説明

アントシアニン含有組成物及びその製造方法

【課題】ミネラル分の吸収を阻害する作用を有する成分を含有することなく、アントシアニンの生体吸収率を向上させたアントシアニン含有組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】微細化されたアントシアニン含有素材及び分散剤を含有するアントシアニン含有組成物において、前記分散剤は、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分の生体への吸収性を向上させたアントシアニン含有組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、植物体内に存在する抗酸化物質としてアントシアニン(anthocyanin)が知られている。アントシアニンは、ポリフェノールの一種であり、アントシアニジン(anthocyanidin)をアグリコンとする配糖体として構成されている。また、アントシアニンは、天然色素として知られ、従来より食品、医薬品、化粧品等の分野で天然着色成分として利用されてきた。また、従来よりアントシアニン自体の生理機能として、眼の網膜に存在する視物質であるロドプシンの再合成を促進する作用を有し、摂取することにより視力の向上に効果があることが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
一般に、アントシアニンは、ブルーベリー、ラズベリー等のベリー類に多く含有されていることが知られており、それらを食することにより容易に摂取することができる。しかしながら、ベリー類等のアントシアニンを含有する素材を単に経口摂取したとしても、消化管からのアントシアニンの吸収率は非常に低い(約1%)ことが問題であった。従来より、アントシアニンの吸収率を向上させるために、特許文献2に開示されるようなアントシアニン吸収促進剤が知られている。かかるアントシアニン吸収促進剤は、アントシアニンの吸収を向上させるフィチン酸を含有している。
【特許文献1】特開2005−328761号公報
【特許文献2】特開2006−151922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献2に開示されるフィチン酸は、強いキレート作用を有し、体内のミネラル分の吸収を阻害する作用を有するため、大量に摂取することは好ましくない。
本発明は、微細化されたアントシアニン含有素材と特定の分散剤と併用することにより、アントシアニンの生体への吸収率が大幅に向上することを発見したことに基づくものである。本発明の目的とするところは、ミネラル分の吸収を阻害する作用を有する成分を含有することなく、アントシアニンの生体吸収率を向上させたアントシアニン含有組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、微細化されたアントシアニン含有素材及び分散剤を含有するアントシアニン含有組成物において、前記分散剤は、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアントシアニン含有組成物において、前記微細化されたアントシアニン含有素材は、高圧ホモジェナイザーにより高圧均質化処理が施され、少なくとも一部がナノ化されていることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアントシアニン含有組成物において、前記アントシアニン含有素材は、ブルーベリー、クランベリー、コケモモ、リンゴンベリー、ハックルベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ローガンベリー、サーモンベリー、ボイセンベリー、イチゴ、クワ、エルダベリー、ハスカップ、ニワトコ、ハイビスカス、スグリ、クズベリー、アサイー、プルーン、サクランボ、リンゴ、マンゴー、シソ、有色イモ、赤キャベツ、赤ダイコン、ブドウ、紫トウモロコシ、紫タマネギ、ナス、有色米、黒豆、黒ゴマ、及び椿から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載のアントシアニン含有組成物において、前記アントシアニン含有素材は、ビルベリーであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアントシアニン含有組成物において、さらに、ドコサヘキサエン酸、サフラワー油、及び亜麻仁油から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする。
