説明

アンテナ装置

【課題】2波以上のメディアで同一のアンテナ装置を共用することができると共に、水平偏波の指向性と無指向性の双方を得ることにより、異なるサービスエリアを容易に実現することができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置1は、トラス構造体2の上部に配置されたSTA3と、トラス構造体2の側部に配置された双ループアンテナ4とを備えている。STA3は、支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され、且つ多段で設けられた複数のバットスタイルアンテナ素子を有する。双ループアンテナ4は、トラス構造体2における東西南方向の3面に配置された3基の双ループアンテナ素子121a〜121cを有している。放送機141Aからの周波数f1はSTA3と双ループアンテナ4の双方に出力され、他方、放送機141Bからの周波数f2はSTA3のみに出力される構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、特に新規事業であるVHF(Lch)放送と既存のFM放送などの2波以上のメディアで共用するためのアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1つのアンテナ装置で2波以上のメディアを共用し、且つ異なるエリアにサービスを提供したいという要望がある。この要望に応えるためのアンテナ設備として、例えば東京タワーがある。
【0003】
東京タワーでは、特定メディアの地上波デジタルテレビジョン放送における物理チャンネル切り替えのため、東京スカイツリーとのサイマル放送の開始が予定されている。東京タワーでこのサイマル放送を実現するためには、東京スカイツリーとの兼ね合いで、東京タワーのサービスエリアをある程度制限することが必要となってくる。
【0004】
一方、従来技術として、1つのアンテナ装置で2波以上のメディアを共用するアンテナ装置が提案されている(特許文献1)。このアンテナ装置171は、図11〜図13に示すように、鉄塔172に取り付けられており(図11)、2つの異なる周波数f1,f2の放送波W1,W2を放射するパネルアンテナ素子173a〜173cと、周波数f2の放送波W2を放射する残りのパネルアンテナ素子172dとを備えている(図12)。
【0005】
放送波W1,W2はパネルアンテナ素子172a〜172cの組合せCaから放射され、放送波W1はパネルアンテナ素子171a〜171dの組合せCbから放射される(図13)。周波数f2の放送波W2をアンテナ装置171から放射すると、特定の方向に水平面指向性が得られ、他方の周波数f1の放送波W1をアンテナ装置171から放射すると、略放射状の水平面指向性を得ることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−88547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放送用アンテナ装置では、通常、アンテナ設置位置を中心としてほぼ全方向に電波を放射する必要があることから、無指向性のアンテナ装置が望ましい。しかしながら、上記従来の技術では、STAと指向性アンテナの双方を備える1つのアンテナ装置で無指向性と指向性の双方を得るものではなく、2波以上のメディアで異なるサービスエリアを実現するには十分でなかった。
【0008】
本発明の目的は、2波以上のメディアで同一のアンテナ装置を共用することができると共に、良好な水平偏波の指向性と無指向性の双方を得ることにより、異なるサービスエリアを容易に実現することができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、互いに異なる複数の周波数の放送波を放射するアンテナ装置であって、無指向性となるように給電される無指向性アンテナと、前記無指向性アンテナの下方に配置され、前記無指向性アンテナのみの場合における利得を変化させて、アンテナ装置全体として指向性となるように設けられる指向性アンテナとを備え、前記複数の周波数のうち一の周波数に対応する信号が、前記無指向性アンテナと前記指向性アンテナの双方に出力され、他の周波数に対応する信号が前記無指向性アンテナに出力されることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記無指向性アンテナは、支柱と、前記支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され、且つ多段で設けられた複数のバットスタイルアンテナ素子とを備える。一方、前記指向性アンテナは、前記バットスタイルアンテナ素子の配置方向のうち少なくとも2方向に配置された複数の双ループアンテナ素子を備えている。
