説明

イオンガイドアレイ

【課題】
【解決手段】開示されるイオンガイドアレイは、第1のイオンガイド部(1)と第2のイオンガイド部(2)と、必要に応じてさらに別のイオンガイド部とを備える。各イオンガイド部(1、2)が、使用時にイオンを透過させる開口部を有する複数の電極を備える構成でもよい。第1のイオンガイド部(1)の出口に移送部を配置し、第1のイオンガイド部(1)から第2のイオンガイド部(2)に対して径方向にイオンを透過させる。移送部の電極(1b、2b)が、第1のイオンガイド部(1)から第2のイオンガイド部(2)に対して径方向にイオンを透過可能な径方向の開口部を備えるようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンガイド、イオン移動度分光計又は分離装置、質量分析計、イオンガイド方法、イオン移動度に従ってイオンを分離する方法、及び質量分析法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス媒体の存在下でRF場に閉じ込められたイオンに前方推進力を与えることが分析上有用であることは、従来から知られている。特定の適用例としては、三連四重極装置に対してMRM(多重反応モニタリング)、親イオンスキャン、又はニュートラル・ロス実験を行なう際に輸送時間を高速にすることが望ましい、タンデム型質量分析計用の衝突セルの作成が挙げられる。このような装置を用いて、イオン移動度に従ってイオンを分離することも可能であり、イオン移動度−質量分析計のハイブリッド装置にも利用可能である。動作時の通常圧力範囲は、0.001mbarから10mbarの範囲である。
【0003】
複数の環状電極を有するイオントンネル型イオンガイド等、さまざまなイオンガイドが知られている。RF電圧の逆位相を隣接する電極に印加することによって、イオントンネル型イオンガイド内で疑似井戸型ポテンシャルによるイオン閉じ込めが行なわれる。直流進行波を環状電極に印加して、イオンガイドの長さ方向にイオンを移動させるようにしてもよい。イオンガイドの長さ方向にイオンを透過・案内して、環状電極に形成された開口部を通過させる。また、比較的高圧に維持されるイオントンネル型イオンガイドを備えるイオン移動度分光計も知られている。イオントンネル型イオンガイドをイオンが通過する際に、イオンをイオン移動度に従って時間的に分離する。
【0004】
US-6914241(Giles)は、複数の電極を備えるRFイオンガイド又はイオン移動度分離装置の長さ方向に過渡直流電圧を徐々に印可することにより、イオン移動度に応じてイオンが分離される様子を記載している。イオン移動度分離装置の中には、多極ロッドセットや積層リングセット等のAC又はRFイオンガイドを備えるものもある。イオンガイドは、軸方向にセグメント化されており、各セグメントに独立の過渡直流電位を印可することができる。過渡直流電位は、(イオンを径方向に閉じ込めるように作用する)交流電圧又は高周波(RF)電圧及び/又は一定の直流オフセット電圧に重畳される。過渡直流電位は、軸方向に沿って移動して、イオン移動度分離装置に沿ってイオンを平行移動させる進行波を形成する。
【0005】
周知のイオン移動度分離装置は、一連のリングを有するドリフト管を備える。隣接するリング間の電位差は一定に保持されるため、定電場が生じる。緩衝ガス入りのドリフト管にイオンパルスを導入すると、イオン移動度に応じて、長手軸に沿ってイオンが分離される。これらの装置は、高周波(RF)閉じ込めなしに大気圧で動作可能であり、最大150の分解能を与えることができる(Wuら、Anal.Chem.、1988、70、4929-4938)。ただし、イオン移動度‐質量分析計のハイブリッド装置により適した低圧での動作時には、拡散損失が増大し、分解能が低くなる。疑似高周波(RF)井戸型ポテンシャルを用いて径方向にイオンを閉じ込め、イオンガイドとして機能させることによりイオンを効率的に輸送し、拡散損失の問題を解決することも考えられる。この場合、イオンをガイドに沿って移動させて、イオン移動度に従って分離することができる。ただし、低圧でイオン移動度分離を行なう場合、高分解能のイオン移動度分離を可能にするためには、以下に詳細に説明するように、低電場限界内での保持にかなり長いドリフト管を用いる必要がある。
【0006】
高周波(RF)イオンガイドにおいてイオン移動度に従ってイオンを分離するためには、径方向の高周波(RF)閉じ込めに直交する直流電場を生じさせる必要がある。ガス入りイオンガイドをイオンが通過するように定電場Eを印可する場合、イオンの特性速度は以下の式で表される。ここで、Kはイオン移動度を示す。
【0007】
【数1】

【0008】
ガスのバックグラウンド熱エネルギーと比べて無視できるレベルのエネルギーしかイオンが受けないようなイオン移動度分離を可能にするためには、パラメータE/Pを考慮する必要がある。ここで、Pは、中性ガスの圧力を示す。
【0009】
駆動場からの運動エネルギーをイオンが受けないような「いわゆる低電場領域」でイオン移動度分離を維持するためには、パラメータE/Pが約2V/cm-mbar未満であることが求められる。
【0010】
長さLのドリフト管を用い、印可電圧降下がVの低電場条件において、分解能は、イオン移動度には依存せず、電圧降下にのみ依存することが分かる。空間電荷の影響がない場合には、パラメータは以下の式で表される。ここで、xAVRGは、移動するイオン雲の質量中心の平均変位を示す。
【0011】
【数2】

【0012】
パラメータは、イオン移動度分離の分解能を事実上表している。このため、ドリフト管全域で大きな電圧降下を維持することにより、分光計の性能を向上させることができる。イオン移動度‐質量分析計のハイブリッド装置では、イオン移動度ドリフト領域の標準的な圧力は0.5ないし1mbarである。この圧力レベルよりも高い圧力で動作させる場合には、質量分析計部分を効率的に動作させるためには、真空系の差動排気が必要になる。
【発明の概要】
【0013】
20cmの標準ドリフト管長及び0.5mbarの動作圧力において、低電場限界内で印可可能な最大電圧は20Vであり、これは、最大分解能26に対応する。同じ条件で分解能を100まで上げるためには、ドリフト管長を3メートルを超える長さにする必要があるが、市販の機器としてこの大きさは現実的ではない。
【0014】
イオンガイド及びイオン移動度分光計の性能向上が求められている。
【0015】
本発明の一つの態様は、イオンガイドであって、
使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第1の電極を備える第1のイオンガイド部と、
使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第2の電極を備える第2のイオンガイド部と、
第1のイオンガイド部を第2のイオンガイド部に接続する第1の移送部であって、使用時に、第1の移送部を介して、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させる第1の移送部と、
を備える。
【0016】
第1の移送部は、望ましくは、第1のイオンガイド部内に配置されて第1の径方向の開口部又は切り欠きを有する1つ以上の電極と、第2のイオンガイド部内に配置されて第2の径方向の開口部又は切り欠きを有する1つ以上の電極と、を備える。ここで、第1の径方向の開口部又は切り欠きと第2の径方向の開口部又は切り欠きとが実質的に一直線上になる構成が望ましい。また、第1の径方向の開口部又は切り欠きが第2の径方向の開口部又は切り欠きに対向するように配置されることが望ましい。
【0017】
イオンガイドは、望ましくは、さらに、第1の移送部を介して、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部にイオンを移動させる第1の装置を備える。第1の装置が、(i)第1の移送部にわたって直流バイアス電位を維持することによって、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部にイオンを移動させるデバイス、及び/又は、(ii)第1の移送部に配置される電極に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加することによって、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部にイオンを移動させるデバイス、を備える構成が望ましい。
【0018】
好適な実施形態において、使用時に、第1のイオンガイド部で第1の方向にイオンを透過させ、また、第2のイオンガイド部で第2の方向にイオンを透過させる。ここで、(i)第1の方向が、第2の方向と実質的に同一である。又は、(ii)第1の方向が、第2の方向と実質的に異なる若しくは実質的に反対である。
【0019】
本発明の一実施形態において、1つ以上の移送部を備え、各移送部が、イオンガイド部に配置されて2つ以上の径方向の開口部又は切り欠きを有する1つ以上の電極を有する構成でもよい。第1の動作モードにおいて、1つのイオンガイド部から別のイオンガイド部に対して、第1の径方向にイオンを移動させるようにしてもよい。第2の動作モードにおいて、1つのイオンガイド部から別のイオンガイド部に対して、第1の径方向と異なる又は第1の径方向と反対の第2の径方向にイオンを移動させるようにしてもよい。イオンを分割して移動させる実施形態も考えられる。一部のイオンを第1の径方向に移動させると同時に、他のイオンを第1の径方向とは異なる第2の径方向に移動させる。
【0020】
イオンガイドは、望ましくは、さらに、複数の第1の電極の少なくとも一部に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加するように配置・構成される第1の過渡直流電圧手段であって、このような印加により、第1のイオンガイド部の長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンを移動、押出、駆動又は推進させる第1の過渡直流電圧手段を備える。
【0021】
イオンガイドは、望ましくは、さらに、複数の第2の電極の少なくとも一部に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加するように配置・構成される第2の過渡直流電圧手段であって、このような印加により、第2のイオンガイド部の長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンを移動、押出、駆動又は推進させる第2の過渡直流電圧手段を備える。
【0022】
イオンガイドは、望ましくは、さらに、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第3の電極を備える第3のイオンガイド部を備える。
【0023】
イオンガイドは、望ましくは、さらに、第2のイオンガイド部を第3のイオンガイド部に接続する第2の移送部であって、第2の移送部を介して、第2のイオンガイド部から第3のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させる第2の移送部を備える。第2の移送部は、望ましくは、第2のイオンガイド部内に配置されて第3の径方向の開口部又は切り欠きを有する1つ以上の電極と、第3のイオンガイド部内に配置されて第4の径方向の開口部又は切り欠きを有する1つ以上の電極と、を備える。
【0024】
好適な実施形態において、第3の径方向の開口部又は切り欠きと第4の径方向の開口部又は切り欠きとは、実質的に一直線上に配置される。また、第3の径方向の開口部又は切り欠きが、第4の径方向の開口部又は切り欠きに対向するように配置されることが望ましい。
【0025】
イオンガイドは、望ましくは、さらに、第2の移送部を介して、第2のイオンガイド部から第3のイオンガイド部にイオンを移動させる第2の装置を備える。第2の装置が、(i)第2の移送部にわたって直流バイアス電位を維持することによって、第2のイオンガイド部から第3のイオンガイド部にイオンを移動させるデバイス、及び/又は、(ii)第2の移送部に配置される電極に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加することによって、第2のイオンガイド部から第3のイオンガイド部にイオンを移動させるデバイス、を備える構成が望ましい。
【0026】
一実施形態において、使用時に、第3のイオンガイド部で第3の方向にイオンを透過させる。ここで、(i)第3の方向が、第1の方向及び/又は第2の方向と実質的に同一である。又は、(ii)第3の方向が、第1の方向及び/又は第2の方向と実質的に異なる若しくは実質的に反対である。
【0027】
イオンガイドは、望ましくは、さらに、複数の第3の電極の少なくとも一部に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加するように配置・構成される第3の過渡直流電圧手段であって、このような印加により、第3のイオンガイド部の長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンを移動、押出、駆動又は推進させる第3の過渡直流電圧手段を備える。
【0028】
