説明

イエロー顔料分散物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録用カートリッジ、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインクジェット記録物

【課題】色相、着色力、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性に優れた記録物を得ることのできるイエロー顔料分散物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録用カートリッジ及びインクジェット記録方法を提供すること。また、色相、着色力、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性に優れたインクジェット記録物を提供すること。
【解決手段】下式(1)で表されるアゾ顔料または互変異性体を少なくとも1種と、C.I.ピグメントイエロー群より選択される少なくとも1種とを含有することを特徴とするイエロー顔料分散物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イエロー顔料分散物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録用カートリッジ、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置及びインクジェット記録物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像記録材料としては、特にカラー画像を形成するための材料が主流であり、具体的には、インクジェット方式の記録材料、感熱転写方式の記録材料、電子写真方式の記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インキ、記録ペン等が盛んに利用されている。また、撮影機器ではCCDなどの撮像素子において、ディスプレーではLCDやPDPにおいてカラー画像を記録・再現するためにカラーフィルターが使用されている。これらのカラー画像記録材料やカラーフィルターでは、フルカラー画像を表示あるいは記録する為に、いわゆる加法混色法や減法混色法の3原色の色素(染料や顔料)が使用されているが、好ましい色再現域を実現できる吸収特性を有し、かつさまざまな使用条件、環境条件に耐えうる堅牢な色素がないのが実情であり、改善が強く望まれている。
【0003】
上記の各用途で使用する染料や顔料には、共通して次のような性質を具備している必要がある。即ち、色再現性上好ましい吸収特性を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性が良好であること、等が挙げられる。加えて、色素が顔料の場合には更に、水や有機溶剤に実質的に不溶であり耐薬品堅牢性が良好であること、及び、粒子として使用しても分子分散状態における好ましい吸収特性を損なわないこと、等の性質をも具備している必要がある。上記要求特性は分子間相互作用の強弱でコントロールすることができるが、両者はトレードオフの関係となるため両立させるのが困難である。
また、顔料を使用するにあたっては、他にも、所望の透明性を発現させるために必要な粒子径及び粒子形を有すること、使用される環境条件下における堅牢性、例えば耐光性、耐熱性、オゾンなどの酸化性ガスに対する耐性、その他有機溶剤や亜硫酸ガスなどへの耐薬品堅牢性が良好であること、使用される媒体中において微小粒子まで分散し、かつ、その分散状態が安定であること、等の性質も必要となる。特に、良好な色相を有し、光、湿熱及び環境中の活性ガス、中でも着色力が高く、光に対して堅牢な顔料が強く望まれている。
【0004】
すなわち、顔料に対する要求性能は色素分子としての性能を要求される染料に比べて、多岐にわたり、色素分子としての性能だけでなく、色素分子の集合体としての固体(微粒子分散物)としての上記要求性能を全て満足する必要がある。結果として、顔料として使用できる化合物群は染料に比べて極めて限定されたものとなっており、高性能な染料を顔料に誘導したとしても微粒子分散物としての要求性能を満足できるものは数少なく、容易に開発できるものではない。これは、カラーインデックスに登録されている顔料の数が染料の数の1/10にも満たないことからも確認される。
【0005】
アゾ顔料は色彩的特性である色相及び着色力に優れているため、印刷インキ、インクジェット用インク、電子写真材料などに広く使用されている。これらのうち、最も典型的に使用されているアゾ顔料は、イエロージアリーリド顔料、レッドナフトールアゾ顔料である。ジアリーリド顔料としては例えば、C.I.ピグメント・イエロー12、同13、同17などが挙げられる。ナフトールアゾ顔料としては、C.I.ピグメント・レッド208、同242などが挙げられる。しかし、これらの顔料は堅牢性、とりわけ耐光性が非常に劣るため、印字物が光に曝されることによって顔料が分解して退色してしまい、印字物の長期間の保存に適さない。
【0006】
このような欠点を改良するために、分子量を大きくしたり、強い分子間相互作用を持つ基を導入したりすることによって、堅牢性を改善したアゾ顔料も開示されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかしながら、改良された顔料においても、例えば特許文献1に記載の顔料はその耐光性が改善されてはいるが未だ不十分であり、また、例えば特許文献2及び3に記載の顔料は色相が緑味で着色力が低くなり、色彩的特性に劣るといった欠点があった。
【0007】
また、特許文献4〜5には色再現性に優れた吸収特性と十分な堅牢性を有する色素が開示されている。しかしながら、該特許文献に記載されている具体的化合物は、どれも水又は有機溶剤に溶解するため、耐薬品堅牢性が十分でない。
【0008】
イエロー、マゼンタ、シアンの3色、又は更にブラックを加えた4色による減色混合法を用いてフルカラーを表現する場合、1色だけ堅牢性の劣る顔料を用いると、時間の経過とともに印字物のグレーバランスが変化してしまい、また、色彩的特性に劣る顔料を用いると、印刷時の色再現性が低下してしまう。したがって、高い色再現性を長期間維持する印字物を得るために、色彩的特性及び堅牢性の両立した顔料及び顔料分散物が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭56−38354号公報
【特許文献2】米国特許第2936306号明細書
【特許文献3】特開平11−100519号公報
【特許文献4】特開2005−213357号公報
【特許文献5】特開2003-246942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、色相、着色力、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性に優れた記録物を得ることのできるイエロー顔料分散物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録用カートリッジ、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、色相、着色力、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性に優れたインクジェット記録物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は上記した実情に鑑みて鋭意検討した結果、特定の置換基を有するピラゾール環と置換基が異なるもう1つのピラゾール環とをアゾ基を介して結合させて色素母核とし、更に、この色素母核の2つを含窒素ヘテロ環を介して連結させることにより形成したビスアゾ顔料又はその互変異性体の顔料分散物が優れた色彩的特性と堅牢性とを両立することを見出した。
【0012】
即ち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種と、
C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,120,128,138,139,150,151,154,155,180,185,213からなる群より選択される少なくとも1種とを含む着色剤を含有することを特徴とするイエロー顔料分散物。
【0013】
【化1】

【0014】
〔2〕
上記アゾ顔料又は互変異性体が、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する〔1〕に記載のイエロー顔料分散物。
【0015】
〔3〕
前記アゾ顔料又は互変異性体が、前記イエロー顔料分散物中の全顔料固形分に対して10質量%以上含まれる〔1〕又は〔2〕に記載のイエロー顔料分散物。
【0016】
〔4〕
更に分散剤を、該着色剤に対して10〜140質量%で含む〔1〕〜〔3〕のいずれか1つに記載のイエロー顔料分散物。
【0017】
〔5〕
更に高沸点有機溶媒を、イエロー顔料分散物の全量に対して0.1〜30質量%で含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか1つに記載のイエロー顔料分散物。
【0018】
〔6〕
更に浸透促進剤を、イエロー顔料分散物の全量に対して1〜20質量%で含む、〔1〕〜〔5〕のいずれか1つに記載のイエロー顔料分散物。
【0019】
〔7〕
〔1〕〜〔6〕のいずれか1つに記載のイエロー顔料分散物を含むインクジェット記録用インク。
【0020】
〔8〕
〔7〕に記載のインクジェット記録用インクを含むインクジェット記録用カートリッジ。
【0021】
〔9〕
〔7〕に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像を形成するインクジェット記録方法。
【0022】
〔10〕
〔7〕に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像を形成するインクジェット記録装置。
【0023】
〔11〕
〔7〕に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像が形成されてなるインクジェット記録物。
【発明の効果】
【0024】
本発明のイエロー顔料分散物、インクジェット記録用インク、インクジェット記録用カートリッジ、インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置によれば、色相、着色力、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性に優れた記録物を得ることができる。
また、本発明のインクジェット記録物によれば、着色力、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性に優れたインクジェット記録物とすることができる。
本発明のイエロー顔料分散物は、光堅牢性に優れた着色物として、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディスプレーやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、塗料、着色プラスチック等に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】合成例1に従って合成されたアゾ顔料(1)のX線回折の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のイエロー顔料分散物は、下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体(以下、単に式(1)で表されるアゾ顔料と称する場合がある)を少なくとも1種と、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,120,128,138,139,150,151,154,155,180,185,213からなる群より選択される少なくとも1種(以下、単に「A群のイエロー顔料」、「イエロー顔料(A)」と称する場合がある)とを含有する。
【0027】
【化2】

【0028】
イエロー顔料分散物は式(1)で表されるアゾ顔料を、前記イエロー顔料分散物中の全顔料固形分に対して10質量%以上含むことが好ましく、30質量%〜100質量%であることがより好ましく、55質量%〜95質量%であることが更に好ましく、70質量%〜85質量%であることが特に好ましい。
本発明のイエロー顔料分散物に含有される式(1)で表されるアゾ顔料以外の成分としては、式(1)で表されるアゾ顔料の互変異性体、結晶多形、塩、水和物等を挙げることができる。
【0029】
A群のイエロー顔料の含有量は本発明のイエロー顔料分散物の全顔料固形分に対して0.1質量%以上99質量%未満であることが好ましく、1質量%以上70質量%未満であることがより好ましく、5質量%以上45質量%未満であることが更に好ましく、15質量%以上30質量%未満であることが最も好ましい。
【0030】
本発明のイエロー顔料分散物は、式(1)で表されるアゾ顔料(アゾ顔料(1))とA群のイエロー顔料(イエロー顔料(A))とを含有することにより、色相、着色力、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性に優れたものとすることができる。
【0031】
イエロー顔料分散物中のアゾ顔料(1)及びイエロー顔料(A)の含有量の割合は、好ましい範囲としてアゾ顔料(1)/イエロー顔料(A)=5/95(質量%/質量%)〜95/5(質量%/質量%)であり、更に好ましい範囲としては20/80(質量%/質量%)〜80/20(質量%/質量%)であり、特に好ましい範囲としては40/60(質量%/質量%)〜60/40(質量%/質量%)である。
【0032】
