説明

アーク溶接装置及びアーク溶接方法

【課題】一組の隣接する被溶接端子の間隔が、他の隣接する被溶接端子の間隔よりも大きい場合でも、被溶接端子の溶け過ぎを防止することが可能となる、アーク溶接装置及びアーク溶接方法を提案する。
【解決手段】本発明に係るアーク溶接装置10は、複数のリード端子32・32・・・が突出して直線状に並んだ電子部品31・31・・・に対して、リード端子32・32・・・のアーク溶接を順に行うものであって、一組の隣接するリード端子32・32の間隔が、他の隣接するリード端子32・32の間隔よりも大きい場合に、電子部品31・31・・・で互いに隣接するリード端子32・32・・・の間にダミー端子42・42・・・を配置することにより、ダミー端子42・42・・・とリード端子32・32・・・との間隔D3と、他の隣接するリード端子32・32・・・の間隔D1と、を均一にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク溶接装置及びアーク溶接方法に関し、具体的には、アーク溶接時において、溶接品質を安定化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク放電を発生させて溶接を行うアーク溶接装置においては、従来、複数のリード端子(被溶接端子)が突出して直線状に並んだ電子部品(被溶接部品)に対して、前記リード端子のアーク溶接を順に行う技術が知られており、これについて開示する文献も存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−160661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来技術によれば、一組の隣接するリード端子の間隔が、他の隣接するリード端子の間隔よりも大きくなることがある。具体的には図4及び図5に示す如く、複数のリード端子が突出した電子部品が複数並んだ状態で、前記各リード端子に対してアーク溶接を順に行う場合に、一の電子部品における最終のリード端子(溶接トーチの進行方向に向かって最も下流に位置するリード端子)と、隣接する電子部品の最初のリード端子(溶接トーチの進行方向に向かって最も上流に位置するリード端子)との間隔(図5中のd2)が、他のリード端子同士の間隔(図5中のd1)よりも大きくなる。このため、それぞれの電子部品における最終のリード端子から、次に(図5においては右側に)隣接する電子部品における最初のリード端子にアークが乗り移るまでの時間が長くなる。即ち、それぞれの電子部品における最終のリード端子においてはアークの滞在時間が長くなることから、図5に示す如く当該リード端子がアーク溶接において溶け過ぎるという問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題を鑑み、一組の隣接する被溶接端子の間隔が、他の隣接する被溶接端子の間隔よりも大きい場合でも、被溶接端子の溶け過ぎを防止することが可能となる、アーク溶接装置及びアーク溶接方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、複数の被溶接端子が突出して並んだ少なくとも1つの被溶接部品に対して、前記被溶接端子のアーク溶接を順に行う、アーク溶接装置であって、一組の隣接する被溶接端子の間隔が、他の隣接する被溶接端子の間隔よりも大きい場合に、前記一組の隣接する被溶接端子の間に配置される少なくとも1つのダミー端子を備え、前記ダミー端子と該ダミー端子に隣接する前記被溶接端子との間隔と、他の隣接する被溶接端子の間隔とが均一であるものである。
【0008】
請求項2においては、前記アーク溶接装置は、複数並んだ前記被溶接部品に対して、前記被溶接端子のアーク溶接を順に行い、前記ダミー端子は、前記複数の被溶接部品の間に配置され、前記ダミー端子と該ダミー端子の一側に隣接する前記被溶接端子との間隔と、前記ダミー端子と該ダミー端子の他側に隣接する前記被溶接端子の間隔とが均一であるものである。
【0009】
請求項3においては、複数の前記ダミー端子が、前記一組の隣接する被溶接端子の間に並べて配置され、前記各ダミー端子と該各ダミー端子に隣接する前記被溶接端子との間隔と、前記他の隣接する被溶接端子の間隔とが均一であるものである。
【0010】
請求項4においては、複数の被溶接端子が突出して並んだ少なくとも1つの被溶接部品に対して、前記被溶接端子のアーク溶接を順に行う、アーク溶接方法であって、一組の隣接する被溶接端子の間隔が、他の隣接する被溶接端子の間隔よりも大きい場合に、前記一組の隣接する被溶接端子の間に少なくとも1つのダミー端子を配置し、該ダミー端子と該ダミー端子に隣接する前記被溶接端子との間隔と、他の隣接する被溶接端子の間隔と、を均一にするものである。
