説明

アンモニア分解用触媒及び該触媒の製造方法、並びに該触媒を用いたアンモニア分解方法及び水素製造方法

【課題】ガス中に高濃度の水蒸気が存在する条件下においても、効率良くアンモニアを水素と窒素に分解することができ、且つ、コスト的にも実用性の高い非貴金属系金属を活性成分とする触媒を提供する。
【解決手段】本発明のアンモニア分解用触媒は、水蒸気の存在下にアンモニアを窒素と水素に分解する触媒であって、長周期型周期律表6〜10族の少なくとも1種の元素(A成分)と、長周期型周期律表2〜5族及び12〜15族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(B成分)の酸化物及び/又は複合酸化物とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア分解用触媒及びその製造方法、並びに、当該触媒を用いた水蒸気共存下におけるアンモニア分解方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アンモニア分解による水素製造技術は古くから提案されているが、本格的に実用されることは少ないのが現状である。例えば、コークス炉から生じるアンモニアを分解し、水素を得る技術が提案されている(特許文献1)。当該触媒は白金族を必須とするものであり、コストが高くなることが実用上の問題点である。一方、白金族を必須成分とする貴金属系触媒の問題点を克服するために、非貴金属系触媒が提案されている。非貴金属系の触媒として、銅族元素、クロム族元素及び鉄族元素のうちから選ばれる少なくとも1種の金属又は化合物とニッケルを触媒成分として用いる触媒が提案されている(特許文献2)。当該触媒は、ニッケルにコバルト、銅、クロム等各成分を組み合わせることにより、ニッケル単独成分からなる触媒に比べて、触媒性能を向上させたものである。また、希土類とニッケルを組み合わせた触媒も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−329372号公報
【特許文献2】特開平02−198638号公報
【特許文献3】特開平02−198639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来提案されてきた多くのアンモニア分解用触媒は、水蒸気を含まない乾燥ガス条件下でのアンモニア分解に関するものであり、アンモニア分解活性に及ぼす共存水蒸気の影響に関する検討はほとんどなされてこなかった。
一方で、反応ガス中に含まれる水蒸気はアンモニア分解反応に対して反応阻害効果を有するため、従来から提案されているアンモニア分解用触媒を水蒸気共存下でのアンモニア分解反応にそのまま適用してもアンモニアを有効に分解することが困難な場合がある。
また、触媒活性点増加を目的として多量の触媒成分を担体成分に含浸担持しても触媒成分粒子が凝集し、結果として触媒活性表面が増加せず十分な触媒活性を有する触媒を得ることができないこともある。
【0005】
本発明は、コスト面で実用上の問題がある貴金属元素を用いることなく、アンモニアガス中に水蒸気が含まれるときであっても有効にアンモニアを分解することができる触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができた本発明のアンモニア分解用触媒は、水蒸気の存在下にアンモニアを窒素と水素に分解する触媒であって、長周期型周期律表6〜10族の少なくとも1種の元素(A成分)と、長周期型周期律表2〜5族及び12〜15族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(B成分)の酸化物及び/又は複合酸化物とを含むことを特徴とする。前記A成分の算出比表面積(S2)は前記触媒の比表面積(S1)に対して0.15〜0.85(S2/S1)であることが好ましい。前記B成分の酸化物及び/又は複合酸化物は、アルミナ、シリカ、チタニア、ハフニア、ジルコニア、酸化亜鉛、アルカリ土類金属酸化物及びランタノイド系金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種が好適である。前記触媒は、A成分を触媒全量に対して55〜95質量%含有することが好ましい。
【0007】
本発明のアンモニア分解用触媒の製造方法の態様は、前記A成分の水溶性塩と前記B成分の水溶性塩とを水に溶解し、アルカリ性化合物により沈殿物を生成させた後、この沈殿物をろ過、水洗、乾燥、熱処理する態様;前記A成分の水溶性塩を水に加え水溶液を調製し、この水溶液にアルカリ性化合物を加えてA成分を含有する微粒子を析出させて微粒子分散液を調製し、当該微粒子分散液を撹拌しながら前記B成分を含有する微粒子分散ゾル溶液を添加して、前記A成分を含有する微粒子とB成分を含有する微粒子からなる沈殿物を生成させた後、この沈殿物をろ過、水洗、乾燥、熱処理する態様;が好ましい。
【0008】
本発明には、上記アンモニア分解用触媒を用いて、水蒸気の存在下にアンモニアを窒素と水素に分解するアンモニア分解方法;水蒸気の存在下にアンモニアを窒素と水素に分解する水素製造方法;水蒸気を1〜40容量%、アンモニアを1〜99容量%、水素を0〜50容量%及び窒素(水蒸気、アンモニア、水素及び窒素の合計容量が100容量%)を含むガス中のアンモニアを窒素と水素に分解する水素製造方法;も含まれる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアンモニア分解用触媒は、原料ガスに水蒸気が含まれる場合であっても、その反応阻害効果を大きく受けることなく有効に触媒作用を示し、効果的にアンモニアを水素と窒素に分解することが可能なものである。また、本発明の触媒の特徴は当該触媒の表面において活性成分であるA成分の比表面積を高めたものである。A成分が触媒中で同じ含有量であってもA成分の比表面積を高く保持できるため効率良くアンモニアを水素と窒素に分解することができる。よって、従来用いられてきた貴金属系の触媒よりも低コストでアンモニアを分解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のアンモニア分解用触媒は、長周期型周期律表6〜10族の少なくとも1種の元素(A成分)と、長周期型周期律表2〜5族及び12〜15族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(B成分)の酸化物及び/又は複合酸化物とを含む触媒である。
