アンテナ装置及び無線タグ
【課題】無線タグにおいてアンテナインピーダンスを低く抑えながら、広帯域化を達成する。
【解決手段】一対のアンテナパターンからなる平面アンテナ1と、その平面アンテナ1の給電点に接続されたICチップとを有する無線タグにおいて、平面アンテナを構成するアンテナパターン11,12を、給電点側の端部に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅を大きくした面パターンとして、平面アンテナ1の広帯域化を達成する。さらに、平面アンテナ1に隣接して形成する補助パターン2を、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積を有する面パターンとして、アンテナインピーダンスを低く抑える。
【解決手段】一対のアンテナパターンからなる平面アンテナ1と、その平面アンテナ1の給電点に接続されたICチップとを有する無線タグにおいて、平面アンテナを構成するアンテナパターン11,12を、給電点側の端部に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅を大きくした面パターンとして、平面アンテナ1の広帯域化を達成する。さらに、平面アンテナ1に隣接して形成する補助パターン2を、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積を有する面パターンとして、アンテナインピーダンスを低く抑える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばRFID(Radio Frequency Identification)システムなどに用いられるアンテナ装置及び無線タグに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDシステムは、通常、書き込み・読み出し機能を持つリーダと無線タグから構成される。従来、特にマイクロ波領域では、無線タグとして、バッテリを内蔵したタグがFA分野等で利用されている。また、最近では、リーダからの送信電波を検波し、それを駆動電力としてタグ動作を行わせるバッテリレスタグが登場している。
【0003】
RFIDシステムは各種の分野で採用されている。例えば、公共の図書館や学校の図書館などにおいては、図書識別情報などが記録されたRFID図書分類ラベル(無線タグ)を図書に貼付して、図書を管理する本管理システムが採用されている(例えば、特許文献1参照。)。また、RFIDシステムを病院のカルテ管理システム、在庫管理システム、宅配管理システムなどに適用することも考えられている。
【0004】
RFIDシステムは、例えば図18に示すように、リーダRW、アンテナA、及び、無線タグTによって構成されており、リーダRWは電波信号を送出し、このリーダRWからの送出電波信号を無線タグTが受け、タグ内のメモリに蓄積された情報で、入力信号に反射変調を与えてリーダRWに返送する。そして、無線タグTから返送された信号をリーダRWにて復調してタグ情報を取り出すようになっている。なお、RFIDシステムにおいては、13.56MHz帯、900MHz帯、2.54GHz帯などの周波数帯域が使用されている。
【0005】
RFIDシステムに利用される無線タグとして、物品等に実装する平面状のタグが現在までに商用化されている。一例として、ダイポールアンテナを有する無線タグがある(例えば、特許文献2参照。)。その無線タグの一例を図19に示す。
【0006】
図19に示す無線タグT20は、誘電体基板204の上に、信号を電波として送受信するダイポールアンテナ201を形成するとともに、タグ処理機能をもつICチップ203を組み込んで一体化したものである。このようなダイポールアンテナ201を有する無線タグT20では、ダイポールアンテナ201のアンテナ長を通信周波数の波長λの半波長(λ/2)に設定することにより良好な利得を得ることができる。また、ダイポールアンテナにおいては、インピーダンスを調整するために、例えば図20に示すように、ダイポールアンテナ201の側方に、電気的に絶縁された線状の補助パターン202をダイポールアンテナ201と平行に形成するという構造が採用されている。
【0007】
一方、流通過程などにおいて情報を無線通信で授受するシステムとして、ICチップと一対のアンテナとを有し、静電結合方式により電波から情報及び電力が供給されるデータキャリアを用いて、包装箱内の収容物(商品等)などの情報をやり取りするシステムが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、この特許文献3には、一対のアンテナに一対の拡張アンテナ領域を電気的に連結するとともに、その一対の拡張アンテナ領域を異なる平面に形成することにより、情報の授受を確実かつ容易に行うことができることが記載されている。
【特許文献1】特開2004−210446号公報
【特許文献2】特開2000−113152号公報
【特許文献3】特開2002−321725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、平面アンテナを有する無線タグを本や雑誌に貼り付ける場合、タグ厚さを薄くしてシート状にする必要がある。このように無線タグを薄いシート状にした場合、物体などに貼着していない状態(中空状態)のときには、周囲条件からの影響を大きく受けることがないので問題はないが、商品などに貼り付けて使用する場合はアンテナ特性に影響を与えてしまう。特に、無線タグを本や雑誌などの厚さが特定できないような商品に貼り付けると、アンテナインピーダンスが変化するなど、平面アンテナが受ける影響もさまざまであり、これに対応するには広帯域に対応した平面アンテナが必要になる。
【0009】
平面アンテナを広帯域化する方法の1つとして、アンテナパターンを線パターンではなく、面パターンとする手法があるが、単に面パターンとするだけでは、ICチップとのマッチングが困難であったり、指向特性の調整も難しい。
【0010】
本発明はそのような実情に鑑みてなされたものであり、アンテナインピーダンスを低く抑えながら、広帯域化を達成することが可能であり、しかも、厚さの異なる物に貼り付けた場合に生じるインピーダンス変化を抑制することが可能な平面アンテナを有するアンテナ装置を提供すること、及び、そのような特徴を有するアンテナ装置を備えた無線タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のアンテナ装置は、一対のアンテナパターンが互いに対向して形成されているとともに、その一対のアンテナパターンの対向端部を給電点とする平面アンテナと、前記一対のアンテナパターンに隣接して形成された補助パターンとを有し、前記平面アンテナの一対のアンテナパターンは、それぞれ、前記給電点に近い側の端部のパターン幅に対し、前記給電点から遠い側の端部のパターン幅が大きくなるように形成されており、前記補助パターンは、前記平面アンテナの一端側から他端側まで延び、かつ、前記一対のアンテナパターンの1つのアンテナパターンと同じ面積または1つのアンテナパターンよりも大きな面積を有することを特徴としている。
【0012】
本発明のアンテナ装置によれば、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、給電点に近い側の端部に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅を大きくした面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナに隣接して形成する補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、平面アンテナの給電点にICチップを接続するにあたり、ICチップとのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。このように、アンテナパターンを面パターンとすることで、容量性のリアクタンスを大きくできるため、そのままでは抵抗成分が大きいアンテナのインピーダンスを低くなるように調整することが容易となる。
【0013】
さらに、本発明のアンテナ装置では、本や雑誌などの厚さの異なる物に貼り付けた場合に生じるインピーダンス変化を抑制することができる。
【0014】
すなわち、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、面積を大きくした面パターンとした場合に、補助パターンを線状とすると、外部からの影響を受ける度合がアンテナパ
ターンと補助パターンとで異なり、その両者のバランスが悪くなるため、本や雑誌などの厚さの異なる物に貼り付けた場合に大きなインピーダンス変化が生じる。これに対し、補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとすると、アンテナパターンと補助パターンとのバランスが良好となり、貼り付ける物の厚さが異なる場合であっても、インピーダンス変化を低く抑えることができる(図17参照)。
【0015】
本発明の無線タグは、上記した特徴を有するアンテナ装置を備え、前記平面アンテナの給電点にICチップが接続されていることを特徴としている。より具体的には、前記一対のアンテナパターンが、それぞれ、前記給電点に近い側の端部から遠い側の端部に向かうに従ってパターン幅が広がる三角形状であり、その三角形状のアンテナパターンの斜辺に近接して前記補助パターンが形成されていることを特徴としている。
【0016】