また、本発明のイエロー顔料分散物は、アゾ顔料(1)とイエロー顔料(A)とを上記の範囲で含有することにより、イエロー顔料分散物をインクジェット記録用インク等に用いた場合に、色相、着色力、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性において、より優れたものとすることができる。
【0033】
アゾ顔料(1)には、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する前記式(1)で表されるアゾ顔料(以下α型結晶形態アゾ顔料と称する)、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が6.6°、8.9°、11.7°、18.4°、25.7°、26.7°に特徴的X線回折ピークを有する前記式(1)で表されるアゾ顔料(以下β型結晶形態アゾ顔料と称する)が存在する。
【0034】
式(1)で表されるアゾ顔料は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有するα型結晶形態アゾ顔料であることが好ましく、色相、着色力、光堅牢性及びオゾンガス堅牢性において、より優れたものとすることができる。
本発明のX線回折測定は、日本工業規格JISK0131(X線回析分析通則)に準じて、粉末X線回折測定装置RINT2500(株式会社リガク製)にて行うことができる。
【0035】
本発明において、上記式(1)で表されるアゾ顔料の取得手段としては、下記式(2)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、下記式(3)で表される化合物(カップリング成分)とをアゾカップリング反応させる方法で反応条件(溶媒種、pH値、反応温度、反応時間等)を制御して取得する方法が挙げられる。
【0036】
【化3】

【0037】
単一の結晶形態である場合、分子間が密になり、分子間相互作用が強くなる。その結果、耐溶剤性、熱安定性、耐光性、耐ガス性、印画濃度があがり、更には色再現域が広がる。
【0038】
そのため、上記式(1)で表されるアゾ顔料は、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が好ましく、更に、7.2°、15.0°、19.8°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態がより好ましい。その中でも特に、7.2°、8.2°、10.0°、13.4°、15.0°、19.8°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する結晶形態が最も好ましい。
【0039】
以上に説明した上記式(1)で表されるアゾ顔料の1次粒子を、透過型顕微鏡で観察した際の長軸方向の長さは、0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.02μm以上30μm以下であることが更に好ましく、0.03μm以上2μm以下であることが特に好ましい。
【0040】
1次粒子を透過型顕微鏡で観察した際の長軸方向の長さが0.01μm以上である場合には、光やオゾンに対する堅牢性、及び、顔料分散物とした場合の分散性をより確実に発現できる。一方、30μm以下である場合には、分散して所望の体積平均粒子径にした際に過分散状態(1次粒子を破壊した形態)になりにくく、顔料粒子の表面に活性面を露出しにくいことから凝集が起こりにくいため、顔料分散物の保存安定性をより確実に発現できる。
【0041】
1次粒子の大きさが、上記の範囲内に制御する事で、分子内・分子間相互作用が強くて強固で安定な3次元ネットワークを形成した顔料粒子となり、光、熱、湿度、酸化性ガスに対して高い堅牢性を示し、その顔料分散物を用いた着色物は保存安定性に優れていて好ましい。
【0042】
本発明の顔料分散物の体積平均粒子径測定は、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いることができる。その測定は、例えば、顔料分散物3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行うことができる。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いる。
【0043】
上記式(1)で表されるアゾ顔料分散物の平均体積粒子径(Mv)は0.01μm以上30μm以下であることが好ましく、0.02μm以上30μm以下であることが更に好ましく、0.03μm以上20μm以下が特に好ましく、その中でも30nm以上150nm以下であることが最も好ましい。
【0044】
上記の範囲であれば印画物の印画濃度が高く、分散物の安定性が増し、赤や緑などの混色部の色再現性が向上し、透明性が高くなり、インクジェット等で印画する際に、ノズルの目詰まりが起こりにくくなるため好ましい。また、顔料分散物の凝集が起こり難く、分散物の経時安定性が高くなる点からも好ましい。
【0045】
本発明の顔料分散物の体積平均粒径を上記の範囲とするには、後述の顔料分散条件を便宜組み合わせる事で容易に調整する事ができる。
【0046】
以下に、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する下式(1)で表されるアゾ顔料又は互変異性体を少なくとも1種含有するアゾ顔料組成物の製造方法に関して詳細に説明する。
【0047】
下式(1)で表されるアゾ顔料組成物の製造方法は、下記式(2)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)から誘導したジアゾニウム塩と、下記式(3)で表される化合物(カップリング成分)とをアゾカップリング反応させる工程を含む。
【0048】
【化4】

【0049】
〔ヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製工程〕
上式(2)で表されるヘテロ環アミン(ジアゾ成分)のジアゾニウム塩への調製及びジアゾニウム塩と上式(3)で表される化合物(カップリング成分)とのカップリング反応は、慣用法によって実施できる。
【0050】
上式(2)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製は、例えば酸(例えば、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等)含有反応媒質中で、ニトロソニウムイオン源、例えば亜硝酸、亜硝酸塩又はニトロシル硫酸を用いる慣用のジアゾニウム塩調製方法が適用できる。
【0051】
より好ましい酸の例としては、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸、リン酸、硫酸を単独又は併用して用いる場合が挙げられ、その中でリン酸、又は酢酸と硫酸の併用系、酢酸とプロピオン酸の併用系、酢酸とプロピオン酸と硫酸の併用系が更に好ましく、酢酸とプロピオン酸の併用系、酢酸とプロピオン酸と硫酸の併用系が特に好ましい。
【0052】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸を用いることが好ましく、特にリン酸、硫酸、酢酸、プロピオン酸、メタンスルホン酸が好ましく、その中でも酢酸及び又はプロピオン酸が好ましい。
【0053】
好ましいニトロソニウムイオン源の例としては、亜硝酸エステル類、亜硝酸塩類、ニトロシル硫酸等が挙げられる。その中でも、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸イソアミル、ニトロシル硫酸(例えば、ONHSO硫酸溶液)が好ましく、特に亜硝酸イソアミル、ニトロシル硫酸(例えば、40質量%〜50質量%ONHSO硫酸溶液)が好ましく、その中でも上記の好ましい酸含有反応媒質中でニトロシル硫酸を用いることが安定にかつ効率的にジアゾニウム塩を調製できる。
【0054】
式(2)のジアゾ成分に対する溶媒の使用量は、0.5〜50質量倍が好ましく、より好ましくは1〜20質量倍であり、特に3〜15質量倍が好ましい。
【0055】
本発明において、式(2)のジアゾ成分は溶媒に分散している状態であっても、ジアゾ成分の種類によっては溶解液の状態になっていてもどちらでも良い。
【0056】
ニトロソニウムイオン源の使用量はジアゾ成分に対して0.95〜5.0当量が好ましく、より好ましくは1.00〜3.00当量であり、特に1.00〜1.10当量であることが好ましい。
【0057】
反応温度は、−15℃〜40℃が好ましく、より好ましくは−5℃〜35℃であり、更に好ましくは−0℃〜30℃である。−10℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また40℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0058】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から200分であり、更に好ましくは30分から150分である。
【0059】
〔カップリング反応工程〕
カップリング反応する工程は、酸性反応媒質中〜塩基性反応媒質中で実施することができるが、本発明のアゾ顔料は酸性〜中性反応媒質中で実施することが好ましく、特に酸性反応媒質中で実施することがジアゾニウム塩の分解を抑制し効率良くアゾ顔料に誘導することができる。
【0060】
反応媒質(溶媒)の好ましい例としては、有機酸、無機酸、有機溶媒を用いることができるが、特に有機溶媒が好ましく、反応時に液体分離現象を起こさず、溶媒と均一な溶液を呈する溶媒が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール等のアルコール性有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系有機溶媒、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール等のジオール系有機溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系有機溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトニトリル等が挙げられる、これらの溶媒は2種類以上の混合液であってもよい。
【0061】
好ましくは、極性パラメータ(ET)の値が40以上の有機溶媒である。なかでも溶媒分子中に水酸基を2個以上有するグリコール系の溶媒、あるいは炭素原子数が3個以下のアルコール系溶媒、総炭素数5以下のケトン系溶媒、好ましくは炭素原子数が2以下のアルコール溶媒(例えば、メタノール、エチレングリコール)、総炭素数4以下のケトン系溶媒(例えばアセトン、メチルエチルケトン)が好ましい。またこれらの混合溶媒も含まれる。
【0062】
溶媒の使用量は上記式(3)で表されるカップリング成分の1〜100質量倍が好ましく、より好ましくは1〜50質量倍であり、更に好ましくは2〜30質量倍である。
【0063】
本発明において、式(3)で表されるカップリング成分は溶媒に分散している状態であっても、カップリング成分の種類によっては溶解液の状態になっていてもどちらでも良い。
【0064】
カップリング成分の使用量は、アゾカップリング部位あたり、ジアゾ成分が0.95〜5.0当量が好ましく、より好ましくは1.00〜3.00当量であり、特に1.00〜1.50当量であることが好ましい。
【0065】
反応温度は、−30℃〜30℃が好ましく、より好ましくは−15℃〜10℃であり、更に好ましくは−10℃〜5℃である。−30℃未満では反応速度が顕著に遅くなり合成に要する時間が著しく長くなるため経済的でなく、また30℃を超える高温で合成する場合には、副生成物の生成量が増加するため好ましくない。
【0066】
反応時間は、30分から300分が好ましく、より好ましくは30分から200分であり、更に好ましくは30分から150分である。
【0067】
本発明のアゾ顔料組成物の製造方法においては、これらの反応によって得られる生成物(粗アゾ顔料)は通常の有機合成反応の後処理方法に従って処理した後、精製してあるいは精製せずに供することができる。
【0068】
すなわち、例えば、反応系から遊離したものを精製せずに、あるいは再結晶、造塩等にて精製する操作を単独、あるいは組み合わせて行ない、供することができる。
【0069】
また、反応終了後、反応溶媒を留去して、あるいは留去せずに水、又は氷にあけ、中和してあるいは中和せずに、遊離したものをあるいは有機溶媒/水溶液にて抽出したものを、精製せずにあるいは再結晶、晶析、造塩等にて精製する操作を単独に又は組み合わせて行なった後、供することもできる。
【0070】
更に詳細に本発明のアゾ顔料組成物の製造方法について説明する。
【0071】
本発明のアゾ顔料組成物の製造方法は、上記式(2)で表されるヘテロ環アミンをジアゾニウム化したジアゾニウム化合物と、上記式(3)で表される化合物とのカップリング反応において、該式(3)で表される化合物を有機溶媒に溶解させた後カップリング反応を行うことを特徴とする。
【0072】
上記式(2)で表されるヘテロ環アミンのジアゾニウム塩調製反応は、例えば、硫酸、リン酸、酢酸などの酸性溶媒中、亜硝酸ナトリウム、ニトロシル硫酸等の試薬と15℃以下の温度で10分〜6時間程度反応させることで行うことができる。カップリング反応は、上述の方法で得られたジアゾニウム塩と上記式(3)で表される化合物とを40℃以下、好ましくは15℃以下で10分〜12時間程度反応させることで行うことが好ましい。
【0073】
