説明

アントラセン誘導体ホストを有するエレクトロルミネッセンス・デバイス

【課題】有機ELデバイスの性能向上。
【解決手段】アントラセン材料を含む発光層を含んでなるエレクトロルミネッセンス・デバイスであって、このアントラセン材料は、2位に少なくとも1つのアリール環を有し、6位に水素またはアルキル基を有し、12個以下の芳香族炭素環を含み、当該アントラセン基の9位に少なくとも1つのナフタレン基を有し、その10位にアリール基を有し、さらに該アントラセン材料の環には炭素環だけが含まれているエレクトロルミネッセンス・デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作安定性が優れた特定のアントラセン化合物を含むホストと、発光材料とが含まれた発光層を有する有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(EL)デバイスは20年以上前から知られているが、性能が限られているため、望ましい多くの用途にとっての障害となっていた。最も単純な形態の有機ELデバイスは、正孔を注入するためのアノードと、電子を注入するためのカソードと、これら電極に挟まれていて、電荷の再結合をサポートして光を発生させる有機媒体とで構成されている。このようなデバイスは、一般に有機発光ダイオード、またはOLEDとも呼ばれる。初期の代表的な有機ELデバイスは、1965年3月9日に付与されたGurneeらのアメリカ合衆国特許第3,172,862号;1965年3月9日に付与されたGurneeのアメリカ合衆国特許第3,173,050号;Dresner、「アントラセンにおける二重注入エレクトロルミネッセンス」、RCA Review、第30巻、322〜334ページ、1969年;1973年1月9日に付与されたDresnerのアメリカ合衆国特許第3,710,167号である。これらデバイスの有機層は、通常は多環芳香族炭化水素で構成されているために非常に厚かった(1μmよりもはるかに厚い)。その結果、動作電圧が非常に大きくなり、100Vを超えることがしばしばあった。
【0003】
より最近の有機ELデバイスは、アノードとカソードに挟まれた極めて薄い層(例えば1.0μm未満)からなる有機EL素子を含んでいる。この明細書では、“有機EL素子”という用語に、アノード電極とカソード電極に挟まれたいろいろな層が含まれる。厚さを薄くして有機層の抵抗値を小さくすることで、デバイスがはるかに低電圧で動作できるようになった。アメリカ合衆国特許第4,356,429号に初めて記載された基本的な2層ELデバイス構造では、EL素子のアノードに隣接する一方の有機層は正孔を輸送するように特別に選択されているため、正孔輸送層と呼ばれ、他方の有機層は電子を輸送するように特別に選択されているため、電子輸送層と呼ばれる。有機EL素子の中で注入された正孔と電子が再結合することで効率的なエレクトロルミネッセンスが出る。
【0004】
正孔輸送層と電子輸送層の間に有機発光層(LEL)を含む3層有機ELデバイスも提案されている。それは例えば、Tangら(J. Applied Physics、第65巻、3610〜3616ページ、1989年)によって開示されているものである。発光層は、一般に、ゲスト材料(ドーパントとしても知られる)をドープされたホスト材料からなる。さらに、アメリカ合衆国特許第4,769,292号には、正孔注入層(HIL)と、正孔輸送層(HTL)と、発光層(LEL)と、電子輸送/注入層(ETL)とを備える4層EL素子が提案されている。これらの構造によってデバイスの効率が向上した。
【0005】
こうした初期の発明以来、デバイスの材料をさらに改善することで、色彩、安定性、輝度効率、製造しやすさなどの面で性能が向上した。そのことが、特にアメリカ合衆国特許第5,061,569号、第5,409,783号、第5,554,450号、第5,593,788号、第5,683,823号、第5,908,581号、第5,928,802号、第6,020,078号、第6,208,077号に開示されている。
【0006】
アントラセンをベースとしたホストがしばしば用いられている。9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンという有用なホストのクラスが、アメリカ合衆国特許第5,935,721号に開示されている。発光層でビスアントラセン化合物を使用してデバイスの半減期を改善することが、アメリカ合衆国特許第6,534,199号とアメリカ合衆国特許出願公開2002/0136922に開示されている。アントラセン化合物を用いることによって輝度が向上したエレクトロルミネッセンス・デバイスは、アメリカ合衆国特許第6,582,837号に開示されている。アントラセンは、アメリカ合衆国特許第6,465,115号に開示されているように、正孔輸送層(HTL)にも使用されてきた。さらに、ELデバイスにアントラセン材料を用いた他の特許文献として、アメリカ合衆国特許第5,972,247号、日本国特開2001-097897、日本国特開2000-273056、アメリカ合衆国特許出願公開2002/0048687、WO 03/060956、WO 02/088274、WO 03/087023、ヨーロッパ特許第0429821号、WO 03/007658、日本国特開2000-053677、日本国特開2001-335516がある。
【0007】
Kimらは、二重スピロアントラセン誘導体を報告している(アメリカ合衆国特許出願公開2004/0023060)。報告されている材料の中に、9,10置換アントラセンの2位に二重スピロ基を有するものがある。しかしこのタイプの材料は多数の炭素環を持っている可能性があり、昇華温度が高い可能性がある。
【0008】
S. Yoonらは、1〜2個のイミダゾール基が9,10置換アントラセンの2位または2,6位に位置するアントラセン材料を報告している(WO 03/060956)。日本国特開2004-059535には、アリール基とヘテロアリール基が9,10置換アントラセンの2位または2,6位に位置するアントラセン材料が記載されている。しかしこのような位置に置換を有するアントラセンは製造することが難しくて高価になる可能性があるため、ホスト材料の望ましいすべての実施態様を与えることはできないであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうした進歩にもかかわらず、高輝度収率であると同時に、動作安定性が向上していて、望ましい色相を持ち、製造が容易なホストが相変わらず必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明により、アントラセン材料を含む発光層を含んでなるエレクトロルミネッセンス・デバイスであって、該アントラセン材料は、2位に少なくとも1つのアリール環を有し、6位に水素またはアルキル基を有し、12個以下の芳香族炭素環を含み、当該アントラセン基の9位に少なくとも1つのナフタレン基を有し、かつ、その10位にアリール基を有し、さらに該アントラセン材料の環には炭素環だけが含まれているエレクトロルミネッセンス・デバイスが提供される。本発明には、このアントラセン化合物のほか、ディスプレイ、照明装置、このエレクトロルミネッセンス・デバイスの利用法も含まれる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施態様により、高輝度収率が提供され、動作安定性が向上し、望ましい色相が得られ、製造が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用できる典型的なOLEDデバイスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、全体として上記のようになっている。本発明の一実施態様では、エレクトロルミネッセンス・デバイスは多層デバイスであり、カソードと、アノードと、電荷注入層(必要な場合)と、電荷輸送層と、ホストと少なくとも1つの発光材料とを含む少なくとも1つの発光層(LEL)とを備えている。
【0014】
このデバイスは、2位に少なくとも1つのアリール環(例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基)を有するアントラセン材料を含む層を備えている。このアントラセン材料は、6位に水素またはアルキル基(例えばメチル基またはt-ブチル基)も有する。このアントラセン材料は12個以下の芳香族炭素環を備えており、その環には炭素環だけが含まれている。望ましい一実施態様では、このアントラセン材料は10個までの炭素環を備えている。このアントラセン材料は、アントラセンの9位に少なくとも1個のナフタレン基を含んでいる。好ましい一実施態様では、このナフタレン基は2-ナフチル基である。アントラセンの10位はアリール置換基である。一実施態様では、このアリール置換基はナフチル基(例えば2-ナフチル基)またはビフェニル基(例えば4-ビフェニル基)である。望ましい一実施態様では、9位と10位は同じナフチル基で置換されている。このアントラセン材料は、アントラセン部分を1つだけ備えていることが好ましい。すなわち化合物中にアントラセン基が1個だけであることが好ましい。別の一実施態様では、このアントラセン材料は、アントラセン部分を2つだけ備えている。すなわち化合物中に、独立に選択した2個のアントラセン基が存在している。
【0015】
一実施態様では、このアントラセン材料は一般式(1)で表わされる。
【0016】
【化1】