本発明の無線タグによれば、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、給電点に近い側の端部に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅を大きくした面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナに隣接して形成する補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、無線タグに搭載するICチップとのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。このように、アンテナパターンを面パターンとすることで、容量性のリアクタンスを大きくできるため、そのままでは抵抗成分が大きいアンテナのインピーダンスを低くなるように調整することが容易となる。
【0017】
さらに、本発明の無線タグでは、本や雑誌などの厚さの異なる物に貼り付けた場合に生じるインピーダンス変化を抑制することができる。
【0018】
すなわち、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、面積を大きくした面パターンとした場合に、補助パターンを線状とすると、外部からの影響を受ける度合がアンテナパ
ターンと補助パターンとで異なり、その両者のバランスが悪くなるため、本や雑誌などの厚さの異なる物に貼り付けた場合に大きなインピーダンス変化が生じる。これに対し、補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとすると、アンテナパターンと補助パターンとのバランスが良好となり、貼り付ける物の厚さが異なる場合であっても、インピーダンス変化を低く抑えることができる(図17参照)。
【0019】
ここで、本発明の無線タグにおいて、補助パターンの形状を工夫することにより、平面アンテナの指向性を用途に応じて選択的に変更することも可能である。
【0020】
例えば、平面アンテナを構成する一対のアンテナパターンを三角形状とする場合、補助パターンの辺のうち、三角形状のアンテナパターンの斜辺に近接しない辺で給電点と対向する辺を、アンテナパターンが延びる方向と平行な直線とすると(例えば図1に示す補助パターン2の形状(二等辺三角形))、均一な分布の指向性を得ることができる(例えば図11(a)参照)。
【0021】
また、補助パターンの辺のうち、三角形状のアンテナパターンの斜辺に近接しない辺で給電点と対向する辺を頂点を有する山形形状とし、その山形の頂点を給電点に対応する位置に設けた場合(例えば図7に示す補助パターン32の形状(菱形))、偏った分布の指向性を得ることができる(例えば図11(c)参照)。
【0022】
なお、本発明の無線タグにおいて、アンテナパターンの形状は、三角形のほか、例えば台形や扇形などであってもよい。要するに、アンテナパターンは、給電点に近い側の端部のパターン幅に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅が大きくなる形状であればよいが、給電点に近い側の端部から遠い側の端部に向かうに従ってパターン幅が漸次広がる形状のアンテナパターンであることが好ましい。
【0023】
本発明のアンテナ装置及び無線タグにおいて、補助パターンを、アンテナパターンを挟んだ両側に設けておけば、さらに広帯域化をはかることができる。この点について以下に説明する。
【0024】
まず、複数国において使用されているタグでは、各国毎に使用が許されている周波数が異なっている場合がある。また、汎用のタグ(アンテナ)として、無指向が求められる場合が多い。
【0025】
例えば、UHF周波数帯のRFIDリーダでは、従来、北米の902〜928MHzのISMバンド(バンド幅26MHz)を使用していた。しかしながら、最近では、欧州において865〜868MHz、日本国内でも952〜954MHzが使用される動きがある。これらの全ての周波数でタグを動作させるには、従来のバンド幅26MHzを、89MHzまで拡大しなければならず(図21参照)、商品の輸出や輸出においてタグを使用する場合にはアンテナの広帯域化が重要になってくる。
【0026】
また、UHF周波数帯を使用したタグは、電波の飛距離が長いこと、及び、タグの大きさが2.54GHzのタグよりも大きいことなどから、物流における大型のダンボール箱などに貼り付けて使用されるケースが多い。しかしながら、ダンボールの素材にタグを貼り付けることにより中心周波数が低くなってしまう場合がある。また、吊りタグとしてタグが空中につられる状態では、中心周波数が、あまり変わらない場合もある。これらの使用状態を含む全ての環境においてタグを使用可能にするには、89MHzよりも、さらに広帯域化する必要がある。
【0027】
ここで、アンテナを広帯域化する方法の1つとして、上記したように、アンテナパターンを線パターンではなく、扇状パターン(面パターン)とする手法が知られているが、扇状パターンのアンテナとするだけでは、ICチップとのインピーダンスを調整する手段が少なく、送受信時のインピーダンスマッチングが合わないという問題が発生する。
【0028】
このような点を考慮して、本発明では、上記したように、アンテナパターンの片側に補助パターンを設け、三角形状のアンテナパターンの両端に並列のインピーダンス調整素子を配置することで、三角形状のアンテナパターンの長さ方向(直列の調整)とあわせて、インピーダンス調整を容易にするとともに、十分な指向性が得られるようにしている。
【0029】
このような構造のアンテナでは、限られた帯域幅に対するインピーダンス整合を行うことは可能であるものの、さらに広い帯域幅のインピーダンス整合を考えた場合、十分とは言えない。また、特定の方向への通信距離は向上するが、他の方向への通信距離が劣化するため、方向の特定が難しい用途には適していない。
【0030】
このような点を解消する方法として、本発明では、アンテナパターンを挟んだ両側に補助パターン(補助素子)を配置するという構成を採用する。そして、このようにアンテナパターンの両側に補助パターンを配置することで、アンテナパターンの片側に補助パターンを配置する場合よりも、広帯域に対してインピーダンス調整が可能なタグ(アンテナ)を提供することが可能となる。さらに、貼り付け面に対して垂直方向の利得を改善することができるので、タグを貼り付けた物体に対して、タグ貼り付け面の垂直方向からリードライトするというような利用方法も可能になる。
【0031】
本発明のアンテナ装置及び無線タグにおいて、アンテナパターン及び補助パターンは、例えば、柔軟性シートなどの基材上に金属平板を形成したパターンであってもよいし、導電性インク等を基材表面に印刷したパターンであってもよい。また、基材表面に接地導体を形成し、その接地導体を所定形状に刳り貫いてアンテナパターン(スロットアンテナ)及び補助パターン(スロット)を形成したものであってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、給電点に近い側の端部に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅を大きくした面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナに隣接して形成する補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、平面アンテナの給電点に接続するICチップとのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0033】
さらに、本発明では、面パターンである補助パターンの形状を適宜に選定することにより、使用用途に応じた指向性を有する平面アンテナを構成することができるので、無線タグの適用範囲を広げることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
<実施形態1>
図1は本発明の無線タグの一例を示す平面図である。図2はそれぞれ図1のX−X線端面図(a)、Y−Y線端面図(b)及びZ−Z線端面図(c)を併記して示す図である。図3は図1の無線タグの斜視図である。
【0036】
この例の無線タグT1は、柔軟性シート4(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のシート)の表面に形成された平面アンテナ1及び補助パターン2を有するアンテナ装置AN1と、柔軟性シート4上に搭載されたICチップ(タグIC)3とを備えている。
【0037】
平面アンテナ1は、柔軟性シート4の表面に形成された一対のアンテナパターン11,12を備えている。各アンテナパターン11,12は、互いに対称な三角形状(二等辺三角形)のパターンであり、柔軟性シート4表面に形成された金属平板によって構成されている。これら一対の三角形状のアンテナパターン11,12は三角形の頂点が対向するように配置されており、その互いに向かい合う頂点がそれぞれ給電点11a,12aとなっている。そして、この給電点11a,12aにICチップ3が接続されている。
【0038】
補助パターン2は、平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11と同じ面積を有する二等辺三角形状のパターンであり、柔軟性シート4表面に形成された金属平板によって構成されている。補助パターン2は、平面アンテナ1の一端(一方のアンテナパターン11の給電点11aから遠い側の端部11b)から、平面アンテナ1の他端(他方のアンテナパターン12の給電点12aから遠い側の端部12b)まで延びている。補助パターン2の長さ(両端2b,2b間の距離)は、平面アンテナ1の長さ(アンテナパターン11の端部11bとアンテナパターン12の端部12bとの間の距離)と同じである。
【0039】
