説明

イオンチャネルを調節するための誘導体

イオンチャネルアンタゴニストとして作用するスルホンアミド誘導体。これらの化合物は、一般式(I)を有する。当該組成物は疼痛関連の症状の治療又は軽減に有用である。本発明の組成物によって処置される疾患の一例としては、急性、慢性、神経障害性もしくは炎症性の疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、疱疹神経痛、全身神経痛、癲癇又は癲癇状態、神経変性障害、不安及び鬱病のような精神医学的障害、筋緊張症、不整脈、運動障害、神経内分泌系障害、運動失調、多発性硬化症、過敏性腸症候群、失調症、内臓痛、変形性関節症の疼痛、疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、神経根性疼痛、坐骨神経痛、背痛、頭部若しくは頚部の疼痛、重度若しくは難治性の疼痛、侵害受容疼痛、突出痛、術後疼痛又は癌疼痛などが挙げられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本特許出願は、米国特許法§119に基づき、2005年10月21日に出願の米国仮特許出願第60/729,344号の優先権を主張するものであり、上記特許出願の全開示内容を本願明細書に援用する。
【0002】
(技術分野)
本発明はイオンチャネルの阻害剤として有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含有する薬学的に許容できる組成物、及び様々な障害の治療における当該組成物の使用方法の提供に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
Naチャネルは、全ての興奮性細胞(例えば神経単位及び筋細胞)の活動電位の生成にとり重要である。それらは、興奮性の組織を含有する脳、消化管、骨格筋、末梢神経系、脊髄及び気道平滑筋などにおいて鍵となる役割を果たす。それらは同様に、様々な疾患症状(以下に例示する)においても鍵となる役割を演じる:
癲癇(非特許文献1)、疼痛(非特許文献2及び3)、筋緊張症(非特許文献4及び5)、運動失調(非特許文献6)、多発性硬化症(非特許文献7及び8)、過敏腸(非特許文献9及び10)、尿失禁及び内臓痛(非特許文献11)、並びに精神的な機能不全に陥る症状(不安及び鬱病など)(非特許文献12)。
【0004】
電位型Naチャネルは、9つの異なるサブタイプ(NaV1.1−NaV1.9)からなる遺伝子ファミリーを構成する。表Aに示すように、これらのサブタイプは、組織特異性局在化及び機能において相違を示す(非特許文献13)。当該遺伝子ファミリーの3つのメンバー(NaV1.8、1.9、1.5)は、周知のNaチャネルブロッカーTTXによるブロックに対する耐性を示し、この遺伝子ファミリーの中でも特異なサブタイプである。突然変異を用いた解析の結果、グルタミン酸塩387が、TTX結合にとり重要な残基であることが確認された(非特許文献14)。
【0005】
表A(略記:CNS=中枢神経系、PNS=末梢神経系、DRG=脊髄神経節、TG=三叉神経節)
【0006】
【表1−1】

【0007】
【表1−2】

一般に、電位型ナトリウムチャネル(NaVs)は興奮性組織における神経系の活動電位の急速な活性化を開始させる役割を果たし、それにより通常の及び異所性の痛覚を構成し、コードする電気シグナルを伝達する。NaVチャネルのアンタゴニストは、急性、慢性、炎症性及び神経性の障害疼痛を含むがこれらに限定されない疼痛シグナルを低減させることができ、ゆえに様々な疼痛症状の治療に有用である。周知のNaVアンタゴニスト、例えばTTX、リドカイン(非特許文献15)、ブピバカイン、フェニトイン(非特許文献16)、ラモトリジン(非特許文献17及び18を参照)そして、カルバマゼピン(非特許文献19)が、ヒト及び動物モデルにおける疼痛の低減に有用であることが示されている。
【0008】
組織損傷又は炎症の存在下で進行する痛覚過敏(疼痛を伴う、何かに対する極端な敏感性)は、少なくとも1つには、損傷部位に分布する高閾値原発性求心性神経単位の興奮増加を反映する。電圧感受性ナトリウムチャネルの活性化は、ニューロン活動電位の発生及び伝達のために重要である。NaV流の調節が、ニューロン興奮の制御に使用される内在性機構であることを示す証拠が多く得られている(非特許文献20)。幾つかの動力学的及び薬理的に異なる電位型ナトリウムチャネルが、脊髄神経節(DRG)神経単位で発見されている。TTX耐性電流は、テトロドトキシンのμモル単位の濃度では無反応で、他の電位型ナトリウムチャネルと比較し、遅い活性化、不活化な動力学的側面、及び脱分極された活性化閾値を示す。TTX耐性ナトリウム流は、主に侵害受容に関係すると考えられる感覚神経単位の集団の場合に限定される。具体的には、TTX耐性ナトリウム流は、小細胞体の直径を有して小直径遅延導電軸索を誘導し、カプサイシンに反応する神経単位において特異的に発生する。大部分の実験において、TTX耐性ナトリウムチャネルがC線維において発現し、脊髄への侵害受容シグナルの伝達において重要な役割を果たすことが証明されている。
【0009】
TTX耐性ナトリウムチャネル(NaV1.8)のユニークな領域を標的とするアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチドのクモ膜下腔内投与により、PGE誘発された痛覚過敏を顕著に減少させることができる(非特許文献21を参照)。近年、機能性NaV1.8を欠損する遺伝子ノックアウトマウスが、Woodらによって作成された。当該突然変異により、炎症物質カラギーナンへの動物の反応を評価する試験において、鎮痛効果が見られた(非特許文献22)。更に、これらの動物において機械的及び熱的刺激による知覚の欠損が観察された。Nav1.8ノックアウト変異体により示される無痛覚は、侵害受容のTTX耐性電流の役割に関する見識と整合する。
【0010】
免疫組織化学的解析、in situハイブリダイゼーション及びin vitro電気生理学実験の全てにおいて、ナトリウムチャネルNaV1.8が脊髄神経節及び三叉の神経節の小感覚神経単位において選択的に局在化していることが示された(非特許文献23)。これらの神経単位の主要な役割は、侵害受容刺激の検出及び伝達である。アンチセンス及び免疫組織化学的な解析においても、神経障害疼痛におけるNaV1.8の役割が裏付けられている(非特許文献24、及び非特許文献25を参照)。NaV1.8タンパク質は、神経損傷に隣接する無傷のC線維に沿って上方制御される。アンチセンス治療により神経に沿ったNaV1.8の再分布が防止され、神経障害疼痛が逆転する。遺伝子ノックアウト及びアンチセンスによるデータを踏まえると、炎症性及び神経性の疼痛の検出及び伝達におけるNaV1.8の役割が更に明らかとなる。
【0011】
神経障害による疼痛の場合、Naチャネルの分布及びサブタイプのリモデリングが行われる。損傷を受けた神経では、TTX感受性サブユニットNaV1.3の発現が5−10倍に上方制御されるのに対し、NaV1.8及びNaV1.9の発現は顕著に減少する(非特許文献26)。動物モデルにおいて、NaV1.3の増加のタイムコースは、神経損傷に続く異痛症の発症に対応する。活動電位に続く不活化の後、非常に急速にリプライミングが行われるという点で、NaV1.3チャネルは特殊な生物物理学的特徴を有する。損傷を受けた神経にしばしば見られるように、これにより高い興奮速度が維持される(非特許文献27)。NaV1.3はヒトの中枢及び末梢系で発現する。NaV1.9は、脊髄神経節及び三叉神経節の小感覚神経単位において選択的に局在化するという点でNaV1.8と類似する(非特許文献28を参照)。これは、遅い速度の不活化、及び活性化における左側にシフトした(left−shifted)電位依存性を有する(非特許文献29)。これらの2つの生物物理学的な特性により、NaV1.9により、侵害受容神経単位の静止膜電位が決定される。NaV1.9を発現する細胞における静止膜電位は−55〜−50mVの範囲であり、他の大部分の末梢及び中心神経単位における−65mVとは異なる。この持続的な脱分極は主にNaV1.9チャネルの活性化レベルが継続的に低いことに起因する。この脱分極により、神経単位が、侵害受容刺激に応答してその興奮活動電位が閾値に達する。NaV1.9チャネルをブロックする化合物は、疼痛を伴う刺激の検出のためのセットポイントにおいて重要な役割を演じる。慢性の疼痛状態では、神経及び神経末端は膨張しが過敏性となり、軽度の刺激若しくは刺激のない条件においても高い頻度で興奮活動電位を生じさせうる。これらの神経膨張は病理学的には神経腫と称され、その際に発現する主なNaチャネルはNaV1.8及びNaV1.7である(非特許文献30)。NaV1.6及びNaV1.7は脊髄神経節神経単位においても発現し、これらの細胞で見られる小分子のTTX感受性構成要素として機能する。したがって、特にNaV1.7は神経内分泌系における興奮に対するその役割以外にも、疼痛の標的としても有用であると考えられる(非特許文献31を参照)。
【0012】
NaV1.1(非特許文献32)、及びNaV1.2(非特許文献33)は熱性発作などの癲癇状態に関与している。NaV1.1では、熱性発作に関係する9つ以上の遺伝子突然変異が報告されている(非特許文献34)。
【0013】
NaV1.5のアンタゴニストが開発され、心臓不整脈の治療に用いられている。電流に対する大きな非不応化成分を産生するNaV1.5の遺伝子欠損はヒトにおける長いQTと関係しており、また経口的に利用できる局所麻酔薬であるメキシリチンがこの症状の治療に用いられている(非特許文献35)。
【0014】
現在幾つかのNaチャネルブロッカーが、以下のような症状の治療に用いられ、又は臨床試験の対象とされている。癲癇(非特許文献36を参照)、急性疼痛(非特許文献37)、慢性疼痛(非特許文献38及び非特許文献39)、炎症性疼痛(非特許文献40)、神経障害疼痛(非特許文献41及び非特許文献42)、心臓不整脈(非特許文献43、及び非特許文献44)、神経保護(非特許文献45を参照)、及び麻酔薬(非特許文献46)。
【0015】
臨床的な重要性を有する様々な動物モデルが、多くの疼痛徴候におけるナトリウムチャネル調節物質の検討のために開発されている。例えば、悪性慢性疼痛(非特許文献47);大腿骨癌疼痛(非特許文献48);良性慢性骨疼痛(非特許文献49);慢性関節リウマチ(非特許文献50);骨関節炎(非特許文献51);脊髄狭窄(非特許文献52);後背部の神経障害痛(非特許文献53、非特許文献54);筋膜疼痛症候群(非特許文献55及び非特許文献56);線維症(非特許文献57を参照)、側頭下顎関節炎(非特許文献58);腹筋を含む慢性的な内臓疼痛(非特許文献59);骨盤/会陰疼痛(非特許文献60);膵臓疼痛(非特許文献61);IBS疼痛(非特許文献62、非特許文献63);慢性頭痛(非特許文献64);片頭痛(非特許文献65);群発性頭痛を含む緊張頭痛(非特許文献66);疱疹後神経痛を含む慢性的な神経障害疼痛(非特許文献68、及び非特許文献69);糖尿病性神経障害(非特許文献70及び非特許文献71);HIV−関連の神経障害(非特許文献72、非特許文献73、非特許文献74を参照)、三叉神経痛(非特許文献75及び非特許文献76);シャルコー−マリー歯神経障害(非特許文献77);遺伝性の感覚神経障害(非特許文献78);末梢神経損傷(非特許文献79、非特許文献80、非特許文献81、非特許文献82、非特許文献83);疼痛を伴う神経腫(非特許文献84、非特許文献85);異所性の近位及び末梢部の分泌(非特許文献86);神経根神経病(非特許文献87、非特許文献88);化学療法で誘導された神経障害疼痛(非特許文献89);放射線療法により誘発された神経障害疼痛、乳房切除後の疼痛(非特許文献90);中心疼痛(非特許文献91),脊髄損傷疼痛(非特許文献92);脳卒中後の疼痛、視床疼痛(非特許文献93);複合性局所疼痛症候群(非特許文献94、非特許文献95);phanton疼痛(非特許文献96、非特許文献97);難治性疼痛(非特許文献98);急性痛、手術後の急性疼痛(非特許文献99、非特許文献100);急性の筋骨格疼痛、関節炎(非特許文献101);機械的な後背部疼痛(非特許文献102);頚部の疼痛、腱炎、障害性/運動性疼痛(非特許文献103);腹痛を含む急性内臓痛、腎盂腎炎、虫垂炎、胆嚢炎、腸閉塞、ヘルニアなど(非特許文献104);胸部疼痛(心臓疼痛を含む)(非特許文献105);骨盤疼痛、腎疝痛疼痛、労働疼痛を含む急性の産科疼痛(非特許文献106);帝王切開術疼痛、急性の炎症性、火傷性及び外傷性疼痛、子宮内膜症を含む断続的な急性疼痛(非特許文献107);急性の帯状疱疹疼痛、鎌状赤血球性貧血、急性膵炎(非特許文献108);突出痛(breakthrough pain)、副鼻腔炎疼痛(歯疼痛)を含む口顔疼痛(非特許文献109、非特許文献110);多発性硬化症(MS)疼痛(非特許文献111);うつ病における疼痛(非特許文献112);ハンセン病疼痛、behcet疾患疼痛、有痛脂肪症、(非特許文献113);phlebitic疼痛、ギラン−バレー疼痛、脚部及び可動足指の疼痛、Haglund症候群、先端紅痛症疼痛(非特許文献114);ファブリー病の疼痛(非特許文献115);尿失禁を含む膀胱及び尿生殖器疾患(非特許文献116);活動亢進膀胱(非特許文献117);疼痛を伴う膀胱症候群(非特許文献118);間質性膀胱炎(IC)(非特許文献119、非特許文献120)、前立腺炎(非特許文献121、非特許文献122)。
【0016】
電位型カルシウムチャネルは膜貫通型の、マルチサブユニットタンパク質であり、膜の脱分極に応答して開き、細胞外環境からCaを取り込む。カルシウムチャネルは最初にチャンネル開口の時間及び電圧依存性、並びに薬理学的ブロックに対する感受性に基づいて分類される。例えば低電圧で活性化するタイプ(主にTタイプ)、及び高電圧で活性化するタイプ(L,N,P,Q又はRタイプ)に分類される。しかしこの分類方法は、表Bにまとめるような分子サブユニット組成に基づく命名法に取って代わられている(非特許文献123、非特許文献124)。カルシウムチャネルを形成する4つの主なサブユニットタイプ:α、αδ、β及びγが存在する(例えば非特許文献125)。αサブユニットは薬理学的特性の主要な決定要素であり、チャネル孔及び電圧センサーを含む(非特許文献126)。下記の表Iに示すように、αサブユニットの10のアイソフォームが公知である。αδサブユニットは2つのジスルフィド結合したサブユニット(α、主に細胞外に存在)と膜内外δサブユニットからなる。αδの4つのアイソフォームが公知である(αδ−1、αδ−2、αδ−3及びαδ−4)。βサブユニットはαサブユニットと結合する非グリコシル化細胞質タンパク質である。4つのアイソフォームが公知であり、βからβと称される。γサブユニットはCa1及びCa2チャネルの構成要素として生化学的に単離された膜貫通タンパク質である。少なくとも8つのアイソフォーム(γからγ)が公知である(非特許文献127)。表Iに示すように、電位型カルシウムチャネルの命名法はαサブユニットの含有に基づく。各タイプのαサブユニットは様々なβ、αδ又はγサブユニットと会合でき、その結果、各Caタイプは多様なサブユニットの組合せをとることができる。
【0017】
表B
【0018】
【表2】

