説明

アントラセン誘導体を含むエレクトロルミネッセンス・デバイス

【課題】エレクトロルミネッセンス特性の改良。
【解決手段】エレクトロルミネッセンス・デバイスは、カソードと、アノードと、その間にある発光層(LEL)とを備えるとともに、LELのカソード側にある電子輸送層(ETL)と、そのETLのカソード側に隣接した有機電子注入層(EIL)とをさらに備えていて、ETLが、2位と9位と10位に芳香族基を有するモノアントラセン化合物を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光層と、モノアントラセン誘導体を含む少なくとも1つの電子輸送層と、その電子輸送層に隣接した少なくとも1つの有機電子注入層とを備えるエレクトロルミネッセンス(EL)デバイスに関する。このデバイスは、望ましいエレクトロルミネッセンス特性を提供することができる。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスは20年以上前から知られているが、性能が限られているため、望ましい多くの用途にとっての障害となっていた。最も単純な形態の有機ELデバイスは、正孔を注入するためのアノードと、電子を注入するためのカソードと、これら電極に挟まれていて、電荷の再結合をサポートして光を発生させる有機媒体とで構成されている。このようなデバイスは、一般に有機発光ダイオード、またはOLEDとも呼ばれる。初期の代表的な有機ELデバイスは、1965年3月9日に付与されたGurneeらのアメリカ合衆国特許第3,172,862号;1965年3月9日に付与されたGurneeのアメリカ合衆国特許第3,173,050号;Dresner、「アントラセンにおける二重注入エレクトロルミネッセンス」、RCA Review、第30巻、322ページ、1969年;1973年1月9日に付与されたDresnerのアメリカ合衆国特許第3,710,167号である。これらデバイスの有機層は、通常は多環芳香族炭化水素で構成されているために非常に厚かった(1μmよりもはるかに厚い)。その結果、動作電圧が非常に大きくなり、100Vを超えることがしばしばあった。
【0003】
より最近の有機ELデバイスは、アノードとカソードに挟まれた極めて薄い層(例えば1.0μm未満)からなる有機EL素子を含んでいる。この明細書では、“有機EL素子”という用語に、アノードとカソードに挟まれたいろいろな層が含まれる。厚さを薄くして有機層の抵抗値を小さくすることで、デバイスがはるかに低電圧で動作できるようになった。アメリカ合衆国特許第4,356,429号に初めて記載された基本的な2層ELデバイス構造では、EL素子のアノードに隣接する一方の有機層は正孔を輸送するように特別に選択されているため、正孔輸送層と呼ばれ、他方の有機層は電子を輸送するように特別に選択されているため、電子輸送層と呼ばれる。有機EL素子の内部で注入された正孔と電子が再結合することで効率的なエレクトロルミネッセンスが出る。
【0004】
正孔輸送層と電子輸送層の間に有機発光層(LEL)を含む3層有機ELデバイスも提案されている。それは例えば、 C. Tangら(J. Applied Physics、第65巻、3610ページ、1989年)によって開示されているものである。発光層は、一般に、ゲスト材料(ドーパントとしても知られる)をドープされたホスト材料からなる。さらに、アメリカ合衆国特許第4,769,292号には、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(LEL)と、電子輸送/注入層(ETL)とを備える4層EL素子が提案されている。これらの構造によってデバイスの効率が向上した。
【0005】
これら初期の発明以来、デバイスの材料がさらに改善された結果、色、安定性、輝度効率、製造しやすさなどの属性が向上した。それは例えばアメリカ合衆国特許第5,061,569号、第5,409,783号、第5,554,450号、第5,593,788号、第5,683,823号、第5,908,581号、第5,928,802号、第6,020,078号、第6,208,077号に特に開示されている。
【0006】
白色光を出すELデバイスは非常に有用であることがわかっている。白色ELデバイスは、カラー・フィルタとともに用いてフル-カラー・ディスプレイ装置を製造することができる。白色ELデバイスは、他のマルチカラー・ディスプレイ装置または機能的カラー・ディスプレイ装置でカラー・フィルタとともに用いることもできる。このようなディスプレイ装置で使用される白色ELデバイスは製造が容易であり、ディスプレイの各画素で信頼できる白色光を発生させる。OLEDは白色と呼ばれるが、この用途では白色または灰白色に見える可能性がある。また、OLEDから出る光のCIE座標は、それぞれのカラー・フィルタを通過したスペクトル成分がその光に十分な強度で存在するという条件ほど重要でない。したがって白色OLEDデバイスで使用するための大きな輝度強度を提供する新しい材料が必要とされている。低電圧で動作するデバイスがあることも望ましい。
【0007】
多くのOLEDデバイスで使用される最も一般的な材料の1つはトリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)である。この金属錯体は優れた電子輸送材料であり、業界で長年にわたって使用されてきた。しかしアントラセン誘導体などの他の材料も有用な電子輸送材料であることが報告されている。例えば日本国特開2005/174675を参照のこと。
【0008】
荒健輔とその共同研究者(日本国特開2003/338377)は、電子輸送層にナフタセン誘導体および/またはアントラセン誘導体(ナフタセン誘導体が好ましい)が含まれたELデバイスを報告している。このデバイスは、厚さが0.6〜20nmであることが好ましい(1〜10nmがより好ましい)電子注入層も備えていることが好ましい。しかしこのようなデバイスでは最も望ましいエレクトロルミネッセンス特性を生み出せない可能性がある。したがって低電圧と高効率の一方または両方が実現したデバイスを提供できる最適な材料を見いだす必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明により、カソードと、アノードと、その間にある発光層(LEL)とを備えるとともに、LELのカソード側にある電子輸送層(ETL)と、そのETLのカソード側に隣接した有機電子注入層(EIL)とをさらに備えていて、ETLが、2位と9位と10位に芳香族基を有するモノアントラセン化合物を含むエレクトロルミネッセンス・デバイスが提供される。
【発明の効果】
【0010】
このデバイスにより、改善されたエレクトロルミネッセンス特性(例えば低電圧と高効率の一方または両方)が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施態様によるOLEDデバイスの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は全体として上記のようにまとめられる。本発明により、カソードと、アノードと、少なくとも1つの発光層(LEL)とを備える多層エレクトロルミネッセンス・デバイスが提供される。このデバイスはさらに、LELのカソード側に電子輸送層(ETL)を備えている。有機電子注入層(EIL)がETLのカソード側に存在していて、ETLに隣接している。ETLは、2位と9位と10位に芳香族基を有するモノアントラセン化合物を含んでいる。
【0013】
このアントラセン化合物は、昇華温度を望ましい温度範囲に維持するため、アントラセン核を1つだけ有する。一実施態様では、このモノアントラセン化合物は6〜12個の環しか含んでおらず、環の数は6〜10個しかない場合さえある。環は炭素環であることが望ましい。
【0014】
このモノアントラセン化合物は、2位と9位と10位が芳香族基で置換されている。このタイプの置換によって望ましい電気化学的特性が得られる。好ましい一実施態様では、モノアントラセン化合物は、9位がナフチル基またはビフェニル基で置換され、10位が独立に選択されたナフチル基またはビフェニル基で置換されている。適切な基の例として、2-ナフチル基、1-ナフチル基、4-ビフェニル基、3-ビフェニル基が挙げられる。別の好ましい一実施態様では、モノアントラセン化合物は、9位または10位がフェニル基またはテルフェニル基で置換されている。望ましい一実施態様では、モノアントラセン化合物は、2位が、2個までの縮合環を有するアリール基で置換されている。そのようなアリール基は、例えば4-メチルフェニル基、2-ナフチル基、置換されていないフェニル基である。
【0015】
別の一実施態様では、モノアントラセン化合物は、6位が水素またはアルキル基で置換されている。アルキル基の例として、メチル基とt-ブチル基が挙げられる。
【0016】
別の一実施態様では、モノアントラセン化合物は、6位が芳香族基で置換されている。芳香族基は、2個以下の縮合環を有する炭素環基(例えばフェニル基、ナフチル基)であることが望ましい。
【0017】
モノアントラセン化合物は、一般式(1)で表わされることが好ましい。
【0018】
【化1】

