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アーク及びレーザーを用いた溶接方法と溶接装置
説明

アーク及びレーザーを用いた溶接方法と溶接装置

【課題】被溶接材の間隙のギャップの裕度が大きく、レーザー光の焦点位置をずらすことなく深溶け込み溶接を行える。
【解決手段】アーク及びレーザーによる溶接装置1は、アーク溶接器2とレーザー溶接器3を治具7で接続して走行可能に設けた。アーク溶接時に検知したアーク電流とアーク電圧の波形情報は、制御部の演算手段によって揺動する溶接ワイヤの調芯位置を演算し、アーク溶接器調芯手段によって調芯を行う。この波形情報に基づいてレーザー溶接器3を溶接位置に調芯すると共に焦点調整するレーザー溶接器調芯手段を設けた。アーク溶接の際、開先の底部に溶着金属を生成させる。溶着金属が凝固した後、溶着金属にレーザー光の焦点を合わせて再溶融させ、間隙の部分を深溶け込み溶接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク溶接とレーザー溶接を複合的に用いた溶接によって、厚さの大きい厚鋼板等の被溶接材の溶接を行うようにした、アークとレーザーを用いた溶接方法と溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えばレーザー溶接とアーク溶接を組み合わせて、レーザー溶接の高エネルギーによる溶け込み深さと高速性、そして、アーク溶接による十分な溶着量という両者の長所を取り入れたハイブリッド溶接が知られている。
例えば、特許文献1に記載されたレーザ溶接とアーク溶接による溶接方法では、Y型の開先形状部とその底部の間隙が形成された厚鋼板の被溶接部に対して、アーク溶接とレーザー溶接を併用して行うことで溶接している。この場合、アーク放電によって発生するプラズマがレーザー光と干渉しないように、Y型開先形状部にレーザー照射をアーク放電に先行して行い、レーザー光の合焦位置をY開先部のV字形の開先部の底面より上方で被溶接材の表面近傍に調整する。
【0003】
一方、アーク溶接のアークプラズマにレーザー光が吸収されないように、アークプラズマとレーザー光が干渉しない距離に設定する。そして、レーザー光の合焦位置を開口部内の上方に設定することによって、レーザー光による深い溶け込みエネルギーを残しつつアーク溶接が行われる前に被溶接材のV字形の開口部に広く加熱が行われることで、アーク放電によって開先内部までアーク溶接が可能になるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−346777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した溶接方法では、レーザー光源として、ビーム径φ0.3mmのような高密度エネルギーによるレーザー溶接を行うと、被溶接材間の間隙(ギャップ)が大きいところでビームが素通りしてしまうという欠点が生じる。また、レーザーのビームの素通りを防ぐために、レーザー光の焦点位置をY開先部の開先部内の上方にずらして設定しているが、この場合にはレーザー光の溶け込み深さが浅くなり、厚鋼板の裏面まで溶接できないという欠点が生じる。
また、ハイブリッド溶接では、厚鋼板の溶接に際し、鋼板の板厚が厚くなると重力の影響で溶融池が開先部に保持されずに間隙を通って裏面に垂れ落ちる等の現象が起こり、裏波の形状が悪いという不具合も生じる。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みて、上述した従来の溶接方法よりも被溶接材間のギャップの裕度が大きく、レーザー光の焦点をずらすことなく深溶け込み溶接を行えるようにした、アーク及びレーザーを用いた溶接方法と溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるアーク及びレーザーを用いた溶接方法は、アーク放電とレーザー照射によって被溶接材の開先と該開先に続く間隙を溶接するようにしたアーク及びレーザーによる溶接方法において、 アーク溶接器でアーク溶接して被溶接材の開先に溶着金属を溶接する工程と、溶着金属を凝固させる工程と、レーザー溶接器のレーザ光を溶着金属に合焦させて再溶融させて被溶接材の開先から間隙に向けてレーザー溶接する工程とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、アーク溶接器によって被溶接材の開先をアーク溶接することで開先に被溶接材とアーク溶接器の溶接ワイヤによって溶着金属を生成させ、この溶着金属が凝固した後でレーザー溶接器によってレーザー光を溶着金属に合焦させて再溶融させ、間隙の部分を深溶け込み溶接する。その際、凝固した溶着金属をレーザー光によって再溶融させるから、溶融金属が溶融しすぎによって被溶接材の裏面へ垂れ落ちて裏波が垂れるという現象を防止できる。