【0017】
一般式(1)において、Ar2はアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基)を表わす。Ar9はナフチル基(例えば2-ナフチル基、1-ナフチル基)を表わす。Ar10はアリール基を表わす。アリール基の具体例は、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基である。一般式(1)において、v1、v3、v4、v5、v7、v8は、独立に、水素、または独立に選択した置換基(アリール基(例えばフェニル基)やアルキル基(例えばt-ブチル基)など)を表わす。一般式(1)において、v6は、水素またはアルキル基(例えばt-ブチル基)を表わす。
【0018】
このアントラセン材料は、発光材料を含む層の中に存在することが望ましい。アントラセン材料がホスト材料を含んでいることが好ましく、ホスト材料は2種類以上存在していてもよい。発光材料は、ホストの15容積%以下の量で存在している。この量は一般に0.1〜10容積%であり、より一般的なのはホストの0.1〜5.0容積%である。
【0019】
このアントラセン材料は、繰り返し単位の主鎖または側鎖を有するオリゴマーまたはポリマーの一部であってもよい。有用な一実施態様では、ELデバイスの少なくとも1つの層がポリマー材料を含んでいる。好ましい別の一実施態様では、ELデバイスの少なくとも2つの層がポリマー材料を含んでいる。
【0020】
ホストとともに用いる蛍光発光材料を選択する際の重要な1つの関係は、ホストと蛍光材料の励起一重項状態のエネルギーの比較である。蛍光材料の励起一重項状態のエネルギーは、ホスト材料の励起一重項状態のエネルギーよりも低いことが非常に望ましい。励起一重項状態のエネルギーは、発光する一重項状態と基底状態のエネルギー差として定義される。非発光性ホストに関しては、基底状態と同じ電子スピンの最低励起状態が発光状態であると考えられる。
【0021】
この層は、発光材料の性質に応じて青〜赤の範囲の光を出すことができる。R.W. Hunt、『写真、印刷、テレビにおける色の再現』(第4版、1987年、ファウンテン出版)によると、青色光は、一般に、電磁スペクトルの可視領域内の450〜480nmの波長範囲として定義され、青-緑色は480〜510nm、緑色は510〜550nm、緑-黄色は550〜570nm、黄色570〜590nm、オレンジ色は590〜630nm、赤色は630〜700nmとして定義される。これらの成分を適切に組み合わせると白色光が発生する。これらの範囲がいくらか重なり合ったスペクトル・プロファイルを持つ光の場合、両方の色成分(例えば、青-緑、黄-オレンジ、オレンジ-赤)を持つと大まかに言える。
【0022】
本発明のアントラセン材料は、青色材料または青-緑色材料にとって特に有用なホストである。青色光または青-緑色光を出す多数の材料が従来技術で知られており、本発明を実施する際に使用することが考えられる。青色発光体の特に有用なクラスとして、ペリレンとその誘導体(例えば1個以上の置換基(アルキル基やアリール基など)を有するペリレン核)がある。発光材料として使用するのが望ましいペリレン誘導体は、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレンである。
【0023】
蛍光材料の別の有用なクラスとして、青色または青緑色の光を出すジスチリルアレン誘導体(例えばジスチリルベンゼン、ジスチリルビフェニル)がある。その中には、アメリカ合衆国特許第5,121,029号に記載されている化合物も含まれる。青色または青緑色の光を出すジスチリルアレン誘導体のうちで特に有用なのは、ジアリールアミノ基で置換されたもの(ジスチリルアミンとしても知られる)である。具体例として、以下の一般式(2a)と(2b)に示したものがある(ただしRa〜Rhは同じでも異なっていてもよく、個別に、水素または1個以上の置換基を表わす)。置換基としては、例えばアルキル基(メチル基など)またはアリール基(フェニル基など)が可能である。
【0024】
【化2】

【0025】
【化3】

【0026】
有用なジスチリルアミンの代表例は、以下の(2c)と(2d)に示す青色または青緑色の発光体である。
【0027】
【化4】

【0028】
青色または青緑色を出す発光体の別の有用なクラスにホウ素原子がある。ホウ素を含む望ましい発光材料としては、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0198829と2003/0201415がある。青色または青緑色を出す適切な発光材料は、一般式(3a)で表わされる。
【0029】
【化5】

【0030】
一般式(3a)において、AraとArbは、独立に、5員または6員の芳香族環基(例えばピリジン基)を形成するのに必要な原子を表わす。ZaとZbは、独立に選択した置換基(例えばフルオロ置換基)を表わす。一般式(3a)において、wはNまたはC-Yを表わす。ただしYは、水素または置換基(芳香族基(フェニル基、トリル基など)、アルキル基(メチル基など)、シアノ置換基、トリフルオロメチル置換基など)を表わす。
【0031】
有用なホウ素含有蛍光材料の代表例を以下に示す。
【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
緑色発光材料の特に有用なクラスにキナクリドン化合物がある。有用なキナクリドンは、アメリカ合衆国特許出願公開2004/0001969、アメリカ合衆国特許第6,664,396号、第5,593,788号、日本国特開09-13026に記載されている。一実施態様では、発光層の中の発光材料は、一般式(4)で表わされるキナクリドン化合物である。
【0035】
【化8】

【0036】
一般式(4)において、s1〜s10は、独立に、水素、または独立に選択した置換基(例えばフェニル基、トリル基、ハロゲン(Fなど)、アルキル基(メチル基など))を表わす。互いに隣接する置換基が合わさって環を形成してもよい(例えば縮合ベンゼン環基)。
【0037】
一般式(4)において、s11とs12は、独立に、アルキル基または芳香族基を表わす。好ましい一実施態様では、s11とs12は、独立に、フェニル環基(例えばフェニル環またはトリル環)を表わす。
【0038】
有用なキナクリドン化合物の代表例を以下に示す。
【0039】
【化9】

【0040】
【化10】

【0041】
緑色発光材料の特に有用な別のクラスにクマリン化合物がある。有用なクマリンは、例えば、Tangらのアメリカ合衆国特許第4,769,292号、第6,020,078号に記載されている。本発明の一実施態様では、発光層の中の第3の材料は、一般式(5)で表わされるクマリンである。
【0042】
【化11】

【0043】
一般式(5)において、w11とw12は、独立に選択した置換基(例えばアルキル基またはアリール基)を表わす。しかしw11とw12は、互いに合わさって環を形成したり、w13およびw14と合わさって環を形成したりしてもよい。w11とw12は、独立に選択したアルキル基であることが望ましいが、w11とw12は、互いに合わさって飽和した環を形成したり、w13およびw14と合わさって飽和した環を形成したりしてもよい。一般式(5)において、w13〜w16は、独立に、水素、または独立に選択した置換基(例えばフェニル環基またはメチル基)を表わす。互いに隣接する置換基が合わさって環を形成してもよい(例えば縮合ベンゼン環基)。一般式(5)において、w17は、複素芳香族環(例えばベンゾチアゾール環基)を完成させるのに必要な原子を表わす。有用なクマリン化合物の代表例を以下に示す

【0044】
【化12】

【0045】
別の有用な発光材料の具体例として、アントラセン、フルオレン、ペリフランテン、インデノペリレンの誘導体がある。
【0046】
本発明で用いるアントラセンは、高輝度であって優れた動作安定性を示すELデバイスにおいて有用である。この化合物は、白色光を出すELデバイスのほか、フル・カラーELデバイスや動画デバイスにおいて有用である。
【0047】
本発明の望ましい一実施態様では、このデバイスは、光を出す2つ以上の層を備えている。このデバイスは白色光を出すことが好ましい。このデバイスの1つの層は、ルブレンまたはルブレン誘導体を含んでいることが望ましい。
【0048】
有用なアントラセン材料はさまざまな方法で製造することができる。例えば反応ステップRx-A〜Rx-Cに示した方法がある。ブロモ-アリール化合物(Ar1Br)をリチウム試薬(例えばt-ブチルリチウム)と反応させると、アリール-リチウム塩が形成される。このアリール-リチウム塩は化合物E-1と反応することができ、E-2が形成される(Rx-A)。E-2の脱水と、例えばKI、NaH2PO2、酢酸を用いた芳香族化により、アントラセンE-3が得られる(Rx-B)。鈴木カップリング条件下で例えばトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、トリシクロヘキシルホスフィン、リン酸カリウム塩基を用いてこのアントラセンをアリールボロン酸(Ar2-B(OH)2)と反応させると、望むアントラセン材料であるE-4が得られる(Rx-C)。鈴木カップリング反応およびそれと同様の反応の概説に関しては、J. Hassan、M. Sevignon、C. Gozzi、E. Schulz、M. Lemaire、Marc、Chem. Rev.、第102巻、1359ページ、2002年と、その中に引用されている参考文献を参照のこと。
【0049】
【化13】

【0050】
本発明の有用な化合物として以下のものがある。
【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
【化17】

