イオンセンシング装置およびイオン発生器
【課題】イオン濃度の測定の正確性を向上させることを可能とするイオンセンシング装置、およびこのイオンセンシング装置を備えたイオン発生器を実現する。
【解決手段】出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧を、数式(1)を満足する電圧レベルVcとするコモンモードフィードバック回路132を備えている。
VL<Vc<VH ・・・(1)
(但し、VL:第1センサが出力可能な最小の電圧レベル、VH:第1センサが出力可能な最大の電圧レベル、Vc:上記一定の電圧レベル)
【解決手段】出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧を、数式(1)を満足する電圧レベルVcとするコモンモードフィードバック回路132を備えている。
VL<Vc<VH ・・・(1)
(但し、VL:第1センサが出力可能な最小の電圧レベル、VH:第1センサが出力可能な最大の電圧レベル、Vc:上記一定の電圧レベル)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン濃度を測定するためのイオンセンシング装置、およびこのイオンセンシング装置を備えたイオン発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来技術に係るイオンセンシング回路の構成の一例を示す回路図である。
【0003】
図8に示すイオンセンシング回路80は、電極81、ESD(Electro-Static Discharge:静電放電)保護用ダイオード82および83、ならびに積分回路84を備えている。積分回路84は、オペアンプ85、電圧源86、コンデンサ87、およびスイッチ88を備えている。
【0004】
電極81は、空気中のイオンを捕集する。電極81は、捕集したイオンの濃度に応じたイオン電流を出力する。
【0005】
上記イオン電流は、積分回路84に流れる。積分回路84は、該イオン電流を、電圧へと変換すると共に積分して出力する。積分回路84の出力電圧を測定することで、イオン濃度を測定することが可能である。
【0006】
なお、ESD保護用ダイオード82および83は、イオンセンシング回路80におけるESD対策のために設けられている。
【0007】
ところで、上記イオン電流は、微小な電流である。一方、上記イオンセンシング回路を集積化したIC(Integrated Circuit:集積回路)パッケージ内では、リーク電流が発生し得るが、該リーク電流は、該イオン電流にとって無視できない程度に大きな値となる。そして、該イオン電流に該リーク電流が合成されると、これらの電流を区別することが困難となる。結果、上記イオンセンシング回路では、該イオン電流によってイオン濃度を正確に測定することが困難となる虞がある。
【0008】
一般的なICパッケージの場合、プリント基板で発生するリーク電流の影響は、低減することができる。一方、この場合、該集積回路に設けられた回路で発生するリーク電流の影響への対策が主に必要となる。集積回路に設けられた回路とは例えば、ESD保護用ダイオード、およびトランジスタのジャンクションダイオードである。
【0009】
図9は、従来技術に係るイオンセンシング回路の構成の、別の例を示す回路図である。具体的に、図9は、上記の対策のために、イオン電流を発生しないレプリカ回路をさらに設けた、イオンセンシング回路の構成の一例を示す回路図である。
【0010】
図9に示すイオンセンシング回路90は、イオン電流積分回路91、レプリカ回路92、および引算器93を備えている。
【0011】
イオン電流積分回路91は、捕集極板911、および積分回路912を備えている。積分回路912は、オペアンプ913、コンデンサ914、およびスイッチ915を備えている。イオン電流積分回路91の概略構成および動作メカニズムは、イオンセンシング回路80(図8参照)の概略構成および動作メカニズムと同じである。
【0012】
捕集極板911は、空気中のイオンを捕集する。捕集極板911は、捕集したイオンの濃度に応じたイオン電流を出力する。
【0013】
レプリカ回路92は、端部921、および積分回路922を備えている。積分回路922は、オペアンプ923、コンデンサ924、およびスイッチ925を備えている。レプリカ回路92の概略構成および動作メカニズムは、イオンセンシング回路80(図8参照)およびイオン電流積分回路91の概略構成および動作メカニズムと同じである。
【0014】
但し、レプリカ回路92は、端部921においてイオンが捕集されないため、端部921からイオン電流が出力されない。
【0015】
引算器93は、オペアンプ931、および抵抗932〜935を備えている。引算器93は、イオン電流積分回路91の積分回路912の出力電圧VOMと、レプリカ回路92の積分回路922の出力電圧VOPとの差を増幅し、出力電圧VOUTとして出力する。
【0016】
図10は、図9に示すイオンセンシング回路90における、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPの、経過時間(横軸)に対するレベル(縦軸)変化を示すグラフである。
【0017】
図10によれば、イオン電流およびリーク電流の合成電流から得られる出力電圧VOMと、リーク電流から得られる出力電圧VOPとの差をとることで、リーク電流から得られる電圧の成分をキャンセルすることができる。これにより、イオン電流に対するリーク電流の影響を低減し、イオン電流によるイオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能となる。
【0018】
レプリカ回路を設けたイオンセンシング回路としては、リーク電流については触れられていないが、例えば特許文献1に開示されているイオン濃度測定回路が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2010−78392号公報(2010年4月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図9に示すイオンセンシング回路90、および特許文献1に開示されているイオン濃度測定回路では、イオン濃度の測定が不正確になる虞があるという問題が発生する。この問題が発生する要因としては、以下の2つが考えられる。
【0021】
まず、1つ目の要因について説明する。
【0022】
積分回路912による積分の結果、積分回路912に上記リーク電流が流れる時間が長くなるほどに、出力電圧VOMのレベルが大きくなる。
【0023】
積分回路912に上記リーク電流が流れ続けると、やがて出力電圧VOMは、積分回路912が出力可能な最大の電圧レベルに達するまで大きくなる。その後の時間において、積分回路912に上記リーク電流が流れても、出力電圧VOMのレベルは大きくならない。この結果、出力電圧VOMは、上記イオン電流およびリーク電流の合成電流に正確に対応しないものとなる。
【0024】
従って、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの差が、正確なイオン濃度を示さず、イオン濃度の測定が不正確になる。
【0025】
続いて、2つ目の要因について説明する。
【0026】
出力電圧VOMが上記最大の電圧レベルを超える程度に、積分回路912に流れる上記リーク電流の値が大きくなっても、出力電圧VOMのレベルは、該最大の電圧レベルよりは大きくならない。この結果、出力電圧VOMは、上記イオン電流およびリーク電流の合成電流に正確に対応しないものとなる。
【0027】
従って、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの差が、正確なイオン濃度を示さず、イオン濃度の測定が不正確になる。
【0028】
なお、1つ目の要因による問題は、イオン電流を電圧へと変換する回路として、積分回路を用いる構成において発生する。一方、2つ目の要因による問題は、特許文献1に開示されているイオン濃度測定回路のように、イオン電流を電圧へと変換する回路として、積分回路以外のオペアンプ回路を用いる構成であっても発生する。
【0029】
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的は、イオン濃度の測定の正確性を向上させることを可能とするイオンセンシング装置、およびこのイオンセンシング装置を備えたイオン発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明のイオンセンシング装置は、上記の問題を解決するために、イオンの濃度を示す電流であるイオン電流を、電圧に変換する第1センサと、電流を電圧に変換するものであり、上記イオン電流が流れない第2センサとが集積されて成る集積回路を備えており、上記第1センサの出力電圧と上記第2センサの出力電圧との電位差から、上記イオンの濃度を測定するように構成されたイオンセンシング装置であって、上記集積回路は、上記第1センサの出力電圧および上記第2センサの出力電圧のコモンモード電圧を、一定の電圧レベルとするように、上記第1センサおよび上記第2センサを制御するコモンモードフィードバック回路を備えており、上記一定の電圧レベルは、下記数式(1)を満足していることを特徴としている。
【0031】
VL<Vc<VH ・・・(1)
(但し、VL:第1センサが出力可能な最小の電圧レベル、VH:第1センサが出力可能な最大の電圧レベル、Vc:上記一定の電圧レベル)
上記の構成によれば、コモンモードフィードバック回路は、第1センサの出力電圧および第2センサの出力電圧のコモンモード電圧を、一定の電圧レベルとするように、第1センサおよび第2センサを制御する。
【0032】
これにより、上記コモンモード電圧のレベルが大きくなることを抑制することが可能となる。また、これにより、該コモンモード電圧の、時間経過に応じたレベルの上昇を抑制することが可能となる。
【0033】
また、上記制御後における上記コモンモード電圧のレベル(すなわち、一定の電圧レベル)は、上記数式(1)を満足するレベルであり、第1センサが出力可能な電圧レベルの範囲内である。
【0034】
この結果、第1センサの出力電圧が、第1センサが出力可能な最大の電圧レベルに達する程度に大きくなる虞を低減することが可能となる。第2センサの出力電圧についても同様である。
【0035】
よって、第1センサの出力電圧は、イオン電流およびリーク電流の合成電流に正確に対応するものとなる。また、第2センサの出力電圧は、リーク電流に正確に対応するものとなる。従って、第1センサの出力電圧と第2センサの出力電圧との電位差が、正確なイオン濃度を示し、イオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能となる。
【0036】
また、本発明のイオンセンシング装置の、上記第2センサは、上記イオン電流を発生する電極に接続されていないのが好ましい。
【0037】
上記の構成によれば、より確実に、第2センサにイオン電流が流れない構成を実現することができる。また、上記の構成によれば、電極あるいは電極への配線を介したリーク電流の増加を回避することができる。
【0038】
また、本発明のイオンセンシング装置の、上記集積回路は、上記第2センサに上記電流を入力するための第2センサ用パッドを備えており、上記第2センサ用パッドは、上記集積回路を搭載すべき集積回路用基板に設けられた端子に接続されないのが好ましい。
【0039】
上記の構成によれば、第2センサ用パッドを、集積回路用基板に設けられた端子に接続しないことにより、これらの電気的接続を無くしている。これにより、集積回路を集積回路用基板に搭載して成るパッケージをプリント基板に実装する場合に、プリント基板上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0040】
また、本発明のイオンセンシング装置は、上記集積回路が搭載されている集積回路用基板を備えており、上記第1センサは、上記イオン電流を、電圧に変換すると共に積分する積分回路であり、上記集積回路は、上記第1センサに上記イオン電流を入力するための第1センサ用パッドを備えており、上記集積回路用基板は、上記第1センサ用パッドに接続されている第1センサ用入力端子と、該第1センサ用入力端子に隣接する隣接端子とを備えており、上記隣接端子の電位は、上記一定の電圧レベルと等しいのが好ましい。
【0041】
上記の構成によれば、集積回路を集積回路用基板に搭載して成るパッケージをプリント基板に実装する場合に、第1センサのリセット直後において、プリント基板における第1センサ用入力端子の実装部分と、プリント基板における隣接端子の実装部分との電位差を、非常に小さくすることができる。このため、該プリント基板に形成された絶縁抵抗の抵抗値が低下しても、絶縁抵抗を介して発生するリーク電流の値を小さくすることが可能となる。