【0009】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアントシアニン含有組成物において、さらに、粘度調整基材としてのミツロウとともにソフトカプセルに内包されていることを特徴とする。
【0010】
請求項7に記載の発明は、微細化されたアントシアニン含有素材及び分散剤を配合することにより得られるアントシアニン含有組成物の製造方法において、前記微細化されたアントシアニン含有素材は、原料であるアントシアニン含有素材を高圧ホモジェナイザーにより高圧均質化処理を施し、少なくとも一部をナノ化することによって得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ミネラル分の吸収を阻害する作用を有する成分を含有することなく、アントシアニンの生体吸収率を向上させたアントシアニン含有組成物及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のアントシアニン含有組成物を具体化した実施形態を説明する。
本実施形態のアントシアニン含有組成物は、微細化されたアントシアニン含有素材及び所定の分散剤を含有している。さらに、例えばドコサヘキサエン酸(DHA)、サフラワー油、及び亜麻仁油から選ばれる少なくとも一種を含有してもよい。アントシアニンは、植物体内に存在する色素成分であり、抗酸化作用を発揮する。アントシアニンは、ポリフェノールの一種であり、アントシアニジンをアグリコンとする配糖体として構成されている。アントシアニジンは、植物体内においてチロシン及びフェニルアラニンから、4−クマロイルCoA、テトラヒドロキシカルコン、ナリンゲニンをそれぞれ経由して再合成される。
【0013】
アントシアニン含有素材としては、アントシアニンを含有する植物体が好ましく適用される。アントシアニンを含有する植物体としては、例えばビルベリー、ブルーベリー、クランベリー、コケモモ(カウベリー)、リンゴンベリー、ハックルベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ローガンベリー、サーモンベリー、ボイセンベリー、イチゴ(ストロベリー)、クワ(マルベリー)、エルダベリー、ハスカップ、ニワトコ、ハイビスカス、スグリ(カシス:ブラックカーラント、レッドカーラント)、クズベリー、アサイー、プルーン、サクランボ、リンゴ、マンゴー、シソ、有色イモ(サツマイモ、ジャガイモ、ヤマイモ)、赤キャベツ、赤ダイコン、ブドウ、紫トウモロコシ、紫タマネギ、ナス、有色米、黒豆、黒ゴマ、及び椿が挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの中で、アントシアニンを多く含有するビルベリー及びブルーベリーが好ましく選択される。アントシアニンを含有する上記植物体における適用部位としては特に限定されない。好ましくはアントシアニンは色素成分であるため、果実、種、葉、花又はその構成成分の一部を含有するものが用いられる。
【0014】
微細化に用いられるアントシアニン含有素材としては、次の方法によるものを使用することができる。アントシアニンを含有する上記植物体をそのままアントシアニン含有素材として用いる方法、アントシアニンを含有する上記植物体から抽出溶媒としての有機溶媒、水、有機溶媒/水混合物、又は酸溶媒を用いて抽出される粗抽出物をアントシアニン含有素材として用いる方法が挙げられる。これらのうち、夾雑物の多くが分離され、ホモジェナイザーを用いた均質化処理が容易な粗抽出物が好ましく適用される。
【0015】
抽出溶媒に用いられる有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、及びイソプロパノール等のアルコール類、グリセリン、氷酢酸等の極性溶媒、ヘキサン、並びに酢酸エチル等の低極性溶媒が挙げられる。これらの抽出溶媒は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でアントシアニンの抽出効率、生体への適用性、抽出コスト等の観点からエタノールが好ましく用いられる。また、抽出溶媒に使用される酸溶媒としては、例えば塩酸溶液、硫酸溶液、酢酸溶液、ギ酸溶液、及びクエン酸等の有機酸溶液が挙げられる。抽出溶媒を用いた抽出処理は、常温〜加温(40〜100℃)下において、静置もしくは撹拌して行なう。また、抽出時間は、アントシアニンを抽出溶媒中に十分に移行させるために、30分以上であることが好ましい。次に、固液分離処理を行ない抽出溶媒に不溶な成分を分離する。得られた粗溶出液は、そのままアントシアニン含有素材として利用することが可能であるうえ、必要に応じて濃縮、乾燥又は水希釈した状態でアントシアニン含有素材として利用することも可能である。粗抽出液の濃縮及び乾燥には、公知の減圧濃縮、膜濃縮、凍結濃縮、真空乾燥、噴霧乾燥又は凍結乾燥が採用可能である。