【0008】
また、アーク溶接器とレーザー溶接器とは所定間隔を開けて走行しながらそれぞれ溶接を行い、レーザー溶接器が所定間隔を走行する時間が経過するまでに溶着金属が凝固するように設定されていることが好ましい。
非溶接部の開先に沿って走行するアーク溶接器によって開先をアーク溶接して溶接ワイヤによって溶着金属が生成され、レーザー溶接器がその溶着金属部分に到達するまでに所定間隔を走行する時間が経過して溶着金属が凝固するので、レーザー溶接器のレーザー光を凝固した溶着金属に照射させて再溶融させることができて溶接位置がずれないで、被溶接材の開先から間隙までを溶接できる。
アーク溶接器とレーザー溶接器は一体に連結されて走行してもよいし、別個に走行するようにしてもよい。
【0009】
また、アーク溶接器とレーザー溶接器とは所定間隔を開けて連結部材により一体に保持されていてもよく、この場合には連結部材の走行速度によってアーク溶接器によって溶着金属が生成された後、走行するレーザー溶接器によるレーザー溶接をその溶着金属が凝固した後に行わせるよう調整できて溶接位置のずれを確実に防止できる。
所定間隔は例えば35mm以上であり、所定間隔を1秒以上かけてアーク溶接器とレーザー溶接器とが走行するようにしてもよく、35mm/s以下の速度でアーク溶接器とレーザー溶接器が走行する。
【0010】
また、アーク溶接の際にアークセンサによって溶接ワイヤを調芯させ、アークセンサによる調芯情報に基づいてレーザー溶接器の調芯と焦点調整を行うことが好ましい。
この場合、アークセンサによってアーク溶接器の調芯を行った情報をレーザー溶接器の調芯と焦点位置の調整に利用することができるため、自動的にレーザー光が適正な位置に照射され、レーザー光の調整手段を別途必要としない。
【0011】
本発明によるアーク及びレーザーによる溶接装置は、アーク放電とレーザー照射によって被溶接材の開先と該開先に続く間隙を溶接するようにしたアーク及びレーザーによる溶接装置において、アーク放電によってアーク溶接して被溶接材の開先に溶着金属を溶着させるアーク溶接器と、凝固した溶着金属にレーザー光を照射して再溶融させて間隙をレーザー溶接するレーザー溶接器と、アーク溶接器とレーザー溶接器とを時間差を設けて開先の溶接位置に沿って走行させる駆動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、被溶接材の開先にアーク溶接器を対向させてアーク溶接することで開先に溶着金属を生成させ、この溶着金属が凝固した後でレーザー溶接器が溶着金属をレーザー照射して再溶融させるように駆動制御手段によってアーク溶接器とレーザー溶接器との走行に時間差を開けさせる。これによって、レーザー光で溶着金属を再溶融させて開先と間隙の部分を深溶け込み溶接する。その際、凝固した溶着金属をレーザー光によって再溶融させるから、溶融金属が溶融しすぎによって被溶接材の裏面へ垂れ落ちて裏波が垂れることがない。
【0012】
また、アーク溶接器とレーザー溶接器は間隔を開けて設置されていて連結部材によって一体とされていてもよい。
アーク溶接器とレーザー溶接器が一体とされている場合、連結部材によってアーク溶接器とレーザー溶接器の間隔を設定すると共に駆動制御手段によって走行速度を設定することで、被溶接位置でのアーク溶接による溶着金属の生成と凝固後のレーザー溶接による再溶融とを連続して行うよう制御することができる。
【0013】
或いは、アーク溶接器とレーザー溶接器は間隔を開けて設置されていて互いに分離されていてもよい。
この場合には、アーク溶接器とレーザー溶接器の間隔を走行速度によって個別に設定でき、被溶接位置でのアーク溶接による溶着金属の生成と凝固後のレーザー溶接による再溶融とを連続して行うよう制御することができる。
【0014】
また、アーク溶接時における溶接電圧及び溶接電流に基づいて調芯するアーク溶接器調芯手段と、アーク溶接器を調芯するための波形情報によってレーザー光の調芯と焦点位置を溶着金属に合致させるレーザー溶接器調芯手段と、を備えることが好ましい。