【0011】
前記A成分は、長周期型周期律表6〜10族の少なくとも1種の元素を用いるものであり、好ましくは鉄、コバルト及びニッケルからなる群から選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはコバルト又はニッケルである。A成分の状態は、金属、酸化物、それらの混合物の何れであってもよく、好ましくは金属状態である。
【0012】
触媒中のA成分の含有率は、当該触媒に対して55〜95質量%、好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは65〜85質量%である。A成分の含有率が55質量%未満では十分なアンモニア分解活性が得られないことがあり、95質量%を超えるとA成分に対してB成分が不足し、反応条件下でA成分の凝集が進み、耐熱性が低下する恐れがある。
【0013】
前記B成分は、長周期型周期律表2〜5及び12〜15族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物及び/又は複合酸化物であり、好ましくはアルミナ、シリカ、ジルコニア、アルカリ土類金属酸化物及びランタノイド系金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物及び/又はそれらの複合酸化物である。当該複合酸化物とは、個々の金属酸化物の単純な物理混合物でなく、セリア・ジルコニア固溶体、シリカ・アルミナ等に例示されるように各構成金属元素が原子レベルで複合化し、個々の金属酸化物の単純物理混合物と比較して構造及び物性面で異なる特性を示す状態にあるものを指す。
【0014】
本発明のアンモニア分解用触媒は、前記A成分の算出比表面積(S2)が、20m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは25m2/g以上、さらに好ましくは30m2/g以上である。前記A成分の算出比表面積が20m2/g以上であれば、アンモニア分解用触媒の触媒活性がより向上する。A成分の算出比表面積(S2)は大きいほど好ましいが、触媒調製法の改良等によって増加できる値にも限界があり、実際的には250m2/g以下が好ましく、より好ましくは200m2/g以下、さらに好ましくは150m2/g以下である。
【0015】
前記A成分の算出比表面積(S2)は、当該触媒の比表面積から当該B成分酸化物由来の比表面積分を減じることにより算出される。当該B成分酸化物は、例えば、B成分の水溶性塩を水に溶解し、これに当該触媒調製に用いるアルカリ性化合物を添加しB成分の沈殿物(例えば、水酸化物)を得た後、当該触媒調製手順と同様にB成分の沈殿物(例えば、水酸化物)をろ過、水洗、乾燥、還元し、B成分酸化物を調製する。得られたB成分酸化物について、窒素ガスを用いたBET法により比表面積(S(b))を測定する。当該触媒の比表面積(S1)から当該触媒に含まれるB成分酸化物由来の比表面積分(S(b)×当該触媒中のB成分酸化物の質量含有率)を減じて当該A成分の算出比表面積(S2)を得ることができる。
【0016】
本発明のアンモニア分解用触媒の比表面積(S1)は、10〜500m2/gが好ましく、より好ましくは20〜450m2/g、さらに好ましくは、25〜400m2/g、さらに好ましくは、30〜350m2/gである。触媒の比表面積(S1)が10m2/g以上であれば、触媒性能がより向上し、500m2/g以下であれば、触媒の強度が良好となる。アンモニア分解用触媒の比表面積は、窒素ガスを用いたBET法により測定する。
【0017】
本発明のアンモニア分解用触媒は、前記A成分の算出比表面積(S2)の触媒の比表面積(S1)に対する比(S2/S1)は0.15以上が好ましく、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.22以上であり、0.85以下が好ましく、より好ましくは0.80以下、さらに好ましくは0.75以下である。前記比(S2/S1)が0.15未満では、触媒におけるA成分の算出比表面積が少なく十分な活性が得られないことがあり、0.85を超えると耐熱性が低下し、耐久性が低下する場合がある。なお、A成分としてニッケルを使用する場合、ニッケルは他のA成分(例えば、コバルト)よりも触媒活性が若干劣るため、前記比(S2/S1)を0.50以上とすることが好ましく、より好ましくは0.55以上、さらに好ましくは0.60以上である。
【0018】
本発明のアンモニア分解用触媒の形状は、粉体、球状、ペレット、サドル型、円筒型、板状、ハニカム状等、種々の形状のものを用いることができる。
本発明のアンモニア分解用触媒は、原料ガスに水蒸気が含まれる場合であっても、その反応阻害効果を大きく受けることなく有効に触媒作用を示し、効果的にアンモニアを水素と窒素に分解することが可能である。そのため、水蒸気が共存するアンモニア含有ガス中のアンモニアを窒素と水素に分解するアンモニア分解方法;水蒸気が共存するアンモニア含有ガス中のアンモニアを分解して水素を製造する水素製造方法;に好適に用いることができる。
【0019】
