説明

イオナイザー

【課題】コロナ放電を安定して発生させることができると共にコロナ放電によって発生するイオンを効率的に外部に取り出し除電対象物を効果的に除電する。
【解決手段】コロナ放電によって生成される正及び負のイオンによって除電対象物の静電気を除去するイオナイザー1であって、放電電極6Aと接地電極8Aとを有し、放電電極6Aの先端部6Aaと接地電極8Aとが最近接距離L1を隔てて配置されるコロナ電極3Aと、放電電極6Bと接地電極8Bとを有し、放電電極6Bの先端部6Baと接地電極8Bとが最近接距離L2を隔てて配置されるコロナ電極3Bとを有し、コロナ電極3Aとコロナ電極3Bとは、その先端部6Aa,6Baが向き合うように距離gを隔てて対向配置され、L1,L2が共にgの1/2よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナ放電によって生成される正及び負のイオンのうち、少なくともいずれか一方のイオンによって除電対象物の静電気を除去するイオナイザーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、静電気で帯電した物の除電を行う手段として、各種イオナイザーを用いて大気中の気体分子をイオン化し、このイオンを帯電した表面に照射して帯電を中和することが行われている。つまり、物の表面が正に帯電している場合には負に帯電したイオンを照射し、物の表面が負に帯電している場合には正に帯電したイオンを照射して、それぞれ物の表面に帯電した電荷を中和することによる除電が行われている。この方法によれば、物の表面に帯電した電荷と等量の逆極性の電荷を供給する必要があり、供給が過剰であれば物の表面が逆の電位に帯電し、供給が不足すれば充分に除電がなされないという問題を有することになる。更に、現実の帯電した誘電体の表面においては、正に帯電した部分と負に帯電した部分とが混在して存在することが一般的であり、このような表面に対して正又は負のいずれか一方のイオンをその帯電量に応じて供給することは非常に困難であった。
このような問題を解消して、除電対象物に帯電した静電気を除去するためには、除電対象物の近傍において、除電を行うのに充分な量の正イオン及び負イオンを略等量だけ存在させることが望ましい。このように、略等量の正負イオンを除電対象物の近傍に存在させることで、除電対象物の表面の正に帯電した部分は負のイオンを、負に帯電した部分は正のイオンをそれぞれ引き付けるため、除電対象物の表面を当該正負イオンが混合して存在する空間の電位と等電位にすることが可能であり、これによって除電対象物の除電が行われている。
【0003】
このように、正負のイオンを混合して除電対象物に供給する手段として、従来はコロナ放電型イオナイザーを用いることが一般的であった。コロナ放電型イオナイザーは、一般に、先が尖った針状の電極の先端部にコロナ放電を生起して正及び負のイオンを発生させ、各イオンを気流によって除電対象物まで運ぶように構成されている。
【0004】
コロナ放電を発生させる従来の電極構造は、針状の放電電極の軸心と、近接して配置された円筒状の接地電極の中心軸とを合致させた同軸構造のコロナ電極が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような電極構造を有するイオナイザーにおいて、直流を使用するイオナイザーは、少なくとも一対の上記コロナ電極を放電電極の軸心の方向が同じ向きとなるように近接して配置し、各放電電極に正及び負のパルス状の直流電圧を交互に印加して正イオン及び負イオンを生成し、該正及び負のイオンを下流で混合するようになっている。
【0006】
一方、交流を使用するイオナイザーは、上記コロナ電極を一つ使用し、放電電極に一定周期で正及び負の交流電圧を印加して正イオンと負イオンとを交互に発生させるようになっている。
【0007】
また、従来の他の電極構造は、少なくとも一対の放電電極をその軸線が略合致するように先端部を対向させて配置した構造をなし、一対の放電電極に一定期間毎に交互に極性の異なる直流高電圧を同時に印加して、放電電極間に正イオンと負イオンとが混合した状態で存在し得るようになっている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−100249号公報
【特許文献2】特開2008−288072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、このような従来のイオナイザーにおいては、イオナイザーにより除電対象物に帯電している電荷を打ち消すのに充分な量の正負イオンを発生させて、外部に取り出すことが困難であった。つまり、上記特許文献1に記載のイオナイザーにおいて、上記直流式及び交流式のいずれのイオナイザーとして使用する場合においても、高電圧の放電電極と接地電極との間に形成される電界(電極間電界)内において正負のイオンが発生するため、この電界内で発生した正負のイオンが接地電極に向けて加速され、発生するイオンの内の大きな割合のイオンが接地電極に付着して消滅する問題を有していた。また、正負のイオンが別々に発生するために単極性のイオン群によって形成される電界(空間電荷電界)によってもイオンが接地電極に向けて加速されて接地電極に付着し、消滅する問題を有していた。したがって、放電電極に印加する電圧を大きくすれば、発生するイオンの量を増加させることができるものの、接地電極に向かう電界も増大するため、上記接地電極に吸引されて付着するイオン量も増え、結果的に、気流によって外部に輸送されるイオンの量を増やすことができないという問題がある。
【0010】
また、上記特許文献2に記載のイオナイザーは、対向する電極間に正イオン及び負イオンが発生し、それぞれが単独では存在しないため、空間電荷電界を小さくすることができるものの、電極間電界は本質的に小さくならい。したがって、正極性の放電電極付近で発生した正イオンの多くが負極性の放電電極に向かって移動し、逆に、負極性の放電電極付近で発生した負イオンの多くが正極性の放電電極に向かって移動し、夫々相手側の放電電極に吸収されて消滅するため、結果として放電空間から気流によって輸送されて外部に取り出させるイオンの量には限界がある。
【0011】