【0042】
また、本発明のイオンセンシング装置は、上記イオン電流を発生する電極と、上記集積回路が搭載されている集積回路用基板と、上記集積回路用基板が実装されているプリント基板とを備えており、上記電極は、上記第1センサと接続されており、上記集積回路の外部に設けられており、上記プリント基板から浮かせた状態で設けられているのが好ましい。
【0043】
また、本発明のイオンセンシング装置は、上記集積回路が搭載されている集積回路用基板と、上記集積回路用基板が実装されているプリント基板とを備えており、上記第1センサは、上記イオン電流を、電圧に変換すると共に積分する積分回路であり、上記プリント基板は、上記第1センサと接続されており、上記プリント基板と上記第1センサとの接続部分を囲むように設けられたメタル配線を備えており、上記メタル配線の電位は、上記一定の電圧レベルと等しいのが好ましい。
【0044】
上記の構成によれば、電極とプリント基板とを効果的に絶縁することが可能となる。従って、プリント基板上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0045】
また、本発明のイオン発生器は、本発明のイオンセンシング装置を備えていることを特徴としている。
【0046】
上記の構成によれば、イオン発生器において、本発明のイオンセンシング装置と同じ効果を奏する。
【発明の効果】
【0047】
以上のとおり、本発明のイオンセンシング装置は、イオンの濃度を示す電流であるイオン電流を、電圧に変換する第1センサと、電流を電圧に変換するものであり、上記イオン電流が流れない第2センサとが集積されて成る集積回路を備えており、上記第1センサの出力電圧と上記第2センサの出力電圧との電位差から、上記イオンの濃度を測定するように構成されたイオンセンシング装置であって、上記集積回路は、上記第1センサの出力電圧および上記第2センサの出力電圧のコモンモード電圧を、一定の電圧レベルとするように、上記第1センサおよび上記第2センサを制御するコモンモードフィードバック回路を備えており、上記一定の電圧レベルは、数式(1)を満足している。
【0048】
また、本発明のイオン発生器は、本発明のイオンセンシング装置を備えている。
【0049】
従って、イオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態に係るイオンセンシング装置の構成を示す回路図である。
【図2】第1センサの出力電圧、および第2センサの出力電圧の、コモンモード電圧および差動信号の、経過時間に対するレベル変化を示すグラフである。
【図3】差動積分器を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す模式図である。
【図4】図4(a)および(b)は、差動積分器を集積した集積回路のチップを、パッケージ化する様子を示す模式図である。
【図5】差動積分器を集積した集積回路のチップを、パッケージ化する様子を示す別の模式図である。
【図6】差動積分器を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す断面図である。
【図7】差動積分器を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す別の断面図である。
【図8】従来技術に係るイオンセンシング回路の構成の一例を示す回路図である。
【図9】従来技術に係るイオンセンシング回路の構成の、別の例を示す回路図である。
【図10】図9に示すイオンセンシング回路における、イオン電流積分回路の積分回路の出力電圧、およびレプリカ回路の積分回路の出力電圧の、経過時間に対するレベル変化を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態に係るイオン発生器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
〔発明の背景〕
図2は、図10に示された出力電圧VOMおよび出力電圧VOPの、コモンモード電圧(平均値、中間値)および差動信号の、経過時間(横軸)に対するレベル(縦軸)変化を示すグラフである。
【0052】
図2に示す出力電圧VOMおよび出力電圧VOPの差動信号(差動出力)は、捕集極板911(図9参照)が捕集したイオンによるイオン電流の積分値を表すものである。該イオン電流は微小な値であるため、該差動信号のレベルも比較的小さい。
【0053】
一方このとき、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧(コモンモード出力)は、上記差動信号より大きいレベルを示す。また、該コモンモード電圧は、時間経過に応じたレベルの上昇度合も、該差動信号より大きくなる。
【0054】
出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧が大きくなると、出力電圧VOMが(場合によっては、出力電圧VOPも)飽和して、上記差動信号が正確な値を示さなくなる虞がある。ここで「出力電圧が飽和する」とは、該出力電圧が、出力元の回路が出力可能な最大の電圧レベルに達した状態のことを意味している。
【0055】
出力電圧VOMまたは出力電圧VOPが飽和するという問題を解決するために、図1に示すような、コモンモードを抑制するためのコモンモードフィードバック回路を備えた差動積分器を使うことができる。該コモンモードフィードバック回路によりコモンモード電圧が一定の電圧に制御されるため、リーク電流が大きくても該飽和を抑制することができる。
【0056】
これにより、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPの差動信号は、イオン電流に比例した電圧となり、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの差が、正確なイオン濃度を示すことになる。
【0057】
従って、イオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能であるという効果を奏する。
【0058】
〔実施の形態1〕
図1は、本実施の形態に係るイオンセンシング装置の構成を示す回路図である。
【0059】
図1に示すイオンセンシング回路(イオンセンシング装置)10は、捕集極板11、端部12、差動積分器13、および引算器14を備えている。
【0060】
差動積分器13は、集積回路(詳細は後述する)上に形成されており、フル差動増幅器131、コモンモードフィードバック回路132、コンデンサ133および134、スイッチ135および136、ならびに抵抗137および138を備えている。
【0061】
引算器14は、オペアンプ141、および抵抗142〜145を備えている。
【0062】
捕集極板11は、フル差動増幅器131の正入力端子、コンデンサ133の一端、およびスイッチ135の一端に接続されている。
【0063】
端部12は、フル差動増幅器131の負入力端子、コンデンサ134の一端、およびスイッチ136の一端に接続されている。
【0064】
フル差動増幅器131の正出力端子は、コンデンサ134の他端、スイッチ136の他端、抵抗138の一端、および抵抗144の一端に接続されている。
【0065】
フル差動増幅器131の負出力端子は、コンデンサ133の他端、スイッチ135の他端、抵抗137の一端、および抵抗142の一端に接続されている。
【0066】
抵抗137の他端は、抵抗138の他端に接続されている。
【0067】
コモンモードフィードバック回路132の一方の入力端(すなわち、フル差動増幅器131のコモンモード端子)は、抵抗137と抵抗138との間に接続されている。
【0068】
コモンモードフィードバック回路132の他方の入力端は、電圧源(図示しない)に接続されており、該電圧源から電圧Vcが印加される。
【0069】
抵抗142の他端は、抵抗143の一端、およびオペアンプ141の非反転入力端に接続されている。抵抗143には、他端の側から電圧VRが印加されている。
【0070】
抵抗144の他端は、抵抗145の一端、およびオペアンプ141の反転入力端に接続されている。抵抗145の他端は、オペアンプ141の出力端に接続されている。
【0071】
なお、捕集極板11と差動積分器13との間に、上記集積回路上に設けられたESD保護用ダイオードが接続される。また、端部12と差動積分器13との間にも、上記集積回路上に設けられたESD保護用ダイオードが接続される。図1では、これらのESD保護用ダイオードを図示していない。そのかわりに、捕集極板11側のESD保護用ダイオードで発生するリーク電流をIESD(−)とし、端部12側のESD保護用ダイオードで発生するリーク電流をIESD(+)としている。また、スイッチ135で発生するリーク電流をISW(−)とし、スイッチ136で発生するリーク電流をISW(+)としている。
【0072】
捕集極板(電極)11は、空気中のイオンを捕集する。捕集極板11は、捕集したイオンの濃度に応じた(イオンの濃度を示す)イオン電流を出力する。すなわち、捕集極板11は、電極81(図8参照)および捕集極板911(図9参照)と同様の構成である。
【0073】
端部12は、電極が接続されていないため、上記イオンを捕集しない。従って、端部12は、イオン電流を出力しない。すなわち、端部12は、端部921(図9参照)と同様の構成である。
【0074】
上記イオン電流とリーク電流IESD(−)との合成電流、およびリーク電流IESD(+)はそれぞれ、差動積分器13に入力される。
【0075】
フル差動増幅器131(のうち上記合成電流を処理する各回路)、コンデンサ133、およびスイッチ135は、積分回路912(図9参照)と同様の構成を有する回路である。つまり、該回路は、一般的な積分回路を構成しており、上記合成電流およびリーク電流ISW(−)を電圧へと変換すると共に積分し、出力電圧VOM(第1センサの出力電圧)を出力する。該回路は、本発明に係る「第1センサ」である。
【0076】
なお、スイッチ135は、コンデンサ133を放電させることで、コンデンサ133を用いて構成された上記積分回路をリセットさせるものである。すなわち、スイッチ135が導通する(閉じる)と、コンデンサ133の両端から電荷が放出される。放出された電荷は、互いに異なる極性のもの同士が相殺されることで消滅する。以上の動作により、スイッチ135は、コンデンサ133を放電させ、コンデンサ133の放電を以って、該積分回路のリセットを実現する。
【0077】
フル差動増幅器131(のうちリーク電流IESD(+)を処理する各回路)、コンデンサ134、およびスイッチ136は、積分回路922(図9参照)と同様の構成を有する回路である。つまり、該回路は、一般的な積分回路を構成しており、リーク電流IESD(+)およびリーク電流ISW(+)を電圧へと変換すると共に積分し、出力電圧VOP(第2センサの出力電圧)を出力する。なお、端部12が上記イオン電流を出力しないので、該回路には、上記イオン電流が流れない。該回路は、本発明に係る「第2センサ」である。
【0078】
なお、スイッチ136は、コンデンサ134を放電させることで、コンデンサ134を用いて構成された上記積分回路をリセットさせるものである。すなわち、スイッチ136は、スイッチ135がコンデンサ133を放電させるのと同様の要領で、コンデンサ134を放電させる。コンデンサ134の放電を以って、該積分回路のリセットを実現する。
【0079】
引算器14は、引算器93(図9参照)と同様の構成を有する回路である。引算器14は、上記出力電圧VOMと、上記出力電圧VOPとの差(電位差)を増幅し、出力電圧VOUTとして出力する。
【0080】
ここで、抵抗143に印加されている電圧VRは、出力電圧VOUTの基準となるレベルである。具体的に、出力電圧VOUTは、出力電圧VOM、出力電圧VOP、および電圧VRから、
VOUT=(VOM−VOP)+VR
により求められる。
【0081】
イオンセンシング回路10は、出力電圧VOUTを測定することで、イオン濃度を測定することが可能なものである。
【0082】
イオン電流およびリーク電流の合成電流から得られる出力電圧VOMと、リーク電流から得られる出力電圧VOPとの差をとることで、リーク電流から得られる電圧の成分をキャンセルすることができる。これにより、イオン電流に対するリーク電流の影響を低減し、イオン電流によるイオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能となる。この点に関しては、図9に示すイオンセンシング回路90と同じ効果を得ることができる。
【0083】
すなわち、イオンセンシング回路10は、イオン電流を発生しないレプリカ回路をさらに設けた、イオンセンシング回路であると言える。
【0084】