本発明にかかる触媒の製造方法の一例を示す。なお、本発明の効果を奏するものであれば以下の触媒製造方法に限定されるものではない。本発明の触媒の製造方法としては、例えば、(1)A成分(例えば、コバルト)の水溶性塩を水に加え水溶液を調製し、この水溶液にアルカリ性化合物を加えてA成分を含有する微粒子(例えば、A成分の水酸化物微粒子)を析出させ微粒子分散液を調製する。この微粒子分散液を撹拌しながら、B成分を含有する微粒子(例えば、B成分酸化物の微粒子)分散ゾル溶液を添加して、A成分を含有する微粒子(例えば、A成分の水酸化物微粒子)とB成分を含有する微粒子(例えば、B成分酸化物の微粒子)からなる沈殿物を生成させる。その後、この沈殿物をろ過により取り出し、水洗、乾燥、熱処理(例えば、還元性雰囲気下での熱処理)して触媒を得る方法;(2)B成分の水溶性塩とA成分(例えば、コバルト)の水溶性塩とを水に加え十分に混合した後、アルカリ性化合物を加えA成分とB成分とを含有する微粒子(例えば、水酸化物微粒子)の沈殿物を生成させる。その後、この沈殿物をろ過により取り出し、水洗、乾燥、熱処理(例えば、還元性雰囲気下での熱処理)して触媒を得る方法;(3)アルカリ性化合物を加えたアルカリ性水溶液を調製する。撹拌したアルカリ性水溶液中にB成分の水溶性塩とA成分(例えば、コバルト)の水溶性塩を含む混合水溶液を追加して、A成分を含有する微粒子(例えば、A成分の水酸化物微粒子)とB成分を含有する微粒子(例えば、B成分の水酸化物微粒子)からなる沈殿物を生成させる。その後、この沈殿物をろ過により取り出し、水洗、乾燥、熱処理(例えば、還元性雰囲気下での熱処理)して触媒を得る方法;が挙げられる。
【0020】
上記製造方法において、熱処理は、空気雰囲気下での焼成;窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下での熱処理;水素等の還元性ガスを含む還元性ガス雰囲気下での還元を含む。また、触媒は使用に際して還元処理をすることが好ましい。還元方法としては、水素ガス等の還元性ガスと接触させる通常の方法を採用することができる。水素ガスを用いた還元処理を行う場合、還元条件は300〜750℃、好ましくは400〜650℃で、30分〜2時間処理するものである。なお、水素製造時、原料ガスが酸素ガスを含む場合、アンモニア分解反応とともにアンモニア燃焼反応が進行するが、このアンモニア燃焼反応によって触媒温度が直ちに上昇し、アンモニア分解により生成した水素によって触媒が還元される。そのため、原料ガスが酸素ガスを含む場合には、アンモニア分解用触媒について、使用前の還元処理を施さなくとも使用できる場合がある。
【0021】
前記A成分の原料は、熱処理(好ましくは、還元処理)等により、金属、酸化物それらの混合物を生成するものであれば何れの化合物でも使用することが可能であるが、好ましくは水溶性の化合物である硝酸塩、酢酸塩、塩化物である。前記A成分の水溶性塩としては、例えば、硝酸コバルト六水和物等のコバルトの水溶性塩;硝酸ニッケル六水和物等のニッケルの水溶性塩;等が挙げられる。
【0022】
B成分の原料は最終的に熱処理により酸化物及び/又は複合酸化物を生成するものであれば何れの化合物でも使用することが可能であり、好ましくは水溶性の化合物である各種金属の硝酸塩、酢酸塩、塩化物、硫酸塩を使用することができる。前記B成分の水溶性塩としては、例えば、硝酸アルミニウム九水和物等のアルミニウムの水溶性塩;硝酸マグネシウム六水和物等のマグネシウムの水溶性塩;硝酸セリウム六水和物等のセリウムの水溶性塩;オキシ硝酸ジルコニウム等のジルコニウムの水溶性塩;等が挙げられる。また、前記B成分の微粒子としては、アルミナゾル;シリカゾル;等が挙げられる。
【0023】
前記アルカリ性化合物としては、例えば、アンモニア、炭酸アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム等のアンモニア系化合物;水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;等が挙げられる。
【0024】
本発明のアンモニア分解用触媒は、原料ガスに水蒸気が含まれる場合であっても、その反応阻害効果を大きく受けることなく有効に触媒作用を示す。そのため、水蒸気が共存するアンモニア含有ガス中のアンモニアを分解して水素を製造することに好適に用いることができる。この場合、反応ガス(原料ガス)は、水蒸気を1〜40容量%、アンモニアを1〜99容量%、水素を0〜50容量%及び窒素(水蒸気、アンモニア、水素及び窒素の合計容量が100容量%)を含むガスが好ましい。この反応ガス(原料ガス)中において、アンモニアは1〜99容量%、好ましくは5〜98容量%存在するものであり、水蒸気は1〜40容量%、好ましくは2〜30容量%である。
【0025】
原料ガスは、アンモニアガスであるが、本発明の効果を阻害しないものであれば、他のガスを加えることができ、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム、一酸化炭素、酸素である。特に、原料ガスが酸素を含む場合、アンモニアガスやアンモニア分解反応で生成した水素の一部を燃焼し、その燃焼熱をアンモニア分解反応の反応熱として使用するオートサーマルリフォーマーによるアンモニア分解を行うことができる。この場合、アンモニアに対する酸素のモル比(酸素/アンモニア)は、0.75未満とする必要がある。また、アンモニア分解により得られる水素量と、燃焼反応による燃焼熱とを両立させる観点から、モル比(酸素/アンモニア)は0.05以上が好ましく、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.12以上であり、0.5以下が好ましく、より好ましくは0.3以下である。
【0026】
アンモニアの分解反応は、反応温度が300〜900℃、好ましくは400〜700℃であり、反応圧力は0.002〜2MPa、好ましくは0.004〜1MPaである。反応ガス(原料ガス)導入時の空間速度(SV)は1,000〜500,000hr-1、好ましくは1,000〜200,000hr-1である。