【0016】
以上のように得られた粗抽出物は、さらにカラムクロマトグラフィーを用いて、アントシアニンを分離及び精製処理を行なってもよい。クロマトグラフィー担体としては、例えば、多孔質合成吸着樹脂、イオン交換樹脂、ゲルろ過クロマトグラフィー等が挙げられる。それらを適宜組み合わせて、公知の分離手段により精製することができる。尚、多孔質合成吸着樹脂は、樹脂内の細孔表面と被吸着物質間の物理的相互作用により溶液中から種々の有機物を吸着及び分離することができる。
【0017】
本実施形態のアントシアニン含有組成物は、アントシアニン含有素材をマイクロ単位又はナノ単位まで均質化処理(ホモジェネート)することにより微細化(マイクロ化、ナノ化)処理したものが使用される。本実施形態において用いられる微細化されたアントシアニン含有素材は、少なくとも一部にナノレベルからマイクロレベルの粒子を含有することが好ましく、少なくとも一部にナノレベルの粒子(ナノ化粒子)を含有することがより好ましい。微細化されたアントシアニン含有素材の平均粒径は、特に限定されないが、10nm〜100μmの範囲にあることが好ましく、100nm〜10μmの範囲にあることがより好ましい。平均粒径が10nm未満であると、微細化処理を複数回繰り返す必要があるため、製造に時間及びコストを要するとともに、含有する成分の劣化を招くおそれがある。一方、平均粒径が、100μmを超えるとアントシアニンの体内への吸収率の向上を十分に発揮しないおそれがある。平均粒径は、市販のレーザー回折・散乱式粒度分布測定器を用いて測定することができる。
【0018】
かかる微細化処理は、市販のホモジェナイザーを適宜採用することができる。例えば、高圧雰囲気下において、1又は2以上の小径穴と特定流路を有するノズル内を流体が高速移動することにより対象物を粉砕する高圧ホモジェナイザー、超音波を用いて対象物を粉砕する超音波粉砕機、高速撹拌処理により又は衝撃により対象物を粉砕する高速回転衝撃粉砕機、粉砕媒体を使用するボールミル又はビーズミル等が挙げられる。これらの中で、シャープな粒子径分布が得られ易い高圧ホモジェナイザーが好ましく用いられる。
【0019】
高圧ホモジェナイザーは、液体の溶媒に溶解した粉砕対象物を微細化する湿式と、固体状の粒体又は粉体をさらに微細化する乾式とに分けられる。本実施形態においては、粒子をナノレベルまで微細化することがより容易な湿式が好ましく適用される。湿式の場合、高圧ホモジェナイザーに適用される処理溶液としては、例えば、溶媒として水を採用し、アントシアニン含有素材を0.1〜50重量%含有する水溶液が用いられる。高圧ホモジェナイザーにおいて、ノズルのタイプは特に限定されず、対向衝突型、貫通型、だまとり型のいずれを適用してもよい。
【0020】
市販のホモジェナイザーを用いた微細化の処理条件としては、ホモジェナイザー、ノズルの種類、微細化処理前のアントシアニン含有素材の粒径等に応じて適宜決定される。また、平均粒径が所定の範囲内となるように、必要に応じて、微細化処理は、1又は2回以上繰り返される。
【0021】
分散剤は、微細化されたアントシアニン含有素材の再凝集を抑制し、生体摂取後のアントシアニンの吸収率を向上させるために配合される。尚、本発明においては、分散剤には、食品添加物として用いられる保護剤及び乳化剤も含むものとする。分散剤としては、例えば、微細化されたアントシアニンの再凝集を抑制する作用を発揮する成分が採用され、公知の成分を使用することができる。例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルが挙げられる。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの中で、アントシアニンの消化管からの吸収率の高いレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、及びショ糖脂肪酸エステルがより好ましく、レシチンが特に好ましい。
【0022】
アントシアニン含有組成物中における分散剤の含有量は、好ましくは、0.01〜99重量%、より好ましくは、0.1〜10重量%である。分散剤の含有量が、0.01重量%未満であると微細化されたアントシアニン含有素材の再凝集を十分に抑制することができない。一方、アントシアニン含有組成物中における分散剤の含有量が99重量%を超えると組成物中のアントシアニンの含有率が低下するため好ましくない。
【0023】
