説明

アンテナ装置及び携帯無線機

【課題】アンテナ素子を金属板と並走して近接配置してもアンテナ性能劣化が生じ難いアンテナ装置及び携帯無線機を提供する。
【解決手段】第1の回路基板4と、第1の回路基板4に設けられた給電部5と、給電部5に電気的に接続されたアンテナ素子6と、第1の回路基板4の少なくとも一部と対向かつ並走するとともに、アンテナ素子6と並走するように配置された金属板7と、を備え、金属板7に、給電部5の近傍において、金属板7の一部にアンテナ素子6と並走するようにスリット10を設けた。これにより、アンテナ素子6を金属板7と並走して近接配置しても、アンテナ性能劣化を抑制できる。すなわち、スリット10を設けることで、金属板7の電流ベクトルの向きが変化し、アンテナ素子6と第1の回路基板4と逆相となる電流量が減少するので、アンテナ素子6を金属板7と並走して近接配置してもアンテナ性能劣化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び該アンテナ装置を用いた携帯無線機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やスマートフォン等の携帯無線機では、デザインや使用時の利便性から小型化及び薄型化が求められるとともに、使用周波数の広帯域化や通信性能の向上などが求められている。
【0003】
携帯電話等の携帯無線機のアンテナの一例が特許文献1〜3に記載されている。すなわち、特許文献1には、プリント基板やLCD(液晶表示器)のグランド部から露出させて設けたアンテナ素子が記載されている。特許文献2には、基板に設けられたアンテナ素子と該アンテナ素子と対向する位置に設けられた無給電素子が記載されている。特許文献3には、導体板に切り込みを入れてスロットを形成し、該スロットの長手方向の中心軸線を境界にして第1の放射導体と第2の放射導体を形成し、該スロットを形成する対向する2つの導体縁で給電するようにしたアンテナ素子が記載されている。
【0004】
ところで、携帯無線機に防水性を確保するためには、正面側の筐体と背面側の筐体を密着させる必要がある。この密着を保つ手段として、正面側の筐体と背面側の筐体の外縁の周囲全体に平面部を設け、それぞれの平面部を、粘着性を有する両面テープで固着する構成がある。この構成の場合、筐体内部に搭載されるバネやクッションなどを持つ部材、例えば、バネ端子を備えるスピーカや、接点用バネの荷重を両面テープの粘着力だけで抑える必要があるため、これら部材が増えると、バネの荷重が増加し、両面テープの粘着力では密着を保つことは不十分となり、両面テープがはがれ、背面側の筐体と正面側の筐体間に隙間が発生し、防水性を確保することが困難となる。そこで、バネやクッションなどの内部からの荷重を抑え、両面テープをはがれにくくするため、筐体背面側に回路基板と略同じサイズの金属板を設ける構造が必要となる。この金属板に正面側の筐体に勘合する爪などを設け、正面側の筐体に金属板を保持する構造により、バネやクッションなどの荷重を金属板で抑えることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−104419号公報
【特許文献2】特開2006−041899号公報
【特許文献3】特開2003−283232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、携帯無線機の小型化及び薄型化に伴い、上記金属板とアンテナ素子が近接し易くなり、アンテナ性能の劣化が生じ易くなるという課題が生ずる。すなわち、金属板とアンテナ素子が近接してアンテナ素子と金属板の一部が並走することで、当該箇所におけるアンテナ素子と金属板の電流は逆向きとなる。また、第1の回路基板と金属板の一部が並走することで、同様に当該箇所における第1の回路基板と金属板の電流は逆向きとなる。このように、アンテナ素子と第1の回路基板に近接して金属板が配置されると、アンテナ素子および第1の回路基板に対して、金属板の電流は逆相となり、互いの電流を相殺するため、アンテナ性能は劣化する。
【0007】
本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、アンテナ素子を金属板と並走して近接配置してもアンテナ性能劣化が生じ難いアンテナ装置及び携帯無線機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のアンテナ装置は、第1の回路基板と、前記第1の回路基板に設けられた給電部と、前記給電部に電気的に接続されたアンテナ素子と、前記第1の回路基板の少なくとも一部と対向かつ並走し、前記アンテナ素子と並走するように配置された金属板と、を備え、前記給電部の近傍において、前記金属板の一辺を分断する切り込み箇所となるスリット開口部を設け、前記アンテナ素子と並走するように、スリットを設けることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、金属板の給電部の近傍の一部に、アンテナ素子と並走するように、金属板の一部にスリットを設けたので、金属板の電流の向きが変化し、アンテナ素子、または、第1の回路基板、または、アンテナ素子と第1の回路基板の両者と同相の電流が、金属板において増加する。したがって、アンテナ素子および第1の回路基板に対して、逆相であった金属板の電流が減少し、互いの電流の相殺は緩和され、アンテナ素子を金属板と並走して近接配置してもアンテナ性能の劣化が抑制される。
【0010】
上記構成において、前記金属板は、前記第1の回路基板と少なくとも一部が対向する金属板基部と、前記スリットにより一部が分断され、前記アンテナ素子と並走する箇所を有する金属板並走部と、前記金属板基部と前記金属板並走部を前記給電部と離隔する位置で接続する金属板接続部と、を備え、前記金属板並走部を、前記給電部を始点として前記アンテナ素子の展開される方向に対して、前記金属板接続部と前記金属板並走部を接続する箇所を始点として、前記金属板並走部の展開される方向の一部が逆方向となるように配置することを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、給電部を始点とするアンテナ素子の展開方向と金属板接続部と金属板並走部の接続箇所を始点とする金属板並走部の展開方向は逆向きとなり、並走箇所の方向が限定され、電流の向きを制御しやすくなるため、アンテナ素子と、または、第1の回路基板と、または、アンテナ素子と第1の回路基板の両者に流れる電流と略同一の向きとなる金属板の電流が増加し、アンテナ素子を金属板と並走して近接配置してもアンテナ性能劣化が抑制される。
【0012】
上記構成において、前記アンテナ素子の一部は、前記給電部近傍の、前記スリットを設けた箇所において、前記スリット開口部を設けず、前記金属板から露出することを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、給電部を基板端から内側に設け、金属板並走部の開放端側を金属板基部に接続する構成が可能となり、構造設計の自由度を向上しつつ、アンテナ性能の劣化量を低く抑えることができる。
【0014】
上記構成において、前記第1の回路基板と対向し、かつ一部が並走するように配置される第2の回路基板を備え、前記第1の回路基板と前記アンテナ素子を、前記第2の回路基板と前記金属板の間に配置することを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、アンテナ素子が第2の回路基板と金属板の間に配置されても、金属板に形成されたスリットによって、アンテナ性能劣化が抑制される。
【0016】
上記構成において、前記第1の回路基板と前記金属板の間に挟まれ、かつ、前記アンテナ素子の少なくとも一部と並走する金属部品を備え、前記金属部品を保持する保持板金を、前記金属部品の背面に、前記金属板と接続させず、前記金属板とは別体として備え、前記給電部と離隔する位置において、前記保持板金と前記金属板を接続する第1の導電性部材を備えることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、保持板金と金属板を別体とし、金属部品と保持板金がアンテナ素子に近接しても、保持板金と金属板を第1の導電性部材によって導通させることにより、保持板金と金属板基部にスリットを設けたことと同様の構成となり、保持板金においてアンテナ素子の電流と略同じ向きの電流が増加し、アンテナ性能劣化を抑制することができる。