【0011】
また好ましくは、前記指向性アンテナは、多段で設けられた複数の双ループアンテナユニットで構成されている。そして、第1双ループアンテナユニットは、前記バットスタイルアンテナ素子の配置方向のうち少なくとも2方向に配置された2以上の双ループアンテナ素子を有し、第2双ループアンテナユニットは、前記バットスタイルアンテナ素子の配置方向と同じ4方向に配置された4つの双ループアンテナ素子を有している。
【0012】
さらに好ましくは、前記指向性アンテナに供給される総電力のうち、前記2以上の双ループアンテナ素子が配置される方向に供給される電力の割合が、当該2以上の双ループアンテナ素子が配置されない他の方向に供給される電力の割合より大きくなるように設定される。
【0013】
また、前記無指向性アンテナに供給される電力の割合が、前記指向性アンテナに供給される電力の割合より大きくなるように設定されるのが好ましい。
【0014】
さらに、前記指向性アンテナは、一段で設けられた双ループアンテナユニット又は多段で設けられた複数の双ループアンテナユニットで構成されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、互いに異なる複数の周波数のうち一の周波数に対応する信号が、無指向性アンテナと指向性アンテナの双方に供給され、他の周波数に対応する信号が無指向性アンテナに供給される。すなわち、一の周波数の放送波は本アンテナ装置全体から放射されて水平偏波の指向性を示し、他の周波数の放送波は本アンテナ装置の一部から放射されて水平偏波の無指向性を示す。したがって、2波以上のメディアで同一のアンテナ装置を共用することができると共に、良好な水平偏波の指向性と無指向性の双方を得られるため、各メディア向けに異なるサービスエリアを容易に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るアンテナ装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1のスーパーターンスタイルアンテナ(STA)の構成を示す部分斜視図である。
【図3】図1のSTAにおける各バットスタイルアンテナ素子に電力を供給する給電線の経路を示す側面図である。
【図4】図1の双ループアンテナの構成を示す斜視図である。
【図5】図4の双ループアンテナの平面図であり、(a)はA−A矢視、(b)はB−B矢視である。
【図6】図4における各双ループアンテナ素子に電力を供給する給電線の経路を示す側面図である。
【図7】図1のアンテナ装置のSTA用給電回路及び双ループアンテナ用給電回路を説明する回路図である。
【図8】f2(90MHz)における水平偏波の指向性を示す図である。
【図9】f1(80.0MHz)における水平偏波の指向性を示す図である。
【図10】図1のアンテナ装置の変形例を示す回路図である。
【図11】従来のアンテナ装置が設置されたアンテナ設備を示す平面図である。
【図12】図11のアンテナ装置の構成を示す平面図である。
【図13】図11のアンテナ装置の給電回路を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るアンテナ装置の構成を概略的に示す斜視図である。
【0019】
図1に示すように、アンテナ装置1は、トラス構造体2の上部に配置されたSTA(スーパーターンスタイルアンテナ)3と、トラス構造体2の側部に配置された双ループアンテナ4とを備えている。STA3は、双ループアンテナ4のほぼ直上に設置されている。
【0020】
図2は、図1のSTA3の構成を示す部分斜視図である。
【0021】
図2に示すように、STA3は、トラス構造体2の上部に配置された支柱と、該支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され、且つ多段で設けられた複数のバットスタイルアンテナ素子とを備えている。STA3は、STAアンテナユニット5〜10を基本単位としてこれらユニットを略鉛直方向に一列に並べて連結することで構成されている。
【0022】
STAアンテナユニット5は、支柱の一部を構成する断面略四角形の中空柱21と、該中空柱の長手方向に沿って配置された4基のバットスタイルアンテナ素子22と、バットスタイルアンテナ素子22を固定する上下一対のブラケット23,23と、中空柱21の長手方向に沿って当該中空柱の表面に取り付けられ、4基のバットスタイルアンテナ素子22にそれぞれ給電する複数のSTA用給電線24とを有している。
【0023】