Ca2流はほぼ排他的に中枢及び末梢神経系、並びに神経内分泌系細胞に存在し、シナプス前電位型カルシウム流の支配的な形を構成する。シナプス前活動電位によってチャンネル開口が生じ、神経伝達物質の放出はその次のカルシウム取り込みにより急激に行われる。すなわち、Ca2チャネルは神経伝達物質の放出を媒介する中心的役割を演じる。
【0019】
Ca2.1及びCa2.2は各々、ペプチド毒素ω−コノトキシン−MVIIC及びω−コノトキシン−GVIAに対する高親和性結合部位を有し、これらのペプチドの存在により各チャネルタイプの分布及び機能が決定づけられる。Ca2.2は脊髄後角のラミナI及びIIの脊髄神経節及び神経単位から、神経単位のシナプス前神経末端にわたり、広範囲に発現される(非特許文献128、非特許文献129)。Ca2.2チャネルは脊髄の第2次及び第3次の介在ニューロンとの間のシナプス前端末においても検出されている。神経伝達の両方の部位は、脳への疼痛情報のリレーにとり非常に重要である。
【0020】
痛覚は、急性、刺激性及び神経障害性の3つの異なるタイプに大別できる。急性痛は、組織傷害を生じさせうる刺激から生物体を回避させる際に重要となる保護機能である。さもないと、重度の熱的、物理的、化学的なインプットにより生物体に顕著な傷害が加わるおそれがある。急性痛は損傷環境から急速に個人を移動させるのに役に立つ。急性痛は一般に短時間で、強い。一方、炎症性の疼痛では非常に長い期間持続し、またその強度は等級分けされている。炎症は組織傷害、自己免疫反応及び病原浸潤などの多くの理由により生じうる。炎症性の疼痛は、P物質、ヒスタミン、酸、プロスタグランジン、ブラジキニン、CGRP、サイトカイン、ATP及び神経伝達物質放出からなる「炎症性スープ」により媒介される。第三の疼痛は神経障害性疼痛であり、長期間持続する慢性的な疼痛をもたらしうる病理学的な「感作」状態を生じさせるニューロンタンパク質及び回路の再編成に結びつく神経傷害が例示される。この種の疼痛には適応することが困難で、特に既存の治療法では治療が困難である。
【0021】
疼痛、特に神経障害性疼痛及び難治性疼痛に対しては大きな医学的ニーズが存在する。何百万もの患者が、現在の治療法では制御できない激痛に苦しんでいる。現在疼痛の治療に用いられる薬剤としては、NSAIDS、COX2阻害剤、オピオイド、三環系抗鬱薬及び抗痙攣剤が挙げられる。特に神経障害性疼痛は、高用量のオピオイドでなければ有効でないため、治療が困難である。ガバペンチンは現在知られている中で最良の神経障害性疼痛の治療剤であるが、適度の治療効果を示すのは60%の患者に留まっている。当該薬剤は非常に安全性が高く、副作用も通常許容できる範囲であるが、鎮静には高用量を要する。
【0022】
神経障害疼痛の治療の標的としてのCav2.2の評価は、ジコノタイド(別名ω−コノトキシン−MVIIA)(このチャネルの選択的ペプチドブロッカー)を用いた試験により行う(非特許文献130、非特許文献131)。ヒトにおけるジコノタイドのクモ膜下腔内注入は、難治性疼痛、癌疼痛、オピオイド耐性疼痛及び神経障害疼痛の治療に効果的である。毒素はモルヒネよりも高い効果で、ヒトの疼痛治療において85%の成功率を示す。経口的に利用できるCa2.2アンタゴニストはクモ膜下腔内注入を必要とすることなく同程度の有効性を示す必要がある。Ca2.1及びCa2.3は侵害受容経路の神経単位においても存在し、これらのチャネルのアンタゴニストを疼痛治療に使用することもできる。
【0023】
Ca2.1、Ca2.2又はCa2.3のアンタゴニストはまた、明らかに過剰なカルシウムのインプットなどによる中枢神経系の他の病理の治療に有用である。脳虚血及び脳卒中は、神経単位の脱分極による過剰なカルシウム流入に関係する。Ca2.2アンタゴニストであるジコノタイドは、動物実験において病巣虚血モデルの梗塞部サイズを減少させる効果を示し、Ca2.2アンタゴニストが脳卒中の治療に使用できることを示唆する。同様に、神経単位への過剰なカルシウム流入を減らすことは、癲癇、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、多発脳梗塞性痴呆および他のクラスの痴呆、筋萎縮性側索硬化症、健忘症又は毒物又は他の有毒物質によって生じるニューロン傷害など、多様な疾患の治療に有用であると考えられる。
【0024】
Ca2.2もまた交感神経系の神経単位からの神経伝達物質の放出を媒介するため、アンタゴニストを用いて心血管疾患(例えば高血圧、心臓不整脈、狭心症、心筋梗塞及び鬱血性心不全)を治療することができる。
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【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
残念なことに、上記の疾患症状の治療に現在使用されているナトリウムチャネルブロッカー及びカルシウムチャネルブロッカーの有効性は、多くの副作用によって大部分が損なわれている。これらの副作用としては、様々なCNS障害(例えばかすみ目、めまい、嘔気、鎮静、並びに生命を脅かしうる心臓不整脈及び心不全)が挙げられる。したがって、新規なNaチャネル及びCaチャネルアンタゴニスト(好ましくは高い効力及び少ない副作用を有する)の開発に対するニーズが依然存在する。残念ながら、上記の通り、上記の疾患症状に対して現在使用されているナトリウムチャネルブロッカー及びカルシウムチャネルブロッカーの有効性は多くの副作用によってその大部分が抑制される。
【課題を解決するための手段】
【0026】
(発明の要旨)
鋭意研究の結果、本発明において電位型ナトリウムチャネル及びカルシウムチャネルの阻害剤として有用な化合物及びその薬学的に許容できる組成物を見出すに至った。これらの化合物は一般式Iで表される。
【0027】
【化6】

又はその薬理学的に許容できる塩。式中、変数Ra、Rb、Q、Rw、m及びn、並びに環Bは本願明細書に定義する通りである。
【0028】
これらの化合物及び薬学的に許容できる組成物は、限定されないが、以下のような様々な疾患、障害又は症状の治療又は低減に有用である:急性、慢性、神経障害性もしくは炎症性の疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、疱疹神経痛、全身神経痛(general neuralgia)、癲癇又は癲癇状態、神経変性障害、不安及び鬱病のような精神医学的障害、筋緊張症、不整脈、運動障害、神経内分泌系障害、運動失調、多発性硬化症、過敏性腸症候群、失調症、内臓痛、変形性関節症の疼痛、疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia)、糖尿病性神経障害、神経根性疼痛(radicular pain)、坐骨神経痛、背痛、頭部若しくは頚部の疼痛、重度若しくは難治性の疼痛、侵害受容疼痛、突出痛、術後疼痛又は癌疼痛。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
(発明の詳細な説明)
I. 定義
本発明において表記する元素は元素周期律表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics,75th Edに従うものである。また、有機化学の一般原則は”Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito: 1999,and ”March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B. and March,J.,John Wiley&Sons,New York:2001に記載されており、その全開示内容を本願明細書に援用する。
【0030】
本明細書中で使用される用語「調節する」とは、例えば活性を顕著に増減させることを意味する。イオンチャネル(例えばカルシウムイオンチャネル)の活性を増加させることによって、イオンチャネル活性(例えばカルシウムイオンチャネル活性)を調節する化合物を、アゴニストと称する。イオンチャネル(例えばカルシウムイオンチャネル)の活性を減少させることによって、イオンチャネル活性(例えばカルシウムイオンチャネル活性)を調節する化合物を、アンタゴニストと称する。アゴニストはイオンチャネル(例えばカルシウムイオンチャネル)と相互作用し、内因性リガンド結合に応答して細胞内シグナルを変換する受容体の能力を増強する。アンタゴニストはイオンチャネルと相互作用し、内因性リガンド又は基質と受容体との結合部位に関して競合し、内因性リガンド結合に応答して細胞内シグナルを変換する受容体の能力を低下させる。
【0031】
用語「イオンチャネルにより媒介される疾患の治療又は低減」とは、直接イオンチャネル活性によって生じる疾患の治療、及び間接的にイオンチャネル活性によって生じる疾患の兆候の緩和を指す。イオンチャネル活性に影響を受ける疾患の例としては、以下の症状が挙げられるが、これに限定されない:急性、慢性、神経障害性もしくは炎症性の疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、疱疹神経痛、全身神経痛、癲癇又は癲癇状態、神経変性障害、不安及び鬱病のような精神医学的障害、筋緊張症、不整脈、運動障害、神経内分泌系障害、運動失調、多発性硬化症、過敏性腸症候群、失調症、内臓痛、変形性関節症の疼痛、疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、神経根性疼痛、坐骨神経痛、背痛、頭部若しくは頚部の疼痛、重度若しくは難治性の疼痛、侵害受容疼痛、突出痛、術後疼痛又は癌疼痛。
【0032】
本発明の用語「脂肪族化合物」にはアルキル、アルケニル、アルキニル化合物が包含される。
【0033】
本発明で使用する「アルキル」基とは1−8個(例えば1−6又は1−4個)の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は直鎖状であってもよく、又は分岐状であってもよい。アルキル基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘプチル及び2−エチルヘキシル基が挙げられる。アルキル基は例えば以下のうちの1つ以上の置換基で任意に置換されてもよい:シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシル(同じ原子又は隣接する原子上の2つのアルコキシ基が、それらが結合する1つ以上の原子と共に環を形成してもよい)、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アシル、スルホニル(例えばアルキルスルホニル又はアリールスルホニル)、スルフィニル(例えばアルキルスルフィニル)、スルファニル(例えばアルキルスルファニル)、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、チオアミド、オキソ、カルバモイル、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、シクロアルキル−アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキル−カルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキル−アルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ又はヘテロアラルキルカルボニルアミノ基。
【0034】
本発明の「アルケニル」基の用語は2−8個(例えば2−6又は2−4個)の炭素原子、及び少なくとも1つの二重結合を含む脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基と同様、アルケニル基は直鎖状であってもよく、又は分岐状であってもよい。アルケニル基の例としては限定されないがアリル、イソプレニル、2−ブテニル及び2−ヘキセニル基が挙げられる。アルケニル基は、例えば以下の1つ以上の置換基によって任意に置換されてもよい:シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシル(同じ原子又は隣接する原子上の2つのアルコキシ基が、それらが結合する1つ以上の原子と共に環を形成してもよい)、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アシル、スルホニル(例えばアルキルスルホニル又はアリールスルホニル)、スルフィニル(例えばアルキルスルフィニル)、スルファニル(例えばアルキルスルファニル)、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、チオアミド、オキソ、カルバモイル、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、シクロアルキル−アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキル−カルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキル−アルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ又はヘテロアラルキルカルボニルアミノ基。
【0035】
本発明の「アルキニル」基とは、2〜8個(例えば2〜6又は2〜4個)の炭素原子を含有し、少なくとも1つの三重結合を有する脂肪族炭化水素基を指す。アルキニル基は直鎖状であってもよく、又は分岐状であってもよい。アルキニル基の例としては限定されないが、プロパルギル及びブチニル基が挙げられる。アルキニル基は、例えば以下の1つ以上の置換基によって任意に置換されてもよい:シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシル(同じ原子又は隣接する原子上の2つのアルコキシ基が、それらが結合する1つ以上の原子と共に環を形成してもよい)、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アシル、スルホニル(例えばアルキルスルホニル又はアリールスルホニル)、スルフィニル(例えばアルキルスルフィニル)、スルファニル(例えばアルキルスルファニル)、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、チオアミド、オキソ、カルバモイル、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アミノ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、オキソ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、アルキルスルファニル、アルキルスルフィニル、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、シクロアルキル−アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキル−カルボニルアミノ、ヘテロシクロアルキル−アルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ又はヘテロアラルキルカルボニルアミノ基。
【0036】
本発明の「アミノ」基とは−NRを指す。式中、R及びRの各々は独立に水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキル基であり、各々本願明細書において定義され、任意に置換されてもよい。用語「アミノ」基が末端基(例えばアルキルカルボニルアミノ)でないときは、−NR−を意味する。Rは上記記載と同じ意味を有する。
【0037】
本発明において単独で、あるいは「アラルキル」、「アラルコキシ」又は「アリールオキシアルキル」における大きい方の部分として用いられる「アリール」基とは、例えばフェニル、ナフチル又は2〜3の環を有するベンゾ縮合基のことをを指す。例えば、ベンゾ縮合基としては1又は2個のC4−8炭素環部分(例えば1、2、3、4−テトラヒドロナフチル、インダニル又はフルオレニル)と縮合したフェニル基が挙げられる。アリール基は例えば以下の1つ以上の置換基によって任意に置換されてもよい:アルキル(カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びハロアルキル(例えばトリフルオロメチル)を含む)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキル)アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)アルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、スルホニル(例えばアルキルスルホニル)、スルフィニル(例えばアルキルスルフィニル)、スルファニル(例えばアルキルスルファニル)、スルホキシウレア、チオウレア、スルファモイル、チオアミド、オキソ又はカルバモイル基。
【0038】
本発明の「アラルキル」基とはアリール基で置換されたアルキル基(例えばC1−4アルキル基)を指す。「アルキル」基及び「アリール」基は本願明細書で定義されるとおりである。アラルキル基の例はベンジルである。「ヘテロアラルキル」基とはヘテロアリール基で置換されたアルキル基を指す。「アルキル」基及び「ヘテロアリール」期は本願明細書に定義する通りである。
【0039】
本発明の「脂環式」基には、「シクロアルキル」基及び「シクロアルケニル」基が包含される。
【0040】
本発明の「シクロアルキル」基とは、3〜10個(例えば5〜10)個の炭素原子数の飽和炭素環であって、単環式若しくは二環式(縮合若しくは架橋)環を指す。シクロアルキル基の例としてはシクロプロピル(シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、クビル、オクタヒドロ−インデニル、デカヒドロ−ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル及びビシクロ[3.3.2]デシル基及びアダマンチル基が挙げられる。本発明の「シクロアルケニル」基とは、1つ以上の二重結合を有する3〜10個(例えば4〜8個)の炭素原子数の非芳香族炭素環を意味する。シクロアルケニル基の例としてはシクロペンテニル、1,4−シクロヘキサ−ジ−エニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、ヘキサヒドロ−インデニル、オクタヒドロナフチル、ビシクロ[2.2.2]オクテニル及びビシクロ[3.3.1]ノネニルが挙げられる。シクロアルキル又はシクロアルケニル基は、例えば以下のうちの1つ以上の置換基で任意に置換されてもよい:アルキル(カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びハロアルキル(例えばトリフルオロメチル)を含む)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキル)アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)アルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、スルホニル(例えばアルキルスルホニル)、スルフィニル(例えばアルキルスルフィニル)、スルファニル(例えばアルキルスルファニル)、スルホキシウレア、チオウレア、スルファモイル、チオアミド、オキソ又はカルバモイル基。
【0041】
本発明のヘテロシクロ脂肪族基という用語にはヘテロシクロアルキル基及びヘテロシクロアルケニル基が包含される。
【0042】
本発明の「ヘテロシクロアルキル」基とは、3〜10員を有する単環もしくは二環の(縮合又は架橋)(例えば5〜10員を有する単環又は二環)飽和した環状構造を指し、環に含まれる原子の1つ以上がヘテロ原子(例えばN、O又はS)である。ヘテロシクロアルキル基の例としてはピペリジニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、ジオキソラニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロ−ベンゾフリル、オクタヒドロ−クロメニル、オクタヒドロ−チオクロメニル、オクタヒドロ−インドリル、オクタヒドロ−ピリンジニル、デカヒドロ−キノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェニル、2−オキサ−ビシクロ[2.2.2]オクチル、1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクチル、3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクチル及び2,6−ジオキサ−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニル基が挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基はフェニル部分(例えばテトラヒドロイソキノリン)と縮合してもよい。本明細書で用いられる「ヘテロシクロアルケニル」基とは、1つ以上の二重結合を有する、単環もしくは二環の(例えば5から10員を有する単環又は二環の)非芳香族環の構造のことを指し、環中に含まれる原子の1つ以上がヘテロ原子(例えばN、O又はS)である。ヘテロシクロアルキル又はヘテロシクロアルケニル基は例えば以下のうちの1つ以上の置換基によって任意に置換されてもよい:アルキル(カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びハロアルキル(例えばトリフルオロメチル)を含む)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル(例えばベンズイミダゾリジニル)、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ(同じ原子又は隣接する原子上の2つのアルコキシ基が、それらが結合する1つ以上の原子と共に環を形成してもよい)、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキル)アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)アルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、スルホニル(例えばアルキルスルホニル又はアリールスルホニル)、スルフィニル(例えばアルキルスルフィニル)、スルファニル(例えばアルキルスルファニル)、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、チオアミド、オキソ又はカルバモイル基。
【0043】
本明細書で用いられる「ヘテロアリール」基とは、環中に含まれる原子の1つ以上がヘテロ原子(例えばN、O又はS)であり、4〜15の環原子を有する単環、二環若しくは三環の環状構造を指し、その二環若しくは三環の1つ以上の環が芳香族である。ヘテロアリール基には、2〜3の環を有するベンゾ縮合環が包含される。例えば、ベンゾ縮合基には1又は2個のC4−8複素環部分(例えばインドリニル及びテトラヒドロキノリニル)と縮合したフェニル基が挙げられる。ヘテロアリールの若干の例としてはアゼチジニル、ピリジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール及びベンゾ[1,3]ジオキソールが挙げられる。ヘテロアリール基は、例えば以下のうちの1つ以上の置換基によって任意に置換されてもよい:アルキル(カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル及びハロアルキル(例えばトリフルオロメチル)を含む)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキル)アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)アルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、スルホニル(例えばアルキルスルホニル又はアリールスルホニル)、スルフィニル(例えばアルキルスルフィニル)、スルファニル(例えばアルキルスルファニル)、スルホキシ、ウレア、チオウレア、スルファモイル、チオアミド、オキソ又はカルバモイル基。本発明の「ヘテロアラルキル」基とは、ヘテロアリール基により置換されたアルキル基(例えばC1−4アルキル基)を意味する。「アルキル」及び「ヘテロアリール」は上記で定義したとおりである。
【0044】
本発明の「環状」基としては、脂環、ヘテロ脂環、アリール又はヘテロアリールなどの単環、二環及び三環の構造が挙げられる。
【0045】
本発明の「アシル」基とは、ホルミル基又はアルキル−C(=O)を指し、「アルキル」は上記で定義したとおりである。アセチル及びピバロイルはアシル基の例である。
【0046】
本発明の「カルバモイル」基とは、−O−CO−NR又は−NR−CO−O−Rの構造を有する基を指し、式中、R及びRは上記で定義したとおりであり、Rはアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアラルキル基であってもよい。
【0047】
本発明の「カルボキシ」及び「スルホ」基は各々−COOH又は−COOR、及び−SOH又は−SOを指す。
【0048】
本発明の「アルコキシ」基とはアルキル−O−基を指し、「アルキル」基は上記で定義したとおりである。
【0049】
本発明の「スルホキシ」基とは−O−SO−R又は−SO−O−Rのことを指し、Rは上記で定義したとおりである。
【0050】
本発明の「スルホニル」基とは−S(O)−Rを指し、Rは上記で定義したとおりである。
【0051】
本発明の「スルフィニル」基とは−S(O)−Rを指し、Rは上記で定義したとおりである。
【0052】
本発明の「スルファニル」基とは−S−Rを指し、Rは上記で定義したとおりである。
【0053】
本発明の「ハロゲン」又は「ハロ」基とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0054】
本発明の「ハロ脂肪族」基とは、1〜3個のハロゲンで置換された脂肪族基を指す。例えば、用語「ハロアルキル」には−CF基が包含される。
【0055】
本発明の「スルファモイル」基は−S(O)−NR又は−NR−S(O)−Rの構造を指し、R、R及びRは上記で定義したとおりである。
【0056】
本発明の「スルファミド」基とは、−NR−S(O)−NR、の構造を指し、R、R及びRは上記で定義したとおりである。
【0057】
本発明において単独使又は他の基との組み合わせで用いる「カルボニルアミノ」基とは、例えば−C(O)−NR−、−NR−C(O)−及び−C(O)−N(Rなどのアミド基のことを指す。例えば、アルキルカルボニルアミノ基にはアルキル−C(O)−NR−及びアルキル−NR−C(O)−が包含される。
【0058】
本発明の「ウレア」基とは−NR−CO−NRで表される構造を指し、「チオウレア」基とは−NR−CS−NRで表される構造を指す。R、R及びRは上記で定義したとおりである。
【0059】
「任意に置換されてもよい」の用語は用語「置換若しくは未置換の」と交換可能に使用される。本願明細書に記載のように、本発明の化合物は例えば本発明で上記した、又は特定のクラス、サブクラス及び分子種として例証される1つ以上の置換基で任意に置換されてもよい。本願明細書に記載のように、式I及びIIの可変要素Ra、Rb、Rw、Q、L、Rp及びLIIには、具体的な基(例えばアルキル及びアリール)が包含される。特に明記しない限り、可変要素Ra、Rb、Rw、Q、L、Rp及びLIIの各々の具体的な基は、本願明細書に記載されている1つ以上の置換基で任意に置換されてもよい。具体的な基の各置換基は、ハロ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロアルキル及びアルキルのうちの1〜3個で更に任意に置換されてもよい。例えば、アルキル基はアルキルスルファニル基で置換されてもよく、そのアルキルスルファニル基はハロ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロアルキル及びアルキル基のうちの1〜3個で任意に置換されてもよい。更なる例として、(シクロアルキル)カルボニルアミノのシクロアルキル部分は、ハロ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロアルキル及びアルキル基のうちの1〜3個で任意に置換されてもよい。
【0060】
一般に、用語「置換された」(用語「任意に」をその前に有するか否かは問わない)は特定の置換基のラジカルで、所定の構造中の水素ラジカルを置き換えることを指す。特定の置換基は上記の通り定義され、またその化合物及びその実施例中の説明において記載されている。特に明記しない限り、任意に置換されてもよい基は、基の置換可能な位置に他の置換基を有してもよく、ある特定の構造における複数の位置で、特定の基から選択される複数の置換基で置換されてもよい場合、置換基はあらゆる位置で同じであってもよく、異なってもよい。環状の置換基(例えばヘテロシクロアルキル基)は他の環(例えばシクロアルキル基)と結合してもよく、それによりスピロ二環を形成し、例えば両方の環系が1つの原子を共有してもよい。当業者が従来技術において認識するように、本発明により想像される置換基の組合せは、安定若しくは化学的に適合性を有する化合物の形成を可能とするような組合せである。
【0061】
本明細書の用語「安定若しくは化学的に適用可能な」とはそれらの調製、検出及び好ましくはそれらの回収、精製、及び本願明細書に開示される1つ以上の使用に供した場合に、実質的に変化しない化合物のことを指す。幾つかの実施形態では、安定な化合物又は化学的に可能な化合物は、少なくとも1週間、40℃以下の温度で、水分又は他の化学的に反応性条件の非存在下に維持した場合に実質的に変化しない。
【0062】
本発明の有効量とは、治療対象の患者に治療効果を与えるのに必要となる量として定義され、通常は患者の年齢、体表面積、体重及び症状に基づいて決定される。動物及びヒトに対する投与量の相互関係(体表のmg/m)はFreireichら、Cancer Chemother.Rep.,50:219(1966)により記載されている。体表面積は患者の身長及び重量から算出することもできる。Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,New York,537(1970)を参照。本発明の「患者」とは、ヒトを含む哺乳類を指す。
【0063】
特に明記しない限り、本願明細書に示される構造には、ある構造に対する全ての異性体(例えば鏡像異性、ジアステレオ異性体及び幾何(又は高次構造)異性体)が包含され、例えば非対称中心に対するR及びS立体配置、(Z)及び(E)の二重結合異性体、並びに(Z)及び(E)の配座異性体が挙げられる。したがって、本発明の1つの立体化学的異性体、並びにその化合物の鏡像異性、ジアステレオ異性体、及び幾何(又は高次構造)異性体の混合物もまた本発明の範囲内である。特に明記しない限り、本発明の化合物の全ての互変異性形は本発明の範囲内である。更に、特に明記しない限り、本願明細書に表す構造には1つ以上の同位元素富化した原子の存在という点でのみ異なる化合物が包含される。例えばジュウテリウムもしくはトリチウムによる水素の置換以外の構造を有するか、又は13C−若しくは14C富化された炭素による炭素原子の置換以外の構造を有する、本発明の化合物もまた本発明の範囲内である。かかる化合物は例えば生物学的アッセイの解析ツール又はプローブとして有用である。
【0064】
II. 化合物
本発明は電位型ナトリウムチャネル及びカルシウムチャネルの阻害剤として有用な化合物の提供に関する。
【0065】
A.一般的な実施態様
一実施形態において、電位型ナトリウムチャネル及びカルシウムチャネルの阻害剤は、式I
【0066】
【化7】

