説明

イオン−イオン反応デバイス

イオンガイド(2)を形成する複数の電極1を含むイオン−イオン反応セルが提供される。1つまたは複数の過渡DC電圧波(8、9)を電極2に印加する。試薬アニオンと検体カチオンとを、反応セル内でイオン−イオン反応を行わせるように配置し、次いで、結果として反応セル内で形成されたフラグメントイオンを、1つまたは複数の過渡DC電圧波(8、9)によって反応セル外へ並進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン−イオン反応またはフラグメンテーションデバイスおよびイオン−イオン反応またはフラグメンテーションを行う方法に関する。本発明は、電子移動解離および/またはプロトン移動反応デバイスにも関する。イオン−イオン反応によってかまたはイオン−中性ガス反応によって検体イオンを断片化させ得る。また、プロトン移動反応によって検体イオンおよび/またはフラグメントイオンを電荷減少させ得る。
【背景技術】
【0002】
エレクトロスプレーイオン化イオン源は、よく知られており、HPLCカラムから溶出する中性ペプチドを気相検体イオンに変換するのに用い得る。酸性水溶液中で、トリプシンペプチドが、アミノ末端とC末端アミノ酸の側鎖との両方でイオン化される。それに続いてペプチドイオンが質量分析計に入射すると、正の電荷を持つアミノ基が水素結合し、ペプチドの主鎖に沿ってプロトンがアミド基に移動する。
【0003】
衝突ガスとの衝突によってペプチドイオンの内部エネルギーを増加させることによりペプチドイオンを断片化することが知られている。ペプチドイオンの内部エネルギーを、内部エネルギーが分子の主鎖に沿ったアミド結合を開裂するのに必要な活性化エネルギーを超えるまで増加させる。中性衝突ガスとの衝突によってイオンを断片化するこのプロセスは、一般に、衝突誘起解離(「CID」)と呼ばれる。衝突誘起解離によって生じたフラグメントイオンは、一般に、b系列およびy系列のフラグメントまたは生成イオンと呼ばれ、b系列のフラグメントイオンはアミノ末端に加えて1つまたは複数のアミノ酸残基を含み、y系列のフラグメントイオンはカルボキシル末端に加えて1つまたは複数のアミノ酸残基を含む。
【0004】
その他のペプチド断片化方法が知られている。ペプチドイオンを断片化する別の方法は、電子捕獲解離(「ECD」)として知られているプロセスによってペプチドイオンを熱電子と相互作用させることである。電子捕獲解離は、衝突誘起解離で観察されるフラグメンテーションプロセスとはかなり異なるようにペプチドを開裂させる。特に、電子捕獲解離は、主鎖N−Cα結合またはアミン結合を開裂し、結果として生成されたフラグメントイオンは、一般に、c系列およびz系列のフラグメントまたは生成イオンと呼ばれる。電子捕獲解離は、非エルゴード的である、すなわち、移動されたエネルギーが分子全体に行き渡る前に開裂が起こる、と考えられている。また、電子捕獲解離は、隣接アミノ酸の性質にそれほど依存することなく起こり、電子捕獲解離開裂に100%抵抗性があるのはプロリンのN側だけである。
【0005】
衝突誘起解離ではなく電子捕獲解離によってペプチドイオンを断片化することの1つの利点は、衝突誘起解離は、翻訳後修飾(「PTM」)を開裂する傾向があり、修飾部位の同定を困難にしていることである。これとは対照的に、電子捕獲解離によってペプチドイオンを断片化すると、例えばリン酸化およびグリコシル化による翻訳後修飾が保たれやすい。
【0006】
しかしながら、電子捕獲解離技術には、熱運動エネルギーの近い正イオンと電子との両方を同時に閉じ込める必要があるという重大な問題がある。電子捕獲解離は、超伝導磁石を用いて大きな磁場を発生させるフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FT−ICR」)質量分析部を用いて実証されている。しかしながら、このような質量分析計は、非常に大型で、質量分析の利用者の大多数には手が出せないほど高価である。
【0007】
電子捕獲解離の代わりとして、線形イオントラップ内で負の電荷を持つ試薬イオンを多価検体カチオンと反応させることによってペプチドイオンを断片化することが可能であることが実証されている。正の電荷を持つ検体イオンを負の電荷を持つ試薬イオンと反応させるプロセスは、電子移動解離(「ETD」)と呼ばれている。電子移動解離は、電子を負の電荷を持つ試薬イオンから正の電荷を持つ検体イオンへ移動させる機構である。電子の移動後、電荷減少されたペプチドすなわち検体イオンは、電子捕獲解離によるフラグメンテーションの原因と考えられているのと同じ機構によって解離する。すなわち、電子移動解離は電子捕獲解離と同様にしてアミン結合を開裂すると考えられている。結果として、ペプチド検体イオンの電子移動解離により生成された生成またはフラグメントイオンは、主にc系列およびz系列のフラグメントまたは生成イオンを含む。
【0008】
電子移動解離の1つの格別の利点は、このようなプロセスが翻訳後修飾(PTM)の同定に特に適していることである。これは、リン酸化またはグリコシル化のような弱い結合のPTMがアミノ酸鎖の主鎖の電子誘起フラグメンテーション後も残るためである。
【0009】
現在、電子移動解離は、試薬アニオンと検体カチオンとの間のイオン−イオン反応を促進するように構成された二次元線形イオントラップ内にカチオンとアニオンとを互いに閉じ込めることによって実証されている。補助的な軸方向閉じ込め用RF擬ポテンシャル障壁を二次元線形四重極イオントラップの両端に印加することにより、カチオンとアニオンとを同時に二次元線形イオントラップ内にトラップする。しかしながら、この手法は、イオントラップ内のイオンから見た有効なRF擬ポテンシャル障壁高さがそのイオンの質量電荷比の関数となるため、問題を抱えている。結果として、イオン−イオン反応を促進するためにイオントラップ内に同時に閉じ込めることができる検体および試薬イオンの質量電荷比範囲がいくぶん限定される。
【0010】
ある特定の極性を有するイオン(例えば試薬アニオン)をイオントラップ内に閉じ込めるために一定のDC軸方向電位を二次元線形四重極イオントラップの両端に印加する、電子移動解離を行う別の方法が知られている。その後、イオントラップ内に閉じ込められたイオンとは反対の極性を有するイオン(例えば検体カチオン)をイオントラップ内へ向かわせる。検体カチオンは、イオントラップ内に既に閉じ込められていた試薬アニオンと反応する。しかしながら、試薬アニオンをイオントラップ内に保持するのに用いられる軸方向DC障壁は、イオントラップ内に導入される検体カチオンに対して加速電位として作用するという逆効果も有する。結果として、試薬アニオンと検体カチオンとの間に大きな運動エネルギー差または不一致が生じ、起こり得るあらゆるイオン−イオン反応は最適に起こらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
イオン−イオン反応およびイオン−中性ガス反応を行う改良された方法および装置を提供すること、特に、ペプチドのような検体およびフラグメントイオンの電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションプロセスおよび/またはプロトン移動反応電荷状態減少プロセスを最適化する改良された方法および装置を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によると、少なくとも1つの使用時にイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスが提供される。
【0013】
第1のデバイスが、少なくともいくらかの第1のイオンを駆動または付勢して(urge)第1の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合されることが好ましい。
【0014】
第2のデバイスが、少なくともいくらかの第2のイオンを駆動または付勢して第2の異なる方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合されることが好ましい。第1および第2の過渡DC電圧もしくは電位または電圧もしくは電位波形または進行波は、順次または同時に電極に印加されることが好ましい。
【0015】
一実施形態によると、第1のデバイスは、少なくともいくらかの第1のイオンを駆動または付勢して第1の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%または95〜100%に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%または95〜100%に印加するように構成および適合されることが好ましい。
【0016】
一実施形態によると、第2のデバイスは、少なくともいくらかの第2のイオンを駆動または付勢して第2の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%または95〜100%に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%または95〜100%に印加するように構成および適合されることが好ましい。
【0017】
第2の方向は、第1の方向と実質的に反対つまり逆であることが好ましい。あるいは、第1の方向と第2の方向とのなす角度が、(i)<30°、(ii)30〜60°、(iii)60〜90°、(iv)90〜120°、(v)120〜150°、(vi)150〜180°および(vii)180°からなる群から選択されてもよい。
【0018】
第1のイオンは、(i)アニオンつまり負の電荷を持つイオン、(ii)カチオンつまり正の電荷を持つイオンまたは(iii)アニオンとカチオンとの組み合わせつまり混合物のいずれかを含むことが好ましい。
【0019】
第2のイオンは、(i)アニオンつまり負の電荷を持つイオン、(ii)カチオンつまり正の電荷を持つイオンまたは(iii)アニオンとカチオンとの組み合わせつまり混合物を含むことが好ましい。
【0020】
異なる種のカチオンおよび/または試薬イオンを反応デバイスの両端から反応デバイス内に導入する実施形態が考えられる。
【0021】
第1のイオンは第1の極性を有することが好ましく、第2のイオンは第1の極性と反対であることが好ましい第2の極性を有することが好ましい。
【0022】
一実施形態によると、デバイスは、使用時にイオンをイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように、第1の周波数および第1の振幅を有する第1のACまたはRF電圧を複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合された第1のRFデバイスをさらに含むことが好ましい。
【0023】
第1の周波数は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHzおよび(xxv)>10.0MHzからなる群から選択されることが好ましい。
【0024】
第1の振幅は、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピークおよび(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択されることが好ましい。
【0025】
一動作モードにおいて、隣接するつまり隣り合う電極に、逆位相の第1のACまたはRF電圧が供給されることが好ましい。
【0026】
イオンガイドは、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100または>100の電極群を含み、各電極群は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の電極を含み、各群における少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の電極に同位相の第1のACまたはRF電圧が供給されることが好ましい。
【0027】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、第1の周波数を、期間t1にわたってx1MHzだけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含むことが好ましい。
【0028】
一実施形態によると、x1は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHzおよび(xxv)>10.0MHzからなる群から選択されることが好ましい。
【0029】
一実施形態によると、t1は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択されることが好ましい。
【0030】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、第1の振幅を、期間t2にわたってx2ボルトだけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含む。
【0031】
一実施形態によると、x2は、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピークおよび(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択されることが好ましい。
【0032】
一実施形態によると、t2は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択されることが好ましい。
【0033】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、第1のイオンの少なくともいくらかおよび/または第2のイオンの少なくともいくらかをイオンガイド内に閉じ込めるように作用する正または負の電位をイオンガイドの第1または上流端において印加するためのデバイスをさらに含むことが好ましい。この電位は、第1のイオンの少なくともいくらかおよび/または第2のイオンの少なくともいくらかを第1または上流端を介してイオンガイドから出射可能にもすることが好ましい。
【0034】
一実施形態によると、第1のイオンの少なくともいくらかおよび/または第2のイオンの少なくともいくらかをイオンガイド内に閉じ込めるように作用する正または負の電位をイオンガイドの第2または下流端において印加するためのデバイスが提供される。この電位は、第1のイオンの少なくともいくらかおよび/または第2のイオンの少なくともいくらかを第2または下流端を介してイオンガイドから出射可能にもすることが好ましい。
【0035】
一実施形態によると、
(a)電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に円形、長方形、正方形または楕円形のアパーチャを有し、かつ/あるいは、
(b)電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に同じ第1のサイズであるかまたは実質的に同じ第1の面積を有するアパーチャを有し、かつ/または、電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に同じ第2の異なるサイズであるかまたは実質的に同じ第2の異なる面積を有するアパーチャを有し、かつ/あるいは、
(c)電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、イオンガイドの軸に沿う方向にサイズまたは面積が漸進的に大きくおよび/または小さくなるアパーチャを有し、かつ/あるいは、
(d)電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mmおよび(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または内寸を有するアパーチャを有し、かつ/あるいは、
(e)電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに離間され、かつ/あるいは、
(f)複数の電極の少なくともいくつかがアパーチャを含み、アパーチャの内径または内寸の、隣接する電極間の中心から中心までの軸方向間隔に対する比が、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0および(xxii)>5.0からなる群から選択され、かつ/あるいは、
(g)複数の電極のアパーチャの内径が、イオンガイドの長手方向軸に沿って、1回または複数回、漸進的に増加または減少した後で漸進的に減少または増加し、かつ/あるいは、
(h)複数の電極が、(i)1つまたは複数の球、(ii)1つまたは複数の扁球、(iii)1つまたは複数の長球、(iv)1つまたは複数の楕円体および(v)1つまたは複数の三軸不等楕円体(scalene ellipsoids)からなる群から選択される幾何学的空間を規定し、かつ/あるいは、
(i)イオンガイドが、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mmおよび(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有し、かつ/あるいは、
(j)イオンガイドが、少なくとも(i)1〜10の電極、(ii)10〜20の電極、(iii)20〜30の電極、(iv)30〜40の電極、(v)40〜50の電極、(vi)50〜60の電極、(vii)60〜70の電極、(viii)70〜80の電極、(ix)80〜90の電極、(x)90〜100の電極、(xi)100〜110の電極、(xii)110〜120の電極、(xiii)120〜130の電極、(xiv)130〜140の電極、(xv)140〜150の電極、(xvi)150〜160の電極、(xvii)160〜170の電極、(xviii)170〜180の電極、(xix)180〜190の電極、(xx)190〜200の電極および(xxi)>200の電極を含み、かつ/あるいは、
(k)電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さつまり軸方向長さを有し、かつ/あるいは、
(l)複数の電極のピッチつまり軸方向間隔が、イオンガイドの長手方向軸に沿って、1回または複数回、漸進的に減少または増加する。
【0036】
一実施形態によると、このデバイスは、2つの隣接するイオントンネル部を含み得る。第1のイオントンネル部内の電極は第1の内径を有することが好ましく、第2のイオントンネル部内の電極は第2の異なる内径(一実施形態によると、第1の内径より小さくても大きくてもよい)を有することが好ましい。第1および/または第2のイオントンネル部を、質量分析計の全体的な中心長手方向軸に対して傾斜させるかまたは軸外に配置してもよい。これにより、真空室を通して絶えず直線的に移動する中性粒子からイオンを分離させることができる。
【0037】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、
(i)イオンガイドの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って線形軸方向DC電場を生成するように、または、
(ii)イオンガイドの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って非線形または階段状軸方向DC電場を生成するように、構成および適合されたデバイスをさらに含む。
【0038】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、期間t3にわたってx3ボルトだけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含むことが好ましい。
【0039】
一実施形態によると、x3は、(i)<0.1V、(ii)0.1〜0.2V、(iii)0.2〜0.3V、(iv)0.3〜0.4V、(v)0.4〜0.5V、(vi)0.5〜0.6V、(vii)0.6〜0.7V、(viii)0.7〜0.8V、(ix)0.8〜0.9V、(x)0.9〜1.0V、(xi)1.0〜1.5V、(xii)1.5〜2.0V、(xiii)2.0〜2.5V、(xiv)2.5〜3.0V、(xv)3.0〜3.5V、(xvi)3.5〜4.0V、(xvii)4.0〜4.5V、(xviii)4.5〜5.0V、(xix)5.0〜5.5V、(xx)5.5〜6.0V、(xxi)6.0〜6.5V、(xxii)6.5〜7.0V、(xxiii)7.0〜7.5V、(xxiv)7.5〜8.0V、(xxv)8.0〜8.5V、(xxvi)8.5〜9.0V、(xxvii)9.0〜9.5V、(xxviii)9.5〜10.0Vおよび(xxix)>10.0Vからなる群から選択されることが好ましい。
【0040】
一実施形態によると、t3は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択されることが好ましい。
【0041】
一実施形態によると、
(a)第1のデバイスが、複数の電極に印加される1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、イオンガイドの長さに沿った位置または変位量の関数として、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合され、かつ/または、
(b)第1のデバイスが、複数の電極に印加される1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、イオンガイドの長さに沿ってイオンガイドの第1端からイオンガイドの中心領域または別の領域まで低減させるように構成および適合される。
【0042】
イオンガイドの長さに沿った第1の位置において複数の電極に印加される1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さをXとし得る。イオンガイドの長さに沿った第2の異なる位置において複数の電極に印加される1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さは、0〜0.05X、0.05〜0.10X、 0.10〜0.15X、0.15〜0.20X、0.20〜0.25X、0.25〜0.30X、0.30〜0.35X、0.35〜0.40X、0.40〜0.45X、0.45〜0.50X、0.50〜0.55X、0.55〜0.60X、0.60〜0.65X、0.65〜0.70X、0.70〜0.75X、0.75〜0.80X、0.80〜0.85X、0.85〜0.90X、0.90〜0.95Xまたは0.95〜1.00Xとなるように構成され得る。
【0043】
複数の電極に印加される1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さは、第1のイオンがもはや1つまたは複数のDCポテンシャル障壁によって軸方向に閉じ込められなくなるように、イオンガイドの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%に沿ってゼロまたはゼロ近くまで低減し得る。