補助パターン2の斜辺2c,2cは、それぞれ、一対のアンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接した状態で配置されており、アンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接しない辺(二等辺三角形の底辺に相当)2dは、三角形状のアンテナパターン11,12の中心線Lと平行な直線となっている。また、補助パターン2の頂点2aは平板アンテナ1の給電点11a,12aに対応する位置(一対のアンテナパターン11,12の中央位置)に配置されている。
【0040】
以上の構造の無線タグT1によれば、平面アンテナ1を構成するアンテナパターン11,12をそれぞれ三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナ1に隣接して形成する補助パターン2を、線状ではなく、平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11と同じ面積の三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、これによって無線タグT1に搭載するICチップ3とのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0041】
次に、無線タグT1の使用例を説明する。
【0042】
まず、無縁タグT1は、例えば図4に示すように本Bの側面に貼り付けて使用される。無線タグT1のICチップ3には、図書識別情報などが記録されている。一方、この例において、RFIDシステムに用いる携帯リーダR1はアンテナA1が内蔵されている。また、携帯リーダR1には、操作ボタンB1や読み取った情報を表示する表示画面D1を備えている。
【0043】
そして、この例では、携帯リーダR1から送られた信号が、無線タグT1の平面アンテナ1で捉えられてICチップ3に供給される。ICチップ3では、IC内のメモリ情報にて入力信号は反射され、再び平面アンテナ1から放射される。携帯リーダR1側に放射さ
れた信号は、携帯リーダR1のアンテナA1で受信されて復調される。これにより、無線タグT1が動作してICチップ3内の情報(図書識別情報等)が携帯リーダR1で取り出され、その取り出した情報が表示画面D1に表示される。
【0044】
<実施形態2>
図5及び図6はそれぞれ本発明の無線タグの他の例を示す平面図及び斜視図である。
【0045】
この例の無線タグT2は、前記した実施形態1の無線タグT1において、補助パターンの形状を変更した点に特徴がある。
【0046】
具体的には、補助パターン22の形状を五角形(図1の補助パターン(二等辺三角形)2に長方形を付加した形状の五角形)とし、その補助パターン22の面積を平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11の面積よりも大きくした点に特徴がある。それ以外の構成は実施形態1の無線タグT1と同じである。
【0047】
この例においても、補助パターン22の斜辺22c,22cは、それぞれ、一対のアンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接した状態で配置されている。また、アンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接しない3辺のうち、給電点11a,12aと対向する辺22dは、アンテナパターン11,12の中心線Lと平行な直線となっている。
【0048】
この例の無線タグT2によれば、平面アンテナ1を構成するアンテナパターン11,12をそれぞれ三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナ1に隣接して形成する補助パターン2を、線状ではなく、平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11よりも大きな面積を有する五角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、これによって無線タグT2に搭載するICチップ3とのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0049】
<実施形態3>
図7及び図8はそれぞれ本発明の無線タグの別の例を示す平面図及び斜視図である。
【0050】
この例の無線タグT3は、前記した実施形態1の無線タグT1において、補助パターンの形状を変更した点に特徴がある。
【0051】
具体的には、補助パターン32の形状を菱形とし、その補助パターン32の面積を平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11の面積の2倍の面積とした点に特徴がある。それ以外の構成は実施形態1の無線タグT1と同じである。
【0052】
この例においては、補助パターン32の鋭角側の頂点32b,32bがそれぞれ平面アンテナ1の一端(アンテナパターン11の端部11b)と他端(アンテナパターン12の端部12b)に位置しており、補助パターン32の長さ(頂点32b,32b間の距離)が平面アンテナ1の長さ(アンテナパターン11の端部11bとアンテナパターン12の端部12bとの間の距離)と同じとなっている。
【0053】
さらに、補助パターン32の斜辺32c,32c(菱形の2つの斜辺)は、それぞれ、一対のアンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接した状態で配置されており、これら2つの斜辺32c,32cの頂点32aが、平板アンテナ1の給電点11a,12aに対応する位置(一対のアンテナパターン11,12の中央位置)に配置されている。また、補助パターン32は菱形形状であるので、当然のことながら、一対のアンテナ
パターン11,12の斜辺11c,12cに近接していない2つの斜辺32d,32dの頂点32eも平板アンテナ1の給電点11a,12aに対応する位置に配置されている。
【0054】
この例の無線タグT3によれば、平面アンテナ1を構成するアンテナパターン11,12をそれぞれ三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナ1に隣接して形成する補助パターン2を、線状ではなく、平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11の2倍の面積を有する菱形形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、これによって無線タグT3に搭載するICチップ3とのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0055】
<実施形態4>
図9及び図10はそれぞれ本発明の無線タグの別の例を示す平面図及び斜視図である。
【0056】
この例の無線タグT10は、柔軟性シート4(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のシート)の表面に形成された平面アンテナ101及び互いに対称な形状(二等辺三角形)の補助パターン102,102を有するアンテナ装置AN10と、柔軟性シート4上に搭載されたICチップ(タグIC)3とを備えており、アンテナパターン111,112を挟んだ両側にそれぞれ補助パターン102,102を配置している点に特徴がある。
【0057】
平面アンテナ101は、柔軟性シート4の表面に形成された一対のアンテナパターン111,112を備えている。各アンテナパターン111,112は、互いに対称な三角形状(二等辺三角形)のパターンであり、柔軟性シート4表面に形成された金属平板によって構成されている。これら一対の三角形状のアンテナパターン111,112は三角形の頂点が対向するように配置されており、その互いに向かい合う頂点がそれぞれ給電点111a,112aとなっている。そして、この給電点111a,112aにICチップ3が接続されている。
【0058】
各補助パターン102は、平面アンテナ101の1つのアンテナパターン111と同じ面積を有する二等辺三角形状のパターンであり、柔軟性シート4表面に形成された金属平板によって構成されている。各補助パターン102は、平面アンテナ101の一端(一方のアンテナパターン111の給電点111aから遠い側の端部111b)から、平面アンテナ101の他端(他方のアンテナパターン112の給電点112aから遠い側の端部112b)まで延びている。各補助パターン102の長さ(両端102b,102b間の距離)は、平面アンテナ101の長さ(アンテナパターン111の端部111bとアンテナパターン112の端部112bとの間の距離)と同じである。
【0059】
各補助パターン102の斜辺102c,102cは、それぞれ、一対のアンテナパターン111,112の斜辺111c,112cに近接した状態で配置されており、アンテナパターン111,112の斜辺111c,112cに近接しない辺(二等辺三角形の底辺に相当)102dは、三角形状のアンテナパターン111,112の中心線L10と平行な直線となっている。また、各補助パターン102の頂部(頂点)102aは平板アンテナ101の給電点111a,112aに対応する位置(一対のアンテナパターン111,112の中央位置)に配置されている。
【0060】