【0019】
一般式(1)において、w1、w3、w4、w5、w6、w7、w8は、水素または独立に選択された置換基を表わす。置換基としては、アルキル基(例えばメチル基、t-ブチル基)または芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基)などがある。
【0020】
置換基w2、w9、w10は、独立に選択された芳香族基を表わす。代表例として、フェニル基、テルフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ベンゾイミダゾール基、チオフェン基などがある。望ましい一実施態様では、w2、w9、w10は炭素環芳香族基を表わす。一実施態様では、それぞれのw2、w9、w10は、縮合した2個までの環を含む独立に選択された芳香族基を表わす。好ましい別の一実施態様では、w2、w9、w10は同じでも異なっていてもよく、それぞれ、独立に選択された芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基)を表わす。
【0021】
好ましい別の一実施態様では、一般式(1)の置換基は、アントラセン化合物が-2.4eV〜-2.6eVの範囲のLUMO(最低被占軌道)値を持つように選択する。この範囲は-2.45eV〜-2.55eVであることが望ましい。
【0022】
一般式(1)の化合物は、文献に記載されているさまざまな合成経路(例えばアメリカ合衆国特許公開2005/211958に報告されている経路)で、またはそのような経路の変形法で調製することができる。一般式(1)の有用な化合物の例を以下に示す。
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
【化5】

【0027】
【化6】

【0028】
【化7】

【0029】
【化8】

【0030】
【化9】

【0031】
【化10】

【0032】
電子輸送層は、2位と9位と10位に芳香族基を有する2種類以上のモノアントラセン化合物を含むことができる。望ましい一実施態様では、ETLはモノアントラセン化合物だけを含んでいる。
【0033】
電子輸送層の望ましい厚さは1〜100nmであることがしばしばあり、この値は5〜50nmである頻度が多く、一般に10〜40nmである。ETLのカソード側に隣接して有機電子注入層(EIL)がある。
【0034】
EILは有機材料を含んでいる。好ましい一実施態様では、EILは複素環化合物を含んでいる。複素環化合物のLUMOエネルギーのレベルは、ETLに含まれるモノアントラセン材料のLUMOエネルギーのレベルと同じかほぼ同じである。EILの複素環化合物とETLのモノアントラセン材料のLUMOエネルギーのレベルの差は0.50eV以下、または0.40eV以下、または0.30eV以下、または0.20eV以下であることが好ましく、0.10eV以下であることさえ好ましい。EILの複素環化合物は、モノアントラセン化合物のLUMO値と同じかよりプラスのLUMO値を持つことが望ましい。
【0035】
有用なEIL材料の例として、1,10-フェナントロリン、または1,10-フェナントロリンの誘導体(例えば4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(Bphen))などがある。一般式(2)の化合物が有用であることがしばしばある。
【0036】
【化11】

【0037】
一般式(2)において、それぞれのd1は同じでも異なっていてもよく、それぞれ置換基を表わすが、隣り合った置換基が合わさって環基を形成してもよい。この一般式において、rとtは独立に0〜4であり、sは0〜2である。
【0038】
好ましい一実施態様では、少なくとも1つのd1は、縮合した少なくとも3つの環を有する芳香族基(例えばアントラセニル基、ピレニル基)を表わす。この実施態様では、r、s、tのうちの少なくとも1つは1以上である。有用なフェナントロリン材料として、Kevin Klubekによって2005年11月30日に出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第11/289,856号(ドケット91718)と2005年11月30日に出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第11/290,214号(ドケット91885)に記載されているものが挙げられる。
【0039】
有用な1,10-フェナントロリン材料の例を以下に列挙する。
【0040】
【化12】

【0041】
【化13】

【0042】
【化14】

【0043】
【化15】

【0044】
【化16】

【0045】
別の一実施態様では、EILはベンゾイミダゾールの誘導体を含んでいる。有用なベンゾイミダゾール誘導体として一般式(3)の化合物が挙げられる。
【0046】
【化17】

【0047】
一般式(3)において、A1とA2は、独立に選択された芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基)を表わす。A2は、少なくとも1つのベンゾイミダゾール核を含む基を表わすことが望ましい。例えば2,2',2"-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]などの材料が有用な化合物である。
【0048】
別の一実施態様では、EILは一般式(4)の化合物を含んでいる。
【0049】
【化18】

【0050】
一般式(4)において、それぞれのA1は同じでも異なっていてもよく、上に説明したように、それぞれ芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基)を表わす。それぞれのr1は同じでも異なっていてもよく、それぞれ置換基を表わすが、隣り合った置換基が合わさって環基を形成してもよい。この一般式において、n、m、wは独立に0〜4である。
【0051】
一般式(3)と一般式(4)の有用な材料を以下に列挙する。
【0052】
【化19】

【0053】
【化20】

【0054】
別の一実施態様では、電子注入層は一般式(5a)または(5b)の化合物を含んでいる。
【0055】
【化21】

【0056】
この一般式において、Mは金属(例えばアルミニウムまたはガリウム)を表わす。それぞれのZ1、Z2、Z3は、独立に選択された芳香族基を表わす。望ましい一実施態様では、Z1、Z2、Z3が合わさり、縮合した少なくとも2つの芳香族環(例えばキノリン基)を有する核を形成する。Lは芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基)を表わす。この一般式において、nは1〜4の整数である。nは3であることが望ましい。
【0057】
望ましい一実施態様では、電子注入層は8-キノレートの金属錯体を含んでいる。有用な材料として、例えば一般式(6a)で表わされるものがある。
【0058】
【化22】

【0059】
一般式(6a)において、M1はAlまたはGaを表わし、raとrbは、独立に選択された置換基である。それぞれのhとiは、独立に0〜3である。一般式(5a)、(5b)、(6a)の有用な材料の例を以下に列挙する。
【0060】
【化23】

【0061】
【化24】

【0062】
別の一実施態様では、一般式(6b)で表わされる材料が電子注入層に含まれる。
【0063】
【化25】

【0064】
一般式(6b)において、M2はアルカリ金属またはアルカリ土類金属を表わす。望ましい一実施態様では、M2はLi+を表わす。すでに説明したように、それぞれのraとrbは独立に選択された置換基を表わすが、2つの置換基が合わさって縮合環基を形成してもよい。このような置換基の例として、メチル基、フェニル基、フルオロ置換基や、2つの置換基が合わさることによって形成された縮合ベンゼン環基などがある。一般式(6b)において、それぞれのhとiは、独立に1〜3であり、qは1〜6の整数である。
【0065】
一般式(6b)の材料の一例はリチウムキノレートである。リチウムキノレートはLi+と8-ヒドロキシキノリネートの錯体であり、Liqと呼ばれることがしばしばある。Liqは単一の種として存在すること、または他の形態(例えばLigQq(gは整数であり、例えばLi6Q6))で存在することができる。Qは8-ヒドロキシキノレート・リガンド、または8-ヒドロキシキノレートの誘導体を表わす。望ましい一実施態様では、8-ヒドロキシキノレート基のリチウム錯体が電子注入層に含まれる。
【0066】
さらに別の一実施態様では、2,2'-ビピリジル材料(例えば一般式(7)で表わされる材料)が電子注入層に含まれる。
【0067】
【化26】

【0068】
一般式(7)において、それぞれのrcとそれぞれのrdは同じでも異なっていてもよく、それぞれ、独立に選択された置換基を表わすが、隣り合った置換基が合わさって環基を形成してもよい。この一般式において、eとfは0〜5である。一実施態様では、少なくとも1つのrcはピリジル基を含んでいる。少なくとも1つのrcがピリジル基を含み、少なくとも1つのrdがピリジル基を含んでいることが望ましい。一般式(7)の有用な化合物の例を以下に列挙する。
【0069】
【化27】

【0070】
【化28】

【0071】
【化29】

【0072】
有機電子注入層の厚さは0.1〜40nmの範囲である頻度が多く、一般に5〜30nmであり、1〜20nmの範囲であることがしばしばある。一実施態様では、この層の厚さは10nmよりも厚いが、20nm未満である。別の一実施態様では、この層の厚さは20nm超である。
【0073】
望ましい別の一実施態様では、別の層が、カソードとEILの間に、EILに隣接して存在している。この別の層は、追加の電子注入層である。この別の層は、無機材料(例えば仕事関数が小さなアルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えばLi、Cs、Ca、Mg))を含んでいることが望ましい。さらに、仕事関数が小さなこれらの金属をドープされた有機材料も、電子注入層として有効に利用することができる。その例は、LiまたはCsをドープされたAlqである。好ましい一実施態様では、この別の層にアルカリ金属化合物(例えばLiF)が含まれている。この別の層は、0.1〜3.0nmの範囲の適切な厚さに堆積された薄い層であることがしばしばある。
【0074】
発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1種類または複数のゲスト発光材料をドープしたホスト材料からなる。光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。本発明の1つの特徴では、発光層は、ホスト材料と発光材料を含んでいる。ETLのモノアントラセン化合物のLUMOは、発光層のホストのLUMOレベルに近いか、それよりもわずかに低いことが望ましい。一実施態様では、LELは、モノアントラセン化合物のLUMO値との差が0.2eV以下であるLUMO値を持つホスト材料を含んでいる。LUMO値の差は、0.1eV以下であることさえある。別の一実施態様では、モノアントラセン化合物のLUMOレベルは、発光層のホストのLUMOレベルと等しい。
【0075】
好ましい一実施態様では、発光層は、ホスト材料としてアントラセンを含んでいる。ホスト材料として特に有用なアントラセンとして、9位と10位が芳香族基(例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基)で置換されたアントラセンが挙げられる。望ましい一実施態様では、ホスト材料としてのアントラセンは、2位と9位と10位に芳香族基を有する。このような基の例として、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が挙げられる。
【0076】
発光層で用いるアントラセン材料の代表例として、2-(4-メチルフェニル)-9,10-ジ-(2-ナフチル)-アントラセン、9-(2-ナフチル)-10-(1,1'-ビフェニル)-アントラセン、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]-アントラセンと、以下に示す化合物がある。
【0077】
【化30】