【0027】
また、触媒を使用するに際して、事前に前処理することもできる。適した処理条件で前処理することにより触媒の状態を反応中の状態に近いものとすることができ、本前処理を施すことにより当初から定常的な反応状態での運転が可能になる。前処理としては、例えば、窒素ガスを反応条件で一定時間触媒に流通させることである。
【0028】
本発明により水蒸気が含まれるアンモニアを含むガスであってもアンモニアを分解することができる。更に当該アンモニアを分解することにより水素を得ることができるものである。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0030】
<第1の触媒の製造>
製造例1
24.74gの硝酸コバルト六水和物と110.57gの硝酸アルミニウム九水和物とを、500mL(ミリリットル)の純水に溶解させ、硝酸コバルトと硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した(水溶液A1)。別途、101.2gの炭酸アンモニウムを1.5L(リットル)の純水に溶解させた水溶液B1を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液B1に水溶液A1を一度に加え、さらに一時間撹拌を継続し、沈殿物を生成させた。その後、当該沈殿物をろ過回収し、水洗後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて650℃で一時間還元して触媒1を得た。得られた触媒1のコバルト含有率は、25質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒1の比表面積(S1)は、241.3m2/gであった。
【0031】
また、触媒1のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるアルミナのみからなる粉体1を調製した。具体的には、まず105.0gの硝酸アルミニウム九水和物を500mLの純水に溶解させた(水溶液a1)。別途、80.6gの炭酸アンモニウムを1.5Lの純水に溶解させた水溶液(水溶液b1)を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液b1に水溶液a1を一度に加え、さらに一時間撹拌を継続し、沈殿物を生成させた。その後、当該沈殿物をろ過回収し、水洗後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて650℃で一時間還元処理して触媒1のB成分であるアルミナのみからなる粉体1を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体1の比表面積は、285.5m2/gであった。
【0032】
製造例2
製造例1における硝酸コバルト六水和物、硝酸アルミニウム九水和物及び炭酸アンモニウムの使用量を66.6g、48.9g及び81.5gに変更した以外は製造例1と同様にして触媒2を得た。得られた触媒2のコバルト含有率は、67質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒1の比表面積(S1)は、121.7m2/gであった。
また、触媒2のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるアルミナのみからなる粉体2を製造例1と同様にして調製した。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体2の比表面積は、285.5m2/gであった。
【0033】
製造例3
製造例1における硝酸コバルト六水和物、硝酸アルミニウム九水和物及び炭酸アンモニウムの使用量を81.5g、28.1g及び75.3gに変更した以外は製造例1と同様にして触媒3を得た。得られた触媒3のコバルト含有率は、81.2質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒1の比表面積(S1)は、75.4m2/gであった。
また、触媒3のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるアルミナのみからなる粉体3を製造例1と同様にして調製した。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体3の比表面積は、285.5m2/gであった。
【0034】
製造例4
150℃で一晩乾燥させたγ−アルミナ(住友化学株式会社製)粉体を粉砕し、当該粉体5gを100mLの純水中に加え、撹拌により分散させた。γ−アルミナが分散された純水を激しく撹拌しながら、99.2gの硝酸コバルト六水和物を少量ずつ添加した。次いで、γ−アルミナが分散された硝酸コバルト水溶液を撹拌しながら加熱し、水分を蒸発させて乾燥物を得た。得られた乾燥物を、さらに150℃で一晩乾燥後、粉砕して管状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒4を得た。得られた触媒4のコバルト含有率は、80質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒4の比表面積(S1)は、61.1m2/gであった。
また、触媒4のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるγ−アルミナ(住友化学株式会社製)粉体を粉砕後、当該粉体を管状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元処理してγ−アルミナからなる粉体4を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体4の比表面積は、291.4m2/gであった。