【0044】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を電極に印加または電極に沿って並進させる(translate)速度または割合を、期間t4にわたってx4ミリ秒だけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含み得る。
【0045】
一実施形態によると、x4は、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜11、(xii)11〜12、(xiii)12〜13、(xiv)13〜14、(xv)14〜15、(xvi)15〜16、(xvii)16〜17、(xviii)17〜18、(xix)18〜19、(xx)19〜20、(xxi)20〜30、(xxii)30〜40、(xxiii)40〜50、(xxiv)50〜60、(xxv)60〜70、(xxvi)70〜80、(xxvii)80〜90、(xxviii)90〜100、(xxix)100〜150、(xxx)150〜200、(xxxi)200〜250、(xxxii)250〜300、(xxxiii)300〜350、(xxxiv)350〜400、(xxxv)400〜450、(xxxvi)450〜500、(xxxvii)500〜600、(xxxviii)600〜700、(xxxix)700〜800、(xl)800〜900、(xli)900〜1000、(xlii)1000〜2000、(xliii)2000〜3000、(xliv)3000〜4000、(xlv)4000〜5000、(xlvi)5000〜6000、(xlvii)6000〜7000、(xlviii)7000〜8000、(xlix)8000〜9000、(l)9000〜10000および(li)>10000からなる群から選択されることが好ましい。
【0046】
一実施形態によると、t4は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択されることが好ましい。
【0047】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、期間t5にわたってx5ボルトだけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含むことが好ましい。
【0048】
一実施形態によると、x5は、(i)<0.1V、(ii)0.1〜0.2V、(iii)0.2〜0.3V、(iv)0.3〜0.4V、(v)0.4〜0.5V、(vi)0.5〜0.6V、(vii)0.6〜0.7V、(viii)0.7〜0.8V、(ix)0.8〜0.9V、(x)0.9〜1.0V、(xi)1.0〜1.5V、(xii)1.5〜2.0V、(xiii)2.0〜2.5V、(xiv)2.5〜3.0V、(xv)3.0〜3.5V、(xvi)3.5〜4.0V、(xvii)4.0〜4.5V、(xviii)4.5〜5.0V、(xix)5.0〜5.5V、(xx)5.5〜6.0V、(xxi)6.0〜6.5V、(xxii)6.5〜7.0V、(xxiii)7.0〜7.5V、(xxiv)7.5〜8.0V、(xxv)8.0〜8.5V、(xxvi)8.5〜9.0V、(xxvii)9.0〜9.5V、(xxviii)9.5〜10.0Vおよび(xxix)>10.0Vからなる群から選択されることが好ましい。
【0049】
一実施形態によると、t5は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択されることが好ましい。
【0050】
一実施形態によると、
(a)第2のデバイスが、複数の電極に印加される1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、イオンガイドの長さに沿った位置または変位量の関数として、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合され、かつ/または、
(b)第2のデバイスが、複数の電極に印加される1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、イオンガイドの長さに沿ってイオンガイドの第2端からイオンガイドの中心領域または別の領域まで低減させるように構成および適合される。
【0051】
イオンガイドの長さに沿った第2の位置において複数の電極に印加される1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さをXとし得る。イオンガイドの長さに沿った第2の異なる位置において複数の電極に印加される1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さは、0〜0.05X、0.05〜0.10X、0.10〜0.15X、0.15〜0.20X、0.20〜0.25X、0.25〜0.30X、0.30〜0.35X、0.35〜0.40X、0.40〜0.45X、0.45〜0.50X、0.50〜0.55X、0.55〜0.60X、0.60〜0.65X、0.65〜0.70X、0.70〜0.75X、0.75〜0.80X、0.80〜0.85X、0.85〜0.90X、0.90〜0.95Xまたは0.95〜1.00Xとなるように構成され得る。
【0052】
複数の電極に印加される1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さは、第2のイオンがもはや1つまたは複数のポテンシャル障壁によって軸方向に閉じ込められなくなるように、イオンガイドの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%に沿ってゼロまたはゼロ近くまで低減するように構成され得る。
【0053】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を電極に印加または電極に沿って並進させる速度または割合を、期間t6にわたってx6ミリ秒だけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含むことが好ましい。
【0054】
一実施形態によると、x6は、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜11、(xii)11〜12、(xiii)12〜13、(xiv)13〜14、(xv)14〜15、(xvi)15〜16、(xvii)16〜17、(xviii)17〜18、(xix)18〜19、(xx)19〜20、(xxi)20〜30、(xxii)30〜40、(xxiii)40〜50、(xxiv)50〜60、(xxv)60〜70、(xxvi)70〜80、(xxvii)80〜90、(xxviii)90〜100、(xxix)100〜150、(xxx)150〜200、(xxxi)200〜250、(xxxii)250〜300、(xxxiii)300〜350、(xxxiv)350〜400、(xxxv)400〜450、(xxxvi)450〜500、(xxxvii)500〜600、(xxxviii)600〜700、(xxxix)700〜800、(xl)800〜900、(xli)900〜1000、(xlii)1000〜2000、(xliii)2000〜3000、(xliv)3000〜4000、(xlv)4000〜5000、(xlvi)5000〜6000、(xlvii)6000〜7000、(xlviii)7000〜8000、(xlix)8000〜9000、(l)9000〜10000および(li)>10000からなる群から選択されることが好ましい。
【0055】
一実施形態によると、t6は、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択されることが好ましい。
【0056】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、
(i)電極に印加または電極に沿って並進させる1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロファイルを、変化、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイス、および/または、
(ii)電極に印加または電極に沿って並進させる1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロファイルを、変化、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含む。
【0057】
一実施形態によると、
(a)一動作モードにおいて、少なくともいくらかの生成またはフラグメントイオンを駆動または付勢して第1の方向と異なるかまたは逆の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形が次に複数の電極の少なくともいくつかに印加され、かつ/または、
(b)一動作モードにおいて、少なくともいくらかの生成またはフラグメントイオンを駆動または付勢して第2の方向と異なるかまたは逆の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形が次に複数の電極の少なくともいくつかに印加される。
【0058】
一実施形態によると、静的または動的なイオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス領域もしくは反応空間が、イオンガイド内に形成または生成される。例えば、イオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス領域または反応空間の軸方向位置を、イオンガイドの少なくとも一部に沿って絶えず並進させるように配置してもよい。
【0059】
一実施形態によると、電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスは、
(a)イオンガイドを、一動作モードにおいて(i)<100mbar、(ii)<10mbar、(iii)<1mbar、(iv)<0.1mbar、(v)<0.01mbar、(vi)<0.001mbar、(vii)<0.0001mbarおよび(viii)<0.00001mbarからなる群から選択される圧力に維持するように、かつ/または、
(b)イオンガイドを、一動作モードにおいて(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>0.01mbar、(vi)>0.001mbarおよび(vii)>0.0001mbarからなる群から選択される圧力に維持するように、かつ/または、
(c)イオンガイドを、一動作モードにおいて(i)0.0001〜0.001mbar、(ii)0.001〜0.01mbar、(iii)0.01〜0.1mbar、(iv)0.1〜1mbar、(v)1〜10mbar、(vi)10〜100mbarおよび(vii)100〜1000mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合されたデバイスをさらに含む。
【0060】
一実施形態によると、
(a)イオンガイド内における第1のイオンの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の滞在、通過または反応時間が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、かつ/または、
(b)イオンガイド内における第2のイオンの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の滞在、通過または反応時間が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、かつ/または、
(c)イオンガイド内で作り出されるかまたは形成される生成またはフラグメントイオンの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の滞在、通過または反応時間が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択される。
【0061】
イオンガイドは、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択されるサイクルタイムを有することが好ましい。サイクルタイムは、検体イオンを試薬イオンまたは中性試薬ガスと反応させ、次いで、その結果生じた生成またはフラグメントイオンをデバイスから抽出する1周期ならびに/あるいは反応デバイスへの検体イオンおよび/または試薬イオンの投入速度に対応することが好ましい。
【0062】
一実施形態によると、
(a)一動作モードにおいて、第1のイオンおよび/または第2のイオンが、イオンガイド内でトラップされるが実質的に断片化および/または反応および/または電荷減少されないように構成および適合され、かつ/または、
(b)一動作モードにおいて、第1のイオンおよび/または第2のイオンが、イオンガイド内で衝突により冷却されるかまたは実質的に熱化されるように構成および適合され、かつ/または、
(c)一動作モードにおいて、第1のイオンおよび/または第2のイオンが、イオンガイド内で実質的に断片化および/または反応および/または電荷減少されるように構成および適合され、かつ/または、
(d)一動作モードにおいて、第1のイオンおよび/または第2のイオンが、イオンガイドの入射口および/または出射口に配置された1つまたは複数の電極によってパルス状にイオンガイドに入射および/またはイオンガイドから出射されるように構成および適合される。
【0063】
一実施形態によると、
(a)一動作モードにおいて、イオンの大部分が、衝突誘起解離により断片化して大多数のb系列生成もしくはフラグメントイオンおよび/またはy系列生成もしくはフラグメントイオンを含む生成またはフラグメントイオンを形成するように構成され、かつ/または、
(b)一動作モードにおいて、イオンの大部分が、電子移動解離により断片化して大多数のc系列生成もしくはフラグメントイオンおよび/またはz系列生成もしくはフラグメントイオンを含む生成またはフラグメントイオンを形成するように構成される。
【0064】
一実施形態によると、電子移動解離を起こさせるために、
(a)試薬イオンとの相互作用により、検体イオンを断片化または解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(b)電子を1つまたは複数の試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンから1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(c)中性試薬ガス分子もしくは原子または非イオン性試薬ガスとの相互作用により、検体イオンを断片化または解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(d)電子を1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電(好ましくは塩基性)ガスもしくは蒸気(vapours)から1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(e)電子を1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電(好ましくは超塩基)試薬ガスもしくは蒸気から1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(f)電子を1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電アルカリ金属ガスもしくは蒸気から1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(g)電子を、(i)ナトリウム蒸気または原子、(ii)リチウム蒸気または原子、(iii)カリウム蒸気または原子、(iv)ルビジウム蒸気または原子、(v)セシウム蒸気または原子、(vi)フランシウム蒸気または原子、(vii)C60蒸気または原子および(viii)マグネシウム蒸気または原子からなる群から選択される1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電ガス、蒸気もしくは原子から1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させる。
【0065】
一実施形態によると、多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含むことが好ましい。
【0066】
一実施形態によると、電子移動解離を起こさせるために、試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを多環芳香族炭化水素または置換多環芳香族炭化水素から誘導してもよい。試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを電子親和力の低い基質から誘導してもよい。一実施形態によると、試薬イオンを、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニルアントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2’ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリルおよび(xviii)アントラキノンからなる群から誘導してもよい。試薬イオンつまり負の電荷を持つイオンはアゾベンゼンアニオンまたはアゾベンゼンラジカルアニオンを含んでいてもよい。試薬イオンがその他のイオン、ラジカルアニオンまたはメタステーブルイオンを含むその他の実施形態が考えられる。
【0067】
一実施形態によると、プロトン移動反応を起こさせるために、プロトンを1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンから1つまたは複数の試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンへ移動させてもよく、その結果、多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかの電荷状態を減少させることが好ましい。カチオンのいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させてもよいことも考えられる。
【0068】
プロトンを1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンから1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電試薬ガスもしくは蒸気へ移動させてもよく、その結果、多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかの電荷状態を減少させることが好ましい。カチオンのいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させてもよいことも考えられる。
【0069】
多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含むことが好ましい。
【0070】
一実施形態によると、プロトン移動反応を起こさせるために、試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを、(i)カルボン酸、(ii)フェノールおよび(iii)アルコキシド含有化合物からなる群から選択される化合物から誘導してもよい。あるいは、試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを、(i)安息香酸、(ii)パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンすなわちPDCH、(iii)六フッ化硫黄すなわちSF6および(iv)パーフルオロトリブチルアミンすなわちPFTBAからなる群から選択される化合物から誘導してもよい。
【0071】
一実施形態によると、1つまたは複数の試薬ガスまたは蒸気が超塩基ガス(superbase gas)を含んでいてもよい。1つまたは複数の試薬ガスまたは蒸気が、(i)1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(「TMG」)、(ii)2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピン{別名:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)}または(iii)7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(「MTBD」){別名:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン}からなる群から選択されてもよい。
【0072】
電子移動解離を起こさせることに関して上記に開示したのと同じ試薬イオンまたは中性試薬ガスがプロトン移動反応を起こさせるのにも用いられ得るさらなる実施形態が考えられる。
【0073】
本発明の別の態様によると、上記のような電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計が提供される。
【0074】
質量分析計は、
(a)イオン−イオン反応デバイスの上流および/または下流に配置され、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝撃(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、(xviii)サーモスプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源および(xx)グロー放電(「GD」)イオン源からなる群から選択されるイオン源、ならびに/あるいは、
(b)1つまたは複数の連続またはパルス化イオン源、ならびに/あるいは、
(c)電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つまたは複数のイオンガイド、ならびに/あるいは、
(d)電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つもしくは複数のイオン移動度分離デバイスおよび/または1つもしくは複数のフィールド非対称イオン移動度分光計デバイス、ならびに/あるいは
(e)電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つもしくは複数のイオントラップまたは1つもしくは複数のイオントラッピング領域、ならびに/あるいは、