バットスタイルアンテナ素子22は、水平方向及び鉛直方向に配される複数の丸棒部材を溶接等で接合することで構成されており、中空柱21の断面における各辺の略中央に配置されている。この配置によって、アンテナ素子が確実に固定されると共に、水平偏波の無指向性が実現される。
【0024】
STA用給電線24は、隣り合うバットスタイルアンテナ素子22に対して90°の位相差となるように各アンテナ素子に電力を供給している。これにより水平偏波のバランスが保たれている。本実施形態では、1つのアンテナユニット2に対して、4基のバットスタイルアンテナ素子22に対応する4つのSTA用給電線24が配設されている。
【0025】
STAアンテナユニット6〜10の構成は、STAアンテナユニット2の構成と基本的に同じであるので、以下に異なる部分を説明する。
【0026】
図3は、図1における各バットスタイルアンテナ素子に電力を供給する給電線の経路を示す側面図である。なお、図3はSTA3を西側から見た図である。
【0027】
STA用給電線24,34,44,54,64,74は、それぞれ支柱の長手方向に沿って当該支柱の表面に取り付けられ、各STA用給電線の一端がバットスタイルアンテナ素子に、他端が外部経路に接続されている。そして、上側3段のSTAアンテナユニットにおけるSTA用給電線24,34,44は、中空柱21の水平方向外側から内側に向かって並列して順に配置されている。本配置により各STA用給電線が交差することが無く、また給電線の布設作業性が向上する。
【0028】
STA用給電線54,64,74は、西側のバットスタイルアンテナ素子52,62,72に関してSTA用給電線24,34,44の反対側に配置されている。そして、STA用給電線54,64,74は、中空柱21の水平方向外側から内側に向かって並列して順に配置されている。
【0029】
図4は、図1の双ループアンテナ4の構成を示す斜視図であり、図5は、図4の双ループアンテナ4の平面図であり、(a)はA−A矢視、(b)はB−B矢視である。
【0030】
図4に示すように、双ループアンテナ4は、双ループアンテナユニット11及び12を基本単位としてこれら2つのユニットを略鉛直方向に一列に並べることで構成されている。すなわち、本実施形態では、無指向性のSTAアンテナユニット5〜10(6段)を設け、さらにその下方に指向性の双ループアンテナ4(2段)を設けることで、アンテナ装置1全体の利得を変化させることが可能となっている。
【0031】
双ループアンテナユニット11は、トラス構造体2における東西南北方向の4面(B面、D面、C面、A面)に配置された4基の双ループアンテナ素子111a〜111dと、4基の双ループアンテナ素子に給電する後述の双ループアンテナ用給電線(図6)とを備えている。双ループアンテナユニット11における一の双ループアンテナ素子は、トラス構造体2の周りで、隣接する他の双ループアンテナ素子に対して略90°となるように配置されている。
【0032】
双ループアンテナ素子111aは、支持部101を介してトラス構造体2に固定された板状のベース部材113と、該ベース部材から略垂直方向に延出した延出部材114と、該延出部材に取り付けられ、上下方向に所定間隔で配置された一対のループ部115,115と、一対のループ部115,115のほぼ中央位置に配置された略T字型の給電部116とを有する。双ループアンテナ素子111b〜111dの構成は、双ループアンテナ素子111aと基本的に同じであるので、その説明を省略する。
【0033】
ベース部材113はトラス構造体2の側部に略平行に配置されており、このベース部材113には不図示の反射板が取り付けられている。
【0034】
ループ部115は略矩形形状を有しており、上側に配置されたループ部115の下辺が給電部116に、下側に配置されたループ部115の上辺が給電部116にそれぞれ接続されている。
【0035】
T字型の給電部116は、その脚部が後述する双ループアンテナ用給電線に接続され、両腕部がそれぞれ一対のループ部115,115に接続されており、各ループ部に電力を供給している。
【0036】
トラス構造体2の内部には、STA3の支柱が固定され且つSTA用給電線を挿通するための孔が設けられた架台125と、該架台の下部に配置され、後述する各分配器が固定される枠体126とが設けられている。
【0037】
また、双ループアンテナユニット12は、トラス構造体2における東西南方向の3面(B面、D面、C面)に配置された3基の双ループアンテナ素子121b〜121dと、3基の双ループアンテナ素子131に給電する給電線122b〜122dとを備えている。双ループアンテナユニット11と同様に、双ループアンテナユニット12における一の双ループアンテナ素子は、トラス構造体2の周りで、隣接する他の双ループアンテナ素子に対して略90°となるように配置されている。双ループアンテナ素子121b〜121dの構成は、双ループアンテナ素子111aと基本的に同じであるので、その説明を省略する。