上述した互変異性及び/又は結晶多形の制御は、カップリング反応の際の製造条件で制御することができる。より好ましい形態である7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する式(1)の結晶(α型結晶形態アゾ顔料)を主成分とする顔料組成物を製造する方法としては、例えば、上記式(3)で表される化合物を有機溶媒に一度溶解させた後カップリング反応を行う本発明の方法を用いるのが好ましい。このとき使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール溶媒、ケトン系溶媒が挙げられる。アルコール溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等が好ましく、その中でもメタノールが特に好ましい。ケトン系溶媒の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が好ましく、その中でもアセトンが特に好ましい。
【0074】
本発明の別のアゾ顔料組成物の製造方法は、上記式(2)で表されるヘテロ環アミンをジアゾニウム化したジアゾニウム化合物と、上記式(3)で表される化合物とのカップリング反応において、極性非プロトン性溶媒の存在下カップリング反応を行うことを特徴とする。
【0075】
極性非プロトン性溶媒の存在下カップリング反応を行う方法によっても、7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する式(1)の結晶(α型結晶形態アゾ顔料)を主成分とする顔料組成物を効率よく製造することができる。極性非プロトン性溶媒の例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル、及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。これらの溶媒の中でも、アセトン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリルが特に好ましい。これらの溶媒を用いる場合、上記式(2)で表される化合物は溶媒に完溶していても完溶していなくてもよい。
【0076】
上記の製造方法によって得られた化合物を用途に応じて、精製工程として塩基を加えてpHを調整してもしなくても良い。pHを調整する場合、pHは4〜10が好ましい。その中でも、pHが5〜8がより好ましく、5.5〜7.5が特に好ましい。
【0077】
pHが10以下であれば、色相の観点で変色・褪色を引き起こすことなくが赤味を増すこともなく、一定品質の色相を確保する点の観点から好ましい。pHが4以上の場合には、例えば、インクジェット記録用インクとして用いた場合、ノズルを腐食してしまう等の問題が生じ難いため好ましい。
【0078】
上記の製造方法によって、上記式(1)で表される化合物は粗アゾ顔料(クルード)として得られる。
本発明は上記製造方法で製造されたアゾ顔料組成物にも関する。
【0079】
〔後処理工程〕
本発明の製造方法においては、後処理を行う工程を含むことが好ましい。この後処理工程の方法としては、例えば、ソルベントソルトミリング、ソルトミリング、ドライミリング、ソルベントミリング、アシッドペースティング等の磨砕処理、溶媒加熱処理などによる顔料粒子制御工程、樹脂、界面活性剤及び分散剤等による表面処理工程が挙げられる。
【0080】
本発明の上式(1)で表される化合物は後処理工程として溶媒加熱処理及び/又はソルベントソルトミリングを行うことが好ましい。例えば、水を除いた有機溶媒中で還流することにより目的とする結晶形態のアゾ顔料を製造できる。
【0081】
溶媒加熱処理に使用される溶媒としては、例えば、水、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、メチルエチルケトン、アセトニトリル等の極性非プロトン性有機溶媒、氷酢酸、ピリジン、又はこれらの混合物等が挙げられる。上記で挙げた溶媒に、更に無機又は有機の酸又は塩基を加えても良い。
【0082】
溶媒加熱処理の温度は所望する顔料の一次粒子径の大きさによって異なるが、40〜150℃が好ましく、60〜100℃が更に好ましい。また、処理時間は、30分〜24時間が好ましい。
【0083】
ソルベントソルトミリングとしては、例えば、粗アゾ顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練磨砕を行うことが挙げられる。上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。当該無機塩の使用量は、粗アゾ顔料に対して3〜20質量倍とするのが好ましく、5〜15質量倍とするのがより好ましい。有機溶剤としては、水溶性有機溶剤が好適に使用でき、混練時の温度上昇により溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から高沸点溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール又はこれらの混合物が挙げられる。当該水溶性有機溶剤の使用量は、粗アゾ顔料に対して0.1〜5質量倍が好ましい。混練温度は、20〜130℃が好ましく、40〜110℃が特に好ましい。混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0084】
本発明において、β型結晶形態アゾ顔料を含むアゾ顔料組成物の取得手段としては、上記式(2)で表されるヘテロ環アミンから誘導したジアゾニウム塩と、上記式(3)で表される化合物とをアゾカップリング反応させる工程の反応条件(溶媒種、pH値、反応温度、反応時間等)で制御する方法が挙げられる。更に、上記工程で得られたアゾ顔料を更に後工程で処理する際の条件(溶媒種、pH値、反応温度、反応時間等)で容易に得る事ができる。
【0085】
本発明のイエロー顔料分散物は、前記したように、式(1)で表されるアゾ顔料に加えて、A群のイエロー顔料を含有している。
このA群のイエロー顔料は、色相と画像堅牢性及び顔料分散性の観点から、C.I.ピグメントイエロー74,110,120,128,138,139,150,155,185,213からなる群より選択される少なくとも1種であるのが好ましく、C.I.ピグメントイエロー74,128,155,138,139,185,213からなる群より選択される少なくとも1種であるのがより好ましく、その中でも特にC.I.ピグメントイエロー74,128,155,185,213からなる群より選択される少なくとも1種であるのが最も好ましい。
【0086】
本発明のイエロー顔料分散物は、水系であっても非水系であってもよいが、水系の顔料分散物であることが好ましい。本発明の水系顔料分散物において顔料を分散する水性の液体は、水を主成分とし、所望により親水性有機溶剤を添加した混合物を用いることができる。前記親水性有機溶剤としては,例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等の他価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールものブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテートトリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール誘導体、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン等のアミン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0087】
更に、本発明の水系顔料分散物には水性樹脂を含んでいてもよい。水性樹脂としては,水に溶解する水溶解性の樹脂,水に分散する水分散性の樹脂,コロイダルディスパーション樹脂、又はそれらの混合物が挙げられる。水性樹脂として具体的には,アクリル系,スチレン−アクリル系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリウレタン系,フッ素系等の樹脂が挙げられる。
【0088】
更に、顔料の分散及び画像の品質を向上させるため,界面活性剤及び分散剤を用いてもよい。界面活性剤としては、アニオン性,ノニオン性,カチオン性,両イオン性の界面活性剤が挙げられ、いずれの界面活性剤を用いてもよいが、アニオン性、又は非イオン性の界面活性剤を用いるのが好ましい。アニオン性界面活性剤としては,例えば、脂肪酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ジアルキルスルホコハク酸塩,アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩,アルキルリン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩,ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物,ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩,グリセロールボレイト脂肪酸エステル,ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0089】
ノニオン性界面活性剤としては,例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル,ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー,ソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル,グリセリン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレン脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,フッ素系,シリコン系等が挙げられる。
【0090】
分散剤としては、ビニル重合体、変性ポリウレタン、ポリアミノアミドと酸エステルの塩、変性ポリエチレンイミン、変性ポリアリルアミンなどの重合体や塩基を含む市販分散剤を使用することができる。
【0091】
イエロー顔料分散物には分散剤を1種のみ添加してもよく、2種以上を併用してもよい。イエロー顔料分散物中の分散剤の含有量は、全顔料固形分に対し、10質量%〜150質量%が好ましく、更に10〜100質量%であることがより好ましく、その中でも特に30〜80質量%であることが最も好ましい。
また、イエロー顔料分散物中、分散剤を前記着色剤に対して10〜140質量%で含むことが好ましく、20〜80質量%で含むことがより好ましく、30〜55質量%で含むことが、分散物の経時安定性、インクジェット用インクの吐出性、印画濃度、印画物の色再現性等の点から特に好ましい。
【0092】
非水系顔料分散物は、上記式(1)で表される顔料及び上記A群のイエロー顔料を非水系ビヒクルに分散してなるものである。非水系ビヒクルに使用される樹脂は、例えば、石油樹脂、カゼイン、セラック、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートブチレート、環化ゴム、塩化ゴム、酸化ゴム、塩酸ゴム、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、乾性油、合成乾性油、スチレン/マレイン酸樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂塩素化ポリプロピレン、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂等が挙げられる。非水系ビヒクルとして、光硬化性樹脂を用いてもよい。
【0093】
また、非水系ビヒクルに使用される溶剤としては、例えば、トルエンやキシレン、メトキシベンゼン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤、エトキシエチルプロピオネート等のプロピオネート系溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクタム、N−メチル−2−ピロリドン、アニリン、ピリジン等の窒素化合物系溶剤、γ−ブチロラクトン等のラクトン系溶剤、カルバミン酸メチルとカルバミン酸エチルの48:52の混合物のようなカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0094】
本発明のイエロー顔料分散物は、更に高沸点有機溶媒を、イエロー顔料分散物の全量に対して0.1〜30質量%で含むことが好ましい。より好ましくは0.5〜20質量%であり、更に好ましくは1.0〜20質量%である。
高沸点有機溶媒は沸点が150℃以上の有機溶媒であり、170℃以上であるのが好ましい。例えば、特開2001−262018号、同2001−240763号、同2001−335734号、同2002−80772号の各公報に記載の高沸点有機溶媒を挙げることができる。中でも好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオグリコール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類、尿素、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンであり、より好ましくはプロピレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2−ピロリドンである。
【0095】
本発明のイエロー顔料分散物は、上記のアゾ顔料及び水系又は非水系の媒体とを、分散装置を用いて分散することで得られる。分散装置としては、簡単なスターラーやインペラー攪拌方式、インライン攪拌方式、ミル方式(例えば、コロイドミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、アトライター、ロールミル、ジェットミル、ペイントシェイカー、アジテーターミル等)、超音波方式、高圧乳化分散方式(高圧ホモジナイザー;具体的な市販装置としてはゴーリンホモジナイザー、マイクロフルイダイザー、DeBEE2000等)を使用することができる。
