説明

アーチ型気柱及び気柱テント

【課題】 気柱テントの支柱となるアーチ型気柱において、アーチの湾曲方向には滑らかに湾曲することができると共に、その湾曲方向と直角方向には大きな剛性を有し、大きな外力が加わったときにもテントが倒れることのないアーチ型気柱を提供する。
【解決手段】 長さ方向に延びてその長さ方向に伸縮性を有する伸縮性たて糸8と、周方向に延びるよこ糸9とを織成してなる筒状の織布10を二本並設し、当該二本の筒状の織布10を周方向の一部において長さ方向に連続して互いに接合し、各筒状の織布10の内面に気密処理を施して柔軟な二連の気密性筒体5a、5bを形成し、各気密性筒体5a、5bにおける互いに前記接合部6を含む面に対して対称の位置に、長さ方向に伸長抑制手段7を講じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柔軟な気密性筒体を空気圧により膨らませた状態において、アーチ型に湾曲するアーチ型気柱及び、当該アーチ型気柱を骨組みとして当該骨組みに沿ってシートを展張してなる気柱テントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にテントは地面に支柱を立て、その支柱を支えにしてシートを展張してテントを形成するものであるが、長い棒状の支柱を必要とし、不要時に収容したり運搬したりするのに嵩がはって不便なものであった。
【0003】
そこで柔軟な気密性の筒体に圧縮空気を圧入して膨らませて棒状の気柱を形成し、この気柱を組み合わせて骨組みを形成し、その外側にシートを被せてテントとすることが行われている(実開平6-56395号公報)。
【0004】
しかしながらこのものにおいては、筒体に圧縮空気を圧入すると筒体は真っ直ぐな気柱を形成するため、個々の気柱は直線状とならざるを得ず、テントの骨組みを形成するためには、これらの直線状の気柱を接続して所望の形状の骨組みを形成することとなり、その構造は複雑なものとなる。
【0005】
また特開平7-71140号公報には、縦横方向に織成した通常の織布と斜めの糸条を織成したバイアス織布とを両側縁を接合して筒状とし、圧縮空気を圧入したときに斜めの糸条を織成したバイアス織布が伸長して、全体として湾曲した形状の気柱を形成するようにしたものが示されている。
【0006】
しかしながらこのものでは、性状の異なる二枚の織布を接合して筒状とするので、気柱の周方向に少なくとも二箇所の接合部が形成されることとなり、またその接合部は性状の異なる織布を接合するので、加圧時に二枚の織布の挙動が異なるため接合部に大きな力が加わり、接合強度が大幅に低下する可能性がある。
【0007】
このような事情に鑑み出願人は、単一の筒状の織布であって内圧をかけることによりアーチ状に湾曲する気柱テントの支柱となるアーチ型気柱を開発し、先に特願2008−42436号として特許出願している。
【0008】
このものは、伸縮性を有する糸条をたて糸とし、よこ糸に通常の糸条を使用して筒状の織布を織成し、当該筒状の織布の周方向の一部に長さ方向に沿ってテープを貼り付けるなどの伸長抑制手段を講じたものであって、内圧をかけることにより前記たて糸が伸長して長さ方向に伸びると共に、周方向の一部の伸長を伸長抑制手段によって抑制することにより、全体としてアーチ状に湾曲するものである。
【0009】
図1はこの発明による気柱テント1を示すものであって、複数本の前記アーチ型気柱2を並べて圧力流体を送入し、円筒状に膨らませると共に図面に示すようにアーチ状に湾曲させて立設する。そこでこのアーチ状に立設したアーチ型気柱2を複数併設して骨組みとして、その外側に骨組みに沿ってシート3を展張することにより、アーチ型気柱2がシート3を支えて内部に空間を形成し、テントを構築するのである。
【0010】
しかしながらこのアーチ型気柱2では、アーチの湾曲方向に対して直角方向の剛性が十分ではなく、大きい力が作用したときに湾曲したままで直角方向に倒れやすい。そのためテントが強い風で煽られたりシート3に雨水が溜まったりしたときには、テントが倒れてしまう可能性がある。
【特許文献1】実開平6-56395号公報
