説明

アントラサイクリン産生における生体内変換のための遺伝子組み換え菌株

アントラサイクリン代謝産物を非天然アントラサイクリン抗生物質へと転化する微生物菌株。微生物菌株を使用してアントラサイクリン代謝産物をアントラサイクリン抗生物質へと転化するためのプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された微生物菌株、ならびにアントラサイクリン抗腫瘍性抗生物質、特にエピルビシンおよびイダルビシンの収率を改善するための、生体内変換プロセスにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ダウノマイシン類は、S.peucetius、S.coerulorubidus、S.griseus、Streptomyces sp.C5、S.peucetius var.caesius、およびS.bifurcusなどのいつかのStreptomyces.spによって産生される一群の抗腫瘍性抗生物質である。この群の基本化合物はダウノマイシンである(DiMarcoら、1964、非特許文献1)。ダウノマイシン類は、一般式Iによって記述することができる。
【化1】

その最も重要な誘導体は表1に示される。
【0003】
【表1】

【0004】
ダウノルビシン、エピルビシンおよびイダルビシンの半合成誘導体は、非天然アントラサイクリン抗生物質として分類することができるであろう。なぜなら天然に存在する菌株はこれらのアントラサイクリンを産生しないからである。エピルビシンは、多くの種類の癌に対して臨床的に使用される。エピルビシンがドキソルビシンと競合するにつれて、市場は成長している。他の抗癌剤との新しい処方物、接合体および新しい合剤もエピルビシンの使用法を拡げる。エピルビシンは、例えば特許文献1に開示されるように、発酵によりダウノルビシンを生産し、そしてアグリコンおよび糖部分を合成的に修飾することを含むプロセスによって製造される。
【0005】
イダルビシン(4−デメトキシ−ダウノルビシン)は、白血病、リンパ腫、および骨髄の他の疾患を含めた特定種の癌を治療するために使用される。これは、ドキソルビシンよりも副作用を引き起こさないと主張されている。しかしながら、イダルビシンについての全世界での年間市場は20kg以下である。恐らくこれはその極めて高い価格に原因があり、この高い価格は非常に複雑な製造プロセスに起因する。イダルビシノンは、ダウノルビシンの発酵およびその後の酸による加水分解から得られるダウノマイシノンから出発して製造される。ダウノルビシノンは、イダルビシノンへとさらに合成的に修飾される。糖残基、ダウノサミン、は、例えば特許文献2に記載されるように、一連の複雑な合成反応により結合される。
【0006】
ダウノルビシンおよびエピダウノルビシンなどの重要なアントラサイクリンの発酵産生において、中間体は発酵ブロスの中に蓄積する。両方の場合の典型的な中間体は、ε−ロドマイシノンである(Strohlら、1989、非特許文献2)。しかしながら、エピダウノルビシンは、遺伝子組み換え菌株を使用することにより発酵によって産生されうるので、13−ジヒドロ−エピダウノルビシン(13−DHEDと呼ばれる)がその発酵ブロスの中に同時に蓄積される。典型的には、これらの代謝産物は廃棄物と考えられる。特許文献3は、ダウノルビシンを生産するためのε−ロドマイシノンの使用を開示し、Dickensら(1997)(非特許文献3)は13−ジヒドロ−アントラサイクリン類をその13−ケト体へと酸化することを記載している。非天然のアントラサイクリン類についてのプロセスにおける生体内変換を記載する刊行物は存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,874,550号明細書
【特許文献2】米国特許第4,325,946号明細書
【特許文献3】米国特許第5,652,125号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Di Marco A、Silvestrini R、Gaetani M、Soldati M、Orezzi P、Dasdia T、Scarpinato BM、Valentini L、「’daunomycin’, a new antibiotic of the rhodomycin group」、Nature、1964年、第15巻、706−707頁
【非特許文献2】Strohl W.R、Bartel P、Connors NC、Zhu C、Dosch D、Beale JM、Floss HG、Stuzman−Engwall K、Otten SLおよびHutchinson CR、「Biosynthesis of natural and hybrid polyketides by anthracycline−producing streptomycetes.」、C.L.Hershberger、SW QueenerおよびG Hegeman(編集) Genetics and molecular biology of industrial micro−organisms. American Society for Microbiology、Washington,D.C.、1989年、68−84頁
【非特許文献3】Dickens M、Priestley NおよびStrohl W、「In vivo and in vitro bioconversion of ε−rhodomycinone glycoside to doxorubicin:Function of DauP, DauK, and DoxA」、J.Bacteriol.、1997年、第179巻、2641−2650頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