【0055】
【化18】

【0056】
【化19】

【0057】
【化20】

【0058】
【化21】

【0059】
【化22】

【0060】
特に断わらない限り、“置換された”または“置換基”という用語は、水素以外のあらゆる基または原子を意味する。さらに、“基”という用語を使用する場合、1つの置換基が置換可能な1つの水素を含んでいるとすると、その中には置換されていない形態が含まれるだけでなく、この明細書に記載した任意の1個または複数の置換基でさらに置換された形態も、デバイスが機能する上で必要な性質を失わせない限りは含まれるものとする。置換基は、ハロゲンにすること、または1個の原子(炭素、ケイ素、酸素、窒素、リン、イオウ、セレン、ホウ素)によって分子の残部と結合させることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン(クロロ、ブロモ、フルオロなど);ニトロ;ヒドロキシル;シアノ;カルボキシルや;さらに置換されていてもよい基が可能である。さらに置換されていてもよい基としては、アルキル(直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、環式アルキルが含まれ、例えばメチル、トリフルオロメチル、エチル、t-ブチル、3-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)プロピル、テトラデシルなどがある);アルケニル(例えばエチレン、2-ブテン);アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、2-メトキシエトキシ、s-ブトキシ、ヘキシルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、テトラデシルオキシ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エトキシ、2-ドデシルオキシエトキシ);アリール(例えばフェニル、4-t-ブチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、ナフチル);アリールオキシ(例えばフェノキシ、2-メチルフェノキシ、α-ナフチルオキシ、β-ナフチルオキシ、4-トリルオキシ);カーボンアミド(例えばアセトアミド、ベンズアミド、ブチルアミド、テトラデカンアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)アセトアミド、α-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチルアミド、α-(3-ペンタデシルフェノキシ)-ヘキサンアミド、α-(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェノキシ)-テトラデカンアミド、2-オキソ-ピロリジン-1-イル、2-オキソ-5-テトラデシルピロリン-1-イル、N-メチルテトラデカンアミド、N-スクシンイミド、N-フタルイミド、2,5-ジオキソ-1-オキサゾリジニル、3-ドデシル-2,5-ジオキソ-1-イミダゾリル、N-アセチル-N-ドデシルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、フェノキシカルボニルアミノ、ベンジルオキシカルボニルアミノ、ヘキサデシルオキシカルボニルアミノ、2,4-ジ-t-ブチルフェノキシカルボニルアミノ、フェニルカルボニルアミノ、2,5-(ジ-t-ペンチルフェニル)カルボニルアミノ、p-ドデシル-フェニルカルボニルアミノ、p-トリルカルボニルアミノ、N-メチルウレイド、N,N-ジメチルウレイド、N-メチル-N-ドデシルウレイド、N-ヘキサデシルウレイド、N,N-ジオクタデシルウレイド、N,N-ジオクチル-N'-エチルウレイド、N-フェニルウレイド、N,N-ジフェニルウレイド、N-フェニル-N-p-トリルウレイド、N-(m-ヘキサデシルフェニル)ウレイド、N,N-(2,5-ジ-t-ペンチルフェニル)-N'-エチルウレイド、t-ブチルカーボンアミド);スルホンアミド(例えばメチルスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p-トリルスルホンアミド、p-ドデシルベンゼンスルホンアミド、N-メチルテトラデシルスルホンアミド、N,N-ジプロピルスルファモイルアミノ、ヘキサデシルスルホンアミド);スルファモイル(例えばN-メチルスルファモイル、N-エチルスルファモイル、N,N-ジプロピルスルファモイル、N-ヘキサデシルスルファモイル、N,N-ジメチルスルファモイル、N-[3-(ドデシルオキシ)プロピル]スルファモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]スルファモイル、N-メチル-N-テトラデシルスルファモイル、N-ドデシルスルファモイル);カルバモイル(例えばN-メチルカルバモイル、N,N-ジブチルカルバモイル、N-オクタデシルカルバモイル、N-[4-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)ブチル]カルバモイル、N-メチル-N-テトラデシルカルバモイル、N,N-ジオクチルカルバモイル);アシル(例えばアセチル、(2,4-ジ-t-アミルフェノキシ)アセチル、フェノキシカルボニル、p-ドデシルオキシフェノキシカルボニル、メトキシカルボニル、ブトキシカルボニル、テトラデシルオキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、3-ペンタデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル);スルホニル(例えばメトキシスルホニル、オクチルオキシスルホニル、テトラデシルオキシスルホニル、2-エチルヘキシルオキシスルホニル、フェノキシスルホニル、2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシスルホニル、メチルスルホニル、オクチルスルホニル、2-エチルヘキシルスルホニル、ドデシルスルホニル、ヘキサデシルスルホニル、フェニルスルホニル、4-ノニルフェニルスルホニル、p-トリルスルホニル);スルホニルオキシ(例えばドデシルスルホニルオキシ、ヘキサデシルスルホニルオキシ);スルフィニル(例えばメチルスルフィニル、オクチルスルフィニル、2-エチルヘキシルスルフィニル、ドデシルスルフィニル、ヘキサデシルスルフィニル、フェニルスルフィニル、4-ノニルフェニルスルフィニル、p-トリルスルフィニル);チオ(例えばエチルチオ、オクチルチオ、ベンジルチオ、テトラデシルチオ、2-(2,4-ジ-t-ペンチルフェノキシ)エチルチオ、フェニルチオ、2-ブトキシ-5-t-オクチルフェニルチオ、p-トリルチオ);アシルオキシ(例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、オクタデカノイルオキシ、p-ドデシルアミドベンゾイルオキシ、N-フェニルカルバモイルオキシ、N-エチルカルバモイルオキシ、シクロヘキシルカルボニルオキシ);アミン(例えばフェニルアニリノ、2-クロロアニリノ、ジエチルアミン、ドデシルアミン);イミノ(例えば1(N-フェニルイミド)エチル、N-スクシンイミド、3-ベンジルヒダントイニル);ホスフェート(例えばジメチルホスフェート、エチルブチルホスフェート);ホスフィト(例えばジエチルホスフィト、ジヘキシルホスフィト);複素環基(例えば複素環オキシ基や複素環チオ基で、どれも置換されていてよく、炭素原子と少なくとも1個のヘテロ原子(酸素、窒素、イオウ、リン、ホウ素からなるグループの中から選択する)からなる3〜7員の複素環を含んでいる)、具体例は、2-フリル、2-チエニル、2-ベンゾイミダゾリルオキシ、2-ベンゾチアゾリル);第四級アンモニウム(例えばトリエチルアンモニウム);第四級ホスホニウム(例えばトリフェニルホスホニウム);シリルオキシ(例えばトリメチルシリルオキシ)がある。
【0061】
望むのであれば、置換基それ自体がさらに上記の置換基で1回以上置換されていてもよい。使用する具体的な置換基は、当業者が、特定の用途にとって望ましい性質が実現されるように選択することができ、例えば、電子求引基、電子供与基、立体基などが挙げられる。1つの分子が2つ以上の置換基を持てる場合には、特に断わらない限り、その置換基を互いに結合させて環(例えば縮合環)を形成することができる。一般に、上記の基と、その基に対する置換基は、48個までの炭素原子(一般には1〜36個であり、通常は24個未満である)を含むことができるが、選択した具体的な置換基が何であるかにより、それよりも多くすることも可能である。
【0062】
デバイスの一般的構成
【0063】
本発明は、小分子材料、オリゴマー材料、ポリマー材料、またはこれらの組み合わせを用いた多くのELデバイス構造で利用することができる。このような構造には、単一のアノードと単一のカソードを備える非常に単純な構造から、より複雑なデバイス(複数のアノードとカソードが直交アレイをなして画素を形成するパッシブ・マトリックス・ディスプレイや、各画素が例えば薄膜トランジスタ(TFT)で独立に制御されるアクティブ・マトリックス・ディスプレイ)までが含まれる。
【0064】
本発明をうまく実現することのできる有機層の構造が多数ある。OLEDにとっての必須の条件は、アノードと、カソードと、アノードとカソードの間に位置する有機発光層とが存在していることである。追加の層を使用することができ、それについては後でさらに詳しく説明する。
【0065】
本発明による典型的な構造を図1に示してある。これは小分子デバイスにおいて特に有用である。この構造は、基板101と、アノード103と、正孔注入層105と、正孔輸送層107と、発光層109と、電子輸送層111と、カソード113を備えている。これらの層について以下に詳細に説明する。基板101をカソード113に隣接した位置にすることや、基板101が実際にアノード103またはカソード113を構成することも可能であることに注意されたい。アノード103とカソード113に挟まれた有機層を、便宜上、有機EL素子と呼ぶ。また、有機層を合計した厚さは、500nm未満であることが望ましい。このデバイスがリン光材料を含んでいる場合には、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層が存在していてもよい。
【0066】
OLEDのアノード103とカソード113は、導電体を通じて電圧/電流源に接続されている。OLEDは、アノード103とカソード113の間に、アノード103がカソード113と比べて正の電位となるように電圧を印加することによって動作する。正孔はアノード103から有機EL素子に注入され、電子はカソード113から有機EL素子に注入される。ACモードではACサイクル中にポテンシャル・バイアスが逆転して電流が流れないわずかな期間があるため、OLEDをACモードで動作させるときにデバイスの安定性向上を実現できることがときにある。AC駆動のOLEDの一例が、アメリカ合衆国特許第5,552,678号に記載されている。
【0067】
基板
【0068】
本発明のOLEDデバイスは支持用基板101の上に形成されて、カソード113またはアノード103が基板と接触できるようになっているのが一般的である。基板101と接触する電極は、通常、底部電極と呼ばれる。底部電極はアノード103であることが一般的であるが、本発明がこの構成に限定されることはない。基板101は、どの方向に光を出したいかに応じ、透過性または不透明にすることができる。透光特性は、基板101を通してEL光を見る上で望ましい。その場合には、透明なガラスまたはプラスチックが一般に用いられる。基板101は、多数の材料層を含む複合構造にすることができる。これは、一般に、TFTがOLED層の下に設けられるアクティブ・マトリックス基板の場合である。しかし基板101は、少なくとも光を出す画素化領域において、大部分が透明な材料(例えばガラスまたはポリマー)でできている必要がある。EL光を上部電極を通じて見るような用途では、底部支持体の透過特性は重要でないため、底部支持体は、光透過性、光吸収性、光反射性のいずれでもよい。この場合に用いる基板としては、ガラス、プラスチック、半導体材料(例えばシリコン)、セラミック、回路板材料などがある。この場合にも、基板101は、アクティブ・マトリックスTFTの設計に見られるように、多数の材料層を含む複合構造にすることができる。このような構成のデバイスでは、透光性のある上部電極を設ける必要がある。
【0069】
アノード
【0070】
エレクトロルミネッセンス光(EL)をアノードを通して見る場合には、アノード103は、興味の対象となる光に対して透明か、実質的に透明である必要がある。本発明で用いられる透明なアノード用の一般的な材料は、インジウム-スズ酸化物(ITO)、インジウム-亜鉛酸化物(IZO)、スズ酸化物であるが、他の金属酸化物(例えばアルミニウムをドープした亜鉛酸化物、インジウムをドープした亜鉛酸化物、マグネシウム-インジウム酸化物、ニッケル-タングステン酸化物)も可能である。これら酸化物に加え、金属窒化物(例えば窒化ガリウム)、金属セレン化物(例えばセレン化亜鉛)、金属硫化物(例えば硫化亜鉛)をアノード103として用いることができる。EL光をカソード113だけを通して見るような用途では、アノード103の透過特性は重要でなく、あらゆる導電性材料(透明なもの、不透明なもの、反射性のもの)を使用することができる。この用途での具体的な導電性材料としては、金、イリジウム、モリブデン、パラジウム、白金などがある。典型的なアノード用材料は、透光性であろうとそうでなかろうと、仕事関数が4.1eV以上である。望ましいアノード用材料は、一般に適切な任意の手段(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着、電気化学的手段)で堆積させる。アノードは、よく知られているフォトリソグラフィ法を利用してパターニングすることができる。場合によっては、アノードを研磨した後に他の層を付着させて表面の粗さを小さくすることで、短絡を最少にすること、または反射性を大きくすることができる。
【0071】
カソード
【0072】
アノード103だけを通して光を見る場合には、本発明で使用するカソード113は、ほぼ任意の導電性材料で構成することができる。望ましい材料は優れた膜形成特性を有するため、下にある有機層との接触がよくなり、低電圧で電子の注入が促進され、優れた安定性を得ることができる。有用なカソード材料は、仕事関数が小さな(4.0eV未満)金属または合金を含んでいることがしばしばある。有用な1つのカソード材料は、アメリカ合衆国特許第4,885,221号に記載されているように、銀が1〜20%の割合で含まれたMg:Ag合金からなる。適切なカソード材料の別のクラスとして、カソードと、有機層(例えば電子輸送層(ETL))に接する薄い電子注入層(EIL)とを備えていて、カソードの上により厚い導電性金属層を被せた構成の二層がある。その場合、EILは、仕事関数が小さな金属または金属塩を含んでいることが好ましく、そうなっている場合には、より厚い被覆層は仕事関数が小さい必要がない。このような1つのカソードは、アメリカ合衆国特許第5,677,572号に記載されているように、LiFからなる薄い層と、その上に載るより厚いAl層からなる。アルカリ金属をドープしたETL材料(例えばLiをドープしたAlq)は、有用なEILの別の一例である。他の有用なカソード材料としては、アメリカ合衆国特許第5,059,961号、第5,059,862号、第6,140,763号に開示されているものがあるが、これだけに限定されるわけではない。
【0073】
カソードを通して発光を見る場合、カソード113は、透明であるか、ほぼ透明である必要がある。このような用途のためには、金属が薄いか、透明な導電性酸化物を使用するか、このような材料の組み合わせを使用する必要がある。光学的に透明なカソードは、アメリカ合衆国特許第4,885,211号、第5,247,190号、日本国特許第3,234,963号、アメリカ合衆国特許第5,703,436号、第5,608,287号、第5,837,391号、第5,677,572号、第5,776,622号、第5,776,623号、第5,714,838号、第5,969,474号、第5,739,545号、第5,981,306号、第6,137,223号、第6,140,763号、第6,172,459号、ヨーロッパ特許第1,076,368号、アメリカ合衆国特許第6,278,236号、第6,284,393号に、より詳細に記載されている。カソード材料は、一般に、適切な任意の方法(例えば蒸着、スパッタリング、化学蒸着)によって堆積させる。必要な場合には、よく知られた多数の方法でパターニングすることができる。方法としては、例えば、スルー・マスク蒸着、アメリカ合衆国特許第5,276,380号とヨーロッパ特許第0,732,868号に記載されている一体化シャドウ・マスキング、レーザー除去、選択的化学蒸着などがある。
【0074】
正孔注入層(HIL)
【0075】
正孔注入層105をアノード103と正孔輸送層107の間に設けることができる。正孔注入層は、後に続く有機層のフィルム形成能力を向上させ、正孔を正孔輸送層107に容易に注入できるようにする機能を持つことができる。正孔注入層105で使用するのに適した材料としては、アメリカ合衆国特許第4,720,432号に記載されているポルフィリン化合物や、アメリカ合衆国特許第6,208,075号に記載されているプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーや、いくつかの芳香族アミン(例えばMTDATA(4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン))などがある。有機ELデバイスにおいて有用であることが報告されている別の正孔注入材料は、ヨーロッパ特許第0,891,121 A1号と第1,029,909 A1号に記載されている。正孔注入層を本発明で用いることが好ましく、それはプラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーであることが望ましい。プラズマ堆積させたフルオロカーボン・ポリマーを含む正孔注入層の厚さは、0.2nm〜15nmの範囲が可能であり、0.3〜1.5nmの範囲であることが好ましい。
【0076】
正孔輸送層(HTL)
【0077】
必ずしも必要なわけではないが、OLEDデバイスに正孔輸送層を含めると有用であることがしばしばある。有機ELデバイスの正孔輸送層107は、少なくとも1つの正孔輸送化合物(例えば芳香族第三級アミン)を含んでいる。芳香族第三級アミンは、炭素原子(そのうちの少なくとも1つは芳香族環のメンバーである)だけに結合する少なくとも1つの3価窒素原子を含んでいる化合物であると理解されている。芳香族第三級アミンの1つの形態は、アリールアミン(例えばモノアリールアミン、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ポリマー・アリールアミン)である。具体的なモノマー・トリアリールアミンは、Klupfelらによってアメリカ合衆国特許第3,180,730号に示されている。1個以上のビニル基で置換された他の適切なトリアリールアミン、および/または少なくとも1つの活性な水素含有基を含む他の適切なトリアリールアミンは、Brantley他によってアメリカ合衆国特許第3,567,450号と第3,658,520号に開示されている。
【0078】
芳香族第三級アミンのより好ましいクラスは、アメリカ合衆国特許第4,720,432号と第5,061,569号に記載されているように、少なくとも2つの芳香族第三級アミン部分を含むものである。このような化合物としては、構造式(A):
【化23】