【特許文献2】特開平7-71140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、前述の気柱テントの支柱となるアーチ型気柱において、アーチの湾曲方向には滑らかに湾曲することができると共に、その湾曲方向と直角方向には大きな剛性を有し、大きな外力が加わったときにもテントが倒れることのないアーチ型気柱を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
而して本発明のアーチ型気柱は、長さ方向に延びてその長さ方向に伸縮性を有する伸縮性たて糸と、周方向に延びるよこ糸とを織成してなる筒状の織布を二本並設し、当該二本の筒状の織布を周方向の一部において長さ方向に連続して互いに接合し、各筒状の織布の内面に気密処理を施して柔軟な二連の気密性筒体を形成し、各気密性筒体における互いに前記接合部を含む面に対して対称の位置に、長さ方向に伸長抑制手段を講じたことを特徴とする、アーチ型気柱
【0013】
本発明のアーチ型気柱においては、前記各筒状の織布が、環状に配置された伸縮性たて糸に対してよこ糸を螺旋状に織り込んで筒状に織成した筒状布であることが好ましい。この場合においては、前記二本の筒状布のよこ糸が、互いに逆方向の螺旋状に織り込まれていることが好ましい。また前記二本の筒状布が、接結たて糸により互いに長さ方向に連続的に接結されることにより接合されていることが好ましい。
また本発明においては、前記各筒状の織布が、伸縮性たて糸とよこ糸とを織成した織布の両側縁を接合して筒状としたものとすることもできる。
【0014】
また本発明においては、前記各気密性筒体が、前記各筒状の織布の少なくとも内面に気密性の内張りを施したものであることが好ましい。また前記各気密性筒体として、伸縮性たて糸とよこ糸とを織成した織布に気密処理を施し、その気密性の織布の両側縁を接合して筒状としたものとすることもできる。
【0015】
また本発明における前記二本の筒状の織布は、互いに縫合することにより接合されているものとすることができる。また前記二本の筒状の織布は、互いに接近した複数箇所において、互いに長さ方向に連続的に接合されていても良い。
【0016】
また本発明における伸長抑制手段としては、前記各筒状の織布の周方向の一部のたて糸として、長さ方向の伸縮性を有しない非伸縮性たて糸を使用することにより、その部分の長さ方向の伸長を抑制することができる。
【0017】
また本発明における伸長抑制手段の他の手段としては、前記各気密性筒体の周方向の一部に、その筒状の織布の長さ方向に沿って、長さ方向の伸縮性を有しない柔軟な伸長抑制部材を添着することにより、その長さ方向の伸張を抑制することもできる。
【0018】
この場合における伸長抑制部材としては、ロープ、紐、ワイヤ、その他の長さ方向に伸張性を有しない紐状物であることが好ましい。さらにその紐状物として、扁平なベルト状であることがより好ましい。
【0019】
また前記伸長抑制部材は、前記気密性筒体における筒状の織布の内面に沿って添着することが好ましい。また伸縮性たて糸とよこ糸とを織成した織布に気密処理を施し、その両側縁を前記伸長抑制部材を介して接合して各気密性筒体を形成することもできる。
【0020】
また本発明における伸長抑制手段として、前記各筒状の織布の周方向の一部にその長さ方向に沿って袋部を形成し、当該袋部内に伸長抑制部材を挿通し、当該伸長抑制部材により伸長を抑制することもできる。
【0021】
この場合において、前記袋部は、前記筒状の織布の周方向の一部に形成された、縦口袋織部とすることが好ましい。また前記各筒状の織布が、伸縮性たて糸とよこ糸とを織成した織布の両側縁を接合して筒状としたものであって、前記織布の両側縁を重ね合わせ、その重ね合わせ部の両側縁を接合して当該接合部の間に袋部を形成することもできる。また前記二本の筒状の織布を互いに接近した複数箇所において接合し、当該接合箇所の間の部分を袋部とすることもできる。
【0022】
また前記各気密性筒体における伸長抑制部材を設ける位置は、各気密性筒体におけるその中心から、両気密性筒体の接合部の中央に向かってほゞ直角方向の位置に設けることが好ましい。
【0023】
また本発明においては、各筒状の織布を部分的に又は全体的に伸張しながら伸張抑制手段を講じることにより、圧力流体送入時の各気密性筒体の湾曲の程度を調節することができる。
【0024】