【0018】
上記構成において、前記第1の回路基板と前記金属板基部とを電気的に接続する第2の導電性部材を前記給電部近傍に備えることを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、第2の導電性部材の接続によって第1の回路基板の電流は金属板に流れ、金属板の電流が増加するので、アンテナ性能を向上することが可能となる。
【0020】
上記構成において、前記金属板基部と前記金属板接続部の接続箇所で接続され、前記給電部と離隔した位置で接続され、前記金属板接続部と対向し、背面側に離隔するよう配置された金属板延長素子を備えることを特徴とする。
【0021】
上記構成によれば、金属板基部の電流は金属板延長素子に流れるので、アンテナ性能を向上することが可能となる。
【0022】
上記構成において、前記第1の回路基板と前記金属板の間に第3の回路基板を備え、前記第3の回路基板に接続される金属部品を前記アンテナ素子の少なくとも一部と並走するように備え、前記金属部品を保持する保持板金を前記金属板と導通させず、前記金属部品の背面に備え、前記第3の回路基板上において、前記金属部品を機能させる信号線を備え、前記第3の回路基板は、正面視で前記給電部の近傍において、前記アンテナ素子と重なる箇所の一部にスリットを有し、前記信号線を前記第3の回路基板のグランドに接続することを特徴とする。
【0023】
上記構成によれば、金属部品及び金属部品に接続される第3の回路基板の、特にアンテナ素子近傍からスリット近傍の領域において、アンテナ素子と略同一となる電流が増加するので、アンテナ素子を第3の回路基板と並走して近接配置しても、アンテナ性能劣化が抑制される。
【0024】
本発明の携帯無線機は、上記アンテナ装置を備えたことを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、上記アンテナ装置を備えるので、アンテナ効率のよい通信が可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、アンテナ素子を金属板と並走して近接配置してもアンテナ性能劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1に係る携帯無線機の概略構成を示す図
【図2】図1の携帯無線機におけるアンテナ素子と金属板の配置方法を説明するための図
【図3】図1の携帯無線機におけるアンテナ素子と金属板との距離を変化させた場合のアンテナ効率を説明するための図
【図4】本発明を使用していない場合の携帯無線機の各部における電流ベクトルを示す図
【図5】図1の携帯無線機の各部における電流ベクトルを示す図
【図6】図1の携帯無線機において、アンテナ素子が金属板に重ならない状態で、アンテナ素子と金属板の距離を変化させたときのアンテナ効率を説明するための図
【図7】図1の携帯無線機のアンテナ効率を説明するための図
【図8】図1の携帯無線機のスリットの水平方向の長さ(スリット深さ)を変化させた場合のアンテナ効率を説明するための図
【図9】図1の携帯無線機のスリットの垂直方向の長さ(スリット幅)を変化させた場合のアンテナ効率を説明するための図
【図10】本発明の実施の形態2に係る携帯無線機の概略構成を示す図
【図11】本発明の実施の形態3に係る携帯無線機の概略構成を示す図
【図12】図11の携帯無線機の第1の回路基板、金属板及びアンテナ素子を拡大した斜視図
【図13】図11の携帯無線機におけるアンテナ素子と金属板との距離を変化させた場合のアンテナ効率を説明するための図
【図14】本発明の実施の形態4に係る携帯無線機の概略構成を示す図
【図15】図14の携帯無線機のアンテナ効率を説明するための図
【図16】本発明の実施の形態5に係る携帯無線機の概略構成を示す図
【図17】図16の携帯無線機のアンテナ素子周辺の主要構成部品の展開図
【図18】本発明の実施の形態6に係る携帯無線機の概略構成を示す図
【図19】本発明の実施の形態7に係る携帯無線機の概略構成を示す図
【図20】図19の携帯無線機の第1の筐体内の主要構成部品を示す図
【図21】図18及び図19の携帯無線機のスライド状態におけるアンテナ効率の実測値を示す図
【図22】本発明の実施の形態8に係る携帯無線機の概略構成を示す図
【図23】図22の携帯無線機における導電性部材の接続状態を示す斜視図
【図24】図22の携帯無線機の第1の筐体内の主要構成部品を示す図
【図25】図22の携帯無線機のスライド状態におけるアンテナ効率の実測値を示す図
【図26】本発明の実施の形態9に係る携帯無線機の概略構成を示す図
【図27】図26の携帯無線機の第1の筐体内の主要構成部品を示す図
【図28】図26の携帯無線機のスライド状態におけるアンテナ効率の実測値を示す図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る携帯無線機の概略構成を示し、(a)は正面斜視図、(b)は左側面視図、(c)は正面視図、(d)は右側面視図、(e)は背面視図、(f)は天面視図である。同図において、本実施の形態に係る携帯無線機1は、スマートフォンと呼ばれるストレート構造の携帯無線機であり、長方形状の第1の筐体2を有する。第1の筐体2は、正面側に配置される凹形状を有する筐体と、背面側に配置される板状の筐体(図示略)で構成され、それぞれの筐体の外縁の周囲全体に平面部を設け、それぞれの平面部を、粘着性を有する両面テープで固着し、防水性を確保する。第1の筐体2内には、電池3と、該電池3に接続され、無線回路(図示略)が搭載される第1の回路基板4と、第1の回路基板4に配置され、前記無線回路と接続される給電部5と、該給電部5に接続され、第1の回路基板4の無線回路の電力を放射するアンテナ素子6と、第1の筐体2に保持され、第1の筐体2に配置される各種部材の内圧を抑制する金属板7とを備える。なお、上記第1の回路基板4、給電部5、アンテナ素子6及び金属板7はアンテナ装置を構成する。
【0030】
アンテナ素子6は、導電性部材で構成され、板状の平面部を有し、給電部5に接続される。アンテナ素子6は、第1の筐体2の長手方向(以降、垂直方向と呼ぶ)に展開され、第1の回路基板4の面と平行な面を有し、アンテナ素子垂直部6−1と、該アンテナ素子垂直部6−1の給電部5と反対側の箇所で接続され、第1の筐体2の幅方向(以降、水平方向)に展開され、第1の回路基板4及びアンテナ素子垂直部6−1と同じ平面を有するアンテナ素子水平部6−2で構成される。アンテナ素子水平部6−2において、アンテナ素子垂直部6−1と接続されていない箇所はアンテナ素子開放端6−3である。
【0031】
金属板7は、第1の回路基板4の平面部と対向する面を持ち、少なくとも一部が並走し、また、アンテナ素子6の一部と並走する箇所をもつよう配置される。金属板7には、給電部5の近傍において、アンテナ素子水平部6−2の展開方向と並走かつ平行となるように切り込みが入れられて、スリット10が形成されている。また、給電部5の近傍の金属板7の1辺を分断する切り込み追加箇所をスリット開口部10−1と定義する。つまり、スリット開口部10−1は金属板7のいずれか一辺に配置される。本実施の形態では、金属板基部と第1の回路基板4が正面視で重ならない天面側の箇所に配置している。
【0032】
金属板7は、第1の回路基板4と対向し、正面透視で重なる箇所となる金属板基部7−1と、該金属板基部7−1からスリット開口部10−1の逆側の終端部を始点としてスリット開口部10−1まで水平方向に展開され、アンテナ素子6及びスリット10と並走し、平行に配置される金属板並走部7−3と、金属板基部7−1と金属板並走部7−3を接続する金属板接続部7−2とで構成される。
【0033】