アーク溶接器調芯手段によってアーク溶接器の調芯をしてアーク溶接を行い、その後のレーザー溶接時に、アーク溶接の波形情報に基づいてレーザー溶接器調芯手段によってレーザー光の調芯を行い焦点を溶着金属に合致させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるアーク及びレーザーを用いた溶接方法と溶接装置によれば、アーク溶接器のアーク放電によってアーク溶接して被溶接材の開先に溶着金属を溶着させ、溶着金属が凝固した後で、レーザー溶接器のレーザ光を溶着金属に合焦させ、レーザー溶接で溶着金属を再溶融させることで、被溶接材の開先とこれに続く間隙を溶接することができ、アーク溶接によって溶着金属が開先部の底部を埋めて凝固することで間隙のギャップ裕度が大きいという利点がある。
また、溶着金属の凝固後にレーザー光によって溶着金属に焦点を合わせて再溶融させることで、高密度エネルギーを利用して開先部の裏側の間隙を深溶け込み溶接によって溶接できると共に、被溶接材の厚みが大きくても溶融金属が重みで裏面に垂れる現象を防いで裏波が垂れないので見栄えがよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第一実施形態によるアーク溶接器及びレーザー溶接器と被溶接材を示す要部斜視図である。
【図2】図1に示すアーク及びレーザーによる溶接装置とその監視制御装置を示す説明図である。
【図3】アークセンサによる溶接ワイヤの揺動中心の制御原理を示す図であり、(a)は溶接ワイヤが開先の中心に位置する場合を示す図とこれに対応する電圧変化、電流変化を示す図、(b)は溶接ワイヤが開先の中心からずれている場合を示す図とこれに対応する電圧変化、電流変化を示す図である。
【図4】被溶接材のY字形の開先と間隙を示す要部縦断面図である。
【図5】図4に示す開先の底部にアーク溶接によって溶着金属を生成させた図である。
【図6】図5に示す開先に生成された溶着金属にレーザー光を照射する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるアーク及びレーザーによる溶接装置について説明する。
図1乃至図6は第一実施形態によるアーク及びレーザーによる溶接装置1を示す図である。
図1及び図2に示すアーク及びレーザーによる溶接装置1は、アーク溶接器2とレーザー溶接器3とがそれぞれアーム部2a、3aを介して連結部材を構成する治具7に連結され、アーク溶接器2とレーザー溶接器3は所定間隔Lを開けて離間して設定されている。レーザー溶接器3のアーム部3aは図示しない調整手段によってアーク溶接器2との間隔Lを調整できるように設定されている。治具7の脚部8はその下部に設けたレール9によって開先15に沿うように摺動可能とされている。
アーク及びレーザーによる溶接装置1で溶接される被溶接材11は、例えば厚鋼材12,13であり、厚鋼材12,13の対向する面の溶接部14には例えばV字形状の開先15とその裏面に続く所定幅の間隙(ギャップ)16とがY字状開先部として形成されている。
【0018】
次に、アーク及びレーザーによる溶接装置1の溶接を制御する監視制御装置18について、図2により説明する。
図2において、監視制御装置18は、アーク溶接器2のアークセンサ19と、アーク溶接器2及びレーザー溶接器3の走行制御と焦点調整を行う制御部26とを備えている。
アークセンサ19には、アーク溶接器2と母材である被溶接材11との間を接続する並列の回路の配線に電流計22と電圧計23がそれぞれ配設されており、例えば電流計22には電源24が直列に接続されている。アークセンサ19は、アーク溶接器2で被溶接材11の開先15を溶接する際に図3(a)、(b)に示す溶接ワイヤ25の揺動に伴うアーク電流(溶接電流)とアーク電圧(溶接電圧)の変化を電流計22と電圧計23でそれぞれ検知することによって、開先15と溶接ワイヤ25との位置関係を把握するようにしている。
【0019】
電流計22と電圧計23で検知されたアーク電流とアーク電圧は、制御部26の入力手段27に入力され、演算手段28によってアーク溶接器2の溶接ワイヤ25の適正な調芯位置を演算し、アーク溶接器調芯手段29によってアーク溶接器2の調芯を行う。
制御部26内には、治具7を走行させることでアーク溶接器2とレーザー溶接器3を開先15に沿って一定速度で走行させる駆動制御手段30と、演算手段28から出力されるアーク溶接器2の調芯情報に基づいてレーザー溶接器3を溶接位置に調芯すると共に焦点調整するレーザー溶接器調芯手段31とが設けられている。
【0020】
駆動制御手段30には治具7をレール9に沿って走行させる駆動モータM1が設けられ、治具7の走行によって一定間隔を以て移動するアーク溶接器2とレーザー溶接器3により被溶接材11の開先15の溶接部14を、時間差を開けてそれぞれ連続的に溶接するように設定されている。本実施形態では、治具7に対してアーク溶接器2が走行方向に先行する位置に設けられ、所定間隔Lを開けてレーザー溶接器3が後行する位置に設けられている。