【0011】
請求項5においては、複数並んだ前記被溶接部品に対して、前記被溶接端子のアーク溶接を順に行い、前記被溶接部品の間に前記ダミー端子を配置し、前記ダミー端子と該ダミー端子の一側に隣接する前記被溶接端子との間隔と、前記ダミー端子と該ダミー端子の他側に隣接する被溶接端子の間隔と、を均一にするものである。
【0012】
請求項6においては、複数の前記ダミー端子を、前記一組の隣接する被溶接端子の間に並べて配置し、前記各ダミー端子と該各ダミー端子に隣接する前記被溶接端子との間隔と、前記他の隣接する被溶接端子の間隔と、を均一にするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アーク溶接装置及びアーク溶接方法において、一組の隣接する被溶接端子の間隔が、他の隣接する被溶接端子の間隔よりも大きい場合でも、被溶接端子の溶け過ぎを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第一実施形態に係るアーク溶接装置を示した概略図。
【図2】第一実施形態に係るアーク溶接装置における溶接部分を示した拡大図。
【図3】第二実施形態に係るアーク溶接装置における溶接部分を示した拡大図。
【図4】従来技術に係るアーク溶接装置を示した概略図。
【図5】従来技術に係るアーク溶接装置における溶接部分を示した拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、発明の実施の形態を説明する。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0016】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態に係るアーク溶接装置10の全体構成について、図1を用いて説明する。
アーク溶接装置10は、溶接電源を備えるとともに、予め記憶された溶接条件に基づいて溶接信号を生成する制御装置11と、制御装置11により生成された溶接信号に基づいて溶接トーチ22でアーク溶接を行う溶接機21と、溶接テーブル30と、を備える。
前記溶接信号は、溶接機21によるアーク溶接のパラメータである、電流及び電圧を指示する信号である。
【0017】
溶接テーブル30には、複数のリード端子32・32・・・が被溶接端子として突出して直線状に並んだ、被溶接部品である電子部品31・31・・・が複数並んで載置される。図1においては、三本のリード端子32・32・・・を有する電子部品31が三個並んで配置されている。それぞれのリード端子32・32・・・は、溶接テーブル30に備えられる可動クランプ35によって一括してクランプされると同時に、該可動クランプ35を介して制御装置11の溶接電源に接続されている。
【0018】
電子部品31としては、例えば電界効果トランジスタの一種であるMOS−FETなどが用いられる。また、本実施形態においては、リード端子32・32・・・と、それぞれのリード端子32・32・・・ごとに配置された図示しないバスバとをアーク溶接により溶接するものとする。
【0019】
本実施形態に係るアーク溶接装置10における溶接対象である被溶接部品は電子部品31に限定されるものではなく、また、被溶接端子はリード端子32に限定されるものではない。即ち、1個又は複数個の被溶接部品から突出した複数の被溶接端子をアーク溶接する構成であれば、本実施形態に係るアーク溶接装置10を用いることが可能である。さらに、本実施形態においては、複数のリード端子32・32・・・が直線状に並んだ構成について説明するが、本発明は、リード端子が円周状など他の形態に並んだ場合についても適用することが可能である。
【0020】
アーク溶接装置10は上記の構成において、溶接トーチ22を図1中の矢印Aで示す進行方向(以降、「進行方向A」と記載する)へ移動させつつ、前記溶接信号に基づいて、電極である溶接トーチ22と被溶接端子であるリード端子32・32・・・(及びバスバ)の先端との間にアークa(電弧、図2を参照)を発生させることにより、リード端子32・32・・・のアーク溶接を順に行うのである。
【0021】
本実施形態において、アーク溶接装置10はTIG溶接(タングステン・イナート・ガス溶接:電極にタングステン、シールドガスにイナートガスを使用した溶接)を行うものとするが、溶接の種類については本実施形態に限定されるものではない。
