説明

アースドリル及び杭打ち機

【課題】例えば、リーダを備えない杭打ち機を用い、削孔箇所に礫が埋まっていたり、強度が一様でない地盤を削孔する場合であっても、高精度で削孔することのできるアースドリル及び杭打ち機を提供することを目的とする。
【解決手段】ドリルシャフト20の下端にドリルヘッド40を備えたアースドリル10であって、ドリルヘッド40の上方に、ドリルシャフト20に対して自在固定具34によって回転自在に固定された中空のケーシング30を備え、ドリルシャフト20におけるケーシング30に対向する外周面に径外側向きのシャフト側撹拌翼21を備え、ケーシング30の内周面に径内側向きのケーシング側撹拌翼33を備え、ドリルシャフト20に対するケーシング30の共回りを阻止する係止リブ32を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地盤を削孔して杭を造成するためのアースドリル及び該アースドリルを用いた杭打ち機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、現場で基礎杭を造成又は打ち込むためのアースドリルや杭打ち機について多く提案されている。
例えば、下記特許文献1のホイールクレーン杭打ち機もその1つである。
【0003】
上記ホイールクレーン杭打ち機は、クレーン車の伸縮ブームの先端に、回転駆動装置を介してスパイラルスクリュウを接続し、スパイラルスクリュウで削孔する杭打ち機である。
【0004】
このように、上記ホイールクレーン杭打ち機は、これにまでの杭打ち機に備えていたリーダを無くしたことによって占有面積が小さくなり、杭造成箇所に近づいて施工することができる。
【0005】
しかし、近年の近接施工化や、構造の複雑化等に伴う施工精度の向上が厳しく求められており、上記ホイールクレーン杭打ち機では、杭造成箇所に近づいて施工することができる。しかし、スパイラルスクリュウの削孔方向をガイドしていたリーダを備えていないため、例えば、削孔箇所に礫等が埋まっていた場合、スパイラルスクリュウが礫を避ける方向に逃げ、削孔方向が偏心するおそれが高かった。
また、削孔箇所の地盤が一様でなく、軟弱部がある場合も同様に、スパイラルスクリュウは軟弱部の方に逃げ、削孔方向が偏心するおそれが高かった。
【0006】
このように削孔方向が偏心すると、孔内部を固化して造成する杭が偏心したり、孔内部に建て込む既製杭が高留まりしたりして、所望の杭を造成できないといった問題が生じる可能性が高かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−112924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明では、例えば、リーダを備えない杭打ち機を用い、削孔箇所に礫が埋まっていたり、強度が一様でない地盤を削孔する場合であっても、高精度で削孔することのできるアースドリル及び杭打ち機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この本発明は、ドリルシャフトの下端にドリルヘッドを備えたアースドリルであって、前記ドリルヘッドの上方に、前記ドリルシャフトに対して回転自在に固定された中空のケーシングを備え、前記ドリルシャフトにおける前記ケーシングに対向する部分、及び前記ケーシングにおける前記ドリルシャフトに対向する部分のうち少なくとも一方に、他方に向かって伸びる撹拌翼を備えるとともに、前記ドリルシャフトに対する前記ケーシングの共回りを阻止する共回り阻止手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
ドリルシャフトの下端にドリルヘッドを備えたアースドリルは、回転中心のドリルシャフトの外周に径方向に突出する撹拌翼や、螺旋状のスパイラルスクリュウを備え、下端に略螺旋状、あるいは平面視一文字状、十字状、放射状のドリルヘッドを備えたドリルとすることができる。
【0011】
この発明の構成により、例えば、削孔箇所に礫が埋まっていたり、強度が一様でない地盤を削孔する場合であっても、ドリルヘッドの上方に備えたケーシングが孔壁によって位置規制されるため、削孔方向を保持して高精度で削孔することができる。
【0012】