この場合、アーク溶接器2とレーザー溶接部3の走行の時間差は、アーク溶接で非溶接部14に生成される溶着金属kが凝固した後で溶着金属kにレーザー溶接が行われるように設定されている。そのため、所定距離Lとして治具7の走行速度が例えばL/秒以下になり、1秒以上の時間差が設定されていることが好ましい。
また、レーザー溶接器3のアーク部3aには上述した調整手段によってアーク溶接器2との距離Lを調整するための位置調整モータM2が接続されている。
【0021】
本実施形態によるアーク及びレーザーによる溶接装置1は上述の構成を備えており、次に厚鋼板12,13の溶接方法について説明する。
まず、図1及び図4に示す厚鋼材12,13の対向する面の溶接部14に形成された例えば断面V字形状の開先15の底部15aをライン状の溶接領域として、アーク溶接器2をアーク放電させると共にレーザー溶接器3のレーザー光を照射させながら、所定間隔Lを開けたアーク溶接器2とレーザー溶接器3を、モータM1を駆動させることによって一定速度でX方向に走行させる。そのため、溶接領域の溶接部14に対して、先行するアーク溶接と後に続くレーザー溶接とに時間差が生じる。
【0022】
アーク溶接器2を用いたアーク溶接として例えばマグ溶接を行う。アーク溶接に際し、アーク溶接器2を走行させながら開先15の底部15aに対向する位置に連続的にアーク放電を行う。アーク溶接に際し、アーク溶接器2からアーク放電と共にアルゴンや炭酸ガス等のシールドガスが放出される。
【0023】
ここで、アーク溶接では、トーチの溶接ワイヤ25を揺動させながらアーク溶接を行うが、その際、図3(a)に示すように、揺動の中心が開先15の中心線Oに位置していれば、電流計22で検出するアーク電流(溶接電流)と電圧計23で検出するアーク電圧(溶接電圧)の波形が中心線Oに対して左右対称のものになる。このような波形を検出した場合、電流計22と電圧計23の波形情報を制御部26の入力手段27から入力し、演算手段28でこれを演算して揺動する溶接ワイヤ25が中心線Oに対称な調芯位置にあることを検知する。
【0024】
これに対し、図3(b)に示すように、溶接ワイヤ25の揺動の中心が開先15の中心線Oに対して偏っていれば、電流計22で検出するアーク電流と電圧計23で検出するアーク電圧の各波形が中心線Oに対して左右非対称のものになる。このような場合には、電流計22と電圧計23の波形情報が制御部26の入力手段27を介して演算手段28で検知され、アーク電流の波形とアーク電圧の波形が、図3(b)に示すように中心線Oに対して左右非対称であることを演算して検知する。
そして、その演算した制御信号をアーク溶接器調芯手段29によってアーク溶接器2に出力して図1でY方向に溶接ワイヤ25の調芯を行い、揺動する溶接ワイヤ25が開先15の中心線Oに対して対称となるように溶接位置を決める。こうして、アークセンサ19と制御部26の演算手段28及びアーク溶接器調芯手段29とによってアーク調芯のフィードバック制御を行う。
【0025】
そして、図5に示すように、開先15の底部15aには、アーク放電によって厚鋼板12、13と溶接ワイヤ25を溶融させて溶融池ができ、これが溶着金属kとしてアーク溶接器2の走行に応じて連続してライン状に形成される。アーク溶接器2とレーザー溶接器3とは所定距離Lだけ離隔しているため、治具7の走行速度に応じてアーク溶接器2が走行してアーク放電が行われた後レーザー溶接器3のレーザー光が到達するまでの間に、その領域の溶着金属kが開先15の底部15aで次第に冷却されて凝固され、厚鋼板12、12の開先15の底部15aが溶接される。
【0026】
そして、時間差をおいて治具7と共に走行するレーザー溶接器3によって溶接部14の凝固された溶着金属kの溶接を行う。レーザー溶接器3による溶接に際し、制御部26の演算手段28からアークセンサ19によって設定されたアーク溶接のための調芯位置の波形情報がレーザー溶接のための溶接位置としてレーザー溶接器調芯手段31に出力される。これによって、レーザー溶接器3は、アークセンサ19によって設定された溶接位置である調芯位置に倣って、図6に示すように、凝固した溶着金属kの位置に自動的に調芯されてレーザー光の焦点を合致させる。
従って、レーザー溶接器3のための調芯と焦点位置を調整する手段をアーク溶接の調芯を行うアークセンサ19とは別に設ける必要がない。
【0027】