イオンガイドは、望ましくは、入口領域、中央領域及び出口領域を備える。 使用時に、入口領域及び/又は中央領域及び/又は出口領域を、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>10-2mbar、(vi)>10-3mbar、(vii)>10-4mbar、(viii)>10-5mbar、(ix)>10-6mbar、(x)<100mbar、(xi)<10mbar、(xii)<1mbar、(xiii)<0.1mbar、(xiv)<10-2mbar、(xv)<10-3mbar、(xvi)<10-4mbar、(xvii)<10-5mbar、(xviii)<10-6mbar、(xix)10〜100mbar、(xx)1〜10mbar、(xxi)0.1〜1mbar、(xxii)10-2〜10-1mbar、(xxiii)10-3〜10-2mbar、(xxiv)10-4〜10-3mbar、及び(xxv)10-5〜10-4mbarからなる群から選択される圧力に維持する。
【0029】
一実施形態によれば、第1の動作モードにおいて、イオンが、第1のイオンガイド部を通過して、第2のイオンガイド部内に入ることなく、第1のイオンガイド部から出るように構成される。また、第2の動作モードにおいて、イオンが、第1のイオンガイド部を通過して、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部に対して径方向に移動するように構成される。
【0030】
一実施形態によれば、
(i)第1の動作モードにおいて、イオンが、イオンガイドから出射される前に、第1のイオン経路長を有する第1のイオン通路に沿って、イオンガイドを通って移動するように構成され、第2の動作モードにおいて、イオンが、イオンガイドから出射される前に、第2のイオン経路長を有する第2のイオン通路に沿って、イオンガイドを通って移動するように構成され、第1の経路長に対する第2の経路長の比が少なくとも、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10である。及び/又は、
(ii)動作モードにおいて、イオンガイドが閉ループ又は閉回路を形成し、少なくとも一部のイオンが、イオンガイドを一周以上するように構成される。及び/又は、
(iii)動作モードにおいて、第1のイオン移動度又は質量対電荷比を有するイオンが、第1のイオン出口を介してイオンガイドから出射され、第2のイオン移動度又は質量対電荷比を有するイオンが、第1のイオン出口とは異なる第2のイオン出口を介してイオンガイドから出射されるように構成される。
【0031】
一実施形態において、イオンガイドは、さらに、第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は1つ以上の追加のイオンガイド部にガスを流す装置を備える。第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は1つ以上の追加のイオンガイド部をイオンが透過する方向と反対方向又は逆方向にガスが流れるように構成することが望ましい。
【0032】
本発明の別の態様は、イオンガイドであって、
第1の長手軸又は湾曲軸を有する第1のイオンガイド部であって、使用時にその内部にイオンを径方向に閉じ込める第1のイオンガイド部と、
第2の長手軸又は湾曲軸を有する第2のイオンガイド部であって、使用時にその内部にイオンを径方向に閉じ込める第2のイオンガイド部と、
第1のイオンガイド部の一部と第2のイオンガイド部の一部とを備える移送部であって、使用時に、第1の軸に対して測定される角度θであって60°より大きな角度θで、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部にイオンを移動させる移送部と、
を備える。
【0033】
第1のイオンガイド部は、望ましくは、(i)イオントンネル型イオンガイド若しくはイオンファネル型イオンガイド、(ii)多極ロッドセット型イオンガイド、(iii)軸方向にセグメント化された多極ロッドセット型イオンガイド、又は、(iv)イオン移動面に配置される複数の平板電極、のいずれかを備える。
【0034】
第2のイオンガイド部は、望ましくは、(i)イオントンネル型イオンガイド若しくはイオンファネル型イオンガイド、(ii)多極ロッドセット型イオンガイド、(iii)軸方向にセグメント化された多極ロッドセット型イオンガイド、又は、(iv)イオン移動面に配置される複数の平板電極、のいずれかを備える。
【0035】
角度θは、望ましくは、(i)>65°、(ii)>70°、(iii)>75°、(iv)>80°、(v)>85°及び(vi)90°からなる群から選択される。
【0036】
本発明のまた別の態様は、上述したイオンガイドを備えるイオン移動度分光計又は分離装置である。
【0037】
本発明のさらに別の態様は、上述したイオンガイドを備える衝突セル、フラグメンテーション(断片化)セル、又は反応セルである。
【0038】
好適な実施形態において、上述したイオンガイドを備える衝突セル、フラグメンテーション(断片化)セル、又は反応セルは、プロトン移動反応(Proton Transfer Reaction:PTR)セル、及び/又は、電子移動解離(Electron Transfer Dissociation:ETD)フラグメンテーションセルでもよい。電子移動解離ETD処理では、正電荷を持つ検体イオンと負電荷を持つ試薬イオンとを反応させて、負電荷を持つ試薬イオンから正電荷を持つ検体イオンに電子を移動させる。電子移動の後、電荷数を減少させたペプチドすなわち検体イオンは、電子捕獲解離(Electron Capture Dissociation)によるフラグメント化(断片化)と同様の機構で、解離する。すなわち、電子移動解離は、電子捕獲解離と同様の方法で、アミン結合を開裂させる。この結果、ペプチド検体イオンの電子移動解離により生成されるプロダクトイオン又はフラグメントイオンは、主に、c型及びz型のフラグメントイオン又はプロダクトイオンである。
【0039】
リン酸化又はグリコシル化のような弱い結合のPTM(翻訳後修飾:post-translational modification)はアミノ酸鎖骨格の電子誘導フラグメント化(断片化)に耐えうるため、電子移動解離は翻訳後修飾PTMの同定に特に適しているという大きな利点がある。
【0040】
一実施形態によれば、
(a)動作モードにおいて、衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation)により、衝突セル、フラグメンテーションセル、又は反応セル内部で、イオンの大部分がフラグメント化され、プロダクトイオン又はフラグメントイオンが生成される。ここで生成されるプロダクトイオン又はフラグメントイオンは、大部分が、b型プロダクトイオン又はフラグメントイオン及び/又はy型プロダクトイオン又はフラグメントイオンである。及び/又は、
(b)動作モードにおいて、電子移動解離により、衝突セル、フラグメンテーションセル、又は反応セル内部で、イオンの大部分がフラグメント化され、プロダクトイオン又はフラグメントイオンが生成される。ここで生成されるプロダクトイオン又はフラグメントイオンは、大部分が、c型プロダクトイオン又はフラグメントイオン及び/又はz型プロダクトイオン又はフラグメントイオンである。
【0041】
一実施形態において、以下のいずれかにより、電子移動解離を実現する。
(a)検体イオンと試薬イオンとの相互作用により、検体イオンをフラグメント化させる、又は、検体イオンの解離を誘発して、プロダクトイオン又はフラグメントイオンを生成させる。及び/又は、
(b)1つ以上の試薬アニオン又は負電荷を持つイオンから1つ以上の多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンに電子を移動させることにより、多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンの少なくとも一部の解離を誘発して、プロダクトイオン又はフラグメントイオンを生成させる。及び/又は、
(c)検体イオンと中性試薬ガス分子若しくは原子又は非イオン性試薬ガスとの相互作用により、検体イオンをフラグメント化させる、又は、検体イオンの解離を誘発して、プロダクトイオン又はフラグメントイオンを生成させる。及び/又は、
(d)1つ以上の中性、非イオン性又は無電荷(望ましくは塩基性)ガス又は蒸気から1つ以上の多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンに電子を移動させることにより、多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンの少なくとも一部の解離を誘発して、プロダクトイオン又はフラグメントイオンを生成させる。及び/又は、
(e)1つ以上の中性、非イオン性又は無電荷(望ましくは超強塩基)試薬ガス又は蒸気から1つ以上の多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンに電子を移動させることにより、多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンの少なくとも一部の解離を誘発して、プロダクトイオン又はフラグメントイオンを生成させる。及び/又は、
(f)1つ以上の中性、非イオン性又は無電荷アルカリ金属ガス又は蒸気から1つ以上の多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンに電子を移動させることにより、多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンの少なくとも一部の解離を誘発して、プロダクトイオン又はフラグメントイオンを生成させる。及び/又は、
(g)1つ以上の中性、非イオン性又は無電荷ガス、蒸気又は原子から1つ以上の多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンに電子を移動させることにより、多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンの少なくとも一部の解離を誘発して、プロダクトイオン又はフラグメントイオンを生成させる。ここで、1つ以上の中性、非イオン性又は無電荷ガス、蒸気又は原子は、(i)ナトリウム蒸気又は原子、(ii)リチウム蒸気又は原子、(iii)カリウム蒸気又は原子、(iv)ルビジウム蒸気又は原子、(v)セシウム蒸気又は原子、(vi)フランシウム蒸気又は原子、(vii)C60蒸気又は原子、及び(viii)マグネシウム蒸気又は原子、からなる群から選択される。
【0042】
一実施形態において、多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンは、望ましくは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は生体分子である。
【0043】
一実施形態において、試薬アニオン又は負電荷を持つイオンを多環芳香族炭化水素又は置換多環芳香族炭化水素由来のものとして、電子移動解離を実現するようにしてもよい。試薬アニオン又は負電荷を持つイオンを、電子親和力が弱い基質由来のものとしてもよい。一実施形態において、試薬イオンを、(i)アントラセン、(ii)9,10-ジフェニルアントラセン、(iii)ナフタレン、(iv)フッ素、(v)フェナントレン、(vi)ピレン、(vii)フルオランテン、(viii)クリセン、(ix)トリフェニレン、(x)ペリレン、(xi)アクリジン、(xii)2,2'-ジピリジル、(xiii)2,2'-ビキノリン、(xiv)9-アントラセンカルボニトリル、(xv)ジベンゾチオフェン、(xvi)1,10'-フェナントロリン、(xvii)9'-アントラセンカルボニトリル、及び(xviii)アントラキノン、からなる群から選択される化合物由来のものとしてもよい。試薬アニオン又は負電荷を持つイオンが、アゾベンゼン・アニオン又はアゾベンゼン・ラジカルアニオンでもよい。試薬イオンが、他のイオン、ラジカルアニオン又は準安定イオンを含む別の実施形態も考えられる。
【0044】
一実施形態において、以下の工程により、プロトン移動反応を実現する構成も望ましい。1つ以上の多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンから1つ以上の試薬アニオン又は負電荷を持つイオンにプロトンを移動させることにより、多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンの少なくとも一部を荷電状態で還元する。この場合、カチオンの一部の解離を誘発して、プロダクトイオン又はフラグメントイオンを生成させる構成も可能である。
【0045】
1つ以上の多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンから1つ以上の中性、非イオン性又は無電荷試薬ガス又は蒸気にプロトンを移動させることにより、多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンの少なくとも一部を荷電状態で還元する構成も望ましい。この場合も、カチオンの一部の解離を誘発して、プロダクトイオン又はフラグメントイオンを生成させる構成も可能である。
【0046】