次に本発明におけるアーチ型気柱の製造方法の発明は、環状に配置された複数の伸縮性たて糸に対してよこ糸を螺旋状に織り込んでなる筒状布を内外二層に織成すると共に、当該二層の筒状布を互いに長さ方向に連続的に接結し、前記二層のうちの外側の筒状布の内外面を反転することにより内側の筒状布を外側の筒状布の外側に出し、二本の筒状布を並列せしめ、その各筒状布の周方向の一部に伸長抑制手段を講じることを特徴とするものである。
【0025】
また本発明の気柱テントは、前述のいずれかに記載したアーチ型気柱に、圧力流体を送入して膨らませると共に湾曲させて、テントの骨組みを形成し、当該骨組みに沿ってシートを展張したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明においては、アーチ型気柱は気密性筒体が二本並設されて接合されており、その各気密性筒体に伸長抑制手段が講じられているので、その二本の気密性筒体の中心を結んだ線に直角方向には容易に湾曲してアーチ型を形成することができると共に、気密性筒体が並んだ方向には高い剛性を示し、湾曲することがない。
【0027】
従って本発明によれば、アーチの湾曲方向にはスムーズに湾曲して滑らかなアーチを形成すると共に、それと直角方向には高い剛性を示し、テントが風雨により倒れることがないのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明を図面に基づいて説明する。図2は本発明のアーチ型気柱4を示すものであって、二本の気密性筒体5a、5bが並列され、当該二本の気密性筒体5a、5bがその周方向の一部において接合部6で接合されて、各気密性筒体5a、5bにおける接合部6を含む面Aに対して対称の位置において、長さ方向に伸長抑制部材7が添着され、気密性筒体5a、5bの伸長が部分的に抑制されている。添着の手段としては、縫製、接着などの手段によることができる。
【0029】
図3はそのアーチ型気柱4の具体的な構造の一例を示すものであって、気密性筒体5a、5bはそれぞれ、長さ方向に伸縮性を有する伸縮性たて糸8と、周方向に延びて伸縮性たて糸8に対して螺旋状に織り込まれたよこ糸9とよりなる筒状布10a、10bを有し、その筒状布10a、10bの内面に気密性の内張り11が施されている。
【0030】
前記伸縮性たて糸8としては、長さ方向に伸縮性を有する糸条を使用する。当該伸縮性たて糸8の素材としては、合成繊維の捲縮加工糸や、ポリウレタン弾性糸などを使用することができる。またよこ糸9としては、通常の天然繊維又は合成繊維を使用することができ、伸縮性を有しないものを使用するのが好ましい。
【0031】
また内張り11は、ゴムや、軟質塩化ビニル樹脂、ポリウレタン弾性体、ポリエステルエラストマーなどの柔軟な材料が使用され、これらの材料よりなるチューブを筒状布10a、10b内に引き込み、内圧をかけて膨らませ、筒状布10a、10bの内面に接着することにより形成することができる。また一般に消防用ホースなどにおいてジャケットの内面に内張りを施すための方法が種々提案されており、それらを適宜選択して採用することもできる。
【0032】
なおこの例においては、内張り11は少なくとも筒状の織布2の内面に形成されることが必要であるが、筒状の織布2の外面にも同様のゴム又は軟質プラスチックの皮膜を形成しても差し支えない。
【0033】
そして前記二本の筒状布10a、10bはその周方向の一部において、接結たて糸12が両筒状布10a、10bのよこ糸9に対して組織されることにより接結され、両筒状布10a、10bは一体に接合されている。
【0034】
そして各気密性筒体5a、5bの中心から接合部6に向かって直角方向の、前記接合部6を含む面Aに対して対称の位置に、伸長抑制部材7が添着されている。伸長抑制部材7は伸縮性を有しない長尺物であって、ロープ、紐、ワイヤなどの紐状物を使用することもできるが、気密性筒体5a、5bに局部的に過大の力が作用することがないよう、柔軟で扁平なベルトを使用するのが好ましい。また図3の例においては、この伸長抑制部材7は前記内張り11の内面に貼着されている。
【0035】