【0035】
製造例5
29.1gの硝酸コバルト六水和物と102.4gの硝酸マグネシウム六水和物を500mLの純水に溶解させ、硝酸コバルトと硝酸マグネシウムの混合水溶液を調製した(水溶液A2)。別途、140.1gの水酸化カリウムを2Lの純水に溶解させた水溶液B2を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液B2に水溶液A2を滴下し、沈殿物を生成させた。当該沈殿物をろ過し、十分に水洗した後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒5を得た。得られた触媒5のコバルト含有率は、26.8質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒5の比表面積(S1)は、188.3m2/gであった。
【0036】
また、触媒5のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるマグネシアのみからなる粉体5を調製した。具体的には、まず102.6gの硝酸マグネシウム六水和物を500mLの純水に溶解させた(水溶液a2)。別途、112.2gの水酸化カリウムを2Lの純水に溶解させた水溶液b2を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液b2に水溶液a2を滴下し、沈殿物を生成させた。当該沈殿物をろ過し、十分に水洗した後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元処理してマグネシアからなる粉体5を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体5の比表面積は、173.7m2/gであった。
【0037】
製造例6
製造例5における硝酸コバルト六水和物、硝酸マグネシウム六水和物及び水酸化カリウムの使用量を53.8g、62.2g及び120.0gに変更した以外は製造例5と同様にして触媒6を得た。得られた触媒6のコバルト含有率は、52.7質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒6の比表面積(S1)は、158.1m2/gであった。
また、触媒6のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるマグネシアのみからなる粉体6を製造例5と同様にして調製した。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体6の比表面積は、173.7m2/gであった。
【0038】
製造例7
製造例5における硝酸コバルト六水和物、硝酸マグネシウム六水和物及び水酸化カリウムの使用量を72.8g、35.0g及び108.4gに変更した以外は製造例5と同様にして触媒7を得た。得られた触媒7のコバルト含有率は、72.8質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒7の比表面積(S1)は、123.6m2/gであった。
また、触媒7のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるマグネシアのみからなる粉体7を製造例5と同様にして調製した。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体7の比表面積は、173.7m2/gであった。
【0039】
製造例8
塩基性炭酸マグネシウム(和光純薬株式会社製)を750℃で2時間焼成してマグネシアを作製した。当該マグネシア粉体5gを100mLの純水中に加え、撹拌により分散させた。マグネシアが分散された純水を激しく撹拌しながら、74.4gの硝酸コバルト六水和物を少量ずつ添加した。次いで、マグネシアが分散された硝酸コバルト水溶液を撹拌しながら加熱し、水分を蒸発させて乾燥物を得た。得られた乾燥物を、さらに150℃で一晩乾燥後、粉砕して管状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒8を得た。得られた触媒8のコバルト含有率は、60質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒8の比表面積(S1)は、84.4m2/gであった。
【0040】
また、触媒8のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるマグネシアのみからなる粉体8を調製した。具体的には、塩基性炭酸マグネシウム(和光純薬株式会社製)を750℃で2時間焼成してマグネシアを作製し、当該マグネシア粉体を粉砕後、管状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元処理してマグネシアのみからなる粉体8を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体8の比表面積は、56.3m2/gであった。
【0041】
製造例9
81.4gの硝酸ニッケル六水和物と23.4gの硝酸アルミニウム九水和物を500mLの純水に溶解させ、硝酸ニッケルと硝酸アルミニウムの混合水溶液を調製した(水溶液A3)。別途、327gの25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を1.5Lの純水に溶解させた水溶液B3を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液B3に水溶液A3を一度に加え、さらに一時間撹拌を継続し、沈殿物を生成させた。その後、当該沈殿物をろ過回収し、水洗後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒9を得た。得られた触媒9のニッケル含有率は、83.8質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒9の比表面積(S1)は、177.5m2/gであった。