多価検体カチオン又は正電荷を持つイオンは、望ましくは、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質又は生体分子である。
【0047】
一実施形態において、試薬アニオン又は負電荷を持つイオンを、(i)カルボン酸、(ii)フェノール酸、及び(iii)アルコキシドを含有する化合物、からなる群から選択される化合物由来のものとすることにより、衝突セル、フラグメンテーションセル、又は反応セルにおいて、プロトン移動反応を実現するようにしてもよい。あるいは、試薬アニオン又は負電荷を持つイオンを、(i)安息香酸、(ii)ペルフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン(PDCH)、(iii)六フッ化硫黄(SF6)、及び(iv)ペルフルオロトリブチルアミン(PFTBA)からなる群から選択される化合物由来のものとしてもよい。
【0048】
一実施形態において、1つ以上の試薬ガス又は蒸気が、衝突セル、フラグメンテーションセル、又は反応セル内部で供給され、超強塩基ガスを含むものとしてもよい。1つ以上の試薬ガス又は蒸気を、(i)1,1,3,3-テトラメチルグアニジン(TMG)、(ii)2,3,4,6,7,8,9,10-オクタヒドロピリミドール[1,2,-a]アゼピン(別名1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ-7-エン(DBU))、及び(iii)7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デセ-5-エン(MTBD)(別名:1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-1-メチル2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン)からなる群から選択される化合物由来のものとしてもよい。
【0049】
電子移動解離の実現に関して上述した試薬イオン又は中性試薬ガスと同様の試薬イオン又は中性試薬ガスをプロトン移動反応を実現するために用いる実施形態も考えられる。
【0050】
本発明のまた別の態様は、上述したイオンガイドを備える質量分析計である。
【0051】
本発明のさらに別の態様は、イオンガイド方法であって、
イオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第1の電極を備える第1のイオンガイド部と、イオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第2の電極を備える第2のイオンガイド部と、第1のイオンガイド部を第2のイオンガイド部に接続する第1の移送部と、を備えるイオンガイドを準備する工程と、
第1の移送部を介して、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させる工程と、
を備える。
【0052】
本発明のさらに他の態様は、別のイオンガイド方法であって、
第1の長手軸又は湾曲軸を有し、その内部にイオンを径方向に閉じ込める第1のイオンガイド部と、第2の長手軸又は湾曲軸を有し、その内部にイオンを径方向に閉じ込める第2のイオンガイド部と、を準備する工程と、
第1の軸に対して測定される角度θであって60°より大きな角度θで、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部にイオンを移動させる工程と、
を備える。
【0053】
本発明のまた他の態様は、質量分析計の制御システムで実行可能なコンピュータプログラムであって、
質量分析計は、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第1の電極を備える第1のイオンガイド部と、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第2の電極を備える第2のイオンガイド部と、第1のイオンガイド部を第2のイオンガイド部に接続する第1の移送部とを備え、
コンピュータプログラムは、制御システムに、
(i)第1の移送部を介して、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させる、ように構成される。
【0054】
本発明のさらに別の態様は、コンピュータにより実行可能な命令が記憶されるコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
命令は質量分析計の制御システムにより実行可能に構成され、
質量分析計は、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第1の電極を備える第1のイオンガイド部と、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第2の電極を備える第2のイオンガイド部と、第1のイオンガイド部を第2のイオンガイド部に接続する第1の移送部とを備え、
コンピュータ読み取り可能な媒体は、制御システムに、
(i)第1の移送部を介して、第1のイオンガイド部から第2のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させる、ように構成される。
【0055】
コンピュータ読み取り可能な媒体は、(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、(vi)光ディスク、(vii)RAM及び(viii)ハードディスクドライブからなる群から選択されることが望ましい。
【0056】
本発明のさらに別の態様は、イオン移動度に従ってイオンを分離する方法であって、
組み合わせて折り返し型又は蛇行型イオンガイド経路を形成する複数のイオンガイド部を準備する工程であって、イオンガイド経路に沿ってイオンを透過させる際にイオンの移動方向を1回以上反転させる工程と、
1つのイオンガイド部から隣接するイオンガイド部にイオンを通す際に、径方向にイオンを通過させる工程と、
を備える。
【0057】
複数のイオンガイド部内でイオンを径方向に閉じ込める構成が望ましい。
【0058】
径方向にイオンを通過させる工程が、2つのイオンガイド部間の相互接続部に配置される1つ以上の電極に形成される1つ以上の径方向の開口部にイオンを通す工程を備えることが望ましい。
【0059】
本発明のまた別の態様は、イオン移動度分離装置であって、
組み合わせて折り返し型又は蛇行型イオンガイド経路を形成する複数のイオンガイド部であって、使用時に、イオンガイド経路に沿ってイオンを透過させる際にイオンの移動方向を1回以上反転させるように構成される複数のイオンガイド部と、
1つのイオンガイド部から隣接するイオンガイド部にイオンを通す際に、径方向にイオンを通過させる装置と、
を備える、
【0060】
本発明の好適な実施形態は、複数の積層環状イオンガイド(stacked ring ion guides:SRIGs)を備える。各積層環状イオンガイドが、複数の環状電極若しくは平板電極、又は、使用時にイオンを透過させる1つ以上の開口部を有する複数の電極を備えることが望ましい。交流電圧又は高周波(RF)電圧を積層環状イオンガイドの平板電極または環状電極に一つおきに印加して、疑似井戸型ポテンシャル内でイオンガイドに径方向にイオンを閉じ込めることが望ましい。一実施形態において、交流電圧又は高周波(RF)電圧の逆位相を電極に一つおきに印加することが望ましい。
【0061】
イオンガイドが多極ロッドセット又は軸方向にセグメント化された多極ロッドセットを備える実施形態も可能である。また、イオンガイドがイオン移動面に配置される複数の平板電極を備える実施形態も可能である。交流電圧又は高周波(RF)電圧の逆位相を隣接する平板電極に印加することにより、イオンガイド内にイオンを閉じ込める。
【0062】
1つ以上の直流進行波又は直流過渡電圧を1つ以上の積層環状イオンガイドの平板電極若しくは環状電極又は他のイオンガイド装置に印加して、積層環状イオンガイド又は他のイオンガイド内を、望ましくは、緩衝ガス内をイオンが通過するようにしてもよい。この結果、好適な実施形態において、1つ以上の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドに沿ってイオンが通過する際に、イオン移動度に従ってイオンを分離することができる。
【0063】
一実施形態において、イオンが第1の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドに第1の軸方向に入射し、最後の、すなわち、一番後の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドから第2の軸方向に出射する構成が望ましい。第2の軸方向は、第1の軸方向と同じでもよいし、異なっていてもよい。各積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドの入口側及び/又は出口側の局所領域を介して2つの隣接する積層環状イオンガイド又は他のイオンガイド間でイオンを移動させるような構成でもよい。このような局所領域では、1つ以上の隣接する積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドが、一直線上になる径方向の開口部を有し、この開口部を通って、1つの積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドから隣接する別の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドに、径方向にイオンを移動させることができる。
【0064】
好適な実施形態において、直流オフセット(たとえば、<5V、5〜10V、10〜15V、又は>15V)を2つの隣接する積層環状イオンガイド又は他のイオンガイド間で維持することにより、環状電極またはその他の電極に形成された開口部をイオンが通過するような構成でもよい。隣接する積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドに印加される直流電圧進行波を、反対方向にイオンを移動させる(又は通過させる)ように構成してもよい。
【0065】
一実施形態において、第2の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドにイオンが入る前に、第1の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイド内でイオンが前方にすなわち第1の方向に移動するように構成してもよい。その後、イオンが、第2の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイド内を第2の方向に戻るように構成してもよい。第2の方向は、第1の方向の反対方向すなわち逆方向が望ましい。イオンは、その後、第3の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドに入り、第3の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイド内でイオンが前方にすなわち第1の方向に移動する。さらに別の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイドを準備し、複数の積層環状イオンガイド又は他のイオンガイド間をイオンが通るような構成も考えられる。このように、必要以上に装置の長さを増大させることなく、イオンのドリフト長すなわち有効ドリフト経路長を大幅に増加することができる。市販の質量分析計では、可能な限り装置の設置面積及び大きさを小さくすることが重要である。
【0066】
第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又は必要に応じて備えられるさらに別のイオンガイド部の長さは、(i)<10cm、(ii)10〜20cm、(iii) 20〜30cm、(iv) 30〜40cm、(v) 40〜50cm、(vi) 50〜60cm、(vii) 60〜70cm、(viii) 70〜80cm、(ix) 80〜90cm、(x) 90〜100cm、(xi) 100〜110cm、(xii) 110〜120cm、(xiii) 120〜130cm、(xiv) 130〜140cm、(xv) 140〜150cm、(xvi) 150〜160cm、(xvii) 160〜170cm、(xviii) 170〜180cm、(xix) 180〜190cm、(xx) 190〜200cm、(xxi) 200〜210cm、(xxii) 210〜220cm、(xxiii) 220〜230cm、(xxiv) 230〜240cm、(xxv) 240〜250cm、(xxvi) 250〜260cm、(xxvii) 260〜270cm、(xxviii) 270〜280cm、(xxix) 280〜290cm、(xxx) 290〜300cm、(xxxi) 300〜310cm、(xxxii) 310〜320cm、(xxxiii) 320〜330cm、(xxxiv) 330〜340cm、(xxxv) 340〜350cm、(xxxvi) 350〜360cm、(xxxvii) 360〜370cm、(xxxviii) 370〜380cm、(xxxix) 380〜390cm、(xl) 390〜400cm、(xli) 400〜410cm、(xlii) 410〜420cm、(xliii) 420〜430cm、(xliv) 430〜440cm、(xlv) 440〜450cm、(xlvi) 450〜460cm、(xlvii) 460〜470cm、(xlviii) 470〜480cm、(xlix) 480〜490cm、(l) 490〜500cm、及び(li)>500cm、からなる群から選択されることが望ましい。
