説明

アンテナ装置

【課題】組み立てが容易で、かつ放射特性に与える影響が抑制された構造により組み立てを行うことが可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】第1のアンテナ装置1は、導電性を有するベース板50に固定される樹脂からなる支持部材10と、支持部材10にインサート成型されたアンテナ素子11とを備え、支持部材10は、アンテナ素子11を支持する支持部100と、ベース板50に形成された貫通孔50cを支持部100が配置される表面50a側から裏面50b側に挿通する軸部101と、軸部101の一端に形成され、ベース板50の裏面50b側に係合して軸部101の表面50a側への移動を規制する係合部102とを一体に有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持部材に支持されたアンテナ素子を金属板に固定してなるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ素子を基板上に形成し、この基板を反射板に立設したアンテナが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のアンテナは、誘電体基板に形成された導電膜によってダイポールアンテナ素子を構成し、かつこのダイポールアンテナ素子の両側に一対の無給電素子が形成されている。また、特許文献1には、誘電体基板に形成されたダイポールアンテナ素子及び一対の無給電素子を有する複数のアンテナをアレイ状に配置し、アレイアンテナを構成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−87241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のアンテナでは、例えばねじ留めや半田付け等によって誘電体基板を反射板に立設させる必要があり、このため組立工数を低減することに制約がある。また、ねじや半田は導電性を有するので、その取り付けによってアンテナの放射特性に影響を与える可能性があり、誘電体基板の反射板への取り付け後でなければ、所望の放射特性を有しているか否かを判定することができなかった。またさらに、この判定の結果が否であれば、再度誘電体基板の取り付けをやり直す必要があった。
【0006】
そこで、本発明は、組み立てが容易で、かつ放射特性に与える影響が抑制された構造により組み立てを行うことが可能なアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、導電性を有する金属板に固定される樹脂からなる支持部材と、前記支持部材にインサート成型されたアンテナ素子とを備え、前記支持部材は、前記インサート成型された前記アンテナ素子を支持する支持部と、前記金属板に形成された貫通孔を前記支持部が配置される前記金属板の表面側から裏面側に挿通する軸部と、前記軸部の一端に形成され、前記金属板の前記裏面側に係合して前記軸部の前記表面側への移動を規制する係合部とを一体に有する、アンテナ装置を提供する。
【0008】
また、前記軸部は、少なくともその先端部が先割れ状に分割された複数の分割片からなり、前記係合部は、前記複数の分割片のそれぞれに形成され、前記軸部の中心軸線に直交する方向に突出した複数の突起を有してもよい。
【0009】
また、前記金属板は、前記貫通孔が形成されると共に前記裏面側に突出する筒部を有し、前記係合部は、前記複数の突起が前記筒部の一端に係合してもよい。
【0010】
また、前記支持部には、前記貫通孔に対応する位置に、前記金属板から離間する方向の窪みが形成され、前記軸部は、前記窪みの底部から前記貫通孔に向かって延びるように形成されていてもよい。
【0011】
また、前記支持部材は、液晶ポリマーからなるとよい。
【0012】
また、前記アンテナ素子は、給電点が形成された給電素子と、前記給電素子と電気的に絶縁された無給電素子とを含み、前記給電素子及び前記無給電素子が、前記支持部材に共にインサート成型されているとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るアンテナ装置によれば、組み立てを容易化し、かつ放射特性に与える影響が抑制された構造により組み立てを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る第1〜第4のアンテナ装置を有するアレイアンテナの構成例を示す斜視図である。
【図2】第1のアンテナ装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図、(e)は底面図である。
【図3】第2のアンテナ装置を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図である。
【図4】第3のアンテナ装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図、(e)は底面図である。