また、前記ドリルシャフトにおける前記ケーシングに対向する部分、及び前記ケーシングにおける前記ドリルシャフトに対向する部分のうち少なくとも一方に、他方に向かって伸びる撹拌翼を備えるとともに、前記ドリルシャフトに対する前記ケーシングの共回りを阻止する共回り阻止手段を備えたことにより、回転して削孔するアースドリルに対してケーシングが相対回転し、中空のケーシング内にある掘削土砂を撹拌翼で撹拌することができる。
【0013】
したがって、例えば、ドリルヘッドによって掘削された掘削土砂がケーシング内部で圧密され、ドリルシャフトを締め付ける等のアースドリルの回転に支障をきたすことを防止できる。
また、例えば、ベントナイト等の孔壁保護液を注入することで孔壁を保護する削孔の場合においては、掘削土砂と孔壁保護液とを効率よく撹拌して混合することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記共回り阻止手段を、前記ケーシングの外周面において、前記ドリルシャフトの軸方向に平行に配設し、径外側方向に突出する阻止鍔部で構成することができる。
【0015】
前記ドリルシャフトの軸方向は、ドリルシャフトの長さ方向であり、アースドリルにより削孔する削孔方向に対して略同方向であることをいう。
前記ドリルシャフトの軸方向に平行に配設する阻止鍔部は、ケーシングの外周面におけるドリルシャフトの軸方向に対して平行な方向に連続して長い阻止鍔部とすること、あるいは平行な方向に短い阻止鍔部を、間隔を隔てて配設することができる。
【0016】
これにより、ドリルシャフトに対して回転自在に接続されたケーシングの外周面に形成した阻止鍔部が孔壁に引っかかるため、ケーシングとドリルシャフトとが共回りすることを阻止できる。
【0017】
例えば、ドリルシャフトとの共回りを阻止するために、ケーシングに別の回転機構や歯車機構を設けた場合、構造が複雑化して故障の原因や重量増となる。しかし、本発明のようにケーシングの外周面に阻止鍔部を形成するだけであるため故障や重量増とならずにケーシングとドリルシャフトとの共回りを阻止することができる。
【0018】
また、この発明の態様として、前記ケーシングの外径を、前記ドリルヘッドの径より小さく形成するとともに、前記阻止鍔部の高さを、前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の0.5〜2倍の範囲に設定することができる。
【0019】
前記ドリルヘッドの径は、回転して削孔するドリルヘッドの回転軌跡の径であり、例えば、一文字や十文字等の平面視円形でないドリルヘッドの場合はドリルヘッドの中心から外側までの長さとすることができる。
【0020】
この発明の構成により、例えば、ケーシングが孔壁に食い込んで削孔の負荷となることを防止することができるように、ドリルヘッドの上方にケーシングを備えたことによる削孔負荷の増大を抑制することができる。
【0021】
また、前記阻止鍔部の高さを、前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の0.5〜2倍の範囲に設定することで、削孔負荷にならず、適度に孔壁に阻止鍔部を食い込ませて係止させて、ケーシングとドリルシャフトとの共回りを確実に阻止することができる。
【0022】
詳しくは、前記阻止鍔部の高さを、前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の0.5倍以下に設定すると、阻止鍔部が孔壁に係止できず、ケーシングとドリルシャフトとの共回りを阻止することができない。また、前記阻止鍔部の高さを、前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の2倍以上に設定すると、阻止鍔部は孔壁に食い込んで確実にケーシングとドリルシャフトとの共回りを確実に阻止することができるが、阻止鍔部は孔壁に食い込み過ぎて削孔負荷が増大する。
【0023】
したがって、前記阻止鍔部の高さを、前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の0.5〜2倍の範囲に設定することで、削孔負荷にならず、ケーシングとドリルシャフトとの共回りを確実に阻止することができる。
【0024】