(f)電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置され、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマー間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxviii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブル原子反応デバイスおよび(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される1つまたは複数の衝突、フラグメンテーションもしくは反応セル、ならびに/あるいは、
(g)(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場型質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速式飛行時間質量分析部および(xiv)直線加速式飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部、ならびに/あるいは、
(h)電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つまたは複数のエネルギー分析器もしくは静電エネルギー分析器、ならびに/あるいは、
(i)電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つまたは複数のイオン検出器、ならびに/あるいは、
(j)電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置され、(i)四重極質量フィルタ、(ii)二次元または線形四重極イオントラップ、(iii)ポールまたは三次元四重極イオントラップ、(iv)ペニングイオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁場型質量フィルタ(magnetic sector mass filter)、(vii)飛行時間質量フィルタおよび(viii)ウィーンフィルタからなる群から選択される1つまたは複数の質量フィルタ、ならびに/あるいは、
(k)イオンをパルス状に電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスへ入射させるためのデバイスまたはイオンゲート、ならびに/あるいは、
(l)実質的に連続したイオンビームをパルス化イオンビームに変換するためのデバイスをさらに含むことが好ましい。
【0075】
一実施形態によると、質量分析計は、
(a)検体イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つまたは複数の大気圧イオン源、ならびに/あるいは、
(b)検体イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つまたは複数のエレクトロスプレーイオン源、ならびに/あるいは、
(c)検体イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つまたは複数の大気圧化学イオン源、ならびに/あるいは、
(d)検体イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つまたは複数のグロー放電イオン源をさらに含む。
【0076】
好ましくは、1つまたは複数のグロー放電イオン源が質量分析計の1つまたは複数の真空室中に設置されてもよい。
【0077】
一実施形態によると、二重モードイオン源または双イオン源(twin ion source)を設置してもよい。例えば、一実施形態によると、正の検体イオンを生成するのにエレクトロスプレーイオン源を用い、負の試薬イオンを生成するのに大気圧化学イオン化イオン源を用いるようにしてもよい。検体および/または試薬イオンを生成するのにエレクトロスプレーイオン源、大気圧化学イオン化イオン源またはグロー放電イオン源のような単一のイオン源を用いてもよい実施形態も考えられる。
【0078】
一実施形態によると、質量分析計は、
C−トラップと、
オービトラップ質量分析部とを含み、
第1の動作モードにおいて、イオンが、C−トラップへ移送され、次いで、オービトラップ質量分析部に注入され、
第2の動作モードにおいて、イオンが、C−トラップへ移送され、次いで、少なくともいくらかのイオンをフラグメントイオンに断片化する衝突セルあるいは電子移動解離および/またはプロトン移動反応デバイスへ移送され、その後、フラグメントイオンが、C−トラップへ移送された後でオービトラップ質量分析部に注入される。
【0079】
衝突セルは、好適な実施形態による電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスを含むことが好ましい。
【0080】
本発明の別の態様によると、少なくとも1つの使用時にイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含む電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なコンピュータプログラムであって、制御システムに、
(i)少なくともいくらかの第1のイオンを駆動または付勢して第1の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加させ、
(ii)少なくともいくらかの第2のイオンを駆動または付勢して第2の異なる方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加させるように構成されたコンピュータプログラムが提供される。
【0081】
本発明の別の態様によると、少なくとも1つの使用時にイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含む電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能に構成されたコンピュータ実行可能な命令を格納するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、コンピュータプログラムが、制御システムに、
(i)少なくともいくらかの第1のイオンを駆動または付勢して第1の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加させ、
(ii)少なくともいくらかの第2のイオンを駆動または付勢して第2の異なる方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加させるように構成されたコンピュータ読み取り可能な媒体が提供される。
【0082】
一実施形態によると、コンピュータ読み取り可能な媒体は、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリおよび(vi)光ディスクからなる群から選択される。
【0083】
本発明の別の態様によると、
少なくとも1つのイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスを準備することを含む、電子移動解離またはプロトン移動反応を行う方法が提供される。
【0084】
この方法は、少なくともいくらかの第1のイオンを駆動または付勢して第1の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加することをさらに含むことが好ましい。
【0085】
この方法は、少なくともいくらかの第2のイオンを駆動または付勢して第2の異なる方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加することをさらに含むことが好ましい。
【0086】
本発明の別の態様によると、上記のような方法を含む質量分析の方法が提供される。
【0087】
本発明の別の態様によると、少なくとも1つの使用時にイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスが提供される。
【0088】
このデバイスは、少なくともいくらかの多価検体カチオンを駆動または付勢して第1の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合された第1のデバイスを含むことが好ましい。
【0089】
このデバイスは、少なくともいくらかの試薬アニオンを駆動または付勢して第1の方向と反対の第2の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合された第2のデバイスをさらに含むことが好ましい。
【0090】
多価検体カチオンの少なくともいくらかを試薬イオンの少なくともいくらかと相互作用させることが好ましく、少なくともいくらかの電子を試薬アニオンから多価検体カチオンの少なくともいくらかへ移動させ、その結果、多価検体カチオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させることが好ましい。
【0091】
本発明の別の態様によると、少なくとも1つのイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを準備することを含む電子移動解離を行う方法が提供される。
【0092】
この方法は、少なくともいくらかの多価検体カチオンを駆動または付勢して第1の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加することをさらに含むことが好ましい。
【0093】
この方法は、少なくともいくらかの試薬アニオンを駆動または付勢して第1の方向と反対の第2の方向にイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を複数の電極の少なくともいくつかに印加することをさらに含むことが好ましい。
【0094】
多価検体カチオンの少なくともいくらかを試薬イオンの少なくともいくらかと相互作用させることが好ましく、少なくともいくらかの電子を試薬アニオンから多価検体カチオンの少なくともいくらかへ移動させ、その結果、多価検体カチオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させることが好ましい。
【0095】
本発明の別の態様によると、少なくとも1つの使用時に試薬および/または検体イオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイスが提供される。
【0096】
本発明の別の態様によると、
少なくとも1つの試薬および/または検体イオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを含む反応デバイスにおいて電子移動解離および/またはプロトン移動反応を行うことを含む、電子移動解離および/またはプロトン移動反応の方法が提供される。
【0097】
本発明の別の態様によると、
少なくとも1つのイオンが移送されるアパーチャをそれぞれが有する複数の電極を含むイオンガイドを準備することと、
イオンガイド内に、検体カチオンと試薬アニオンとを含むイオンを準備することと、
イオンの少なくともいくらかを第1の方向に付勢してイオンガイドの軸方向長さの少なくとも第1の部分に沿わせるために1つまたは複数の第1の過渡DC電圧を複数の電極の少なくともいくつかに印加することと、
残りのイオンの少なくともいくらかを第1の方向と反対の方向に付勢してイオンガイドの軸方向長さの少なくとも第2の部分に沿わせるために1つまたは複数の第2の過渡DC電圧を複数の電極の少なくともいくつかに印加することとを含み、
検体カチオンの少なくともいくらかを試薬イオンの少なくともいくらかと相互作用させ、その結果、検体カチオンの少なくともいくらかが解離してフラグメントイオンを形成する、電子移動解離またはプロトン移動反応を行う方法が提供される。
【0098】
本発明の別の態様によると、
少なくとも1つのイオンが移送されるアパーチャをそれぞれが有する複数の電極を含むイオンガイドと、
前記イオンガイド内に検体カチオンを導入するための源(source)と、
前記イオンガイド内に試薬アニオンを導入するための源と、
制御システムであって、該制御システムによって実行されると該制御システムに、
(i)イオンの少なくともいくらかを第1の方向に付勢してイオンガイドの軸方向長さの少なくとも第1の部分に沿わせるために1つまたは複数の第1の過渡DC電圧を複数の電極の少なくともいくつかに印加する工程と、
(ii)残りのイオンの少なくともいくらかを第1の方向と反対の方向に付勢してイオンガイドの軸方向長さの少なくとも第2の部分に沿わせるために1つまたは複数の第2の過渡DC電圧を複数の電極の少なくともいくつかに印加する工程とを実行させるコンピュータ実行可能な命令を格納するコンピュータ読み取り可能な媒体を含む制御システムとを含み、
検体カチオンの少なくともいくらかを試薬イオンの少なくともいくらかと相互作用させ、その結果、検体カチオンの少なくともいくらかが解離してフラグメントイオンを形成する電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスが提供される。
【0099】
好適な実施形態は、1つまたは複数の進行波もしくは静電場をRFイオンガイドの電極に印加することが好ましいイオン−イオン反応デバイスおよび/またはイオン−中性ガス反応デバイスに関する。RFイオンガイドは、使用時にイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むことが好ましい。1つまたは複数の進行波もしくは静電場は、イオンガイドの電極に印加されることが好ましい1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位波形を含むことが好ましい。
【0100】
好適な実施形態は、イオン−イオン反応を促進するために反対の電荷を有するイオンを空間的に操作するように設計された質量分析のための装置に関する。特に、この装置は、イオンの電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションおよび/またはプロトン移動反応(「PTR」)電荷状態減少を行うように構成および適合される。
【0101】
一実施形態によると、負の電荷を持つ試薬イオン(または中性試薬ガス)が、イオン−イオン反応またはイオン−中性ガス反応デバイス内に装填または準備もしくは配置され得る。負の電荷を持つ試薬イオンは、例えば、DC進行波あるいは1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位をイオン−イオン反応デバイスを形成する電極に印加することによって、イオン−イオン反応デバイス内へ移送され得る。
【0102】
試薬アニオン(または中性試薬ガス)がイオン−イオン反応デバイス(またはイオン−中性ガス反応デバイス)に装填されると、次いで、多価検体カチオンを好ましくは1つまたは複数の連続または別個のDC進行波によって駆動または付勢して反応デバイスに通すかまたは入らせ得ることが好ましい。1つまたは複数のDC進行波は反応デバイスの電極に印加されることが好ましい。
【0103】
1つまたは複数のDC進行波は、イオンを並進または付勢させてイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせることが好ましい1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位波形を含むことが好ましい。したがって、イオンは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って電極に順次印加されることが好ましい1つまたは複数の本物のつまりDCポテンシャル障壁によって、イオンガイドの長さに沿って有効に並進させられる。結果として、DCポテンシャル障壁間にトラップされた正の電荷を持つ検体イオンを、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って並進させるという効果があり、DCポテンシャル障壁間にトラップされた正の電荷を持つ検体イオンを、駆動または付勢して、イオンガイドまたは反応デバイスの中つまり内部に既に存在していることが好ましい負の電荷を持つ試薬イオン(または中性試薬ガス)に通しかつ近接させるという効果がある。
【0104】
この実施形態の格別の利点は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内で、イオン−イオン反応および/またはイオン−中性ガス反応のための最適条件が達成されるという効果があることである。特に、試薬アニオン(または試薬ガス)および検体カチオンの運動エネルギーを厳密に一致させることができる。電子移動解離(またはプロトン移動反応)プロセスにより生じる生成またはフラグメントイオンの滞在時間を、結果として生じたフラグメントまたは生成イオンが順当に中性化されることがないように注意深く制御することができる。
【0105】
したがって、本発明の好適な実施形態は、従来の構成に比べて、主流の(すなわち非FTICR)市販の質量分析計で効率的に電子移動解離および/またはプロトン移動反応を行う能力の大幅な向上を示す。
【0106】
例えば正の電荷を持つ検体イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスを通して並進させるのに用いられることが好ましい1つまたは複数のDC進行波の速さおよび/または振幅を、電子移動解離による検体イオンのフラグメンテーションおよび/またはプロトン移動反応による検体イオンの電荷状態減少を最適化するために、制御し得る。電子移動解離(またはプロトン移動反応)プロセスにより生じた正の電荷を持つフラグメントまたは生成イオンを、形成されてから過度に長期間にわたってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内にとどまらせた場合、それらのイオンが中性化されやすい。好適な実施形態により、正の電荷を持つフラグメントまたは生成イオンを、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内での形成後すぐに、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスから除去または抽出することが可能である。
【0107】
好適な実施形態によると、必要に応じて、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの前方(例えば上流)端に、また後方(例えば下流)端にも、負の電位またはポテンシャル障壁を印加し得る。負の電位またはポテンシャル障壁は、負の電荷を持つ試薬イオンをイオンガイド内に閉じ込め、それと同時に、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内で作り出される正の電荷を持つ生成またはフラグメントイオンを比較的迅速にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスから出現および出射可能にするかまたはそうさせるように作用することが好ましい。検体イオンが中性ガス分子と相互作用して電子移動解離および/またはプロトン移動反応を起こし得るその他の実施形態も考えられる。中性試薬ガスが供される場合は、ポテンシャル障壁を設けても設けなくてもよい。
【0108】
イオンガイドの前方(例えば上流)端にのみ負の電位またはポテンシャル障壁を印加する別の実施形態が考えられる。負の電位またはポテンシャル障壁をイオンガイドの後方(例えば下流)端にのみ印加するさらなる実施形態が考えられる。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿った異なる位置において1つまたは複数の負の電位もしくはポテンシャル障壁を維持するその他の実施形態が考えられる。例えば、1つまたは複数の負の電位もしくはポテンシャル障壁を、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿った1つまたは複数の中間位置に設けてもよい。
【0109】
やや好適な実施形態によると、1つまたは複数の正の電位によって正の検体イオンをイオンガイド内に保持し、その後で試薬イオンまたは中性試薬ガスをイオンガイド内に導入するようにしてもよい。
【0110】
別の実施形態によると、2つの静電進行波またはDC進行波を実質的に同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加してもよい。進行波静電場または過渡DC電圧波形を、イオンを実質的に同時に反対方向に、例えばイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に向かって、移動または並進させるように構成することが好ましい。
【0111】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスは、ACまたはRF電圧が供給されることが好ましい複数の積層リング電極を含むことが好ましい。電極は、使用時にイオンが移送されるアパーチャを含むことが好ましい。好ましくは半径方向の擬ポテンシャル障壁が生成されるように隣接電極に逆位相のACまたはRF電圧を印加することによって、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に半径方向に閉じ込めることが好ましい。半径方向の擬ポテンシャル障壁により、イオンが、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心長手方向軸に沿って半径方向に閉じ込められることが好ましい。イオンガイドの電極に印加されることが好ましい進行波または複数の過渡DC電位もしくは電圧により、カチオンとアニオン(またはカチオンとカチオンもしくはアニオンとアニオン)を、イオン−イオン反応および/またはイオン−中性ガス反応のための好条件がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中央(または別の部分もしくは領域)に作り出されるように、互いに向かわせることが好ましい。
【0112】
一実施形態によると、2つの異なる検体試料をイオンガイドの異なる端から導入してもよい。さらにまたはもしくは、2つの異なる種の試薬イオンをイオンガイドの異なる端からイオンガイド内に導入してもよい。
【0113】
進行波静電場は軸方向の質量電荷比に依存したRF擬ポテンシャル障壁を生成しないため、好適な実施形態によるイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスは、従来の電子移動解離構成に関連付けられる欠点を持たない。したがって、イオンが質量電荷比依存的にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内に閉じ込められることがない。
【0114】