なお筒状布10a、10bの接合の手段として、図3においては二本の筒状布10a、10bがそれらを構成する伸縮性たて糸8とは別の接結たて糸12により接結しているが、筒状布10a、10bを構成する伸縮性たて糸8を相手方の筒状布10b、10aのよこ糸9に組織することにより接結することもできる。またそれぞれ別個に織成された二本の筒状布10a、10bを縫合して接合することも可能である。
【0036】
また前記二本の筒状布10a、10bは、それらを構成するよこ糸9が互いに逆方向の螺旋方向に織り込まれていることが好ましい。気密性筒体5a、5bにそれぞれ内圧をかけたとき、それらの気密性筒体5a、5bには筒状布10a、10bにおけるよこ糸9の螺旋の方向と逆方向の捩れが生じるので、二本の筒状布10a、10bにおけるよこ糸9の螺旋の方向を逆にすることにより、それらの捩れの方向が互いに打ち消し合い、全体としての捩れが生じるのを防止することができる。
【0037】
以上述べたような接結された二本の筒状布10a、10bを製造する場合には、通常の力織機を使用して互いに接結された二つの縦口袋織物として織成することも可能ではあるが、以下に述べるように筒状織物を織成するための環状織機を使用して織成するのが好ましい。
【0038】
図4は二本の筒状布10a、10bを内外二層に織成した二層筒状織物13を示すものであって、筒状布10a内に筒状布10bが挿通された状態となっており、当該筒状布10aと筒状布10bとが接結たて糸12により接結されている。
【0039】
図5はかかる二層筒状織物13を環状織機17で織成する状態を示すものであって、放射状に配置されて外方から内方に向かって供給される伸縮性たて糸8及び接結たて糸12を、当該たて糸8、12の外周に設けられたヘルド(図示せず)により所定の順序で開口しながら、当該開口内で4つのシャトル14a、14bを回転させ、当該シャトル14a、14bに搭載されたボビン15から供給されるよこ糸9を、前記伸縮性たて糸8及び接結たて糸12に対して織り込むことにより、接結たて糸12により接結された筒状布10a及び筒状布10bよりなる二層筒状織物13を織成するのである。
【0040】
環状織機は通常、2つ又は4つのシャトルを備えており、これらのシャトルに搭載されたボビンから別個のよこ糸を繰り出すので、たて糸の開口順序を調整することにより、内外二層の二層筒状織物13を織成することは容易である。
【0041】
またその二層筒状織物13における筒状布10a、10bの両方に織り込まれるように接結たて糸12の開口を調整することにより、接結たて糸12で筒状布10a、10bを接結することができる。
【0042】
そしてこの二層筒状織物6のうち、外側の筒状布10aを内外反転して裏返すことにより、当該筒状布10a内に挿通されていた内側の筒状布10bが筒状布10aの外側に出て、図3に示す二連の筒状布となるのである。
【0043】
図6はこの二層筒状織物13の外側の筒状布10aを裏返す状態を示すものであって、外側の筒状布10aをその端末を外側に折り返し、当該折り返し部16において内側が外側となるように裏返すと、その外側の筒状布10aに接結されている内側の筒状布10bは当該外側の筒状布10aに伴われて外側に反転し、外側の筒状布10aが裏返った状態においては、当該筒状布10aと筒状布10bとが並列して接結たて糸12で接結された状態となり、二連の筒状布が得られるのである。
【0044】
またこの方法によれば、環状織機17におけるシャトル14a、14bは同一方向に回転しているため、二層筒状織物13における二本の筒状布10a、10bのよこ糸9の螺旋の方向は同一であるが、外側の筒状布10aが裏返ることにより当該筒状布10aのよこ糸9の螺旋の方向が逆となり、互いに逆方向の螺旋のよこ糸9を有する筒状織物2a、2bを接結したものとなるのである。
【0045】
以上の説明においては二本の気密性筒体5a、5bは図7に示すように周方向の一箇所において接結されているが、図8に示すように互いに接近した複数箇所において接結することも可能である。この場合には短い間隔で接結することが必要であり、両端の接結の間隔は気密性筒体5a、5bの周長の30%以下とするべきである。接結した箇所においては図8に示すように気密性筒体5a、5bの円弧状が失われるので、30%を越えると気密性筒体5a、5bの形態が損なわれることとなり好ましくない。
【0046】