【0067】
一実施形態において、イオンガイドは、さらに、イオンガイドに備えられる電極、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部に備えられる電極に交流電圧又は高周波(RF)電圧を供給するように配置・構成された装置を備える。交流電圧又は高周波(RF)電圧としては、(i)<50Vのピークピーク値、(ii)50〜100Vのピークピーク値、(iii)100〜150Vのピークピーク値、(iv)150〜200Vのピークピーク値、(v)200〜250 Vのピークピーク値、(vi)250〜300 Vのピークピーク値、(vii)300〜350 Vのピークピーク値、(viii)350〜400 Vのピークピーク値、(ix)400〜450 Vのピークピーク値、(x)450〜500 Vのピークピーク値、及び(xi)>500 Vのピークピーク値、からなる群から選択される振幅を有する交流電圧又は高周波(RF)電圧が望ましい。1つ以上の中間イオンガイド部に印加する交流電圧又は高周波(RF)電圧の振幅は、第1のイオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部に印加される交流電圧又は高周波(RF)電圧の振幅よりも大きいことが望ましい。
【0068】
交流電圧又は高周波(RF)電圧としては、(i)<100kHz、(ii)100〜200 kHz、(iii)200〜300 kHz、(iv)300〜400 kHz、(v)400〜500 kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5 MHz、(viii)1.5〜2.0 MHz、(ix)2.0〜2.5 MHz、(x)2.5〜3.0 MHz、(xi)3.0〜3.5 MHz、(xii)3.5〜4.0 MHz、(xiii)4.0〜4.5 MHz、(xiv)4.5〜5.0 MHz、(xv)5.0〜5.5 MHz、(xvi)5.5〜6.0 MHz、(xvii)6.0〜6.5 MHz、(xviii)6.5〜7.0 MHz、(xix)7.0〜7.5 MHz、(xx)7.5〜8.0 MHz、(xxi)8.0〜8.5 MHz、(xxii)8.5〜9.0 MHz、(xxiii)9.0〜9.5 MHz、(xxiv)9.5〜10.0 MHz、及び(xxv)>10.0 MHz、からなる群から選択される周波数を有する交流電圧又は高周波(RF)電圧が望ましい。
【0069】
一実施形態において、イオンガイドは、イオンガイドの長さ、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部の長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って直流電圧勾配又は直流電位勾配を維持することにより、イオンガイド内で、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部内で、イオンを移動、押出、駆動又は推進させるように配置・構成される装置を備える。
【0070】
一実施形態において、イオンガイド、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部が、イオン入口とイオン出口とを備え、使用時にイオンガイド(及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部)のイオン入口又は入口領域とイオンガイド(及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部)のイオン出口又は出口領域との間でゼロではない直流電圧勾配又は直流電位勾配を維持するような構成でもよい。ここで、ゼロではない直流電圧勾配又は直流電位勾配は、イオンガイド内で(及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部内で)、イオン入口からイオン出口に向かって、イオンを移動、押出、駆動又は推進させるように構成される。
【0071】
イオンガイド、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部が、さらに、複数の電極の少なくとも一部に、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部に、1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加するように配置・構成される過渡直流電圧手段を備えることが望ましい。このような印加により、イオンガイドの長さ、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部の長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンが移動、押出、駆動又は推進される。
【0072】
一実施形態において、イオンガイド、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部が、さらに、1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位の振幅又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形の振幅を時間とともに変化、増加、又は減少させるように配置・構成される手段を備えるようにしてもよい。あるいは、1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位の振幅又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形の振幅を、時間とともに、線形的に又は非線形的に、傾斜させる、段階的に変化させる、スキャンさせる、又は、変動させるようにしてもよい。
【0073】
動作モードにおいて、1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を、(i)<100m/s、(ii)100〜200 m/s、(iii)200〜300 m/s、(iv)300〜400 m/s、(v)400〜500 m/s、(vi)500〜600 m/s、(vii)600〜700 m/s、(viii)700〜800 m/s、(ix)800〜900 m/s、(x)900〜1000 m/s、(xi)1000〜1100 m/s、(xii)1100〜1200 m/s、(xiii)1200〜1300 m/s、(xiv)1300〜1400 m/s、(xv)1400〜1500 m/s、(xvi)1500〜1600 m/s、(xvii)1600〜1700 m/s、(xviii)1700〜1800 m/s、(xix)1800〜1900 m/s、(xx)1900〜2000 m/s、(xxi)2000〜2100 m/s、(xxii)2100〜2200 m/s、(xxiii)2200〜2300 m/s、(xxiv)2300〜2400 m/s、(xxv)2400〜2500 m/s、(xxvi)2500〜2600 m/s、(xxvii)2600〜2700 m/s、(xxviii)2700〜2800 m/s、(xxix)2800〜2900 m/s、(xxx)2900〜3000 m/s、及び(xxxi)>3000 m/s、からなる群から選択される速度で、イオンガイドの長さに沿って、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部の長さに沿って、平行移動又は印加するようにしてもよい。一実施形態において、イオンガイドの長さに沿って、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部の長さに沿って、1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形が平行移動又は印加される速度は、変化、増加、又は減少するようにしてもよい。
【0074】
一実施形態において、イオンガイドの入口領域及び/又は中央領域及び/又は出口領域を、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部の入口領域及び/又は中央領域及び/又は出口領域を、使用時に、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>10-2mbar、(vi)>10-3mbar、(vii)>10-4mbar、(viii)>10-5mbar、(ix)>10-6mbar、(x)<100mbar、(xi)<10mbar、(xii)<1mbar、(xiii)<0.1mbar、(xiv)<10-2mbar、(xv)<10-3mbar、(xvi)<10-4mbar、(xvii)<10-5mbar、(xviii)<10-6mbar、(xix)10〜100mbar、(xx)1〜10mbar、(xxi)0.1〜1mbar、(xxii)10-2〜10-1mbar、(xxiii)10-3〜10-2mbar、(xxiv)10-4〜10-3mbar、及び(xxv)10-5〜10-4mbar、からなる群から選択される圧力に維持することが望ましい。
【0075】
1つ以上の中間イオンガイド部の圧力が第1のイオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部の圧力よりも大きくなる構成が望ましい。
【0076】
一実施形態において、(i)キセノン、(ii)六フッ化ウラン(UF6)、(iii)イソブタン(C4H10)、(iv)アルゴン、(v)クリプトン、(vi)パーフルオロプロパン(C3F8)、(vii)ヘキサフルオロエタン(C2F6)、(viii)ヘキサン(C6H14)、(ix)ベンゼン(C6H6)、(x)四塩化炭素(CCl4)、(xi)ヨードメタン(CH3I)、(xii)ジヨードメタン(CH2I2)、(xiii)二酸化炭素(CO2)、(xiv)二酸化窒素(NO2)、(xv)二酸化硫黄(SO2)、(xvi)三フッ化リン(PF3)、(xvii)十フッ化二硫黄(S2F10)、(xviii)窒素、(xix)空気、(xx)メタン、及び(xxi)二酸化炭素、からなる群から選択されるガスを、イオンガイド、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部に供給するようにしてもよい。1つ以上のイオンガイド部内をイオンが移動する方向と同じ方向にガスを流すようにしてもよいが、1つ以上のイオンガイド部内をイオンが移動する方向と反対の方向にガスを流す構成が望ましい。
【0077】
別の動作モードにおいて、イオン移動度に従って、又は、電界強度に対するイオン移動度の変化率に従って、イオンガイド内でイオンを実質的に分離させることなく、イオンガイド内で、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部内で、イオンを移動させるようにしてもよい。
【0078】
一実施形態において、イオンガイド、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部が、さらに、イオンガイドの少なくとも一部を形成する電極に、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部の少なくとも一部を形成する電極に、2つ以上の位相シフト交流電圧又は高周波(RF)を印加する電圧交流電圧又は高周波(RF)電圧手段を備えるようにしてもよい。このような印加により、イオンガイドの長さ、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部の長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンが移動、押出、駆動又は推進される。
【0079】
一実施形態によれば、動作モードにおいて、イオンガイド内部で、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部内部で、イオンを加速することにより、イオンが実質的に最終速度に達する。
【0080】