の構造を有するか、又はその薬学的に許容できる塩である。式中、環Bはハロ、シアノ、アルコキシ、ニトロ、ハロアルキル、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、アミノ、カルボキシ又は任意に置換されてもよい脂肪族基のうちの1つ又は2つによって任意に置換されてもよく、各Raは独立に水素、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、任意に置換されてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されてもよい脂環式基又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であって、各Rbは独立に水素、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、任意に置換されてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されてもよい脂環式基又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であるか、又はRa及びRbはそれらが結合する窒素原子と共に任意に置換されてもよいヘテロ脂環式環を形成し、式中、ヘテロ脂肪族環はO、S及びNから選択される0から2個の更なるヘテロ原子を含み、各Qは任意に置換されてもよい分岐若しくは未分岐のC−C−アルキル基であり、各Lは存在しないか、−O−、−NRc−又は−S−であり、各Rcは水素、任意に置換されてもよい脂肪族化合物、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、−C(O)−Ra又はC(O)−ORaであり、各Rwは任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であり、各nは1、2又は3であり、n及びmの合計が2、3、4、5、又は6である場合、各mは1、2又は3である。)
他の実施形態は以下の式IIの構造を有する、電位型ナトリウムチャネル及びカルシウムチャネルの阻害剤
【0067】
【化8】