出願人らは、ダウノマイシンおよびエピダウノルビシンの発酵産生で得られる副生成物の利用によってより低いコストでより高い収率の商業的に重要な非天然のアントラサイクリン類、エピルビシンおよびイダルビシンを得るための新しいプロセスを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、エピダウノルビシン、13−ジヒドロエピダウノルビシン、4’−エピフォイドマイシン(epi−feudomycin)およびε−ロドマイシノンなどのアントラサイクリン代謝産物をエピルビシンおよびイダルビシンなどの非天然アントラサイクリン抗生物質へと転化する微生物菌株に関する。好ましくはこのような菌株は、Streptomyces属から、より好ましくはStreptomyces peucetius種から、最も好ましくはStreptomyces peucetius var.caesius亜種から選択される。本発明の好ましい実施形態では、当該菌株は、Streptomyces nogalater種から単離された異種耐性遺伝子snorOを含む。
【0011】
本発明はまた、本発明に係る微生物菌株を使用する、13−ジヒドロエピダウノルビシン、およびε−ロドマイシノンなどのアントラサイクリン代謝産物をエピルビシンおよびイダルビシンなどの非天然アントラサイクリン抗生物質へと転化するためのプロセスに関する。本発明に係る好ましい実施形態では、当該プロセスでは、好ましくはイオン性吸着剤および非イオン性吸着剤からなる群から、より好ましくはポリスチレンから、最も好ましくはXAD−7およびDiaion HP−20からなる群から選択される樹脂が、アントラサイクリン代謝産物またはアントラサイクリン抗生物質を吸着するためにいつでも使用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】アントラサイクリン類のダウノマイシン種についての生合成経路の概略図である。
【図1b】アントラサイクリン類のダウノマイシン種についての生合成経路の概略図である。
【図2】本発明に係るエピルビシンおよびイダルビシンの生産のためのプロセスの概略図である。
【図3】4−デオキシ−ε−ロドマイシノンを供給した後の本発明に係る生体内変換菌株の生産プロファイルを示すクロマトグラムである。Rt=6.0:13−ジヒドロ−イダルビシン、Rt=6.9:イダルビシン、Rt=8.1:13−デオキシ−イダルビシン、Rt=11.0:4−デオキシ−ε−ロドマイシノン。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、修飾されたアントラサイクリン中間体を重要な抗腫瘍性アントラサイクリン薬物、イダルビシンおよびエピルビシンへと転化することができる改善されたStreptomyces菌株に関する。この菌株は、アントラサイクリン代謝産物を最終生成物へと転化するためのプロセスにおいて有用である。
【0014】
従って、高い率で4−デオキシ−ε−ロドマイシノンをイダルビシンへと安定に転化することができるように操作された、改善されたStreptomyces菌株を提供することが本発明の目的である。ダウノルビシンを産生するようにブロックされたこのような菌株は、実施例1に記載されるように、菌株G001(DSM 12245)から誘導された(菌株G001は野生型S.peucetius var.caesius ATCC 27952の変異化によって誘導された)。菌株G001から誘導されたこの改善された変異菌株は、4−デオキシ−ε−ロドマイシノンをイダルビシンへと転化することができるが、反復性は乏しい。転化を改善するために、耐性遺伝子がこの菌株へと導入された。
【0015】
遺伝子snorOは、S.nogalater(ATCC 27952)から単離されたものであり、ノガラマイシンに対する耐性に関与することが示唆されている(Torkkell 2001)。配列解析に基づいて、遺伝子産物、SnorOは、耐性のための多機能な遺伝子産物であり、除去修復タンパク質UvrA、およびABCトランスポーターATP結合タンパク質のためのドメインを有する。S.lividans TK24におけるsnorOの異種発現は、この遺伝子はすべての試験された様々なアントラサイクリン、ノガラマイシン、アクラルビシンおよびダウノルビシンから当該菌株を保護するということを示した。遺伝子snorOを、G001由来の改善された菌株に導入すると、イダルビシンに対する増加した耐性を呈する新しい生体内変換菌株がもたらされた。驚くべきことに、snorOは、E.coliベクターの中でG001由来の改善された菌株に導入されたとき、転化率を改善し、かつこの菌株を安定化して6回連続の培養においてさえも±10%の範囲内で転化を維持した。
【0016】
当該新しい生体内変換菌株は、アクラビノンおよびε−ロドマイシノンなどの天然のアントラサイクリン中間体を供給されでもよく、そして天然のアントラサイクリン、ダウノマイシンが形成される。
【0017】
驚くべきことに、当該菌株は、非天然の代謝産物の転化を実施することができ、非天然の4−デオキシ−ε−ロドマイシノンを供給するとイダルビシンの形成をもたらした。加えて、当該菌株は13−DHEDをエピダウノルビシンへと転化することができる。ε−ロドマイシノンの、4−デオキシ−ε−ロドマイシノンへの合成的転化がもたらされる。本発明によれば、4−デオキシ−ε−ロドマイシノンは、その後、ダウノマイシン代謝産物を産生しない上記の新しい生体内変換菌株によってイダルビシンへと生体内変換される。13−DHEDはさらに、同じ変異菌株を使用する生体内変換によってエピダウノルビシンへと転化された。
【0018】
本発明における使用に適した生体内変換菌株の重要な態様は以下のとおりである:
