説明

アームの位置決め装置

【課題】巻取紙の紙幅の違いが小さい場合であっても、それに対応してアームを位置決めできるアームの位置決め装置を提供すること。
【解決手段】輪転機の給紙部にて、アーム軸10の軸方向に移動可能で巻取紙を挟んで支持するアームの軸方向の位置決めをするアーム21(22)の位置決め装置において、アーム側に、アーム軸の軸方向に間隔をおいて配置した複数のストッパピン31,32を設け、アーム軸側に、前記複数のストッパピンが同時に嵌り込むことがないように、アーム軸の軸方向に間隔をおいて配置した複数の位置決め孔を設け、前記複数のストッパピンのうちいずれか一つを選択して位置決め孔に嵌め込み、アームの軸方向の位置決めをする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輪転機の給紙部において、アーム軸の軸方向に移動可能で巻取紙を挟んで支持するアームの軸方向の位置決めをするアームの位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は、非特許文献1に示された従来の一般的な輪転機の給紙部の構成を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【0003】
輪転機の給紙部には、連続的な給紙を可能とするために、複数(通常は2本又は3本で、図5では3本の例を示す。)の巻取紙が装着されるようになっている。具体的には、フレームF1,F2間に回転可能に支持されているアーム軸10に、複数のアーム対20が設けられ、各アーム対20を構成する一対のアーム21,22の先端部間で巻取紙Mを挟んで支持する。
【0004】
アーム21,22の各先端部には、同一軸線上で対向するように円錐状のセンターコーン21a,22aが設けられ、一方のセンターコーン21aは軸方向に固定されており、他方のセンターコーン22aは軸方向に出入り可能に設けられている。巻取紙Mは、その両端の紙管開口部に前記センターコーン21a,22aの円錐部が挿入されることによりアーム対20に回転可能に支持されるようになっている。
【0005】
このような輪転機の給紙部に装着される巻取紙の紙幅には複数の種類がある。例えば、我が国の新聞印刷で現在使用されている巻取紙の紙幅は、A巻(1626mm)、C巻(1219mm)、D巻(813mm)の3種類があり、これらを組み合わせながら新聞の建てページの違いに対応する。そこで輪転機の給紙部においては、これらの巻取紙の紙幅の違いに対応するため、アームをアーム軸の軸方向に移動可能とし、紙幅に対応する所定の位置でアームを位置決めし固定するようにしている。
【0006】
その位置決め装置としては、アーム側にストッパピンを設けると共に、アーム軸側に軸方向に間隔をおいて複数の位置決め孔を設け、アームをアーム軸の軸方向に移動させ、ストッパピンをいずれかの位置決め孔に嵌め込む構成のものが知られている(例えば特許文献1)。
【0007】
このような位置決め装置は、上記したA巻、C巻、D巻のように紙幅の違いが大きい場合には問題なく対応できる。ただし、海外ではすでに、紙幅の違いが小さな巻取紙が使用されており、この場合、上記の位置決め装置では位置決め孔の間隔を狭くする必要がある。しかし、アーム軸に設ける位置決め孔の間隔を狭くすると、その開口部分が近接することになり、アーム軸の強度低下を招くので、位置決め孔の間隔を狭くするには限界がある。したがって、上記した従来の位置決め装置では、小さな紙幅の違いに対応できない。
【0008】
さらに、国内外にかかわらず、紙幅の違いがわずかな巻取紙を使用する場合、位置決め孔どうしが干渉してしまい、アームを確実に位置決めすることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−53283号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】社団法人日本新聞協会技術委員会編、「新聞印刷ハンドブック 改訂版」、社団法人日本新聞協会、2006年4月1日、p.112
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、巻取紙の紙幅の違いが小さい場合であっても、それに対応してアームを位置決めできるアームの位置決め装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の位置決め装置は、輪転機の給紙部において、アーム軸の軸方向に移動可能で巻取紙を挟んで支持するアームの軸方向の位置決めをするアームの位置決め装置であって、アーム側に、アーム軸の軸方向に間隔をおいて配置した複数のストッパピンを有し、アーム軸側に、前記複数のストッパピンが同時に嵌り込むことがないように、アーム軸の軸方向に間隔をおいて配置した複数の位置決め孔を有し、前記複数のストッパピンのうちいずれか一つを選択して位置決め孔に嵌め込み、アームの軸方向の位置決めをするものである。
