルアンテナ100による磁束φcと磁界結合して矢印A方向へ指向するアンテナ装置として作用する。
【0039】
図8(B)の例では、共振ブースターアンテナ110は平面導体11に平行で、且つ平面導体11の中央よりコイルアンテナ100から離れた位置に配置されている。すなわち、コイルアンテナ100が近接する平面導体の一方の辺に対向する他方の辺寄りの位置に共振ブースターアンテナ110が配置されている。そのため、図8(B)に示すように、コイルアンテナ100による磁束φcと磁界結合して矢印A方向へ指向するアンテナ装置として作用する。
【0040】
図9(A)は前記共振ブースターアンテナ110の斜視図、図9(B)は共振ブースターアンテナ110の分解斜視図である。図9(C)は共振ブースターアンテナ110の平面図である。この共振ブースターアンテナ110は基材30および基材30に形成された矩形渦巻状のコイル導体L1,L2を備えている。基材30の上面に形成された矩形渦巻状のコイル導体L1と基材30の下面に形成された矩形渦巻状のコイルL2はコイル導体同士が対面するように形成されていて、且つ巻回方向が逆方向(一方からの平面視では同一方向)となるように形成されている。
【0041】
図10は前記共振ブースターアンテナ110の等価回路図である。図10においてインダクタL1,L2は前記矩形渦巻状のコイルL1,L2に対応する。矩形渦巻状のコイルL1,L2は基材30を介して対面しているので、両者間に容量が生じる。図10のキャパシタC1,C2はその容量を表している。このようにして、インダクタL1,L2およびキャパシタC1,C2によって、共振ブースターアンテナ110はLC共振回路として作用する。この共振周波数は通信信号のキャリア周波数に一致または近接している。
【0042】
以上に示したように、平面導体に近接する共振ブースターアンテナを設けることによって、導体板を新たに設けることなく、コイルアンテナの実装位置に関わらず共振ブースターアンテナによって所望の方向での通信感度を向上させることができる。
【0043】
《第6の実施形態》
図11(A)〜(D)は何れも第6の実施形態に係る4つの通信端末装置306A,306B,306C,306Dの正面断面図である。これらの図において、通信端末装置306A,306B,306C,306Dの端末筐体320には、メイン基板111、コイルアンテナ100、共振ブースターアンテナ110等が内蔵されている。端末筐体320の図の上方が端末筐体の底面、下方が端末筐体の天面(表示パネルや操作部のある面)である。
【0044】
メイン基板111の内部にはグランド導体としての平面導体11が形成されている。コイルアンテナ100やその他の多数のチップ部品はメイン基板111に実装されている。このコイルアンテナ100は、巻回軸方向からの平面視で、コイル導体の一部と平面導体11の縁端部とが少なくとも一部重なっている。共振ブースターアンテナ110は端末筐体320の内面に貼付、または内面に沿って配置されている。また、この共振ブースターアンテナ110は、平面導体11に平行で、且つ平面導体11の中央よりコイルアンテナ100から離れた位置に配置されている。
【0045】
図11(A)の通信端末装置306Aでは、メイン基板111に対するコイルアンテナ100の実装面側に共振ブースターアンテナ110が配置されている。図11(B)の通信端末装置306Bでは、メイン基板111に対するコイルアンテナ100の実装面とは反対側に共振ブースターアンテナ110が配置されている。図11(C)の通信端末装置306Cでは、メイン基板111に対するコイルアンテナ100の実装面側に共振ブースターアンテナ110Fが配置されていて、メイン基板111に対するコイルアンテナ100の実装面とは反対側に共振ブースターアンテナ110Bが配置されている。図11(D)の通信端末装置306Dでは、端末筐体320の2面に沿って(稜に)共振ブースターアンテナ110が配置されている。
【0046】
図11(A)に示した通信端末装置306Aでは、平面導体11が放射体として作用するとともに、共振ブースターアンテナ110も放射体として作用する。共振ブースターアンテナ110は矢印A方向の指向性が高いので、矢印A方向の通信可能最大距離を大きくできる。
【0047】
図11(B)に示した通信端末装置306Bでは、共振ブースターアンテナ110は矢印B方向の指向性が高いので、矢印B方向の通信可能最大距離を大きくできる。また、平面導体11も放射体として作用するので、矢印B方向とは反対方向への利得も確保できる。
【0048】
図11(C)に示した通信端末装置306Cでは、平面導体11が放射体として作用するとともに、共振ブースターアンテナ110F,110Bも放射体として作用する。共振ブースターアンテナ110Fは矢印A方向の指向性が高く、共振ブースターアンテナ110Bは矢印B方向の指向性が高いので、矢印A方向およびB方向の通信可能最大距離をともに大きくできる。
【0049】
図11(D)に示した通信端末装置306Dでは、平面導体11が放射体として作用するとともに、共振ブースターアンテナ110も放射体として作用する。共振ブースターアンテナ110は矢印C方向(45度方向)の指向性が高いので、矢印C方向の通信可能最大距離を大きくできる。
【0050】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では共振ブースターアンテナの別の例を示す。図12(A)は第7の実施形態の共振ブースターアンテナ120の分解斜視図、図12(B)は共振ブースターアンテナ120の平面図、図13は共振ブースターアンテナ120の等価回路図である。
【0051】