i)天然および非天然の基質が転化のために受け容れられている;
ii)当該菌株は、天然および非天然のアントラサイクリンに対して増加した耐性を有する;
iii)当該菌株は、転化のために必要とされる必須の機能を成し遂げる、ならびに
iv)当該菌株は検出可能な量の天然のダウノマイシンを蓄積しない。
【0019】
いずれの適切な菌株も、4−デオキシ−半合成中間体のイダルビシンへの生体内変換のために使用することができる。それにもかかわらず、当該菌株は、以下の反応のための内在性のまたは伝達された発現可能な遺伝子のいずれかを有することが非常に重要である:ダウノサミンを形成するためのグルコースの修飾、メチル基を除去するための10−エステル分解酵素活性とこれに関連する10−脱炭酸酵素活性、13−オキシゲナーゼおよび適切な糖転移酵素活性。さらには、生体内変換後の下流プロセスは、生体内変換において宿主として使用された菌株によって天然のアントラサイクリン代謝産物はまったく蓄積されないかまたは少量しか蓄積されない場合にのみ、費用効率が高い。
【0020】
ダウノマイシン生合成の初期段階でブロックされたS.peucetius var.caesius変異体;好ましくは最小PKS(minimal PKS)(最小ポリケタイド合成酵素(minimal PolyKetideSynthase)はアントラサイクリンおよび他のII型ポリケチド経路における最初の反応、ポリケチド構造体(polyketide assembly)を触媒する)でブロックされた変異体を使用することが有利である。
【0021】
上記のとおり野生型Streptomyces peucetius var.caesius ATCC 27952から誘導される新しい生体内変換菌株が非常に好ましい菌株であるが、以下の特徴を共有するいずれの菌株も本発明に係る転化プロセスに適している。
【0022】
1. ダウノマイシンに向かう初期の経路でブロックされる。対応する遺伝子の相補実験に基づいた最小PKSのdpsG遺伝子の破壊(データは示さず)。
2. 検出可能な量のダウノマイシンを生成しないが、固形培地上に酸性の黄色の物質を蓄積する。当該化合物の構造は知られていないが、これはアントラサイクリンのメンバーではない。
3. ISP4+tsr−およびISP2+tsr−プレート上で、生体内変換菌株は、通常、胞子形成せず、無色の気菌糸を形成する。
4. snorO機能の結果としていくつかの異なるアントラサイクリンに対する耐性を発現する。
5. 4−デオキシ−ε−ロドマイシノンを2つの主生成物:イダルビシンおよび13−ジヒドロイダルビシンに転化する。いくつかの他のイダルビシン代謝産物は、少量見出される。
【0023】
本発明はさらに、短絡生成物(shunt product)、つまりダウノルビシンおよびエピダウノルビシンの発酵産生において形成されるε−ロドマイシノン、およびエピダウノルビシンの発酵産生において形成される13−DHEDを活用することによる、非天然のアントラサイクリン抗生物質、エピルビシンおよびイダルビシンの産生のためのプロセスに関する。
【0024】
従って、本発明に係る改善された細菌性宿主菌株を使用する生体内変換によって商業的に有用なアントラサイクリン抗生物質を調製するためのプロセスを提供することがさらなる本発明の目的である。好ましくは、このような宿主菌株は、Streptomyces属から誘導された、好ましくはS.peucetius var.caesiusから誘導された上記の新しい生体内変換菌株である。
【0025】
当該技術分野で、イダルビシノンは例えば米国特許第7,053,191号明細書に記載されるような複雑な一連の化学合成によりイダルビシンへと転化できるということが知られている。本発明に係るプロセスでは、4−デオキシ−ε−ロドマイシノンをイダルビシンへと転化するための微生物菌種の内因性の一連の生合成反応が使用されることが好ましい。生合成は図1に示される順序で進行するということが知られている。いくつかのアントラサイクリンについての典型的な前駆体であるアクラビノンは11位でヒドロキシル化されてε−ロドマイシノンを形成し、このε−ロドマイシノンはグリコシル化される。ロドサミンなどの他の糖残基が受け容れられた基質であるとしても、10位での修飾がグリコシル化体について必要である。10−位での修飾後、13位での酸素化が起こり、ダウノルビシン生合成の最終工程はC−4でのO−メチル化である。驚くべきことに、前述の10位および13位の修飾ならびにグリコシル化は、4−デオキシ体にもかかわらず成功裏であった。4−デオキシアクラビノンおよび4−デオキシ−ε−ロドマイシノンはともに、適切な生体内変換菌株を使用してイダルビシンへと転化される。しかしながら、これらの修飾のための遺伝子産物は、C−10での置換基がCOOCH基である基質を必要とする。
【0026】
ダウノマイシン代謝産物の発酵プロセスの短絡生成物として得られるε−ロドマイシノンは、合成化学によって4−デオキシ−ε−ロドマイシノンへと処理される。ε−ロドマイシノンの4位からヒドロキシル基を除去するための種々の合成経路が可能である。しかしながら、出願人らは、ケタール化によるC7およびC9−ヒドロキシル基の保護によって出発することにより、4つの一連の反応を実施することが好ましいと考える。その後、C4のOH基のトリフラート化(trifylation)が行われ、次いでC4での置換基を除去するために還元される。各工程の後、生成物は、沈殿/結晶化によって単離または精製され、>20%、好ましくは>30%、最も好ましくは>40%の全収率が得られる。このプロセスで得られる4−デオキシ−ε−ロドマイシノンの純度は>60%であり、好ましくは>80%、最も好ましくは>90%が生体内変換のための適切な基質である。
【0027】