好適な実施形態の別の利点は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される1つあるいは複数のDC進行波または過渡DC電位もしくは電圧の種々のパラメータを制御および最適化できることである。例えば、1つまたは複数のDC進行電圧波の波の形状、波長、波のプロファイル、波速度および振幅のようなパラメータを制御および最適化することができる。好適な実施形態により、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス中のイオンの空間位置を、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内のイオンの質量電荷比または極性に関係なく柔軟に制御することが可能である。
【0115】
DC進行波パラメータ(すなわち、電極に印加される1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位のパラメータ)を最適化してイオンガイドまたは反応デバイスのイオン−イオン反応またはイオン−中性ガス反応領域におけるカチオンとアニオンとの(または検体カチオンと中性試薬ガスとの)相対イオン速度を制御することができる。カチオンとアニオンとのまたはカチオンと中性試薬ガスとの相対イオン速度は、電子移動解離およびプロテイン移動反応実験における反応速度定数を決定する重要なパラメータである。
【0116】
高速進行波を用いてかまたは定在つまり静止DC波を用いることによってイオン−中性衝突の速度を増加させることができるその他の実施形態も考えられる。このような衝突を用いて衝突誘起解離(「CID」)を促進することもできる。特に、電子移動解離またはプロトン移動反応により生じた生成またはフラグメントイオンは、非共有結合を形成し得る。これらの非共有結合は、衝突誘起解離によって切断することができる。衝突誘起解離は、別個の衝突誘起解離セルにおいて電子移動解離プロセスと空間的に連続して、および/または、同じイオン−イオン反応またはイオン−中性ガス反応デバイスにおいて電子移動解離プロセスと時間的に連続して行われ得る。
【0117】
本発明の一実施形態によると、多価フラグメントまたは生成イオン(あるいは検体イオン)の電荷状態を減少させるために、電子移動解離プロセスの後で(または前に)プロトン移動反応を行ってもよい。
【0118】
一実施形態によると、電子移動解離に用いられる試薬イオンとプロトン移動反応に用いられる試薬イオンとは、同じ中性化合物から生成されても異なる中性化合物から生成されてもよい。試薬および検体イオンは、同じイオン源によって生成されても2つ以上の別個のイオン源によって生成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】図1は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に検体カチオンと試薬アニオンとが集められるように、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に同時に2つの過渡DC電圧または電位を印加する本発明の一実施形態を示す。
【図2】図2は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行DC電圧波形を、正負イオンの両方を同時に同一方向に並進させるのにどのように用いることができるかを示す。
【図3】図3は、2つの進行DC電圧波形が同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加され、当該進行DC電圧波形の振幅がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心に向かって漸進的に低減する本発明の一実施形態に係るイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスのSIMION(登録商標)シミュレーションの断面図を示す。
【図4】図4は、2つの対向する進行DC電圧波形がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加されたものとしてモデル化された場合の、当該進行DC電圧波形の振幅がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心に向かって漸進的に低減する好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内のポテンシャルエネルギー表面のスナップ写真を示す。
【図5】図5は、初めにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの端部に提供されたものとしてモデル化された2組の質量電荷比300のカチオンおよびアニオンの時間の関数としての軸方向位置を示し、2つの対向する進行DC電圧波形が、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域においてイオンを集束させるようにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加されたものとしてモデル化されている。
【図6】図6A,図6B、図6Cおよび図6Dは、焦点つまりイオン−イオン反応領域がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの中心領域に固定されたままではなくイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの長さに沿って漸進的に移動するように構成された一実施形態に係る好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内のポテンシャルエネルギーを表すSIMION(登録商標)シミュレーションを示す。
【図7】図7は、検体および試薬イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス内へ向かわせることができるように好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの上流にイオンガイドカプラ(ion guide coupler)を設置し、当該好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスを直交加速式飛行時間質量分析部に連結した本発明の一実施形態を示す。
【図8】図8Aは、0Vの振幅を有する進行波電圧を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られたマススペクトルを示し、図8Bは、0.5Vの振幅を有する進行波電圧をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加した場合に得られた対応するマススペクトルを示し、図8Cは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極に印加される進行波電圧を1Vまで増加させた場合に得られたマススペクトルを示す。
【図9】図9は、検体イオンを生成するのにエレクトロスプレーイオン源を用い、試薬イオンを質量分析計の投入真空室内部に配置されたグロー放電領域内で生成する本発明の一実施形態による質量分析計のイオン源部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0120】
ここで、添付の図面を参照しながら、単なる例示として、本発明の種々の実施形態を説明する。
【0121】
ここで、本発明の一実施形態について図1を参照しながらさらに詳細に説明する。図1は、本発明の好適な実施形態に係る積層リングイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を一体となって形成するレンズ素子またはリング電極1の断面図を示す。
【0122】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、使用時にイオンが移送される1つまたは複数のアパーチャを有する複数の電極1を含むことが好ましい。使用時に一パターンまたは一連のデジタル電圧パルス7が電極1に印加されることが好ましい。デジタル電圧パルス7は、段階的に順次印加されることが好ましく、矢印6で示すように順次電極1に印加されることが好ましい。図1に示すような一実施形態によると、第1の進行波8または一連の過渡DC電圧もしくは電位は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の第1(上流)端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央に向かって時間とともに移動するように構成されることが好ましい。同時に、第2の進行波9または一連の過渡DC電圧もしくは電位は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の第2(下流)端から同様にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央に向かって時間とともに移動するように構成されることが好ましい。結果として、2つのDC進行波8、9または一連の過渡DC電圧もしくは電位が、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両側からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央つまり中心領域に向かって集束することが好ましい。
【0123】
図1は、時間の関数として(例えば、電子タイミングクロックの進行とともに)電極1に印加されることが好ましいデジタル電圧パルス7を示す。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1への時間の関数としてのデジタル電圧パルス7の印加の際の漸進性は、矢印6によって示されるようなものであることが好ましい。第1の時間T1において、T1によって示される電圧パルスが電極1に印加されることが好ましい。それに続く時間T2において、T2によって示される電圧パルスが電極1に印加されることが好ましい。それに続く時間T3において、T3によって示される電圧パルスT3が電極1に印加されることが好ましい。最後に、それに続く時間T4において、T4によって示される電圧パルスが電極1に印加されることが好ましい。電圧パルス7は、図示するような矩形波電位プロファイルを有することが好ましい。
【0124】
図1から分かるように、電極1に印加されるデジタルパルス7の強度または振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心に向かって低減するように構成されることが好ましい。結果として、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の投入または出射領域つまり端部に近い電極1に印加されることが好ましいデジタル電圧パルス7の強度または振幅が、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域の電極1に印加されることが好ましいデジタル電圧パルス7の強度または振幅よりも大きいことが好ましい。電極1に印加されることが好ましい過渡DC電圧もしくは電位またはデジタル電圧パルス7の振幅がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿った軸方向変位に伴って低減しないその他のやや好適な実施形態が考えられる。この実施形態によると、デジタル電圧パルス7の振幅は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿った軸方向変位に対して実質的に一定のままであってもよい。
【0125】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2のレンズ素子またはリング電極1に印加されることが好ましい電圧パルス7は、矩形波であることが好ましい。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の電位が、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の波動関数ポテンシャルが好ましくは滑らかな関数になるように緩和することが好ましい。
【0126】
一実施形態によると、検体カチオン(例えば正の電荷を持つ検体イオン)および/または試薬アニオン(例えば負の電荷を持つ試薬イオン)を、同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に導入し得る。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内では、正イオン(カチオン)は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加されることが好ましいDC進行波あるいは1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位の正の(山の)電位によってはね返されることが好ましい。静電進行波がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って移動するにつれて、正イオンが、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に沿って進行波と同じ方向に、実質的に図2に示すように押されることが好ましい。
【0127】
負の電荷を持つ試薬イオン(すなわち試薬アニオン)は、進行波の正の電位の方へ引き付けられ、同様に、進行DC電圧または電位がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って移動するにつれて、進行波の方向に引き寄せられ、付勢され、または引き付けられる。結果として、正イオンは、進行DC波の負の山(正の谷)において進行することが好ましく、負イオンは、進行DC波あるいは1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位の正の山(負の谷)において進行することが好ましい。
【0128】
一実施形態によると、2つの対向する進行DC波8、9が、イオンを実質的に同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心に向かって並進させるように構成されてもよい。進行DC波8、9は、互いに向かって移動するように構成されることが好ましく、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域において有効に集束または融合するとみなすことができる。カチオンとアニオンとはイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央に向かって同時に搬送されることが好ましい。検体カチオンを反応デバイスの異なる端から同時に導入し得るやや好適な実施形態が考えられる。この実施形態によると、検体イオンを、反応デバイス内に存在するかまたは後で反応デバイスに加えられる中性試薬ガスと反応させてもよい。別の実施形態によると、2つの異なる種の試薬イオンを好適な反応デバイスの異なる端から当該反応デバイス内に導入(同時にまたは順次に)してもよい。
【0129】
一実施形態によると、第1の進行DC波8によってカチオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かって並進させ、第2の異なる進行DC波9によってアニオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かって並進させるようにしてもよい。
【0130】
しかしながら、カチオンとアニオンとの両方を第1の進行波8によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心(または別の領域)に向かって同時に並進させ得る他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、必要に応じて、カチオンおよび/またはアニオンを、第2の進行DC電圧波9によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心(または別の領域)に向かって同時に並進させてもよい。したがって例えば、一実施形態によると、アニオンとカチオンとを第1の進行DC波8によって第1の方向に同時に並進させると同時にその他のアニオンとカチオンとを第1の方向と反対であることが好ましい第2の方向に移動することが好ましい第2の進行DC波9によって同時に並進させるようにしてもよい。
【0131】
好適な実施形態によると、イオンがイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域に接近するにつれて進行波8、9の推進力が減少するようにプログラムされていることが好ましく、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域における進行波の振幅を、有効にゼロになるかまたは少なくとも著しく低減するように構成してもよい。結果として、進行波の谷およびピークが、一実施形態によると反対の極性(またはそれほど好ましくはないが同じ極性)のイオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内で互いに合流および相互作用可能にするかまたはさせるように、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央(中心)で有効に消滅(または著しく低減)することが好ましい。例えば緩衝ガス分子との多重衝突によるかまたは高い空間電荷効果によりイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域から軸方向に離れてランダムに漂遊するイオンがあれば、これらのイオンは、イオンを並進または付勢してイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かって戻らせる効果を有することが好ましい次の進行DC波に出会うことが好ましい。
【0132】
一実施形態によると、正の検体イオンが、第1の方向に移動するように構成されることが好ましい第1の進行波8によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かって並進させられるように構成され、負の試薬イオンが、第1の方向と反対の第2の方向に移動するように構成されることが好ましい第2の進行波9によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かって並進させられるように構成されてもよい。
【0133】
その他の実施形態によると、2つの対向する進行DC波8、9をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加する代わりに、いかなる特定の時点においても1つの進行DC波をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加するようにしてもよい。この実施形態によると、負の電荷を持つ試薬イオン(またはそれほど好適ではないが正の電荷を持つ検体イオン)を最初にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内へ装填または向かわせてもよい。試薬アニオンを進行DC波によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入射領域からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスに沿っておよび通して並進させることが好ましい。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の反対端すなわち出射端に負の電位を印加することにより、試薬アニオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に保持してもよい。
【0134】
試薬アニオン(またはそれほど好適ではないが検体カチオン)をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に装填した後、正の電荷を持つ検体イオン(またはそれほど好適ではないが負の電荷を持つ試薬イオン)を、電極1に印加される進行DC波または複数の過渡DC電圧もしくは電位によって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に沿っておよび通して並進させることが好ましい。
【0135】
試薬アニオンと検体カチオンとを並進させる進行DC波は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加されることが好ましい1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の過渡DC電圧もしくは電位波形を含むことが好ましい。負の電荷を持つ試薬イオンと正の電荷を持つ検体イオンとの間のイオン−イオン反応を最適化するために、進行DC波のパラメータ、特に過渡DC電圧または電位をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って各電極1に印加する速さまたは速度を変化または制御し得る。
【0136】
イオン−イオン相互作用から生じるフラグメントまたは生成イオンは、当該フラグメントまたは生成イオンが中性化され得る前に、好ましくはDC進行波によって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から押し流されることが好ましい。所望の場合には、未反応の検体イオンおよび/または未反応の試薬イオンを、好ましくはDC進行波によって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から除去してもよい。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の少なくとも下流端に印加されることが好ましい負の電位が、正の電荷を持つ生成またはフラグメントアニオンを加速してイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出すようにも作用することが好ましい。
【0137】
一実施形態によると、負の電荷を持つイオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に保持するために、負の電位を必要に応じてイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の一端または両端に印加してもよい。印加される負の電位は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で作り出されるまたは形成される正の電荷を持つフラグメントまたは生成イオンを、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の一端または両端を介して出射するように促進または付勢する効果も有することが好ましい。
