アンモニア態窒素含有排水の処理装置
【課題】亜硝酸態窒素への硝化処理(亜硝酸型の硝化反応)を安定して、且つ高負荷で行うことができるアンモニア態窒素含有排水の処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】アンモニア態窒素含有排水中のアンモニア態窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸態窒素に酸化する硝化槽と、前記亜硝酸態窒素を窒素に還元する脱窒槽14と、前記硝化槽又は脱窒槽14で処理された液中の生物汚泥を前記硝化槽又は前記硝化槽に導入される前の前記アンモニア態窒素含有排水に返送する汚泥返送ライン18と、を有するアンモニア態窒素含有排水の処理装置1であって、前記硝化槽は、第1硝化槽10及び第2硝化槽12が直列に配置されたものであり、少なくとも第2硝化槽12には生物保持担体が設置されず、第2硝化槽12の容積は、全硝化槽の総容積の1/50以上〜1/3以下の範囲とする。
【解決手段】アンモニア態窒素含有排水中のアンモニア態窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸態窒素に酸化する硝化槽と、前記亜硝酸態窒素を窒素に還元する脱窒槽14と、前記硝化槽又は脱窒槽14で処理された液中の生物汚泥を前記硝化槽又は前記硝化槽に導入される前の前記アンモニア態窒素含有排水に返送する汚泥返送ライン18と、を有するアンモニア態窒素含有排水の処理装置1であって、前記硝化槽は、第1硝化槽10及び第2硝化槽12が直列に配置されたものであり、少なくとも第2硝化槽12には生物保持担体が設置されず、第2硝化槽12の容積は、全硝化槽の総容積の1/50以上〜1/3以下の範囲とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア態窒素含有排水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア態窒素含有排水の処理方法としては、一般的に硝化脱窒法が行われる。この硝化脱窒法は、アンモニア態窒素を好気性条件下で微生物により亜硝酸態窒素または硝酸態窒素まで酸化する硝化工程と、硝化工程で処理された水を嫌気性条件下で窒素(ガス)まで還元する脱窒工程からなる。硝化工程では、浮遊式汚泥を用いた処理(浮遊式活性汚泥法)や、微生物保持担体を用いた生物膜法が採用されている。また、近年では曝気動力などのエネルギー消費を抑えるため、硝化工程においてアンモニア態窒素の酸化を亜硝酸態窒素までで止め、硝酸態窒素を生成させない方法が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、硝化槽当たりのアンモニア態窒素負荷量および硝化槽内のアンモニア態窒素濃度を所定範囲に維持し、亜硝酸型の硝化反応を行うことが開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、溶存酸素(DO)濃度を制御して、亜硝酸型の硝化反応を行う方法が開示されている。また、例えば、特許文献3には、無機炭素濃度を高く保つことにより、亜硝酸型の硝化反応を行う方法が開示されている。また、例えば、特許文献4には、硝化細菌を硝化グラニュールとして硝化槽で高濃度に維持して処理の高速化を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−61494号公報
【特許文献2】特開平4−122498号公報
【特許文献3】国際公開第2004/74191号
【特許文献4】特開2006−320723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、特許文献3の方法では、処理水中にアンモニア態窒素を高濃度で残留させるため、残留したアンモニア態窒素を後工程で硝酸態窒素にまで酸化して処理する必要がある。そうすると、処理に必要なアンモニア酸化細菌が阻害され、汚泥当たりの処理活性が低くなり、高負荷処理ができない場合がある。
【0007】
また、特許文献2の方法では、残存するアンモニア態窒素濃度を低く維持することは可能であるが、基質である酸素の濃度を下げる必要があるため、汚泥当たりの処理活性が低くなり、高負荷処理ができない場合がある。また、特許文献4の方法では、脱窒工程において硝酸を亜硝酸、窒素ガスへと還元するのに要する水素供与体としての有機物が大量に必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、亜硝酸態窒素への硝化処理(亜硝酸型の硝化反応)を安定して、且つ高負荷で行うことができるアンモニア態窒素含有排水の処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アンモニア態窒素含有排水中のアンモニア態窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸態窒素に酸化する硝化手段と、前記亜硝酸態窒素を窒素に還元する脱窒手段と、前記硝化手段又は前記脱窒手段で処理された液中の生物汚泥を前記硝化手段又は前記硝化手段に導入される前の前記アンモニア態窒素含有排水に返送する返送手段と、を有するアンモニア態窒素含有排水の処理装置であって、前記硝化手段は、複数の硝化槽が直列に配置されたものであり、少なくとも最後段の硝化槽には生物保持担体が設置されず、前記最後段の硝化槽の容積は、全硝化槽の総容積の1/50以上〜1/3以下の範囲である。
【0010】
また、前記アンモニア態窒素含有排水の処理装置において、前記硝化槽内のアンモニア態窒素の濃度を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記最後段の硝化槽を除く硝化槽内に残存するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記硝化槽内のアンモニア態窒素を制御することが好ましい。
【0011】
また、前記アンモニア態窒素含有排水の処理装置において、前記硝化手段は、少なくとも3つの硝化槽を有し、前記硝化槽には、前記最後段の硝化槽及び前記最後段の前段の硝化槽を除く硝化槽で処理された液の少なくとも一部を前記最後段の硝化槽に流入させるバイパス路が設けられ、前記処理液バイパス路には、前記最後段の硝化槽に流入するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記処理液バイパス路を通る液の流量を調整する流量調整手段を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記アンモニア態窒素含有排水の処理装置において、前記硝化槽には、前記排水を前記最後段の硝化槽以外の各硝化槽に流入させる排水路が設けられ、前記排水路には、前記最後段の硝化槽に流入するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記排水路を通る液の流量を調整する流量調整手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、亜硝酸態窒素への硝化処理を安定して、且つ高負荷で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る排水の処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る排水の処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態に係る排水の処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態に係る排水の処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図5】本実施形態に係る排水の処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図6】実施例1における第1硝化槽のアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。
【図7】実施例1における第2硝化槽の処理水中のアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。
【図8】実施例1における亜硝酸型硝化時の第1硝化槽のアンモニア態窒素と第2硝化槽の処理水中の硝酸態窒素濃度の関係を示す図である。
【図9】実施例1における硝化速度の経時変化を示す図である。
【図10】比較例1の試験で用いた排水処理装置の構成を示す概略構成図である。
【図11】比較例1における処理水のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。
【図12】比較例1における硝化速度の経時変化を示す図である。
【図13】比較例2の試験で用いた排水処理装置の構成を示す概略構成図である。
