説明

アンテナ装置

【課題】コストアップを回避しつつ、アレーに直交するEl面内のビーム幅を狭くして円偏波を放射可能であり、かつEl面内の広い角度範囲において交差偏波電力を低減することのできるアンテナ装置を得る。
【解決手段】地導体1と、地導体1の内部に形成された導波管2と、地導体1の表面に設けられ、かつ導波管2を貫通して形成されて円偏波を放射するスロット3と、地導体1上において、導波管2の管軸方向に対して直交する方向に所定距離を隔てて、管軸方向に沿って設けられた複数の短冊状導体4とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空港面探知レーダなどに用いられる導波管励振の円偏波スロットアレー式のアンテナ装置に関し、特に、広い角度範囲で軸比を良好に保ち、かつ所望のビーム幅を実現するための新規な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空港面探知レーダに用いられるアンテナ装置においては、降雨クラッタの低減を目的として円偏波が用いられるとともに、アジマス(Az)方向に対しては、0.5度程度のビーム幅が要求され、エレベーション(El)方向に対しては、10度程度のビーム幅が要求される。
【0003】
そこで、この種のアンテナ装置の全体構成をコンパクトにするために、Az方向のビームを1次元アレーにより形成し、El方向のビームを反射鏡により形成する方法が考えられる(たとえば、後述する図20参照)。
【0004】
ただし、この場合、El方向に関しては、反射鏡の範囲内にビームを集中させる必要があることから、1次放射器である1次元アレーの放射特性は、El方向に対して60度程度以下の狭いビーム幅が要求される。また、反射鏡を介した放射方向の軸比を低減するためには、反射鏡を見込む角度内全体にわたって、交差偏波電力を低減する必要がある。
【0005】
そこで、従来から、上記目的に適用可能な垂直方向に延在する1次元アレーが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
図22は上記特許文献1に記載された従来のアンテナ装置を示す断面図である。
図22において、導波管101の側壁にはスロット102が設けられ、スロット102の開放(放射)方向には、導体板により構成されるフレア103が設けられている。
フレア103は、スロット102のビーム幅をEl方向に関して狭くする効果がある。
【0006】
フレア103の開口部には、スロット102から放射された直線偏波を円偏波に変換するためのポラライザ104が設けられている。ポラライザ104は、多層構造の誘電体材料によって構成されるので、ある程度の厚さが必要であるうえ、フレア103の開口程度の面積が必要である。
図22のように構成されたアンテナ装置によれば、アレーに直交するEl方向のビーム幅を狭くしつつ、円偏波を発生することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−110201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の従来のアンテナ装置は、フレア103の開口程度の大きさを有するポラライザ104を必要とするので、高周波損失が小さく単位体積当たりのコストが高い誘電体材料を多量に必要とし、コストアップを招くという課題があった。
【0009】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、コストアップを回避しつつ、アレーに直交するEl面内のビーム幅を狭くして円偏波を放射可能であり、かつEl面内の広い角度範囲において交差偏波電力を低減することのできるアンテナ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るアンテナ装置は、地導体と、地導体の内部に形成された導波管と、地導体の表面に設けられ、かつ導波管を貫通して形成されて円偏波を放射するスロットと、地導体上において、導波管の管軸方向に対して直交する方向に所定距離を隔てて、管軸方向に沿って設けられた複数の導体とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、導波管の管軸方向に対して直交する方向の両端に導体を設置して、ポラライザを不要とすることにより、コストアップを回避しつつ、アレーに直交するEl面内のビーム幅を狭くして円偏波を放射可能であり、かつEl面内の広い角度範囲において交差偏波電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【図2】図1の構成を簡略化した斜視図である。