【0096】
本発明において、顔料分散物の体積平均粒子径は0.01μm〜0.2μmであることが好ましい。なお、顔料分散物の体積平均粒子径とは、顔料と顔料分散剤から形成された顔料分散物の粒子のサイズ、又は顔料と顔料分散物にシナジスト(顔料誘導体)等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した分散物中の粒子サイズ粒子径をいう。 本発明において、顔料の体積平均粒子径の測定装置には、ナノトラックUPA粒度分析計(UPA−EX150;日機装社製)を用いた。その測定は、顔料分散体3mlを測定セルに入れ、所定の測定方法に従って行った。なお、測定時に入力するパラメーターとしては、粘度にはインク粘度を、分散粒子の密度には顔料の密度を用いた。
【0097】
より好ましい体積平均粒子径は、20nm以上200nm以下であり、更に好ましくは30nm以上180nm以下であり、その中でも特に30nm以上150nm以下が最も好ましい。顔料分散物中の粒子の体積平均粒子径が20nm未満である場合には、保存安定性が確保できない場合が存在し、一方、250nmを超える場合には、光学濃度が低くなる場合が存在する。
【0098】
本発明のイエロー顔料分散物に含まれる全顔料の濃度は、1〜35質量%の範囲であることが好ましく、2〜25質量%の範囲であることがより好ましく、更に2〜20質量%の範囲であることが好ましく、その中でも特に5〜20質量%の範囲であることが好ましい。濃度が1質量%に満たないと、インクとして顔料分散物を単独で用いるときに十分な画像濃度が得られない場合がある。濃度が35質量%を超えると、分散安定性が低下する場合がある。
【0099】
本発明のイエロー顔料分散物の用途としては、画像、特にカラー画像を形成するための画像記録材料が挙げられ、具体的には、以下に詳述するインクジェット方式記録材料を始めとして、感熱記録材料、感圧記録材料、電子写真方式を用いる記録材料、転写式ハロゲン化銀感光材料、印刷インク、記録ペン等があり、好ましくはインクジェット方式記録材料、感熱記録材料、電子写真方式を用いる記録材料であり、更に好ましくはインクジェット方式記録材料である。
【0100】
また、CCDなどの固体撮像素子やLCD、PDP等のディスプレーで用いられるカラー画像を記録・再現するためのカラーフィルター、各種繊維の染色の為の染色液にも適用できる。
【0101】
本発明のイエロー顔料分散物は、用いられる系に応じて乳化分散状態、更には固体分散状態でも使用する事が出来る。
【0102】
本発明のイエロー顔料分散物は、上記式(1)で表されるアゾ顔料と上記A群のイエロー顔料とを着色剤として含有する。本発明のイエロー顔料分散物は、媒体を含有させることができるが、媒体として溶媒を用いた場合は特にインクジェット記録用インクとして好適である。本発明の着色組成物は、媒体として、親油性媒体や水性媒体を用いて、それらの中に、着色剤を分散させることによって作製することができる。好ましくは、水性媒体を用いる場合である。本発明のイエロー顔料分散物は、必要に応じてその他の添加剤を、本発明の効果を害しない範囲内において含有しうる。その他の添加剤としては、例えば、乾燥防止剤(湿潤剤)、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤(特開2003−306623号公報に記載)が挙げられる。これらの各種添加剤は、水系インクの場合にはインク液に直接添加する。油系インクの場合には、アゾ顔料分散物の調製後分散物に添加するのが一般的であるが、調製時に油相又は水相に添加してもよい。
【0103】
浸透促進剤は、インクジェット用インクを紙により良く浸透させる目的で好適に使用される。前記浸透促進剤としてはエタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を用いることができる。これらはインク中に1〜30質量%含有すれば通常充分な効果があり、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲で使用するのが好ましい。
本発明のイエロー顔料分散物は、浸透促進剤を、イエロー顔料分散物の全量に対して0.1〜20質量%で含むことが好ましい。より好ましくは1〜15質量%で含み、更に好ましくは3〜10質量%で含む。 本発明のイエロー顔料分散物は、浸透促進剤を、イエロー顔料分散物の全量に対して1〜20質量%で含むことが好ましい。より好ましくは1〜15質量%で含み、更に好ましくは3〜10質量%で含む。
【0104】
〔インクジェット記録用インク〕
本発明のインクジェット記録用インク(以下、「インク」という場合がある)は、上記で説明したイエロー顔料分散物を用いる。好ましくは、水溶性溶媒、水等を混合して調製される。ただし、特に問題がない場合は、前記本発明の顔料分散物をそのまま用いてもよい。
【0105】
インク中の顔料分散物の含有割合は、記録媒体上に形成した画像の色相、色濃度、彩度、透明性等を考慮すると、1〜100質量%の範囲が好ましく、3〜20質量%の範囲が特に好ましく、その中でも3〜10質量%の範囲がもっとも好ましい。
【0106】
インク100質量部中に、本発明で使用される顔料(すなわち、上記式(1)で表されるアゾ顔料と上記A群のイエロー顔料)を0.1質量部以上20質量部以下含有するのが好ましく、0.2質量部以上10質量部以下含有するのがより好ましく、更に1〜10質量部含有するのが好ましく、その中でも特に3.0〜8.0質量部含有するのが最も好ましい。また、本発明のインクには、上記の本発明で使用される顔料とともに、他の顔料を併用してもよい。他の顔料を更に併用する場合は、顔料の含有量の合計が前記範囲となっているのが好ましい。
【0107】
インクは、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。
【0108】
インクに用いられる水溶性溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
【0109】
具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
【0110】
前記多価アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0111】
また、前記含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が、含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が各々挙げられる。その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等を用いることもできる。
【0112】
本発明に使用される水溶性溶媒は、単独で使用しても、2種類以上混合して使用しても構わない。水溶性溶媒の含有量としては、インク全体の1質量%以上60質量%以下、好ましくは、5質量%以上40質量%以下で使用される。インク中の水溶性溶媒量が1質量%よりも少ない場合には、十分な光学濃度が得られない場合が存在し、逆に、60質量%よりも多い場合には、液体の粘度が大きくなり、インク液体の噴射特性が不安定になる場合が存在する。
【0113】
本発明におけるインクの好ましい物性は以下の通りである。インクの表面張力は、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上35mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となると記録ヘッドのノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると、印字後の記録媒体への浸透性が遅くなり、乾燥時間が遅くなる場合がある。なお、上記表面張力は、前記同様ウイルヘルミー型表面張力計を用いて、23℃、55%RHの環境下で測定した。
【0114】
インクの粘度は、1.2mPa・s以上8.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは1.5mPa・s以上6.0mPa・s未満、更に好ましくは1.8mPa・s以上4.5mPa・s未満である。粘度が8.0mPa・sより大きい場合には、吐出性が低下する場合がある。一方、1.2mPa・sより小さい場合には、長期噴射性が悪化する場合がある。
【0115】
なお、上記粘度(後述するものを含む)の測定は、回転粘度計レオマット115(Contraves社製)を用い、23℃でせん断速度を1400s-1として行った。
【0116】
インクには、前記各成分に加えて、上記の好ましい表面張力及び粘度となる範囲で、水が添加される。水の添加量は特に制限は無いが、好ましくは、インク全体に対して、10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは、30質量%以上80質量%以下である。
【0117】
更に必要に応じて、吐出性改善等の特性制御を目的とし、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、多糖類及びその誘導体、その他水溶性ポリマー、アクリル系ポリマーエマルション、ポリウレタン系エマルション、親水性ラテックス等のポリマーエマルション、親水性ポリマーゲル、シクロデキストリン、大環状アミン類、デンドリマー、クラウンエーテル類、尿素及びその誘導体、アセトアミド、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等を用いることができる。
【0118】
また、導電率、pHを調整するため、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物、水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物、硫酸、塩酸、硝酸等の酸、硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩等を使用することができる。
【0119】
その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、等も添加することができる。
【0120】
〔インクジェット記録方法、インクジェット記録用インクカートリッジ、インクジェット記録装置及びインクジェット記録物〕
インクジェット記録方法は、インクジェット記録用インクを用い、記録信号に応じてインクジェット記録装置の記録ヘッドから記録媒体表面にインクを吐出して、記録媒体表面に画像を形成する方法である。
ここで、インクジェット記録装置は、インクジェット記録用インクを用い、インク(必要により処理液)を記録媒体表面に吐出する記録ヘッドを備え、記録媒体表面に前記インクを記録ヘッドから吐出することにより、画像を形成する装置である。なお、インクジェット記録装置は、記録ヘッドに、インクを供給することができ、かつ、インクジェット記録装置本体に対して脱着可能なインクジェット記録用インクカートリッジ(以下、「インクカートリッジ」と称す場合がある)を備えていてもよい。この場合、このインクジェット記録用インクカートリッジには、インクが収納される。
【0121】
インクジェット記録装置としては、インクジェット記録用インクを用いることが可能な印字方式を備えた通常のインクジェット記録装置が利用でき、この他にも、必要に応じてインクのドライングを制御するためのヒーター等を搭載していたり、中間体転写機構を搭載し、中間体にインク及び処理液を吐出(印字)した後、紙等の記録媒体に転写する機構を備えたものであってもよい。
また、インクジェット記録用インクカートリッジは、記録ヘッドを備えたインクジェット記録装置に対して脱着可能であり、インクジェット記録装置に装着した状態で、記録ヘッドにインクを供給できる構成を有するものであれば、従来公知のインクカートリッジが利用できる。
【0122】
インクジェット記録方法(装置)は、滲み及び色間滲みの改善効果という観点から熱インクジェット記録方式、又は、ピエゾインクジェット記録方式を採用することが好ましい。熱インクジェット記録方式の場合、吐出時にインクが加熱され、低粘度となっているが、記録媒体上でインクの温度が低下するため、粘度が急激に大きくなる。このため、滲み及び色間滲みに改善効果がある。一方、ピエゾインクジェット方式の場合、高粘度の液体を吐出することが可能であり、高粘度の液体は記録媒体上での紙表面方向への広がりを抑制することが可能となるため、滲み、及び、色間滲みに改善効果がある。
【0123】
インクジェット記録方法(装置)において、インクの記録ヘッドへの補給(供給)は、インク液体が満たされたインクカートリッジ(必要により処理液タンクを含む)から行われることがよい。このインクカートリッジは、装置本体に脱着可能なカートリッジ方式であることがよく、このカートリッジ方式のインクカートリッジを交換することで、インクの補給が簡易に行われる。
【0124】
本発明のインクジェット記録物は、上記した本発明のインクジェット記録用インクを用いて画像が形成されてなる。ここで、画像の形成は、前記したインクジェット記録装置を用いたインクジェット記録方法を採用することによって、好適に得られる。
【0125】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例中、「部」とは質量部を表す。
【実施例】
【0126】
本発明の顔料組成物のX線回折の測定は、日本工業規格JISK0131(X線回析分析通則)に準じて、粉末X線回折測定装置RINT2500(株式会社リガク製)にてCuKα線を用い、次の条件で行ったものである。
【0127】
使用測定器 : Rigaku社製 自動X線回折装置RINT2500
X線巻球 : Cu
管電圧 : 55KV
管電流 : 280mA
スキャン方法 : 2θ/θスキャン
スキャン速度 : 6deg./min.