【図14】比較例2における処理水のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、 本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る排水処理装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す排水処理装置1は、硝化手段の一例としての第1硝化槽10及び第2硝化槽12、脱室手段の一例としての脱窒槽14、返送手段の一例としての固液分離槽16及び汚泥返送ライン18、酸化槽20、pH調整剤タンク22、制御部24により主要部が構成されている。
【0017】
図1に示すように、第1硝化槽10には排水流入ライン26が接続され、各槽間には排出ライン28が接続されている。また、固液分離槽16の汚泥排出口(不図示)と排水流入ライン26との間に汚泥返送ライン18が接続されている。なお、この汚泥返送ライン18は、直接第1硝化槽10に接続されていてもよい。pH調整剤タンク22と第1硝化槽10及び第2硝化槽12との間にpH調整剤流入ライン30a,30bが接続されている。そして、pH調整剤流入ライン30a,30bには、ポンプ32a,32bが設置されている。
【0018】
本実施形態の処理対象となる排水は、アンモニア態窒素を含有する排水であり、例えば、生活排水、食品工場排水、発電所排水、電子産業排水等の産業排水等が挙げられる。
【0019】
<硝化処理>
アンモニア態窒素含有排水は、排水流入ライン26から第1硝化槽10に供給され、第1硝化槽10及び第2硝化槽12により、排水中のアンモニア態窒素を好気性条件下でアンモニア酸化細菌の作用により亜硝酸態窒素に酸化する硝化反応が行われる。具体的には、後述するが、第2硝化槽12の容積は、第1硝化槽10と第2硝化槽12の容積の総量の1/50以上〜1/3以下の範囲に規定することにより、第1硝化槽10において、排水中のアンモニア態窒素のほとんどが亜硝酸態窒素に酸化され、第2硝化槽12において、第1硝化槽10で処理された水中に残存したアンモニア態窒素が亜硝酸態窒素に酸化される一方で、アンモニア態窒素から硝酸態窒素への硝化を抑制することが可能となる。以下、各硝化槽について具体的に説明する。
【0020】
第1硝化槽10には、エアレーション装置33が設けられている。第1硝化槽10では、排水流入ライン26から流入する亜硝酸態窒素含有排水がエアレーション装置33により曝気され、排水中のアンモニア態窒素が、好気性条件下で槽内のアンモニア酸化細菌の作用により、亜硝酸態窒素に酸化される(硝化反応)。
【0021】
ここで、第1硝化槽10では、排水中のアンモニア態窒素から硝酸態窒素への硝化(酸化)を抑制するために、第1硝化槽10内に残存するアンモニア態窒素の濃度を制御することが好ましい。一般的に、亜硝酸蓄積型の硝化反応が起こっている硝化反応槽内では、アンモニア酸化細菌において一般に優先するNitrosospira属細菌よりもNitrosomonas属細菌が優先する傾向にある。したがって、Nitrosomonas属細菌は亜硝酸酸化細菌との共生関係において欠陥を持っている可能性がある。そのため、Nitrosomonas属細菌を優先させることが好ましい。即ち、第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度をNitrosomonas属細菌が優先する程度に高く残存するように制御することが好ましい。
【0022】
第1硝化槽10内に残存するアンモニア態窒素の濃度制御方法の一例を説明する。例えば、まず、第1硝化槽10内に設置されたアンモニア計34により、第1硝化槽10で処理された水のアンモニア濃度を測定する。そして、制御部24は、該測定結果に基づき第1硝化槽10内に備えられたエアレーション装置33のバルブV1等の開閉量を制御し曝気風量を調整する。これにより、第1硝化槽10内に残存するアンモニア態窒素濃度を制御することができる。第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度は、槽内でNitrosomonas属のアンモニア酸化細菌が優先する点で、3mg−N/L以上が好ましく、特に、10〜70mg−N/Lがより好ましい。第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L未満となると、Nitrosomonas属のアンモニア酸化細菌よりNitrosospira属のアンモニア酸化細菌が優先する場合がある。また、第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度が70mg−N/Lを超えると、遊離アンモニア阻害により硝化活性が落ち、硝化速度低下となる場合がある。
【0023】
また、原水中のアンモニア態窒素濃度が変動した場合等は、第1硝化槽10内の汚泥濃度を調整して、第1硝化槽10内にアンモニア態窒素が残存するようにすることが望ましい。例えば、制御部24により、硝化槽の後段に設置される固液分離槽16に沈殿した汚泥の排出時間やタイミング等を制御して、第1硝化槽10に返送される汚泥量を調整することにより、第1硝化槽10内にアンモニア態窒素を残存させることができる。
【0024】
第1硝化槽10は、アンモニア態窒素を亜硝酸態窒素に酸化することができる生物処理方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、浮遊式活性汚泥法や活性汚泥が自己造粒化したグラニュール汚泥法、あるいはこれら浮遊式活性汚泥法またはグラニュール汚泥法と固定床、流動床、生物保持担体添加法等を組み合わせたもの等が挙げられる。生物保持担体添加法は、アンモニア酸化細菌が担持される生物保持担体が槽内に投入される。この生物保持担体は、特に制限されるものではないが、例えば、スポンジ、ゲル、プラスチック成型品等を利用することができる。具体的には、親水性のポリウレタンスポンジ、ポリビニルアルコールゲル等を利用することが好ましい。
【0025】
通常、第1硝化槽10では、アンモニア態窒素が硝化されて亜硝酸態窒素が生成されるため、pHは低下する。pHが低下すると、アンモニア酸化細菌等の硝化細菌にとって有毒である遊離亜硝酸態窒素濃度が増加し、硝化活性に影響を及ぼす虞がある。そのため、第1硝化槽10に設置したpH計36により、第1硝化槽10で処理された水のpHを測定し、該測定値が予め既定した値を下回った場合には、ポンプ32aを稼働させ、pH調整剤タンク22に充填されたアルカリ剤をpH調整剤流入ライン30aから第1硝化槽10へ供給し、pH調整を行う。第1硝化槽10から流出する遊離亜硝酸態窒素の濃度は0.04mg/L以下であることが好ましい。そして該濃度範囲にするためには、pHは6.8〜8.0、好ましくは7.3〜8.0となるように調整されることが好ましい。使用するアルカリ剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが特に制限されるものではない。
【0026】
また、第1硝化槽10内の水温は10〜40℃とするのが好ましい。水温が40℃を超えると硝化反応が停止し、10℃未満では硝化活性が劣る場合がある。
【0027】
次に、第1硝化槽10で処理した水は、排出ライン28から第2硝化槽12に供給される。第2硝化槽12では、第1硝化槽10で処理された水が、槽内に設けられたエアレーション装置37により曝気され、第1硝化槽10で処理された水に残存するアンモニア態窒素が、好気性条件下で槽内のアンモニア酸化細菌により亜硝酸態窒素に酸化される。なお、第1硝化槽10で処理した水(アンモニア態窒素が残存した水)をそのまま、後述する脱窒槽14に供給してもアンモニア態窒素は十分に処理されない。これは、例えば、脱窒槽14の脱窒処理に従属栄養脱窒細菌が用いられる場合、アンモニア態窒素は従属栄養脱窒細菌では処理できないし、脱窒処理にANAMMOX(独立栄養脱窒細菌)が用いられる場合、アンモニアと亜硝酸の比率制御が困難となるからである。
【0028】
第2硝化槽12は、第1硝化槽10で残存したアンモニア態窒素を亜硝酸態窒素に酸化することができる生物処理方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、浮遊式活性汚泥法や活性汚泥が自己造粒化したグラニュール汚泥法等が挙げられる。しかし、生物保持担体添加法については、第2硝化槽12に投入した生物保持担体にNitrosospira属が優先して付着固定して、アンモニア態窒素や亜硝酸態窒素を硝酸態窒素へ酸化してしまう。したがって、本実施形態では、第2硝化槽12内に生物保持担体は設置されない。なお、設置されないとは、水槽容積比1%以下の充填の場合も含まれる。
【0029】