ε−ロドマイシノンは、典型的には発酵ブロスの中に大量に蓄積され、従来の方法による精製がうまく進行する。ε−ロドマイシノンの合成による転化は、>20%、好ましくは>30%、最も好ましくは>40%の純粋な4−デオキシ−ε−ロドマイシノンを与え、この純粋な4−デオキシ−ε−ロドマイシノンはS.peucetius var.caesiusの非生産性の変異菌株に供給される。4−デオキシ−ε−ロドマイシノンのイダルビシンへの生体内変換の効率は、>20%、好ましくは>30%、最も好ましくは>40%であった。100mgより多い半合成中間体を、当該生体内変換菌株の培養物1リットルに供給することができた。この中間体を供給する時期は重要ではない。ストレプトマイセス(streptomycetes)の増殖および二次代謝を許容するいずれの発酵条件も使用することができようが、6〜8のpHでE1培地および25〜35℃の温度範囲を使用することが有利である。
【0028】
当該培養物からのイダルビシンの回収は、遠心分離、濾過などのいずれかの適切な方法を用いて、または適切なイオン性もしくは非イオン性の吸着剤によって実施することができる。イダルビシンの挿入のために、いずれの水溶性の有機溶媒を使用することもできようが、酸性のアルコールが好ましい。アグリコンは、酸性での抽出により除去され、その後、グリコシドは高pHで水相からクロロホルム相へと逆抽出される。最後の抽出液のエバポレーション後の当該化合物のプロファイルに依存して、イダルビシンは、最後に結晶化によって、好ましくはクロマトグラフィおよび結晶化によって精製される。精製のためにシリカカラムを使用することが有利である。
【0029】
(13−DHEDのエピダウノルビシンへの転化)
13−ジヒドロ−アントラサイクリンが13−ケト体と一緒に発酵ブロスに蓄積することは周知である。しかしながら、13−DHEDは、商業的に有用ではなく、その細胞毒性のため、毒性の廃棄物として扱われることになる。驚いたことに、この代謝産物は、天然の代謝産物ではないとしても、生体内変換菌株によって、有用な率、例えば>20%、好ましくは>30%、最も好ましくは>40%でエピダウノルビシンに転化された。
【0030】
エピダウノルビシン発酵における副生成物である13−DHEDは、エピダウノルビシンの分離と並行に、クロマトグラフィおよびそれに続く結晶化によってグリコシド画分から容易に分離される。13−DHEDは、ダウノマイシン合成についての能力を有するStreptomyces菌株の培地に、とりわけ後期の工程で加えられた樹脂に吸着されうる。いずれの菌株も適切であるとはいえ、初期の生合成経路ではブロックされ、ダウノマイシン代謝産物を蓄積することができない菌株を使用することが有利である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、Streptomyces属から誘導された、好ましくはS.peucetius var.caesiusから誘導された新しい生体内変換菌株は、13−DHEDをエピダウノルビシンに転化するための生体内変換に対して使用される。本発明に係るエピダウノマイシンの産生について記載される条件における転化率は、>20%、好ましくは>30%、最も好ましくは>40%である。このようにして得られるエピダウノルビシンは、アントラサイクリン回収のために使用されるいずれの従来の方法によって、当該樹脂に結合された他の代謝産物から精製されてもよいが、合成のために十分に精製されたエピダウノルビシンを提供するためにクロマトグラフィ、とりわけ逆相クロマトグラフィが使用されることが好ましい。
【0032】
(エピダウノルビシンのエピルビシンへの転化)
粗製エピダウノルビシン(純度>60%、好ましくは>80%、最も好ましくは>90%)は、しばしば使用される抗癌剤であるエピルビシンを得るための合成化学のための出発物質として使用される。いずれの一連の合成反応または生体触媒反応も、14−ヒドロキシル化のために使用してよい。
【0033】
エピダウノルビシンをその14−ヒドロキシル化体であるエピルビシンへと転化するためのいくつかの可能性がある。内在性の遺伝子産物のみ、つまり14−ヒドロキシラーゼ、では、当該培養条件では、少量のエピルビシンしか培地中に見いだされないとしても、形成されたすべてのエピダウノルビシンをエピルビシンへと転化するほどに十分には活性ではない。出願人らの実験によれば(データは示さず)、14−ヒドロキシラーゼについての遺伝子のはるかに高いコピーでも、エピルビシンの産生のためのプロセスを完結することができなかった。それにもかかわらず、2つの米国特許明細書、米国特許第5,955,319号明細書および米国特許第6,210,930号明細書は、doxAの遺伝子産物による低レベルでの、ダウノルビシンのドキソルビシンへの転化を開示する。明らかに、この生体内変換は条件に大きく依存し、出願人らはこのプロセスを反復することに成功していない。
【0034】
ダウノルビシンからのドキソルビシンの合成と同様に、無修飾のエピダウノルビシンのC−14にヒドロキシル基を付加するための種々の可能性がある。
【0035】
エピルビシンの精製は、合成混合物からのエピルビシンの抽出後のクロマトグラフィによりおよび/または結晶化により実施される。しかしながら、医薬品有効成分にとって要求される品質を達成するために、エピルビシンを>97%純度で与えるためのクロマトグラフィによる分離が必須である。
【0036】
本発明のより詳細な説明は、下記の実施例で与えられる。
【0037】
技術が進歩するにつれて本発明の技術思想は種々の方法で実行されうるということは、当業者にとっては明らかであろう。本発明およびその実施形態は、下記の実施例に限定されず、特許請求の範囲の範囲内で変わりうる。
【0038】