抵抗137および138の直列回路は、コモンモード電圧を検出するための回路として一般的に用いられる、抵抗分圧器である。該直列回路は、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧を検出する。
【0085】
具体的に、抵抗137の抵抗値がR1であり、抵抗138の抵抗値がR2である場合、抵抗137と抵抗138との間から出力される電圧VCMは、
VCM=(R1×VOP+R2×VOM)/(R1+R2)
で表される。特に、R1=R2であれば、電圧VCMは、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの平均レベル(平均値、中間値)で表される。
【0086】
そして、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧は、電圧VCMに相当する。
【0087】
出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧としての電圧VCMは、コモンモードフィードバック回路132に入力される。
【0088】
コモンモードフィードバック回路132は、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧のレベルが、一定の電圧レベルとなるように、上記第1センサおよび上記第2センサの構成要素であるフル差動増幅器131を制御するものである。
【0089】
コモンモードフィードバック回路132は、例えばオペアンプで構成されている。コモンモードフィードバック回路132は、一方の入力端に電圧VCMが入力され、他方の入力端に電圧Vcが入力される。
【0090】
コモンモードフィードバック回路132は、電圧Vcを基準電圧として、電圧VCMのレベルを電圧Vcのレベルと比較する。そして、コモンモードフィードバック回路132は、該比較の結果に基づいて、フル差動増幅器131のフィードバック制御を行う。
【0091】
具体例として、電圧VCMのレベルが電圧Vcのレベルより大きい場合、コモンモードフィードバック回路132は、フル差動増幅器131のバイアス回路(図示しない)のバイアス電流を増加させる。これにより、該バイアス電流の増加に伴い発生する電圧降下により、フル差動増幅器131から出力される信号電圧のレベルを低下させる。すなわち、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのレベルを低下させる。出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのレベルを低下させることは、電圧VCMのレベルを低下させることに等しいのは言うまでも無い。
【0092】
また、電圧VCMのレベルが電圧Vcのレベルより小さい場合、コモンモードフィードバック回路132は、上記バイアス電流を低減させる。これにより、コモンモードフィードバック回路132は、電圧VCMのレベルが電圧Vcのレベルより大きい場合と反対の要領で、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのレベルを上昇させ、電圧VCMのレベルを上昇させる。
【0093】
以上の動作により、コモンモードフィードバック回路132は、電圧VCMのレベルと電圧Vcのレベルとの比較結果に基づいて、電圧VCMが一定の電圧Vcとなるように、フル差動増幅器131のフィードバック制御を行う。これにより、電圧VCM、すなわち出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧のレベルは、一定の電圧とされる。
【0094】
なお、ここで、電圧Vcのレベルは、下記数式(1)を満足している。
【0095】
VL<Vc<VH ・・・(1)
上記数式(1)を満足する電圧Vcは、−0.5<λ<0.5である数値λを用いて、下記数式(2)で表すことができる。
【0096】
Vc=(VH+VL)/2+λ(VH−VL) ・・・(2)
但し、VLは、第1センサが出力可能な最小の電圧レベルであり、VHは、第1センサが出力可能な最大の電圧レベルである。すなわち、VLは、出力電圧VOMとしてとり得る電圧レベルの最小値であり、VHは、出力電圧VOMとしてとり得る電圧レベルの最大値であると言える。このことから、電圧Vcが、第1センサが出力可能な電圧レベル(出力電圧VOMとしてとり得る電圧レベル)の範囲内であることは明らかである。
【0097】
電圧Vcのレベルが、上記数式(2)で表されているとき、差動積分器13の差動出力電圧VOP−VOMの出力可能な電圧範囲は、
|VOP−VOM|≦(1−2|λ|)(VH−VL)
に制限される。この範囲が大きいほうがイオン電流の検知可能範囲が広がるため、λは0に近いことが望ましい。λ=0である、すなわち電圧Vcのレベルが(VH+VL)/2であることがより好ましい。
【0098】
出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧のレベルを、一定の電圧レベルとなるように制御することにより、該コモンモード電圧のレベルが大きくなることを抑制することが可能となる。また、これにより、該コモンモード電圧の、時間経過に応じたレベルの上昇を抑制することが可能となる。
【0099】
この結果、出力電圧VOMまたは出力電圧VOPの飽和を抑制することが可能となる。すなわち、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPは、出力元の回路(差動積分器13の対応する積分回路)が出力可能な最大の電圧レベルに達するまで大きくならない。
【0100】
この結果、出力電圧VOMは、上記イオン電流およびリーク電流の合成電流に正確に対応するものとなる。また、出力電圧VOPは、上記リーク電流に正確に対応するものとなる。
【0101】
従って、引算器14の出力電圧VOUTが示す、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの差が、正確なイオン濃度を示し、イオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能となる。
【0102】
なお、本実施の形態は、以下のように解釈することもできる。
【0103】
すなわち、捕集極板11に集まったイオンによるイオン電流が、集積回路(図示しない)上に形成された差動積分器13により積分される。
【0104】
上記集積回路のESD保護用ダイオード(図示しない)のリーク電流IESD(−)およびIESD(+)は、差動積分器13の正負両側に等しく流れる。また、スイッチ135および136を形成する各トランジスタ(図示しない)のリーク電流ISW(−)およびISW(+)は、差動積分器13の正負両側に等しく流れる。このため、これらのリーク電流は、差動積分器13によりキャンセルされる。
【0105】
差動積分器13の出力には、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧(=(VOP+VOM)/2)を一定電圧Vcに制御するための、コモンモードフィードバック回路132が設けられている。
【0106】
このため、上記の各リーク電流の値が大きくても、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPが飽和せず、捕集極板11からのイオン電流の値を適切に反映した(比例する)電圧レベルである差動信号が得られる。該差動信号は、引算器14により必要に応じてシングルエンドの信号に変換することもできる。
【0107】
なお、差動積分器13のかわりに、積分動作を行わない差動増幅回路を用いて、本発明に係る「第1センサ」および「第2センサ」を構成してもよい。
【0108】
〔実施の形態2〕
(プリント基板上でのリーク電流の課題)
図3は、差動積分器13を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す模式図である。
【0109】
ICパッケージ30は、差動積分器13(図1参照)を集積化した集積回路のパッケージである。
【0110】
また、ICパッケージ30は、入力端子31a〜31dを有している。入力端子31a〜31dは、プリント基板32に実装されている。
【0111】
プリント基板32は、入力端子31aの実装部分に電源電圧面(電源ライン)33が形成されている。また、プリント基板32は、入力端子31cの実装部分に捕集極板11が形成されている。また、プリント基板32は、入力端子31dの実装部分に接地面(グランド)34が形成されている。電源電圧面33は電源電位であり、接地面34は、接地されているのでグランド電位である。
【0112】
また、入力端子31bは、端部12と差動積分器13との間(接続点IP(図1参照)と称する)に対応する。また、入力端子31cは、捕集極板11と差動積分器13との接続点IM(図1参照)に対応する。便宜上、図3では、差動積分器13のうち、入力端子31bおよび入力端子31cとそれぞれ接続されている、フル差動増幅器131の負入力端子および正入力端子以外の部分について、図示を簡略化した。
【0113】
プリント基板32に形成された絶縁抵抗35を介して、入力端子31bが、電源電位である電源電圧面33と電気的に結合される。また、プリント基板32に形成された絶縁抵抗36を介して、入力端子31cが、グランド電位である接地面34と電気的に結合される。これにより、プリント基板32においてリーク電流が発生し、入力端子31bおよび入力端子31cから差動積分器13に流れる。
【0114】
絶縁抵抗35および絶縁抵抗36は、湿度の上昇、またはプリント基板32の汚れにより、抵抗値が低下する。この抵抗値の低下により、上記リーク電流が増大し、この結果、イオンセンシング回路10(図1参照)における、イオン電流の正確な計測に支障をきたす虞がある。
【0115】
(プリント基板上でのリーク電流への対策)
図4(a)および(b)は、イオンセンシング回路10の具体的な構成例であり、差動積分器13を集積した集積回路のチップを、パッケージ化する(イオンセンシング回路の)様子を示す模式図である。
【0116】
図4(a)に示す集積回路40Aは、差動積分器13(図1参照)を集積した集積回路のチップである。
【0117】
また、集積回路40Aは、パッド41a〜41dを有している。このうち、パッド(第2センサ用パッド)41bは、接続点IPに対応し、パッド41cは、接続点IMに対応する(図1参照)。
【0118】
そして、パッド41aは、入力端子42aと接続されている。また、パッド41cは、入力端子42cと接続されている。また、パッド41dは、入力端子42dと接続されている。これらの接続は、例えばボンディングワイヤ43を用いたワイヤボンディングにより行う。
【0119】
一方、パッド41bは、入力端子42a〜42dのいずれとも接続されていない。
【0120】
なお、入力端子42a〜42dは、集積回路40Aを搭載する集積回路用基板(図示の便宜上、その外形を、点線44で示した)の入力端子である。
【0121】
図示していないが、入力端子42a〜42dはいずれも、プリント基板32に実装される。特に、入力端子42cは、プリント基板32に形成された捕集極板11に接続される(図3参照)。
【0122】
図4(a)に示す例では、入力端子42a〜42dと、集積回路40A上の端子とを電気的に結合するために、上記ワイヤボンディングを行っている。
【0123】
ここで、差動積分器13に接続される集積回路40A上の端子であって、捕集極板11が接続されないパッド41bは、上記ワイヤボンディングを行わないのが好ましい。
【0124】
これにより、パッド41bと入力端子42a〜42dとの電気的結合を無くしている。従って、集積回路40Aを搭載したICパッケージが実装されるプリント基板32上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0125】
また、図4(b)に示す集積回路40Bは、図4(a)に示す集積回路40Aの構成に加え、パッド41eが追加されている。
【0126】
そして、入力端子42bに、パッド41cが接続されている。これに伴い、パッド41dは、入力端子42cと接続されており、パッド41eは、入力端子42dと接続されている。捕集極板11(図3参照)に接続されるのは、図4(a)に示す例では入力端子42cであったが、図4(b)に示す例では入力端子42bである。
【0127】
図4(a)に示す例では、入力端子42bにパッドを接続していなかったが、図4(b)に示す例のように、入力端子42bにパッド41b以外のパッドを接続してもよい。
【0128】
〔実施の形態3〕
図5は、イオンセンシング回路10の具体的な構成例であり、差動積分器13を集積した集積回路のチップを、パッケージ化する(イオンセンシング回路の)様子を示す別の模式図である。
【0129】
図5に示す集積回路50は、差動積分器13(図1参照)を集積した集積回路のチップである。
