説明

アースコイルの固定構造及びそれを用いた機器

【課題】基板上にアースとなるトラック(パターン)が形成されていなくてもアースコイルを基板上に固定できるようにする。
【解決手段】機器10の可触導電部4,5のアース内部配線9の途中に接続されたアースコイル2と、電気部品が実装された基板1と、基板1と係合可能な係止爪34を有し、アースコイルを保持するとともに、係止爪34を基板1と係合させることで、アースコイル2を基板1上に機械的に固定するスペーサー3と、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースコイルの固定構造及びそれを用いた機器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アース接続を必要とする機器においては、可触導電部に二重絶縁や強化絶縁を施すか、可触導電部を機器の内部配線により電源プラグのアースへ接続することで感電に対しての保護を行う。可触導電部とは、人が触ることのできる金属部分であり、IEC(国際電気標準会議)規格上では「テストプローブ(人の指を想定した試験指)で触れることができる部分又は表面」と定義されている。また、アース接続された可触導電部から電源プラグまでの内部配線上に発生したノイズ成分や電源プラグのアースを通して機器の外部から侵入してくるノイズ成分を、アースコイルによって低減させるように構成した機器が存在する。
【0003】
このノイズ対策用のアースコイルは、従来、可触導電部に接続されているアース内部配線の途中に接続し、完全な固定をせずに機器内部に配置されている場合や、あるいは電気部品が実装された基板上にアースとなるトラック(パターン)を形成して、この基板にアースコイルを接続するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平02−155109号公報(図1、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アースコイルをアース内部配線の途中に接続して完全な固定をせずに機器内部に配置されているものにあっては、アースコイルの巻線を充電部などから絶縁するための絶縁材(例えば絶縁テープ等)が必要となる。これを解消するには、アースコイルを固定する構造を追加するためにスペースを確保すればよいが、機器によってはこのスペースを確保することが困難な場合もある。
【0006】
また、基板上にアースとなるトラック(パターン)を形成して、この基板にアースコイルを接続するようにしたものにあっては、IEC(国際電気標準会議)規格に準拠するために、基板上に、アースとなる最低2つのトラック(パターン)を独立した半田付けの点として形成する必要がある。そのため、アースコイルのリードを少なくとも2つに分割し、基板に実装するなどの対策が必要となるが、アースコイルのリードを少なくとも2つに分割する加工が困難であったり、基板上のスペースの問題で実現が困難な場合もある。
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、基板上にアースとなるトラック(パターン)が形成されていなくてもアースコイルを基板上に固定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るアースコイルの固定構造は、機器の可触導電部のアース内部配線の途中に接続されたアースコイルと、電気部品が実装された基板と、この基板と係合可能な係止爪を有し、アースコイルを保持するとともに、前記係止爪を前記基板と係合させることで、アースコイルを基板上に機械的に固定するスペーサーと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアースコイルの固定構造においては、基板上に、機器の可触導電部のアースとなるトラック(パターン)が形成されていなくても、基板と係合可能な係止爪を有するとともにアースコイルを保持するスペーサーを用いて、アースコイルを基板上に固定することができる。このため、アース内部配線の途中にアースコイルを接続し完全な固定をせずに機器内部に配置されている場合に必要であった充電部などから絶縁するための絶縁材(例えば絶縁テープ等)を不要とすることができる。また、アースコイルの設置スペースの確保が容易となり、限られたスペースの中で効率の良い配置ができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造を備えた機器(炊飯器)の結線図である。
【図2】本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造を図3とは異なる角度から示す縦断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造に用いるスペーサーを係止爪側より見た斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造に用いるスペーサーの下面図である。