その他の成分としてドコサヘキサエン酸(DHA)、サフラワー油、及び亜麻仁油から選ばれる少なくとも一種は、アントシアニン含有組成物中のアントシアニンの消化管からの吸収率をさらに高めるために配合されることが好ましい。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上が組み合わされて用いられてもよい。これらの中で、アントシアニンの消化管からの吸収率の高いサフラワー油、及び亜麻仁油が特に好ましい。アントシアニン含有組成物中におけるDHA、サフラワー油、及び亜麻仁油から選ばれる少なくとも一種の含有量は、好ましくは、1〜99重量%、より好ましくは、20〜80重量%である。この含有量が、1重量%未満であるとアントシアニンの吸収率向上作用を十分に発揮することはできない。一方、含有量が99重量%を超えると組成物中のアントシアニンの含有率が低下するため好ましくない。
【0024】
以上のようにして得られたアントシアニン含有組成物は、そのまま溶液の状態でアントシアニン含有組成物として利用することが可能であるうえ、必要に応じて濃縮、乾燥又は水希釈した状態でアントシアニン含有組成物として利用することも可能である。溶出液の濃縮及び乾燥には、公知の減圧濃縮、膜濃縮、凍結濃縮、真空乾燥、噴霧乾燥又は凍結乾燥が採用可能である。尚、アントシアニン含有組成物には、腐敗防止のための公知の添加剤やアルコール類を適量配合してもよい。
【0025】
アントシアニンは優れた抗酸化作用を有するとともに、眼の網膜に存在する視物質であるロドプシンの再合成を促進する作用(視力回復作用)を有する。したがって、アントシアニン含有組成物を濃縮又は乾燥してそれらの効能及び効果を得ることを目的とした健康食品、サプリメントとして適用してもよい。また、抗酸化剤、視力回復剤等として各種医薬品、医薬部外品に適用してもよい。
【0026】
本実施形態のアントシアニン含有組成物を飲食品に適用する場合、種々の食品素材又は飲料品素材に添加することによって使用することができる。飲食品の形態としては、特に限定されず、液状、粉末状、ゲル状、固形状のいずれであってもよく、また剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、ドリンク剤のいずれであってもよい。その中でも、一度に多くの組成物の摂取が可能なカプセル剤であることが好ましい。前記飲食品としては、その他の成分としてゲル化剤含有食品、糖類、香料、甘味料、油脂、基材、賦形剤、食品添加剤、副素材、増量剤等を適宜配合してもよい。
【0027】
本実施形態のアントシアニン含有組成物を医薬品として使用する場合は、好ましくは服用(経口摂取)により投与される。剤形としては、特に限定されないが、例えば、散剤、粉剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、坐剤、液剤、注射剤等が挙げられる。また、添加剤として賦形剤、基剤、乳化剤、溶剤、安定剤等を配合してもよい。
【0028】
本実施形態のアントシアニン含有組成物をカプゼル剤として適用する場合、例えば粘度調整基材又は安定剤としてのミツロウとともにソフトカプセルに内包することにより構成することができる。ミツロウは、従来よりソフトカプセルの粘度を調節する基材として使用されているが、ソフトカプセルに内包される成分の吸収を阻害するという報告がある。本実施形態のアントシアニン含有組成物を構成するアントシアニン含有組成物は微細化されているので、粘度及び安定性を向上させることができる。そして、ミツロウの配合量を低減させて、ミツロウによる吸収弊害を緩和することができる。
【0029】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態のアントシアニン含有組成物は、微細化されたアントシアニン含有素材、並びにレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種の分散剤を含有する。したがって、フィチン酸のようなミネラル分の吸収を阻害する作用を有する成分を含有することなく、アントシアニンの消化管からの吸収率を向上させることができる。その結果、アントシアニンによって得られる生体機能、すなわち、アントシアニンによって生ずる優れた抗酸化作用、及び眼の網膜に存在する視物質であるロドプシンの再合成を促進する作用の向上が期待できる。
【0030】
(2)本実施形態において、微細化されたアントシアニン含有素材は、好ましくは高圧ホモジェナイザーにより高圧均質化処理が施されることによって、少なくとも一部がナノ化されている。したがって、アントシアニンの消化管からの吸収率をより向上させることができる。
【0031】