【0130】
また、集積回路50は、パッド51a〜51dを有している。このうち、パッド(第1センサ用パッド)51cは、接続点IMに対応する(図1参照)。また、パッド51bおよびパッド51dの、集積回路50内の回路に対する接続先については後述する。
【0131】
パッド51aは、入力端子52aと接続されている。また、パッド51bは、入力端子(隣接端子)52bと接続されている。また、パッド51cは、入力端子(第1センサ用入力端子)52cと接続されている。また、パッド51dは、入力端子(隣接端子)52dと接続されている。これらの接続は、例えばボンディングワイヤ53を用いたワイヤボンディングにより行う。
【0132】
なお、入力端子52a〜52dは、集積回路50を搭載する集積回路用基板(図示の便宜上、その外形を、点線54で示した)の入力端子である。
【0133】
図示していないが、入力端子52a〜52dはいずれも、プリント基板32に実装される。特に、入力端子52cは、プリント基板32に形成された捕集極板11に接続される(図3参照)。
【0134】
ところで、図1に示す差動積分器13において、コンデンサ133を放電させ、コンデンサ133を用いて構成された積分回路(すなわち、第1センサ)をリセットさせると、該積分回路の出力電圧VOMの電位は、コモンモードフィードバック回路132の基準電圧である電圧Vcと略等しくなる。以下、電圧Vcと略等しい電位を、電位Vcと称する。
【0135】
すると、差動積分器13に接続されているパッド51c、パッド51cに接続されている入力端子52c、およびプリント基板32における入力端子52cの実装部分の電位も、電位Vcとなる。
【0136】
この場合、入力端子52cに隣接する、入力端子52bおよび入力端子52dの電位を、上記積分回路のリセット直後における、出力電圧VOMの電位、すなわち電位Vc(一定の電圧レベル)とするのが好ましい。
【0137】
これにより、上記リセット直後において、プリント基板32における入力端子52cの実装部分と、プリント基板32における入力端子52bの実装部分との電位差を非常に小さくすることができる。同様に、上記リセット直後において、プリント基板32における入力端子52cの実装部分と、プリント基板32における入力端子52dの実装部分との電位差を非常に小さくすることができる。このため、プリント基板32に形成された絶縁抵抗36の抵抗値が低下しても、絶縁抵抗36を介して発生するリーク電流の値を小さくすることが可能となる。
【0138】
従って、集積回路50を搭載したICパッケージが実装されるプリント基板32上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0139】
なお、入力端子52bおよび入力端子52dの電位を電位Vcとする場合、パッド51bおよびパッド51dの電位も電位Vcとなる。従って、パッド51bおよびパッド51dには、集積回路50における、電圧Vcを印加する必要がある任意の回路が接続されればよい。あるいは、集積回路50の内部に電圧Vcを生成する回路が含まれている場合、その回路から出力される電圧Vcが、パッド51bあるいは51dに印加される構成であってもよい。
【0140】
〔実施の形態4〕
図6は、イオンセンシング回路10の具体的な構成例であり、差動積分器13を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す断面図である。
【0141】
ICパッケージ60は、差動積分器13(図1参照)を集積化した集積回路のパッケージである。すなわち、ICパッケージ60は、差動積分器13を集積化した集積回路が、集積回路用基板(図4の点線44、および図5の点線54参照)に搭載されて成るものである。
【0142】
また、ICパッケージ60は、入力端子61を有している。入力端子61は、接続点IMに対応する(図1参照)。入力端子61は、半田付けにより、プリント基板62に接続されている。
【0143】
プリント基板62には、スルーホール63、およびメタル配線64が形成されている。
【0144】
スルーホール63は、入力端子61と半田付けで接合された、プリント基板62の上に形成されたランド65と、プリント基板62の裏面(すなわち、ICパッケージ60が搭載されていないほうの面)に設けられた捕集極板11とを導通させるものである。
【0145】
メタル配線64は、プリント基板62において電気的接続を構築するための金属配線である。メタル配線64は、プリント基板62の表面(すなわち、ICパッケージ60が搭載されているほうの面)において、ランド65を囲むように形成されている。
【0146】
ここで、メタル配線64の電位は、コンデンサ133を用いて構成された積分回路(第1センサ)のリセット直後の、出力電圧VOMの電位である、電位Vcとする。
【0147】
ランド65は、スルーホール63により、捕集極板11と電気的に接続されている。
【0148】
また、ランド65は、プリント基板62の表面に形成されたメタル配線64によって囲まれている。換言すれば、プリント基板62の表面には、入力端子61とプリント基板62との接続部分を囲むメタル配線64が形成されている。
【0149】
これにより、上記積分回路のリセット直後において、ランド65と、メタル配線64との電位差を非常に小さくすることができる。このため、入力端子61からメタル配線64へ流れるリーク電流を小さくすることが可能となる。
【0150】
従って、上記ICパッケージが実装されるプリント基板上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0151】
〔実施の形態5〕
図7は、イオンセンシング回路10の具体的な構成例であり、差動積分器13を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す別の断面図である。
【0152】
図7に示す例は、図6に示す例と、以下の点で異なっている。
【0153】
すなわち、ICパッケージ60の入力端子61は、プリント基板62に接続されていない。これに伴い、プリント基板62には、スルーホール63、ランド65、およびランド65を囲むメタル配線64を設ける必要が無い。
【0154】
そして、捕集極板11は、入力端子61に接続されているが、プリント基板62から浮かせた状態で接続されている。すなわち、捕集極板11は、プリント基板62と接触しないように、入力端子61と接続されている。
【0155】
空気は、抵抗値が非常に大きい。このため、捕集極板11および入力端子61と、プリント基板62との間に、空気を介在させることにより、これらをより確実に絶縁することが可能となる。
【0156】
従って、上記ICパッケージが実装されるプリント基板上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0157】
〔実施の形態6〕
イオンセンシング回路10をイオン発生器に設け、イオンセンシング回路10により、該イオン発生器において発生するイオンの濃度を測定してもよい。差動積分器13を集積した集積回路のチップ(図4(a)および(b)、ならびに図5参照)についても同様に、イオン発生器に設け、該イオン発生器において発生するイオンの濃度を測定してもよい。差動積分器13を集積した集積回路のパッケージ(図6および図7参照)についても同様に、イオン発生器に設け、該イオン発生器において発生するイオンの濃度を測定してもよい。これらのイオン発生器についても、本発明の範疇に入り、イオンセンシング回路10と同様の効果を得ることができる。
【0158】
図11は、本実施の形態に係るイオン発生器の概略構成を示す図である。
【0159】
イオン発生器110は、イオン発生部111と、イオンセンシング回路10(図1参照)とを備えている。詳細には図示していないが、イオンセンシング回路10は好ましくは、差動積分器13および引算器14等が集積化されて成る集積回路として構成されている。
【0160】
また、イオン発生部111は、イオンを発生する電極112と、電極112に高電圧を印加することにより、電極112からイオンを発生させる高電圧発生回路113とを備えている。
【0161】
イオンセンシング回路10は、捕集極板11により、電極112から発生されたイオンを捕集する。イオンセンシング回路10は、〔実施の形態1〕にて説明した構成および動作メカニズムにより、捕集極板11が捕集したイオンの濃度を測定した結果を示す、出力電圧VOUTを出力する。
【0162】
イオンセンシング回路10が出力した出力電圧VOUTに基づいて、高電圧発生回路113が発生する高電圧の電圧値が調整される。例えば、出力電圧VOUTが、高いイオン濃度を示している場合、高電圧の電圧値を小さくすることで、電極112からの、単位時間あたりのイオン発生量を減らす。反対に、出力電圧VOUTが、低いイオン濃度を示している場合、高電圧の電圧値を大きくすることで、電極112からの、単位時間あたりのイオン発生量を増やす。
【0163】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、イオン濃度を測定するためのイオンセンシング装置、およびこのイオンセンシング装置を備えたイオン発生器に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0165】
10 イオンセンシング回路(イオンセンシング装置)
11 捕集極板(電極)
13 差動積分器(第1センサおよび第2センサ)
32、62 プリント基板
40A、40B、50 集積回路
41b パッド(第2センサ用パッド)
44、54 集積回路用基板
51c パッド(第1センサ用パッド)
52b、52d 入力端子(隣接端子)
52c 入力端子(第1センサ用入力端子)
64 メタル配線
110 イオン発生器
132 コモンモードフィードバック回路
VOM 第1センサの出力電圧
VOP 第2センサの出力電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン濃度を測定するためのイオンセンシング装置、およびこのイオンセンシング装置を備えたイオン発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は、従来技術に係るイオンセンシング回路の構成の一例を示す回路図である。
【0003】
図8に示すイオンセンシング回路80は、電極81、ESD(Electro-Static Discharge:静電放電)保護用ダイオード82および83、ならびに積分回路84を備えている。積分回路84は、オペアンプ85、電圧源86、コンデンサ87、およびスイッチ88を備えている。
【0004】
電極81は、空気中のイオンを捕集する。電極81は、捕集したイオンの濃度に応じたイオン電流を出力する。
【0005】
上記イオン電流は、積分回路84に流れる。積分回路84は、該イオン電流を、電圧へと変換すると共に積分して出力する。積分回路84の出力電圧を測定することで、イオン濃度を測定することが可能である。
【0006】
なお、ESD保護用ダイオード82および83は、イオンセンシング回路80におけるESD対策のために設けられている。
【0007】
ところで、上記イオン電流は、微小な電流である。一方、上記イオンセンシング回路を集積化したIC(Integrated Circuit:集積回路)パッケージ内では、リーク電流が発生し得るが、該リーク電流は、該イオン電流にとって無視できない程度に大きな値となる。そして、該イオン電流に該リーク電流が合成されると、これらの電流を区別することが困難となる。結果、上記イオンセンシング回路では、該イオン電流によってイオン濃度を正確に測定することが困難となる虞がある。
【0008】
一般的なICパッケージの場合、プリント基板で発生するリーク電流の影響は、低減することができる。一方、この場合、該集積回路に設けられた回路で発生するリーク電流の影響への対策が主に必要となる。集積回路に設けられた回路とは例えば、ESD保護用ダイオード、およびトランジスタのジャンクションダイオードである。
【0009】
図9は、従来技術に係るイオンセンシング回路の構成の、別の例を示す回路図である。具体的に、図9は、上記の対策のために、イオン電流を発生しないレプリカ回路をさらに設けた、イオンセンシング回路の構成の一例を示す回路図である。
【0010】
図9に示すイオンセンシング回路90は、イオン電流積分回路91、レプリカ回路92、および引算器93を備えている。
【0011】
イオン電流積分回路91は、捕集極板911、および積分回路912を備えている。積分回路912は、オペアンプ913、コンデンサ914、およびスイッチ915を備えている。イオン電流積分回路91の概略構成および動作メカニズムは、イオンセンシング回路80(図8参照)の概略構成および動作メカニズムと同じである。
【0012】