【0013】
このように本発明では、アーム側に複数のストッパピンを設けると共に、アーム軸側に複数の位置決め孔を設け、複数のストッパピンのうちいずれか一つを選択して位置決め孔に嵌め込み、アームの軸方向の位置決めをするようにしているので、ストッパピンと位置決め孔の組み合わせを変えることで、小さな間隔でアームを位置決めできる。したがって、巻取紙の紙幅の違いが小さい場合であっても、それに対応してアームを位置決めできる。
【0014】
本発明において、複数のストッパピンは、アーム軸の軸方向と直交する方向にも間隔をおいて配置することが好ましい。このように、ストッパピンをアーム軸の軸方向と直交する方向に間隔をおいて配置することで、ストッパピンと位置決め孔との対応関係が明確になり、巻取紙の紙幅に応じたストッパピン及び位置決め孔の選択を容易に行うことができる。また、ストッパピンをアーム軸の軸方向と直交する方向に間隔をおいて配置すると、そのストッパピンに対応する位置決め孔も、アーム軸の軸方向と直交する方向に間隔をおいて配置される。この場合、複数の位置決め孔をアーム軸の軸方向に一列に配置する場合に比べ、隣接する位置決め孔どうしの間隔を大きくできるので、アーム軸の強度低下を最小限に抑えることができる。また、位置決め孔どうしの干渉を防止することができるので、アームを確実に位置決めできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、巻取紙の紙幅の違いが小さい場合であっても、それに対応してアームを位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の位置決め装置を適用した輪転機の給紙部におけるアーム軸部分を側面から見た図である。
【図2】本発明の位置決め装置の要部を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】本発明の位置決め装置の構成要素である位置決め孔の配置例を示す。
【図4】本発明の位置決め装置におけるストッパピンと位置決め孔との組み合わせを模式的に示す。
【図5】従来の一般的な輪転機の給紙部の構成を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に示す実施例に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本発明の位置決め装置を適用した輪転機の給紙部におけるアーム軸部分を側面から見た図である。
【0019】
図1において、アーム軸10に3本のアーム対20が、アーム軸10の軸方向に移動可能に取り付けられている。実施例ではアーム軸10の縦断面を三角形にし、その各側面にアーム対20をアーム軸10の軸方向に移動可能に取り付けている。具体的には、アーム軸10の各側面に、その軸方向に伸びるレール11を2条設け、このレール11に沿って、アーム対20を構成する一対のアーム21,22をそれぞれスライド可能に取り付けている。なお、図5で説明したように、アーム軸10はフレームF1,F2間に回転可能に支持されており、一対のアーム21,22の先端部間で巻取紙Mを挟んで支持するようにしている。
【0020】
図2は本発明の位置決め装置の要部を示し、(a)は正面図、(b)は側面図である。また図3は、本発明の位置決め装置の構成要素である位置決め孔の配置例を示す。
【0021】
本発明の位置決め装置は、アーム21,22側に、アーム軸10の軸方向に間隔をおいて配置した複数のストッパピンを有すると共に、アーム軸10側に、その軸方向に間隔をおいて配置した複数の位置決め孔を有する。図2及び図3の例では、アーム21,22側に2本のストッパピン31,32が配置されている。この2本のストッパピン31,32は軸方向に間隔をおいて配置されると共に、軸方向と直交する方向にも間隔をおいて配置されている。また、アーム軸10側には、ストッパピン31,32と対応するように、2列の位置決め孔41,42が配置されている。すなわち、一方の列の位置決め孔41にはストッパピン31が嵌め込まれ、他方の列の位置決め孔42にはストッパピン32が嵌め込まれる。ただし、2本のストッパピン31,32が位置決め孔41,42に同時に嵌り込まないように、ストッパピン31,32の軸方向間隔L1と、位置決め孔41及び42の軸方向間隔L2及びL3との関係は、L1≠L2かつL1≠L3としている。具体的に図2及び図3の例では、L1=75mm、L2=80mm、L3=327mmとしている。
