説明

アースドリル

【課題】簡単な構造で、施工中にケリーバが過度に上昇することを確実に防止することができるアースドリルを提供する。
【解決手段】ブーム12の先端側から垂下したワイヤーロープ15に回転可能かつ昇降可能に吊持されたケリーバ17と、本体11に設けられたアーム18に支持されてケリーバ17を昇降可能に挿通した状態でケリーバを回転駆動するケリーバ駆動装置19とを備え、ケリーバ駆動装置19から下方に突出したケリーバ17の下端部に掘削バケット20を着脱可能に装着する。ケリーバ駆動装置19の下部に、ケリーバ17が上昇限に達する前に掘削バケット20の上部に当接してケリーバ17の上昇を防止する上部ストッパ部材22を着脱可能に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースドリルに関し、詳しくは、ケリーバが過度に上昇することを防止するストッパ部材を備えたアースドリルに関する。
【背景技術】
【0002】
本体に起伏可能に設けられたブームの先端側から垂下したワイヤーロープに回転可能かつ昇降可能にケリーバを吊持したアースドリルでは、ワイヤーロープの過巻によってケリーバが過度に上昇しないように、運転者が運転席から目視によって確認するようにしているが、ブームの先端にワイヤーロープの過巻警報を行う過巻警報装置を設けたパイプレーヤが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2000−211891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、前記過巻警報装置は構造が複雑でコストがかかり、また、アースドリルでは、ケリーバを吊るワイヤーロープが一本であるため、施工中に掘削バケットを地面にあずけると、ケリーバを吊り下げたワイヤーロープがねじれたり撓んだりして、ワイヤーロープが検出用ワイヤに絡んで過巻警報装置が誤作動することがあった。
【0004】
また、アースドリルでは、長さの異なるケリーバやブームを用いて施工したり、ブームの角度を変えて施工したりすることが行われているが、例えば、通常よりも長いケリーバを使用した場合、ケリーバ駆動装置あるいはロータリーテーブルの下方に突出したケリーバの状態だけを確認していると、ケリーバの上端がブームに衝突し、ブームなどが破損する虞があった。このため、ケリーバの上端位置を確認する必要が生じるが、大型のアースドリルでは運転席から目視で確認することが極めて困難であった。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造で、ケリーバが過度に上昇することを確実に防止することができるアースドリルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のアースドリルにおける第1の構成は、本体に設けられたブームの先端側から垂下したワイヤーロープに回転可能かつ昇降可能に吊持されたケリーバと、前記本体に設けられたアームに支持されて前記ケリーバを昇降可能に挿通した状態でケリーバを回転駆動するケリーバ駆動装置とを備え、該ケリーバ駆動装置から下方に突出したケリーバの下端部に掘削手段を着脱可能に装着したアースドリルにおいて、前記ケリーバ駆動装置の下部に、前記ケリーバが上昇限に達する前に前記掘削手段の上部に当接して前記ケリーバの上昇を防止する上部ストッパ部材を着脱可能に取り付けたことを特徴とし、前記ケリーバ駆動装置の下部に前記ケリーバの外周側に配置されるブラケット部材を設け、該ブラケット部材に前記上部ストッパ部材を着脱可能に連結するとともに、前記ブラケット部材と前記上部ストッパ部材との連結部を上下多段に設けると好適である。
【0007】
また、本発明のアースドリルにおける第2の構成は、前記ケリーバの下部に、該ケリーバが上昇限に達する前に、前記ケリーバ駆動装置の下部、又は、該ケリーバ駆動装置の下部に装着されたロータリーテーブルの下部、又は、該ケリーバ駆動装置の下部に装着された上部ストッパの下部に当接して前記ケリーバの上昇を防止する下部ストッパ部材を着脱可能に取り付けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアースドリルによれば、掘削手段やブーム、ケリーバを用途に応じて付け替えて施工する場合でも、ケリーバ駆動装置の下部に取り付けられた上部ストッパ部材に掘削手段が当接する前にワイヤーロープの巻き取りを停止させることにより、ケリーバの過度の上昇を防止できる。また、掘削手段が上部ストッパ部材に当接したとしても、ケリーバがそれ以上は上昇しないので、ケリーバがブームに衝突してブームなどが破損する虞はない。