で表わされるものがある。ただし、Q1とQ2は、独立に、芳香族第三級アミン部分の中から選択され、Gは、炭素-炭素結合の結合基(例えば、アリーレン基、シクロアルキレン基、アルキレン基など)である。一実施態様では、Q1とQ2の少なくとも一方は、多環縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。Gがアリール基である場合には、Q1とQ2の少なくとも一方は、フェニレン部分、ビフェニレン部分、ナフタレン部分のいずれかであることが好ましい。
【0079】
構造式(A)に合致するとともに2つのトリアリールアミンを含むトリアリールアミンの有用な1つのクラスは、構造式(B):
【化24】


で表わされる。ただし、
R1とR2は、それぞれ独立に、水素原子、アリール基、アルキル基のいずれかを表わすか、R1とR2は、合わさって、シクロアルキル基を完成させる原子を表わし;
R3とR4は、それぞれ独立にアリール基を表わし、そのアリール基は、構造式(C):
【化25】


に示したように、ジアリール置換されたアミノ基によって置換されている。ただし、
R5とR6は、独立に、アリール基の中から選択される。一実施態様では、R5とR6のうちの少なくとも一方は、多環縮合環構造(例えばナフタレン)を含んでいる。
【0080】
芳香族第三級アミンの別のクラスは、テトラアリールジアミンである。望ましいテトラアリールジアミンとして、構造式(C)に示したように、アリーレン基を通じて結合した2つのジアリールアミノ基が挙げられる。有用なテトラアリールジアミンとしては、一般式(D):
【化26】