第2硝化槽12の容積は、第1硝化槽10と第2硝化槽12の容積の総量の1/50以上〜1/3以下が好ましい。第2硝化槽12の容積が1/50より小さいと、例えば硝化容積負荷が高すぎるため、第1硝化槽10で処理した水に残存したアンモニア態窒素を亜硝酸態窒素にすることができない。また、第2硝化槽12の容積が1/3より大きいと、例えばNitrosospira属細菌が優先しやすいアンモニア低濃度の環境でのHRTが長くなってしまい、亜硝酸酸化細菌も優先してしまうため、第1硝化槽10で残存したアンモニア態窒素が硝酸態窒素にまで酸化されてしまう。
【0030】
第2硝化槽12には、ほとんどのアンモニア態窒素が既に亜硝酸化された状態で導入されるため、pHの低下はほとんど起こらないが、例えば、装置の立ち上げ時や硝化活性低下などの場合には、アンモニア態窒素が高濃度で第2硝化槽12に流入して、第2硝化槽12においてもアンモニア態窒素の酸化によるpHの低下が起こり得る。そのため、第2硝化槽12に設置したpH計38により、第2硝化槽12で処理された水のpHを測定し、測定値が、例えば前述した既定値を下回った場合には、ポンプ32bを稼働させ、pH調整剤タンク22に充填されたアルカリ剤をpH調整剤流入ライン30bから第2硝化槽12へ供給し、pH調整を行うことが好ましい。
【0031】
本実施形態では硝化槽を2つ(第1硝化槽10、第2硝化槽12)備えているが、3つ以上(複数個)備えていてもよい。その場合、最も後段にある硝化槽が本実施形態で説明した第2硝化槽12の役割を果たすように構成されることとなる。
【0032】
<汚泥返送>
第2硝化槽12で処理された液は、固液分離槽16に供給される。固液分離槽16内では、水と生物汚泥とに分離される。そして、水は脱窒槽14に供給され、生物汚泥は、汚泥返送ライン18を通り、第1硝化槽10へ返送される。これにより、第1硝化槽10および第2硝化槽12内の汚泥を同一の菌叢とすることができる。また、前述したように、返送する生物汚泥量により、第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度を制御することも可能である。本実施形態では、固液分離槽16を設置しているが必ずしも設置する必要はなく、汚泥返送ライン18だけでもよい。すなわち、第2硝化槽12と脱窒槽14間の排出ライン28を通る生物汚泥の一部が、汚泥返送ライン18から第1硝化槽10へ返送されることとなる。
【0033】
本実施形態では、生物汚泥は、汚泥返送ライン18、排水流入ライン26を介して第1硝化槽10に返送されているが、汚泥返送ライン18を第1硝化槽10に接続して、生物汚泥が汚泥返送ライン18から直接第1硝化槽10に返送されるようにしてもよい。
【0034】
図2〜3は、本実施形態に係る排水処理装置の他の一例を示す概略構成図である。図2〜3に示す排水処理装置2,3において、図1に示す排水処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図2に示す排水処理装置2は、第2硝化槽12と脱窒槽14の間に設けた固液分離槽16及び汚泥返送ライン18に代えて、返送手段の一例として、脱窒槽14と酸化槽20との間又は酸化槽20の後段に設置される固液分離槽40及び汚泥返送ライン42を備えている。図2に示すように、汚泥返送ライン42は、酸化槽20の後段に設置された固液分離槽40の汚泥排出口(不図示)と排水流入ライン26間に接続されている。なお、汚泥返送ライン42を固液分離槽40の汚泥排出口と第1硝化槽10間に接続してもよい。このような排水処理装置2では、固液分離槽40により、脱窒槽14(及び酸化槽20)で処理された液が水と生物汚泥とに分離され、生物汚泥が汚泥返送ライン42(及び排水流入ライン26)から第1硝化槽10に返送される。図3に示す排水処理装置3は、第2硝化槽12と脱窒槽14の間に設けた第1固液分離槽16及び第1汚泥返送ライン18(第1返送手段)と、脱窒槽14と酸化槽20との間又は酸化槽20の後段に設置される第2固液分離槽40及び第2汚泥返送ライン42(第2返送手段)を備えている。図3に示すように、第2汚泥返送ライン42は、第2固液分離槽40の汚泥排出口(不図示)と第1固液分離槽16及び脱窒槽14間の排出ライン28との間に接続されている。第2固液分離槽40では、脱窒槽14(及び酸化槽20)で処理された液が水と生物汚泥とに分離され、生物汚泥が第2汚泥返送ライン42及び排出ライン28から脱窒槽14に返送される。なお、図2及び3に示すように、酸化槽20が設置されている場合には、脱窒槽14の後段に配置される固液分離槽40は、酸化槽20の後段に設置することが好ましい。
【0035】
<脱窒処理>
第2硝化槽12で処理した水は、(固液分離槽16を介して)脱窒槽14で処理される。脱窒槽14は、例えば、従属栄養性脱窒菌により、亜硝酸態窒素を窒素(ガス)に還元する脱窒処理方法を採用することができる。従属栄養性脱窒菌による脱窒処理では、従属栄養性脱窒菌の栄養源として、水素供与体を添加する必要がある。水素供与体としては、メタノールや排水中に含有されるBOD成分が使用される。本実施形態では、第2硝化槽12で処理した水中のNOxの多くが亜硝酸態窒素であるため、脱窒に要する水素供与体量を減らすことができる。
【0036】
また、脱窒槽14は、例えば、アンモニア態窒素を電子供与体とし、亜硝酸態窒素を電子受容体として脱窒処理をおこなうANAMMOX菌の作用により、亜硝酸態窒素を窒素(ガス)に還元する脱窒処理方法等を採用することができる。以下にその一例を説明する。
【0037】
図4は、本実施形態に係る排水処理装置の他の一例を示す概略構成図である。図4に示す排水処理装置4において、図1に示す排水処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図4に示す排水処理装置4は、ANAMMOX菌のグラニュール汚泥床を形成したUSB反応槽(Upflow Sludge Bed;上向流汚泥床)を脱窒槽14として採用したものである。この場合、排水流入ライン26は分岐して、脱窒槽14と固液分離槽16との間の排出ライン28に接続され、排水がUSB反応槽(脱窒槽14)に供給されるようにすることが好ましい。
【0038】
<酸化処理>
図1〜3に示すように、脱窒槽14から排出される液は、後段に設置される酸化槽20(曝気槽)に供給される。酸化槽20内に設けられる不図示のエアレーション装置により、脱窒処理後の液が曝気され、液中に残存するBOD成分等が好気性条件下で酸化処理される。なお、BOD成分が過剰に含まれていない場合等は、必ずしも酸化槽20を設置する必要はない。
【0039】
なお、本実施形態の排水処理装置(排水処理装置1〜4)に供給される前の排水中にSS成分、過酸化水素、フッ素イオン等が混入している場合、過酸化水素やフッ素イオン等は生物に対し阻害性を有するため、硝化反応や脱窒反応を行う前に、予め除去しておくことが好ましい。これらの阻害性物質の処理方法としては、既存の技術を使用することができ、過酸化水素の処理においては、酵素を添加する方法、還元剤を注入する方法、活性炭に接触させる方法等が挙げられる。また、SS成分等は凝集沈殿により処理することができ、フッ素イオンの処理においては、カルシウムを添加してフッ化カルシウムとして除去する方法、イオン交換樹脂にて処理する方法等が挙げられる。
【0040】
また、硝化反応及び脱窒反応を行う前に、Ca等を用いてフッ素イオンを予め除去すると、本実施形態で処理する排水中にCaが含まれる場合があり、pHによっては、脱窒反応で無機炭素とカルシウムが反応して炭酸カルシウムが析出する可能性がある。その場合には、脱窒反応のpHをランゲリア指数を参考に決定することで、炭酸カルシウムの析出を防ぐことができる。
【0041】
図5は、本実施形態に係る排水処理装置の他の一例を示す概略構成図である。図5の排水処理装置5において、図1の排水処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図5に示すように、排水処理装置5は、第1硝化槽10、第2硝化槽10a、第3硝化槽12の3つの硝化槽を備えている。また、第1硝化槽10と第2硝化槽10aとの間の排出ライン28と第3硝化槽12間にはバイパス路46が接続されている。このようなバイパス路46により、第1硝化槽10で処理された水は、バイパス路46を通り第3硝化槽12へ流入する。すなわち、最後段の硝化槽である第3硝化槽12を除く各硝化槽で処理された水が最後の硝化槽である第3硝化槽12に流入するようになっている。また、本実施形態では、排水流入ライン26は分岐して、第2硝化槽10aに接続される排水路26aが設けられており、排水が直接第2硝化槽10aに供給されるようになっている。
【0042】
本実施形態の排水処理装置5では、例えば、最後の硝化槽の前段の硝化槽、すなわち第2硝化槽10aから排出される水中のアンモニア態窒素濃度が変動した場合等に、バイパス路46に設けられるバルブV3や排水路26aに設けられるバルブV4の開閉量を調整する等して、バイパス路46や排水路26aを通る液の流量を調整することによって、最後の硝化槽である第3硝化槽12に流入するアンモニア態窒素濃度を一定範囲に保持することが好ましい。これにより、最後の硝化槽である第3硝化槽12における亜硝酸化処理を確実に行うことが可能となる。ここで、最後の硝化槽である第3硝化槽12に流入するアンモニア態窒素濃度は、前述した3mg−N/L以上が好ましく、特に、10〜70mg−N/Lがより好ましい。