なお、前記阻止鍔部の高さの範囲は、削孔する地質に応じた高さに設定するとしてもよく、例えば、孔壁の崩壊性が低い粘土質を削孔する場合は、阻止鍔部がドリルヘッドの回転軌跡の外側に突出するように上記範囲のうち1.5〜2倍の範囲に設定し、孔壁の崩壊性が高い砂質層の場合、阻止鍔部がドリルヘッドの回転軌跡の外側に突出しないように上記範囲のうち0.5〜1倍の範囲に設定することができる。
【0025】
また、この発明の態様として、前記ドリルシャフト内部に、前記ドリルヘッド付近から噴出させる流体材を送出する流体用配管を備え、前記ケーシングより上方の前記ドリルシャフト外面に、径方向に突出する撹拌翼を備えることができる。
【0026】
前記流体材は、セメントミルクのような固化用流体材や、ベントナイト液のような孔壁安定用の流体材とすることができる。
この発明の構成により、ドリルヘッド付近から流体材を噴出させ、ケーシングより上方のドリルシャフト外面に備えた撹拌翼で掘削土砂と流体材とを効率よく撹拌して混合することができる。
【0027】
また、この発明は、自走式のクレーン車と、該クレーン車の伸縮ブームの先端に備えた回転駆動装置と、該回転駆動装置に上端が接続されたドリルシャフトの下端にドリルヘッドを備えたアースドリルとで構成する杭打ち機であって、前記ドリルヘッドの上方に、前記ドリルシャフトに対して回転自在に固定された中空のケーシングを備え、前記ドリルシャフトにおける前記ケーシングに対向する部分、及び前記ケーシングにおける前記ドリルシャフトに対向する部分のうち少なくとも一方に、他方に向かって伸びる撹拌翼を備えるとともに、前記ドリルシャフトに対する前記ケーシングの共回りを阻止する共回り阻止手段を備えたことを特徴とする。
【0028】
前記自走式のクレーン車は、ホイールクレーン、トラッククレーンあるいはクローラクレーンとすることができる。
この発明の構成により、クレーン車で削孔箇所に近接し、高精度で削孔し、杭を造成することができる。
【0029】
詳しくは、クレーン車の伸縮ブームの先端に、ドリルシャフトの上端を接続する回転駆動装置を備えているため、例えば、狭隘な場所での杭造成施工であっても、アースドリルの削孔方向を上端で案内するリーダを要しないクレーン車で削孔箇所に近接し、削孔することができる。
【0030】
このとき、例えば、削孔箇所に礫が埋まっていたり、強度が一様でない地盤を削孔する場合であっても、ドリルヘッドの上方に備えたケーシングが孔壁によって位置規制されるため、削孔方向を保持して高精度で削孔することができる。
したがって、例えば、狭隘な場所での杭造成施工であっても、クレーン車で削孔箇所に近接し、高精度で削孔し、杭を造成することができる。
【0031】
また、前記ドリルシャフトにおける前記ケーシングに対向する部分、及び前記ケーシングにおける前記ドリルシャフトに対向する部分のうち少なくとも一方に、他方に向かって伸びる撹拌翼を備えるとともに、前記ドリルシャフトに対する前記ケーシングの共回りを阻止する共回り阻止手段を備えたことにより、回転して削孔するアースドリルに対してケーシングが相対回転し、中空のケーシング内にある掘削土砂を撹拌翼で撹拌することができる。
【0032】
したがって、例えば、ドリルヘッドによって掘削された掘削土砂がケーシング内部で圧密され、ドリルシャフトを締め付ける等のアースドリルの回転に支障をきたすことを防止できる。
【0033】
この発明の態様として、前記ドリルシャフト内部に、前記ドリルヘッド付近から噴出させる固化流体材を送出する固化流体用配管を備え、前記ケーシングより上方の前記ドリルシャフト外面に、径方向に突出する撹拌翼を備えるとともに、前記ケーシングの外径を、前記ドリルヘッドの径より小さく形成し、前記共回り阻止手段を、前記ケーシングの外周面において、前記ドリルシャフトの軸方向に平行に配設し、径外側方向に突出する阻止鍔部で構成するとともに、該阻止鍔部の高さを、前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の0.5〜2倍の範囲に設定することができる。
【0034】
この発明の構成により、材質や強度にムラのない高品質の杭を造成することができる。