図2は、図1の構成において、第1の回路基板4と給電部5とアンテナ素子6と金属板7とスリット10のみに限定して、接続状態と配置関係の詳細を示し、(a)は正面視図、(b)は背面視図である。同図を用いて、位置関係と接続状態を説明する。図2(a)において、金属板基部7−1は第1の回路基板4に隠れる。スリット開口部10−1はアンテナ素子垂直部6−1に隠れるが、便宜上あえて図示している。第1の回路基板4は、給電部5の箇所において、アンテナ素子垂直部6−1に接続され、アンテナ素子垂直部6−1は、接続箇所C1において、アンテナ素子水平部6−2に接続される。図2(b)において、給電部5と、アンテナ素子水平部6−2と、アンテナ素子開放端6−3と、第1の回路基板4は、金属板7に隠れる。アンテナ素子垂直部6−1は、金属板並走部7−3に隠れている部分とスリット10で露出する部分がある。金属板基部7−1は、接続箇所C2において、金属板接続部7−2に接続され、金属板接続部7−2は、接続箇所C3において、金属板並走部7−3に接続される。水平方向のみの位置関係に着目すると、給電部5と、スリット開口部10−1と、アンテナ素子垂直部6−1と、金属板並走部開放端7−4とは、略同じである。また、接続箇所C3とスリット終端部10−2は同じである。アンテナ素子6と、スリット10と、金属板並走部7−3の展開方向について説明する。アンテナ素子水平部6−2において、接続箇所C1を始点として、アンテナ素子開放端6−3に向かって展開されるベクトルD1の向きと、スリット10において、スリット開口部10−1を始点として、スリット終端部10−2に向かって展開されるベクトルD2の向きは同一である。金属板並走部7−3において、スリット開口部10−1と逆側のスリット終端部10−2および接続箇所C3を始点として、スリット開口部10−1を終点とする水平方向のベクトルD3の向きと、前記ベクトルD1および前記ベクトルD2の水平方向の向きは互いに逆となるように配置する。これにより、金属板並走部7−3の展開方向D3は、アンテナ素子水平部6−2の展開方向D1およびスリット10の展開方向D2と互いに逆向きとなる。また、アンテナ素子垂直部6−1の一部P1を、給電部5の近傍に設けたスリット10の箇所で、正面視で、金属板7と重なることなく露出させることで、金属板並走部7−3の展開方向D3は、アンテナ素子水平部6−2の展開方向D1およびスリット10の展開方向D2と常に逆向きとなる。つまり、給電部5の水平方向における位置を第1の回路基板4の外側端部から、スリット終端部10−2および接続箇所C3の方向に移動させても、スリット開口部10−1からスリット終端部10−2までのいずれかの範囲内に配置すれば、逆向きの関係は維持される。
【0034】
次に、本実施の形態に係る携帯無線機1の効果を検証した結果について説明する。
図3は、アンテナ素子6と金属板7との距離を変化させた場合のアンテナ性能を表す効率(以下、“アンテナ効率”と呼ぶ)を説明するための図であり、(a)はシミュレーション検証結果を示し、(b)は本発明を使用しない場合(未対策)のシミュレーション解析モデルを示し、(c)は本発明を使用する場合のシミュレーション解析モデルを示す。このシミュレーション解析では、第1の回路基板4の各辺を0.27λとし、金属板7の垂直方向の一辺を0.37λ、水平方向の一辺を0.27λとする。また、第1の回路基板4と金属板7の間隔を0.3λとする。また、スリット10の深さを0.12λ、幅を0.02λに固定する。なお、λは設計周波数における波長を示すものである。アンテナ素子6の長さは本発明の使用の有無で最適化する。本発明を使用しない場合は、アンテナ素子水平部6−2の長さを0.11λとし、全長を0.19λとする。本発明を使用する場合は、アンテナ素子水平部6−2の長さを0.08λとし、全長を0.16λとする。なお、アンテナ素子6と金属板7は正面透視で重なっている。
【0035】
図3の(a)において、縦軸はアンテナ効率(dB)であり、横軸はアンテナ素子6と金属板7の距離d1である。×印の破線70は本発明を使用しない場合のアンテナ効率であり、○印の実線71は本発明を使用した場合のアンテナ効率である。アンテナ素子6と金属板7の距離が比較的離れている0.033λにおいて、本発明を使用しない場合のアンテナ効率は−3.9dBに対し、本発明を使用した場合のアンテナ効率は−2.2dBであり、本発明により、1.7dBの改善効果が得られる。一方、アンテナ素子6と金属板7の距離を0.003λと非常に近接させる場合において、本発明を使用しない場合のアンテナ効率は−15.4dBに対し、本発明を使用した場合のアンテナ効率は−5.6dBであり、9.8dBの大幅な改善効果が得られる。つまり、アンテナ素子6と金属板7の距離を0.033λから0.003λに変化させた場合のアンテナ効率を比較すると、本発明を使用しない場合、アンテナ効率は−3.9dBから−15.4dBとなり、11.5dBの大幅な劣化となるが、本発明を使用した場合、アンテナ効率は−2.2dBから−5.6dBとなり、3.4dBの劣化であり、劣化量を8.2dB抑制することができ、この劣化量の抑制効果はアンテナ素子6と金属板7の距離が縮まるほど顕著となる。
【0036】
次に、図4及び図5を参照して携帯無線機1の各部における電流ベクトルについて説明する。
図4は、本発明を使用していない場合の携帯無線機の各部における電流ベクトルを示す図であり、(a)は全部品における電流ベクトルであり、左側に正面視、右側に右側面視を示し、(b)はアンテナ素子6と第1の回路基板4における電流ベクトルであり、左側に正面視、右側に右側面視を示し、(c)は金属板7における電流ベクトルであり、左側に正面視、右側に右側面視を示す。この場合、矢印の方向は“電流の向き”、長さは“電流量”を示す。
【0037】
図4の(b)と(c)を比較する。
(1)点線部90に着目する。アンテナ素子6の電流は給電部5に向かって流れるのに対し、該アンテナ素子6に対向する金属板並走部7−3の電流は給電部5からアンテナ素子開放端6−3に向かって流れており、両者の電流は互いに逆向き、つまり逆位相であり、互いの電流は相殺される。
(2)一点鎖線部91に着目する。第1の回路基板4における電流は給電部5から対角に向かって流れているのに対して、該第1の回路基板4に対向する金属板基部7−1の電流は給電部5の対角から給電部5に向かって流れており、第1の回路基板4と該第1の回路基板4の電流は互いに逆向き、つまり逆位相であり、互いの電流は相殺される。
上記のとおり、アンテナ素子6と金属板7の電流は逆向きであり、また、第1の回路基板4と金属板7の電流も逆向きであることから、互いの電流は相殺され、アンテナ性能が劣化する。
【0038】
図5は、本実施の形態に係る携帯無線機1におけるアンテナ装置の各部における電流ベクトルを示す図であり、(a)は全部品における電流ベクトルを示し、(b)はアンテナ素子6と第1の回路基板4における電流ベクトルを示し、(c)は金属板7における電流ベクトルを示す。この場合も矢印の方向は“電流の向き”、長さは“電流量”を示す。
【0039】
図5の(b)と(c)を比較する。
(1)点線部90に着目する。
図5の(b)において、アンテナ素子6の電流は本発明を使用していない上記の携帯無線機における状態と略同じである。図5の(c)において、金属板並走部7−3の電流は、アンテナ素子6とスリット10の近傍に、アンテナ素子6と略同じ向きの電流が流れる。また、金属板接続部7−2の電流が増加し、その向きはアンテナ素子6と略同じ向きである。
(2)一点鎖線部91に着目する。
図5の(c)において、金属板基部7−1の電流は、本発明を使用していない上記の携帯無線機と略逆向きになっており、アンテナ素子6の電流の向きと一致している。また、図5の(b)における両端の電流の向きと、図5の(c)における金属板基部7−1の電流の向きは同じである。
上記のとおり、本発明により、金属板7の電流は大きく変化し、アンテナ素子6及び第1の回路基板4の電流の向きと一致し、相殺される電流が大幅に減少し、アンテナ性能の劣化を抑制できることが分かる。
【0040】
このように本実施の形態に係る携帯無線機1によれば、第1の回路基板4と、第1の回路基板4に設けられた給電部5と、給電部5に電気的に接続されたアンテナ素子6と、第1の回路基板4の少なくとも一部と対向かつ並走するとともに、アンテナ素子6と並走するように配置された金属板7と、を備え、金属板7に、給電部5の近傍において、金属板7の一部にアンテナ素子6と並走するようにスリット10を設けたので、アンテナ素子6を金属板7と並走して近接配置しても、アンテナ性能劣化を抑制できる。すなわち、スリット10を設けることで、金属板7の電流ベクトルの向きが変化し、アンテナ素子6と同相となる金属板7の電流が増加するので、アンテナ素子6を金属板7と並走して近接配置してもアンテナ性能劣化を抑制できる。