以上の構造の無線タグT10によれば、平面アンテナ101を構成するアンテナパターン111,112をそれぞれ三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ101の広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナ101に隣接して形成する各補助パターン102,102を、線状ではなく、平面アンテナ101の1つのアンテナパターン111と同じ面積の三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ101の広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、これによって無線タグT10に搭載するICチップ3とのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0061】
しかも、アンテナパターン111,112を挟んだ両側にそれぞれ補助パターン102,102を配置しているので、アンテナパターンの片側に補助パターンを配置する構造(例えば図1〜図3に示す構造)よりも、広帯域に対してインピーダンス調整が可能なタグ(アンテナ)を提供することが可能となる。さらに、貼り付け面に対して垂直方向の利得を改善することができるので、タグT10を貼り付けた物体に対して、タグ貼り付け面の垂直方向からリードライトするというような利用方法も可能になる。
【0062】
−無線タグの指向性−
次に、本発明の無線タグの指向性について説明する。
【0063】
まず、図1に示す無線タグT1の平面アンテナ1の指向性、図5に示す無線タグT2の平面アンテナ1の指向性、及び、図7に示す無線タグT3の平面アンテナ1の指向性をそれぞれ測定したところ、図11に示すような結果が得られた。
【0064】
この図11の結果から明らかなように、補助パターン2,22,32の各形状に応じて平面アンテナ1の指向性が変わることがわかる。
【0065】
すなわち、図1に示す二等辺三角形状の補助パターン2を平面アンテナ1に近接して配置した場合、図11(a)に示すように、ほぼ均等な分布の指向性を得ることができる。一方、図7に示す菱形形状の補助パターン23を平面アンテナ1に近接して配置した場合、図11(c)に示すように、一方向に偏った分布の指向性を得ることができる。
【0066】
また、図5に示す五角形状の補助パターン22を平面アンテナ1に近接して配置した場合、図11(b)に示すように、上記した2つの例(図11(a)及び(c))の中間的な分布の補助パターンを得ることができる。このように、補助パターンの形状を工夫することによって指向性を変更することが可能であるので、補助パターンの形状を適宜選択することにより、使用用途に合わせた指向性を有する無線タグを提供することができる。
【0067】
その具体的な例を以下に説明する。
【0068】
まず、本を本棚などに収納するときには、本をケースに入れて収納する場合と、ケース無しで本を収納する場合があり、ケースに入れて収容する場合とケース無しの状態で収納する場合では、本の収納方向が逆向きになる。このような状況において、無線タグの平面アンテナの指向性が一方向に偏っている場合、図12(a)に示すように、ケース無しの状態で無線タグTの情報をリーダで読み取ることは可能であるが、本BをケースCに入れて本棚に収納した場合、無線タグTの情報を読み取ることができない場合が発生する。このような問題を回避するには、平面アンテナ1の指向性に偏りがないことが好ましいので、図1に示す二等辺三角形状の補助パターン2を有する無線タグT1を使用する(図12(b)参照)。
【0069】
また、背合わせの書庫に本を収納する場合、平面アンテナ1の指向性によっては、図13(a)に示すように、背中合わせの本B1と本B2のそれぞれに貼り付けた無線タグTの読取可能領域が重畳するため、裏側の本B2の情報を読み取ってしまうことがあり、対象とする本B1の無線タグTの情報を読み取るのに多くの時間を要することがある。このような問題を回避する場合は、平面アンテナ1の指向性が偏っているの特性もの、すなわち図7に示す菱形形状の補助パターン32を有する無線タグT3を使用する(図13(b)参照)。
【実施例】
【0070】
以下、本発明に実施例を比較例とともに説明する。
【0071】
<実施例1>
図1の無線タグT1を用い、その無線タグT1を図14に示すように紙Pに貼り付け、その紙Pの厚さを、t1、t2、t3、t4、t5の順で厚くして、各紙厚さごとに、平面アンテナ1のインピーダンスを測定した。その測定結果を図17のグラフに示す。
【0072】
<比較例1>
図1の無線タグT1において、補助パターン2に替えて、図15に示すような帯状の補助パターン42を平面アンテナ1に近接して配置した無線タグT4を用い、この無線タグT4を紙Pに貼り付け、実施例1と同様に、紙Pの厚さを、t1、t2、t3、t4、t5の順で厚くして、各紙厚さごとに、平面アンテナ1のインピーダンスを測定した。その測定結果を図17のグラフに示す。
【0073】
<比較例2>
図1の無線タグT1において、補助パターン2に替えて、図16に示すような線状の補助パターン52を平面アンテナ1に近接して配置した無線タグT5を用い、この無線タグT5を紙Pに貼り付け、実施例1と同様に、紙Pの厚さを、t1、t2、t3、t4、t5の順で厚くして、各紙厚さごとに、平面アンテナ1のインピーダンスを測定した。その測定結果を図17のグラフに示す。
【0074】
−比較検討−
図17に示すグラフから明らかなように、薄い厚さt1の紙Pに無線タグを貼り付けた場合、実施例1及び比較例1、2のいずれも紙Pの影響は少なく、実施例1と比較例1,2との間においてアンテナのインピーダンスにあまり差は見られない。しかし、紙Pの厚さが厚くなると、実施例1では、インピーダンスではあまり変化が見られないのに対し、比較例1、2においてはインピーダンスが大きく変化しており、特に、線状の補助パターン52を設けた比較例2では、インピーダンスが急激に高くなっている。
【0075】
以上のことから、平面アンテナに近接して配置する補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとすることで、貼り付ける物の厚さが異なる場合であっても、インピーダンス変化を低く抑えることが可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のアンテナ装置及び無線タグは、例えば、本管理システム、病院のカルテ管理システム、在庫管理システム、宅配管理システムなどにRFIDシステムを適用する際に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の平面アンテナを備えた無線タグの一例を示す平面図である。
【図2】図1のX−X線端面図(a)、Y−Y線端面図(b)、及び、Z−Z線端面図(c)である。
【図3】図1の無線タグの斜視図である。
【図4】図1の無線タグを使用状態で示す斜視図である。
【図5】本発明の無線タグの他の例を示す平面図である。
【図6】図5の無線タグの斜視図である。
【図7】本発明の無線タグの別の例を示す平面図である。
【図8】図7の無線タグの斜視図である。
【図9】本発明の平面アンテナを備えた無線タグの別の例を示す平面図である。
【図10】図9の無線タグの斜視図である。
【図11】図1の無線タグ、図5の無線タグ及び図7の無線タグのアンテナ指向性を示す図である。
【図12】無線タグを本に貼り付けたときの問題点及びその解消方法を模式的に示す図である。
【図13】無線タグを本に貼り付けたときの問題点及びその解消方法を模式的に示す図である。
【図14】本発明の実施例1の説明図である。
【図15】本発明の比較例1の説明図である。
【図16】本発明の比較例2の説明図である。
【図17】本発明の実施例1及び比較例1,2の結果を示す図で、無線タグのアンテナインピーダンスと紙の厚さとの関係を示すグラフである。
【図18】RFIDシステムの基本構成を示す図である。
【図19】従来の無線タグの一例を示す平面図である。
【図20】従来の無線タグの他の例を示す平面図である。
【図21】UHF周波数帯のRFIDリーダで使用される周波数・帯域幅を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
AN1,AN10 アンテナ装置
T1,T2,T3,T10 無線タグ
1,101 平面アンテナ
11,111,12、112 アンテナパターン(金属平板)
11a,111a,12a,112a 給電点
2,22,32,202 補助パターン(金属平板)
3 ICチップ
4 柔軟性シート
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばRFID(Radio Frequency Identification)システムなどに用いられるアンテナ装置及び無線タグに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDシステムは、通常、書き込み・読み出し機能を持つリーダと無線タグから構成される。従来、特にマイクロ波領域では、無線タグとして、バッテリを内蔵したタグがFA分野等で利用されている。また、最近では、リーダからの送信電波を検波し、それを駆動電力としてタグ動作を行わせるバッテリレスタグが登場している。
【0003】
RFIDシステムは各種の分野で採用されている。例えば、公共の図書館や学校の図書館などにおいては、図書識別情報などが記録されたRFID図書分類ラベル(無線タグ)を図書に貼付して、図書を管理する本管理システムが採用されている(例えば、特許文献1参照。)。また、RFIDシステムを病院のカルテ管理システム、在庫管理システム、宅配管理システムなどに適用することも考えられている。
【0004】
RFIDシステムは、例えば図18に示すように、リーダRW、アンテナA、及び、無線タグTによって構成されており、リーダRWは電波信号を送出し、このリーダRWからの送出電波信号を無線タグTが受け、タグ内のメモリに蓄積された情報で、入力信号に反射変調を与えてリーダRWに返送する。そして、無線タグTから返送された信号をリーダRWにて復調してタグ情報を取り出すようになっている。なお、RFIDシステムにおいては、13.56MHz帯、900MHz帯、2.54GHz帯などの周波数帯域が使用されている。