図1aは、ダウノルビシンについての生合成経路を開示する。バウマイシンは、ダウノルビシンから形成される。この生合成経路は、ダウノルビシンの後、(i)ドキソルビシンへ、および(ii)バウマイシンへと分岐する。これらの工程はこの図には示されていない。
【0039】
図1bは、図1aのC−7−グリコシル化のために使用されるdTDP−ダウノサミンについての生合成経路を開示する。
【0040】
図2は、生体内変換プロセスについてのスキームを開示する。
【0041】
図3は、4−デオキシ−ε−ロドマイシノンを供給した後の生体内変換菌株の産生プロファイルを示すクロマトグラムを開示する。
【実施例】
【0042】
(実施例1:生体内変換菌株の構築)
変異化のために、変異化によって野生型S.peucetius var.caesius ATCC 27952から誘導された菌株G001を250mlの三角フラスコの中の50mlのTSB培地の中で培養した。変異生成のためのすべてのフラスコは、培養中に菌糸体を分散させるために、フラスコの底にストリング(string)を具えていた。培養は、振盪機の中で30℃、330rpmで2日間実施した。この培養物1mLを、50mlのTSBを含む次の瓶にさらに接種し、培養を1日続けた(30℃、330rpm)。NaOHを用いてこのより幼若な培養物をアルカリ性のpHにし、NTGを加えてこの細胞に>30℃で20分間作用させた。この菌株の変異化した培養物を2つのチューブに分割し、遠心分離(300rpm、10分間)によってペレット化した。合わせたペレットを使用して、50mLのTSB培地に接種した。1日後(30℃、330rpm)、この細胞懸濁液の力価は、適切な希釈物、例えば1:10〜1:100000をISP4−プレート上にプレーティングすることにより決定した。変異化した培養物のコロニーを野生型と比較し、当該野生型と明確に異なる特徴を呈するコロニーをさらなる特性解析のために選択した。
【0043】
変異体は、ISP4−寒天プレート上で暗赤色に着色された野生型から、薄い色に基づいて選択した。
【0044】
遺伝子snorO(Torkkell、2001)を、大腸菌ベクター、pCNB3033を用いてこの変異体へと導入した。組み込みがattP部位により起こっていることが示唆された。得られた改善された生体内変換菌株は、実施例5で詳細に記載するように、>20%、好ましくは>30%、最も好ましくは>40という、供給された4−デオキシ−ε−ロドマイシノンのイダルビシン代謝産物への反復した転化率を与えた。
【0045】
(実施例2:アントラサイクリン代謝産物の産生のためおよび生体内変換のための生体内変換菌株の培養)
実施例1に記載したようにして選択した適切な変異体を、吸着剤樹脂(15g/l)を補った50mLのE1培地の中で培養した。(E1:水道水1リットルあたり:グルコース20g;可溶性デンプン20g;ペプチド5g;酵母エキス2.5g;KHPO・3HO 1.3g;MgSO・7HO 1g;NaCl 3g;CaCO 3g;pH7〜7.5)。
【0046】
アントラサイクリン代謝産物を測定するために、インキュベーションの10日目に当該化合物を抽出した。分析のために、水を用いて1つの培養フラスコから吸着剤樹脂をデカンテーションし、洗浄した樹脂を、少なくとも30分間振盪しながら40mLの酸性アルコールで抽出した。この試料を分析するためにHPLCを使用した。E1培地の中での吸着剤樹脂の使用は、当該条件におけるアントラサイクリン代謝産物の産生を増加させることが知られている。
【0047】
この吸着剤の存在下で、培養の最後で、コロニーの形態の変化は見出されなかった。
【0048】
アントラサイクリン代謝産物の産生は、当該変異菌株の培地の中では検出されなかった。
【0049】
しかしながら、変異菌株は、図1の生合成経路に従うアグリコンのグリコシル化および修飾のための機能的生合成遺伝子を有し、これは食餌実験によって実証されたとおりである。天然のアグリコン、ε−ロドマイシノンおよびアクラビノンを当該変異菌株に供給すると(培地1リットルあたり少なくとも100mgのアグリコン)、供給したアグリコンは2日でダウノマイシン代謝産物へと転化された。しかしながら、この変異菌株に4−デオキシ−ε−ロドマイシノンを供給しても、イダルビシン代謝産物への反復的な転化を与えなかった。この不能の理由は、供給された産物または形成された産物に対する耐性が乏しいことによって引き起こされると示唆された。
【0050】
この改善された生体内変換菌株は、予想したとおり、天然のアグリコン、ε−ロドマイシノンおよびアクラビノンを転化することができた。この菌株はまた、下記の実施例4に記載したように、非天然の類似の生合成中間体、4−デオキシ−ε−ロドマイシノンおよび13−DHEDをイダルビシンに、およびエピダウノルビシンに転化した。
【0051】
(実施例3:ε−ロドマイシノンの4−デオキシ−ε−ロドマイシノンへの合成による転化)
>60%、好ましくは>80%、最も好ましくは>90%のクロマトグラフィによる純度の精製されたε−ロドマイシノンを、4−デオキシ−ε−ロドマイシノンの合成のために使用した。4−デオキシ−ε−ロドマイシノンの合成は、4工程からなる:A)保護、B)トリフラート化、C)還元およびD)脱保護。
【0052】
各工程後、生成物は、クロロホルム−メタノール混合物から沈殿/結晶化によって単離した。合成反応は、TLCでモニターした。
【0053】
A)保護
ε−ロドマイシノンを室温でクロロホルムに溶解した。2当量の2−メトキシプロペンを混合物に加え、次いで1当量のTMSClを加えた。反応をTLCによって追跡した。TLCプレート上で検出してこの反応が完結したとき、この混合物を冷却し、沈殿物を集め、次の工程のために乾燥した。
【0054】
B)トリフラート化