【0041】
なお、上記実施の形態1では、アンテナ素子6を金属板7と重なるように配置したが、重ならないように配置するようにしても同様の効果が得られる。この場合の効果を検証した結果を以下で説明する。
【0042】
図6は、本実施の形態に係る携帯無線機1において、アンテナ素子6が金属板7に重ならない状態で、アンテナ素子6と金属板7の距離d1を変化させたときのアンテナ効率を説明するための図であり、(a)はシミュレーション検証結果を示し、(b)は本発明を使用しない場合(未対策)のシミュレーション解析モデルを示し、(c)は本発明を使用する場合のシミュレーション解析モデルを示す。(a)において、縦軸はアンテナ効率(dB)であり、横軸はアンテナ素子6と金属板7の距離である。×印の破線70は本発明を使用しない場合のアンテナ効率であり、○印の実線71は本発明を使用した場合のアンテナ効率である。
【0043】
本シミュレーション解析では、アンテナ素子6と金属板7の正面透視での重なりが無いものとし、垂直方向の削り量はアンテナ素子水平部6−2の素子幅と同じ0.02λとする。正面透視で、金属板7の上端部とアンテナ素子6の下端部は同一線上に配置されている。その他は前述のシミュレーション解析と同じであるため、説明を省略する。
【0044】
アンテナ素子6と金属板7の距離d1を0.033λから0.003λに変化させたときのアンテナ効率を比較する。本発明を使用しない場合、アンテナ効率は−1.8dBから−8.1dBとなり、6.3dBの大幅な劣化がある。しかし、前述のアンテナ素子6が正面透視で重なる場合に比べ、アンテナ効率の絶対値もよく、劣化量は低減しており、アンテナ素子6を正面透視で露出させることで、金属板7の影響が低減している。本発明を使用した場合、アンテナ効率は、−1.5dBから−5.1dBとなり、3.6dBの劣化であり、本発明を使用することにより、劣化量を2.7dB抑制することができる。以上のとおり、アンテナ素子6を金属板7と重ならないように配置した場合においても本発明は有効である。
【0045】
図7は、本実施の形態に係る携帯無線機1のアンテナ効率を説明するための図であり、(a)はシミュレーション検証結果を示し、(b)は本発明を使用せず(未対策)、アンテナ素子水平部6−2と金属板7が重なる場合のシミュレーション解析モデルを示し、(c)は本発明を使用し、アンテナ素子水平部6−2と金属板7が重なる場合のシミュレーション解析モデルを示す。各状態において、アンテナ素子6の素子長を最適化している。本発明を使用した場合のスリット深さd2を0.12λとし、スリット幅d3を0.02λとしている。(a)において、縦軸はアンテナ効率である。グラフ120は本発明を使用しない場合であり、グラフ121は本発明を使用した場合である。また、左側2本のグラフ120,121は、アンテナ素子水平部6−2と金属板7を正面又は背面から透視したときの重なりがない場合を示し、右側2本のグラフ120,121は重なりがある場合を示す。
【0046】
図7の(a)を用いて、金属板7とアンテナ素子水平部6−2の重なり影響を説明する。アンテナ素子水平部6−2に金属板7が重ならない状態から重なる状態になった場合の変化量に着目すると、本発明を使用しない場合(グラフ120)は、−8.1dBから−15.4dBとなり、7.3dBの大幅な劣化がある。一方、本発明を使用した場合(グラフ121)は、−5.1dBから−5.6dBと0.5dBのわずかな劣化となる。次に、アンテナ素子水平部6−2と金属板7の重なりがない場合に着目する。本発明を使用しない場合は、−8.1dBであるが、本発明を使用する場合は、−5.1dBとなり、3dBの改善が得られる。アンテナ素子水平部6−2が金属板7と重ならない場合でも、第1の回路基板4と金属板7は重なっており、本発明を使用することにより、金属板基部7−1の電流の向きが変化し、第1の回路基板4との逆相電流が減少し、互いの相殺が緩和され、アンテナ性能の変化を抑制することが可能となる。上記のとおり、金属板7とアンテナ素子水平部6−2の重なりがない場合においても、本発明は有効である。
【0047】
次に、スリット10の深さを変えたときの効果について説明する。
図8は、本実施の形態に係る携帯無線機1において、スリット10の水平方向の長さ(スリット深さd2)を変化させた場合のアンテナ効率を説明するための図であり、(a)はシミュレーション検証結果を示し、(b)は本発明を使用しない場合(未対策)のシミュレーション解析モデルを示し、(c)は本発明を使用した場合のシミュレーション解析モデルを示す。(a)のグラフの縦軸はアンテナ効率、横軸はスリット深さd2である。本シミュレーション解析では、アンテナ素子6と金属板7の距離d1を0.01λに固定している。なお、アンテナ素子6と金属板7は正面透視で重なっている。スリット10の垂直方向の長さ(スリット幅d3)を0.02λ、アンテナ素子水平部6−2の長さを0.08λ、アンテナ素子垂直部6−1の長さを0.1λ、アンテナ素子6の素子幅中心における経路長を0.16λに固定する。その他は前述のシミュレーション解析と同じであるため、説明を省略する。
【0048】
スリット10の深さd2を増やすほど効率は改善する。スリット深さd2を0.00λ(本発明を使用しない場合)から0.25λに増加すると、アンテナ効率は−8.1dBから−1.9dBになり、6.2dB改善する。金属板7の水平方向の長さ0.27λに対して、スリット深さd2を0.12λ以下に設定すると、本発明を実施しない場合に比べ、金属板並走部7−3および金属板接続部7−2において、アンテナ素子水平部6−2と略同一方向の電流が増加する。さらに、スリット深さを0.15λにすると、上記現象に加えて、金属板接続部7−2と金属板基部7−1において、正面視で左側の端部、つまり給電部5と水平方向で離隔する箇所の電流の向きが、第1の回路基板4と略同一となる。さらに、スリット深さを0.19λ以上に設定すると、上記現象を維持しつつ、金属板基部7−1において、正面視で右側端部、つまり給電部5と水平方向で近接する箇所の電流の向きが、第1の回路基板4と略同一となる。つまり、スリット深さd2が増加すると、金属板並走部7−3の水平方向は長くなり、この長さに応じて、金属板並走部7−3と金属板接続部7−2と金属板基部7−1の電流の向きと大きさが変化し、アンテナ素子水平部6−2と、第1の回路基板4の両端に流れる電流の向きと略同一となる金属板7の電流が増加し、逆相となる電流が徐々に減少し、互いの電流の相殺が緩和され、アンテナ効性能の劣化が抑制される。
【0049】
次に、スリット10の幅d3を変えたときの効果について説明する。
図9は、本実施の形態に係る携帯無線機1において、スリット10の垂直方向の長さ(スリット幅d3)を変化させた場合のアンテナ効率を説明するための図であり、(a)はシミュレーション検証結果を示し、(b)は本発明を使用しない場合(未対策)のシミュレーション解析モデルを示し、(c)は本発明を使用した場合のシミュレーション解析モデルを示す。(a)のグラフの縦軸はアンテナ効率を示し、横軸はスリット幅d3を示す。本シミュレーション解析では、アンテナ素子6と金属板7の距離d1を0.01λに固定している。なお、アンテナ素子6と金属板7は正面透視で重なっている。スリット深さd2を0.15λ、アンテナ素子水平部6−2の長さを0.08λ、アンテナ素子垂直部6−1の長さを0.1λ、アンテナ素子6の素子幅中心における経路長を0.16λに固定する。その他は前述のシミュレーション解析と同じであるため、説明を省略する。
【0050】