また以上の説明においては、各気密性筒体5a、5bはそれぞれ筒状に織成された筒状布10a、10bの内面に内張り11を施したものとして述べているが、この構造に限られるものではない。
【0047】
例えば図9に示すように、伸縮性たて糸8とよこ糸9とを織成した扁平な織布18を、筒状に丸めて両縁を縫合して筒状の織物19を形成し、その筒状の織物19の内面に内張り11を形成して気密処理を施すこともできる。この場合には図9のように、筒状の織物19を形成する際に、織布18の両縁を伸長抑制部材7としてのベルトを介して縫合するのが好ましい。
【0048】
織布18の両側縁を縫合し、それと別個に伸長抑制部材7を添着することもできるが、織布18の両側縁を縫合することによりその部分の伸縮性が低下するので、その位置を伸長抑制部材7と一致させることにより湾曲が乱れることがなく、また織布18の両側縁を伸長抑制部材7を介して縫合することにより、織布10の両側縁の接合と伸長抑制部材7の添着とを一工程で行うことができるので好ましい。
【0049】
また図10はさらに他の構造を示すものであって、伸縮性たて糸8とよこ糸9とを織成した織布に対してゴムのフリクション加工などの方法により気密処理を施し、当該気密性の織布20の両縁を接合したものである。この場合においても、気密性の織布20の両縁を伸長抑制部材7を介して接合するのが好ましい。
【0050】
伸長抑制部材7は以上の説明のように各気密性筒体5a、5bに接合することもできるが、各気密性筒体5a、5bの一部に長さ方向に延びる袋部24を形成し、当該袋部24内に伸長抑制部材7を挿通することもできる。
【0051】
図11はその一例を示すものであって、各気密性筒体5a、5bにおける筒状布10a、10bの周方向の一部に長さ方向に延びる縦口袋織部21を形成してこれを袋部24とし、当該縦口袋織部21内にベルト状の伸長抑制部材7が挿通されている。この場合における筒状布10a、10bは、扁平な織布18を丸めて筒状に形成した筒状の織物19であってもよい。
【0052】
また図12は他の例を示すものであって、扁平な織布18を筒状に丸めて両側縁を若干の間隔をおいた二箇所を縫合部22で縫合して筒状の織物19を形成し、当該縫合部22の間を袋部24としてそこに伸長抑制部材7が挿通されている。
【0053】
図13はさらに他の例を示すものであって、前記図8における例と同様に気密性筒体5a、5bを互いに接近した複数箇所で接結し、その一番端の接結の間を袋部24として、そこに伸長抑制部材7を挿通したものである。
【0054】
このように気密性筒体5a、5bの一部に袋部24を形成し、当該袋部24内に伸長抑制部材7を挿通した状態では、伸長抑制部材7は気密性筒体5a、5bに対して固定されない。しかしながら気密性筒体5a、5b内に圧力流体を送入して内圧をかけると、その内圧が袋部24を押し潰して伸長抑制部材7に圧接するため、袋部24内で伸長抑制部材7が滑ることはなく、伸長抑制手段としての機能は損なわれない。
【0055】
なお、以上述べた気密性筒体5a、5bに伸長抑制部材7を添着する構造においては、筒状布10a、10b又は筒状の織物19が長さ方向に収縮した状態で伸長抑制部材7を添着しても良いが、場合によっては筒状布10a、10b又は筒状の織物19をその長さ方向に若干伸長した状態において伸長抑制部材7を添着することにより、アーチ型気柱4の湾曲の程度を調節することができる。
【0056】
すなわち本発明においては、気密性筒体5a、5bに内圧が作用したときに筒状布10a、10bが長さ方向に張力が作用してその伸縮性により伸長し、その周方向の一部においてその伸長が伸長抑制部材7により抑制されることにより、その伸長抑制部材7を添着した位置が内側となるように彎曲するのである。
【0057】
そしてその湾曲の程度は気密性筒体5a、5bにおける彎曲の内側と外側との伸長率の差によって定まるので、前述のように気密性筒体5a、5bを若干引き伸ばした状態で伸長抑制部材7を添着することにより、彎曲の内側に対する外側の伸長率が相対的に小さくなり、湾曲の程度がより緩やかなものとなり、部分的に湾曲の程度を調節することができるのである。
【0058】
また逆に、気密性筒体5a、5bに伸長抑制部材7を添着する際に、気密性筒体5a、5bに若干の弛みをもたせながら添着することにより、アーチ型気柱4の湾曲の程度をより急激なものとすることも可能である。