【図5】第4のアンテナ装置を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図である。
【図6】第1のアンテナ装置の固定構造を説明する要部断面拡大図であり、(a)は固定前の状態を、(b)は固定作業の初期状態を、(c)は固定作業の中期状態を、(d)は固定が完了した状態を、それぞれ示す。
【図7】第1の実施の形態の変形例1に係る第1のアンテナ装置の固定構造を説明する要部断面拡大図であり、(a)は固定前の状態を、(b)は固定作業の初期状態を、(c)は固定作業の中期状態を、(d)は固定が完了した状態を、それぞれ示す。
【図8】第1の実施の形態の変形例2に係る第1のアンテナ装置の固定構造を説明する要部断面拡大図であり、(a)は固定前の状態を、(b)は固定作業の初期状態を、(c)は固定作業の中期状態を、(d)は固定が完了した状態を、それぞれ示す。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る第1のアンテナ装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図、(e)は底面図である。
【図10】第1のアンテナ装置の固定構造を説明する要部断面拡大図であり、(a)は固定前の状態を、(b)は固定作業の初期状態を、(c)は固定作業の中期状態を、(d)は固定が完了した状態を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置の構成例及びその変形例を、図1〜図8を参照して説明する。このアンテナ装置は、例えば携帯電話の基地局に用いられる。
【0016】
図1は、第1〜第4のアンテナ装置1〜4と、第1〜第4のアンテナ装置1〜4が固定されたシャーシ5と、シャーシ5に対向して配置された反射板6とを有するアレイアンテナ7の構成例を示す斜視図である。
【0017】
シャーシ5は、板状のベース板50と、ベース板50の長手方向に沿って配置された一対の側板51,52とを有する。ベース板50は、導電性を有する金属板であり、幅方向の両端部が表面50a側に折り曲げられている。一対の側板51,52は、ベース板50の表面50aに、互いに平行となるように立設して固定されている。ベース板50及び一対の側板51,52は、電気的に接地されている。
【0018】
反射板6は、ベース板50の裏面50bに対向し、ベース板50の長手方向に沿って配置されている。
【0019】
ベース板50には、側板51と側板52の間の位置に、第1〜第4のアンテナ装置1〜4がそれぞれ複数(本実施の形態におけるアレイアンテナ7では2個ずつ)固定されている。より具体的には、ベース板50には、長手方向の一端(図1の右側)から順に、第1のアンテナ装置1,第2のアンテナ装置2,第3のアンテナ装置3,第4のアンテナ装置4,第2のアンテナ装置2,第3のアンテナ装置3,第1のアンテナ装置1,第4のアンテナ装置4がこの順に並んで固定されている。本実施の形態に係るアンテナ装置は、複数(例えば5〜7)のアレイアンテナ7がシャーシ5の長手方向に配置されたものである。
【0020】
第1のアンテナ装置1は、800MHz帯の水平偏波用のアンテナ装置である。第2のアンテナ装置2は、1.5GHz帯の水平偏波ならびに2GHz帯の水平及び垂直偏波の共用アンテナ装置である。第3のアンテナ装置3は、1.5GHz帯の垂直偏波用のアンテナ装置である。第4のアンテナ装置4は、800MHz帯の垂直偏波用のアンテナ装置である。図1に示すように、第1〜第4のアンテナ装置1〜4は、ベース板50の表面50aの法線方向に、一部が互いに重なりあうように配置されている。
【0021】
なお、携帯電話の基地局には、本実施の形態に係るアンテナ装置が互いに異なる方向に指向性を有するように配置される。
【0022】
図2は、第1のアンテナ装置1を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図、(e)は底面図である。
【0023】
第1のアンテナ装置1は、支持部材10と、アンテナ素子11とを備えている。アンテナ素子11は、支持部材10にインサート成型され、支持部材10と一体化されている。
【0024】
支持部材10は、液晶ポリマーからなる。この液晶ポリマーは、パラヒドロキシ安息香酸等がエステル結合させた芳香族ポリエステル系の樹脂であり、LCP(Liquid Crystal Polymer)とも称される。支持部材10の比誘電率は、3〜5であることが望ましい。本実施の形態では、動作周波数(800MHz〜2GHz)において、比誘電率が3.9、誘電正接(tanδ)が0.007の液晶ポリマーを用いている。
【0025】
また支持部材10は、アンテナ素子11を支持する支持部100と、ベース板50に形成された貫通孔(後述)を表面50a側から裏面50b側に挿通する2つの軸部101と、軸部101の一端に形成され、ベース板50の裏面50b側に係合して軸部101の表面50a側への移動を規制する係合部102とを一体に有している。