【0078】
【化31】

【0079】
【化32】

【0080】
一実施態様では、発光層に共同ホストが存在している。例えば共同ホストとして正孔輸送材料が可能であり、第三級アミンにすること、またはそのような化合物の混合物にすることができる。有用な正孔輸送共同ホスト材料は、4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)と4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)である。
【0081】
別の一実施態様では、電子輸送材料である共同ホストが存在している。8-ヒドロキシキノリンおよびそれと同様の誘導体の金属錯体(金属キレート化オキシノイド化合物としても知られる)が有用な共同ホスト化合物の1つのクラスを構成する。電子輸送共同ホストの有用な一例は、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(Alq)である。
【0082】
共同ホストは、存在しているときには、層の1〜50体積%のレベルであることがしばしばあり、この値は層の1〜20体積%である頻度が多く、一般に層の5〜15体積%である。
【0083】
LELは発光材料を含んでおり、発光層の15体積%の量まで存在していることが望ましい。この量は一般に0.1〜10体積%であり、典型的には層の0.5〜8.0体積%である。
【0084】
ホストとともに用いる蛍光発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、ホストと蛍光材料の励起一重項エネルギーの比較である。発光材料の励起一重項エネルギーはホスト材料の励起一重項エネルギーよりも低いことが非常に望ましい。励起した一重項状態のエネルギーは、発光する一重項状態と基底状態のエネルギー差として定義される。発光しないホストでは、基底状態としての同じ電子スピンの最低励起状態が発光状態と見なされる。
【0085】
発光層は、発光材料の性質に応じて青から赤の範囲の光を出すことができる。R.W. Hunt、『写真、印刷、テレビにおける色の再現』、第4版、1987年、ファウンテン出版で定義されているように、青色光は一般に電磁スペクトルの可視領域の450〜480nmの範囲の波長を持ち、青-緑色光は480〜510nm、緑色光は510〜550nm、緑-黄色光は550〜570nm、黄色光は570〜590nm、オレンジ色光は590〜630nm、赤色光は630〜700nmの波長を持つ。これらの成分の適切な組み合わせによって白色光が発生する。
【0086】
一実施態様では、有用なデバイスは、青色または青-緑色の光を出す1種類以上の材料を含んでいる。青色または青-緑色の光を出す多くの材料が従来から知られており、本発明を実施する際に使用することが考えられる。青色発光体の特に有用なクラスとして、ペリレンとその誘導体(例えば1つ以上の置換基(例えばアルキル基またはアリール基)を有するペリレン核)がある。発光材料として用いるのが望ましいペリレン誘導体は、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレンである。
【0087】
蛍光材料の別の有用な1つのクラスとして、青色または青-緑色の光を出すスチリルアレンの誘導体(例えばジスチリルベンゼン、ジスチリルビフェニルや、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されている化合物)がある。青色または青-緑色の光を出すスチリルアレンの誘導体のうちで特に有用なのは、ジアリールアミノ基(ジスチリルアミンとしても知られる)で置換されたものである。例として、以下の一般式(8a)で表わされるものがある。ただし、Ar1、それぞれのAr2、Ar3〜Ar8は、独立に選択されたアリール基またはヘテロアリール基であり、その中には追加の縮合環が含まれていてもよく、2つのアリール環またはヘテロアリール環が縮合によって合わさることができ、mは0または1である。一実施態様では、Ar1、それぞれのAr2、Ar3〜Ar8は、フェニレン基またはフェニル基を表わす。
【0088】
【化33】

【0089】
有用なスチリルアミンの代表例は、以下に示す青色発光体または青緑色発光体である。
【0090】
【化34】

【0091】
2004年10月29日にMargaret J. Helberらによって「エレクトロルミネッセンス・デバイスのための有機素子」という名称で出願されて譲受人に譲渡されたアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/977,839号には、スチリルアレンからなる別の有用な青色発光材料と青-緑色発光材料が記載されている。
【0092】
有用な発光材料は一般式(8b)で表わされる。
【0093】
【化35】

【0094】
一般式(8b)において、Ar1、それぞれのAr2、Ar7は同じでも異なっていてもよく、それぞれ2価の芳香族基を表わす。そのような基の代表例は、フェニレン基、ナフチレン基、キノリンジイル基、チエンジイル基などである。Ar3、Ar4、Ar5、Ar6は同じでも異なっていてもよく、それぞれ芳香族基(例えばフェニル基)、縮合芳香族環基(例えばナフチル基、アントラニル基、フェナントリル基)、複素芳香族環基、1価の結合をする芳香族環基(例えばビフェニル)を表わす。さらに、Ar3とAr4 、ならびにAr5とAr6は、直接に、または別の原子を通じて結合し、炭素環または複素環を形成することができる。上記一般式において、pは1、2、3のいずれかである。有用な材料の代表例を以下に示す。
【0095】
【化36】

【0096】
発光体の別の有用なクラスは、ホウ素原子を含んでいる。ホウ素を含む望ましい発光材料として、アメリカ合衆国特許公開2003/0198829、2003/0201415、2005/0170204に記載されているものがある。適切な発光材料(その中には青色光または青-緑色光を出すものが含まれる)は、構造式(9)で表わされる。
【0097】
【化37】

【0098】
一般式(9)において、AraとArbは、独立に、5員または6員の芳香族環基(例えばピリジン基)を形成するのに必要な原子を表わす。ZaとZbは、独立に選択された置換基(例えばフルオロ置換基)を表わす。構造式(9)において、wは、NまたはC-Yを表わす。ただしYは、水素または置換基を表わす。置換基は、例えば、芳香族基(フェニル基など)、トリル基、アルキル基(メチル基など)、シアノ置換基、トリフルオロメチル置換基である。
【0099】
有用なホウ素含有蛍光材料の代表例として以下のものがある。
【0100】
【化38】

【0101】
別の一実施態様では、発光層は緑色の光を出す。緑色発光材料の特に有用な1つのクラスとして、一般式(10)で表わされるキナクリドン化合物がある。適切なキナクリドンは、アメリカ合衆国特許公開2004/0001969、アメリカ合衆国特許第6,664,396号、第5,593,788号、日本国特開平09-13026に記載されている。
【0102】
【化39】

【0103】
一般式(10)において、s1〜s10は、独立に、水素または独立に選択された置換基(例えばフェニル基、トリル基、ハロゲン(Fなど)、アルキル基(メチル基など))を表わす。隣り合った置換基が合わさって環を形成してもよい(例えば縮合ベンゼン環基)。
【0104】
一般式(10)において、s11とs12は、独立に、アルキル基または芳香族基を表わす。好ましい一実施態様では、s11とs12は、独立に、フェニル環基(例えばフェニル環またはトリル環)を表わす。
【0105】
有用なキナクリドン化合物の代表例として以下のものがある。
【0106】
【化40】

【0107】
【化41】

【0108】
緑色発光材料の別の有用な別のクラスとして、一般式(11)で表わされるクマリン化合物がある。適切なクマリンは、例えばTangらのアメリカ合衆国特許第4,769,292号と第6,020,078号に記載されている。
【0109】
【化42】

【0110】
一般式(11)において、w11とw12は、独立に選択された置換基(例えばアルキル基またはアリール基)を表わすが、w11とw12は、互いに合わさって、またはw13およびw14とで環を形成してもよい。w11とw12は、独立に選択されたアルキル基を表わすことが望ましいが、w11とw12は、互いに合わさって、またはw13およびw14とで飽和環を形成してもよい。一般式(11)において、w13〜w16は、独立に、水素または独立に選択された置換基(例えばフェニル環基またはメチル基)を表わす。隣り合った環が合わさって環を形成してもよい(例えば縮合ベンゼン環)。一般式(11)において、w17は、複素芳香族環(例えばベンゾチアゾール環基)を完成させるのに必要な原子を表わす。有用なクマリン化合物の代表例を以下に示す。
【0111】
【化43】