又はその薬学的に許容できる塩の提供に関する。式中、環Bはハロ、シアノ、アルコキシ、ニトロ、ハロアルキル、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、アミノ、カルボキシ又は任意に置換されてもよい脂肪族基のうちの1個又は2個によって任意に置換されてもよく、各Raは独立に水素、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、任意に置換されてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されてもよい脂環式基又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であって、各Rbは独立に水素、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、任意に置換されてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されてもよい脂環式基又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であるか、又はRa及びRbはそれらが結合する窒素原子と共に任意に置換されてもよいヘテロ脂環式環を形成し、式中、ヘテロ脂肪族環はO、S及びNから選択される0から2個の更なるヘテロ原子を含み、各Rqは水素又は任意に置換されてもよい脂肪族基であり、各LIIは存在しないか、−CH−、−O−、−NRc−又は−S−であり、各Rcは水素、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいアラルキル基、−C(O)−Ra又は−C(O)−ORaであり、各Rwは任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であり、各pは1又は2である。)
B.具体的な実施態様
i.置換基Ra及びRb
各Ra及びRbは同じである。各Ra及びRbは異なる。各Ra及びRbは水素である。Raは水素であり、Rbは水素でない。
【0068】
各Raは任意に置換されてもよい脂肪族(例えば任意に置換されてもよいアルキル、任意に置換されてもよいアルケニル又は任意に置換されてもよいアルキニル)基である。各Raは任意に置換されてもよいアルキル(例えば任意に置換されてもよいメチル、任意に置換されてもよいエチル、任意に置換されてもよいプロピル、任意に置換されてもよいブチル)基である。各Raは非置換アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)基である。各Rbは任意に置換されてもよい脂肪族(例えば任意に置換されてもよいアルキル、任意に置換されてもよいアルケニル又は任意に置換されてもよいアルキニル)基である。各Rbは任意に置換されてもよいアルキル(例えば任意に置換されてもよいメチル、任意に置換されてもよいエチル、任意に置換されてもよいプロピル、任意に置換されてもよいブチル)基である。各Rbは独立に非置換アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)基である。各Raはメチルである。各Rbはメチルである。Ra及びRbは両方とも非置換アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)基である。Ra及びRbは両方ともメチルである。
【0069】
各Raは任意に置換されてもよいアリール(例えばモノ−又はジ−炭素環式芳香族)基である。各Raは任意に置換されてもよいモノ−炭素環式芳香族の(単環式アリール)基(例えば任意に置換されてもよいフェニル基)である。各Raはモノ−炭素環式芳香族基(例えばフェニル基)である。各Raは任意に置換されてもよいジ−炭素環式芳香族基(例えばナフチル、インデニル又はアズレニル)である。各Raはジ−炭素環式芳香族基(「ビシクロアリール」基)(例えばナフチル、インデニル又はアズレニル)である。各Rbは任意に置換されてもよいアリール(例えばモノ−又はジ−炭素環式芳香族)基である。各Rbは任意に置換されてもよいモノ−炭素環式芳香族(単環式アリール)基(例えば任意に置換されてもよいフェニル基)である。各Rbはモノ−炭素環式芳香族(例えばフェニル)基である。各Rbは任意に置換されてもよいジ−炭素環式芳香族(二環式アリール)基(例えばナフチル、インデニル又はアズレニル基)である。各Rbはジ−炭素環式芳香族(例えばナフチル、インデニル又はアズレニル)基である。
【0070】
各Raは任意に置換されてもよいヘテロアリール(例えばモノ−又はジ複素環式芳香族)基である。各Raは任意に置換されてもよいモノ複素環式芳香族(単環式ヘテロアリール)基(例えばフラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラザリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル及びピラジニル基)であり、各々は任意に置換されてもよい。各Raは任意に置換されてもよい5員のモノ複素環式芳香族(例えばフラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラザリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル及びトリアゾリル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Raは任意に置換されてもよい6員のモノ複素環式芳香族(例えばピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル及びピラジニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよいヘテロアリール(例えばモノ−(単環ヘテロアリール)又はジ複素環式芳香族)基である。各Rbは任意に置換されてもよいモノ複素環式芳香族(例えばフラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラザリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル及びピラジニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよい5員のモノ複素環式芳香族(例えばフラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラザリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル及びトリアゾリル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよい6員のモノ複素環式芳香族(例えばピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル及びピラジニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。
【0071】
各Raは任意に置換されてもよいジ複素環式芳香族基(「二環式ヘテロアリール」)(例えばインドリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、1H−インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、フタルアジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びプテリジニル)であり、各々任意に置換されてもよい。各Raは任意に置換されてもよい9員のジ複素環式芳香族基(例えばインドリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、1H−インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル及びプリニル)であり、各々は任意に置換されてもよい。各Raは任意に置換されてもよい10員の二複素環式芳香族基(例えば4H−キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、フタルアジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びプテリジニル)であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよい二複素環式芳香族の(「二環ヘテロアリール」)基(例えばインドリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、1H−インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、フタルアジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びプテリジニル)であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよい9員のジ複素環式芳香族基(例えばインドリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、1H−インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル及びプリニル)であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよい10員の二複素環式芳香族基(例えば4H−キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、シノリニル、フタルアジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル及びプテリジニル)であり、各々は任意に置換されてもよい。
【0072】
各Raは用語アリール(例えばテトラヒドロナフタリル)に包含される、任意に置換されてもよいベンゾ縮合の二環式アリール部分である。各Raは用語「ヘテロアリール」(例えばインドリニル及びテトラヒドロキノリニル)に包含される任意に置換されてもよいベンゾ縮合の二環式へテロアリール部分である。各Rbは用語「アリール」(例えばテトラヒドロナフタリル)に包含される任意に置換されてもよいベンゾ縮合のシクロアリール部分である。各Rbは用語「ヘテロアリール」(例えばインドリニル及びテトラヒドロノリニル)に包含される任意に置換されてもよいベンゾ縮合の二環式ヘテロアリール部分である。
【0073】
各Raは任意に置換されてもよいアラルキル(例えばアルキル及びアリールが任意に置換されてもよい(C−C)−アルキルアリール)基である。各Raは任意に置換されてもよい(C−C)−アルキル単環式アリール(例えばアルキル及びフェニルが任意に置換されてもよい(C−C)−フェニル)基である。各Raは(C−C)−フェニル(例えばベンジル)基である。各Raは任意に置換されてもよい(C−C)−アルキル二環式アリール(例えば(C−C)−ナフチル、(C−C)−インデニル、又はアルキル及び二環式アリールが任意に置換されてもよい(C−C)−アズレニル)基である。各Raは任意に置換されてもよい(C−C)−アルキル−ベンゾ縮合二環式アリール(例えば(C−C)−アルキル−テトラヒドロナフタリル)基である。各Rbは任意に置換されてもよいアラルキル(例えばアルキル及びアリールが任意に置換されてもよい(C−C)−アルキルアリール)基である。各Rbは任意に置換されてもよい(C−C)−アルキル単環式アリール(例えばアルキル及びフェニルが任意に置換されてもよい(C−C)−フェニル)基である。各Rbは(C−C)−フェニル(例えばベンジル)基である。各Rbは任意に置換されてもよい(C−C)−アルキル二環式アリール(例えば(C−C)−ナフチル、(C−C)−インデニル又はアルキル及び二環式アリールが任意に置換されてもよい(C−C)−アズレニル)基である。各Rbは任意に置換されてもよいアルキル−ベンゾ縮合の(C−C)二環式アリール(例えば(C−C)−アルキル−テトラヒドロナフタリル)基である。
【0074】
各Raは任意に置換されてもよいヘテロアラルキル(例えばアルキル及びヘテロアリールが任意に置換されてもよい(C−C)−アルキル−ヘテロアリール)基である。各Raは任意に置換されてもよい(C−C)−アルキル単環式ヘテロアリールであり、例えば(C−C)−フラニル、(C−C)−ピロリル、(C−C)−オキサゾリル、(C−C)−チアゾリル、(C−C)−イミダゾリル、(C−C)−ピラザリル、(C−C)−イソキサゾリル、(C−C)−イソチアゾリル、(C−C)−トリアゾリル、(C−C)−ピリジニル、(C−C)−ピリダジニル、(C−C)−ピリミジニル及び(C−C)−ピラジニル基であり、アルキル及びヘテロアリール基は任意に置換されてもよい。各Raは−CH−ヘテロアリール、例えば−CH−フラニル、−CH−ピロリル、−CH−オキサゾリル、−CH−チアゾリル、−CH−イミダゾリル、−CH−ピラザリル、−CH−イソキサゾリル、−CH−イソチアゾリル、−CH−トリアゾリル、−CH−ピリジニル、−CH−ピリダジニル、−CH−ピリミジニル及び−CH−ピラジニル基である。各Raは任意に置換されてもよいアルキル二環式(C−C)ヘテロアリール(例えば(C−C)−インドリジニル、(C−C)−インドリル、(C−C)−イソインドリル、(C−C)−ベンゾフラニル、(C−C)−ベンゾチオフェニル、(C−C)−1H−インダゾリル、(C−C)−ベンズイミダゾリル、(C−C)−ベンズチアゾリル、(C−C)−プリニル、(C−C)−4H−キノリジニル、(C−C)−キノリニル、(C−C)−イソキノリニル、(C−C)−シノリニル、(C−C)−フタルアジニル、(C−C)−キナゾリニル、(C−C)−キノキサリニル、(C−C)−ナフチリジニル及び(C−C)−プテリジニル)基であり、アルキル及び二環式ヘテロアリール基が任意に置換されてもよい。各Raは任意に置換されてもよい(C−C)−ベンゾ縮合二環式ヘテロアリール(例えば(C−C)−インドリニル及び(C−C)−テトラヒドロキノリニル)基である。
【0075】
各Rbは任意に置換されてもよいヘテロアラルキル(例えばアルキル及びヘテロアリールが任意に置換されてもよい(C−C)−アルキル−ヘテロアリール)基である。各Raは任意に置換されてもよい(C−C)−アルキル単環式ヘテロアリールであり、例えば(C−C)−フラニル、(C−C)−ピロリル、(C−C)−オキサゾリル、(C−C)−チアゾリル、(C−C)−イミダゾリル、(C−C)−ピラザリル、(C−C)−イソキサゾリル、(C−C)−イソチアゾリル、(C−C)−トリアゾリル、(C−C)−ピリジニル、(C−C)−ピリダジニル、(C−C)−ピリミジニル及び(C−C)−ピラジニル基であり、アルキル及びヘテロアリール基が任意に置換されてもよい。各Rbは−CH−ヘテロアリール基であり、例えば−CH−フラニル、−CH−ピロリル、−CH−オキサゾリル、−CH−チアゾリル、−CH−イミダゾリル、−CH−ピラザリル、−CH−イソキサゾリル、−CH−イソチアゾリル、−CH−トリアゾリル、−CH−ピリジニル、−CH−ピリダジニル、−CH−ピリミジニル及び−CH−ピラジニル基である。各Rbは任意に置換されてもよいアルキル二環式(C−C)ヘテロアリールであり、例えば(C−C)−インドリジニル、(C−C)−インドリル、(C−C)−イソインドリル、(C−C)−ベンゾフラニル、(C−C)−ベンゾチオフェニル、(C−C)−1H−インダゾリル、(C−C)−ベンズイミダゾリル、(C−C)−ベンズチアゾリル、(C−C)−プリニル、(C−C)−4H−キノリジニル、(C−C)−キノリニル、(C−C)−イソキノリニル、(C−C)−シノリニル、(C−C)−フタルアジニル、(C−C)−キナゾリニル、(C−C)−キノキサリニル、(C−C)−ナフチリジニル及び(C−C)−プテリジニルアルキル基であり、二環式ヘテロアリールが任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよい(C−C)−ベンゾ縮合二環式ヘテロアリール(例えば(C−C)−インドリニル及び(C−C)−テトラヒドロキノリニル)基である。
【0076】
各Raは任意に置換されてもよい脂環式基である。各Raは任意に置換されてもよいモノ脂環式基であり、例えばモノシクロアルキル及びモノシクロアルケニル基である。各Raは任意に置換されてもよいモノシクロアルキル(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Raは任意に置換されてもよいモノシクロアルケニル(例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロヘプテニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Raは任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基である。各Raは任意に置換されてもよい単環式ヘテロ脂肪族(例えば単環式ヘテロアルキル又は単環式ヘテロアルケニル)基である。各Raは任意に置換されてもよい単環式ヘテロアルキル(例えばピロリジニル、ジオキソラニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルフォリニル及びピペラジニル基)であり、各々は任意に置換されてもよい。各Raは任意に置換されてもよい単環式ヘテロアルケニル(例えばピロリニル、イミダゾリニル、ピラゾリニル及びピラニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Raは任意に置換されてもよい二環式ヘテロ脂肪族基(例えば二環式ヘテロアルキル又は二環式ヘテロアルケニル)である。各Raは任意に置換されてもよい二環式ヘテロアルキル基(例えばデカヒドロキノリニル又はデカヒドロイソキノリニル)である。各Raは任意に置換されてもよい二環式ヘテロアルケニル基(例えばテトラヒドロインドリル及びヘキサヒドロキノリニル、各々任意に置換されてもよい)である。
【0077】
各Rbは任意に置換されてもよい脂環式基である。各Rbは任意に置換されてもよいモノ脂環式基であり、例えばモノシクロアルキル及びモノシクロアルケニル基である。各Rbは任意に置換されてもよいモノシクロアルキル(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよいモノシクロアルケニル(例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル及びシクロヘプテニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基である。各Rbは任意に置換されてもよい単環式ヘテロ脂肪族(例えば単環式ヘテロアルキル又は単環式ヘテロアルケニル)基である。各Rbは任意に置換されてもよい単環式ヘテロアルキル(例えばピロリジニル、ジオキソラニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ジオキサニル、モルホリニル、ジチアニル、チオモルフォリニル及びピペラジニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよい単環式ヘテロアルケニル(例えばピロリニル、イミダゾリニル、ピラゾリニル及びピラニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。各Rbは任意に置換されてもよい二環式ヘテロ脂肪族(例えば二環式ヘテロアルキル又は二環式ヘテロアルケニル)基である。各Rbは任意に置換されてもよい二環式ヘテロアルキル(例えばデカヒドロキノリニル又はデカヒドロイソキノリニル)基である。各Rbは任意に置換されてもよい二環式ヘテロアルケニル(例えばテトラヒドロインドリル及びヘキサヒドロキノリニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。
【0078】
式I及びIIの化合物は上記のRa及びRb置換基のいかなる組合せを有してもよい。その他のRa及びRb置換基の組合せの例として、以下の組合せを示す。
【0079】
Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよいアリール(例えばモノ−又はジ−炭素環式芳香族)基である。Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよいモノ−炭素環式芳香族(「モノシクロアリール」)基(例えば任意に置換されてもよいフェニル)である。Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよい二環式アリール基である。Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよい脂肪族(例えば任意に置換されてもよいアルキル、任意に置換されてもよいアルケニル又は任意に置換されてもよいアルキニル)基である。Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよいアルキル(例えば任意に置換されてもよいメチル、任意に置換されてもよいエチル、任意に置換されてもよいプロピル、任意に置換されてもよいブチル)基である。Raは水素であり、Rbは非置換アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)基である。Raは水素であり、Rbはメチルである。Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよいアラルキル(例えばアルキル及びアリールが任意に置換されてもよい(C−C)アルキルアリール)基である。Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよいアルキル単環式(C−C)アリール(例えばアルキル及びフェニルが任意に置換されてもよい(C−C)−フェニル)基である。Raは水素であり、Rbは(C−C)−フェニル(例えばベンジル)基である。
【0080】
Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよいヘテロアリール(例えばモノ−又はジ−炭素環式複素環式芳香族)基である。Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよいモノ−炭素環式複素環式芳香族(単環式アリール)基である。Raは水素であり、Rbは任意に置換されてもよい二環式ヘテロアリール基である。Raは水素であり、Rbはベンゾ縮合二環式ヘテロアリール(例えば任意に置換されてもよいインドリニル)基である。
【0081】
別の態様ではRa及びRbはそれらが結合する窒素原子と、任意に置換されてもよい単環式若しくは二環式ヘテロ脂肪族環を形成する。Ra及びRbはそれらが結合する窒素原子と、任意に置換されてもよい単環式ヘテロ脂肪族環(例えば単環式ヘテロアルキル又は単環式ヘテロアルケニル環)を形成し、当該ヘテロ脂肪族環はO、S及びNから選択される0〜2個の更なるヘテロ原子を含んでもよい。例えば、Ra及びRbは、それらが結合する窒素原子と共に、任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキル(任意に置換されてもよい、5又は6員のヘテロシクロアルキル)基を形成する。Ra及びRbは、それらが結合する窒素原子と共に、任意に置換されてもよい5員のヘテロシクロアルキル(例えばピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル)基を形成し、各々は任意に置換されてもよい。Ra及びRbは、それらが結合する窒素原子と共に、任意に置換されてもよい6員のヘテロシクロアルキル(例えばピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びピペラジニル)基を形成し、各々は任意に置換されてもよい。Ra及びRbは、それらが結合する窒素原子と共に、任意に置換されてもよい5員のヘテロシクロアルケニル(例えばピロリニル、イミダゾリニル及びピラゾリニル)基を形成し、各々は任意に置換されてもよい。Ra及びRbは、それらが結合する窒素原子と共に、任意に置換されてもよい6員のヘテロシクロアルケニル(例えば任意に置換されてもよいテトラヒドロピリジニル)基を形成する。Ra及びRbは、それらが結合する窒素原子と共に、任意に置換されてもよい二環式ヘテロ脂肪族環(例えば二環式ヘテロアルキル又は二環式ヘテロアルケニル環)基を形成し、ヘテロ脂肪族環はO、S及びNから選択される0−2個のヘテロ原子を更に含む。Ra及びRbは共に任意に置換されてもよい二環式ヘテロアルケニル環(例えばテトラヒドロインドリニル及びヘキサヒドロキノリニル)基を形成し、各々は任意に置換されてもよい。Ra及びRbは、それらが結合する窒素原子と共に、任意に置換されてもよい二環式ヘテロアルキル環(例えば任意に置換されてもよいデカヒドロキノリニル)基を形成する。Ra及びRbは任意に置換されてもよいベンゾ縮合の二環式ヘテロアリール(例えばインドリニル及びテトラヒドロキノリニル)を形成し、各々は任意に置換されてもよい。
【0082】
ii.Rc置換基
各Rcは任意に置換されてもよい脂肪族(例えば任意に置換されてもよいアルキル、任意に置換されてもよいアルケニル又は任意に置換されてもよいアルキニル)基である。各Raは任意に置換されてもよいアルキル(例えば任意に置換されてもよいメチル、任意に置換されてもよいエチル、任意に置換されてもよいプロピル、任意に置換されてもよいブチル)基である。各Rcは非置換アルキル(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル)基である。
【0083】
各Rcは任意に置換されてもよいアリール(例えばモノ−又はジ−炭素環式芳香族)基である。各Rcは任意に置換されてもよいモノ−炭素環式芳香族(単環式アリール)(例えば任意に置換されてもよいフェニル)基である。各Rcはモノ−炭素環式芳香族(例えばフェニル)基である。各Rcは任意に置換されてもよいジ−炭素環式芳香族(例えばナフチル、インデニル又はアズレニル)基である。
【0084】
各Rcは任意に置換されてもよいアラルキル(例えばアルキル及びアリールが任意に置換されてもよい(C−C)アルキルアリール)基である。各Rcは任意に置換されてもよいアルキル単環式(C−C)アリール(例えばアルキル及びフェニルが任意に置換されてもよい(C−C)−フェニル)基である。各Raは(C−C)−フェニル(例えばベンジル)基である。
【0085】
各Rcは−C(O)−Raであるり、Raは上記で定義したとおりである。各Rcは任意に置換されてもよいアルカノイル基である。各Rcは任意に置換されてもよいアロイル基である。各Rcはアセチル、プロピオニル又はブタノイル基である。各Rcは任意に置換されてもよいベンゾイル基である。
【0086】
各Rcは−C(O)−O−Raであり、Raは上記で定義したとおりである。各Rcは任意に置換されてもよいアルキルオキシカルボニル基である。各Rcは任意に置換されてもよいベンジルオキシカルボニル基である。
【0087】
iii.Rw置換基:
Rwは任意に置換されてもよいアリール基(例えばモノ−炭素環式芳香環又はジ−炭素環式芳香環系、各々任意に置換されてもよい)である。Rwは任意に置換されてもよいモノ−炭素環式芳香環(例えば任意に置換されてもよいフェニル)である。Rwは1−3個のハロ又はハロ脂肪族基により置換されるフェニル基である。Rwはフェニル基である。Rwは任意に置換されてもよいジ−炭素環式芳香環系(例えばインデニル、ナフタレニル及びアズレニル基、各々任意に置換されてもよい)である。Rwは各々任意に1−3個のハロ又はハロ脂肪族基により置換されてもよいインデニル、ナフタレニル及びアズレニル基である。Rwは用語「アリール」に包含される、任意に置換されてもよいベンゾ縮合の二環式アリール部分である(例えば任意に置換されてもよいテトラヒドロナフタリル基)。
【0088】
Rwは任意に置換されてもよいヘテロアリール(例えば単環式ヘテロアリール環又は二環式ヘテロアリール環)基であり、各々は任意に置換されてもよい。Rwは任意に置換されてもよい単環式ヘテロアリール(例えばフラニル、チオフェニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びイソキサゾリル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。Rwはフラニル、チオフェン、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル及びイソキサゾリルであり、各々は1−3個のハロ又はハロ脂肪族基で任意に置換されてもよい。Rwは任意に置換されてもよい二環式ヘテロアリール(例えばインドリジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズイミダゾリル、キノリニル、シノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル及びナフチリジニル)基であり、各々任意に置換されてもよい。Rwはインドリジニルインドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンズイミダゾリル、キノリニル、シノリニル、キナゾリニル、キノキサリニル及びナフチリジニル基であり、各々は1−3個のハロ又はハロ脂肪族基で任意に置換されてもよい。Rwは任意に置換されてもよいキノリン−4−イル又は任意に置換されてもよいインドリン−1−イル基である。Rwは1−3個のハロ又はハロ脂肪族基で各々任意に置換されてもよいキノリン−4−イル又はインドリン−1−イル基である。Rwは用語「ヘテロアリール」(例えばインドリニル及びテトラヒドロキノリニル)に包含される、任意に置換されてもよいベンゾ縮合の二環式ヘテロアリール部分であり、各々は任意に置換されてもよい。
【0089】
Rwは任意に置換されてもよいヘテロシクロ脂肪族基であり、例えば単環式若しくは二環式ヘテロ脂肪族環系(各々任意に置換されてもよい)である。Rwは任意に置換されてもよい単環式ヘテロ脂肪族環(例えば単環式ヘテロアルキル又は単環式ヘテロアルケニル環、各々任意に置換されてもよい)である。Rwは任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキル(例えば任意に置換されてもよい5又は6員のヘテロシクロアルキル)基である。Rwは任意に置換されてもよい5員のヘテロシクロアルキル(例えばピロリジニル、イミダゾリジニル及びピラゾリジニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。Rwは任意に置換されてもよい6員のヘテロシクロアルキル(例えばピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル及びピペラジニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。Rwは任意に置換されてもよい5員のヘテロシクロアルケニル(例えばピロリニル、イミダゾリニル及びピラゾリニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。Rwは任意に置換されてもよい6員のヘテロシクロアルケニル(例えば任意に置換されてもよいテトラヒドロピリジニル)である。Rwは任意に置換されてもよい二環式ヘテロ脂肪族環(例えば二環式ヘテロアルキル又は二環式ヘテロアルケニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。Rwは任意に置換されてもよい二環式ヘテロアルケニル(例えばテトラヒドロインドリル及びヘキサヒドロキノリニル)基であり、各々は任意に置換されてもよい。Rwは任意に置換されてもよい二環式ヘテロアルケニル(例えば任意に置換されてもよいオクタヒドロキノリニル)基である。
【0090】
iv.Q、−CH(Rq)、−L及び−LII
Qは任意に置換されてもよい分岐若しくは未分岐のC−Cアルキル基である。幾つかの実施態様では、Qは置換された分岐状若しくは非分岐状のアルキル基である。他の実施態様では、Qは非置換の分岐若しくは未分岐のアルキル基である。例えば、Qは非置換の分岐状アルキル基である。Qは−CH(Rq)(Rqが水素又は任意に置換されてもよい脂肪族基)である。Qは−CH(Rq)(Rqが水素又は任意に置換されてもよいアルキル)である。Qは−CH(Rq)(Rqが水素又はアルキル)である。Qは−CH(Rq)(Rqが水素)である。Qは−CH(Rq)(Rqがアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル)基)である。Qは−CH(Rq)(Rqがメチル)である。
【0091】
Lは存在しないか、−O−、−NH−又は−S−である。LIIは存在しないか、−CH−、−O−、−NH−又は−S−である。Lは存在しない。Lは−O−である。LはNHである。Lは−S−である。LIIは存在しない。LIIは−CH−である。LIIは−O−である。LIIはNHである。LIIは−S−である。
【0092】
式I及びIIの化合物は上記の−Q−L及び−CH(Rq)−LII置換基のいかなる組合せであってもよい。以下の組合せは非限定的な置換基Q、−CH(Rq)−L及び−LIIに関する組合せの例である。
【0093】
−Q−は任意に置換されてもよいC−Cアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル)であり、Lは存在しない。−Q−は任意に置換されたエチル基であり、Lは不在である。−Q−は脂肪族基で任意に置換されてもよいエチル基であり、Lは不在である。−Q−は−CH(Rq)(Rqが水素又は脂肪族基)であり、Lは存在しない。−Q−は−CH(Rq)であり、Rqが脂肪族基であり、Lは存在しない。−Q−は−CH(Rq)であり、Rqがアルキル基であり、Lは存在しない。−Q−は−CH(Rq)であり、Rqがメチルであり、Lは存在しない。
【0094】
−Q−は任意に置換されてもよいC−Cアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル)基であり、Lは−O−である。−Q−は−CH(Rq)(Rqは水素又は脂肪族基)であり、Lは−O−である。−Q−は−CH(Rq)であり、Rqが脂肪族基であり、Lが−O−である。−Q−は−CH(Rq)であり、Rqが水素であり、Lが−O−である。−Q−は任意に置換されてもよいC−Cアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル)基であり、Lは−NH−である。−Q−は−CH(Rq)(RqがH又は脂肪族基である)であり、Lは−NH−である。−Q−は−CH(Rq)であり、Rqが水素であり、Lは−NH−である。−Q−は任意に置換されてもよいC−Cアルキル(例えばメチル、エチル、プロピル及びブチル)基であり、Lは−S−である。−Q−は−CH(Rq)(RqがH又は脂肪族基)であり、Lは−S−である。−Q−は−CH(Rq)であり、Rqが水素であり、Lは−S−である。
【0095】
v.環B及び変数n、m及びp
nは1、2又は3である。n及びmの合計が2、3、4、5、又は6である場合、mは1、2又は3である。nは1であり、mは1である。nは1であり、mは2である。nは1であり、mは3である。nは2であり、mは2である。nは2であり、mは3である。pは1である。pは2である。
【0096】
環Bは1−2個のハロ、シアノ、ニトロ、ハロアルキル、アルコキシ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、アミノ、カルボキシ又は任意に置換されてもよい脂肪族基で任意に置換されてもよいピロリジニル基である。環Bは1−2個のハロ、シアノ、ニトロ、ハロアルキル、アルコキシ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、アミノ、カルボキシ又は任意に置換されてもよい脂肪族基で任意に置換されてもよいピペリジニルである。環Bは1−2個のハロ、シアノ、アルコキシ、ニトロ、ハロアルキル、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、アミノ、カルボキシ又は任意に置換されてもよい脂肪族基で置換されている。環Bは1−2個のハロ、シアノ、ニトロ、ハロアルキル、アルコキシル又は任意に置換されてもよい脂肪族基により置換される。環Bは1−2個のスルホニル、スルフィニル、スルファニル、アミノ、カルボキシ又は任意に置換されてもよい脂肪族基により置換されている。環Bはアミノ又はカルボキシル基で置換されている。環Bは1−2個のハロ、ハロアルキル基又はアルコキシル基により置換されている。
【0097】
C.具体的な式I及びIIの化合物:
電位型ナトリウムチャネル及びカルシウムチャネルの具体的な阻害剤を、下記の表1に列挙する。
【0098】
表1:具体的な式I及びIIの化合物
【0099】
【化9】