一実施形態によれば、動作モードにおいて、1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、900〜1000、又は1000より大きな範囲の質量対電荷比を有する一価イオンが、イオンガイド内、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部内を通過するドリフト時間又は通過時間は、以下の群から選択される範囲であることが望ましい。(i)0〜1ms、(ii)1〜2 ms、(iii)2〜3 ms、(iv)3〜4 ms、(v)4〜5 ms、(vi)5〜6 ms、(vii)6〜7 ms、(viii)7〜8 ms、(ix)8〜9 ms、(x)9〜10 ms、(xi)10〜11 ms、(xii)11〜12 ms、(xiii)12〜13 ms、(xiv)13〜14 ms、(xv)14〜15 ms、(xvi)15〜16 ms、(xvii)16〜17 ms、(xviii)17〜18 ms、(xix)18〜19 ms、(xx)19〜20 ms、(xxi)20〜21 ms、(xxii)21〜22 ms、(xxiii)22〜23 ms、(xxiv)23〜24 ms、(xxv)24〜25 ms、(xxvi)25〜26 ms、(xxvii)26〜27 ms、(xxviii)27〜28 ms、(xxix)28〜29 ms、(xxx)29〜30 ms、(xxxi)30〜35 ms、(xxxii)35〜40 ms、(xxxiii)40〜45 ms、(xxxiv)45〜50 ms、(xxxv)50〜55 ms、(xxxvi)55〜60 ms、(xxxvii)60〜65 ms、(xxxviii)65〜70 ms、(xxxix)70〜75 ms、(xl)75〜80 ms、(xli)80〜85 ms、(xlii)85〜90 ms、(xliii)90〜95 ms、(xliv)95〜100 ms、及び(xlv)>100ms。
【0081】
一実施形態によれば、動作モードにおいて、イオンガイド内で、及び、望ましくは第1のイオンガイド部及び/又は第2のイオンガイド部及び/又は第3のイオンガイド部及び/又はさらに別のイオンガイド部内で、イオンが衝突で冷却される、及び/又は、ガスとの衝突により熱運動化されるものでもよい。
【0082】
本発明のまた別の態様は、上述したイオンガイドを備えるイオン移動度分離装置又はイオン移動度分光計である。イオンは、イオンガイド内で、イオン移動度に従って、又は、電界強度に対するイオン移動度の変化率に従って、分離される。
【0083】
本発明のさらに別の態様は、上述したイオンガイドを備える衝突、反応、又はフラグメンテーション装置である。イオンガイドが、以下の群から選択される衝突、反応、又はフラグメンテーション装置の一部を形成することが望ましい。(i)衝突誘起解離(Collisional Induced Dissociation: CID)フラグメンテーション装置、(ii)表面誘起解離(Surface Induced Dissociation: SID)フラグメンテーション装置、(iii)電子移動解離(Electron Transfer Dissociation: ETD)フラグメンテーション装置、(iv)電子捕獲解離(Electron Capture Dissociation: ECD)フラグメンテーション装置、(v)電子衝突(Electron Collision)又は電子衝撃解離(Electron Impact Dissociation)フラグメンテーション装置、(vi)光誘起解離(Photo Induced Dissociation: PID)フラグメンテーション装置、(vii)レーザー誘起解離(Laser Induced Dissociation)フラグメンテーション装置、(viii)赤外線誘起解離装置、(ix)紫外線誘起解離装置、(x)ノズル・スキマー・インターフェース・フラグメンテーション装置、(xi)インソースフラグメンテーション装置、(xii)イオンソース衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation)フラグメンテーション装置、(xiii)熱源又は温度源フラグメンテーション装置、(xiv)電場誘起フラグメンテーション装置、(xv)磁場誘起フラグメンテーション装置、(xvi)酵素消化又は酵素分解フラグメンテーション装置、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーション装置、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーション装置、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーション装置、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーション装置、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーション装置、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーション装置、(xxiii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−イオン反応装置、(xxiv)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−分子反応装置、(xxv)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−原子反応装置、(xxvi)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定イオン反応装置、(xxvii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定分子反応装置、(xxviii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定原子反応装置、及び(xxix)電子イオン化解離(Electron Ionization Dissociation: EID)フラグメンテーション装置。
【0084】
本発明のまた別の態様は、上述したイオンガイドをさらに備える質量分析計である。
【0085】
本発明のさらに別の態様は、上述したイオン移動度分離装置又はイオン移動度分光計をさらに備える質量分析計である。
【0086】
本発明の他の態様は、上述した衝突、フラグメンテーション、又は反応装置をさらに備える質量分析計である。
【0087】
好適な実施形態は、比較的高分解能で、比較的高透過率で、低電界の小型イオン移動度分離装置である。好適なイオン移動度分離装置を、イオン移動度‐質量分析計のハイブリッド装置に内蔵させるようにしてもよい。
【0088】
好適な実施形態において、イオン移動度分光計又は分離装置内でイオンに蛇行経路をとらせることにより、イオン移動度分光計又は分離装置のドリフト長を増大させることが望ましい。このような構成により、同程度の有効ドリフト長を有する長手ドリフト管を備える従来のイオン移動度分離装置と比較して、装置全体の物理的な寸法をかなり小さくすることができる。
【0089】
一実施形態において、質量分析計は、(i)エレクトロスプレーイオン化(Electrospray ionization: ESI)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(Atmospheric Pressure Photo Ionization: APPI)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(Atmospheric Pressure Chemical Ionization: APCI)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Matrix Assisted Laser Desorption Ionization: MALDI)イオン源、(v)レーザー脱離イオン化(Laser Desorption Ionization: LDI)イオン源、(vi)大気圧イオン化(Atmospheric Pressure Ionization: API)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(Desorption Ionization on Silicon: DIOS)イオン源、(viii)電子衝撃(Electron Impact: EI)イオン源、(ix)化学イオン化(Chemical Ionization: CI)イオン源、(x)電界イオン化(Field Ionization: FI)イオン源、(xi)電界脱離(Field Desorption: FD)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma: ICP)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(Fast Atom Bombardment: FAB)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(Liquid Secondary Ion Mass Spectrometry: LSIMS)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(Desorption Electrospray Ionization: DESI)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン化(Atmospheric Pressure Matrix Assisted Laser Desorption Ionization: APMALDI)イオン源、(xviii)サーモスプレーイオン源、(xix)大気サンプリンググロー放電イオン化(Atmospheric Sampling Glow Discharge Ionization: ASGDI)イオン源、(xx)グロー放電(Glow Discharge: GD)イオン源、(xxi)低大気圧エレクトロスプレーイオン化イオン源、及び(xxii)リアルタイム直接質量分析(Direct Analysis in Real Time: DART)イオン源、からなる群から選択される1つ以上のイオン源を備える構成でもよい。
【0090】
質量分析計は、1つ以上の連続又はパルスイオン源を備えるものでもよい。
【0091】
質量分析計は、1つ以上のイオンガイドを備える構成でもよい。
【0092】
一実施形態において、質量分析計は、さらに、1つ以上のイオン移動度分離装置及び/又は電界非対称イオン移動度分光計(Field Asymmetric Ion Mobility Spectrometer: FAIMS)を備える構成でもよい。
【0093】
質量分析計は、1つ以上のイオントラップ又は1つ以上のイオン捕捉領域を備える構成でもよい。
【0094】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、(i)衝突誘起解離(Collisional Induced Dissociation: CID)フラグメンテーション装置、(ii)表面誘起解離(Surface Induced Dissociation: SID)フラグメンテーション装置、(iii)電子移動解離(Electron Transfer Dissociation: ETD)フラグメンテーション装置、(iv)電子捕獲解離(Electron Capture Dissociation: ECD)フラグメンテーション装置、(v)電子衝突(Electron Collision)又は電子衝撃解離(Electron Impact Dissociation)フラグメンテーション装置、(vi)光誘起解離(Photo Induced Dissociation: PID)フラグメンテーション装置、(vii)レーザー誘起解離(Laser Induced Dissociation)フラグメンテーション装置、(viii)赤外線誘起解離装置、(ix)紫外線誘起解離装置、(x)ノズル・スキマー・インターフェース・フラグメンテーション装置、(xi)インソースフラグメンテーション装置、(xii)インソース衝突誘起解離(Collision Induced Dissociation)フラグメンテーション装置、(xiii)熱源又は温度源フラグメンテーション装置、(xiv)電場誘起フラグメンテーション装置、(xv)磁場誘起フラグメンテーション装置、(xvi)酵素消化又は酵素分解フラグメンテーション装置、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーション装置、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーション装置、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーション装置、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーション装置、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーション装置、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーション装置、(xxiii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−イオン反応装置、(xxiv)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−分子反応装置、(xxv)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−原子反応装置、(xxvi)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定イオン反応装置、(xxvii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定分子反応装置、(xxviii)イオンの反応により付加イオン又はプロダクトイオンを形成するイオン−準安定原子反応装置、及び(xxix)電子イオン化解離(Electron Ionization Dissociation: EID)フラグメンテーション装置、からなる群から選択される1つ以上の衝突セル、フラグメンテーション(断片化)セル、又は反応セルを備える構成でもよい。衝突セル、フラグメンテーション(断片化)セル、又は反応セルは、イオン移動度分光計若しくは分離装置又はイオンガイドの上流側及び/又は下流側に配置されるものでもよい。