【0005】
RFIDシステムに利用される無線タグとして、物品等に実装する平面状のタグが現在までに商用化されている。一例として、ダイポールアンテナを有する無線タグがある(例えば、特許文献2参照。)。その無線タグの一例を図19に示す。
【0006】
図19に示す無線タグT20は、誘電体基板204の上に、信号を電波として送受信するダイポールアンテナ201を形成するとともに、タグ処理機能をもつICチップ203を組み込んで一体化したものである。このようなダイポールアンテナ201を有する無線タグT20では、ダイポールアンテナ201のアンテナ長を通信周波数の波長λの半波長(λ/2)に設定することにより良好な利得を得ることができる。また、ダイポールアンテナにおいては、インピーダンスを調整するために、例えば図20に示すように、ダイポールアンテナ201の側方に、電気的に絶縁された線状の補助パターン202をダイポールアンテナ201と平行に形成するという構造が採用されている。
【0007】
一方、流通過程などにおいて情報を無線通信で授受するシステムとして、ICチップと一対のアンテナとを有し、静電結合方式により電波から情報及び電力が供給されるデータキャリアを用いて、包装箱内の収容物(商品等)などの情報をやり取りするシステムが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。また、この特許文献3には、一対のアンテナに一対の拡張アンテナ領域を電気的に連結するとともに、その一対の拡張アンテナ領域を異なる平面に形成することにより、情報の授受を確実かつ容易に行うことができることが記載されている。
【特許文献1】特開2004−210446号公報
【特許文献2】特開2000−113152号公報
【特許文献3】特開2002−321725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、平面アンテナを有する無線タグを本や雑誌に貼り付ける場合、タグ厚さを薄くしてシート状にする必要がある。このように無線タグを薄いシート状にした場合、物体などに貼着していない状態(中空状態)のときには、周囲条件からの影響を大きく受けることがないので問題はないが、商品などに貼り付けて使用する場合はアンテナ特性に影響を与えてしまう。特に、無線タグを本や雑誌などの厚さが特定できないような商品に貼り付けると、アンテナインピーダンスが変化するなど、平面アンテナが受ける影響もさまざまであり、これに対応するには広帯域に対応した平面アンテナが必要になる。
【0009】
平面アンテナを広帯域化する方法の1つとして、アンテナパターンを線パターンではなく、面パターンとする手法があるが、単に面パターンとするだけでは、ICチップとのマッチングが困難であったり、指向特性の調整も難しい。
【0010】
本発明はそのような実情に鑑みてなされたものであり、アンテナインピーダンスを低く抑えながら、広帯域化を達成することが可能であり、しかも、厚さの異なる物に貼り付けた場合に生じるインピーダンス変化を抑制することが可能な平面アンテナを有するアンテナ装置を提供すること、及び、そのような特徴を有するアンテナ装置を備えた無線タグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のアンテナ装置は、一対のアンテナパターンが互いに対向して形成されているとともに、その一対のアンテナパターンの対向端部を給電点とする平面アンテナと、前記一対のアンテナパターンに隣接して形成された補助パターンとを有し、前記平面アンテナの一対のアンテナパターンは、それぞれ、前記給電点に近い側の端部のパターン幅に対し、前記給電点から遠い側の端部のパターン幅が大きくなるように形成されており、前記補助パターンは、前記平面アンテナの一端側から他端側まで延び、かつ、前記一対のアンテナパターンの1つのアンテナパターンと同じ面積または1つのアンテナパターンよりも大きな面積を有することを特徴としている。
【0012】
本発明のアンテナ装置によれば、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、給電点に近い側の端部に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅を大きくした面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナに隣接して形成する補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、平面アンテナの給電点にICチップを接続するにあたり、ICチップとのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。このように、アンテナパターンを面パターンとすることで、容量性のリアクタンスを大きくできるため、そのままでは抵抗成分が大きいアンテナのインピーダンスを低くなるように調整することが容易となる。
【0013】
さらに、本発明のアンテナ装置では、本や雑誌などの厚さの異なる物に貼り付けた場合に生じるインピーダンス変化を抑制することができる。
【0014】
すなわち、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、面積を大きくした面パターンとした場合に、補助パターンを線状とすると、外部からの影響を受ける度合がアンテナパ
ターンと補助パターンとで異なり、その両者のバランスが悪くなるため、本や雑誌などの厚さの異なる物に貼り付けた場合に大きなインピーダンス変化が生じる。これに対し、補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとすると、アンテナパターンと補助パターンとのバランスが良好となり、貼り付ける物の厚さが異なる場合であっても、インピーダンス変化を低く抑えることができる(図17参照)。
【0015】
本発明の無線タグは、上記した特徴を有するアンテナ装置を備え、前記平面アンテナの給電点にICチップが接続されていることを特徴としている。より具体的には、前記一対のアンテナパターンが、それぞれ、前記給電点に近い側の端部から遠い側の端部に向かうに従ってパターン幅が広がる三角形状であり、その三角形状のアンテナパターンの斜辺に近接して前記補助パターンが形成されていることを特徴としている。
【0016】
本発明の無線タグによれば、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、給電点に近い側の端部に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅を大きくした面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナに隣接して形成する補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、無線タグに搭載するICチップとのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。このように、アンテナパターンを面パターンとすることで、容量性のリアクタンスを大きくできるため、そのままでは抵抗成分が大きいアンテナのインピーダンスを低くなるように調整することが容易となる。
【0017】
さらに、本発明の無線タグでは、本や雑誌などの厚さの異なる物に貼り付けた場合に生じるインピーダンス変化を抑制することができる。
【0018】
すなわち、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、面積を大きくした面パターンとした場合に、補助パターンを線状とすると、外部からの影響を受ける度合がアンテナパ
ターンと補助パターンとで異なり、その両者のバランスが悪くなるため、本や雑誌などの厚さの異なる物に貼り付けた場合に大きなインピーダンス変化が生じる。これに対し、補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとすると、アンテナパターンと補助パターンとのバランスが良好となり、貼り付ける物の厚さが異なる場合であっても、インピーダンス変化を低く抑えることができる(図17参照)。
【0019】
ここで、本発明の無線タグにおいて、補助パターンの形状を工夫することにより、平面アンテナの指向性を用途に応じて選択的に変更することも可能である。
【0020】
例えば、平面アンテナを構成する一対のアンテナパターンを三角形状とする場合、補助パターンの辺のうち、三角形状のアンテナパターンの斜辺に近接しない辺で給電点と対向する辺を、アンテナパターンが延びる方向と平行な直線とすると(例えば図1に示す補助パターン2の形状(二等辺三角形))、均一な分布の指向性を得ることができる(例えば図11(a)参照)。
【0021】
また、補助パターンの辺のうち、三角形状のアンテナパターンの斜辺に近接しない辺で給電点と対向する辺を頂点を有する山形形状とし、その山形の頂点を給電点に対応する位置に設けた場合(例えば図7に示す補助パターン32の形状(菱形))、偏った分布の指向性を得ることができる(例えば図11(c)参照)。
【0022】
なお、本発明の無線タグにおいて、アンテナパターンの形状は、三角形のほか、例えば台形や扇形などであってもよい。要するに、アンテナパターンは、給電点に近い側の端部のパターン幅に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅が大きくなる形状であればよいが、給電点に近い側の端部から遠い側の端部に向かうに従ってパターン幅が漸次広がる形状のアンテナパターンであることが好ましい。