さらに、上記いずれの特許文献においても、放電電極の先端部がコロナ放電により損耗すると、放電電極の先端部と接地電極との間の距離、又は一対の放電電極の先端部間の距離が開くように変化するため、放電の開始や放電の維持ために必要な電圧が長時間の使用により次第に高くなり、コロナ放電の発生を安定的に持続させることができないという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、コロナ放電を安定して発生させることができると共にコロナ放電によって発生するイオンを効率的に外部に取り出し除電対象物を効果的に除電できるイオナイザー、及びそれを様々なタイプの除電装置に応用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明によるイオナイザーは、コロナ放電によって生成される正及び負のイオンによって除電対象物の静電気を除去するイオナイザーであって、第1の針状電極と第1の接地電極とを有し、前記第1の針状電極の先端部と前記第1の接地電極とが最近接距離L1を隔てて配置される第1のコロナ電極と、第2の針状電極と第2の接地電極とを有し、前記第2の針状電極の先端部と前記第2の接地電極とが最近接距離L2を隔てて配置される第2のコロナ電極とを有し、前記第1のコロナ電極と前記第2のコロナ電極とは、その先端部が向き合うように距離gを隔てて対向配置され、前記L1,L2が共にgの1/2よりも小さいことを特徴とするものである。
【0014】
このような構成により、針状電極と接地電極間に発生する電界の強度の方が、一対の針状電極間に発生する電界の強度よりも支配的となるため、小さな印加電圧により針状電極の先端部周辺にコロナ放電を生じさせ、このコロナ放電によって生成される正及び負イオンを除電対象物に供給して除電対象物の静電気を除去する。
【0015】
また、好ましくは、前記第1の接地電極が環状電極であり、前記第1の針状電極は前記第1の接地電極に接触しないように環状部分を貫通しているのが望ましい。
【0016】
さらに、好ましくは、前記第2の接地電極が環状電極であり、前記第2の針状電極は前記第2の接地電極に接触しないように環状部分を貫通しているのが望ましい。
【0017】
さらにまた、好ましくは、前記第1及び前記第2のコロナ電極の一方は正のイオンを生成し、他方は負のイオンを生成するようにそれぞれ電圧が印加可能であるのが望ましい。
【0018】
また、好ましくは、前記第1及び前記第2の接地電極は略等しい電位に保持されると共に、前記第1及び前記第2の針状電極には前記第1及び前記第2の接地電極の電位を基準として、逆極性の電位が印加可能であるのが望ましい。
【0019】
さらに、好ましくは、前記第1及び前記第2の針状電極の先端部を除く外周面の少なくても一部に絶縁部材が設けられているのが望ましい。
【0020】
さらにまた、好ましくは、前記第1及び前記第2の針状電極の少なくても一方の先端部に対して、前記第1及び前記第2の針状電極の軸線と交差する方向から気流を供給可能に構成されているのが望ましい。
【0021】
また、好ましくは、前記第1及び前記第2の針状電極の少なくても一方の先端部に対して、前記第1及び前記第2の針状電極の軸線に沿った方向から気流を供給可能に構成されているのが望ましい。
【0022】
さらに、好ましくは、前記第1及び前記第2のコロナ電極が対向して配置される空間が壁部材により外部から隔てられると共に、前記壁部材の少なくても一部が接地された導電性のメッシュ電極とされているのが望ましい。
【0023】
この場合、より好ましくは、前記メッシュ電極の実質的な開口径は、0.5mm〜3mmの範囲であるとよい。
【0024】
また、本発明による静電気除去機能付きエア継手は、気流の供給口と排出口を有し、該供給口から排出口まで通路内に前記イオナイザーを配置したものである。
【0025】
このような構成により、供給口から排出口まで通路内に配置したイオナイザーにより、例えば配管等を通して搬送される例えば気流等に生じる静電気を除去する。
【0026】
また、本発明によるパーツフィーダーは、投入された部材を振動によって搬送するパーツフィーダーであって、前記イオナイザーを搬送路の一部に備えて、搬送される前記部材の除電を可能にしたものである。
【0027】
このような構成により、部材の搬送路の一部に備えたイオナイザーにより、振動によって搬送路を搬送される部材の除電を行う。
【0028】
この場合、好ましくは、前記投入された部材の形状を画像解析して選別する検査部を備えるものであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明のイオナイザーによれば、コロナ放電によって針状電極の先端部が損耗した場合、針状電極の先端部と接地電極との間の距離は、従来技術と違って近づくように変化するため、コロナ放電の発生を安定的に持続させることができる。また、針状電極と接地電極間に発生する電界の方が、一対の針状電極間に発生する電界よりも支配的となるため、従来技術に比べてコロナ放電開始電圧を低くすることができる。さらに、高電圧の針状電極の背後に接地電極が存在するため、一対の高電圧針状電極間の平均的な電界の強さは飛躍的に小さくなる。したがって、コロナ放電開始時の上記一対の針状電極間に発生する電界強度が従来技術に比べて低くなり、各針状電極の先端部周辺で発生する正及び負イオンのうち、反対側の針状電極に向かって相互に移動して相手側の電極に付着するイオン量を減少させることができる。これにより、外部に取り出すことができるイオン量を増加させることができる。また、複数対のコロナ電極を近接して配置しても隣接する針状電極間に接地された接地電極が存在するため、隣接するコロナ電極間の電界が相互に干渉するのを抑制することができる。したがって、複数対のコロナ電極で効果的にコロナ放電を発生させることができ、生成されるイオン密度をより増加させることができる。さらに、一対の高電圧針状電極間の電界を小さくする効果が大きくなり、より高い密度の正負イオン群を取り出すことができる。そして、コロナ電極によるコロナ放電開始電圧の低減効果と、対向する針状電極間の電界緩和効果が有効に働く領域に針状電極の先端部を設定することができる。
【0030】
また、本発明の静電気除去機能付きエア継手によれば、除電エアが必要なエアラインに接続可能となり、応用範囲が広がる。
【0031】
さらに、本発明のパーツフィーダーによれば、パーツフィーダーに投入されたパーツの除電を効果的に行うことができる。したがって、帯電したパーツが搬送路の途中に付着して滞るのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるイオナイザーの第1の実施形態を示す概要図である。
【図2】上記第1の実施形態のコロナ電極の変形例を示す断面図である。