で表わされるものがある。ただし、
それぞれのAreは、独立に、アリーレン基(例えばフェニレン基またはアントラセン基)の中から選択され;
nは1〜4の整数であり;
Ar、R7、R8、R9は、独立に、アリール基の中から選択される。
【0081】
典型的な一実施態様では、Ar、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは多環縮合構造(例えばナフタレン)である。
【0082】
上記の構造式(A)、(B)、(C)、(D)のさまざまなアルキル部分、アルキレン部分、アリール部分、アリーレン部分は、それぞれ、置換されていてもよい。典型的な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン(例えばフッ化物、塩化物、臭化物)などがある。さまざまなアルキル部分とアルキレン部分は、一般に、1〜約6個の炭素原子を含んでいる。シクロアルキル部分は、3〜約10個の炭素原子を含むことができるが、一般には5個、または6個、または7個の炭素原子を含んでいる(例えばシクロペンチル環構造、シクロヘキシル環構造、シクロヘプチル環構造)。アリール基とアリーレン基は、通常は、フェニル部分とフェニレン部分である。
【0083】
正孔輸送層は、単一の芳香族第三級アミン化合物で、または芳香族第三級アミン化合物の混合物で形成することができる。特に、トリアリールアミン(例えば構造式(B)を満たすトリアリールアミン)をテトラアリールジアミン(例えば構造式(D)に示したもの)と組み合わせて使用することができる。有用な芳香族第三級アミンの具体例としては、以下のものがある。
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン(TAPC)
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-メチルシクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン
1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-3-フェニルプロパン(TAPPP)
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4"'-ジアミノ-1,1':4',1":4",1"'-クアテルフェニル
ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン
1,4-ビス[2-[4-[N,N-ジ(p-トリル)アミノ]フェニル]ビニル]ベンゼン(BDTAPVB)
N,N,N',N'-テトラ-p-トリル-4,4'-ジアミノビフェニル(TTB)
N,N,N',N'-テトラフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-1-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N,N,N',N'-テトラ-2-ナフチル-4,4'-ジアミノビフェニル
N-フェニルカルバゾール
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(NPB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ビフェニル(TNB)
4,4'-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(3-アセナフテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
1,5-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ナフタレン
4,4'-ビス[N-(9-アントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-アントリル)-N-フェニルアミノ]-p-テルフェニル
4,4'-ビス[N-(2-フェナントリル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(8-フルオランテニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ピレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ナフタセニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(2-ペリレニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
4,4'-ビス[N-(1-コロネニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル
2,6-ビス(ジ-p-トリルアミノ)ナフタレン
2,6-ビス[ジ-(1-ナフチル)アミノ]ナフタレン
2,6-ビス[N-(1-ナフチル)-N-(2-ナフチル)アミノ]ナフタレン
N,N,N',N'-テトラ(2-ナフチル)-4,4"-ジアミノ-p-テルフェニル
4,4'-ビス{N-フェニル-N-[4-(1-ナフチル)-フェニル]アミノ}ビフェニル
2,6-ビス[N,N-ジ(2-ナフチル)アミン]フルオレン
4,4',4"-トリス[(3-メチルフェニル)フェニルアミノ]トリフェニルアミン(MTDATA)
4,4'-ビス[N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(TPD)。
【0084】
有用な正孔輸送材料の別のクラスとして、ヨーロッパ特許1,009,041に記載されている多環式芳香族化合物がある。3つ以上のアミン基を有する第三級芳香族アミン(例えばオリゴマー材料)を使用できる。さらに、ポリマー正孔輸送材料を使用することができる。それは、例えば、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(PVK)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、コポリマー(例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホネート)(PEDOT/PSSとも呼ばれる))などである。正孔輸送層は、組成が異なる2つ以上の下位層を含むことも可能である。なおそれぞれの下位層の組成は、上に説明した通りである。正孔輸送層の厚さは、10〜約500nmにすることができ、50〜300nmが好ましい。
【0085】
発光層(LEL)
【0086】
ELデバイスにおいて有用な発光材料には蛍光材料が含まれる。アメリカ合衆国特許第4,769,292号、第5,935,721号により詳しく説明されているように、有機EL素子の発光層(LEL)は発光材料を含んでおり、この領域で電子-正孔対の再結合が起こる結果としてエレクトロルミネッセンスが生じる。発光層は単一の材料で構成できるが、より一般的には、1つまたは複数のゲスト化合物をドープしたホスト材料からなる。光は主として発光材料から発生し、任意の色が可能である。
【0087】
本発明のホスト材料は、別のホスト材料と組み合わせて使用することができ、その材料は同じ層の中にあってもよいし、別の層の中にあってもよい。発光層内のホスト材料は、以下に示す電子輸送材料、または上記の正孔輸送材料、または正孔-電子再結合をサポートする別の単一の材料または組み合わせた材料にすることができる。蛍光発光材料は、一般に、0.01〜10質量%の割合でホスト材料に組み込まれる。
【0088】
ホスト材料および発光材料としては、小さな非ポリマー分子またはポリマー材料が可能である(例えばポリフルオレン、ポリビニルアリーレン(例えばポリ(p-フェニレンビニレン)、PPV))。ポリマーの場合、小分子発光材料は、ホスト・ポリマーの中に分子として分散させること、または発光材料を微量成分とコポリマー化してホスト・ポリマーに添加することができる。膜形成、電気特性、発光効率、動作寿命、製造しやすさを改善するため、ホスト材料を互いに混合することができる。ホストは、優れた正孔輸送特性を有する材料と、優れた電子輸送特性を有する材料を含むことができる。
【0089】
ゲスト発光材料として蛍光材料を選択する際の重要な1つの関係は、ホスト材料と蛍光材料の励起一重項状態のエネルギーの比較である。蛍光材料の励起一重項状態のエネルギーは、ホスト材料の励起一重項状態のエネルギーよりも低いことが非常に望ましい。励起一重項状態のエネルギーは、発光する一重項状態と基底状態のエネルギー差として定義される。非発光性ホストに関しては、基底状態と同じ電子スピンの最低励起状態が発光状態であると考えられる。
【0090】
有用であることが知られているホスト材料および発光材料としては、アメリカ合衆国特許第4,768,292号、第5,141,671号、第5,150,006号、第5,151,629号、第5,405,709号、第5,484,922号、第5,593,788号、第5,645,948号、第5,683,823号、第5,755,999号、第5,928,802号、第5,935,720号、第5,935,721号、第6,020,078号に開示されているものなどがある。
【0091】
8-ヒドロキシキノリンの金属錯体と、それと同様の誘導体(金属キレート化オキシノイド化合物としても知られる)(一般式E)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が500nmよりも長い光(例えば緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0092】
【化27】


ただし、Mは金属を表わし;
nは1〜4の整数であり;
Zは、各々に独立に、縮合した少なくとも2つの芳香族環を有する核を完成させる原子を表わす。
【0093】
以上の説明から、金属は、一価、二価、三価、四価の金属が可能であることが明らかである。金属としては、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウムなど)、三価の金属(アルミニウム、ガリウムなど);他の金属(亜鉛、ジルコニウムなど)が可能である。一般に、キレート化金属として有用であることが知られている任意の一価、二価、三価、四価の金属を使用することができる。
【0094】
Zは、縮合した少なくとも2つの芳香族環を持っていてそのうちの少なくとも一方はアゾール環またはアジン環である複素環の核を完成させる。必要な場合には、必要なその2つの環に追加の環(例えば脂肪族環と芳香族環の両方)を縮合させることができる。機能の向上なしに分子が大きくなることを避けるため、環の原子数は、通常は18個以下に維持する。
【0095】
有用なキレート化オキシノイド系化合物の具体例としては、以下のものがある。
CO-1:アルミニウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-2:マグネシウムビスオキシン[別名、ビス(8-キノリノラト)マグネシウム(II)]
CO-3:ビス[ベンゾ{f}-8-キノリノラト]亜鉛(II)
CO-4:ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)-μ-オキソ-ビス(2-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)
CO-5:インジウムトリスオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)インジウム]
CO-6:アルミニウムトリス(5-メチルオキシン)[別名、トリス(5-メチル-8-キノリノラト)アルミニウム(III)]
CO-7:リチウムオキシン[別名、(8-キノリノラト)リチウム(I)]
CO-8:ガリウムオキシン[別名、トリス(8-キノリノラト)ガリウム(III)]
CO-9:ジルコニウムオキシン[別名、テトラ(8-キノリノラト)ジルコニウム(IV)]
【0096】
9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンの誘導体(一般式F)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0097】
【化28】


ただし、
R1、R2、R3、R4、R5、R6は、各環上にある、以下に示すグループの中から選択した1個以上の置換基を表わす。
グループ1:水素、または1〜24個の炭素原子を有するアルキル;
グループ2:5〜20個の炭素原子を有するアリールまたは置換されたアリール;
グループ3:アントラセニル、ピレニル、ペリレニルいずれかの芳香族縮合環を完成させるのに必要な4〜24個の炭素原子;
グループ4:フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、または他の複素環系の複素芳香族縮合環を完成させるのに必要な、5〜24個の炭素原子を有するヘテロアリールまたは置換されたヘテロアリール;
グループ5:1〜24個の炭素原子を有するアルコキシアミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ;
グループ6:フッ素、塩素、ホウ素、シアノ。
【0098】
代表的な具体例として、9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンと2-t-ブチル-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセンがある。他のアントラセン誘導体もLELにおけるホストとして役に立つ可能性があり、例えば9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンの誘導体がある。
【0099】
ベンズアゾール誘導体(一般式G)は、エレクトロルミネッセンスをサポートすることのできる有用なホスト材料の1つのクラスを形成し、波長が400nmよりも長い光(例えば青、緑、黄、オレンジ、赤)を出させるのに特に適している。
【0100】
【化29】


ただし、nは3〜8の整数であり;
Zは、O、NR、Sのいずれかであり;
RとR'は、独立に、水素;1〜24個の炭素原子を有するアルキル(例えばプロピル、t-ブチル、ヘプチルなど);5〜20個の炭素原子を有するアリールまたはヘテロ原子で置換されたアリール(例えばフェニル、ナフチル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリニル、ならびに他の複素環式系);ハロ(例えばクロロ、フルオロ);芳香族縮合環を完成させるのに必要な原子のいずれかであり;
Lは、アルキル、アリール、置換されたアルキル、置換されたアリールのいずれかを含んでいる結合単位であり、複数のベンズアゾールを互いに共役または非共役に結合させる。Lは、複数のベンズアゾールと共役していてもいなくてもよい。有用なベンズアゾールの一例は、2,2',2"-(1,3,5-フェニレン)トリス[1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール]である。
【0101】
アメリカ合衆国特許第5,121,029号と日本国特開08-333569に記載されているスチリルアリーレン誘導体も、青色を発光させるための有用なホスト材料である。例えば9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルエテニル)フェニル]アントラセンと4,4'-ビス(2,2-ジフェニルエテニル)-1,1'-ビフェニル(DPVBi)は、青色を発光させるための有用なホスト材料である。
【0102】
有用な蛍光発光材料としては、アントラセン、テトラセン、キサンテン、ペリレン、ルブレン、クマリン、ローダミン、キナクリドンの誘導体や、ジシアノメチレンピラン化合物、チオピラン化合物、ポリメチン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、フルオレン誘導体、ペリフランテン誘導体、インデノペリレン誘導体、ビス(アジニル)アミンホウ素化合物、ビス(アジニル)メタン化合物、カルボスチリル化合物などがある。有用な材料の代表例としては、以下のものがある。
【0103】
【化30】