【0100】
【化10】

【0101】
【化11】

III.合成
式(I及びII)の化合物は周知の方法によって調製してもよく、また市販の開始材料を用いてもよい。スキーム1(下で例示される)は本発明の化合物を調製する典型的な方法である。
【0102】
【化12】

スキームIを参照すると、Pgは公知技術のアミン保護基を意味する(Theodora W.Greene and Peter G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons Inc.,1999を参照)。適切な保護基としては例えば、t−ブチルオキシカルボニル(BOC)及びベンジルを含むカルボニル(CBz)基が挙げられる。工程aで化合物iのアルコールは脱離基Lgに変換される。適切な脱離基としては、例えばハロゲン化物又はスルホン酸エステル(例えばメシラート、トシレート又はトリフルオロメチルスルホネート)が挙げられる。工程bで、Lgはアルカリ金属チオカルボキシレート(例えばRがアルキル又はアリールであるチオ酢酸カリウム)で置換され、チオエステルiiiが形成される。例えば、塩素又は塩化スルフリルでのiiiの塩素化は、塩化スルホニルivを得る。ivのアミンvとの反応により中間体viが得られ(工程d)、viからの保護基の除去(工程e)の後、アミンviiを得る。viiiとviiとの反応(工程f)(Xが−OH又は反応性の酸誘導体(例えば酸塩化物)である)により本発明の化合物Iを得る。Xが−OHであるとき、viiiとviiの反応を、カップリング試薬(例えば周知の条件下、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N、N,N’N’−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート(HATU)又はカルボジイミド)の存在下で実施する。幾つかの実施形態では、所望の式Iの化合物がL内に−NH−を有するとき、窒素は上記の適切な保護基Pgにより、調製の間に保護され得る。
【0103】
IV.使用、組成物及び投与:
A.薬学的に許容できる組成物:
上記のように、本発明は電位型ナトリウムイオンチャネル及び/又はカルシウムチャネルの阻害剤である化合物の提供に関する。本発明の化合物は様々な疾患、障害及び症状、例えば急性、慢性、神経障害性もしくは炎症性の疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、疱疹神経痛、全身神経痛、癲癇又は癲癇状態、神経変性障害、不安及び鬱病のような精神医学的障害、筋緊張症、不整脈、運動障害、神経内分泌系障害、運動失調、多発性硬化症、過敏性腸症候群、失調症の治療に有用である。本発明の別の態様は、薬学的に許容できる組成物の提供に関し、これらの組成物は本願明細書に記載の化合物と、任意に薬学的に許容できる担体、補助剤又は賦形剤のいずれかを含有する。ある種の実施形態では、これらの組成物は任意に1つ以上の付加的な治療薬を更に含有する。
【0104】
本発明の化合物は、治療の際、遊離の形態で存在してもよく、あるいは必要に応じてその薬学的に許容できる誘導体の形態で存在してもよい。本発明では、薬学的に許容できる誘導体としては、薬学的に許容できる塩、エステル若しくは他のいかなる付加物、又は、かかる塩、エステル若しくは付加物の誘導体が挙げられるがこれらに限定されず、患者に投与する際、直接的又は間接的に、本願明細書に記載されている化合物で投与してもよく、又はそれらの代謝産物として投与してもよい。
【0105】
本発明の「薬学的に許容できる塩」の用語は有能な医学判断の範囲において、ヒト及び他の下等動物の組織と接触させる使用に適し、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などのない、妥当な利益/危険のバランスを有する塩類を指す。「薬理学的に許容できる塩」とは受容者に対する投与に、直接又は間接的に、本発明の化合物、又は阻害活性を有するその代謝産物又は残留物を提供できる、あらゆる非毒性の塩又は塩のエステルを意味する。本発明の用語「阻害活性を有するその代謝産物又は残余物」とは、その代謝産物又は残余物が電位型ナトリウムイオンチャネル又はカルシウムチャネルの阻害剤であることを意味する。
【0106】
薬学的に許容できる塩は公知であり。例えば、S.M.BergeらのJ.Pharmaceutical Sciences、1977、66、1−19(本発明に援用する)では、薬学的に許容できる塩類が詳細に記載されている。本発明の化合物の薬学的に許容できる塩は適切な無機及び有機酸ベースの塩であってもよい。薬学的に許容できる、非毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸及び過塩素酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸又はマロン酸のような有機酸とアミノ基により、従来技術公知の方法(例えばイオン交換)を用いて形成される塩である。他の薬学的に許容できる塩類としてはアジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸エステル、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸、グルコン酸塩、ヘミスルホン酸塩、ヘプタノン酸塩、ヘキサノン酸塩、ヨウ化水素塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸エステル、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸、バレリン酸塩などが挙げられる。適当な塩基に由来する塩は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びN(C−Cアルキルを含む)塩である。本発明にはまた、本願明細書に開示される化合物のいかなる塩基性の第4級窒素含有基も包含される。水溶性又は油溶性又は分散性の生成物はかかる4級化反応によって得られる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩は、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどの塩が挙げられる。更に、薬学的に許容できる塩類としては、非毒性のアンモニウムイオン、第四級アンモニウム及びアミン陽イオンの塩が挙げられ、それらは対イオン(例えばハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、低級アルキルスルホン酸塩及びアリールスルホン酸塩)を使用することにより形成される。
【0107】
本発明の薬学的に許容できる組成物は更に、上記のように薬学的に許容できる担体、補助剤又は賦形剤を含有し、例えばあらゆる溶媒、希釈剤、又は他の液状担体、分散剤又は懸濁助剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤、乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤を、所望の投与形態に応じて適宜使用する。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)は、薬学的に許容できる組成物の調製の際に使用する様々な担体、及びその公知の製剤方法を開示する。本発明の化合物との不適合性を示さない(例えばいかなる望ましくない生物学的効果も生じさせない、又は薬学的に許容できる組成物中の他のいかなる成分と望ましくない相互作用をしない)限り、いかなる従来公知の担体媒体を使用してもよく、本発明に包含される。薬学的に許容できる担体として利用できる材料の若干の例としては限定されないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えばヒト血清アルブミン)、リン酸塩、グリシン、ソルビン酸又はカリウムソルビン酸塩のような緩衝剤、飽和植物性脂肪酸の部分的なグリセリド混合物、水、塩又は電解質(例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、マグネシウム三リン酸、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコース及び蔗糖などの糖、澱粉(例えば穀物澱粉及びポテトデンプン)、セルロース及びその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース)、粉末状のトラガカントゴム、モルト、ゼラチン、タルク、添加剤(例えばカカオバター及び坐薬ワックス)、油(例えば落花生油、綿実油、サフラワー油、胡麻油、オリーブ油、トウモロコシ油及び大豆油)、グリコール(プロピレングリコール又はポリエチレングリコール)、エステル(例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル)、寒天、バッファ(例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム)、アルギン酸、発熱物質を含まない水、等張性食塩水、リンガー溶液、エチルアルコール及びリン酸塩緩衝液、他の非毒性の適合性を有する潤滑剤(例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム)、並びに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、矯味矯臭剤及び香料、防腐剤及び酸化防止剤が挙げられ、それらを当業者が適宜組成物中に含有させてもよい。
【0108】
B.化合物及び薬理学的に許容できる組成物の使用:
本発明の更に他の態様では急性、慢性、神経障害性もしくは炎症性の疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、疱疹神経痛、全身神経痛、癲癇又は癲癇状態、神経変性障害、不安及び鬱病のような精神医学的障害、筋緊張症、不整脈、運動障害、神経内分泌系障害、運動失調、多発性硬化症、過敏性腸症候群、失調症、内臓痛、変形性関節症の疼痛、疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、神経根性疼痛、坐骨神経痛、背痛、頭部若しくは頚部の疼痛、重度若しくは難治性の疼痛、侵害受容疼痛、突出痛、術後疼痛又は癌疼痛の治療若しくは低減方法の提供に関し、当該方法はそれらの患者に有効量の化合物又は化合物を含有する薬学的に許容できる組成物を投与する工程を包含する、。特定の実施形態では、患者に有効量の本発明化合物又は薬学的に許容できる組成物を投与する工程を包含する、急性、慢性、神経障害性もしくは炎症性の疼痛の治療又は低減方法の提供に関する。他の特定の実施形態では、患者に有効量の化合物又は薬学的に許容できる組成物を投与する工程を包含する、神経根性疼痛、坐骨神経痛、背痛、頭部の疼痛又は頚部の疼痛の治療又は低減方法の提供に関する。更に他の実施形態では、患者に有効量の化合物又は薬学的に許容できる組成物を投与する工程を包含する、重度の疼痛若しくは難治性疼痛、急性痛、術後疼痛、背痛、突出痛又は癌疼痛の治療若しくは低減方法の提供に関する。
【0109】
本発明の特定の実施態様では、化合物又は薬学的に許容できる組成物の「有効量」とは、以下のうちの1つ以上の症状の治療又は低減に有効な量のことを指す:急性、慢性、神経障害性もしくは炎症性の疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、疱疹神経痛、全身神経痛、癲癇又は癲癇状態、神経変性障害、不安及び鬱病のような精神医学的障害、筋緊張症、不整脈、運動障害、神経内分泌系障害、運動失調、多発性硬化症、過敏性腸症候群、失調症、内臓痛、変形性関節症の疼痛、疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、神経根性疼痛、坐骨神経痛、背痛、頭部若しくは頚部の疼痛、重度若しくは難治性の疼痛、侵害受容疼痛、突出痛、術後疼痛又は癌疼痛。
【0110】
当該化合物及び組成物は、本発明の方法に従って、以下のうちの1つ以上の症状の治療又は低減に有効な任意の投与量、及び任意の投与経路で投与してもよい:急性、慢性、神経障害性もしくは炎症性の疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、疱疹神経痛、全身神経痛、癲癇又は癲癇状態、神経変性障害、不安及び鬱病のような精神医学的障害、筋緊張症、不整脈、運動障害、神経内分泌系障害、運動失調、多発性硬化症、過敏性腸症候群、失調症、内臓痛、変形性関節症の疼痛、疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、神経根性疼痛、坐骨神経痛、背痛、頭部若しくは頚部の疼痛、重度若しくは難治性の疼痛、侵害受容疼痛、突出痛、術後疼痛又は癌疼痛。実際の必要な投与量は、患者、感染症の重症度、具体的な薬剤、その投与様式、種、年齢及び健康状態に応じて、患者ごとに適宜変化する。本発明の化合物は好ましくは、投与の簡便性及び投与量の均一化のために投薬単位形態で処方される。本明細書で使用される「投薬単位形態」という用語は、治療される患者にとり適当な薬剤を含む、物理的に分配された単位のことを意味する。しかしながら、本発明の化合物及び組成物の一日あたりの使用量は、熟練した主治医による医学的判断により決定されることを理解すべきである。具体的な患者又は生物体のための具体的な有効量は、治療しようとする障害、障害の重症度、使用する具体的な化合物の活性、使用する具体的な組成物、年齢、体重、健康状態、性別及び患者の食事、投与回数、投与経路及び使用する化合物の具体的なクリアランス速度、治療期間、併用する具体的な化合物、その他医学的に周知の諸要因を考慮した上で決定される。本明細書で用いられる「患者」の用語は動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを意味する。
【0111】
本発明の薬学的に許容できる組成物は治療しようとする感染症の重症度に応じて、経口、直腸、非経口、槽内、膣内、腹膜内、局所(粉体、軟膏又はドロップなど)、頬内、口又は鼻噴霧として、ヒト及び他の動物に投与できる。特定の実施形態では所望の治療的な効果を得るため、本発明の化合物を約0.01mg/kg〜約50mg/kg、好ましくは約1mg/kg〜約25mg/kg(患者体重あたり、1日あたりの量。1日に複数回に分けて投与。)の投与量レベルで、経口的又は非経口的に投与してもよい。
【0112】
経口投与用の液体剤形としては限定はされないが、薬学的に許容できるエマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルが挙げられる。有効成分に加えて、液体剤形は例えば従来技術において通常使用される不活性希釈剤、水又は他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤(例えばエチルアルコールイソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特定の綿実、落花生類、穀物、細菌、オリーブ、キャスタ及び胡麻油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物)を含有してもよい。不活性希釈剤の他に、口腔用組成物では湿潤剤、乳化剤薬品、甘味料、調味料及び香料、懸濁剤などの補助剤を含有させてもよい。
【0113】
注射可能な調製物(例えば水性若しくは油性の、無菌の注射可能懸濁液)を、適切な分散剤、湿潤剤又は懸濁剤を使用して、周知の製薬技術により処方してもよい。無菌注射用製剤は、無菌の注射可能な溶液、懸濁液又はエマルジョンであってもよく、例えば1,3−ブタンジオールなどを非毒性の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒として用いて調製してもよい。水、リンガー溶液、U.S.P.及び等張食塩液は使用できる許容できる担体及び溶媒である。また、無菌かつ不揮発性の油が従来溶媒又は懸濁用の媒体として使用されている。ゆえに、いかなる適切な不揮発性油(合成モノ−又はジグリセリドを含む)も使用できる。更にオレイン酸のような脂肪酸を注射可能薬剤の調製に用いてもよい。
【0114】
注射用組成物には例えば、バクテリア捕捉フィルターで濾過してもよく、又は使用前に滅菌水又は他の滅菌済み注射溶媒に溶解又は分散できる、滅菌済み固形組成物の形態の、抗菌剤を添加して滅菌してもよい。
【0115】
本発明の化合物の効果を長期化するため、化合物を皮下もしくは筋肉内注入して吸収を遅延させるのが望ましい。これは低い水溶性を有する結晶質若しくはアモルファス材料の液体懸濁液を用いることにより可能となる。また、化合物の吸収速度はその溶解速度、すなわち結晶のサイズ及び結晶の形態に依存する。あるいは非経口的に投与された化合物の吸収遅延は、化合物を油担体中に溶解又は懸濁させることにより可能となる。注射可能なデポー形態は、生分解性ポリマー(例えばポリ乳酸−ポリグリコリド)化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することにより調製する。ポリマーに対する化合物の比率及び使用する特定のポリマーの性質によって、化合物の放出速度を制御できる。他の生分解性ポリマーの例としてはポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。注射可能薬剤のデポー製剤はまた、体組織と適合性を持つリポソーム又はミクロエマルジョン中に化合物を含有させることにより調製できる。
【0116】
直腸若しくは膣への投与用の組成物として、本発明の化合物と、適切な非刺激性添加剤又は担体(例えば常温では固形であるが体温で液状となり、ゆえに直腸又は膣の空腔内で溶融し、有効成分を放出するカカオバター、ポリエチレングリコール又は坐薬ワックス)とを混合して坐薬を調製してもよい。
【0117】
経口投与用の固体投与形態としてはカプセル、錠剤、ピル、粉及び顆粒が挙げられる。かかる固体投与形態では有効成分を、クエン酸ナトリウム又はリン酸ジカルシウムなどの少なくとも1つの不活性な、薬学的に許容できる添加剤又は担体、及び/又はa)充填材又は増量剤(例えば澱粉、ラクトース、蔗糖、グルコース、マンニトール及びケイ酸)、b)結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、蔗糖及びアカシア)、c)湿潤剤(例えばグリセロール)、d)崩壊剤(例えば寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯又はタピオカ澱粉、アルギン酸、特定のケイ酸塩及び炭酸ナトリウム)、e)溶液遅延剤(例えばパラフィン)、f)吸収促進剤(例えば第4級アンモニウム化合物)、g)湿潤剤(例えばセチルアルコール及びグリセロールモノステアリン酸塩)、h)吸収剤(例えばカオリン及びベントナイト粘土)、及びi)潤滑油(例えばタルク、カルシウムステアリン酸塩、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ナトリウムラウリル硫酸塩及びそれらの混合物)と混合する。カプセル、錠剤及びピルの場合、投与単位には緩衝剤を含有させてもよい。
【0118】
ラクトース又は乳糖、あるいは高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、同様のタイプの固体組成物を調製し、硬質及び軟質ゼラチンカプセル中の充填物質としてもよい。錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、丸剤及び顆粒剤などの固体投与形態を、腸溶コーティング及び薬物製剤技術分野で公知のその他のコーティング技術を用いて製造できる。それらは乳白剤を任意に含有してもよく、それらは任意に、腸管内の特定の部位においてのみ、優先的に活性成分を遅延放出する組成物であってもよい。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。ラクトース又は乳糖、あるいは高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、同様のタイプの固体組成物を調製し、硬質及び軟質ゼラチンカプセル中の充填物質としてもよい。
【0119】
有効成分は上記のような1つ以上の添加剤と共にマイクロカプセルに充填された形態であってもよい。コーティング及びシェル(例えば医薬処方技術で周知の消化器官内用コーティング、制御放出コーティング及び他のコーティング)を施し、錠剤、糖衣剤、カプセル、ピル及び顆粒の固体投与形態を調製することができる。かかる固形投与形態では有効成分をスクロース、ラクトース又はデンプンのような少なくとも1つの不活性希釈剤と混合してもよい。かかる投与形態では通常、不活性希釈剤以外の添加材、例えば潤滑材及びその他の打錠助剤(ステアリン酸マグネシウム及び微結晶性セルロース)を添加してもよい。カプセル、錠剤及びピルの場合、剤形は緩衝剤を含有させてもよい。それらは乳白剤を任意に含有してもよく、それらは任意に、腸管内の特定の部位においてのみ、優先的に活性成分を遅延放出する組成物であってもよい。使用できる包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスが挙げられる。
【0120】
本発明化合物の局所又は経皮投与用の投与形態としては軟膏剤、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤又はパッチ剤が挙げられる。有効成分を、薬学的に許容できる担体と共に無菌の条件の下で混合する。また防腐剤又はバッファを必要に応じて添加してもよい。眼科用の製剤、点耳剤及び点眼剤も本発明の範囲内に包含される。更に、本発明には経皮パッチの使用も包含され、それは身体への化合物の輸送効率を高める効果が期待できる。かかる剤形は適当な媒体中に化合物を溶解又は調合することにより調製される。吸収促進剤を用いて皮膚への化合物の吸収を増加させてもよい。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に、薬剤のマイクロカプセル封入マトリックスを形成させることにより調製できる。
【0121】
上記のように、本発明の化合物は電位型ナトリウムイオンチャネル又はカルシウムチャネル(好ましくはN型カルシウムチャネル)の阻害剤として利用できる。一実施形態では本発明の化合物及び組成物はNaV1.1、NaV1.2、NaV1.3、NaV1.4、NaV1.5、NaV1.6、NaV1.7、NaV1.8、NaV1.9又はCaV2.2のうちの1つ以上の阻害剤であり、いかなる特定の理論にも束縛されないが、化合物及び組成物は特に、NaV1.1、NaV1.2、NaV1.3、NaV1.4、NaV1.5、NaV1.6、NaV1.7、NaV1.8、NaV1.9又はCaV2.2の1つ以上の活性化又は活性亢進が疾患、症状又は障害に関係している、あらゆる疾患、症状もしくは障害の治療又は低減に有用である。NaV1.1、NaV1.2、NaV1.3、NaV1.4、NaV1.5、NaV1.6、NaV1.7、NaV1.8、NaV1.9もしくはCaV2.2の活性化又は活性亢進が特定の疾患、症状又は障害に関係する場合、かかる疾患、症状又は障害は、「NaV1.1、NaV1.2、NaV1.3、NaV1.4、NaV1.5、NaV1.6、NaV1.7、NaV1.8もしくはNaV1.9、又はCaV2.2により媒介される疾患、症状又は障害」と称することができる。したがって、本発明の別の態様は、NaV1.1、NaV1.2、NaV1.3、NaV1.4、NaV1.5、NaV1.6、NaV1.7、NaV1.8、NaV1.9又はCaV2.2の1つ以上の活性化又は活性亢進が疾患症状に関係する疾患、症状又は障害の治療もしくは低減方法の提供に関する。
【0122】
NaV1.1、NaV1.2、NaV1.3、NaV1.4、NaV1.5、NaV1.6、NaV1.7、NaV1.8、NaV1.9又はCaV2.2の阻害剤として本発明で利用される化合物の活性は、本願明細書に記載されている方法、又は従来技術において一般に当業者が利用できる方法に従ってアッセイできる。
【0123】
特定の例示的実施形態では本発明の化合物はNaV1.3の阻害剤として有用である。他の実施態様では本発明の化合物はNaV1.3及びCaV2.2の阻害剤として有用である。更に他の実施態様では本発明の化合物はCaV2.2の阻害剤として有用である。
【0124】
本発明の化合物及び薬学的に許容できる組成物は併用療法において使用できることが理解できる。すなわち本発明の化合物及び薬学的に許容できる組成物は、他の適切な1つ以上の治療薬又は医学的処置の前に、並行して、後に投与することができる。複合療法で使用する治療的処置(治療薬又は治療方法)との具体的な組合せを行う際、所望の治療薬及び/又は方法と、所望の治療効果との適合性を考慮するのが好ましい。使用される当該治療薬は、同じ障害に対する所望の効果を提供するものであってもよく(例えば、本発明の化合物を、同じ障害を治療するために用いる他の薬品と並行して投与してもよい)、又はそれらは異なる効果(例えばいかなる副作用の制御)を提供するものであってもよい。特定の疾患を治療又は予防するために通常投与される、追加的な「治療しようとする疾患、障害又は症状にとり適当な」治療薬が公知である。典型的な追加的治療薬としては例えば限定されないが、非オピオイド系鎮痛薬(インドール(例えばエトドラク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、ナフチルアルカノン(例えばナブメトン)、オキシカム(例えばピロキシカム)、パラアミノフェノール誘導体(例えばアセトアミノフェン)、プロピオン酸(例えばフェノプロフェン、フルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ネプロキセン、ネプロキセンナトリウム、オキサプロジン)、サリチル酸塩(例えばASS(アスプリン)、コリンマグネシウムトリサリチル酸塩、ジフルニサル)、フェナメート(例えばメクロフェナム酸、メフェナミン酸)、及びピラゾール(例えばフェニルブタゾン)、又はオピオイド(麻薬)アゴニスト(例えばコデイン、フェンタニル、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルフィン、オキシコドン、オキシモルフォン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィン及びペンタゾシン)。更に、非薬剤的な鎮痛方法を、本発明の1つ以上の化合物の投与との組み合わせで利用してもよい。例えば、麻酔学的方法(脊椎内注入、神経遮断)、神経外科的方法(CNS経路の神経麻痺)、神経刺激的方法(経皮電気神経刺激、後索刺激)、理学療法的方法(理学療法、矯正器具装置、ジアテルミ)又は心理学的(覚醒−催眠方法、バイオフィードバック又は行動学的方法)方法を利用してもよい。適当な更なる治療薬又は方法に関する一般論はThe Merck Manual,Seventeenth Edition,Ed.Mark H.Beers and Robert Berkow,Merck Research Laboratories,1999、及びFood and Drug Administration website,www.fda.govに記載されている(それらの全開示内容を本願明細書に援用する)。
【0125】
本発明の組成物に存在する追加的な治療薬の量は、唯一の活性成分としてその治療薬を含有する組成物中に通常存在する量以上でないことが好ましい。より好ましくは、本開示の組成物の追加的な治療薬の量は、唯一の治療的活性成分としてその薬品を含有する組成物に通常存在する量に対して、約50%〜100%の量である。
【0126】
本発明の化合物又はその薬学的に許容できる組成物は、移植可能医療装置(例えば人工器官、人工弁、血管移植片、ステント及びカテーテル)をコーティングするための組成物に添加してもよい。したがって、本発明の別の態様では、本願明細書で上記した本発明の化合物(クラス及びサブクラスを含む)、及び前記移植可能装置へのコーティングに適する上記担体を含有する、移植可能装置のコーティング用組成物の提供に関する。更に別の態様では、本願明細書で上記した本発明の化合物(クラス及びサブクラスを含む)、及び前記移植可能装置へのコーティングに適する上記担体を含有する、移植可能装置のコーティング用組成物の提供に関する。適切なコーティング及びコーティングされた移植可能装置の一般的な調製方法は米国特許6,099,562号、第5,886,026号及び第5,304,121号に記載されている。コーティングは通常、生物学的適合性のポリマー物質(例えばヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレン酢酸ビニル及びそれらの混合物)である。任意にフルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質又はそれらの組み合わせを含む適切なトップコートを用いて更に被覆し、当該コーティングからの組成物の徐放特徴を強化してもよい。
【0127】
本発明の別の態様は生物学的サンプル又は患者の、NaV1.1、NaV1.2、NaV1.3、NaV1.4、NaV1.5、NaV1.6、NaV1.7、NaV1.8、NaV1.9又はCaV2.2活性の1つ以上の阻害方法の提供に関し、当該方法は式Iの化合物若しくはそれを含有する組成物を患者に投与するか、又は前記生物学的サンプルに接触させる工程を包含する。本明細書で用いられる用語「生物学的サンプル」としては、細胞培養液又はその抽出物、哺乳類から得た生検材料又はその抽出物、血液、唾液、尿、排泄物、精液、涙液などの液体又はその抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
生物学的サンプルにおける、NaV1.1、NaV1.2、NaV1.3、NaV1.4、NaV1.5、NaV1.6、NaV1.7、NaV1.8、NaV1.9又はCaV2.2活性の1つ以上の抑制は、当業者に公知の様々な用途に利用できる。かかる用途例としては、生物学的及び病理学的現象におけるナトリウムイオンチャネルの検討、及び新規なナトリウムイオンチャネル阻害剤の比較評価が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0129】
(調製1:4−クロロスルホニル−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル)
工程1a:4−メタンスルホニルオキシ−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
【0130】
【化13】