【0026】
支持部100は、ベース板50の表面50aに直交するように配置される第1板部100aと、第1板部100aと一体に形成され、ベース板50の表面50aに平行に配置される第2板部100bとを有している。2つの軸部101は、第2板部100bにおける第1板部100aとは反対側の面に直交するように立設されている。軸部101及び係合部102の構成の詳細については後述する。
【0027】
アンテナ素子11は、給電素子12と、給電素子12と電気的に絶縁された無給電素子13とからなる。給電素子12及び無給電素子13は、共に支持部材10にインサート成型されている。
【0028】
給電素子12は、支持部100の第1板部100a及び第2板部100bに支持されている。第2板部100bにおける給電素子12は、第2板部100bがベース板50の表面50aに接触した状態で、第2板部100bを介してベース板50と容量結合する。
【0029】
また、給電素子12には、第1板部100aに支持された領域に、給電点12aが形成されている。この給電点12aには、図略の同軸ケーブルの中心導体が接続され、この中心導体から高周波電力が供給される。なお、同軸ケーブルの外部導体は接地電位に接続される。
【0030】
無給電素子13は、第1板部100aに支持されている。また、無給電素子13は、第1板部100aにおける給電素子12よりも軸部101から離間した位置に配置されている。無給電素子13は、給電素子12から放射される電波の指向性を調整する機能を有している。
【0031】
給電素子12及び無給電素子13は、厚みが例えば0.15mmの平板状の高い電気導電率を有する金属であり、例えば錫めっきされた燐青銅又は銅からなる。
【0032】
第1のアンテナ装置1は、例えば成型機の金型内に給電素子12及び無給電素子13を固定した状態で、金型内に溶融した液晶ポリマーを注入し、注入した液晶ポリマー固化させることにより成型される。
【0033】
図3は、第2のアンテナ装置2を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図である。
【0034】
第2のアンテナ装置2は、液晶ポリマーからなる支持部材20と、給電素子22及び無給電素子23からなるアンテナ素子21とを備えている。給電素子22及び無給電素子23の材質や厚み等は、第1のアンテナ装置1の給電素子12及び無給電素子13と同様である。
【0035】
支持部材20は、アンテナ素子21を支持する支持部200と、4つの軸部201と、4つの軸部201の一端にそれぞれ形成された係合部202とを有している。
【0036】
支持部200は、ベース板50の表面50aに直交し、互いに十字状に交差するように配置された第1板部200a及び第2板部200bと、第1板部200aと一体に形成され、ベース板50の表面50aに平行に配置される第3板部200cと、第2板部200bと一体に形成され、ベース板50の表面50aに平行に配置される第4板部200dとを有している。4つの軸部201は、第3板部200cに立設されている。
【0037】
給電素子22は、第1板部200a及び第3板部200cに支持された第1素子部221と、第2板部200b及び第4板部200dに形成された第2素子部222からなる。第1素子部221は、1.5GHz帯及び2GHz帯の水平偏波を送受信し、第2素子部222は2GHz帯の垂直偏波を送受信する。第1素子部221には、第1板部200aに支持された領域に給電点221aが、第2素子部222には、第2板部200bに支持された領域に給電点222aが、それぞれ形成されている。
【0038】
第3板部200cにおける給電素子22の第1素子部221は、第3板部200cがベース板50の表面50aに接した状態で、第3板部200cを介してベース板50と容量結合する。また、第4板部200dにおける給電素子22の第2素子部222は、第4板部200dがベース板50の表面50aに接した状態で、第4板部200dを介してベース板50と容量結合する。
【0039】
第2アンテナ装置2は、給電素子22の第1素子部221及び無給電素子23がインサート成型された第1板部200a及び第3板部200cと、給電素子22の第2素子部222がインサート成型された第2板部200b及び第4板部200dとをそれぞれ成型し、これらを組み合わせることで構成される。
【0040】
図4は、第3のアンテナ装置3を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図、(e)は底面図である。
【0041】
第3のアンテナ装置3は、液晶ポリマーからなる支持部材30と、給電素子32及び無給電素子33からなるアンテナ素子31とを備えている。給電素子32及び無給電素子33の材質や厚み等は、第1のアンテナ装置1の給電素子12及び無給電素子13と同様である。
【0042】
支持部材30は、アンテナ素子31を支持する支持部300と、2つの軸部301と、2つの軸部301の一端にそれぞれ形成された係合部302とを有している。