(3)本実施形態において、アントシアニン含有素材は、好ましくはビルベリー、ブルーベリー、クランベリー、コケモモ(カウベリー)、リンゴンベリー、ハックルベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ローガンベリー、サーモンベリー、ボイセンベリー、イチゴ(ストロベリー)、クワ(マルベリー)、エルダベリー、ハスカップ、ニワトコ、ハイビスカス、スグリ(カシス:ブラックカーラント、レッドカーラント)、クズベリー、アサイー、プルーン、サクランボ、リンゴ、マンゴー、シソ、有色イモ(サツマイモ、ジャガイモ、ヤマイモ)、赤キャベツ、赤ダイコン、ブドウ、紫トウモロコシ、紫タマネギ、ナス、有色米、黒豆、黒ゴマ、及び椿から選ばれる少なくとも一種が適用される。したがって、天然植物素材が由来であるため、安全且つ容易に摂取することができる。また、それらの天然素材が含有するビタミン及びミネラル等の他の栄養源も同時に摂取することができる。
【0032】
(4)本実施形態のアントシアニン含有組成物では、アントシアニン含有素材として、好ましくはビルベリーが用いられる。したがって、ビルベリーはアントシアニン含有量が高いため、他の植物素材より多く量のアントシアニンの摂取が期待できる。
【0033】
(5)本実施形態のアントシアニン含有組成物において、好ましくは、DHA、サフラワー油、及び亜麻仁油から選ばれる少なくとも一種が含有される。したがって、さらにアントシアニンの消化管からの吸収率を向上させることができる。
【0034】
(6)本実施形態のアントシアニン含有組成物は、粘度等調整基材としてのミツロウとともにソフトカプセルに内包することができる。本実施形態のアントシアニン含有組成物は、微細化されていないアントシアニン含有素材を使用する場合に比べて組成物の粘度及び安定性を高めることができる。つまり、ミツロウの配合量を削減し、その分アントシアニン含有素材の配合量を多くすることができる。その結果、ミツロウによるアントシアニンの吸収性阻害の緩和を図ることができる。
【0035】
(7)本実施形態の微細化されたアントシアニン含有素材及び分散剤を配合することにより得られるアントシアニン含有組成物の製造方法において、前記微細化されたアントシアニン含有素材は、原料であるアントシアニン含有素材を高圧ホモジェナイザーにより高圧均質化処理を施し、少なくとも一部をナノ化されている。したがって、微細化されたアントシアニン含有組成物を安価に且つ容易に製造することができる。
【0036】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態におけるアントシアニン含有組成物は、ヒトが摂取する飲食品及び医薬品等に対して適用することができるのみならず、家畜やペット等の飼養動物の飼料にサプリメント、栄養補助食品、医薬品等として配合してもよい。
【0037】
・アントシアニン含有素材への分散剤の配合は、微細化処理前に行なっても、微細化処理後に行なってもいずれでもよい。
・アントシアニン含有素材へのDHA、サフラワー油、及び亜麻仁油から選ばれる少なくとも一種の配合は、微細化処理前に行なっても、微細化処理後に行なってもいずれでもよい。
【実施例】
【0038】
以下に試験例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<試験例1:アントシアニン含有組成物の製造及びアントシアニン含有組成物の粒径分布の測定>
分散剤としてレシチン(サンレシチンA‐1、太陽化学社製)1重量%とアントシアニン含量36%以上(アントシアニジン含量25%以上)に規格化されたビルベリーエキス末30重量%を配合した水溶液をアントシアニン含有素材として調製した。尚、アントシアニン含有素材として用いられるビルベリーエキス末は、まずビルベリー果実を酸性水溶液で抽出処理し、濾過して粗抽出液を得た。次に、該粗抽出液を多孔質合成吸着樹脂に吸着させ、不要な成分を洗い流し、アントシアニン成分をエタノールで溶出させた。そして、噴霧乾燥後、粉砕した物をビルベリーエキス末とした。
【0039】
次に、上記アントシアニン含有素材を湿式の高圧ホモジェナイザー(アルティマイザー:スギノマシン社製)を用いて、245MPaの高圧で、1回処理(1パス)、5回繰り返し処理(5パス)、10回繰り返し処理(10パス)、20回繰り返し処理(20パス)をそれぞれ行なった。そして、各処理液を凍結乾燥して粉砕・粉末化することにより、各所定回数のパス処理を行なったアントシアニン含有組成物を得た。
【0040】
次に、得られた各アントシアニン含有組成物について、レーザー回折・散乱式粒度分布測定器(SKレーザーマイクロンサイザーLMS−350:セイシン企業社製)を用いて粒径分布を求めた。結果を図1〜4に示す。
【0041】