【0038】
図6は、図4における各双ループアンテナ素子に電力を供給する給電線の経路を示す側面図である。なお、図6は双ループアンテナ4を西側(D面)から見た図である。
【0039】
架台125には、電源から供給される電力を所定の割合で分配して分岐路132,133に供給する分配器131が取り付けられている。分岐路132,133の上端にはそれぞれ端子134,135が設けられている。また、電源から供給される電力を所定の割合で分配して分岐路137,138に供給する分配器136が架台125に取り付けられている(図7)。分岐路137,138の上端にはそれぞれ端子139,140が設けられている。
【0040】
端子134,135にはそれぞれ2本の給電線が接続されており、合計4本の給電線がそれぞれ双ループアンテナ素子111a〜111dの給電部116に接続されている。また、分岐路137の上端に設けられた端子139には1本の給電線が(図7)、分岐路138の上端に設けられた端子140には2本の給電線がそれぞれ接続されており、合計3本の給電線がそれぞれ双ループアンテナ素子121b〜121dの給電部116に接続されている。
【0041】
上述のように、本実施形態では、双ループアンテナユニット12の北方向には双ループアンテナ素子が設置されておらず、東西南方向に双ループアンテナ素子が設置されている。この結果、双ループアンテナユニット11が東西南北方向(4方向)の利得を向上させるアンテナとして機能し、双ループアンテナユニット12が北方向(1方向)への電波放射を行わず、東西南方向(3方向)の利得をより向上させるアンテナとして機能する。すなわち、双ループアンテナ4全体としては、東西南方向への指向性を示すアンテナとして機能する。
【0042】
図7は、図1のアンテナ装置のSTA用給電回路及び双ループアンテナ用給電回路を説明する回路図である。
【0043】
先ず、放送機141Aから周波数f1(信号)が、放送機141Bからf2(f1≠f2)がそれぞれ出力されると、放送機141Aからの周波数f1は1:2の分配比で分配され、分配された一方がCIN型2波共用装置142に、他方が給電線151にそれぞれ入力される。放送機141Bからの周波数f2は、そのままCIN型2波共用装置142に入力される。
【0044】
2波共用装置142に入力された2つの周波数f1,f2は1:1の分配比で分配され、給電線143,144を介して分配器145,146にそれぞれ入力される。分配器145では、周波数f1,f2の双方が所定の分配比で分配され、給電線147,148を介してSTAアンテナユニット8〜10(下段系)のN(北)−S(南)系給電線及びE(東)−W(西)系給電線にそれぞれ出力される。分配器146では、周波数f1,f2の双方が所定の分配比で分配され、給電線149,150を介してSTAアンテナユニット5〜7(上段系)のN−S系給電線及びE−W系給電線にそれぞれ出力される。
【0045】
一方、給電線151に入力された周波数f1は、1:1の分配比で分配されて給電線152,153を介して分配器131,136に入力される。分配器131では、周波数f1が所定の分配比にて分配され、分岐路132,133を介して双ループアンテナユニット11(上段系)の双ループアンテナ用給電線112a〜112dに出力される(図6)。これにより、周波数f1の放送波W1が双ループアンテナ素子111a〜111dから放射される。また、分配器136では、周波数f1が所定の分配比にて分配され、分岐路137,138を介して双ループアンテナユニット12(下段系)の給電線122b〜122dに出力される。これにより、周波数f1の放送波W1が双ループアンテナ素子121b〜121dから放射される。
【0046】
このように、本アンテナ装置では、放送機141Aからの周波数f1はSTA3と双ループアンテナ4の双方に出力され、他方、放送機141Bからの周波数f2はSTA3のみに出力される構成となっている。そして、STA3(6ST系)と双ループアンテナ4(2L系)との電力分配比は2:1に設定され、双ループアンテナ4におけるA面,B面,C面,D面の電力分配比は1:2:5:5に設定されている。本構成により、周波数f1における東西南方向(B面,D面,C面)の指向性、特に南方向及び西方向の2方向の指向性を向上させることが可能となっている。
【0047】
図8は、周波数f2における水平偏波の指向性を示す図であり、図9は、周波数f1における水平偏波の指向性を示す図である。図8及び図9では、周波数f1として80.0MHz、周波数f2として90MHzを例に挙げて説明する。
【0048】