保護工程から得た出発物質をクロロホルムに溶解した。NMP(N−メチルピロリドン)およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を加え、最後にPhNTf2を加えた。反応は、TLCを用いてモニターした。水およびクエン酸を混合物に加えることによりこの化合物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、KHSOで洗浄した。結晶を濾過し、真空下で乾燥した。
【0055】
C)還元
トリフラート化から得た物質を、アルゴン下でCANに懸濁させた。(Ph3P)4Phを加え、次いで(エチル)NおよびHCOOHを加えた。反応混合物を加熱し、反応をTLCによって追跡した。1時間後、反応は完結した。反応混合物を冷却し、生成物を濾別した。
【0056】
D)脱保護
還元から得た生成物をクロロホルムに溶解し、1当量のTsOH×HOを室温で加えた。反応は0.5時間以内に進行した。溶液を1M NaHCOで洗浄し、MgSOで乾燥し、乾固するまでエバポレーションした。
【0057】
4−デオキシ−ε−ロドマイシノンの精製
脱保護反応混合物(CHCl/TsOH×HO)をクロロホルムで希釈し、1M NaHCOで洗浄した。このクロロホルム画分を無水MgSO4で乾燥し、濾過し乾固するまでエバポレーションした。結晶化を、クロロホルム−メタノールから行った。結晶を濾過し真空下で乾燥した。
【0058】
(実施例4:Streptomyces peucetius var.caesiusから誘導されたエピダウノルビシンを産生する変異菌株の培地からの13−DHEDの回収)
エピダウノルビシンの生産のための発酵ブロスは、以下の順に3つの主要な代謝産物を含有する:エピダウノルビシン、13−DHEDおよびエピフォイドマイシン(epi−feudomycin)(epi−特許出願を参照)。樹脂に吸着された置換基を、発酵から得た20リットルの培地からデカンテーションした。この樹脂を水によって洗浄して細胞片を除去した。ペレットを、1〜5回アルコールで抽出した。合わせたアルコール抽出液にクロロホルムを加えることにより、アグリコンをクロロホルムで抽出した。溶媒層および水層を分離した。わずかにアルカリ性のpHで水相のグリコシドをクロロホルムへと抽出し、飽和NaHCOでpHを安定させた。水で洗浄することにより塩を除去した。最後に、このクロロホルム相をカートリッジフィルターに通して濾過した。
【0059】
この代謝産物を分離するために、シリカゲルクロマトグラフィを実施した。濾過したクロロホルムをシリカカラムの中へとポンプ輸送し、クロロホルム−メタノール溶液を移動相として使用してクロマトグラフィによって精製した。各3つの代謝産物の純粋な画分を集め、各生成物の画分を結晶化のためにプールした。13−DHEDの画分を、エタノール−水の溶液によって結晶化した。結晶を濾過し、吸着剤樹脂に吸着させた。
【0060】
(実施例5:4−デオキシ−ε−ロドマイシノンおよび関連する代謝産物の、イダルビシンへの生合成的転化)
400mLのE1培地が入った2つのフラスコの中で3日間生体内変換菌株を培養することにより種培養を行った。この培養物を合わせ、この培地800mLを使用して、XAD−7を補った20リットルのE1培地に接種した。10リットル/分で空気混和をしながら、30℃の温度、350rpmで、20リットルの体積の中で8日間発酵を行った。pHはわずかに酸性に保たれる必要がある。このわずかに酸性のpHにより、供給された4−デオキシ−ε−ロドマイシノンのイダルビシンへのより安定な転化が確実になる。4−デオキシ−ε−ロドマイシノンは、EtOH中の少なくとも5mg/mlの4−デオキシ−ε−ロドマイシノンでの接種の24時間後に始めて、4日間連続的に供給される。供給された4−デオキシ−ε−ロドマイシノンの量は少なくとも100mg/lである。
【0061】
変異菌株による生体内変換の間、供給された4−デオキシ−ε−ロドマイシノンから2つの主要な二次代謝産物が生成した;つまりイダルビシンおよび13−ジヒドロ−イダルビシン。他の少量の代謝産物は、イダルビシノン、13−ジヒドロイダルビシノン、バウマイシンならびに13−デオキシ−イダルビシンおよびそのアグリコンであった。イダルビシンの安定な力価は>20mg/Lであり、加えて>20mg/Lのこれまでの中間体13−DHIが生成され;従って合わせて量は>40mg/Lである。バウマイシンは、酸性条件中で加熱することにより(+45℃、1時間)、イダルビシンへと加水分解されうる。
【0062】
生体内変換菌株から得られた生成物のクロマトグラフを図3に示す。
【0063】
(実施例6:エピダウノルビシンへの13−DHEDの生合成的転化)
生体内変換菌株の予備培養を、実施例5に詳細に記載したようにして行った。この培地の少なくとも50mg/lに対応する樹脂に吸着される13−DHEDを1日後に培養物に加え、培養を4日間続けた。50mlのE1培地を含むフラスコ中、34℃、300rpmで発酵を行った。
【0064】
クロマトグラフィによる分析によれば、13−DHEDの50%がエピダウノルビシンに転化された。<10%の範囲の少量のエピルビシンが検出された。
【0065】
(実施例7:アグリコンおよびアントラサイクリンの分析測定)
TLC
1. 0.5 MQ−水
2. 0.1 HCOOH
3. 25 MeOH
4. 75 CHCl、慎重に溶液1、2および3と混合する。
【0066】
HPLC
装置:ダイオードアレイ検出器を具えるシリーズ1100に属するHewlett−Packardクロマトグラフィ装置。
カラム:Zorbax、SB−C8、Agilent、4.6×150mm 3.5−ミクロン(3.5μm)
使用した溶媒:0.05% TFA、および1:1 MeCN−テトラヒドロフラン
カラムの温度:30℃
流速度:1ml/分
検出:254±8nm、参照波長600nm±50nm