図1〜4に示されるように、粒度分布の測定の結果、パス回数を上げるごとに粒度の分布が小さい方(ナノレベル)にシフトしていることが確認された。1パスは平均粒径が4.1μm、比表面積2.1m/cm、5パスは平均粒径が3.0μm、比表面積2.6m/cm、10パスは平均粒径が3.0μm、比表面積3.2m/cm、20パスは平均粒径が2.4μm、比表面積3.7m/cmであった。また、10パス以上処理することにより、700ナノメートル付近において、第2のピークが現れることが確認された。尚、マイクロスコープ(200倍)による観察をした結果、明らかに微細化処理したものは、粒子が細かくなっていることが確認された(データ不添付)。
【0042】
<試験例2:アントシアニン含有組成物におけるアントシアニンの消化管からの吸収性についての評価>
まず、ビルベリーエキス末が1重量%となるように生理食塩水に添加することにより、吸収性試験用の試料を調製する。これら吸収性試験用の試料について吸収促進効果を調べるために、以下に記載するように、ラットの腸管反転嚢を用いてアントシアニンの吸収率(%)を測定した。
【0043】
Wistar系雄性ラット(体重約200〜250g)をエーテル麻酔し、ハサミで頚髄を切断した。正中線で開腹し、回腸の末端部を切断し、回腸末端断端部をつまみあげながら付着している腸間膜を切除し、小腸全体を摘出した。摘出した小腸を分割し、1本ずつステンレス棒に通し表面を洗浄し水分を除いた後反転させた。2回ほど生理食塩水を交換して洗浄後、棒から外し開いている方の断端から生理食塩水を注入し、木綿糸で断端を結紮しソーセージ様の反転嚢を作製した。
【0044】
次に、前記吸収性試験用の試料の入った50ml三角フラスコ内に反転嚢を挿入し、95%Oと5%COとの混合ガスを10分間バブリングさせた後、37℃で30分間インキュベーションした。その際には三角フラスコを適宜前後に振動させた。30分経過したところでフラスコ内の反転嚢を取り出し、表面についている水分を除去した後、反転嚢中の液体を採取しメタノールにて2倍希釈し、0.45μmのフィルターでろ過後、OD530nmの吸光度を測定した。
【0045】
(試験例2−1:分散剤の選択)
まず、吸収性試験用の試料に用いるためのアントシアニン含有組成物を調製した。表1に示される各種分散剤を用い、パス回数を3回とした以外、試験例1欄に記載の方法に従って微細化処理を行ない、アントシアニン含有組成物としての各凍結乾燥粉末を作製した。この粉末を上記のようにビルベリーエキス末濃度を1重量%になるように生理食塩水に配合し、各吸収性試験用の試料を調製し、反転腸管試験を行なった。尚、吸収性の評価は、比較対照(比較例1)として試験例1欄に記載のビルベリーエキス末30重量%水溶液からなるアントシアニン含有素材について、分散剤の添加及び微細化処理を施さずにそのまま凍結乾燥した粉末を用いて反転腸管試験を行なった時の吸光度を100%とし、各試料の吸光度を比較することにより行なった。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1に示されるように、実施例1〜5の分散剤としてレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを用いたアントシアニン含有組成物は吸収率が比較例1より増加していることが確認された。特に、実施例1のレシチンを分散剤として使用する場合は、吸収率が比較対照(比較例1)より大幅に増加していることが確認された。
【0048】
(試験例2−2:分散剤の配合量とパス回数の検討)
表2に示されるように分散剤としてレシチンをそれぞれ1重量%及び5重量%添加し、パス回数を2又は3回とした以外、試験例1欄に記載の方法に従って微細化処理を行ない、アントシアニン含有組成物としての各凍結乾燥粉末を作製した。この粉末を上記のようにビルベリーエキス末の濃度を1重量%となるように生理食塩水に配合し、各吸収性試験用の試料を調製し、反転腸管試験を行なった。尚、吸収性の評価は、比較対照(比較例2)として試験例1で用いた微細化処理前のビルベリーエキス末のみを使用した時の吸光度を100%とし、各試料の吸光度を比較することにより行なった。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

【0050】
表2に示されるように、レシチン濃度が1重量%で、パス回数3回の実施例6の条件が最も吸収率が比較対照(比較例2)より大幅に向上していることが確認された。また、粗抽出物の凍結乾燥物であるビルベリーエキス末に比べ、微細化処理を行なったもの、更には微細化処理に分散剤を加えたものが吸収率を高める作用があることが確認された。
【0051】
(試験例2−3:油類添加の影響)