【0023】
本発明のアンテナ装置及び無線タグにおいて、補助パターンを、アンテナパターンを挟んだ両側に設けておけば、さらに広帯域化をはかることができる。この点について以下に説明する。
【0024】
まず、複数国において使用されているタグでは、各国毎に使用が許されている周波数が異なっている場合がある。また、汎用のタグ(アンテナ)として、無指向が求められる場合が多い。
【0025】
例えば、UHF周波数帯のRFIDリーダでは、従来、北米の902〜928MHzのISMバンド(バンド幅26MHz)を使用していた。しかしながら、最近では、欧州において865〜868MHz、日本国内でも952〜954MHzが使用される動きがある。これらの全ての周波数でタグを動作させるには、従来のバンド幅26MHzを、89MHzまで拡大しなければならず(図21参照)、商品の輸出や輸出においてタグを使用する場合にはアンテナの広帯域化が重要になってくる。
【0026】
また、UHF周波数帯を使用したタグは、電波の飛距離が長いこと、及び、タグの大きさが2.54GHzのタグよりも大きいことなどから、物流における大型のダンボール箱などに貼り付けて使用されるケースが多い。しかしながら、ダンボールの素材にタグを貼り付けることにより中心周波数が低くなってしまう場合がある。また、吊りタグとしてタグが空中につられる状態では、中心周波数が、あまり変わらない場合もある。これらの使用状態を含む全ての環境においてタグを使用可能にするには、89MHzよりも、さらに広帯域化する必要がある。
【0027】
ここで、アンテナを広帯域化する方法の1つとして、上記したように、アンテナパターンを線パターンではなく、扇状パターン(面パターン)とする手法が知られているが、扇状パターンのアンテナとするだけでは、ICチップとのインピーダンスを調整する手段が少なく、送受信時のインピーダンスマッチングが合わないという問題が発生する。
【0028】
このような点を考慮して、本発明では、上記したように、アンテナパターンの片側に補助パターンを設け、三角形状のアンテナパターンの両端に並列のインピーダンス調整素子を配置することで、三角形状のアンテナパターンの長さ方向(直列の調整)とあわせて、インピーダンス調整を容易にするとともに、十分な指向性が得られるようにしている。
【0029】
このような構造のアンテナでは、限られた帯域幅に対するインピーダンス整合を行うことは可能であるものの、さらに広い帯域幅のインピーダンス整合を考えた場合、十分とは言えない。また、特定の方向への通信距離は向上するが、他の方向への通信距離が劣化するため、方向の特定が難しい用途には適していない。
【0030】
このような点を解消する方法として、本発明では、アンテナパターンを挟んだ両側に補助パターン(補助素子)を配置するという構成を採用する。そして、このようにアンテナパターンの両側に補助パターンを配置することで、アンテナパターンの片側に補助パターンを配置する場合よりも、広帯域に対してインピーダンス調整が可能なタグ(アンテナ)を提供することが可能となる。さらに、貼り付け面に対して垂直方向の利得を改善することができるので、タグを貼り付けた物体に対して、タグ貼り付け面の垂直方向からリードライトするというような利用方法も可能になる。
【0031】
本発明のアンテナ装置及び無線タグにおいて、アンテナパターン及び補助パターンは、例えば、柔軟性シートなどの基材上に金属平板を形成したパターンであってもよいし、導電性インク等を基材表面に印刷したパターンであってもよい。また、基材表面に接地導体を形成し、その接地導体を所定形状に刳り貫いてアンテナパターン(スロットアンテナ)及び補助パターン(スロット)を形成したものであってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、平面アンテナを構成するアンテナパターンを、給電点に近い側の端部に対し、給電点から遠い側の端部のパターン幅を大きくした面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナに隣接して形成する補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとしているので、平面アンテナの広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、平面アンテナの給電点に接続するICチップとのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0033】
さらに、本発明では、面パターンである補助パターンの形状を適宜に選定することにより、使用用途に応じた指向性を有する平面アンテナを構成することができるので、無線タグの適用範囲を広げることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
<実施形態1>
図1は本発明の無線タグの一例を示す平面図である。図2はそれぞれ図1のX−X線端面図(a)、Y−Y線端面図(b)及びZ−Z線端面図(c)を併記して示す図である。図3は図1の無線タグの斜視図である。
【0036】
この例の無線タグT1は、柔軟性シート4(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のシート)の表面に形成された平面アンテナ1及び補助パターン2を有するアンテナ装置AN1と、柔軟性シート4上に搭載されたICチップ(タグIC)3とを備えている。
【0037】
平面アンテナ1は、柔軟性シート4の表面に形成された一対のアンテナパターン11,12を備えている。各アンテナパターン11,12は、互いに対称な三角形状(二等辺三角形)のパターンであり、柔軟性シート4表面に形成された金属平板によって構成されている。これら一対の三角形状のアンテナパターン11,12は三角形の頂点が対向するように配置されており、その互いに向かい合う頂点がそれぞれ給電点11a,12aとなっている。そして、この給電点11a,12aにICチップ3が接続されている。
【0038】
補助パターン2は、平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11と同じ面積を有する二等辺三角形状のパターンであり、柔軟性シート4表面に形成された金属平板によって構成されている。補助パターン2は、平面アンテナ1の一端(一方のアンテナパターン11の給電点11aから遠い側の端部11b)から、平面アンテナ1の他端(他方のアンテナパターン12の給電点12aから遠い側の端部12b)まで延びている。補助パターン2の長さ(両端2b,2b間の距離)は、平面アンテナ1の長さ(アンテナパターン11の端部11bとアンテナパターン12の端部12bとの間の距離)と同じである。
【0039】
補助パターン2の斜辺2c,2cは、それぞれ、一対のアンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接した状態で配置されており、アンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接しない辺(二等辺三角形の底辺に相当)2dは、三角形状のアンテナパターン11,12の中心線Lと平行な直線となっている。また、補助パターン2の頂点2aは平板アンテナ1の給電点11a,12aに対応する位置(一対のアンテナパターン11,12の中央位置)に配置されている。
【0040】
以上の構造の無線タグT1によれば、平面アンテナ1を構成するアンテナパターン11,12をそれぞれ三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナ1に隣接して形成する補助パターン2を、線状ではなく、平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11と同じ面積の三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、これによって無線タグT1に搭載するICチップ3とのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0041】
次に、無線タグT1の使用例を説明する。
【0042】
まず、無縁タグT1は、例えば図4に示すように本Bの側面に貼り付けて使用される。無線タグT1のICチップ3には、図書識別情報などが記録されている。一方、この例において、RFIDシステムに用いる携帯リーダR1はアンテナA1が内蔵されている。また、携帯リーダR1には、操作ボタンB1や読み取った情報を表示する表示画面D1を備えている。
【0043】
そして、この例では、携帯リーダR1から送られた信号が、無線タグT1の平面アンテナ1で捉えられてICチップ3に供給される。ICチップ3では、IC内のメモリ情報にて入力信号は反射され、再び平面アンテナ1から放射される。携帯リーダR1側に放射さ
れた信号は、携帯リーダR1のアンテナA1で受信されて復調される。これにより、無線タグT1が動作してICチップ3内の情報(図書識別情報等)が携帯リーダR1で取り出され、その取り出した情報が表示画面D1に表示される。
【0044】
<実施形態2>
図5及び図6はそれぞれ本発明の無線タグの他の例を示す平面図及び斜視図である。
【0045】
この例の無線タグT2は、前記した実施形態1の無線タグT1において、補助パターンの形状を変更した点に特徴がある。
【0046】
具体的には、補助パターン22の形状を五角形(図1の補助パターン(二等辺三角形)2に長方形を付加した形状の五角形)とし、その補助パターン22の面積を平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11の面積よりも大きくした点に特徴がある。それ以外の構成は実施形態1の無線タグT1と同じである。