詳しくは、前記ケーシングの外周面において、前記ドリルシャフトの軸方向に平行に配設し、径外側方向に突出する阻止鍔部を備えたことにより、ドリルシャフトに対して回転自在に接続されたケーシングの外周面に形成した阻止鍔部が孔壁に引っかかるため、ケーシングとドリルシャフトとの共回りを確実に阻止することができる。
【0035】
また、前記ケーシングの外径を、前記ドリルヘッドの径より小さく形成するとともに、前記阻止鍔部の高さを、前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の0.5〜2倍の範囲に設定したことで、ドリルヘッドの上方にケーシングを備えたことによる削孔負荷の増大を抑制することができる。
【0036】
また、前記阻止鍔部の高さを、前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の0.5〜2倍の範囲に設定することで、削孔負荷にならず、適度に孔壁に阻止鍔部を食い込ませて係止させて、ケーシングとドリルシャフトとの共回りを確実に阻止することができる。
【0037】
また、前記ドリルシャフト内部に、前記ドリルヘッド付近から噴出させる固化流体材流体材を送出する固化流体材流体用配管を備え、前記ケーシングより上方の前記ドリルシャフト外面に、径方向に突出する撹拌翼を備えたことにより、ドリルヘッド付近から固化流体材を噴出させ、ケーシングより上方のドリルシャフト外面に備えた撹拌翼で掘削土砂と固化流体材とを確実に撹拌し、材質や強度にムラのない高品質の杭を造成することができる。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、例えば、リーダを備えない杭打ち機を用い、削孔箇所に礫が埋まっていたり、強度が一様でない地盤を削孔する場合であっても、高精度で削孔することのできるアースドリル及び杭打ち機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】アースドリルを装着したリーダレス杭打ち機の側面図。
【図2】アースドリルのケーシング部の付近の拡大正面図及び拡大断面図による説明図。
【図3】アースドリルのケーシング部の付近の拡大斜視図による説明図。
【図4】ケーシングの拡大横断面図。
【図5】杭の造成方法についての説明図。
【図6】アースドリルのケーシングによる削孔精度向上についての説明図。
【図7】別の実施形態のケーシング部についての説明図。
【図8】別の実施形態のケーシング部についての説明図。
【図9】アースドリルを装着した別の実施形態のリーダレス杭打ち機の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
図1はアースドリル10を装着したリーダレス杭打ち機1の側面図を示し、図2はアースドリル10のケーシング部30の付近の説明図を示している。詳しくは、図2(a)はアースドリル10のケーシング部30の付近の拡大正面図を示し、図2(b)はアースドリル10のケーシング部30の付近の拡大縦断面図を示している。
【0041】
また、図3はアースドリル10のケーシング部30の付近の拡大斜視図による説明図を示し、図4はケーシング30の高さ方向中央付近の拡大横断面図を示している。詳しくは、図3(a)はケーシング30の前側半分を透過可能に点線で表した拡大斜視図を示し、図3(b)はケーシング30内部を点線で表した拡大斜視図を示している。
図5は杭の造成方法についての説明図を示し、図6はアースドリル10のケーシング30による削孔精度向上についての説明図を示している。
【0042】
リーダレス杭打ち機1は、図1に示すように、車輪3により自走可能なホイールクレーン1aの伸縮ブーム2の先端に、回転駆動装置4を介してアースドリル10を吊下方式で接続した杭打ち機である。
【0043】
なお、回転駆動装置4は、運転席5からの操作に回転方向や回転速度を操作できる構成である。また、回転駆動装置4は、後述するアースドリル10の中心に配設したセメントミルク配管50(図2)に回転自在に接続できるスイベル機能を備えている。
【0044】
伸縮ブーム2の先端から、回転駆動装置4を介して、自重により鉛直方向に吊下げられるアースドリル10は、ドリルシャフト20の下端に備えたドリルヘッド40と、該ドリルヘッド40の上部に位置し、ドリルシャフト20に対して自在に装着されたケーシング30とで構成している。
【0045】