N−Boc−4−ヒドロキシピペリジン(25.0g、124mmol)及びトリエチルアミン(19.6ml、136mmol)の冷却(5−10℃)トルエン(120ml)中混合物に、シリンジによって徐々にメタンスルホニル塩化物(10.6ml、136mmol)を添加した。添加速度は反応混合物の温度が20℃になるような速度に維持した。添加終了後、温度を1.5時間室温に維持した。水(50ml)を混合物に添加したときにエマルジョンが生じ、更に100mlのトルエンを添加しそれを破壊した。水性層を100mlのトルエンで抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムによって乾燥させ、濾過し、乾燥するまで蒸発させ、白い固体残留物として生成物(30.5g、87%)を得、次の工程においてそのまま使用した。
【0131】
工程1b:4−アセチルスルファニル−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
【0132】
【化14】

粗4−メタンスルホニルオキシ−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルを200mlのDMF中に溶解させ、チオ酢酸カリウム(18.5g、162mmol)を添加した。混合物を窒素雰囲気下、65℃で一晩撹拌した。反応混合物を一晩静置して室温まで冷却させた後、250mlの水及び250mlのTBMEを添加して混合物を10分間撹拌した。層を分離させ、水性層を200mlのTBMEで抽出した。合わせた有機層を水(2×250ml)、飽和NaCl水溶液(150ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、蒸発乾燥させ、H−NMRで生成物と確認される暗褐色の油状物(30.3g、94%)を得た。それを精製せずに次の工程に用いた。
【0133】
工程1c:4−クロロスルホニル−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
【0134】
【化15】

粗製の中間体4−アセチルスルファニル−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(30.3g、116mmol)を無水エタノール(200ml)中に溶解させ、氷−塩バスで−10℃に冷却した。塩素ガスを供給して約1時間バブリングした。この工程中、混合物は徐々に色が明るくなり、氷−塩バスを用いて冷却し、また塩素添加速度を調整することによって、温度を+10℃に維持した。1時間後、同様に発熱が行われず、塩素の供給を停止した。合計32gのClをバブリングに用いた。反応混合物をトルエン(500ml)及び10%のNaCl水溶液(350ml)と混合した(若干の発熱(Tmax〜30℃)が生じた)。有機層を10%のNaCl水溶液(350ml)及び水(300ml)で洗浄し、蒸発乾燥させ、淡黄色の油状物(19g、58%)を得た。この油状物を加熱し、50mlのヘプタン中に溶解させ、室温で結晶化させ、週明けまで静置した。形成されたオフホワイトの固体を濾過して回収し、ヘプタンで洗浄した。固体を50mlのヘプタンから再結晶させて得た。得られた溶液を濾過し、若干の不純物を除去した。結晶化後、白色粉体を濾過して回収し、ヘプタンで洗浄し、H−NMR解析の結果、98%の純度(DSC)、m.p.=84.6℃〜85.7℃を有する生成物であることが確認された。
【0135】
一般方法1:
【0136】
【化16】

4−クロロスルホニル基−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(0.426g、1.5mmol)、EtN(0.63ml、4.5mmol)及びDCM(5ml)を含む溶液にアミン(3mmol)を添加した。16時間反応混合物を撹拌した後、水(50ml)を注入し、EtOAc(3×20ml)により抽出した。有機層を混合し、0.1N HCL溶液(3×10ml)、飽和NaCl水溶液(20ml)で洗浄し、MgSOを通じて乾燥させ、減圧濃縮した。生成物を、更に精製せずに次の工程に用いた。一般方法1に従って調製された4−(アミノ−スルホニル)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルの例を以下に記す:
4−(ピロリジン−1−スルホニル)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル、
【0137】
【化17】

4−フェニルスルファモイル−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
【0138】
【化18】

LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1 obs=341.0、t=2.96分。
【0139】
4−ベンジルスルファモイル−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
【0140】
【化19】

一般方法2:
【0141】
【化20】

アミン塩酸塩を、4−クロロスルホニル−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(0.426g、1.5mmol)、EtN(1.26ml、9mmol)及びDCM(5ml)の溶液に添加した。16時間反応混合物を撹拌した後、水(50ml)に注入し、EtOAc(3×20ml)で抽出した。有機層を混合し、0.1N HCL(3×10ml)及び飽和NaCl水溶液(20ml)で洗浄し、MgSOを通じて乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を、更なる精製をせずに次の工程に用いた。4−スルファモイル−ピペリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステルの他の例を以下に示す:
4−ジメチルスルファモイル−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
【0142】
【化21】

4−メチルスルファモイル−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
【0143】
【化22】

一般方法3:
【0144】
【化23】

4−(Ra−Rb−スルファモイル)−ピペリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(0.1mmol)を、TFA:DCM(1:1)中で、室温で2時間撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、EtOHで2回共蒸発させた後、得られる固体をKOHを通じて乾燥させた。
【0145】
乾燥生成物とCHCN(0.3ml)の溶液に、カルボン酸(0.11mmol)、HATU(0.042g、0.11mmol)及びEtN(30mg、0.3mmol)を添加した。室温で16時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させた。ギルソン逆相HPLCで精製し、所望の生成物を得た。
【0146】
(実施例1:2−(1H−インドル−1−イル)−1−(4−(ピロリジン−1−イルスルホニル)ピペリジン−1−イル)プロパン−1−オン)
【0147】
【化24】

一般方法3に従って合成した。
【0148】
【化25】

LC/MS(10−99% CHCN),M/Z: M+1 obs=390.2、t=2.90分。
【0149】
(実施例2:1−[3−(5−クロロ−1H−インドール−1−イル)プロパノイル]−N−フェニル−ピペリジン−4−スルホンアミド)
【0150】
【化26】

一般方法3に従って合成した。
【0151】
【化27】

LC/MS(10−99% CHCN),M/Z: M+1 obs=446、t=3.21分。
【0152】
(実施例3:1−[2−(1H−インドル−1−イル)プロパノイル]−N−フェニル−ピペリジン−4−スルホンアミド)
【0153】
【化28】

一般方法3に従って合成した。LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1 obs=412.0、t=3.07分。
【0154】
(実施例4:N−ベンジル−1−[2−(3−クロロ−4−フルオロ−フェノキシ)アセチル]−ピペリジン−4−スルホンアミド)
【0155】
【化29】

一般方法3に従って合成した。LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1 obs=442、t=3.06分。
【0156】
(実施例5:N−ベンジル−1−[2−[[8−(トリフルオロメチル)−4−キノリル]オキシ]アセチル]−ピペリジン−4−スルホンアミド)
【0157】
【化30】