捕集極板911は、空気中のイオンを捕集する。捕集極板911は、捕集したイオンの濃度に応じたイオン電流を出力する。
【0013】
レプリカ回路92は、端部921、および積分回路922を備えている。積分回路922は、オペアンプ923、コンデンサ924、およびスイッチ925を備えている。レプリカ回路92の概略構成および動作メカニズムは、イオンセンシング回路80(図8参照)およびイオン電流積分回路91の概略構成および動作メカニズムと同じである。
【0014】
但し、レプリカ回路92は、端部921においてイオンが捕集されないため、端部921からイオン電流が出力されない。
【0015】
引算器93は、オペアンプ931、および抵抗932〜935を備えている。引算器93は、イオン電流積分回路91の積分回路912の出力電圧VOMと、レプリカ回路92の積分回路922の出力電圧VOPとの差を増幅し、出力電圧VOUTとして出力する。
【0016】
図10は、図9に示すイオンセンシング回路90における、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPの、経過時間(横軸)に対するレベル(縦軸)変化を示すグラフである。
【0017】
図10によれば、イオン電流およびリーク電流の合成電流から得られる出力電圧VOMと、リーク電流から得られる出力電圧VOPとの差をとることで、リーク電流から得られる電圧の成分をキャンセルすることができる。これにより、イオン電流に対するリーク電流の影響を低減し、イオン電流によるイオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能となる。
【0018】
レプリカ回路を設けたイオンセンシング回路としては、リーク電流については触れられていないが、例えば特許文献1に開示されているイオン濃度測定回路が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2010−78392号公報(2010年4月8日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図9に示すイオンセンシング回路90、および特許文献1に開示されているイオン濃度測定回路では、イオン濃度の測定が不正確になる虞があるという問題が発生する。この問題が発生する要因としては、以下の2つが考えられる。
【0021】
まず、1つ目の要因について説明する。
【0022】
積分回路912による積分の結果、積分回路912に上記リーク電流が流れる時間が長くなるほどに、出力電圧VOMのレベルが大きくなる。
【0023】
積分回路912に上記リーク電流が流れ続けると、やがて出力電圧VOMは、積分回路912が出力可能な最大の電圧レベルに達するまで大きくなる。その後の時間において、積分回路912に上記リーク電流が流れても、出力電圧VOMのレベルは大きくならない。この結果、出力電圧VOMは、上記イオン電流およびリーク電流の合成電流に正確に対応しないものとなる。
【0024】
従って、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの差が、正確なイオン濃度を示さず、イオン濃度の測定が不正確になる。
【0025】
続いて、2つ目の要因について説明する。
【0026】
出力電圧VOMが上記最大の電圧レベルを超える程度に、積分回路912に流れる上記リーク電流の値が大きくなっても、出力電圧VOMのレベルは、該最大の電圧レベルよりは大きくならない。この結果、出力電圧VOMは、上記イオン電流およびリーク電流の合成電流に正確に対応しないものとなる。
【0027】
従って、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの差が、正確なイオン濃度を示さず、イオン濃度の測定が不正確になる。
【0028】
なお、1つ目の要因による問題は、イオン電流を電圧へと変換する回路として、積分回路を用いる構成において発生する。一方、2つ目の要因による問題は、特許文献1に開示されているイオン濃度測定回路のように、イオン電流を電圧へと変換する回路として、積分回路以外のオペアンプ回路を用いる構成であっても発生する。
【0029】
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的は、イオン濃度の測定の正確性を向上させることを可能とするイオンセンシング装置、およびこのイオンセンシング装置を備えたイオン発生器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明のイオンセンシング装置は、上記の問題を解決するために、イオンの濃度を示す電流であるイオン電流を、電圧に変換する第1センサと、電流を電圧に変換するものであり、上記イオン電流が流れない第2センサとが集積されて成る集積回路を備えており、上記第1センサの出力電圧と上記第2センサの出力電圧との電位差から、上記イオンの濃度を測定するように構成されたイオンセンシング装置であって、上記集積回路は、上記第1センサの出力電圧および上記第2センサの出力電圧のコモンモード電圧を、一定の電圧レベルとするように、上記第1センサおよび上記第2センサを制御するコモンモードフィードバック回路を備えており、上記一定の電圧レベルは、下記数式(1)を満足していることを特徴としている。
【0031】
VL<Vc<VH ・・・(1)
(但し、VL:第1センサが出力可能な最小の電圧レベル、VH:第1センサが出力可能な最大の電圧レベル、Vc:上記一定の電圧レベル)
上記の構成によれば、コモンモードフィードバック回路は、第1センサの出力電圧および第2センサの出力電圧のコモンモード電圧を、一定の電圧レベルとするように、第1センサおよび第2センサを制御する。
【0032】
これにより、上記コモンモード電圧のレベルが大きくなることを抑制することが可能となる。また、これにより、該コモンモード電圧の、時間経過に応じたレベルの上昇を抑制することが可能となる。
【0033】
また、上記制御後における上記コモンモード電圧のレベル(すなわち、一定の電圧レベル)は、上記数式(1)を満足するレベルであり、第1センサが出力可能な電圧レベルの範囲内である。
【0034】
この結果、第1センサの出力電圧が、第1センサが出力可能な最大の電圧レベルに達する程度に大きくなる虞を低減することが可能となる。第2センサの出力電圧についても同様である。
【0035】
よって、第1センサの出力電圧は、イオン電流およびリーク電流の合成電流に正確に対応するものとなる。また、第2センサの出力電圧は、リーク電流に正確に対応するものとなる。従って、第1センサの出力電圧と第2センサの出力電圧との電位差が、正確なイオン濃度を示し、イオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能となる。
【0036】
また、本発明のイオンセンシング装置の、上記第2センサは、上記イオン電流を発生する電極に接続されていないのが好ましい。
【0037】
上記の構成によれば、より確実に、第2センサにイオン電流が流れない構成を実現することができる。また、上記の構成によれば、電極あるいは電極への配線を介したリーク電流の増加を回避することができる。
【0038】
また、本発明のイオンセンシング装置の、上記集積回路は、上記第2センサに上記電流を入力するための第2センサ用パッドを備えており、上記第2センサ用パッドは、上記集積回路を搭載すべき集積回路用基板に設けられた端子に接続されないのが好ましい。
【0039】
上記の構成によれば、第2センサ用パッドを、集積回路用基板に設けられた端子に接続しないことにより、これらの電気的接続を無くしている。これにより、集積回路を集積回路用基板に搭載して成るパッケージをプリント基板に実装する場合に、プリント基板上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0040】
また、本発明のイオンセンシング装置は、上記集積回路が搭載されている集積回路用基板を備えており、上記第1センサは、上記イオン電流を、電圧に変換すると共に積分する積分回路であり、上記集積回路は、上記第1センサに上記イオン電流を入力するための第1センサ用パッドを備えており、上記集積回路用基板は、上記第1センサ用パッドに接続されている第1センサ用入力端子と、該第1センサ用入力端子に隣接する隣接端子とを備えており、上記隣接端子の電位は、上記一定の電圧レベルと等しいのが好ましい。
【0041】
上記の構成によれば、集積回路を集積回路用基板に搭載して成るパッケージをプリント基板に実装する場合に、第1センサのリセット直後において、プリント基板における第1センサ用入力端子の実装部分と、プリント基板における隣接端子の実装部分との電位差を、非常に小さくすることができる。このため、該プリント基板に形成された絶縁抵抗の抵抗値が低下しても、絶縁抵抗を介して発生するリーク電流の値を小さくすることが可能となる。
【0042】
また、本発明のイオンセンシング装置は、上記イオン電流を発生する電極と、上記集積回路が搭載されている集積回路用基板と、上記集積回路用基板が実装されているプリント基板とを備えており、上記電極は、上記第1センサと接続されており、上記集積回路の外部に設けられており、上記プリント基板から浮かせた状態で設けられているのが好ましい。
【0043】
また、本発明のイオンセンシング装置は、上記集積回路が搭載されている集積回路用基板と、上記集積回路用基板が実装されているプリント基板とを備えており、上記第1センサは、上記イオン電流を、電圧に変換すると共に積分する積分回路であり、上記プリント基板は、上記第1センサと接続されており、上記プリント基板と上記第1センサとの接続部分を囲むように設けられたメタル配線を備えており、上記メタル配線の電位は、上記一定の電圧レベルと等しいのが好ましい。
【0044】
上記の構成によれば、電極とプリント基板とを効果的に絶縁することが可能となる。従って、プリント基板上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0045】
また、本発明のイオン発生器は、本発明のイオンセンシング装置を備えていることを特徴としている。
【0046】
上記の構成によれば、イオン発生器において、本発明のイオンセンシング装置と同じ効果を奏する。
【発明の効果】
【0047】
以上のとおり、本発明のイオンセンシング装置は、イオンの濃度を示す電流であるイオン電流を、電圧に変換する第1センサと、電流を電圧に変換するものであり、上記イオン電流が流れない第2センサとが集積されて成る集積回路を備えており、上記第1センサの出力電圧と上記第2センサの出力電圧との電位差から、上記イオンの濃度を測定するように構成されたイオンセンシング装置であって、上記集積回路は、上記第1センサの出力電圧および上記第2センサの出力電圧のコモンモード電圧を、一定の電圧レベルとするように、上記第1センサおよび上記第2センサを制御するコモンモードフィードバック回路を備えており、上記一定の電圧レベルは、数式(1)を満足している。
【0048】
また、本発明のイオン発生器は、本発明のイオンセンシング装置を備えている。
【0049】
従って、イオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態に係るイオンセンシング装置の構成を示す回路図である。
【図2】第1センサの出力電圧、および第2センサの出力電圧の、コモンモード電圧および差動信号の、経過時間に対するレベル変化を示すグラフである。
【図3】差動積分器を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す模式図である。
【図4】図4(a)および(b)は、差動積分器を集積した集積回路のチップを、パッケージ化する様子を示す模式図である。
【図5】差動積分器を集積した集積回路のチップを、パッケージ化する様子を示す別の模式図である。
【図6】差動積分器を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す断面図である。
【図7】差動積分器を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す別の断面図である。
【図8】従来技術に係るイオンセンシング回路の構成の一例を示す回路図である。
【図9】従来技術に係るイオンセンシング回路の構成の、別の例を示す回路図である。
【図10】図9に示すイオンセンシング回路における、イオン電流積分回路の積分回路の出力電圧、およびレプリカ回路の積分回路の出力電圧の、経過時間に対するレベル変化を示すグラフである。
【図11】本発明の実施の形態に係るイオン発生器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
〔発明の背景〕
図2は、図10に示された出力電圧VOMおよび出力電圧VOPの、コモンモード電圧(平均値、中間値)および差動信号の、経過時間(横軸)に対するレベル(縦軸)変化を示すグラフである。