【図3】図2内のB−B’線による断面図である。
【図4】図2内のC−C’線による断面図である。
【図5】図1内の短冊状導体を省略した斜視図である。
【図6】図5内のD−D’線による断面図である。
【図7】図1内のA−A’線による断面図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【図9】図8のアンテナ装置を上面側から見た平面図である。
【図10】図9内のE−E’線による断面図である。
【図11】図9内のE−E’線による断面図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【図13】図12のアンテナ装置を管軸方向から見た側面図である。
【図14】この発明の実施の形態4に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【図15】図14のアンテナ装置を管軸方向から見た側面図である。
【図16】この発明の実施の形態5に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【図17】図16のアンテナ装置を管軸方向から見た側面図である。
【図18】この発明の実施の形態6に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【図19】図18のアンテナ装置を上面側から見た平面図である。
【図20】この発明の実施の形態7に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
【図21】図20のアンテナ装置を管軸X方向から見た側面図である。
【図22】従来のアンテナ装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
以下、図1〜図7を参照しながら、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
図1はこの発明の実施の形態1に係るアンテナ装置を示す斜視図である。
図1において、アンテナ装置は、地導体1と、導波管2と、スロット3と、短冊状導体4とにより構成されている。
【0014】
導波管2は、地導体1の長手方向に沿って設けられており、スロット3は、地導体1の表面に、導波管2を貫通するように設けられている。
スロット3は、円偏波を発生するために、たとえば図示したような十字形状に形成されている。
【0015】
具体的には、スロット3において、十字を構成する各直交線の長さ、導波管2に対する管軸直交方向の位置、導波管2の長手方向に対する十字の傾き角度などを調整することにより、導波管2内を伝搬する電磁波を円偏波に変換して放射することが可能となる。
【0016】
短冊状導体4は、複数の導体片から構成されており、地導体1上において、導波管2の管軸方向に対して直交する方向の両端に設置され、かつ導波管2の管軸方向に沿って設置される。
【0017】
すなわち、図1のアンテナ装置は、地導体1と、地導体1の内部に形成された導波管2と、地導体1の表面に設けられ、かつ導波管2を貫通して形成されて円偏波を放射するスロット3と、地導体1上において、導波管2の管軸方向に対して直交する方向に所定距離を隔てて、管軸方向に沿って設けられた複数の短冊状導体4とを備えている。
【0018】
次に、図2〜図7を参照しながら、図1に示したアンテナ装置の動作原理について説明する。
図1内の十字形状のスロット3からの放射パターンは、直交する2つのスロットからの放射パターンの合成として考えることができる。
【0019】
図2は図1の構成を簡略化した斜視図であり、直交する2つのスロットのうちの一方のスロット3aのみを代表的に抽出して示している。
図3は図2内のB−B’線による断面図、図4は図2内のC−C’線による断面図であり、それぞれ、スロット3aの放射パターン(E面パターン、H面パターン)を示している。
【0020】
図3において、E面パターン(2点鎖線参照)における偏波は、矢印で示すように図中右方向になる。E面パターンは、地導体1が波長に比べて十分に大きい場合には、無指向性になる。
図4において、H面パターン(破線参照)における偏波は、図面に直交する方向になる。H面パターンは、地導体1のスロット3aが設けられた面の鉛直方向に指向性を有し、C方向およびC’方向での放射レベルは低くなっている。
【0021】
図5は図1内の短冊状導体4を省略した斜視図であり、図2のスロット3aに対して直交するスロット3bを十字に組み合わせたスロット3を示している。