本アンテナ装置において、周波数f2(90MHz)の放送波W2はSTA3のみから放射される。この周波数f2の利得(Gain)を算出してみると、全方向で利得が約−3.1dB以上となっており、水平偏波の無指向性を実現できることが判明した。
【0049】
一方、周波数f1(80.0MHz)の放送波W1はSTA3と双ループアンテナ4の双方から放射される。この周波数f2における相対電界強度を算出してみると、A面に対応する北方向(方位36°)では約−3.2dBと小さい値を示している。また、B面に対応する東方向(方位126°)では相対電界強度が約−2.2dBと、北方向よりも大きい値を示している。特に、C面に対応する南方向(方位216°)及びD面に対応する西方向(方位306°)では、それぞれ約0dBと大きい値を示している。したがって、周波数f1の場合、南方向および西方向に配置された双ループアンテナ素子121c,121dとこれら素子に供給する高い電力分配比により、同方向への水平偏波の指向性を実現できることが判明した。
【0050】
上述したように、本実施形態によれば、互いに異なる2つの周波数のうち周波数f1に対応する信号が、STA3と双ループアンテナ4の双方に供給され、周波数f2に対応する信号がSTA3のみに供給される。すなわち、周波数f1の放送波はアンテナ装置1全体から放射されて水平偏波の指向性を示し、周波数f2の放送波はアンテナ装置1の一部から放射されて水平偏波の無指向性を示す。したがって、2波のメディアで同一のアンテナ装置を共用することができ、また、良好な水平偏波の指向性と無指向性の双方を得られるため、各メディア向けに異なるサービスエリアを容易に構築することが可能となる。
【0051】
本実施形態では2つの周波数f1,f2を例に挙げたが、これに限るものではなく、3以上の周波数についてもそれぞれ指向性を変化させることが可能である。したがって、1つのアンテナ装置で、3波以上のメディアに対して異なるサービスエリアを提供することができる。
【0052】
図10は、図1のアンテナ装置1の変形例を示す回路図である。上記実施形態では双ループアンテナが2段の双ループアンテナユニットで構成されたが、本変形例では双ループアンテナが双ループアンテナユニット11(1段)のみで構成されている。尚、STA3の構成は上記実施形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0053】
本アンテナ装置では、放送機141Aから周波数f1が出力されると、周波数f1は所定の分配比で分配され、分配された一方がCIN型2波共用装置142に、他方が給電線161にそれぞれ入力される。一方、放送機141Bから周波数f2が出力されると、周波数f2は所定の分配比で分配され、分配された一方がCIN型2波共用装置142に、他方が給電線162にそれぞれ入力される。
【0054】
給電線161に入力された周波数f1は、所定の分配比にて分配され、双ループアンテナユニット11の給電線112b〜112dに出力される。また、給電線162に入力された周波数f2は、双ループアンテナユニット11の給電線112aにそのまま出力される。これにより、周波数f1の放送波W1が双ループアンテナ素子111b〜111dから放射され、周波数f2の放送波W2が双ループアンテナ素子111aから放射される。
【0055】
この構成により、周波数f1における東西南方向(B面,D面,C面)の指向性が実現され、且つ周波数f2における北方向の(A面)の指向性が実現される。したがって、2波のメディアで同一のアンテナ装置を共用すると共に、異なる2つの水平偏波の指向性を得ることができる。また、双ループアンテナ素子への電力供給を制御することにより、周波数f1における水平偏波の指向性を制御することも可能である。
【0056】
さらに、上記変形例において、周波数f2を2つ以上の周波数(例えばf2’,f3’)とすることも可能である。すなわち、周波数f1の水平偏波の無指向性を保ちつつ、他の複数の周波数における水平偏波の指向性を制御することも可能である。
【0057】
なお本実施形態では、双ループアンテナ4は双ループアンテナユニット2段で構成されたが、これに限るものではなく、水平偏波の指向性を実現する双ループアンテナユニット12のみ(1段)で構成されていてもよい。また、双ループアンテナ4は、水平偏波の指向性を実現する双ループアンテナユニット12を1つ以上含んでいれば、3段以上の双ループアンテナユニットで構成されてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、指向性アンテナを構成する素子として双ループアンテナ(2L双ループアンテナ)が採用されたが、これに限らず、ダイポールアンテナ等の他のアンテナが採用されてもよい。
【0059】