【0104】
【化31】

【0105】
【化32】

【0106】
【化33】

【0107】
蛍光発光材料に加え、リン光発光材料もELデバイスで用いることができる。便宜上、リン光錯体ゲスト材料を、この明細書ではリン光材料と呼ぶ。リン光材料は、一般に、1つ以上のリガンド(例えばsp2炭素とヘテロ原子を通じて金属と配位することができるモノアニオン・リガンド)を含んでいる。リガンドは、フェニルピリジン(ppy)、またはその誘導体、またはそのアナログにすることができる。有用なリン光有機金属材料のいくつかの具体例として、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2)イリジウム(III)(アセチルアセトネート)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')白金(II)などがある。好ましいことに、多数のリン光有機金属材料がスペクトルの緑色領域で発光する。すなわち510〜570nmの範囲で発光が最大になる。
【0108】
リン光材料は、単独で、または他のリン光材料と組み合わせて、同じ層または異なる層て使用することができる。リン光材料と適切なホストが記載されているのは、WO 00/57676、WO 00/70655、WO 01/41512 A1、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願2003/0017361 A1、WO 01/93642 A1、WO 01/39234 A2、アメリカ合衆国特許第6,458,475 B1号、WO 02/071813 A1、アメリカ合衆国特許第6,573,651 B2号、アメリカ合衆国特許出願2002/0197511 A1、WO 02/074015 A2、アメリカ合衆国特許第6,451,455 B1号、アメリカ合衆国特許出願2003/0072964 A1、アメリカ合衆国特許出願2003/0068528 A1、アメリカ合衆国特許第6,413,656 B1号、アメリカ合衆国特許第6,515,298 B2号、アメリカ合衆国特許第6,451,415 B1号、アメリカ合衆国特許第6,097,147号、アメリカ合衆国特許出願2003/0124381 A1、アメリカ合衆国特許出願2003/0059646 A1、アメリカ合衆国特許出願2003/0054198 A1、ヨーロッパ特許第1,239,526 A2号、ヨーロッパ特許第1,238,981 A2号、ヨーロッパ特許第1,244,155 A2号、アメリカ合衆国特許出願2002/0100906 A1、アメリカ合衆国特許出願2003/0068526 A1、アメリカ合衆国特許出願2003/0068535 A1、日本国特開2003-073387A、日本国特開2003-073388A、アメリカ合衆国特許出願2003/0141809 A1、アメリカ合衆国特許出願2003/0040627 A1、日本国特開2003-059667A、日本国特開2003-073665A、アメリカ合衆国特許出願2002/0121638A1である。
【0109】
IrL3タイプとIrL2L'タイプのシクロメタル化されたIr(III)錯体(例えば緑色の光を出すfac-トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(アセチルアセトネート))の発光波長は、シクロメタル化リガンドL上の適切な位置における電子供与基または電子求引基の置換によってシフトさせること、またはシクロメタル化リガンドLのためにいろいろな複素環を選択することによってシフトさせることができる。発光波長は、補助リガンドL'を選択することによってシフトさせることもできる。赤色発光体の具体例は、ビス(2-(2'-ベンゾチエニル)ピリジナト-N,C3')イリジウム(III)(アセチルアセトネート)と、トリス(2-フェニルイソキノリナト-N,C)イリジウム(III)である。青色発光体の具体例は、ビス(2-(4,6-ジフルオロフェニル)-ピリジナト-N,C2')イリジウム(III)(ピコリネート)である。
【0110】
リン光材料としてビス(2-(2'-ベンゾ[4,5-a]チエニル)ピリジナト-N,C3)イリジウム(アセチルアセトネート)[Btp2Ir(acac)]を用いた赤い電気リン光が報告されている(C. Adachi、S. Lamansky、M.A. Baldo、R.C. Kwong、M.E. Thompson、S.R. Forrest、App. Phys. Lett.、第78巻、1622〜1624ページ、2001年)。
【0111】
他の重要なリン光材料としては、シクロメタル化されたPt(II)錯体であるシス-ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2')白金(II)、シス-ビス(2-(2'-チエニル)ピリジナト-N,C3')白金(II)、シス-ビス(2-(2'-チエニル)キノリナト-N,C5')白金(II)、(2-(4,6-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2')白金(II)(アセチルアセトネート)などがある。Pt(II)ポルフィリン錯体(例えば2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィン白金(II))も有用なリン光材料である。
【0112】
有用なリン光材料のさらに別の具体例として、3価ランタノイド(例えばTb3+、Eu3+)の配位錯体がある(J. Kido他、Appl. Phys. Lett.、第65巻、2124ページ、1994年)。
【0113】
リン光材料に適したホスト材料は、三重項エキシトンの輸送がホスト材料からリン光材料へと効率的になされるが、リン光材料からホスト材料へは効率的に起こりえないようなものを選択すべきである。したがってリン光材料の三重項エネルギーはホストの三重項エネルギーよりも低いことが非常に望ましい。一般に、三重項エネルギーが大きいというのは、光学的バンドギャップが大きいことを意味する。しかしホストのバンドギャップは、電荷キャリアを発光層に注入する際の許容できない障壁を作り出したり、OLEDを駆動する電圧の許容できない上昇を引き起こしたりするほど大きくなるように選択してはならない。適切なホスト材料は、WO 00/70655 A2、WO 01/39234 A2、WO 01/93642 A1、WO 02/074015 A2、WO 02/15645 A1、アメリカ合衆国特許出願2002/0117662に記載されている。適切なホストとしては、ある種のアリールアミン、トリアゾール、インドール、カルバゾール化合物などがある。望ましいホストの具体例は、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-ビフェニル(4,4'-ビス(カルバゾル-9-イル)ビフェニルまたはCBPとしても知られる)、4,4'-N,N'-ジカルバゾール-2,2'-ジメチル-ビフェニル(2,2'-ジメチル-4,4'-ビス(カルバゾル-9-イル)ビフェニルまたはCDBPとしても知られる)、1,3-ビス(N,N'-ジカルバゾール)ベンゼン(1,3-ビス(カルバゾル-9-イル)ベンゼンとしても知られる)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)と、これらの誘導体である。
【0114】
望ましいホスト材料は、連続膜を形成することができる。
【0115】
正孔阻止層(HBL)
【0116】
リン光材料を使用しているOLEDデバイスは、励起イベントと再結合イベントがホスト材料とリン光材料を含む発光層だけで起こるようにするため、適切なホストに加え、電子輸送層111と発光層109の間に位置する少なくとも1つの正孔阻止層をしばしば必要とする。この場合、正孔がホストから正孔阻止層に移動する際にエネルギー障壁が存在せねばならない一方で、電子は、正孔阻止層を容易に通過してホスト材料とリン光材料を含む発光層へと移動できねばならない。第1の条件は、正孔阻止層のイオン化電位が発光層109のイオン化電位よりも望ましくは0.2eV以上大きいことを要請する。第2の条件は、正孔阻止層の電子親和力が発光層109の電子親和力を大幅に上回ることはなく、望ましくは発光層の電子親和力よりも小さいか、これを上回る場合でも発光層の電子親和力との差が約0.2eV以下であることを要請する。
【0117】
特徴的な発光が緑である電子輸送層(例えば以下に説明するAlq含有電子輸送層)とともに用いる場合、正孔阻止層材料の最高被占軌道(HOMO)と最低空軌道(LUMO)のエネルギーに関する条件により、正孔阻止層の特徴的な発光は、電子輸送層の特徴的な発光よりも短い波長の発光(例えば青、紫、紫外)になる。したがって、正孔阻止層材料の特徴的な発光は、青、紫、紫外のいずれかであることが望ましい。さらに、絶対に必要というわけではないが、正孔阻止材料の三重項エネルギーは、リン光材料の三重項エネルギーよりも大きいことが望ましい。適切な正孔阻止材料は、WO 00/70655 A2とWO 01/93642 A1に記載されている。有用な正孔阻止材料の具体例を2つ挙げると、バトクプロイン(BCP)とビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(BAlq)である。BCPの特徴的な発光は紫外領域であり、BAlqの特徴的な発光は青である。アメリカ合衆国特許出願公開2003/0068528に記載されているように、BAlq以外の金属錯体も正孔と励起を阻止することが知られている。さらに、アメリカ合衆国特許出願公開2003/0175553 A1には、この目的でfac-トリス(1-フェニルピラゾラト-N,C2')イリジウム(III)(Irppz)を用いることが記載されている。
【0118】
正孔阻止層を利用する場合、その厚さは2〜100nmにすることができる。この厚さは5〜10nmであることが好ましい。
【0119】
電子輸送層(ETL)
【0120】
本発明の有機ELデバイスの電子輸送層111を形成する際に用いる望ましい薄膜形成材料は、金属キレート化オキシノイド化合物である。その中には、オキシンそのもの(一般に、8-キノリノールまたは8-ヒドロキシキノリンとも呼ばれる)も含まれる。このような化合物は、電子を注入して輸送するのを助け、高レベルの性能を示し、薄膜の形態にするのが容易である。考慮するオキシノイド化合物の具体例は、すでに説明した構造式(E)を満たすものである。
【0121】
電子輸送層111で用いるのに適した他の電子輸送材料としては、アメリカ合衆国特許第4,356,429号に記載されているさまざまなブタジエン誘導体や、アメリカ合衆国特許第4,539,507号に記載されているさまざまな複素環式蛍光増白剤がある。構造式(G)を満たすベンズアゾールも、電子輸送材料として有用である。トリアジンも電子輸送材料として有用であることが知られている。
【0122】
正孔阻止層と電子輸送層111の両方を利用する場合、電子は電子輸送層111を容易に通過して正孔阻止層に入ることができねばならない。したがって電子輸送層111の電子親和力は、正孔阻止層の電子親和力を大幅に上回ってはならない。電子輸送層の電子親和力は、正孔阻止層の電子親和力よりも小さいか、それよりも0.2eV以上は大きくないことが望ましい。
【0123】
電子輸送層を利用する場合、その厚さは2〜100nmにすることができる。この厚さは5〜20nmであることが好ましい。
【0124】
他の有用な有機層とデバイスの構成
【0125】
発光層109〜電子輸送層111は、場合によっては単一の層にし、発光と電子輸送の両方をサポートする機能を担わせることができる場合がある。正孔阻止層(存在している場合)と電子輸送層111を単一の層にし、正孔またはエキシトンを阻止するとともに、電子輸送をサポートする機能を担わせることもできる。従来技術では、発光材料を正孔輸送層107に含めうることも知られている。この場合、正孔輸送材料はホストとして機能することができる。多くの材料を1つ以上の層に添加して白色発光OLEDを作ることができる。例えば青色発光材料と黄色発光材料の組み合わせ、シアン色発光材料と赤色発光材料の組み合わせ、赤色発光材料と緑色発光材料と青色発光材料の組み合わせがある。白色発光デバイスが記載されているのは、例えばヨーロッパ特許第1,187,235号、アメリカ合衆国特許出願2002/0025419、ヨーロッパ特許第1,182,244号、アメリカ合衆国特許第5,683,823号、アメリカ合衆国特許第5,503,910号、アメリカ合衆国特許第5,405,709号、アメリカ合衆国特許第5,283,182号であり、白色発光デバイスに適切なフィルタを取り付けてカラー発光をさせることができる。
【0126】
本発明は、例えばアメリカ合衆国特許第5,703,436号と第6,337,492号に記載されているようないわゆる積層デバイス構造で使用することができる。
【0127】
有機層の堆積
【0128】
上記の有機材料は、その有機材料の形態に適した任意の方法で堆積させることが好ましい。小分子の場合、昇華または蒸発を通じてうまく堆積するが、他の手段(例えば溶媒からのコーティング。そのとき、場合によっては結合剤も用いて膜の形成を改善する)で堆積させることもできる。材料がポリマーである場合には、溶媒堆積が通常は好ましい。昇華または蒸発によって堆積させる材料は、タンタル材料からなることの多い昇華用“ボート”から気化させること(例えばアメリカ合衆国特許第6,237,529号に記載されている)や、まず最初にドナー・シートにコーティングし、次いで基板のより近くで昇華させることができる。混合材料からなる層では、別々の昇華用ボートを用いること、または材料をあらかじめ混合し、単一のボートまたはドナー・シートからコーティングすることができる。パターニングした堆積は、シャドウ・マスク、一体化シャドウ・マスク(アメリカ合衆国特許第5,294,870号)、ドナー・シートからの空間的に限定された染料熱転写(アメリカ合衆国特許第5,688,551号、第5,851,709号、第6,066,357号)、インクジェット法(アメリカ合衆国特許第6,066,357号)を利用して実現することができる。
【0129】
封入
【0130】
たいていのOLEDデバイスは、水分と酸素の一方または両方に敏感であるため、一般に不活性雰囲気(例えば窒素やアルゴン)中で、乾燥剤(例えばアルミナ、ボーキサイト、硫酸カルシウム、粘土、シリカゲル、ゼオライト、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、硫酸塩、ハロゲン化金属、過塩素酸塩)とともに密封される。封入と乾燥のための方法としては、アメリカ合衆国特許第6,226,890号に記載されている方法などがある。さらに、障壁層(例えばSiOx、テフロン(登録商標))や、交互に積層された無機層/ポリマー層が、封入法として知られている。本発明に従って構成したELデバイスでは、これらのうちのどの密封法または封入法を用いてもよい。
【0131】
光学的最適化
【0132】
本発明のOLEDデバイスでは、望むのであれば発光特性を向上させるため、公知のさまざまな光学的効果を利用することが可能である。その中には、層の厚さを最適化して光の透過を最大にすること、誘電体ミラー構造を設けること、反射性電極の代わりに光吸収性電極にすること、グレア防止または反射防止のコーティングをディスプレイの表面に設けること、偏光媒体をディスプレイの表面に設けること、カラー・フィルタ、中性フィルタ、カラー変換フィルタをディスプレイの表面に設けることなどがある。フィルタ、偏光装置、グレア防止用または反射防止用コーティングは、ELデバイスの表面に、またはELデバイスの一部として特別に設けることができる。
【0133】
本発明の実施態様により、より高い発光効率、より低い駆動電圧、より高い電力効率、安定性の向上、製造しやすさ、低下した昇華温度といった優れた特徴を提供できる。また本発明の実施態様により、望ましいいろいろな色相を提供することができる。その中には、(マルチカラー・ディスプレイを提供するために直接に、またはフィルタを通じて)白色光を出させるのに役立つ色相も含まれる。本発明の実施態様により、このELデバイスを組み込んだ装置として、電子式ディスプレイやエリア照明装置を提供することもできる。
【実施例】
【0134】
本発明とその利点は、以下の実施例によってさらによく理解することができる。
【0135】
合成例:Inv-1の調製
【0136】
【化34】