【0095】
一実施形態において、質量分析計は、(i)四重極質量分析器、(ii)2次元又はリニア四重極質量分析器、(iii)ポール(Paul)トラップ型又は3次元四重極質量分析器、(iv)ペニング(Penning)トラップ型質量分析器、(v)イオントラップ型質量分析器、(vi)磁場型質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(Ion Cyclotron Resonance: ICR)質量分析器(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(Fourier Transform Ion Cyclotron Resonance: FTICR)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ型(RTM)質量分析器、(x)フーリエ変換(Fourier Transform)静電又はオービトラップ型質量分析器、(xi)フーリエ変換(Fourier Transform)質量分析器、(xii)飛行時間型(Time of Flight: TOF)質量分析器、(xiii)直交加速飛行時間型(Time of Flight)質量分析器、及び(xiv)線形加速飛行時間型(Time of Flight)質量分析器、からなる群から選択される質量分析器を備える構成でもよい。
【0096】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、1つ以上のエネルギー分析器又は静電エネルギー分析器を備える構成でもよい。
【0097】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、1つ以上のイオン検出器を備える構成でもよい。
【0098】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、(i)四重極マスフィルタ、(ii)2次元又はリニア四重極イオントラップ、(iii)ポール(Paul)又は3次元四重極イオントラップ、(iv)ペニング(Penning)イオントラップ、(v)イオントラップ、(vi)磁気セクタ型マスフィルタ、(vii)飛行時間型(Time of Flight: TOF)マスフィルタ、及び(viii)ウィーン(Wien)フィルタ、からなる群から選択される1つ以上のマスフィルタを備える構成も望ましい。
【0099】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、イオンをパルス状にする装置又はイオンゲートを備える構成でもよい。
【0100】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、実質的に連続的なイオンビームをパルスイオンビームに変換する装置を備える構成でもよい。
【0101】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、C型トラップと、外側たる形電極及び同軸の内側紡錘形電極を備えるオービトラップ型(RTM)質量分析器と、を備えるようにしてもよい。ここで、第1の動作モードにおいて、イオンは、C型トラップに送られ、次に、オービトラップ型(RTM)質量分析器に注入される。第2の動作モードにおいて、イオンは、C型トラップに、次に、衝突セル又は電子移動解離(Electron Transfer Dissociation)装置に送られて、少なくとも一部のイオンがフラグメント(断片)イオンにフラグメント化(断片化)される。フラグメントイオンは、C型トラップに送られた後、オービトラップ型(RTM)質量分析器に注入される。
【0102】
一実施形態において、質量分析計が、さらに、使用時にイオンを透過させる開口部を各々有する複数の電極を備える積層環状イオンガイドを備えるようにしてもよい。イオン経路の長さ方向に沿って、電極の間隔が増大する。イオンガイドの上流部に配置される電極の開口部が第1の直径を有する一方で、イオンガイドの下流部に配置される電極の開口部が第1の直径よりも小径の第2の直径を有する。使用時に交流電圧又は高周波(RF)電圧の逆位相が連続する電極に印加される構成が望ましい。
【0103】
以下、例示を目的として、本発明のさまざまな実施例を添付の図面を参照して詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】1つの積層環状イオンガイドから別の積層環状イオンガイドに径方向にイオンが放出される3つの積層環状イオンガイドを備える好適な実施例のイオンガイドアレイを示す概略図。
【図2】2つの隣接する積層環状イオンガイド間のインターフェース部又は移送部に配置される2つの隣接する積層環状イオンガイドの環状電極を示す断面図であって、2つの隣接する積層環状イオンガイド間でイオンの移動が可能になるように環状電極に径方向の開口部を形成した様子を示す断面図。
【図3】本発明の一実施例に従って、2つの隣接する積層環状イオンガイド間でのイオン移動をシミュレートしたSIMION(RTM)シミュレーションを示す図。
【図4a】1つ、3つ、4つ及び9つの積層環状イオンガイドを備えるさまざまなイオンガイドアレイにおけるイオンの範囲に対してスケーリングした平均ドリフト時間をプロットしたSIMION(RTM)シミュレーションの結果を示す図。
【図4b】1つ、3つ、4つ及び9つの積層環状イオンガイドを備えるさまざまなイオンガイドアレイにおけるイオンの範囲に対してドリフト時間の標準偏差をプロットしたSIMION(RTM)シミュレーションの結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0105】
本発明の好適な実施例を図1を参照して説明する。図1は、3つの積層環状イオンガイド1、2及び3を備えるイオンガイドアレイを示す。イオンを透過させる開口部を各々有する複数の環状電極1aを備える第1の積層環状イオンガイド1に、イオンが入射される。第1のイオンガイド1に備えられる電極1aに直流進行波又は1つ以上の直流過渡電圧若しくは直流過渡電位を印加することにより、第1のイオンガイド1の長さ方向にイオンが進む。第1のイオンガイド1の出口領域までイオンを移動させることが望ましい。第1のイオンガイド1の出口領域に移送部を配置し、移送部は、径方向の開口部又は切り欠きを備えるように構成された1つ以上の環状電極1bを備えることが望ましい。図1に示す例では、各積層環状イオンガイド1及び2に配置される2つの環状電極1b及び2bが、それぞれ、径方向の開口部又は切り欠きを備える。
【0106】
本発明の特に望ましい態様において、2つのイオンガイド1及び2の間の移送部を構成する環状電極1b及び2bに形成された径方向の開口部又は切り欠きを径方向に又はほぼ径方向にイオンが通過することにより、第1のイオンガイド1から第2のイオンガイド2にイオンが移動する。
【0107】
少なくとも第1のイオンガイド1の出口領域と第2のイオンガイド2の入口領域との間で直流バイアス電圧を維持して、第1のイオンガイド1から第2のイオンガイド2にイオンを移動させる構成が望ましい。したがって、イオンは、第1の積層環状イオンガイド1から第2の積層環状イオンガイド2に径方向に移動する。
【0108】
第1のイオンガイド1内でイオンが移動する方向と反対の方向に直流進行波又は直流過渡電圧若しくは直流過渡電位を印加することにより、第2の積層環状イオンガイド2内でイオンを移動させる構成が望ましい。第2の積層環状イオンガイド2の他端で、イオンは、第2の積層環状イオンガイド2から第3の積層環状イオンガイド3に径方向に移動する。その後、直流進行波又は直流過渡電圧若しくは直流過渡電位を印加することにより、イオンは第3のイオンガイド3内を長さ方向に沿って進む。イオンは、第3の積層環状イオンガイド3の出口から出射される。
【0109】
図1に示すイオンガイドアレイは、単列の環状電極を備える従来のイオントンネル型イオンガイドと比較して、イオンガイド全体で約3倍の有効ドリフト距離又はドリフト長を持つという大きな利点がある。
【0110】
図1に示す3つの積層環状イオンガイド1、2及び3からなるイオンガイドアレイは単なる例示に過ぎず、イオンガイドアレイに、さまざまな数の積層環状イオンガイドを備えた別の実施例も可能である。たとえば、イオンガイドアレイがイオンガイド部を2つだけ備える構成でもよいし、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、又は11以上のイオンガイド部を備える構成でもよい。
【0111】
図2は、径方向の開口部を各々有する2つの径方向に隣接する環状電極1b及び2bを示す。一方の環状電極1bは、第1のイオンガイド部1の出口領域に配置され、もう一方の環状電極2bは、第2のイオンガイド部2の入口領域に配置される。2つの環状電極1b及び2bは、2つのイオンガイド部1及び2の間の移送部の一部を構成することが望ましい。2つの隣接する積層環状イオンガイドの環状電極1b及び2bは、一直線上に配置される径方向の開口部を有し、この構成により、2つの隣接する積層環状イオンガイド1及び2の間で径方向にイオンを移動させることができる。好適な実施例において、このようなイオンの移動は、2つの隣接する積層環状イオンガイド1及び2の間で直流バイアス電圧を維持することにより実現又は支援される。別の実施例において、他の方法を用いて、イオンを1つのイオンガイドから隣接する他のイオンガイドに移動させるようにしてもよい。たとえば、直流進行波又は直流過渡電圧若しくは直流過渡電位を、2つのイオンガイド間の移送部に配置される電極に印加するようにしてもよい。
【0112】
図3は、SIMION(RTM)シミュレーションの結果を示す。2つの隣接する積層環状イオンガイド4及び5間の移送領域にわたって、イオン経路が形成されている。このモデルでは、移送領域には、径方向の開口部を有する8個の電極7が含まれる。残りの電極は、閉ループを形成する積層環状イオンガイドの電極板6である。図3に示す例では、積層環状イオンガイド4及び5の間に、5Vの直流バイアス電圧を印加する、又は、この間で、5Vの直流バイアス電圧を維持する。図示したモデルでは、上部積層環状イオンガイド4でイオンが生成され、直流進行波又は直流過渡電圧若しくは直流過渡電位により、2つのイオンガイド4及び5の間の移送領域に到達するまで、イオンが右方向に進む。イオンは、その後、下部積層環状イオンガイド5に迅速に移動し、直流進行波又は直流過渡電圧若しくは直流過渡電位により、逆方向に進む。
【0113】
図3に示すシミュレーションのモデルでは、電極に印加した高周波(RF)電位は、2.7MHzで300Vp-pRFであった。0.4torr(0.5mbar)の窒素をバックグラウンドガスとして用いた。4回リピート型の6V、300m/sの進行波パルスを電極に印加して、2つの積層環状イオンガイド4及び5の間で5Vの直流バイアス電圧を維持した。一実施例において、標準的なイオン移動度分光計又は分離装置の積層環状イオンガイドセルに関して、最大で数torr(mbar)のガス圧まで、また、進行波パルスで数十ボルトまで、これらのパラメータを変動させることができる。直流バイアス電圧は、数ボルトから数十ボルトの範囲が望ましい。
【0114】
図4Aは、1つ、3つ、4つ、及び9つの積層環状イオンガイドを備えるさまざまなイオンガイドアレイに関して、SIMION(RTM)計算を行なった結果から得られた平均ドリフト時間を示す。図4Bは、これに対応するドリフト時間の標準偏差を示す。ドリフト時間はドリフト距離に対して直線的に相関すると考えられるので、積層環状イオンガイドの数に応じて、ドリフト時間を線形にスケーリングした。図から明らかなように、得られた4つのスケーリング曲線は、すべて、同一曲線上に存在する。(線形ドリフトセルに関して、標準偏差はドリフト距離の平方根によりスケーリングされると考えられるので)積層環状イオンガイドの数の平方根で標準偏差をスケーリングした。図から明らかなように、4種類の構成に関してスケーリングした標準偏差もすべて同一曲線上に存在する。
【0115】
これらの結果から、積層環状イオンガイドシステムのイオン移動度分光計又は分離装置の性能が、同じ全長の経路長を有する線形積層環状イオンガイドの性能に匹敵することがわかる。したがって、複数の積層環状イオンガイドを備えるイオンガイドアレイの分解能は、経路長の平方根でスケーリングできる。
【0116】
別の実施例において、この方法でさまざまな数の積層環状イオンガイドを組み合わせることができる。一実施例において、積層環状イオンガイドを異なる空間配置で組み合わせることも可能である。たとえば、垂直方向と水平方向に積層させた2次元アレイも可能である。
【0117】