ドリルシャフト20は、ドリルヘッド40の幅Wの1/4程度の直径を有する円柱形であり、内部にドリルヘッド40の先端から噴出させるセメントミルクを搬送するためのセメントミルク配管50を配置している。
そして、外周には、高さ方向に所定間隔を隔てて複数配置するシャフト側撹拌翼21を備えている。
【0046】
シャフト側撹拌翼21は、ケーシング30の内周面に対して隙間を確保できる長さで径外側方向に突出する直方体形状であり、2本のシャフト側撹拌翼21がドリルシャフト20を挟んで対向する位置で直線上に並ぶように配置している。そして、2本のシャフト側撹拌翼21が並ぶ直線方向が、高さ方向に隔てた上下の2本のシャフト側撹拌翼21が並ぶ直線方向と直交するように配置している。
【0047】
ケーシング30は、ドリルヘッド40の幅Wよりわずかに小さな直径Rを有し、厚みtの中空の円柱形で形成している(図4参照)。ケーシング30の下端部は、ドリルヘッド40の上端部分より下側に位置する構成である。
【0048】
ケーシング30は、ケーシング30の外側と内側とを連通する正面視略四角形の矩形開口31と、周方向に隣り合う矩形開口31の間の外周面には、高さ方向に長い係止リブ32を備えている。
【0049】
また、ケーシング30の内面側には、高さ方向に隔てて配置したシャフト側撹拌翼21の高さ方向の間に位置し、径内側に向かって突出するケーシング側撹拌翼33を備えている。さらに、ケーシング30の内周面の上下端部付近には、ドリルシャフト20に対して回転自在で、高さ方向位置を拘束した状態で接続する自在固定具34を備えている。
【0050】
正面視略四角形の矩形開口31は、周方向に等間隔で4カ所配置し、高さ方向に等間隔で3列分配置し、全部で12カ所に配置している。
係止リブ32は、ケーシング30の高さの9割程度の長さに形成し、外周面における周方向に隣り合う矩形開口31の間にそれぞれ配置している。なお、係止リブ32の上下端は、面取されてテーパー形状となっているが、上下端以外の部分は、ケーシング30の厚みt(図4参照)と同程度に径外側に突出する突出高さhの略半円断面形状で形成している。
【0051】
さらに具体的には、係止リブ32の突出高さhは、ドリルヘッド40の幅Wの半分である旋回半径W/2と、ケーシング30の半径r(つまりR/2)との径差Dの0.8倍程度に形成している。
【0052】
また、ケーシング30の内面側において径内側に向かって突出し、高さ方向に隔てて配置したシャフト側撹拌翼21の高さ方向の間に位置するケーシング側撹拌翼33は、ドリルシャフト20の外周面と適宜の間隔を有する径内側向きの直方体形状で形成している。
【0053】
ドリルヘッド40は、ドリルシャフト20の下端に接続された略螺旋形状であり、下部中央には、セメントミルク配管50と連通してセメントミルクを噴出する噴出口41を有するとともに、下端から下方に向かって突出する態様で、幅方向に適宜の間隔を隔てて配置した掘削ビット42を配置している。
【0054】
噴出口41を挟んで両側に配置した掘削ビット42は、削孔断面における径外側を切削する外側ビット42aと、該外側ビット42aから適宜の間隔を隔てて中心側に配置した内側ビット42bとで構成している。
【0055】
なお、内側ビット42bは、外側ビット42aより下方に突出するとともに、下方が径内側を向くように、径方向に対して交差する方向で装備されている。このように構成しているため、ドリルシャフト20の回転により掘削ビット42で略全面を切削することができる。
【0056】
上述のように構成したアースドリル10であるが、ドリルヘッド40とドリルシャフト20とは図示省略する脱着手段で脱着可能に構成されている。また、下端にドリルヘッド40を接続し、その上方にケーシング30を装着したドリルシャフト20の上方に、シャフト側撹拌翼21を外周に備え、中心にセメントミルク配管50を有するドリルシャフトを図示省略する脱着手段で接続してアースドリル10を延長できる構成である。
【0057】
続いて、このように構成したアースドリル10を装備したリーダレス杭打ち機1での杭造成方法について説明する。
上述したように、回転駆動装置4を介して伸縮ブーム2の先端にアースドリル10を接続したリーダレス杭打ち機1を自走させて杭造成箇所Aに近づき、アースドリル10が杭造成箇所Aの直上となるように伸縮ブーム2の伸縮及び起伏を調整する。