【図3】上記第1の実施形態における放電電極の先端部に放電電極の軸線に沿って気流を供給する例を示す断面図である。
【図4】本発明によるイオナイザーの第3の実施形態を示す概要図である。
【図5】本発明によるイオナイザーの第4の実施形態を示す概要図である。
【図6】本発明によるイオナイザーの第5の実施形態を示す概要図である。
【図7】上記第5の実施形態による除電対象物の除電を示す説明図である。
【図8】上記第5の実施形態のコロナ電極の配置について示す説明図である。
【図9】本発明によるイオナイザーの第6の実施形態を示す概要図である。
【図10】本発明によるイオナイザーを適用したパーツフィーダーの構成を示す図であり、(a)は正面図、(b)はイオナイザーを示す断面図である。
【図11】図10のパーツフィーダーを用いた外観検査装置の概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明によるイオナイザーの第1の実施形態を示す概要図である。このイオナイザー1は、コロナ放電によって生成される正及び負のイオンによって除電対象物の静電気を除去するもので、装置本体2の内部に一対のコロナ電極3A,3Bを有している。
【0034】
上記一対のコロナ電極3A,3Bは、典型的には、夫々、先が尖った針状電極としての放電電極6A,6Bと接地電極8A,8Bとを備えて、特に接地電極8A,8Bが放電電極6A,6Bの外径よりも大きい形状の開口部7を有する環状電極であり、針状電極が環状電極に接触しないようにその開口部7を貫通すると共に、針状電極の先端が環状電極の端面から所定の距離L1,L2(例えば、L=約1mm〜約2mm)だけ突出した、いわゆるφ型構造をなしている。そして、各放電電極6A,6Bの軸線が互いに合致又は一定角度で交差するように各先端部6Aa,6Baを一定距離g(例えば、g=約20mm)だけはなして対向配置されている。
【0035】
この場合、g/2>L1、g/2>L2となるようにg及びL1,L2を設定するとよい。これにより、各放電電極6A,6B間の中間位置(g/2)に存在する仮想的な接地電位面と放電電極6A,6Bとの間に形成される電界強度よりも、放電電極6Aと接地電極8Aとの間、及び放電電極6Bと接地電極8Bとの間に形成される電界強度の方が強くなり、コロナ放電の開始電圧が放電電極6Aと接地電極8Aとの間又は放電電極6Bと接地電極8Bとの間の電圧に依存することになる。放電開始に要する電界強度は、一般的に、電極間距離に対して約5KV/cmで表わされる。したがって、上記例(g=20mm)においては、放電電極6Aと放電電極6Bとの間のコロナ放電開始電圧が約10KVであるのに対して、放電電極6Aと接地電極8Aとの間又は放電電極6Bと接地電極8Bとの間のコロナ放電開始電圧は約0.5KV〜約1KV程度とすることが可能で、より低い電圧でコロナ放電を開始させることができる。
【0036】
なお、図1においては、コロナ電極3A,3Bが、いわゆるφ型構造を有する場合について記載したが、本発明はこれに限定されることなく、針状電極である放電電極6A(6B)に対する接地電極8A(8B)として、1個又は複数の針状電極、点状電極等を使用してもよい。つまり、放電電極6A,6B間の電界強度よりも、放電電極6Aと接地電極8A間(放電電極6Bと接地電極8B間)の電界強度が高くなるように放電電極の先端近傍に、最近接距離L1,L2を隔てて任意の形状の接地電極8A,8Bをそれぞれ配置することで、各放電電極と接地電極間において低いコロナ放電開始電圧によりコロナ放電を開始させることができる。
【0037】
一方、各放電電極と接地電極間のコロナ放電体積を増加させて生成する正負イオンの量を増加させるためには、図1に示すように接地電極8A,8Bを環状とし、その中心付近に放電電極6A,6Bを貫通させることが望ましい。また、対向して配置される各コロナ電極6A,6Bを略同一に構成することにより、各コロナ電極6A,6Bにより生成される正負イオンの密度や励起状態を揃え易くすることができる。
【0038】
なお、図2に示すように、接地電極8A,8Bに形成された開口部7の内周面7aと、放電電極6A,6Bの尖った先端部6Aa,6Ba周辺を除く外周面6Ab,6Bbとの間に絶縁部材9を設けるとよい。これにより、放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Ba周辺以外の部分でコロナ放電が発生するのを抑制することができる。
【0039】
上記一対のコロナ電極3A,3Bの各放電電極6A,6Bには、夫々高電圧電源4A,4Bが電気的に接続されている。この高電圧電源4A,4Bは、放電電極6A,6Bと接地電極8A,8Bとの間に一定電圧差を与えて放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Baの周りに不均一電界を生じさせることによりコロナ放電を発生させ、放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Ba周辺にイオンを生成させるものであり、上記各放電電極6A,6Bに互いに逆極性の電圧を同時に印加できるように互いに同期して駆動するように構成することが好ましい。この場合、上記高電圧電源4A,4Bは、直流電圧電源、交流電圧電源、又はパルス電圧電源のいずれであってもよい。なお、通常は接地電極8A,8Bは、大地に接地されるが、放電空間の電位の調整等の目的で所定の電位を印加することも可能である。
【0040】
また、本発明の実施の一形態として、上記放電電極6A,6Bの軸線と交差する方向であって、上記コロナ電極3A,3Bの側方に送風ファン5が設けられることも望ましい。この送風ファン5により、放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Baに、該放電電極6A,6Bの軸線と交差する方向から気流を供給して、コロナ放電により放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Ba周辺に発生したイオンを除電対象物に向かってより効率的に輸送することができる。なお、図1において符号10は、送風ファン5を駆動するモータである。
【0041】
次に、このように構成されイオナイザー1の動作について説明する。なお、ここでは、高電圧電源4A,4Bとして直流電圧電源を適用した場合について説明する。