【0137】
以下の手続き(Rxn-1)によって中間体Int-1を調製した。2-ブロモナフタレン(9.2g、44.4ミリモル)を乾燥THF(118ml)に溶かし、-78℃に冷却した。t-BuLi(1.7M、52.3g、89ミリモル)を5分間かけて一滴ずつ添加した後、反応物をこの温度にてさらに5分間にわたって撹拌した。2-クロロアントラキノン(4.3g、17.8ミリモル)を添加し、反応物をアセトン-ドライアイス浴から取り出し、室温にて一晩にわたって撹拌した。この反応混合物を塩化アンモニウム水溶液に添加し、生成物を塩化メチレンで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過し、濃縮した。結晶化(85%エーテル/ヘプタン)によって精製するとInv-1が得られた。
【0138】
【化35】

【0139】
以下の手続き(Rxn-2)によって中間体Int-2を調製した。ヨウ化カリウム(17.6g、106.02ミリモル)と次亜リン酸ナトリウム水和物(16.5g、188.1ミリモル)をInt-1(5.7g、11.4ミリモル)と酢酸(181ml)の混合物に添加した。この混合物を3時間にわたって還流温度に加熱した後、室温まで冷却した。黄色の固形物を濾過し、水とメタノールで洗浄すると、Int-2が得られた。
【0140】
【化36】

【0141】
以下の手続き(Rxn-3)によって中間体Inv-1を調製した。4-トリルボロン酸(1.2当量)と、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(0.03当量)と、トリシクロヘキシルホスフィン(0.045当量)と、リン酸カリウム(2当量)を、乾燥条件下にて、脱ガスしたトルエンとInt-2(1当量)の混合物に添加した。この反応混合物を一晩にわたって還流温度に加熱した。この反応混合物を冷却し、セライトで濾過し、水に添加した。生成物を塩化メチレンから抽出し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させ、濾過し、濃縮した。カラム・クロマトグラフィ(シリカゲル、溶離液は95%ヘプタン/塩化メチレン)により、Inv-1が得られた。
【0142】
デバイス例1 - サンプル1〜6のELデバイスの製造
【0143】
本発明の要求を満たすELデバイス(サンプル1)を以下のようにして構成した。
【0144】
1.アノードとしてインジウム-スズ酸化物(ITO)を85nmの厚さにコーティングしたガラス基板を、順番に、市販の洗剤の中で超音波処理し、脱イオン水の中でリンスし、トルエン蒸気の中で脱脂し、酸素プラズマに1分間にわたって曝露した。
【0145】
2.プラズマ支援CHF3堆積により、ITOの上にフルオロカーボン(CFx)からなる正孔注入層(HIL)を1nm堆積させた。
【0146】
3.次に、N,N'-ジ-1-ナフチル-N,N'-ジフェニル-4,4'-ジアミノビフェニル(NPB)からなる厚さが75nmの正孔輸送層(HTL)をタンタル・ボートから蒸着した。
【0147】
4.次に、正孔輸送層の上に、ホスト材料Inv-1とTBP(2,5,8,11-テトラ-t-ブチルペリレン、1.00容積%)からなる発光層(LEL)を20nm堆積させた。これらの材料もタンタル・ボートから蒸着した。
【0148】
5.次に、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(III)(AlQ3)からなる35nmの電子輸送層(ETL)を発光層の上に堆積させた。この材料もタンタル・ボートから蒸着した。
【0149】
6.AlQ3層の上に、MgとAgの体積比が10:1になったカソードを220nm堆積させた。
【0150】
上記の一連の操作により、ELデバイスの堆積が完成した。次に、周囲環境から保護するため、このデバイスを乾燥グローブ・ボックスの中で密封した。
【0151】
Inv-1を含むELデバイスであるサンプル2〜5をサンプル1と同じ方法で製造したが、表1に示してあるように、使用したInv-1の量(すなわちInv-1層の厚さ)とTBPのレベルが異なっている。サンプル6はサンプル1と同じ方法で製造したが、Inv-1の代わりにTBADN(2-t-ブチル-9,10-ジ-(2-ナフチル)アントラセン)を使用したことと、TBPのレベルが1.50容積%であった点が異なっている。
【0152】
このようにして形成したデバイスを、動作電流20mA/cm2にて、効率と色に関してテストした。その結果を、出力効率(W/A)、輝度収率(cd/A)、CIE(国際照明委員会)座標として表1に記してある。セルを20mA/cm2にて70℃で250時間にわたって動作させることにより、デバイスの安定性をテストした。この時間動作させた後の輝度を最初の輝度と比べたパーセンテージを表1に示してある。
【0153】
【表1】

【0154】
表1から、本発明のアントラセン材料Inv-1と比較用アントラセン材料を似たようなレベルで比較すると、前者は後者よりも輝度収率が高く、動作安定性が非常に優れていることがわかる。Inv-1/TBPの組み合わせはTBADN/TBPの組み合わせよりも青-緑が強いため、白色発光デバイスで使用するのに望ましかろう。
【0155】
デバイス例2 - サンプル7〜12のELデバイスの製造
【0156】
ELデバイスのサンプル7〜11をサンプル1〜5と同じ方法で製造したが、Inv-1の代わりにInv-2にした点が異なっている。サンプル12はサンプル6と同様にして製造した。このようにして形成したデバイスをサンプル1〜6と同じやり方でテストしたが、セルを20mA/cm2にて70℃で200時間にわたって動作させることによってデバイスの安定性をテストした点が異なっている。テスト結果を表2に示してある。
【0157】
【表2】