サンプリング間隔 :0.100deg.
スタート角度(2θ) : 5deg.
ストップ角度(2θ) : 55deg.
ダイバージェンススリット : 2deg.
スキャッタリングスリット : 2deg.
レジーピングスリット : 0.6mm
縦型ゴニオメータ使用
【0128】
〔合成例1〕アゾ顔料組成物(1)の合成
【0129】
アゾ顔料(1)の合成スキームを下記に示す。
【0130】
【化5】

【0131】
(1)中間体(a)の合成
シアノ酢酸メチル29.7g(0.3モル)にオルトギ酸トリメチル42.4g(0.4モル)、無水酢酸20.4g(0.2モル)、p−トルエンスルホン酸0.5gを加えて110℃(外温)に加熱し、反応系から生じる低沸点成分を留去しながら20時間攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(a)を14.1g(黄色粉末、収率30%)で得た。得られた中間体(a)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.96(s,1H), 4.15(s,3H), 3.81(s,3H)
【0132】
(2)中間体(b)の合成
メチルヒドラジン7.4mL(141ミリモル)にイソプロパノール150mLを加えて15℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(a)7.0g(49.6ミリモル)を徐々に添加した後、50℃に加熱して1時間40分攪拌した。この反応液を減圧濃縮した後、シリカゲルカラム精製を行い前記中間体(b)を10.5g(白色粉末、収率50%)で得た。得られた中間体(b)のNMR測定結果は以下の通りである。1H−NMR(300MHz、CDCl3)7.60(s,1H), 4.95(brs,2H), 3.80(s,3H), 3.60(s,3H)
【0133】
(3)中間体(c)の合成
メタノール1.1Lに水136mLを加えて、炭酸水素ナトリウム182g(2.17モル)を添加し、室温にて攪拌した。同温度にて塩化シアヌル200g(1.08モル)を分割添加した。添加終了後、内温を30℃まで昇温した。同温度にて30分間攪拌した後、水500mLを加え、析出した固体を濾別し、水500mL、メタノール300mLでかけ洗い後、乾燥を行い、前記中間体(c)を168g(白色粉末、収率86.2%)で得た。得られた中間体(c)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、CDCl)4.14(s,3H)
【0134】
(4)中間体(d)の合成
ヒドラジン1水和物363mL(7.46モル)に水673mLを加えて10℃(内温)に冷却し、この混合液に中間体(c)168g(934ミリモル)を徐々に添加(内温20℃以下)した後、氷浴をはずし、室温まで昇温し、同温度にて30分攪拌した。反応液から析出した結晶をろ取、水700mL、アセトニトリル1Lでかけ洗い後、乾燥を行い前記中間体(d)の粗精製物(白色粉末)を得た。
【0135】
(5)中間体(e)の合成
中間体(d)の粗精製物に、エチレングリコール480mLを加えて室温で攪拌した。この懸濁液にピバロイルアセトニトリル257g(2.06モル)を加え、内温が50℃になるまで加熱した。同温度にて12M塩酸水をpH3になるように滴下した後、内温が80℃になるまで加熱して3時間攪拌した。反応終了後、氷冷し内温が8℃になるまで冷却し、析出した結晶をろ取、水でかけ洗い後、シリカゲルカラム精製を行い、前記中間体(e)を105g(白色粉末、2工程収率29.2%)で得た。得られた中間体(e)のNMR測定結果は以下の通りである。
1H−NMR(300MHz、d−DMSO)7.00(s,4H), 5.35(s,2H), 4.05(s,3H), 1.22(s,18H)
【0136】
(6)アゾ顔料(1)の合成
酢酸125mLと硫酸24mLの混合液を氷冷し、内温を3℃まで冷却した。同温度にてニトロシル硫酸26.4gを添加し、続いて、同温度にて中間体(b)11.6gを分割添加して溶解させた。同温度にて1時間攪拌した後、同温度にて尿素1.2gを分割添加し、同温度にて15分間攪拌し、ジアゾニウム塩溶液を得た。別に、中間体(e)11.6gをメタノール405mLに室温にて完溶させ、氷冷して内温を−3℃に冷却した。同温にて、上述のジアゾニウム塩溶液を内温が3℃以下になるように分割添加し、添加終了後、2時間攪拌した。氷浴をはずし、室温にて10分間攪拌した後、析出した結晶を濾別し、メタノール150mLでかけ洗いし、更に水100mLでかけ洗いした。得られた結晶を乾燥せずに水750mLに懸濁させ、8規定の水酸化カリウム水溶液を添加して、pHを5.7にした。室温にて20分間攪拌した後、得られた結晶を濾別し、水で十分にかけ洗いしたのち、メタノール80mLでかけ洗いした。得られた結晶を室温にて、12時間乾燥させた。
【0137】
得られた結晶をジメチルアセトアミド180mLと水180mLの混合溶液に懸濁させた後、内温を85℃まで昇温し、同温度にて2時間攪拌した。その後、得られた結晶を熱時にて濾別し、メタノール300mLに懸濁し、室温にて30分攪拌した。得られた結晶を濾別し、室温にて5時間乾燥させ、アゾ顔料(1)を19.5g得た。収率90.3%。
得られたアゾ顔料(1)を透過型顕微鏡(日本電子(株)製:JEM−1010電子顕微鏡)で目視にて観察したところ、1次粒子の長軸方向の長さは、約150nmであった。
アゾ顔料(1)のX線回折の測定を上記の条件により行ったところ、ブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを示した。
CuKα特性X線回折図を図1に示す。
【0138】
〔合成例2〕ビニルポリマー溶液(1)の合成
下記モノマー組成の成分を全量が100質量部になるように混合し、更に重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1質量部添加し、窒素ガス置換を十分に行い、合成混合液を得た。
【0139】
フェノキシエチルメタクリレート 54.9質量部
メチルメタクリレート 35 質量部
メタクリル酸 10 質量部
2−メルカプトエタノール 0.1質量部
【0140】
次に、メチルエチルケトン100質量部を窒素雰囲気下で撹拌しながら75℃まで昇温させた。75℃、攪拌状態で上記合成混合液を3時間にわたって滴下した。更に75℃、攪拌状態で5時間反応を続けた。その後、反応合成物を25℃まで自然冷却した後、固形分が50%になるようにメチルエチルケトンを加えて希釈し、平均分子量41000のビニルポリマー溶液(1)を得た。
【0141】
〔実施例1〕顔料分散物1の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)を0.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物1(体積平均粒子径;Mv≒73nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0142】
〔実施例2〕顔料分散物2の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.0質量部、C.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)を0.5質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物2(体積平均粒子径;Mv≒78nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0143】
〔実施例3〕顔料分散物3の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を1.5質量部、C.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)を1.0質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物3(体積平均粒子径;Mv≒82nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0144】
〔実施例4〕顔料分散物4の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を1.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)を1.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物4(体積平均粒子径;Mv≒83nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0145】
〔実施例5〕顔料分散物5の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を0.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物5(体積平均粒子径;Mv≒75nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0146】
〔実施例6〕顔料分散物6の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.0質量部、C.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を0.5質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物6(体積平均粒子径;Mv≒80nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0147】
〔実施例7〕顔料分散物7の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を1.5質量部、C.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を1.0質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物7(体積平均粒子径;Mv≒84nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0148】
〔実施例8〕顔料分散物8の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を1.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)を1.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、2時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物8(体積平均粒子径;Mv≒83nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0149】
〔実施例9〕顔料分散物9の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー110(チバスペシャリティ社製IRGAZIN YELLOW 2RLT)を0.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物9(体積平均粒子径;Mv≒81nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0150】
〔実施例10〕顔料分散物10の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー128(チバスペシャリティ社製CROMOPHTAL YELLOW 8GN)を0.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物10(体積平均粒子径;Mv≒84nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0151】
〔実施例11〕顔料分散物11の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー138(BASF社製PALIOTOL L YELLOW 0960 HD)を0.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物11(体積平均粒子径;Mv≒81nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0152】
〔実施例12〕顔料分散物12の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー139(BASF社製PALIOTOL D YELLOW 1891)を0.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物12(体積平均粒子径;Mv≒83nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0153】
〔実施例13〕顔料分散物13の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー150(チバスペシャリティ社製CROMOPHTAL YELLOW LA2)を0.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物13(体積平均粒子径;Mv≒70nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0154】
〔実施例14〕顔料分散物14の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー185(BASF社製PALIOTOL YELLOW D1155)を0.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物14(体積平均粒子径;Mv≒76nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0155】
〔実施例15〕顔料分散物15の作製