図6は図5内のD−D’線による断面図であり、図2内のB−B’線方向のスロット3bからのH面パターン(破線参照)と、C−C’線方向のスロット3aからのE面パターン(2点鎖線参照)とを合成した放射パターンを示している。
【0022】
図5および図6において、十字を構成する各スロット3a、3bの線の長さ、導波管2に対する管軸直交方向の位置、導波管2の長手方向に対する十字の傾き角度、などを調整することにより、2つのスロット3a、3bに励起される電磁波の振幅を等しくし、かつ位相を90度ずらすことが可能である。
これにより、地導体1のスロット3が設けられた面の鉛直方向に円偏波が放射される。
【0023】
ただし、図5のように短冊状導体4を備えていない場合には、図6のように、E面パターン(2点鎖線)とH面パターン(破線)とのビーム幅が異なるので、鉛直方向正面においては良好な軸比が得られるが、正面からずれた方向においては、交差偏波が増大して軸比が劣化する。
【0024】
そこで、図1のように、A−A’線による断面の両端に、地導体1に複数の短冊状導体4を設けたモデルが必要となる。
図7は図1内のA−A’線による断面図であり、短冊状導体4の長さを適切に選定した場合の放射パターンを示している。
【0025】
図1において、短冊状導体4の長手方向は、A−A’線による断面のE面パターン(2点鎖線)の偏波と同じ方向に配置されており、E面パターンのビーム幅のみを狭くする作用がある。
一方、短冊状導体4の長手方向は、H面パターン(破線)の偏波とは直交する方向に配置されているので、H面パターンには影響しない。
【0026】
また、短冊状導体4の長さとE面パターンのビーム幅との関係は、反比例関係にあるので、短冊状導体4の長さを適切に選定することにより、E面パターンおよびH面パターンの各形状を広い角度範囲にわたってそろえることが可能となる。
【0027】
図7において、E面パターンおよびH面パターンの各形状は、広い角度範囲でそろっており、地導体1の鉛直方向正面からずれた方向においても、低い軸比を実現することができる。
また、図7ように、E面パターン(2点鎖線)のビーム幅を狭く設定することにより、円偏波としてのビーム幅も狭くすることが可能となる。
【0028】
なお、仮に、短冊状導体4の代わりに導体板を用いた場合には、E面パターンおよびH面パターンの両方のビーム幅が狭くなり、鉛直方向正面からずれた方向の軸比を改善することができない。したがって、図1のような短冊状導体4の構成が必要となる。
【0029】
以上のように、この発明の実施の形態1(図1)によれば、円偏波を発生するスロット3において、導波管2の管軸方向に対して直交する方向の両端に、管軸方向に沿って短冊状導体4を設置したので、管軸方向に直交する面内におけるビーム幅を狭くすることができ、かつ管軸方向に直交する面内において広い角度範囲にわたって低軸比の円偏波を放射することが可能となる。
また、前述(図22参照)の広い面積のポラライザ104が不要となるので、低コスト化を実現することができる。
【0030】
すなわち、導波管2の管軸方向に対して直交する方向の両端に短冊状導体4を設置し、前述のポラライザを不要とすることにより、コストアップを回避しつつ、アレーに直交するEl面内のビーム幅を狭くして円偏波を放射可能な構成を実現し、かつEl面内の広い角度範囲において交差偏波電力を低減することができる。
【0031】
なお、ここでは、短冊状導体4を用いた放射特性の改善法について述べたが、短冊状導体4を棒状導体に置き換えてもよい。
また、図1においては、短冊状導体4として長方形を羅列した形状を用いたが、この形状に限定されるものではなく、地導体1側で短絡され、他端側で開放された形状であれば任意の形状を適用可能であり、同様の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0032】
また、スロット3として十字形状を想定したが、楕円形状または長方形状であってもよい。
また、地導体1の表面にスロット3を設けたアンテナ装置を想定したが、円偏波発生機構を導波管2内部に保持するスロットアンテナであってもよい。
さらに、単一素子についてのみ説明したが、図1と同構成の素子を導波管2の管軸方向に並べたアレーアンテナに適用しても同様の作用効果を生じる。
【0033】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1)では、円偏波を放射する放射素子として、2つのスロット3a、3bからなる十字形状のスロット3を用いたが、図8および図9に示すように、スロット3aとダイポール5との組み合わせ構造を用いてもよい。