注入量:5μl
圧力:最低20bar(2MPa)、最大300bar(30MPa)。
使用したパラメータ:
【表2】

【0067】
参考文献一覧
Dickens M, Priestley NおよびStrohl W:In vivo and in vitro bioconversion of ε−rhodomycinone glycoside to doxorubicin:Function of DauP, DauK, and DoxA. (1997) J. Bacteriol.179:2641−2650。
Di Marco A, Silvestrini R, Gaetani M, Soldati M, Orezzi P, Dasdia T, Scarpinato BM, Valentini L:’daunomycin’, a new antibiotic of the rhodomycin group.(1964) Nature 15:706−707。
Hopwood DA, Bibb MJ, Chater KF, Kieser T, Bruton CJ, Kieser HM, Lydiate DJ, Smith CP, Ward JMおよびSchrempf H:Genetic Manipulation of Streptomyces:a Laboratory Manual. (1985) John Innes Foundation, Norwich。
Sambrook J, Fritsch EFおよびManiatis T:Molecular Cloning:a Laboratory Manual. (1989) Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY。
Strohl W. R, Bartel P, Connors NC, Zhu C, Dosch D, Beale JM, Floss HG, Stuzman−Engwall K, Otten SLおよびHutchinson CR:Biosynthesis of natural and hybrid polyketides by anthracycline−producing streptomycetes. (1989) 68−84頁、C.L.Hershberger, SW QueenerおよびG Hegeman(編) Genetics and molecular biology of industrial micro−organisms. American Society for Microbiology, Washington,D.C。
Torkkell S, Kunnari T, Palmu K, Mantsala P, Hakala JおよびYlihonko K:The entire nogalamycin biosynthetic gene cluster of Streptomyces nogalater:characterization of a 20−kb DNA region and generation of hybrid structures. (2001) Molecular Genetics and Genomics 266:276−288。
Torkkell S:Anthracycline antibiotics:Biosynthetic pathway and molecular genetics of nogalamycin, a product of Streptomyces nogalater. (2001) Publications in Annales Universitatis Turkuensis−series nr:275。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントラサイクリン代謝産物を非天然アントラサイクリン抗生物質へと転化する微生物菌株。
【請求項2】
前記アントラサイクリン代謝産物は、エピダウノルビシン、13−ジヒドロエピダウノルビシン、4’−エピ−フォイドマイシンおよびε−ロドマイシノンからなる群から選択される、請求項1に記載の菌株。
【請求項3】
前記非天然アントラサイクリン抗生物質は、エピルビシンおよびイダルビシンからなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載の菌株。
【請求項4】
前記菌株はStreptomyces属から選択される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の菌株。
【請求項5】
前記菌株は、好ましくはStreptomyces peucetius種から選択される、請求項4に記載の菌株。
【請求項6】
前記菌株は、より好ましくはStreptomyces peucetius var.caesius亜種から選択される、請求項5に記載の菌株。
【請求項7】
異種耐性遺伝子snorOを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の菌株。
【請求項8】
前記遺伝子はStreptomyces属から単離される、請求項7に記載の菌株。
【請求項9】
前記遺伝子は、好ましくはStreptomyces nogalater種から単離されたものである、請求項8に記載の菌株。
【請求項10】
前記菌株は、>20%の、前記非天然アントラサイクリン抗生物質への前記アントラサイクリン代謝産物の転化率を与える、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の菌株。
【請求項11】
前記菌株は、好ましくは>30%の、前記非天然アントラサイクリン抗生物質への前記アントラサイクリン代謝産物の転化率を与える、請求項10に記載の菌株。