先ず、モータ10によって送風ファン5が駆動され、放電電極6A,6Bの軸線と交差する方向から矢印X方向に向かって一対の放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Baに気流が供給されている状態において、高電圧電源4A,4Bが駆動され、放電電極6Aと接地電極8Aとの間に正極性の電圧が印加される。同時に、放電電極6Bと接地電極8Bとの間には、負極性の電圧が印加される。
【0042】
さらに印加電圧が増加され、放電電極6Aと接地電極8A及び放電電極6Bと接地電極8Bとの間の電圧がコロナ放電開始電圧を超えると、各放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Baの周りに不均一電界が生じコロナ放電が発生する。そして、放電電極6Aの先端部6Aa周辺に正イオンが生成され、放電電極6Bの先端部6Ba周辺に負イオンが生成される。
【0043】
この場合、前述したように、放電電極6A,6Bと接地電極8A,8Bの開口部7端面との間の距離L1,L2を放電電極6Aと放電電極6Bとの間の距離g/2よりも小さくなるように設定することで、放電電極6Aと接地電極8Aとの間及び放電電極6Bと接地電極8Bとの間の電界強度は、放電電極6Aと放電電極6Bとの間の電界強度よりも低くすることができる。また、放電電極6Aと放電電極6Bの背後には、それぞれ接地電極8Aと接地電極8Bが存在し、放電電極6A及び放電電極6Bに与えられた電荷と逆極性の電荷が接地電極8A及び接地電極8Bの表面に誘起されるために、放電電極6Aと放電電極6Bとの間の電界の強さが当該逆極性電荷により減少させられる。したがって、放電電極6Aと放電電極6Bとの間に形成される電極間電界を、従来技術におけるものに比べて小さくすることが可能になる。
【0044】
このような図1に示す構成において放電電極6A,6Bにそれぞれ逆極性の電界を印加し、コロナ放電により発生したイオンを除電対象物に向かって輸送することで、従来のイオナイザーと比較して高効率で除電対象物の除電を行うことが可能となる。これは、図1に示すように放電電極6A,6B間の電界強度が弱い状態で、各放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Ba付近に逆極性のイオンを生成させることにより、放電電極6A,6Bとイオン間の斥力や、発生した正負のイオンがそれぞれ形成する空間の間に発生する電気的な引力によって、正負のイオンが混合して全体として略中性の空間が放電電極6A,6Bの間に形成されるためと考えられる。つまり、この放電電極6A,6Bの間に形成される略中性の空間においては、正負のイオン間の引力により両イオン群が全体として凝集する傾向を有する一方で、放電電極6A,6Bの間に形成される弱い電界によっては正負のイオンが分離され難いため、それぞれのイオンが対極の放電電極6A,6Bに引き付けられて消滅することが抑制され、正負のイオン密度を高く維持できるためと考えられる。また、この略中性の空間の内部においては各正負のイオン間に引力を生じるが、各イオンが初速度を有しているため正負のイオンが実際に衝突して対消滅する確率は低く、送風ファン5等により除電対象物に輸送される間に対消滅により消滅するイオンの割合は充分に低いものと考えられる。
【0045】
このような機構により、第1の実施形態においては、放電電極6Aと放電電極6Bとの間に存在する正負イオンの空間電荷密度を増大し、各放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Ba周辺で生成された正及び負イオンを高密度で気流によって輸送して外部に取り出すことができるものと考えられる。
【0046】
なお、上記第1の実施形態において、各放電電極6A,6Bと高電圧電源4A,4Bとの間又は各接地電極8A,8Bと大地との間に電流計を配置して供給電流又はイオン電流の測定を可能し、各コロナ電極3A,3Bの供給電流又はイオン電流が略合致するように各高電圧電源4A,4Bの駆動を制御すれば、各放電電極6A,6Bで生成される正及び負イオンのイオン量をバランスさせるように調整することができる。これにより、放電電極6A,6Bの間の空間11を全体として中性に保持すること可能となって、各放電電極6A,6Bでのイオンの消滅を抑制できるため、より効率のよいイオナイザー1を構成することができる。また、イオナイザー1を用いて除電した後の除電対象物の表面は、当該表面に照射された正負のイオンのバランスによって定まる電位とされるため、正及び負イオンのイオン量をバランスさせることで、より良好な除電が可能となる。
【0047】
次に、本発明によるイオナイザーの第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態においては、イオナイザー1が一対のコロナ電極3A,3Bを備えたものである場合について説明したが、この第2の実施形態では、複数対のコロナ電極3A,3Bを気流の上流側から下流側に向かって並設したもの(例えば図4参照)、又は一方向に流れる気流の周方向に複数対のコロナ電極3A,3Bを並べたものである。このように複数対のコロナ電極3A,3Bを並べて備えた場合においても、隣接する放電電極6A,6A及び6B,6B間に存在する接地電極8A,8Bによって隣接するコロナ電極3A,3A及び3B,3B間における電界の干渉が緩和され、各コロナ電極3A,3Bに均一なコロナ放電を発生させることができる。
【0048】
第2の実施形態に基づき、複数対のコロナ電極3A,3Bを気流の上流側から下流側に向かって並設したときの空間電荷密度を測定したところ、針対針構造の電極と比較して表1のような結果が得られた。この測定では空間電荷密度を直接する測定ことが困難であるため、空間電荷密度はチャージドプレートモニタによる除電速度の逆数に比例するものとして測定を行った。また、1対の電極で得られる空間電荷密度を1として、4対の電極を用いた場合との相対的な比較をおこなった。なお、比較例として、放電電極の周囲に接地電極を設けずに、対向して設けた針状の電極間に印加した電圧によりコロナ放電を生じる従来型の電極構造において、対向する電極が1対の場合と4対の場合との測定結果を併せて示す。比較例における針状電極としては木綿針(2号)を使用し、印加電圧は3.5kV、針状電極間距離は20mm、同一気流環境下で測定を行った。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から分かるように、比較例で示した正針―負針電極のみで構成される電極対を用いた場合では、電極対を4対に増やしても噴出されるイオンの空間電荷密度は1.2倍程度にしかならない。これは、電極対間の電界強度が強いために、各電極間における実質的な空間電荷密度が低いと共に、上流側で生成された正負のイオンが下流側に位置する針状電極の電界に引かれて吸収・消滅してしまうことによるものと考えられる。このため、このような対向する電極間でコロナ放電を生じる従来タイプのイオナイザーでは、針―針電極対を増やしても、実質的に最も下流側に位置する1対の針―針電極で生成された程度のイオンしか噴出されないことが分かる。