【0034】
図8はこの発明の実施の形態2に係るアンテナ装置を示す斜視図であり、図9は図8のアンテナ装置を上面側から見た平面図である。
図8、図9において、前述(図1〜図7参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0035】
この場合、基本的な構成は前述の実施の形態1と同様であり、前述(図5)のスロット3bに代えて、ダイポール5を設けた点のみが前述と異なる。
ダイポール5は、地導体1のスロット3aが設けられた面の鉛直方向に、スロット3aから所定距離を隔てて配置されており、スロット3aは、線状スロットからなる。
図8、図9のように、スロット3aとダイポール5とを組み合わせた円偏波素子を用いた場合も、前述と同様の作用効果を奏する。
【0036】
スロット3aは、前述と同様に、導波管2の管軸方向に沿った直線形状を有しており、管軸方向に直交する偏波の電波を放射する。
ダイポール5は、スロット3aに対して所定の角度傾けて、かつスロット3aに対して所定距離を隔てて配置されている。これにより、ダイポール5は、スロット3aとの電磁結合により給電され、導波管2の管軸方向に沿った偏波を主に放射する。
【0037】
次に、図10および図11を参照しながら、図8および図9に示したこの発明の実施の形態2に係るアンテナ装置の動作原理について説明する。
図10および図11は図9内のE−E’線による断面図であり、それぞれ、前述(図2〜図6)と同様に、短冊状導体4を省略した場合の放射パターン例を示している。
図10はスロット3aの放射パターン(E面パターン)を示し、図11はダイポール5の放射パターン(H面パターン)を示している。
【0038】
図10において、スロット3aのE面パターンは、前述(図3参照)と同様に2点鎖線で示されており、その偏波は矢印方向となる。また、E面パターンは、地導体1が波長に比べて十分に大きい場合には、無指向性になる。
図11において、ダイポール5のH面パターンは、前述(図4参照)と同様に破線で示されており、その偏波は図面に直交する方向となる。
【0039】
なお、ダイポール5は、図9のように、導波管2の管軸方向、つまりスロット3aの長手方向に対して所定の角度だけ傾いているので、図11において、管軸方向に直交する方向の偏波も生じる。しかし、通常、ダイポール5の傾斜角度は小さいので、図11においては、傾斜成分による偏波は無視している。
【0040】
図11に示すダイポール5のH面パターンは、地導体1のスロット3aが設けられた面の鉛直方向に指向性を有し、E方向およびE’方向での放射レベルは低くなっている。
図10、図11から明らかなように、スロット3aおよびダイポール5を組み合わせた放射パターンは、前述(図6)と同様になる。
【0041】
また、スロット3aとダイポール5との成す角度、ダイポール5の長さ、スロット3aとダイポール5と間の距離、を調整することのより、スロット3aからの放射振幅とダイポール5の放射振幅とを等しくしつつ、両者の位相を90度ずらすことが可能であり、地導体1のスロット3aが設けられた面の鉛直方向に円偏波が放射される。
【0042】
ただし、前述のように、スロット3aのE面パターンとダイポール5のH面パターンとのビーム幅が異なるので、鉛直方向正面においては良好な軸比が得られるが、正面からずれた方向では軸比が劣化する。
【0043】
そこで、図8、図9のように、導波管2の管軸方向に対して直交する方向の両端に管軸方向に沿って短冊状導体4を配置することにより、前述の実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0044】
以上のように、この発明の実施の形態2(図8、図9)によれば、線状スロットからなるスロット3aと、地導体1のスロット3aが設けられた面の鉛直方向に、スロット3aから所定距離を隔てて配置されたダイポール5と、を組み合わせた放射素子に対して、短冊状導体4を配置することにより、導波管2の管軸方向に対して直交する面内のビーム幅を狭くしつつ、管軸方向に対して直交する面内において広い角度範囲にわたって、低い軸比の円偏波を放射することが可能となる。
また、前述(図22)のポラライザ104が不要となるので、低コスト化を実現することができる。
【0045】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態2(図8、図9)では、短冊状導体4およびダイポール5の支持部材について考慮しなかったが、図12および図13に示すように、それぞれ第1および第2の誘電体基板6、7を用いて支持してもよい。