【0059】
図14は、本発明において筒状布10a、10bの一部において伸長を抑制するための伸長抑制手段の他の例を示すものであって、一方の筒状布10における主要部を示すものであり、他方の筒状布も全く同様である。なおこの構造は、扁平な織布18の両縁を接合した筒状の織物19についても同様に適用することができる。
【0060】
図14において筒状布10はたて糸とよこ糸とを織成してなるものであるが、たて糸としては、筒状布10の大部分を占める伸縮性たて糸8と、筒状布10の周方向の一部を構成する非伸縮性たて糸23とよりなっており、これらのたて糸8,23とよこ糸5とで筒状布10を形成している。
【0061】
すなわちこの例においては、筒状布10を構成するたて糸のうちの大部分を占める伸縮性たて糸8により筒状布10は伸縮性を有しており、その周方向の一部において、長さ方向に延びるたて糸として非伸縮性たて糸23を使用することにより、部分的に伸長が抑制されているのである。そしてこの筒状布10に気密処理を施すことにより、アーチ型気柱4となっている。
【0062】
なおこの明細書において「伸縮性を有しない」とは、その材料が特別に伸縮性を有する点に特徴付けられたものでなく、また特段に伸縮性を付与する手段を講じたものでないことを意味するものであって、その素材が本来有する物理的性質としての伸縮性までをも排除するものではない。
【0063】
従って前記非伸縮性たて糸23は、伸縮性たて糸8のように伸縮性を有する点に特徴を有する糸条は除外されるが、それ以外の通常の天然繊維又は合成繊維よりなる糸条をそのまま使用することができる。
【0064】
本発明においては、伸長抑制部材7は各気密性筒体5a、5bにおける互いに前記接合部を含む面に対して対称の位置に設けられ、各気密性筒体5、5におけるその中心から接合部の中央に向かってほゞ直角方向の位置に設けることにより、二本の気密性筒体5a、5bに内圧を作用させたときにその断面円形形状を保持したままでスムーズに湾曲するので好ましい。
【0065】
伸長抑制部材7を前述のように各気密性筒体5a、5bの中心から接合部の中央に向かって直角方向からずれた方向に設けることも可能である。ただこの場合には、各気密性筒体5a、5bはその伸長抑制部材7の位置が湾曲の内側となるように湾曲しようとするため、加圧時に気密性筒体5a、5bの断面形状が歪むことがあるが、アーチ型気柱4の機能が損なわれることはない。
【0066】
本発明の気柱テント1は、前述のアーチ型気柱4に圧力流体を送入して膨らませると共に湾曲させて、これを地面に立設してこれをテントの骨組みとする。そして当該骨組みに沿ってシートを展張することにより、図1に示すのと同様の気柱テント1を形成することができる。
【0067】
而して本発明のアーチ型気柱4は、基本的にはたて糸とよこ糸とを織成した筒状の織布に気密処理を施した構造を有しているので、その筒状の織布により耐圧力を有しており、且つ筒状の織布の柔軟性に基づいて不使用時に扁平に折り畳むことが可能な構造を有している。
【0068】
そして前記筒状の織布におけるたて糸として、伸縮性たて糸8が使用されているので、内圧がかかったときには伸縮性たて糸8に張力が作用し、筒状の織布は長さ方向に伸長することができる。
【0069】
しかしながらその筒状の織布は、その周方向の一部において伸長が抑制されているので、内圧がかかって張力が作用したときにも、当該伸長が抑制された部分においては伸長することができない。
【0070】
従って内圧がかかって筒状の織布の長さ方向に張力が作用したときには、前記伸長が抑制された部分は伸長せず、それ以外の部分は伸長してその両者の間に伸長量に差が生じ、筒状の織布2は伸長が抑制された部分が内側となるように彎曲し、アーチ状の筒状体を形成するのである。
【0071】
そしてアーチ型気柱4はかかる気密性筒体5a、5bが二本並列されており、伸長抑制手段は接合部から対称位置に形成されているので、二本の気密性筒体5a、5bが図15に示すように平行状態のままでアーチ状に湾曲する。そのため湾曲方向にはスムーズに湾曲することができるが、それと直角方向には二本の気密性筒体5a、5bにより剛性を有し、形成されたアーチが倒れにくいものとなるのである。