【0043】
支持部300は、ベース板50の表面50aに直交するように配置される柱部300aと、柱部300aと一体に形成され、ベース板50の表面50aに平行に配置される第1板部300bと、柱部300aを挟んで第1板部300bと平行に配置される第2板部300cとを有している。2つの軸部301は、第1板部300bにおける柱部300aとは反対側の面に立設されている。
【0044】
給電素子32は、柱部300a、第1板部300b、及び第2板部300cに支持されている。第2板部300cにおける給電素子32は、第2板部300cがベース板50の表面50aに接した状態で、第2板部300cを介してベース板50と容量結合する。給電素子32の給電点32aは、柱部300aに支持された領域に形成されている。
【0045】
第2板部300cは、その中心部が柱部300aに支持されたH字形状であり、無給電素子33は、給電素子32よりも第2板部300cの中心部から離間した位置に支持されている。
【0046】
第3アンテナ装置3は、給電素子32がインサート成型された柱部300a及び第1板部300bと、給電素子32及び無給電素子33がインサート成型された第2板部300cとをそれぞれ成型し、これらを組み合わせることで構成される。
【0047】
図5は、第4のアンテナ装置4を示し、(a)は平面図、(b)は左側面図、(c)は正面図、(d)は右側面図、(e)は背面図、(f)は底面図である。
【0048】
第4のアンテナ装置4は、液晶ポリマーからなる支持部材40と、給電素子42及び無給電素子43からなるアンテナ素子41とを備えている。給電素子42及び無給電素子43の材質や厚み等は、第1のアンテナ装置1の給電素子12及び無給電素子13と同様である。
【0049】
支持部材40は、アンテナ素子41を支持する支持部400と、2つの軸部401と、2つの軸部401の一端にそれぞれ形成された係合部402とを有している。
【0050】
支持部400は、ベース板50の表面50aに直交するように配置される柱部400aと、柱部400aと一体に形成され、ベース板50の表面50aに平行に配置される第1板部400bと、柱部400aを挟んで第1板部400bと平行に配置される第2板部400c及び第3板部400dとを有している。
【0051】
第2板部400c及び第3板部400dは、共にH字形状であり、第3板部400dは、第2板部400cよりもベース板50から離間した位置に配置される。また、2つの軸部401は、第1板部400bにおける柱部400aとは反対側の面に立設されている。
【0052】
給電素子42は、第2板部400cに支持されている。給電素子42の給電点42aは、第2板部400cの中央部に形成されている。また、無給電素子43は、第3板部400dに支持されている。
【0053】
第4アンテナ装置4は、給電素子42がインサート成型された第2板部400cと、無給電素子43がインサート成型された第3板部400dとをそれぞれ成型し、これらを柱部400a及び第1板部400bに組み合わせることで構成される。
【0054】
(アンテナ装置の固定構造)
次に、第1〜第4のアンテナ装置1〜4のベース板50への固定構造について説明する。第1〜第4のアンテナ装置1〜4は、ベース板50に形成された貫通孔を軸部101,201,301,401が挿通し、軸部101,201,301,401の一端に形成された係合部102,202,302,402がベース板50の裏面50b側に係合することで、ベース板50に固定される。この固定構造は、第1〜第4のアンテナ装置1〜4について共通であるので、第1のアンテナ装置1を例にとって詳細に説明する。
【0055】
図6は、第1のアンテナ装置1の固定構造を説明する要部断面拡大図であり、(a)は固定前の状態を、(b)は固定作業の初期状態を、(c)は固定作業の中期状態を、(d)は固定が完了した状態を、それぞれ示す。
【0056】
軸部101は、支持部材10の第2板部100bに直交する方向に延びるように形成され、その先端部が、先割れ状に分割された複数(本実施の形態では2つ)の分割片101a,101bからなる。分割片101a,101bは、軸部101の円柱状の基端部101cと一体に形成されている。分割片101a,101bは、軸部101の中心軸線Cを挟んで互いに接近及び離間する方向に弾性変形可能な弾性を有している。
【0057】
係合部102は、分割片101a,101bのそれぞれに一体に形成され、軸部101の中心軸線Cに直交する方向に突出した2つの突起102a,102bを有している。分割片101aに形成された突起102aと、分割片101bに形成された突起102bとは、互いに反対方向に突出している。図6に示す例では、突起102a,102bの中心軸線Cに沿った断面の形状が矩形状である。
【0058】