【0042】
また、触媒9のA成分であるニッケルの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるアルミナのみからなる粉体9を調製した。具体的には、まず93.8gの硝酸アルミニウム九水和物を500mLの純水に溶解させた(水溶液a3)。別途、684gの25質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を1.5Lの純水に溶解させた水溶液(b3)を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液b3に水溶液a3を一度に加え、さらに一時間撹拌を継続し、沈殿物を生成させた。その後、当該沈殿物をろ過回収し、水洗後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元してアルミナのみからなる粉体9を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体9の比表面積は、341.7m2/gであった。
【0043】
製造例10
61.1gの硝酸ニッケル六水和物と53.8gの硝酸マグネシウム六水和物を500mLの純水に溶解させ、硝酸ニッケルと硝酸マグネシウムの混合水溶液を調製した(水溶液A4)。別途、118gの水酸化カリウムを1.5Lの純水に溶解させた水溶液B4を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液B4に水溶液A4を滴下し、沈殿物を生成させた。当該沈殿物をろ過し、十分に水洗した後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒10を得た。得られた触媒10のニッケル含有率は、59.3質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒10の比表面積(S1)は、118.5m2/gであった。
【0044】
また、触媒10のA成分であるニッケルの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるマグネシアのみからなる粉体10を調製した。102.6gの硝酸マグネシウム六水和物を500mLの純水に溶解させた(水溶液a4)。別途、112.2gの水酸化カリウムを2Lの純水に溶解させた水溶液b4を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液b4に水溶液a4を滴下し、沈殿物を生成させた。当該沈殿物をろ過し、十分に水洗した後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて650℃で一時間還元処理してマグネシアからなる粉体10を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体10の比表面積は、58.2m2/gであった。
【0045】
製造例11
66.9gの硝酸コバルト六水和物、15.4gの硝酸セリウム六水和物及び2.37gのオキシ硝酸ジルコニウムを500mLの純水に溶解させ、硝酸コバルト、硝酸セリウム及びオキシ硝酸ジルコニウムの混合水溶液を調製した(水溶液A5)。別途、56.1gの炭酸アンモニウムを1.5Lの純水に溶解させた水溶液B5を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液B5に水溶液A5を一度に加え、さらに一時間撹拌を継続し、沈殿物を生成させた。その後、当該沈殿物をろ過回収し、水洗後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒11を得た。得られた触媒11のコバルト含有率は、64.1質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒11の比表面積(S1)は、75.7m2/gであった。
【0046】
また、触媒11のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるセリア・ジルコニアのみからなる粉体11を調製した。具体的には、まず17.4gの硝酸セリウム六水和物及び2.67gのオキシ硝酸ジルコニウムを500mLの純水に溶解させ、硝酸セリウム及びオキシ硝酸ジルコニウムの混合水溶液を調製した(水溶液a5)。別途、13.4gの炭酸アンモニウムを1.5Lの純水に溶解させた水溶液b5を調製した。常温下で激しく撹拌した水溶液b5に水溶液a5を一度に加え、さらに一時間撹拌を継続し、沈殿物を生成させた。その後、当該沈殿物をろ過回収し、水洗後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元してセリア・ジルコニアのみからなる粉体11を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体11の比表面積は、145.1m2/gであった。
【0047】
製造例12
49.5gの硝酸コバルト六水和物を1Lの純水に溶解した(水溶液A6)。別途、25.6mLの25質量%アンモニア水に純水を加えて300mLに希釈したアンモニア水に14.24gのスノーテックス(登録商標)N(日産化学工業株式会社製シリカゾル:シリカ20.3質量%含有)を加えた水溶液B6を調製し、水溶液B6を水溶液A6に滴下し、沈殿物を生成させた。当該沈殿物をろ過し、十分に水洗した後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒12を得た。得られた触媒12のコバルト含有率は、77.6質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒12の比表面積(S1)は、118.2m2/gであった。