パス回数を3回とした以外、試験例1欄に記載の方法に従って微細化処理を行ない、アントシアニン含有組成物としての各凍結乾燥粉末を作製した。この粉末をビルベリーエキス末がそれぞれ1重量%となるように生理食塩水に配合し、さらに下記表3に示される各種油を0.5重量%となるように配合して各試料を調製し、反転腸管試験を行なった。尚、吸収性の評価は、油類を含有せず、微細化ビルベリーエキス末(1%レシチン含有組成物(3パス))を使用した時の吸光度(参考例1)を100%とした時の、各試料の吸光度を比較することによって行なった。結果を表3に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
表3に示されるように、アントシアニン含有組成物中に、DHA、サフラワー油及び亜麻仁油を配合した参考例2、3、6は吸収率が良好であったことが確認された。特に、サフラワー油及び亜麻仁油を配合した参考例3、6は吸収率が特に優れることが確認された。
【0054】
<試験例3:血中へのアントシアニン吸収効果の比較>
比較対照(比較例3)の試料として微細化処理前のビルベリーエキス末を使用し、実施例9の試料として微細化ビルベリーエキス末(1%レシチン含有組成物(3パス))を、それぞれビルベリー含量2000mg/kg(0.1%クエン酸水溶液)となるように調製した。これら試料についてのインビボ(in vivo)における吸収促進効果を以下のようにして調べた。
【0055】
絶食したWistar系雄性ラット(6週齢、体重約200g)14匹を2群に分け、各群のラットに前記各試料を2000mg/kgずつ経口投与した。エーテル麻酔下、頚静脈から投与後15、30、60、90、120及び240分経過したところで、450μl採血(ヘパリン処理)した。採血した血液を6000G、15分、4℃で遠心分離し、血漿を除タンパク後、濃縮し移動相にて溶解させHPLC用サンプルを作製した。各血漿中のアントシアニンに相当するピーク全体の面積を測定し、この面積を血漿中のビルベリー濃度とした。
【0056】
一方、比較対照のビルベリーエキス末のHPLC用溶液を作製し、この溶液を上記と同様に分析し、アントシアニンに相当するピーク全体の面積を測定し、検量線を作成した。ラットに経口投与した際の、血漿中アントシアニン濃度を算出し、0〜240分までの血中濃度−時間曲線下面積AUC0-240min(min・μg/ml)を算出した。その結果を表4及び図5に示す。
【0057】
【表4】

【0058】
図5に示されるように、比較対照(比較例3)のビルベリーエキス末は、投与後60分で最高血中濃度に達し、その後徐々に消失することが示された。これに対して、実施例9の微細化処理ビルベリーエキス末(1%レシチン含有組成物(3パス))の投与群では、投与直後から比較対照(比較例3)よりも高い血中濃度を示し、投与後60分では非常に高い血中濃度を示し、その後徐々に減少していくことが示された。また、表4に示されるように、AUC0-240minの比較では、比較対照に比べて実施例9は約2倍の高い吸収効果があることが示された。
【0059】
<試験例4、ミツロウの削減化の検討>
ミツロウはソフトカプセルの粘度及び安定性を調整する基材として使用されているが、吸収性を阻害するという報告もある。そこでミツロウの配合量を軽減できるかソフトカプセルの薬液を調合した時の粘度及び簡易遠心分離テストを行ない検討した。ミツロウの配合量をそれぞれ約5%とした。結果を表5に示す。尚、評価は、目視により○:分離・沈殿なし、△:若干の分離・沈殿あり、×:分離・沈殿ありとして判断した。
【0060】
【表5】

【0061】
表5のように、微細化することにより粘度及び安定性は高まり、分散剤を加えることにより、更に粘度及び安定性を高めることができることが確認された(比較例4,5及び実施例10)。遠心分離テストにおいて、高い回転数においては、完全にミツロウ無しでは分離及び沈殿が起こってしまうものの、ミツロウの量を削減できる可能性が示された(実施例10)。このことは、内容量に制限があるソフトカプセル中のミツロウを削減し、その分、ビルベリーエキスを多く配合できることを示唆する。それにより、同時に吸収性の阻害を緩和することが可能である。
【0062】
<試験例5、アントシアニン含有組成物の安定性の検討>
アントシアニン含有組成物について安定性試験を行なった。試料として、微細化処理前のビルベリーエキス末(比較例6)、微細化ビルベリーエキス末(レシチン未添加、3パス)(比較例7)、微細化ビルベリーエキス末(1%レシチン含有組成物、3パス)(実施例11)、ビルベリーエキス末(1%レシチン添加物)(比較例8)を使用した。各試料150mgを密閉容器に入れ、化粧箱に入れて下記条件下で保管した。
【0063】
保存条件として冷蔵(4℃)、室温(25℃)、40℃・75%RH、保存期間としてそれぞれ4週間、8週間で行なった。
(評価項目1:外観・色調)
目視で状態の変化を観察した。その結果、いずれの条件でも色調に変化はなかった。また、微細化処理の有無及び分散剤の有無による差異は認められなかった。
【0064】