【0112】
別の有用な発光材料の例として、アントラセン、フルオレン、ペリフランテン、インデノペリレンの誘導体が挙げられる。
【0113】
一実施態様では、有用なデバイスは、青色または青-緑色の光を発生させる発光材料を含む1つの層と、ルブレン誘導体を含んでいて黄色または赤色の光を発生させる追加の層を有する。
【0114】
本発明の別の一実施態様では、追加の層が存在していて発生する光が白色である場合には、その白色光のスペクトル成分(例えば赤、緑、青)を制御できるフィルタをデバイスの表面に配置してカラー・ディスプレイにとって有用なデバイスとなるようにすることができる。
【0115】
特に断わらない限り、“置換された”または“置換基”という用語は、水素以外のあらゆる基または原子を意味する。さらに、特に断わらない限り、ある化合物が置換可能な水素を有することが明らかになった場合、または“基”という用語が用いられている場合、この用語には置換されていない形態が含まれるだけでなく、この明細書に記載した任意の1個または複数個の置換基でさらに置換された形態も、デバイスが機能する上で必要な性質をその置換基が失わせない限りは含まれるものとする。置換基は、ハロゲンにすること、または1個の原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、イオウ、セレン、ホウ素)によって分子の残部と結合させることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロなど);ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシルや;さらに置換されていてもよい基が可能である。さらに置換されていてもよい基としては、アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、環式アルキルが含まれ、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t-ブチル、3-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)プロピル、テトラデシルなどがある);アルケニル(例えばエチレン、2-ブテン);アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2-メトキシエトキシ、s-ブトキシ、ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エトキシ、2-ドデシルオキシエトキシ);アリール(例えばフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル);アリールオキシ(例えばフェノキシ、2-メチルフェノキシ、α-ナフチルオキシ、β-ナフチルオキシ、4-トリルオキシ);カーボンアミド(例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α-(3-ペンタデシルフェノキシ)-ヘキサンアミド、α-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシ)-テトラデカンアミド、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、2-オキソ-5-テトラデシルピロリン-1-イル、N-メチルテトラデカンアミド、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、2,5-ジオキソ-1-オキサゾリジニル、3-ドデシル-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリル、N-アセチル-N-ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4-ジ-t-ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5-(ジ-t-ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p-ドデシル-フェニルカルボニルアミノ、p-トリルカルボニルアミノ、N-メチルウレイド、N,N-ジメチルウレイド、N-メチル-N-ドデシルウレイド、N-ヘキサデシルウレイド、N,N-ジオクタデシルウレイド、N,N-ジオクチル-N'-エチルウレイド、N-フェニルウレイド、N,N-ジフェニルウレイド、N-フェニル-N-p-トリルウレイド、N-(m-ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N-(2,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-N'-エチルウレイド、t-ブチルカーボンアミド);スルホンアミド(例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p-トリルスルホンアミド、p-ドデシルベンゼンスルホンアミド、N-メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N-ジプロピルスルファモイルアミノ、ヘキサデシルスルホンアミド);スルファモイル(例えばN-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N-ヘキサデシルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-[3-(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N-メチル-N-テトラデシルスルファモイル、N-ドデシルスルファモイル);カルバモイル(例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N-オクタデシルカルバモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N-メチル-N-テトラデシルカルバモイル、N,N-ジオクチルカルバモイル);アシル(例えばアセチル、(2,4-ジ-t-アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p-ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3-ペンタデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル);スルホニル(例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2-エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2-エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4-ノニルフェニルスルホニル、p-トリルスルホニル);スルホニルオキシ(例えばドデシルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ);スルフィニル(例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2-エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4-ノニルフェニルスルフィニル、p-トリルスルフィニル);チオ(例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2-ブトキシ-5-t-オクチルフェニルチオ、p-トリルチオ);アシルオキシ(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p-ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ);アミン(例えばフェニルアニリノ、2-クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン);イミノ(例えば1(N-フェニルイミド)エチル、N-スクシンイミド、3-ベンジルヒダントイニル);ホスフェート(例えばジメチルホスフェート、エチルブチルホスフェート);ホスフィト(例えばジエチルホスフィト、ジヘキシルホスフィト);複素環基、複素環オキシ基、複素環チオ基(どの基も置換されていてよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素からなるグループの中から選択する)からなる3〜7員の複素環を含んでいて、例えば、2-フリル、2-チエニル、2-ベンゾイミダゾリルオキシ、2-ベンゾチアゾリルがある);第四級アンモニウム(例えばトリエチルアンモニウム);第四級ホスホニウム(例えばトリフェニルホスホニウム);シリルオキシ(例えばトリメチルシリルオキシ)がある。
【0116】
望むのであれば、置換基それ自体がさらに上記の置換基で1回以上置換されていてもよい。使用する具体的な置換基は、当業者が、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように選択することができ、例えば、電子求引基、電子供与基、立体基などが挙げられる。1つの分子が2つ以上の置換基を持てる場合には、特に断わらない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば縮合環)を形成することができる。一般に、上記の基と、その基に対する置換基は、48個までの炭素原子(一般には1〜36個であり、通常は24個未満である)を含むことができるが、選択した具体的な置換基が何であるかにより、それよりも多くすることも可能である。
【0117】
本発明の目的のためには、複素環の定義に、配位結合または供与結合を含む環も含まれる。配位結合の定義は、『グラントとハックーの化学事典』、91ページに見いだすことができる。要するに、配位結合は、電子が豊富な原子(例えばOやN)が一対の電子を電子が欠乏した原子(例えばAlやB)に与えるときに形成される。
【0118】
当業者であれば、特定の基が電子供与基であるか電子受容基であるかを十分に判断できよう。電子供与特性と電子受容特性の最も一般的な指標はハメットσ値である。水素はハメットσ値がゼロであるのに対し、電子供与基は負のハメットσ値を持ち、電子受容基は正のハメットσ値を持つ。『ランゲの化学ハンドブック』、第12版、マグロウ・ヒル社、1979年、表3-12、3-134〜3-138ページ(参考としてこの明細書に組み込まれているものとする)に、一般的に遭遇する多数の基のハメットσ値が掲載されている。ハメットσ値は、フェニル環置換に基づいて割り当てられるが、電子供与基と電子受容基を定性的に選択するための実用的なガイドとなる。
【0119】
適切な電子供与基の選択は、-R'、-OR'、-NR'(R")の中から行なうことができる。ただしR'は、炭素原子を6個まで含む炭化水素であり、R"は、水素またはR'である。電子供与基の具体例として、メチル、エチル、フェニル、メトキシ、エトキシ、フェノキシ、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、-NHCH3、-N(C6H5)2、-N(CH3)(C6H5)、-NHC6H5などがある。
【0120】
適切な電子受容基の選択は、シアノ置換基、α-ハロアルキル置換基、α-ハロアルコキシ置換基、アミド置換基、スルホニル置換基、カルボニル置換基、カルボニルオキシ置換基、オキシカルボニル置換基のうちで炭素原子を10個まで含むものの中から行なうことができる。具体例として、-CN、-F、-CF3、-OCF3、-CONHC6H5、-SO2C6H5、-COC6H5、-CO2C6H5、-OCOC6H5などがある。
【0121】
デバイスの一般的構造
【0122】
本発明は、小分子材料、オリゴマー材料、ポリマー材料、またはこれらの組み合わせを用いた多くのOLEDデバイス構造で利用することができる。このような構造には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。
【0123】
本発明をうまく実現することのできる有機層の構造が多数ある。OLEDにとっての必須の条件は、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間に位置する有機発光層とが存在していることである。追加の層を使用できるが、それについては後でさらに詳しく説明する。
【0124】
小分子デバイスにとって特に有用な典型的な構造は図に示したものであり、基板101と、アノード103と、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、発光層109と、電子輸送層110と、電子注入層111と、場合によっては存在する第2の電子注入層112と、カソード113からなる。これらの層について以下に詳しく説明する。基板をカソードに隣接した位置にすることや、基板が実際にアノードまたはカソードを構成することも可能であることに注意されたい。アノードとカソードに挟まれた有機層を、便宜上、有機EL素子と呼ぶ。また、有機層を合計した厚さは、500nm未満であることが望ましい。
【0125】
OLEDのアノードとカソードは、導電体160を通じて電圧/電流源150に接続されている。OLEDは、アノードとカソードの間に、アノードがカソードと比べて正の電位となるように電圧を印加することによって動作する。正孔はアノードから有機EL素子に注入され、電子はカソードから有機EL素子に注入される。ACモードではACサイクル中にポテンシャル・バイアスが逆転して電流が流れないわずかな期間があるため、OLEDをACモードで動作させるときにデバイスの安定性向上を実現できることがときにある。AC駆動のOLEDの一例が、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されている。
【0126】
基板
【0127】
本発明のOLEDデバイスは、支持用基板101の上に形成されて、カソードまたはアノードが基板と接触できるようになっているのが一般的である。基板は、複数の材料層を含む複合構造にすることができる。これは、TFTがOLED層の下に設けられているアクティブ・マトリックス基板で一般的である。それでも基板の少なくとも画素化された発光領域は、ほぼ透明な材料でできている必要がある。基板と接触する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。底部電極はアノードであることが一般的だが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。透光特性は、基板を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料、シリコン、セラミック、回路板材料などがある。このような構成のデバイスでは、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0128】
アノード
【0129】
望むエレクトロルミネッセンス光(EL)をアノードを通して見る場合には、アノードは、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物だが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノードとして用いることができる。EL光をカソードだけを通して見るような用途ではアノードの透光特性は重要でないため、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での導電性材料の例としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に、適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードを研磨した後に他の層を付着させて表面の粗さを小さくすることで、短絡を最少にすること、または反射性を大きくすることができる。
【0130】
正孔注入層(HIL)
【0131】
必ずしも必要ではないが、正孔注入層105をアノード103と正孔輸送層107の間に設けると有用であることがしばしばある。正孔注入材料は、後に続く有機層の膜形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層に容易に注入できるようにする機能を持つ。正孔注入層で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーや、いくつかの芳香族アミン(例えばm-MTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0 891 121号と第1 029 909号に記載されている。
【0132】
有用な別の正孔注入材料は、アメリカ合衆国特許第6,720,573号に記載されている。例えば以下の材料が、そのような用途にとって有用である可能性がある。
【0133】
【化44】