スリット幅d3を増やすと効率はわずかに劣化する。スリット幅d3を0.02λから0.08λに増加すると、アンテナ効率は−3.0dBから−3.8dBになり、0.8dB劣化するが、スリット幅d3を0.00λ(本発明を使用しない場合)のアンテナ効率が−8.1dBであるのと比較して、4.3dBの改善を得ている。スリット幅d3が増加するとアンテナ素子垂直部6−1の露出部が増加し、金属板並走部7−3の垂直方向の幅が減少しており、これに伴い金属板並走部7−3におけるアンテナ素子水平部6−2と略同一となる水平方向の電流はわずかに減少するが、金属板接続部7−2において、アンテナ素子垂直部6−1および第1の回路基板4と略同一となる垂直方向の電流は増加し、アンテナ性能劣化を抑制することができる。
【0051】
(実施の形態2)
図10は、本発明の実施の形態2に係る携帯無線機の概略構成を示し、(a)は正面斜視図、(b)は左側面視図、(c)は正面視図、(d)は右側面視図、(e)は背面視図、(f)は天面視図である。なお、同図において前述した図1と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。
【0052】
本実施の形態に係る携帯無線機20は、アンテナ素子及び金属板が異なる以外、前述した実施の形態1に係る携帯無線機1と同様の構成を有する。本実施の形態に係る携帯無線機20のアンテナ素子には符号61を付し、金属板には符号71aを付すこととする。アンテナ素子61はI字状に形成されており、第1の筐体2の長手(垂直)方向に配置される。アンテナ素子61は、アンテナ素子垂直部61−1からなり、その先端がアンテナ素子開放端61−3となっている。金属板71aには給電部5の近傍に第1の筐体2の長手(垂直)方向に沿ってL字状の切り込み(すなわちスリット10)が入れられており、このスリット10の形成によって、アンテナ素子61の開放端側から給電部5に向かって展開される金属板並走部71−3が得られている。金属板並走部71−3は、アンテナ素子61において給電部5を始点とし、アンテナ素子開放端61−3を終点として展開される方向と垂直方向で逆向きとし、かつ、厚み方向で対向するように配置される。金属板71aは、スリット10が形成されることで、金属板基部71−1と、金属板並走部71−3と、金属板基部71−1と金属板並走部71を接続する金属板接続部71−2の3つの部分で構成される。スリット10の開口側がスリット開口部10−1となる。
【0053】
第1の筐体2の長手方向にI字状のアンテナ素子61を配置し、給電部5の近傍に第1の筐体2の長手方向に沿ってL字状のスリット10を形成した金属板71aを配置することで、アンテナ素子61に流れる電流と金属板並走部71−3を流れる電流が同方向になる。これにより、アンテナ性能劣化を抑制することができる。
【0054】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3に係る携帯無線機の概略構成を示し、(a)は正面斜視図、(b)は左側面視図、(c)は正面視図、(d)は右側面視図、(e)は背面視図、(f)は天面視図である。なお、同図において前述した図1と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。
【0055】
本実施の形態に係る携帯無線機21は、アンテナ素子を金属板7と直交させた点が異なる以外、前述した実施の形態1に係る携帯無線機1と同様の構成を有する。本実施の形態に係る携帯無線機21のアンテナ素子には符号62を付すこととする。アンテナ素子62は、アンテナ素子垂直部62−1とアンテナ素子水平部62−2で構成される。アンテナ素子垂直部62−1は、給電部5の近傍において、第1の回路基板4及び金属板7の面と平行となる面を有し、金属板7の面と平行に配置され、給電部5と接続される、アンテナ素子垂直部平行配置部62−1−1と、該アンテナ素子垂直部平行配置部62−1−1が給電部5と接続される端部と反対側の端部で接続され、アンテナ素子垂直部平行配置部62−1−1及び金属板7の面と直交する面を有し、金属板7と直交するように配置されたアンテナ素子垂直部直交配置部62−1−2で構成される。アンテナ素子水平部62−2において、アンテナ素子垂直部62−1と接続されていない箇所がアンテナ素子開放端62−3である。
【0056】
図12は、図11における第1の回路基板4、金属板7及びアンテナ素子62を拡大した斜視図である。同図において、アンテナ素子垂直部62−1は、給電部5の近傍において、第1の回路基板4及び金属板7の面と平行となる面を持ち、給電部5と接続されるアンテナ素子垂直部平行配置部62−1−1と、アンテナ素子垂直部平行配置部62−1−1と給電部5の反対側で接続され、アンテナ素子垂直部平行配置部62−1−1及び金属板7の面と直交するように配置されたアンテナ素子垂直部直交配置部62−1−2で構成される。
【0057】
図11の(c)の正面視で示すように、アンテナ素子垂直部平行配置部62−1−1と対向する側に金属板7のスリット10が位置し、その位置でアンテナ素子垂直部平行配置部62−1−1が金属板7と重ならず、露出状態となる。アンテナ素子水平部62−2は、自身の少なくとも一部の平面と金属板7の面とが直交するよう配置される。
【0058】
図13は、本実施の形態に係る携帯無線機21におけるアンテナ素子62と金属板7との距離を変化させた場合のシミュレーション解析によるアンテナ効率を説明するための図であり、(a)はシミュレーション検証結果、(b)は本発明を使用しない場合のシミュレーション解析モデル、(c)は本発明を使用した場合のシミュレーション解析モデルである。アンテナ素子62を金属板7に対して直交に配置したときのアンテナ効率と、図3で説明したアンテナ効率(すなわちアンテナ素子6を金属板7に対して並行に配置したときの効率)とを比較する。図13の(a)に示すシミュレーション検証結果と、図3の(a)に示すシミュレーション検証結果とを比較すると、本発明を使用した場合はアンテナ効率に変化は殆ど見受けられないが、本発明を使用していない場合は、平行配置時に比べ、直交配置は間隔を狭くしても劣化量が少ない。これは、直交配置は平行配置に比べ、アンテナ素子と金属板の重なり面積が少ないため、金属板の近接影響が低減したと考えられる。アンテナ素子62と金属板7の間隔を0.033λから0.003λに変更させたときの劣化量は本発明を使用していない場合で8dBであるが、本発明を使用した場合は3.9dBであり、4.1dBの劣化量を低減できる。したがって、アンテナ素子62を金属板7と直交させる配置においても、本発明は有効である。
【0059】
(実施の形態4)
図14は、本発明の実施の形態4に係る携帯無線機の概略構成を示し、(a)は正面斜視図、(b)は左側面視図、(c)は正面視図、(d)は右側面視図、(e)は背面視図、(f)は天面視図である。なお、同図において前述した図1と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。
【0060】
同図において、本実施の形態に係る携帯無線機22は、ノイズ低減や静電気破壊などの対策として、第1の回路基板4のグランドの4隅を金属板7に電気的に接続する4個の四角柱状の第1の導電性部材11を備えている。図では、角柱状としているが、第1の回路基板4のグランドと金属板7を導通させる機能を保有していれば、特定の形状である必要はない。第1の回路基板4のグランドと金属板7との導通を図ることで、金属板7はグランドとなり、アンテナ素子6とグランドである金属板7の近接により、金属板7がグランドでない場合に比べ、アンテナ性能が更に劣化する虞がある。なお、第1の回路基板4のグランドと金属板7を導通する箇所は必ずしも隅に限定されるものではなく、また、その箇所数は4つに限定されるものではなく、基板に実装する部品配置などの構造都合や、ノイズ低減の最適化条件に依存する。すなわち、第1の導電性部材11の数は4個に限定されることはない。携帯無線機の小型化およびコストダウンを実現する上で、導電性部材11の数は極力減らす必要があり、1個の場合もある。前述した実施の形態1〜3の携帯無線機1,20,21では金属板7が電気的に浮いた状態になっているが、これらの携帯無線機1,20,21においても第1の導電性部材11を設けることは可能である。
【0061】