【0022】
このように2本のストッパピン31,32は、位置決め孔41,42に同時に嵌り込まないように配置されており、アーム21,22の位置決めの際には、ストッパピン31,32のうちいずれか一つを選択して位置決め孔41又は42に嵌め込む。
【0023】
なお、ストッパピン31,32は、図2(b)に示すように、圧縮バネ(弾性体)33によって、突き出す方向、すなわち位置決め孔41,42に嵌り込む方向に付勢されている。したがって、ストッパピン31,32が位置決め孔41,42と整合する位置に来ると、ストッパピン31,32は位置決め孔41,42に自動的に嵌り込み、その状態が維持される。ストッパピン31,32を位置決め孔41,42から外すときには、ストッパピン31,32を圧縮バネ33の付勢力に抗して引き抜く。
【0024】
以上のように本発明の位置決め装置では、アーム側に複数のストッパピンを設けると共に、アーム軸側に複数の位置決め孔を設け、複数のストッパピンのうちいずれか一つを選択して位置決め孔に嵌め込み、アームの軸方向の位置決めをするようにしているので、ストッパピンと位置決め孔の組み合わせを変えることで、小さな間隔でアームを位置決めできる。このことを、図2及び図3の例におけるストッパピン31,32と位置決め孔41,42との組み合わせを模式的に示す図4を参照して説明する。
【0025】
図4(a)は、ストッパピン31が位置決め孔41に嵌り込んだ状態を示し、図2の状態に対応する。この状態では、L1(75mm)がL2(80mm)よりも小さいため、ストッパピン32は位置決め孔42には嵌り込まない。次に、ストッパピン31を位置決め孔41から外した上で、アームをアーム軸の軸方向(図4において右方向)にスライドさせると、図4(b)に示すように、ストッパピン32が位置決め孔42には嵌り込む。すなわち、この例では、L1(75mm)とL2(80mm)との差(5mm)だけの小さな間隔でアームを位置決めできる。
【0026】
なお、図4の例では、L1=75mm、L2=80mmとしたが、L1=80mm、L2=75mmとしても、その差(5mm)だけの小さな間隔でアームを位置決めできる。また、図4の例では、ストッパピンを2本設け、これに対応して位置決め孔を2列設けたが、ストッパピンを3本以上設け、これに対応して位置決め孔を3列以上設けることもでき、この場合も複数のストッパピンが位置決め孔に同時に嵌り込むことがないようにして、複数のストッパピンのうちいずれか一つを選択して位置決め孔に嵌め込むようにすれば、小さな間隔でアームを位置決めできる。そして、ストッパピンの本数を増やせば、それだけ位置決め孔との組み合わせのパターンが増えるので、アームの位置決めのパターンを増やすことができる。
【0027】
また図2〜4の例では、2本のストッパピンをアーム軸の軸方向と直交する方向に間隔をおいて配置し、これに対応させて位置決め孔を2列に設けたが、2本のストッパピン及び位置決め孔を1列に設けることもできる。この場合も、2本のストッパピンが位置決め孔に同時に嵌り込むことがないようにする。
【符号の説明】
【0028】
10 アーム軸
11 レール
20 アーム対
21,22 アーム
31,32 ストッパピン
33 圧縮バネ(弾性体)
41,42 位置決め孔
F1,F2 フレーム
M 巻取紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輪転機の給紙部において、アーム軸の軸方向に移動可能で巻取紙を挟んで支持するアームの軸方向の位置決めをするアームの位置決め装置であって、
アーム側に、アーム軸の軸方向に間隔をおいて配置した複数のストッパピンを有し、
アーム軸側に、前記複数のストッパピンが同時に嵌り込むことがないように、アーム軸の軸方向に間隔をおいて配置した複数の位置決め孔を有し、
前記複数のストッパピンのうちいずれか一つを選択して位置決め孔に嵌め込み、アームの軸方向の位置決めをするアームの位置決め装置。
【請求項2】
前記複数のストッパピン及び前記複数の位置決め孔が、アーム軸の軸方向と直交する方向にも間隔をおいて配置されている請求項1に記載のアームの位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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