【0134】
正孔輸送層(HTL)
【0135】
有機ELデバイスの正孔輸送層107は、少なくとも1種類の正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。モノマー・トリアリールアミンの例は、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantleyらによってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0136】
芳香族第三級アミンのより好ましい1つのクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を有するものである。そのような化合物として、構造式(A)で表わされるものがある。
【0137】
【化45】

【0138】
構造式(A)において、Q1とQ2は、独立に選択された芳香族第三級アミン部分であり、Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレンジイル部分のいずれかであることが好ましい。
【0139】
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミン部分を含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(B)で表わされる。
【0140】
【化46】

【0141】
構造式(B)において、R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式(C)に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。
【0142】
【化47】

【0143】
構造式(C)において、R5とR6は、独立に選択されたアリール基である。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環式縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0144】
芳香族第三級アミン基の別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミンとして、一般式(D)で表わされるものがある。
【0145】
【化48】

【0146】
構造式(D)において、それぞれのAreは、独立に選択されたアリーレン基(例えばフェニレン部分、ナフチレンジイル部分、アントラセンジイル部分)であり、nは1〜4の整数である。Ar、R7、R8、R9は、独立に選択されたアリール基である。典型的な一実施態様では、Ar、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは多環式縮合環構造(例えばナフタレン)である。
【0147】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)のさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ベンゾ、ハロゲン(例えばフッ化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール部分とアリーレン部分は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0148】
正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物で形成すること、またはそのような化合物の混合物で形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式(D)に示したもの)と組み合わせて使用することができる。トリアリールアミンをテトラアリールジアミンと組み合わせて用いる場合には、テトラアリールジアミンは、トリアリールアミンと電子注入・輸送層に挟まれた層として配置される。有用な芳香族第三級アミンの代表例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
4,4'-ビス(ジフェニルアミノ)クアドリフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)-フェニルメタン
N,N,N-トリ(p-トリル)アミン
4-(ジ-p-トリルアミノ)-4'-[4-(ジ-p-トリルアミノ)-スチリル]スチルベン
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4"-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
4,4'-ビス[N-フェニル-N-(2-ピレニル)アミノ]ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミノ]フルオレン
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン
【0149】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許第1,009,041号に記載されている多環式芳香族化合物がある。3個以上のアミン基を有する芳香族第三級アミンを使用できる(その中にオリゴマー材料も含まれる)。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。
【0150】
発光層(LEL)
【0151】
有用な発光層(LEL)についてはすでに説明した。アメリカ合衆国特許第4,769,292号と第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の追加の発光層(LEL)は蛍光材料またはリン光材料を含むことができ、この領域で電子-正孔対が再結合する結果としてエレクトロルミネッセンスが発生する。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料にすることができる。発光材料は、通常は強い蛍光染料とリン光化合物(例えばWO 98/55561、WO 00/18851、WO 00/57676、WO 00/70655に記載されている遷移金属錯体)の中から選択される。発光材料は一般にホスト材料の0.01〜10質量%の割合で組み込まれる。
【0152】
ホスト材料と発光材料としては、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン、PPV)))が可能である。ポリマーの場合には、小分子発光材料をポリマーからなるホストに分子として分散させること、または発光材料を少量成分と共重合させてホスト・ポリマーに添加することができる。
【0153】
発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、その分子の最高被占軌道と最低空軌道のエネルギー差として定義されるバンドギャップ電位の比較である。ホストから発光材料に効率的にエネルギーが移動するための必要条件は、発光材料のバンドギャップがホスト材料のバンドギャップよりも小さいことである。リン光発光体の場合には、ホストの三重項エネルギー・レベルが十分に高くてホストから発光材料にエネルギーが移動できることも重要である。
【0154】
有用であることが知られているホスト材料および発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0155】
8-ヒドロキシキノリンおよびそれと同様の誘導体の金属錯体(一般式E)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0156】
【化49】

【0157】
一般式(E)において、Mは金属を表わし;nは1〜4の整数であり;Zは、現われるごとに独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0158】
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価、四価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、土類金属(アルミニウム、ガリウムなど)、遷移金属(亜鉛、ジルコニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価、四価の金属を使用することができる。
【0159】
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0160】
有用なキレート化オキシノイド化合物の代表例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III);Alq];
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)];
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II);
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III);
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム];
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)];
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)];
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)];
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]。
【0161】
アントラセンの誘導体(一般式F)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。アメリカ合衆国特許第6,465,115号とWO 2004/018587に開示されている非対称なアントラセン誘導体も有用なホストである。
【0162】
【化50】

【0163】
一般式(F)において、R1とR2は、独立に選択されたアリール基(例えばナフチル、フェニル、ビフェニル、トリフェニル、アントラセン)を表わす。R3とR4は、それぞれの環上の1個以上の置換基を表わす。この場合の各置換基は、以下に示すグループの中から個別に選択される。
グループ1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
グループ2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルの縮合芳香族環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の縮合ヘテロ芳香族環を完成させるのに必要な、5〜24個の炭素原子からなるヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:炭素原子が1〜24個のアルコキシルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素またはシアノ。
【0164】
アントラセンの有用な1つのクラスは9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(一般式G)である。
【0165】
【化51】

【0166】
一般式(G)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれの環上の1個以上の置換基を表わす。この場合の各置換基は、以下に示すグループの中から個別に選択される。
グループ1:水素、または炭素原子が1〜24個のアルキル;
グループ2:炭素原子が5〜20個のアリールまたは置換されたアリール
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルの縮合芳香族環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の縮合ヘテロ芳香族環を完成させるのに必要な、5〜24個の炭素原子からなるヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:炭素原子が1〜24個のアルコキシルアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素またはシアノ。
【0167】
有用なアントラセン材料の代表例はすでに説明した。
【0168】
ベンズアゾール誘導体(一般式H)はエレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の別のクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0169】
【化52】

【0170】
一般式(H)において、nは3〜8の整数であり;Zは、O、NR、Sのいずれかであり;RとR'は、個別に、水素;炭素原子が1〜24個のアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);アリール、またはヘテロ原子で置換されたアリールで炭素原子が5〜20個のもの(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニルや、これら以外の複素環系);ハロ(例えばクロロ、フルオロ);縮合芳香族環を完成させるのに必要な原子のいずれかである。Lは、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールのいずれかからなる結合単位であり、複数のベンズアゾールを互いに共役または非共役に結合させる。有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]である。
【0171】
アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されているように、ジスチリルアリーレン誘導体も有用なホストである。カルバゾール誘導体はリン光発光体のための特に有用なホストである。
【0172】
有用な蛍光発光材料としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物などがある。
【0173】
有用なリン光材料が報告されているのは、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/41512、WO 02/15645、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0017361、WO 01/93642、WO 01/39234、アメリカ合衆国特許第6,458,475号、WO 02/071813、アメリカ合衆国特許第6,573,651号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0197511、WO 02/074015、アメリカ合衆国特許第6,451,455号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0072964、2003/0068528、アメリカ合衆国特許第6,413,656号、第6,515,298号、第6,451,415号、第6,097,147号、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0124381、2003/0059646、2003/0054198、ヨーロッパ特許第1 239 526号、第1 238 981号、第1 244 155号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0100906、2003/0068526、2003/0068535、日本国特開2003/073387、2003/073388、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0141809、2003/0040627、日本国特開2003/059667、2003/073665、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0121638である。
【0174】
有用な蛍光材料とリン光材料の代表例として以下のものがあるが、これですべてではない。
【0175】
【化53】