図15は、携帯無線機22のアンテナ効率を説明するための図であり、(a)はシミュレーション検証結果を示し、(b)は本発明を使用しない場合のシミュレーション解析モデルを示し、(c)は本発明を使用した場合のシミュレーション解析モデルを示す。(a)において、縦軸はアンテナ効率である。グラフ122は、スリット10も第1の導電性部材11も無い場合、グラフ123は、スリット10は無いが第1の導電性部材11は有る場合、グラフ124は、スリット10は有るが第1の導電性部材11は無い場合、グラフ125は、スリット10も第1の導電性部材11も有る場合を示す。第1の導電性部材11の有無によるアンテナ効率を比較する。本発明を使用しない場合、アンテナ効率は−7.2dB(グラフ122)から−9.4dB(グラフ124)となり、2.2dBの劣化が発生する。また、本発明を使用する場合、アンテナ効率は−3.4dB(グラフ123)から−6.9dB(グラフ125)となり、3.5dBの劣化が発生する。つまり、本発明の使用有無によらず、第1の導電性部材11を追加すると、アンテナ効率は劣化する。次に、第1の導電性部材11のない場合のアンテナ効率(グラフ122とグラフ123)を比較する。本発明の使用により、アンテナ効率は4.2dBの改善効果がある。次に第1の導電性部材11を追加した場合のアンテナ効率(グラフ124とグラフ125)を比較する。本発明の使用により、アンテナ効率は2.5dBの改善効果がある。これらのグラフ122〜125からわかるように、第1の導電性部材11の無い方がアンテナ効率は良いものの、第1の導電性部材11が有る場合でも、スリット10を設けた方がアンテナ効率は改善する。つまり、第1の導電性部材11の有無による金属板7と第1の回路基板4へのグランド接続に関わらず、本発明は有効である。
【0062】
(実施の形態5)
図16は、本発明の実施の形態5に係る携帯無線機のスライド状態における概略構成を示し、(a)は右側面透視図、(b)は第2の筐体の背面透視図、(c)は第1の筐体の背面透視図である。なお、同図において前述した図1と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。本実施の形態に係る携帯無線機23は、2つの筐体からなり、一方の筐体に対して他方の筐体をスライドさせることで開閉するスライド構造を持つ携帯無線機である。同図において、第1の筐体101には、アンテナ素子13の近傍にスピーカなどの金属部品14と、金属部品14を駆動させる信号線を備えた第3の回路基板15(図において横縞模様で記載する)が設けられている。金属部品14と第3の回路基板15に配置された信号線は接点16で接続される。金属部品14と接点16と第3の回路基板15は、金属部品14の背面側に配置された保持板金17で第1の筐体101に固定され、接点16のバネ圧を抑え、第3の回路基板15と接点16と金属部品14の接続状態を保持している。
【0063】
第3の回路基板15は、第1の回路基板4と金属板7の間に配置され、第2の導電性部材18により、第1の回路基板4の信号線及びグランドと1つ以上の箇所で電気的に接続されている。第3の回路基板15が第1の回路基板4と電気的に接続されることで、第3の回路基板15に配置された電気部品が動作し、第1の回路基板4と第3の回路基板15の接続箇所は第3の回路基板15に配置される電気部品に依存する。第2の導電性部材18は一般的にコネクタが使用される。保持板金17は、金属板7の一部を金属部品14側に折り曲げて構成され、アンテナ素子13に近接配置される。保持板金17および金属板7は第3の回路基板15とは接続されていない。
【0064】
第2の筐体201には、表示装置202、補強金属203及び第2の回路基板204が設けられている。補強金属203は、表示装置202の背面側に配置され、表示装置202の破損を防止するため、板状の金属で構成され、第2の回路基板204のグランドと電気的に1か所以上で接続される。本実施の形態では、補強金属203と第2の回路基板204のグランドを4個の接点205で接続している。すなわち、4か所で接続している。第2の回路基板204のグランド及び信号線は接続線301を経由して第1の回路基板4と接続され、第2の回路基板204に配置される電気部品を機能させる。なお、接続線301は、図16(a)に記載のとおり、第1の筐体101と第2の筐体201の間隙に、折り曲げられて配置されるものであり、図16(b)および図16(c)それぞれに図示している。
【0065】
アンテナ素子13は、第1の回路基板4と共に、第2の回路基板204と保持板金17及び金属板7の間に配置される。アンテナ素子垂直部13−1は、金属板7の構成される面と平行な面を有し、給電部5から背面方向と正面方向に折り曲げて構成され、金属板7と正面透視で重ならないように構成されている。アンテナ素子水平部13−2は、金属板7の面と直交するように配置され、正面視で金属板7と正面透視で重ならないように構成されている。金属部品14は、略直方体形状を持ち、少なくとも1つの側面がアンテナ素子13の一部の面と対向し、並走している。第3の回路基板15は、金属板7と電気的に接続されていない。第1の回路基板4と金属板7は前述のとおり面状で対向して配置され、正面透視で重なる箇所を持っているが、略コの字状とし、背面透視で、給電部5と、アンテナ素子13とは重なっていない。なお、本発明の実施の形態では、金属板基部7−1と給電部5が背面視で重ならないように、金属板基部7−1の形状を変更している。
【0066】
図17は、携帯無線機23のアンテナ素子13周辺の主要構成部品の展開図である。同図において、アンテナ素子垂直部13−1は、第1の回路基板4及び金属板7の平面と平行となる面を持ち、2個所で折り曲げられて、一端が給電部5に接続される。アンテナ素子水平部13−2は、アンテナ素子垂直部13−1の給電部5と反対側の他端に接続され、第1の回路基板4、金属板7、アンテナ素子垂直部13−1の面と直交する面を有し、金属板7と直交するように配置される。アンテナ素子13のアンテナ素子水平部13−2は、第2の筐体201内に構成された第2の回路基板204及び補強金属203と、第1の筐体101内に設けられた保持板金17及び金属板7と、金属部品14と第3の回路基板15とによって、アンテナ素子13の正面側、背面側、底面側の3面を金属部材で覆われ、かつ、各金属部材に近接している。このような状態ではアンテナ性能は劣化してしまうので、それを抑えるため、携帯無線機23でも金属板7に切り込みを追加してスリット10を形成している。スリット10の形状は前述した携帯無線機1,21,22それぞれのスリット10と同様のものである。第2の回路基板204は、スライド状態と閉じ状態の両状態においても、正面透視で、第1の回路基板4と重なっている。
【0067】
(実施の形態6)
図18は、本発明の実施の形態6に係る携帯無線機のスライド状態における概略構成を示し、(a)は右側面透視図、(b)は第1の筐体の背面透視図である。なお、同図において前述した図1及び図16と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。本実施の形態に係る携帯無線機24は、前述した実施の形態5に係る携帯無線機23と同様にスライド構造を持つ携帯無線機である。同図において、金属板7と保持板金17が別体で構成され、金属板7と保持板金17は、アンテナ素子開放端13−3の近傍で第3の導電性部材21aによって導通状態となっている。これらの間にL字状の隙間すなわちスリット10が形成されている。スリット10を形成することで、アンテナ効率を改善することができる。金属板7は、正面視でスピーカ等の金属部品14と重なる箇所で切除されている。
【0068】
(実施の形態7)
図19は、本発明の実施の形態7に係るスライド状態における携帯無線機の概略構成を示し、(a)は右側面透視図、(b)は第1の筐体の背面透視図である。なお、同図において前述した図1、図16及び図18と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。本実施の形態に係る携帯無線機25は、前述した実施の形態6に係る携帯無線機24と同様にスライド構造を持つ携帯無線機である。同図において、金属板7と第1の回路基板4のグランドが、給電部5の近傍の1箇所で第4の導電性部材23aにより導通状態となっている。
【0069】