合成例1で合成したアゾ顔料(1)を2.25質量部、C.I.ピグメント・イエロー213(クラリアント社製Hostaperm Yellow H5G)を0.25質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った。分散終了後、ジルコニアビーズを分離し、黄色の顔料分散物15(体積平均粒子径;Mv≒70nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)を得た。
【0156】
〔比較例1〕比較顔料分散物1の作製
実施例1で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー74の0.25質量部の計2.5質量部を、C.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例1と同様にして分散時間を顔料分散物の体積平均粒子径(Mv)が100nm以下(体積平均粒子径;Mv≒68nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)になるまで実施して、黄色の比較顔料分散物1を得た。
【0157】
〔比較例2〕比較顔料分散物2の作製
実施例5で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー155の0.25質量部の計2.5質量部を、C.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例5と同様にして分散時間を顔料分散物の体積平均粒子径(Mv)が100nm以下(体積平均粒子径;Mv≒38nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)になるまで実施して、黄色の比較顔料分散物2を得た。
【0158】
〔比較例3〕比較顔料分散物3の作製
実施例9で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー110の0.25質量部の計2.5質量部を、C.I.ピグメント・イエロー110(チバスペシャリティ社製IRGAZIN YELLOW 2RLT)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例9と同様にして分散時間を顔料分散物の体積平均粒子径(Mv)が100nm以下(体積平均粒子径;Mv≒55nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)になるまで実施して、黄色の比較顔料分散物3を得た。
【0159】
〔比較例4〕比較顔料分散物4の作製
実施例10で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー128の0.25質量部の計2.5質量部を、C.I.ピグメント・イエロー128(チバスペシャリティ社製CROMOPHTAL YELLOW 8GN)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例10と同様にして分散時間を顔料分散物の体積平均粒子径(Mv)が100nm以下(体積平均粒子径;50Mv≒nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)になるまで実施して、黄色の比較顔料分散物4を得た。
【0160】
〔比較例5〕比較顔料分散物5の作製
実施例11で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー138の0.25質量部の計2.5質量部を、C.I.ピグメント・イエロー138(BASF社製PALIOTOL L YELLOW 0960 HD)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例11と同様にして分散時間を顔料分散物の体積平均粒子径(Mv)が100nm以下(体積平均粒子径;Mv≒78nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)になるまで実施して、黄色の比較顔料分散物5を得た。
【0161】
〔比較例6〕比較顔料分散物6の作製
実施例12で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー139の0.25質量部の計2.5質量部を、C.I.ピグメント・イエロー139(BASF社製PALIOTOL D YELLOW 1891)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例12と同様にして分散時間を顔料分散物の体積平均粒子径(Mv)が100nm以下(体積平均粒子径;Mv≒51nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)になるまで実施して、黄色の比較顔料分散物6を得た。
【0162】
〔比較例7〕比較顔料分散物7の作製
実施例13で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー150の0.25質量部の計2.5質量部を、C.I.ピグメント・イエロー150(チバスペシャリティ社製CROMOPHTAL YELLOW LA2)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例13と同様にして分散時間を顔料分散物の体積平均粒子径(Mv)が100nm以下(体積平均粒子径;Mv67≒nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)になるまで実施して、黄色の比較顔料分散物7を得た。
【0163】
〔比較例8〕比較顔料分散物8の作製
実施例14で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー185の0.25質量部の計2.5質量部を、C.I.ピグメント・イエロー185(BASF社製PALIOTOL YELLOW D1155)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例14と同様にして分散時間を顔料分散物の体積平均粒子径(Mv)が100nm以下(体積平均粒子径;Mv70≒nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)になるまで実施して、黄色の比較顔料分散物8を得た。
【0164】
〔比較例9〕比較顔料分散物9の作製
実施例15で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー213の0.25質量部の計2.5質量部を、C.I.ピグメント・イエロー213(クラリアント社製Hostaperm Yellow H5G)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例15と同様にして分散時間を顔料分散物の体積平均粒子径(Mv)が100nm以下(体積平均粒子径;Mv≒44nm:日機装(株)製Nanotrac150(UPA−EX150)を用いて測定)になるまで実施して、黄色の比較顔料分散物9を得た。
【0165】
〔比較例10〕比較顔料分散物10の作製
実施例1で用いたアゾ顔料(1)の2.25質量部及びC.I.ピグメント・イエロー74の0.25質量部の計2.5質量部を下記式で表される化合物(DYE−A)の2.5質量部に置き換えた以外は実施例1と同様にして行ったところ、溶解してしまい、分散できなかった。
【0166】
【化6】

【0167】
<分散性>
顔料2.5質量部、オレイン酸ナトリウム0.5質量部、グリセリン5質量部、水42質量部を混合し、直径0.1mmのジルコニアビーズ100質量部とともに遊星型ボールミルを用いて毎分300回転、3時間分散を行った地点での分散物の粒子径測定の結果、100nm以上の粗大粒子が確認されるものを×、分散できなかったものを××、ほとんど確認されないものを○として、本発明の顔料分散物1〜15、比較顔料分散物1〜10を評価した。結果を表−1に示す。
【0168】
<分散物安定性>
上記実施例1〜15、及び比較例1〜9で得られた顔料分散物を室温にて4週間静置した。その結果、沈殿物が目視で確認されるものを×、沈殿物が確認されなかったものを○とした。結果を表−1に示す。
【0169】
<着色力評価>
上記実施例1〜15、及び比較例1〜9で得られた顔料分散物をNo.3のバーコーターを用いてエプソン社製フォトマット紙に塗布した。得られた塗布物の画像濃度を反射濃度計(X−Rite社製X−Rite938)を用いて測定し、「着色力(OD:Optical Density)」を以下の基準で評価した。ODが1.4以上の場合を◎、1.2以上で1.4未満の場合を○、1.2未満の場合を×とした。結果を表−1に示す。
【0170】
<色相評価>
色相については、上記で得られた塗布物の色度を目視にて緑味が少なく鮮やかさが大きいものを◎(良好)、どちらか一方が当てはまらないものを○、及びどちらも当てはまらないものを×(不良)として評価を行った。結果を表−1に示す。
【0171】
<光堅牢性評価>
色相評価に用いた画像濃度1.0の塗布物を作成し、フェードメーターを用いてキセノン光(99000lux;TACフィルター存在下)を14日間照射し、キセノン照射前後の画像濃度を反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]が90%以上の場合を◎、80%以上90%未満の場合を○、60%以上80%未満の場合を△、60%未満の場合を×として、顔料分散物1〜15、及び比較顔料分散物1〜9を評価した。結果を表−1に示す。
【0172】
<オゾンガス堅牢性評価>
色相評価に用いた画像濃度1.0の塗布物を作成し、オゾン濃度5.0ppm25℃湿度50%条件下を28日間曝露し、オゾンガス曝露前後の画像濃度を反射濃度計を用いて測定し、色素残存率[(照射後濃度/照射前濃度)×100%]が90%以上の場合を◎、80%以上90%未満の場合を○、70%以上80%未満の場合を△、70%未満の場合を×として、顔料分散物1〜15、及び比較顔料分散物1〜9を評価した。結果を表−1に示す。
なお、例えば表中の「(1)/PY−74=9/1」は、アゾ顔料(1)とC.I.ピグメントイエロー74を9:1の質量比で用いたことを表す。
【0173】
【表1】

【0174】
〔実施例16〕黄色顔料インク液1の作製
実施例1で得られた黄色の顔料分散物1を固形分で5質量%、グリセリン10質量%、2−ピロリドン5質量%、1,2―ヘキサンジオール2質量%、トリエチレングリコールモノブチルエーテル2質量%、プロピレングリコール0.5質量%、サーフィノール465(エアープロダクツ社製のノニオン系界面活性剤)1質量%、イオン交換水74.5質量%になる様に各成分を加えて、得られた混合液を1.2μmのフィルター(アセチルセルロース膜、外径:25mm、富士フイルム(株)製)を取り付けた容量20mlのシリンジで濾過し、粗大粒子を除去することにより黄色顔料インク液1を得た。
【0175】
〔実施例17〕黄色顔料インク液2の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例2で得られた顔料分散物2を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液2を得た。
【0176】
〔実施例18〕黄色顔料インク液3の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例3で得られた顔料分散物3を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液3を得た。
【0177】
〔実施例19〕黄色顔料インク液4の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例4で得られた顔料分散物4を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液4を得た。
【0178】
〔実施例20〕黄色顔料インク液5の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例5で得られた顔料分散物5を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液5を得た。
【0179】
〔実施例21〕黄色顔料インク液6の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例6で得られた顔料分散物6を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液6を得た。
【0180】
〔実施例22〕黄色顔料インク液7の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例7で得られた顔料分散物7を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液7を得た。
【0181】
〔実施例23〕黄色顔料インク液8の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例8で得られた顔料分散物8を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液8を得た。
【0182】
〔実施例24〕黄色顔料インク液9の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例9で得られた顔料分散物9を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液9を得た。
【0183】
〔実施例25〕黄色顔料インク液10の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例10で得られた顔料分散物10を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液10を得た。
【0184】
〔実施例26〕黄色顔料インク液11の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例11で得られた顔料分散物11を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液11を得た。
【0185】