【0047】
この例においても、補助パターン22の斜辺22c,22cは、それぞれ、一対のアンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接した状態で配置されている。また、アンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接しない3辺のうち、給電点11a,12aと対向する辺22dは、アンテナパターン11,12の中心線Lと平行な直線となっている。
【0048】
この例の無線タグT2によれば、平面アンテナ1を構成するアンテナパターン11,12をそれぞれ三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナ1に隣接して形成する補助パターン2を、線状ではなく、平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11よりも大きな面積を有する五角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、これによって無線タグT2に搭載するICチップ3とのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0049】
<実施形態3>
図7及び図8はそれぞれ本発明の無線タグの別の例を示す平面図及び斜視図である。
【0050】
この例の無線タグT3は、前記した実施形態1の無線タグT1において、補助パターンの形状を変更した点に特徴がある。
【0051】
具体的には、補助パターン32の形状を菱形とし、その補助パターン32の面積を平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11の面積の2倍の面積とした点に特徴がある。それ以外の構成は実施形態1の無線タグT1と同じである。
【0052】
この例においては、補助パターン32の鋭角側の頂点32b,32bがそれぞれ平面アンテナ1の一端(アンテナパターン11の端部11b)と他端(アンテナパターン12の端部12b)に位置しており、補助パターン32の長さ(頂点32b,32b間の距離)が平面アンテナ1の長さ(アンテナパターン11の端部11bとアンテナパターン12の端部12bとの間の距離)と同じとなっている。
【0053】
さらに、補助パターン32の斜辺32c,32c(菱形の2つの斜辺)は、それぞれ、一対のアンテナパターン11,12の斜辺11c,12cに近接した状態で配置されており、これら2つの斜辺32c,32cの頂点32aが、平板アンテナ1の給電点11a,12aに対応する位置(一対のアンテナパターン11,12の中央位置)に配置されている。また、補助パターン32は菱形形状であるので、当然のことながら、一対のアンテナ
パターン11,12の斜辺11c,12cに近接していない2つの斜辺32d,32dの頂点32eも平板アンテナ1の給電点11a,12aに対応する位置に配置されている。
【0054】
この例の無線タグT3によれば、平面アンテナ1を構成するアンテナパターン11,12をそれぞれ三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナ1に隣接して形成する補助パターン2を、線状ではなく、平面アンテナ1の1つのアンテナパターン11の2倍の面積を有する菱形形状の面パターンとしているので、平面アンテナ1の広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、これによって無線タグT3に搭載するICチップ3とのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0055】
<実施形態4>
図9及び図10はそれぞれ本発明の無線タグの別の例を示す平面図及び斜視図である。
【0056】
この例の無線タグT10は、柔軟性シート4(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)製のシート)の表面に形成された平面アンテナ101及び互いに対称な形状(二等辺三角形)の補助パターン102,102を有するアンテナ装置AN10と、柔軟性シート4上に搭載されたICチップ(タグIC)3とを備えており、アンテナパターン111,112を挟んだ両側にそれぞれ補助パターン102,102を配置している点に特徴がある。
【0057】
平面アンテナ101は、柔軟性シート4の表面に形成された一対のアンテナパターン111,112を備えている。各アンテナパターン111,112は、互いに対称な三角形状(二等辺三角形)のパターンであり、柔軟性シート4表面に形成された金属平板によって構成されている。これら一対の三角形状のアンテナパターン111,112は三角形の頂点が対向するように配置されており、その互いに向かい合う頂点がそれぞれ給電点111a,112aとなっている。そして、この給電点111a,112aにICチップ3が接続されている。
【0058】
各補助パターン102は、平面アンテナ101の1つのアンテナパターン111と同じ面積を有する二等辺三角形状のパターンであり、柔軟性シート4表面に形成された金属平板によって構成されている。各補助パターン102は、平面アンテナ101の一端(一方のアンテナパターン111の給電点111aから遠い側の端部111b)から、平面アンテナ101の他端(他方のアンテナパターン112の給電点112aから遠い側の端部112b)まで延びている。各補助パターン102の長さ(両端102b,102b間の距離)は、平面アンテナ101の長さ(アンテナパターン111の端部111bとアンテナパターン112の端部112bとの間の距離)と同じである。
【0059】
各補助パターン102の斜辺102c,102cは、それぞれ、一対のアンテナパターン111,112の斜辺111c,112cに近接した状態で配置されており、アンテナパターン111,112の斜辺111c,112cに近接しない辺(二等辺三角形の底辺に相当)102dは、三角形状のアンテナパターン111,112の中心線L10と平行な直線となっている。また、各補助パターン102の頂部(頂点)102aは平板アンテナ101の給電点111a,112aに対応する位置(一対のアンテナパターン111,112の中央位置)に配置されている。
【0060】
以上の構造の無線タグT10によれば、平面アンテナ101を構成するアンテナパターン111,112をそれぞれ三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ101の広帯域化を達成することができる。しかも、平面アンテナ101に隣接して形成する各補助パターン102,102を、線状ではなく、平面アンテナ101の1つのアンテナパターン111と同じ面積の三角形状の面パターンとしているので、平面アンテナ101の広帯域化を達成しながら、アンテナインピーダンスを低く抑えることが可能となり、これによって無線タグT10に搭載するICチップ3とのインピーダンスマッチングを容易に行うことができる。
【0061】
しかも、アンテナパターン111,112を挟んだ両側にそれぞれ補助パターン102,102を配置しているので、アンテナパターンの片側に補助パターンを配置する構造(例えば図1〜図3に示す構造)よりも、広帯域に対してインピーダンス調整が可能なタグ(アンテナ)を提供することが可能となる。さらに、貼り付け面に対して垂直方向の利得を改善することができるので、タグT10を貼り付けた物体に対して、タグ貼り付け面の垂直方向からリードライトするというような利用方法も可能になる。
【0062】
−無線タグの指向性−
次に、本発明の無線タグの指向性について説明する。
【0063】
まず、図1に示す無線タグT1の平面アンテナ1の指向性、図5に示す無線タグT2の平面アンテナ1の指向性、及び、図7に示す無線タグT3の平面アンテナ1の指向性をそれぞれ測定したところ、図11に示すような結果が得られた。
【0064】
この図11の結果から明らかなように、補助パターン2,22,32の各形状に応じて平面アンテナ1の指向性が変わることがわかる。
【0065】
すなわち、図1に示す二等辺三角形状の補助パターン2を平面アンテナ1に近接して配置した場合、図11(a)に示すように、ほぼ均等な分布の指向性を得ることができる。一方、図7に示す菱形形状の補助パターン23を平面アンテナ1に近接して配置した場合、図11(c)に示すように、一方向に偏った分布の指向性を得ることができる。
【0066】
また、図5に示す五角形状の補助パターン22を平面アンテナ1に近接して配置した場合、図11(b)に示すように、上記した2つの例(図11(a)及び(c))の中間的な分布の補助パターンを得ることができる。このように、補助パターンの形状を工夫することによって指向性を変更することが可能であるので、補助パターンの形状を適宜選択することにより、使用用途に合わせた指向性を有する無線タグを提供することができる。
【0067】
その具体的な例を以下に説明する。
【0068】
まず、本を本棚などに収納するときには、本をケースに入れて収納する場合と、ケース無しで本を収納する場合があり、ケースに入れて収容する場合とケース無しの状態で収納する場合では、本の収納方向が逆向きになる。このような状況において、無線タグの平面アンテナの指向性が一方向に偏っている場合、図12(a)に示すように、ケース無しの状態で無線タグTの情報をリーダで読み取ることは可能であるが、本BをケースCに入れて本棚に収納した場合、無線タグTの情報を読み取ることができない場合が発生する。このような問題を回避するには、平面アンテナ1の指向性に偏りがないことが好ましいので、図1に示す二等辺三角形状の補助パターン2を有する無線タグT1を使用する(図12(b)参照)。