【0051】
これに対し、本発明のコロナ電極3A、3Bを4対配置した場合には、対向する針状の放電電極6A,6B間の電界が緩和される結果、空間電荷密度は従来タイプに比べて増大した。これは、より上流のコロナ電極対で生成される正負のイオンが含まれる中性の空間11が下流のコロナ電極対の間を通過する際に、電極間に形成されている電界が弱いため、上記空間11に含まれる正負のイオンを分離して引き付けることができない結果であると考えられる。このように、本発明に係るイオナイザー1においては、複数のコロナ電極対を用いることにより空間電荷密度を相乗的に高めることが可能となる。
【0052】
なお、上記第1及び第2の実施形態においては、放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Baに、該放電電極6A,6Bの軸線と交差する方向から気流を供給する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Baに、図3(a)に示すように放電電極6A,6Bの軸線に沿って矢印Y方向の気流を供給するように構成してもよい。この場合、同図(b)に示すように、接地電極8A,8Bの開口部7の内周面7aと放電電極6A,6Bの外周面6Ab,6Bbとの間に絶縁部材9を設けたときには、該絶縁部材9に放電電極6A,6Bの軸線に平行な貫通孔12を形成して気流の通路を設けるとよい。また、気流の通路をコロナ電極3A,3Bの上流側で分岐し、放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Baに、一方の通路により放電電極6A,6Bの軸線と交差する方向から気流を供給し、他方の通路により放電電極6A,6Bの軸線に沿った方向から気流を供給するようにしてもよい。図3に示すように、放電電極6A,6Bの軸線に沿って電極先端部6Aa,6Baに向かう気流を形成することにより、放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Ba付近で生成した正負のイオンが接地電極8A,8Bに引き付けられることを抑制すると共に、放電電極6A,6B間で混合して電気的に略中性な空間11の形成を促すことで、空間電荷密度を高めることができる。
【0053】
図4は本発明によるイオナイザー1の第3の実施形態を示す概要図である。この第3の実施形態は、エアの搬送に用いられるエアパイプの経路の途中に設けて静電気除去機能付きエア継手として適用したものであり、複数対のコロナ電極3A,3Bを2つのエアパイプ13A,13Bをつなぐ気流の経路を挟むように配置し、並設された複数対のコロナ電極3A,3Bを間にして上記気流経路の上流側及び下流側にエアパイプ13A,13Bと接続するための継手14A,14Bを備えて構成されている。ここでは、エアパイプ13Aから流れてくる気流をコロナ電極3A,3B間でイオン化し、エアパイプ13Bへ送るため、基本的に送付ファンは必要でない。この第3の実施形態においては、上記第1の実施形態で説明したように、対向して設けた放電電極6A,6Bの軸線に対して交差する方向に気流を供給するものであってもよいが、望ましくはエアパイプ13Aから供給された気流を、風向制御板15によって放電電極6A,6B間を流れる気流と放電電極6A,6Bの周りの穴(例えば接地電極8A,8Bの開口部7)から噴き出す気流とに分けることで、放電電極6A,6Bの軸線に沿った気流を形成することが好ましい。これにより、コロナ電極3A,3B対によって生成する正負のイオンを含む気流は、エアパイプ13Bに供給される。
【0054】
上記第3の実施形態によれば、エアパイプ13A,13Bを用いて搬送される気流中に生じる静電気を効果的に除去することが可能であり、搬送される気流が供給される対象が静電気により帯電するのを抑制すると共に、帯電した対象物を除電することが可能となる。なお、エアパイプ13A,13Bは、空気を単に搬送するパイプに限定されず、多数の穴のあいた配管のように広い空間に気流を供給するものであってもよいし、スプレーノズルのように局所的に気流を供給するものでもよい。また、気流のみを供給するものだけでなく、微粒化した液体又は粉体を気流で吹き付けるものであってもよい。このように、静電気の発生を嫌う環境に気流を供給する際に、その上流部位に第3の実施形態の静電気除去機能付きエア継手を取り付けることによって、イオン化された気流を供給することができる。
【0055】
図5は、本発明によるイオナイザー1の第4の実施形態を示す概要図である。この第4の実施形態は、気流経路の下流側から上流側に向かって分割可能な噴出口ユニット16と、複数の電極ユニット17と、分風ユニット18と、送風ユニット19と、放電電極6A,6Bに電圧を印加する電源ユニット20A,20Bとを備えて静電気除去機能付きエア継手を構成したものである。この場合、送風ユニット19は、使用する気流が配管等で供給されるときは、その配管との継手の役目を果たし、気流を生み出す必要があるときはファン等の気流発生手段を内蔵した構成を有する。また、分風ユニット18は、送風ユニット19から送られて来る気流を、放電電極6A,6B対の軸線と交差する方向の気流と、放電電極6A,6B対の軸方向に放電電極6A,6Bの周りを流れる気流とに分けるものである。さらに、電極ユニット17は、コロナ電極3A,3Bの電極対を一つのユニットとし、必要なユニット数を継ぎ足せる構造になっている。噴出口ユニット16は、イオン化された気流を必要な形状の気流に変えてから対象物に供給するためのものである。これらのユニットは、例えば、ボルト21及びナット22によって互いに固定される。また、各電極ユニット17は、組み合わせられたときに、隣り合う放電電極6A,6A及び6B,6B同士、並びに接地電極8A,8A及び8B,8B同士を、互いに電気的に接続する接点を備えている。そして、放電電極6A,6Bには、電源ユニット20A,20Bから電圧が供給されるようになっている。
【0056】