【0043】
第2硝化槽10aから排出される水中のアンモニア態窒素濃度の変動は、例えば、第2硝化槽10a内に設置されたアンモニア計34により検知することが可能である。
【0044】
以上のような本実施形態に係る排水処理装置によれば、亜硝酸態窒素への硝化処理を安定して、且つ高負荷で行うことができる。また、それ以外にも、以下に示す効果が考えられる。
(1)第1硝化槽ではDO等を制限する必要がないため、高速でのアンモニア酸化が可能となる。
(2)第2の硝化槽では従来法とは異なり、アンモニア態窒素をほとんど残さずに処理できるにも関わらず、亜硝酸型硝化反応を行うことができる。
(3)従来法では流入原水中のアンモニア態窒素濃度や負荷によって処理後のアンモニア及び亜硝酸、硝酸濃度の比率に影響が大きかったが、本実施形態では生長速度が遅いアンモニア酸化細菌の菌叢が処理能力を左右するため、短期間の濃度、負荷変動には影響を受けにくく、安定した亜硝酸型硝化反応を維持することが可能である。
(4)本実施形態の硝化槽により得られた硝化液を脱窒槽に導入すると、硝酸―亜硝酸の還元処理をショートカットできるため、必要水素供与体量を大きく減らすことができる。
(5)図4に示す処理装置では、硝化液とともにアンモニア態窒素含有排水を脱窒槽に導入するため、アンモニア態窒素を電子供与体とし亜硝酸態窒素を電子受容体とする脱窒反応を行う脱窒細菌の作用により、有機物等の水素供与体を必要としない脱窒を行うことができる。また、後段にアンモニアを水素供与体に、亜硝酸を電子受容体にする脱窒反応を用いる場合においては、本実施形態の硝化槽ではアンモニア態窒素のほとんどが亜硝酸態窒素に変換されるため、硝化液とともにアンモニア態窒素含有排水を脱窒槽に流入させることで、アンモニア態窒素と亜硝酸態窒素の比率を従来法よりも容易に調整することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
図1に示す装置を用いて亜硝酸型硝化および脱窒処理を行った。実施例1の排水の性状及び用いた装置の仕様と条件は以下の通りである。
【0047】
<試験条件>
排水:塩化アンモニウムを添加して、NH4−N濃度350mg/Lとした合成排水
第1硝化槽:寸法382mmφ×528mm高さ、容量25L(水面高さ 約225mm
)、処理方法は浮遊式活性汚泥法(グラニュール法)
第2硝化槽:寸法140mm×140mm×550mm高さ、容量5.1L(水面高さ
約320mm)、処理方法は浮遊式活性汚泥法(グラニュール法)
第1及び第2硝化槽内の水温:20℃
第1及び第2硝化槽内のDO濃度:5mg/L
脱窒槽:寸法382mmφ×528mm高さ、容量22L(水面高さ 約190mm)、
処理方法は従属栄養脱窒処理
酸化槽:寸法200mm×200mm×250mm高さ、容量4.5L(水面高さ 約11
3mm)
【0048】
実施例1の試験では、第1硝化槽内のアンモニア態窒素濃度が10mg−N/Lとなるように硝化槽に負荷をかけた。図6は、第1硝化槽のアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。図7は、第2硝化槽の処理水中(消化液中)のアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。図8は、亜硝酸型硝化時の第1硝化槽のアンモニア態窒素と第2硝化槽の処理水中(硝化液中)の硝酸態窒素濃度の関係を示している。図9は、実施例1における硝化速度の経時変化を示す図である。
【0049】
(比較例1)
図10は、比較例1の試験で用いた排水処理装置の構成を示す概略構成図である。図10に示す排水処理装置6の構成は、硝化槽を単体としたこと以外は図1に示す排水処理装置1の構成と同様である。比較例1の排水の性状及び用いた装置の仕様と条件は以下の通りである。
【0050】
排水:塩化アンモニウムを添加して、NH4−N濃度800mg/Lとした合成排水
硝化槽:寸法382mmφ×528mm高さ;容量38L(水面高さ 約340mm)
処理方法:浮遊式活性汚泥法
【0051】
比較例1では、特開2006−320723に示す硝化グラニュールを用い、硝化負荷1.3kgN/m3/日まで馴養を行い、処理水中の窒素がほぼ硝酸態窒素に転換されていることを確認した後、処理水のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を測定した。その結果を図11に示す。また、比較例1における硝化速度の経時変化の結果を図12に示す。
【0052】
(比較例2)
図13は、比較例2の試験で用いた排水処理装置の構成を示す概略構成図である。図13に示す排水処理装置7は、第1硝化槽50及び第2硝化槽52を備えるが、第1硝化槽50および第2硝化槽52には、生物保持単体であるスポンジ担体54を各水槽容積比で20%となるように充填した。それ以外は、実施例1と同じ条件で硝化処理を行い、処理水中(消化液中)のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を測定した。その結果を図14に示す。
【0053】
図11から明らかなように、硝化槽を分割しない比較例1では、処理水においてほぼすべての窒素がNO3−Nに転換されていた。そして、図12に示す通り、比較例1における硝化速度は0.5〜1.5kgN/m3/dayの範囲であった。一方、図6、図7から明らかなように、硝化槽を分割した実施例1では、NO2−Nへの転換量は増加し、処理水のNO3−N濃度は安定した状態で一部の窒素が除去されていた。なおかつ硝化液にアンモニア態窒素の残存はほとんどなかった。また、図8に示すように、第1硝化槽のアンモニア態窒素が3mg−N/Lを下回ると硝化液中の硝酸態窒素濃度が大きく上昇することから、第1硝化槽のアンモニア態窒素濃度は3mg−N/L以上に調整することが好ましかった。そして、図9に示す通り、実施例1における硝化速度は1〜2.4kgN/m3/dayの範囲であり、比較例1より高い値となった。
【0054】
図14から明らかなように、硝化槽を分割してスポンジ担体を充填した比較例2では、硝化液中にアンモニア態窒素が残存する状況にも関わらず、硝化液中にNO3−Nが優先する結果となった。これは、担体が存在するために、アンモニア態窒素が低濃度で優先するNitrosospira属のアンモニア酸化細菌が水槽内に留まれるためと考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1〜7 排水処理装置、10,50 第1硝化槽、10a,12,52 第2硝化槽又は第3硝化槽、14 脱窒槽、16,40 固液分離槽、18,42 汚泥返送ライン、20 酸化槽、22 pH調整剤タンク、24 制御部、26 排水流入ライン、26a 排水路、28 排出ライン、30a,30b pH調整剤流入ライン、32a,32b ポンプ、33,37 エアレーション装置、34 アンモニア計、36,38 pH計、46 バイパス路、54 スポンジ担体。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア態窒素含有排水の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニア態窒素含有排水の処理方法としては、一般的に硝化脱窒法が行われる。この硝化脱窒法は、アンモニア態窒素を好気性条件下で微生物により亜硝酸態窒素または硝酸態窒素まで酸化する硝化工程と、硝化工程で処理された水を嫌気性条件下で窒素(ガス)まで還元する脱窒工程からなる。硝化工程では、浮遊式汚泥を用いた処理(浮遊式活性汚泥法)や、微生物保持担体を用いた生物膜法が採用されている。また、近年では曝気動力などのエネルギー消費を抑えるため、硝化工程においてアンモニア態窒素の酸化を亜硝酸態窒素までで止め、硝酸態窒素を生成させない方法が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、硝化槽当たりのアンモニア態窒素負荷量および硝化槽内のアンモニア態窒素濃度を所定範囲に維持し、亜硝酸型の硝化反応を行うことが開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、溶存酸素(DO)濃度を制御して、亜硝酸型の硝化反応を行う方法が開示されている。また、例えば、特許文献3には、無機炭素濃度を高く保つことにより、亜硝酸型の硝化反応を行う方法が開示されている。また、例えば、特許文献4には、硝化細菌を硝化グラニュールとして硝化槽で高濃度に維持して処理の高速化を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−61494号公報