【0022】
本実施形態において、一組の隣接するリード端子32・32の間隔(図2中のD2)が、他の隣接するリード端子32・32の間隔(図2中のD1)よりも大きく構成されている(D2>D1)。具体的には図2に示す如く、左側の電子部品31における最終のリード端子(溶接トーチ22の進行方向Aに向かって最も下流に位置するリード端子、以下同じ)32と、右側で隣接する電子部品31の最初のリード端子(同じく進行方向Aに向かって最も上流に位置するリード端子、以下同じ)32との間隔D2が、他のリード端子同士の間隔D1よりも大きいのである。
【0023】
そして、本実施形態においては、各電子部品31・31・・・間で互いに隣接するリード端子32・32・・・の間(それぞれの電子部品31・31・・・における最終のリード端子32と最初のリード端子32との間)にダミー端子42・42・・・が配置されている。具体的には、可動クランプ35に、リード端子32・32・・・と先端位置が一致するように、リード端子32と略同一の素材でダミー端子42・42・・・を形成するのである。
【0024】
そして、本実施形態に係るアーク溶接装置10では、ダミー端子42・42・・・と、ダミー端子42・42・・・に隣接するリード端子32・32・・・との間隔(図2中のD3)と、他の隣接するリード端子32・32・・・の間隔D1と、を均一(D3≒D1)にしている。さらに、ダミー端子42とその一側である進行方向Aに向かって上流側に隣接するリード端子32との間隔D3と、該ダミー端子42とその他側である進行方向Aに向かって下流側に隣接するリード端子32の間隔D3と、についても均一にしている。なお、本明細書における「均一の間隔」とは、アークaが乗り移る時間が同程度である間隔をいい、各端子の距離が厳密に一致することを示すものではない。
【0025】
本実施形態においては、上記の如く構成することにより、電子部品31の進行方向Aにおける最終のリード端子32と、隣接する電子部品31の進行方向Aにおける最初のリード端子32との間に、互いの間隔が均一となるようにダミー端子42が配置されるため、最終のリード端子32におけるアークaの滞在時間を短くすることができる。具体的には図2中の矢印Bに示す如く、最終のリード端子32からダミー端子42にアークaを早期に乗り移らせる(移動させる)ことができるため、最終のリード端子32におけるアークaの滞在時間を、他のリード端子32における滞在時間と同程度にまで短縮できるのである。より詳細には、リード端子32が電子部品31において進行方向Aにおける最初の位置又は最終の位置に配置されていても、他のリード端子32とアークの滞在時間を同程度にしてアーク溶接を行うことができるのである。
【0026】
即ち、それぞれの電子部品31・31・・・における最終のリード端子32・32・・・において、アークaの滞在時間が長くなることを防ぎ、最終のリード端子32・32・・・の溶け過ぎを防止できるのである。つまり、1個又は複数個の被溶接部品である電子部品31において、一組の隣接する被溶接端子であるリード端子32・32の間隔D2が、他の隣接するリード端子32・32の間隔D1よりも大きい場合でも、ダミー端子42をその間に配置することにより、リード端子32の溶け過ぎを防止することが可能となるのである。
【0027】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係るアーク溶接装置について、図3を用いて説明する。なお、本実施形態で説明するアーク溶接装置について、既述の第一実施形態と共通する部分に関しては詳細な説明を省略するものとする。
【0028】
本実施形態に係るアーク溶接装置においては、複数(本実施形態においては2個)のダミー端子142・142が、一組の隣接する被溶接端子であるリード端子132・132の間に並べて配置されている。具体的には、可動クランプ135に、リード端子132・132・・・と先端位置が一致するように、リード端子132と略同一の素材でダミー端子142・142・・・を形成するのである。
【0029】
そして、本実施形態に係るアーク溶接装置では、ダミー端子142・142と、それぞれのダミー端子142・142の進行方向Aにおける上流側及び下流側に隣接するリード端子132・132との間隔D13と、他の隣接するリード端子132・132・・・の間隔D11と、を均一(D13≒D11)にしている。
【0030】