【0158】
表2から、本発明のアントラセン材料Inv-2と比較用アントラセン材料を似たようなレベルで比較すると、前者は後者よりも輝度収率が高く、動作安定性が優れていることがわかる。Inv-2/TBPの組み合わせはTBADN/TBPの組み合わせよりも青-緑が強いため、白色発光デバイスで使用するのに望ましかろう。
【0159】
デバイス例3 - サンプル13〜18のELデバイスの製造
【0160】
ELデバイスのサンプル13〜18をサンプル1〜5と同じ方法で製造したが、Inv-1の代わりにInv-3にした点が異なっている。サンプル18はサンプル6と同様にして製造した。このようにして形成したデバイスをサンプル1〜6と同じやり方でテストしたが、セルを20mA/cm2にて70℃で200時間にわたって動作させることによってデバイスの安定性をテストした点が異なっている。テスト結果を表3に示してある。
【0161】
【表3】

【0162】
表3から、本発明のアントラセン材料Inv-3と比較用アントラセン材料を似たようなレベルで比較すると、前者は後者よりも輝度収率が高く、動作安定性が非常に優れていることがわかる。Inv-3/TBPの組み合わせはTBADN/TBPの組み合わせよりも青-緑が強いため、白色発光デバイスで使用するのに望ましかろう。
【0163】
デバイス例4 - サンプル19〜24のELデバイスの製造
【0164】
ELデバイスのサンプル19〜23をサンプル1〜5と同じ方法で製造したが、Inv-1の代わりにInv-4にした点が異なっている。サンプル24はサンプル6と同様にして製造した。このようにして形成したデバイスをサンプル1〜6と同じやり方でテストしたが、セルを20mA/cm2にて70℃で200時間にわたって動作させることによってデバイスの安定性をテストした点が異なっている。テスト結果を表4に示してある。
【0165】
【表4】

【0166】
表4から、本発明のアントラセン材料Inv-4と比較用アントラセン材料を似たようなレベルで比較すると、前者は後者よりも輝度収率が高く、安定性は同程度であることがわかる。Inv-4/TBPの組み合わせはTBADN/TBPの組み合わせよりも青-緑が強いため、白色発光デバイスで使用するのに望ましかろう。
【0167】
デバイス例5 - サンプル25〜30のELデバイスの製造
【0168】
ELデバイスのサンプル25〜29をサンプル1〜5と同じ方法で製造したが、Inv-1の代わりにInv-5にした点が異なっている。サンプル30はサンプル6と同様にして製造した。このようにして形成したデバイスをサンプル1〜6と同じやり方でテストした。テスト結果を表5に示してある。
【0169】
【表5】

【0170】
表5から、本発明のアントラセン材料Inv-5と比較用アントラセン材料を似たようなレベルで比較すると、前者は後者よりも輝度収率が高く、動作安定性が非常に優れていることがわかる。Inv-5/TBPの組み合わせはTBADN/TBPの組み合わせよりも青-緑が強いため、白色発光デバイスで使用するのに望ましかろう。
【0171】
デバイス例6 - サンプル31〜36のELデバイスの製造
【0172】
ELデバイスのサンプル31〜35をサンプル1〜5と同じ方法で製造したが、Inv-1の代わりにInv-7にした点が異なっている。サンプル36はサンプル6と同様にして製造した。このようにして形成したデバイスをサンプル1〜6と同じやり方でテストしたが、セルを20mA/cm2にて70℃で200時間にわたって動作させることによってデバイスの安定性をテストした点が異なっている。テスト結果を表6に示してある。
【0173】
【表6】

【0174】
表6から、本発明のアントラセン材料Inv-7と比較用アントラセン材料を似たようなレベルで比較すると、前者は後者よりも輝度収率が高く、動作安定性は同程度か優れていることがわかる。Inv-7/TBPの組み合わせはTBADN/TBPの組み合わせよりも青-緑が強いため、白色発光デバイスで使用するのに望ましかろう。
【0175】
デバイス例7 - サンプル37〜42のELデバイスの製造
【0176】
ELデバイスのサンプル37〜41をサンプル1〜5と同じ方法で製造したが、Inv-1の代わりにInv-8にした点が異なっている。サンプル42はサンプル6と同様にして製造した。このようにして形成したデバイスをサンプル1〜6と同じやり方でテストしたが、セルを20mA/cm2にて70℃で200時間にわたって動作させることによってデバイスの安定性をテストした点が異なっている。テスト結果を表7に示してある。
【0177】
【表7】

【0178】
表7から、本発明のアントラセン材料Inv-8と比較用アントラセン材料を似たようなレベルで比較すると、前者は後者よりも輝度収率が高く、動作安定性が非常に優れていることがわかる。Inv-8/TBPの組み合わせはTBADN/TBPの組み合わせよりも青-緑が強いため、白色発光デバイスで使用するのに望ましかろう。
【0179】
デバイス例8 - サンプル43〜48のELデバイスの製造
【0180】
ELデバイスのサンプル43〜47をサンプル1〜5と同じ方法で製造したが、Inv-1の代わりにInv-9にした点が異なっている。サンプル48はサンプル6と同様にして製造した。このようにして形成したデバイスをサンプル1〜6と同じやり方でテストした。テスト結果を表8に示してある。
【0181】
【表8】

【0182】
表8から、本発明のアントラセン材料Inv-9と比較用アントラセン材料を似たようなレベルで比較すると、前者は後者よりも輝度収率が高く、動作安定性が非常に優れていることがわかる。Inv-9/TBPの組み合わせはTBADN/TBPの組み合わせよりも青-緑が強いため、白色発光デバイスで使用するのに望ましかろう。
【0183】
この明細書で言及した特許とそれ以外の刊行物の全内容は、参考としてこの明細書に組み込まれているものとする。本発明を特にいくつかの好ましい実施態様を参照して詳しく説明してきたが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、さまざまな変形や変更をなしうることが理解されよう。
【符号の説明】
【0184】
101 基板
103 アノード
105 正孔注入層(HIL)
107 正孔輸送層(HTL)
109 発光層(LEL)
111 電子輸送層(ETL)
113 カソード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アントラセン材料を含む発光層を含んでなるELデバイスであって、該アントラセン材料は、2位に少なくとも1つのアリール環を有し、6位に水素またはアルキル基を有し、12個以下の芳香族炭素環を含み、当該アントラセン基の9位に少なくとも1つのナフタレン基を有し、かつ、その10位にアリール基を有し、さらに該アントラセン材料の環には炭素環だけが含まれていることを特徴とするELデバイス。
【請求項2】
上記アントラセン材料が10個の芳香族炭素環を含み、その環には炭素環だけが含まれる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
上記アントラセン材料が少なくとも1個の2-ナフチル基を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
上記アントラセン材料が、9位と10位に独立に選択したナフチル基を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
上記ナフチル基が、独立に選択した2-ナフチル基である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
9位と10位の上記ナフチル基が同じ基である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項7】
上記アントラセン材料が、10位にビフェニル基を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
上記アントラセン材料の6位に水素を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
2位の上記アリール基が、単環式フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基のいずれかである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
上記アントラセン材料が、アントラセン部分を1つだけ含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
上記アントラセン材料がアントラセン部分を2つ含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
上記アントラセン材料が一般式(1):
【化1】

で表わされる(ただし、
Ar2はアリール基であり;
Ar9はナフチル基であり;
Ar10はアリール基であり;
v1、v3、v4、v5、v7、v8は、独立に、水素または置換基であり;
v6は、水素またはアルキル基である)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
Ar9とAr10が、独立に選択したナフチル基である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
Ar10がビフェニル基である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
v6が水素である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項16】
Ar2がナフチル基またはビフェニル基である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
Ar2が単環式フェニル基である、請求項12に記載のデバイス。
【請求項18】
上記発光層が、青色発光材料または青-緑色発光材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
上記発光層が緑色発光材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項20】
上記発光層が赤色発光材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
上記発光層が、ペリレンまたはペリレン誘導体を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
上記発光層が一般式(2a)または(2b)の材料;
【化2】

を含む(ただし、
Ra〜Rhは、水素であるか、独立に選択した置換基である)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
上記発光層が一般式(3a)の化合物:
【化3】

を含む(ただし、
wは、NまたはC-Y(Yは水素または置換基である)であり;
AraとArbは、独立に、芳香族環基を形成するのに必要な原子であり;
ZaとZbは、独立に選択した置換基である)、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
上記アントラセン材料の選択が、
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

の中からなされる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
白色発光を提供するための第2の発光層をさらに備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
上記第2の発光層が、ルブレンまたはルブレン誘導体を含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
白色光が直接発生するか、フィルタを用いることによって発生する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項28】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス・デバイスを備えるディスプレイ。
【請求項29】
請求項1に記載のエレクトロルミネッセンス・デバイスを備えるエリア照明装置。
【請求項30】
請求項1に記載のデバイスに電圧を印加する操作を含む発光方法。
【請求項31】
一般式(1):
【化13】

で表わされる化合物(ただし、
Ar2はアリール基であり;
Ar9はナフチル基であり;
Ar10はアリール基であり;
v1、v3、v4、v5、v7、v8は、独立に、水素または置換基であり;
v6は、水素またはアルキル基であり;
12個までの芳香族炭素環が存在していて、環の中には炭素環だけが含まれている)。
【請求項32】
Ar2とAr10が、独立に選択したフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基のいずれかである、請求項31に記載の化合物。
【請求項33】
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

の中から選択された、請求項31に記載の化合物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−104842(P2012−104842A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−278389(P2011−278389)
【出願日】平成23年12月20日(2011.12.20)
【分割の表示】特願2007−504998(P2007−504998)の分割
【原出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(510059907)グローバル オーエルイーディー テクノロジー リミティド ライアビリティ カンパニー (45)
【Fターム(参考)】