【0048】
また、触媒12のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるシリカのみからなる粉体12を調製した。具体的には、スノーテックスN(日産化学工業株式会社製シリカゾル:シリカ20.3質量%含有)を50gガラス製ビーカーに計り取り、150℃で一晩乾燥させた。乾燥により得られた固形物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元してシリカのみからなる粉体12を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体12の比表面積は、220.8m2/gであった。
【0049】
製造例13
34.9gの硝酸コバルト六水和物と27.3gの硝酸アルミニウム九水和物を1Lの純水に溶解した(水溶液A7)。別途、34.5mLの25質量%アンモニア水に純水を加えて300mLに希釈したアンモニア水に21.5gのスノーテックスN(日産化学工業株式会社製シリカゾル:シリカ20.3質量%含有)を加えた水溶液B7を調製し、水溶液B7を水溶液A7に滴下し、沈殿物を生成させた。当該沈殿物をろ過し、十分に水洗した後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒13を得た。得られた触媒13のコバルト含有率は、46.7質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒13の比表面積(S1)は、122.8m2/gであった。
【0050】
また、触媒13のA成分であるコバルトの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるシリカ・アルミナのみからなる粉体13を調製した。37.5gの硝酸アルミニウム九水和物を1Lの純水に溶解した(水溶液a7)。別途、22.6mLの25質量%アンモニア水に純水を加えて300mLに希釈したアンモニア水に29.6gのスノーテックスN(日産化学工業株式会社製シリカゾル:シリカ20.3質量%含有)を加えた水溶液b7を調製し、水溶液b7を水溶液a7に滴下し、沈殿物を生成させた。当該沈殿物をろ過し、十分に水洗した後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元してシリカ・アルミナのみからなる粉体13を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体13の比表面積は、150.8m2/gであった。
【0051】
製造例14
150℃で一晩乾燥させたγ−アルミナ(Strem Chemicals Inc.製)粉体を粉砕し、当該粉体20gに、24.8gの硝酸ニッケル六水和物を50mLの純水に溶解させた水溶液を加え、撹拌しながら加熱して水分を蒸発させて乾燥物を得た。得られた乾燥物を、さらに150℃で一晩乾燥後、粉砕して管状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒14を得た。得られた触媒14のニッケル含有率は、20質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒14の比表面積(S1)は、157.4m2/gであった。
また、触媒14のA成分であるニッケルの算出比表面積(S2)を算出するために、B成分であるγ−アルミナ(Strem Chemicals Inc.製)粉体を粉砕後、当該粉体を管状炉に充填し、10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元処理してγ−アルミナからなる粉体14を得た。窒素ガスを用いたBET法で測定した粉体14の比表面積は、187.1m2/gであった。
【0052】
製造例15
99.0gの硝酸コバルト六水和物を500mLの純水に溶解させた(水溶液A8)。別途、65.3gの炭酸アンモニウムを1.5Lの純水に溶解させた水溶液B8を調製し、常温下で激しく撹拌した水溶液B8に水溶液A8を一度に加え、さらに一時間撹拌を継続し、沈殿物を生成させた。その後、当該沈殿物をろ過回収し、水洗後、150℃で一晩乾燥させた。乾燥後の沈殿物を粉砕し、管状炉に充填して10体積%水素ガス(窒素希釈)を用いて450℃で一時間還元して触媒15を得た。得られた触媒15のコバルト含有率は、100質量%であった。窒素ガスを用いたBET法で測定した触媒15の比表面積(S1)は、4.5m2/gであった。
【0053】
<触媒の比表面積測定法>
触媒の比表面積は、窒素ガスを用いたBET法により測定した。
【0054】
<A成分の比表面積算出法>
A成分の算出比表面積(S2)は、触媒の比表面積(S1)からB成分酸化物由来の比表面積分(Sb)を減じることにより算出した。触媒中のB成分酸化物由来の比表面積は、以下のようにして求めた。具体的には、各製造例で使用したB成分の水溶性塩を水に溶解し、これにその製造例で使用したアルカリ性化合物を添加しB成分の沈殿物(例えば、水酸化物)を調製した。その後、その製造例における触媒調製手順と同様に、B成分の沈殿物(例えば、水酸化物)をろ過、水洗、乾燥、還元し、B成分酸化物を調製した。得られた酸化物について、窒素ガスを用いたBET法により比表面積(S(b))を測定した。下記式により触媒中のB成分酸化物由来の比表面積を算出した。
触媒中のB成分酸化物由来の比表面積=(S(b)×当該触媒中のB成分酸化物の質量含有率)
【0055】
【表1】

【0056】
<水蒸気共存下でのアンモニア分解反応>