【0058】
この状態で、アースドリル10を回転駆動装置4で回転させ、伸縮ブーム2を倒すとともに縮めていき、杭造成箇所Aを削孔する(図5(a)参照)。そして、アースドリル10が杭の造成長に達するまで削孔を続けるが、アースドリル10の長さが杭の造成長に対して短い場合は、アースドリル10を継いで造成長に達するまで削孔する(図5(b)参照)。
【0059】
このとき、図6に示すように、例えば、削孔箇所に大きな礫Brが出現した場合、ドリルヘッド40は硬い礫Brを避ける方向に削孔方向が逃げる惧れがある。
詳しくは、図6(b)に示すように、外周面にシャフト側撹拌翼21を備え、先端にドリルヘッド40を備えた従来のドリルシャフトの場合、シャフト側撹拌翼21が形成されていないドリルシャフト面と孔壁aとの間に大きな隙間ができ、孔壁に対してアースドリルの位置が動きやすくなる。
したがって、削孔方向の一部に礫Brが出現すると、ドリルシャフト20は礫Brを避ける方向Eに逃げることとなり、削孔精度が低下する。
【0060】
これに対し、図6(a)に示すように、ドリルヘッド40の上方に、幅Wよりわずかに小さな径のケーシング30を備えたことにより、孔壁aとケーシング30外周面との隙間が少なく、削孔箇所に大きな礫Brが出現した場合であっても、ドリルヘッド40が硬い礫Brを避ける方向Eに逃げようとしてもケーシング30の外周面が孔壁aに当接する。
【0061】
したがって、削孔箇所に大きな礫Brが出現した場合であっても、ケーシング30が孔壁aに当接することによって位置規制されたドリルヘッド40が硬い礫Brを避ける方向Eに逃げることなく、礫Brごと削孔し、削孔精度を確保することができる。
【0062】
なお、上記説明においては、削孔方向に大きな礫Brが出現してドリルヘッド40がドリルヘッド40を避ける方向に逃げることを防止することについて説明したが、逆に、削孔方向に一部に極端に強度の弱い軟弱部が出現した場合も同様に削孔精度を確保することができる。
【0063】
詳しくは、従来のドリルシャフトの場合、削孔方向の一部に軟弱部が出現すると、ドリルシャフト20の削孔方向は軟弱部に引き寄せられるが、アースドリル10の場合、軟弱部に引き寄せられそうになってもケーシング30の外周面が孔壁aに当接して、削孔精度を確保することができる。
【0064】
また、このアースドリル10による杭造成箇所Aの削孔における掘削土砂は、ケーシング30内部で相対回転するケーシング側撹拌翼33とシャフト側撹拌翼21によって攪拌され、十分にほぐされる。
【0065】
詳しくは、ケーシング30の係止リブ32が孔壁aに食い込むため、孔壁aによって回転固定され、ケーシング30とドリルシャフト20と相対回転する。したがって、ケーシング30内部では、回転固定されたケーシング30のケーシング側撹拌翼33が固定撹拌翼として機能し、回転するドリルシャフト20のシャフト側撹拌翼21とによって掘削土砂が攪拌され、十分にほぐされる。
【0066】
さらに、ケーシング30より上方のシャフト側撹拌翼21によって攪拌されるため、杭造成箇所A内の掘削土砂はほぐされた状態を維持することができる。したがって、掘削土砂が圧密されることでドリルシャフト20の周面を締めつけ、いわゆる掘削土砂にドリルシャフト20が食われた状態となって削孔不能となることを防止することができる。
【0067】
また、例えば、アースドリル10による削孔において、ベントナイトをセメントミルク配管50を介して噴出口41から噴出させながら削孔する場合においては、噴出したベントナイト液と掘削土砂を、回転固定されたケーシング30のケーシング側撹拌翼33と、回転するドリルシャフト20のシャフト側撹拌翼21とによって攪拌してかき混ぜ、均一な状態を確保することができる。
【0068】
また、ケーシング30に複数の矩形開口31を配置したことにより、均一な状態にかき混ぜたベントナイト液と掘削土砂が矩形開口31を介して孔壁aを押し付けるため、孔壁安定性を確保することができる。
【0069】
この状態で、杭の造成長に達するまでの削孔が完了すると、セメントミルクを、セメントミルク配管50を介して噴出口41から噴出させ、アースドリル10を回転しながら引き上げて(図5(c)参照)、掘削土砂とセメントミルクとをかき混ぜ、均一な状態の杭を造成する。
【0070】