【0052】
図2に示す出力電圧VOMおよび出力電圧VOPの差動信号(差動出力)は、捕集極板911(図9参照)が捕集したイオンによるイオン電流の積分値を表すものである。該イオン電流は微小な値であるため、該差動信号のレベルも比較的小さい。
【0053】
一方このとき、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧(コモンモード出力)は、上記差動信号より大きいレベルを示す。また、該コモンモード電圧は、時間経過に応じたレベルの上昇度合も、該差動信号より大きくなる。
【0054】
出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧が大きくなると、出力電圧VOMが(場合によっては、出力電圧VOPも)飽和して、上記差動信号が正確な値を示さなくなる虞がある。ここで「出力電圧が飽和する」とは、該出力電圧が、出力元の回路が出力可能な最大の電圧レベルに達した状態のことを意味している。
【0055】
出力電圧VOMまたは出力電圧VOPが飽和するという問題を解決するために、図1に示すような、コモンモードを抑制するためのコモンモードフィードバック回路を備えた差動積分器を使うことができる。該コモンモードフィードバック回路によりコモンモード電圧が一定の電圧に制御されるため、リーク電流が大きくても該飽和を抑制することができる。
【0056】
これにより、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPの差動信号は、イオン電流に比例した電圧となり、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの差が、正確なイオン濃度を示すことになる。
【0057】
従って、イオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能であるという効果を奏する。
【0058】
〔実施の形態1〕
図1は、本実施の形態に係るイオンセンシング装置の構成を示す回路図である。
【0059】
図1に示すイオンセンシング回路(イオンセンシング装置)10は、捕集極板11、端部12、差動積分器13、および引算器14を備えている。
【0060】
差動積分器13は、集積回路(詳細は後述する)上に形成されており、フル差動増幅器131、コモンモードフィードバック回路132、コンデンサ133および134、スイッチ135および136、ならびに抵抗137および138を備えている。
【0061】
引算器14は、オペアンプ141、および抵抗142〜145を備えている。
【0062】
捕集極板11は、フル差動増幅器131の正入力端子、コンデンサ133の一端、およびスイッチ135の一端に接続されている。
【0063】
端部12は、フル差動増幅器131の負入力端子、コンデンサ134の一端、およびスイッチ136の一端に接続されている。
【0064】
フル差動増幅器131の正出力端子は、コンデンサ134の他端、スイッチ136の他端、抵抗138の一端、および抵抗144の一端に接続されている。
【0065】
フル差動増幅器131の負出力端子は、コンデンサ133の他端、スイッチ135の他端、抵抗137の一端、および抵抗142の一端に接続されている。
【0066】
抵抗137の他端は、抵抗138の他端に接続されている。
【0067】
コモンモードフィードバック回路132の一方の入力端(すなわち、フル差動増幅器131のコモンモード端子)は、抵抗137と抵抗138との間に接続されている。
【0068】
コモンモードフィードバック回路132の他方の入力端は、電圧源(図示しない)に接続されており、該電圧源から電圧Vcが印加される。
【0069】
抵抗142の他端は、抵抗143の一端、およびオペアンプ141の非反転入力端に接続されている。抵抗143には、他端の側から電圧VRが印加されている。
【0070】
抵抗144の他端は、抵抗145の一端、およびオペアンプ141の反転入力端に接続されている。抵抗145の他端は、オペアンプ141の出力端に接続されている。
【0071】
なお、捕集極板11と差動積分器13との間に、上記集積回路上に設けられたESD保護用ダイオードが接続される。また、端部12と差動積分器13との間にも、上記集積回路上に設けられたESD保護用ダイオードが接続される。図1では、これらのESD保護用ダイオードを図示していない。そのかわりに、捕集極板11側のESD保護用ダイオードで発生するリーク電流をIESD(−)とし、端部12側のESD保護用ダイオードで発生するリーク電流をIESD(+)としている。また、スイッチ135で発生するリーク電流をISW(−)とし、スイッチ136で発生するリーク電流をISW(+)としている。
【0072】
捕集極板(電極)11は、空気中のイオンを捕集する。捕集極板11は、捕集したイオンの濃度に応じた(イオンの濃度を示す)イオン電流を出力する。すなわち、捕集極板11は、電極81(図8参照)および捕集極板911(図9参照)と同様の構成である。
【0073】
端部12は、電極が接続されていないため、上記イオンを捕集しない。従って、端部12は、イオン電流を出力しない。すなわち、端部12は、端部921(図9参照)と同様の構成である。
【0074】
上記イオン電流とリーク電流IESD(−)との合成電流、およびリーク電流IESD(+)はそれぞれ、差動積分器13に入力される。
【0075】
フル差動増幅器131(のうち上記合成電流を処理する各回路)、コンデンサ133、およびスイッチ135は、積分回路912(図9参照)と同様の構成を有する回路である。つまり、該回路は、一般的な積分回路を構成しており、上記合成電流およびリーク電流ISW(−)を電圧へと変換すると共に積分し、出力電圧VOM(第1センサの出力電圧)を出力する。該回路は、本発明に係る「第1センサ」である。
【0076】
なお、スイッチ135は、コンデンサ133を放電させることで、コンデンサ133を用いて構成された上記積分回路をリセットさせるものである。すなわち、スイッチ135が導通する(閉じる)と、コンデンサ133の両端から電荷が放出される。放出された電荷は、互いに異なる極性のもの同士が相殺されることで消滅する。以上の動作により、スイッチ135は、コンデンサ133を放電させ、コンデンサ133の放電を以って、該積分回路のリセットを実現する。
【0077】
フル差動増幅器131(のうちリーク電流IESD(+)を処理する各回路)、コンデンサ134、およびスイッチ136は、積分回路922(図9参照)と同様の構成を有する回路である。つまり、該回路は、一般的な積分回路を構成しており、リーク電流IESD(+)およびリーク電流ISW(+)を電圧へと変換すると共に積分し、出力電圧VOP(第2センサの出力電圧)を出力する。なお、端部12が上記イオン電流を出力しないので、該回路には、上記イオン電流が流れない。該回路は、本発明に係る「第2センサ」である。
【0078】
なお、スイッチ136は、コンデンサ134を放電させることで、コンデンサ134を用いて構成された上記積分回路をリセットさせるものである。すなわち、スイッチ136は、スイッチ135がコンデンサ133を放電させるのと同様の要領で、コンデンサ134を放電させる。コンデンサ134の放電を以って、該積分回路のリセットを実現する。
【0079】
引算器14は、引算器93(図9参照)と同様の構成を有する回路である。引算器14は、上記出力電圧VOMと、上記出力電圧VOPとの差(電位差)を増幅し、出力電圧VOUTとして出力する。
【0080】
ここで、抵抗143に印加されている電圧VRは、出力電圧VOUTの基準となるレベルである。具体的に、出力電圧VOUTは、出力電圧VOM、出力電圧VOP、および電圧VRから、
VOUT=(VOM−VOP)+VR
により求められる。
【0081】
イオンセンシング回路10は、出力電圧VOUTを測定することで、イオン濃度を測定することが可能なものである。
【0082】
イオン電流およびリーク電流の合成電流から得られる出力電圧VOMと、リーク電流から得られる出力電圧VOPとの差をとることで、リーク電流から得られる電圧の成分をキャンセルすることができる。これにより、イオン電流に対するリーク電流の影響を低減し、イオン電流によるイオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能となる。この点に関しては、図9に示すイオンセンシング回路90と同じ効果を得ることができる。
【0083】
すなわち、イオンセンシング回路10は、イオン電流を発生しないレプリカ回路をさらに設けた、イオンセンシング回路であると言える。
【0084】
抵抗137および138の直列回路は、コモンモード電圧を検出するための回路として一般的に用いられる、抵抗分圧器である。該直列回路は、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧を検出する。
【0085】
具体的に、抵抗137の抵抗値がR1であり、抵抗138の抵抗値がR2である場合、抵抗137と抵抗138との間から出力される電圧VCMは、
VCM=(R1×VOP+R2×VOM)/(R1+R2)
で表される。特に、R1=R2であれば、電圧VCMは、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの平均レベル(平均値、中間値)で表される。
【0086】
そして、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧は、電圧VCMに相当する。
【0087】
出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧としての電圧VCMは、コモンモードフィードバック回路132に入力される。
【0088】
コモンモードフィードバック回路132は、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧のレベルが、一定の電圧レベルとなるように、上記第1センサおよび上記第2センサの構成要素であるフル差動増幅器131を制御するものである。
【0089】
コモンモードフィードバック回路132は、例えばオペアンプで構成されている。コモンモードフィードバック回路132は、一方の入力端に電圧VCMが入力され、他方の入力端に電圧Vcが入力される。
【0090】
コモンモードフィードバック回路132は、電圧Vcを基準電圧として、電圧VCMのレベルを電圧Vcのレベルと比較する。そして、コモンモードフィードバック回路132は、該比較の結果に基づいて、フル差動増幅器131のフィードバック制御を行う。
【0091】
具体例として、電圧VCMのレベルが電圧Vcのレベルより大きい場合、コモンモードフィードバック回路132は、フル差動増幅器131のバイアス回路(図示しない)のバイアス電流を増加させる。これにより、該バイアス電流の増加に伴い発生する電圧降下により、フル差動増幅器131から出力される信号電圧のレベルを低下させる。すなわち、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのレベルを低下させる。出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのレベルを低下させることは、電圧VCMのレベルを低下させることに等しいのは言うまでも無い。
【0092】
また、電圧VCMのレベルが電圧Vcのレベルより小さい場合、コモンモードフィードバック回路132は、上記バイアス電流を低減させる。これにより、コモンモードフィードバック回路132は、電圧VCMのレベルが電圧Vcのレベルより大きい場合と反対の要領で、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのレベルを上昇させ、電圧VCMのレベルを上昇させる。
【0093】
以上の動作により、コモンモードフィードバック回路132は、電圧VCMのレベルと電圧Vcのレベルとの比較結果に基づいて、電圧VCMが一定の電圧Vcとなるように、フル差動増幅器131のフィードバック制御を行う。これにより、電圧VCM、すなわち出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧のレベルは、一定の電圧とされる。
【0094】
なお、ここで、電圧Vcのレベルは、下記数式(1)を満足している。
【0095】
VL<Vc<VH ・・・(1)
上記数式(1)を満足する電圧Vcは、−0.5<λ<0.5である数値λを用いて、下記数式(2)で表すことができる。
【0096】
Vc=(VH+VL)/2+λ(VH−VL) ・・・(2)