【特許文献2】特開平4−122498号公報
【特許文献3】国際公開第2004/74191号
【特許文献4】特開2006−320723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、特許文献3の方法では、処理水中にアンモニア態窒素を高濃度で残留させるため、残留したアンモニア態窒素を後工程で硝酸態窒素にまで酸化して処理する必要がある。そうすると、処理に必要なアンモニア酸化細菌が阻害され、汚泥当たりの処理活性が低くなり、高負荷処理ができない場合がある。
【0007】
また、特許文献2の方法では、残存するアンモニア態窒素濃度を低く維持することは可能であるが、基質である酸素の濃度を下げる必要があるため、汚泥当たりの処理活性が低くなり、高負荷処理ができない場合がある。また、特許文献4の方法では、脱窒工程において硝酸を亜硝酸、窒素ガスへと還元するのに要する水素供与体としての有機物が大量に必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、亜硝酸態窒素への硝化処理(亜硝酸型の硝化反応)を安定して、且つ高負荷で行うことができるアンモニア態窒素含有排水の処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アンモニア態窒素含有排水中のアンモニア態窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸態窒素に酸化する硝化手段と、前記亜硝酸態窒素を窒素に還元する脱窒手段と、前記硝化手段又は前記脱窒手段で処理された液中の生物汚泥を前記硝化手段又は前記硝化手段に導入される前の前記アンモニア態窒素含有排水に返送する返送手段と、を有するアンモニア態窒素含有排水の処理装置であって、前記硝化手段は、複数の硝化槽が直列に配置されたものであり、少なくとも最後段の硝化槽には生物保持担体が設置されず、前記最後段の硝化槽の容積は、全硝化槽の総容積の1/50以上〜1/3以下の範囲である。
【0010】
また、前記アンモニア態窒素含有排水の処理装置において、前記硝化槽内のアンモニア態窒素の濃度を制御する制御手段を備え、前記制御手段は、前記最後段の硝化槽を除く硝化槽内に残存するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記硝化槽内のアンモニア態窒素を制御することが好ましい。
【0011】
また、前記アンモニア態窒素含有排水の処理装置において、前記硝化手段は、少なくとも3つの硝化槽を有し、前記硝化槽には、前記最後段の硝化槽及び前記最後段の前段の硝化槽を除く硝化槽で処理された液の少なくとも一部を前記最後段の硝化槽に流入させるバイパス路が設けられ、前記処理液バイパス路には、前記最後段の硝化槽に流入するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記処理液バイパス路を通る液の流量を調整する流量調整手段を備えることが好ましい。
【0012】
また、前記アンモニア態窒素含有排水の処理装置において、前記硝化槽には、前記排水を前記最後段の硝化槽以外の各硝化槽に流入させる排水路が設けられ、前記排水路には、前記最後段の硝化槽に流入するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記排水路を通る液の流量を調整する流量調整手段を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、亜硝酸態窒素への硝化処理を安定して、且つ高負荷で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る排水の処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る排水の処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態に係る排水の処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態に係る排水の処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図5】本実施形態に係る排水の処理装置の他の一例を示す概略構成図である。
【図6】実施例1における第1硝化槽のアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。
【図7】実施例1における第2硝化槽の処理水中のアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。
【図8】実施例1における亜硝酸型硝化時の第1硝化槽のアンモニア態窒素と第2硝化槽の処理水中の硝酸態窒素濃度の関係を示す図である。
【図9】実施例1における硝化速度の経時変化を示す図である。
【図10】比較例1の試験で用いた排水処理装置の構成を示す概略構成図である。
【図11】比較例1における処理水のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。
【図12】比較例1における硝化速度の経時変化を示す図である。
【図13】比較例2の試験で用いた排水処理装置の構成を示す概略構成図である。
【図14】比較例2における処理水のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、 本発明の実施の形態について説明する。なお、本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る排水処理装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す排水処理装置1は、硝化手段の一例としての第1硝化槽10及び第2硝化槽12、脱室手段の一例としての脱窒槽14、返送手段の一例としての固液分離槽16及び汚泥返送ライン18、酸化槽20、pH調整剤タンク22、制御部24により主要部が構成されている。
【0017】
図1に示すように、第1硝化槽10には排水流入ライン26が接続され、各槽間には排出ライン28が接続されている。また、固液分離槽16の汚泥排出口(不図示)と排水流入ライン26との間に汚泥返送ライン18が接続されている。なお、この汚泥返送ライン18は、直接第1硝化槽10に接続されていてもよい。pH調整剤タンク22と第1硝化槽10及び第2硝化槽12との間にpH調整剤流入ライン30a,30bが接続されている。そして、pH調整剤流入ライン30a,30bには、ポンプ32a,32bが設置されている。
【0018】
本実施形態の処理対象となる排水は、アンモニア態窒素を含有する排水であり、例えば、生活排水、食品工場排水、発電所排水、電子産業排水等の産業排水等が挙げられる。
【0019】
<硝化処理>
アンモニア態窒素含有排水は、排水流入ライン26から第1硝化槽10に供給され、第1硝化槽10及び第2硝化槽12により、排水中のアンモニア態窒素を好気性条件下でアンモニア酸化細菌の作用により亜硝酸態窒素に酸化する硝化反応が行われる。具体的には、後述するが、第2硝化槽12の容積は、第1硝化槽10と第2硝化槽12の容積の総量の1/50以上〜1/3以下の範囲に規定することにより、第1硝化槽10において、排水中のアンモニア態窒素のほとんどが亜硝酸態窒素に酸化され、第2硝化槽12において、第1硝化槽10で処理された水中に残存したアンモニア態窒素が亜硝酸態窒素に酸化される一方で、アンモニア態窒素から硝酸態窒素への硝化を抑制することが可能となる。以下、各硝化槽について具体的に説明する。
【0020】
第1硝化槽10には、エアレーション装置33が設けられている。第1硝化槽10では、排水流入ライン26から流入する亜硝酸態窒素含有排水がエアレーション装置33により曝気され、排水中のアンモニア態窒素が、好気性条件下で槽内のアンモニア酸化細菌の作用により、亜硝酸態窒素に酸化される(硝化反応)。
【0021】
ここで、第1硝化槽10では、排水中のアンモニア態窒素から硝酸態窒素への硝化(酸化)を抑制するために、第1硝化槽10内に残存するアンモニア態窒素の濃度を制御することが好ましい。一般的に、亜硝酸蓄積型の硝化反応が起こっている硝化反応槽内では、アンモニア酸化細菌において一般に優先するNitrosospira属細菌よりもNitrosomonas属細菌が優先する傾向にある。したがって、Nitrosomonas属細菌は亜硝酸酸化細菌との共生関係において欠陥を持っている可能性がある。そのため、Nitrosomonas属細菌を優先させることが好ましい。即ち、第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度をNitrosomonas属細菌が優先する程度に高く残存するように制御することが好ましい。
【0022】