【0009】
また、ケリーバ駆動装置の下部に設けたブラケット部材と上部ストッパ部材との連結部を上下多段に設けることにより、ブラケット部材の下端から突出する上部ストッパ部材の長さを調節できるので、使用する掘削手段の種類や、ケリーバやブームの長さ及び施工時のブームの角度に応じて、上部ストッパ部材の突出長さを調節でき、ケリーバの上昇限を的確に規制することができる。
【0010】
さらに、ケリーバの下部に下部ストッパ部材を着脱可能に取り付け、下部ストッパ部材がケリーバ駆動装置の下部、ケリーバ駆動装置の下部に装着されたロータリーテーブルの下部、ケリーバ駆動装置の下部に装着された上部ストッパの下部に下部ストッパが当接する前にワイヤーロープの巻き取りを停止させることにより、前記同様に、ケリーバの過度の上昇を防止でき、これらの下部に下部ストッパ部材が当接してもケリーバの上端がブームなどに衝突することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1乃至図5は本発明のアースドリルの第1形態例を示すもので、図1はアースドリルの側面図、図2はケリーバ駆動装置の側面図、図3はケリーバ駆動装置の要部拡大側面図、図4は図3のIV−IV断面図、図5は図1のV−V断面図である。
【0012】
アースドリル10は、自走式の本体11に設けられたブーム12の先端に回動可能に支承されたシーブ13に、ウインチ14からのワイヤーロープ15を巻掛け、このワイヤーロープ15の先端にスイベルジョイント16を介してケリーバ17を回転可能に吊り下げ、ウインチ14でケリーバ17を昇降させるように構成している。また、本体11に支持されたアーム18の先端には、前記ケリーバ17が昇降可能な状態で挿通されるケリーバ駆動装置19が設けられており、該ケリーバ駆動装置19でケリーバ17を回転させるように構成している。さらに、ケリーバ駆動装置19から下方に突出したケリーバ17の下端部には、ケリーバ17と一体に回転し、かつ、昇降する掘削手段として掘削バケット20が装着されている。掘削バケット20は、中空円筒状の土砂収容部20aと、この土砂収容部20aの下方に位置するドリル部20bとを備え、ケリーバ17と一体に回転することにより、ドリル部20bによって地中を掘削し、掘削した土砂を土砂収容部20aに収容しながら掘り進められる。
【0013】
また、ケリーバ駆動装置19の下部には、前記ケリーバ17の外周側に配置される円筒状のブラケット部材21と、該ブラケット部材21に連結される円筒状の上部ストッパ部材22とが設けられている。ブラケット部材21は、ケリーバ駆動装置19の下端部に固設され、内周側にケリーバ17が挿通される。ブラケット部材21の周壁には軸方向に所定の間隔を開けて上下3段に上部ストッパ部材22の連結部21aが設けられ、各連結部21aには、中心軸と直交する同一平面上に3つの連結孔21bが周方向に等間隔に形成されている。
【0014】
上部ストッパ部材22は、前記ブラケット部材21の外径よりも大きな内径を有するもので、周壁上部側の中心軸と直交する同一平面上に3つの係止孔22aが形成されている。上部ストッパ部材22は、内周に前記ブラケット部材21の下部を挿入し、ブラケット部材21に形成した上下3段の連結部21aの何れかと、係止孔22aとの位置を合わせて係止孔22aから連結孔21bに係合部材23をそれぞれ差し込むことにより、ブラケット部材21に連結され、上下3段の連結部21aを適宜選択することにより、ブラケット部材21から下方に突出する上部ストッパ部材22の突出長さを調節することができる。
【0015】
上部ストッパ部材22は、掘削バケット20を上昇させる際に、運転者が運転席からの目視により、掘削バケット20の上部が上部ストッパ部材22の下端部に当接する前にワイヤーロープ15の巻き取りを停止することにより、ワイヤーロープ15の過巻を防止し、ケリーバ17の上端がブーム12に衝突することを防止する。また、ワイヤーロープ15の巻き取りを停止するタイミングが遅れて掘削バケット20の上部が上部ストッパ部材22の下端部に当接した場合でも、両者の当接によってケリーバ17がそれ以上上昇することを規制することができ、ワイヤーロープ15の過巻を確実に防止することができる。
【0016】