【0046】
図12はこの発明の実施の形態3に係るアンテナ装置を示す斜視図であり、図13は図12のアンテナ装置を管軸方向から見た側面図である。
図12、図13において、前述(図8、図9参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0047】
この発明の実施の形態3に係るアンテナ装置は、前述の構成に加えて、管軸方向に対して直交する方向となる地導体1の両側面に配置された第1の誘電体基板6と、地導体1のスロット3aが設けられた面側に配置された第2の誘電体基板7とを備えている。
複数の短冊状導体4は、第1の誘電体基板6上に形成され、ダイポール5は、第2の誘電体基板7上に形成されている。
【0048】
この場合、基本的な構成は前述の実施の形態2と同様であり、短冊状導体4が第1の誘電体基板6上にプリントされ、ダイポール5が第2の誘電体基板7上にプリントされていることのみが前述と異なる。また、動作原理についても、前述の実施の形態2と同様である。
なお、図12、図13においては、短冊状導体4およびダイポール5の実際の支持構造の一例を示しており、他の支持構造を適用可能なことは言うまでもない。
【0049】
以上のように、この発明の実施の形態3(図12、図13)によれば、管軸方向に対して直交する方向となる地導体1の両側面に配置された第1の誘電体基板6と、地導体1のスロット3aが設けられた面側に配置された第2の誘電体基板7とを備え、複数の短冊状導体4は、第1の誘電体基板6上に形成され、ダイポール5は、第2の誘電体基板7上に形成されているので、前述と同様の作用効果を奏するとともに、短冊状導体4およびダイポール5を確実に位置決めして支持することができる。
【0050】
実施の形態4.
なお、上記実施の形態3(図12、図13)では、第2の誘電体基板7の支持構造について考慮しなかったが、図14および図15に示すように、地導体1の両側面に突設された台状部分8を用いて支持してもよい。
【0051】
図14はこの発明の実施の形態4に係るアンテナ装置を示す斜視図であり、図15は図14のアンテナ装置を管軸方向から見た側面図である。
図14、図15において、前述(図12、図13参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0052】
この場合、基本的な構成は前述の実施の形態3と同様であり、第2の誘電体基板7を支持するために、地導体1の両側面において、台状に隆起された台状部分8を備えた点のみが前述と異なる。
【0053】
すなわち、地導体1のスロット3aが設けられた面に、導波管2の管軸方向に対して直交する方向において、スロット3aを挟むように台状部分8が設けられており、台状部分8により第2の誘電体基板7が保持されている。
【0054】
このように、台状部分8を地導体1と一体的に形成することにより、前述と同等の作用効果に加えて、第2の誘電体基板7を保持する機構を新たに設ける必要がなく、アンテナ装置のコストを低減することが可能となる。
【0055】
実施の形態5.
なお、上記実施の形態4(図14、図15)では、台状部分8における電波散乱について特に考慮しなかったが、電波散乱を抑制するために、図16および図17に示すように、台状部分8に円弧コーナ部9を設けることが望ましい。
【0056】
図16はこの発明の実施の形態5に係るアンテナ装置を示す斜視図であり、図17は図16のアンテナ装置を管軸方向から見た側面図である。
図16、図17において、前述(図14、図15参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0057】
この場合、基本的な構成は実施の形態4と同様であり、台状部分8に円弧コーナ部9を設けた点のみが前述と異なる。
すなわち、円弧コーナ部9は、地導体1の両側面上に設けられた台状部分8において、スロット3a側の角部に設けられている。
【0058】
一般に、台状部分8のスロット3a側においては、放射素子として動作するスロット3aおよびダイポール5に近接しているので、電界強度が高い。
したがって、台状部分8のスロット3a側に角部が存在すると、角部において電波の散乱が生じて、放射特性を乱す原因となる。
【0059】

そこで、図16および図17のように、台状部分8の角部に円弧コーナ部9を設け、台状部分8のスロット3a側の角部を円弧状に形成する。
これにより、前述の作用効果に加えて、電波の散乱を低減することができ、放射特性の乱れを緩和することが可能となる。
【0060】
実施の形態6.