【0138】
一実施形態によると、正の電荷を持つフラグメントまたは生成イオンを、その形成から約30ミリ秒後にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出射するように構成し、それによりイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の正の電荷を持つフラグメントまたは生成イオンの中性化を回避してもよい。しかしながら、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で形成されたフラグメントまたは生成イオンが、より迅速に、例えば0〜10ミリ秒、10〜20ミリ秒または20〜30ミリ秒の時間スケール内でイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出射するように構成され得るその他の実施形態が考えられる。あるいは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で形成されたフラグメントまたは生成イオンを、よりゆっくりと、例えば30〜40ミリ秒、40〜50ミリ秒、50〜60ミリ秒、60〜70ミリ秒、70〜80ミリ秒、80〜90ミリ秒、90〜100ミリ秒または>100ミリ秒の時間スケール内でイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出射するように構成してもよい。
【0139】
好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の内部のおよびこれを通るイオンの動きを、SIMION8(登録商標)を用いてモデル化した。図3は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を形成する一連のリング電極1を通る断面図を示す。図3に示すようなイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を通るイオンの動きを、SIMION8(登録商標)を用いてモデル化した。図3は、本発明の一実施形態によるイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を形成する電極1に漸進的に印加されるとしてモデル化された2つの集束する進行DC波電圧8、9または一連の過渡DC電圧8、9も示している。進行DC波電圧8、9は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かって集束するとしてモデル化され、イオンを同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の両端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かって並進させる効果を有していた。
【0140】
図4は、SIMION(登録商標)によってモデル化された、特定の時点におけるイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内のポテンシャルエネルギー表面のスナップ写真を示す。
【0141】
図5は、第1の組のカチオンとアニオンとを初めにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の上流端に提供されるとしてモデル化し、第2の組のカチオンとアニオンとを初めにイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの下流端に提供されるとしてモデル化したシミュレーションの結果を示す。2つの進行DC電圧波を、同時にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加されるとしてモデル化した。一方の進行DC電圧波または一連の過渡DC電圧は、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の前方つまり上流端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へと並進させるように構成されるとしてモデル化し、他方の進行DC電圧波または一連の過渡DC電圧は、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の後方つまり下流端からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心へと並進させるように構成されるとしてモデル化した。
【0142】
図5は、これら2つの組のカチオンとアニオンとのその後の軸方向位置を時間の関数として示す。4つのイオンすべてを質量電荷比300としてモデル化した。図5から、いずれの組のイオンも、約200μ秒後にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の軸方向長さの中心または中央領域(変位量45mmの位置にある)に向かって移動するのが分かる。
【0143】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2は、ステンレス鋼製の複数の積層導電性円形リング電極1を含むとしてモデル化した。リング電極は、ピッチが1.5mm、厚さが0.5mm、中心アパーチャ直径が5mmとなるように構成した。進行波プロファイルは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心に向かう等価波速度(equivalent wave velocity)が300ミリ秒としてモデル化されるように、5μ秒間隔で前進するとしてモデル化した。アルゴン緩衝ガスを、0.076Torr(すなわち0.1mbar)の圧力のイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に提供されるとしてモデル化した。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さは90mmとしてモデル化した。電圧パルスの典型的な振幅は10Vとしてモデル化した。イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に半径方向に、半径方向の擬ポテンシャル谷に閉じ込めるように、100VのRF電圧の相反する位相をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を形成する隣接した電極1に印加されるとしてモデル化した。
【0144】
図5から、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内では、反対の極性を有するイオンが、比較的低くかつ実質的に等しい運動エネルギーで近接して一緒に配置されることが分かるであろう。したがってイオン−イオン反応領域がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内に設けられるかまたは作り出されることが好ましい。さらに、イオン−イオン相互作用のための条件が実質的に最適化される。
【0145】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内のイオン−イオン反応の位置または部位は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の焦点を試薬アニオンと検体カチオンとが互いに近接しそれゆえ相互作用することができる場所であるとみなすことができるという意味で、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の焦点と呼ばれることがある。一実施形態によると、対向する進行波8、9を、焦点または反応空間でぶつかるように構成してもよい。進行DC電圧波8、9または過渡DC電圧もしくは電位の振幅を、焦点または反応空間で実質的にゼロ振幅に減衰するように構成してもよい。
【0146】
いかなるイオン−イオン反応(またはイオン−中性ガス反応)が起こったとしてもすぐに、結果として生じるあらゆる生成またはフラグメントイオンを好ましくは比較的迅速にイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の反応空間から押し流すかまたは離れる方向に並進させるように構成してもよい。一実施形態によると、結果として生じる生成またはフラグメントイオンを、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出射させることが好ましく、その後、さらに先へ、飛行時間質量分析部のような質量分析部またはイオン検出器へと移送してもよい。
【0147】
イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で形成された生成またはフラグメントイオンを、種々の方法で抽出し得る。2つの対向する進行DC電圧波8、9をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイスの電極1に印加する実施形態に関しては、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の下流領域つまり出射領域に印加される進行DC波9の進行方向を反転させ得る。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を従来の進行波イオンガイドとして有効に動作させる、すなわち、単一の方向に移動する単一の一定振幅進行DC電圧波をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の実質的に全体にわたって印加するように、進行DC波振幅をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って正規化してもよい。
【0148】
同様に、単一の進行DC電圧波が初めに試薬アニオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内へ装填し、その後続いて検体カチオンが同じ進行DC電圧波によってイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内へ装填される実施形態に関しては、当該単一の進行DC電圧波は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で作り出される正の電荷を持つフラグメントまたは生成イオンを抽出するようにも作用する。いったんフラグメントまたは生成イオンが生成されると、進行DC電圧波振幅をイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って正規化して、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を従来の進行波イオンガイドとして有効に動作させてもよい。
【0149】
イオンを進行波の場によって並進させて十分な高圧(例えば、>0.1mbar)に維持されたイオンガイドに通した場合、イオンはそのイオン移動度の順に進行波イオンガイドの終端から出現し得ることが示されている。イオン移動度が比較的高いイオンは、イオン移動度が比較的低いイオンよりも先にイオンガイドから出現することが好ましい。したがって、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域で生成される生成またはフラグメントイオンのイオン移動度分離を利用することにより、感度およびデューティサイクルの向上などのさらなる分析上のメリットを本発明の実施形態によって提供することができる。
【0150】
一実施形態によると、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の上流および/または下流にイオン移動度分光計または分離段階(stage)を設置してもよい。例えば、一実施形態によると、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内で形成され、その後でイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から抽出された生成またはフラグメントイオンを、次に、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の下流に配置されることが好ましいイオン移動度分光計または分離器の中でイオン移動度に従って(またはそれほど好ましくはないが、電場強度に伴うイオン移動度の変化率に従って)分離してもよい。
【0151】
一実施形態によると、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を形成するリング電極1の内側アパーチャの直径を、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿った電極位置に伴って漸進的に増加するように構成してもよい。アパーチャ直径は、例えば、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入射部および出射部ではより小さくなり、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心または中央寄りでは比較的より大きくなるように構成し得る。これにより、種々の電極1に印加されるDC電圧の振幅は実質的に一定に保つことができる一方で、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域内でイオンが受けるDC電位の振幅を低減させる効果が得られる。したがって、この実施形態によると、進行波イオンガイド電位は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中央または中心領域で最小となる。
【0152】
別の実施形態によると、リングアパーチャ直径と、電極1に印加される過渡DC電圧または電位の振幅とを、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って変化させてもよい。
【0153】
リング電極のアパーチャの直径がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心に向かうにつれて増加する実施形態においては、中心軸近くのRF場も減少する。このことは、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の中心領域においてイオンのRF加熱をそれほど生じさせないという効果がある。この効果は、電子移動解離型の反応を最適化しかつ衝突誘起反応を最小化するうえで特に有益となり得る。
【0154】
さらなる実施形態によると、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の焦点または反応領域の位置を、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って軸方向に時間の関数として移動または変化させてもよい。このことには、イオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2を中心反応領域で止まることなく連続的に流れているまたは通過しているように構成することができるという利点がある。これにより、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入射口において検体イオンと試薬イオンとを導入し、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の出射口から生成またはフラグメントイオンを射出するという連続的プロセスを達成することが可能になる。イオン−イオン反応効率を最適化するために、焦点の並進速度などの種々のパラメータを変化または制御し得る。焦点の動きは、適切なレンズまたはリング電極1に印加される電圧を切り換えるかまたは制御することによって段階的に達成または電子制御可能である。
【0155】
焦点を時間とともに変化させるイオンガイドまたはイオン−イオン反応領域2内のイオンの動きを、SIMION(登録商標)を用いて調べた。図6A〜図6Dは、焦点または反応領域の軸方向位置が時間とともに変化する一実施形態による異なる時点におけるイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内のポテンシャルエネルギー表面を示す。破線矢印は、本発明の一実施形態によるイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加されることが好ましい対向する進行波DC電圧の方向を示している。図6A〜図6Dから、進行DC波電圧の強度が焦点からの距離または変位量に伴って直線的に増加するようにプログラムされたことがわかる。しかしながら、進行DC電圧波についてのその他の種々の振幅関数を代わりに用いてもよい。反応領域または焦点の動きを、例えばイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の入射口(すなわち左)からイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の出射口(すなわち右)へと進むようにプログラムすることが可能であることもわかる。したがって、電子移動解離(および/またはプロトン移動反応)のプロセスを、焦点がイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って移動するかまたは並進させられるにつれて実質的に連続して起こるように構成することが可能である。最終的に、電子移動解離反応により生じた生成またはフラグメントイオンを、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の出射口から出現するように構成することが好ましく、さらに先へ、例えば飛行時間質量分析部へと移送してもよい。システムの総感度を高めるには、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2からのイオンの放出のタイミングを直交加速式飛行時間質量分析部の押し出し電極と同期させ得る。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って多数の焦点を設置し得るとともに必要に応じてそれらの焦点のいくつかまたはすべてをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の長さに沿って並進させる、この実施形態の変形例も考えられる。
【0156】
一実施形態によると、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2に投入される検体カチオンと試薬アニオンとを、別個のつまり異なるイオン源から生成してもよい。別個のイオン源からのカチオンとアニオンとの両方を好適な実施形態によるイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に効率的に導入するために、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の上流(および/または下流)にさらなるイオンガイドを設置してもよい。このさらなるイオンガイドは、異なる位置にある別個のイオン源からの両方の極性のイオンを同時にかつ連続的に受け取ったり輸送し、検体および試薬イオンの両方を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内へ向かわせるように構成され得る。
【0157】
図7は、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2における電子移動解離によって生成またはフラグメントイオンを形成するために検体カチオン11と試薬アニオン12との両方を好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内に導入するのにイオンガイドカプラ10が用いられ得る一実施形態を示す。イオンガイドカプラ10は、例えば米国特許第6891157号に開示されているような多重プレートRFイオンガイドを含み得る。イオンガイドカプラ10は、概ねイオン移送平面上に配置された複数の平板状電極を含み得る。隣接する平板状電極を逆の位相のACまたはRF電位に維持することが好ましい。平板状電極を、イオンガイドカプラ10内にイオン案内領域が形成されるような形状にすることも好ましい。イオンをイオンガイドカプラ10内に保持するために、上部および/または下部平板状電極を設置し、DCおよび/またはRF電圧を上部および/または下部平板状電極に印加するようにしてもよい。
【0158】
1つまたは複数の質量選択的四重極を、イオン源から受け取った特定の検体および/または試薬イオンを選択したり、所望のイオンだけをさらに先へ、イオンガイドカプラ10へと移送したりするのに利用してもよい。イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内の反応領域5で作り出され、その後イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2から出現する生成またはフラグメントイオンを受け取って分析するために、好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の下流に飛行時間質量分析部11を配置してもよい。
【0159】
積層リングRFイオンガイドの電極に進行DC電圧波を印加することを含む実験により、イオン反応空間内で進行DC波電圧パルスの振幅を増加させかつ/もしくは進行DC波電圧パルスの速さを増加させることによってイオン−イオン反応率を低下させるかまたは必要な場合には停止させることまでもが可能であることが示されている。これは、進行DC電圧波が検体カチオンの試薬アニオンに対する相対速度を局所的に増加させ得ることによる。イオン−イオン反応率はカチオンとアニオンとの間の相対速度の三乗に反比例することが示されている。
【0160】
進行DC電圧波の振幅および/または速さを増加させることで、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2内でカチオンとアニオンとが同時に存在する時間もより少なくなり得、ひいては反応効率を低減させる効果を奏し得る。
【0161】
図8A〜図8Cは、進行DC電圧波の振幅を変化させることがハイブリッド四重極飛行時間質量分析計のガスセル内で生成される電子移動解離生成またはフラグメントイオンの生成または形成に及ぼす影響を示す。特に、図8A〜図8Cは、アゾベンゼン試薬アニオンとのイオン−イオン反応に引き続いて質量電荷比449.9の物質−Pの3価の前駆カチオンを断片化することにより生じる電子移動解離生成またはフラグメントイオンを示す。図8Aは、進行波振幅を0Vに設定した場合に記録されたマススペクトルを示し、図8Bは、進行波振幅を0.5Vに設定した場合に記録されたマススペクトルを示し、図8Cは、進行波振幅を1.0Vに増加した場合に記録されたマススペクトルを示す。1.0Vの進行波をイオンガイドに印加した場合に電子移動解離生成またはフラグメントイオンの存在度が著しく低下することがわかる。この効果は、所望の場合に電子移動解離フラグメントまたは生成イオンの生成(およびプロトン移動反応による電荷状態の減少)を実質的に防止または抑制するのに用いることができる。