このように構成することにより、第4の実施形態によれば、イオナイザー1に要求されるイオン量、風量に応じて、ユニットを組み合わせて最適化することが可能となり、製造ラインの変更に対しても柔軟に対応できる。
【0057】
図6は、本発明によるイオナイザーの第5の実施形態を示す概要図である。ここでは、第1の実施形態と異なる部分について説明する。
本実施形態においては、1対のコロナ電極3A,3Bが対向して配置されることで、コロナ放電によって生成される正及び負のイオンが同時に存在するイオン空間11が形成されると共に、当該イオン空間11を取り囲むことで外部空間と隔てる壁部材23の少なくとも一部に、複数の開口を有し、接地された導体で形成されたメッシュ電極24を設けることを特徴とする。
【0058】
このように構成された第5の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、高電圧電源4A,4Bによってコロナ電極3A,3Bの放電電極6Aと接地電極8Aとの間に正極性のコロナ放電開始電圧を超える電圧が印加され、放電電極6Bと接地電極8Bとの間に負極性のコロナ放電開始電圧を超える電圧が印加される。これにより、各放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Ba周辺にコロナ放電が発生し、上記イオン空間11には正イオン及び負イオンが同時に存在し、電気的に略中性なイオン空間11が形成される。このように形成されるイオン空間11に含まれる正負のイオンは、それぞれ接地されたメッシュ電極24に引き付けられる傾向を持つため、壁部材23の外部からの電界が存在しない場合、メッシュ電極24の開口のサイズを適正にすることで正負のイオンのほぼ全てをメッシュ電極24にて消滅させて外部に放出しないようにすることができる。
【0059】
この状態において、図7に示すように、表面に少なくとも正及び負のいずれかの電荷が蓄積された除電対象物25をメッシュ電極24に近づけた際には、当該正の電荷が蓄積された部分、及び負の電荷が蓄積された部分とメッシュ電極24との間に電界(実線で示す矢印)が形成される。この電界はメッシュ電極24に比較して強い力で正又は負のイオンを引き付けるために、除電対象物25の表面の帯電状態(電荷の分布)に応じて正極性に帯電している部分にはこれを打ち消す負イオンが、また負極性に帯電している部分にはこれを打ち消す正イオンがメッシュ電極24を透過して引き出されて除電対象物25の帯電部分に過不足なく付着し、当該帯電部分の帯電を除電することが可能となる。
【0060】
このようにして、除電対象物25の正又は負に帯電された部分の除電が終了すると、各部分とメッシュ電極24との間の電界が消滅することから、除電対象物25に過剰の正負のイオンが供給されることが抑制され、除電対象物25の各部分がイオナイザー1の作用により逆に帯電されることを抑制することができる。
【0061】
上記第1の実施形態のイオナイザー1を用いた場合には、正負のイオン量を略等量に設定することで、高い空間電荷密度を有する気流により除電対象物25表面を効率的に除電することが可能である一方、除電対象物25の表面各部に供給される正負のイオンの割合を等量に補償する積極的な機構を有さないため、除電対象物25の表面に電位の分布等を生じる可能性がある。これに対し、上記第5の実施形態によれば、除電対象物25の表面各部への正負のイオンの供給は、接地されたメッシュ電極24と除電対象物25の表面各部の電位差によって生じるため、除電後の除電対象物25の表面電位をより確実にゼロ電位とすることが可能になる。
【0062】
上記第5の実施形態において、1対のコロナ電極3A,3Bの各放電電極6A,6Bは、図8に示すように、それらの軸線が上記メッシュ電極24の法線を中心に、メッシュ電極24側を凸として90°<θ≦180°の角度で交差するように配置するとよい。これにより、メッシュ電極24側のイオン密度を高くすることができる。
【0063】
また、第1の実施形態と同様に、各放電電極6A,6Bの先端部6Aa,6Baに気流を供給してもよい。これにより、メッシュ電極24側に輸送されるイオン量を増大させることができる。
【0064】
なお、上記第5の実施形態においては、メッシュ電極24をイオン空間11と、それを取り囲む外部空間との境界部の一部に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限られず、イオン空間11を取り囲んで設けてもよい。これにより、例えばパイプ状又は筒状の除電対象物25の除電を効果的に行うことができる。
【0065】
また、上記第5の実施形態においては、1対のコロナ電極3A,3Bを対向配置した場合について説明したが、本発明はこれに限られず、複数対のコロナ電極3A,3Bを放電電極6A、6Bの先端部6Aa,8Aa間の中点を中心に放射状に配置してもよい。このような複数組のコロナ電極3A,3Bを備えたイオナイザー1を、例えばパーツフィーダーボウルの底面裏面側に配置すれば、パーツの除電を可能にしたパーツフィーダーボウルを構成することができる。
【0066】
さらに、上記第5の実施形態においては、対向配置された1対のコロナ電極3A,3Bに挟まれた領域にコロナ放電により生成される正及び負のイオンが同時に存在するイオン空間11を形成する場合について説明したが、本発明はこれに限られず、コロナ放電によって正及び負のイオンが同時に存在するイオン空間11を形成することができれば、電極構造は如何なるものであってもよい。
【0067】
そして、以上の説明においては、1対のコロナ電極3A,3Bに夫々接続して個別の高電圧電源4A,4Bを備えた場合について述べたが、本発明はこれに限られず、各放電電極6A,6Bに互いに逆極性の電圧を同時に印加することが可能に構成された共通の高電圧電源を備えてもよい。
【0068】
メッシュ電極24に設けられる開口の大きさは、外部に接地される除電対象物25とメッシュ電極24との間に電界が存在しない状態においては、イオン空間11に存在する正負のイオンがメッシュ電極24を通過して外部に拡散することがなく、一方で除電対象物25とメッシュ電極24との間に電界が存在する場合には、当該電界により外部に引き出される程度にすることが望ましい。具体的には、室温においては、メッシュ電極24の有効な開口径を0.5mm〜3mmの範囲に設定することで、外部に電界が存在しない状態でイオン空間11に存在する正負のイオンが外部に拡散することを充分に抑えることが可能である。また、メッシュ電極24の有効な開口径を0.5mm以下とした場合には、外部に電界が存在してもイオン空間11に存在する正負のイオンを引き出すことが困難となり良好な除電を行う点では好ましくない。