なお、上記実施の形態5(図16、図17)では、単一の放射素子の場合を例にとって説明したが、図18および図19に示すように、スロット3aおよびダイポール5を管軸Xに沿って複数配列し、アレー構成としてもよい。
【0061】
図18はこの発明の実施の形態6に係るアンテナ装置を示す斜視図であり、図19は図18のアンテナ装置を上面側から見た平面図である。
図18、図19において、前述(図16、図17参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0062】
この場合、基本的な構成は実施の形態5と同様であり、スロット3aおよびダイポール5が、管軸方向に沿って複数配列された点のみが前述と異なる。
スロット3aおよびダイポール5は、導波管2の管軸方向に沿って複数設けられるとともに、図19に示すように、管軸Xに対して交互に配置されるように設置されている。この際、スロット3aおよびダイポール5からなる放射素子と隣り合う放射素子との相互間距離は、導波管2の管内波長の半分の長さに相当する。
【0063】
次に、図18および図19に示したこの発明の実施の形態6に係るアンテナ装置の動作原理について説明する。
図19のように、スロット3aは、導波管2の管軸Xに対してオフセット配置されており、オフセット量を変化させることにより、導波管2内の電磁界との結合量を調整可能である。
【0064】
すなわち、オフセット量が「0」、つまりスロット3aが管軸X上に存在する場合には、結合量が「0」であり、オフセット量を大きくするにつれて、結合量が増大する。
また、管軸Xに対してオフセットする方向(図19中の左右方向)を反転させると、結合の位相が反転する。
【0065】
また、スロット3aは、前述のように、導波管2の管内波長の半分の距離ごとに、管軸Xに沿って配置されているので、導波管2内の電磁波は、隣り合う放射素子の部分で位相が反転する。
したがって、隣り合う素子同士におけるオフセット方向を交互に設定することにより、すべての素子の位相をそろえることが可能となり、地導体1のスロット3aが設けられた面の鉛直方向にビームが形成される。
【0066】
さらに、各素子の素子間隔を変更することにより、各素子への結合位相を主に変化させることが可能であり、また、オフセット量を変更することにより、主に結合振幅を変化させることが可能となる。
上記2つのパラメータ(素子間隔、オフセット量)を選定することにより、各素子の振幅位相を調整可能であり、Az方向のビーム方向やビーム形状を任意に調整可能である。
【0067】
図18、図19に示すアンテナ装置をたとえば空港面探知レーダに適用するためには、管軸X方向の全長が5m程度必要となるが、この発明の実施の形態6においては、管軸X方向の全長にわたって同一形状を保持している。
【0068】
図18、図19のように、断面形状が同一の細長い構造の導体を構成するための製法としては、たとえば押し出し加工が低コストで適用可能である。
つまり、アンテナ装置の基材部分を押し出し加工により工作することができ、コストを低減することができる。
【0069】
以上のように、この発明の実施の形態6によれば、スロット3aおよびダイポール5を管軸X方向に沿って複数配列したので、空港面探知レーダに適用する場合に好適なアンテナ装置が得られる。
【0070】
図18、図19のようなアレー構成は、前述の実施の形態1〜5のいずれに対しても適用可能であり、前述の実施の形態1(図1)の場合には、スロット3が管軸X方向に沿って複数配列されることになる。
また、いずれの場合も、同様に、アレーを構成する際にアンテナ基材が管軸方向全長にわたって同一形状を保持しているので、同様の押し出し加工により工作可能である。
【0071】
実施の形態7.