(評価項目2:アントシアニン類の定量分析)
財団法人日本健康・栄養食品協会のビルベリーエキス食品規格基準に準じた方法(HPLC法)で試験を行った。但し、定量値は製造直後を100%とし、アントシアニン類(15種類)のピークの総面積から算出した。その結果、各条件下においてアントシアニン類の定量値にほとんど変化は認められず、アントシアニン類は安定であることを確認した。また、微細化処理の有無及び分散剤の有無による差異は認められなかった。
【0065】
(評価項目3:アントシアニジン類の定量分析)
財団法人日本健康・栄養食品協会のビルベリーエキス食品規格基準に準じた方法(吸光度法:塩酸酸性下で加熱還流し糖をはずし測定)で試験を行った。但し、定量値は製造直後を100%とし、アントシアニジンの一種のデルフィニジンの比吸光度から算出した。その結果、各条件下においてアントシアニジン類の定量値にほとんど変化は認められなかった。また、微細化処理の有無及び分散剤の有無による差異は認められなかった。
【0066】
以上により、微細化処理によるビルベリーエキス末は安定性に問題がないことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】微細化処理において1パス処理を行なったアントシアニン含有組成物の粒径分布。
【図2】微細化処理において5パス処理を行なったアントシアニン含有組成物の粒径分布。
【図3】微細化処理において10パス処理を行なったアントシアニン含有組成物の粒径分布。
【図4】微細化処理において20パス処理を行なったアントシアニン含有組成物の粒径分布。
【図5】アントシアニン含有組成物において、アントシアニンの血中濃度の経時変化を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細化されたアントシアニン含有素材及び分散剤を含有するアントシアニン含有組成物において、
前記分散剤は、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、及びポリグリセリン脂肪酸エステルから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とするアントシアニン含有組成物。
【請求項2】
前記微細化されたアントシアニン含有素材は、高圧ホモジェナイザーにより高圧均質化処理が施され、少なくとも一部がナノ化されていることを特徴とする請求項1に記載のアントシアニン含有組成物。
【請求項3】
前記アントシアニン含有素材は、ブルーベリー、クランベリー、コケモモ、リンゴンベリー、ハックルベリー、ラズベリー、ブラックベリー、ローガンベリー、サーモンベリー、ボイセンベリー、イチゴ、クワ、エルダベリー、ハスカップ、ニワトコ、ハイビスカス、スグリ、クズベリー、アサイー、プルーン、サクランボ、リンゴ、マンゴー、シソ、有色イモ、赤キャベツ、赤ダイコン、ブドウ、紫トウモロコシ、紫タマネギ、ナス、有色米、黒豆、黒ゴマ、及び椿から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアントシアニン含有組成物。
【請求項4】
前記アントシアニン含有素材は、ビルベリーであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアントシアニン含有組成物。
【請求項5】
さらに、ドコサヘキサエン酸、サフラワー油、及び亜麻仁油から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアントシアニン含有組成物。
【請求項6】
さらに、粘度調整基材としてのミツロウとともにソフトカプセルに内包されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のアントシアニン含有組成物。
【請求項7】
微細化されたアントシアニン含有素材及び分散剤を配合することにより得られるアントシアニン含有組成物の製造方法において、
前記微細化されたアントシアニン含有素材は、原料であるアントシアニン含有素材を高圧ホモジェナイザーにより高圧均質化処理を施し、少なくとも一部をナノ化することによって得られることを特徴とするアントシアニン含有組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−46438(P2009−46438A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215087(P2007−215087)
【出願日】平成19年8月21日(2007.8.21)
【出願人】(591045471)アピ株式会社 (59)
【出願人】(501178813)株式会社 わかさ生活 (3)
【Fターム(参考)】