〔実施例27〕黄色顔料インク液12の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例12で得られた顔料分散物12を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液12を得た。
【0186】
〔実施例28〕黄色顔料インク液13の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例13で得られた顔料分散物13を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液13を得た。
【0187】
〔実施例29〕黄色顔料インク液14の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例14で得られた顔料分散物14を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液14を得た。
【0188】
〔実施例30〕黄色顔料インク液15の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、実施例15で得られた顔料分散物15を用いた以外は、実施例16と同様にして黄色顔料インク液15を得た。
【0189】
〔比較例11〕比較黄色顔料インク液1の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、比較例1で得られた比較顔料分散物1を用いた以外は、実施例16と同様にして比較黄色顔料インク液1を得た。
【0190】
〔比較例12〕比較黄色顔料インク液2の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、比較例2で得られた比較顔料分散物2を用いた以外は、実施例16と同様にして比較黄色顔料インク液2を得た。
【0191】
〔比較例13〕比較黄色顔料インク液3の作製
黄色の顔料分散物1に代えて、比較例4で得られた比較顔料分散物4を用いた以外は、実施例16と同様にして比較黄色顔料インク液3を得た。
【0192】
〔実施例31〕
上記実施例16〜30及び比較例11〜13のイエロー顔料インク液をセイコーエプソン(株)社製インクジェットプリンターPX−V630のイエローインク液のカートリッジに充填し、受像紙はセイコーエプソン(株)社製写真用紙クリスピア<高光沢>、カラー設定:色補正なし、印刷品質:フォトで、イエローのOD値が0.7〜1.8になるように階段状に濃度が変化したイエローの単色画像パターンを印画させ記録物を得た。該記録物の、色相、印画特性、画像堅牢性(耐光性・耐オゾンガス性)並びに画像品質の評価を行った。
【0193】
〔色相試験方法〕
インクジェットプリンターで、階段状に濃度が変化したイエローの単色画像パターンを印画させた実施例31の各記録物の反射濃度を分光光度計GRETAG SPM−50(GRETAG社製)を用いて測定した。
測定条件は、光源D50、光源フィルターなしで、白色標準は絶対白とし、視野角は2°とし、CIEで規定したL*値、a*値、b*値を得た。以下の判定基準に基づき評価した。
【0194】
[判定基準]
評価◎:a*=0の場合に、b*≧95かつb*=95のときa*≦−5、
−5≦a*≦0の場合に、b*≦30かつ60≦b*≦95のときa*≦−10
評価○:評価◎の条件で、どれか一方が当てはまらないもの
評価×:評価◎の条件で、どれにも当てはまらないもの
【0195】
〔着色力評価〕
上記イエロー顔料インク液をセイコーエプソン(株)社製インクジェットプリンターPX−V630のイエローインク液のカートリッジに装填し、受像シートはセイコーエプソン(株)社製写真用紙クリスピア<高光沢>にカラー設定:色補正なし、印刷品質:フォトで、イエローのベタ印画パターンを作成し単色濃度で2.0≦ODmaxのものを◎、1.8≦ODmax<2.0のものを○、1.5≦ODmax<1.8のものを×として評価した。
【0196】
〔光堅牢性試験方法〕
ウェザーメーター(アトラス社製)を使用し、画像にキセノン光(9.9万ルックス)を14日照射した。照射開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用して実施例31の各記録物に記録されている単色(イエロー)のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.7、1.0及び1.8の3点で測定した。
得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D)×100を用いて、光学濃度残存率(ROD)を求めた。(式中、Dは曝露試験後のOD値、Dは曝露試験前のOD値を表す。)
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された画像の耐光性を評価した。
【0197】
(判定基準)
評価◎:試験開始から14日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価○:試験開始から14日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価△:試験開始から14日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価×:試験開始から14日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
本試験においては、光に長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。
得られた結果を「光堅牢性」として表2−1に示した。
【0198】
〔オゾンガス堅牢性試験方法〕
オゾンガス濃度が5ppm(25℃;50%RH)に設定された条件下で記録物を28日間、オゾンガスに曝露した。オゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。曝露開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用してセイコーエプソン(株)社製写真用紙クリスピア<高光沢>に記録されている単色(イエロー)のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.7、1.0及び1.8の3点で測定した。
得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D)×100を用いて、光学濃度残存率(ROD)を求めた。(式中、Dは曝露試験後のOD値、Dは曝露試験前のOD値を表す。)
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された画像の耐オゾン性を評価した。
【0199】
(判定基準)
評価◎:試験開始から28日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価○:試験開始から28日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価△:試験開始から28日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価×:試験開始から28日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
本試験においては、オゾンに長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。
得られた結果を「オゾンガス堅牢性」として表2−1に示した。
【0200】
【表2】

【0201】
〔実施例32〕
上記実施例16〜30及び比較例11〜13のイエロー顔料インク液をセイコーエプソン(株)社製インクジェットプリンターPX−V630のイエローインク液のカートリッジに充填し、受像紙はゼロックス(株)社製普通紙(4024)にカラー設定:色補正なし、印刷品質:フォトで、イエローのOD値が0.3〜1.0になるように階段状に濃度が変化したイエローの単色画像パターンを印画させ記録物を得た。該記録物の画像堅牢性(耐光性・耐オゾンガス性)の評価を行った。
【0202】
〔光堅牢性試験方法〕
ウェザーメーター(アトラス社製)を使用し、画像にキセノン光(9.9万ルックス)を7日照射した。照射開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用して実施例32の各記録物に記録されている単色(イエロー)のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.5、0.8及び1.0の3点で測定した。
得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D)×100を用いて、光学濃度残存率(ROD)を求めた。(式中、Dは曝露試験後のOD値、Dは曝露試験前のOD値を表す。)
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された画像の光堅牢性を評価した。
【0203】
(判定基準)
評価◎:試験開始から7日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価○:試験開始から7日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価△:試験開始から7日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価×:試験開始から7日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
本試験においては、光に長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。
得られた結果を「光堅牢性」として表2−2に示した。
【0204】
〔オゾンガス堅牢性試験方法〕
オゾンガス濃度が5ppm(25℃;50%RH)に設定された条件下で記録物を14日間、オゾンガスに曝露した。オゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。曝露開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用してゼロックス(株)社製普通紙<4024>に記録されている単色(イエロー)のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.5、0.8及び1.0の3点で測定した。
得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D)×100を用いて、光学濃度残存率(ROD)を求めた。(式中、Dは曝露試験後のOD値、Dは曝露試験前のOD値を表す。)
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された画像のオゾンガス堅牢性を評価した。
【0205】
(判定基準)
評価◎:試験開始から14日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価○:試験開始から14日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価△:試験開始から14日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価×:試験開始から14日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
本試験においては、オゾンに長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。
得られた結果を「オゾンガス堅牢性」として表2−2に示した。
【0206】
【表3】

【0207】
[実施例41]
(顔料含有高分子ビニルポリマー粒子の水分散物の調製)
合成例2で得られた、固形分が50%の高分子ビニルポリマー溶液(1)10質量部に5mol/L水酸化ナトリウム水溶液を加えて中和した。なお、高分子ビニルポリマーのメタクリル酸あるいはアクリル酸を完全中和するアルカリ量を添加した。合成例1で合成したアゾ顔料(1)9.5質量部とC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部を加え、ロールミルで4時間混練した。混練物をイオン交換水100質量部に分散した。得られた分散物から減圧下、55℃で有機溶媒を完全に除去し、更に水を除去することにより濃縮し、固形分濃度が15質量%の顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散物を得た。
【0208】
(自己分散性ポリマー微粒子の調製)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン350.0gを仕込んで、75℃まで昇温した。反応容器内温度を75℃に保ちながら、フェノキシエチルアクリレート162.0g、メチルメタクリレート180.0g、アクリル酸18.0g、メチルエチルケトン70g、及び重合開始剤「V−601」(和光純薬(株)製)1.44gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、「V−601」0.72g、メチルエチルケトン36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌後、更に「V−601」0.72g、イソプロパノール36.0gからなる溶液を加え、75℃で2時間攪拌した後、85℃に昇温して、更に2時間攪拌を続けた。得られた共重合体の質量平均分子量(Mw)は64000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は38.9(mgKOH/g)であった。 次に、室温の上記混合溶液668.3gを秤量し、イソプロパノール388.3g、1mol/LNaOH水溶液145.7mlを加え、その後反応容器内温度を80℃に昇温した。
次に蒸留水720.1gを20ml/minの速度で滴下し、水分散化せしめた。その後、大気圧下にて反応容器内温度80℃で2時間、85℃で2時間、90℃で2時間保った後、反応容器内を減圧にし、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で913.7g留去し、固形分濃度28.0%の自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物(エマルジョン)を得た。