図20は、本実施の形態に係る携帯無線機25の第1の筐体101内の主要構成部品を示し、(a)は右側面透視図、(b)は背面透視図である。前述した実施の形態6に係る携帯無線機24との差分のみ説明する。同図において、第4の導電性部材23aは、第1の回路基板4と金属板7との間に配置され、給電部5の近傍において、第3の回路基板15のグランドとは接続させずに、第1の回路基板4のグランドと金属板7を電気的に接続する。つまり、第3の回路基板15は、第4の導電性部材23aと正面視で重ならない形状とする。第1の回路基板4は、その背面において第3の回路基板15があり、正面において第2の回路基板204及び補強金属203が配置されている。つまり、第1の回路基板4は正面と背面の両側が金属部材に覆われている。したがって、第1の回路基板4の電流は金属部材に遮蔽されて放射し難い。しかし、本発明によれば、第1の回路基板4の電流は第4の導電性部材23aを経由して金属板7に流れるので、背面方向に遮蔽物のない金属板7からの放射が増加する。これにより、アンテナ効率が改善する。なお、導電性部材23aを金属板7と導通させず、導電性部材23aを給電部5の近傍から底面側に向かう筐体長手方向と幅方向において、正面視の面積を拡大し、かつ、導電性部材23aと金属板7との間隔を狭めることで、金属板7と導電性部材23aを容量結合させ、金属板7の電位を第1の回路基板4と略同電位にすることができ、直接導通させる場合と同じ効果が得られる。例えば、導電性部材23aの長手方向を0.09λとし、幅方向を0.04λとし、導電性部材23aと金属板7との間隔を0.002λとし、結合容量値を2.7pFにすれば、同じ効果が得られる。また、導電性部材23aを特定の機能を備えた金属部品に置き換えても、同じ効果が得られる。例えば、周囲が金属で覆われ、この金属の一部がグランドに接続され、かつ、金属板7に対向して配置され、携帯無線機の機能検査などを行うケーブルを接続するための、入出力コネクタなどに置き換えることができる。
【0070】
図21は、実施の形態6,7の携帯無線機24,25のスライド状態におけるアンテナ効率の実測値を示す図である。同図において、グラフ130は、保持板金17を金属板7と別体で設け、本発明を使用しない場合(未対策)のアンテナ効率、グラフ131は、本発明の実施の形態6で得られるアンテナ効率、グラフ132は、本発明の実施の形態7で得られるアンテナ効率をそれぞれ示す。実施の形態6および7における、主要な寸法を以下に記載する。アンテナ素子垂直部13−1の長さは0.11λとし、アンテナ素子水平部13−2の長さは0.07λとしている。前述のとおり、金属板基部7−1と保持板金17と第3の導電性部材21aで形成されるスリット10はL字状となっており、水平方向に展開されるスリット10の幅と深さは、それぞれ0.003λと、0.1λとし、垂直方向に展開されるスリット10の幅と深さは、それぞれ0.02λと、0.05λとする。また、アンテナ素子垂直部13−1と保持板金17の水平方向と厚み方向の距離は、それぞれ0.004λと、0.002λであり、直線距離で0.005λとなる。アンテナ素子水平部13−2と保持板金17の垂直方向と厚み方向の距離は、それぞれ0.003λと、0.002λであり、直線距離で0.004λとなる。第1の回路基板4において、給電部5は、背面視で右上端部に配置され、第1の回路基板4の、背面視で右端部および上端部からのそれぞれの距離は0.013λと0.009λであり、給電部5と金属板基部7−1の天面側上端部との正面視における垂直方向の距離、すなわち、スリット10の下端部と給電部5との距離は、0.008λとしている。第1の回路基板4と弟3の回路基板15の厚み方向の距離を0.01λとし、弟1の回路基板4と第2の回路基板204の厚み方向の距離を0.032λとする。前述のとおり、金属板基部7−1は2箇所で折り曲げられており、金属板基部7−1と第1の回路基板4との厚み方向の距離は、第1の回路基板4と近い箇所において0.01λであり、第1の回路基板4と離れた箇所において0.02λである。金属板基部7−1の垂直方向および水平方向はそれぞれ、0.21λと0.22λであり、金属板接続部7−2は背面視右端部から右側に0.05λずれた位置から、水平方向に0.029λの幅をもって、垂直方向天面側に0.05λの長さで展開され、第3の導電性部材21aに接続され、第3の導電性部材21aは厚み方向に0.01λの幅をもって水平方向の背面視右側に0.02λの長さで展開され、保持板金17に接続され、保持板金17は垂直方向に0.05λの幅を有し、水平方向の背面視右側に0.09λの長さで展開される。第1の回路基板4の水平方向および垂直方向は、0.22λと0.23λであり、金属板基部7−1と略同じである。第3の回路基板15の水平方向および垂直方向は、0.2λと0.27λであるが、背面視の上端部から0.05λを始点として、0.11λを終点とする長さをもって、背面視の右端部から0.11λの空間がえぐられ、コの字状となっている。また、実施の形態7における給電部5と第3の導電性部材21aとの垂直方向の距離は0.02λとしている。本発明の実施の形態6では、アンテナ効率は1dB改善し、さらに、本発明の実施の形態7では、本発明の実施の形態6より0.9dB改善する。このように、本発明はスライド構造の携帯無線機においても同様に有効である。
【0071】
(実施の形態8)
図22は、本発明の実施の形態8に係る携帯無線機の概略構成を示し、(a)は右側面透視図、(b)は第1の筐体の背面透視図である。なお、同図において前述した図1及び図16と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。本実施の形態に係る携帯無線機26は、前述した実施の形態6に係る携帯無線機24や実施の形態7に係る携帯無線機25と同様にスライド構造を持つ携帯無線機である。同図において、保持板金17と金属板7は別体で構成され、金属板7と保持板金17は接続されていない。また、第5の導電性部材24aによって、アンテナ素子水平部13−2と保持板金17が導通状態となっている。
【0072】
図23は、第5の導電性部材24aの接続状態を示す斜視図である。同図において、第5の導電性部材24aは、アンテナ素子水平部13−2と同じく保持板金17と直交するように配置され、アンテナ素子水平部13−2を延長する形で保持板金17に接続される。これらの部品は放射素子として機能する。
【0073】
図24は、本実施の形態に係る携帯無線機26の第1の筐体101内の主要構成部品を示し、(a)は右側面透視図、(b)は背面透視図である。同図において、第3の回路基板15は、図中横線で網掛けされている。金属部品14は、正面側に配置され、背面側の接点16により、第3の回路基板15に設けられた2本の信号線26−1,26−2を経由して回路部品(図示略)に接続される。この場合、金属部品14がスピーカであれば、回路部品(図示略)から音声信号が伝達されるときに音声を出力する。金属部品14を駆動させる信号線26−1,26−2は、高周波的に第3の回路基板15のグランドにショートされる。例えば、信号線26−1,26−2に並列にキャパシタンス27−1,27−2を装荷することで、信号線26−1,26−2は高周波的にグランドとして機能しつつ、金属部品14の機能を維持することができる。金属部品14の背面側の第3の回路基板15は、保持板金17によって、接点16のバネによる反発を抑え込むように保持される。なお、第3の回路基板15と保持板金17は絶縁されているが、その距離は非常に近接している。
【0074】
金属部品14と第3の回路基板15に構成される信号線26−1,26−2を高周波的にグランドに接続することで、前述の金属板並走部7−3が、金属部品14と第3の回路基板15と信号線26−1,26−2の高周波的短絡により構成され、第3の回路基板15にスリット25aが構成される。また、第3の回路基板15は前述のとおり、コの字形状を有しており、給電部5は、背面視において、第3の回路基板15と金属部品14と保持板金17と金属板7と重ならず、露出している。金属部品14及び金属部品14に接続される第3の回路基板15部分の電流ベクトルが、スリット25aの深さまたは幅に応じて変化し、第3の回路基板15において、アンテナ素子13または第1の回路基板4と同じ向きとなる電流が増加する。これにより、アンテナ素子13および第1の回路基板4に対して、逆相であった第3の回路基板15の電流が減少し、互いの電流の相殺が緩和され、アンテナ効率が改善する。
