説明

アンモニアガス測定装置

【課題】試料流路内でのNOの損失による測定誤差の発生を抑えて測定精度を高めたアンモニアガス測定装置を提供する。
【解決手段】試料採取用のプローブ11内に設けられたアンモニアを酸化或いは還元する触媒13至近の下流側試料ガス経路(第1の経路18)中にNOをNOに還元する触媒16を設けた。これにより、アンモニアを酸化或いは還元する触媒13でNOがNOに酸化されても、NOが損失する前に再度NOに還元することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼排ガス中のアンモニアガス等の濃度を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石油等を燃焼する装置から排出される燃焼排ガスには有害な一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO)等の窒素酸化物(NO)が含まれているため、大気に放出される前にこれらを除去する脱硝処理を施さなければならない。この処理を行う脱硝装置では、燃焼排ガスにアンモニアガスを加えることにより、窒素酸化物を無害な窒素ガスと水に変換する。しかし、この処理により窒素酸化物が残らず変換されるとは限らず、また未反応のアンモニアガスが大気中に放出されると二次公害を引き起こすことにもなるため、脱硝装置から排出されるガス中の窒素酸化物とアンモニアの有無およびその濃度を監視する必要がある。
【0003】
このために用いられる従来の排ガス用アンモニア濃度測定装置は、図3に示すように、大別してプローブ11と処理部20とから構成される(例えば、特許文献1参照)。プローブ11は煙道の壁17に貫設され、煙道の中を流れる燃焼排ガスを吸入口14から吸入して試料ガスとする。吸入された試料ガスは2分され、その一方の試料ガスはプローブ11内に設けられた触媒反応器12を通過した後、第1の経路18を通って処理部20へ送られ、もう一方の試料ガスはそのまま第2の経路19を通って処理部20へ送られる。触媒反応器12にはヒータと触媒13が備えられており、試料ガス中のアンモニアガスは触媒13の存在下で次のように反応する。
【0004】
触媒13には酸化型と還元型があり、酸化型の場合は、反応温度約700〜800°Cにおいて次式によりアンモニアが酸化されて等モルのNOが生じる。
4NH+5O→4NO+6H
還元型の場合は、反応温度約400°Cにおいて次式によりアンモニアが窒素と水に分解される過程で等モルのNOが消費される。
NH+NO+1/4O→N+3/2H
従って、いずれの場合もNO濃度の増加分または減少分を測定すれば、アンモニア濃度が測定できる。
【0005】
このような測定を行うために、処理部20は、同一性能の2台のNO計23、24を並置し、それぞれ第1の経路18および第2の経路19からの試料ガスを導入して各々の窒素酸化物濃度を測定し、演算器25で両者の出力の差をとることによりアンモニア濃度を測定するように構成されている。試料ガス中のNO濃度は第2の経路19からの試料ガスが導入されるNO計24の出力により測定できる。なお、21、22は試料ガスを吸引してそれぞれNO計23、24に導入するためのポンプである。
【0006】
【特許文献1】特開2000−88837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように構成された従来のアンモニアガス測定装置では、触媒反応器12において試料ガス中のNOの一部が酸化されてNOが生じる。NOはドレンに溶けやすいので、処理部20に至る経路の途中で失われることがあり、その結果、酸化型の場合はアンモニア濃度の測定値が低めに、還元型の場合は高めに出る傾向があった。特に、試料ガス中の酸素濃度が高い場合や触媒が劣化した場合にNOがNOに酸化される割合が高くなり、時に数ppmの測定誤差を生じることもあった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、上記の要因による測定誤差の発生を抑えて測定精度を高めたアンモニアガス測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、アンモニアを酸化或いは還元する触媒至近の下流側試料ガス経路中にNOをNOに還元する触媒を設ける。これにより、アンモニアを酸化或いは還元する触媒でNOがNOに酸化されても、NOが損失する前に再度NOに還元することができるので、NO濃度、さらにはアンモニア濃度の測定が正確になる。
【発明の効果】
【0009】
本発明装置は上記のように構成されているので、アンモニア濃度の測定精度が向上し、その結果、火力発電所などにおいて脱硝装置のアンモニア注入量を正しく制御できるようになるので、プラントの運転コストを下げることができる。また、アンモニアを酸化或いは還元する触媒が劣化してNOの発生率が高まっても、アンモニア測定の精度はさほど低下しないので触媒の交換周期が延び、測定装置のランニングコストを下げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に本発明の一実施形態を示す。同図において、図3と同一の構成要素には同符号を付すことで再度の説明を省く。
本実施形態が図3に示す従来例と相違する点は、プローブ11内の触媒反応器12の下流側に別の触媒反応器15を設けたことである。追加されたこの触媒反応器15は、内容積3mL程度の管状容器にNOをNOに還元する触媒16として例えばリン酸を含浸させた活性炭が充填されており、その触媒作用により、前段の触媒反応器12においてNOが酸化されて発生したNOを再びNOに還元する。煙道の壁17に取り付けられたプローブ11の内部は、この還元反応に必要な180°C以上の高温に維持されているから、触媒反応器15は特にヒータで加熱する必要はなく、また、触媒反応器12から触媒反応器15までの短い経路でドレンが発生することもなく、発生したNOは殆ど失われることなく全て触媒反応器15で還元される。
このような構成により、処理部20までの長い第1の経路18の中で、ドレンに溶けやすいNOが失われることが避けられ、その結果としてアンモニアの測定精度が向上する。
【実施例1】
【0011】
図2は本発明の他の実施形態を示したもので、追加された触媒反応器15がプローブ11外の第1の経路18の途中に設けられていることが図1と異なる。その他、図1と同符号を付した構成要素は図1と同様である。本実施形態は、既設のアンモニアガス測定装置に触媒反応器15を追加するに際して、プローブ11内に十分な設置スペースが確保できない場合に適した形態であって、機能的には図1のものと同じである。但し、前述したように、NOはドレンに溶けて失われやすいので、第1の経路18のうちプローブ11から触媒反応器15までの経路部分は加熱導管18aで配管することによりドレンの発生を防ぐ必要がある。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、燃焼排ガス中のアンモニアガス等の濃度を測定する装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図3】従来の構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0014】
11 プローブ
12 触媒反応器
13 触媒
14 吸入口
15 触媒反応器
16 触媒
17 煙道の壁
18 第1の経路
18a 加熱導管
19 第2の経路
20 処理部
21 ポンプ
22 ポンプ
23 NO
24 NO
25 演算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料採取用のプローブを介して採取され、該プローブ内に設けられたアンモニアを酸化或いは還元する触媒を通過する第1の経路を経由して導かれる試料ガス中の窒素酸化物濃度と、前記触媒を通過しない第2の経路を経由して導かれる試料ガス中の窒素酸化物濃度との差からアンモニア濃度を求めるように構成されたアンモニアガス測定装置において、前記触媒の下流側経路中で且つ前記プローブに近接した位置に二酸化窒素を一酸化窒素に還元する触媒を設けたことを特徴とするアンモニアガス測定装置。
【請求項2】
二酸化窒素を一酸化窒素に還元する触媒をプローブ内に設けたことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアガス測定装置。
【請求項3】
第1の経路の途中に二酸化窒素を一酸化窒素に還元する触媒を設けると共に、プローブから前記二酸化窒素を一酸化窒素に還元する触媒までの前記第1の経路の部分を加熱導管を以て構成したことを特徴とする請求項1に記載のアンモニアガス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−112787(P2006−112787A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−297062(P2004−297062)
【出願日】平成16年10月12日(2004.10.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】