但し、VLは、第1センサが出力可能な最小の電圧レベルであり、VHは、第1センサが出力可能な最大の電圧レベルである。すなわち、VLは、出力電圧VOMとしてとり得る電圧レベルの最小値であり、VHは、出力電圧VOMとしてとり得る電圧レベルの最大値であると言える。このことから、電圧Vcが、第1センサが出力可能な電圧レベル(出力電圧VOMとしてとり得る電圧レベル)の範囲内であることは明らかである。
【0097】
電圧Vcのレベルが、上記数式(2)で表されているとき、差動積分器13の差動出力電圧VOP−VOMの出力可能な電圧範囲は、
|VOP−VOM|≦(1−2|λ|)(VH−VL)
に制限される。この範囲が大きいほうがイオン電流の検知可能範囲が広がるため、λは0に近いことが望ましい。λ=0である、すなわち電圧Vcのレベルが(VH+VL)/2であることがより好ましい。
【0098】
出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧のレベルを、一定の電圧レベルとなるように制御することにより、該コモンモード電圧のレベルが大きくなることを抑制することが可能となる。また、これにより、該コモンモード電圧の、時間経過に応じたレベルの上昇を抑制することが可能となる。
【0099】
この結果、出力電圧VOMまたは出力電圧VOPの飽和を抑制することが可能となる。すなわち、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPは、出力元の回路(差動積分器13の対応する積分回路)が出力可能な最大の電圧レベルに達するまで大きくならない。
【0100】
この結果、出力電圧VOMは、上記イオン電流およびリーク電流の合成電流に正確に対応するものとなる。また、出力電圧VOPは、上記リーク電流に正確に対応するものとなる。
【0101】
従って、引算器14の出力電圧VOUTが示す、出力電圧VOMと出力電圧VOPとの差が、正確なイオン濃度を示し、イオン濃度の測定の正確性を向上させることが可能となる。
【0102】
なお、本実施の形態は、以下のように解釈することもできる。
【0103】
すなわち、捕集極板11に集まったイオンによるイオン電流が、集積回路(図示しない)上に形成された差動積分器13により積分される。
【0104】
上記集積回路のESD保護用ダイオード(図示しない)のリーク電流IESD(−)およびIESD(+)は、差動積分器13の正負両側に等しく流れる。また、スイッチ135および136を形成する各トランジスタ(図示しない)のリーク電流ISW(−)およびISW(+)は、差動積分器13の正負両側に等しく流れる。このため、これらのリーク電流は、差動積分器13によりキャンセルされる。
【0105】
差動積分器13の出力には、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPのコモンモード電圧(=(VOP+VOM)/2)を一定電圧Vcに制御するための、コモンモードフィードバック回路132が設けられている。
【0106】
このため、上記の各リーク電流の値が大きくても、出力電圧VOMおよび出力電圧VOPが飽和せず、捕集極板11からのイオン電流の値を適切に反映した(比例する)電圧レベルである差動信号が得られる。該差動信号は、引算器14により必要に応じてシングルエンドの信号に変換することもできる。
【0107】
なお、差動積分器13のかわりに、積分動作を行わない差動増幅回路を用いて、本発明に係る「第1センサ」および「第2センサ」を構成してもよい。
【0108】
〔実施の形態2〕
(プリント基板上でのリーク電流の課題)
図3は、差動積分器13を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す模式図である。
【0109】
ICパッケージ30は、差動積分器13(図1参照)を集積化した集積回路のパッケージである。
【0110】
また、ICパッケージ30は、入力端子31a〜31dを有している。入力端子31a〜31dは、プリント基板32に実装されている。
【0111】
プリント基板32は、入力端子31aの実装部分に電源電圧面(電源ライン)33が形成されている。また、プリント基板32は、入力端子31cの実装部分に捕集極板11が形成されている。また、プリント基板32は、入力端子31dの実装部分に接地面(グランド)34が形成されている。電源電圧面33は電源電位であり、接地面34は、接地されているのでグランド電位である。
【0112】
また、入力端子31bは、端部12と差動積分器13との間(接続点IP(図1参照)と称する)に対応する。また、入力端子31cは、捕集極板11と差動積分器13との接続点IM(図1参照)に対応する。便宜上、図3では、差動積分器13のうち、入力端子31bおよび入力端子31cとそれぞれ接続されている、フル差動増幅器131の負入力端子および正入力端子以外の部分について、図示を簡略化した。
【0113】
プリント基板32に形成された絶縁抵抗35を介して、入力端子31bが、電源電位である電源電圧面33と電気的に結合される。また、プリント基板32に形成された絶縁抵抗36を介して、入力端子31cが、グランド電位である接地面34と電気的に結合される。これにより、プリント基板32においてリーク電流が発生し、入力端子31bおよび入力端子31cから差動積分器13に流れる。
【0114】
絶縁抵抗35および絶縁抵抗36は、湿度の上昇、またはプリント基板32の汚れにより、抵抗値が低下する。この抵抗値の低下により、上記リーク電流が増大し、この結果、イオンセンシング回路10(図1参照)における、イオン電流の正確な計測に支障をきたす虞がある。
【0115】
(プリント基板上でのリーク電流への対策)
図4(a)および(b)は、イオンセンシング回路10の具体的な構成例であり、差動積分器13を集積した集積回路のチップを、パッケージ化する(イオンセンシング回路の)様子を示す模式図である。
【0116】
図4(a)に示す集積回路40Aは、差動積分器13(図1参照)を集積した集積回路のチップである。
【0117】
また、集積回路40Aは、パッド41a〜41dを有している。このうち、パッド(第2センサ用パッド)41bは、接続点IPに対応し、パッド41cは、接続点IMに対応する(図1参照)。
【0118】
そして、パッド41aは、入力端子42aと接続されている。また、パッド41cは、入力端子42cと接続されている。また、パッド41dは、入力端子42dと接続されている。これらの接続は、例えばボンディングワイヤ43を用いたワイヤボンディングにより行う。
【0119】
一方、パッド41bは、入力端子42a〜42dのいずれとも接続されていない。
【0120】
なお、入力端子42a〜42dは、集積回路40Aを搭載する集積回路用基板(図示の便宜上、その外形を、点線44で示した)の入力端子である。
【0121】
図示していないが、入力端子42a〜42dはいずれも、プリント基板32に実装される。特に、入力端子42cは、プリント基板32に形成された捕集極板11に接続される(図3参照)。
【0122】
図4(a)に示す例では、入力端子42a〜42dと、集積回路40A上の端子とを電気的に結合するために、上記ワイヤボンディングを行っている。
【0123】
ここで、差動積分器13に接続される集積回路40A上の端子であって、捕集極板11が接続されないパッド41bは、上記ワイヤボンディングを行わないのが好ましい。
【0124】
これにより、パッド41bと入力端子42a〜42dとの電気的結合を無くしている。従って、集積回路40Aを搭載したICパッケージが実装されるプリント基板32上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0125】
また、図4(b)に示す集積回路40Bは、図4(a)に示す集積回路40Aの構成に加え、パッド41eが追加されている。
【0126】
そして、入力端子42bに、パッド41cが接続されている。これに伴い、パッド41dは、入力端子42cと接続されており、パッド41eは、入力端子42dと接続されている。捕集極板11(図3参照)に接続されるのは、図4(a)に示す例では入力端子42cであったが、図4(b)に示す例では入力端子42bである。
【0127】
図4(a)に示す例では、入力端子42bにパッドを接続していなかったが、図4(b)に示す例のように、入力端子42bにパッド41b以外のパッドを接続してもよい。
【0128】
〔実施の形態3〕
図5は、イオンセンシング回路10の具体的な構成例であり、差動積分器13を集積した集積回路のチップを、パッケージ化する(イオンセンシング回路の)様子を示す別の模式図である。
【0129】
図5に示す集積回路50は、差動積分器13(図1参照)を集積した集積回路のチップである。
【0130】
また、集積回路50は、パッド51a〜51dを有している。このうち、パッド(第1センサ用パッド)51cは、接続点IMに対応する(図1参照)。また、パッド51bおよびパッド51dの、集積回路50内の回路に対する接続先については後述する。
【0131】
パッド51aは、入力端子52aと接続されている。また、パッド51bは、入力端子(隣接端子)52bと接続されている。また、パッド51cは、入力端子(第1センサ用入力端子)52cと接続されている。また、パッド51dは、入力端子(隣接端子)52dと接続されている。これらの接続は、例えばボンディングワイヤ53を用いたワイヤボンディングにより行う。
【0132】
なお、入力端子52a〜52dは、集積回路50を搭載する集積回路用基板(図示の便宜上、その外形を、点線54で示した)の入力端子である。
【0133】
図示していないが、入力端子52a〜52dはいずれも、プリント基板32に実装される。特に、入力端子52cは、プリント基板32に形成された捕集極板11に接続される(図3参照)。
【0134】
ところで、図1に示す差動積分器13において、コンデンサ133を放電させ、コンデンサ133を用いて構成された積分回路(すなわち、第1センサ)をリセットさせると、該積分回路の出力電圧VOMの電位は、コモンモードフィードバック回路132の基準電圧である電圧Vcと略等しくなる。以下、電圧Vcと略等しい電位を、電位Vcと称する。
【0135】
すると、差動積分器13に接続されているパッド51c、パッド51cに接続されている入力端子52c、およびプリント基板32における入力端子52cの実装部分の電位も、電位Vcとなる。
【0136】
この場合、入力端子52cに隣接する、入力端子52bおよび入力端子52dの電位を、上記積分回路のリセット直後における、出力電圧VOMの電位、すなわち電位Vc(一定の電圧レベル)とするのが好ましい。
【0137】
これにより、上記リセット直後において、プリント基板32における入力端子52cの実装部分と、プリント基板32における入力端子52bの実装部分との電位差を非常に小さくすることができる。同様に、上記リセット直後において、プリント基板32における入力端子52cの実装部分と、プリント基板32における入力端子52dの実装部分との電位差を非常に小さくすることができる。このため、プリント基板32に形成された絶縁抵抗36の抵抗値が低下しても、絶縁抵抗36を介して発生するリーク電流の値を小さくすることが可能となる。
【0138】
従って、集積回路50を搭載したICパッケージが実装されるプリント基板32上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0139】
なお、入力端子52bおよび入力端子52dの電位を電位Vcとする場合、パッド51bおよびパッド51dの電位も電位Vcとなる。従って、パッド51bおよびパッド51dには、集積回路50における、電圧Vcを印加する必要がある任意の回路が接続されればよい。あるいは、集積回路50の内部に電圧Vcを生成する回路が含まれている場合、その回路から出力される電圧Vcが、パッド51bあるいは51dに印加される構成であってもよい。
【0140】
〔実施の形態4〕
図6は、イオンセンシング回路10の具体的な構成例であり、差動積分器13を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す断面図である。
【0141】
ICパッケージ60は、差動積分器13(図1参照)を集積化した集積回路のパッケージである。すなわち、ICパッケージ60は、差動積分器13を集積化した集積回路が、集積回路用基板(図4の点線44、および図5の点線54参照)に搭載されて成るものである。
【0142】
また、ICパッケージ60は、入力端子61を有している。入力端子61は、接続点IMに対応する(図1参照)。入力端子61は、半田付けにより、プリント基板62に接続されている。
【0143】
プリント基板62には、スルーホール63、およびメタル配線64が形成されている。
【0144】
スルーホール63は、入力端子61と半田付けで接合された、プリント基板62の上に形成されたランド65と、プリント基板62の裏面(すなわち、ICパッケージ60が搭載されていないほうの面)に設けられた捕集極板11とを導通させるものである。