なお、上記実施の形態6(図18、図19)では、特に言及しなかったが、図20および図21に示すように、複数の放射素子からなる1次放射器10に対して反射鏡11を配置してもよい。
【0072】
図20はこの発明の実施の形態7に係るアンテナ装置を示す斜視図であり、図21は図20のアンテナ装置を管軸X方向から見た側面図である。
図20、図21において、1次放射器10は、管軸Xに沿って配列された複数の放射素子(スロット3、またはスロット3aおよびダイポール5)により構成されている。
【0073】
1次放射器10は、たとえば前述の実施の形態6のアンテナ装置に適用した場合、管軸X(長手)方向にスロット3aおよびダイポール5が配列された1次元アレーからなる。
また、反射鏡11は、スロット3aおよびダイポール5の配列方向に対して直交する方向に配置されている。
【0074】
この場合、地導体1のスロット3a(図18、図19参照)が設置された面の鉛直方向は、反射鏡11の面方向に向けられている。
反射鏡11は、1次放射器10から放射された電波(破線矢印)を、所望の進行方向に反射させる。
【0075】
Az方向のビーム形状は、前述の実施の形態6で述べたように、各素子の素子間隔と、管軸Xからのオフセット量とを変化させることにより、調整することが可能である。
また、El方向のビーム形状は、反射鏡11の形状を変化させることにより調整可能である。
【0076】
1次放射器10から放射される電波において、反射鏡11に当たらない電力は損失となるので、1次放射器10の管軸Xに直交する面のビーム幅をできるだけ狭く設定し、反射鏡11に対して効率的に電波を照射する必要がある。
【0077】
そこで、1次放射器10に前述の実施の形態6のアンテナ装置を用いることにより、短冊状導体4の作用効果により、円偏波の低軸比特性を維持しつつ、ビーム幅を狭く設定することが可能である。
【0078】
反射鏡11は、El方向のビーム形成のみに寄与するので、長手方向に対して同一の断面形状を有しており、簡易な板金加工により低コストで工作可能である。
また、1次放射器10は、その基材部分が低コストの押し出し加工によって工作可能であり、アンテナ全体のコストを低減させることが可能である。
また、前述のように、1次放射器10には、円偏波発生機構が設けられているので、前述(図22)のポラライザ104が不要であり、低コスト化が可能である。
【0079】
なお、ここでは、1次放射器10として、前述の実施の形態6のアンテナ装置を用いたが、前述の実施の形態1〜5のいずれのアンテナ装置を用いてもよい。
いずれの場合であっても、同様の放射素子として適用可能であり、図20のように、1次元に並べたアレーアンテナ装置に構成することができ、同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0080】
1 地導体、2 導波管、3、3a、3b スロット、4 短冊状導体(複数の導体)、5 ダイポール、6 第1の誘電体基板、7 第2の誘電体基板、8 台状部分、9 円弧コーナ部、10 1次放射器、11 反射鏡、X 管軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地導体と、
前記地導体の内部に形成された導波管と、
前記地導体の表面に設けられ、かつ前記導波管を貫通して形成されて円偏波を放射するスロットと、
前記地導体上において、前記導波管の管軸方向に対して直交する方向に所定距離を隔てて、前記管軸方向に沿って設けられた複数の導体と
を備えたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記地導体の前記スロットが設けられた面の鉛直方向に、前記スロットから所定距離を隔てて配置されたダイポールを備え、
前記スロットは、線状スロットからなることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記管軸方向に対して直交する方向となる前記地導体の両側面に配置された第1の誘電体基板と、
前記地導体の前記スロットが設けられた面側に配置された第2の誘電体基板とを備え、
前記複数の導体は、前記第1の誘電体基板上に形成され、
前記ダイポールは、前記第2の誘電体基板上に形成されたことを特徴とする請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記地導体の前記両側面に台状に隆起された台状部分を備え、
前記第2の誘電体基板は、前記台状部分により支持されることを特徴とする請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記台状部分は円弧コーナ部を有し、前記スロット側の角部が円弧状に形成されたことを特徴とする請求項4記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記スロット、または前記スロットおよび前記ダイポールを前記管軸方向に沿って複数配列したことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記スロット、または前記スロットおよび前記ダイポールの配列方向に対して直交する方向に設けられた反射鏡を備えたことを特徴とする請求項6に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−15009(P2011−15009A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155371(P2009−155371)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】