一実施例において、イオンガイドアレイにイオンが入射する軸方向とイオンガイドからイオンが出射される軸方向とが異なる構成も可能である。他の実施例において、イオンが再循環して、2回以上、一連の積層環状イオンガイドを通過するような構成も可能である。
【0118】
直流進行波を印加して積層環状イオンガイドに沿ってイオンを駆動する方法が好適であるが、一定の軸方向直流電位差等、他のイオン推進力を用いてもよい。
【0119】
一実施例において、隣接する積層環状イオンガイド間でイオンを移動させる方法として、直流バイアス電位のみを用いるのではなく、複数の異なる機構でイオンを移動させるようにしてもよい。
【0120】
一実施例において、電圧の切り替えにより、同じ物理的装置内で異なるイオン経路を実現するようにしてもよい。
【0121】
イオンガイドが、多極ロッドセット又は軸方向にセグメント化された多極ロッドセットを備える構成でもよい。また、イオンガイドが、イオン移動面に配置される複数の平板電極を備える構成でもよい。この場合には、交流電圧又は高周波(RF)電圧の逆位相を、隣接する平板電極に印加する。
【0122】
本発明のさらに別の実施例において、イオンガイドが複数のイオンガイド部を備える構成も望ましい。特に、イオンガイドをイオン移動度分離装置又は分光計として用いる場合には、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部内の圧力又は有効圧力が、1つ以上の中間イオンガイド部の圧力又は有効圧力よりも低い構成が望ましい。たとえば、一実施例において、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部を、イオンガイド、マスフィルタ又は質量分析器等の他のイオン光学部品と効率的に結合できるように、比較的低圧に維持するようにしてもよい。たとえば、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部10-5mbarの圧力に維持する。一方、1つ以上の中間イオンガイド部をずっと高い圧力、たとえば、0.5〜5mbarの圧力に維持して、少なくとも1つ以上の中間イオンガイド部内で適切なイオン移動度分離が実行されるようにしてもよい。他の実施例において、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部を比較的高い圧力、たとえば、0.1〜1mbarに維持し、一方、1つ以上の中間イオンガイド部をもっと高い圧力、たとえば、1〜100mbarの範囲の圧力に維持するようにしてもよい。
【0123】
第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部に対して1つ以上の中間イオンガイド部をより高い圧力に維持することに加えて、より高圧の1つ以上の中間イオンガイド部に関して、イオンガイド内におけるイオンの径方向の閉じ込めに関与する1つ以上のパラメータを増大させる。たとえば、一実施例において、イオンガイド部内におけるイオンの径方向の高周波(RF)閉じ込めに関与する、1つ以上の中間イオンガイド部を形成する電極に印可される高周波(RF)電圧の振幅を、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部を形成する電極に印可される高周波(RF)電圧の振幅よりも高くするようにしてもよい。たとえば、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部に印可される高周波(RF)電圧の振幅が100〜200V0-peakである一方、1つ以上の中間イオンガイド部に印可される高周波(RF)電圧の振幅は200〜1000 V0-peakである。1つ以上の中間イオンガイド部に印可される高周波(RF)電圧の振幅を、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部に印可される高周波(RF)電圧の振幅のx2乗又はx3乗の次数としてもよい。さらに、1つ以上の中間イオンガイド部に印可される高周波(RF)電圧の周波数を、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部に印可される高周波(RF)電圧の周波数よりも低くするようにしてもよい。他の実施例において、1つ以上の中間イオンガイド部に形成される開口部の内径を、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部に形成される開口部の内径よりも小さくしてもよい。また別の実施例において、1つ以上の中間イオンガイド部を形成する電極の軸方向の間隔を、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部を形成する電極の軸方向の間隔と比べて小さくするようにしてもよい。
【0124】
さまざまな動作モードでイオンガイドを動作させることが可能である。一つの動作モードでは、他のイオンガイド部に対して径方向にイオンを移動させることなく、一つのイオンガイド部に沿ってイオンを通過させるようにしてもよい。この場合、イオンは、他のイオンガイド部を迂回する。別の動作モードでは、イオンを、第1のイオンガイド部に沿って通過させた後、径方向に移動させて、第2のイオンガイド部に入れるようにしてもよい。たとえば、(他のイオンガイド部に対して径方向にイオンを移動させることなく、一つのイオンガイド部に沿ってイオンを通過させる)イオンガイド動作モードと(イオンを径方向に移動させて別のイオンガイド部に入れて、さらに、蛇行型の経路に沿ってイオンガイド内を通過させる)イオン移動度動作モードとの間で、イオンガイドを切り替え可能な構成としてもよい。
【0125】
別の実施例において、複数の異なる出口からイオンが出射可能なようにイオンガイドを動作させるようにしてもよい。たとえば、比較的高いイオン移動度のイオンは、比較的多数のイオンガイド部間で移動させた後、イオンガイドから、たとえば、最後のイオンガイド部から出射させる。一方、比較的低いイオン移動度のイオンは、比較的少数のイオンガイド部間で移動させた後、イオンガイドから、たとえば、中間イオンガイド部から出射させる。この実施例では、イオンガイド又はイオン移動度分光器の異なる出口領域から別々のイオン断片を出射させて、イオンをイオン移動度に従って分画するようにしてもよい。
【0126】
本発明の一実施例によれば、動作モードにおいて、イオンガイド内を巡る閉ループの経路に従って、イオンがイオンガイド内を通過するようにしてもよい。それぞれのイオンガイド部を異なる直流静電位に維持し、直流進行波又は直流過渡電圧若しくは直流過渡電位を用いて、反対向きの直流電位に抗して、イオンを最後のイオンガイド部から最初のイオンガイド部に戻すようにしてもよい。あるいは、イオンガイドに入射したイオンが比較的小さな質量対電荷比又は比較的小さなイオン移動度範囲を有する場合、いかなる特定の瞬間においても、イオンガイド内部のイオンが、1つ又は2つのイオンガイド部に存在するように構成することも可能である。この実施例では、それぞれのイオンガイド部の電位を連続的にあるいは別の方法で変化させて、イオンガイド内をイオンが一周以上するようにしてもよい。この実施例は、ほとんど同じ質量対電荷比又はほとんど同じイオン移動度を有するイオンの高分解能イオン移動度分離に、特に適している。
【0127】
別の実施例において、中性ガス(たとえば、窒素又はアルゴン)を、第1のイオンガイド部すなわち入射側イオンガイド部及び/又は1つ以上の中間イオンガイド部及び/又は最後のイオンガイド部すなわち出射側イオンガイド部に流すようにしてもよい。一実施例において、イオンの移動方向と反対の方向に、すなわち、逆方向に、中性ガスを流すようにしてもよい。中性ガスを逆方向に流すことにより、イオンガイド部内の有効圧力を増大させて、その結果、イオン移動度の分解能を向上させる効果がある。
【0128】
以上、本発明をその好適な実施例を参照して詳述したが、本発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、当業者には自明のことであるが、特許請求の範囲に記載される本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の形態及び態様において実施することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンガイドであって、
使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第1の電極を備える第1のイオンガイド部と、
使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第2の電極を備える第2のイオンガイド部と、
前記第1のイオンガイド部を前記第2のイオンガイド部に接続する第1の移送部であって、使用時に、第1の移送部を介して、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させる第1の移送部と、
を備えるイオンガイド。
【請求項2】
請求項1に記載のイオンガイドであって、
前記第1の移送部が、前記第1のイオンガイド部内に配置されて第1の径方向の開口部又は切り欠きを有する1つ以上の電極と、前記第2のイオンガイド部内に配置されて第2の径方向の開口部又は切り欠きを有する1つ以上の電極と、を備える、
イオンガイド。
【請求項3】
請求項2に記載のイオンガイドであって、
前記第1の径方向の開口部又は切り欠きと前記第2の径方向の開口部又は切り欠きとが実質的に一直線上になるように、また、前記第1の径方向の開口部又は切り欠きが前記第2の径方向の開口部又は切り欠きに対向するように配置される、
イオンガイド。
【請求項4】
請求項1、2、及び3のいずれかに記載のイオンガイドであって、
さらに、前記第1の移送部を介して、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部にイオンを移動させる第1の装置を備える、
イオンガイド。
【請求項5】
請求項4に記載のイオンガイドであって、
前記第1の装置が、
(i)前記第1の移送部にわたって直流バイアス電位を維持することによって、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部にイオンを移動させるデバイス、及び/又は、
(ii)前記第1の移送部に配置される電極に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加することによって、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部にイオンを移動させるデバイス、を備える、
イオンガイド。
【請求項6】
前記いずれかの請求項に記載のイオンガイドであって、
使用時に、前記第1のイオンガイド部で第1の方向にイオンを透過させ、また、前記第2のイオンガイド部で第2の方向にイオンを透過させ、
(i)前記第1の方向が、前記第2の方向と実質的に同一である、又は、
(ii)前記第1の方向が、前記第2の方向と実質的に異なる若しくは実質的に反対である、
イオンガイド。
【請求項7】
前記いずれかの請求項に記載のイオンガイドであって、
さらに、前記複数の第1の電極の少なくとも一部に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加するように配置・構成される第1の過渡直流電圧手段であって、前記印加により、前記第1のイオンガイド部の長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンを移動、押出、駆動又は推進させる第1の過渡直流電圧手段を備える、
イオンガイド。
【請求項8】
前記いずれかの請求項に記載のイオンガイドであって、
さらに、前記複数の第2の電極の少なくとも一部に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加するように配置・構成される第2の過渡直流電圧手段であって、前記印加により、前記第2のイオンガイド部の長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンを移動、押出、駆動又は推進させる第2の過渡直流電圧手段を備える、
イオンガイド。
【請求項9】
前記いずれかの請求項に記載のイオンガイドであって、
さらに、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第3の電極を備える第3のイオンガイド部を備える、
イオンガイド。
【請求項10】
請求項9に記載のイオンガイドであって、
さらに、前記第2のイオンガイド部を前記第3のイオンガイド部に接続する第2の移送部であって、使用時に、第2の移送部を介して、前記第2のイオンガイド部から前記第3のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させる第2の移送部を備える、
イオンガイド。
【請求項11】
請求項10に記載のイオンガイドであって、
前記第2の移送部が、前記第2のイオンガイド部内に配置されて第3の径方向の開口部又は切り欠きを有する1つ以上の電極と、前記第3のイオンガイド部内に配置されて第4の径方向の開口部又は切り欠きを有する1つ以上の電極と、を備える、
イオンガイド。
【請求項12】