一般方法3に従って合成した。LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1 obs=508、t=2.74分。
【0158】
(実施例6:N,N−ジメチル−1−[2−[[8−(トリフルオロメチル)−4−キノリル]オキシ]アセチル]−ピペリジン−4−スルホンアミド)
【0159】
【化31】

一般方法3に従って合成した。
【0160】
【化32】

LC/MS(10−99% CHCN),M/Z: M+1 obs=446、 t=2.30分。
【0161】
(実施例7:1−[3−(5−クロロ−1H−インドール−1−イル)プロパノイル]−N,N−ジメチル−ピペリジン−4−スルホンアミド)
【0162】
【化33】

一般方法3に従って合成した。LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1 obs=398、t=2.91分。
【0163】
(実施例8:N−メチル−1−[2−(3−クロロ−4−フルオロ−フェノキシ)アセチル]−ピペリジン−4−スルホンアミド)
【0164】
【化34】

一般方法3に従って合成した。LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1 obs=365、t=2.43分。
【0165】
(実施例9:1−(2−(1H−インドール−1−イル)プロパノイル)−N−メチルピペリジン−4−スルホンアミド)
【0166】
【化35】

一般方法3に従って合成した。LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1 obs=350、t=2.5分。
【0167】
(調製2:3−クロロスルホニル−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル)
工程2a:(3R)−ピロリジン−3−オールマレアート(xi)
【0168】
【化36】

(2S、4R)−(−)−4ヒドロキシプロリン(50.0g、381mmol)と2−シクロヘキセン−1−オン(5.0ml)を含むシクロヘキサノール(250ml)中懸濁液を、窒素雰囲気下で一晩還流した。赤色の溶液を約30℃まで冷却させ、マレイン酸(45g、388mmol)をその直後に溶液に添加した。酢酸エチル(500ml)を徐々に添加し、更に15分間撹拌した後、形成された結晶を濾過して収集し、酢酸エチル(3×200ml)で洗浄し、真空下で乾燥し、オフホワイトの固体(53.2g、262mmol、69%)を得た。H−NMRにより(3R)−ピロリジン−3−オールマレアートと確認した。
【0169】
工程2b:(3R)−3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(xii):
【0170】
【化37】

(3R)−ピロリジン−3−オールマレアート(67.6g、333mmol)を、重炭酸ナトリウム(139g、1.65モル)を含有する水(600ml)に、撹拌しながら徐々に注入した。その後、ジtert−ブチルジカルボネート(110g、504mmol)を添加し、得られる混合物を室温で、一晩撹拌した。酢酸エチル(600ml)を添加し、混合物を濾過し溶解しなかった塩を除去した。層を分離させ、水性層を酢酸エチル(300ml)で抽出した。合わせた有機層を飽和NaCl水溶液(400ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、蒸発乾燥させた。暗色の油状物85.7g(q)を150mlのヘプタンから再結晶させ、白色固体62.2g(77%)を得た(H−NMRによりxiiと確認した)。
【0171】
工程2c:(3S)−3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(xiv):
【0172】
【化38】

化合物xii(25g、134mmol)及びトリフェニルホスフィン(42.9g、147mmol)を窒素雰囲気下で無水THF(200ml)に溶解させ、氷/水浴上で0℃に冷却した。ジイソプロピルアゾジカルボネート(DIAD)(30.5ml、154mmol)、次に酢酸(8.1ml、141mmol)を滴下して添加した。得られる混合物を一晩室温条件に置き、蒸発乾燥させた。ヘプタン(240ml)及び酢酸エチル(10ml)を残りの油状物に添加し、混合物を50℃で1時間、更に室温で1時間撹拌した。濾過によって固体を除去し、濾過液を蒸発乾燥させ、油状物51.3gを得た。油状物を酢酸エチル/ヘプタン(20:80〜40:60)でシリカゲル上でカラムクロマトグラフィ精製し、H−NMRで確認した結果、xiii(21.6g、94mmol、70%)を得た(若干のDIAD残留が検出された)。
【0173】
この材料をメタノール/水(100ml、1:1)に溶解させ、炭酸カリウム(15.6g、113mmol)を添加した。室温で1時間撹拌した後、350mlの水を添加し、水溶液をTBME(250ml及び200ml)で抽出した。混合した有機抽出液を飽和NaCl水溶液(200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、蒸発乾燥させ、黄色の油状物を得、H−NMRで解析し、(3S)−3−ヒドロキシ−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(xiv)であることを確認した。
【0174】
工程2d:(3R)−3−アセチルスルファニル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(xvi)。
【0175】
【化39】

シリンジを介して塩化メタンスルホニル(9.1ml、118mmol)を、ピロリジノール(xiv)(18.2g、98mmol)及びトリエチルアミン(28ml、196mmol)の冷却(−5〜−10℃、氷/塩バス)した酢酸エチル(150ml)中の溶液に徐々に添加した。添加終了後、混合物を室温で1時間撹拌し、更に静置した。水(100ml)を添加し、層分離させた。有機層を1N HCl水溶液(100ml)、5%の重炭酸ナトリウム水溶液(100ml)及び飽和NaCl水溶液(100ml)で洗浄した。次に有機層を硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発乾燥させ、黄色の油状物24.3g(92mmol、94%)を得た。この油状物を150mlの無水DMF中に溶解させ、チオ酢酸カリウム(13.5g、119mmol)を添加した。得られる混合物を窒素雰囲気下、65℃で一晩加熱した。溶液は約半時間後に凝固を開始した。混合物を室温に冷却した後、水(250ml)及びTBME(200ml)を添加した。層を分離させ、水性層をTBME(250ml)の他の部分で抽出した。合わせた有機層を水(3×250ml)、及び塩水(200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、減圧下で蒸発乾燥させた。収率:黄色の油状物20.8g(92%)(H−NMRでxviと確認)。
【0176】
工程2e:3−クロロスルホニル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル:
【0177】
【化40】

チオ酢酸塩(xvi)(20.8g、85mmol)を無水エタノール(200ml)中に溶解させ、氷/塩バスで−10℃に冷却した。エタノールの溶液を塩素ガスで徐々にバブリングした。塩素添加の速度は、約10℃(氷/塩バスによって冷却)以下の溶液温度が維持されるように調整した。塩素ガスを合計31g(440mmol)、約1時間バブリングした。得られる混合物に、トルエン(250ml)及び飽和NaCl水溶液(250ml)を添加した。温度のわずかな増加が観察され(Tmax〜25℃)、10分間撹拌した後、層分離し、有機層を飽和NaCl水溶液(200ml)及び水(250ml)で洗浄し、蒸発乾燥させ、黄色の油状物21.2g(93%)を得た。この油状物を酢酸エチル/ヘプタン(1:3)でシリカゲル上でカラムクロマトグラフィ精製し、褐色がかった油状物14.0g(61%)を得た。H−NMRでxviiであることを確認した。NMRでは、若干の不純物の残留が確認された。xviiのp−アニシジン誘導体でe.e.を測定した。xviiが完全にラセミ体であることが確認された。
【0178】
(3S)−3−アセチルスルファニル−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(xix):
【0179】
【化41】

xiv(20.0g、107モル)及びトリエチルアミン(31ml、214mmol)の酢酸エチル(200ml)中の混合物を氷/塩バスで−5℃〜−10℃に冷却した。シリンジによって塩化メシル(9.9ml、128mmol)をこの混合物に徐々に添加した。即座に白い沈殿物が生成し、室温で30分間撹拌を続けた。次に水(100ml)を添加し、有機層を分離し、1N HCl水溶液(100ml)、5%のNaHCO水溶液(100ml)、最後に飽和NaCl水溶液(100ml)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、蒸発乾燥させ、油状物28.9g(107mmol)を得た(H−NMRでxviiであることを確認)。この油状物をDMF(250ml)に溶解させ、チオ酢酸カリウム(16.2g、142mmol)を添加した。得られる混合物を約60℃で一晩窒素雰囲気下で撹拌した。15分後に固体が形成され始めた。混合物を室温に冷却し、水(250ml)、更にTBME(250ml)を固化した混合物に添加した。得られる混合物を10分間撹拌し、その後、層分離させた。水性層を250mlのTBMEで抽出し、混合TBME層を水(3×200ml)、飽和NaCl水溶液(200ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムを通じて乾燥させ、濾過し、蒸発乾燥させ、オレンジ油の23.5g(90%)を得た(H−NMRでxixと確認した)。
【0180】
3−クロロスルホニル−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(xvii)
【0181】
【化42】

チオ酢酸塩xix(32.7g、133mmol)を無水エタノール(300ml)に溶解させ、氷/塩バスで−10℃に冷却した。塩素ガスでバブリングし、エタノール溶液の温度が0℃以上に上昇をしないように供給速度を調節した。合計38gのClでバブリングした。得られる溶液にトルエン(250ml)、飽和NaCl水溶液(200ml)を添加した。混合物を室温で10分間撹拌し、層を分離させ、有機層を飽和NaCl水溶液(200ml)及び水(200ml)で洗浄し、減圧下で蒸発乾燥させた。得られる油状物(17g)をカラムクロマトグラフィ(SiO、EtOAc/ヘプタン1:3)で精製し、褐色がかった油状物8.6gを得た。p−アニシジン誘導体でe.e.を分析し、化合物が完全にラセミ体であることを確認した。
【0182】
一般方法4:
【0183】
【化43】

アミン(3mmol)を、(±)−3−クロロスルホニル−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(0.27g、1mmol)、EtN(0.42ml、3mmol)及びDCM(5ml)の混合溶液に添加した。16時間反応混合物を撹拌した後、水(50ml)に注入し、EtOAc(3×20ml)で抽出した。有機層を混合し、0.1N HCl溶液(3×10ml)及び飽和NaCl水溶液(20ml)で洗浄し、MgSOを通じて乾燥させ、減圧下で濃縮した。生成物を更に精製せずに次の工程に用いた。一般方法4に従い、以下に例示する3−(アミノスルホニル)−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステルを調製した:
3−(ピロリジン−1−スルホニル)−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル;
【0184】
【化44】

3−フェニルスルファモイル−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル
【0185】
【化45】

LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1(Bocなしで)obs=227.3、t=3.17分。
【0186】
3−ベンジルスルファモイル−ピロリジン−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
【0187】
【化46】

LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1(Bocなし)obs=241.3、t=3.19分。
【0188】
一般方法5:
【0189】
【化47】

3−(Ra−Rb−スルファモイル)−ピロリジン−1−カルボン酸 tert−ブチルエステル(0.1mmol)を室温で2時間、TFA:DCM(1:1)溶液中で撹拌した。減圧下で溶媒を除去し、EtOHで2回共蒸発させた後、得られる固体をKOHを通じて乾燥させた。乾燥生成物及びCHCN(0.3ml)の溶液に、カルボン酸(0.11mmol)、HATU(0.042g、0.11mmol)及びEtN(30mg、0.3mmol)を添加した。室温で16時間撹拌した後、溶媒を減圧下で蒸発させた。ギルソン逆相HPLCで精製し、生成物を得た。
【0190】
(実施例10:3−(5−クロロ−1H−インドール−1−イル)−1−(3−ピロリジン−1−イルスルホニルピロリジン−1−イル)−プロパン−1−オン)
【0191】
【化48】

一般方法5に従って合成した。LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1 obs=410、t=2.99分。
【0192】
(実施例11:1−(3−ピロリジン−1−イルスルホニルピロリジン−1−イル)−2−[[8−(トリフルオロメチル)−4−キノリル]オキシ]エタノン)
【0193】
【化49−1】

一般方法5に従って合成した。
【0194】
【化49−2】

LC/MS(10−99% CHCN),M/Z: M+1 obs=457、t=2.41分。
【0195】
(実施例12:1−[2−(1H−インドル−1−イル)プロパノイル]−N−フェニル−ピロリジン−3−スルホンアミド)
【0196】
【化50−1】

一般方法5に従って合成した。
【0197】
【化50−2】

LC/MS(10−99%のCHCN)M/Z:M+1 obs=398、t=3.02分。
【0198】
(実施例13:N−ベンジル−1−[2−(3−クロロ−4−フルオロ−フェノキシ)アセチル]−ピロリジン−3−スルホンアミド)
【0199】
【化51−1】

一般方法5に従って合成した。
【0200】
【化51−2】

LC/MS(10−99% CHCN),M/Z:M+1 obs=427、t=2.96分。
【0201】
当業者であれば、上記の実施例及び反応式を用いて、以下の表2の化合物をはじめとする本発明の化合物を合成できる。
【0202】
表2:式(I及びII)のサンプル化合物の実験データ:
【0203】
【表3−1】

【0204】
【表3−2】

【0205】
【表3−3】

【0206】
【表3−4】

(化合物のNaV阻害特性を検出し、測定するためのアッセイ)
化合物のNaV阻害特性をアッセイする光学的方法:
本発明の化合物は電位型ナトリウムイオンチャネルのアンタゴニストとして有用である。試験化合物のアンタゴニスト特性を以下の通りに解析した。目的のNaVを発現する細胞をマイクロタイタープレートに置いた。インキュベーション期間の後、膜内外電位に感受性の蛍光色素で細胞を染色した。試験化合物をマイクロタイタープレートに添加した。ブロックされていないチャネルからNaVに依存する膜電位変化を引き起こす化学的手段若しくは電気的手段で細胞を刺激した。この膜電位変化を、膜内外電位感受性色素で検出し、測定した。刺激に対して減少した膜電位応答として、アンタゴニストを検出した。光学的膜電位アッセイは、Gonzalez及びTsienの報告(Gonzalez,J.E.及びR.Y.Tsien(1995)“Voltage sensing by fluorescence resonance energy transfer in single cells”Biophys J69(4):1272−80,and Gonzalez,J.E.and R.Y.Tsien(1997)“Improved indicators of cell membrane potential that use fluorescence resonance energy transfer”Chem Biol4(4):269−77を参照)に記載されている電位感受性FRETセンサーと、Voltage/Ion Probe Reader(VIPR(登録商標)のような蛍光変化を測定するための装置とを組み合わせて実施する(Gonzalez,J.E.,K.Oadesら、(1999)“Cell−based assays and instrumentation for screening ion−channel targets”Drug Discov Today4(9):431−439を参照)。
【0207】
化学刺激によるVIPR(登録商標)光学的膜電位アッセイ方法:
細胞の取り扱い及び色素の添加:
VIPR上のアッセイの24時間前に、NaV1.2タイプの電位型NaVを内因的に発現するCHO細胞を、60,000細胞/ウェルでポリリシンコーティングした96穴プレートに播種する。目的のNaVを発現する細胞株において、同様な様式で他のサブタイプを実行する。
1)アッセイ日に培地を吸引除去し、細胞をBath溶液#2(BS#2)225μLで2回洗浄する。
2)15μM CC2−DMPE溶液を、1:1で5mMのクマリンストック液と10%のプルロニック127を混合して調製し、適当な量のBS#2に当該混合液を溶解させる。
3)Bath溶液を96穴プレートから除去した後、細胞にCC2−DMPE溶液80μLを添加する。プレートを室温で30分間、暗所でインキュベートする。
4)細胞をクマリン染色している間に、BS#2中のオキソノール溶液15μLを調製する。DiSBAC(3)に加えて、この溶液は0.75mMのABSC1及び30μLベラトリジン(10mMのEtOHストック(Sigma #V−5754)から調製)を含まなければならない。
5)30分後にCC2−DMPEを除去し、細胞を225μLのBS#2で二回洗浄する。上記のように、残余の体積を40μLとする。
6)bathを除去し、細胞にDiSBAC(3)溶液80μLを添加し、その後試験化合物(DMSOに溶解)を、薬剤添加プレートから各ウェルに所望の試験濃度を達成するように添加し、完全に混合する。ウェルの体積は約121μLとなるはずである。その後、細胞を20〜30分間インキュベートする。
7)インキュベーションが完了したら、細胞を、すぐにナトリウムアドバック(addback)プロトコルで、VIPR(登録商標)試験でアッセイすることができる。120μLのBath溶液#1を添加し、NaV依存性の脱分極を刺激する。200μLテトラカインを、NaVチャネルのブロックのためのアンタゴニストの陽性コントロールとして用いる。
【0208】
VIPR(登録商標)データの解析:
データは、460nm及び580nmチャネルにおいて測定した放出強度(バックグラウンド減算後)の正規化された比率として分析および報告する。次にバックグラウンド強度を各アッセイチャネルから減算する。バックグラウンド強度は、細胞を含まない、同様に処理したアッセイウェルから同じ時間、放出強度を測定して得る。時間の関数としての応答を、以下の式を使用して得られた比率として算出する:
【0209】
【化52】

データは初期(R)及び最終的な(R)比率を算出することによって更に縮小(reduce)する。これらは前刺激期間の一部又は全部の間と、刺激期間のサンプリング時点との間の平均比率である。刺激R=R/Rへの応答を更に算出する。Naアドバック解析時間枠では、ベースラインを2〜7秒とし、最終的な応答を、15−24秒においてサンプリングする。
【0210】
コントロールの応答を、所望の特性を有する化合物(例えばテトラカイン)の存在下(陽性コントロール)、及び薬剤の非存在下(陰性コントロール)でアッセイして得る。陰性(N)及び陽性(P)コントロールへの応答を上記と同様算出し、化合物アンタゴニスト活性Aを以下のように定義する:
【0211】
【化53】