この共振ブースターアンテナ120は基材30および基材30に形成された矩形渦巻状のコイル導体L1,L2を備えている。基材30の上面に形成された矩形渦巻状のコイル導体L1と基材30の下面に形成された矩形渦巻状のコイルL2は、コイル導体同士が対面するように形成されていて、且つ巻回方向が逆方向(一方からの平面視では同一方向)となるように形成されている。コイル導体L1の内周端はビア導体を介してコイル導体L2の内周端に導通している。コイル導体L1の外周端とコイル導体L2の外周端との間に図外のキャパシタC1が接続される。
【0052】
図13に示すように、インダクタL1,L2およびキャパシタC1によって、共振ブースターアンテナ120はLC共振回路として作用する。この共振周波数は通信信号のキャリア周波数に一致または近接している。
【0053】
《他の実施形態》
以上に示した各実施形態では、平面導体11が基材10の外面に露出している例を示したが、平面導体11はたとえばプリント配線板の内部に設けられていてもよい。
【0054】
なお、コイル導体(第1の実施形態で示した符号(以下、同様)の21)の巻回軸は平面導体(11)に対して必ずしも垂直でなくてもよい。コイル導体(21)の巻回軸が通る面である導体開口面APを実装面として、コイルアンテナ(100)が実装されていればよい。そして、平面導体(11)からなるブースターアンテナとコイルアンテナ(100)とが電磁界を介して結合すればよい。特にコイル導体(21)の巻回軸が平面導体(11)の面に対して垂直関係であれば、コイルアンテナ(100)のコイル導体(21)に流れる電流による磁束と平面導体(11)に流れる電流による磁束との向きが揃うので、アンテナ装置(201)の指向性を高めることができる。通常は、コイル導体(21)の巻回軸と平面導体(11)の法線とが±45度の範囲にあれば良好な指向性および利得が得られる。
【0055】
また、本発明のアンテナ装置は、HF帯用のアンテナ装置に限定されるものではなく、LF帯やUHF帯等の他の周波数帯のアンテナ装置にも適用できる。
【符号の説明】
【0056】
BS…裏面
FE…先端
HP…手元部
10…基材
10a,10b,10c,10d,10e…基材層
11…平面導体
11A…第1平面導体領域
11B…第2平面導体領域
20…磁性体コア
21…コイル導体
21a…導体パターン
21v…ビア導体
22a,22d…入出力端子接続用電極
30…基材
100…コイルアンテナ
110,120…共振ブースターアンテナ(平面コイルアンテナ)
111…メイン基板
112…バッテリーパック
201〜204…アンテナ装置
301,302,304…通信端末装置
320…端末筐体
400…通信相手側のコイルアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層のループ状の導体パターンが巻回軸回りに巻回された形状のコイル導体を有するコイルアンテナと、
前記コイルアンテナと電磁界を介して結合する平面導体と、
を有し、
前記コイルアンテナは、前記巻回軸が通る面である導体開口面を実装面として前記平面導体に実装されていて、かつ、前記巻回軸は前記平面導体の外周の外側に配置されており、
前記巻回軸方向からの平面視で、前記コイル導体の一部と前記平面導体の外周の縁端部とが少なくとも一部重なっている、
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記コイル導体の巻回領域の少なくとも内部に配置された磁性体を有する、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記平面導体と電磁界を介して結合する平面コイルアンテナを有する、請求項1または2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記平面コイルアンテナは、前記平面導体の中央に対し前記コイルアンテナから離れた位置に配置されている、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記平面導体は、所定の角度をもって交わる平面上にそれぞれ配置された第1平面導体領域と第2平面導体領域とを有する、請求項1〜4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記平面導体はグランド導体である、請求項1〜5のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項7】
HF帯を通信周波数としたものである、請求項1〜6のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項8】
複数層のループ状の導体パターンが巻回軸回りに巻回された形状のコイル導体を有するコイルアンテナと、前記コイルアンテナと電磁界を介して結合する平面導体とを有し、前記コイルアンテナは、前記巻回軸が通る面である導体開口面を実装面として前記平面導体に実装されていて、かつ、前記巻回軸は前記平面導体の外周の外側に配置されており、前記巻回軸方向からの平面視で、前記コイル導体の一部と前記平面導体の外周の縁端部とが少なくとも一部重なっているアンテナ装置と、
前記アンテナ装置に接続された通信回路と、
を備えたことを特徴とする通信端末装置。
【請求項9】
前記通信回路を収納する長手形状の筐体を備え、当該筐体の端部側に前記平面導体が位置するように前記アンテナ装置が配置された、請求項8に記載の通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−55684(P2013−55684A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242388(P2012−242388)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2012−534170(P2012−534170)の分割
【原出願日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】