請求項11に記載のイオンガイドであって、
前記第3の径方向の開口部又は切り欠きと前記第4の径方向の開口部又は切り欠きとが実質的に一直線上になるように、また、前記第3の径方向の開口部又は切り欠きが前記第4の径方向の開口部又は切り欠きに対向するように配置される、
イオンガイド。
【請求項13】
請求項9ないし12のいずれかに記載のイオンガイドであって、
さらに、前記第2の移送部を介して、前記第2のイオンガイド部から前記第3のイオンガイド部にイオンを移動させる第2の装置を備える、
イオンガイド。
【請求項14】
請求項13に記載のイオンガイドであって、
前記第2の装置が、
(i)前記第2の移送部にわたって直流バイアス電位を維持することによって、前記第2のイオンガイド部から前記第3のイオンガイド部にイオンを移動させるデバイス、及び/又は、
(ii)前記第2の移送部に配置される電極に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加することによって、前記第2のイオンガイド部から前記第3のイオンガイド部にイオンを移動させるデバイス、を備える、
イオンガイド。
【請求項15】
請求項9ないし14のいずれかに記載のイオンガイドであって、
使用時に、前記第3のイオンガイド部で第3の方向にイオンを透過させ、
(i)前記第3の方向が、前記第1の方向及び/又は前記第2の方向と実質的に同一である、又は、
(ii)前記第3の方向が、前記第1の方向及び/又は前記第2の方向と実質的に異なる若しくは実質的に反対である、
イオンガイド。
【請求項16】
請求項9ないし15のいずれかに記載のイオンガイドであって、
さらに、前記複数の第3の電極の少なくとも一部に1つ以上の過渡直流電圧若しくは過渡直流電位又は1つ以上の過渡直流電圧波形若しくは過渡直流電位波形を印加するように配置・構成される第3の過渡直流電圧手段であって、前記印加により、前記第3のイオンガイド部の長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、少なくとも一部のイオンを移動、押出、駆動又は推進させる第3の過渡直流電圧手段を備える、
イオンガイド。
【請求項17】
前記いずれかの請求項に記載のイオンガイドであって、
前記イオンガイドが、入口領域、中央領域及び出口領域を備え、
使用時に、前記入口領域及び/又は前記中央領域及び/又は前記出口領域を、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>10-2mbar、(vi)>10-3mbar、(vii)>10-4mbar、(viii)>10-5mbar、(ix)>10-6mbar、(x)<100mbar、(xi)<10mbar、(xii)<1mbar、(xiii)<0.1mbar、(xiv)<10-2mbar、(xv)<10-3mbar、(xvi)<10-4mbar、(xvii)<10-5mbar、(xviii)<10-6mbar、(xix)10〜100mbar、(xx)1〜10mbar、(xxi)0.1〜1mbar、(xxii)10-2〜10-1mbar、(xxiii)10-3〜10-2mbar、(xxiv)10-4〜10-3mbar、及び(xxv)10-5〜10-4mbarからなる群から選択される圧力に維持する、
イオンガイド。
【請求項18】
前記いずれかの請求項に記載のイオンガイドであって、
第1の動作モードにおいて、イオンが、前記第1のイオンガイド部を通過して、前記第2のイオンガイド部内に入ることなく、前記第1のイオンガイド部から出るように構成され、
第2の動作モードにおいて、イオンが、前記第1のイオンガイド部を通過して、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部に対して径方向に移動するように構成される、
イオンガイド。
【請求項19】
前記いずれかの請求項に記載のイオンガイドであって、
(i)第1の動作モードにおいて、イオンが、前記イオンガイドから出射される前に、第1のイオン経路長を有する第1のイオン通路に沿って、前記イオンガイドを通って移動するように構成され、第2の動作モードにおいて、イオンが、前記イオンガイドから出射される前に、第2のイオン経路長を有する第2のイオン通路に沿って、前記イオンガイドを通って移動するように構成され、前記第1の経路長に対する前記第2の経路長の比が少なくとも、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5又は10である、及び/又は、
(ii)動作モードにおいて、前記イオンガイドが閉ループ又は閉回路を形成し、少なくとも一部のイオンが、前記イオンガイドを一周以上するように構成される、及び/又は、
(iii)動作モードにおいて、第1のイオン移動度又は質量対電荷比を有するイオンが、第1のイオン出口を介して前記イオンガイドから出射され、第2のイオン移動度又は質量対電荷比を有するイオンが、前記第1のイオン出口とは異なる第2のイオン出口を介して前記イオンガイドから出射されるように構成される、
イオンガイド。
【請求項20】
前記いずれかの請求項に記載のイオンガイドであって、
さらに、前記第1のイオンガイド部及び/又は前記第2のイオンガイド部及び/又は1つ以上の追加のイオンガイド部にガスを流す装置を備え、
前記第1のイオンガイド部及び/又は前記第2のイオンガイド部及び/又は1つ以上の追加のイオンガイド部をイオンが透過する方向と反対方向又は逆方向に前記ガスが流れるように構成される、
イオンガイド。
【請求項21】
イオンガイドであって、
第1の長手軸又は湾曲軸を有する第1のイオンガイド部であって、使用時にその内部にイオンを径方向に閉じ込める第1のイオンガイド部と、
第2の長手軸又は湾曲軸を有する第2のイオンガイド部であって、使用時にその内部にイオンを径方向に閉じ込める第2のイオンガイド部と、
前記第1のイオンガイド部の一部と前記第2のイオンガイド部の一部とを備える移送部であって、使用時に、前記第1の軸に対して測定される角度θであって60°より大きな角度θで、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部にイオンを移動させる移送部と、
を備えるイオンガイド。
【請求項22】
請求項21に記載のイオンガイドであって、
前記第1のイオンガイド部が、
(i)イオントンネル型イオンガイド若しくはイオンファネル型イオンガイド、
(ii)多極ロッドセット型イオンガイド、
(iii)軸方向にセグメント化された多極ロッドセット型イオンガイド、又は、
(iv)イオン移動面に配置される複数の平板電極、のいずれかを備える、
イオンガイド。
【請求項23】
請求項21及び22のいずれかに記載のイオンガイドであって、
前記第2のイオンガイド部が、
(i)イオントンネル型イオンガイド若しくはイオンファネル型イオンガイド、
(ii)多極ロッドセット型イオンガイド、
(iii)軸方向にセグメント化された多極ロッドセット型イオンガイド、又は、
(iv)イオン移動面に配置される複数の平板電極、のいずれかを備える、
イオンガイド。
【請求項24】
請求項21、22及び23のいずれかに記載のイオンガイドであって、
前記角度θが、(i)>65°、(ii)>70°、(iii)>75°、(iv)>80°、(v)>85°及び(vi)90°からなる群から選択される、
イオンガイド。
【請求項25】
イオン移動度分光計又は分離装置であって、
請求項1ないし24のいずれかに記載のイオンガイドを備える、
イオン移動度分光計又は分離装置。
【請求項26】
衝突セル、フラグメンテーションセル又は反応セルであって、
請求項1ないし24のいずれかに記載のイオンガイドを備える、
衝突セル、フラグメンテーションセル又は反応セル。
【請求項27】
質量分析計であって、
請求項1ないし24のいずれかに記載のイオンガイドを備える、
質量分析計。
【請求項28】
イオンガイド方法であって、
イオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第1の電極を備える第1のイオンガイド部と、イオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第2の電極を備える第2のイオンガイド部と、前記第1のイオンガイド部を前記第2のイオンガイド部に接続する第1の移送部と、を備えるイオンガイドを準備する工程と、
前記第1の移送部を介して、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させる工程と、
を備えるイオンガイド方法。
【請求項29】
イオンガイド方法であって、
第1の長手軸又は湾曲軸を有し、その内部にイオンを径方向に閉じ込める第1のイオンガイド部と、第2の長手軸又は湾曲軸を有し、その内部にイオンを径方向に閉じ込める第2のイオンガイド部と、を準備する工程と、
前記第1の軸に対して測定される角度θであって60°より大きな角度θで、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部にイオンを移動させる工程と、
を備えるイオンガイド方法。
【請求項30】
質量分析計の制御システムで実行可能なコンピュータプログラムであって、
前記質量分析計は、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第1の電極を備える第1のイオンガイド部と、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第2の電極を備える第2のイオンガイド部と、前記第1のイオンガイド部を前記第2のイオンガイド部に接続する第1の移送部とを備え、
前記制御システムに、
(i)前記第1の移送部を介して、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させるように構成される
コンピュータプログラム。
【請求項31】
コンピュータにより実行可能な命令が記憶されるコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
前記命令は質量分析計の制御システムにより実行可能に構成され、
前記質量分析計は、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第1の電極を備える第1のイオンガイド部と、使用時にイオンを透過させる少なくとも1つの開口部を有する複数の第2の電極を備える第2のイオンガイド部と、前記第1のイオンガイド部を前記第2のイオンガイド部に接続する第1の移送部とを備え、
前記制御システムに、
(i)前記第1の移送部を介して、前記第1のイオンガイド部から前記第2のイオンガイド部に対して径方向にイオンを透過させる、ように構成される、
コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項32】
請求項31に記載のコンピュータ読み取り可能な媒体であって、
(i)ROM、(ii)EAROM、(iii)EPROM、(iv)EEPROM、(v)フラッシュメモリ、(vi)光ディスク、(vii)RAM及び(viii)ハードディスクドライブからなる群から選択される、
コンピュータ読み取り可能な媒体。
【請求項33】
イオン移動度に従ってイオンを分離する方法であって、
組み合わせて折り返し型又は蛇行型イオンガイド経路を形成する複数のイオンガイド部を準備する工程であって、前記イオンガイド経路に沿ってイオンを透過させる際にイオンの移動方向を1回以上反転させる工程と、
1つのイオンガイド部から隣接するイオンガイド部にイオンを通す際に、径方向にイオンを通過させる工程と、
を備える方法。
【請求項34】
請求項33に記載の方法であって、
前記複数のイオンガイド部内でイオンを径方向に閉じ込める、
方法。
【請求項35】
請求項33又は34に記載の方法であって、
前記径方向にイオンを通過させる工程が、2つのイオンガイド部間の相互接続部に配置される1つ以上の電極に形成される1つ以上の径方向の開口部にイオンを通す工程を備える、
方法。
【請求項36】
イオン移動度分離装置であって、
組み合わせて折り返し型又は蛇行型イオンガイド経路を形成する複数のイオンガイド部であって、使用時に、前記イオンガイド経路に沿ってイオンを透過させる際にイオンの移動方向を1回以上反転させるように構成される複数のイオンガイド部と、
1つのイオンガイド部から隣接するイオンガイド部にイオンを通す際に、径方向にイオンを通過させる装置と、
を備えるイオン移動度分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2012−503286(P2012−503286A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527396(P2011−527396)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002232
【国際公開番号】WO2010/032015
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(509314666)マイクロマス・ユーケイ・リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】MICROMASS UK LIMITED
【Fターム(参考)】