【0075】
図25は、スライド構造をもつ携帯無線機のスライド状態におけるアンテナ効率の実測値を示す図である。同図において、グラフ135は、保持板金17を金属板7と別体で設け、本発明を使用しない場合のアンテナ効率を示し、グラフ136は、本発明の実施の形態8で得られるアンテナ効率を示す。本発明の実施の形態8では、アンテナ効率は2.7dBの改善があり、本発明の有効性は明らかである。
【0076】
(実施の形態9)
図26は、本発明の実施の形態9に係る携帯無線機の概略構成を示し、(a)は右側面透視図、(b)は第1の筐体の背面透視図である。なお、同図において前述した図1及び図19と共通する部分には同一の符号を付けてその説明を省略する。本実施の形態に係る携帯無線機27は、前述した実施の形態7に係る携帯無線機25等と同様にスライド構造を持つ携帯無線機である。同図において、本実施の形態に係る携帯無線機27では、金属板基部7−1(図17参照)のスリット開口部10−1と水平方向で、反対側で接続される金属板延長素子29を背面側に配置し、金属板並走部7−3(図17参照)と同一方向に展開している。金属板延長素子29を設けることで、この金属板延長素子29に電流が流れ、アンテナ効率が改善する。
【0077】
図27は、本実施の形態に係る携帯無線機27の第1の筐体101内の主要構成部品を示し、(a)は右側面透視図、(b)は背面透視図である。前述した実施の形態7に係る携帯無線機25との差分のみ説明する。同図において、金属板延長素子29は、金属板基部7−1において、スリット開口部10−1と水平方向で最も離隔した位置で接続され、金属板接続部7−2(図17参照)と対向し、背面側に離隔するよう配置し、金属板並走部7−3(図17参照)に向かって展開され、その終端は開放される。金属板延長素子29の金属板基部7−1の接続点から終端までの経路長を略0.25λとする。
【0078】
図28は、スライド構造をもつ携帯無線機のスライド状態におけるアンテナ効率の実測値を示す図である。同図において、グラフ137は、本発明の実施の形態7で得られるアンテナ効率、グラフ138は、本発明の実施の形態9で得られるアンテナ効率をそれぞれ示す。本発明の実施の形態9では、アンテナ効率は更に1.1dBの改善が得られる。
【0079】
なお、上記実施の形態5〜9に係る携帯無線機は、それぞれスライド構造の携帯無線機であったが、本発明はスライド構造の携帯無線機以外に、折り畳み構造、スイーベル構造などの各種構造の携帯無線機にも勿論適用可能である。また、上記実施の形態1〜9のすべてにおいて、給電部5は第1の回路基板4の正面側、背面側のいずれでもよく、同じ効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、アンテナ素子を金属板と並走して近接配置してもアンテナ性能劣化を抑制できるといった効果を有し、携帯電話として利用されているスライド構造、折畳み構造、スイーベル構造等の携帯無線機や、スマートフォンに代表されるストレート構造の携帯無線機などへの適用が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1,20,21,22,23,24,25,26,27 携帯無線機
2,101 第1の筐体
3 電池
4 第1の回路基板
5 給電部
6,13,61,62 アンテナ素子
6−1,13−1,61−1,62−1 アンテナ素子垂直部
6−2,13−2,61−2,62−2 アンテナ素子水平部
6−3,13−3,61−3,62−3 アンテナ素子開放端
7,71a 金属板
7−1 金属板基部
7−2 金属板接続部
7−3 金属板並走部
10,25a スリット
10−1 スリット開口部
10−2 スリット終端部
11 第1の導電性部材
14 金属部品
15 第3の回路基板
16,205 接点
17 保持板金
18 第2の導電性部材
21a 第3の導電性部材
23a 第4の導電性部材
24a 第5の導電性部材
26−1,26−2 信号線
27−1,27−2 キャパシタンス
29 金属板延長素子
62−1−1 アンテナ素子垂直部平行配置部
62−1−2 アンテナ素子垂直部直交配置部
201 第2の筐体
202 表示装置
203 補強金属
204 第2の回路基板
301 接続線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の回路基板と、
前記第1の回路基板に設けられた給電部と、
前記給電部に電気的に接続されたアンテナ素子と、
前記第1の回路基板の少なくとも一部と対向かつ並走し、前記アンテナ素子と並走するように配置された金属板と、を備え、
前記給電部の近傍において、前記金属板の一辺を分断する切り込み箇所となるスリット開口部を設け、前記アンテナ素子と並走するように、スリットを設けることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記金属板は、
前記第1の回路基板と少なくとも一部が対向する金属板基部と、
前記スリットにより一部が分断され、前記アンテナ素子と並走する箇所を有する金属板並走部と、
前記金属板基部と前記金属板並走部を前記給電部と離隔する位置で接続する金属板接続部と、を備え、
前記金属板並走部を、前記給電部を始点として前記アンテナ素子の展開される方向に対して、前記金属板接続部と前記金属板並走部を接続する箇所を始点として、前記金属板並走部の展開される方向の一部が逆方向となるように配置することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナ素子の一部は、前記給電部近傍の、前記スリットを設けた箇所において、前記スリット開口部を設けず、前記金属板から露出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の回路基板と対向し、かつ一部が並走するように配置される第2の回路基板を備え、
前記第1の回路基板と前記アンテナ素子を、前記第2の回路基板と前記金属板の間に配置することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記第1の回路基板と前記金属板の間に挟まれ、かつ、前記アンテナ素子の少なくとも一部と並走する金属部品を備え、
前記金属部品を保持する保持板金を、前記金属部品の背面に、前記金属板と接続させず、前記金属板とは別体として備え、
前記給電部と離隔する位置において、前記保持板金と前記金属板を接続する第1の導電性部材を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記第1の回路基板と前記金属板基部とを電気的に接続する第2の導電性部材を前記給電部近傍に備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記金属板基部と前記金属板接続部の接続箇所で接続され、前記給電部と離隔した位置で接続され、前記金属板接続部と対向し、背面側に離隔するよう配置された金属板延長素子を備えることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記第1の回路基板と前記金属板の間に第3の回路基板を備え、
前記第3の回路基板に接続される金属部品を前記アンテナ素子の少なくとも一部と並走するように備え、
前記金属部品を保持する保持板金を前記金属板と導通させず、前記金属部品の背面に備え、
前記第3の回路基板上において、前記金属部品を機能させる信号線を備え、
前記第3の回路基板は、正面視で前記給電部の近傍において、前記アンテナ素子と重なる箇所の一部にスリットを有し、
前記信号線を前記第3の回路基板のグランドに接続することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のアンテナ装置を備える携帯無線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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