ブラケット部材21から突出させる上部ストッパ部材22の長さは、使用する掘削手段の種類、使用するケリーバ17やブーム12の長さ、施工時のブーム12の角度などを考慮して適宜設定すればよい。さらに、ブラケット部材21、上部ストッパ部材22及び係合部材23の強度を適切に設定することにより、掘削バケット20が上部ストッパ部材22に当接したときにワイヤーロープ巻取用油圧回路の保護機能を作動させてワイヤーロープの巻き取りを自動的に停止させることができる。
【0017】
上述のように形成されたアースドリル10では、施工時にケリーバ17を地面に対して垂直に設置し、ウインチ14からワイヤーロープ15を巻出し、ワイヤーロープ15に吊り下げられたケリーバ17を下降させるとともに、ケリーバ駆動装置19によってケリーバ17を回転させることにより、掘削バケット20のドリル部20bで地中を掘削し、掘削した土砂を土砂収容部20a内に収容しながら掘り進める。
【0018】
土砂収容部20a内に土砂が所定量収容されると、ワイヤーロープ15を巻き取ってケリーバ17を吊り上げ、掘削バケット20を所定の位置まで上昇させて土砂収容部20a内の土砂を排出した後、再び、掘削作業を再開する。このとき、掘削バケット20の上昇限は、掘削バケット20と前記上部ストッパ部材22との距離により、運転席から運転者が目視によって容易に確認することができることから、掘削バケット20を過度に上昇させてしまい、ケリーバ17上端との衝突によってブーム12の先端やシーブ13、スイベルジョイント16などが破損することを確実に防止できる。
【0019】
また、ケリーバ17の下部に下部ストッパ部材24を取り付けておくこともできる。この下部ストッパ部材24は、半円弧状の一対の部材からなるもので、ケリーバ17を抱持してボルト止めされる抱持部24aと、該抱持部24aの上部に設けられた鍔部24bとを有している。このような下部ストッパ部材24をケリーバ17の下部で、ケリーバ17が上昇限に達する前に、前記上部ストッパ部材22に当接する位置に設けておくことにより、掘削バケット20が上部ストッパ部材22に勢いよく衝突して掘削バケット20が破損してしまうことを防止できる。
【0020】
なお、前記下部ストッパ部材24を取り付けた場合、前記上部ストッパ部材22を取り付けずに下部ストッパ部材24がケリーバ駆動装置19の下部に当接するようにしてもよく、下部ストッパ部材24を上部ストッパ部材22と同様の円筒状に形成することもできる。
【0021】
図6は本発明の第2形態例を示すアースドリルの側面図であって、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、それぞれ同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0022】
第2形態例は、第1形態例のアースドリルに用いられたブームを短いブーム31に付け替えるとともに、第1形態例よりもブーム31を前方に倒した状態で、第1形態例と同じ長さのケリーバ17を使用して掘削施工する際の状態を示している。本形態例で使用している上部ストッパ部材22は、第1形態例よりも長いものであり、ブラケット部材21には、上部ストッパ部材22の突出長さ調整機能を備えていないものを使用している。このように、施工状況に応じて設定された長さを有する上部ストッパ部材22を使用することによっても、前記第1形態例と同じ作用効果を得ることができる。また、本形態例においても、前記同様に、ケリーバ17の下部に下部ストッパ部材24を取り付けておくことができる。
【0023】
なお、ブラケット部材21をケリーバ駆動装置19の下部に取り付ける手段は任意であり、例えば、ブラケット部材21の上端外周にフランジを周設し、このフランジをボルトにてケリーバ駆動装置19の下面に着脱可能に固定する構造を採用することができる。また、ブラケット部材21を介さずに、上部ストッパ部材22の上端部をケリーバ駆動装置19の下部に直接固定することも可能である。
【0024】
図7乃至図9は本発明の第3形態例を示すアースドリルの側面図である。本形態例は、ケリーバ17の下端部に拡底バケット41を装着した例を示している。このように、拡底バケット41を装着する際には、ケリーバ駆動装置19の下方に、拡底バケット41の拡底翼41aを開閉するためのシリンダなどに作動液を給油する複数の油圧ホース42が配設されたロータリーテーブル43がケリーバ17と一体に回転する状態で設けられる。
【0025】