詳しくは、上述したように、ケーシング30の係止リブ32が孔壁aに食い込んで、孔壁aによって回転固定されたケーシング30とドリルシャフト20と相対回転する。したがって、ケーシング30内部では、回転固定されたケーシング30のケーシング側撹拌翼33と、回転するドリルシャフト20のシャフト側撹拌翼21とによって掘削土砂とセメントミルクとを攪拌し、十分にかき混ぜて、均一な混合状態の杭を造成することができる。
【0071】
さらに、ケーシング30より上方のシャフト側撹拌翼21によって掘削土砂を攪拌しながらアースドリル10を引き上げるため、杭造成箇所A内の掘削土砂をほぐされた状態で維持することができ、引き上げながら噴出口41から噴射するセメントミルクとほぐされた状態の掘削土砂とを撹拌して混合することができる。
【0072】
このようにして、アースドリル10を装備したリーダレス杭打ち機1を用いることにより、アースドリル10で高精度で杭造成箇所Aを削孔することができる。また、高精度で削孔した孔内を掘削土砂とセメントミルクとを確実に混合し、ムラのない、均質な杭を造成することができる。
【0073】
なお、上記実施例では、掘削土砂とセメントミルクとを混合して杭を造成したが、高精度で削孔した孔内にセメントミルクを注入して既成杭を建て込んで杭を造成してもよい。この場合においても、アースドリル10を装備したリーダレス杭打ち機1は高精度で削孔できるため、例えば削孔精度が悪く建て込む既成杭が高留まりすることなく、確実に建て込むことができる。
【0074】
なお、上記説明においては、係止リブ32の突出高さhをドリルヘッド40の幅Wの半分である旋回半径W/2と、ケーシング30の半径r(つまりR/2)との径差Dの0.8倍程度に形成したが、係止リブ32の突出高さhを削孔する地質に応じた高さに設定するとしてもよい。
【0075】
詳しくは、例えば、孔壁aの崩壊性が低い粘土質を削孔する場合は、係止リブ32がドリルヘッド40の回転軌跡の外側に突出するように上記径差Dの1.5〜2倍の範囲に設定し、孔壁aの崩壊性が高い砂質層を削孔する場合、係止リブ32が掘削ビット42の回転軌跡の外側に突出しないように上記径差Dのうち0.5〜1倍の範囲に設定してもよい。
【0076】
さらには、上記実施例では、係止リブ32を、ケーシング30の外周の4方向にケーシング30の長さの9割程度の長さに形成したが、例えば、図7に示すように、ケーシング30の長さの1/4程度の長さの係止リブ32aを対向方向の2箇所に配置し、高さ方向に隣り合う係止リブ32aの配設方向を直交する方向にしてもよい。
【0077】
さらにまた、図8に示すように、ケーシング30の長さの1/4程度の長さに形成し、4方向に配設した係止リブ32bのうち対向方向の2つの高さを直交方向の他の2つに比べて高く形成してよく、さらに、高さ方向に隣り合う係止リブ32bにおいて他に比べて高い係止リブ32bの配設方向を直交する方向となるように配設してもよい。
【0078】
このように、係止リブ32の長さや、突出高さhを調整することで、係止リブ32が、削孔負荷を増大させることなく、適度に孔壁aに食い込んでドリルシャフト20に対する共周りを確実に防止することができる。
【0079】
したがって、回転固定されたケーシング30のケーシング側撹拌翼33と、回転するドリルシャフト20のシャフト側撹拌翼21とによって掘削土砂とセメントミルクとを攪拌し、十分にかき混ぜて、均一な混合状態の杭を造成することができる。
【0080】
また、アースドリル10を装着したリーダレス杭打ち機1’の側面図である図9に示すように、キャタピラ3’により自走可能なクローラクレーン1bの伸縮ブーム2’の先端に、回転駆動装置4を介してアースドリル10を吊下方式で接続した杭打ち機であってもよい。
【0081】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、撹拌翼はシャフト側撹拌翼21及びケーシング側撹拌翼33に対応し、
以下同様に、
共回り阻止手段及び阻止鍔部は、係止リブ32に対応し、
ケーシングの外径は、直径Rに対応し、
ドリルヘッドの径は、旋回半径W/2に対応し、
阻止鍔部の高さは、突出高さhに対応し、
差は、径差Dに対応し、
流体材は、セメントミルクやベントナイト液に対応し、
流体用配管は、セメントミルク配管50に対応し、