ベース板50には、表面50a側から裏面50b側に貫通する貫通孔50cが形成されると共に、裏面50b側に突出する筒部501が設けられている。筒部501の内周面501aは、表面50a側から、裏面50b側の端面501bに近づくにつれて徐々に内径が小さくなるテーパ状に形成されている。また、軸部101も、分割片101a,101b及び円柱状の基端部101cを含めた全体が、内周面501aの形状に対応した先細り形状に形成されている。
【0059】
図6(b)及び(c)に示すように、突起102a,102bは、ベース板50の表面50a側から貫通孔50c内に挿入され、内周面501aに沿って筒部501内を移動する。筒部501の内周面501aは、前述のようにテーパ状に形成されているので、突起102a,102bの移動に伴ってその間隔が徐々に狭くなる。
【0060】
そして、突起102a,102bが貫通孔50cを通過すると、図6(d)に示すように、分割片101a,101bの復元力によって突起102a,102bが互いに離間する。これにより、突起102a,102bが筒部501の一端(端面501b)に係合し、軸部101の表面50a側への移動が規制される。つまり、軸部101がベース板50に対して抜け止めされる。
【0061】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1実施の形態によれば、以下のような効果が得られる。
【0062】
(1)第1〜第2のアンテナ装置1〜4は、軸部101,201,301,401をベース板50に形成された貫通孔50cに挿通させることでベース板50に固定されるので、例えばねじ留めや半田付けによって第1〜第2のアンテナ装置1〜4をベース板50に固定する場合に比較して、第1〜第2のアンテナ装置1〜4の固定が容易化される。これにより、アレイアンテナ7の組み立てを容易に行うことができる。
【0063】
(2)第1〜第2のアンテナ装置1〜4を固定するにあたり、ベース板50の表面50a側に導電性の部材を使用することがないので、第1〜第4のアンテナ装置1〜4の固定作業によって第1〜第4のアンテナ装置1〜4の放射特性が変動することが抑制される。これにより、第1〜第4のアンテナ装置1〜4の単体で測定した通りの放射特性が得られ、安定した性能を発揮することが可能となる。
【0064】
(3)軸部101及び係合部102は、分割片101a,101bにそれぞれ形成された突起102a,102bがベース板50の筒部501の一端に係合する。つまり、分割片101a,101bの弾性によって突起102a,102bが変位して筒部501に係合するので、軸部101及び係合部102を支持部100と共通する材料(液晶ポリマー)によって一体に形成することができ、その製造を容易に行うことができる。
【0065】
(4)軸部101は、ベース板50に設けられた筒部501に収容され、軸部101の中心軸線Cが貫通孔50cの延伸方向と平行になるように固定されるので、支持部材10の支持部100がベース板50に対して傾くことが抑制される。これにより、安定した放射特性が得られる。
【0066】
(5)第1〜第4のアンテナ装置1〜4の支持部材10,20,30,40を構成する液晶ポリマーは、適度な比誘電率と強度とを有し、かつインサート成型に適した材料であるので、アンテナ素子11,21,31,41を確実に支持することができると共に、第1〜第4のアンテナ装置1〜4としての優れた性能を得ることができる。
【0067】
(6)アンテナ素子11,21,31,41の給電素子12,22,32,42、及び無給電素子13,23,33,43は、共に支持部材10,20,30,40にインサート成型されるので、例えば給電素子12,22,32,42又は無給電素子13,23,33,43をねじ留めやかしめ等によって固定する場合に比較して、第1〜第4のアンテナ装置1〜4を容易に製造することが可能となる。また、給電素子12,22,32,42と無給電素子13,23,33,43との位置関係が高精度に定まるので、安定した性能を得ることが可能となる。
【0068】
[第1の実施の形態の変形例1]
図7は、第1の実施の形態の変形例1に係る第1のアンテナ装置1の固定構造を説明する要部断面拡大図であり、(a)は固定前の状態を、(b)は固定作業の初期状態を、(c)は固定作業の中期状態を、(d)は固定が完了した状態を、それぞれ示す。
【0069】
図6に示した例では、係合部102の突起102a,102bの中心軸線Cに沿った断面の形状が矩形状であったが、本変形例では、ベース板50の貫通孔50cに対向する突起102a,102bの先端部が先細り形状に形成されている。より具体的には、突起102a,102bにおける中心軸線Cに対する外側の面が断面円弧状に形成され、先端部から根元部(分割片101a,101b側の部分)に向かって徐々に中心軸線Cに直交する方向の幅が広がるように形成されている。
【0070】
また、図6に示した例では、分割片101a,101bの中心軸線Cに沿った方向の長さが、同方向の基端部101cの長さよりも長く形成されていたが、本変形例では、中心軸線Cに沿った基端部101cの長さが、同方向の分割片101a,101bよりも長く形成されている。
【0071】