【0069】
また、上記第4の実施形態のユニット型イオナイザーの噴出口ユニット16の噴出口にメッシュ電極24を備えてもよい。
【0070】
図9は、本発明によるイオナイザーの第6の実施形態を示す概要図である。ここでは、上記第5の実施形態との相違点について説明する。この第6の実施形態は、同図(a)に示すように第5の実施形態における一対のコロナ電極3A,3Bを電極ユニット17とし、該電極ユニット17に電源を供給のための本体部26に電圧制御回路を含む高電圧電源4A,4Bとバッテリー27A,27Bを内蔵する構造になっている。より効果的にイオンを吹き付けるために、小型ファンを本体部26に内蔵してもよい。本体部26は接地されていて、通常は、同図(b)に示すようにバッテリー27A,27Bを充電のための充電機28の上に置かれている。オペレータは、自分の手で本体部26を持ってメッシュ電極24を除電対象物25に近づけ、あるいは軽く接触させることにより、除電する。充電器28の上に乗せた状態では、バッテリー27A,27Bを充電するが、単に充電を行うモード(充電モード)と、充電中でも雰囲気にイオンを噴き出すモード(除電モード)を切り替えることができる。除電モードでは、放電電極6A,6Bへの印加電圧を上げ、本体部26に内蔵した小型ファンの出力を高め、広い範囲に沢山の除電イオンを供給できるようにする。局部的な除電が必要な場合は、本体部26を充電器28から取りはずして必要な箇所にメッシュ電極24を近づける。メッシュ電極24を十分に近づけることができる場合は、上記ファンの出力を小さくした方が逆帯電を防ぐことができる。また、あまり電圧が高くなくても、十分な除電イオン供給が可能となるので、印加電圧を下げてもよい。なお、同図において符号29は、送風用通路であり、符号30は充電用端子である。
【0071】
本発明によるイオナイザー1は、例えば、パーツフィーダー等でパーツが搬送される際にパーツ表面に発生する帯電を除去する用途に用いることができる。図10(a)は、本発明によるイオナイザーが適用されるパーツフィーダーの概略構成の一例を示す正面図である。
【0072】
このパーツフィーダー30は、図10に示すように、横断面が円形の外壁31に沿って螺旋状の搬送路32を設けたボウル33と、ボウル33内に投入された被搬送物であるパーツ部材に振動を与えて螺旋状の搬送路32を下から上に向かって搬送し、搬送中にパーツ部材が所定の向きを有するように配向させながら搬送路32上に整列させるものである。このパーツフィーダー30には、ボウル33の下方に電磁式又は圧電式等の手段によりボウル33を振動させる振動部34と、振動の振幅を制御するコントローラ35とを備えている。このようなパーツフィーダーを用いて、特に樹脂製のパーツなどを搬送する場合、パーツと搬送路32等との摩擦によりパーツが帯電して、パーツの配向が良好に行えなかったり、その後の工程で不具合を生じる原因となったりする等の問題を有していた。特に搬送されるパーツが軽量である場合には、帯電によりパーツが搬送路32などに張り付き、搬送ができないという問題が生ずることがあった。
【0073】
これに対して、図10(b)に示すように、コロナ放電によって生成される正及び負のイオンが同時に存在するイオン空間11と、それを取り囲む外部空間との境界部の一部に接地されたメッシュ電極24を設けたイオナイザー1を、同図(a)に示すように上記メッシュ電極24が上記パーツフィーダー30の搬送路32の一部を構成するように適宜な1箇所又は複数個所に設けたものである。
【0074】
このような構成により、パーツフィーダー30は、ボウル33を振動部34で振動させて、ボウル33内に投入された除電対象物25としてのパーツをボウル33内に設けられた搬送路32を下から上に向かって整列させながら搬送する際に、搬送路32の途中に設けられたイオナイザー1により除電することができる。
【0075】
この際に、メッシュ電極24の各開口の大きさを充分に大きくすることで、イオン空間11に含まれる正負のイオンが容易にメッシュ電極24を通過可能となり、同時にイオン空間11とメッシュ電極24を通過する気流を生成することで、非常に効率的にパーツの除電を行うことができる。
【0076】
一方、メッシュ電極24の各開口の大きさを第5の実施形態に示した程度とすることで、除電対象物25であるパーツ表面の帯電に応じてイオンの供給がされるようになり、精密な除電が必要な場合に有効である。
【0077】
上記では、パーツフィーダー30としてボウル型のものを例にして説明したが、本発明のイオナイザー1が適用されるパーツフィーダー30は、上述のボウルフィーダーに限られず、パーツを直線状に搬送する直線フィーダーであってもよい。
【0078】
図11は、図10に示すパーツフィーダー30などを用いた外観検査装置の概略構成を示す正面図である。
この外観検査装置は、パーツフィーダー30によるパーツの搬送中において、パーツが所定の姿勢となる位置において検査部36に含まれるCCDカメラ等によりパーツの撮影を行い、画像を解析してメモリに保存された基準値と比較し、外観の良否の判定をした後、例えば外観不良品は吸引等で取除くことにより良品と不良品とを選別できるように構成したものである。
【0079】
このような外観検査装置においても、本発明によるイオナイザー1をパーツフィーダー30内に適宜設けることで、特にパーツフィーダー30により軽量の部材を搬送する場合において、良好な搬送が可能となる結果、不良品の摘出などが確実に行えるようにすることができる。
【0080】
上記外観検査装置の概略構成は、除電対象物25を整列させて供給する図10に示すパーツフィーダー30と、除電対象物25の向きを一定に揃えて搬送する搬送機構部37と、除電対象物25の形状を画像解析し基準値と比較して選別する検査部36と、を順次並べて配設したものである。ここで、パーツフィーダー30は、円形の外壁31に沿って螺旋状の搬送路32を設けたボウル33と、ボウル33内に投入された除電対象物25に振動を与えて螺旋状の搬送路32を下から上に向かって搬送させる電磁式又は圧電式の振動部34と、振動の振幅を制御するコントローラ35と、を備え、コロナ放電によって生成される正及び負のイオンが同時に存在するイオン空間11と、それを取り囲む外部空間との境界部の一部に複数の孔を有し、接地されたメッシュ電極24を設けたイオナイザー1(図10(b)参照)を、上記メッシュ電極24が上側となるように配置すると共に、該メッシュ電極24が上記搬送路32の一部を構成するようにして搬送路32の適宜な1個所又は複数個所に設けたものである。