【0176】
【化54】

【0177】
【化55】

【0178】
【化56】

【0179】
【化57】

【0180】
【化58】

【0181】
電子輸送層(ETL)
【0182】
有用な電子輸送層はすでに説明した。2つ以上のETLが存在していてもよい。本発明による有機ELデバイスの追加の電子輸送層を形成するのに用いる好ましい薄膜形成材料として金属キレート化オキシノイド化合物があり、その中にはオキシンそのもの(一般に8キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)のキレートも含まれる。このような化合物は電子を注入して輸送するのを助け、高性能を示し、容易に薄膜の形態になる。ここで考慮するオキシノイド系化合物の例は、すでに説明した一般式(E)を満たす化合物である。
【0183】
他の電子輸送材料として、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に開示されているさまざまなブタジエン誘導体と、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光剤がある。一般式(H)を満たすベンズアゾールも有用な電子輸送材料である。トリアジンも電子輸送材料として有用であることが知られている。さらに別の有用な材料は、ヨーロッパ特許第1,480,280号、第1,478,032号、第1,469,533号に記載されているシラシクロペンタジエン誘導体である。置換された1,10-フェナントロリン化合物が、例えば日本国特開2003-115387、2004-311184、2001-267080、WO 2002/043449に開示されている。トリアジンも有用な電子輸送材料として知られている。
【0184】
電子注入層(EIL)
【0185】
有用な電子注入層もすでに説明した。2つ以上の電子注入層が存在していてもよい。追加の電子注入層としては、存在しているのであれば、アメリカ合衆国特許第5,608,287号、第5,776,622号、第5,776,623号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,914,269号に記載されているものが挙げられる。有用な追加の電子注入層は、一般に、仕事関数が4.0eV未満の材料からなる。仕事関数が小さなアルカリ金属またはアルカリ土類金属(例えばLi、Cs、Ca、Mg)を含む薄膜を使用することができる。さらに、仕事関数が小さなこれらの金属をドープされた有機材料も電子注入層として有用である。その例は、LiまたはCsをドープされたAlqである。好ましい一実施態様では、追加の電子注入層にLiFが含まれている。実際には、電子注入層は、0.1〜3.0nmの範囲の適切な厚さに堆積された薄い層であることがしばしばある。
【0186】
カソード
【0187】
アノードだけを通して発光を見る場合には、本発明で使用するカソードは、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。有用な1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、カソードと、有機層(例えば電子輸送層(ETL))に接する薄い電子注入層(EIL)とを備えた構成の二層があり、EILの上にはより厚い導電性金属層を被せる。その場合、EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。他の有用なカソード材料のセットとしては、アメリカ合衆国特許第5,059,861号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0188】
カソードを通して発光を見る場合、カソードは、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、日本国特許第3,234,963号、アメリカ合衆国特許第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、ヨーロッパ特許第1 076 368号、アメリカ合衆国特許第6,278,236号、第6,284,393号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着)によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー-マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0 732 868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー・アブレーション、選択的化学蒸着などがある。
【0189】
他の有用な有機層とデバイスの構造
【0190】
層109と111を場合によってはまとめて単一の層にし、発光と電子輸送の両方をサポートする機能を担わせることができる場合がある。発光材料が正孔輸送層に含まれていてよいことも従来技術で知られている。その場合、正孔輸送層がホストとして機能する。多数の発光材料を1つ以上の層に添加し、例えば青色発光材料と黄色発光材料、またはシアン色発光材料と赤色発光材料、または赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料を組み合わせて白色発光OLEDを作ることができる。白色発光デバイスは、例えば、ヨーロッパ特許第1 187 235号、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0025419、ヨーロッパ特許第1 182 244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、第5,503,910号、第5,405,709号、第5,283,182号に記載されている。白色発光デバイスに適切な構成のフィルタを取り付けて着色光を発生させることができる。
【0191】
従来技術で知られている追加の層(例えば電子阻止層、正孔阻止層)を本発明のデバイスで使用することができる。正孔阻止層は、発光層と電子輸送層の間に用いることができる。電子阻止層は、正孔輸送層と発光層の間に用いることができる。これらの層は、例えばアメリカ合衆国特許出願公開2002/0015859に記載されているように、一般に発光効率を向上させるのに用いられる。
【0192】
本発明は、例えばアメリカ合衆国特許第5,703,436号と第6,337,492号に記載されているようないわゆる積層デバイス構造で使用することができる。
【0193】
有機層の堆積
【0194】
上記の有機材料は、その有機材料の形態に適した任意の手段で堆積させることが好ましい。小分子の場合には、昇華を通じてうまく堆積するが、他の手段で(例えば溶媒から)堆積させることもできる(そのとき、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましい。昇華によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から蒸発させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料を含む層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0195】
本発明の材料を堆積させる好ましい1つの方法は、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0255857とアメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/945,941号に記載されている。この方法では、異なる蒸発源を用いて本発明のそれぞれの材料を蒸発させる。第2の好ましい方法では、温度制御された材料供給路に沿って材料が計量供給されるフラッシュ気化が利用される。好ましいこのような方法は、譲受人に譲渡された以下の特許出願:アメリカ合衆国特許出願シリアル番号第10/784,585号、第10/805,980号、第10/945,940号、第10/945,941号、第11/050,924号、第11/050,934号に記載されている。この第2の方法を利用し、異なる蒸発源からそれぞれの材料を蒸発させること、または複数の固体材料を混合した後に同じ蒸発源を用いて蒸発させることができる。
【0196】
封止
【0197】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封止と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標)、交互に積層された無機層/ポリマー層)が、封止法として知られている。
【0198】
光学的最適化
【0199】
本発明のOLEDデバイスでは、特性の向上を望むのであれば、よく知られたさまざまな光学的効果を利用することが可能である。例示すると、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、色変換フィルタをディスプレイの表面に設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングは、特にカバーの上に、またはカバーの一部として設けることができる。
【0200】
本発明の実施態様は、より大きな輝度収率、より低い駆動電圧、より大きな電力効率、より長い動作寿命、製造しやすさなどの利点を提供することができる。本発明において有用なデバイスの実施態様は、広い範囲の色相を提供することができる。その中には、(マルチカラー・ディスプレイにするため直接的な、またはフィルタを通じた)白色光の発生に役立つ色相も含まれる。本発明の実施態様は、エリア照明装置も提供することができる。
【実施例】
【0201】
本発明とその利点を以下の特別な実施例によってさらに説明する。“パーセンテージ”または“パーセント”という用語と“%”という記号は、デバイスの本発明による層と他の素子に含まれる全材料のうちの特定の第1の化合物または第2の化合物の体積パーセント(または薄膜の厚さモニタで測定した厚さの比)を表わす。第2の化合物が2種類以上存在している場合には、その第2の材料の合計体積は、本発明の層に含まれる全材料のパーセンテージとして表わすこともできる。
【0202】
実施例1
電気化学的酸化還元電位と推定エネルギー・レベル
【0203】
LUMO値とHOMO値は、一般に電気化学的な方法で実験的に推定される。以下の方法は、酸化還元特性を測定する有用な1つの手段である。モデルCHI660電気化学分析装置(CHインスツルメンツ社、オースチン、テキサス州)を使用して電気化学的を行なった。サイクリック・ボルタンメトリー(CV)とオスターヤング矩形波ボルタンメトリー(SWV)を利用して興味の対象となる化合物の酸化還元特性を明らかにした。ガラス状炭素(GC)からなるディスク電極(A=0.071cm2)を作用電極として使用した。GC電極は、0.05μmのアルミナ・スラリーで研磨した後、ミリ-Q脱イオン水の中で超音波洗浄し、次いでアセトンを用いてリンスし、再びミリ-Q脱イオン水の中で超音波洗浄した。電極を最終的にクリーンにして電気化学的処理によって活性化した後、使用した。白金ワイヤーを補助電極として用い、飽和カロメル電極(SCE)を準参照電極として用いて標準的な3電極電気化学的セルを完成させた。フェロセン(Fc)を内標準(1:1アセトニトリル/トルエン、0.1MのTBAFの中でSCEを基準にしてEFc=0.50V)として使用した。アセトニトリルとトルエンの混合物(50%/50%v/vすなわち1:1)を有機溶媒系として用いた。サポート用電解質であるテトラフルオロホウ酸テトラブチルアンモニウム(TBAF)をイソプロパノールの中で2回再結晶させ、真空下で乾燥させた。使用したどの溶媒も、含水量が極めて少ないグレードであった(水が20ppm未満)。テスト溶液を高純度窒素ガスで約5分間にわたってパージして酸素を除去し、実験中は窒素ブランケットが溶液の上部に被さった状態を維持した。すべての測定を25±1℃という周囲温度で実施した。可逆的電極プロセスまたは準可逆的電極プロセスに関してはアノード・ピーク電位(Ep, a)とカソード・ピーク電位(Ep, c)を平均することによって、不可逆的プロセスに関しては(SWVにおける)ピーク電位に基づき、酸化還元電位を決定した。LUMO値とHOMO値は以下の式から計算される。
可逆的プロセスまたは準可逆的プロセスに関してSCEを基準とした正式な還元電位:
E0/還元 = (Epa + Epc)/2
E0/酸化 = (Epa + Epc)/2
Fcを基準とした正式な還元電位:
Fcに対するE0/還元= (SCEに対するE0'還元 ) - EFc
Fcに対するE0/酸化= (SCEに対するE0'酸化 ) - EFc
ただしEFcはフェロセンの酸化電位E酸化である。
LUMO値とHOMO値の予想される下限:
LUMO = HOMOFc - (Fcに対するE0/還元 )
HOMO = HOMOFc - (Fcに対するE0/酸化 )
ただしHOMOFc(フェロセンの最高被占軌道)は-4.8eVである。
【0204】
酸化還元電位と、推定されたLUMO値およびHOMO値を表1にまとめてある。
【0205】
【表1】