【0209】
上記顔料含有ビニルポリマー粒子の水分散物 25質量部
グリセリン 5質量部
ジエチレングリコール 5質量部
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 5質量部
ポリオキシプロピレングリセリルエーテル 10質量部
ジプロピレングリコール 5質量部
トリエタノールアミン 1質量部
オルフィンE1010(日信化学工業(株)製) 1質量部
自己分散性ポリマー微粒子(B−01)の水分散物 15質量部
イオン交換水 28質量部
上記を混合しイエロー顔料インク組成物21を得た。
東亜DKK(株)製pHメータ−WM−50EGにて、インク組成物のpHを測定したところ、pHは8.5であった。
[実施例42]
実施例41で用いたアゾ顔料(1)9.5質量部とC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えて、アゾ顔料(1)9質量部とC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)1質量部を用いた以外は実施例41と同様にしてイエロー顔料インク組成物22を得た。
【0210】
[実施例43]
実施例41で用いたC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えて、C.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)質量0.5部を用いた以外は実施例41と同様にしてイエロー顔料インク組成物23を得た。
【0211】
[実施例44]
実施例41で用いたC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えて、C.I.ピグメント・イエロー110(チバスペシャリティ社製IRGAZIN YELLOW 2RLT)0.5質量部を用いた以外は実施例41と同様にしてイエロー顔料インク組成物24を得た。
【0212】
[実施例45]
実施例41で用いたC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えて、C.I.ピグメント・イエロー128(チバスペシャリティ社製CROMOPHTAL YELLOW 8GN)0.5質量部を用いた以外は実施例41と同様にしてイエロー顔料インク組成物25を得た。
【0213】
[実施例46]
実施例41で用いたC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えて、C.I.ピグメント・イエロー138(BASF社製PALIOTOL L YELLOW 0960 HD)0.5質量部を用いた以外は実施例41と同様にしてイエロー顔料インク組成物26を得た。
【0214】
[実施例47]
実施例41で用いたC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えて、C.I.ピグメント・イエロー139(BASF社製PALIOTOL D YELLOW 1891)0.5質量部を用いた以外は実施例41と同様にしてイエロー顔料インク組成物27を得た。
【0215】
[実施例48]
実施例41で用いたC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えて、C.I.ピグメント・イエロー150(チバスペシャリティ社製CROMOPHTAL YELLOW LA2)0.5質量部を用いた以外は実施例41と同様にしてイエロー顔料インク組成物28を得た。
【0216】
[実施例49]
実施例41で用いたC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えて、C.I.ピグメント・イエロー185(BASF社製PALIOTOL YELLOW D1155)0.5質量部を用いた以外は実施例41と同様にしてイエロー顔料インク組成物29を得た。
【0217】
[実施例50]
実施例41で用いたC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えて、C.I.ピグメント・イエロー213(クラリアント社製Hostaperm Yellow H5G)1質量部を用いた以外は実施例41と同様にしてイエロー顔料インク組成物30を得た。
【0218】
[比較例21]
実施例41で用いたアゾ顔料(1)9.5質量部とC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えてC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)10質量部を用いた以外は実施例41と同様にして比較イエローインク組成物21を得た。
【0219】
[比較例22]
実施例41で用いたアゾ顔料(1)9.5質量部とC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えてC.I.ピグメント・イエロー155(クラリアント社製INKJET YELLOW 4G VP2532)10質量部を用いた以外は実施例41と同様にして比較イエローインク組成物22を得た。
【0220】
[比較例23]
実施例41で用いたアゾ顔料(1)9.5質量部とC.I.ピグメント・イエロー74(チバスペシャリティ社製Iralite YELLOW GO)0.5質量部に替えてC.I.ピグメント・イエロー128(チバスペシャリティ社製CROMOPHTAL YELLOW 8GN)10質量部を用いた以外は実施例41と同様にして比較イエローインク組成物23を得た。
【0221】
[実施例51]
上記実施例41〜50及び比較例21,22,23のイエロー顔料インク液をセイコーエプソン(株)社製インクジェットプリンターPX−V630のイエローインク液のカートリッジに装填し、受像シートはセイコーエプソン(株)社製写真用紙クリスピア<高光沢>にカラー設定:色補正なし、印刷品質:フォトでイエローのOD値が0.7〜1.8になるように階段状に濃度が変化したイエローの単色画像パターンを印画させて、それぞれ、記録物を得た。該記録物の色相、印画特性並びに画像堅牢性の評価を行った。
【0222】
〔色相試験方法〕
階段状に濃度が変化したイエローの単色画像パターンを印画させて得られた実施例51の各記録物の反射濃度を分光光度計GRETAG SPM−50(GRETAG社製)を用いて測定した。
測定条件は、光源D50、光源フィルターなしで、白色標準は絶対白とし、視野角は2°とし、CIEで規定したL*値、a*値、b*値を得た。以下の判定基準に基づき評価し、結果を表3に示した。
【0223】
[判定基準]
評価◎:a*=0のとき、b*≧95 かつ b*=95のとき a*≦−5
−5≦a*≦0の場合に、b*≦30 かつ 60≦b*≦95のとき、a*≦−10
評価○:評価◎の条件で、どれか一方が当てはまらないもの
評価△:評価◎の条件で、どれにも当てはまらないもの
【0224】
〔着色力評価〕
上記実施例41〜50及び比較例21,22,23のイエロー顔料インク液をセイコーエプソン(株)社製インクジェットプリンターPX−V630のイエローインク液のカートリッジに装填し、受像シートはセイコーエプソン(株)社製写真用紙クリスピア<高光沢>にカラー設定:色補正なし、印刷品質:フォトで、イエローのベタ印画パターンを作成し単色濃度で2.0≦ODmaxのものを◎、1.8≦ODmax<2.0のものを○、1.5≦ODmax<1.8のものを△、ODmax<1.5のものを×と評価した。得られた結果を、表3に「着色力」として示した。
【0225】
〔光堅牢性試験方法〕
ウェザーメーター(アトラス社製)を使用し、実施例51の各記録物の画像にキセノン光(10万ルックス)を42日照射した。照射開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用して各記録物に記録されている色(イエロー)のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.7、1.0及び1.8の3点で測定した。
得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D)×100を用いて、光学濃度残存率(ROD)を求めた。(式中、Dは曝露試験後のOD値、Dは曝露試験前のOD値を表す。)
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された色(イエロー)の光堅牢性を以下の判定基準に基づき評価した。
[判定基準]
評価◎:試験開始から42日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価○:試験開始から42日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価△:試験開始から42日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価×:試験開始から42日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
本試験においては、光に長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。得られた結果を「光堅牢性」として表3に示した。
【0226】
〔オゾンガス堅牢性試験方法〕
オゾンガス濃度が5ppm(25℃;50%RH)に設定された条件下で実施例51の各記録物を28日間、オゾンガスに曝露した。オゾンガス濃度は、APPLICS製オゾンガスモニター(モデル:OZG−EM−01)を用いて設定した。曝露開始から一定期間経過ごとに、反射濃度計(X−Rite310TR)を使用して各印刷物に記録されている色(イエロー)のOD値を測定した。なお、前記反射濃度は、0.7、1.0及び1.8の3点で測定した。
得られた結果から次式:ROD(%)=(D/D)×100を用いて光学濃度残存率(ROD)を求めた。(式中、Dは曝露試験後のOD値、Dは曝露試験前のOD値を表す。)
【0227】
更に、上記試験の結果に基づき、下記の判定基準を用いて、記録物に記録された色(イエロー)のオゾンガス堅牢性を以下の判定基準に基づき評価した。
[判定基準]
評価◎:試験開始から28日後のRODが、何れの濃度でも85%以上である。
評価○:試験開始から28日後のRODが、何れか1点の濃度が85%未満になる。
評価△:試験開始から28日後のRODが、何れか2点の濃度が85%未満になる。
評価×:試験開始から28日後のRODが、全ての濃度で85%未満になる。
【0228】
本試験においては、オゾンに長時間曝露してもRODの低下が少ない記録物が優れる。得られた結果を「オゾンガス堅牢性」として表3に示した。
【0229】
【表4】

【0230】
これらの結果から、本発明のイエロー顔料分散物は、易分散性であり顔料分散物の安定性が良好であり、また、イエローとしての色相に優れ、着色力が高く、耐光性・耐オゾンガス性にも優れることがわかった。
したがって、本発明のイエロー顔料分散物は、例えば、インクジェットなどの印刷用のインク、電子写真用のカラートナー、LCD、PDPなどのディスプレーやCCDなどの撮像素子で用いられるカラーフィルター、塗料、着色プラスチック等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)で表されるアゾ顔料または互変異性体を少なくとも1種と、
C.I.ピグメントイエロー1,2,3,12,13,14,16,17,73,74,75,83,93,95,97,98,109,110,114,120,128,138,139,150,151,154,155,180,185,213からなる群より選択される少なくとも1種とを含む着色剤を含有することを特徴とするイエロー顔料分散物。
【化1】

【請求項2】
前記アゾ顔料または互変異性体が、CuKα特性X線回折におけるブラッグ角(2θ±0.2°)が7.2°及び25.9°に特徴的なX線回折ピークを有する請求項1に記載のイエロー顔料分散物。
【請求項3】
前記アゾ顔料または互変異性体を、前記イエロー顔料分散物中の全顔料固形分に対して10質量%以上含む請求項1または2に記載のイエロー顔料分散物。
【請求項4】
さらに分散剤を、前記着色剤に対して10〜140質量%で含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のイエロー顔料分散物。
【請求項5】
さらに高沸点有機溶媒を、イエロー顔料分散物の全量に対して0.1〜30質量%で含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のイエロー顔料分散物。
【請求項6】
さらに浸透促進剤を、イエロー顔料分散物の全量に対して1〜20質量%で含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のイエロー顔料分散物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のイエロー顔料分散物を含むインクジェット記録用インク。
【請求項8】
請求項7に記載のインクジェット記録用インクを含むインクジェット記録用カートリッジ。
【請求項9】
請求項7に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像を形成するインクジェット記録方法。
【請求項10】
請求項7に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像を形成するインクジェット記録装置。
【請求項11】
請求項7に記載のインクジェット記録用インクを用いて画像が形成されてなるインクジェット記録物。

【図1】
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【公開番号】特開2010−235937(P2010−235937A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53666(P2010−53666)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】