また、本実施形態では、STA3は6段のSTAアンテナユニットで構成されたが、他の段数のSTAアンテナユニットで構成されてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、CIN型共用装置を採用したが、これに限らず、CIB型共用装置、あるいはWD型共用装置を採用してもよい。
【0061】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 アンテナ装置
2 トラス構造体
3 STA(スーパーターンスタイルアンテナ)
4 双ループアンテナ
5,6,7,8,9,10 STAアンテナユニット
11,12 双ループアンテナユニット
21 中空柱
22,32,42,52,62,72 バットスタイルアンテナ素子
23,23 一対のブラケット
24,34,44,54,64,74 STA用給電線
111a〜111d 双ループアンテナ素子
112a〜112d 双ループアンテナ用給電線
113 ベース部材
114 延出部材
115,115 一対のループ部
116 給電部
121a〜121c 双ループアンテナ素子
122a〜122d 給電線
125 架台
126 枠体
131 分配器
132,133 分岐路
134,135 端子
136 分配器
137,138 分岐路
141A,141B 放送機
142 CIN型2波共用装置
143,144 給電線
145,146 分配器
147,148 給電線
149,150 給電線
151 給電線
152,153 給電線
161 給電線
162 給電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数の周波数の放送波を放射するアンテナ装置であって、
無指向性となるように給電される無指向性アンテナと、
前記無指向性アンテナの下方に配置され、前記無指向性アンテナのみの場合における利得を変化させて、アンテナ装置全体として指向性となるように設けられる指向性アンテナとを備え、
前記複数の周波数のうち一の周波数に対応する信号が、前記無指向性アンテナと前記指向性アンテナの双方に出力され、他の周波数に対応する信号が前記無指向性アンテナに出力されることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記無指向性アンテナは、支柱と、前記支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され、且つ多段で設けられた複数のバットスタイルアンテナ素子とを備え、
前記指向性アンテナは、前記バットスタイルアンテナ素子の配置方向のうち少なくとも2方向に配置された複数の双ループアンテナ素子を備えることを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記指向性アンテナは、多段で設けられた複数の双ループアンテナユニットで構成され、
第1双ループアンテナユニットは、前記バットスタイルアンテナ素子の配置方向のうち少なくとも2方向に配置された2以上の双ループアンテナ素子を有し、
第2双ループアンテナユニットは、前記バットスタイルアンテナ素子の配置方向と同じ4方向に配置された4つの双ループアンテナ素子を有することを特徴とする請求項2記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記指向性アンテナに供給される総電力のうち、前記2以上の双ループアンテナ素子が配置される方向に供給される電力の割合が、当該2以上の双ループアンテナ素子が配置されない他の方向に供給される電力の割合より大きくなるように設定されることを特徴とする請求項3記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記無指向性アンテナに供給される電力の割合が、前記指向性アンテナに供給される電力の割合より大きくなるように設定されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記指向性アンテナは、1段で設けられた双ループアンテナユニット又は多段で設けられた複数の双ループアンテナユニットで構成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−110646(P2013−110646A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255322(P2011−255322)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(505035954)古河C&B株式会社 (7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】