クレーン車は、ホイールクレーン1aやクローラクレーン1bに対応し、
杭打ち機は、リーダレス杭打ち機1に対応するも上記実施形態に限定するものではない。
【0082】
例えば、上記実施形態においてアースドリル10は、ケーシング30の内側もケーシング30より上方も、外周にシャフト側撹拌翼21を備えたドリルシャフト20を用いたが、ケーシング30の内側にシャフト側撹拌翼21を備え、ケーシング30より上方のドリルシャフト20の外周にはスパイラル羽根を備えたスパイラルドリルを用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1,1’…リーダレス杭打ち機
1a…ホイールクレーン
1b…クローラクレーン
2…伸縮ブーム
4…回転駆動装置
10…アースドリル
20…ドリルシャフト
21…シャフト側撹拌翼
30…ケーシング
32,32a,32b…係止リブ
33…ケーシング側撹拌翼
40…ドリルヘッド
50…セメントミルク配管
D…径差
h…突出高さ
R…直径
W/2…旋回半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドリルシャフトの下端にドリルヘッドを備えたアースドリルであって、
前記ドリルヘッドの上方に、前記ドリルシャフトに対して回転自在に固定された中空のケーシングを備え、
前記ドリルシャフトにおける前記ケーシングに対向する部分、及び前記ケーシングにおける前記ドリルシャフトに対向する部分のうち少なくとも一方に、他方に向かって伸びる撹拌翼を備えるとともに、
前記ドリルシャフトに対する前記ケーシングの共回りを阻止する共回り阻止手段を備えた
アースドリル。
【請求項2】
前記共回り阻止手段を、
前記ケーシングの外周面において、前記ドリルシャフトの軸方向に平行に配設し、径外側方向に突出する阻止鍔部で構成した
請求項1に記載のアースドリル。
【請求項3】
前記ケーシングの外径を、前記ドリルヘッドの径より小さく形成するとともに、
前記阻止鍔部の高さを、
前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の0.5〜2倍の範囲に設定した
請求項1又は2に記載のアースドリル。
【請求項4】
前記ドリルシャフト内部に、前記ドリルヘッド付近から噴出させる流体材を送出する流体用配管を備え、
前記ケーシングより上方の前記ドリルシャフト外面に、径方向に突出する撹拌翼を備えた
請求項1から3のうちいずれかに記載のアースドリル。
【請求項5】
自走式のクレーン車と、該クレーン車の伸縮ブームの先端に備えた回転駆動装置と、該回転駆動装置に上端が接続されたドリルシャフトの下端にドリルヘッドを備えたアースドリルとで構成する杭打ち機であって、
前記ドリルヘッドの上方に、前記ドリルシャフトに対して回転自在に固定された中空のケーシングを備え、
前記ドリルシャフトにおける前記ケーシングに対向する部分、及び前記ケーシングにおける前記ドリルシャフトに対向する部分のうち少なくとも一方に、他方に向かって伸びる撹拌翼を備えるとともに、
前記ドリルシャフトに対する前記ケーシングの共回りを阻止する共回り阻止手段を備えた
杭打ち機。
【請求項6】
前記ドリルシャフト内部に、前記ドリルヘッド付近から噴出させる流体材を送出する流体用配管を備え、
前記ケーシングより上方の前記ドリルシャフト外面に、径方向に突出する撹拌翼を備えるとともに、
前記ケーシングの外径を、前記ドリルヘッドの径より小さく形成し、
前記共回り阻止手段を、
前記ケーシングの外周面において、前記ドリルシャフトの軸方向に平行に配設し、径外側方向に突出する阻止鍔部で構成するとともに、
該阻止鍔部の高さを、前記ケーシングの外径と、前記ドリルヘッドの径との差の0.5〜2倍の範囲に設定した
請求項5に記載の杭打ち機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−270515(P2010−270515A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123804(P2009−123804)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(309012306)
【Fターム(参考)】