【図7】本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造に用いるスペーサーの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造を備えた機器(炊飯器)の結線図、図2は本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造を示す斜視図、図3は本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造を示す縦断面図、図4は本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造を図3とは異なる角度から示す縦断面図である。
本発明の実施形態のアースコイルの固定構造は、図1乃至図4のように基板1上に、アースとなるトラック(パターン)が形成されていなくても、アースコイル2を、スペーサー3を用いて機械的に固定できるようにしたものである。基板1には電子部品を含む電気部品が実装されている。
【0012】
すなわち、アースコイル2は、主に可触導電部を有する機器、例えば炊飯器10のノイズ対策用として設けられたものである。可触導電部とは、既述したように人が触ることのできる金属部分であり、炊飯器10では、内釜を側面から加熱するための胴ヒーター部4や内釜を上面から加熱するための蓋ヒーター部5が可触導電部となる。したがって、胴ヒーター部4や蓋ヒーター部5には、アース内部配線6,7がそれぞれ接続され、これらアース内部配線6,7は、結束部8によって1本のアース内部配線9にまとめられ、電源プラグ11のアース12へ接続されている。1本にまとめられたアース内部配線9の途中には、アースコイル2が接続されており、アース接続された胴ヒーター部4や蓋ヒーター部5から電源プラグまでの内部配線上に発生したノイズ成分や電源プラグのアースを通して機器の外部から侵入してくるノイズ成分をアースコイル2によって低減することができるように構成されている。なお、電源プラグ11のメインの電源ライン13は、基板1に接続されている。
【0013】
また、スペーサー3は、図3及び図4のようにアースコイル2を保持して、アースコイル2を基板1上に機械的に固定するものであり、アースコイル2を基板1の板面から所定距離浮いた状態で保持するための隙間確保用の筒部31と、アースコイル2が載置されて保持される台座部32と、筒部31の内方に設けられて当該筒部31から下方へ突出し、基板1に形成した係合用穴33のエッジと係合可能な係止爪34とを有している。
【0014】
次に、スペーサー3の詳細と、アース内部配線9とアースコイル2のリード線の結線部の詳細について、図5乃至図7を用い、図1乃至図4を参照しながら説明する。図5は本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造に用いるスペーサーを係止爪側より見た斜視図、図6は本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造に用いるスペーサーの下面図、図7は本発明の実施形態に係るアースコイルの固定構造に用いるスペーサーの上面図である。
スペーサー3は、図3、図4、図5、図7のように台座部32に、アースコイル2の外郭の側面部の一部を覆う周壁35が形成され、周壁35によってアースコイル2の位置決めができ、基板1へのアースコイル2の実装時の作業性を向上させることができるようになっている。また、周壁35は、基板1上の他の部品とアースコイル2との接触を防止し、アースコイル2の絶縁皮膜を保護する機能も有している。これにより、アースコイル2の信頼性を向上させることができる。
【0015】
また、スペーサー3には、アースコイル2のリード線21の引出部付近に切欠き36が形成されている。アースコイル2のリード線21とアース内部配線9とは、基板1とアースコイル2の間における切欠き36部位、つまりアースコイル2のコアよりも低い位置(基板1の板面寄りの位置)における切欠き36部の位置にて、固定用端子22によって接続されている。これにより、固定用端子22がスペーサー3やアースコイル2のコアと干渉するのを防止でき、かつスペーサー3のエッジによる配線の傷つきや固定用端子22によるコイル絶縁皮膜の傷つきを防止できるようになっている。そして、アース内部配線9に接続したアースコイル2を、スペーサー3によって基板1上に実装することができる。このため、アースコイル2の巻線を充電部などから絶縁するための絶縁材(例えば絶縁テープ等)が不要となる。また、アースコイル2の設置スペースの確保が容易となり、限られたスペースの中で効率の良い配置ができる。
【0016】
また、固定用端子22を貫通したアースコイル2のリード線21の末端を延出させ、図3のように基板1に形成した半田付け用穴37に挿入し、半田付けしている。つまり、アースコイル2は、これを保持するスペーサー3の係止爪34により基板1に仮固定され、リード線21の末端の半田付けにより基板1に本固定される。このように、スペーサー3の係止爪34を用いることで、アースコイル2と基板1間を半田付けするまでの仮固定ができるので、組立作業性が向上する。また、アースコイル2のリード線21はスペーサー3の切欠き36内に配置され、そこからリード線21の延出部がストレート状に延びているので、基板1の半田付け用穴37へのリード線21の挿入性がよくなる。
【0017】