次に、開先15の凝固した溶着金属kに対してレーザー溶接器3によって溶着金属kに合焦した状態でレーザー光を照射し、再溶融させる。レーザー溶接の際、アーク溶接によって厚鋼板12,13の間隙16が溶着金属kによって埋められているので、レーザー光の直径が間隙16の直径より小さくてもレーザー光が間隙16を素通りすることなく、溶着金属kを再溶融させた溶融金属と共に間隙16が溶融されることによって間隙16を深溶け込み溶接する。
また、本実施形態による溶接では、アーク溶接での溶着金属kが凝固した後にレーザー溶接で再溶融するので溶けすぎず、厚鋼板12,13の板厚が厚くても溶融金属の重みで厚鋼板12、13の裏面まで溶融金属が垂れるおそれがなく、裏波が垂れない。
【0028】
このようにして、治具7で連結されたアーク溶接器2とレーザー溶接器3とが、X方向において所定間隔Lを開けて開先15に沿って一定速度で走行しながら、連続する溶接部14をアーク溶接器3によってアーク溶接して連続する溶着金属kを形成する。そして、後続のレーザー溶接器3が到達する迄のタイムラグによって溶着金属kが凝固することになり、その後、所定時間遅れて走行するレーザー溶接器3によって、凝固した溶着金属kにレーザー光を照射することで再溶融させて、間隙16を連続して深溶け込み溶接する。
【0029】
本実施形態のアーク及びレーザーによる溶接装置1による溶接方法の具体例について説明する。
被溶接材である厚鋼板12,13の板厚をそれぞれ19.0mm、開先15の側壁のテーパ角を3度、開先15につながる間隙16の深さを15.0mm、間隙16の内径を1.0mm、裏面側の開先テーパ角度(面取り角)を45度とし、レーザー光のビーム径を0.6mmとした。
そして、アーク溶接を連続して行い、開先15の底部15aに線状の溶着金属kが生成された後、凝固後にレーザー溶接を連続して行った。この場合、間隙16の内径が2mmまでは十分な溶接を行えたが、間隙16の内径が2mmを超えるとレーザー光のビームが素通りする部分が発生し、十分な溶接ができない場合があった。
そのため、間隙16のギャップ裕度は最大2mmであり、レーザー光のビーム径0.6mmと比較して大きな裕度が得られた。
なお、アーク溶接器2とレーザー溶接器3の距離Lは少なくとも35mm以上、例えば50mmとし、走行速度を35mm/s以下、例えば50mm/sに設定すれば、アーク溶接とレーザー溶接との間に1秒以上の時間差が設定され、その間に溶着金属kを凝固できる。
【0030】
上述のように本実施形態によるアーク及びレーザーによる溶接装置1及び溶接方法によれば、アーク溶接器2とレーザー溶接器3を所定間隔を開けて連続して走行させながら、開先15の溶接部14を溶接することで、アーク溶接によって開先15の底部15aに溶着金属kを生成して厚鋼板12,13を溶接し間隙16の上端部が埋められているから、その後に、レーザー光の直径が間隙16の内径より小さくてもレーザー溶接を行うことができる。例えばビーム径6mmに対して間隙16のギャップ裕度が最大2mmに大きく設定できるという利点もある。
【0031】
また、レーザー溶接に際して、上述した従来技術のように、焦点位置を溶着金属kから上方にずらして照射すると間隙16への溶け込みが浅くなる弊害があったが、本実施形態によればレーザー光の焦点を溶着金属kからずらす必要がなく、レーザー光による高密度エネルギーを利用して深溶け込み溶接を行える。
また、アーク溶接によって開先15に生成した溶着金属kが凝固した後で、アーク溶接と同じ位置にレーザー光を照射して溶着金属kに焦点を合わせて再溶融させるため、溶着金属kが溶融した溶融金属は溶けすぎず、厚鋼板12,13の板厚が厚くても溶融金属の重みで厚鋼板12,13の裏面に垂れ落ちて裏波の形状を悪化させることがない。
更に、アーク溶接器2とレーザー溶接器3とが治具7によって35mm以上走行方向に離間して連結されているため、35mm/s以下の一定速度で連続走行させながらアーク溶接による溶着金属kが凝固した後にレーザー溶接できる。
【0032】
また、アーク溶接時にアークセンサ19によってアーク溶接の調芯を行い、その後に制御手段26によってその調芯のための波形情報をレーザー溶接器3に供給して自動的に調芯して溶接線を倣い、レーザー光の焦点位置を溶着金属kに合致させることができる。そのため、レーザー溶接器3の調芯及び焦点調整のための手段を別個設ける必要がなく、溶接装置1の構成が簡単であり、溶接方法の制御が容易になる。
【0033】
なお、本発明によるアーク及びレーザーによる溶接方法及び溶接装置1は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り適宜の変更が可能である。