【0081】
また、上記搬送機構部37は、除電対象物25を常に同じ姿勢で搬送できるように、例えば搬送方向に平行な溝又は交差する溝を形成した無端ベルトを回転可能に設けたベルトコンベアである。さらに、上記検査部36は、CCDカメラにより撮像された除電対象物25の画像を解析してメモリに保存された基準値と比較し、外観の良否の判定をした後、例えば外観不良品は吸引して取除くことにより良品と不良品とを選別できるように構成されたものである。
【0082】
具体的には、例えば、医薬の包装に用いられるようなデンプン質の材料からなるソフトカプセルをパーツフィーダー30で搬送して配列する際に、パーツフィーダー30のボウル33を振動部34で振動させて、ボウル33内に投入されたソフトカプセルをボウル33の外壁31に沿って螺旋状に設けられた搬送路32上を下から上に向かって整列させながら搬送する。その際、搬送路32の途中に設けられたイオナイザー1により、メッシュ電極24上を通過するソフトカプセルに正及び負イオンを付着させてソフトカプセルを除電する。その後、ソフトカプセルをパーツフィーダー30から搬送機構部37のベルトコンベアに移し、ベルトコンベアで楕円形のソフトカプセルの長軸が例えば搬送方向と平行となるように又は搬送方向と交差するように姿勢を制御して搬送する。そして、検査部36のCCDカメラによりベルトコンベアで搬送されて来たソフトカプセルを撮像し、その撮像画像を解析して基準値と比較し、基準値から外れた不良品を例えば吸引除去して良品のみを搬出する。これにより、ソフトカプセルのような小型で軽量なパーツが帯電してパーツフィーダー30の搬送路32の途中に付着してパーツフィーダー30から搬出されないという問題を解消することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…イオナイザー
3A,3B…コロナ電極
6A,6B…放電電極(針状電極)
6Aa,6Ba…放電電極の先端部
6Ab,6Bb…放電電極の外周面
7…開口部
7a…開口部の内周面
8A,8B…接地電極
9…絶縁部材
11…イオン空間
23…壁部材
24…メッシュ電極
25…除電対象物
30…パーツフィーダー
36…検査部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロナ放電によって生成される正及び負のイオンによって除電対象物の静電気を除去するイオナイザーであって、
第1の針状電極と第1の接地電極とを有し、前記第1の針状電極の先端部と前記第1の接地電極とが最近接距離L1を隔てて配置される第1のコロナ電極と、第2の針状電極と第2の接地電極とを有し、前記第2の針状電極の先端部と前記第2の接地電極とが最近接距離L2を隔てて配置される第2のコロナ電極とを有し、
前記第1のコロナ電極と前記第2のコロナ電極とは、その先端部が向き合うように距離gを隔てて対向配置され、前記L1,L2が共にgの1/2よりも小さいことを特徴とするイオナイザー。
【請求項2】
前記第1の接地電極が環状電極であり、前記第1の針状電極は前記第1の接地電極に接触しないように環状部分を貫通していることを特徴とする請求項1に記載のイオナイザー。
【請求項3】
前記第2の接地電極が環状電極であり、前記第2の針状電極は前記第2の接地電極に接触しないように環状部分を貫通していることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオナイザー。
【請求項4】
前記第1及び前記第2のコロナ電極の一方は正のイオンを生成し、他方は負のイオンを生成するようにそれぞれ電圧が印加可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオナイザー。
【請求項5】
前記第1及び前記第2の接地電極は略等しい電位に保持されると共に、前記第1及び前記第2の針状電極には前記第1及び前記第2の接地電極の電位を基準として、逆極性の電位が印加可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオナイザー。
【請求項6】
前記第1及び前記第2の針状電極の先端部を除く外周面の少なくても一部に絶縁部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のイオナイザー。
【請求項7】
前記第1及び前記第2の針状電極の少なくても一方の先端部に対して、前記第1及び前記第2の針状電極の軸線と交差する方向から気流を供給可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のイオナイザー。
【請求項8】
前記第1及び前記第2の針状電極の少なくても一方の先端部に対して、前記第1及び前記第2の針状電極の軸線に沿った方向から気流を供給可能に構成されたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のイオナイザー。
【請求項9】
前記第1及び前記第2のコロナ電極が対向して配置される空間が壁部材により外部から隔てられると共に、当該隔壁部材の少なくても一部が接地された導電性のメッシュ電極とされていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のイオナイザー。
【請求項10】
前記メッシュ電極の実質的な開口径は、0.5mm〜3mmの範囲であることを特徴とする請求項9に記載のイオナイザー。
【請求項11】
気流の供給口と排出口を有し、該供給口から排出口まで通路内に請求項1〜10のいずれか1項に記載のイオナイザーを配置したことを特徴とする静電気除去機能付きエア継手。
【請求項12】
投入された部材を振動によって搬送するパーツフィーダーであって、請求項1〜10のいずれか1項に記載のイオナイザーを搬送路の一部に備えて、搬送される前記部材の除電を可能にしたことを特徴とするパーツフィーダー。
【請求項13】
前記投入された部材の形状を画像解析して選別する検査部を備えることを特徴とする請求項12に記載のパーツフィーダー。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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