第1硝化槽10内に残存するアンモニア態窒素の濃度制御方法の一例を説明する。例えば、まず、第1硝化槽10内に設置されたアンモニア計34により、第1硝化槽10で処理された水のアンモニア濃度を測定する。そして、制御部24は、該測定結果に基づき第1硝化槽10内に備えられたエアレーション装置33のバルブV1等の開閉量を制御し曝気風量を調整する。これにより、第1硝化槽10内に残存するアンモニア態窒素濃度を制御することができる。第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度は、槽内でNitrosomonas属のアンモニア酸化細菌が優先する点で、3mg−N/L以上が好ましく、特に、10〜70mg−N/Lがより好ましい。第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L未満となると、Nitrosomonas属のアンモニア酸化細菌よりNitrosospira属のアンモニア酸化細菌が優先する場合がある。また、第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度が70mg−N/Lを超えると、遊離アンモニア阻害により硝化活性が落ち、硝化速度低下となる場合がある。
【0023】
また、原水中のアンモニア態窒素濃度が変動した場合等は、第1硝化槽10内の汚泥濃度を調整して、第1硝化槽10内にアンモニア態窒素が残存するようにすることが望ましい。例えば、制御部24により、硝化槽の後段に設置される固液分離槽16に沈殿した汚泥の排出時間やタイミング等を制御して、第1硝化槽10に返送される汚泥量を調整することにより、第1硝化槽10内にアンモニア態窒素を残存させることができる。
【0024】
第1硝化槽10は、アンモニア態窒素を亜硝酸態窒素に酸化することができる生物処理方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、浮遊式活性汚泥法や活性汚泥が自己造粒化したグラニュール汚泥法、あるいはこれら浮遊式活性汚泥法またはグラニュール汚泥法と固定床、流動床、生物保持担体添加法等を組み合わせたもの等が挙げられる。生物保持担体添加法は、アンモニア酸化細菌が担持される生物保持担体が槽内に投入される。この生物保持担体は、特に制限されるものではないが、例えば、スポンジ、ゲル、プラスチック成型品等を利用することができる。具体的には、親水性のポリウレタンスポンジ、ポリビニルアルコールゲル等を利用することが好ましい。
【0025】
通常、第1硝化槽10では、アンモニア態窒素が硝化されて亜硝酸態窒素が生成されるため、pHは低下する。pHが低下すると、アンモニア酸化細菌等の硝化細菌にとって有毒である遊離亜硝酸態窒素濃度が増加し、硝化活性に影響を及ぼす虞がある。そのため、第1硝化槽10に設置したpH計36により、第1硝化槽10で処理された水のpHを測定し、該測定値が予め既定した値を下回った場合には、ポンプ32aを稼働させ、pH調整剤タンク22に充填されたアルカリ剤をpH調整剤流入ライン30aから第1硝化槽10へ供給し、pH調整を行う。第1硝化槽10から流出する遊離亜硝酸態窒素の濃度は0.04mg/L以下であることが好ましい。そして該濃度範囲にするためには、pHは6.8〜8.0、好ましくは7.3〜8.0となるように調整されることが好ましい。使用するアルカリ剤は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが特に制限されるものではない。
【0026】
また、第1硝化槽10内の水温は10〜40℃とするのが好ましい。水温が40℃を超えると硝化反応が停止し、10℃未満では硝化活性が劣る場合がある。
【0027】
次に、第1硝化槽10で処理した水は、排出ライン28から第2硝化槽12に供給される。第2硝化槽12では、第1硝化槽10で処理された水が、槽内に設けられたエアレーション装置37により曝気され、第1硝化槽10で処理された水に残存するアンモニア態窒素が、好気性条件下で槽内のアンモニア酸化細菌により亜硝酸態窒素に酸化される。なお、第1硝化槽10で処理した水(アンモニア態窒素が残存した水)をそのまま、後述する脱窒槽14に供給してもアンモニア態窒素は十分に処理されない。これは、例えば、脱窒槽14の脱窒処理に従属栄養脱窒細菌が用いられる場合、アンモニア態窒素は従属栄養脱窒細菌では処理できないし、脱窒処理にANAMMOX(独立栄養脱窒細菌)が用いられる場合、アンモニアと亜硝酸の比率制御が困難となるからである。
【0028】
第2硝化槽12は、第1硝化槽10で残存したアンモニア態窒素を亜硝酸態窒素に酸化することができる生物処理方法であれば特に制限されるものではなく、例えば、浮遊式活性汚泥法や活性汚泥が自己造粒化したグラニュール汚泥法等が挙げられる。しかし、生物保持担体添加法については、第2硝化槽12に投入した生物保持担体にNitrosospira属が優先して付着固定して、アンモニア態窒素や亜硝酸態窒素を硝酸態窒素へ酸化してしまう。したがって、本実施形態では、第2硝化槽12内に生物保持担体は設置されない。なお、設置されないとは、水槽容積比1%以下の充填の場合も含まれる。
【0029】
第2硝化槽12の容積は、第1硝化槽10と第2硝化槽12の容積の総量の1/50以上〜1/3以下が好ましい。第2硝化槽12の容積が1/50より小さいと、例えば硝化容積負荷が高すぎるため、第1硝化槽10で処理した水に残存したアンモニア態窒素を亜硝酸態窒素にすることができない。また、第2硝化槽12の容積が1/3より大きいと、例えばNitrosospira属細菌が優先しやすいアンモニア低濃度の環境でのHRTが長くなってしまい、亜硝酸酸化細菌も優先してしまうため、第1硝化槽10で残存したアンモニア態窒素が硝酸態窒素にまで酸化されてしまう。
【0030】
第2硝化槽12には、ほとんどのアンモニア態窒素が既に亜硝酸化された状態で導入されるため、pHの低下はほとんど起こらないが、例えば、装置の立ち上げ時や硝化活性低下などの場合には、アンモニア態窒素が高濃度で第2硝化槽12に流入して、第2硝化槽12においてもアンモニア態窒素の酸化によるpHの低下が起こり得る。そのため、第2硝化槽12に設置したpH計38により、第2硝化槽12で処理された水のpHを測定し、測定値が、例えば前述した既定値を下回った場合には、ポンプ32bを稼働させ、pH調整剤タンク22に充填されたアルカリ剤をpH調整剤流入ライン30bから第2硝化槽12へ供給し、pH調整を行うことが好ましい。
【0031】
本実施形態では硝化槽を2つ(第1硝化槽10、第2硝化槽12)備えているが、3つ以上(複数個)備えていてもよい。その場合、最も後段にある硝化槽が本実施形態で説明した第2硝化槽12の役割を果たすように構成されることとなる。
【0032】
<汚泥返送>
第2硝化槽12で処理された液は、固液分離槽16に供給される。固液分離槽16内では、水と生物汚泥とに分離される。そして、水は脱窒槽14に供給され、生物汚泥は、汚泥返送ライン18を通り、第1硝化槽10へ返送される。これにより、第1硝化槽10および第2硝化槽12内の汚泥を同一の菌叢とすることができる。また、前述したように、返送する生物汚泥量により、第1硝化槽10内のアンモニア態窒素濃度を制御することも可能である。本実施形態では、固液分離槽16を設置しているが必ずしも設置する必要はなく、汚泥返送ライン18だけでもよい。すなわち、第2硝化槽12と脱窒槽14間の排出ライン28を通る生物汚泥の一部が、汚泥返送ライン18から第1硝化槽10へ返送されることとなる。
【0033】
本実施形態では、生物汚泥は、汚泥返送ライン18、排水流入ライン26を介して第1硝化槽10に返送されているが、汚泥返送ライン18を第1硝化槽10に接続して、生物汚泥が汚泥返送ライン18から直接第1硝化槽10に返送されるようにしてもよい。
【0034】
図2〜3は、本実施形態に係る排水処理装置の他の一例を示す概略構成図である。図2〜3に示す排水処理装置2,3において、図1に示す排水処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図2に示す排水処理装置2は、第2硝化槽12と脱窒槽14の間に設けた固液分離槽16及び汚泥返送ライン18に代えて、返送手段の一例として、脱窒槽14と酸化槽20との間又は酸化槽20の後段に設置される固液分離槽40及び汚泥返送ライン42を備えている。図2に示すように、汚泥返送ライン42は、酸化槽20の後段に設置された固液分離槽40の汚泥排出口(不図示)と排水流入ライン26間に接続されている。なお、汚泥返送ライン42を固液分離槽40の汚泥排出口と第1硝化槽10間に接続してもよい。このような排水処理装置2では、固液分離槽40により、脱窒槽14(及び酸化槽20)で処理された液が水と生物汚泥とに分離され、生物汚泥が汚泥返送ライン42(及び排水流入ライン26)から第1硝化槽10に返送される。図3に示す排水処理装置3は、第2硝化槽12と脱窒槽14の間に設けた第1固液分離槽16及び第1汚泥返送ライン18(第1返送手段)と、脱窒槽14と酸化槽20との間又は酸化槽20の後段に設置される第2固液分離槽40及び第2汚泥返送ライン42(第2返送手段)を備えている。図3に示すように、第2汚泥返送ライン42は、第2固液分離槽40の汚泥排出口(不図示)と第1固液分離槽16及び脱窒槽14間の排出ライン28との間に接続されている。第2固液分離槽40では、脱窒槽14(及び酸化槽20)で処理された液が水と生物汚泥とに分離され、生物汚泥が第2汚泥返送ライン42及び排出ライン28から脱窒槽14に返送される。なお、図2及び3に示すように、酸化槽20が設置されている場合には、脱窒槽14の後段に配置される固液分離槽40は、酸化槽20の後段に設置することが好ましい。