本実施形態においては、上記の如く構成することにより、電子部品131における最終のリード端子132におけるアークaの滞在時間だけでなく、電子部品131における最初のリード端子132におけるアークaの滞在時間も調整することが可能となる。具体的には図3に示す如く、最初のリード端子132にアークaを乗り移らせる(移動させる)前にダミー端子142にアークaを留まらせておくのである。これにより、アークaが最初のリード端子132に早期に乗り移ってしまうことがないため、最初のリード端子132におけるアークaの滞在時間が他のリード端子132における滞在時間と比べて長くなることを防止できるのである。換言すれば、最初のリード端子132におけるアークaの滞在時間を、他のリード端子132における滞在時間と同程度にまで短縮できるのである。
【0031】
上記の如く、それぞれの電子部品131・131・・・における、最初のリード端子132・132・・・、及び、最終のリード端子132・132・・・において、アークaの滞在時間が他のリード端子132・132・・・と比較して長くなることを防ぎ、最初のリード端子132・132・・・、及び、最終のリード端子132・132・・・の溶け過ぎを防止できるのである。つまり、一組の隣接する被溶接端子であるリード端子132・132の間隔D12が、他の隣接するリード端子132・132の間隔D11よりも大きく、一つのダミー端子142ではリード端子132との間隔を調整できない場合でも、複数のダミー端子142・142・・・をその間に配置することにより、リード端子132の溶け過ぎを防止することが可能となるのである。
【符号の説明】
【0032】
10 アーク溶接装置
22 溶接トーチ
31 電子部品
32 リード端子
42 ダミー端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の被溶接端子が突出して並んだ少なくとも1つの被溶接部品に対して、前記被溶接端子のアーク溶接を順に行う、アーク溶接装置であって、
一組の隣接する被溶接端子の間隔が、他の隣接する被溶接端子の間隔よりも大きい場合に、前記一組の隣接する被溶接端子の間に配置される少なくとも1つのダミー端子を備え、
前記ダミー端子と該ダミー端子に隣接する前記被溶接端子との間隔と、他の隣接する被溶接端子の間隔とが均一であることを特徴とする、アーク溶接装置。
【請求項2】
前記アーク溶接装置は、複数並んだ前記被溶接部品に対して、前記被溶接端子のアーク溶接を順に行い、
前記ダミー端子は、前記複数の被溶接部品の間に配置され、
前記ダミー端子と該ダミー端子の一側に隣接する前記被溶接端子との間隔と、前記ダミー端子と該ダミー端子の他側に隣接する前記被溶接端子の間隔とが均一であることを特徴とする、請求項1に記載のアーク溶接装置。
【請求項3】
複数の前記ダミー端子が、前記一組の隣接する被溶接端子の間に並べて配置され、
前記各ダミー端子と該各ダミー端子に隣接する前記被溶接端子との間隔と、前記他の隣接する被溶接端子の間隔とが均一であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のアーク溶接装置。
【請求項4】
複数の被溶接端子が突出して並んだ少なくとも1つの被溶接部品に対して、前記被溶接端子のアーク溶接を順に行う、アーク溶接方法であって、
一組の隣接する被溶接端子の間隔が、他の隣接する被溶接端子の間隔よりも大きい場合に、前記一組の隣接する被溶接端子の間に少なくとも1つのダミー端子を配置し、該ダミー端子と該ダミー端子に隣接する前記被溶接端子との間隔と、他の隣接する被溶接端子の間隔と、を均一にすることを特徴とする、アーク溶接方法。
【請求項5】
複数並んだ前記被溶接部品に対して、前記被溶接端子のアーク溶接を順に行い、
前記被溶接部品の間に前記ダミー端子を配置し、
前記ダミー端子と該ダミー端子の一側に隣接する前記被溶接端子との間隔と、前記ダミー端子と該ダミー端子の他側に隣接する被溶接端子の間隔と、を均一にすることを特徴とする、請求項4に記載のアーク溶接方法。
【請求項6】
複数の前記ダミー端子を、前記一組の隣接する被溶接端子の間に並べて配置し、
前記各ダミー端子と該各ダミー端子に隣接する前記被溶接端子との間隔と、前記他の隣接する被溶接端子の間隔と、を均一にすることを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載のアーク溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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