【0206】
【化59】

【0207】
【化60】

【0208】
興味の対象である化合物のLUMO値は、分子軌道の計算からも推定できる。典型的な計算は、ガウシャン98(ガウシャン社、ピッツバーグ、ペンシルヴェニア州)コンピュータ・プログラムに含まれているB3LYP法を利用して計算できる。B3LYP法で使用される基本セットは、以下のように定義される。すなわち、MIDI!(MIDI!が定義されているすべての原子に対して用いる)と、6-31G*(6-31G*で定義されているが、MIDI!では定義されていないすべての原子に対して用いる)と、LACV3PまたはLANL2DZという基本セットと擬ポテンシャル(MIDI!または6-31G*で定義されていない原子に対して用いられ、LACV3Pのほうが好ましい)である。残るすべての原子に関しては、公開されている任意の基本セットと擬ポテンシャルを用いることができる。MIDI!、6-31G*、LANL2DZは、ガウシャン98コンピュータ・コードに含まれているものが用いられ、LACV3Pは、Jaguar4.1(シュレーディンガー社、ポートランド、オレゴン州)コンピュータ・コードに含まれているものが用いられる。計算により、ハートリー単位(1ハートリー単位は27.21eV)で表わした最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギー・レベルが得られる。
【0209】
実施例2
デバイス1-1〜1-12の製造
【0210】
一連のELデバイス(1-1〜1-12)を以下のようにして構成した。
【0211】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0212】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0213】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0214】
4.表2aに示したホスト材料I-1、TBADN、Alqのいずれかに対応していて発光材料D-1またはD-2を0.75体積%のレベル(表2a)で含む厚さ20.0nmの発光層(LEL)を堆積させた。
【0215】
5.I-1またはTBADN(表2a)からなる電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。ETLの厚さは32.5nmであった。
【0216】
6.AlqまたはTPBI(表2a)を含む電子注入層(EIL)を、やはり表2aに示した厚さでETLの上に堆積させた。
【0217】
7.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの追加の電子注入層をEILの上に真空蒸着した後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着してカソード層を形成した。
【0218】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。
【0219】
【化61】

【0220】
【化62】

【0221】
【表2】

【0222】
デバイスの輝度効率を20mA/cm2の動作電流でテストした。その結果を、表2bに、輝度収率(cd/A)、効率(W/A)、電力効率(ルーメン/ワット)の形態で示してある。デバイスの効率は、そのデバイスが1アンペアの入力電流によって発生させる放射束(単位はワット)である。ただし放射束は、デバイスが単位時間に発生させる光のエネルギーである。光の強度は、通常はデバイスの面に垂直に測定され、角度依存性はランバートの法則によると仮定する。駆動電圧はボルトで示してあり、ITOの電圧低下に関して補正されている。
【0223】
【表3】

【0224】
表2bから、実施例の各グループについて、本発明のデバイスは比較用デバイスと比べて電圧が低くて電力効率が大きいことがわかる。
【0225】
実施例3
デバイス2-1〜2-11の製造
【0226】
一連のELデバイス(2-1〜2-11)をデバイス1-1と同様の方法で以下のようにして構成した。
【0227】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0228】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0229】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0230】
4.ホスト材料I-1に対応していて発光材料D-1を0.75体積%のレベルで含む発光層(LEL)をHTLの上に厚さ20.0nmに堆積させた。
【0231】
5.ルブレンまたはI-1(表3a参照)からなる電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。ETLの厚さも表3aに示してある。
【0232】
6.Bphenを含む電子注入層(EIL)をETLの上に表3aに示した厚さに堆積させた。
【0233】
7.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの電子注入層をETLの上に真空蒸着した後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着してカソード層を形成した。
【0234】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。これらのデバイスをデバイス1-1と同様にしてテストした。その結果を表3bに示してある。
【0235】
【化63】

【0236】
【表4】

【0237】
【表5】

【0238】
表3bの結果から、電子輸送層にアントラセン誘導体(I-1)を含む本発明のデバイスは、平均として、ETLにナフタセン材料(ルブレン)を含む比較用デバイスよりも電圧が低くて電力効率が大きいことがわかる。この実施例ではEIL層の厚さも変化させる。その場合に本発明のデバイスの最適な厚さは5〜20nmの範囲である。
【0239】
実施例4
デバイス3-1〜3-12の製造
【0240】
一連のELデバイス(3-1〜3-12)をデバイス1-1と同様の方法で以下のようにして構成した。
【0241】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0242】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0243】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0244】
4.ホスト材料I-1、TBADN、Alqのいずれかに対応していて発光材料D-1またはD-2を含む発光層(LEL)を20nmまたは40nmの厚さに堆積させた。LELのホストおよびドーパントと各デバイスの厚さに関しては表4aを参照のこと。
【0245】
5.I-1またはTBADN(表4a参照)からなる電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。ETLの厚さは25nmであった。
【0246】
6.Bphenからなる電子注入層(EIL)をETLの上に10nmの厚さに堆積させた。
【0247】
7.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの電子注入層をETLの上に真空蒸着した後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着してカソード層を形成した。
【0248】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。これらのデバイスをデバイス1-1と同様にしてテストした。その結果を表4bに示してある。
【0249】
【表6】

【0250】
【表7】

【0251】
この実施例は、2位と9位と10位に芳香族基を有するアントラセン化合物I-1が電子輸送層に含まれているときのデバイスの性能を、アントラセンが9位と10位に芳香族基を、2位にアルキル基を有する(TBADN)比較用デバイスと比べた場合を示している。表4bに示した結果から、本発明のデバイスと比較用デバイスの各ペアについて、本発明のデバイスが対応する比較用デバイスよりも電圧が低くて電力効率が大きいことがわかる。
【0252】
実施例5
デバイス4-1〜4-7の製造
【0253】
一連のELデバイス(4-1〜4-7)をデバイス1-1と同様の方法で以下のようにして構成した。
【0254】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0255】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0256】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0257】
4.ホスト材料I-1に対応していて発光材料D-1を0.75体積%のレベルで含む発光層(LEL)をHTLの上に厚さ20nmに堆積させた。
【0258】
5.表5aに示した材料からなる電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。ETLの厚さも表5aに示してある。
【0259】
6.表5aに示した材料からなる電子注入層(EIL)をETLの上にやはり表5aに示した厚さに堆積させた。
【0260】
7.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの電子注入層をETLの上に真空蒸着した後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着してカソード層を形成した。
【0261】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。これらのデバイスをデバイス1-1と同様にしてテストした。その結果を表5bに示してある。
【0262】
【表8】

【0263】
【表9】

【0264】
図5bに示したテスト結果から、本発明のデバイスは、平均として、比較用デバイスよりも電圧が低くて電力効率が大きいことがわかる。この場合、EILでDPBiPを用いるときのEILの最適な厚さは1.5〜10nmである。
【0265】
実施例6
デバイス5-1〜5-6の製造
【0266】
一連のELデバイス(5-1〜5-6)をデバイス1-1〜1-12と同様の方法で以下のようにして構成した。
【0267】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0268】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0269】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0270】
4.ホスト材料I-1に対応していて発光材料D-3を1.5体積%のレベルで含む発光層(LEL)をHTLの上に厚さ20nmに堆積させた。
【0271】
5.材料I-1からなる電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。ETLの厚さは表6aに示してある。
【0272】
6.Bphenからなる電子注入層(EIL)をETLの上に表6aに示した厚さに堆積させた。
【0273】
7.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの電子注入層をETLの上に真空蒸着した後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着してカソード層を形成した。
【0274】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。これらのデバイスをデバイス1-1と同様にしてテストした。その結果を表6bに示してある。
【0275】
【化64】