【0035】
<脱窒処理>
第2硝化槽12で処理した水は、(固液分離槽16を介して)脱窒槽14で処理される。脱窒槽14は、例えば、従属栄養性脱窒菌により、亜硝酸態窒素を窒素(ガス)に還元する脱窒処理方法を採用することができる。従属栄養性脱窒菌による脱窒処理では、従属栄養性脱窒菌の栄養源として、水素供与体を添加する必要がある。水素供与体としては、メタノールや排水中に含有されるBOD成分が使用される。本実施形態では、第2硝化槽12で処理した水中のNOxの多くが亜硝酸態窒素であるため、脱窒に要する水素供与体量を減らすことができる。
【0036】
また、脱窒槽14は、例えば、アンモニア態窒素を電子供与体とし、亜硝酸態窒素を電子受容体として脱窒処理をおこなうANAMMOX菌の作用により、亜硝酸態窒素を窒素(ガス)に還元する脱窒処理方法等を採用することができる。以下にその一例を説明する。
【0037】
図4は、本実施形態に係る排水処理装置の他の一例を示す概略構成図である。図4に示す排水処理装置4において、図1に示す排水処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図4に示す排水処理装置4は、ANAMMOX菌のグラニュール汚泥床を形成したUSB反応槽(Upflow Sludge Bed;上向流汚泥床)を脱窒槽14として採用したものである。この場合、排水流入ライン26は分岐して、脱窒槽14と固液分離槽16との間の排出ライン28に接続され、排水がUSB反応槽(脱窒槽14)に供給されるようにすることが好ましい。
【0038】
<酸化処理>
図1〜3に示すように、脱窒槽14から排出される液は、後段に設置される酸化槽20(曝気槽)に供給される。酸化槽20内に設けられる不図示のエアレーション装置により、脱窒処理後の液が曝気され、液中に残存するBOD成分等が好気性条件下で酸化処理される。なお、BOD成分が過剰に含まれていない場合等は、必ずしも酸化槽20を設置する必要はない。
【0039】
なお、本実施形態の排水処理装置(排水処理装置1〜4)に供給される前の排水中にSS成分、過酸化水素、フッ素イオン等が混入している場合、過酸化水素やフッ素イオン等は生物に対し阻害性を有するため、硝化反応や脱窒反応を行う前に、予め除去しておくことが好ましい。これらの阻害性物質の処理方法としては、既存の技術を使用することができ、過酸化水素の処理においては、酵素を添加する方法、還元剤を注入する方法、活性炭に接触させる方法等が挙げられる。また、SS成分等は凝集沈殿により処理することができ、フッ素イオンの処理においては、カルシウムを添加してフッ化カルシウムとして除去する方法、イオン交換樹脂にて処理する方法等が挙げられる。
【0040】
また、硝化反応及び脱窒反応を行う前に、Ca等を用いてフッ素イオンを予め除去すると、本実施形態で処理する排水中にCaが含まれる場合があり、pHによっては、脱窒反応で無機炭素とカルシウムが反応して炭酸カルシウムが析出する可能性がある。その場合には、脱窒反応のpHをランゲリア指数を参考に決定することで、炭酸カルシウムの析出を防ぐことができる。
【0041】
図5は、本実施形態に係る排水処理装置の他の一例を示す概略構成図である。図5の排水処理装置5において、図1の排水処理装置1と同様の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。図5に示すように、排水処理装置5は、第1硝化槽10、第2硝化槽10a、第3硝化槽12の3つの硝化槽を備えている。また、第1硝化槽10と第2硝化槽10aとの間の排出ライン28と第3硝化槽12間にはバイパス路46が接続されている。このようなバイパス路46により、第1硝化槽10で処理された水は、バイパス路46を通り第3硝化槽12へ流入する。すなわち、最後段の硝化槽である第3硝化槽12を除く各硝化槽で処理された水が最後の硝化槽である第3硝化槽12に流入するようになっている。また、本実施形態では、排水流入ライン26は分岐して、第2硝化槽10aに接続される排水路26aが設けられており、排水が直接第2硝化槽10aに供給されるようになっている。
【0042】
本実施形態の排水処理装置5では、例えば、最後の硝化槽の前段の硝化槽、すなわち第2硝化槽10aから排出される水中のアンモニア態窒素濃度が変動した場合等に、バイパス路46に設けられるバルブV3や排水路26aに設けられるバルブV4の開閉量を調整する等して、バイパス路46や排水路26aを通る液の流量を調整することによって、最後の硝化槽である第3硝化槽12に流入するアンモニア態窒素濃度を一定範囲に保持することが好ましい。これにより、最後の硝化槽である第3硝化槽12における亜硝酸化処理を確実に行うことが可能となる。ここで、最後の硝化槽である第3硝化槽12に流入するアンモニア態窒素濃度は、前述した3mg−N/L以上が好ましく、特に、10〜70mg−N/Lがより好ましい。
【0043】
第2硝化槽10aから排出される水中のアンモニア態窒素濃度の変動は、例えば、第2硝化槽10a内に設置されたアンモニア計34により検知することが可能である。
【0044】
以上のような本実施形態に係る排水処理装置によれば、亜硝酸態窒素への硝化処理を安定して、且つ高負荷で行うことができる。また、それ以外にも、以下に示す効果が考えられる。
(1)第1硝化槽ではDO等を制限する必要がないため、高速でのアンモニア酸化が可能となる。
(2)第2の硝化槽では従来法とは異なり、アンモニア態窒素をほとんど残さずに処理できるにも関わらず、亜硝酸型硝化反応を行うことができる。
(3)従来法では流入原水中のアンモニア態窒素濃度や負荷によって処理後のアンモニア及び亜硝酸、硝酸濃度の比率に影響が大きかったが、本実施形態では生長速度が遅いアンモニア酸化細菌の菌叢が処理能力を左右するため、短期間の濃度、負荷変動には影響を受けにくく、安定した亜硝酸型硝化反応を維持することが可能である。
(4)本実施形態の硝化槽により得られた硝化液を脱窒槽に導入すると、硝酸―亜硝酸の還元処理をショートカットできるため、必要水素供与体量を大きく減らすことができる。
(5)図4に示す処理装置では、硝化液とともにアンモニア態窒素含有排水を脱窒槽に導入するため、アンモニア態窒素を電子供与体とし亜硝酸態窒素を電子受容体とする脱窒反応を行う脱窒細菌の作用により、有機物等の水素供与体を必要としない脱窒を行うことができる。また、後段にアンモニアを水素供与体に、亜硝酸を電子受容体にする脱窒反応を用いる場合においては、本実施形態の硝化槽ではアンモニア態窒素のほとんどが亜硝酸態窒素に変換されるため、硝化液とともにアンモニア態窒素含有排水を脱窒槽に流入させることで、アンモニア態窒素と亜硝酸態窒素の比率を従来法よりも容易に調整することができる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
図1に示す装置を用いて亜硝酸型硝化および脱窒処理を行った。実施例1の排水の性状及び用いた装置の仕様と条件は以下の通りである。
【0047】
<試験条件>
排水:塩化アンモニウムを添加して、NH4−N濃度350mg/Lとした合成排水
第1硝化槽:寸法382mmφ×528mm高さ、容量25L(水面高さ 約225mm
)、処理方法は浮遊式活性汚泥法(グラニュール法)
第2硝化槽:寸法140mm×140mm×550mm高さ、容量5.1L(水面高さ
約320mm)、処理方法は浮遊式活性汚泥法(グラニュール法)
第1及び第2硝化槽内の水温:20℃
第1及び第2硝化槽内のDO濃度:5mg/L
脱窒槽:寸法382mmφ×528mm高さ、容量22L(水面高さ 約190mm)、
処理方法は従属栄養脱窒処理
酸化槽:寸法200mm×200mm×250mm高さ、容量4.5L(水面高さ 約11
3mm)
【0048】
実施例1の試験では、第1硝化槽内のアンモニア態窒素濃度が10mg−N/Lとなるように硝化槽に負荷をかけた。図6は、第1硝化槽のアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。図7は、第2硝化槽の処理水中(消化液中)のアンモニア態窒素と亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を示す図である。図8は、亜硝酸型硝化時の第1硝化槽のアンモニア態窒素と第2硝化槽の処理水中(硝化液中)の硝酸態窒素濃度の関係を示している。図9は、実施例1における硝化速度の経時変化を示す図である。