【請求項12】
前記菌株は、最も好ましくは>40%の、前記非天然アントラサイクリン抗生物質への前記アントラサイクリン代謝産物の転化率を与える、請求項11に記載の菌株。
【請求項13】
微生物菌株を使用して、アントラサイクリン代謝産物をアントラサイクリン抗生物質へと転化するためのプロセス。
【請求項14】
前記アントラサイクリン代謝産物は、エピダウノルビシン、13−ジヒドロエピダウノルビシン、4’−エピ−フォイドマイシンおよびε−ロドマイシノンからなる群から選択される、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記アントラサイクリン抗生物質は、エピルビシンおよびイダルビシンからなる群から選択される、請求項13または請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記菌株はStreptomyces属から選択される、請求項13から請求項15のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項17】
前記菌株は、好ましくはStreptomyces peucetius種から選択される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記菌株は、より好ましくはStreptomyces peucetius var.caesius亜種から選択される、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記菌株は遺伝子組み換えされている、請求項13から請求項18のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項20】
前記菌株は、>20%の、前記非天然アントラサイクリン抗生物質への前記アントラサイクリン代謝産物の転化率を与える、請求項13から請求項19のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記菌株は、好ましくは>30%の、前記非天然アントラサイクリン抗生物質への前記アントラサイクリン代謝産物の転化率を与える、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記菌株は、最も好ましくは>40%の、前記非天然アントラサイクリン抗生物質への前記アントラサイクリン代謝産物の転化率を与える、請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
生体内変換のために使用される粗製アントラサイクリン代謝産物の純度は>60%である、請求項13から請求項22のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項24】
生体内変換のために使用される粗製アントラサイクリン代謝産物の純度は、好ましくは>80%である、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
生体内変換のために使用される粗製アントラサイクリン代謝産物の純度は、最も好ましくは>90%である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記アントラサイクリン代謝産物またはアントラサイクリン抗生物質を吸着するために、樹脂がいつでも使用される、請求項13から請求項25のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項27】
前記樹脂は、イオン性吸着剤および非イオン性吸着剤からなる群から選択される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
前記樹脂はポリスチレンの群から選択される、請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
前記樹脂は、XAD−7およびDiaion HP−20からなる群から選択される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記樹脂は1〜100g/lの量で加えられる、請求項26から請求項29のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項31】
前記樹脂は、好ましくは10〜50g/lの量で加えられる、請求項30に記載のプロセス。
【請求項32】
前記樹脂は、最も好ましくは15〜30g/lの量で加えられる、請求項31に記載のプロセス。
【請求項33】
微生物菌株を使用してアントラサイクリン抗生物質へと転化するための、エピダウノルビシン、13−ジヒドロエピダウノルビシン、4’−エピ−フォイドマイシンまたはε−ロドマイシノンの使用。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−501663(P2012−501663A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526375(P2011−526375)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007460
【国際公開番号】WO2010/028667
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(592153805)ヴェー・ツェー・ヘレウス・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト (3)
【氏名又は名称原語表記】W.C. Heraeus GmbH & Co. KG.
【Fターム(参考)】