上述の実施形態による溶接装置1では、アーク溶接器2とレーザー溶接器3を治具7に連結して一体に保持して移動可能に構成したが、本発明は上述した構成に限定されることはなく、アーク溶接器2とレーザー溶接器3を別々の治具7に保持して、駆動制御手段30によって個別に所定速度で走行させながら、或いは静止状態で、アーク溶接とレーザー溶接を行うようにしてもよい。
また、上述の実施形態では、アーク溶接器2とレーザー溶接器3を走行させながら順次溶接させるようにしたが、必ずしも走行させる必要はない。例えば、アーク溶接器2とレーザー溶接器3を静止状態にして、アーク溶接器2でアーク溶接を行い、所定時間経過して溶融池が溶着金属kとして凝固した後に、レーザー溶接器3で溶着金属kのレーザー溶接を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 溶接装置
2 アーク溶接器
3 レーザー溶接器
7 治具
11 被溶接材
12、13 厚鋼板
15 開先
16 間隙
18 監視制御手段
19 アークセンサ
22 電流計
23 電圧計
26 制御部
28 演算手段
29 アーク溶接器調芯手段
30 駆動制御手段
31 レーザー溶接器調芯手段
k 溶着金属

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク放電とレーザー照射によって被溶接材の開先と該開先に続く間隙を溶接するようにしたアークとレーザーによる溶接方法において、
アーク溶接器でアーク溶接して被溶接材の開先に溶着金属を溶接する工程と、
前記溶着金属を凝固させる工程と、
前記レーザー溶接器のレーザ光を前記溶着金属に合焦させて再溶融させて前記被溶接材の開先から間隙に向けてレーザー溶接する工程と
を備えたことを特徴とするアーク及びレーザーによる溶接方法。
【請求項2】
前記アーク溶接器とレーザー溶接器とは所定間隔を開けて走行しながらそれぞれ溶接を行い、前記レーザー溶接器が前記所定間隔を走行する時間が経過するまでに前記溶着金属が凝固するように設定されている請求項1に記載されたアーク及びレーザーによる溶接方法。
【請求項3】
前記アーク溶接器とレーザー溶接器とは前記所定間隔を開けて一体に保持されている請求項2に記載されたアーク及びレーザーによる溶接方法。
【請求項4】
アーク溶接の際にアークセンサによって溶接ワイヤを調芯させ、前記アークセンサによる調芯情報に基づいて前記レーザー溶接器の調芯と焦点調整を行うようにした請求項1乃至3のいずれか1項に記載されたアーク及びレーザーによる溶接方法。
【請求項5】
アーク放電とレーザー照射によって被溶接材同士の開先と該開先に続く間隙を溶接するようにしたアーク及びレーザーによる溶接装置において、
アーク放電によってアーク溶接して被溶接材の前記開先に溶着金属を溶着させるアーク溶接器と、
凝固した前記溶着金属にレーザー光を照射して再溶融させて前記間隙をレーザー溶接するレーザー溶接器と、
前記アーク溶接器とレーザー溶接器とを時間差を設けて前記開先の溶接位置に沿って走行させる駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とするアーク及びレーザーによる溶接装置。
【請求項6】
前記アーク溶接器とレーザー溶接器は所定間隔を開けて設置されていて連結部材によって一体とされている請求項5に記載されたアーク及びレーザーによる溶接装置。
【請求項7】
前記アーク溶接器とレーザー溶接器は所定間隔を開けて設置されていて互いに分離されている請求項5に記載されたアーク及びレーザーによる溶接装置。
【請求項8】
アーク溶接時における溶接電圧及び溶接電流に基づいて調芯するアーク溶接器調芯手段と、
前記アーク溶接器を調芯するための波形情報によってレーザー光の調芯と焦点位置を前記溶着金属に合致させるレーザー溶接器調芯手段と、
を備えたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載されたアーク及びレーザーによる溶接装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−103259(P2013−103259A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249737(P2011−249737)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(306022513)新日鉄住金エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】