【0162】
本発明の一実施形態によると、イオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の電極1に印加される1つまたは複数のDC進行波の振幅および/または速さを変化させることにより、イオン−イオン反応を制御または最適化し得る。しかしながら、進行DC波場の振幅を電子制御する代わりに、内径または軸方向間隔が変化する積層リング電極を利用することによって場の振幅を機械的に制御し得るその他の実施形態が考えられる。リング積層体つまりリング電極1のアパーチャの直径が増加するように構成されている場合、すべての電極1に同一振幅電圧が印加されるとすると、イオンが受ける進行波振幅は減少する。
【0163】
1つまたは複数の進行DC電圧波の振幅をさらに増加させ得、その後、定在波が有効に生成されるように進行DC電圧波速度をゼロまで低減させる実施形態が考えられる。この実施形態によると、反応空間の中のイオンをイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2の軸に沿って繰返し加速そして減速させ得る。この手法は、生成またはフラグメントイオンの内部エネルギーを増加させて、生成またはフラグメントイオンが衝突誘起解離(CID)のプロセスによりさらに分解し得るようにするのに用いることができる。この衝突誘起解離の方法は、電子移動解離により生じた非共有結合的に結合した生成またはフラグメントイオンを分離する際に特に有用である。以前に電子移動解離反応に供された前駆イオンは、しばしば部分的に分解し(特に1価および2価の前駆イオン)、部分的に分解したイオンは、互いに非共有結合的に付着したままとなり得る。
【0164】
別の実施形態によると、当該非共有結合的に結合した生成またはフラグメントイオンを、イオンを輸送する通常モードで動作する進行DC波によって積層リングイオンガイドから押し流す際に互いに分離させてもよい。これは、進行波イオンガイドの速度を、イオン−分子衝突が起こり非共有結合的に結合したフラグメントまたは生成イオンの分離を誘起するように十分に高い値に設定することによって達成し得る。
【0165】
本発明の別の実施形態によると、検体イオンと試薬イオンとを、同一のイオン源によってかまたは質量分析計の共通のイオン生成部または段階によって生成してもよい。例えば、一実施形態によると、検体イオンをエレクトロスプレーイオン源によって生成し、試薬イオンをエレクトロスプレーイオン源の下流に配置されることが好ましいグロー放電領域において生成するようにしてもよい。図9は、検体イオンをエレクトロスプレーイオン源によって発生させる本発明の一実施形態を示す。エレクトロスプレーイオン源のキャピラリーは、+3kVに維持することが好ましい。検体イオンを、0Vに維持されることが好ましい質量分析計のサンプルコーン15の方へ引き寄せることが好ましい。イオンが、サンプルコーン15を通り抜け、真空ポンプ17によって排気されることが好ましい真空室16へ入ることが好ましい。高電圧源に接続されることが好ましいグロー放電ピン18を、真空室16内においてサンプルコーン15の近くかつ下流に配置することが好ましい。グロー放電ピン18は、一実施形態によると−750Vに維持され得る。試薬源19からの試薬を、グロー放電ピン18に近い位置で真空室16内に流出させるかまたは供給することが好ましい。結果として、真空室16内でグロー放電領域20において試薬イオンが生成されることが好ましい。試薬イオンは、その後、抽出コーン21を通して引き寄せられ、さらなる下流真空室22へ入ることが好ましい。さらなる真空室22の中にイオンガイド23が配置されていることが好ましい。試薬イオンは、その後、さらに先へ、質量分析計のさらなる段階24へと移送されることが好ましく、電子移動解離および/またはプロトン移動反応デバイスとして用いられることが好ましい好適なイオンガイド、イオン−イオン反応デバイスまたはイオン−中性ガス反応デバイス2へ移送されることが好ましい。
【0166】
本発明の一実施形態によると、二重モードまたは二重イオン源を設置してもよい。例えば、一実施形態によると、検体(または試薬)イオンを生成するのにエレクトロスプレーイオン源を用い、試薬(または検体)イオンを生成するのに大気圧化学イオン化イオン源を用いるようにしてもよい。反応デバイスの電極に印加される1つまたは複数の進行DC電圧もしくは過渡DC電圧によって負の電荷を持つ試薬イオンを反応デバイスに送り込んでもよい。負の電荷を持つ試薬イオンを反応デバイス内に保持するために、負のDC電位を反応デバイスに印加してもよい。その後、1つまたは複数の進行DC電圧もしくは過渡DC電圧を反応デバイスの電極に印加することによって、正の電荷を持つ検体イオンを反応デバイスに投入してもよい。正の電荷を持つ検体イオンは、反応デバイスに保持されない、つまり反応デバイスから出射するのを妨げられないことが好ましい。電子移動解離ならびに/あるいはプロトン移動反応による検体イオンおよび/または生成もしくはフラグメントイオンの電荷状態減少によるフラグメンテーションの程度を最適化するために、反応デバイスの電極に印加される進行DC電圧または過渡DC電圧の種々のパラメータを最適化し得る。
【0167】
試薬イオンおよび/または検体イオンを生成するのにグロー放電イオン源を用いる場合、イオン源のピン電極は、一実施形態によると、±500〜700Vの電位に維持され得る。一実施形態によると、イオン源の電位を、正の電位(カチオンを生成するため)と負の電位(アニオンを生成するため)との間で比較的高速に切り換えてもよい。
【0168】
二重モードまたは二重イオン源を設置する場合は、約50ミリ秒ごとにイオン源を各モード間で切り換えてもよいかまたは各イオン源を相互に切り換えてもよいと考えられる。イオン源の各モード間での切り換えかまたは各イオン源の相互の切り換えを、<1ミリ秒、1〜10ミリ秒、10〜20ミリ秒、20〜30ミリ秒、30〜40ミリ秒、40〜50ミリ秒、50〜60ミリ秒、60〜70ミリ秒、70〜80ミリ秒、80〜90ミリ秒、90〜100ミリ秒、100〜200ミリ秒、200〜300ミリ秒、300〜400ミリ秒、400〜500ミリ秒、500〜600ミリ秒、600〜700ミリ秒、700〜800ミリ秒、800〜900ミリ秒、900〜1000ミリ秒、1〜2秒、2〜3秒、3〜4秒、4〜5秒または>5秒の時間スケールで行い得るその他の実施形態が考えられる。1つまたは複数のイオン源をオンおよびオフに切り換える代わりに、1つまたは複数のイオン源を実質的にオンのままにしておいてもよいその他の実施形態が考えられる。この実施形態によると、バッフルまたは回転イオンビームブロックのようなイオン源選択デバイスが用いられ得る。例えば、2つのイオン源をオンのままにしておいてもよいが、イオンビーム選択器がいかなる特定の時点においてもイオン源の一方からのイオンだけを質量分析計へ移送させることが好ましい。1つのイオン源をオンのままにしておき、別のイオン源を繰返しオンおよびオフに切り換えるようにしてもよい実施形態が考えられる。
【0169】
一実施形態によると、電極に印加される進行DC電圧の速度を制御することによって電子移動解離フラグメンテーション(および/またはプロトン移動反応電荷状態減少)を制御、増進または実質的に阻止し得る。進行DC電圧を非常に急速に電極に印加する場合、電子移動解離によって断片化する検体イオンが非常に少なくなり得る(かつ/またはプロトン移動反応による電荷状態減少が著しく低減し得る)。
【0170】
反応空間を反応デバイスの中心に向かって最適化する種々の実施形態を説明したが、反応デバイスを例えば反応デバイスの上流端および/または下流端に向かって最適化してもよいその他の実施形態が考えられる。例えば、リング電極の内径が反応デバイスの下流端に向かって漸進的に増加または減少してもよい。さらにまたはもしくは、リング電極のピッチが反応デバイスの下流端に向かって漸進的に減少または増加してもよい。
【0171】
検体および/または試薬イオンを付勢または強制して反応デバイスの各部分に通すために、ガス流の動的効果および/または差圧効果を用い得るやや好適な実施形態も考えられる。イオンを駆動または付勢して好適な反応デバイスに沿わせるおよび/または通すその他の方法または手段に加えて、ガス流の動的効果を用いてもよい。
【0172】
反応デバイスから出現したイオンを、反応デバイスの下流および/または上流に配置されることが好ましい別個のイオン移動度分離セルまたは段階においてイオン移動度分離に供してもよい。
【0173】
検体イオンの電荷状態を、検体イオンが試薬イオンおよび/または中性試薬ガスと相互作用する前に、プロトン移動反応によって減少させ得ることが考えられる。さらにまたはもしくは、電子移動解離によって生じた生成またはフラグメントイオンの電荷状態を、プロトン移動反応によって減少させ得る。
【0174】
プロトンを試薬イオンまたは中性試薬ガスへ移動させることによって検体イオンを断片化するかまたは解離させ得ることも考えられる。
【0175】
電子移動解離により生じる生成またはフラグメントイオンは非共有結合的に結合したものであり得る。非共有結合的に結合した生成またはフラグメントイオンを、電子移動解離が行われたのと同じ反応デバイスにおいてかまたは別個の反応デバイスもしくはセルにおいて、衝突誘起解離、表面誘起解離、または他のフラグメンテーションプロセスによって断片化させ得る本発明の実施形態が考えられる。
【0176】
キセノン、セシウム、ヘリウムまたは窒素の原子もしくはイオンのようなメタステーブル原子またはイオンとの反応または相互作用の後で検体イオンを断片化または解離させ得るさらなる実施形態が考えられる。
【0177】
別の実施形態によると、上記において電子移動解離に用いるのに適したものとして開示したのと実質的に同一の試薬イオンを、さらにまたは代わりにプロトン移動反応に用いてもよい。したがって、例えば、一実施形態によると、多環芳香族炭化水素または置換多環芳香族炭化水素から誘導される試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを、プロトン移動反応を開始させるのに用いてもよい。同様に、プロトン移動反応において用いられる試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニルアントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2’ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリルおよび(xviii)アントラキノンからなる群から選択された物質から誘導してもよい。アゾベンゼンアニオン、アゾベンゼンラジカルアニオンまたはその他のラジカルアニオンを含む試薬イオンつまり負の電荷を持つイオンも、プロトン移動反応を行うのに用いてよい。
【0178】
一実施形態によると、中性ヘリウムガスを、0.01〜0.1mbar、それほど好ましくはないが0.001〜1mbar、の範囲の圧力の反応デバイスに提供してもよい。ヘリウムガスは、反応デバイスにおける電子移動解離および/またはプロトン移動反応を支援するのに特に有用であることがわかっている。窒素およびアルゴンガスは、やや好適であり、少なくともいくらかのイオンを、電子移動解離によってではなく衝突誘起解離によって断片化させ得る。
【0179】
二重モードイオン源の各モード間での切り換えかまたは2つのイオン源のオン/オフ切り換えが対称的または非対称的に行われ得る実施形態も考えられる。例えば、一実施形態によると、検体イオンを発生させるイオン源をデューティサイクルの約90%の間オンのままにしておいてもよい。デューティサイクルの残りの10%の間は、検体イオンを発生させるイオン源をオフに切り換え、好適な反応デバイス内に試薬イオンを補充するために試薬イオンを生成するようにしてもよい。検体イオンを生成するイオン源をオンに切り換える(つまり、検体イオンが質量分析計内に移送される)期間の、試薬イオンを生成するイオン源をオンに切り換える(つまり、試薬イオンが質量分析計内に移送されるかもしくは質量分析計内で生成される)期間に対する比が、<1、1〜2、2〜3、3〜4、4〜5、5〜6、6〜7、7〜8、8〜9、9〜10、10〜15、15〜20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50または>50の範囲内に入り得るその他の実施形態が考えられる。
【0180】
好適な実施形態を参照しながら本発明を説明したが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく形態および内容ともに種々の変更を加え得ることが当業者には理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの使用時にイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドと、
少なくともいくらかの第1のイオンを駆動または付勢して第1の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合された第1のデバイスと、
少なくともいくらかの第2のイオンを駆動または付勢して第2の異なる方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合された第2のデバイスとを含む電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項2】
(a)前記第1のデバイスが、少なくともいくらかの前記第1のイオンを駆動または付勢して前記第1の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%または95〜100%に沿わせるおよび/または通すために、前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%または95〜100%に印加するように構成および適合され、かつ/または、
(b)前記第2のデバイスが、少なくともいくらかの前記第2のイオンを駆動または付勢して前記第2の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%または95〜100%に沿わせるおよび/または通すために、前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の0〜5%、5〜10%、10〜15%、15〜20%、20〜25%、25〜30%、30〜35%、35〜40%、40〜45%、45〜50%、50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%、75〜80%、80〜85%、85〜90%、90〜95%または95〜100%に印加するように構成および適合された請求項1に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項3】
(a)前記第2の方向が前記第1の方向と実質的に反対つまり逆であるか、または、
(b)前記第1の方向と前記第2の方向とのなす角度が、(i)<30°、(ii)30〜60°、(iii)60〜90°、(iv)90〜120°、(v)120〜150°、(vi)150〜180°および(vii)180°からなる群から選択される請求項1または2に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項4】
前記第1のイオンが、
(i)アニオンつまり負の電荷を持つイオン、
(ii)カチオンつまり正の電荷を持つイオン、または、
(iii)アニオンとカチオンとの組み合わせつまり混合物を含む請求項1、2または3に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項5】
前記第2のイオンが、
(i)アニオンつまり負の電荷を持つイオン、
(ii)カチオンつまり正の電荷を持つイオン、または、
(iii)アニオンとカチオンとの組み合わせつまり混合物を含む先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項6】
前記第1のイオンが第1の極性を有し、前記第2のイオンが前記第1の極性と反対の第2の極性を有する先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項7】
使用時にイオンを前記イオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように第1の周波数および第1の振幅を有する第1のACまたはRF電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合された第1のRFデバイスをさらに含み、
(a)前記第1の周波数が、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHzおよび(xxv)>10.0MHzからなる群から選択され、かつ/または、
(b)前記第1の振幅が、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピークおよび(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択され、かつ/または、
(c)一動作モードにおいて、隣接するつまり隣り合う電極に、逆位相の前記第1のACまたはRF電圧が供給され、かつ/または、
(d)前記イオンガイドが、1〜10、10〜20、20〜30、30〜40、40〜50、50〜60、60〜70、70〜80、80〜90、90〜100または>100の電極群を含み、各電極群は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の電極を含み、各群における少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の電極に同位相の前記第1のACまたはRF電圧が供給される先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項8】
前記第1の周波数を期間t1にわたってx1MHzだけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含み、
1が、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHzおよび(xxv)>10.0MHzからなる群から選択され、
1が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択される請求項7に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項9】
前記第1の振幅を期間t2にわたってx2ボルトだけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含み、
2が、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピークおよび(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択され
2が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択される請求項7または8に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項10】
前記イオンガイドの第1または上流端において、前記第1のイオンの少なくともいくらかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくらかを前記第1または上流端を介して前記イオンガイドから出射可能にしながら前記第1のイオンの少なくともいくらかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくらかを前記イオンガイド内に閉じ込めるように作用する正または負の電位を印加するためのデバイス、および/または、
前記イオンガイドの第2または下流端において、前記第1のイオンの少なくともいくらかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくらかを前記第2または下流端を介して前記イオンガイドから出射可能にしながら前記第1のイオンの少なくともいくらかおよび/または前記第2のイオンの少なくともいくらかを前記イオンガイド内に閉じ込めるように作用する正または負の電位を印加するためのデバイスをさらに含む先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項11】
(a)前記電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に円形、長方形、正方形または楕円形のアパーチャを有し、かつ/あるいは、
(b)前記電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に同じ第1のサイズであるかまたは実質的に同じ第1の面積を有するアパーチャを有し、かつ/または、前記電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、実質的に同じ第2の異なるサイズであるかまたは実質的に同じ第2の異なる面積を有するアパーチャを有し、かつ/あるいは、
(c)前記電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、前記イオンガイドの軸に沿う方向にサイズまたは面積が漸進的に大きくおよび/または小さくなるアパーチャを有し、かつ/あるいは、
(d)前記電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mmおよび(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または内寸を有するアパーチャを有し、かつ/あるいは、
(e)前記電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに離間され、かつ/あるいは、
(f)前記複数の電極の少なくともいくつかがアパーチャを含み、前記アパーチャの内径または内寸の、隣接する電極間の中心から中心までの軸方向間隔に対する比が、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0および(xxii)>5.0からなる群から選択され、かつ/あるいは、
(g)前記複数の電極のアパーチャの内径が、前記イオンガイドの長手方向軸に沿って、1回または複数回、漸進的に増加または減少した後で漸進的に減少または増加し、かつ/あるいは、