【0145】
メタル配線64は、プリント基板62において電気的接続を構築するための金属配線である。メタル配線64は、プリント基板62の表面(すなわち、ICパッケージ60が搭載されているほうの面)において、ランド65を囲むように形成されている。
【0146】
ここで、メタル配線64の電位は、コンデンサ133を用いて構成された積分回路(第1センサ)のリセット直後の、出力電圧VOMの電位である、電位Vcとする。
【0147】
ランド65は、スルーホール63により、捕集極板11と電気的に接続されている。
【0148】
また、ランド65は、プリント基板62の表面に形成されたメタル配線64によって囲まれている。換言すれば、プリント基板62の表面には、入力端子61とプリント基板62との接続部分を囲むメタル配線64が形成されている。
【0149】
これにより、上記積分回路のリセット直後において、ランド65と、メタル配線64との電位差を非常に小さくすることができる。このため、入力端子61からメタル配線64へ流れるリーク電流を小さくすることが可能となる。
【0150】
従って、上記ICパッケージが実装されるプリント基板上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0151】
〔実施の形態5〕
図7は、イオンセンシング回路10の具体的な構成例であり、差動積分器13を集積化した集積回路のパッケージを、プリント基板に実装した様子を示す別の断面図である。
【0152】
図7に示す例は、図6に示す例と、以下の点で異なっている。
【0153】
すなわち、ICパッケージ60の入力端子61は、プリント基板62に接続されていない。これに伴い、プリント基板62には、スルーホール63、ランド65、およびランド65を囲むメタル配線64を設ける必要が無い。
【0154】
そして、捕集極板11は、入力端子61に接続されているが、プリント基板62から浮かせた状態で接続されている。すなわち、捕集極板11は、プリント基板62と接触しないように、入力端子61と接続されている。
【0155】
空気は、抵抗値が非常に大きい。このため、捕集極板11および入力端子61と、プリント基板62との間に、空気を介在させることにより、これらをより確実に絶縁することが可能となる。
【0156】
従って、上記ICパッケージが実装されるプリント基板上でのリーク電流の発生を最小化することが可能となり、イオン電流の正確な計測が可能となる。
【0157】
〔実施の形態6〕
イオンセンシング回路10をイオン発生器に設け、イオンセンシング回路10により、該イオン発生器において発生するイオンの濃度を測定してもよい。差動積分器13を集積した集積回路のチップ(図4(a)および(b)、ならびに図5参照)についても同様に、イオン発生器に設け、該イオン発生器において発生するイオンの濃度を測定してもよい。差動積分器13を集積した集積回路のパッケージ(図6および図7参照)についても同様に、イオン発生器に設け、該イオン発生器において発生するイオンの濃度を測定してもよい。これらのイオン発生器についても、本発明の範疇に入り、イオンセンシング回路10と同様の効果を得ることができる。
【0158】
図11は、本実施の形態に係るイオン発生器の概略構成を示す図である。
【0159】
イオン発生器110は、イオン発生部111と、イオンセンシング回路10(図1参照)とを備えている。詳細には図示していないが、イオンセンシング回路10は好ましくは、差動積分器13および引算器14等が集積化されて成る集積回路として構成されている。
【0160】
また、イオン発生部111は、イオンを発生する電極112と、電極112に高電圧を印加することにより、電極112からイオンを発生させる高電圧発生回路113とを備えている。
【0161】
イオンセンシング回路10は、捕集極板11により、電極112から発生されたイオンを捕集する。イオンセンシング回路10は、〔実施の形態1〕にて説明した構成および動作メカニズムにより、捕集極板11が捕集したイオンの濃度を測定した結果を示す、出力電圧VOUTを出力する。
【0162】
イオンセンシング回路10が出力した出力電圧VOUTに基づいて、高電圧発生回路113が発生する高電圧の電圧値が調整される。例えば、出力電圧VOUTが、高いイオン濃度を示している場合、高電圧の電圧値を小さくすることで、電極112からの、単位時間あたりのイオン発生量を減らす。反対に、出力電圧VOUTが、低いイオン濃度を示している場合、高電圧の電圧値を大きくすることで、電極112からの、単位時間あたりのイオン発生量を増やす。
【0163】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、イオン濃度を測定するためのイオンセンシング装置、およびこのイオンセンシング装置を備えたイオン発生器に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0165】
10 イオンセンシング回路(イオンセンシング装置)
11 捕集極板(電極)
13 差動積分器(第1センサおよび第2センサ)
32、62 プリント基板
40A、40B、50 集積回路
41b パッド(第2センサ用パッド)
44、54 集積回路用基板
51c パッド(第1センサ用パッド)
52b、52d 入力端子(隣接端子)
52c 入力端子(第1センサ用入力端子)
64 メタル配線
110 イオン発生器
132 コモンモードフィードバック回路
VOM 第1センサの出力電圧
VOP 第2センサの出力電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンの濃度を示す電流であるイオン電流を、電圧に変換する第1センサと、
電流を電圧に変換するものであり、上記イオン電流が流れない第2センサとが集積されて成る集積回路を備えており、
上記第1センサの出力電圧と上記第2センサの出力電圧との電位差から、上記イオンの濃度を測定するように構成されたイオンセンシング装置であって、
上記集積回路は、上記第1センサの出力電圧および上記第2センサの出力電圧のコモンモード電圧を、一定の電圧レベルとするように、上記第1センサおよび上記第2センサを制御するコモンモードフィードバック回路を備えており、
上記一定の電圧レベルは、下記数式(1)
VL<Vc<VH ・・・(1)
(但し、VL:第1センサが出力可能な最小の電圧レベル、VH:第1センサが出力可能な最大の電圧レベル、Vc:上記一定の電圧レベル)
を満足していることを特徴とするイオンセンシング装置。
【請求項2】
上記第2センサは、上記イオン電流を発生する電極に接続されていないことを特徴とする請求項1に記載のイオンセンシング装置。
【請求項3】
上記集積回路は、上記第2センサに上記電流を入力するための第2センサ用パッドを備えており、
上記第2センサ用パッドは、上記集積回路を搭載すべき集積回路用基板に設けられた端子に接続されないことを特徴とする請求項1または2に記載のイオンセンシング装置。
【請求項4】
上記イオンセンシング装置は、上記集積回路が搭載されている集積回路用基板を備えており、
上記第1センサは、上記イオン電流を、電圧に変換すると共に積分する積分回路であり、
上記集積回路は、上記第1センサに上記イオン電流を入力するための第1センサ用パッドを備えており、
上記集積回路用基板は、上記第1センサ用パッドに接続されている第1センサ用入力端子と、該第1センサ用入力端子に隣接する隣接端子とを備えており、
上記隣接端子の電位は、上記一定の電圧レベルと等しいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオンセンシング装置。
【請求項5】
上記イオンセンシング装置は、
上記イオン電流を発生する電極と、
上記集積回路が搭載されている集積回路用基板と、
上記集積回路用基板が実装されているプリント基板とを備えており、
上記電極は、
上記第1センサと接続されており、
上記集積回路の外部に設けられており、
上記プリント基板から浮かせた状態で設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオンセンシング装置。
【請求項6】
上記イオンセンシング装置は、
上記集積回路が搭載されている集積回路用基板と、
上記集積回路用基板が実装されているプリント基板とを備えており、
上記第1センサは、上記イオン電流を、電圧に変換すると共に積分する積分回路であり、
上記プリント基板は、
上記第1センサと接続されており、
上記プリント基板と上記第1センサとの接続部分を囲むように設けられたメタル配線を備えており、
上記メタル配線の電位は、上記一定の電圧レベルと等しいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオンセンシング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のイオンセンシング装置を備えていることを特徴とするイオン発生器。
【請求項1】
イオンの濃度を示す電流であるイオン電流を、電圧に変換する第1センサと、
電流を電圧に変換するものであり、上記イオン電流が流れない第2センサとが集積されて成る集積回路を備えており、
上記第1センサの出力電圧と上記第2センサの出力電圧との電位差から、上記イオンの濃度を測定するように構成されたイオンセンシング装置であって、
上記集積回路は、上記第1センサの出力電圧および上記第2センサの出力電圧のコモンモード電圧を、一定の電圧レベルとするように、上記第1センサおよび上記第2センサを制御するコモンモードフィードバック回路を備えており、
上記一定の電圧レベルは、下記数式(1)
VL<Vc<VH ・・・(1)
(但し、VL:第1センサが出力可能な最小の電圧レベル、VH:第1センサが出力可能な最大の電圧レベル、Vc:上記一定の電圧レベル)
を満足していることを特徴とするイオンセンシング装置。
【請求項2】
上記第2センサは、上記イオン電流を発生する電極に接続されていないことを特徴とする請求項1に記載のイオンセンシング装置。
【請求項3】
上記集積回路は、上記第2センサに上記電流を入力するための第2センサ用パッドを備えており、
上記第2センサ用パッドは、上記集積回路を搭載すべき集積回路用基板に設けられた端子に接続されないことを特徴とする請求項1または2に記載のイオンセンシング装置。
【請求項4】
上記イオンセンシング装置は、上記集積回路が搭載されている集積回路用基板を備えており、
上記第1センサは、上記イオン電流を、電圧に変換すると共に積分する積分回路であり、
上記集積回路は、上記第1センサに上記イオン電流を入力するための第1センサ用パッドを備えており、
上記集積回路用基板は、上記第1センサ用パッドに接続されている第1センサ用入力端子と、該第1センサ用入力端子に隣接する隣接端子とを備えており、
上記隣接端子の電位は、上記一定の電圧レベルと等しいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のイオンセンシング装置。
【請求項5】
上記イオンセンシング装置は、
上記イオン電流を発生する電極と、
上記集積回路が搭載されている集積回路用基板と、
上記集積回路用基板が実装されているプリント基板とを備えており、
上記電極は、
上記第1センサと接続されており、
上記集積回路の外部に設けられており、
上記プリント基板から浮かせた状態で設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオンセンシング装置。
【請求項6】
上記イオンセンシング装置は、
上記集積回路が搭載されている集積回路用基板と、
上記集積回路用基板が実装されているプリント基板とを備えており、
上記第1センサは、上記イオン電流を、電圧に変換すると共に積分する積分回路であり、
上記プリント基板は、
上記第1センサと接続されており、
上記プリント基板と上記第1センサとの接続部分を囲むように設けられたメタル配線を備えており、
上記メタル配線の電位は、上記一定の電圧レベルと等しいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のイオンセンシング装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のイオンセンシング装置を備えていることを特徴とするイオン発生器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−24565(P2013−24565A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156135(P2011−156135)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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