【0069】
また、背合わせの書庫に本を収納する場合、平面アンテナ1の指向性によっては、図13(a)に示すように、背中合わせの本B1と本B2のそれぞれに貼り付けた無線タグTの読取可能領域が重畳するため、裏側の本B2の情報を読み取ってしまうことがあり、対象とする本B1の無線タグTの情報を読み取るのに多くの時間を要することがある。このような問題を回避する場合は、平面アンテナ1の指向性が偏っているの特性もの、すなわち図7に示す菱形形状の補助パターン32を有する無線タグT3を使用する(図13(b)参照)。
【実施例】
【0070】
以下、本発明に実施例を比較例とともに説明する。
【0071】
<実施例1>
図1の無線タグT1を用い、その無線タグT1を図14に示すように紙Pに貼り付け、その紙Pの厚さを、t1、t2、t3、t4、t5の順で厚くして、各紙厚さごとに、平面アンテナ1のインピーダンスを測定した。その測定結果を図17のグラフに示す。
【0072】
<比較例1>
図1の無線タグT1において、補助パターン2に替えて、図15に示すような帯状の補助パターン42を平面アンテナ1に近接して配置した無線タグT4を用い、この無線タグT4を紙Pに貼り付け、実施例1と同様に、紙Pの厚さを、t1、t2、t3、t4、t5の順で厚くして、各紙厚さごとに、平面アンテナ1のインピーダンスを測定した。その測定結果を図17のグラフに示す。
【0073】
<比較例2>
図1の無線タグT1において、補助パターン2に替えて、図16に示すような線状の補助パターン52を平面アンテナ1に近接して配置した無線タグT5を用い、この無線タグT5を紙Pに貼り付け、実施例1と同様に、紙Pの厚さを、t1、t2、t3、t4、t5の順で厚くして、各紙厚さごとに、平面アンテナ1のインピーダンスを測定した。その測定結果を図17のグラフに示す。
【0074】
−比較検討−
図17に示すグラフから明らかなように、薄い厚さt1の紙Pに無線タグを貼り付けた場合、実施例1及び比較例1、2のいずれも紙Pの影響は少なく、実施例1と比較例1,2との間においてアンテナのインピーダンスにあまり差は見られない。しかし、紙Pの厚さが厚くなると、実施例1では、インピーダンスではあまり変化が見られないのに対し、比較例1、2においてはインピーダンスが大きく変化しており、特に、線状の補助パターン52を設けた比較例2では、インピーダンスが急激に高くなっている。
【0075】
以上のことから、平面アンテナに近接して配置する補助パターンを、線状ではなく、平面アンテナの1つのアンテナパターンと同じ面積(または1つのアンテナパターンよりも大きな面積)を有する面パターンとすることで、貼り付ける物の厚さが異なる場合であっても、インピーダンス変化を低く抑えることが可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のアンテナ装置及び無線タグは、例えば、本管理システム、病院のカルテ管理システム、在庫管理システム、宅配管理システムなどにRFIDシステムを適用する際に有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の平面アンテナを備えた無線タグの一例を示す平面図である。
【図2】図1のX−X線端面図(a)、Y−Y線端面図(b)、及び、Z−Z線端面図(c)である。
【図3】図1の無線タグの斜視図である。
【図4】図1の無線タグを使用状態で示す斜視図である。
【図5】本発明の無線タグの他の例を示す平面図である。
【図6】図5の無線タグの斜視図である。
【図7】本発明の無線タグの別の例を示す平面図である。
【図8】図7の無線タグの斜視図である。
【図9】本発明の平面アンテナを備えた無線タグの別の例を示す平面図である。
【図10】図9の無線タグの斜視図である。
【図11】図1の無線タグ、図5の無線タグ及び図7の無線タグのアンテナ指向性を示す図である。
【図12】無線タグを本に貼り付けたときの問題点及びその解消方法を模式的に示す図である。
【図13】無線タグを本に貼り付けたときの問題点及びその解消方法を模式的に示す図である。
【図14】本発明の実施例1の説明図である。
【図15】本発明の比較例1の説明図である。
【図16】本発明の比較例2の説明図である。
【図17】本発明の実施例1及び比較例1,2の結果を示す図で、無線タグのアンテナインピーダンスと紙の厚さとの関係を示すグラフである。
【図18】RFIDシステムの基本構成を示す図である。
【図19】従来の無線タグの一例を示す平面図である。
【図20】従来の無線タグの他の例を示す平面図である。
【図21】UHF周波数帯のRFIDリーダで使用される周波数・帯域幅を示す図である。
【符号の説明】
【0078】
AN1,AN10 アンテナ装置
T1,T2,T3,T10 無線タグ
1,101 平面アンテナ
11,111,12、112 アンテナパターン(金属平板)
11a,111a,12a,112a 給電点
2,22,32,202 補助パターン(金属平板)
3 ICチップ
4 柔軟性シート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のアンテナパターンが互いに対向して形成されているとともに、その一対のアンテナパターンの対向端部を給電点とする平面アンテナと、前記一対のアンテナパターンに隣接して形成された補助パターンとを有し、
前記平面アンテナの一対のアンテナパターンは、それぞれ、前記給電点に近い側の端部のパターン幅に対し、前記給電点から遠い側の端部のパターン幅が大きくなるように形成されており、前記補助パターンは、前記平面アンテナの一端側から他端側まで延び、かつ、前記一対のアンテナパターンの1つのアンテナパターンと同じ面積または1つのアンテナパターンよりも大きな面積を有することを特徴するアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ装置を有し、前記平面アンテナの給電点にICチップが接続されていることを特徴とする無線タグ。
【請求項3】
前記一対のアンテナパターンは、それぞれ、前記給電点に近い側の端部から遠い側の端部に向かうに従ってパターン幅が広がる三角形状であり、その三角形状のアンテナパターンの斜辺に近接して前記補助パターンが形成されていることを特徴とする請求項2記載の無線タグ。
【請求項4】
前記補助パターンは、前記アンテナパターンに近接しない辺のうち、前記給電点と対向する辺が、前記アンテナパターンが延びる方向と平行な直線であることを特徴とする請求項2または3記載の無線タグ。
【請求項5】
前記補助パターンは、前記アンテナパターンに近接しない辺のうち、前記給電点と対向する辺が、頂点を有する山形形状であり、その山形の頂点が給電点に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の無線タグ。
【請求項6】
前記補助パターンは、前記アンテナパターンを挟んだ両側に設けられていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置、または、請求項2〜5のいずれかに記載の無線タグ。
【請求項1】
一対のアンテナパターンが互いに対向して形成されているとともに、その一対のアンテナパターンの対向端部を給電点とする平面アンテナと、前記一対のアンテナパターンに隣接して形成された補助パターンとを有し、
前記平面アンテナの一対のアンテナパターンは、それぞれ、前記給電点に近い側の端部のパターン幅に対し、前記給電点から遠い側の端部のパターン幅が大きくなるように形成されており、前記補助パターンは、前記平面アンテナの一端側から他端側まで延び、かつ、前記一対のアンテナパターンの1つのアンテナパターンと同じ面積または1つのアンテナパターンよりも大きな面積を有することを特徴するアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナ装置を有し、前記平面アンテナの給電点にICチップが接続されていることを特徴とする無線タグ。
【請求項3】
前記一対のアンテナパターンは、それぞれ、前記給電点に近い側の端部から遠い側の端部に向かうに従ってパターン幅が広がる三角形状であり、その三角形状のアンテナパターンの斜辺に近接して前記補助パターンが形成されていることを特徴とする請求項2記載の無線タグ。
【請求項4】
前記補助パターンは、前記アンテナパターンに近接しない辺のうち、前記給電点と対向する辺が、前記アンテナパターンが延びる方向と平行な直線であることを特徴とする請求項2または3記載の無線タグ。
【請求項5】
前記補助パターンは、前記アンテナパターンに近接しない辺のうち、前記給電点と対向する辺が、頂点を有する山形形状であり、その山形の頂点が給電点に対応する位置に設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の無線タグ。
【請求項6】
前記補助パターンは、前記アンテナパターンを挟んだ両側に設けられていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置、または、請求項2〜5のいずれかに記載の無線タグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2006−109396(P2006−109396A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−31903(P2005−31903)
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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