(h)前記複数の電極が、(i)1つまたは複数の球、(ii)1つまたは複数の扁球、(iii)1つまたは複数の長球、(iv)1つまたは複数の楕円体および(v)1つまたは複数の三軸不等楕円体からなる群から選択される幾何学的空間を規定し、かつ/あるいは、
(i)前記イオンガイドが、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mmおよび(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有し、かつ/あるいは、
(j)前記イオンガイドが、少なくとも(i)1〜10の電極、(ii)10〜20の電極、(iii)20〜30の電極、(iv)30〜40の電極、(v)40〜50の電極、(vi)50〜60の電極、(vii)60〜70の電極、(viii)70〜80の電極、(ix)80〜90の電極、(x)90〜100の電極、(xi)100〜110の電極、(xii)110〜120の電極、(xiii)120〜130の電極、(xiv)130〜140の電極、(xv)140〜150の電極、(xvi)150〜160の電極、(xvii)160〜170の電極、(xviii)170〜180の電極、(xix)180〜190の電極、(xx)190〜200の電極および(xxi)>200の電極を含み、かつ/あるいは、
(k)前記電極の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%が、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さつまり軸方向長さを有し、かつ/あるいは、
(l)前記複数の電極のピッチつまり軸方向間隔が、前記イオンガイドの長手方向軸に沿って、1回または複数回、漸進的に減少または増加する先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項12】
(i)前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って線形軸方向DC電場を生成するように、または、
(ii)前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って非線形または階段状軸方向DC電場を生成するように、構成および適合されたデバイスをさらに含む先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項13】
前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、期間t3にわたってx3ボルトだけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含み、
3が、(i)<0.1V、(ii)0.1〜0.2V、(iii)0.2〜0.3V、(iv)0.3〜0.4V、(v)0.4〜0.5V、(vi)0.5〜0.6V、(vii)0.6〜0.7V、(viii)0.7〜0.8V、(ix)0.8〜0.9V、(x)0.9〜1.0V、(xi)1.0〜1.5V、(xii)1.5〜2.0V、(xiii)2.0〜2.5V、(xiv)2.5〜3.0V、(xv)3.0〜3.5V、(xvi)3.5〜4.0V、(xvii)4.0〜4.5V、(xviii)4.5〜5.0V、(xix)5.0〜5.5V、(xx)5.5〜6.0V、(xxi)6.0〜6.5V、(xxii)6.5〜7.0V、(xxiii)7.0〜7.5V、(xxiv)7.5〜8.0V、(xxv)8.0〜8.5V、(xxvi)8.5〜9.0V、(xxvii)9.0〜9.5V、(xxviii)9.5〜10.0Vおよび(xxix)>10.0Vからなる群から選択され、
3が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択される先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項14】
(a)前記第1のデバイスが、前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、前記イオンガイドの長さに沿った位置または変位量の関数として、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合され、かつ/または、
(b)前記第1のデバイスが、前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、前記イオンガイドの長さに沿って前記イオンガイドの第1端から前記イオンガイドの中心領域または別の領域まで低減させるように構成および適合され、かつ/または、
(c)前記イオンガイドの長さに沿った第1の位置において前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さがXであり、前記イオンガイドの長さに沿った第2の異なる位置において前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さが、0〜0.05X、0.05〜0.10X、0.10〜0.15X、0.15〜0.20X、 0.20〜0.25X、0.25〜0.30X、0.30〜0.35X、0.35〜0.40X、0.40〜0.45X、0.45〜0.50X、0.50〜0.55X、0.55〜0.60X、0.60〜0.65X、0.65〜0.70X、0.70〜0.75X、0.75〜0.80X、0.80〜0.85X、0.85〜0.90X、0.90〜0.95Xまたは0.95〜1.00Xであり、かつ/または、
(d)前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さが、前記第1のイオンがもはや1つまたは複数のDCポテンシャル障壁によって軸方向に閉じ込められなくなるように、前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%に沿ってゼロまたはゼロ近くまで低減する先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項15】
前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記電極に印加または前記電極に沿って並進させる速度または割合を、期間t4にわたってx4ミリ秒だけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含み、
4が、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜11、(xii)11〜12、(xiii)12〜13、(xiv)13〜14、(xv)14〜15、(xvi)15〜16、(xvii)16〜17、(xviii)17〜18、(xix)18〜19、(xx)19〜20、(xxi)20〜30、(xxii)30〜40、(xxiii)40〜50、(xxiv)50〜60、(xxv)60〜70、(xxvi)70〜80、(xxvii)80〜90、(xxviii)90〜100、(xxix)100〜150、(xxx)150〜200、(xxxi)200〜250、(xxxii)250〜300、(xxxiii)300〜350、(xxxiv)350〜400、(xxxv)400〜450、(xxxvi)450〜500、(xxxvii)500〜600、(xxxviii)600〜700、(xxxix)700〜800、(xl)800〜900、(xli)900〜1000、(xlii)1000〜2000、(xliii)2000〜3000、(xliv)3000〜4000、(xlv)4000〜5000、(xlvi)5000〜6000、(xlvii)6000〜7000、(xlviii)7000〜8000、(xlix)8000〜9000、(l)9000〜10000および(li)>10000からなる群から選択され、
4が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択される先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項16】
前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、期間t5にわたってx5ボルトだけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含み、
5が、(i)<0.1V、(ii)0.1〜0.2V、(iii)0.2〜0.3V、(iv)0.3〜0.4V、(v)0.4〜0.5V、(vi)0.5〜0.6V、(vii)0.6〜0.7V、(viii)0.7〜0.8V、(ix)0.8〜0.9V、(x)0.9〜1.0V、(xi)1.0〜1.5V、(xii)1.5〜2.0V、(xiii)2.0〜2.5V、(xiv)2.5〜3.0V、(xv)3.0〜3.5V、(xvi)3.5〜4.0V、(xvii)4.0〜4.5V、(xviii)4.5〜5.0V、(xix)5.0〜5.5V、(xx)5.5〜6.0V、(xxi)6.0〜6.5V、(xxii)6.5〜7.0V、(xxiii)7.0〜7.5V、(xxiv)7.5〜8.0V、(xxv)8.0〜8.5V、(xxvi)8.5〜9.0V、(xxvii)9.0〜9.5V、(xxviii)9.5〜10.0Vおよび(xxix)>10.0Vからなる群から選択され、
5が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択される先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項17】
(a)前記第2のデバイスが、前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、前記イオンガイドの長さに沿った位置または変位量の関数として、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合され、かつ/または、
(b)前記第2のデバイスが、前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さを、前記イオンガイドの長さに沿って前記イオンガイドの第2端から前記イオンガイドの中心領域または別の領域まで低減させるように構成および適合され、かつ/または、
(c)前記イオンガイドの長さに沿った第2の位置において前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さがXであり、前記イオンガイドの長さに沿った第2の異なる位置において前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さが、0〜0.05X、0.05〜0.10X、0.10〜0.15X、0.15〜0.20X、0.20〜0.25X、0.25〜0.30X、0.30〜0.35X、0.35〜0.40X、0.40〜0.45X、0.45〜0.50X、0.50〜0.55X、0.55〜0.60X、0.60〜0.65X、0.65〜0.70X、0.70〜0.75X、0.75〜0.80X、0.80〜0.85X、0.85〜0.90X、0.90〜0.95Xまたは0.95〜1.00Xであり、かつ/または、
(d)前記複数の電極に印加される前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の振幅、高さまたは深さが、前記第2のイオンがもはや1つまたは複数のポテンシャル障壁によって軸方向に閉じ込められなくなるように、前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%に沿ってゼロまたはゼロ近くまで低減する先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項18】
前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記電極に印加または前記電極に沿って並進させる速度または割合を、期間t6にわたってx6ミリ秒だけ、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含み、
6が、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜11、(xii)11〜12、(xiii)12〜13、(xiv)13〜14、(xv)14〜15、(xvi)15〜16、(xvii)16〜17、(xviii)17〜18、(xix)18〜19、(xx)19〜20、(xxi)20〜30、(xxii)30〜40、(xxiii)40〜50、(xxiv)50〜60、(xxv)60〜70、(xxvi)70〜80、(xxvii)80〜90、(xxviii)90〜100、(xxix)100〜150、(xxx)150〜200、(xxxi)200〜250、(xxxii)250〜300、(xxxiii)300〜350、(xxxiv)350〜400、(xxxv)400〜450、(xxxvi)450〜500、(xxxvii)500〜600、(xxxviii)600〜700、(xxxix)700〜800、(xl)800〜900、(xli)900〜1000、(xlii)1000〜2000、(xliii)2000〜3000、(xliv)3000〜4000、(xlv)4000〜5000、(xlvi)5000〜6000、(xlvii)6000〜7000、(xlviii)7000〜8000、(xlix)8000〜9000、(l)9000〜10000および(li)>10000からなる群から選択され、
6が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択される先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項19】
(i)前記電極に印加または前記電極に沿って並進させる前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロファイルを、変化、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイス、および/または、
(ii)前記電極に印加または前記電極に沿って並進させる前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形の周期性および/または形状および/または波形および/またはパターンおよび/またはプロファイルを、変化、漸進的に増加、漸進的に減少、漸進的に変化、走査、直線的に増加、直線的に減少、段階的、漸進的もしくは別の方法で増加または段階的、漸進的もしくは別の方法で減少させるように構成および適合されたデバイスをさらに含む先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項20】
(a)一動作モードにおいて、少なくともいくらかの生成またはフラグメントイオンを駆動または付勢して前記第1の方向と異なるかまたは逆の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは前記1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形が次に前記複数の電極の少なくともいくつかに印加され、かつ/または、
(b)一動作モードにおいて、少なくともいくらかの生成またはフラグメントイオンを駆動または付勢して前記第2の方向と異なるかまたは逆の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、前記1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形が次に前記複数の電極の少なくともいくつかに印加される先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項21】
(a)静的なイオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域または反応空間が、前記イオンガイド内に形成または生成されるか、あるいは、
(b)動的なイオン−イオン反応領域、イオン−中性ガス反応領域または反応空間が、前記イオンガイド内に形成または生成される先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項22】
(a)前記イオンガイドを、一動作モードにおいて(i)<100mbar、(ii)<10mbar、(iii)<1mbar、(iv)<0.1mbar、(v)<0.01mbar、(vi)<0.001mbar、(vii)<0.0001mbarおよび(viii)<0.00001mbarからなる群から選択される圧力に維持するように、かつ/または、
(b)前記イオンガイドを、一動作モードにおいて(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>0.01mbar、(vi)>0.001mbarおよび(vii)>0.0001mbarからなる群から選択される圧力に維持するように、かつ/または、
(c)前記イオンガイドを、一動作モードにおいて(i)0.0001〜0.001mbar、(ii)0.001〜0.01mbar、(iii)0.01〜0.1mbar、(iv)0.1〜1mbar、(v)1〜10mbar、(vi)10〜100mbarおよび(vii)100〜1000mbarからなる群から選択される圧力に維持するように、構成および適合されたデバイスをさらに含む先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項23】
(a)前記イオンガイド内における前記第1のイオンの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の滞在、通過または反応時間が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、かつ/または、
(b)前記イオンガイド内における前記第2のイオンの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の滞在、通過または反応時間が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、かつ/または、
(c)前記イオンガイド内で作り出されるかまたは形成される生成またはフラグメントイオンの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の滞在、通過または反応時間が、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜5ミリ秒、(iii)5〜10ミリ秒、(iv)10〜15ミリ秒、(v)15〜20ミリ秒、(vi)20〜25ミリ秒、(vii)25〜30ミリ秒、(viii)30〜35ミリ秒、(ix)35〜40ミリ秒、(x)40〜45ミリ秒、(xi)45〜50ミリ秒、(xii)50〜55ミリ秒、(xiii)55〜60ミリ秒、(xiv)60〜65ミリ秒、(xv)65〜70ミリ秒、(xvi)70〜75ミリ秒、(xvii)75〜80ミリ秒、(xviii)80〜85ミリ秒、(xix)85〜90ミリ秒、(xx)90〜95ミリ秒、(xxi)95〜100ミリ秒、(xxii)100〜105ミリ秒、(xxiii)105〜110ミリ秒、(xxiv)110〜115ミリ秒、(xxv)115〜120ミリ秒、(xxvi)120〜125ミリ秒、(xxvii)125〜130ミリ秒、(xxviii)130〜135ミリ秒、(xxix)135〜140ミリ秒、(xxx)140〜145ミリ秒、(xxxi)145〜150ミリ秒、(xxxii)150〜155ミリ秒、(xxxiii)155〜160ミリ秒、(xxxiv)160〜165ミリ秒、(xxxv)165〜170ミリ秒、(xxxvi)170〜175ミリ秒、(xxxvii)175〜180ミリ秒、(xxxviii)180〜185ミリ秒、(xxxix)185〜190ミリ秒、(xl)190〜195ミリ秒、(xli)195〜200ミリ秒および(xlii)>200ミリ秒からなる群から選択され、かつ/または、
(d)前記イオンガイドが、(i)<1ミリ秒、(ii)1〜10ミリ秒、(iii)10〜20ミリ秒、(iv)20〜30ミリ秒、(v)30〜40ミリ秒、(vi)40〜50ミリ秒、(vii)50〜60ミリ秒、(viii)60〜70ミリ秒、(ix)70〜80ミリ秒、(x)80〜90ミリ秒、(xi)90〜100ミリ秒、(xii)100〜200ミリ秒、(xiii)200〜300ミリ秒、(xiv)300〜400ミリ秒、(xv)400〜500ミリ秒、(xvi)500〜600ミリ秒、(xvii)600〜700ミリ秒、(xviii)700〜800ミリ秒、(xix)800〜900ミリ秒、(xx)900〜1000ミリ秒、(xxi)1〜2秒、(xxii)2〜3秒、(xxiii)3〜4秒、(xxiv)4〜5秒および(xxv)>5秒からなる群から選択されるサイクルタイムを有する先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項24】
(a)一動作モードにおいて、第1のイオンおよび/または第2のイオンが、前記イオンガイド内でトラップされるが実質的に断片化および/または反応および/または電荷減少されないように構成および適合され、かつ/または、
(b)一動作モードにおいて、第1のイオンおよび/または第2のイオンが、前記イオンガイド内で衝突により冷却されるかまたは実質的に熱化されるように構成および適合され、かつ/または、
(c)一動作モードにおいて、第1のイオンおよび/または第2のイオンが、前記イオンガイド内で実質的に断片化および/または反応および/または電荷減少されるように構成および適合され、かつ/または、
(d)一動作モードにおいて、第1のイオンおよび/または第2のイオンが、前記イオンガイドの入射口および/または出射口に配置された1つまたは複数の電極によってパルス状に前記イオンガイドに入射および/または前記イオンガイドから出射されるように構成および適合された先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項25】
(a)一動作モードにおいて、イオンの大部分が、衝突誘起解離により断片化して大多数のb系列生成もしくはフラグメントイオンおよび/またはy系列生成もしくはフラグメントイオンを含む生成またはフラグメントイオンを形成するように構成され、かつ/または、
(b)一動作モードにおいて、イオンの大部分が、電子移動解離により断片化して大多数のc系列生成もしくはフラグメントイオンおよび/またはz系列生成もしくはフラグメントイオンを含む生成またはフラグメントイオンを形成するように構成された先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項26】
電子移動解離を起こさせるために、