【0276】
【表10】

【0277】
【表11】

【0278】
表6bからわかるように、本発明のデバイスは、平均として、比較用デバイスよりも電圧が低くて電力効率が大きいことがわかる。この場合、EILの最適な厚さは1.4nmよりも厚い。
【0279】
実施例7
デバイス6-1〜6-9の製造
【0280】
一連のELデバイス(6-1〜6-9)をデバイス1-1と同様の方法で以下のようにして構成した。
【0281】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0282】
2.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0283】
3.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0284】
4.ホスト材料I-1に対応していて発光材料D-1を0.75体積%のレベルで含む発光層(LEL)をHTLの上に厚さ20nmに堆積させた。
【0285】
8.材料I-1からなる電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。ETLの厚さは表7aに示してある。
【0286】
9.Bphen、TPBI、Liq(表7a参照)のいずれかからなる電子注入層(EIL)をETLの上に表7aに示した厚さに堆積させた。
【0287】
10.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの電子注入層をETLの上に真空蒸着した後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着してカソード層を形成した。
【0288】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。これらのデバイスをデバイス1-1と同様にしてテストした。その結果を表7bに示してある。
【0289】
【化65】

【0290】
【表12】

【0291】
【表13】

【0292】
この実施例は、EILでのさまざまな材料の利用を示している。本発明のデバイスは、平均として、比較用デバイスよりも電圧が低くて電力効率が大きい。
【0293】
実施例8
デバイス7-1〜7-12の製造
【0294】
一連のELデバイス(7-1〜7-12)をデバイス1-1と同様の方法で以下のようにして構成した。
【0295】
アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0296】
1.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0297】
2.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0298】
3.表8aに示したようにホスト材料I-1、H-1、TBADNのいずれかに対応していて発光材料D-1を0.75体積%のレベルで含む発光層(LEL)をHTLの上に厚さ20nmに堆積させた。
【0299】
4.材料I-1からなる電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。ETLの厚さも表8aに示してある。
【0300】
5.Bphenからなる電子注入層(EIL)をETLの上に表8aに示した厚さに堆積させた。
【0301】
6.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの電子注入層をETLの上に真空蒸着した後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着してカソード層を形成した。
【0302】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。これらのデバイスをデバイス1-1と同様にしてテストした。その結果を表8bに示してある。
【0303】
【化66】

【0304】
【表14】

【0305】
【表15】

【0306】
この実施例では、LELに含まれるさまざまなホスト材料を比較するとともに、ETLとEILの厚さの違いを比較する。表8bを見ると、本発明のデバイスはすべて、電圧が低くて電力効率が優れていることがわかる。LELのホスト材料として、例えばI-1や、2位と9位と10位に芳香族基を有するアントラセン化合物が特に望ましい。
【0307】
実施例9
デバイス8-1〜8-5の製造
【0308】
一連のELデバイス(8-1〜8-5)をデバイス1-1と同様の方法で以下のようにして構成した。
【0309】
アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0310】
1.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0311】
2.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0312】
3.ホスト材料I-1に対応していて発光材料D-1を1体積%のレベルで含む発光層(LEL)をHTLの上に厚さ20nmに堆積させた。
【0313】
4.材料I-1からなる電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。ETLの厚さは表9aに示してある。
【0314】
5.2,2'-ジピリジル誘導体BP-1からなる電子注入層(EIL)をETLの上に表9aに示した厚さに堆積させた。
【0315】
6.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの電子注入層をETLの上に真空蒸着した後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着してカソード層を形成した。
【0316】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。これらのデバイスをデバイス1-1と同様にしてテストした。その結果を表9bに示してある。
【0317】
【化67】

【0318】
【表16】

【0319】
【表17】

【0320】
2,2'-ジピリジル化合物BP-1を電子注入材料として用い、アントラセン材料I-1を電子輸送材料として用いた本発明のデバイス8-1〜8-4は、電圧が低くて電力効率が優れている。BP-1だけを用いた比較用デバイスは、電圧がより高くて電力効率がより低い。
【0321】
実施例10
デバイス9-1〜9-5の製造
【0322】
一連のELデバイス(9-1〜9-5)をデバイス1-1と同様の方法で以下のようにして構成した。
【0323】
アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)層を25nmの厚さにコーティングしたガラス基板に対し、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに約1分間にわたって曝露するという操作を順番に実施した。
【0324】
1.アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているようにしてCHF3をプラズマ支援堆積させることにより、ITOの上に厚さ1nmのフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を堆積させた。
【0325】
2.次に、正孔輸送材料である4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)からなる層を75nmの厚さに堆積させた。
【0326】
3.ホスト材料I-1に対応していて発光材料D-1を0.6体積%のレベルで含む発光層(LEL)をHTLの上に厚さ20nmに堆積させた。
【0327】
4.材料I-1からなる電子輸送層(ETL)をLELの上に真空蒸着した。ETLの厚さは表10aに示してある。
【0328】
5.フェナントロリン誘導体A-2からなる電子注入層(EIL)をETLの上に表10aに示した厚さに堆積させた。
【0329】
6.フッ化リチウムからなる厚さ0.5nmの電子注入層をETLの上に真空蒸着した後、150nmのアルミニウム層を真空蒸着してカソード層を形成した。
【0330】
上記の一連の操作によってELデバイスの堆積が完了した。次に、このデバイスを周囲の環境から保護するため、乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。これらのデバイスをデバイス1-1と同様にしてテストした。その結果を表10bに示してある。
【0331】
【化68】

【0332】
【表18】

【0333】
【表19】

【0334】
表10bに示してあるように、電子輸送材料としてのアントラセンI-1を電子注入材料としてのフェナントロリンA-2と組み合わせて用いたデバイス(9-2〜9-5)は、アントラセン材料だけを用いた比較用デバイスと比べて電力効率が大きくて電圧が低い。
【0335】
この明細書の中で引用した特許とそれ以外の刊行物のあらゆる内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。本発明を好ましいくつかの実施態様を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明の精神と範囲の中でさまざまなバリエーションや変形が可能であることが理解されよう。
【符号の説明】
【0336】
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層(HIL)
107 正孔輸送層(HTL)
109 発光層(LEL)
110 電子輸送層(ETL)
111 電子注入層(EIL)
112 第2の電子注入層
113 カソード
150 電圧/電流源
160 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カソードと、アノードと、その間にある発光層(LEL)とを備えるとともに、LELのカソード側にある電子輸送層(ETL)と、そのETLのカソード側に隣接した有機電子注入層(EIL)とをさらに備えていて、上記ETLが、2位と9位と10位に芳香族基を有するモノアントラセン化合物を含むエレクトロルミネッセンス・デバイス。
【請求項2】
上記ETLが、ナフチル基またはビフェニル基で9位が置換され、独立に選択されたナフチル基またはビフェニル基で10位が置換されたモノアントラセン化合物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
上記ETLが、2個以下の縮合環を有するアリール基で2位が置換されたモノアントラセン化合物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
上記ETLが、独立に選択された芳香族基を2位と6位と9位と10位に有するモノアントラセン化合物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
上記モノアントラセン化合物が一般式(1):
【化1】

で表わされる(ただし、
w1、w3、w4、w5、w6、w7、w8は、水素または独立に選択された置換基を表わし;
w2、w9、w10は、独立に選択された芳香族基を表わす)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
上記モノアントラセン化合物と上記複素環化合物のLUMO値の差が0.2eV以下である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
上記電子注入層が、上記モノアントラセン化合物のLUMO値と等しいかよりプラスのLUMO値を持つ複素環化合物を含む、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
上記電子注入層が、(a)少なくとも3つの縮合芳香族環を含む少なくとも1つの置換基を有する1,10-フェナントロリンの誘導体、(b)ベンゾイミダゾールの誘導体、(c)8-キノレートの金属錯体又は(d)2,2-ビピリジル誘導体を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
上記LELが、上記モノアントラセン化合物のLUMO値との差が0.2eV以下であるLUMO値を持つホスト材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
上記LELが、青色、青-緑色、緑色いずれかの光を出す、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
上記LELが、2位と9位と10位に芳香族基を有するアントラセン材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
上記LELが、ホウ素含有発光材料、またはスチリルアレン誘導体含有発光材料を含む、請求項1に記載のデバイス。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−65878(P2013−65878A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−256308(P2012−256308)
【出願日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【分割の表示】特願2009−507719(P2009−507719)の分割
【原出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】