【0072】
従ってこのアーチ型気柱4を骨組みとして気柱テント1を形成した場合には、骨組みとしてのアーチ型気柱4が倒れる方向に対して大きな剛性を示すので、風や雨などによりテントが倒れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】気柱テントの斜視図
【図2】本発明のアーチ型気柱の斜視図
【図3】本発明のアーチ型気柱の一例を示す横断面図
【図4】本発明における二連の筒状布を製造する過程の二層筒状織物の横断面図
【図5】環状織機で前記二層筒状織物を織成する状態を示す平面図
【図6】前記二層筒状織物を裏返す状態を示す中央縦断面図
【図7】アーチ型気柱の一例を示す横断面図
【図8】アーチ型気柱の他の例を示す横断面図
【図9】アーチ型気柱のさらに他の例を示す横断面図
【図10】アーチ型気柱のさらに他の例を示す横断面図
【図11】アーチ型気柱のさらに他の例を示す横断面図
【図12】アーチ型気柱のさらに他の例を示す横断面図
【図13】アーチ型気柱のさらに他の例を示す横断面図
【図14】筒状布の他の例を示す主要部の斜視図
【図15】本発明のアーチ型気柱の使用状態の斜視図
【符号の説明】
【0074】
1 気柱テント
4 アーチ型気柱
5 気密性筒体
6 接合部
7 伸長抑制部材
8 伸縮性たて糸
9 よこ糸
10 筒状布
11 内張り
12 接結たて糸
13 二層筒状織物
17 環状織機
18 織布
19 筒状の織物
20 気密性の織布
21 縦口袋織部
23 非伸縮性たて糸
24 袋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向に延びてその長さ方向に伸縮性を有する伸縮性たて糸(8)と、周方向に延びるよこ糸(9)とを織成してなる筒状の織布(10、19)を二本並設し、当該二本の筒状の織布(10,19)を周方向の一部において長さ方向に連続して互いに接合し、各筒状の織布(10、19)の内面に気密処理を施して柔軟な二連の気密性筒体(5a、5b)を形成し、各気密性筒体(5a、5b)における互いに前記接合部(6)を含む面に対して対称の位置に、長さ方向に伸長抑制手段(7,23)を講じたことを特徴とする、アーチ型気柱
【請求項2】
前記各筒状の織布が、環状に配置された伸縮性たて糸(8)に対してよこ糸(9)を螺旋状に織り込んで筒状に織成した筒状布(10a、10b)であることを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項3】
前記二本の筒状布(10a、10b)のよこ糸(9)が、互いに逆方向の螺旋状に織り込まれていることを特徴とする、請求項2に記載のアーチ型気柱
【請求項4】
前記二本の筒状布(10a、10b)が、接結たて糸(12)により互いに長さ方向に連続的に接結されることにより接合されていることを特徴とする、請求項2に記載のアーチ型気柱
【請求項5】
前記各筒状の織布が、伸縮性たて糸(8)とよこ糸(9)とを織成した織布(18)の両側縁を接合して筒状としたもの(19)であることを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項6】
前記各気密性筒体(5a、5b)が、前記各筒状の織布(10,19)の少なくとも内面に気密性の内張り(11)を施したものであることを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項7】
前記各気密性筒体(5a、5b)が、伸縮性たて糸(8)とよこ糸(9)とを織成した織布(18)に気密処理を施し、その気密性の織布(20)の両側縁を接合して筒状としたものであることを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項8】
前記二本の筒状の織布(10,19)が、互いに縫合することにより接合されていることを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項9】
前記二本の筒状の織布(10,19)が、互いに接近した複数箇所において、互いに長さ方向に連続的に接合されていることを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項10】