【0049】
(比較例1)
図10は、比較例1の試験で用いた排水処理装置の構成を示す概略構成図である。図10に示す排水処理装置6の構成は、硝化槽を単体としたこと以外は図1に示す排水処理装置1の構成と同様である。比較例1の排水の性状及び用いた装置の仕様と条件は以下の通りである。
【0050】
排水:塩化アンモニウムを添加して、NH4−N濃度800mg/Lとした合成排水
硝化槽:寸法382mmφ×528mm高さ;容量38L(水面高さ 約340mm)
処理方法:浮遊式活性汚泥法
【0051】
比較例1では、特開2006−320723に示す硝化グラニュールを用い、硝化負荷1.3kgN/m3/日まで馴養を行い、処理水中の窒素がほぼ硝酸態窒素に転換されていることを確認した後、処理水のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を測定した。その結果を図11に示す。また、比較例1における硝化速度の経時変化の結果を図12に示す。
【0052】
(比較例2)
図13は、比較例2の試験で用いた排水処理装置の構成を示す概略構成図である。図13に示す排水処理装置7は、第1硝化槽50及び第2硝化槽52を備えるが、第1硝化槽50および第2硝化槽52には、生物保持単体であるスポンジ担体54を各水槽容積比で20%となるように充填した。それ以外は、実施例1と同じ条件で硝化処理を行い、処理水中(消化液中)のアンモニア態窒素、亜硝酸態窒素および硝酸態窒素の濃度の経時変化を測定した。その結果を図14に示す。
【0053】
図11から明らかなように、硝化槽を分割しない比較例1では、処理水においてほぼすべての窒素がNO3−Nに転換されていた。そして、図12に示す通り、比較例1における硝化速度は0.5〜1.5kgN/m3/dayの範囲であった。一方、図6、図7から明らかなように、硝化槽を分割した実施例1では、NO2−Nへの転換量は増加し、処理水のNO3−N濃度は安定した状態で一部の窒素が除去されていた。なおかつ硝化液にアンモニア態窒素の残存はほとんどなかった。また、図8に示すように、第1硝化槽のアンモニア態窒素が3mg−N/Lを下回ると硝化液中の硝酸態窒素濃度が大きく上昇することから、第1硝化槽のアンモニア態窒素濃度は3mg−N/L以上に調整することが好ましかった。そして、図9に示す通り、実施例1における硝化速度は1〜2.4kgN/m3/dayの範囲であり、比較例1より高い値となった。
【0054】
図14から明らかなように、硝化槽を分割してスポンジ担体を充填した比較例2では、硝化液中にアンモニア態窒素が残存する状況にも関わらず、硝化液中にNO3−Nが優先する結果となった。これは、担体が存在するために、アンモニア態窒素が低濃度で優先するNitrosospira属のアンモニア酸化細菌が水槽内に留まれるためと考えられる。
【符号の説明】
【0055】
1〜7 排水処理装置、10,50 第1硝化槽、10a,12,52 第2硝化槽又は第3硝化槽、14 脱窒槽、16,40 固液分離槽、18,42 汚泥返送ライン、20 酸化槽、22 pH調整剤タンク、24 制御部、26 排水流入ライン、26a 排水路、28 排出ライン、30a,30b pH調整剤流入ライン、32a,32b ポンプ、33,37 エアレーション装置、34 アンモニア計、36,38 pH計、46 バイパス路、54 スポンジ担体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア態窒素含有排水中のアンモニア態窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸態窒素に酸化する硝化手段と、前記亜硝酸態窒素を窒素に還元する脱窒手段と、前記硝化手段又は前記脱窒手段で処理された液中の生物汚泥を前記硝化手段又は前記硝化手段に導入される前の前記アンモニア態窒素含有排水に返送する返送手段と、を有するアンモニア態窒素含有排水の処理装置であって、
前記硝化手段は、複数の硝化槽が直列に配置されたものであり、少なくとも最後段の硝化槽には生物保持担体が設置されず、前記最後段の硝化槽の容積は、全硝化槽の総容積の1/50以上〜1/3以下の範囲であることを特徴とするアンモニア態窒素含有排水の処理装置。
【請求項2】
前記硝化槽内のアンモニア態窒素の濃度を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記最後段の硝化槽を除く硝化槽内に残存するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記硝化槽内のアンモニア態窒素を制御することを特徴とする請求項1記載のアンモニア態窒素含有排水の処理装置。
【請求項3】
前記硝化手段は、少なくとも3つの硝化槽を有し、
前記硝化槽には、前記最後段の硝化槽及び前記最後段の前段の硝化槽を除く硝化槽で処理された液の少なくとも一部を前記最後段の硝化槽に流入させるバイパス路が設けられ、
前記処理液バイパス路には、前記最後段の硝化槽に流入するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記処理液バイパス路を通る液の流量を調整する流量調整手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のアンモニア態窒素含有排水の処理装置。
【請求項4】
前記硝化槽には、前記排水を前記最後段の硝化槽以外の各硝化槽に流入させる排水路が設けられ、
前記排水路には、前記最後段の硝化槽に流入するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記排水路を通る液の流量を調整する流量調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンモニア態窒素含有排水の処理装置。
【請求項1】
アンモニア態窒素含有排水中のアンモニア態窒素をアンモニア酸化細菌により亜硝酸態窒素に酸化する硝化手段と、前記亜硝酸態窒素を窒素に還元する脱窒手段と、前記硝化手段又は前記脱窒手段で処理された液中の生物汚泥を前記硝化手段又は前記硝化手段に導入される前の前記アンモニア態窒素含有排水に返送する返送手段と、を有するアンモニア態窒素含有排水の処理装置であって、
前記硝化手段は、複数の硝化槽が直列に配置されたものであり、少なくとも最後段の硝化槽には生物保持担体が設置されず、前記最後段の硝化槽の容積は、全硝化槽の総容積の1/50以上〜1/3以下の範囲であることを特徴とするアンモニア態窒素含有排水の処理装置。
【請求項2】
前記硝化槽内のアンモニア態窒素の濃度を制御する制御手段を備え、
前記制御手段は、前記最後段の硝化槽を除く硝化槽内に残存するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記硝化槽内のアンモニア態窒素を制御することを特徴とする請求項1記載のアンモニア態窒素含有排水の処理装置。
【請求項3】
前記硝化手段は、少なくとも3つの硝化槽を有し、
前記硝化槽には、前記最後段の硝化槽及び前記最後段の前段の硝化槽を除く硝化槽で処理された液の少なくとも一部を前記最後段の硝化槽に流入させるバイパス路が設けられ、
前記処理液バイパス路には、前記最後段の硝化槽に流入するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記処理液バイパス路を通る液の流量を調整する流量調整手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のアンモニア態窒素含有排水の処理装置。
【請求項4】
前記硝化槽には、前記排水を前記最後段の硝化槽以外の各硝化槽に流入させる排水路が設けられ、
前記排水路には、前記最後段の硝化槽に流入するアンモニア態窒素濃度が3mg−N/L以上となるように、前記排水路を通る液の流量を調整する流量調整手段を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアンモニア態窒素含有排水の処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図10】
【図12】
【図13】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図14】
【公開番号】特開2013−81881(P2013−81881A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222279(P2011−222279)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】
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