このように、拡底バケット41及びロータリーテーブル43を使用して施工する際には、前記第1形態例に示したような下部ストッパ部材24を取り付けてもよいが、ロータリーテーブル43から拡底バケット41に接続される油圧ホース42を保持するホース保持部材44を下部ストッパ部材として利用することができる。このホース保持部材44はケリーバ17下端部の角軸部に嵌合する嵌合部44aと、ホース保持部44bをそれぞれ有する複数のホース保持片44cとで形成されており、ケリーバ17を上昇させたときに、ケリーバ17がブーム12に衝突する前にホース保持部材44がロータリーテーブル43の下部に当接する状態になる。したがって、拡底バケット41による施工を行う際には、拡底バケット41とロータリーテーブル43とが運転者が容易に目視可能な位置にあるため、通常は両者の間隔を目視することでワイヤーロープ15の巻き取りを停止させればよいが、誤ってワイヤーロープ15を巻き取り過ぎた場合でも、ホース保持部材44がロータリーテーブル43の下部に当接してケリーバ17の上昇を防止してブーム12などを保護することができるとともに、拡底バケット41とロータリーテーブル43とが直接衝突して両者が破損することも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1形態例を示すアースドリルの側面図である。
【図2】同じくケリーバ駆動装置の側面図である。
【図3】同じくケリーバ駆動装置の要部拡大側面図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】図1のV−V断面図である。
【図6】本発明の第2形態例を示すアースドリルの側面図である。
【図7】本発明の第3形態例を示すアースドリルの側面図である。
【図8】要部の正面図である
【図9】図8のIX−IX断面図である
【符号の説明】
【0027】
10…アースドリル、11…本体、12…ブーム、13…シーブ、14…ウインチ、15…ワイヤーロープ、16…スイベルジョイント、17…ケリーバ、18…アーム、19…ケリーバ駆動装置、20…掘削バケット、20a…土砂収容部、20b…ドリル部、21…ブラケット部材、21a…連結部、21b…連結孔、22…上部ストッパ部材、22a…係止孔、23…係合部材、24…下部ストッパ部材、31…ブーム、41…拡底バケット、41a…拡底翼、42…油圧ホース、43…ロータリーテーブル、44…ホース保持部材、44a…嵌合部、44b…ホース保持部、44c…ホース保持片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に設けられたブームの先端側から垂下したワイヤーロープに回転可能かつ昇降可能に吊持されたケリーバと、前記本体に設けられたアームに支持されて前記ケリーバを昇降可能に挿通した状態でケリーバを回転駆動するケリーバ駆動装置とを備え、該ケリーバ駆動装置から下方に突出したケリーバの下端部に掘削手段を着脱可能に装着したアースドリルにおいて、前記ケリーバ駆動装置の下部に、前記ケリーバが上昇限に達する前に前記掘削手段の上部に当接して前記ケリーバの上昇を防止する上部ストッパ部材を着脱可能に取り付けたことを特徴とするアースドリル。
【請求項2】
前記ケリーバ駆動装置の下部に前記ケリーバの外周側に配置されるブラケット部材を設け、該ブラケット部材に前記上部ストッパ部材を着脱可能に連結するとともに、前記ブラケット部材と前記上部ストッパ部材との連結部を上下多段に設けたことを特徴とする請求項1記載のアースドリル。
【請求項3】
本体に設けられたブームの先端側から垂下したワイヤーロープに回転可能かつ昇降可能に吊持されたケリーバと、前記本体に設けられたアームに支持されて前記ケリーバを昇降可能に挿通した状態でケリーバを回転駆動するケリーバ駆動装置とを備え、該ケリーバ駆動装置から下方に突出したケリーバの下端部に掘削手段を着脱可能に装着したアースドリルにおいて、前記ケリーバの下部に、該ケリーバが上昇限に達する前に、前記ケリーバ駆動装置の下部、又は、該ケリーバ駆動装置の下部に装着されたロータリーテーブルの下部、又は、該ケリーバ駆動装置の下部に装着された上部ストッパの下部に当接して前記ケリーバの上昇を防止する下部ストッパ部材を着脱可能に取り付けたことを特徴とするアースドリル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−46866(P2009−46866A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213421(P2007−213421)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】