Rは試験化合物の応答比(ratio responce)である。
【0212】
溶液[mM]
Bath溶液#1:NaCl 160、KCl 4.5、CaCl 2、MgCl 1、HEPES 10、NaOHでpH7.4
Bath溶液#2:TMA−Cl 160、CaCl 0.1、MgCl 1、HEPES 10、KOH(最終K濃度 約5mM)でpH7.4
CC2−DMPE:DMSO中5mMのストック液として調製、−20℃保存
DiSBAC(3):DMSO中12mMのストックとして調製、−20℃保存
ABSC1:蒸留HO中200mMのストックとして調製、室温保存。
【0213】
細胞培養:
CHO細胞は、10%のFBS(ウシ胎児血清、処理済(qualified)、GibcoBRL #16140−071)及び1%のPen−Strep(ペニシリン−ストレプトマイシンを、GibcoBRL #15140−122)を補充したDMEM(Dulbecco改変Eagle培地、GibcoBRL #10569−010)で培養した。細胞を100%のコンフルエンスとなるまで、90%の湿度及び10%のCOで、通気キャップ付きフラスコ中で培養する。スケジューリングの必要性に応じて、細胞をトリプシン処理によって1:10又は1:20で分割し、次の分割まで2−3日間増殖させる。
【0214】
電気刺激によるVIPR(登録商標)光学的膜電位アッセイ方法
以下は光メンブレン電位方法#2を使用してNaV1.3抑制活性を測定する方法の例である。目的のNaVを発現する細胞株において、同様な様式で他のサブタイプを実行する。
【0215】
NaV1.3を安定して発現するHEK293細胞を96穴マイクロタイタープレートに平板培養する。適当なインキュベート期間の後、細胞を以下の通りに電位感受性色素CC2−DMPE/DiSBAC2(3)で染色する。
【0216】
試薬:
100mg/mLのプルロニックF−127(シグマ#P2443)(乾燥DMSO中)
10mMのDiSBAC(3)(オーロラ#00−100−010)(乾燥DMSO中)
10mMのCC2−DMPE(オーロラ#00−100−008)(乾燥DMSO中)
200mMのABSC1(HO中)
10mMのHEPES(ギブコ#15630−080)を添加したHank’s Balanced Salt溶液(Hyclone #SH30268.02)
ロードのプロトコル:
2×CC2−DMPE=20μM CC2−DMPE:10mMのCC2−DMPEを等量の10%プルロニックとボルテックスし、更に必要量の10mMのHEPESを含有するHBSSとボルテックスする。各細胞プレートでは5mLの2×CC2−DMPEが必要とする。2×CC2−DMPEを50μL、洗浄後の細胞を含有するウェルに添加し、最終染色濃度10μMとする。細胞を室温、暗所で30分間染色する。
【0217】
ABSC1を有する2×DISBAC(3)=6μM DISBAC(3)及び1mMのABSC1:10mMのDISBAC(3)の必要量を50mlのコニカルチューブに添加し、作製される溶液1mLあたり1μL 10%プルロニックを混合し、ボルテックスする。次にHBSS/HEPESを添加し2×溶液を調製する。最後にABSC1を添加する。
【0218】
2×DiSBAC(3)溶液を、溶媒和物化合物プレートに使用できる。なお、化合物プレートは2×薬剤濃度で調製することに留意すること。染色したプレートを再度洗浄し、50μLの残量とする。2×DiSBAC(3)w/ABSC1を50uL/ウェルで添加する。暗所、室温で30分間染色する。
【0219】
電気刺激装置及びその使用方法は、「ION Channel Assay Methods」としてPCT/US01/21652号(参考として本明細書に援用される)に記載されている。この装置は、マイクロタイタープレート処理機、クマリン染料を励起すると共にクマリン及びオキソノール放出を記録するための光学システム、波形発生器、電流−電圧制御用増幅器及びウェルに電極を挿入する装置を備える。統合されたコンピュータ制御下、この装置をマイクロタイタープレートのウェルの細胞に、ユーザによりプログラムされたプロトコルどおり電気刺激を与えた。
【0220】
試薬:
アッセイ緩衝液#1:140mMのNaCl、4.5mMのKCl、2mMのCaCl、1mMのMgCl、10mMのHEPES、10mMのグルコース、pH7.40、330mOsm
プルロニックストック(1000×):100mg/mLのプルロニック127/乾燥DMSO
オキソノールストック(3333×):10mMのDiSBAC(3)/乾燥DMSO
クマリンストック(1000×):10mMのCC2−DMPE/乾燥DMSO
ABSC1ストック(400×):200mMのABSC1/水
アッセイプロトコル:
1)アッセイする各ウェルに電極を挿入または使用する。
2)電流制御増幅器を使用し、3秒間の刺激波パルスを送達する。2秒間の刺激前の記録を、非刺激強度のデータを得るために実行する。5秒間の刺激後の記録を、静止状態への緩和を調べるために実行する。
【0221】
データ解析:
データは、460nm及び580nmチャネルにおいて測定した放出強度(バックグラウンド減算後)の正規化された比率として分析および報告する。次にバックグラウンド強度を各アッセイチャネルから減算する。バックグラウンド強度は、細胞を含まない、同様に処理したアッセイウェルから同じ時間、放出強度を測定して得る。時間の関数としての反応を、以下の式を使用して得られた比率として報告する:
【0222】
【化54】

データは初期(R)及び最終的な(R)比率を算出することによって更に縮小する。これらは前刺激期間の一部又は全部の間と、刺激期間のサンプリング時点との間の平均比率である。刺激R=R/Rへの反応を更に算出する。
【0223】
コントロールの反応を、所望の特性を有する化合物(例えばテトラカイン)の存在下(陽性コントロール)、及び薬剤の非存在下(陰性コントロール)でアッセイして得る。陰性(N)及び陽性(P)コントロールへの反応を上記のように算出する。化合物のアンタゴニスト活性Aを以下のように定義する:
【0224】
【化55】

Rは試験化合物の応答比である。
【0225】
NaV活性及び試験化合物の阻害に関する電気生理学的アッセイ:
パッチクランプ電気生理学を用い、脊髄神経節神経単位におけるナトリウムチャネルブロッカーの有効性及び選択性を電気生理学的に解析した。ラット神経単位を脊髄神経節から単離し、NGF(50ng/ml)の存在下で2〜10日間の培地中(培養培地はB27、グルタミン及び抗生物質を添加したNeurobasalAから構成された)で維持した。直径の小さな神経単位(侵害受容器、直径8〜12μm)を視覚的に確認し、増幅器(Axon Instruments社製)に接続された微細な先端ガラス電極でプローブした。「電圧クランプ」形式では、−60mVに細胞を維持し、化合物のIC50を解析した。また「電流クランプ」形式では、電流の注入に応答する活動電位の生成をブロックすることにおける化合物の有効性を試験した。これらの実験の結果を基に、化合物の有効性プロファイルを定義した。
【0226】
DRG神経単位の電圧クランプアッセイ:
パッチクランプ技術の細胞全体のバリエーションを使用し、TTX耐性ナトリウム流をDRG細胞体から記録した。Axopatch 200B増幅器(Axon Instruments社製)を使用し、厚壁を有するホウケイ酸ガラス電極(WPI、抵抗3−4MΩ)を用いて室温(約22℃)で記録した。細胞全体の構成を確立した後、記録を開始する前に、約15分間、ピペット溶液(pippette solution)で細胞内を平衡化した。電流を、2−5kHzに低域フィルタリング(lowpass filter)し、10kHzでデジタル的にサンプリングした。一連の抵抗を60−70%補償し、実験全体にわたって連続的にモニターした。細胞内ピペット溶液と外部記録溶液間の液間電位(−7mV)はデータ解析において考慮しなかった。重力駆動型の高速潅流システム(SF−77、Warner Instruments社製)を用いて試験溶液を細胞にアプライした。
【0227】
用量−応答の関係は、電圧クランプ方式で、60秒毎に、実験特異的な保持電位から+10mVの試験電位に細胞を繰り返し脱分極させることによって測定した。次の試験濃度に進む前にブロッキング効果をプラトーにした。
【0228】
溶液:
細胞内液(mM):Cs−F(130)、NaCl(10)、MgCl(1)、EGTA(1.5)、CaCl(0.1)、HEPES(10)、グルコース(2)、pH=7.42、290mOsm。
【0229】
細胞外溶液(mM):NaCl(138)、CaCl(1.26)、KCl(5.33)、KHPO(0.44)、MgCl(0.5)、MgSO(0.41)、NaHCO(4)、NaHPO(0.3)、グルコース(5.6)、HEPES(10)、CdCl(0.4)、NiCl(0.1)、TTX(0.25×10−3)。
【0230】
化合物のNaVチャネル阻害活性に関する電流クランプアッセイ:
MultiClamp 700A増幅器(Axon Inst社製)を用い、細胞全体の構成において細胞を電流クランプ(current−clamp)した。ホウケイ酸ガラスピペット(4−5MOhm)を、以下の組成の溶液で充填した:(mM)150 K−グルコン酸塩、10 NaCl、0.1 EGTA、10 HEPES、2 MgCl(KOHでpH7.34に緩衝)。細胞を、以下の組成の溶液に添加した:(mM)140 NaCl、3 KCl、1 MgCl、1 CaCl及び10 HEPES。ピペットの電位を封止前にゼロに調節し、実験中液間電位を補正しなかった。室温で記録した。
【0231】
式(I及びII)のABCトランスポーター調節物質の活性及び有効性の例を以下の表5及び6に示す。ABCトランスポーター調節物質に対する化合物の活性を、化合物の活性が5μM未満の場合を“+++”、活性が5μM〜20μMである場合を“++”、20μMより大きい場合を“+”として示す。ABCトランスポーター調節に関する化合物の有効性を、有効性が100%以上と算出される場合を“+++”、有効性が25%〜100%と算出される場合を“++”、有効性が25%以下であると算出される場合を“+”として示す。
【0232】
表3
【0233】
【表4−1】

【0234】
【表4−2】

本発明を、実施例を参照しながらその詳細な態様を説明したが、かかる態様に本発明の範囲が限定されないことを理解すべきであり、本発明の範囲は飽くまで添付の特許請求の範囲により定義されることを理解すべきである。他の態様、効果及び変形は添付の特許請求の範囲に包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

の構造で表される化合物又はその薬学的に許容できる塩であって、
ここで、環Bはハロ、シアノ、ニトロ、ハロアルキル、アルコキシ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、アミノ、カルボキシ又は任意に置換されてもよい脂肪族基のうちの1つ又は2つによって任意に置換されてもよく、
各Raは独立にH、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、任意に置換されてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されてもよい脂環式基又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であり、
各Rbは独立にH、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、任意に置換されてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されてもよい脂環式基又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であるか、又は
Ra及びRbはそれらが結合する窒素原子と共に任意に置換されてもよいヘテロ脂環式環を形成し、該ヘテロ脂肪族環はO、S及びNから選択される0から2個の更なるヘテロ原子を含み、
各Qは任意に置換されてもよい分岐若しくは未分岐のC−C−アルキルであり、
各Lは存在しないか、−O−、−NRc−又は−S−であり、
各RcはH、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、−C(O)−Ra又はC(O)−ORaであり、
各Rwは任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であり、各nは1、2又は3であり、n及びmの合計が3、4、5、又は6である場合、各mは1、2又は3である、
化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項2】
RaがH又は任意に置換されてもよい脂肪族基である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
RaがHである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Raが任意に置換されてもよい脂肪族基である、請求項2記載の化合物。
【請求項5】
Raがメチルである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Rbがアラルキルである、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Rbがベンジルである、請求項6記載の化合物。
【請求項8】
Rbが任意に置換されてもよいアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Rbが任意に置換されてもよいフェニルである、請求項8記載の化合物。
【請求項10】
Rbが任意に置換されてもよい脂肪族基である、請求項1記載の化合物。
【請求項11】
Rbが任意に置換されてもよいアルキルである、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
Rbがメチルである、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
Ra及びRbが、それらが結合する窒素原子と共に任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基を形成する、請求項1記載の化合物。
【請求項14】
Ra及びRbが、それらが結合する窒素原子と共に任意に置換されてもよいヘテロシクロアルキルを形成する、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
Ra及びRbが、それらが結合する窒素原子と共に任意に置換されてもよい単環式ヘテロアルキルを形成する、請求項14記載の化合物。
【請求項16】
Ra及びRbが、それらが結合する窒素原子と共にピロリジニルを形成する、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
Ra及びRbが、それらが結合する窒素原子と共にピペリジニルを形成する、請求項15記載の化合物。
【請求項18】
Rwが任意に置換されてもよいアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項19】
Rwが任意に置換されてもよいフェニルである、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
前記フェニルが、1から3個のハロ又はハロアルキルで置換されている、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
Rwが任意に置換されてもよいヘテロアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項22】
Rwが任意に置換されてもよい二環式ヘテロアリール又は任意に置換されてもよいベンゾ縮合二環式ヘテロアリールである、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
Rwが任意に置換されてもよい二環式ヘテロアリールである、請求項22記載の化合物。
【請求項24】
Rwが任意に置換されてもよいインドリル又は任意に置換されてもよいキノリニルである、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
Rwが任意に置換されてもよいインドリルである、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
前記インドリルが1から3個のハロ又はハロアルキルで置換されている、請求項25記載の化合物。
【請求項27】
Rwが任意に置換されてもよいキノリニルである、請求項24記載の化合物。
【請求項28】
前記キノリニルが1から3個のハロ又はハロアルキルで置換されている、請求項27記載の化合物。
【請求項29】
Rwが任意に置換されてもよいベンゾ縮合二環式ヘテロアリールである、請求項22記載の化合物。
【請求項30】
Rwが任意に置換されてもよいインドリニル又は任意に置換されてもよいテトラヒドロキノリニルである、請求項29記載の化合物。
【請求項31】
Qが−CH−又はC(アルキル)(H)である、請求項1記載の化合物。
【請求項32】
Qが−CH−である、請求項31記載の化合物。
【請求項33】
Qが−C(アルキル)(H)−である、請求項31記載の化合物。
【請求項34】
LがOである、請求項1記載の化合物。
【請求項35】
nが2である、請求項1記載の化合物。
【請求項36】
mが2である、請求項35記載の化合物。
【請求項37】
RcがH、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、−C(O)−Ra又はC(O)−ORaである、請求項1記載の化合物。
【請求項38】
式II
【化2】

の構造式で表される化合物又はその薬学的に許容できる塩であって、
ここで、環Bはハロ、シアノ、ニトロ、ハロアルキル、アルコキシ、スルホニル、スルフィニル、スルファニル、アミノ、カルボキシ又は任意に置換されてもよい脂肪族基のうちの1個又は2個によって任意に置換されてもよく、
各Raは独立にH、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、任意に置換されてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されてもよい脂環式基又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であり、
各Rbは独立にH、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、任意に置換されてもよいヘテロアラルキル、任意に置換されてもよい脂環式基又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であるか、又は
Ra及びRbはそれらが結合する窒素原子と共に任意に置換されてもよいヘテロ脂環式環を形成し、ここで、該ヘテロ脂肪族環はO、S及びNから選択される0から2個の更なるヘテロ原子を含み、
各RqはH又は任意に置換されてもよい脂肪族基であり、
各LIIは存在しないか、−CH−、−O−、−NRc−又は−S−であり、
各RcはH、任意に置換されてもよい脂肪族基、任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいアラルキル、−C(O)−Ra又はC(O)−ORaであり、
各Rwは任意に置換されてもよいアリール、任意に置換されてもよいヘテロアリール、又は任意に置換されてもよいヘテロ脂環式基であり、
各pは1又は2である、
化合物又はその薬学的に許容できる塩。
【請求項39】
以下:
【化3】

【化4】

【化5】

から選択される化合物。
【請求項40】
医薬用担体と、請求項1及び38のいずれか1項記載の化合物を含有する医薬品組成物。
【請求項41】
請求項1及び38のいずれか1項記載の化合物と細胞とを接触させる工程を包含する、イオンチャネルを調節する方法。
【請求項42】
急性、慢性、神経障害性もしくは炎症性の疼痛、関節炎、片頭痛、群発性頭痛、三叉神経痛、疱疹神経痛、全身神経痛、癲癇又は癲癇状態、神経変性障害、不安及び鬱病のような精神医学的障害、筋緊張症、不整脈、運動障害、神経内分泌系障害、運動失調、多発性硬化症、過敏性腸症候群、失調症、内臓痛、変形性関節症の疼痛、疱疹後神経痛、糖尿病性神経障害、神経根性疼痛、坐骨神経痛、背痛、頭部若しくは頚部の疼痛、重度若しくは難治性の疼痛、侵害受容疼痛、突出痛、術後疼痛又は癌疼痛の治療方法であって、哺乳類に請求項1及び38のいずれか1項記載の化合物を投与する工程を包含する、方法。

【公表番号】特表2009−512717(P2009−512717A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536868(P2008−536868)
【出願日】平成18年10月23日(2006.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/041304
【国際公開番号】WO2007/050522
【国際公開日】平成19年5月3日(2007.5.3)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】