(a)試薬イオンとの相互作用により、検体イオンを断片化または解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(b)電子を1つまたは複数の試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンから1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、前記多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(c)中性試薬ガス分子もしくは原子または非イオン性試薬ガスとの相互作用により、検体イオンを断片化または解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(d)電子を1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電塩基性ガスもしくは蒸気から1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、前記多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(e)電子を1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電超塩基試薬ガスもしくは蒸気から1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、前記多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(f)電子を1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電アルカリ金属ガスもしくは蒸気から1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、前記多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(g)電子を、(i)ナトリウム蒸気または原子、(ii)リチウム蒸気または原子、(iii)カリウム蒸気または原子、(iv)ルビジウム蒸気または原子、(v)セシウム蒸気または原子、(vi)フランシウム蒸気または原子、(vii)C60蒸気または原子および(viii)マグネシウム蒸気または原子からなる群から選択される1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電ガス、蒸気もしくは原子から1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、前記多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させる先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項27】
前記多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む請求項26に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項28】
電子移動解離を起こさせるために、
(a)前記試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを、多環芳香族炭化水素または置換多環芳香族炭化水素から誘導し、かつ/または、
(b)前記試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを、(i)アントラセン、(ii)9,10ジフェニルアントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2’ジピリジル、(xiii)2,2’ビキノリン、(xiv)9−アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10’−フェナントロリン、(xvii)9’アントラセンカルボニトリルおよび(xviii)アントラキノンからなる群から誘導し、かつ/または、
(c)前記試薬イオンつまり負の電荷を持つイオンが、アゾベンゼンアニオンまたはアゾベンゼンラジカルアニオンを含む請求項26または27に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項29】
プロトン移動反応を起こさせるために、
(i)プロトンを1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンから1つまたは複数の試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンへ移動させ、その結果、前記多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを、電荷状態を減少させ、かつ/または、解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させ、かつ/あるいは、
(ii)プロトンを1つまたは複数の多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンから1つまたは複数の中性、非イオン性または非荷電試薬ガスもしくは蒸気へ移動させ、その結果、前記多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンの少なくともいくらかを、電荷状態を減少させ、かつ/または、解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させる先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項30】
前記多価検体カチオンつまり正の電荷を持つイオンが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質または生体分子を含む請求項29に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項31】
プロトン移動反応を起こさせるために、
(a)前記試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを、(i)カルボン酸、(ii)フェノール(phenolic)および(iii)アルコキシド含有化合物からなる群から選択される化合物から誘導し、かつ/または、
(b)前記試薬アニオンつまり負の電荷を持つイオンを、(i)安息香酸、(ii)パーフルオロ−1,3−ジメチルシクロヘキサンすなわちPDCH、(iii) 六フッ化硫黄すなわちSF6および(iv)パーフルオロトリブチルアミンすなわちPFTBAからなる群から選択される化合物から誘導し、かつ/または、
(c)前記1つまたは複数の試薬ガスもしくは蒸気が、超塩基ガスを含み、かつ/または、
(d)前記1つまたは複数の試薬ガスもしくは蒸気が、(i)1,1,3,3−テトラメチルグアニジン(「TMG」)、(ii)2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロピリミドール[1,2−a]アゼピン{別名:1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(「DBU」)}または(iii)7−メチル−1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]デカ−5−エン(「MTBD」){別名:1,3,4,6,7,8−ヘキサヒドロ−1−メチル−2H−ピリミド[1,2−a]ピリミジン}からなる群から選択される請求項29または30に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項32】
先行する請求項のいずれか1項に記載の電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計。
【請求項33】
(a)前記電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置され、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝撃(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、(xviii)サーモスプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(「ASGDI」)イオン源および(xx)グロー放電(「GD」)イオン源からなる群から選択されるイオン源、ならびに/あるいは、
(b)1つまたは複数の連続またはパルス化イオン源、ならびに/あるいは、
(c)前記電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つまたは複数のイオンガイド、ならびに/あるいは、
(d)前記電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つもしくは複数のイオン移動度分離デバイスおよび/または1つもしくは複数のフィールド非対称イオン移動度分光計デバイス、ならびに/あるいは、
(e)前記電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つもしくは複数のイオントラップまたは1つもしくは複数のイオントラッピング領域、ならびに/あるいは、
(f)前記電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置され、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマー間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)インソース衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxviii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−メタステーブル原子反応デバイスおよび(xxix)電子イオン化解離(「EID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される1つまたは複数の衝突、フラグメンテーションもしくは反応セル、ならびに/あるいは、
(g)(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場型質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速式飛行時間質量分析部および(xiv)直線加速式飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部、ならびに/あるいは、
(h)前記電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つまたは複数のエネルギー分析器もしくは静電エネルギー分析器、ならびに/あるいは、
(i)前記電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置される1つまたは複数のイオン検出器、ならびに/あるいは、
(j)前記電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスの上流および/または下流に配置され、(i)四重極質量フィルタ、(ii)二次元または線形四重極イオントラップ、(iii)ポールまたは三次元四重極イオントラップ、(iv)ペニングイオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁場型質量フィルタ、(vii)飛行時間質量フィルタおよび(viii)ウィーンフィルタからなる群から選択される1つまたは複数の質量フィルタ、ならびに/あるいは、
(k)イオンをパルス状に前記電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスへ入射させるためのデバイスまたはイオンゲート、ならびに/あるいは、
(l)実質的に連続したイオンビームをパルス化イオンビームに変換するためのデバイスをさらに含む請求項32に記載の質量分析計。
【請求項34】
(a)検体イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つまたは複数の大気圧イオン源、ならびに/あるいは、
(b)検体イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つまたは複数のエレクトロスプレーイオン源、ならびに/あるいは、
(c)検体イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つまたは複数の大気圧化学イオン源、ならびに/あるいは、
(d)検体イオンおよび/または試薬イオンを生成するための1つまたは複数のグロー放電イオン源をさらに含む請求項32または33に記載の質量分析計。
【請求項35】
1つまたは複数のグロー放電イオン源が前記質量分析計の1つまたは複数の真空室中に設置された請求項32、33または34のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項36】
C−トラップと、
オービトラップ質量分析部とを含み、
第1の動作モードにおいて、イオンが、前記C−トラップへ移送され、次いで、前記オービトラップ質量分析部に注入され、
第2の動作モードにおいて、イオンが、前記C−トラップへ移送され、次いで、少なくともいくらかのイオンをフラグメントイオンに断片化する衝突セルあるいは前記電子移動解離および/またはプロトン移動反応デバイスへ移送され、その後、前記フラグメントイオンが、前記C−トラップへ移送された後で前記オービトラップ質量分析部に注入される請求項32から35のいずれか1項に記載の質量分析計。
【請求項37】
少なくとも1つの使用時にイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含む電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能なコンピュータプログラムであって、前記制御システムに、
(i)少なくともいくらかの第1のイオンを駆動または付勢して第1の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加させ、
(ii)少なくともいくらかの第2のイオンを駆動または付勢して第2の異なる方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加させるように構成されたコンピュータプログラム。
【請求項38】
少なくとも1つの使用時にイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含む電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスを含む質量分析計の制御システムによって実行可能に構成されたコンピュータ実行可能な命令を格納するコンピュータ読み取り可能な媒体であって、前記コンピュータプログラムが、前記制御システムに、
(i)少なくともいくらかの第1のイオンを駆動または付勢して第1の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加させ、
(ii)少なくともいくらかの第2のイオンを駆動または付勢して第2の異なる方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加させるように構成されたコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項39】
(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリおよび(vi)光ディスクからなる群から選択される請求項38に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項40】
少なくとも1つのイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離またはプロトン移動反応デバイスを準備することと、
少なくともいくらかの第1のイオンを駆動または付勢して第1の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加することと、
少なくともいくらかの第2のイオンを駆動または付勢して第2の異なる方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加することとを含む、電子移動解離またはプロトン移動反応の反応を行う方法。
【請求項41】
請求項40に記載の方法を含む質量分析の方法。
【請求項42】
少なくとも1つの使用時にイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドと、
少なくともいくらかの多価検体カチオンを駆動または付勢して第1の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合された第1のデバイスと、
少なくともいくらかの試薬アニオンを駆動または付勢して前記第1の方向と反対の第2の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成および適合された第2のデバイスとを含み、
使用時に、前記多価検体カチオンの少なくともいくらかを前記試薬イオンの少なくともいくらかと相互作用させ、少なくともいくらかの電子を前記試薬アニオンから前記多価検体カチオンの少なくともいくらかへ移動させ、その結果、前記多価検体カチオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させる電子移動解離デバイス。
【請求項43】
少なくとも1つのイオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを準備することと、
少なくともいくらかの多価検体カチオンを駆動または付勢して第1の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第1の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加することと、
少なくともいくらかの試薬アニオンを駆動または付勢して前記第1の方向と反対の第2の方向に前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿わせるおよび/または通すために、1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位あるいは1つまたは複数の第2の過渡DC電圧もしくは電位波形を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加することとを含み、
前記多価検体カチオンの少なくともいくらかを前記試薬イオンの少なくともいくらかと相互作用させ、少なくともいくらかの電子を前記試薬アニオンから前記多価検体カチオンの少なくともいくらかへ移動させ、その結果、前記多価検体カチオンの少なくともいくらかを解離させて生成またはフラグメントイオンを形成させる、電子移動解離を行う方法。
【請求項44】
少なくとも1つの使用時に試薬および/または検体イオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを含む電子移動解離デバイスおよび/またはプロトン移動反応デバイス。
【請求項45】
少なくとも1つの試薬および/または検体イオンが移送されるアパーチャを有する複数の電極を含むイオンガイドを含む反応デバイスにおいて電子移動解離および/またはプロトン移動反応を行うことを含む、電子移動解離および/またはプロトン移動反応の方法。
【請求項46】
少なくとも1つのイオンが移送されるアパーチャをそれぞれが有する複数の電極を含むイオンガイドを準備することと、
前記イオンガイド内に、検体カチオンと試薬アニオンとを含むイオンを準備することと、
前記イオンの少なくともいくらかを第1の方向に付勢して前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも第1の部分に沿わせるために1つまたは複数の第1の過渡DC電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加することと、
残りのイオンの少なくともいくらかを前記第1の方向と反対の方向に付勢して前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも第2の部分に沿わせるために1つまたは複数の第2の過渡DC電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加することとを含み、
前記検体カチオンの少なくともいくらかを前記試薬イオンの少なくともいくらかと相互作用させ、その結果、前記検体カチオンの少なくともいくらかが解離してフラグメントイオンを形成する、電子移動解離またはプロトン移動反応を行う方法。
【請求項47】
少なくとも1つのイオンが移送されるアパーチャをそれぞれが有する複数の電極を含むイオンガイドと、
前記イオンガイド内に検体カチオンを導入するための源と、
前記イオンガイド内に試薬アニオンを導入するための源と、
制御システムであって、該制御システムによって実行されると該制御システムに、
(i)前記イオンの少なくともいくらかを第1の方向に付勢して前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも第1の部分に沿わせるために1つまたは複数の第1の過渡DC電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加する工程と、
(ii)残りのイオンの少なくともいくらかを前記第1の方向と反対の方向に付勢して前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも第2の部分に沿わせるために1つまたは複数の第2の過渡DC電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加する工程とを実行させるコンピュータ実行可能な命令を格納するコンピュータ読み取り可能な媒体を含む制御システムとを含み、
前記検体カチオンの少なくともいくらかを前記試薬イオンの少なくともいくらかと相互作用させ、その結果、前記検体カチオンの少なくともいくらかが解離してフラグメントイオンを形成する電子移動解離またはプロトン移動反応デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−504642(P2011−504642A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534542(P2010−534542)
【出願日】平成20年11月24日(2008.11.24)
【国際出願番号】PCT/GB2008/003918
【国際公開番号】WO2009/066089
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】