10mmφのSUS316製反応管を用い、製造例1〜15で調製した触媒1〜15を0.8mL充填して水蒸気共存下でのアンモニア分解反応(反応例1〜15)を行った。常圧下、SV=21,000hr-1とし、電気炉で反応管を加熱し、各電気炉設定温度でのアンモニア分解率を測定した。アンモニア分解反応は、触媒に供給する入口ガス組成をアンモニア48.3体積%、水蒸気17.3体積%及び残部窒素として実施した。
アンモニア分解率は、入口に供給しているアンモニア流速V1、窒素流速V2及び触媒層出口ガス中に含まれる水蒸気及び未反応アンモニアをトラップした後のガス流速V3から下記式により算出した。なお、触媒の前処理として窒素で希釈した10%水素を毎分100mlで流通しながら450℃で1時間還元を行ってから水蒸気共存下でのアンモニア分解反応を実施した。反応結果を表2に示す。
アンモニア分解率(%)=100×(V3−V2)×0.5/V1
【0057】
【表2】

【0058】
<水蒸気及び酸素共存下でのアンモニア分解反応>
10mmφのSUS316製反応管を用い、製造例2、11、14で調製した触媒2、11、14を0.8mL充填して、電気炉で反応管を加熱し、水蒸気及び酸素共存下でのアンモニア分解反応を行った。常圧下、SV=50,000hr-1とし、電気炉設定温度150℃でのアンモニア分解率を測定した。アンモニア分解反応は、触媒に供給する入口ガス組成をアンモニア48.4体積%、水蒸気17体積%、酸素7.2体積%及び残部窒素として実施した。
アンモニア分解率は、入口に供給しているアンモニア流速F1、触媒出口ガス中の未反応アンモニアをホウ酸水溶液で一定時間捕集し、当該捕集液に含まれるアンモニア濃度を陽イオンクロマトグラフで定量分析して出口ガス中のアンモニア流速F2を求め、下記式により算出した。なお、触媒の前処理として窒素で希釈した10%水素を毎分100mlで流通しながら450℃で1時間還元を行ってから水蒸気共存下でのアンモニア分解反応を実施した。反応結果を表3に示す。
アンモニア分解率(%)=100−{100×(F2/F1)}
【0059】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、水蒸気存在下でもアンモニアを水素と窒素に効率良く分解でき、かつ、コスト面でも実用性の高いアンモニア分解用触媒に関するものであり、本発明に係るアンモニア分解用触媒を用いることで水蒸気存在下であってもアンモニアから水素を効率よく得ることができる。本発明は、水素製造技術に関して広く応用することができるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気の存在下にアンモニアを窒素と水素に分解する触媒であって、
長周期型周期律表6〜10族の少なくとも1種の元素(A成分)と、長周期型周期律表2〜5族及び12〜15族からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素(B成分)の酸化物及び/又は複合酸化物とを含むことを特徴とするアンモニア分解用触媒。
【請求項2】
前記A成分の算出比表面積(S2)が前記触媒の比表面積(S1)に対して0.15〜0.85(S2/S1)である請求項1記載のアンモニア分解用触媒。
【請求項3】
前記B成分の酸化物及び/又は複合酸化物が、アルミナ、シリカ、チタニア、ハフニア、ジルコニア、酸化亜鉛、アルカリ土類金属酸化物及びランタノイド系金属酸化物からなる群から選ばれる少なくとも一種の酸化物及び/又はその複合酸化物である請求項1又は2記載のアンモニア分解用触媒。
【請求項4】
前記A成分を触媒全量に対して55〜95質量%含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンモニア分解用触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンモニア分解用触媒の製造方法であって、
前記A成分の水溶性塩と前記B成分の水溶性塩とを水に溶解し、アルカリ性化合物により沈殿物を生成させた後、この沈殿物をろ過、水洗、乾燥、熱処理することを特徴とするアンモニア分解用触媒の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のアンモニア分解用触媒の製造方法であって、
前記A成分の水溶性塩を水に加え水溶液を調製し、この水溶液にアルカリ性化合物を加えてA成分を含有する微粒子を析出させて微粒子分散液を調製し、当該微粒子分散液を撹拌しながら前記B成分を含有する微粒子分散ゾル溶液を添加して、前記A成分を含有する微粒子とB成分を含有する微粒子からなる沈殿物を生成させた後、この沈殿物をろ過、水洗、乾燥、熱処理することを特徴とするアンモニア分解用触媒の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒を用いて、水蒸気の存在下にアンモニアを窒素と水素に分解することを特徴とするアンモニア分解方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒を用いて、水蒸気の存在下にアンモニアを窒素と水素に分解することを特徴とする水素製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒を用いて、水蒸気を1〜40容量%、アンモニアを1〜99容量%、水素を0〜50容量%及び窒素(水蒸気、アンモニア、水素及び窒素の合計容量が100容量%)を含むガス中のアンモニアを窒素と水素に分解することを特徴とする水素製造方法。

【公開番号】特開2012−11373(P2012−11373A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73605(P2011−73605)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】