本変形例によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(6)の効果に加え、突起102a,102bがその外側の面に沿って貫通孔50cに挿入されるので、係合部102の貫通孔50cへの挿入がより容易となる。
【0072】
[第1の実施の形態の変形例2]
図8は、第1の実施の形態の変形例2に係る第1のアンテナ装置1の固定構造を説明する要部断面拡大図であり、(a)は固定前の状態を、(b)は固定作業の初期状態を、(c)は固定作業の中期状態を、(d)は固定が完了した状態を、それぞれ示す。
【0073】
図6及び図7に示した例では、軸部101の全体が先細り形状に形成されていたが、本変形例では、軸部101の全体が、分割片101a及び分割片101bの間のスリット状の隙間を除いて円柱状に形成されている。また、分割片101aと分割片101bとの間の隙間の幅方向(中心軸線Cに直交する方向)の寸法は略一定である。
【0074】
また、図6及び図7に示した例では、貫通孔50cの全体がテーパ状に形成されていたが、本変形例では、貫通孔50cの表面50a側の一部が、表面50aに向かって拡径するテーパ面501cに形成されている。また、テーパ面501cに接触する突起102a,102bの角部には面取りが施されている。
【0075】
本変形例によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(6)の効果に加え、突起102a,102bがテーパ面501cに沿って貫通孔50cに挿入されるので、係合部102の貫通孔50cへの挿入がより容易となる。
【0076】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について、図9及び図10を参照して説明する。図9及び図10において、第1の実施の形態について説明したものと実質的に共通する機能を有する部材等については、共通する符号を付してその重複した説明を省略する。
【0077】
図9は、本実施の形態に係る第1のアンテナ装置1を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は背面図、(e)は底面図である。
【0078】
この第1のアンテナ装置1の支持部材10には、支持部100の第1板部100aの一端部(第2板部100b側の端部)に窪み100cが形成され、この窪み100cの内部に軸部101の一部が収容されている。この窪み100cは、第2板部100bに直交する方向の一側(無給電素子13が配置された側)に深さ方向を有するように形成されている。
【0079】
軸部101は、第2板部100bをその厚さ方向に貫通し、係合部102が第2板部100bに直交する方向の他側(第1板部100aとは反対側)に位置している。
【0080】
図10は、本実施の形態に係る第1のアンテナ装置1の固定構造を説明する要部断面拡大図であり、(a)は固定前の状態を、(b)は固定作業の初期状態を、(c)は固定作業の中期状態を、(d)は固定が完了した状態を、それぞれ示す。
【0081】
軸部101は、窪み100cの底部100dからベース板50の貫通孔50cに向かって延びるように形成されている。また、窪み100cは、支持部100の貫通孔50cに対応する位置に、ベース板50から離間する方向に窪むように形成されている。また、係合部102の突起102a,102bは、先端部が先細り形状に形成されている。
【0082】
なお、図10に示す例では、ベース板50に筒部501(図6〜図8に示す)が設けられていないが、第1の実施の形態と同様に、筒部501を設けてもよい。
【0083】
第1のアンテナ装置1をベース板50に固定する際には、図10(a)に示すように、軸部101が貫通孔50cに対向するように第1のアンテナ装置1を位置決めし、図10(b)及び(c)に示すように、係合部102の突起102a,102bを貫通孔50cに挿入する。突起102a,102bが貫通孔50cを通過すると、分割片101a,101bの復元力によって突起102a,102bが互いに離間し、突起102a,102bがベース板50の裏面50b側に係合する。これにより、軸部101の表面50a側への移動が規制される。
【0084】
なお、第2〜第4のアンテナ装置2〜4についても、上記と同様の固定構造によりベース板50への固定を行うことが可能である。
【0085】
本実施の形態によれば、第1の実施の形態について説明した(1)〜(3)及び(5)〜(6)の効果に加え、ベース板50に筒部501を設けなくとも第1〜第4のアンテナ装置1〜4をベース板50に固定することが可能であるので、ベース板50を薄くすることができると共に、ベース板50の加工が容易となる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0087】
また、本発明は上記第1及び第2の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である。例えば、第1〜第4のアンテナ装置1〜4の周波数帯域や個数は、上記のものに限らない。例えば、ベース板50に第1のアンテナ装置1のみが固定されるものであってもよい。