前記各筒状の織布(10,19)の周方向の一部のたて糸として、長さ方向の伸縮性を有しない非伸縮性たて糸(23)を使用することにより、その部分の長さ方向の伸長を抑制したことを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項11】
前記各気密性筒体(5a、5b)の周方向の一部に、その筒状の織布(10,19)の長さ方向に沿って、長さ方向の伸縮性を有しない柔軟な伸長抑制部材(7)を添着することにより、その長さ方向の伸張を抑制したことを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項12】
前記伸長抑制部材(7)が、ロープ、紐、ワイヤ、その他の長さ方向に伸張性を有しない紐状物であることを特徴とする、請求項11に記載のアーチ型気柱
【請求項13】
前記伸長抑制部材(7)が扁平なベルト状であることを特徴とする、請求項12に記載のアーチ型気柱
【請求項14】
前記伸長抑制部材(7)を、前記気密性筒体(5a、5b)における筒状の織布(10,19)の内面に沿って添着してなることを特徴とする、請求項11に記載のアーチ型気柱
【請求項15】
伸縮性たて糸(8)とよこ糸(9)とを織成した織布(18)に気密処理を施し、その両側縁を前記伸長抑制部材(7)を介して接合して各気密性筒体(5a、5b)を形成してなることを特徴とする、請求項11に記載のアーチ型気柱
【請求項16】
前記各筒状の織布(10,19)の周方向の一部にその長さ方向に沿って袋部(24)を形成し、当該袋部(24)内に伸長抑制部材(7)を挿通したことを特徴とする、請求項11に記載のアーチ型気柱
【請求項17】
前記袋部(24)が、前記筒状の織布(10,19)の周方向の一部に、形成された縦口袋織部(21)であることを特徴とする、請求項16に記載のアーチ型気柱
【請求項18】
前記各筒状の織布(19)が、伸縮性たて糸(8)とよこ糸(9)とを織成した織布(18)の両側縁を接合して筒状としたものであって、前記織布(18)の両側縁を重ね合わせ、その重ね合わせ部の両側縁を接合して当該接合部(22)の間に袋部(24)を形成したことを特徴とする、請求項16に記載のアーチ型気柱
【請求項19】
前記二本の筒状の織布(10,19)を互いに接近した複数箇所において接合し、当該接合箇所の間の部分を袋部(24)としたことを特徴とする、請求項16に記載のアーチ型気柱
【請求項20】
前記伸長抑制部材(7)を、各気密性筒体(5a、5b)におけるその中心から接合部の中央に向かってほゞ直角方向の位置に設けたことを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項21】
各筒状の織布(10,19)を部分的に又は全体的に伸張しながら伸張抑制手段を講じることにより、圧力流体送入時の各気密性筒体(5a、5b)の湾曲の程度を調節してなることを特徴とする、請求項1に記載のアーチ型気柱
【請求項22】
環状に配置された複数の伸縮性たて糸(8)に対してよこ糸(9)を螺旋状に織り込んでなる筒状布(10a、10b)を内外二層に織成すると共に、当該二層の筒状布(10a、10b)を互いに長さ方向に連続的に接結し、前記二層のうちの外側の筒状布(10a)の内外面を反転することにより内側の筒状布(10b)を外側の筒状布(10a)の外側に出し、二本の筒状布(10a、10b)を並列せしめ、その各筒状布(10a、10b)の周方向の一部に伸長抑制手段を講じることを特徴とする、アーチ型気柱の製造方法
【請求項23】
請求項1乃至21のいずれかに記載したアーチ型気柱(4)に、圧力流体を送入して膨らませると共に湾曲させて、テントの骨組みを形成し、当該骨組みに沿ってシートを展張したことを特徴とする、気柱テント

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−84451(P2010−84451A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255833(P2008−255833)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】