また、スペーサー3とアースコイル2は、図示しない接着剤(例えば、シリコンなど)で互いに固定されており、これによって基板1へのアースコイル2の実装時の作業性が向上している。さらに、スペーサー3とアースコイル2間の摩擦がなくなり、スペーサー3によるアースコイル2の絶縁材の傷つけが防止され、さらに振動などによる半田部への応力が緩和されるようになっている。
【0018】
また、スペーサー3には、図5乃至図7のように少なくともアースコイル2を保持する面、つまり台座部32に通気穴38が形成されている。これにより、動作中のノイズ発生時のアースコイル2の発熱を、通気穴38を通過する空気により冷却することができ、放熱性能が向上する。
【0019】
なお、固定用端子22とアースコイル2のコアとの間の隙間に絶縁材(図示せず)を設けることが望ましい。これにより、固定用端子22によるコイル絶縁皮膜の傷つけを確実に防止することができる。
【0020】
以上のように、本発明によれば、基板1上に、炊飯器10の可触導電部のアースとなるトラック(パターン)が形成されていなくても、アースコイル2をスペーサー3を用いて基板1上に実装することができた。このため、アースコイルを機器のアース内部配線の途中に接続し、完全な固定をせずに機器内部に配置されている場合に必要であった充電部などから絶縁するための絶縁材(例えば絶縁テープ等)を不要とすることができた。また、アースコイル2の設置スペースの確保が容易となり、限られたスペースの中で効率の良い配置ができた。
【0021】
なお、ここでは本発明の適用機器として炊飯器10を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものでなく、例えば電磁誘導加熱調理器など、アース接続を必要とする機器全般に適用できるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0022】
1 基板、2 アースコイル、3 スペーサー、4 胴ヒーター部(可触導電部)、5 蓋ヒーター部(可触導電部)、6,7,9 アース内部配線、8 結束部、10 炊飯器(機器)、11 電源プラグ、12 電源プラグのアース、13 電源ライン、21 アースコイルのリード線、22 固定用端子、31 筒部、32 台座部、33 係合用穴、34 係止爪、35 台座部の周壁、36 切欠き、37 半田付け用穴、38 通気穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の可触導電部のアース内部配線の途中に接続されたアースコイルと、
電気部品が実装された基板と、
前記基板と係合可能な係止爪を有し、前記アースコイルを保持するとともに、前記係止爪を前記基板と係合させることで、前記アースコイルを前記基板上に機械的に固定するスペーサーと、
を備えたことを特徴とするアースコイルの固定構造。
【請求項2】
前記スペーサーは、
前記アースコイルを前記基板の板面から所定距離浮いた状態で保持する筒部と、
前記筒部の内方に設けられて当該筒部から下方へ突出し、前記基板に形成した係合用穴のエッジと係合可能な前記係止爪とを有していることを特徴とする請求項1記載のアースコイルの固定構造。
【請求項3】
前記スペーサーの前記筒部により浮かされた前記アースコイルと前記基板との間で、前記アース内部配線と前記アースコイルのリード線とが固定用端子で接続されていることを特徴とする請求項2記載のアースコイルの固定構造。
【請求項4】
前記固定用端子を貫通した前記アースコイルのリード線の末端が、前記基板に形成した穴に挿入され、半田付けされていることを特徴とする請求項3記載のアースコイルの固定構造。
【請求項5】
前記スペーサーは、前記アースコイルの外郭の少なくとも側面部の一部を覆っていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のアースコイルの固定構造。
【請求項6】
前記スペーサーは、前記アースコイルのリード線の引出部付近に切欠きが形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のアースコイルの固定構造。
【請求項7】
前記スペーサーと前記アースコイルとは、接着剤で互いに固定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のアースコイルの固定構造。
【請求項8】
前記スペーサーは、少なくとも前記アースコイルを保持する面に、通気穴が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のアースコイルの固定構造。
【請求項9】
前記固定用端子と前記アースコイルとの間の隙間に、絶縁材が設けられていることを特徴とする請求項3乃至請求項8のいずれかに記載のアースコイルの固定構造。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかのアースコイルの固定構造を備えたことを特徴とする機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−98180(P2013−98180A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236367(P2011−236367)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】