【0088】
また、上記第1及び第2の実施の形態では、給電素子12,22,32,42及び無給電素子13,23,33,43が共に支持部材10,20,30,40にインサート成型された場合について説明したが、これに限らず、例えば給電素子12,22,32,42のみが支持部材10,20,30,40にインサート成型され、無給電素子13,23,33,43は別途設けられていてもよい。
【0089】
また、上記第1及び第2の実施の形態では、軸部101が分割片101a,101b及び基端部101cからなる場合について説明したが、軸部101を分割片101a,101bのみから形成してもよい。つまり、軸部101に基端部101cを形成しなくともよい。また、軸部101が3つ以上の分割片を有するように構成してもよい。
【0090】
また、上記第1及び第2の実施の形態では、第1〜第4のアンテナ装置1〜4が複数の軸部101,201,301,401を備え、これらの軸部101,201,301,401が直線状に並んで配置された場合について説明したが、これに限らず、3つ以上の軸部101,201,301,401が直線状に並ばないように、すなわち多角形をなすように配置してもよい。この場合、第1〜第4のアンテナ装置1〜4のベース板50に対する姿勢がより安定する。
【符号の説明】
【0091】
1〜4…第1〜第4のアンテナ装置、5…シャーシ、6…反射板、7…アレイアンテナ、10,20,30,40…支持部材、11,21,31,41…アンテナ素子、12,22,32,42…給電素子、13,23,33,43…無給電素子、12a,32a,42a…給電点、50…ベース板(金属板)、50a…表面、50b…裏面、50c…貫通孔、51,52…側板、100…支持部、100a…第1板部、100b…第2板部、100c…窪み、100d…底部、101,201,301,401…軸部、101a,101b…分割片、101c…基端部、102,202,302,402…係合部、102a,102b…突起、200…支持部、200a…第1板部、200b…第2板部、200c…第3板部、200d…第4板部、221…第1素子部、221a…給電点、222…第2素子部、222a…給電点、300…支持部、300a…柱部、300b…第1板部、300c…第2板部、400…支持部、400a…柱部、400b…第1板部、400c…第2板部、400d…第3板部、501…筒部、501a…内周面、501b…端面、501c…テーパ面、C…中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する金属板に固定される樹脂からなる支持部材と、
前記支持部材にインサート成型されたアンテナ素子とを備え、
前記支持部材は、前記インサート成型された前記アンテナ素子を支持する支持部と、前記金属板に形成された貫通孔を前記支持部が配置される前記金属板の表面側から裏面側に挿通する軸部と、前記軸部の一端に形成され、前記金属板の前記裏面側に係合して前記軸部の前記表面側への移動を規制する係合部とを一体に有する、
アンテナ装置。
【請求項2】
前記軸部は、少なくともその先端部が先割れ状に分割された複数の分割片からなり、
前記係合部は、前記複数の分割片のそれぞれに形成され、前記軸部の中心軸線に直交する方向に突出した複数の突起を有する、
請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記金属板は、前記貫通孔が形成されると共に前記裏面側に突出する筒部を有し、
前記係合部は、前記複数の突起が前記筒部の一端に係合する、
請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記支持部には、前記貫通孔に対応する位置に、前記金属板から離間する方向の窪みが形成され、
前記軸部は、前記窪みの底部から前記貫通孔に向かって延びるように形成された、
請求項2又は3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記支持部材は、液晶ポリマーからなる、
請求項1乃至4の何れか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナ素子は、給電点が形成された給電素子と、前記給電素子と電気的に絶縁された無給電素子とを含み、前記給電素子及び前記無給電素子が、前記支持部材に共にインサート成型された、
請求項1乃至5の何れか1項に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−62603(P2013−62603A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198513(P2011−198513)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】